説明

変形状態測定装置

【課題】被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置を提供する。
【解決手段】ベース40と、前記ベース40の上部に取り付けられた面圧シート10と、前記面圧シート10の上部に複数取り付けられたプローブピン20と、複数の前記プローブピン20を各々覆うように取り付けられた複数のガイド筒30から構成されており、前記プローブピン20は下側ピン22と前記下側ピン22を覆うように配置されたプローブカップ24と前記下側ピン22とプローブカップ24の間に挟まるように配置された弾性体とから構成されており、前記面圧シート10と前記下側ピンと22が接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧状況下における物体の変形状態を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加圧状況下における被測定物の変形状態を測定する装置としては被測定物の変形時の形状を測定するもの、被測定物の変形時の圧力分布を測定するものがある。このような例としては特許文献1に記載の形状測定装置や特許文献2に記載の圧力分布測定装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された形状測定装置では平板状プローブの上部に一定の接触荷重を生み出すウェイトを載せ、そのウェイト上部をマイクロメータ(変位センサ)で測定するものである。これにより、加圧状況下(ウェイトの加重)での被測定物の変形状態を形状として得ることができる。
【0004】
特許文献2に記載された圧力分布測定装置では翼形状の被測定物を対象としており、被測定物内部の複数の薄膜部にひずみゲージを配置し、外部から被測定物に風を当てた際のひずみゲージの値を測定することで被測定物の表面圧力分布を得るものである。これにより、加圧状況下(風を当てる)での被測定物の変形状態を圧力分布として得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−202630号公報
【特許文献2】特開2005−221410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の形状測定装置においては、被測定物全体を測定するためには走査を要するため時間がかかる。また、測定箇所は一点であるため、測定箇所の周辺部に対しては加圧されていない状況下での測定となり、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を測定することはできないという問題がある。
【0007】
また特許文献2に記載の圧力分布測定装置においては、被測定物の内部にセンサを要するため、測定対象が限定されてしまう。また、外部から別途風を送る装置が必要となり、装置全体が大掛かりなものとなってしまう。さらに、変形状態を形状のデータとして得ることができない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1に係る変形状態測定装置は、
ベースと、前記ベースの上部に取り付けられた面圧シートと、前記面圧シートの上部に複数取り付けられたプローブピンと、複数の前記プローブピンを各々覆うように取り付けられた複数のガイド筒から構成されており、
前記プローブピンは下側ピンと前記下側ピンを覆うように配置されたプローブカップと前記下側ピンと前記プローブカップの間に挟まるように配置された弾性体とから構成されており、
前記面圧シートと前記下側ピンとが接触していることを特徴とする。
【0010】
前記プローブピンと前記プローブカップの材質としてはカーボン、ステンレス、ポリプロピレン、ポリカーボネートであることが好ましい。
【0011】
さらに前記ベースは弾性素材であっても良い。
【0012】
(2)請求項2に係る変形状態測定装置は、
請求項1に記載の変形状態測定装置であって、
前記弾性体としてはコイルバネであることを特徴とする。
【0013】
(3)請求項3に係る変形状態測定装置は、
ベースと、前記ベースの上部に取り付けられた複数のプローブピンと、空圧レギュレータから構成されており、
前記プローブピンは先端プローブロッドと前記先端プローブロッドを覆うように配置された前記空圧シリンダーと変位センサから構成されており、
前記空圧レギュレータと前記空圧シリンダーとが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成されることにより次の効果を奏する。
請求項1では以下の効果を奏する。
(A)各々の前記プローブピンが前記弾性体を介して伸縮自在となっていることから、前記プローブピンの長さ(変形量)は前記プローブピンが被測定物から受ける力に比例する。さらに前記下側ピンと前記面圧シートが接触していることから、前記プローブピンの長さ(変形量)に比例した圧力データを前記面圧シートから取り出すことができる。これにより、形状データと圧力データを同時に測定することができる。
【0015】
(B)また、複数の前記プローブピンを有していることを特徴とする。被測定物を当該変形状態測定装置に載せた場合には、被測定物の自重により被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を測定することができる。
