説明

変電所自動制御システム

【課題】自動電力調整装置及び自動電圧調整装置の相互間で協調を取りながら、送電線の系統電圧を維持しつつ有効電力を所定の抑制値にまで抑制できる変電所自動制御システムを提供することである。
【解決手段】自動電力調整装置18は位相タップ15の制御を行ったときは、自動電圧調整装置19を起動し、自動電圧調整装置19は電圧タップ14の制御を行ったときは自動電力調整装置18を起動し、自動電圧調整装置19による自動制御にて送電端系統電圧を系統電圧範囲内に維持しつつ、自動電力調整装置18によって送電線の有効電力を所定の抑制値未満まで抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整機能と有効電力調整機能とを共に備えた電圧・有効電力調整機能付変圧器が設置された変電所の自動制御を行う変電所自動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変電所の変圧器の位相調整による有効電力の調整機能に加え電圧調整機能にて調整制御する電力調整装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、変圧器が励磁されている状態または負荷をかけた状態で巻線のタップを切換え、電圧値の調整制御を行う負荷時タップ切換装置がある(例えば、非特許文献1参照)。さらに、負荷時タップ切換変圧器にて連系される電力系統において、電力系統の電圧値が許容範囲内に収まるように、負荷時タップ切換変圧器のタップを自動制御するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、電圧調整機能と有効電力調整機能とを共に備えた電圧・有効電力調整機能付変圧器を変電所の母線と送電線との間に設置し、広域の電力送電系統網における時々の系統運用状態を運用員が判断し、電圧・有効電力調整機能付変圧器の電圧タップ及び位相タップの上げ下げを手動制御(操作)することで、電力系統の電圧値を許容範囲内に維持しつつ、当該送電回線に生じる過負荷の抑制や有効電力(潮流)の最適化を図る変電所制御システムがある(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
電圧・有効電力調整機能付変圧器を用いた変電所制御システムにおいては、運転員が周辺系統網の事故や操作によって当該送電線に重畳される送電線の有効電力(潮流)が許容範囲内にあるのかを速やかに判断し、運転員の手動操作によって電圧調整と有効電力調整機能付変圧器の電圧タップ及び位相タップの操作を繰り返し、電力系統の電圧値を許容範囲内に維持しつつ所定の送電有効電力値にまで抑制する。この緊急時の判断及び速やかな手動操作を行う必要があるために運転員に高度な運転操作が求められる。
【0005】
また、運転員の判断によらず、自動電力調整装置(Automatic Power Regulator)と自動電圧調整装置(Automatic Voltage Regulator)を設置し、事前の演算結果によって得られた送電線の有効電力の結果から自動制御を行うこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−125473号公報
【特許文献2】特開2004−173384号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JEC-2220
【非特許文献2】東北電力(株)ホームページ(http://www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/1997/71030.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、自動電力調整装置と自動電圧調整装置とで自動制御を行う場合、自動電力調整装置及び自動電圧調整装置の相互間で協調を取らないと、電圧タップと位相タップとが同時に制御される場合がある。
【0009】
通常の運用系統では、送電線の有効電力を抑制することで系統電圧が上昇する。従って、系統電圧が所定の電圧範囲の上限を超えているときに、電圧タップを下げる制御を行い同時に有効電力を下げるために位相タップを制御すると、系統電圧を下げようと電圧タップを制御したにも拘らず系統電圧が思うように下がらない場合がある。その結果、不安定かつ過渡なタップ制御を行う場合がある。
【0010】
本発明の目的は、自動電力調整装置及び自動電圧調整装置の相互間で協調を取りながら、送電線の系統電圧を維持しつつ有効電力を所定の抑制値にまで抑制できる変電所自動制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る変電所自動制御システムは、変電所からの主母線と送電線との間に配置され電圧タップと位相タップとを備えた電圧・有効電力調整機能付変圧器と、前記送電線の電気量を計器用変成器を介して取り込み送電線の有効電力を演算しその送電線の有効電力が所定の制限値を超えたとき所定の抑制値未満になるように前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の位相タップに対して位相タップ制御指令を出力する自動電力調整装置と、前記送電線の電気量を計器用変成器を介して取り