説明

変調アグノスティック(AGNOSTIC)デジタルハイブリッドモード電力増幅器のシステム及び方法

広帯域通信システムにおいて高効率性及び高線形性を実現するRFデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムが開示される。本発明は、RF領域内の電力増幅器を線形化する適応デジタル予歪の方法に基づく。本開示により、電力増幅器システムはフィールド再構成可能となり、マルチ変調スキーム(変調アグノスティック)、マルチキャリア及びマルチチャネルをサポートできる。その結果、デジタルハイブリッドモード電力増幅器システムは、ベースバンドI−Q信号情報をすぐに入手することができない基地局、リピータ及び屋内信号カバレージシステムなどの無線伝送システムに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[001]本出願は、以下の出願の利益を主張する。
2009年3月31日に出願された米国特許出願第12/415,676号、及びそれを介して、2008年3月31日に出願された米国特許出願第61/041,164号(これは、2009年4月24日に出願された米国仮特許出願第61/172,642号の利益も主張する)、
2009年10月21日に出願された米国特許出願第12/603,419号、及びそれを介して、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,507号、及びそれを介して、2007年4月23日に出願された米国特許出願第60/925,577号、
2008年12月8日に出願された米国特許出願第12/330,451号、及びそれを介して、2007年12月7日に出願された米国特許出願第61/012,416号、
2007年12月20日に出願された米国特許出願第11/961,969号、及びそれを介して、2006年12月26日に出願された米国特許出願第60/877,035号、及び2007年4月23日に出願された米国特許出願第60/925,603号、
2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,502号、及びそれを介して、2008年1月28日に出願された米国特許出願第12/021,241号、及びそれを介して、2007年1月26日に出願された米国特許出願第60/897,746号。
2009年12月21日に出願され、「MULTI−BAND WIDEBAND POWER AMPLIFIER DIGITAL PREDISTORTION SYSTEM AND METHOD」と題し、Wan−Jong Kim、Kyoung−Joon Cho及びShawn Patrick Stapletonを発明者とする米国特許出願第61/288,838号。
2009年12月21日に出願され、「REMOTE RADIO HEAD UNIT SYSTEM WITH WIDEBAND POWER AMPLIFIER AND METHOD」と題し、Chengxun Wang及びShawn Patrick Stapletonを発明者とする米国特許出願第61/288,840号。
2009年12月21日に出願され、「MODULATION AGNOSTIC DIGITAL HYBRID MODE POWER AMPLIFIER SYSTEM AND METHOD」と題し、Wan−Jong Kim、Kyoung−Joon Cho、Shawn Patrick Stapleton、Ying Xiaoを発明者とする米国特許出願第61/288,844号。
2009年12月21日に出願され、「HIGH EFFICIENCY, REMOTELY RECONFIGURABLE REMOTE RADIO HEAD UNIT SYSTEM AND METHOD FOR WIRELESS COMMUNICATIONS」と題し、Wan−Jong Kim、Kyoung−Joon Cho及びShawn Patrick Stapleton及びYing Xiaoを発明者とする米国特許出願第61/288,847号。
上記はすべて、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
[002]本発明は、複素変調技法を使用した無線通信システムに概して関係する。より具体的には、本発明は無線通信のための電力増幅器システムに関係する。
【背景技術】
【0003】
[003]広帯域符号分割多元接続(WCDMA)及び直交周波数分割多重(OFDM)のような複素変調技法を使用した広帯域移動体通信システムは、大きなピーク対平均電力比(PAPR)の仕様を有し、そのためRF伝送用に線形性の高い電力増幅器が必要となる。従来型のフィードフォワード線形電力増幅器(FFLPA)が、電力効率が悪いにもかかわらず、その優れた線形性能ゆえに広く利用されている。
【0004】
[004]従来型FFLPAは、誤差減算、及び専用ハードウェア回路との電力マッチングの原理に主として基づいて、PAに対する非線形補正を実現する。このようなアプローチは、伝送電力バランス、時間遅延及びメインPAにより生成された誤差を正確にマッチングさせるために補助PA及び複雑なハードウェア回路を使用しなければならない。完全なマッチングが得られた後に、メインPAからの非線形歪み誤差が、補助PAからのかかる歪み誤差によってキャンセルされ得る。多くの変数及びパラメータをとりわけ含む非線形予歪回路の複雑性ゆえに、FFLPAはかなりの微調整労力及び他のキャリブレーション労力を必要とする。さらに、かかる伝統的なFFLPAスキームは、メインPAの信号と補助PAの信号とを完全に整合させることが必須であることから、温度及び湿度の変化のような変動する環境条件に対して脆弱でもある。その結果、伝統的な予歪スキームは、実装にコストがかかり、商業的な無線システム環境における予歪の精度及び安定性が限られる。
