変更された空間構成を有する結晶性組換型インターフェロン、その三次元構造、およびその使用
この発明は、(i)ヒトコンセンサスインターフェロンと同じアミノ酸配列と、(ii)IFN−α2bと比較して変更された三次元構造とを有する結晶性組換型インターフェロン(rSIFN−co)を提供する。本発明のインターフェロンは向上した生物学的活性を呈する。本発明は、薬剤スクリーニングおよび/または薬剤設計に有用な当該インターフェロンの構造モデル、ならびに当該インターフェロンのミメティックも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に、変更された空間構成を有する結晶性組換型インターフェロンと、その結晶化方法およびその三次元構造と、当該結晶およびその三次元構造の使用と、当該組換型インターフェロンのミメティックとに関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン(IFN)は、抗ウイルス、抗腫瘍、および免疫調節機能を含む多数の重要な生物学的機能を有する、さまざまな細胞によって産生される一種の可溶タンパク質である。インターフェロンは、産生細胞、受容体、および生物学的活性などの種類の差に応じてI型、II型、およびIII型インターフェロンに分けることができる。ウイルスおよび合成二本鎖RNAによって主に誘導されるI型IFNは抗ウイルスインターフェロンとしても公知である。IFNα、IFNβ、IFNωという3つの形態のI型インターフェロンが存在する。免疫インターフェロンまたはIFNγとしても公知のII型IFNはT細胞によって産生され、インビボでの重要な免疫調節因子である。III型インターフェロンはIFNγ分子からなる。
【0003】
多数の関連の特許および開示文献が例示するように、近年、世界中の多数の企業がインターフェロンの研究に従事している。たとえば、米国特許第4,695、623号および第4,897,471号は、天然に存在するα−インターフェロンポリペプチドに見られる共通のまたは支配的なアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有する新型のヒトインターフェロンポリペプチドを開示した。その新型のインターフェロンはIFN−con(コンセンサスインターフェロンα)と命名された。開示されたアミノ酸配列はIFN−con1、IFN−con2、およびIFN−con3と命名された。IFN−conをエンコードする遺伝子および大腸菌における遺伝子発現も開示された。白血球インターフェロンまたは他のI型インターフェロンと比較して、研究は、組換型IFN−conがインビトロでより高い抗ウイルス、増殖阻止、およびナチュラルキラー細胞活性を有することを示した。
【0004】
米国特許第5,372,808号は、疾患の治療におけるヒトIFN−conの使用を開示した。Schering-Ploughが生産するイントロン(登録商標)A(IFN−α2b、SGP)などの以前の臨床で承認されたα−インターフェロンと比較して、組換型ヒトIFN−conは副作用がより低いことを示した。1997年末までに、FDAは、C型肝炎の臨床治療のためのヒトIFN−conの使用を認可し、Amgenによって生産され、商品名INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファcon−1)で販売された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(その全体がこの出願に引用として援用される)米国特許第7,364,724号および中国特許公開第CN1740197号Aの両者とも、向上した効能、より少ない副作用を有し、かつ高用量で用いることができる組換型インターフェロン(以下「rSIFN−co」と称する)を開示した。当該組換型インターフェロンはINFERGEN(登録商標)と同じアミノ酸配列を有するが、空間的構造および生物学的効能が異なる。さらに、以上で言及した中国特許公開第CN1740197号Aは、当該組換型インターフェロンの結晶形態およびその結晶化方法も開示した。しかしながら、結晶の質は劣っており、内部構造は緩く、X線回折分解能は5Åと低く、このためにそれらは、タンパク質の空間的構造のさらなる分析から有用な構造情報を得るには適していなかった。変更された構造および高いX線回折分解能での機能を有する当該組換型インターフェロンの良質の結晶を得て、当該組換型インターフェロンの三次元構造を判断し、そのモデルを確立し、当該構造およびモデルを利用して薬剤設計を行ないかつ公知のインターフェロンの効能を改良することが大変重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、米国特許第7364724号および中国特許公開第CN1740197号Aが開示する組換型インターフェロンの結晶に関し、この組換型インターフェロンは配列番号1というアミノ酸配列を含む。さらに、この発明は、この組換型インターフェロンの結晶化方法と当該結晶を含有する組成物とを提供する。さらに、この発明は、当該技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造およびコンピュータモデリングに基づくAmgen(アメリカ合衆国)からのINFERGEN(登録商標)の三次元構造とは異なる、この組換型インターフェロンの三次元構造を提供する。当該インターフェロンと相互作用する候補化合物を同定し、当該インターフェロンのミメティックを設計し、かつコンピュータに基づいて合理的な薬剤設計を行なうための当該三次元構造の使用も提供される。またさらに、この発明は、当該組換型インターフェロンのミメティックと、当該ミメティックを含有する組成物と、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための医薬の調製のための当該結晶、ミメティック、または組成物の使用とを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】結晶構造分析で用いられる、本発明の組換型インターフェロン(rSIFN−co)の単結晶を示す図である。
【図2】rSIFN−co結晶のX線回折図(2.6Å分解能)である。
【図3】rSIFN−coの結晶構造内の2Fo−Fcフォーマットの部分的1.0σ電子密度マップを示す図である。
【図4】(a)がA鎖であり、(b)がB鎖である、rSIFN−coのすべての原子についてのアミノ酸残基に沿った平均温度因子の分布マップを示す図である。
【図5】rSIFN−coタンパク質分子構造のモデル中のすべてのアミノ酸残基のラマチャンドランプロット上の(Φ,Ψ)値の分布を示す図である。分解能が少なくとも2.0ÅでR因子が20%以下の118個の構造の分析に基づくと、最も有利な領域において90%超を有する良質のモデルが期待され、統計データが以下のとおりである。
【0008】
【表1】
【図6】rSIFN−coの単位格子充填図である。
【図7】rSIFN−coダイマーのアセンブルされた構造を示す図である。
【図8】rSIFN−co結晶学的ダイマーの組織(図8a、図8b)およびα炭素原子の根平均二乗偏差(RMSD)(ボックスは欠けている残基を表わす)(図8c)を示す図である。
【図9】(主鎖のみを明示する)rSIFN−coの単分子構造であって、(A)は側面図であり、(B)は上面図であり、(C)はトポロジー図であり、(D)は二次的構造のトポロジー組織を示す図である。
【図10】rSIFN−coの二次的構造とそのアミノ酸配列との間の配列整列を示す図である。灰色のボックスは構造中で設定されなかったアミノ酸残基を表わし、青いボックスはAlaまたはGlyとして設定されたアミノ酸残基を表わす。実線は2対のジスルフィド結合を表わし、緑の下付き文字は構造中に構築された1つのジスルフィド結合を表わす。
【図11】rSIFN−coタンパク質および相同性IFNポリペプチドの配列整列を示す図である。
【図12】rSIFN−coおよびIFN−α2bの三次元構造の比較図である。
【図13】rSIFN−co(赤)とIFN−α2b(黄色)とをスーパーインポーズした画像の図である。
【図14】rSIFN−coの三次元構造とAmgen(アメリカ合衆国)からのINFERGEN(登録商標)のコンピュータモデルとの間の比較に基づく差を示す図である。
【図15】(a)はタンパク質IFN−αおよびその受容体の組合せモデルを示し、(b)はタンパク質IFN−αの機能ドメイン(重要な機能ドメインを青のリングで図示)の図である。
【図16】9μgのrSIFN−coおよび9μgのINFERGEN (登録商標)を18人の被験者に皮下注射した後の血中平均酵素濃度−時間の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、本発明を実践するために当業者を支援するために与える発明の詳細な説明である。
【0010】
組換型インターフェロン(rSIFN−co)
この発明で結晶化された精製組換型インターフェロンは、米国特許第7364724号の明細書の実施例1および2、ならびに/または中国特許公開第CN1740197号Aの明細書の11〜17ページに開示される方法から得られる。この組換型インターフェロンの特徴付けは米国特許第7364724号および/または中国特許公開第CN1740197号Aに開示されている。1つの実施形態で、本組換型インターフェロンのアミノ酸配列およびこれをエンコードするヌクレオチド配列を以下に示す。
【0011】
【化1】
【0012】
さらに、190〜250nmおよび250〜320nmの範囲の本組換型インターフェロンの円偏光二色性スペクトル(CD)は、同じ条件で測定すると、INFERGEN(登録商標)の対応のCDとは大きく異なっている(中国特許公開第CN1740197号Aの3ページの第22−25行目、実施例3、および図6A〜図6Dを参照)。
【0013】
さらに、本組換型インターフェロンの三次元構造は、当該技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造(図12を参照)およびコンピュータモデリング(KORN, AP et al., Journal of Interferon Research 1994, 14: 1-9を参照)に基づくINFERGEN(登録商標)の三次元構造とも異なっている。これら2つのABループ同士の間には明らかな相違があり、それらのBCループも完全に重なることができない(図14を参照)。
【0014】
さらに、そのBMIが18〜23の範囲にわたった被験者への本組換型インターフェロンの筋肉内注射の後、血液サンプル収集の時間を、被験者の血清中の(2’,5’−OASとも称される)2−5Aオリゴヌクレオチダーゼの濃度に対してプロットした。グラフは一般的にピークが2つあるパターンを示し、このグラフの曲線下の結果的に生じる面積は、同じ条件下での注射後のINFERGEN(登録商標)の面積よりも著しく大きい。この組換型インターフェロンの半減期は、体内に注射した後のINFERGEN(登録商標)の半減期よりも長い。
【0015】
実験結果は、本組換型インターフェロンが(INFERGEN(登録商標)を含む)現在臨床で用いられているいずれのインターフェロンよりも有効であることも確認した。たとえば、HBVについては、この発明からの組換型インターフェロンは、HBVのDNA複製を阻害するだけでなく、B型肝炎表面抗原(HBsAg)およびB型肝炎e抗原(HBeAg)の両者の分泌も阻害することができる。このインターフェロンによるB型肝炎コア抗原(HBcAg)のDNA複製を阻害する効率は、INFERGEN(登録商標)の約2倍である。本組換型インターフェロンのインビトロ薬力学は、これがHBVのDNA複製を阻害するだけでなく、B型肝炎表面抗原およびB型肝炎e抗原の両者の分泌を阻害することができることを示している。本組換型インターフェロンの細胞毒性は、現在臨床で用いられているインターフェロンの1/8でしかないが、その抗ウイルス活性は5〜20倍である。一方で、本組換型インターフェロンの生物学的応答は、人体中でより有効であり、よりスペクトルが広く、かつより持続性がある。
【0016】
さらに、ウイルス性疾患の防止または腫瘍の治療については、本組換型インターフェロンは(INFERGEN(登録商標)を含む)いずれの他のインターフェロンと比べてもより高い抗ウイルス活性およびより少ない副作用を示す。たとえば、この組換型インターフェロンは、現在臨床で用いられているインターフェロンの20倍の抗ウイルス活性だけでなく、(INFERGEN(登録商標)を含む)組換型ヒトインターフェロンαと比べて、より有効な抗腫瘍(乳癌および子宮頸癌など)機能を有する。このことは、有害副作用が大きく低減したことをも示し、大量投与(各用量>1000万IU)で安全に用いることができ、インターフェロンの大量投与を必要とするウイルス性疾患または腫瘍を治療できるようになる。
【0017】
このように、本組換型インターフェロンは、INFERGEN(登録商標)と比べて、異なる空間的構成、向上した生物学的活性、および異なる薬剤動態学特性を有する。
【0018】
本明細書中で用いられるように、「空間的構成」、「空間的構造」、「三次元構造」、および「三次元構成」という用語は相互交換して用いることができる。
【0019】
したがって、1つの実施形態では、本組換型インターフェロンは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる。さらに、本組換型インターフェロンは、配列番号1のアミノ酸配列を有し、配列番号2のヌクレオチド配列によってエンコードされる。配列番号1のアミノ酸配列、すなわち本組換型インターフェロンと同じアミノ酸配列を有するが、配列番号2というヌクレオチド配列でエンコードされていないINFERGEN(登録商標)などのインターフェロンと比べて、本組換型インターフェロンは、異なる空間的構成および/または向上した生物学的活性および/または異なる薬剤動態学特性を有する。たとえば、本組換型インターフェロンは、異なる空間的構成および向上した生物学的活性、異なる空間的構成および異なる薬剤動態学特性、または向上した生物学的活性および異なる薬剤動態学特性を有する。さらに、当該異なる空間的構成は以下を含む。同じ条件下で測定すると、本組換型インターフェロンの190〜250nmおよび/または250〜320nmの円偏光二色性スペクトル(CD)は、INFERGEN(登録商標)の対応のCDとは大きく異なっている。向上した生物学的活性は、向上した抗ウイルス活性、向上した抗腫瘍活性、より少ない副作用を含み、および/または大量投与(たとえば、各用量>1000万IU)で用いることができる。たとえば、当該向上した生物学的活性は、向上した抗ウイルス活性および向上した抗腫瘍活性などであり得る。さらに、当該腫瘍は乳癌および子宮頸癌であり得る。異なる薬剤動態学特性は以下を含む。そのBMIが18〜23の範囲にわたった被験者における組換型インターフェロンの筋肉内注射の後、被験者の血清中の2−5Aオリゴヌクレオチダーゼの濃度に対して血液サンプル収集時間をプロットすると、同じ条件下での注射後、INFERGEN(登録商標)よりも、このグラフの曲線下の結果的に得られる面積ははるかに大きく、および/または体内でのこの組換型インターフェロンの半減期はより長い。
【0020】
別の実施形態では、本組換型インターフェロンは、単離された宿主細胞中に組換型インターフェロンをエンコードする配列番号2を含むヌクレオチド配列を導入するステップと、組換型インターフェロンの発現のための適切な条件下で宿主細胞を培養するステップと、組換型インターフェロンを採取するステップとを含む方法によって産生することができる。組換型インターフェロンは配列番号1のアミノ酸配列を有し、組換型インターフェロンはB型肝炎ウイルスのB型肝炎表面抗原(HBsAg)およびB型肝炎e抗原(HBeAg)の分泌を阻害する。さらに、当該宿主細胞は、大腸菌LGM194などの大腸菌である。さらに、配列番号2を含むヌクレオチド配列は、プロモータPBADの制御下にある。さらに、採取するステップは、発酵ブイヨンからのインターフェロンの抽出、封入体の収集、採取されたインターフェロンの変性および再生を含む。またさらに、採取するステップは、組換型インターフェロンの分離および精製も含む(米国特許第7364724号の請求項を参照)。
【0021】
結晶性組換型インターフェロンおよびその結晶化方法
結晶性組換型インターフェロン
この発明は結晶性組換型インターフェロンを提供する。
【0022】
1つの実施形態では、この発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む結晶性組換型インターフェロンを提供する。さらに、この結晶は三方晶系に属する。1つの実施形態では、この結晶の空間群はP3121である。いくつかの実施形態では、この結晶の単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータにおいて変動性は5%以下である。いくつかの実施形態では、当該結晶は1つの非対称単位中に2つの分子を含有する。いくつかの実施形態では、当該結晶は共有結合または非共有した結合金属イオンを含む。さらに、当該金属イオンはマグネシウムイオン、亜鉛イオンなどであり得、これらの金属イオンは結晶中のインターフェロンダイマーの形成を媒介することができる。いくつかの実施形態では、当該組換型インターフェロンは配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる。
【0023】
またさらなる実施形態では、この発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む結晶性組換型インターフェロン、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有する組換型インターフェロンであって、この結晶の空間群は1つの非対称単位中に2つの分子を有するP3121であり、単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータ中での変動性は5%以下である、組換型インターフェロンを提供する。さらに、そのような組換型インターフェロンは配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされ、好ましくは配列番号2のヌクレオチド配列によってエンコードされる。
【0024】
結晶化方法
この発明は、本結晶性組換型インターフェロンを調製する、または培養するための方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態では、この発明は、組換型インターフェロンを約3〜3.5mg/mlに濃縮するステップと、Li2SO4、CAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、およびMgCl2を含有する結晶化溶液中に適切な時間これを放置して結晶を得るステップとを含む、本結晶性組換型インターフェロンを調製する、または培養するための方法を提供する。さらに、結晶を成長させるための当該方法は、293Kなどの室温で行なう。いくつかの実施形態では、この結晶は、懸滴法または座滴法、好ましくは(懸滴蒸気拡散法とも称される)懸滴法によって成長させることができる。いくつかの実施形態では、当該結晶化溶液は、約1.0〜約1.5MのLi2SO4、約0.05〜約0.15MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、および約0.01〜約0.03MのMgCl2を含有する。いくつかの実施形態では、結晶化溶液のpH値は、約10.5〜約12.0の範囲内、好ましくは約11.1である。いくつかの実施形態では、当該結晶化溶液は、1.2MのLi2SO4、0.1MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、pH11.1の0.02MのMgCl2を含有する。いくつかの実施形態では、結晶を成長させるための方法は、当該組換型インターフェロンを含有する結晶化溶液を約1日から約2週間、好ましくは約2日から約10日、より好ましくは3日から1週間など約3日から約1週間の間、放置することを含む。
【0026】
X線結晶学的分析
本明細書中に開示するインターフェロンの構成アミノ酸の各々は、(「原子座標」としても公知の)1組の構造座標によって規定される。「構造座標」という用語は、結晶性形態の本インターフェロンの原子(散乱中心)によるX線の単色ビームの回折によって得られるパターンに関する数式から導出されるデカルト座標を指す。回折データを用いて、結晶の繰返し単位の電子密度マップを算出する。次に電子密度マップを用いて、インターフェロンタンパク質またはタンパク質/リガンド複合体の個々の原子の位置を確立する。
【0027】
インターフェロンまたはインターフェロン/リガンド構造座標を数学的に操作することによって構造座標のわずかな変化を発生させることができる。たとえば、本明細書中に開示する構造座標は、結晶学的置換、分割、1組全体の付加または削除、反転、または上記の任意の組合せによって操作可能である。これに代えて、アミノ酸の突然変異、付加、置換、および/もしくは欠失、または結晶を構成する成分のうちいずれかの他の変化による結晶構造の変更も、構造座標の変化を生じさせる可能性がある。個々の座標のそのようなわずかな変化は構成全体に対してはほとんど影響しない。元の座標と比べてそのような変化が許容可能な標準誤差範囲内であれば、結果として得られる三次元形状は構造的に均等と考えられる。
【0028】
本発明のインターフェロンの個々の構造座標のわずかな変化は、インターフェロンまたはその部分(たとえばABまたはBCループ)と会合し得るリガンドなどの実体の性質を大きく変えることが予期されないことに留意すべきである。本明細書中で用いるような、本組換型インターフェロンの「ABループ」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する本組換型インターフェロンのアミノ酸残基25−33を意味する。すなわち、ABループは、配列番号4に示すようなアミノ酸配列SPFSCLKDRを有し、本組換型インターフェロンの「BCループ」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する本組換型インターフェロンのアミノ酸残基44〜52を意味する。すなわち、BCループは、配列番号5に示すようなアミノ酸配列DGNQFQKAQを有する。この文脈で、「と会合する」という文言は、リガンドまたはその部分とインターフェロン分子またはその部分との間の近接の状態を指す。会合は非共有であってもよく、この場合、水素結合、ファンデルワールス力、または静電相互作用によって近接して配置することがエネルギ的に有利であり、または会合は共有であってもよい。このように、たとえば、インターフェロンの結合ポケットまたは領域に結合するリガンドは、構造的に均等な結合ポケットもしくは領域に結合するか、またはこれと相互作用することも予期されるであろう。
【0029】
この発明では、本明細書中に記載の関連の主鎖原子上にスーパーインポーズされると、約0.65Å未満の保存された残基主鎖原子(たとえばN、Cα、C、O、好ましくはCα)の根平均二乗偏差を有する任意の分子もしくは分子複合体または任意のその部分が「構造的に均等」と考えられる。すなわち、2つの分子のそれらの部分の結晶構造は、許容される誤差の範囲内で実質的に同一である。特に好ましい構造的に均等な分子または分子複合体は、本明細書中に開示する構造座標の全組±約0.65Å未満のそれらのアミノ酸の保存された主鎖原子からの根平均二乗偏差によって規定されるものである。より好ましくは、根平均二乗偏差は約0.5Å以下であり、さらにより好ましくは約0.35Å以下である。この発明の他の実施形態は、本明細書中に開示するABまたはBCループについての構造座標±約0.65Å未満、好ましくは約0.5Å以下、およびより好ましくは約0.35Å以下の根平均二乗偏差によって規定される分子複合体を含む。
【0030】
「根平均二乗偏差」という用語は、偏差の二乗の算術平均の平方根を意味する。これは、傾向または対象からの偏差またはばらつきを表現する手法である。1つの実施形態では、「根平均二乗偏差」は、本明細書中に記載の構造座標が規定するような、インターフェロンまたはその部分のバックボーンからのタンパク質のバックボーンにおけるばらつきを規定する。
【0031】
X線構造座標は、空間中の点の一意な構成を規定する。当業者ならば、タンパク質もしくはタンパク質/リガンド複合体、またはその部分についての1組の構造座標が、三次元の構成を同様に規定する点の相対的な組を規定することを理解するであろう。同様のまたは同一の構成は、座標間の距離および角度が本質的に同じままであれば、全く異なる組の座標によって規定可能である。さらに、点の縮尺変更可能な構成は、角度を本質的に同じに保ちつつスカラ因子によって座標間の距離を増減することによって規定可能である。
【0032】
さまざまなコンピュータ分析を用いて、分子またはその部分が、本明細書中に開示するインターフェロンまたはその一部と、その三次元構造の観点で規定される「構造的に均等」であるか否かを判断することができる。たとえば、異なる構造、同じ構造の異なる立体配座、または同じ構造の異なる部分同士の間の比較をさまざまなコンピュータ分析によって行なうことができる。1つの実施形態では、そのような分析を、(1)比較すべき構造をロードする、(2)これらの構造中の原子等価性を規定する、(3)フィッティング演算を行なう、および(4)結果を分析するという4つのステップに分けることができる。
【0033】
組換型インターフェロン(rSIFN−co)の三次元構造
この発明は、本組換型インターフェロンの三次元構造を提供する。
【0034】
この三次元構造は、特にABおよびBCループにおいて、技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造(図12を参照)およびアメリカ合衆国のAmgenのINFERGEN(登録商標)のコンピュータモデル(図14を参照)の構造とは異なっている。
【0035】
1つの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造は、表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標であって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくはまたは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子、好ましくは(「α炭素原子」とも称される)Cα、からの根平均二乗偏差の変動性を有する、原子座標を含む。
【0036】
1つの実施形態では、組換型インターフェロンの上述の三次元構造において、当該組換型インターフェロンの各モノマーは、αヘリックスの6つのセグメント、310ヘリックスのセグメント、およびそれらの間の接続ペプチドから構成される。αヘリックスの当該6つのセグメントの対応のアミノ酸残基の場所は、13〜20、50〜68、70〜76、79〜100、114〜133、および138〜160であり、310ヘリックスの当該セグメントの対応のアミノ酸残基の場所は40〜43である。モノマー構造の折畳みは以下の特性を有する螺旋状のサイトカイン型に属する。当該組換型インターフェロンのCαバックボーンとIFN−α2bタンパク質のCαバックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後、当該組換型インターフェロンの25〜33の残基(ABループ)中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である。
【0037】
好ましくは、当該組換型インターフェロンの残基25でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の場所根平均二乗偏差は3.291ű5%であり、残基26でのCαの場所根平均二乗偏差は4.779ű5%であり、残基27でのCαの場所根平均二乗偏差は5.090ű5%であり、28の残基におけるCαの場所根平均二乗偏差は3.588ű5%であり、残基29でのCαの場所根平均二乗偏差は2.567ű5%であり、残基30でのCαの場所根平均二乗偏差は2.437ű5%であり、残基31でのCαの場所根平均二乗偏差は3.526ű5%であり、残基32でのCαの場所根平均二乗偏差は4.820ű5%であり、かつ残基33でのCαの場所根平均二乗偏差は2.756ű5%である。
【0038】
より好ましくは、当該組換型インターフェロンの残基44〜52(BCループ)でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である。当該組換型インターフェロンおよびIFN−α2bタンパク質の両者の残基44でのCαの場所根平均二乗偏差は1.614ű5%であり、残基45でのCαの場所根平均二乗偏差は1.383ű5%であり、残基46でのCαの場所根平均二乗偏差は2.735ű5%であり、残基47でのCαの場所根平均二乗偏差は2.709ű5%であり、残基48でのCαの場所根平均二乗偏差は5.018ű5%であり、残基49でのCαの場所根平均二乗偏差は4.140ű5%であり、残基50でのCαの場所根平均二乗偏差は3.809ű5%であり、残基51でのCαの場所根平均二乗偏差は2.970ű5%であり、かつ残基52でのCαの場所根平均二乗偏差は0.881ű5%である。以上列挙した「場所根平均二乗偏差」はすべて座標位置の根平均二乗偏差である。
【0039】
別の局面では、この発明は、表7のアミノ酸残基25〜33および/または45〜52からの1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含有する、本組換型インターフェロンの三次元構造の選択された部分を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の「1つ以上のアミノ酸残基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、「当該三次元構造の選択された部分」は、表7のアミノ酸残基25〜33および/または44〜52の原子座標を含有する。いくつかの実施形態では、「三次元構造の選択された部分」は、表7中の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100のアミノ酸残基の原子座標を含有する。いくつかの実施形態では、当該原子座標は、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する。
【0040】
別の局面では、この発明は、本組換型インターフェロンの三次元構造を含むタンパク質空間的構造モデルを提供する。1つの実施形態では、当該タンパク質空間的構造モデルは、電子密度マップ、ワイヤフレームモデル、チキンワイヤモデル、空間充填モデル、棒モデル、リボンモデル、および分子表面モデルなどであり得る。
【0041】
また別の局面では、本発明は、点の縮尺変更可能な三次元構成であって、当該点の少なくとも部分は、本明細書中に開示する構造座標から、または本組換型インターフェロンのABループもしくはBCループを含むペプチドから導出される、三次元構成を提供する。1つの実施形態では、点の縮尺変更可能な三次元構成は、ホログラフィ画像、立体図、モデル、またはコンピュータ表示画像として表示される。
【0042】
三次元構造の適用
組換型インターフェロンと相互作用し得る候補物質のスクリーニング/設計