込み送電線の系統電圧を演算しその送電線の系統電圧が所定の系統電圧範囲内になるように前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の電圧タップに対して電圧タップ制御指令を出力する自動電圧調整装置とを備え、前記自動電力調整装置は位相タップの制御を行ったときは前記自動電圧調整装置を起動し、前記自動電圧調整装置は電圧タップの制御を行ったときは前記自動電力調整装置を起動し、前記自動電圧調整装置による自動制御にて送電端系統電圧を系統電圧範囲内に維持しつつ、前記自動電力調整装置によって送電線の有効電力を所定の抑制値未満まで抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動電力調整装置及び自動電圧調整装置の相互間で協調を取りながら、送電線の系統電圧を維持しつつ有効電力を所定の抑制値にまで抑制できる変電所自動制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの一例を示す構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの他の一例を示す構成図。
【図3】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例1による処理内容を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例2による処理内容を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例3による処理内容を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例4による処理内容を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例5による処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの一例を示す構成図である。変電所にある主母線11と送電線12との間に電圧・有効電力調整機能付変圧器13が配置される。電圧・有効電力調整機能付変圧器13は電圧調整を行う電圧タップ14と有効電力調整を行う位相タップ15とを備えている。電圧・有効電力調整機能付変圧器13の1次側には計器用変成器としてのCT16及びVT17が設けられ、CT16は送電線の電気量である電流値を検出し、VT17は送電線の電気量である電圧値を検出する。
【0015】
自動電力調整装置18にはCT16で検出された送電線の電流及びVT17で検出された送電線の電圧が入力され、自動電圧調整装置19にはVT17で検出された送電線の電圧が入力される。自動電力調整装置18では送電線の有効電力を演算する。その演算結果から所定の有効電力に抑制することを目的として電圧・有効電力調整機能付変圧器13に対して位相タップ制御指令S1を出力する。自動電圧調整装置19では系統電圧を演算する。その演算結果から所定の系統電圧範囲内に収めることを目的として、電圧・有効電力調整機能付変圧器13に対して電圧タップ制御指令S2を出力する。
【0016】
また、自動電力調整装置18と自動電圧調整装置19との自動制御の協調を行うことを目的として、自動電力調整装置18と自動電圧調整装置19との間は専用通信線20で接続され、自動電力調整装置18及び自動電圧調整装置19は、相互間で協調を取りながら、送電線の系統電圧を維持しつつ有効電力を所定の抑制値にまで抑制する。具体的には、位相タップと電圧タップの制御を行う権利を交互に受け渡し、いずれかの調整装置が自己のタップ制御のための条件であれば、制御を行ってから他方の調整装置に制御を行う権利を譲る。自己の制御を行う条件で無ければ制御を行うことを放棄して他方の調整装置へ制御を行う権利を譲る。このような自動制御を繰り返すことで、系統電圧を維持しつつ、所定の有効電力の値にまで抑制する。
【0017】
図2は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの他の一例を示す構成図である。これは、図1に示したものに対し、計器用変成器であるCT16及びVT17を電圧・有効電力調整機能付変圧器13の2次側に設けたものである。
【0018】
図3は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例1による処理内容を示すフローチャートである。まず、自動電力調整装置18を起動し(S1)、送電線12の有効電力Pが予め整定された有効電力の制限値Pset1を超えたか否かを判定する(S2)。送電線12の有効電力Pが制限値Pset1を超えていない場合は処理は終了する。
【0019】
一方、送電線12の有効電力Pが制限値Pset1を超えていた場合は、自動電力調整装置18は、初回位相タップ制御(1タップ)として位相タップ制御指令S1を出力する(S3)。その結果、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の位相タップ15が制御され有効電力が抑制される。そして、自動電力調整装置18は自動電圧調整装置19を起動し(S4)、自動電圧調整装置19へ制御を行う権利を譲る。この権利は自動電圧調整装置19と自動電力調整装置18との間の専用通信線20を経由して受け渡す。