【0005】
[005]FFLPAの効率の悪さを克服するために、デジタル信号処理(DSP)技術の近年の進歩によってデジタルベースバンド予歪(PD)が実証されている。さらに、電力効率を改善するために、こうした線形化システムに対してドハティ電力増幅器(DPA)も適用されている。しかしながら、より安価なアーキテクチャによるさらなる線形性及びより高い効率性のような、電力増幅器の性能向上が依然必要とされている。
【0006】
[006]従来型のDSPベースのPDスキームはデジタルマイクロプロセッサを利用して、PAの非線形性をコンピューティング、計算及び補正し、その方法として通常、PAシステム内の信号の迅速なトラッキング及び調整を行う。しかし、従来型のDSPベースのPDスキームは、温度のような環境の変化による増幅器の線形性能の変化、及びメモリ効果から生じるPAの出力信号の非対称歪みに見舞われる。こうした変化及び歪みは補償されなければならない。従来型のPDアルゴリズムは、広帯域フィードバック信号に基づいており、必要な情報を捕捉するために高速アナログ−デジタル変換器(ADC)を必要とする。さらに、基準信号と歪み信号との誤差信号を捕捉するために、時間同期が概して必要とされる。この時間マッチングプロセスは、従来型のPDスキームの線形化性能にさらに影響を及ぼし得る小さな同期誤差をもたらす場合がある。基準信号及び歪み信号を整合させるために、振幅及び位相同期も必要とされる。
【0007】
[007]さらに、従来型のPDスキームは、必要な理想的信号又は基準信号としてベースバンドにおいて符号化された同相(I)及び直交(Q)チャネル信号を必要とする。その結果、従来型のPDスキームは、標準又は変調固有になることが多く、各ベースバンドシステムに精密に合うように仕立てられなければならない。したがって、従来型のPDスキームを基地局に配置するために、基地局のベースバンドアーキテクチャにPDエンジンを組み込なければならない。この組み込みは、現実的な実装上の課題となる。既存の基地局又は基地局設計のベースバンドアーキテクチャを変更することは、しばしば不都合又は不可能だからである。PDスキームが特定の基地局設計に対してセットアップされると、しばしば、再構成可能とはならず、その結果、標準又は変調の将来の変更に対してアップグレード可能とはならない。さらに、伝統的なPDアプローチは、ベースバンドI−Q信号源を動作させる必要があることから、リピータ及び屋内信号カバレージサブシステムのようなベースバンドI−Q信号源を有していない一部のRFシステムに対しては適用不可能である。
【発明の概要】
【0008】
[008]したがって、本発明は上記の問題を考慮して行われており、本発明の目的は、広帯域通信システムアプリケーションのために高線形性及び高効率性を備えた電力増幅器システムの高性能でコスト効果の高い方法を提供することである。本開示は、マルチ変調スキーム(変調アグノスティック)、マルチキャリア及びマルチチャネルをサポートするフィールド再構成可能な電力増幅器システムを提供する。本発明のマルチチャネル構成では、複数の帯域向けの複数のPAがあり得る。
【0009】
[009]上記の目的を達成するため、本発明は、RF領域内の電力増幅器を線形化する適応デジタル予歪の方法に概して基づく。本発明の様々な実施形態が開示される。一実施形態では、波高因子低減、PD、電力効率向上技法及び係数適応アルゴリズムの組み合わせがPAシステム内で利用される。別の実施形態では、性能を向上させるためにアナログ直交変調器補償構造も利用される。
【0010】
[0010]本発明のいくつかの実施形態は、電力増幅器の特性の変動を監視すること、及び自己適応アルゴリズムにより自己調整することができる。本開示の1つのそのような自己適応アルゴリズムは、デジタル予歪アルゴリズムと呼ばれ、デジタル領域で実施される。
【0011】
[0011]本発明の適用は、すべての無線基地局、アクセスポイント、モバイル機器及び無線端末、ポータブル無線デバイス、並びにマイクロ波通信及び衛星通信のようなその他の無線通信システムとともに使用するのに好適である。
【0012】
[0012]広帯域通信システムにおいて高効率性及び高線形性を実現するRFデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムが開示される。本発明は、RF領域内の電力増幅器を線形化する適応デジタル予歪の方法に基づく。増幅器出力信号の線形性の変化及び非対称歪みのような電力増幅器の特性が、フィードバック経路でサンプリングされ、デジタルモジュール内で適応アルゴリズムによって制御される。したがって、一実施形態では、本発明は、電力増幅器システムのメモリ効果及び非線形性を補償することができるほか、性能を電力付加効率、隣接チャネル漏洩比(ACLR)及びピーク対平均電力比の点で改善する。本開示により、電力増幅器システムはフィールド再構成可能となり、マルチ変調スキーム(変調アグノスティック)、マルチキャリア及びマルチチャネルをサポートできる。その結果、デジタルハイブリッドモード電力増幅器システムは、ベースバンドI−Q信号情報をすぐに入手することができない基地局、リピータ及び屋内信号カバレージシステムなどの無線伝送システムに特に適している。
【0013】