1つの局面では、この発明は、本組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物をスクリーニングする/設計するための方法を提供する。さらに、当該方法は、本組換型インターフェロンの三次元構造を利用する。またさらに、当該方法はコンピュータに基づいている。1つの実施形態では、この発明は、組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するためのコンピュータベースの方法であって、(a)表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップと、(b)当該三次元構造またはその選択された部分と相互作用することができる構造的特徴を含む候補化合物を選択して、これにより当該組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、当該構造的特徴は、抗原部位、親水性、表面アクセス可能性、および構造的モチーフからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ステップ(b)での候補化合物の選択および同定は、(i)複数の候補化合物について三次元構造を生成するステップと、(ii)ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(i)の三次元構造の各々をフィッティングして最もエネルギ的に有利な相互作用を見出し、これにより組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するステップとを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、(c)候補化合物を得る、または合成するステップと、(d)当該組換型インターフェロンと候補化合物とを接触させて、候補化合物が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む。さらに、候補化合物が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップは、候補化合物と接触した際に当該組換型インターフェロンの活性を測定するステップをさらに備えてもよい。測定すべきインターフェロンの活性は、たとえば、抗ウイルス活性、抗腫瘍活性、増殖阻止活性、ナチュラルキラー細胞活性、および免疫調節活性を含む。いくつかの実施形態では、当該候補化合物は、当該組換型インターフェロンまたはその選択された部分に結合するリガンドである。たとえば、当該リガンドは、受容体、調節剤、アゴニスト、およびアンタゴニストからなる群から選択され、当該受容体は、IFNAR1、IFNAR2、またはそれらの複合体であり得、当該選択された部分は、当該組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33(ABループ)および/または45〜52(BCループ)からの1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらに、当該選択された部分は、当該組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または44〜52を含む。
【0043】
別の局面では、本発明は、本組換型インターフェロンに結合する潜在的リガンドを判断するための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、潜在的なリガンドを含む1つ以上のサンプルに本明細書中に開示する結晶を暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含む。
【0044】
別の局面では、本発明は、構造的情報を取得して、インターフェロンとともに分子複合体を形成することができる潜在的リガンドを設計するための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、潜在的なリガンドを含む1つ以上のサンプルに、本明細書中に開示する結晶を暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含む。
【0045】
別の局面では、本発明は、インターフェロン活性の潜在的調節剤を判断する、設計する、または作製するためのコンピュータ支援方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、化学的または生物学的実体のライブラリをスクリーニングするステップを含む。
【0046】
当業者は結晶学を利用して、インターフェロンのリガンドとなり得る化学的または生物学的実体をスクリーニングおよび同定することができる(たとえば、米国特許第6,297,021号を参照)。たとえば、好ましい方法は、未配位の(unliganded)インターフェロンの結晶を得るステップと、未配位のインターフェロンを、インターフェロンの潜在的リガンドを含有する1つ以上のテストサンプルに暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含んでもよい。インターフェロンは、インターフェロン結晶を1つ以上の潜在的なリガンドの溶液に浸すステップまたは1つ以上の潜在的リガンドが存在する中でインターフェロンを共結晶化するステップを含むが、これらに限定されないさまざまな方法によって潜在的リガンドに暴露されてもよい。
【0047】
当該リガンド−インターフェロン複合体からの構造的情報は好ましくは、より密接に結合し、およびより具体的には、所望の特別な生物学的活性を有し、公知のリガンドよりもより良好な安全プロファイルまたはその組合せを有する新たなリガンドを設計するのに用いてもよい。たとえば、算出された電子密度マップは結合イベントを直接に明らかにし、結合した化学的または生物学的実体を同定し、リガンド−インターフェロン複合体の詳細な三次元構造を提供する。一旦ヒットが見つかると、そのヒットの一連の類似体または誘導体を、伝統的なスクリーニング法によってより密接な結合または所望の生物学的活性についてスクリーニングしてもよい。オプションで、リガンド−インターフェロン複合体を付加的な潜在的リガンドに繰返し暴露してもよく、これにより2つ以上のヒットを好ましくはともに結合させてより強力なリガンドを同定または設計してもよい。
【0048】
構造的に相同の分子を得るステップ/インターフェロンミメティックを設計するステップ
本明細書中に開示する構造座標を用いて別の結晶化分子または分子複合体についての構造的情報を得るのを支援することができる。この発明の方法は、本明細書中に開示するインターフェロンの構造的特徴と同様の1つ以上の構造的特徴を含有する分子または分子複合体の三次元構造の少なくとも部分の判断を可能にする。これらの分子は本明細書中では「構造的に相同」と称される。同様の構造的特徴は、たとえば、アミノ酸同一性の領域、保存された活性部位または結合部位モチーフ、および同様に配置された二次的構造要素(たとえばαヘリックスおよびβシート)を含み得る。別の実施形態では、構造的相同性は、2つのアミノ酸配列の残基を整列させてその配列の長さに沿って同一のアミノ酸の数を最適化することによって判断される。いずれかまたは両方の配列における隙間は、同一のアミノ酸の数を最適化するために整列を行なう際には許される。しかしながら、各々の配列中のアミノ酸はそれらの適切な順に留まっていなければならない。好ましくは、構造的に相同の分子は、配列番号1と少なくとも65%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するタンパク質である。より好ましくは、本発明のインターフェロンと構造的に相同のタンパク質は、配列番号1の類似部分と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を共有する、少なくとも50個のアミノ酸の連続(contiguous stretch)を含む。構造的に相同の分子または分子複合体についての構造的情報を生成するための方法は当該技術分野で周知である。
【0049】
本明細書中に開示する構造座標は、関連のインターフェロン、インターフェロン変異体、またはさまざまなリガンドと複合体を形成するインターフェロン相同体の結晶学的構造を解明するためにも有用である。この方策は、リガンドとインターフェロンとの間、たとえば候補インターフェロン調節剤とインターフェロンとの間の相互作用についての最適な部位の判断を可能にする。分子のさまざまな結合部位内での変更のための潜在的部位も同定することができる。この情報は、最も効率的な結合相互作用、たとえばインターフェロンとリガンドとの間の増大した疎水性相互作用、を判断するための付加的なツールを提供する。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、組換型インターフェロンのミメティックを設計するためのコンピュータベースの方法であって、(a)複数のミメティックについて三次元構造を生成するステップと、(b)表7に示すような組換型インターフェロンまたはその選択された部分の原子座標を含む三次元構造に対してステップ(a)の三次元構造の各々をフィッティングして当該組換型インターフェロンの最もフィットするミメティックを見出すステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップとを含む、方法をも提供する。
【0051】
合理的薬剤設計
コンピュータ技術を用いて、インターフェロンまたは構造的に相同の分子と会合することができる化学的実体またはリガンドをスクリーニングし、同定し、選択し、および/または設計することができる。本明細書中に開示するインターフェロンの構造座標を知っていると、本明細書中に開示するインターフェロンの配座と相補の形状を有する合成化合物および/または他の分子の設計および/または同定が可能になる。特に、コンピュータ技術を用いて、インターフェロンまたはその部分(たとえばABまたはBCループ)と会合する受容体、調節剤、アゴニスト、およびアンタゴニストなどの化学的実体またはリガンドを同定または設計することができる。潜在的調節剤は、インターフェロンの活性部位のすべてまたは部分と結合し、またはこれに干渉し得るとともに、それらは拮抗、非拮抗、または不拮抗インヒビターであり得るか、または2つのモノマーの間の界面での結合によるダイマー化に干渉し得る。生物学的活性について一旦同定されるか、またはスクリーニングされると、これらのインヒビター/アゴニスト/アンタゴニストを治療にまたは予防に用いて、インターフェロン活性をブロックまたは向上させてもよい。インターフェロンに結合する、またはこれに干渉するリガンドの類似体についての構造−活性データもコンピュータで得ることができる。
【0052】
本明細書中で用いるような「化学的実体」という用語は、化合物、2つ以上の化合物の複合体、およびそのような化合物または複合体のフラグメントを指す。本発明のインターフェロンと会合すると判断される化学的実体は潜在的な薬剤候補である。このように、本インターフェロン、または本明細書中で同定されるような構造的に相同の分子、またはその部分の構造のグラフィック三次元表現を薬剤の発見に有利に用いてもよい。化学的実体の構造座標を用いて、当該技術分野で利用可能な多数の計算方法および技術の1つによってインターフェロンまたは構造的に相同の分子の三次元画像にコンピュータでフィッティングすることができる三次元画像を生成する。
【0053】
薬剤設計の方法の1つの実施形態は、インターフェロンまたは構造的に相同の分子との、公知の化学的実体またはリガンドの潜在的な会合を評価することに係る。このように、薬剤設計の方法は、選択された化学的実体またはリガンドの、本明細書中に述べる分子または分子複合体のうちいずれかと会合する潜在能力をコンピュータで評価するステップを含む。別の実施形態では、薬剤設計の方法は、本インターフェロン、その相同体、またはその部分と会合する化学的実体またはリガンドのコンピュータ支援設計に係る。化学的実体またはリガンドは、一度に1つのフラグメントで段階的な態様で設計可能であるか、または全体としてもしくは「新たに」設計されてもよい。
【0054】
このように、1つの実施形態では、本発明は、合理的薬剤設計のコンピュータベースの方法であって、(a)表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、b)複数の分子フラグメントを設けてその三次元構造を生成するステップと、(c)ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(b)の三次元構造の各々をフィッティングするステップと、(d)選択された分子フラグメントを分子にアセンブルして候補薬剤を形成するステップとを含む、方法を提供する。1つの実施形態では、当該方法は、(e)候補薬剤を得るまたは合成するステップと、(f)当該組換型インターフェロンと候補薬剤とを接触させて、候補薬剤が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含んでもよい。
【0055】
この発明のいくつかの実施形態では、当該三次元構造の選択された部分は、表7のアミノ酸残基25〜33(配列番号4に示すようなアミノ酸配列)および/または45〜52(配列番号5に示すようなアミノ酸配列)からの1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含む。さらに、当該三次元構造の選択された部分は、表7中のアミノ酸残基25〜33(配列番号4に示すようなアミノ酸配列)および/または45〜52(配列番号5に示すようなアミノ酸配列)の原子座標を備え、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する。
【0056】
相同性モデリング
1つの局面では、相同性モデリングを用いて、相同体を結晶化させずにインターフェロン相同体のコンピュータモデルを構築または洗練することができる。まず、配列整列、二次的構造予測、構造的ライブラリのスクリーニング、またはこれらの技術の任意の組合せによってインターフェロン相同体の予備モデルを作成する。コンピュータソフトウェアを用いて配列整列および二次的構造予測を実行してもよい。たとえば挿入物および削除物の周りの構造的フラグメントなどの構造的矛盾は、所望の長さおよび好適な配座のペプチドについて構造的ライブラリをスクリーニングすることによってモデリング可能である。インターフェロン相同体が結晶化されれば、最終的な相同体モデルを用いて、当該技術分野で公知の技術によって相同体の結晶構造を解明することができる。次に予備モデルにエネルギ最小化を施してエネルギ最小化モデルを生じる。エネルギ最小化モデルは、立体化学的制約に違反する領域を含有し得る。そのような場合、これらの領域を再モデリングして、当該技術分野で公知の多数の技術のうち1つを用いて最終的な相同体モデルを得る。
【0057】
別の局面では、本発明は、未知の構造の分子または分子複合体についての構造的情報を得るための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、分子または分子複合体を結晶化するステップと、結晶化された分子または分子複合体からX線回折パターンを生成するステップと、本明細書中に開示するインターフェロンの構造座標の少なくとも部分にX線回折パターンを適用して未知の構造の当該分子または分子複合体の少なくとも部分の三次元電子密度マップを生成するステップとを含む。
【0058】
別の局面では、本発明は、インターフェロン相同体をモデリングするための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、本インターフェロンのアミノ酸配列と、推定上のインターフェロン相同体のアミノ酸配列とを整列させるステップと、本明細書中に開示する構造座標から形成されるインターフェロンのモデルに推定上の相同体の配列を組入れてインターフェロン相同体の予備モデルを得るステップと、予備モデルにエネルギ最小化を施してエネルギ最小化モデルを得るステップと、立体化学的制約に違反しているエネルギ最小化モデルの領域を再モデリングしてインターフェロン相同体の最終モデルを得るステップとを含む。
【0059】
インターフェロンミメティック
本発明はインターフェロンミメティックを提供する。
【0060】
1つの局面では、本発明は、本発明に開示するような配列を含むペプチド、または誘導体、活性部分、類似体、改変体もしくはミメティック、およびその使用を提供する。このように、1つの実施形態では、本発明は、配列番号4および/または配列番号5に示すようなアミノ酸配列を含むインターフェロンのミメティックを提供する。1つの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCαバックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後は、当該組換型インターフェロンの残基25〜33でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である。いくつかの実施形態では、IFN−α2bの対応の残基と比べて、当該組換型インターフェロンの残基25−33のα炭素の偏差は、それぞれ、3.291ű5%、4.779ű5%、5.090ű5%、3.588ű5%、2.567ű5%、2.437ű5%、3.526ű5%、4.820ű5%、および2.756ű5%である。いくつかの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後は、当該組換型インターフェロンの残基44〜52でのCαとIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαとの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である。いくつかの実施形態では、IFN−α2bの対応する残基と比べて、当該組換型インターフェロンの残基44〜52のα炭素の偏差は、それぞれ、1.614ű5%、1.383ű5%、2.735ű5%、2.709ű5%、5.018ű5%、4.140ű5%、3.809ű5%、2.970ű5%、および0.881ű5%である。いくつかの実施形態では、ミメティックは機能的ミメティックまたは構造的ミメティックである。いくつかの実施形態では、ミメティックは本組換型インターフェロン(rSIFN−co)のミメティックである。さらに、ミメティックはINFERGEN(登録商標)を含まない。いくつかの実施形態では、当該インターフェロンミメティックの三次元構造は、本組換型インターフェロン(rSIFN−co)と同様である。特に、両者の三次元構造はABおよびBCループにおいて同じであるか、または本質的に同じであり得る。さらに、当該インターフェロンミメティックの三次元構造は表7のアミノ酸残基25〜33(ABループ)および/または44〜52(BCループ)の原子座標であって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子、好ましくはCαからの根平均二乗偏差の変動性を有する、原子座標を含む。
【0061】
本発明は、当該技術分野で理解されるように、個々のアミノ酸を他の密接に関連するアミノ酸によって置き換えることができる改変ペプチドを含む。たとえば、個々のアミノ酸を以下のように置き換えてもよい。任意の疎水性脂肪族アミノ酸を任意の他の疎水性脂肪族アミノ酸によって置き換えてもよく、任意の疎水性芳香族アミノ酸を任意の他の疎水性芳香族アミノ酸によって置き換えてもよく、極性側鎖を有する任意の中性アミノ酸を極性側鎖を有する任意の他の中性アミノ酸によって置き換えてもよく、酸性アミノ酸を任意の他の酸性アミノ酸によって置き換えてもよく、塩基性アミノ酸を任意の他の塩基性アミノ酸によって置き換えてもよい。本明細書で用いるように、「ミメティック」、「機能的/構造的ミメティック」は、本明細書中に開示するポリペプチドと同じ機能的/構造的活性を有するペプチド改変体または有機化合物に関する。そのようなミメティックまたは類似体の例は、本明細書中に開示するインターフェロンの三次元構造(三次元構造は表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む)に似せるようにモデリングされる化学的化合物またはペプチド、特にアミノ酸残基の上記配置を有する化合物およびペプチドを含む。このように、本明細書中で用いるような「本組換型インターフェロンのミメティック」は、本組換型インターフェロン(rSIFN−co)と同じ機能/構造活性を有するペプチド改変体または有機化合物、特に本組換型インターフェロンと同じABループおよび/またはBCループ空間的構造を有するものを指しているが、本組換型インターフェロンではない。「ミメティック」がペプチド改変体である場合、そのアミノ酸配列の長さは一般的に、本組換型インターフェロンと同様である。たとえば、ミメティックの当該アミノ酸配列は、約120〜200個のアミノ酸残基、好ましくは約140〜180個のアミノ酸残基、より好ましくは約150〜175個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは約160〜170個のアミノ酸残基、たとえば、約164、165、166、または167個のアミノ酸残基を含むことができる。これに代えて、そのような「ミメティック」は、本組換型インターフェロンよりも短いアミノ酸配列を有するが、ABループおよび/またはBCループを含むペプチド改変体であり得る。たとえば、これは、約10〜100個のアミノ酸残基、好ましくは約15〜80個のアミノ酸残基を含むことができる。
【0062】
好適なミメティックまたは類似体は、当該技術分野で一般的に公知のモデリング技術によって生成可能である。これは、機能的相互作用の研究に係る「ミメティック」の設計およびそのような相互作用を再生できるような態様で配置された官能基を含有する化合物の設計を含む。
【0063】
公知の薬剤活性を有する化合物のミメティックの設計は、薬剤開発のためのリード化合物に基づく公知の方策である。これは、活性化合物の合成が困難であるか、もしくは高価である場合、または通常の投与方法に好適でない場合に望ましいかもしれない。たとえば、ポリペプチドは経口組成物のための活性剤としてはあまり適していない、というのもそれらは消化管でプロテアーゼによってすぐに分解される傾向があるからである。ミメティック設計、合成、および試験を用いて、目標の性質について多数の分子を無作為にスクリーニングすることを回避してもよい。
【0064】
所与の目標性質を有する化合物/ペプチドからのミメティックの設計において通常取るいくつかのステップが存在する。まず、目標の性質を判断するのに決定的および/または重要である化合物/ペプチドの特定の部分を判断する。ペプチドの場合、これは、ペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変えることによって、たとえば各々の残基を順に置き換えることによって行なうことができる。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基はその「ファーマコフォア」として知られている。
【0065】
ファーマコフォアを一旦同定すると、その構造は、たとえば分光技術、X線回折、およびNMRデータなどのある範囲のソースからのデータを用いて、その物性、たとえば立体化学、結合、サイズおよび/または帯電に応じてモデリング可能である。コンピュータ分析、(原子間結合よりもむしろ、ファーマコフォアの帯電および/または体積をモデリングする)類似度マッピング、および他の技術をこのモデリングプロセスで用いることができる。この方策の変形では、リガンドおよびその結合相手の三次元構造をモデリングする。これは、リガンドおよび/または結合相手が結合上の配座を変更する場合に特に有用であり得、これにより、ミメティックを設計しつつモデルをさらに検討することが可能になる。
【0066】
その後、薬理作用団を真似る化学基をその上に導入可能なテンプレート分子を選択する。テンプレート分子および導入すべき化学基は、リード化合物の生物学的活性を維持する他に、ミメティックが、合成が容易であり、薬学的許容可能性が高く、インビボで分解しないように、好都合に選択可能である。この方策によって見出されるミメティックを次にスクリーニングして、それらが目標の性質を有するか否か、またはどの程度それらが目標の性質を呈するかを見ることができる。次にさらなる最適化または変更を行なって、インビボまたは臨床試験用の1つ以上の最終的なミメティックに到達することができる。
【0067】
別の局面では、本発明は、本明細書中に開示するインターフェロンの少なくとも部分を含む未配位の分子を提供する。たとえば、未配位の分子は、配列番号4または配列番号5(本明細書中に記載のインターフェロンのそれぞれABループおよびBCループの配列)を含んでもよい。さらに、未配位の分子は、配列番号4または配列番号5に示すような配列を有する。
【0068】
組成物および治療適用
本発明は、本組換型インターフェロンの結晶性形態または本組換型インターフェロンのミメティックを含有する組成物を提供する。1つの実施形態では、組成物は医薬組成物である。1つの実施形態では、当該医薬組成物はさらに医薬的に許容可能な担体を含む。
【0069】
個人に投与すべきものが、本発明に従うポリペプチド、抗体、ペプチド、核酸分子、小分子、ミメティック、または他の医薬的に有用な化合物のいずれかに拘らず、好ましい投与量(dosage)は、「予防的に有効な量」または「治療上有効な量」(もっとも予防は治療と考えられ得る)であり、この投与量は、個人にその有利な効果を与えるには十分である。投与の実際の量、頻度、および時間的経過は、治療する疾患の性質および深刻さに依存する。たとえば投与量の決定などの治療の処方は、医師および他の医療従事者の責任の範囲内である。状況に依存して、単独でまたは組合せて医薬組成物を投与してもよい。
【0070】
本発明に従う医薬組成物および本発明とともに用いるための医薬組成物は、活性成分に加えて、医薬的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、または当業者には周知の他の材料を含んでもよい。そのような材料は非毒性であるべきであり、活性成分の効能に妨害してはならない。担体または他の材料の正確な性質は、経口、またはたとえば皮膚、皮下、もしくは静脈内などの注射によってであり得る投与経路に依存する。以上で言及した技術および治療計画の例を、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) 1980に見出すことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、当該医薬組成物は、錠剤、カプセル、経口液体、パッチ、注射剤、スプレー、坐剤、および溶液製剤を含む投与形態で処方可能である。推奨される投与形態は、皮下または静脈内注射などの注射であり、医薬組成物中の担体は、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、充填剤、可溶化剤、緩衝剤、保存料、増粘剤、キレート剤、および他のアジュバントを含む任意の許容可能な薬剤担体であってもよい。
【0072】
この発明の異なる目的に基づくと、「医薬的に許容可能な担体」は標準的な医薬的担体のうち任意のものであってもよい。たとえば、公知の適切な担体は、リン酸緩衝食塩水およびさまざまな湿潤剤を含むが、これらに限定されるものではない。他の担体は、錠剤、顆粒剤、およびカプセルのために用いられる添加剤を含んでもよい。典型的な担体はしばしば、デンプン、乳化剤、糖、セルロース、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸、およびステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムなどのその塩、タルク、植物油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤を含有する。そのような担体は着香料および着色添加剤または他の成分も含んでもよい。これらの担体の組成は公知の方法を用いて処方可能である。
【0073】
さらに、本組換型インターフェロンのミメティックは、本組換型インターフェロンの(上記特定的なABループおよび/またはBCループ空間的構造などの)ABループおよび/またはBCループ構造を有するので、それらは、本組換型インターフェロンと同様のウイルス性疾患および/または腫瘍を治療することができると期待される。
【0074】
したがって、別の局面では、本発明は、ウイルス性疾患および/または腫瘍を治療するための医薬の調製のための、本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含む組成物の使用を提供する。
【0075】
別の局面では、本発明は、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための方法であって、当該方法は、有効な量の、本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含有する組成物を被験者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0076】
別の局面では、本発明は、有効な量の本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含有する組成物を含む、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための医薬組成物も提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、当該ウイルス性疾患は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の型の肝炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、もしくは他の種類のヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、またはヒトT細胞白血病ウイルスII型、またはヒトT細胞白血病ウイルスIII型によって引起されるウイルス感染症を含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、当該腫瘍は癌または固形腫瘍であり、当該腫瘍は、皮膚癌、基底細胞癌および悪性黒色腫、腎細胞腫、肝臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、固形腫瘍、前立腺癌、胃/腹部癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、表在性膀胱癌、血管腫、類表皮癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠間質性腫、白血病、急性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、リンパ腺腫、多発性骨髄腫、赤血球増加症、カポジ肉腫を含んでもよい。
【0079】
本発明のある局面および実施形態を図示する目的のために単に含まれ、この発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を用いてこの発明を詳細に説明する。発明の範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の発明を変更してもよい。
【0080】
本明細書中に引用するすべての刊行物、特許、特許出願は、個々にまたはまとめて、その全体がこの出願に引用により援用される。
【実施例】
【0081】
実施例1
組換型インターフェロンrSIFN−coの産生
この実施例は、組換型インターフェロンrSIFN−co(原液)の調製を記載する。(米国特許第7,364,724号の実施例1および2、ならびに中国特許公開第CN1740197号Aの明細書の11〜17ページを参照)。
【0082】
1.遺伝子クローニング
INFERGEN(登録商標)の公開されたエンコーディングDNA配列および推定されたアミノ酸配列 (Klein ML, et al., Structural characterization of recombinant consensus interferon-alpha. Journal of Chromatography, 1988; 454: 205-215)に基づいて、アミノ酸配列を保存する条件下での大腸菌コドン使用(The Wisconsin Package, by Genetics Computer Group, Inc. Copyright 1992, Medison, Wisconsin, USA)を用いてDNAエンコーディング配列を再設計し、次にrSIFN−coの完全長cDNAを合成した。
【0083】
rSIFN−co cDNA配列合成
rSIFN−co cDNA 5′−末端および3′−末端部分的分子の合成
PCRを用いてrSIFN−co cDNAの5′−末端280bp(フラグメントI)および3′−末端268bp(フラグメントII)部分的分子を直接に合成した。フラグメントIの3′端とフラグメントIIの5′端との間に相補のヌクレオチド配列の41bpの重なりが存在した。
【0084】
(1) オリゴデオキシヌクレオチドフラグメントの化学的合成