【0020】
次に、権利を譲られた自動電圧調整装置19は、系統電圧Vと予め定められた電圧値Vsetとの電圧差絶対値|V−Vset|が予め定められた許容差dVset(=Vset×許容%)未満であるか否かを判定する。電圧差絶対値|V−Vset|が許容電圧範囲(dVset>|V−Vset|)外である場合には、自動電圧調整装置19は電圧タップ制御(1タップ)として電圧タップ制御指令S2を出力する(S6)。その結果、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の電圧タップ14が制御され、許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達するまでステップS4〜ステップS6を繰り返す。
【0021】
そして、ステップS5の判定で、許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達したことを条件に、再び自動電力調整装置18を起動し(S7)、再び自動電力調整装置18へ制御を行う権利を譲る。
【0022】
自動電力調整装置18は、送電線の有効電力Pが予め設定されたされた送電線の有効電力の抑制値Pset2以下に達したか否かを判定し(S8)、抑制値Pset2以下に達した場合は処理を終了する。一方、抑制値Pset2以下に達していない場合は位相タップ制御(1タップ)を行い(S9)、有効電力が抑制値Pset2以下に達するまでステップS4〜ステップS9を繰り返し行う。なお、系統電圧が急激に変化して広域系統全体に悪影響を与えないように、位相タップ制御は1タップ毎に実施する。
【0023】
実施例1によれば、自動電力調整装置18によって電圧・有効電力調整機能付変圧器13の位相タップを自動制御し、所定の送電有効電力の値Pset2にまで、送電線の有効電力Pを抑制し、その間は、自動電圧調整装置19によって電圧・有効電力調整機能付変圧器13の電圧タップを自動制御し系統電圧Vを維持するので、送電線の系統電圧を維持しつつ有効電力を所定の抑制値にまで抑制できる。
【0024】
図4は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例2による処理内容を示すフローチャートである。この実施例2は、図3に示した実施例1に対し、ステップS10〜ステップS12を追加し、最初に自動電圧調整装置19を起動して(S10)、電圧判定処理(S11)及び電圧タップ制御処理(S12)を追加したものである。図3と同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0025】
まず、自動電圧調整装置19を起動する(S10)。自動電圧調整装置19は、系統電圧Vと予め設定された電圧値Vsetとの電圧差絶対値|V−Vset|を求め、電圧値Vsetに対する許容差dVset(=Vset×許容%)による判定処理(dVset>|V−Vset|)を行う(S11)。
【0026】
そして、自動電圧調整装置19は、系統電圧Vが電圧値Vsetを基準とする許容電圧範囲(Vset±dVset)外であれば、電圧タップ制御(1タップ)を行い(S12)、これにより、自動電圧調整装置19から電圧タップ制御指令S2が出力され、その結果、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の電圧タップ14が制御される。系統電圧Vが許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達するまでステップS11〜S12が繰り返し行われる。そして、系統電圧Vが許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達すると、自動電圧調整装置19から自動電力調整装置18に制御を行う権利を譲り、図3と同様のステップS1〜ステップS9の処理が行われる。
【0027】
実施例2によれば、実施例1と同様に、自動電力調整装置18と自動電圧調整装置19の組合せにより、運転員の判断によらず自動制御が行え、かつ、自動電力調整装置18と自動電圧調整装置19との同時制御を回避して、制御を行う権利を交互に譲りながら、効率的で安定性のある変電所の自動制御が行える。
【0028】
図5は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例3による処理内容を示すフローチャートである。この実施例3は、図3に示した実施例1に対し、ステップS13〜ステップS15を追加し、送電線の有効電力Pが一定時限Tset以上に亘って所定の制限値Pset1を超えたときに、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の位相タップ15に対して位相タップ制御指令S1を出力するようにしたものである。図3と同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0029】
まず、自動電力調整装置18を起動し(S1)、送電線12の有効電力Pが予め整定された有効電力の制限値Pset1を超えたか否かを判定する(S2)。送電線12の有効電力Pが制限値Pset1を超えていない場合は処理は終了する。