[0013]本発明のさらなる目的及び利点は、添付の図面とともに行う以下の詳細な説明からより十分に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[0014] デジタルハイブリッドモード電力増幅器システムの基本形を示すブロック図である。
【図2】[0015] 本発明の一実施形態による電力増幅器システムの単純なデジタル予歪ブロック図を示すブロック図である。
【図3】[0016] 本発明のデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムにおける多項式ベースの予歪を示すブロック図である。
【図4】[0017] 本発明のデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムにおける自己適応に適用されるデジタル予歪アルゴリズムのブロック図である。
【図5】[0018] 本発明の遅延推定ブロック図である。
【図6】[0019] 本発明の非整数遅延のブロック図である。
【図7】[0020] 本発明の別の実施形態によるダウンコンバータ(DNC)及びUPCベースのクリッピング誤差修復経路が実装されたデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムを示すブロック図である。
【図8】[0021] 本発明の別の実施形態によるDNC及びアナログ直交変調器(AQM)が実装されたデジタルハイブリッドモード電力増幅器システムを示すブロック図である。
【図9】[0022] アナログ直交変調器補償構造の一実施形態を示すブロック図である。用語集
【0015】
[0023]本明細書で使用する頭字語は、以下の意味を有する。
ACLR 隣接チャネル漏洩比
ACPR 隣接チャネル電力比
ADC アナログ−デジタル変換器
AQDM アナログ直交復調器
AQM アナログ直交変調器
AQDMC アナログ直交復調器コレクタ
AQMC アナログ直交変調器コレクタ
BPF バンドパスフィルタ
CDMA 符号分割多元接続
CFR 波高因子低減
DAC デジタル−アナログ変換器
DET 検出器
DHMPA デジタルハイブリッドモード電力増幅器
DDC デジタルダウンコンバータ
DNC ダウンコンバータ
DPA ドハティ電力増幅器
DQDM デジタル直交復調器
DQM デジタル直交変調器
DSP デジタル信号処理
DUC デジタルアップコンバータ
EER エンベロープ除去及び修復
EF エンベロープフォローイング
ET エンベロープトラッキング
EVM 誤差ベクトル振幅
FFLPA フィードフォワード線形電力増幅器
FIR 有限インパルス応答
FPGA フィールドプログラマブルゲートアレイ
GSM 移動体通信用グローバルシステム
I−Q 同相/直交
IF 中間周波数
LINC 非線形コンポーネント使用線形増幅
LO 局所発振器
LPF ローパスフィルタ
MCPA マルチキャリア電力増幅器
MDS 多方向性サーチ
OFDM 直交周波数分割多重
PA 電力増幅器
PAPR ピーク対平均電力比
PD デジタルベースバンド予歪
PLL 位相ロックループ
QAM 直交振幅変調
QPSK 4位相シフトキーイング
RF 無線周波数
SAW 表面弾性波フィルタ
UMTS ユニバーサル移動体通信システム
UPC アップコンバータ
WCDMA 広帯域符号分割多元接続
WLAN 無線ローカルエリアネットワーク
【発明の詳細な説明】
【0016】
[0024]本発明は、適応デジタル予歪アルゴリズムを利用する新規のRFアウトPAシステムである。本発明は、デジタルモジュール及びアナログモジュールのハイブリッドシステムである。ハイブリッドシステムのデジタルモジュール及びアナログモジュールの相互作用は、広帯域幅を維持又は拡大しつつ、スペクトル再生の線形化及びPAの電力効率の向上の両方を行う。したがって、本発明は広帯域複素変調キャリアについて、より高い効率性及びより高い線形性を実現する。
【0017】
[0025]図1は、少なくともいくつかの実施形態におけるデジタルモジュール、アナログモジュール及びフィードバック経路を含むものとして考え得る基本システムアーキテクチャを示すハイレベルブロック図である。デジタルモジュールは、PDアルゴリズム、他の補助DSPアルゴリズム及び関連デジタル回路を含むデジタル予歪コントローラ101である。アナログモジュールは、メイン電力増幅器102、他の補助アナログ回路、たとえばDPA及びシステム全体の関連周辺アナログ回路である。本発明は、「ブラックボックス」プラグアンドプレイ型システムである。これは、RF変調信号100を入力として受け入れ、実質的に同じであるが増幅されたRF信号103を出力として与えるRFイン/RFアウトだからである。本発明の一実施形態により、ベースバンド入力信号をデジタル予歪器コントローラに直接適用できる。本発明の一実施形態により、光入力信号をデジタル予歪器コントローラに直接適用できる。フィードバック経路は本質的に、予歪コントローラ101に出力信号の一表現を与える。本発明は以下でデジタルハイブリッドモード電力増幅器(DHMPA)システムと呼ばれることがある。
【0018】
[0026]デジタル予歪器アルゴリズム
【0019】
[0027]デジタル予歪(DPD)は、電力増幅器(PA)を線形化する技法である。図2は、線形のデジタル的にプリディストーションされ(予歪処理され)たPAの一実施形態をブロック図の形式で示している。DPDブロックにおいて、メモリ多項式モデルが、予歪関数として使用され(図3)、以下の式に従う。
【数1】