【0085】
【化2】
【0086】
(2) PCR
rSIFN−co 5′−末端部分的分子を合成するためのPCR I:テンプレートとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントBを用い、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントAおよびCを用いて、PCRによって長さが280bpのrSIFN−co 5′−末端部分的分子を合成した。
【0087】
【表2】
【0088】
rSIFN−co 3′−末端部分的分子を合成するためのPCR II:テンプレートとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントEを用い、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントDおよびFを用いて、PCRによって長さが268bpのrSIFN−co 3′−末端部分的分子を合成した。
【0089】
【表3】
【0090】
完全長rSIFN−co cDNAのアセンブル
フラグメントIおよびIIをともにアセンブルして、オーバラッピングおよびエクステンションPCR法を用いてrSIFN−coの完全な完全長cDNA配列を与えた。制限酵素部位Nde IおよびPst Iをそれぞれ配列の5′−末端および3′−末端に導入したため、rSIFN−co cDNA配列をプラスミドにクローニングすることができる。
【0091】
(1) 化学的に合成したプライマー
【0092】
【化3】
【0093】
(2) オーバラッピングおよびエクステンションPCR
【0094】
【表4】
【0095】
rSIFN−co遺伝子クローニングおよび配列分析
pLac T7プラスミドをrSIFN−co cDNAのクローニングのためのベクターとして用いた。pLac T7プラスミドは、Stratagene(アメリカ合衆国、カリフォルニア州、ラホーヤ)によって生産されたpBLUESCRIPT II KS(+)プラスミドから再構築した。
【0096】
rSIFN−coの完全長cDNAを含有するPCR生成物を、Stratagene(カリフォルニア州、ラホーヤ)によって生産されたSTRATAPREP PCR精製キットで精製し、その後Nde IおよびPst Iで消化した。同時に、pLac T7プラスミドをNde IおよびPst Iで二段消化した。これらの二段消化したDNAフラグメントを、1%のアガロースゲル電気泳動を用いて分離し、その後507bpのrSIFN−co DNAフラグメントおよび2.9kbのプラスミドDNAフラグメントを、Promega(アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、フィッチバーグ)によって生産されたWizardDNA精製キットを用いて回収および精製した。これらのフラグメントをT4 DNAリガーゼで結合して、組換型プラスミドを形成した。組換型プラスミドを用いてDH5αコンピテント菌(Gibco)を形質転換した。37℃で1晩培養した後、pHY−1と命名された陽性組換型コロニーを同定した。
【0097】
DNA配列決めは、ユニバーサルプライマーT7およびT3を用いて、製造者(アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、マジソン、Epicentre Technologies Ltd)によって提供された指示に従ってSEQUITHERM(登録商標)Cycle Sequencing Kitを用いて行なった。DNA配列決めの結果は、配列が理論的な設計と一致していることを示した。
【0098】
精製した組換型rSIFN−coの16個のN末端アミノ酸および4個のC末端アミノ酸を配列決めした。結果を以下に示した。
【0099】
N−末端:
Cys-Asp-Leu-Pro-Gln-Thr-His-Ser-Leu-Gly-Asn-Arg-Arg-Ala-Leu-
N−末端のMetは成熟型タンパク質において一部が切断された。
【0100】
C−末端:
Arg-Arg-Lys-Glu-COOH
rSIFN−coの完全長ヌクレオチド配列が配列番号2として示され、アミノ配列が配列番号1として示される。
【0101】
発現ベクターの構築、形質転換、酵素消化および同定、ならびに遺伝的安定性
発現ベクターの構築および形質転換
大腸菌発現ベクターpBAD18をNde Iで消化しかつ線形化し、次にXba Iで完全に消化した。1%のアガロースゲルによる電気泳動およびQIAEX IIキット(QIAGEN)を用いた精製を行なって、Nde IおよびXba Iで消化したpBAD18からの4.8kbのフラグメントを与えた。
【0102】
同時に、pHY−1プラスミドをNde IおよびXba Iで二重消化し、1%のアガロースゲル電気泳動による分離の後、715bpフラグメントを精製した。T4 DNAリガーゼを用いてこのフラグメントをpBAD18からの上記4.8kbフラグメントで結合し、組換型プラスミドを産生した。組換型プラスミドを用いてDH5α−コンピテント菌を形質転換した。形質転換した菌をLB−Amp寒天プレート上に広げ、次に37℃で1晩培養した。
【0103】
陽性クローンのスクリーニング
上記LB−プレートからの大腸菌コロニーを無作為に選び、完全長rSIFN−co cDNAを有する組換型プラスミドを含有するクローンを、エンドヌクレアーゼ消化およびPCR分析を用いてスクリーニングした。PCR陽性組換型プラスミドのうち1つはpHY−5と命名され、pHY−5プラスミドを含有する株はPVIIIと命名された。PVIIIを増幅し、将来の使用のためにグリセロール凍結媒体を用いて−80℃で保管した。
【0104】
大腸菌LMG194中でのrSIFN−co遺伝子の高い発現
pHY−5プラスミド中で、rSIFN−co遺伝子は、AraCタンパク質によって調節される強いプロモータPBADの制御下にあった。AraCは、同じプラスミド中に位置するAraC遺伝子でエンコードされたタンパク質である。アラビノースがなければ、AraCのダイマーは210bpのループを形成するO2およびI2に結合する。この配座は転写の完全な阻害をもたらす。アラビノースの存在中では、AraCのダイマーはO2から解放されて、転写に対する阻害を排除するI1およびI2に結合する。アラビノース結合は、PBADプロモータの転写を不活性化する、抑制する、およびこれを活性化すらし、これはPBADを刺激してrSIFN−coの高い発現を媒介する。rSIFN−co発現レベルは細菌タンパク質の合計の50%を超える。
【0105】
2.分離および精製
(1) 産生株の調製
発現ベクターpHY−5を有する大腸菌株LMG194をLB培地に接種し、次に37℃で1晩(約18時間)200rpmで振った。培地には30%グリセリンの50%を加えた。混合の後、産生株としての使用のために培地を1mlのアリコート中で−20℃で保管した。
【0106】
(2) グレード−I種株の調製
グレード−I種株としての使用のために、1%の比率でLB培地(10gのトリプトン、5gのイースト抽出物、および10gのNaClを含有する1L)で産生株を培養し、37℃で一晩(約18時間)200rpmで振った。
【0107】
(3) 株の発酵および収集
10%の比率でRM媒質(20gのカゼイン、1mmol/L(0.203g)のMgCl2、4gのNa2HPO4、3gのKH2PO4、0.5gのNaCl,および1gのNH4Clを含有する1L)にグレード−I種株を加え、pH7.0、37℃で培養した。OD600が約2.0に達するまで発酵を行ない、次に誘導原として最終的な濃度が0.02%になるまでアラビノース(20%溶液)を加えた。4時間後、株を収集および遠心分離し、ペレットを与えた。
【0108】
(4) 封入体の調製
株ペレットを適切な量の緩衝剤A(100mmol/LのTris−HCl、pH7.5の10mmol/LのEDTA、100mmol/LのNaCl)で再懸濁し、−20℃で1晩保った。株を解凍し、ホモジナイザで砕き、次に遠心分離した。緩衝剤B(50mmol/LのTris−HCl、pH7.5の1mol/Lの尿素、10mmol/LのEDTA、0.5%トリトンX−100)、緩衝剤C(50mmol/LのTris−HCl、pH7.5の2mol/Lの尿素、10mmol/LのEDTA、0.5%トリトンX−100)でペレットを洗浄し、次に沈殿した。これを一度繰返し、次にペレットを一度蒸留水で洗浄し、封入体を与えた。
【0109】
(5)再生処理
封入体を6mol/Lのグアニジン−HCl(または尿素)に溶解してわずかに白濁した変性溶液を得、次に速度10000rpmで遠心分離した。上澄みを収集して用い、タンパク質濃度を求めた。変性溶液を3回に分けて再生緩衝剤(0.5mol/LのArg、150mmol/LのTris−HCl、pH7.5の0.2mmol/LのEDTA)に加え、次に4℃で1晩(約18時間)連続して攪拌した。溶液を、その容積が10倍の10mol/Lのリン酸緩衝剤(PB)、5mol/LのPB緩衝剤、および蒸留水で順次透析した。透析後、2mol/L HAc−NaAc(pH5.0)を用いてpHを調整した。溶液を放置し、次にろ過した。
【0110】
(6) HSカチオンカラムクロマトグラフィ
20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)でカラムを調製し、30ml/分の速度で、ステップ(5)から得た再生生成物で装填し、20カラム体積(CV)の20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去し、0.15mol/LのNaCLを含有する、5CVの20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去し、次に0.18mol/LのNaClを含有する3CVの20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去した。最後に、0.25mol/LのNaClを含有する20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)を用いて目標タンパク質を溶出し、これによりHS溶出タンパク質溶液を得た。
【0111】
(7) 銅イオン親和性クロマトグラフィ(キレート化SEPHAROSE(登録商標)FAST FLOW)
HS溶出タンパク質溶液を0.2mol/L(pH6.6)のPB緩衝剤に加え。4mol/LのNaClを加えて、NaClの濃度を1mol/Lに、pHを6.0に調節し、溶液装填の準備を整えた。1mol/LのNaClを含有する50mmol/LのNa2HPO4(pH5.5)を用いてカラムを調製し、1ml/分のレートで装填した。50mmol/LのNa2HPO4(pH5.0)でカラムを洗浄して他のタンパク質を除去し、次に50mmol/LのNa2HPO4(pH4.0)で洗浄して他のタンパク質を除去した。最後に、50mmol/LのNa2HPO4(pH3.6)を用いて目標タンパク質を溶出して、キレート化カラム溶出目標タンパク質溶液を得た。
【0112】
(8) HSカラムクロマトグラフィ
キレート化カラムから溶出したタンパク質溶液を30倍に希釈し、そのpHを5.0に調節し、次にpH7.0で0.5mol/LのNaClを含有するPB緩衝剤で溶出したHSカラム上に装填して、組換型インターフェロン(タンパク質原液)を与えた。
【0113】
実施例2
組換型インターフェロン製剤
凍結乾燥された注射剤配合(凍結乾燥粉末)
本発明のrSIFN−co原液 34.5μg/ml
リン酸緩衝剤、pH7.0 10mmol/L
グリシン 0.4mol/L
調製方法:
配合に従って材料を計量し、注射剤用の、発熱物質を含まない滅菌水に溶解し、0.22μmの細孔を有するメンブレンを通したろ過によって滅菌し、次に6〜10℃で保管した。サンプルは、小瓶(vial)中に等分する前に、無菌テストおよび発熱源テストに合格した。あらゆる小瓶は一回用量0.3〜0.5を含有した。すべての等分したサンプルを凍結乾燥器で凍結乾燥した。
【0114】
水性注射剤配合
本発明のrSIFN−co原液 34.5μg/ml
リン酸緩衝剤、pH7.0 25mmol/L
NaCl 0.4mol/L
調製方法:
配合に従って材料を計量し、注射剤用の、発熱物質を含まない滅菌水に溶解し、0.22μmの細孔を有するメンブレンを通したろ過によって滅菌し、次に6〜10℃で保管した。サンプルは、小瓶中に等分する前に、無菌テストおよび発熱源テストに合格した。あらゆる小瓶は一回用量0.3〜0.5を含有した。最終生成物を2〜10℃で暗所に保管した。
【0115】
実施例3
ヒトの乳癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究
この実施例はヒト乳癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究を記載する。
【0116】
本組換型インターフェロン(rSIFN−co)およびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)を試験薬剤として用いて、MCF−7中の腫瘍遺伝子および耐性菌MCF−7/ADRの細胞増殖、細胞死、および発現に対するそれらの効果を研究した。
【0117】
A.方法
1.細胞培養
ヒト乳癌細胞株MCF−7およびアドリアマイシン耐性菌MCF−7(MCF−7/ADR)をそれぞれ25cm2または75cm2のフラスコ中で培養した。細胞がフラスコの底を覆った後、それらを0.25%のトリプシンでトリプシン処理した。対数増殖期の細胞を実験用に採取した。
【0118】
2.MTT比色分析を用いた、細胞増殖に対するrSIFN−coの異なる濃度の効果の検出
実験上のグループ分け:各々の細胞株を3グループに分けた(合計で11の小グループ):rSIFN−coグループ(0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/ml)、INFERGEN(登録商標)グループ(0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/ml)、およびブランク対照グループ(RPMI1640完全媒質としても公知の(アメリカ、Sigma)10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640媒質)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)をRPMI1640完全媒質で所望の濃度(最終的なエタノール濃度<1%)に希釈し、4℃で保管した。
【0119】
対数増殖期のMCF−7細胞およびMCF27/ADR細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640媒質で、1.25×105/mlの細胞懸濁液に希釈した。トリパンブルー法を用いて、>95%の細胞生存を確実にするようにした。ウェル当たり100μLで、96ウェルの培養プレートに細胞を種蒔きした。24時間、48時間、72時間後に、以上で言及したグループ分けに従って薬剤を加え、従来のMTTアッセイを用いて細胞増殖を検出した(490nmの波長でマイクロプレートリーダを用いて吸光度を検出した)。各々のグループは平行サンプルとして2つのウェルを有した。実験を3回繰返した。細胞成長阻害に対する異なる時間での異なる薬剤濃度の効果を以下の式に従って算出した。
【0120】
細胞成長阻害率(%)=(対照グループ中のAの値−実験グループ中のAの値)/対照グループ中のAの値×100%
3.フローサイトメトリ(FCM)を用いた細胞死検出
実験上のグループ分け:各々の細胞株を3グループに分けた:rSIFN−coグループ(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)グループ(5μg/mL)、および(10%の仔牛の血清RPMI1640培地を含有する)ブランク対照グループ。
【0121】
FCM検出:薬剤を加えた48時間後に細胞を収集し、次に細胞を単細胞として懸濁し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。Elite Espベースのフローサイトメータ(アメリカ合衆国、Coulter)で細胞死率をアッセイし、機器を備えたソフトウェアによって結果を分析した。これらの実験を3回繰返した。
【0122】
4.細胞腫瘍遺伝子発現の免疫組織化学的検出
実験上のグループ分け:
各々の細胞株を3グループに分けた。rSIFN−co(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)(5μg/mL)、および10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640をMCF−7細胞培養培地に加えた。また、rSIFN−co(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)(5μg/mL)、および10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640をMCF−7/ADR細胞培地にも加えた。
【0123】
P53、Bcl−2、CerbB−2発現の免疫組織化学的検出:
カバーガラスを酸で処理し、高圧で洗浄しかつ滅菌し、次に6ウェルの培養プレートに載置した。対数増殖期のMCF−7およびMCF−7/ADR細胞を0.25%のトリプシンを含む単細胞懸濁液中で消化した。細胞を6ウェルのプレートに接種し、各々のウェルは1×105であり、CO2インキュベータ中で37℃で24時間培養した。細胞が壁にくっついた後、薬剤を各グループに加えた。48時間後、カバーガラスを取外した。従来の免疫組織化学的SABC染色を行ない、すべての濃度は1:100であった。
【0124】
結果の評価のための判断基準:
Volm (Volm M, et al., European Journal of Cancer, 1997, 33 (3), 691-693)の方法に従って染色結果を判断し、細胞核(P53)、細胞質(Bcl−2)、または膜(CerbB−2)に現われる黄色または茶色の粒子を陽性の結果として取った。高倍率(400×)下での各スライド上の5つの視野(FOV)を無作為に選択し、視野毎に200個の細胞を計数した。細胞の各グループ中に発現が存在すれば2つの因子を判断した。スコア付けは、各細胞毎の染色の強度に応じて行なった。着色なしについては0ポイント、薄い黄色については1ポイント、茶色については2ポイント、黄褐色については3ポイントである。平均は、細胞のグループについての平均染色強度であろう。陽性細胞のパーセントは、染色なしについては0ポイントなし、<25%の染色細胞については1ポイント、25%〜50%については2ポイント、>50%については3ポイントである。2つのスコアの和:0は陰性の発現を意味する;2〜4は陽性を意味する;4〜6は強い陽性を意味する。これらの実験を二重盲検で行なった(染色者と観察者の両者ともスライドのグループ分けを知らない)。
【0125】
B.統計的方法
実験データの統計的分析:
すべての実験データを、SPSS11.5統計パッケージを用いて、t検定、分散分析、および順位相関分析を用いてテストした。P値<0.05は、差が統計的に有意であったことを意味する。
【0126】
C.結果
1.MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の増殖に対する効果
(1) MCF−7細胞
rSIFN−coはMCF−7細胞の増殖を阻害することができた。0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)で処理した各細胞グループは、ブランク対照グループと比べて、その吸収度(OA)において有意な減少を示した。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の阻害効果は、初期(24時間、48時間)には有意な差を示さなかった(P>0.05)。72時間を超える処理の後、rSIFN−coの阻害の%は、最も低い濃度である0.02μg/mLを除いて、同じ濃度でINFERGEN(登録商標)の場合よりも高く、差は統計的に有意であった(P<0.05)(表1−1に示す)。
【0127】
【表5】
【0128】
(2) MCF−7/ADR細胞
rSIFN−coはMCF−7/ADR細胞の増殖を阻害することができた。0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)で処理した各々の細胞グループは、対照グループと比べて、その吸収度(OA)において有意な減少を示した。rSIFN−coの阻害効果は、分散の分析が示すように、最も低い濃度である0.02μg/mLを除いて、同じ濃度でのINFERGEN(登録商標)の場合よりも高く、差は統計的に有意であった(P<0.05)(表1−2に示す)。
【0129】
【表6】
【0130】
2.MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の細胞死に対する効果
対照グループと比べて、5μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は、48時間の処理後、MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の細胞死を誘導し、差は統計的に有意であった(P<0.01)。rSIFN−coは、同じ濃度でのINFERGEN(登録商標)よりもMCF−7およびMCF−7/ADRに対してより強い細胞死誘導活性を示し、差は統計的に有意であった(P<0.01)(表1−3に示す)。
【0131】
【表7】
【0132】
3.各細胞グループにおけるP53、CerbB−2、およびBcl−2の発現に対する効果
rSIFN−coは、対照グループと比べて、MCF−7細胞におけるP53の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.05)。INFERGEN(登録商標)はP53の発現を減少させたが、減少は対照グループと比べて有意に異ならなかった(P>0.05)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも、対照グループと比べて、MCF−7/ADRにおけるP53の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.05)が、同じ濃度でのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)はそれらの間で有意な差を示さなかった(P>0.05)。
【0133】
rSIFN−coは、対照グループと比べて、MCF−7およびMCF−7/ADRの両者においてCerbB−2の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)。CerbB−2の発現はINFERGEN(登録商標)による処理後に減少した。しかしながら、減少は対照グループと比べて有意に異ならなかった(P>0.05)。
【0134】
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は両者とも、対照グループと比べて、MCF−7中のBcl−2の発現をアップレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)が、rSIFN−coは同じ濃度でINFERGEN(登録商標)よりもより強い活性を示し、差は統計的に有意であった(P=0.001)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は両者とも、対照グループと比べて、MCF−7/ADRにおけるBcl−2の発現をアップレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)。結果を表1−4に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例4
子宮頸癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究
この実施例は、子宮頸癌細胞の成長を阻害するおよびこの細胞死を誘導する際のrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究を記載する。
【0137】
本組換型インターフェロン(rSIFN−co)およびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されるINFERGEN(登録商標)をテスト薬剤として用いて、子宮頸癌子宮頸部扁平上皮癌細胞(HPV16+)の成長阻害および細胞死誘導に対するそれらの効果を研究した。
【0138】
A.方法
1.子宮頸部扁平上皮癌細胞成長阻害テスト
1.1 細胞培養およびグループ分け
10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地で薬剤サンプルを希釈した。子宮頸癌子宮頸部扁平上皮外皮細胞を96ウェルプレートで培養した。細胞は、細胞濃度1×105/mlの培地を用いて単細胞懸濁液として調製した。各々のウェルに、100μlの細胞懸濁液を加えた。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)を、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/ml、および10μg/mlの濃度傾斜でプレートに加えた。10%のウシ胎児血清を含有するRPMI−1640媒質を対照グループとして用いた。各々の濃度を3倍にした。インキュベータ中で5%CO2とともに37℃で72時間細胞を培養した。
【0139】
1.2 MTT法による細胞成長阻害テスト
5mg/mlでMTT試薬(アメリカ合衆国、Sigma社)を調製し、各々のウェルに10μlのMTT試薬を加えた。プレートを緩やかに振って試薬を均質化し、5%CO2とともに37℃で4時間培養し、これにより青い結晶をウェルの底に見ることができた。上澄みを除去し、各々のウェルに100μlのDMSOを加え、青い結晶が室温で溶解した後に、次に570nmでの吸収度をマイクロプレートリーダを用いて測定した。
【0140】
1.3 細胞成長阻害の算出
【0141】
【数1】
【0142】
2.子宮頸部扁平上皮癌細胞に対する細胞死テスト
2.1 細胞培養およびグループ分け
子宮頸部扁平上皮癌細胞を7グループに分け、96ウェルプレート中で、10%の不活性化ウシ胎児血清を含有するRPMI−1640媒質中で培養した。グループ1は対照グループとして72時間培養した。グループ2〜4は、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/mlという異なるrSIFN−coの濃度で培養した。グループ5〜7は、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/mlという異なるINFERGEN(登録商標)の濃度で培養した。
【0143】
2.2 フローサイトメトリ(FCM)でて判断した子宮頸部扁平上皮癌細胞の細胞死率
1000r/分で5分間細胞の各グループを遠心分離した。上澄みを除去し、細胞を、Annexin V/PI二度染め法で細胞死についてテストした。1×106個の生存細胞を含有する各々の検体を培養緩衝剤で一度洗浄し、1000r/分で5分間遠心分離した。100μlのマーカ溶液で細胞を再懸濁し、暗所で15分間室温で培養し、1000r/分で5分間遠心分離して細胞を沈殿させた。培養緩衝剤で一度細胞を洗浄し、蛍光溶液ですり潰し(triturated)、次にFCMでテストする前に、頻繁に振りながら暗所で4℃で20分間培養した。
【0144】
B.統計的分析
すべての定量的分析データを
【0145】
【数2】
【0146】
として表わした。分散分析を用いて異なる薬剤と異なる濃度との間の分散を分析し、SPSS14.0ソフトウェアパッケージを用いて統計的分析を行なった。
【0147】
C.結果
子宮頸部扁平上皮癌細胞成長阻害テスト
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも子宮頸部扁平上皮癌細胞の成長を阻害し、この効果はインターフェロンの濃度が増大するととともに増大した。rSIFN−coの効果は0.625、2.5、および10μg/mlのグループでINFERGEN(登録商標)よりも高かった。表2−1に表示する差は統計的有意性を示した(P<0.01):
【0148】
【表9】
【0149】
2.子宮頸部扁平上皮癌細胞における細胞死の誘導
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも子宮頸部扁平上皮癌細胞における細胞死を誘導し、効果はインターフェロンの増大する濃度にはっきりと相関した。低濃度(0.156μg/ml)でのrSIFN−coの効果はINFERGEN(登録商標)よりも高かった。表2−2に表示する差は統計的有意性を示した(P<0.01):
【0150】
【表10】
【0151】
実施例5
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の薬剤動態学および生物学的等価性の研究
この実施例は、rSIFN−coとINFERGEN(登録商標)との間の薬剤動態学および生物学的等価性についての研究成果を記載する。本組換型インターフェロンrSIFN−coおよびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)を試験薬剤として採用し、それらの薬剤動態学および生物学的等価性を比べた。
【0152】
健常な人々においてインターフェロンの薬剤動態学の研究を行なうことは困難である。注射後は血漿中の医薬インターフェロンのレベルが非常に低いため、健常な成人の血清中で、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)またはウイルス細胞変性阻害アッセイは直接にこれを測定することがほとんどできない。現在、インターフェロンの薬剤動態学の研究のための検出マーカは一般的に、インターフェロンによって誘導される生成物であり、かつその効能の指標でもある2’,5’−OAS(2−5Aオリゴヌクレオチダーゼ)である。
【0153】
A.被験者および方法
1.被験者
平均年齢が22.8±1.4才、身長170±5.0cm、BMI20.5±2.4、かつ体重59.4±7.2kgの18人の健常な男性のボランティアが存在した。被験者は、包括的な身体検査、(血液、尿、肝機能、および腎機能を含む)実験室でのテスト、ならびに心電図によって正常と判断された。被験者は、テスト前の4週間以内は薬剤を全く用いず、テスト前の3ヶ月以内は臓器を損傷することが知られている薬剤を全く用いなかった。彼らはテスト薬剤に対するアレルギー歴を有しておらず、彼らはテストに応募し、事前同意書に署名した。
【0154】
2.方法
実験方式は、PRCのGCPの関連の指針に従って運用される、四川大学華西病院の医療倫理委員会によって承認された。
【0155】
2.1 材料
試薬:
注射用組換型インターフェロンの凍結乾燥粉末(テスト製剤、すなわち本発明の組換型インターフェロンrSIFN−co、9μg/小瓶)。比較製剤:Amgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)注射液(比較試薬、9μg/小瓶)。
【0156】
2−5Aキット:栄研化学株式会社がEikenラジオイムノアッセイキットを供給した。キットは、(1)I125−標識付け2’,5’−OAS、(2)2’,5’−OAS抗血清、(3)2’,5’−OAS標準小瓶(各々が0、10、30、90、270、または810pmol/dLの2’,5’−OASを含有する)、(4)緩衝剤、(5)ブランク血清、(6)ポリ(I)−ポリ(C)アガロースゲル、(7)ATP、(8)メルカプトエタノール、および(9)品質管理血清を含む。
【0157】
2.2 実験設計および投薬方法
無作為化対照交差試験を用いて、18人の被験者を無作為に各グループ9名のAおよびBグループに分け、9μgのrSIFN−coおよび9μgのINFERGEN(登録商標)の別々の皮下注射を、1週間のウォッシュ期間で、2サイクルで交互に行なった。
【0158】
テスト前日の午後8時から翌朝の投薬後2時間まで絶食して、午前7時に上腕三角筋に皮下注射を行なった。すべての被験者は標準的な食事(高脂肪でない食物)を摂り、喫煙、アルコール、お茶、コーヒー飲料を飲むことを禁じられ、激しい運動を控えるよう求められた。すべての他の薬剤はテスト期間中禁止された。
