説明

変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及びゴム組成物

【課題】 反撥弾性に優れ、よって省燃費性に優れた変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及び該重合体ゴムを用いたゴム組成物を提供する。
【解決手段】 炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記式(1)で表される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムの製造方法。共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等をあげることができる。


(式中、l〜mは、独立に、1〜8の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及びゴム組成物に関するものである。更に詳しくは、本発明は、反撥弾性に優れ、よって省燃費性に優れた変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及び該重合体ゴムを用いたゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤ用ゴムとして、乳化重合法によって得られるスチレン−ブタジエン共重合体が知られている。しかしながら、該共重合体の反撥弾性は劣っているので、該共重合体からなる自動車タイヤは、優れた省燃費性を持っていないという問題点を有している。
【0003】
優れた反撥弾性を有するゴムを得るための試みとして、特許文献1には、ブタジエンとスチレンとを、有機リチウム化合物を重合開始剤とし、エ−テルのようなルイス塩基性化合物をミクロ構造調節剤とし、炭化水素溶媒中で共重合させる方法が開示されている。
【0004】
また、本願の比較例1において特定のアクリルアミドを用いて、変性ジエン系重合体ゴムを得ているが、特許文献2には、ジエン系重合体ゴムのアルカリ金属末端に特定のアクリルアミドを反応させて、反撥弾性の改良された変性ジエン共重合体ゴムを得る方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−72907号
【特許文献2】公報特許第2540901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら近年、自動車タイヤの省燃費性に対する要求は、環境に対する配慮を背景に、一層高度なものとなっており、上記の重合体ゴムはこの要求に十分に応えることができない。
【0007】
本発明の目的は、優れた反撥弾性を有する変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及び、該変性ジエン系重合体ゴムを用いたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のうち第一の発明は、炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記式(1)で表される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムの製造方法に係るものである。


(式中、l〜mは、独立に、1〜8の整数を表す。)
【0009】
本発明のうち第二の発明は、炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記一般式(2)で表わされるケイ素又はスズ化合物のカップリング剤、次いで上記一般式(1)で示される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムの製造方法に係るものである。
RaMXb (2)
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基を表し、Mはケイ素原子又はスズ原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、aは0〜2の整数を表し、bは2〜4の整数を表す。)
【0010】
また、本発明のうち第三の発明は、炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、上記の式(1)で表される化合物を反応させる又は、上記一般式(2)で表わされるケイ素又はスズ化合物のカップリング剤、次いで上記一般式(1)で示される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムである。
【0011】
更には、本発明の第四の発明は、前記の変性ジエン系重合体ゴムを、ゴム成分中10重量%以上含有するゴム組成物に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、反撥弾性に優れ、よって省燃費性に優れた変性ジエン系重合体ゴム、その製造方法及び該重合体ゴムを用いたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の変性ジエン系重合体ゴムは、炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記式(1)で表される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムである。


(式中、l〜mは、独立に、1〜8の整数を表す。)
【0014】
又、炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記一般式(2)で表わされるケイ素又はスズ化合物のカップリング剤、次いで上記一般式(1)で示される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムである。
RaMXb (2)
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基を表し、Mはケイ素原子又はスズ原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、aは0〜2の整数を表し、bは2〜4の整数を表す。)
【0015】
共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等をあげることができ、これらのうちでは、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0016】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等をあげることができ、これらのうちでは、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、スチレンが好ましい。
【0017】
炭化水素溶媒としては、アルカリ金属触媒を失活させないものであり、適当な炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれ、特に炭素数3〜12個を有するプロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどをあげることができる。また、これらの溶剤は2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
アルカリ金属系触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の金属、これらの金属を含有する炭化水素化合物又は該金属と極性化合物との錯体などをあげることができる。なお、アルカリ金属触媒として好ましいものとしては、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物をあげることができ、その具体例としては、たとえば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−フロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム4−シクロペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−ブテン−2、ナトリウムナフタレン、ナトリウムビフェニル、カリウム−テトラヒドロフラン錯体、カリウムジエトキシエタン錯体、α−メチルスチレンテトラマーのナトリウム塩などをあげることができる。
【0019】
本発明で使用する前記の活性ジエン系重合体ゴムに反応させる変性化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が用いられる。