ここでaijはDPD係数である。
【0020】
[0028]DPD推定器ブロックにおいて、最小2乗アルゴリズムを利用してDPD係数を見つけ、次いで当該係数をDPDブロックに転送する。図4に詳細なDPDアルゴリズムが示されている。
【0021】
[0029]図3は、本発明のDHMPAシステムにおける予歪(PD)部分を示すブロック図である。本発明におけるPDは、適応多項式ベースのデジタル予歪システムを概して利用する。PDの別の実施形態は、LUTベースのデジタル予歪システムを利用する。より具体的には、図3及び後述する図7及び図8で開示される実施形態に示されるPDは、「A Method for Baseband Predistortion Linearization in Multi−Channel Wideband Communication Systems」と題する米国特許出願第11/961,969号で示される適応アルゴリズムによりデジタルプロセッサ内で処理される。図3のDHMPAシステムのためのPDは、複数の有限インパルス応答(FIR)フィルタ、すなわち、FIR1 301、FIR2 303、FIR3 305及びFIR4 307を有する。PDはまた、3次積生成ブロック302、5次積生成ブロック304及び7次積生成ブロック306を含む。FIRフィルタからの出力信号は、加算ブロック308において結合される。複数のFIRフィルタに対する係数は、デジタル予歪アルゴリズムによって更新される。
【0022】
[0030]遅延推定アルゴリズム:
【0023】
[0031]DPD推定器はx(n)と対応するフィードバック信号y(n−Δd)とを比較して、DPD係数を見つける。ここでΔdはフィードバック経路の遅延である。フィードバック経路遅延はPAごとに異なり、この遅延は係数推定において信号が到着する前に識別される必要がある。この設計では、送信x(n)及びフィードバックデータy(n)の振幅差相関関数を適用して、フィードバック経路遅延を見つける。この相関は以下によって与えられる。
【数2】