【0159】
2.3 血液サンプルの収集およびテスト
投薬前に4mlの血液サンプルを抜いた一方で、注射の2、6、12、18、22、24、26、30、34、38、42、および48時間後に3.5mlの血液サンプルを注射部位とは反対の肘の静脈から抜いた。すぐにサンプルを遠心分離し、結果的に得られた血清を2’,5’−OAS濃度についてテストするまで−20℃で保存した。
【0160】
3.統計的方法
DAS ver1.0の統計ソフトウェアを用いて、テスト製剤および比較製剤を対のt検定で比較した。
【0161】
B.結果
血液サンプルの測定された血清2’,5’−OAS濃度に従い基づき、平均酵素濃度−時間曲線を図16にプロットした。
【0162】
図16に示すように、9μgのrSIFN−coまたは9μgのINFERGEN(登録商標)の皮下注射の後、2つの酵素濃度−時間曲線は基本的に同じ傾向を有したが、rSIFN−coの皮下注射の後は、酵素濃度−時間曲線のピークでの濃度はINFERGEN(登録商標)よりも著しく高くなった。
【0163】
比較製剤(INFERGEN(登録商標))と比べたテスト製剤(rSIFN−co)の相対的生物学的利用率(F)を以下の式によって算出した:
【0164】
【数3】
【0165】
結果は、rSIFN−co(F0〜48)の相対的な生物学的利用率が125.4%であることを示した。テスト製剤と比較製剤との間のTmax差は統計的に有意ではなかった(t=1.458、P=0.163)。AUC0−48とCmaxとの間の差は統計的に有意であり(t=2.730、P=0.014;t=2.347、P=0.031)、テスト製剤は比較製剤よりも高かった。
【0166】
さらに、INFERGEN(登録商標)グループは、比較された好ましくない反応の発生率、程度、および持続時間という観点でrSIFN−coグループよりもより深刻であった。
【0167】
C.結論
(1) 皮下注射の後、rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも2’,5’−OASの産生を誘導した。2つの薬剤の薬剤動態学曲線は同じ傾向であり、主な薬剤動態学パラメータは統計的差を示さなかった。
【0168】
(2) rSIFN−coによって誘導された2’,5’−OASのCmaxおよびAUC0−48の両者ともINFERGEN(登録商標)よりも高く、このことは、rSIFN−coの効能が同じ投与量ではINFERGEN(登録商標)よりも優れているかもしれないことを示す。
【0169】
(3) INFERGEN(登録商標)グループは、比較された好ましくない反応の発生率、程度、および持続時間においてrSIFN−coグループよりもより深刻であった。
【0170】
(4)異なる時間に測定した血清2′,5′オリゴアデニル酸シンターゼ(synthase)(2’,5’−OAS)濃度に基づく平均酵素濃度−時間曲線をプロットした後、rSIFN−coによって誘導された2’,5’−OAS濃度は一般的に2つのピークを有し、曲線の下の面積は、各々が同じ条件下で別々に注射された場合、INFERGEN(登録商標)によって得られるものよりも著しく大きいことが発見された。曲線下の面積の増分は好ましくない反応の発生率および/または発生の度合いの増加と相関しなかった。
【0171】
実施例6
組換型インターフェロンの結晶化
高品質rSIFN−coタンパク質単結晶の調製は、その結晶構造を判断するための前提条件である。結晶成長に用いるrSIFN−coは本発明の当該rSIFN−coから由来した。rSIFN−co単結晶の調製方法、技術的プロセス、結晶化条件、および結晶学的パラメータは以下のとおりであった。
【0172】
本発明のrSIFN−coの凍結乾燥粉末を純水に溶解し、初期タンパク質濃度0.42mg/mlで−20℃で保管した。結晶化の前に、rSIFN−coタンパク質サンプルを3〜3.5mg/mlに濃縮し、結晶成長実験のためにすぐに使用した。室温(293K)に保持した結晶化プロセスのために懸滴蒸気拡散方法を用いた。
【0173】
初期結晶化研究では、異なる条件の組の下で微結晶性rSIFN−coが現われたが、十分な分解能のX線回折分析のために用いることができる高品質単結晶を得ることは困難であった。多数の結晶化条件の最適化の後、最良質の結晶は、1.2MのLiSO4、0.1MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、pH11.1および0.02MのMgCl2からなる結晶化溶液を用いて得られることがわかった。rSIFN−coタンパク質の良好な単結晶は、この配合で調製した結晶化溶液を3日間から1週間放置した後に得られた。単結晶は三方晶型であり、0.42×0.08×0.08mmの大きさであった。結晶構造のX線回折分析で用いるrSIFN−coタンパク質結晶を図1に示す。
【0174】
実施例7
結晶X線回折データの分析
結晶回折データの収集:
データ収集は、日本のつくば市のフォトンファクトリで、ビームラインBL5Aからのシンクロトロン放射を用いて低温条件(100K)下で行なった。以下のステップを用いて結晶回折データを収集した。
【0175】
(1) 顕微鏡下で、結晶載置ツールを注意深く用いて結晶を母液からツールの頂部のループに転送した。
【0176】
(2) フラッシュ冷却技術を用いて、結晶を含有するループを、不凍試薬として作用するパラフィン油(アメリカ合衆国、Hampton Research)中に数秒間迅速に浸し、回折装置のゴニオメータ頭部に迅速に転送した。このとき、結晶は、データ収集が100Kという低温で行なわれるように、低温窒素流(100K)に瞬時に入る。
【0177】
(3) データ収集は必要とされるパラメータを設定した後に開始した。光源波長は1.0Åであり、検出器はADSC Quantum 315 CCD(電荷結合素子)であり、結晶−検出器距離は310mmであった。発振法を用いてデータを収集し、画像毎に、発振角度は1°であり、露光時間は12秒間であり、合計110枚の画像を収集した(図2)。
【0178】
回折データの処理および分析:
回折実験で元々得られた直覚回折像(図2)の組を結晶の回折データおよび構造的分析の品質評価のために用いることができる前に、収集した回折データの完全な組をCCP4プログラムパッケージを用いて処理し分析する必要があった。このプロセスは、1)指標付け:回折データを結晶指数(h、k、l)に変換し、単位格子パラメータおよび空間群を算出すること;2)パラメータ変更:単位格子パラメータ、結晶−検出器距離および角度ならびにモザイク性の度合いなどのパラメータを洗練すること;3)統合:回折スポットから強度情報を得ること;4)データの合成:対称のために発生した、または独立した回折スポットのみを用いて完全なデータの組を生成するように複製されるすべての回折スポットを合成すること;5)強度データを構造振幅に変換することからなる。rSIFN−co結晶回折データの収集および分析の結果についての詳細を表3に示す。
【0179】
【表11】
【0180】
実施例8
結晶構造の分析
結晶回折相の判断およびrSIFN−co初期分子構造モデルの構築
分子置換法を採用して、rSIFN−co結晶構造を解明した。ヒツジINF−τ(rSIFN−coに対して54%の配列相同性)の結晶構造(PDB番号1B5L)を相同構造モデルとして選択した。ソフトウェアプログラムPHASERを用いてその回転関数および並進関数を計算し、次にこれを用いて単位格子中のrSIFN−co分子の場所および配向を推定した。ラウエ群および消滅則に基づいて、その空間群がP3121であると判断し、分子モデルを対応して変更した(すなわち、1B5L構造において残基13〜25、37〜69、79〜01、114〜151を保存する)。このモデルから算出される結果は以下のとおりであった。Zスコアは15.71であり、IL−ゲインは307.79であり、衝突は0であった。分子は合理的に単位格子内で積み上がり、IL−ゲインは分子置換のプロセスの間徐々に上昇した。このことは、正確な溶液が得られ、各々の回折点での初期相が定められたことを示した。次に、PHASERによって生成される、初期相を有するmtzを用いて、FFTを用いる電子密度マップを構築した。得られた初期分子構造モデルは電子密度マップとよく一致しており、このことは、rSIFN−coの回折点のすべての正確な相溶液が得られたことを実証した。以上の結果に基づき、rSIFN−coの初期分子構造モデルを構築した。
【0181】
rSIFN−co構造モデルの改良
正確なrSIFN−co分子構造モデルを得る目的で、rSIFN−co初期分子構造モデル中のすべての非水素原子の座標および温度因子に、分子モデリング技術およびコンピュータ化最適化プログラムを用いることによって反復改良が施された。
【0182】
相のない母集団データを用いて、プログラムCNS1.1を構造洗練のために用いた。これらのデータのうち10%をテスト用の組としての使用のために無作為に抽出し、同じ無作為に抽出したテスト用の組をずっと保った。構造モデル中のすべての原子が洗練に加わり、各原子は座標(x,y,z)および等方性温度因子Bを含む4つの洗練パラメータを有した。コンピュータ化自動洗練および手動調節または(ソフトウェアOを用いる)モデルの構築を、全洗練プロセスの間交互に行なった。洗練の初めに制限NCSを用い、一旦構造調節を基本的に達成すると使用を取止めた。Rwork因子(<0.30)およびRfree因子が実際的に下降を止めると、水および溶媒分子を構造に加えて構造改良を完了した。改良のための主な指数はRworkの値0.250およびRfreeの値0.286であった。最終的なrSIFN−co構造改良の主要な指標を表4に列挙する。結果的に得られるrSIFN−coの原子座標を表7に示す。
【0183】
【表12】
【0184】
実施例9
rSIFN−co分子構造モデルの品質の品質特徴付け
rSIFN−co分子構造モデルの品質の品質特徴付け
モデル:直感的に、明確に、かつ正確にrSIFN−coを表示した。図3は、rSIFN−co分子中のアミノ酸残基の構造に一致する典型的な電子密度マップである。各々のアミノ酸残基の空間的場所および配向を明確に同定することができた。
【0185】
(2) アミノ酸残基と関連付けられる平均温度因子の分布マップ(図4)
(3) rSIFN−co分子の立体化学合理性をラマチャンドラン配座プロット(図5)中に特徴付け、そのアミノ酸残基のうち90.6%が最適な許容される領域中に位置し、9.1%が許容される領域にあり、0.4%が通常の許容される領域にあることを示した。このことは、rSIFN−co分子構造モデルが立体化学的に合理的であることを実証した。
【0186】
実施例10
rSIFN−co分子の結晶構造の結晶構造特性
結晶中のrSIFN−co分子の積層およびグローバル割当て
図6は、単位格子中のrSIFN−co分子の積層態様を示す。rSIFN−co結晶構造中の非対称単位は(結晶学的ダイマーと呼ばれる)2つのタンパク質分子から作られた(図7)。ダイマー同士の間の埋込面積は1033.3Å2であり、各モノマーが516.6Å2寄与した。これはモノマー中の合計面積の6.4%しか占めなかった。ダイマー中のA鎖のA、B、F側はB鎖のC、D、E側に対応した(図9を参照)。ソフトウェアVADARを用いて、モノマーおよびダイマーの折畳み自由エネルギがそれぞれ−126.9および−257.1と算出され、このことはダイマーの折畳み自由エネルギが2つの単離されたモノマーの自由エネルギにかなり近いことを意味した(−126.9×2)。このことは、ダイマー同士の間の相互作用が比較的弱く、それらの間に2つの弱い水素結合しか存在しないことを実証した A12(ARG) NH2...NH2 B71(Arg),3.05Å;A145(Arg) NH1...OH B90(Tyr),3.14Å。
【0187】
精製プロセスはrSIFN−coが溶液中でモノマーとして存在することを示した。現在の生物化学的機能実験は、IFN−αの官能単位がモノマーであるべきであると示した。したがって、このダイマーを結晶の積層から形成してもよい。
【0188】
ダイマーのダイマー構造
非対称単位中の2つのrSIFN−co単分子が1つのダイマーを形成する。図8は、rSIFN−coの結晶学的ダイマー組織を示す。鎖Aは残基11〜103および111〜163からなった(残基1〜10、104〜110、および164〜166はこの結晶構造の構築には係らなかった、というのもそれらは電子密度マップ中に示されなかったからである)。鎖Bは残基11〜103および110〜163からなった(残基1〜10、104〜109、および164〜166はこの結晶構造の構築には係らなかった、というのもそれらは電子密度マップに示されなかったからである)。各々のモノマーの結晶構造中、Cys29およびCys139が分子間ジスルフィド結合を形成したことが観察された。Cys1およびCys99からの分子間ジスルフィド結合は示されなかった。なぜなら、Cys1はこの結晶構造の構築に係らなかったからである。加えて、側鎖の密度が示されなかったので、鎖Aの残基30〜33、47〜49および鎖Bの残基30〜33、48〜50は主にAlaまたはGlyとして構築された。2つのモノマーの構造は大体同じであり、非結晶学的対称によって結合された(BからA、極角オメガ、ファイ、カッパはそれぞれ170.64、94.56、118.35であった;tx、ty、tzはそれぞれ−1.061、−0.225、0.155であった)。2つのモノマーをスーパーインポーズしかつ比較した。分子表面上のいくつかのループの部分的な可撓性とは別に、残基の大部分が完全にスーパーインポーズした。アミノ酸残基と会合したすべてのCαのRMSDの分布を図8cに示す。127個の残基(13〜30、34〜44、53〜101、115〜163)はすべてのCαについて0.64ÅのRMSDを有した。局所的構造の差はこのタンパク質の比較的大きな可撓性および結晶が積層した環境における差の結果であるかもしれない。
【0189】
単分子の構造
各々のモノマーはヘリックス間のペプチドを接続することによって互いに接続された6つのα−ヘリックス(A、C、C′、D、E、F)および1つの310ヘリックス(B)からなった。モノマー構造の折畳みは螺旋状サイトカイン(図9)に属した。6つのαヘリックス(A、C、C′、D、E、F)に対応したアミノ酸残基はそれぞれ13〜20、50〜68、70〜76、79〜100、114〜133、および138〜160であった。残基40〜43は310ヘリックス(B)に対応した。これらの二次的構造の分布および組織を図9に明確に示す。二次的構造とアミノ酸配列との間の対応する関係を図10に示す。
【0190】
実施例11
rSIFN−coおよびIFN−α2bの三次元構造
それらの受容体に基づくと、IFNはI型およびII型の2種類に大きく分けることができる。I型はさらにα、β、ωなどに細分することができる。次にIFN−αは約15の異なるサブタイプを含有する。異なるIFN−αサブタイプは80%を超える配列相同性を有するが、それらは依然としてそれらの機能の多様性を呈する。rSIFN−coは人為的かつ人工的に設計されたタンパク質であると考えられる。これまで、I型IFNの三次元構造は6つしか存在せず(表5)、それらの配列相同性を、図11に示す整列された配列に見ることができる。
【0191】
表5および図11に示す比較分析から、IFN−α2bの結晶構造がrSIFN−co(図12)の結晶構造と最も高い類似性を示した。それらの配列を比較することにより、rSIFN−coは残基45のIFN−α2bよりも1つ多いAsp(D)を有し、それらの3D構造を比較することにより、rSIFN−coは、ABループ(残基25〜33)およびBCループ(残基44〜52)の配座について、IFN−α2bとは大きく異なることがわかった。IFN−α2bの結晶構造は2.9Åの分解能で判断された。しかしながら、Cαを除き、すべての他の原子の座標はタンパク質構造データバンク(PDBコード:1RH2)中になかったため、rSIFN−coとIFN−α2bとの間の構造的比較はCαレベルにおいてのみ行なった。2つの分子のすべてのCαの全体的RMSDは1.577Åであったが、ABループおよびBCループ中では、RMSDは3.63Åおよび2.9Åであり、これらはそれぞれ合計平均の2.5倍および2倍であった。加えて、rSIFN−coはその結晶構造の非対称単位中に2つの分子を含有した一方で、IFN−α2bはその非対称単位中に、3つのダイマーから構成される6つのタンパク質分子を有した。明らかに、rSIFN−coのダイマー組織はIFN−α2b(図13)から区別される程度に異なっていた。
【0192】
【表13】
【0193】
サイトカインとしてのIFNは、まず、細胞膜上の特異的な受容体と結合して抗ウイルスおよび抗腫瘍効果などの体内での生物学的効果を生成するいくつかのシグナル形質導入経路を活性化させることが公知である。rSIFN−coはIFN−αの一種である。細胞膜上のその受容体はIFNAR1およびIFNAR2からなるため、IFN−αと結合する受容体の3Dモデルを構築した(図15a)。このモデルに基づいて一連の分子生物学実験を行ない、結果は、IFN−α状のタンパク質がサンドイッチ構造(図15a)中のIFNAR1およびIFNAR2と相互作用した、すなわち、側A、B、およびFがIFNAR2と相互作用し、反対側C、D、およびEがIFNAR1と相互作用したと示唆した。一方、部位特異的突然変異誘発は、IFNAR2と相互作用したABループがIFN−α状のタンパク質(図15)の活性部位の主要構成要素であると明らかにした。構造的比較は、この重要な領域の構造がrSIFN−coとIFN−α2b(図12、表6)との間で区別できる程度に異なっていることを示した。この重要な領域での構造的相違は、受容体との結合特性における変化の結果、異なる生理学的または薬理学的効果を引き起こし得る。
【0194】
明らかに、rSIFN−coの分子骨格はIFN−α2bの骨格と同様であるが、それらはそれらの活性部位の構造において著しく異なった。したがって、分子の薬理学的活性に密接に関連する局所的構造から判定すると、rSIFN−coがIFN−α2bとは異なる新種のIFNであり、それらの構造的差が区別できる程度に異なる生物学的かつ薬理学的特性に繋がったことがわかった。その三次元構造の特定的な重要な領域における差に基づくと、rSIFN−coは独自の生理学的および薬理学的効果を生じるかもしれない。
【0195】
【表14】
【0196】
【表15】
【0197】
【表16】
【0198】
【表17】
【0199】
【表18】
【0200】
【表19】
【0201】
【表20】
【0202】
【表21】
【0203】
【表22】
【0204】
【表23】
【0205】
【表24】
【0206】
【表25】
【0207】
【表26】
【0208】
【表27】
【0209】
【表28】
【0210】
【表29】
【0211】
【表30】
【0212】
【表31】
【0213】
【表32】
【0214】
【表33】
【0215】
【表34】
【0216】
【表35】
【0217】
【表36】
【0218】
【表37】
【0219】
【表38】
【0220】
【表39】
【0221】
【表40】
【0222】
【表41】
【0223】
【表42】
【0224】
【表43】
【0225】
【表44】
【0226】
【表45】
【0227】
【表46】
【0228】
【表47】
【0229】
【表48】
【0230】
【表49】
【0231】
【表50】
【0232】
【表51】
【0233】
【表52】
【0234】
【表53】
【0235】
【表54】
【0236】
【表55】
【0237】
【表56】
【0238】
【表57】
【0239】
【表58】
【0240】
【表59】
【0241】
【表60】
【0242】
【表61】
【0243】
【表62】
【0244】
【表63】
【0245】
【表64】
【0246】
【表65】
【0247】
【表66】
【0248】
【表67】
【0249】
【表68】
【0250】
【表69】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に、変更された空間構成を有する結晶性組換型インターフェロンと、その結晶化方法およびその三次元構造と、当該結晶およびその三次元構造の使用と、当該組換型インターフェロンのミメティックとに関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン(IFN)は、抗ウイルス、抗腫瘍、および免疫調節機能を含む多数の重要な生物学的機能を有する、さまざまな細胞によって産生される一種の可溶タンパク質である。インターフェロンは、産生細胞、受容体、および生物学的活性などの種類の差に応じてI型、II型、およびIII型インターフェロンに分けることができる。ウイルスおよび合成二本鎖RNAによって主に誘導されるI型IFNは抗ウイルスインターフェロンとしても公知である。IFNα、IFNβ、IFNωという3つの形態のI型インターフェロンが存在する。免疫インターフェロンまたはIFNγとしても公知のII型IFNはT細胞によって産生され、インビボでの重要な免疫調節因子である。III型インターフェロンはIFNγ分子からなる。
【0003】
多数の関連の特許および開示文献が例示するように、近年、世界中の多数の企業がインターフェロンの研究に従事している。たとえば、米国特許第4,695、623号および第4,897,471号は、天然に存在するα−インターフェロンポリペプチドに見られる共通のまたは支配的なアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有する新型のヒトインターフェロンポリペプチドを開示した。その新型のインターフェロンはIFN−con(コンセンサスインターフェロンα)と命名された。開示されたアミノ酸配列はIFN−con1、IFN−con2、およびIFN−con3と命名された。IFN−conをエンコードする遺伝子および大腸菌における遺伝子発現も開示された。白血球インターフェロンまたは他のI型インターフェロンと比較して、研究は、組換型IFN−conがインビトロでより高い抗ウイルス、増殖阻止、およびナチュラルキラー細胞活性を有することを示した。
【0004】
米国特許第5,372,808号は、疾患の治療におけるヒトIFN−conの使用を開示した。Schering-Ploughが生産するイントロン(登録商標)A(IFN−α2b、SGP)などの以前の臨床で承認されたα−インターフェロンと比較して、組換型ヒトIFN−conは副作用がより低いことを示した。1997年末までに、FDAは、C型肝炎の臨床治療のためのヒトIFN−conの使用を認可し、Amgenによって生産され、商品名INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファcon−1)で販売された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(その全体がこの出願に引用として援用される)米国特許第7,364,724号および中国特許公開第CN1740197号Aの両者とも、向上した効能、より少ない副作用を有し、かつ高用量で用いることができる組換型インターフェロン(以下「rSIFN−co」と称する)を開示した。当該組換型インターフェロンはINFERGEN(登録商標)と同じアミノ酸配列を有するが、空間的構造および生物学的効能が異なる。さらに、以上で言及した中国特許公開第CN1740197号Aは、当該組換型インターフェロンの結晶形態およびその結晶化方法も開示した。しかしながら、結晶の質は劣っており、内部構造は緩く、X線回折分解能は5Åと低く、このためにそれらは、タンパク質の空間的構造のさらなる分析から有用な構造情報を得るには適していなかった。変更された構造および高いX線回折分解能での機能を有する当該組換型インターフェロンの良質の結晶を得て、当該組換型インターフェロンの三次元構造を判断し、そのモデルを確立し、当該構造およびモデルを利用して薬剤設計を行ないかつ公知のインターフェロンの効能を改良することが大変重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、米国特許第7364724号および中国特許公開第CN1740197号Aが開示する組換型インターフェロンの結晶に関し、この組換型インターフェロンは配列番号1というアミノ酸配列を含む。さらに、この発明は、この組換型インターフェロンの結晶化方法と当該結晶を含有する組成物とを提供する。さらに、この発明は、当該技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造およびコンピュータモデリングに基づくAmgen(アメリカ合衆国)からのINFERGEN(登録商標)の三次元構造とは異なる、この組換型インターフェロンの三次元構造を提供する。当該インターフェロンと相互作用する候補化合物を同定し、当該インターフェロンのミメティックを設計し、かつコンピュータに基づいて合理的な薬剤設計を行なうための当該三次元構造の使用も提供される。またさらに、この発明は、当該組換型インターフェロンのミメティックと、当該ミメティックを含有する組成物と、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための医薬の調製のための当該結晶、ミメティック、または組成物の使用とを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】結晶構造分析で用いられる、本発明の組換型インターフェロン(rSIFN−co)の単結晶を示す図である。
【図2】rSIFN−co結晶のX線回折図(2.6Å分解能)である。
【図3】rSIFN−coの結晶構造内の2Fo−Fcフォーマットの部分的1.0σ電子密度マップを示す図である。
【図4】(a)がA鎖であり、(b)がB鎖である、rSIFN−coのすべての原子についてのアミノ酸残基に沿った平均温度因子の分布マップを示す図である。
【図5】rSIFN−coタンパク質分子構造のモデル中のすべてのアミノ酸残基のラマチャンドランプロット上の(Φ,Ψ)値の分布を示す図である。分解能が少なくとも2.0ÅでR因子が20%以下の118個の構造の分析に基づくと、最も有利な領域において90%超を有する良質のモデルが期待され、統計データが以下のとおりである。
【0008】
【表1】
【図6】rSIFN−coの単位格子充填図である。
【図7】rSIFN−coダイマーのアセンブルされた構造を示す図である。
【図8】rSIFN−co結晶学的ダイマーの組織(図8a、図8b)およびα炭素原子の根平均二乗偏差(RMSD)(ボックスは欠けている残基を表わす)(図8c)を示す図である。
【図9】(主鎖のみを明示する)rSIFN−coの単分子構造であって、(A)は側面図であり、(B)は上面図であり、(C)はトポロジー図であり、(D)は二次的構造のトポロジー組織を示す図である。
【図10】rSIFN−coの二次的構造とそのアミノ酸配列との間の配列整列を示す図である。灰色のボックスは構造中で設定されなかったアミノ酸残基を表わし、青いボックスはAlaまたはGlyとして設定されたアミノ酸残基を表わす。実線は2対のジスルフィド結合を表わし、緑の下付き文字は構造中に構築された1つのジスルフィド結合を表わす。
【図11】rSIFN−coタンパク質および相同性IFNポリペプチドの配列整列を示す図である。
【図12】rSIFN−coおよびIFN−α2bの三次元構造の比較図である。
【図13】rSIFN−co(赤)とIFN−α2b(黄色)とをスーパーインポーズした画像の図である。
【図14】rSIFN−coの三次元構造とAmgen(アメリカ合衆国)からのINFERGEN(登録商標)のコンピュータモデルとの間の比較に基づく差を示す図である。
【図15】(a)はタンパク質IFN−αおよびその受容体の組合せモデルを示し、(b)はタンパク質IFN−αの機能ドメイン(重要な機能ドメインを青のリングで図示)の図である。
【図16】9μgのrSIFN−coおよび9μgのINFERGEN (登録商標)を18人の被験者に皮下注射した後の血中平均酵素濃度−時間の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、本発明を実践するために当業者を支援するために与える発明の詳細な説明である。
【0010】
組換型インターフェロン(rSIFN−co)
この発明で結晶化された精製組換型インターフェロンは、米国特許第7364724号の明細書の実施例1および2、ならびに/または中国特許公開第CN1740197号Aの明細書の11〜17ページに開示される方法から得られる。この組換型インターフェロンの特徴付けは米国特許第7364724号および/または中国特許公開第CN1740197号Aに開示されている。1つの実施形態で、本組換型インターフェロンのアミノ酸配列およびこれをエンコードするヌクレオチド配列を以下に示す。
【0011】
【化1】
【0012】
さらに、190〜250nmおよび250〜320nmの範囲の本組換型インターフェロンの円偏光二色性スペクトル(CD)は、同じ条件で測定すると、INFERGEN(登録商標)の対応のCDとは大きく異なっている(中国特許公開第CN1740197号Aの3ページの第22−25行目、実施例3、および図6A〜図6Dを参照)。
【0013】
さらに、本組換型インターフェロンの三次元構造は、当該技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造(図12を参照)およびコンピュータモデリング(KORN, AP et al., Journal of Interferon Research 1994, 14: 1-9を参照)に基づくINFERGEN(登録商標)の三次元構造とも異なっている。これら2つのABループ同士の間には明らかな相違があり、それらのBCループも完全に重なることができない(図14を参照)。
【0014】
さらに、そのBMIが18〜23の範囲にわたった被験者への本組換型インターフェロンの筋肉内注射の後、血液サンプル収集の時間を、被験者の血清中の(2’,5’−OASとも称される)2−5Aオリゴヌクレオチダーゼの濃度に対してプロットした。グラフは一般的にピークが2つあるパターンを示し、このグラフの曲線下の結果的に生じる面積は、同じ条件下での注射後のINFERGEN(登録商標)の面積よりも著しく大きい。この組換型インターフェロンの半減期は、体内に注射した後のINFERGEN(登録商標)の半減期よりも長い。
【0015】
実験結果は、本組換型インターフェロンが(INFERGEN(登録商標)を含む)現在臨床で用いられているいずれのインターフェロンよりも有効であることも確認した。たとえば、HBVについては、この発明からの組換型インターフェロンは、HBVのDNA複製を阻害するだけでなく、B型肝炎表面抗原(HBsAg)およびB型肝炎e抗原(HBeAg)の両者の分泌も阻害することができる。このインターフェロンによるB型肝炎コア抗原(HBcAg)のDNA複製を阻害する効率は、INFERGEN(登録商標)の約2倍である。本組換型インターフェロンのインビトロ薬力学は、これがHBVのDNA複製を阻害するだけでなく、B型肝炎表面抗原およびB型肝炎e抗原の両者の分泌を阻害することができることを示している。本組換型インターフェロンの細胞毒性は、現在臨床で用いられているインターフェロンの1/8でしかないが、その抗ウイルス活性は5〜20倍である。一方で、本組換型インターフェロンの生物学的応答は、人体中でより有効であり、よりスペクトルが広く、かつより持続性がある。
【0016】
さらに、ウイルス性疾患の防止または腫瘍の治療については、本組換型インターフェロンは(INFERGEN(登録商標)を含む)いずれの他のインターフェロンと比べてもより高い抗ウイルス活性およびより少ない副作用を示す。たとえば、この組換型インターフェロンは、現在臨床で用いられているインターフェロンの20倍の抗ウイルス活性だけでなく、(INFERGEN(登録商標)を含む)組換型ヒトインターフェロンαと比べて、より有効な抗腫瘍(乳癌および子宮頸癌など)機能を有する。このことは、有害副作用が大きく低減したことをも示し、大量投与(各用量>1000万IU)で安全に用いることができ、インターフェロンの大量投与を必要とするウイルス性疾患または腫瘍を治療できるようになる。
【0017】
このように、本組換型インターフェロンは、INFERGEN(登録商標)と比べて、異なる空間的構成、向上した生物学的活性、および異なる薬剤動態学特性を有する。
【0018】