(1)式中、l〜nは、独立に、1〜8の整数を表す。省燃費性改良のためには、l〜nがいずれも1であるイソシヌル酸トリグリシジルが好ましい。
【0020】
本発明においては、一般式RaMXbで表されるケイ素またはスズ化合物であるカップリング剤が用いられる(式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、aは0〜2の整数、bは2〜4の整数を表す)。ケイ素化合物としてはテトラクロルケイ素、テトラブロムケイ素、メチルトリクロルケイ素、ブチルトリクロルケイ素、ジクロルケイ素、ビストリクロルシリルケイ素等が用いられ、スズ化合物としてはテトラクロルスズ、テトラブロムスズ、メチルトリクロルスズ、ブチルトリクロルスズ、ジクロルスズ、ビストリクロルシリルスズ等が用いられる。活性ジエン系重合体ゴム末端リチウム原子1モルに対してケイ素又はスズ化合物のカップリング剤の量は、活性ジエン系重合体中のアルカリ金属触媒1モルあたり、カップリング剤中のハロゲン原子が0.01〜0.4モルとなる量である。カップリング反応は、特に制限はされないが、通常20℃〜100℃の範囲の温度で行われる。次に、前記一般式(1)で示される変性化合物を反応させる。この反応は、通常20℃〜100℃の範囲で反応させることにより得られる。
【0021】
重合用モノマーとしては、共役ジエンモノマーのみを用いてもよく、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用する場合の両者の比率は、共役ジエンモノマー/芳香族ビニルモノマーの重量比で50/50〜90/10が好ましく、更に好ましくは55/45〜85/15である。該比が過小であると重合体ゴムが炭化水素溶媒に不溶となり、均一な重合が不可能となる場合があり、一方該比が過大であると重合体ゴムの強度が低下する場合がある。
【0022】
重合に際しては、アルカリ金属触媒、炭化水素溶媒、ランダム重合性を高める試薬、共役ジエン単位のビニル結合含有量調節剤など通常使用されているものを用いることが可能である。該共重合体の製造における重合温度は、特に制約を受けないが、通常−80℃〜150℃であり、反応速度とアルカリ金属職触媒の安定性の観点から、20〜110℃が好ましい。重合時間は特に制限されないがアルカリ金属触媒が少なくとも24時間以内で完了する。
【0023】
共役ジエン部のビニル結合含有量を調節するためには、ルイス塩基性化合物として、各種の化合物を使用し得るが、エーテル化合物又は第三級アミンが、工業的実施上の入手容易性の点で好ましい。エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエ−テル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルがあげられる。また、第三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのほかに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。
【0024】
アルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して本発明の前記一般式(1)で示される変性化合物を添加しで製造する際に使用する量は、アルカリ金属を付加する際使用するアルカリ金属触媒1モル当たり、通常0.06〜10モルであり、好ましくは0.1〜5モルである。更に好ましくは0.2〜2モルである。該使用量が少なすぎる場合は省燃費性の改良効果が少なく、逆に多すぎる場合は、重合溶媒中に残存するため、その溶媒をリサイクル使用する場合には溶媒からの分離工程を必要とする等、経済的に好ましくない。
【0025】
該変性化合物とアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体との反応は、迅速に起きるので、反応温度及び反応時間は広範囲に選択できるが、一般的には、室温乃至は100℃、数秒乃至数時間である。反応は、アルカリ金属含有ジエン系重合体と該変性化合物とを接触させればよく、たとえば、アルカリ金属触媒を用いて、ジエン系重合体を重合し、該重合体溶液中に該変性化合物を所定量添加する方法が、好ましい態様として例示できるが、この方法に限定されるものではない。
【0026】
アルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系共重合体に対して、前記一般式(1)で示される変性化合物を反応させること又は、一般式RaMXbで表されるケイ素またはスズ化合物のカップリング剤、次いで、前記一般式(1)で示される変性化合物を反応させることにより、改質されたジエン系重合体ゴムは反応溶媒中から凝固剤の添加あるいはスチーム凝固など通常の溶液重合によるゴムの製造において使用される凝固方法がそのまま用いられ、凝固温度も何ら制限されない。
【0027】
反応系から分離されたクラムの乾燥も通常の合成ゴムの製造で用いられるバンドドライヤー、押し出し型のドライヤー等が使用でき、乾燥温度も何ら制限されない。
【0028】
かくして、本発明の変性ジエン系重合体ゴムが得られる。
【0029】
変性ジエン系重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4)は、10〜200であることが好ましく、更に好ましくは20〜150である。ムーニー粘度が低すぎると加硫物の引張り強度等の機械物性が低下する場合があり、一方該粘度が高すぎると他のゴムと組み合わせて使用する場合に混和性が悪く、加工操作性が困難となり、得られたゴム組成物の加硫物の機械物性が低下する場合がある。
【0030】
変性ジエン系重合体ゴムの共役ジエン部のビニル結合含有量は、10〜70%であることが好ましく、更に好ましくは15〜65%である。該含有量が過少であると重合体のガラス転移温度が低温となり、タイヤ用のポリマ−として用いた場合、グリップ性能が劣る場合があり、一方該含有量が過多であると重合体のゴムガラス転移温度が上昇し、反撥弾性に劣る場合がある。
【0031】
本発明の変性ジエン系重合体ゴムは、他のゴム成分、各種添加剤等を含むゴム組成物とされる。
【0032】
他のゴム成分としては、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、溶液重合(アニオン重合触媒、ziegler型触媒)によるポリブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及び天然ゴムが含まれ、目的に応じて、これらゴムの1種又は2種以上が選択使用される。変性ジエン系重合体ゴムと他のゴムとからなるゴム組成物中の前者の割合は、両者の合計量を100重量部として、好ましくは10〜100重量部、より好ましくは20〜100重量部である。該割合が10重量部未満であると、ゴム組成物の反撥弾性が改良され難く、加工性も良くならない。変性ジエン系重合体ゴムと組合せ得る添加剤として、ゴム工業で常用されている、硫黄のような加硫剤;ステアリン酸;亜鉛華;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤のような加硫促進剤;有機過酸化物;HAF及びISAFのようなグレードのカーボンブラックの如き補強剤;シリカ;炭酸カルシウム及びタルクのような充填剤;シランカップリング剤;伸展油;加工助剤;並びに、老化防止剤を例示することができる。添加剤の種類や添加量は、ゴム組成物の使用目的に応じて決めればよいが、ゴム組成物中のカーボンブラックおよびシリカの含有量は、変性重合体ゴムと他のゴムとの合計量を100重量部として、好ましくはそれぞれ0〜100重量部および5〜150重量部である。カーボンブラックとシリカの含有量が多すぎると反撥弾性が改良され難くなる。シランカップリング剤の含有量は、シリカの量を100重量%として、好ましくは2〜20重量%である。シランカップリング剤は、高価なため、多く添加すぎると経済性に劣る。