相関C(m)を最大化する遅延nが、フィードバック経路遅延である。図5に遅延推定ブロックが示されている。
【0024】
[0032]フィードバック経路はアナログ回路を通過するため、送信経路とフィードバック経路との間の遅延は、非整数のサンプル遅延であり得る。信号をより正確に同期化するには、非整数遅延推定が必要である。図6に示すように、設計を単純化するために、この設計では半サンプル遅延が考えられている。少なくともいくつかの実施形態ではより小さな非整数の遅延を利用することもできることが理解されよう。
【0025】
[0033]半サンプル遅延データを取得するにあたり、アップサンプリング手法が一般的に選択されるが、この設計では、FPGAにおける非常に高いサンプリング周波数を回避するために、補間方法を使用して半サンプル遅延データを取得する。整数遅延及び非整数遅延を伴うデータは、並行して転送される。非整数遅延の補間関数は以下のとおりである。
【数3】


ここでcは重み係数である。
【0026】
[0034]非整数遅延経路が選択されるか、それとも整数遅延経路が選択されるかは、振幅差相関器の結果によって決定される。相関結果が奇相関である場合、整数経路が選択され、そうでない場合は非整数遅延経路が選択される。
【0027】
[0035]位相オフセット推定及び補正アルゴリズム:
【0028】
[0036]送信信号とフィードバック信号との間の位相オフセットは、回路内に存在する。DPD係数推定の収斂を改善し速めるために、この位相オフセットを除去する必要がある。
【0029】
[0037]送信信号x(n)及びフィードバック信号y(n)は以下のように表すことができる。
x(n)=|x(n)|ejθx及びy(n)=|y(n)|ejθy
位相オフセットej(θx−θy)は以下により計算できる。
【数4】


したがって、送信経路とフィードバック経路との間の経路位相オフセットは以下のとおりである。
【数5】


位相オフセットを除去したフィードバック信号は、以下により計算できる。
【数6】

【0030】
[0038]振幅補正
【0031】
[0039]PAのゲインは若干変化する可能性があることから、フィードバックゲインを補正して、ゲインミスマッチによる誤差を回避する必要がある。フィードバック信号は以下の関数により補正される。
【数7】


この設計では、Nは4096が選択される。Nの選択は、所望の正確性に依拠する。
【0032】
[0040]QR_RLS適応アルゴリズム
【0033】
[0041]DPD係数推定の最小2乗解は以下のとおり公式化される。
【数8】


=x(n−i)|x(n−i)|、w=aijと定義し、ここでk=(i−1)N+jである。最小2乗公式は以下のように表すことができる。
【数9】


この設計では、QR−RLSアルゴリズム(Haykin、1996年)を実施して、この問題を解く。QR_RLSアルゴリズムの公式は以下のとおりである。
【数10】


ここでφは対角行列であり、qはベクトルである。
QR_RLSアルゴリズムは、ユニタリ変換を通じて(i-1)番目のモーメントからi番目のモーメントφ及びqを取得する。
【数11】


θは、ユニタリ変換のユニタリ行列である。
【0034】
[0042]FPGAにおいてより効率的にQR_RLSアルゴリズムを適用するために、ユニタリ変換プロセスにおいて、平方根演算なしのギブンス回転が適用される(E.N.Frantzeskakis、1994年)。
【数12】