【0016】
(C)また、被測定物を当該変形状態測定装置に接触させ、当該変形状態測定装置を介して任意の力を被測定物全体に与えた場合には、被測定物全体が任意の力で加圧された状況下での変形状態を測定することができる。
【0017】
(D)また、複数の前記ガイド筒を有していることから、複数の前記プローブカップは前記面圧シートに対して垂直方向の動きに規制され、測定の信頼性が向上する。
【0018】
(E)また、前記ベースを弾性素材とすれば、前記面圧シートの両面からの加圧状況下における圧力データと、前記プローブピン側の被測定物の形状データを得ることができる。
さらに、当該変形状態測定装置を2つ用い、前記ベース面を合わせて使用すれば、前記面圧シートの両面からの加圧状況下における圧力データと両側の被測定物の形状データを得ることができる。
【0019】
請求項2では上記効果に加え次の効果を奏する。
(F)前記弾性体として前記コイルバネであることを特徴とする。コイルバネは安価で購入しやすい弾性体であるため、装置全体としても安価にできる。
【0020】
請求項3では次の効果を奏する。
(G)前記空圧レギュレータにより前記空圧シリンダー内を任意の圧力に設定できるので、複数の前記先端プローブロッドすべてに同じ圧力を掛けることができる。
【0021】
(H)また、前記プローブピンは伸縮自在となっており前記変位センサを有していることを特徴とする。被測定物を当該変形状態測定装置に載せた場合には、被測定物の自重による下向きの圧力と複数の前記先端プローブロッドの上向きの圧力が釣り合った位置で前記プローブピンの長さ(変位量)がきまる。この長さ(変位量)を前記変位センサで測定することで、加圧状況下での変形状態を測定することができる。
【0022】
以上の通り、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置が実現された。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る変形状態測定装置100を説明するために示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る変形状態測定装置100のプローブピン20を説明するために示す断面斜視図である。
【図3】実施例1に係る変形状態測定装置100の測定状況1を示す図である。
【図4】実施例1に係る変形状態測定装置100の測定状況2を示す図である。
【図5】実施例2に係る変形状態測定装置200を説明するために示す斜視図である。
【図6】実施例2に係る変形状態測定装置200のプローブピン70を説明するために示す断面斜視図である。
【図7】実施例2に係る変形状態測定装置200の測定状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は実施例1に係る変形状態測定装置100を説明するために示す斜視図である。
図2は実施例1に係る変形状態測定装置100のプローブピン20を説明するために示す断面斜視図である。
図3は実施例1に係る変形状態測定装置100の測定状況1を示す図である。
図4は実施例1に係る変形状態測定装置100の測定状況2を示す図である。
【0026】
実施例1に係る変形状態測定装置100は、図1に示すように、
ベース40と、ベース40の上部に取り付けられた面圧シート10と、面圧シート10の上部に複数取り付けられたプローブピン20と、複数のプローブピン20を各々覆うように取り付けられた複数のガイド筒30から構成されている。
【0027】
さらに図2に示すようにプローブピン20は下側ピン22と下側ピン22を覆うように配置されたプローブカップ24と下側ピン22とプローブカップ24の間に挟まるように配置されたコイルバネ26とから構成されており、面圧シート10と下側ピン22とが接触している。
【0028】
プローブカップ24と下側ピン22の材質はカーボン、ステンレス、ポリプロピレン、ポリカーボネートであることが好ましい。
【0029】
プローブカップ24は内径1mm〜5mm程度、長さは5mm〜150mm程度である。
【0030】
下側ピン22は外径1mm〜5mm程度、長さは5mm〜150mm程度である。
【0031】
実施例1に係る変形状態測定装置100のプローブピン22は弾性体としてコイルバネ26を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばスポンジやゴムのように弾性体であれさえすれば、利用可能である。
【0032】
実施例1に係る変形状態測定装置100の各々のプローブピン22のベース40からの高さはすべて一定としているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、装置中心付近のプローブピン22のベース40からの高さについては外側付近に比べて短くしたり、長くしたりすることも可能である。これにより測定面を平面に限定せず、曲面や凹凸面とすることも可能である。
【0033】
以上のように構成された実施例1に係る変形状態測定装置100によれば、
(A)各々のプローブピン20がコイルバネ26を介して伸縮自在となっていることから、プローブピン20の長さ(変形量)はプローブピン20が被測定物から受ける力に比例する。さらに下側ピン22と面圧シート10が接触していることから、プローブピン22の長さ(変形量)に比例した圧力データを面圧シート10から取り出すことができる。これにより、形状データと圧力データを同時に測定することができる。