【0033】
ゴム組成物を得るには、ゴム成分と各種添加剤とをロール、バンバリー等の混合機を用いて混練りすればよい。ゴム組成物は、加硫され、使用に供される。
【0034】
本発明のゴム組成物は、反撥弾性に優れるため、省燃費性に優れた自動車タイヤに最適に使用され得る。また、本発明のゴム組成物は、靴底用、床剤用、防振ゴム用、などの各種工業用原料ゴムとして使用され得る。
【実施例】
【0035】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン1404g、スチレン396g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液15.0mmol)を添加し、攪拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、イソシアヌル酸トリグリシジルを7.5mmol(2.23g)添加した。攪拌下に65℃で30分間反応させた後、10mlのメタノールを加えて、更に5分間攪拌した。その後、重合反応容器の内容物を取り出し、10gの2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾール(住友化学製のスミライザーBHT:以下同様)を加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、重合体ゴムを得た。
【0036】
比較例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン1404g、スチレン396g、テトラヒドロフラン328g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液8.5mmol)を添加し、攪拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、四塩化珪素を0.16mmol(0.027g)を添加し、攪拌下に65℃で15分間反応させた。更に、イソシアヌル酸トリグリシジルに変えて、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを7.65mmol(1.19g)添加し、攪拌下に65℃で30分間反応させた後、10mlのメタノールを加えて、更に5分間攪拌した。その後、重合反応容器の内容物を取り出し、10gの2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾール(住友化学製のスミライザーBHT:以下同様)を加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、重合体ゴムを得た。
【0037】
比較例2
n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液を8.7mmolに変更したこと、四塩化珪素を0.17mmol(0.029g)に変更したこと及び、イソシアヌル酸トリグリシジル、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを添加しなかったこと以外、比較例1と同じに行い、重合体ゴムを得た。
【0038】
測定方法
測定方法は下記のとおりである。
重合体ゴムのムーニー粘度
JIS K−6300−1に準拠して100℃にて測定した。
重合体ゴムのビニル含量
赤外分光計におけるビニル基の吸収ピークである910カイザー付近の吸収強度より求めた。
重合体ゴムのスチレン含量
JIS K−6383(屈折率法)に準じて測定した。
加硫ゴムの反撥弾性
表1の配合に従い、ラボプラストミルにて混練して配合ゴムを得て、これを6インチロールでシート状に成形の後、160℃の温度で45分間、加硫して加硫ゴムを得た。加硫ゴムについて、リュプケレジリエンステスターを用いて、60℃での反撥弾性を測定した。
【0039】
測定、評価結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
*1:ウルトラシルVN3−G(デグッサ社製)
*2:Si69(デグッサ社製)
*3:N−339(三菱カーボン社製)
*4:X−140(共同石油社製アロマ油)
*5:アンテージ3C(川口化学社製 老化防止剤)
*6:アクセルCZ−R(川口化学社製 加硫促進剤)
*7:アクセルD−R(川口化学社製 加硫促進剤)
*8:サンノックN(大内新興化学工業株式会社製)
【0042】
【表2】

【0043】
*1 変性化合物
A1:イソシアヌル酸トリグリシジル
B1:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、下記式(1)で表される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムの製造方法。


(式中、l〜mは、独立に、1〜8の整数を表す。)
【請求項2】
炭化水素溶媒中において、ルイス塩基性化合物と共存下で、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、請求項1記載の式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物を反応させる変性ジエン系重合体ゴムの製造方法。
RaMXb (2)
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基を表し、Mはケイ素原子又はスズ原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、aは0〜2の整数を表し、bは2〜4の整数を表す。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の製造方法により得られる変性ジエン系重合体ゴム。
【請求項4】
請求項3の変性ジエン系重合体ゴムを10重量%以上含有するゴム組成物。



【公開番号】特開2006−257331(P2006−257331A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79005(P2005−79005)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】