【0035】
[0043]RLSアルゴリズムにおいて、i番目のモーメントは以下のように実現する。
【数13】


は以下を解くことにより取得できる。
【数14】

【0036】
[0044]反復プロセスにおいて、データのブロック(この設計では、1つのブロックに4096個のデータがある)がメモリに記憶され、アルゴリズムはメモリ内のすべてのデータを使用して、DPD係数を推定する。DPDの性能をより安定的にするために、DPD係数は、データの1ブロックが処理された後に限り更新される。次の反復プロセスのために行列Aを使用し、その結果、収斂が速くなる。
【0037】
[0045]DPDの性能が安定的であることを保証するために、以下のようにDPD係数を更新するときに重み係数fを使用する。
=f×wi−1+(1−f)w
【0038】
[0046]DPD係数推定器は係数wを、QR_RLSアルゴリズムを使用して計算する。これらのwをDPDブロックにコピーして、PAを線形化する。
【0039】
[0047]図7及び8は、DHMPAシステムのより高度な実施形態のブロック図であり、同じ要素は同じ番号で示されており、図8で番号が付けられていない要素は、図7に示す同じ参照番号を有する。図7及び8の実施形態は、1つのデジタルプロセッサの適応アルゴリズムを有するPDよりも前に、波高因子低減(CFR)を適用し、これにより、PAPR、EVM及びACPRが低減されて、PAの温度変化に起因するメモリ効果及び線形性の変化が補償される。デジタルプロセッサはほぼ任意の形態をとることができる。便宜上、FPGA実装を例として示しているが、多くの実施形態において汎用プロセッサも受け入れることができる。実施形態のデジタルモジュールに実装されるCFRは、参照により本明細書に組み込まれる2008年3月31日に出願された「An Efficient Peak Cancellation Method For Reducing The Peak−To− Average Power Ratio In Wideband Communication Systems」と題する米国特許出願第61/041,164号で示されたスケールド(scaled)反復パルスキャンセレーション(pulse cancellation)に基づく。CFRは、性能を向上させるために含まれ、よって随意である。CFRは、全体的な機能に影響を及ぼすことなく実施形態から除去することができる。
【0040】
[0048]図7は、本発明の一実施形態によるDQMが実装されたDHMPAシステムを示すブロック図である。図7に示すシステムは、RFイン700及び/又はマルチキャリアデジタル信号705のデュアルモードを入力に、RF信号を出力710に有する。信号入力のデュアルモードにより、最大限の柔軟性、すなわちRFイン(「RFインモード」)又はベースバンドデジタルイン(「ベースバンドインモード」)が許容される。図7に示すシステムは3つの主要部分、すなわち、再構成可能デジタル(以下、「FPGAベースデジタル」と呼ぶ)モジュール715、電力増幅器モジュール760及びフィードバック経路725を含む。
【0041】
[0049]FPGAベースデジタル部分は、デジタルプロセッサ715(たとえばFPGA)、デジタル−アナログ変換器735(DAC)、アナログ−デジタル変換器740(ADC)及び位相ロックループ(PLL)745を含む。図7の実施形態はデュアル入力モードを有するため、デジタルプロセッサは信号処理の2つの経路を有する。RF信号入力経路において、デジタルプロセッサはデジタル直交復調器(DQDM)、CFR、PD及びデジタル直交変調器(DQM)を実装している。ベースバンドデジタル入力経路において、デジタルアップコンバータ(DUC)、CFR、PD及びDQMが実装される。
【0042】
[0050]図7に示す実施形態のRFインモードは、FPGAベースデジタル部分の前にダウンコンバータ(DNC)750を、FPGAの前にADC740を実装している。アナログダウンコンバートされた信号が、FPGAベースデジタルモジュールに提供され、ADC740によってデジタル信号に変換される。デジタル変換された信号はDQDMによって復調されて実信号及び虚信号の両方が生成され、次いでCFRによって信号のPAPRが低減される。ピークが低減された信号は、増幅器を線形化するために予歪処理され、DQMを通過して実信号が生成され、次いでFPGAベースデジタル部分のDACによって中間周波数(IF)アナログ信号に変換される。しかし、すべての実施形態でFPGAにおけるDQDM及びDQMの実装が必要とされているわけではない。図7及び8に示すように、デジタル変調器が使用されない場合、FPGAフィーディングAQMモジュール800の後ろにある2つのDACの801を使用して、実信号及び虚信号をそれぞれ生成することができる(「AQM実装」)。
【0043】
[0051]図7のシステムのベースバンドインモードの動作は、RFインモードとはわずかに異なる。I−Q信号のようなマルチチャネルからのデジタルデータストリームが、FPGAベースデジタルモジュールに来て、DUCによってデジタルIF信号へとデジタル的にアップコンバートされる。この上記点より、ベースバンドインモード及びRFインモードは同様に進行する。次いで、かかるIF信号がCFRブロックを通過して、信号のPAPRが低減される。このPAPR抑制信号はデジタル的に予歪処理されて、電力増幅器の非線形歪みが事前に補償される。
【0044】