本明細書中で用いられるように、「空間的構成」、「空間的構造」、「三次元構造」、および「三次元構成」という用語は相互交換して用いることができる。
【0019】
したがって、1つの実施形態では、本組換型インターフェロンは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる。さらに、本組換型インターフェロンは、配列番号1のアミノ酸配列を有し、配列番号2のヌクレオチド配列によってエンコードされる。配列番号1のアミノ酸配列、すなわち本組換型インターフェロンと同じアミノ酸配列を有するが、配列番号2というヌクレオチド配列でエンコードされていないINFERGEN(登録商標)などのインターフェロンと比べて、本組換型インターフェロンは、異なる空間的構成および/または向上した生物学的活性および/または異なる薬剤動態学特性を有する。たとえば、本組換型インターフェロンは、異なる空間的構成および向上した生物学的活性、異なる空間的構成および異なる薬剤動態学特性、または向上した生物学的活性および異なる薬剤動態学特性を有する。さらに、当該異なる空間的構成は以下を含む。同じ条件下で測定すると、本組換型インターフェロンの190〜250nmおよび/または250〜320nmの円偏光二色性スペクトル(CD)は、INFERGEN(登録商標)の対応のCDとは大きく異なっている。向上した生物学的活性は、向上した抗ウイルス活性、向上した抗腫瘍活性、より少ない副作用を含み、および/または大量投与(たとえば、各用量>1000万IU)で用いることができる。たとえば、当該向上した生物学的活性は、向上した抗ウイルス活性および向上した抗腫瘍活性などであり得る。さらに、当該腫瘍は乳癌および子宮頸癌であり得る。異なる薬剤動態学特性は以下を含む。そのBMIが18〜23の範囲にわたった被験者における組換型インターフェロンの筋肉内注射の後、被験者の血清中の2−5Aオリゴヌクレオチダーゼの濃度に対して血液サンプル収集時間をプロットすると、同じ条件下での注射後、INFERGEN(登録商標)よりも、このグラフの曲線下の結果的に得られる面積ははるかに大きく、および/または体内でのこの組換型インターフェロンの半減期はより長い。
【0020】
別の実施形態では、本組換型インターフェロンは、単離された宿主細胞中に組換型インターフェロンをエンコードする配列番号2を含むヌクレオチド配列を導入するステップと、組換型インターフェロンの発現のための適切な条件下で宿主細胞を培養するステップと、組換型インターフェロンを採取するステップとを含む方法によって産生することができる。組換型インターフェロンは配列番号1のアミノ酸配列を有し、組換型インターフェロンはB型肝炎ウイルスのB型肝炎表面抗原(HBsAg)およびB型肝炎e抗原(HBeAg)の分泌を阻害する。さらに、当該宿主細胞は、大腸菌LGM194などの大腸菌である。さらに、配列番号2を含むヌクレオチド配列は、プロモータPBADの制御下にある。さらに、採取するステップは、発酵ブイヨンからのインターフェロンの抽出、封入体の収集、採取されたインターフェロンの変性および再生を含む。またさらに、採取するステップは、組換型インターフェロンの分離および精製も含む(米国特許第7364724号の請求項を参照)。
【0021】
結晶性組換型インターフェロンおよびその結晶化方法
結晶性組換型インターフェロン
この発明は結晶性組換型インターフェロンを提供する。
【0022】
1つの実施形態では、この発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む結晶性組換型インターフェロンを提供する。さらに、この結晶は三方晶系に属する。1つの実施形態では、この結晶の空間群はP3121である。いくつかの実施形態では、この結晶の単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータにおいて変動性は5%以下である。いくつかの実施形態では、当該結晶は1つの非対称単位中に2つの分子を含有する。いくつかの実施形態では、当該結晶は共有結合または非共有した結合金属イオンを含む。さらに、当該金属イオンはマグネシウムイオン、亜鉛イオンなどであり得、これらの金属イオンは結晶中のインターフェロンダイマーの形成を媒介することができる。いくつかの実施形態では、当該組換型インターフェロンは配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる。
【0023】
またさらなる実施形態では、この発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む結晶性組換型インターフェロン、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有する組換型インターフェロンであって、この結晶の空間群は1つの非対称単位中に2つの分子を有するP3121であり、単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータ中での変動性は5%以下である、組換型インターフェロンを提供する。さらに、そのような組換型インターフェロンは配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされ、好ましくは配列番号2のヌクレオチド配列によってエンコードされる。
【0024】
結晶化方法
この発明は、本結晶性組換型インターフェロンを調製する、または培養するための方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態では、この発明は、組換型インターフェロンを約3〜3.5mg/mlに濃縮するステップと、Li2SO4、CAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、およびMgCl2を含有する結晶化溶液中に適切な時間これを放置して結晶を得るステップとを含む、本結晶性組換型インターフェロンを調製する、または培養するための方法を提供する。さらに、結晶を成長させるための当該方法は、293Kなどの室温で行なう。いくつかの実施形態では、この結晶は、懸滴法または座滴法、好ましくは(懸滴蒸気拡散法とも称される)懸滴法によって成長させることができる。いくつかの実施形態では、当該結晶化溶液は、約1.0〜約1.5MのLi2SO4、約0.05〜約0.15MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、および約0.01〜約0.03MのMgCl2を含有する。いくつかの実施形態では、結晶化溶液のpH値は、約10.5〜約12.0の範囲内、好ましくは約11.1である。いくつかの実施形態では、当該結晶化溶液は、1.2MのLi2SO4、0.1MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、pH11.1の0.02MのMgCl2を含有する。いくつかの実施形態では、結晶を成長させるための方法は、当該組換型インターフェロンを含有する結晶化溶液を約1日から約2週間、好ましくは約2日から約10日、より好ましくは3日から1週間など約3日から約1週間の間、放置することを含む。
【0026】
X線結晶学的分析
本明細書中に開示するインターフェロンの構成アミノ酸の各々は、(「原子座標」としても公知の)1組の構造座標によって規定される。「構造座標」という用語は、結晶性形態の本インターフェロンの原子(散乱中心)によるX線の単色ビームの回折によって得られるパターンに関する数式から導出されるデカルト座標を指す。回折データを用いて、結晶の繰返し単位の電子密度マップを算出する。次に電子密度マップを用いて、インターフェロンタンパク質またはタンパク質/リガンド複合体の個々の原子の位置を確立する。
【0027】
インターフェロンまたはインターフェロン/リガンド構造座標を数学的に操作することによって構造座標のわずかな変化を発生させることができる。たとえば、本明細書中に開示する構造座標は、結晶学的置換、分割、1組全体の付加または削除、反転、または上記の任意の組合せによって操作可能である。これに代えて、アミノ酸の突然変異、付加、置換、および/もしくは欠失、または結晶を構成する成分のうちいずれかの他の変化による結晶構造の変更も、構造座標の変化を生じさせる可能性がある。個々の座標のそのようなわずかな変化は構成全体に対してはほとんど影響しない。元の座標と比べてそのような変化が許容可能な標準誤差範囲内であれば、結果として得られる三次元形状は構造的に均等と考えられる。
【0028】
本発明のインターフェロンの個々の構造座標のわずかな変化は、インターフェロンまたはその部分(たとえばABまたはBCループ)と会合し得るリガンドなどの実体の性質を大きく変えることが予期されないことに留意すべきである。本明細書中で用いるような、本組換型インターフェロンの「ABループ」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する本組換型インターフェロンのアミノ酸残基25−33を意味する。すなわち、ABループは、配列番号4に示すようなアミノ酸配列SPFSCLKDRを有し、本組換型インターフェロンの「BCループ」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する本組換型インターフェロンのアミノ酸残基44〜52を意味する。すなわち、BCループは、配列番号5に示すようなアミノ酸配列DGNQFQKAQを有する。この文脈で、「と会合する」という文言は、リガンドまたはその部分とインターフェロン分子またはその部分との間の近接の状態を指す。会合は非共有であってもよく、この場合、水素結合、ファンデルワールス力、または静電相互作用によって近接して配置することがエネルギ的に有利であり、または会合は共有であってもよい。このように、たとえば、インターフェロンの結合ポケットまたは領域に結合するリガンドは、構造的に均等な結合ポケットもしくは領域に結合するか、またはこれと相互作用することも予期されるであろう。
【0029】
この発明では、本明細書中に記載の関連の主鎖原子上にスーパーインポーズされると、約0.65Å未満の保存された残基主鎖原子(たとえばN、Cα、C、O、好ましくはCα)の根平均二乗偏差を有する任意の分子もしくは分子複合体または任意のその部分が「構造的に均等」と考えられる。すなわち、2つの分子のそれらの部分の結晶構造は、許容される誤差の範囲内で実質的に同一である。特に好ましい構造的に均等な分子または分子複合体は、本明細書中に開示する構造座標の全組±約0.65Å未満のそれらのアミノ酸の保存された主鎖原子からの根平均二乗偏差によって規定されるものである。より好ましくは、根平均二乗偏差は約0.5Å以下であり、さらにより好ましくは約0.35Å以下である。この発明の他の実施形態は、本明細書中に開示するABまたはBCループについての構造座標±約0.65Å未満、好ましくは約0.5Å以下、およびより好ましくは約0.35Å以下の根平均二乗偏差によって規定される分子複合体を含む。
【0030】
「根平均二乗偏差」という用語は、偏差の二乗の算術平均の平方根を意味する。これは、傾向または対象からの偏差またはばらつきを表現する手法である。1つの実施形態では、「根平均二乗偏差」は、本明細書中に記載の構造座標が規定するような、インターフェロンまたはその部分のバックボーンからのタンパク質のバックボーンにおけるばらつきを規定する。
【0031】
X線構造座標は、空間中の点の一意な構成を規定する。当業者ならば、タンパク質もしくはタンパク質/リガンド複合体、またはその部分についての1組の構造座標が、三次元の構成を同様に規定する点の相対的な組を規定することを理解するであろう。同様のまたは同一の構成は、座標間の距離および角度が本質的に同じままであれば、全く異なる組の座標によって規定可能である。さらに、点の縮尺変更可能な構成は、角度を本質的に同じに保ちつつスカラ因子によって座標間の距離を増減することによって規定可能である。
【0032】
さまざまなコンピュータ分析を用いて、分子またはその部分が、本明細書中に開示するインターフェロンまたはその一部と、その三次元構造の観点で規定される「構造的に均等」であるか否かを判断することができる。たとえば、異なる構造、同じ構造の異なる立体配座、または同じ構造の異なる部分同士の間の比較をさまざまなコンピュータ分析によって行なうことができる。1つの実施形態では、そのような分析を、(1)比較すべき構造をロードする、(2)これらの構造中の原子等価性を規定する、(3)フィッティング演算を行なう、および(4)結果を分析するという4つのステップに分けることができる。
【0033】
組換型インターフェロン(rSIFN−co)の三次元構造
この発明は、本組換型インターフェロンの三次元構造を提供する。
【0034】
この三次元構造は、特にABおよびBCループにおいて、技術分野で公開されているIFN−α2bの三次元構造(図12を参照)およびアメリカ合衆国のAmgenのINFERGEN(登録商標)のコンピュータモデル(図14を参照)の構造とは異なっている。
【0035】
1つの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造は、表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標であって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくはまたは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子、好ましくは(「α炭素原子」とも称される)Cα、からの根平均二乗偏差の変動性を有する、原子座標を含む。
【0036】
1つの実施形態では、組換型インターフェロンの上述の三次元構造において、当該組換型インターフェロンの各モノマーは、αヘリックスの6つのセグメント、310ヘリックスのセグメント、およびそれらの間の接続ペプチドから構成される。αヘリックスの当該6つのセグメントの対応のアミノ酸残基の場所は、13〜20、50〜68、70〜76、79〜100、114〜133、および138〜160であり、310ヘリックスの当該セグメントの対応のアミノ酸残基の場所は40〜43である。モノマー構造の折畳みは以下の特性を有する螺旋状のサイトカイン型に属する。当該組換型インターフェロンのCαバックボーンとIFN−α2bタンパク質のCαバックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後、当該組換型インターフェロンの25〜33の残基(ABループ)中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である。
【0037】
好ましくは、当該組換型インターフェロンの残基25でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の場所根平均二乗偏差は3.291ű5%であり、残基26でのCαの場所根平均二乗偏差は4.779ű5%であり、残基27でのCαの場所根平均二乗偏差は5.090ű5%であり、28の残基におけるCαの場所根平均二乗偏差は3.588ű5%であり、残基29でのCαの場所根平均二乗偏差は2.567ű5%であり、残基30でのCαの場所根平均二乗偏差は2.437ű5%であり、残基31でのCαの場所根平均二乗偏差は3.526ű5%であり、残基32でのCαの場所根平均二乗偏差は4.820ű5%であり、かつ残基33でのCαの場所根平均二乗偏差は2.756ű5%である。
【0038】
より好ましくは、当該組換型インターフェロンの残基44〜52(BCループ)でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である。当該組換型インターフェロンおよびIFN−α2bタンパク質の両者の残基44でのCαの場所根平均二乗偏差は1.614ű5%であり、残基45でのCαの場所根平均二乗偏差は1.383ű5%であり、残基46でのCαの場所根平均二乗偏差は2.735ű5%であり、残基47でのCαの場所根平均二乗偏差は2.709ű5%であり、残基48でのCαの場所根平均二乗偏差は5.018ű5%であり、残基49でのCαの場所根平均二乗偏差は4.140ű5%であり、残基50でのCαの場所根平均二乗偏差は3.809ű5%であり、残基51でのCαの場所根平均二乗偏差は2.970ű5%であり、かつ残基52でのCαの場所根平均二乗偏差は0.881ű5%である。以上列挙した「場所根平均二乗偏差」はすべて座標位置の根平均二乗偏差である。
【0039】
別の局面では、この発明は、表7のアミノ酸残基25〜33および/または45〜52からの1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含有する、本組換型インターフェロンの三次元構造の選択された部分を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の「1つ以上のアミノ酸残基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、「当該三次元構造の選択された部分」は、表7のアミノ酸残基25〜33および/または44〜52の原子座標を含有する。いくつかの実施形態では、「三次元構造の選択された部分」は、表7中の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100のアミノ酸残基の原子座標を含有する。いくつかの実施形態では、当該原子座標は、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する。
【0040】
別の局面では、この発明は、本組換型インターフェロンの三次元構造を含むタンパク質空間的構造モデルを提供する。1つの実施形態では、当該タンパク質空間的構造モデルは、電子密度マップ、ワイヤフレームモデル、チキンワイヤモデル、空間充填モデル、棒モデル、リボンモデル、および分子表面モデルなどであり得る。
【0041】
また別の局面では、本発明は、点の縮尺変更可能な三次元構成であって、当該点の少なくとも部分は、本明細書中に開示する構造座標から、または本組換型インターフェロンのABループもしくはBCループを含むペプチドから導出される、三次元構成を提供する。1つの実施形態では、点の縮尺変更可能な三次元構成は、ホログラフィ画像、立体図、モデル、またはコンピュータ表示画像として表示される。
【0042】
三次元構造の適用
組換型インターフェロンと相互作用し得る候補物質のスクリーニング/設計
1つの局面では、この発明は、本組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物をスクリーニングする/設計するための方法を提供する。さらに、当該方法は、本組換型インターフェロンの三次元構造を利用する。またさらに、当該方法はコンピュータに基づいている。1つの実施形態では、この発明は、組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するためのコンピュータベースの方法であって、(a)表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップと、(b)当該三次元構造またはその選択された部分と相互作用することができる構造的特徴を含む候補化合物を選択して、これにより当該組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、当該構造的特徴は、抗原部位、親水性、表面アクセス可能性、および構造的モチーフからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ステップ(b)での候補化合物の選択および同定は、(i)複数の候補化合物について三次元構造を生成するステップと、(ii)ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(i)の三次元構造の各々をフィッティングして最もエネルギ的に有利な相互作用を見出し、これにより組換型インターフェロンと相互作用し得る候補化合物を同定するステップとを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、(c)候補化合物を得る、または合成するステップと、(d)当該組換型インターフェロンと候補化合物とを接触させて、候補化合物が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む。さらに、候補化合物が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップは、候補化合物と接触した際に当該組換型インターフェロンの活性を測定するステップをさらに備えてもよい。測定すべきインターフェロンの活性は、たとえば、抗ウイルス活性、抗腫瘍活性、増殖阻止活性、ナチュラルキラー細胞活性、および免疫調節活性を含む。いくつかの実施形態では、当該候補化合物は、当該組換型インターフェロンまたはその選択された部分に結合するリガンドである。たとえば、当該リガンドは、受容体、調節剤、アゴニスト、およびアンタゴニストからなる群から選択され、当該受容体は、IFNAR1、IFNAR2、またはそれらの複合体であり得、当該選択された部分は、当該組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33(ABループ)および/または45〜52(BCループ)からの1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらに、当該選択された部分は、当該組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または44〜52を含む。
【0043】
別の局面では、本発明は、本組換型インターフェロンに結合する潜在的リガンドを判断するための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、潜在的なリガンドを含む1つ以上のサンプルに本明細書中に開示する結晶を暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含む。
【0044】
別の局面では、本発明は、構造的情報を取得して、インターフェロンとともに分子複合体を形成することができる潜在的リガンドを設計するための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、潜在的なリガンドを含む1つ以上のサンプルに、本明細書中に開示する結晶を暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含む。
【0045】
別の局面では、本発明は、インターフェロン活性の潜在的調節剤を判断する、設計する、または作製するためのコンピュータ支援方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、化学的または生物学的実体のライブラリをスクリーニングするステップを含む。
【0046】
当業者は結晶学を利用して、インターフェロンのリガンドとなり得る化学的または生物学的実体をスクリーニングおよび同定することができる(たとえば、米国特許第6,297,021号を参照)。たとえば、好ましい方法は、未配位の(unliganded)インターフェロンの結晶を得るステップと、未配位のインターフェロンを、インターフェロンの潜在的リガンドを含有する1つ以上のテストサンプルに暴露するステップと、リガンド−インターフェロン分子複合体が形成されるか否かを判断するステップとを含んでもよい。インターフェロンは、インターフェロン結晶を1つ以上の潜在的なリガンドの溶液に浸すステップまたは1つ以上の潜在的リガンドが存在する中でインターフェロンを共結晶化するステップを含むが、これらに限定されないさまざまな方法によって潜在的リガンドに暴露されてもよい。
【0047】
当該リガンド−インターフェロン複合体からの構造的情報は好ましくは、より密接に結合し、およびより具体的には、所望の特別な生物学的活性を有し、公知のリガンドよりもより良好な安全プロファイルまたはその組合せを有する新たなリガンドを設計するのに用いてもよい。たとえば、算出された電子密度マップは結合イベントを直接に明らかにし、結合した化学的または生物学的実体を同定し、リガンド−インターフェロン複合体の詳細な三次元構造を提供する。一旦ヒットが見つかると、そのヒットの一連の類似体または誘導体を、伝統的なスクリーニング法によってより密接な結合または所望の生物学的活性についてスクリーニングしてもよい。オプションで、リガンド−インターフェロン複合体を付加的な潜在的リガンドに繰返し暴露してもよく、これにより2つ以上のヒットを好ましくはともに結合させてより強力なリガンドを同定または設計してもよい。
【0048】
構造的に相同の分子を得るステップ/インターフェロンミメティックを設計するステップ
本明細書中に開示する構造座標を用いて別の結晶化分子または分子複合体についての構造的情報を得るのを支援することができる。この発明の方法は、本明細書中に開示するインターフェロンの構造的特徴と同様の1つ以上の構造的特徴を含有する分子または分子複合体の三次元構造の少なくとも部分の判断を可能にする。これらの分子は本明細書中では「構造的に相同」と称される。同様の構造的特徴は、たとえば、アミノ酸同一性の領域、保存された活性部位または結合部位モチーフ、および同様に配置された二次的構造要素(たとえばαヘリックスおよびβシート)を含み得る。別の実施形態では、構造的相同性は、2つのアミノ酸配列の残基を整列させてその配列の長さに沿って同一のアミノ酸の数を最適化することによって判断される。いずれかまたは両方の配列における隙間は、同一のアミノ酸の数を最適化するために整列を行なう際には許される。しかしながら、各々の配列中のアミノ酸はそれらの適切な順に留まっていなければならない。好ましくは、構造的に相同の分子は、配列番号1と少なくとも65%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するタンパク質である。より好ましくは、本発明のインターフェロンと構造的に相同のタンパク質は、配列番号1の類似部分と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を共有する、少なくとも50個のアミノ酸の連続(contiguous stretch)を含む。構造的に相同の分子または分子複合体についての構造的情報を生成するための方法は当該技術分野で周知である。
【0049】
本明細書中に開示する構造座標は、関連のインターフェロン、インターフェロン変異体、またはさまざまなリガンドと複合体を形成するインターフェロン相同体の結晶学的構造を解明するためにも有用である。この方策は、リガンドとインターフェロンとの間、たとえば候補インターフェロン調節剤とインターフェロンとの間の相互作用についての最適な部位の判断を可能にする。分子のさまざまな結合部位内での変更のための潜在的部位も同定することができる。この情報は、最も効率的な結合相互作用、たとえばインターフェロンとリガンドとの間の増大した疎水性相互作用、を判断するための付加的なツールを提供する。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、組換型インターフェロンのミメティックを設計するためのコンピュータベースの方法であって、(a)複数のミメティックについて三次元構造を生成するステップと、(b)表7に示すような組換型インターフェロンまたはその選択された部分の原子座標を含む三次元構造に対してステップ(a)の三次元構造の各々をフィッティングして当該組換型インターフェロンの最もフィットするミメティックを見出すステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップとを含む、方法をも提供する。
【0051】
合理的薬剤設計
コンピュータ技術を用いて、インターフェロンまたは構造的に相同の分子と会合することができる化学的実体またはリガンドをスクリーニングし、同定し、選択し、および/または設計することができる。本明細書中に開示するインターフェロンの構造座標を知っていると、本明細書中に開示するインターフェロンの配座と相補の形状を有する合成化合物および/または他の分子の設計および/または同定が可能になる。特に、コンピュータ技術を用いて、インターフェロンまたはその部分(たとえばABまたはBCループ)と会合する受容体、調節剤、アゴニスト、およびアンタゴニストなどの化学的実体またはリガンドを同定または設計することができる。潜在的調節剤は、インターフェロンの活性部位のすべてまたは部分と結合し、またはこれに干渉し得るとともに、それらは拮抗、非拮抗、または不拮抗インヒビターであり得るか、または2つのモノマーの間の界面での結合によるダイマー化に干渉し得る。生物学的活性について一旦同定されるか、またはスクリーニングされると、これらのインヒビター/アゴニスト/アンタゴニストを治療にまたは予防に用いて、インターフェロン活性をブロックまたは向上させてもよい。インターフェロンに結合する、またはこれに干渉するリガンドの類似体についての構造−活性データもコンピュータで得ることができる。
【0052】
本明細書中で用いるような「化学的実体」という用語は、化合物、2つ以上の化合物の複合体、およびそのような化合物または複合体のフラグメントを指す。本発明のインターフェロンと会合すると判断される化学的実体は潜在的な薬剤候補である。このように、本インターフェロン、または本明細書中で同定されるような構造的に相同の分子、またはその部分の構造のグラフィック三次元表現を薬剤の発見に有利に用いてもよい。化学的実体の構造座標を用いて、当該技術分野で利用可能な多数の計算方法および技術の1つによってインターフェロンまたは構造的に相同の分子の三次元画像にコンピュータでフィッティングすることができる三次元画像を生成する。
【0053】
薬剤設計の方法の1つの実施形態は、インターフェロンまたは構造的に相同の分子との、公知の化学的実体またはリガンドの潜在的な会合を評価することに係る。このように、薬剤設計の方法は、選択された化学的実体またはリガンドの、本明細書中に述べる分子または分子複合体のうちいずれかと会合する潜在能力をコンピュータで評価するステップを含む。別の実施形態では、薬剤設計の方法は、本インターフェロン、その相同体、またはその部分と会合する化学的実体またはリガンドのコンピュータ支援設計に係る。化学的実体またはリガンドは、一度に1つのフラグメントで段階的な態様で設計可能であるか、または全体としてもしくは「新たに」設計されてもよい。
【0054】
このように、1つの実施形態では、本発明は、合理的薬剤設計のコンピュータベースの方法であって、(a)表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、b)複数の分子フラグメントを設けてその三次元構造を生成するステップと、(c)ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(b)の三次元構造の各々をフィッティングするステップと、(d)選択された分子フラグメントを分子にアセンブルして候補薬剤を形成するステップとを含む、方法を提供する。1つの実施形態では、当該方法は、(e)候補薬剤を得るまたは合成するステップと、(f)当該組換型インターフェロンと候補薬剤とを接触させて、候補薬剤が当該組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含んでもよい。
【0055】
この発明のいくつかの実施形態では、当該三次元構造の選択された部分は、表7のアミノ酸残基25〜33(配列番号4に示すようなアミノ酸配列)および/または45〜52(配列番号5に示すようなアミノ酸配列)からの1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含む。さらに、当該三次元構造の選択された部分は、表7中のアミノ酸残基25〜33(配列番号4に示すようなアミノ酸配列)および/または45〜52(配列番号5に示すようなアミノ酸配列)の原子座標を備え、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子(好ましくはCα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する。
【0056】
相同性モデリング