【0030】
一方、送電線12の有効電力Pが制限値Pset1を超えていた場合は、自動電力調整装置18は、タイマーをリセット処理し(S13)、タイマーのカウントをスタートさせる(S14)。そして、タイマーのカウント時間tが一定時限Tsetを超えたか否かを判定し(S15)、タイマーのカウント時間tが一定時限Tsetを超えたときは、図3のステップS3以降の処理に移行する。
【0031】
なお、ステップS2の判定で送電線の有効電力Pが制限値Pset1以下に復帰すれば処理は終了する。また、ステップS13のタイマー”t”リセット処理は、再び送電線の有効電力Pの判定処理(P>Pset1)結果にて、ステップS15でのタイマー判定処理(t>Tset)を起動する際に備えて、タイマー”t”の時限を一旦リセットさせるものである。
【0032】
実施例3によれば、一旦、変電所自動制御システムを起動してしまうと、位相タップ15と電圧タップ14との制御を繰り返すので、送電線の有効電力を抑制するまでに時間を要するが、実施例3の判定処理を加えることで、変電所自動制御システムが起動する以前に、事故発生後の送電復旧や再閉路の成功等により電力送電系統網の安定運転への復旧が可能になった場合には、変電所自動制御システムを起動する必要がないので、変電所自動制御システムの無用な起動を回避できる。
【0033】
図6は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例4による処理内容を示すフローチャートである。この実施例4は、図3に示した実施例1に対し、ステップS16〜ステップS21を追加し、送電線の有効電力の抑制後に外部から起動条件があったときは、前記自動電圧調整装置による電圧タップの自動制御にて送電端系統電圧を維持しつつ、送電線の有効電力抑制前の位相タップの値にまでに戻すようにしたものである。図3と同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0034】
図6において、ステップS1〜ステップS9の処理で送電線の有効電力の抑制した後に、自動電力調整装置18は外部からの起動条件があるか否かを判定する(S16)。すなわち、周辺系統網の送電線復旧等の外部条件があるか否かを判定し、外部からの起動条件がない場合には処理を終了する。
【0035】
外部からの起動条件がある場合には、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の位相タップ15の位置と予め設定された位相タップset0とが等しいか否かを判定し(S17)、位相タップ15の位置と予め設定された位相タップset0とが等しいときは処理を終了する。位相タップ15の位置と予め設定された位相タップset0とが異なる場合は、自動電力調整装置18は位相タップ15の制御を1タップ分のみ実施し(S18)、自動電力調整装置18は自動電圧調整装置19を起動し(S19)、自動電圧調整装置19へ制御を行う権利を譲る。
【0036】
自動電圧調整装置19では、系統電圧Vと予め定められた電圧値Vsetとの電圧差絶対値|V−Vset|が電圧値Vsetに対する許容差dVset(=Vset×許容%)未満であるか否かを判定し(S20)、系統電圧Vが予め定めた電圧値Vsetを基準とする許容電圧範囲(Vset±dVset)内であるときはステップS17に戻る。
【0037】
一方、系統電圧Vが予め定めた電圧値Vsetを基準とする許容電圧範囲(Vset±dVset)外であるときは、自動電圧調整装置19は電圧タップ14の制御を1タップ毎に実施しステップS20に戻り、許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達するまで、ステップS20〜ステップS21を繰り返す。
【0038】
そして、系統電圧Vが許容電圧範囲(Vset±dVset)内に達すると、再びステップS17に戻り、位相タップ15の位置が位相タップset0と一致するまでステップS17〜ステップS21を繰り返す。
【0039】
これにより、自動電圧調整装置19による電圧タップ14の自動制御にて系統電圧を維持しつつ、自動電力調整装置18によって送電線の有効電力抑制前の位相タップset0の位置にまで自動制御する。
【0040】
実施例4によれば、電圧タップ14による系統電圧を維持しつつ、位相タップ15の位置を抑制前の値に自動で戻すことが可能となる。一旦、変電所自動制御システムの起動により位相タップ15の位置を変化させたときは、後に位相タップ15の位置を抑制前の位置に戻しておくことが必要になるが、従来では、これを運転員が手動操作により行っていたが、実施例4では、位相タップ15の位置を抑制前の値に自動で戻すことが可能となる。
【0041】
図7は本発明の実施の形態に係る変電所自動制御システムの実施例5による処理内容を示すフローチャートである。この実施例5は、図3に示した実施例1に対し、ステップS5とステップS6との間にステップS22を追加するとともに、ステップS8とステップS9との間にステップS23を追加したものである。図3と同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0042】