[0052]いずれかの入力モードにおいて、アクティブなデバイスの自己発熱、バイアスネットワーク及び周波数依存性に起因するメモリ効果は、PDの適応アルゴリズムによっても補償される。PDの係数は、基準信号を伴うフィードバック経路725からの広帯域キャプチャ済み出力信号の同期化によって適応させられる。デジタル予歪アルゴリズムは、同期化及び補償を実行する。予歪処理された信号がDQMを通過して実信号を生成し、次いで図示のようにDAC740によってIFアナログ信号に変換される。上記で開示したように、DQMをすべての実施形態におけるFPGAに又は全く実装する必要はない。代替的に、DQMがFPGAで使用されない場合、AQM実装には2つのDACを実装して、それぞれ実信号及び虚信号を生成することができる。電力増幅器のゲートバイアス電圧753が、適応アルゴリズムによって決定され、次いでDAC535を介して調整されることで、電力増幅器における温度変化に起因する線形性の変動が安定する。 .
【0045】
[0053]電力増幅器部分は、FPGAベースデジタルモジュールからの実信号のためのUPC(図7の実施形態に示すものなど)又は実信号及び複素信号のためのAQM(図8のDHMPAシステムの実施形態など)、多段駆動増幅器を備える高電力増幅器、並びに温度センサを含む。DHMPAシステムの効率性能を改善するために、実施形態に応じて効率性向上技法、たとえばドハティ、エンベロープ除去及び修復(EER)、エンベロープトラッキング(ET)、エンベロープフォローイング(EF)、非線形コンポーネント使用線形増幅(LINC)を使用することができる。これらの電力効率技法は、混合及び整合させることが可能で、基本的なDHMPAシステムに対するオプション機能である。1つのそのようなドハティ電力増幅器技法が、参照により本明細書に組み込まれる2007年4月23日に出願された「N−Way Doherty Distributed Power Amplifier」と題する同一出願人による米国仮特許出願第60/925,577号、及び2009年10月21日に出願された「N−Way Doherty Distributed Power Amplifier with Power Tracking」と題する米国特許出願第12/603,419号で示されている。 増幅器の線形性能を安定化させるために、増幅器の温度が温度センサにより監視され、次いで増幅器のゲートバイアスがFPGAベースデジタル部分によって制御される。
【0046】
[0054]フィードバック部分は、方向性結合器、混合器、ゲイン増幅器、バンドパスフィルタ(BPF)及びデジタル−アナログ変換器(DAC)を含む。実施形態に応じて、これらのアナログコンポーネントを他のアナログコンポーネントと混合及び整合させることができる。増幅器のRF出力信号の部分は、方向性結合器によってサンプリングされ、次いで混合器で局所発振信号によってIFアナログ信号にダウンコンバートされる。IFアナログ信号は、帯域外歪みを捕捉することができるゲイン増幅器及びBPF(たとえば表面弾性波フィルタ)を通過する。BPFの出力が、FPGAベースデジタルモジュールのADCに提供され、それにより、デジタルPDの動的パラメータが、出力電力レベル及びメモリ効果に起因する非対称歪みに応じて決定される。さらに、検出器580が温度を検出して線形性の変化を計算し、次いでPAのゲートバイアス電圧を調整する。PDアルゴリズム及び自己適応フィードバックアルゴリズムの詳細は、多項式ベースの予歪アルゴリズムを示す上述の図3、及び本発明のいくつかの実施形態で使用できるデジタル予歪器同期化アルゴリズムのブロック図を示す同じく上述の図4から理解できよう。
【0047】
[0055]WiMAX又は他のOFDMベースのスキームのようなブロードバンド無線アクセスに対する厳格なEVM要求の場合(EVM<2.5%)、FPGAベースデジタル部分におけるCFRは、厳格なEVM仕様を満たすためにPAPRの小さな低減しか達成できない。一般的な状況では、これは、CFRの電力効率向上能力が制限されることを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、「クリッピング誤差修復経路」790の使用により、CFRからの帯域内歪みを補償し、その結果、かかる厳格なEVM環境においてDHMPAシステム電力効率を最大化する新規の技法が含まれる。上記のように、クリッピング誤差修復経路は、追加的なDAC735をFPGAベースデジタル部分に、余分のUPC720を電力増幅器部分に有する(図7及び8参照)。クリッピング誤差修復経路により、電力増幅器の出力におけるCFRから生じる帯域内歪みを補償することができる。さらに、メイン経路とクリッピング誤差修復経路との任意の遅延ミスマッチを、FPGAにおけるデジタル遅延を使用して整合させることができる。
【0048】
[0056]図7を再び参照すると、RF入力信号はまずベースバンドデジタル信号にダウンコンバートされ、次いでデジタルIF信号にデジタル的にアップコンバートされる(−7.5MHz、−2.5MHz、2.5MHz、7.5MHz)。図7のシステムがベースバンドインモードを有する場合、マルチチャネルからのデジタルデータストリームは、デジタルプロセッサに入るとき直接的にデジタルIF信号にデジタル的にアップコンバートされる(−7.5MHz、−2.5MHz、2.5MHz、7.5MHz)。次いでCFRはPAPRを低減させる。ピークが低減された信号はDPAを線形化するために予歪処理され、実信号及び虚信号を対象として2つのDACを通過し、最終的にAQMを通過する。
【0049】