【0034】
(B)また、図3に示すように複数のプローブピン20を有していることを特徴とする。被測定物80を変形状態測定装置100に載せた場合には、被測定物80の自重により被測定物80全体が加圧された状況下での変形状態を測定することができる。
【0035】
(C)また、図4に示すように被測定物80を変形状態測定装置100に接触させ、変形状態測定装置100を介して任意の力を被測定物80全体に与えた場合には、被測定物80全体が任意の力で加圧された状況下での変形状態を測定することができる。
【0036】
(D)また、複数のガイド筒30を有していることから、複数のプローブカップ24は面圧シート10に対して垂直方向の動きに規制され、測定の信頼性が向上する。
【0037】
以上の通り、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置が実現された。
【実施例2】
【0038】
図5は、実施例2に係る変形状態測定装置200を説明するために示す斜視図である。
図6は、実施例2に係る変形状態測定装置200のプローブピン70を説明するために示す断面斜視図である。
図7は、実施例2に係る変形状態測定装置200の測定状況を示す図である。
【0039】
実施例1に係る変形状態測定装置200は、図5に示すように、
ベース50と、ベース50の上部に取り付けられた複数のプローブピン70と、空圧レギュレータ60から構成されている。
【0040】
さらに図6に示すように、プローブピン70は先端プローブロッド74と先端プローブロッド74を覆うように配置された空圧シリンダー72とレーザー変位センサ76から構成されており、
空気レギュレータ60と空圧シリンダー72とがチューブ62を介して接続されている。
実施例2に係る変形状態測定装置200のレーザー変位センサ74を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、磁気を利用した変位センサであっても良い。
【0041】
実施例1に係る変形状態測定装置200の先端プローブロッド74は空圧シリンダー72に覆われる構造を有しており、空圧シリンダー72内部に収まることで伸縮できるが、これに限定されるものではない。例えば、空圧シリンダー72をさらに覆うようなシリンダーを複数有することで、伸縮率を上げた構造を利用することも可能である。
【0042】
以上のように構成された実施例2に係る変形状態測定装置200によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
(G)レギュレータ60により空圧シリンダー72内を任意の圧力に設定できるので、複数の先端プローブロッド74すべてに同じ圧力を掛けることができる。
【0044】
(H)また、図7に示すようにプローブピン70は伸縮自在となっておりレーザー変位センサ76を有していることを特徴とする。被測定物80を変形状態測定装置200に載せた場合には、被測定物80の自重による下向きの圧力と複数の先端プローブロッド74の上向きの圧力が釣り合った位置でプローブピン70の長さ(変位量)きまる。この長さ(変位量)をレーザー変位センサ76で測定することで、加圧状況下での変形状態を測定することができる。
【0045】
以上の通り、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置が実現された。
【符号の説明】
【0046】
10…面圧シート、20,70…プローブピン、22…下側ピン、24…プローブカップ、26…コイルバネ、30…ガイド筒、40,50…ベース、60…空圧レギュレータ、62…チューブ、72…空圧シリンダー、74…先端プローブロッド、76…レーザー変位センサ、80…被測定物、100,200…変形状態測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースの上部に取り付けられた面圧シートと、前記面圧シートの上部に複数取り付けられたプローブピンと、複数の前記プローブピンを各々覆うように取り付けられた複数のガイド筒から構成されており、
前記プローブピンは下側ピンと前記下側ピンを覆うように配置されたプローブカップと前記下側ピンと前記プローブカップの間に挟まるように配置された弾性体とから構成されており、
前記面圧シートと前記下側ピンとが接触していることを特徴とする変形状態測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変形状態測定装置であって、
前記弾性体としてはコイルバネであることを特徴とする変形状態測定装置。
【請求項3】
ベースと、前記ベースの上部に取り付けられた複数のプローブピンと、空圧レギュレータから構成されており、
前記プローブピンは先端プローブロッドと前記先端プローブロッドを覆うように配置された前記空圧シリンダーと変位センサから構成されており、
前記空気レギュレータと前記空圧シリンダーとが接続されていることを特徴とする変形状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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