1つの局面では、相同性モデリングを用いて、相同体を結晶化させずにインターフェロン相同体のコンピュータモデルを構築または洗練することができる。まず、配列整列、二次的構造予測、構造的ライブラリのスクリーニング、またはこれらの技術の任意の組合せによってインターフェロン相同体の予備モデルを作成する。コンピュータソフトウェアを用いて配列整列および二次的構造予測を実行してもよい。たとえば挿入物および削除物の周りの構造的フラグメントなどの構造的矛盾は、所望の長さおよび好適な配座のペプチドについて構造的ライブラリをスクリーニングすることによってモデリング可能である。インターフェロン相同体が結晶化されれば、最終的な相同体モデルを用いて、当該技術分野で公知の技術によって相同体の結晶構造を解明することができる。次に予備モデルにエネルギ最小化を施してエネルギ最小化モデルを生じる。エネルギ最小化モデルは、立体化学的制約に違反する領域を含有し得る。そのような場合、これらの領域を再モデリングして、当該技術分野で公知の多数の技術のうち1つを用いて最終的な相同体モデルを得る。
【0057】
別の局面では、本発明は、未知の構造の分子または分子複合体についての構造的情報を得るための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、分子または分子複合体を結晶化するステップと、結晶化された分子または分子複合体からX線回折パターンを生成するステップと、本明細書中に開示するインターフェロンの構造座標の少なくとも部分にX線回折パターンを適用して未知の構造の当該分子または分子複合体の少なくとも部分の三次元電子密度マップを生成するステップとを含む。
【0058】
別の局面では、本発明は、インターフェロン相同体をモデリングするための方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、本インターフェロンのアミノ酸配列と、推定上のインターフェロン相同体のアミノ酸配列とを整列させるステップと、本明細書中に開示する構造座標から形成されるインターフェロンのモデルに推定上の相同体の配列を組入れてインターフェロン相同体の予備モデルを得るステップと、予備モデルにエネルギ最小化を施してエネルギ最小化モデルを得るステップと、立体化学的制約に違反しているエネルギ最小化モデルの領域を再モデリングしてインターフェロン相同体の最終モデルを得るステップとを含む。
【0059】
インターフェロンミメティック
本発明はインターフェロンミメティックを提供する。
【0060】
1つの局面では、本発明は、本発明に開示するような配列を含むペプチド、または誘導体、活性部分、類似体、改変体もしくはミメティック、およびその使用を提供する。このように、1つの実施形態では、本発明は、配列番号4および/または配列番号5に示すようなアミノ酸配列を含むインターフェロンのミメティックを提供する。1つの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCαバックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後は、当該組換型インターフェロンの残基25〜33でのCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である。いくつかの実施形態では、IFN−α2bの対応の残基と比べて、当該組換型インターフェロンの残基25−33のα炭素の偏差は、それぞれ、3.291ű5%、4.779ű5%、5.090ű5%、3.588ű5%、2.567ű5%、2.437ű5%、3.526ű5%、4.820ű5%、および2.756ű5%である。いくつかの実施形態では、当該組換型インターフェロンの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンとを最小二乗法を用いてスーパーインポーズした後は、当該組換型インターフェロンの残基44〜52でのCαとIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαとの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である。いくつかの実施形態では、IFN−α2bの対応する残基と比べて、当該組換型インターフェロンの残基44〜52のα炭素の偏差は、それぞれ、1.614ű5%、1.383ű5%、2.735ű5%、2.709ű5%、5.018ű5%、4.140ű5%、3.809ű5%、2.970ű5%、および0.881ű5%である。いくつかの実施形態では、ミメティックは機能的ミメティックまたは構造的ミメティックである。いくつかの実施形態では、ミメティックは本組換型インターフェロン(rSIFN−co)のミメティックである。さらに、ミメティックはINFERGEN(登録商標)を含まない。いくつかの実施形態では、当該インターフェロンミメティックの三次元構造は、本組換型インターフェロン(rSIFN−co)と同様である。特に、両者の三次元構造はABおよびBCループにおいて同じであるか、または本質的に同じであり得る。さらに、当該インターフェロンミメティックの三次元構造は表7のアミノ酸残基25〜33(ABループ)および/または44〜52(BCループ)の原子座標であって、当該原子座標はオプションで、約0.65Å、好ましくは約0.5Å、およびより好ましくは約0.35Å未満の保存された主鎖原子、好ましくはCαからの根平均二乗偏差の変動性を有する、原子座標を含む。
【0061】
本発明は、当該技術分野で理解されるように、個々のアミノ酸を他の密接に関連するアミノ酸によって置き換えることができる改変ペプチドを含む。たとえば、個々のアミノ酸を以下のように置き換えてもよい。任意の疎水性脂肪族アミノ酸を任意の他の疎水性脂肪族アミノ酸によって置き換えてもよく、任意の疎水性芳香族アミノ酸を任意の他の疎水性芳香族アミノ酸によって置き換えてもよく、極性側鎖を有する任意の中性アミノ酸を極性側鎖を有する任意の他の中性アミノ酸によって置き換えてもよく、酸性アミノ酸を任意の他の酸性アミノ酸によって置き換えてもよく、塩基性アミノ酸を任意の他の塩基性アミノ酸によって置き換えてもよい。本明細書で用いるように、「ミメティック」、「機能的/構造的ミメティック」は、本明細書中に開示するポリペプチドと同じ機能的/構造的活性を有するペプチド改変体または有機化合物に関する。そのようなミメティックまたは類似体の例は、本明細書中に開示するインターフェロンの三次元構造(三次元構造は表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む)に似せるようにモデリングされる化学的化合物またはペプチド、特にアミノ酸残基の上記配置を有する化合物およびペプチドを含む。このように、本明細書中で用いるような「本組換型インターフェロンのミメティック」は、本組換型インターフェロン(rSIFN−co)と同じ機能/構造活性を有するペプチド改変体または有機化合物、特に本組換型インターフェロンと同じABループおよび/またはBCループ空間的構造を有するものを指しているが、本組換型インターフェロンではない。「ミメティック」がペプチド改変体である場合、そのアミノ酸配列の長さは一般的に、本組換型インターフェロンと同様である。たとえば、ミメティックの当該アミノ酸配列は、約120〜200個のアミノ酸残基、好ましくは約140〜180個のアミノ酸残基、より好ましくは約150〜175個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは約160〜170個のアミノ酸残基、たとえば、約164、165、166、または167個のアミノ酸残基を含むことができる。これに代えて、そのような「ミメティック」は、本組換型インターフェロンよりも短いアミノ酸配列を有するが、ABループおよび/またはBCループを含むペプチド改変体であり得る。たとえば、これは、約10〜100個のアミノ酸残基、好ましくは約15〜80個のアミノ酸残基を含むことができる。
【0062】
好適なミメティックまたは類似体は、当該技術分野で一般的に公知のモデリング技術によって生成可能である。これは、機能的相互作用の研究に係る「ミメティック」の設計およびそのような相互作用を再生できるような態様で配置された官能基を含有する化合物の設計を含む。
【0063】
公知の薬剤活性を有する化合物のミメティックの設計は、薬剤開発のためのリード化合物に基づく公知の方策である。これは、活性化合物の合成が困難であるか、もしくは高価である場合、または通常の投与方法に好適でない場合に望ましいかもしれない。たとえば、ポリペプチドは経口組成物のための活性剤としてはあまり適していない、というのもそれらは消化管でプロテアーゼによってすぐに分解される傾向があるからである。ミメティック設計、合成、および試験を用いて、目標の性質について多数の分子を無作為にスクリーニングすることを回避してもよい。
【0064】
所与の目標性質を有する化合物/ペプチドからのミメティックの設計において通常取るいくつかのステップが存在する。まず、目標の性質を判断するのに決定的および/または重要である化合物/ペプチドの特定の部分を判断する。ペプチドの場合、これは、ペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変えることによって、たとえば各々の残基を順に置き換えることによって行なうことができる。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基はその「ファーマコフォア」として知られている。
【0065】
ファーマコフォアを一旦同定すると、その構造は、たとえば分光技術、X線回折、およびNMRデータなどのある範囲のソースからのデータを用いて、その物性、たとえば立体化学、結合、サイズおよび/または帯電に応じてモデリング可能である。コンピュータ分析、(原子間結合よりもむしろ、ファーマコフォアの帯電および/または体積をモデリングする)類似度マッピング、および他の技術をこのモデリングプロセスで用いることができる。この方策の変形では、リガンドおよびその結合相手の三次元構造をモデリングする。これは、リガンドおよび/または結合相手が結合上の配座を変更する場合に特に有用であり得、これにより、ミメティックを設計しつつモデルをさらに検討することが可能になる。
【0066】
その後、薬理作用団を真似る化学基をその上に導入可能なテンプレート分子を選択する。テンプレート分子および導入すべき化学基は、リード化合物の生物学的活性を維持する他に、ミメティックが、合成が容易であり、薬学的許容可能性が高く、インビボで分解しないように、好都合に選択可能である。この方策によって見出されるミメティックを次にスクリーニングして、それらが目標の性質を有するか否か、またはどの程度それらが目標の性質を呈するかを見ることができる。次にさらなる最適化または変更を行なって、インビボまたは臨床試験用の1つ以上の最終的なミメティックに到達することができる。
【0067】
別の局面では、本発明は、本明細書中に開示するインターフェロンの少なくとも部分を含む未配位の分子を提供する。たとえば、未配位の分子は、配列番号4または配列番号5(本明細書中に記載のインターフェロンのそれぞれABループおよびBCループの配列)を含んでもよい。さらに、未配位の分子は、配列番号4または配列番号5に示すような配列を有する。
【0068】
組成物および治療適用
本発明は、本組換型インターフェロンの結晶性形態または本組換型インターフェロンのミメティックを含有する組成物を提供する。1つの実施形態では、組成物は医薬組成物である。1つの実施形態では、当該医薬組成物はさらに医薬的に許容可能な担体を含む。
【0069】
個人に投与すべきものが、本発明に従うポリペプチド、抗体、ペプチド、核酸分子、小分子、ミメティック、または他の医薬的に有用な化合物のいずれかに拘らず、好ましい投与量(dosage)は、「予防的に有効な量」または「治療上有効な量」(もっとも予防は治療と考えられ得る)であり、この投与量は、個人にその有利な効果を与えるには十分である。投与の実際の量、頻度、および時間的経過は、治療する疾患の性質および深刻さに依存する。たとえば投与量の決定などの治療の処方は、医師および他の医療従事者の責任の範囲内である。状況に依存して、単独でまたは組合せて医薬組成物を投与してもよい。
【0070】
本発明に従う医薬組成物および本発明とともに用いるための医薬組成物は、活性成分に加えて、医薬的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、または当業者には周知の他の材料を含んでもよい。そのような材料は非毒性であるべきであり、活性成分の効能に妨害してはならない。担体または他の材料の正確な性質は、経口、またはたとえば皮膚、皮下、もしくは静脈内などの注射によってであり得る投与経路に依存する。以上で言及した技術および治療計画の例を、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) 1980に見出すことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、当該医薬組成物は、錠剤、カプセル、経口液体、パッチ、注射剤、スプレー、坐剤、および溶液製剤を含む投与形態で処方可能である。推奨される投与形態は、皮下または静脈内注射などの注射であり、医薬組成物中の担体は、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、充填剤、可溶化剤、緩衝剤、保存料、増粘剤、キレート剤、および他のアジュバントを含む任意の許容可能な薬剤担体であってもよい。
【0072】
この発明の異なる目的に基づくと、「医薬的に許容可能な担体」は標準的な医薬的担体のうち任意のものであってもよい。たとえば、公知の適切な担体は、リン酸緩衝食塩水およびさまざまな湿潤剤を含むが、これらに限定されるものではない。他の担体は、錠剤、顆粒剤、およびカプセルのために用いられる添加剤を含んでもよい。典型的な担体はしばしば、デンプン、乳化剤、糖、セルロース、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸、およびステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムなどのその塩、タルク、植物油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤を含有する。そのような担体は着香料および着色添加剤または他の成分も含んでもよい。これらの担体の組成は公知の方法を用いて処方可能である。
【0073】
さらに、本組換型インターフェロンのミメティックは、本組換型インターフェロンの(上記特定的なABループおよび/またはBCループ空間的構造などの)ABループおよび/またはBCループ構造を有するので、それらは、本組換型インターフェロンと同様のウイルス性疾患および/または腫瘍を治療することができると期待される。
【0074】
したがって、別の局面では、本発明は、ウイルス性疾患および/または腫瘍を治療するための医薬の調製のための、本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含む組成物の使用を提供する。
【0075】
別の局面では、本発明は、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための方法であって、当該方法は、有効な量の、本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含有する組成物を被験者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0076】
別の局面では、本発明は、有効な量の本組換型インターフェロンの結晶、インターフェロンミメティック、または当該結晶もしくはミメティックを含有する組成物を含む、ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための医薬組成物も提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、当該ウイルス性疾患は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の型の肝炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、もしくは他の種類のヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、またはヒトT細胞白血病ウイルスII型、またはヒトT細胞白血病ウイルスIII型によって引起されるウイルス感染症を含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、当該腫瘍は癌または固形腫瘍であり、当該腫瘍は、皮膚癌、基底細胞癌および悪性黒色腫、腎細胞腫、肝臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、固形腫瘍、前立腺癌、胃/腹部癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、表在性膀胱癌、血管腫、類表皮癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠間質性腫、白血病、急性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、リンパ腺腫、多発性骨髄腫、赤血球増加症、カポジ肉腫を含んでもよい。
【0079】
本発明のある局面および実施形態を図示する目的のために単に含まれ、この発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を用いてこの発明を詳細に説明する。発明の範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の発明を変更してもよい。
【0080】
本明細書中に引用するすべての刊行物、特許、特許出願は、個々にまたはまとめて、その全体がこの出願に引用により援用される。
【実施例】
【0081】
実施例1
組換型インターフェロンrSIFN−coの産生
この実施例は、組換型インターフェロンrSIFN−co(原液)の調製を記載する。(米国特許第7,364,724号の実施例1および2、ならびに中国特許公開第CN1740197号Aの明細書の11〜17ページを参照)。
【0082】
1.遺伝子クローニング
INFERGEN(登録商標)の公開されたエンコーディングDNA配列および推定されたアミノ酸配列 (Klein ML, et al., Structural characterization of recombinant consensus interferon-alpha. Journal of Chromatography, 1988; 454: 205-215)に基づいて、アミノ酸配列を保存する条件下での大腸菌コドン使用(The Wisconsin Package, by Genetics Computer Group, Inc. Copyright 1992, Medison, Wisconsin, USA)を用いてDNAエンコーディング配列を再設計し、次にrSIFN−coの完全長cDNAを合成した。
【0083】
rSIFN−co cDNA配列合成
rSIFN−co cDNA 5′−末端および3′−末端部分的分子の合成
PCRを用いてrSIFN−co cDNAの5′−末端280bp(フラグメントI)および3′−末端268bp(フラグメントII)部分的分子を直接に合成した。フラグメントIの3′端とフラグメントIIの5′端との間に相補のヌクレオチド配列の41bpの重なりが存在した。
【0084】
(1) オリゴデオキシヌクレオチドフラグメントの化学的合成
【0085】
【化2】
【0086】
(2) PCR
rSIFN−co 5′−末端部分的分子を合成するためのPCR I:テンプレートとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントBを用い、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントAおよびCを用いて、PCRによって長さが280bpのrSIFN−co 5′−末端部分的分子を合成した。
【0087】
【表2】
【0088】
rSIFN−co 3′−末端部分的分子を合成するためのPCR II:テンプレートとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントEを用い、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチドフラグメントDおよびFを用いて、PCRによって長さが268bpのrSIFN−co 3′−末端部分的分子を合成した。
【0089】
【表3】
【0090】
完全長rSIFN−co cDNAのアセンブル
フラグメントIおよびIIをともにアセンブルして、オーバラッピングおよびエクステンションPCR法を用いてrSIFN−coの完全な完全長cDNA配列を与えた。制限酵素部位Nde IおよびPst Iをそれぞれ配列の5′−末端および3′−末端に導入したため、rSIFN−co cDNA配列をプラスミドにクローニングすることができる。
【0091】
(1) 化学的に合成したプライマー
【0092】
【化3】
【0093】
(2) オーバラッピングおよびエクステンションPCR
【0094】
【表4】
【0095】
rSIFN−co遺伝子クローニングおよび配列分析
pLac T7プラスミドをrSIFN−co cDNAのクローニングのためのベクターとして用いた。pLac T7プラスミドは、Stratagene(アメリカ合衆国、カリフォルニア州、ラホーヤ)によって生産されたpBLUESCRIPT II KS(+)プラスミドから再構築した。
【0096】
rSIFN−coの完全長cDNAを含有するPCR生成物を、Stratagene(カリフォルニア州、ラホーヤ)によって生産されたSTRATAPREP PCR精製キットで精製し、その後Nde IおよびPst Iで消化した。同時に、pLac T7プラスミドをNde IおよびPst Iで二段消化した。これらの二段消化したDNAフラグメントを、1%のアガロースゲル電気泳動を用いて分離し、その後507bpのrSIFN−co DNAフラグメントおよび2.9kbのプラスミドDNAフラグメントを、Promega(アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、フィッチバーグ)によって生産されたWizardDNA精製キットを用いて回収および精製した。これらのフラグメントをT4 DNAリガーゼで結合して、組換型プラスミドを形成した。組換型プラスミドを用いてDH5αコンピテント菌(Gibco)を形質転換した。37℃で1晩培養した後、pHY−1と命名された陽性組換型コロニーを同定した。
【0097】
DNA配列決めは、ユニバーサルプライマーT7およびT3を用いて、製造者(アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、マジソン、Epicentre Technologies Ltd)によって提供された指示に従ってSEQUITHERM(登録商標)Cycle Sequencing Kitを用いて行なった。DNA配列決めの結果は、配列が理論的な設計と一致していることを示した。
【0098】
精製した組換型rSIFN−coの16個のN末端アミノ酸および4個のC末端アミノ酸を配列決めした。結果を以下に示した。
【0099】
N−末端:
Cys-Asp-Leu-Pro-Gln-Thr-His-Ser-Leu-Gly-Asn-Arg-Arg-Ala-Leu-
N−末端のMetは成熟型タンパク質において一部が切断された。
【0100】
C−末端:
Arg-Arg-Lys-Glu-COOH
rSIFN−coの完全長ヌクレオチド配列が配列番号2として示され、アミノ配列が配列番号1として示される。
【0101】
発現ベクターの構築、形質転換、酵素消化および同定、ならびに遺伝的安定性
発現ベクターの構築および形質転換
大腸菌発現ベクターpBAD18をNde Iで消化しかつ線形化し、次にXba Iで完全に消化した。1%のアガロースゲルによる電気泳動およびQIAEX IIキット(QIAGEN)を用いた精製を行なって、Nde IおよびXba Iで消化したpBAD18からの4.8kbのフラグメントを与えた。
【0102】
同時に、pHY−1プラスミドをNde IおよびXba Iで二重消化し、1%のアガロースゲル電気泳動による分離の後、715bpフラグメントを精製した。T4 DNAリガーゼを用いてこのフラグメントをpBAD18からの上記4.8kbフラグメントで結合し、組換型プラスミドを産生した。組換型プラスミドを用いてDH5α−コンピテント菌を形質転換した。形質転換した菌をLB−Amp寒天プレート上に広げ、次に37℃で1晩培養した。
【0103】
陽性クローンのスクリーニング
上記LB−プレートからの大腸菌コロニーを無作為に選び、完全長rSIFN−co cDNAを有する組換型プラスミドを含有するクローンを、エンドヌクレアーゼ消化およびPCR分析を用いてスクリーニングした。PCR陽性組換型プラスミドのうち1つはpHY−5と命名され、pHY−5プラスミドを含有する株はPVIIIと命名された。PVIIIを増幅し、将来の使用のためにグリセロール凍結媒体を用いて−80℃で保管した。
【0104】
大腸菌LMG194中でのrSIFN−co遺伝子の高い発現
pHY−5プラスミド中で、rSIFN−co遺伝子は、AraCタンパク質によって調節される強いプロモータPBADの制御下にあった。AraCは、同じプラスミド中に位置するAraC遺伝子でエンコードされたタンパク質である。アラビノースがなければ、AraCのダイマーは210bpのループを形成するO2およびI2に結合する。この配座は転写の完全な阻害をもたらす。アラビノースの存在中では、AraCのダイマーはO2から解放されて、転写に対する阻害を排除するI1およびI2に結合する。アラビノース結合は、PBADプロモータの転写を不活性化する、抑制する、およびこれを活性化すらし、これはPBADを刺激してrSIFN−coの高い発現を媒介する。rSIFN−co発現レベルは細菌タンパク質の合計の50%を超える。
【0105】
2.分離および精製
(1) 産生株の調製
発現ベクターpHY−5を有する大腸菌株LMG194をLB培地に接種し、次に37℃で1晩(約18時間)200rpmで振った。培地には30%グリセリンの50%を加えた。混合の後、産生株としての使用のために培地を1mlのアリコート中で−20℃で保管した。
【0106】
(2) グレード−I種株の調製
グレード−I種株としての使用のために、1%の比率でLB培地(10gのトリプトン、5gのイースト抽出物、および10gのNaClを含有する1L)で産生株を培養し、37℃で一晩(約18時間)200rpmで振った。
【0107】
(3) 株の発酵および収集
10%の比率でRM媒質(20gのカゼイン、1mmol/L(0.203g)のMgCl2、4gのNa2HPO4、3gのKH2PO4、0.5gのNaCl,および1gのNH4Clを含有する1L)にグレード−I種株を加え、pH7.0、37℃で培養した。OD600が約2.0に達するまで発酵を行ない、次に誘導原として最終的な濃度が0.02%になるまでアラビノース(20%溶液)を加えた。4時間後、株を収集および遠心分離し、ペレットを与えた。
【0108】
(4) 封入体の調製
株ペレットを適切な量の緩衝剤A(100mmol/LのTris−HCl、pH7.5の10mmol/LのEDTA、100mmol/LのNaCl)で再懸濁し、−20℃で1晩保った。株を解凍し、ホモジナイザで砕き、次に遠心分離した。緩衝剤B(50mmol/LのTris−HCl、pH7.5の1mol/Lの尿素、10mmol/LのEDTA、0.5%トリトンX−100)、緩衝剤C(50mmol/LのTris−HCl、pH7.5の2mol/Lの尿素、10mmol/LのEDTA、0.5%トリトンX−100)でペレットを洗浄し、次に沈殿した。これを一度繰返し、次にペレットを一度蒸留水で洗浄し、封入体を与えた。
【0109】
(5)再生処理
封入体を6mol/Lのグアニジン−HCl(または尿素)に溶解してわずかに白濁した変性溶液を得、次に速度10000rpmで遠心分離した。上澄みを収集して用い、タンパク質濃度を求めた。変性溶液を3回に分けて再生緩衝剤(0.5mol/LのArg、150mmol/LのTris−HCl、pH7.5の0.2mmol/LのEDTA)に加え、次に4℃で1晩(約18時間)連続して攪拌した。溶液を、その容積が10倍の10mol/Lのリン酸緩衝剤(PB)、5mol/LのPB緩衝剤、および蒸留水で順次透析した。透析後、2mol/L HAc−NaAc(pH5.0)を用いてpHを調整した。溶液を放置し、次にろ過した。
【0110】
(6) HSカチオンカラムクロマトグラフィ
20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)でカラムを調製し、30ml/分の速度で、ステップ(5)から得た再生生成物で装填し、20カラム体積(CV)の20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去し、0.15mol/LのNaCLを含有する、5CVの20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去し、次に0.18mol/LのNaClを含有する3CVの20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)で洗浄して他のタンパク質を除去した。最後に、0.25mol/LのNaClを含有する20mmol/LのHOAc−NaOAc(pH5.0)を用いて目標タンパク質を溶出し、これによりHS溶出タンパク質溶液を得た。
【0111】
(7) 銅イオン親和性クロマトグラフィ(キレート化SEPHAROSE(登録商標)FAST FLOW)
HS溶出タンパク質溶液を0.2mol/L(pH6.6)のPB緩衝剤に加え。4mol/LのNaClを加えて、NaClの濃度を1mol/Lに、pHを6.0に調節し、溶液装填の準備を整えた。1mol/LのNaClを含有する50mmol/LのNa2HPO4(pH5.5)を用いてカラムを調製し、1ml/分のレートで装填した。50mmol/LのNa2HPO4(pH5.0)でカラムを洗浄して他のタンパク質を除去し、次に50mmol/LのNa2HPO4(pH4.0)で洗浄して他のタンパク質を除去した。最後に、50mmol/LのNa2HPO4(pH3.6)を用いて目標タンパク質を溶出して、キレート化カラム溶出目標タンパク質溶液を得た。
【0112】
(8) HSカラムクロマトグラフィ
キレート化カラムから溶出したタンパク質溶液を30倍に希釈し、そのpHを5.0に調節し、次にpH7.0で0.5mol/LのNaClを含有するPB緩衝剤で溶出したHSカラム上に装填して、組換型インターフェロン(タンパク質原液)を与えた。
【0113】
実施例2
組換型インターフェロン製剤
凍結乾燥された注射剤配合(凍結乾燥粉末)
本発明のrSIFN−co原液 34.5μg/ml
リン酸緩衝剤、pH7.0 10mmol/L
グリシン 0.4mol/L
調製方法:
配合に従って材料を計量し、注射剤用の、発熱物質を含まない滅菌水に溶解し、0.22μmの細孔を有するメンブレンを通したろ過によって滅菌し、次に6〜10℃で保管した。サンプルは、小瓶(vial)中に等分する前に、無菌テストおよび発熱源テストに合格した。あらゆる小瓶は一回用量0.3〜0.5を含有した。すべての等分したサンプルを凍結乾燥器で凍結乾燥した。
【0114】
水性注射剤配合
本発明のrSIFN−co原液 34.5μg/ml
リン酸緩衝剤、pH7.0 25mmol/L
NaCl 0.4mol/L
調製方法:
配合に従って材料を計量し、注射剤用の、発熱物質を含まない滅菌水に溶解し、0.22μmの細孔を有するメンブレンを通したろ過によって滅菌し、次に6〜10℃で保管した。サンプルは、小瓶中に等分する前に、無菌テストおよび発熱源テストに合格した。あらゆる小瓶は一回用量0.3〜0.5を含有した。最終生成物を2〜10℃で暗所に保管した。
【0115】
実施例3
ヒトの乳癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究
この実施例はヒト乳癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究を記載する。
【0116】