自動電圧調整装置19または自動電力調整装置18、あるいはその両方がタップ操作を行う系統電圧値及び送電線の有効電力値にある場合、そのタップ制御の結果、電圧タップ14及び位相タップ15の位置が電圧・有効電力調整機能付変圧器13において禁止されるタップ位置の組合せになる場合がある。その場合には、当該タップ操作は実行することができない。
【0043】
そこで、図7に示すように、電圧タップ14の制御を行うステップS6の前に、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の本体の電圧タップが禁止タップの上下限に達しているか否かを判定するステップS22を設け、同様に、位相タップ15の制御を行うステップS9の前に、電圧・有効電力調整機能付変圧器13の本体の位相タップが禁止タップの上下限に達しているか否かを判定するステップS23を設ける。
【0044】
禁止タップの上下限に達していなければ、電圧タップ14は自動電圧調整装置19から1タップ分のみ制御を行う。同じく、位相タップ15の制御は1タップ分のみ自動電力調整装置18から1タップ分のみ制御を行う。各タップが禁止タップの上下限に達していれば、他方の調整装置に制御する権利を譲る。
【0045】
実施例5によれば、変電所自動制御システムの起動時における電圧タップ14の位置と位相タップ15の位置が禁止タップ領域に達することを回避しながら送電線の有効電力を抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
11…主母線、12…送電線、13…電圧・有効電力調整機能付変圧器、14…電圧タップ、15…位相タップ、16…CT、17…VT、18…自動電力調整装置、19…自動電圧調整装置、20…専用通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変電所からの主母線と送電線との間に配置され電圧タップと位相タップとを備えた電圧・有効電力調整機能付変圧器と、前記送電線の電気量を計器用変成器を介して取り込み送電線の有効電力を演算しその送電線の有効電力が所定の制限値を超えたとき所定の抑制値未満になるように前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の位相タップに対して位相タップ制御指令を出力する自動電力調整装置と、前記送電線の電気量を計器用変成器を介して取り込み送電線の系統電圧を演算しその送電線の系統電圧が所定の系統電圧範囲内になるように前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の電圧タップに対して電圧タップ制御指令を出力する自動電圧調整装置とを備え、前記自動電力調整装置は位相タップの制御を行ったときは前記自動電圧調整装置を起動し、前記自動電圧調整装置は電圧タップの制御を行ったときは前記自動電力調整装置を起動し、前記自動電圧調整装置による自動制御にて送電端系統電圧を系統電圧範囲内に維持しつつ、前記自動電力調整装置によって送電線の有効電力を所定の抑制値未満まで抑制することを特徴とする変電所自動制御システム。
【請求項2】
前記自動電力調整装置及び前記自動電圧調整装置に前記送電線の電気量を取り込む計器用変成器は、前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の1次側または2次側に設置されることを特徴とする請求項1に記載の変電所自動制御システム。
【請求項3】
前記自動電力調整装置は、送電線の有効電力が一定時限以上に亘って所定の制限値を超えたときに、送電線の有効電力が所定の抑制値未満になるように前記電圧・有効電力調整機能付変圧器の位相タップに対して位相タップ制御指令を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の変電所自動制御システム。
【請求項4】
前記自動電力調整装置は、送電線の有効電力の抑制後に外部から起動条件があったときは、前記自動電圧調整装置による電圧タップの自動制御にて送電端系統電圧を維持しつつ、送電線の有効電力抑制前の位相タップの値にまで戻すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変電所自動制御システム。
【請求項5】
前記自動電圧調整装置は前記電圧・有効電力調整機能付変圧器にて禁止される電圧タップの位置となるときは電圧タップ制御指令を出力せずに前記自動電力調整装置を起動し、前記自動電力調整装置は前記電圧・有効電力調整機能付変圧器にて禁止される位相タップの位置となるときは位相タップ制御指令を出力せずに前記自動電圧調整装置を起動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変電所自動制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−152021(P2011−152021A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13420(P2010−13420)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221096)東芝システムテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】