[0057]図9は、アナログ直交変調器補償構造の一実施形態を示すブロック図である。入力信号は同相成分X及び直交成分Xに分けられる。アナログ直交変調器補償構造は、4つの実フィルタ{g11、g12、g21、g22}及び2つのDCオフセット補償パラメータc1、c2を含む。AQMにおけるDCオフセットが、パラメータc1、c2によって補償される。AQMの周波数依存性が、フィルタ{g11、g12、g21、g22}によって補償される。実フィルタの順番は、必要とされる補償のレベルによる。出力信号YI及びYQが、AQMの同相ポート及び直交ポートに提供される。
【0050】
[0058]図8に示すシステムの電力増幅器部分及びフィードバック部分の構成は、図7に示すシステムと同じである。
【0051】
[0059]図8に示すシステムにおいて、DNCがRF信号を低IF信号に周波数変換する。次いでIF信号はADCに与えられ、それに伴い、CFR及び予歪(PD)が従うベースバンドにデジタル的にダウンコンバートされる。PDの出力はベースバンド信号であり、次いでベースバンド信号はIF周波数までデジタル的にアップコンバートされてDACに与えられる。次いでDACの出力はアップコンバータ(UPC)を介してRF周波数までさらに周波数変換される。図8のシステムの電力増幅器部分及びフィードバック部分の構成は、図7のシステムと同じである。
【0052】
[0060]要約すると、本発明のDHMPAシステムは、従来技術と比べて効率性及び線形性を向上させる。それは、DHMPAシステムが、1つのデジタルプロセッサでCFR、DPD及び適応アルゴリズムを実施できるからであり、結果的にハードウェアリソース及び処理時間の節約となる。DHMPAシステムはまた、再構成可能かつフィールドプログラマブルであり、それは、アルゴリズム及び電力効率向上機能を、いつでもデジタルプロセッサ内のソフトウェアのように調整できるからである。
【0053】
[0061]さらに、DHMPAシステムはRF変調信号を入力として受け入れることから、ベースバンドにおいて符号化されたI及びQチャネル信号を使用する必要はない。したがって、無線基地局システムの性能は、既存のPAモジュールをDHMPAに置き換えるだけで向上させることができる。結果として、本発明が「プラグアンドプレイ」PAシステムソリューションを提供することで、高効率性及び高線形性を有するPAシステム性能から利益を得るために既存の基地局システムの構造を変更したり、信号チャネルの新たなセットを再構築したりする必要がなくなる。
【0054】
[0062]さらに、DHMPAGシステムは、符号分割多元接続(CDMA)、移動体通信用グローバルシステム(GSM)、WCDMA、CDMA2000及び無線LANシステムにおける4位相シフトキーイング(QPSK)、直交振幅変調(QAM)、直交周波数分割多重(OFDM)などの変調スキームに対してアグノスティックである。これは、DHMPAシステムがマルチ変調スキーム、マルチキャリア及びマルチチャネルをサポートできることを意味する。本発明のDHMPAシステムの他の利点として、必要なベースバンド信号情報をすぐに入手することができないリピータ又は屋内カバレージシステムにおけるPAの非線形性の補正がある。
【0055】
[0063]本発明について好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明は説明した詳細に限定されないことが理解されよう。これまでの説明では、様々な代替及び修正を推奨しており、当業者は他の形態を思いつくだろう。したがって、すべてのかかる代替及び修正が、添付の請求項に定める本発明の範囲に含まれることが意図されている。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の出力を線形化するデジタル予歪システムであって、
無線通信向けの入力信号と、
増幅された信号を出力する少なくとも1つの電力増幅器と、
前記電力増幅器のノイズ特性の表現を含む前記増幅された信号から導出される少なくとも1つのフィードバック信号と、
前記少なくとも1つのフィードバック信号に応答して、aijが予歪係数である方程式
【数1】


に少なくとも部分的に従って予歪係数を決定する推定器論理回路と、
前記入力信号を予歪処理して予歪処理済み信号を前記少なくとも1つの電力増幅器に供給するデジタル予歪論理回路と、
を備えるデジタル予歪システム。
【請求項2】
電力増幅器の出力を線形化するデジタル予歪システムであって、
無線通信に適した入力信号と、
増幅された信号を出力する少なくとも1つの電力増幅器と、
前記少なくとも1つの電力増幅器のノイズ特性の表現を含む前記増幅された信号から導出される少なくとも1つのフィードバック信号と、
前記少なくとも1つのフィードバック信号に応答して、方程式
【数2】


によって与えられる補正から特定されるフィードバック経路遅延に少なくとも部分的に基づいて予歪係数を生成する推定器論理回路と
を備えるデジタル予歪システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−515423(P2013−515423A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545469(P2012−545469)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003449
【国際公開番号】WO2011/077247
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
2.GSM
【出願人】(511257056)ダリ システムズ カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】