本組換型インターフェロン(rSIFN−co)およびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)を試験薬剤として用いて、MCF−7中の腫瘍遺伝子および耐性菌MCF−7/ADRの細胞増殖、細胞死、および発現に対するそれらの効果を研究した。
【0117】
A.方法
1.細胞培養
ヒト乳癌細胞株MCF−7およびアドリアマイシン耐性菌MCF−7(MCF−7/ADR)をそれぞれ25cm2または75cm2のフラスコ中で培養した。細胞がフラスコの底を覆った後、それらを0.25%のトリプシンでトリプシン処理した。対数増殖期の細胞を実験用に採取した。
【0118】
2.MTT比色分析を用いた、細胞増殖に対するrSIFN−coの異なる濃度の効果の検出
実験上のグループ分け:各々の細胞株を3グループに分けた(合計で11の小グループ):rSIFN−coグループ(0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/ml)、INFERGEN(登録商標)グループ(0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/ml)、およびブランク対照グループ(RPMI1640完全媒質としても公知の(アメリカ、Sigma)10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640媒質)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)をRPMI1640完全媒質で所望の濃度(最終的なエタノール濃度<1%)に希釈し、4℃で保管した。
【0119】
対数増殖期のMCF−7細胞およびMCF27/ADR細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640媒質で、1.25×105/mlの細胞懸濁液に希釈した。トリパンブルー法を用いて、>95%の細胞生存を確実にするようにした。ウェル当たり100μLで、96ウェルの培養プレートに細胞を種蒔きした。24時間、48時間、72時間後に、以上で言及したグループ分けに従って薬剤を加え、従来のMTTアッセイを用いて細胞増殖を検出した(490nmの波長でマイクロプレートリーダを用いて吸光度を検出した)。各々のグループは平行サンプルとして2つのウェルを有した。実験を3回繰返した。細胞成長阻害に対する異なる時間での異なる薬剤濃度の効果を以下の式に従って算出した。
【0120】
細胞成長阻害率(%)=(対照グループ中のAの値−実験グループ中のAの値)/対照グループ中のAの値×100%
3.フローサイトメトリ(FCM)を用いた細胞死検出
実験上のグループ分け:各々の細胞株を3グループに分けた:rSIFN−coグループ(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)グループ(5μg/mL)、および(10%の仔牛の血清RPMI1640培地を含有する)ブランク対照グループ。
【0121】
FCM検出:薬剤を加えた48時間後に細胞を収集し、次に細胞を単細胞として懸濁し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。Elite Espベースのフローサイトメータ(アメリカ合衆国、Coulter)で細胞死率をアッセイし、機器を備えたソフトウェアによって結果を分析した。これらの実験を3回繰返した。
【0122】
4.細胞腫瘍遺伝子発現の免疫組織化学的検出
実験上のグループ分け:
各々の細胞株を3グループに分けた。rSIFN−co(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)(5μg/mL)、および10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640をMCF−7細胞培養培地に加えた。また、rSIFN−co(5μg/mL)、INFERGEN(登録商標)(5μg/mL)、および10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640をMCF−7/ADR細胞培地にも加えた。
【0123】
P53、Bcl−2、CerbB−2発現の免疫組織化学的検出:
カバーガラスを酸で処理し、高圧で洗浄しかつ滅菌し、次に6ウェルの培養プレートに載置した。対数増殖期のMCF−7およびMCF−7/ADR細胞を0.25%のトリプシンを含む単細胞懸濁液中で消化した。細胞を6ウェルのプレートに接種し、各々のウェルは1×105であり、CO2インキュベータ中で37℃で24時間培養した。細胞が壁にくっついた後、薬剤を各グループに加えた。48時間後、カバーガラスを取外した。従来の免疫組織化学的SABC染色を行ない、すべての濃度は1:100であった。
【0124】
結果の評価のための判断基準:
Volm (Volm M, et al., European Journal of Cancer, 1997, 33 (3), 691-693)の方法に従って染色結果を判断し、細胞核(P53)、細胞質(Bcl−2)、または膜(CerbB−2)に現われる黄色または茶色の粒子を陽性の結果として取った。高倍率(400×)下での各スライド上の5つの視野(FOV)を無作為に選択し、視野毎に200個の細胞を計数した。細胞の各グループ中に発現が存在すれば2つの因子を判断した。スコア付けは、各細胞毎の染色の強度に応じて行なった。着色なしについては0ポイント、薄い黄色については1ポイント、茶色については2ポイント、黄褐色については3ポイントである。平均は、細胞のグループについての平均染色強度であろう。陽性細胞のパーセントは、染色なしについては0ポイントなし、<25%の染色細胞については1ポイント、25%〜50%については2ポイント、>50%については3ポイントである。2つのスコアの和:0は陰性の発現を意味する;2〜4は陽性を意味する;4〜6は強い陽性を意味する。これらの実験を二重盲検で行なった(染色者と観察者の両者ともスライドのグループ分けを知らない)。
【0125】
B.統計的方法
実験データの統計的分析:
すべての実験データを、SPSS11.5統計パッケージを用いて、t検定、分散分析、および順位相関分析を用いてテストした。P値<0.05は、差が統計的に有意であったことを意味する。
【0126】
C.結果
1.MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の増殖に対する効果
(1) MCF−7細胞
rSIFN−coはMCF−7細胞の増殖を阻害することができた。0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)で処理した各細胞グループは、ブランク対照グループと比べて、その吸収度(OA)において有意な減少を示した。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の阻害効果は、初期(24時間、48時間)には有意な差を示さなかった(P>0.05)。72時間を超える処理の後、rSIFN−coの阻害の%は、最も低い濃度である0.02μg/mLを除いて、同じ濃度でINFERGEN(登録商標)の場合よりも高く、差は統計的に有意であった(P<0.05)(表1−1に示す)。
【0127】
【表5】
【0128】
(2) MCF−7/ADR細胞
rSIFN−coはMCF−7/ADR細胞の増殖を阻害することができた。0.02、0.078、0.313、1.25、5.0μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)で処理した各々の細胞グループは、対照グループと比べて、その吸収度(OA)において有意な減少を示した。rSIFN−coの阻害効果は、分散の分析が示すように、最も低い濃度である0.02μg/mLを除いて、同じ濃度でのINFERGEN(登録商標)の場合よりも高く、差は統計的に有意であった(P<0.05)(表1−2に示す)。
【0129】
【表6】
【0130】
2.MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の細胞死に対する効果
対照グループと比べて、5μg/mLのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は、48時間の処理後、MCF−7およびMCF−7/ADR細胞の細胞死を誘導し、差は統計的に有意であった(P<0.01)。rSIFN−coは、同じ濃度でのINFERGEN(登録商標)よりもMCF−7およびMCF−7/ADRに対してより強い細胞死誘導活性を示し、差は統計的に有意であった(P<0.01)(表1−3に示す)。
【0131】
【表7】
【0132】
3.各細胞グループにおけるP53、CerbB−2、およびBcl−2の発現に対する効果
rSIFN−coは、対照グループと比べて、MCF−7細胞におけるP53の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.05)。INFERGEN(登録商標)はP53の発現を減少させたが、減少は対照グループと比べて有意に異ならなかった(P>0.05)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも、対照グループと比べて、MCF−7/ADRにおけるP53の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.05)が、同じ濃度でのrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)はそれらの間で有意な差を示さなかった(P>0.05)。
【0133】
rSIFN−coは、対照グループと比べて、MCF−7およびMCF−7/ADRの両者においてCerbB−2の発現をダウンレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)。CerbB−2の発現はINFERGEN(登録商標)による処理後に減少した。しかしながら、減少は対照グループと比べて有意に異ならなかった(P>0.05)。
【0134】
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は両者とも、対照グループと比べて、MCF−7中のBcl−2の発現をアップレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)が、rSIFN−coは同じ濃度でINFERGEN(登録商標)よりもより強い活性を示し、差は統計的に有意であった(P=0.001)。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)は両者とも、対照グループと比べて、MCF−7/ADRにおけるBcl−2の発現をアップレギュレーションし、差は統計的に有意であった(P<0.01)。結果を表1−4に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例4
子宮頸癌細胞に対するrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究
この実施例は、子宮頸癌細胞の成長を阻害するおよびこの細胞死を誘導する際のrSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)のインビトロ研究を記載する。
【0137】
本組換型インターフェロン(rSIFN−co)およびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されるINFERGEN(登録商標)をテスト薬剤として用いて、子宮頸癌子宮頸部扁平上皮癌細胞(HPV16+)の成長阻害および細胞死誘導に対するそれらの効果を研究した。
【0138】
A.方法
1.子宮頸部扁平上皮癌細胞成長阻害テスト
1.1 細胞培養およびグループ分け
10%のウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地で薬剤サンプルを希釈した。子宮頸癌子宮頸部扁平上皮外皮細胞を96ウェルプレートで培養した。細胞は、細胞濃度1×105/mlの培地を用いて単細胞懸濁液として調製した。各々のウェルに、100μlの細胞懸濁液を加えた。rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)を、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/ml、および10μg/mlの濃度傾斜でプレートに加えた。10%のウシ胎児血清を含有するRPMI−1640媒質を対照グループとして用いた。各々の濃度を3倍にした。インキュベータ中で5%CO2とともに37℃で72時間細胞を培養した。
【0139】
1.2 MTT法による細胞成長阻害テスト
5mg/mlでMTT試薬(アメリカ合衆国、Sigma社)を調製し、各々のウェルに10μlのMTT試薬を加えた。プレートを緩やかに振って試薬を均質化し、5%CO2とともに37℃で4時間培養し、これにより青い結晶をウェルの底に見ることができた。上澄みを除去し、各々のウェルに100μlのDMSOを加え、青い結晶が室温で溶解した後に、次に570nmでの吸収度をマイクロプレートリーダを用いて測定した。
【0140】
1.3 細胞成長阻害の算出
【0141】
【数1】
【0142】
2.子宮頸部扁平上皮癌細胞に対する細胞死テスト
2.1 細胞培養およびグループ分け
子宮頸部扁平上皮癌細胞を7グループに分け、96ウェルプレート中で、10%の不活性化ウシ胎児血清を含有するRPMI−1640媒質中で培養した。グループ1は対照グループとして72時間培養した。グループ2〜4は、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/mlという異なるrSIFN−coの濃度で培養した。グループ5〜7は、0.156μg/ml、0.625μg/ml、2.5μg/mlという異なるINFERGEN(登録商標)の濃度で培養した。
【0143】
2.2 フローサイトメトリ(FCM)でて判断した子宮頸部扁平上皮癌細胞の細胞死率
1000r/分で5分間細胞の各グループを遠心分離した。上澄みを除去し、細胞を、Annexin V/PI二度染め法で細胞死についてテストした。1×106個の生存細胞を含有する各々の検体を培養緩衝剤で一度洗浄し、1000r/分で5分間遠心分離した。100μlのマーカ溶液で細胞を再懸濁し、暗所で15分間室温で培養し、1000r/分で5分間遠心分離して細胞を沈殿させた。培養緩衝剤で一度細胞を洗浄し、蛍光溶液ですり潰し(triturated)、次にFCMでテストする前に、頻繁に振りながら暗所で4℃で20分間培養した。
【0144】
B.統計的分析
すべての定量的分析データを
【0145】
【数2】
【0146】
として表わした。分散分析を用いて異なる薬剤と異なる濃度との間の分散を分析し、SPSS14.0ソフトウェアパッケージを用いて統計的分析を行なった。
【0147】
C.結果
子宮頸部扁平上皮癌細胞成長阻害テスト
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも子宮頸部扁平上皮癌細胞の成長を阻害し、この効果はインターフェロンの濃度が増大するととともに増大した。rSIFN−coの効果は0.625、2.5、および10μg/mlのグループでINFERGEN(登録商標)よりも高かった。表2−1に表示する差は統計的有意性を示した(P<0.01):
【0148】
【表9】
【0149】
2.子宮頸部扁平上皮癌細胞における細胞死の誘導
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも子宮頸部扁平上皮癌細胞における細胞死を誘導し、効果はインターフェロンの増大する濃度にはっきりと相関した。低濃度(0.156μg/ml)でのrSIFN−coの効果はINFERGEN(登録商標)よりも高かった。表2−2に表示する差は統計的有意性を示した(P<0.01):
【0150】
【表10】
【0151】
実施例5
rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の薬剤動態学および生物学的等価性の研究
この実施例は、rSIFN−coとINFERGEN(登録商標)との間の薬剤動態学および生物学的等価性についての研究成果を記載する。本組換型インターフェロンrSIFN−coおよびAmgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)を試験薬剤として採用し、それらの薬剤動態学および生物学的等価性を比べた。
【0152】
健常な人々においてインターフェロンの薬剤動態学の研究を行なうことは困難である。注射後は血漿中の医薬インターフェロンのレベルが非常に低いため、健常な成人の血清中で、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)またはウイルス細胞変性阻害アッセイは直接にこれを測定することがほとんどできない。現在、インターフェロンの薬剤動態学の研究のための検出マーカは一般的に、インターフェロンによって誘導される生成物であり、かつその効能の指標でもある2’,5’−OAS(2−5Aオリゴヌクレオチダーゼ)である。
【0153】
A.被験者および方法
1.被験者
平均年齢が22.8±1.4才、身長170±5.0cm、BMI20.5±2.4、かつ体重59.4±7.2kgの18人の健常な男性のボランティアが存在した。被験者は、包括的な身体検査、(血液、尿、肝機能、および腎機能を含む)実験室でのテスト、ならびに心電図によって正常と判断された。被験者は、テスト前の4週間以内は薬剤を全く用いず、テスト前の3ヶ月以内は臓器を損傷することが知られている薬剤を全く用いなかった。彼らはテスト薬剤に対するアレルギー歴を有しておらず、彼らはテストに応募し、事前同意書に署名した。
【0154】
2.方法
実験方式は、PRCのGCPの関連の指針に従って運用される、四川大学華西病院の医療倫理委員会によって承認された。
【0155】
2.1 材料
試薬:
注射用組換型インターフェロンの凍結乾燥粉末(テスト製剤、すなわち本発明の組換型インターフェロンrSIFN−co、9μg/小瓶)。比較製剤:Amgen(アメリカ合衆国)によって生産されたINFERGEN(登録商標)注射液(比較試薬、9μg/小瓶)。
【0156】
2−5Aキット:栄研化学株式会社がEikenラジオイムノアッセイキットを供給した。キットは、(1)I125−標識付け2’,5’−OAS、(2)2’,5’−OAS抗血清、(3)2’,5’−OAS標準小瓶(各々が0、10、30、90、270、または810pmol/dLの2’,5’−OASを含有する)、(4)緩衝剤、(5)ブランク血清、(6)ポリ(I)−ポリ(C)アガロースゲル、(7)ATP、(8)メルカプトエタノール、および(9)品質管理血清を含む。
【0157】
2.2 実験設計および投薬方法
無作為化対照交差試験を用いて、18人の被験者を無作為に各グループ9名のAおよびBグループに分け、9μgのrSIFN−coおよび9μgのINFERGEN(登録商標)の別々の皮下注射を、1週間のウォッシュ期間で、2サイクルで交互に行なった。
【0158】
テスト前日の午後8時から翌朝の投薬後2時間まで絶食して、午前7時に上腕三角筋に皮下注射を行なった。すべての被験者は標準的な食事(高脂肪でない食物)を摂り、喫煙、アルコール、お茶、コーヒー飲料を飲むことを禁じられ、激しい運動を控えるよう求められた。すべての他の薬剤はテスト期間中禁止された。
【0159】
2.3 血液サンプルの収集およびテスト
投薬前に4mlの血液サンプルを抜いた一方で、注射の2、6、12、18、22、24、26、30、34、38、42、および48時間後に3.5mlの血液サンプルを注射部位とは反対の肘の静脈から抜いた。すぐにサンプルを遠心分離し、結果的に得られた血清を2’,5’−OAS濃度についてテストするまで−20℃で保存した。
【0160】
3.統計的方法
DAS ver1.0の統計ソフトウェアを用いて、テスト製剤および比較製剤を対のt検定で比較した。
【0161】
B.結果
血液サンプルの測定された血清2’,5’−OAS濃度に従い基づき、平均酵素濃度−時間曲線を図16にプロットした。
【0162】
図16に示すように、9μgのrSIFN−coまたは9μgのINFERGEN(登録商標)の皮下注射の後、2つの酵素濃度−時間曲線は基本的に同じ傾向を有したが、rSIFN−coの皮下注射の後は、酵素濃度−時間曲線のピークでの濃度はINFERGEN(登録商標)よりも著しく高くなった。
【0163】
比較製剤(INFERGEN(登録商標))と比べたテスト製剤(rSIFN−co)の相対的生物学的利用率(F)を以下の式によって算出した:
【0164】
【数3】
【0165】
結果は、rSIFN−co(F0〜48)の相対的な生物学的利用率が125.4%であることを示した。テスト製剤と比較製剤との間のTmax差は統計的に有意ではなかった(t=1.458、P=0.163)。AUC0−48とCmaxとの間の差は統計的に有意であり(t=2.730、P=0.014;t=2.347、P=0.031)、テスト製剤は比較製剤よりも高かった。
【0166】
さらに、INFERGEN(登録商標)グループは、比較された好ましくない反応の発生率、程度、および持続時間という観点でrSIFN−coグループよりもより深刻であった。
【0167】
C.結論
(1) 皮下注射の後、rSIFN−coおよびINFERGEN(登録商標)の両者とも2’,5’−OASの産生を誘導した。2つの薬剤の薬剤動態学曲線は同じ傾向であり、主な薬剤動態学パラメータは統計的差を示さなかった。
【0168】
(2) rSIFN−coによって誘導された2’,5’−OASのCmaxおよびAUC0−48の両者ともINFERGEN(登録商標)よりも高く、このことは、rSIFN−coの効能が同じ投与量ではINFERGEN(登録商標)よりも優れているかもしれないことを示す。
【0169】
(3) INFERGEN(登録商標)グループは、比較された好ましくない反応の発生率、程度、および持続時間においてrSIFN−coグループよりもより深刻であった。
【0170】
(4)異なる時間に測定した血清2′,5′オリゴアデニル酸シンターゼ(synthase)(2’,5’−OAS)濃度に基づく平均酵素濃度−時間曲線をプロットした後、rSIFN−coによって誘導された2’,5’−OAS濃度は一般的に2つのピークを有し、曲線の下の面積は、各々が同じ条件下で別々に注射された場合、INFERGEN(登録商標)によって得られるものよりも著しく大きいことが発見された。曲線下の面積の増分は好ましくない反応の発生率および/または発生の度合いの増加と相関しなかった。
【0171】
実施例6
組換型インターフェロンの結晶化
高品質rSIFN−coタンパク質単結晶の調製は、その結晶構造を判断するための前提条件である。結晶成長に用いるrSIFN−coは本発明の当該rSIFN−coから由来した。rSIFN−co単結晶の調製方法、技術的プロセス、結晶化条件、および結晶学的パラメータは以下のとおりであった。
【0172】
本発明のrSIFN−coの凍結乾燥粉末を純水に溶解し、初期タンパク質濃度0.42mg/mlで−20℃で保管した。結晶化の前に、rSIFN−coタンパク質サンプルを3〜3.5mg/mlに濃縮し、結晶成長実験のためにすぐに使用した。室温(293K)に保持した結晶化プロセスのために懸滴蒸気拡散方法を用いた。
【0173】
初期結晶化研究では、異なる条件の組の下で微結晶性rSIFN−coが現われたが、十分な分解能のX線回折分析のために用いることができる高品質単結晶を得ることは困難であった。多数の結晶化条件の最適化の後、最良質の結晶は、1.2MのLiSO4、0.1MのCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、pH11.1および0.02MのMgCl2からなる結晶化溶液を用いて得られることがわかった。rSIFN−coタンパク質の良好な単結晶は、この配合で調製した結晶化溶液を3日間から1週間放置した後に得られた。単結晶は三方晶型であり、0.42×0.08×0.08mmの大きさであった。結晶構造のX線回折分析で用いるrSIFN−coタンパク質結晶を図1に示す。
【0174】
実施例7
結晶X線回折データの分析
結晶回折データの収集:
データ収集は、日本のつくば市のフォトンファクトリで、ビームラインBL5Aからのシンクロトロン放射を用いて低温条件(100K)下で行なった。以下のステップを用いて結晶回折データを収集した。
【0175】
(1) 顕微鏡下で、結晶載置ツールを注意深く用いて結晶を母液からツールの頂部のループに転送した。
【0176】
(2) フラッシュ冷却技術を用いて、結晶を含有するループを、不凍試薬として作用するパラフィン油(アメリカ合衆国、Hampton Research)中に数秒間迅速に浸し、回折装置のゴニオメータ頭部に迅速に転送した。このとき、結晶は、データ収集が100Kという低温で行なわれるように、低温窒素流(100K)に瞬時に入る。
【0177】
(3) データ収集は必要とされるパラメータを設定した後に開始した。光源波長は1.0Åであり、検出器はADSC Quantum 315 CCD(電荷結合素子)であり、結晶−検出器距離は310mmであった。発振法を用いてデータを収集し、画像毎に、発振角度は1°であり、露光時間は12秒間であり、合計110枚の画像を収集した(図2)。
【0178】
回折データの処理および分析:
回折実験で元々得られた直覚回折像(図2)の組を結晶の回折データおよび構造的分析の品質評価のために用いることができる前に、収集した回折データの完全な組をCCP4プログラムパッケージを用いて処理し分析する必要があった。このプロセスは、1)指標付け:回折データを結晶指数(h、k、l)に変換し、単位格子パラメータおよび空間群を算出すること;2)パラメータ変更:単位格子パラメータ、結晶−検出器距離および角度ならびにモザイク性の度合いなどのパラメータを洗練すること;3)統合:回折スポットから強度情報を得ること;4)データの合成:対称のために発生した、または独立した回折スポットのみを用いて完全なデータの組を生成するように複製されるすべての回折スポットを合成すること;5)強度データを構造振幅に変換することからなる。rSIFN−co結晶回折データの収集および分析の結果についての詳細を表3に示す。
【0179】
【表11】
【0180】
実施例8
結晶構造の分析
結晶回折相の判断およびrSIFN−co初期分子構造モデルの構築
分子置換法を採用して、rSIFN−co結晶構造を解明した。ヒツジINF−τ(rSIFN−coに対して54%の配列相同性)の結晶構造(PDB番号1B5L)を相同構造モデルとして選択した。ソフトウェアプログラムPHASERを用いてその回転関数および並進関数を計算し、次にこれを用いて単位格子中のrSIFN−co分子の場所および配向を推定した。ラウエ群および消滅則に基づいて、その空間群がP3121であると判断し、分子モデルを対応して変更した(すなわち、1B5L構造において残基13〜25、37〜69、79〜01、114〜151を保存する)。このモデルから算出される結果は以下のとおりであった。Zスコアは15.71であり、IL−ゲインは307.79であり、衝突は0であった。分子は合理的に単位格子内で積み上がり、IL−ゲインは分子置換のプロセスの間徐々に上昇した。このことは、正確な溶液が得られ、各々の回折点での初期相が定められたことを示した。次に、PHASERによって生成される、初期相を有するmtzを用いて、FFTを用いる電子密度マップを構築した。得られた初期分子構造モデルは電子密度マップとよく一致しており、このことは、rSIFN−coの回折点のすべての正確な相溶液が得られたことを実証した。以上の結果に基づき、rSIFN−coの初期分子構造モデルを構築した。
【0181】
rSIFN−co構造モデルの改良
正確なrSIFN−co分子構造モデルを得る目的で、rSIFN−co初期分子構造モデル中のすべての非水素原子の座標および温度因子に、分子モデリング技術およびコンピュータ化最適化プログラムを用いることによって反復改良が施された。
【0182】
相のない母集団データを用いて、プログラムCNS1.1を構造洗練のために用いた。これらのデータのうち10%をテスト用の組としての使用のために無作為に抽出し、同じ無作為に抽出したテスト用の組をずっと保った。構造モデル中のすべての原子が洗練に加わり、各原子は座標(x,y,z)および等方性温度因子Bを含む4つの洗練パラメータを有した。コンピュータ化自動洗練および手動調節または(ソフトウェアOを用いる)モデルの構築を、全洗練プロセスの間交互に行なった。洗練の初めに制限NCSを用い、一旦構造調節を基本的に達成すると使用を取止めた。Rwork因子(<0.30)およびRfree因子が実際的に下降を止めると、水および溶媒分子を構造に加えて構造改良を完了した。改良のための主な指数はRworkの値0.250およびRfreeの値0.286であった。最終的なrSIFN−co構造改良の主要な指標を表4に列挙する。結果的に得られるrSIFN−coの原子座標を表7に示す。
【0183】
【表12】
【0184】
実施例9
rSIFN−co分子構造モデルの品質の品質特徴付け
rSIFN−co分子構造モデルの品質の品質特徴付け
モデル:直感的に、明確に、かつ正確にrSIFN−coを表示した。図3は、rSIFN−co分子中のアミノ酸残基の構造に一致する典型的な電子密度マップである。各々のアミノ酸残基の空間的場所および配向を明確に同定することができた。
【0185】
(2) アミノ酸残基と関連付けられる平均温度因子の分布マップ(図4)
(3) rSIFN−co分子の立体化学合理性をラマチャンドラン配座プロット(図5)中に特徴付け、そのアミノ酸残基のうち90.6%が最適な許容される領域中に位置し、9.1%が許容される領域にあり、0.4%が通常の許容される領域にあることを示した。このことは、rSIFN−co分子構造モデルが立体化学的に合理的であることを実証した。
【0186】
実施例10
rSIFN−co分子の結晶構造の結晶構造特性
結晶中のrSIFN−co分子の積層およびグローバル割当て
図6は、単位格子中のrSIFN−co分子の積層態様を示す。rSIFN−co結晶構造中の非対称単位は(結晶学的ダイマーと呼ばれる)2つのタンパク質分子から作られた(図7)。ダイマー同士の間の埋込面積は1033.3Å2であり、各モノマーが516.6Å2寄与した。これはモノマー中の合計面積の6.4%しか占めなかった。ダイマー中のA鎖のA、B、F側はB鎖のC、D、E側に対応した(図9を参照)。ソフトウェアVADARを用いて、モノマーおよびダイマーの折畳み自由エネルギがそれぞれ−126.9および−257.1と算出され、このことはダイマーの折畳み自由エネルギが2つの単離されたモノマーの自由エネルギにかなり近いことを意味した(−126.9×2)。このことは、ダイマー同士の間の相互作用が比較的弱く、それらの間に2つの弱い水素結合しか存在しないことを実証した A12(ARG) NH2...NH2 B71(Arg),3.05Å;A145(Arg) NH1...OH B90(Tyr),3.14Å。
【0187】
精製プロセスはrSIFN−coが溶液中でモノマーとして存在することを示した。現在の生物化学的機能実験は、IFN−αの官能単位がモノマーであるべきであると示した。したがって、このダイマーを結晶の積層から形成してもよい。
【0188】
ダイマーのダイマー構造
非対称単位中の2つのrSIFN−co単分子が1つのダイマーを形成する。図8は、rSIFN−coの結晶学的ダイマー組織を示す。鎖Aは残基11〜103および111〜163からなった(残基1〜10、104〜110、および164〜166はこの結晶構造の構築には係らなかった、というのもそれらは電子密度マップ中に示されなかったからである)。鎖Bは残基11〜103および110〜163からなった(残基1〜10、104〜109、および164〜166はこの結晶構造の構築には係らなかった、というのもそれらは電子密度マップに示されなかったからである)。各々のモノマーの結晶構造中、Cys29およびCys139が分子間ジスルフィド結合を形成したことが観察された。Cys1およびCys99からの分子間ジスルフィド結合は示されなかった。なぜなら、Cys1はこの結晶構造の構築に係らなかったからである。加えて、側鎖の密度が示されなかったので、鎖Aの残基30〜33、47〜49および鎖Bの残基30〜33、48〜50は主にAlaまたはGlyとして構築された。2つのモノマーの構造は大体同じであり、非結晶学的対称によって結合された(BからA、極角オメガ、ファイ、カッパはそれぞれ170.64、94.56、118.35であった;tx、ty、tzはそれぞれ−1.061、−0.225、0.155であった)。2つのモノマーをスーパーインポーズしかつ比較した。分子表面上のいくつかのループの部分的な可撓性とは別に、残基の大部分が完全にスーパーインポーズした。アミノ酸残基と会合したすべてのCαのRMSDの分布を図8cに示す。127個の残基(13〜30、34〜44、53〜101、115〜163)はすべてのCαについて0.64ÅのRMSDを有した。局所的構造の差はこのタンパク質の比較的大きな可撓性および結晶が積層した環境における差の結果であるかもしれない。
【0189】
単分子の構造
各々のモノマーはヘリックス間のペプチドを接続することによって互いに接続された6つのα−ヘリックス(A、C、C′、D、E、F)および1つの310ヘリックス(B)からなった。モノマー構造の折畳みは螺旋状サイトカイン(図9)に属した。6つのαヘリックス(A、C、C′、D、E、F)に対応したアミノ酸残基はそれぞれ13〜20、50〜68、70〜76、79〜100、114〜133、および138〜160であった。残基40〜43は310ヘリックス(B)に対応した。これらの二次的構造の分布および組織を図9に明確に示す。二次的構造とアミノ酸配列との間の対応する関係を図10に示す。
【0190】
実施例11
rSIFN−coおよびIFN−α2bの三次元構造
それらの受容体に基づくと、IFNはI型およびII型の2種類に大きく分けることができる。I型はさらにα、β、ωなどに細分することができる。次にIFN−αは約15の異なるサブタイプを含有する。異なるIFN−αサブタイプは80%を超える配列相同性を有するが、それらは依然としてそれらの機能の多様性を呈する。rSIFN−coは人為的かつ人工的に設計されたタンパク質であると考えられる。これまで、I型IFNの三次元構造は6つしか存在せず(表5)、それらの配列相同性を、図11に示す整列された配列に見ることができる。
【0191】
表5および図11に示す比較分析から、IFN−α2bの結晶構造がrSIFN−co(図12)の結晶構造と最も高い類似性を示した。それらの配列を比較することにより、rSIFN−coは残基45のIFN−α2bよりも1つ多いAsp(D)を有し、それらの3D構造を比較することにより、rSIFN−coは、ABループ(残基25〜33)およびBCループ(残基44〜52)の配座について、IFN−α2bとは大きく異なることがわかった。IFN−α2bの結晶構造は2.9Åの分解能で判断された。しかしながら、Cαを除き、すべての他の原子の座標はタンパク質構造データバンク(PDBコード:1RH2)中になかったため、rSIFN−coとIFN−α2bとの間の構造的比較はCαレベルにおいてのみ行なった。2つの分子のすべてのCαの全体的RMSDは1.577Åであったが、ABループおよびBCループ中では、RMSDは3.63Åおよび2.9Åであり、これらはそれぞれ合計平均の2.5倍および2倍であった。加えて、rSIFN−coはその結晶構造の非対称単位中に2つの分子を含有した一方で、IFN−α2bはその非対称単位中に、3つのダイマーから構成される6つのタンパク質分子を有した。明らかに、rSIFN−coのダイマー組織はIFN−α2b(図13)から区別される程度に異なっていた。
【0192】
【表13】
【0193】
サイトカインとしてのIFNは、まず、細胞膜上の特異的な受容体と結合して抗ウイルスおよび抗腫瘍効果などの体内での生物学的効果を生成するいくつかのシグナル形質導入経路を活性化させることが公知である。rSIFN−coはIFN−αの一種である。細胞膜上のその受容体はIFNAR1およびIFNAR2からなるため、IFN−αと結合する受容体の3Dモデルを構築した(図15a)。このモデルに基づいて一連の分子生物学実験を行ない、結果は、IFN−α状のタンパク質がサンドイッチ構造(図15a)中のIFNAR1およびIFNAR2と相互作用した、すなわち、側A、B、およびFがIFNAR2と相互作用し、反対側C、D、およびEがIFNAR1と相互作用したと示唆した。一方、部位特異的突然変異誘発は、IFNAR2と相互作用したABループがIFN−α状のタンパク質(図15)の活性部位の主要構成要素であると明らかにした。構造的比較は、この重要な領域の構造がrSIFN−coとIFN−α2b(図12、表6)との間で区別できる程度に異なっていることを示した。この重要な領域での構造的相違は、受容体との結合特性における変化の結果、異なる生理学的または薬理学的効果を引き起こし得る。
【0194】
明らかに、rSIFN−coの分子骨格はIFN−α2bの骨格と同様であるが、それらはそれらの活性部位の構造において著しく異なった。したがって、分子の薬理学的活性に密接に関連する局所的構造から判定すると、rSIFN−coがIFN−α2bとは異なる新種のIFNであり、それらの構造的差が区別できる程度に異なる生物学的かつ薬理学的特性に繋がったことがわかった。その三次元構造の特定的な重要な領域における差に基づくと、rSIFN−coは独自の生理学的および薬理学的効果を生じるかもしれない。
【0195】
【表14】
【0196】
【表15】
【0197】
【表16】
【0198】
【表17】
【0199】
【表18】
【0200】
【表19】
【0201】
【表20】
【0202】
【表21】
【0203】
【表22】
【0204】
【表23】
【0205】
【表24】
【0206】
【表25】
【0207】
【表26】
【0208】
【表27】
【0209】
【表28】
【0210】
【表29】
【0211】
【表30】
【0212】
【表31】
【0213】
【表32】
【0214】
【表33】
【0215】
【表34】
【0216】
【表35】
【0217】
【表36】
【0218】
【表37】
【0219】
【表38】
【0220】
【表39】
【0221】
【表40】
【0222】
【表41】
【0223】
【表42】
【0224】
【表43】
【0225】
【表44】
【0226】
【表45】
【0227】
【表46】
【0228】
【表47】
【0229】
【表48】
【0230】
【表49】
【0231】
【表50】
【0232】
【表51】
【0233】
【表52】
【0234】
【表53】
【0235】
【表54】
【0236】
【表55】
【0237】
【表56】
【0238】
【表57】
【0239】
【表58】
【0240】
【表59】
【0241】
【表60】
【0242】
【表61】
【0243】
【表62】
【0244】
【表63】
【0245】
【表64】
【0246】
【表65】
【0247】
【表66】
【0248】
【表67】
【0249】
【表68】
【0250】
【表69】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、結晶性組換型インターフェロン。
【請求項2】
この結晶の空間群はP3121である、請求項1に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項3】
結晶の単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータにおいて変動性は5%以下である、請求項1〜2のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項4】
前記結晶は非対称単位中に2つの分子を含有する、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項5】
結晶は共有結合または非共有結合した金属イオンをさらに含む、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項6】
前記組換型インターフェロンは、配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロンを含有する組成物。
【請求項8】
組成物は医薬組成物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するためのコンピュータベースの方法であって、
(a) 表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、
(b) 前記三次元構造またはその選択された部分と相互作用することができる構造的特徴を含む候補化合物を選択して、これにより前記組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するステップとを含む、方法。
【請求項11】
前記構造的特徴は、抗原部位、親水性、表面アクセス可能性、および構造的モチーフからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)における候補化合物の選択は、
(i) 複数の候補化合物について三次元構造を生成するステップと、
(ii) ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(i)の三次元構造の各々をフィッティングして最もエネルギ的に有利な相互作用を見出し、これにより組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するステップとを含む、請求項10〜11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(c) 候補化合物を得るまたは合成するステップと、
(d) 前記組換型インターフェロンと候補化合物とを接触させて、候補化合物が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む、請求項10〜12のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
候補化合物が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップは、候補化合物と接触した際に前記組換型インターフェロンの活性を測定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記活性は、抗ウイルス活性、抗腫瘍活性、増殖阻止活性、ナチュラルキラー細胞活性、および免疫調節活性からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記候補化合物は、前記組換型インターフェロンまたはその選択された部分に結合されるリガンドである、請求項10〜15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドは、受容体、調節剤、アゴニスト、アンタゴニストからなる群から選択され、前記選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または45〜52のうち1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または44〜52を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組換型インターフェロンのミメティックを設計するためのコンピュータベースの方法であって、
(a) 複数のミメティックについて三次元構造を生成するステップと、
(b) 表7に示すような組換型インターフェロンまたはその選択された部分の原子座標を含む三次元構造に対してステップ(a)の三次元構造の各々をフィッティングして前記組換型インターフェロンの最もフィットするミメティックを見出すステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップとを含む、方法。
【請求項20】
合理的薬剤設計のコンピュータベースの方法であって、
(a) 表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、
(b) 複数の分子フラグメントについて三次元構造を提供するステップと、
(c) ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(b)の三次元構造の各々をフィッティングするステップと、
(d) 選択された分子フラグメントを分子にアセンブルして候補薬剤を形成するステップとを含む、方法。
【請求項21】
(e) 候補薬剤を得るまたは合成するステップと、
(f) 前記組換型インターフェロンと候補薬剤とを接触させて、候補薬剤が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記三次元構造の選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または45〜52のうち1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含み、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、請求項10〜21のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記三次元構造の選択された部分は表7のアミノ酸残基25〜33および/または45〜52の原子座標を含み、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
配列番号4および/または配列番号5に示すようなアミノ酸配列を含むインターフェロンのミメティック。
【請求項25】
最小二乗法を用いて、IFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンへ前記インターフェロンミメティックの三次元構造のCα−バックボーンをスーパーインポーズした後、前記インターフェロンミメティックの25〜33残基中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である、請求項24に記載のミメティック。
【請求項26】
IFN−α2bの対応する残基と比較して、前記ミメティックの残基25−33のα炭素の偏差はそれぞれ、3.291ű5%、4.779ű5%、5.090ű5%、3.588ű5%、2.567ű5%、2.437ű5%、3.526ű5%、4.820ű5%、および2.756ű5%である、請求項25に記載のミメティック。
【請求項27】
最小二乗法を用いて、前記ミメティックの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンとをスーパーインポーズした後、前記ミメティックの44−52残基中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である、請求項24〜26のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項28】
IFN−α2bの対応の残基と比較して、前記ミメティックの残基44〜52のα炭素の偏差はそれぞれ、1.614ű5%、1.383ű5%、2.735ű5%、2.709ű5%、5.018ű5%、4.140ű5%、3.809ű5%、2.970ű5%、および0.881ű5%である、請求項27に記載のミメティック。
【請求項29】
機能的ミメティックまたは構造的ミメティックである、請求項24〜28のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項30】
前記インターフェロンは組換型インターフェロン(rSIFN−co)である、請求項24〜29のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項31】
請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティックを含有する組成物。
【請求項32】
医薬組成物である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための方法であって、
有効な量の、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶、請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティック、または請求項7〜9および31〜33のうちいずれか1項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項35】
ウイルス性疾患および/または腫瘍を治療するための医薬の調製のための、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶、請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティック、または請求項7〜9および31〜33のうちいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
前記ウイルス性疾患は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の型の肝炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスもしくは他の種類のヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、ヒトT細胞白血病ウイルスII型、またはヒトT細胞白血病ウイルスIII型によって引起されるウイルス感染症を含む、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記腫瘍は癌性である、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記腫瘍は固形腫瘍である、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項39】
前記腫瘍は、皮膚癌、基底細胞癌および悪性黒色腫、腎細胞腫、肝臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、充実性腫瘍、前立腺癌、胃/腹部癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、表在性膀胱癌、血管腫、類表皮癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠間質性腫、白血病、急性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、リンパ腺腫、多発性骨髄腫、赤血球増加症、カポジ肉腫を含む、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、結晶性組換型インターフェロン。
【請求項2】
この結晶の空間群はP3121である、請求項1に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項3】
結晶の単位格子パラメータは、a=b=77.92Å、c=125.935Å、α=β=90°、γ=120°であり、すべての格子パラメータにおいて変動性は5%以下である、請求項1〜2のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項4】
前記結晶は非対称単位中に2つの分子を含有する、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項5】
結晶は共有結合または非共有結合した金属イオンをさらに含む、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項6】
前記組換型インターフェロンは、配列番号2を含むヌクレオチド配列によってエンコードされる、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロン。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶性インターフェロンを含有する組成物。
【請求項8】
組成物は医薬組成物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するためのコンピュータベースの方法であって、
(a) 表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、
(b) 前記三次元構造またはその選択された部分と相互作用することができる構造的特徴を含む候補化合物を選択して、これにより前記組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するステップとを含む、方法。
【請求項11】
前記構造的特徴は、抗原部位、親水性、表面アクセス可能性、および構造的モチーフからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)における候補化合物の選択は、
(i) 複数の候補化合物について三次元構造を生成するステップと、
(ii) ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(i)の三次元構造の各々をフィッティングして最もエネルギ的に有利な相互作用を見出し、これにより組換型インターフェロンと相互作用することができる候補化合物を同定するステップとを含む、請求項10〜11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(c) 候補化合物を得るまたは合成するステップと、
(d) 前記組換型インターフェロンと候補化合物とを接触させて、候補化合物が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む、請求項10〜12のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
候補化合物が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップは、候補化合物と接触した際に前記組換型インターフェロンの活性を測定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記活性は、抗ウイルス活性、抗腫瘍活性、増殖阻止活性、ナチュラルキラー細胞活性、および免疫調節活性からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記候補化合物は、前記組換型インターフェロンまたはその選択された部分に結合されるリガンドである、請求項10〜15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドは、受容体、調節剤、アゴニスト、アンタゴニストからなる群から選択され、前記選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または45〜52のうち1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または44〜52を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組換型インターフェロンのミメティックを設計するためのコンピュータベースの方法であって、
(a) 複数のミメティックについて三次元構造を生成するステップと、
(b) 表7に示すような組換型インターフェロンまたはその選択された部分の原子座標を含む三次元構造に対してステップ(a)の三次元構造の各々をフィッティングして前記組換型インターフェロンの最もフィットするミメティックを見出すステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有するステップとを含む、方法。
【請求項20】
合理的薬剤設計のコンピュータベースの方法であって、
(a) 表7に示すような組換型インターフェロンの原子座標を含む三次元構造を提供するステップであって、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、ステップと、
(b) 複数の分子フラグメントについて三次元構造を提供するステップと、
(c) ステップ(a)の三次元構造またはその選択された部分に対してステップ(b)の三次元構造の各々をフィッティングするステップと、
(d) 選択された分子フラグメントを分子にアセンブルして候補薬剤を形成するステップとを含む、方法。
【請求項21】
(e) 候補薬剤を得るまたは合成するステップと、
(f) 前記組換型インターフェロンと候補薬剤とを接触させて、候補薬剤が前記組換型インターフェロンと相互作用する能力を測定するステップとをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記三次元構造の選択された部分は、前記組換型インターフェロンのアミノ酸残基25〜33および/または45〜52のうち1つ以上のアミノ酸残基の原子座標を含み、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、請求項10〜21のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記三次元構造の選択された部分は表7のアミノ酸残基25〜33および/または45〜52の原子座標を含み、前記原子座標はオプションで、約0.65Å、または約0.5Å、または約0.35Å未満の保存された主鎖原子(Cα)からの根平均二乗偏差の変動性を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
配列番号4および/または配列番号5に示すようなアミノ酸配列を含むインターフェロンのミメティック。
【請求項25】
最小二乗法を用いて、IFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンへ前記インターフェロンミメティックの三次元構造のCα−バックボーンをスーパーインポーズした後、前記インターフェロンミメティックの25〜33残基中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応する残基中のCαの場所根平均二乗偏差は3.63ű5%である、請求項24に記載のミメティック。
【請求項26】
IFN−α2bの対応する残基と比較して、前記ミメティックの残基25−33のα炭素の偏差はそれぞれ、3.291ű5%、4.779ű5%、5.090ű5%、3.588ű5%、2.567ű5%、2.437ű5%、3.526ű5%、4.820ű5%、および2.756ű5%である、請求項25に記載のミメティック。
【請求項27】
最小二乗法を用いて、前記ミメティックの三次元構造のCα−バックボーンとIFN−α2bタンパク質の三次元構造のCα−バックボーンとをスーパーインポーズした後、前記ミメティックの44−52残基中のCαおよびIFN−α2bタンパク質の対応の残基中のCαの場所根平均二乗偏差は2.90ű5%である、請求項24〜26のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項28】
IFN−α2bの対応の残基と比較して、前記ミメティックの残基44〜52のα炭素の偏差はそれぞれ、1.614ű5%、1.383ű5%、2.735ű5%、2.709ű5%、5.018ű5%、4.140ű5%、3.809ű5%、2.970ű5%、および0.881ű5%である、請求項27に記載のミメティック。
【請求項29】
機能的ミメティックまたは構造的ミメティックである、請求項24〜28のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項30】
前記インターフェロンは組換型インターフェロン(rSIFN−co)である、請求項24〜29のうちいずれか1項に記載のミメティック。
【請求項31】
請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティックを含有する組成物。
【請求項32】
医薬組成物である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ウイルス性疾患および/または腫瘍の治療のための方法であって、
有効な量の、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶、請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティック、または請求項7〜9および31〜33のうちいずれか1項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項35】
ウイルス性疾患および/または腫瘍を治療するための医薬の調製のための、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の結晶、請求項24〜30のうちいずれか1項に記載のミメティック、または請求項7〜9および31〜33のうちいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
前記ウイルス性疾患は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の型の肝炎、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスもしくは他の種類のヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、ヒトT細胞白血病ウイルスII型、またはヒトT細胞白血病ウイルスIII型によって引起されるウイルス感染症を含む、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記腫瘍は癌性である、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記腫瘍は固形腫瘍である、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【請求項39】
前記腫瘍は、皮膚癌、基底細胞癌および悪性黒色腫、腎細胞腫、肝臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、充実性腫瘍、前立腺癌、胃/腹部癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、表在性膀胱癌、血管腫、類表皮癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠間質性腫、白血病、急性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、リンパ腺腫、多発性骨髄腫、赤血球増加症、カポジ肉腫を含む、請求項34に記載の方法または請求項35に記載の使用。
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図1】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図1】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−514279(P2013−514279A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543445(P2012−543445)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002055
【国際公開番号】WO2011/072487
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158398)四川▲輝▼▲陽▼生命工程股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002055
【国際公開番号】WO2011/072487
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158398)四川▲輝▼▲陽▼生命工程股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
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