説明

外壁パネル接合構造およびその施工方法

【課題】 外壁パネルを構造躯体に取り付ける際の位置調整作業の作業効率を向上させることができる外壁パネル接合構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】 本発明の外壁パネル接合構造Kは、外壁パネル1をファスナー2を用いて構造躯体に接合する外壁パネル接合構造Kであって、外壁パネル1のレベルを調整するレベル調整ボルト11先端の水平方向の位置ずれを防止するずれ防止手段20を備えてなるものとされ、外壁パネル1のレベルをずれ防止手段20により、レベル調整ボルト11先端の水平方向の位置ずれを防止しながら外壁パネル1を構造躯体に接合するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル接合構造およびその施工方法に関する。さらに詳しくは、外壁パネルのレベル調整が容易になし得る外壁パネル接合構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーテンウォール構造による建物では、外壁パネルを鉄骨梁等の構造躯体に取り付けるために外壁パネル用ファスナーを使用する。これらファスナーを使用した接合構造は、図5に示すように、鉄骨梁101に、ファスナー台座受102、コンクリート止めアングル103および台座104を取り付け、台座104の上で、外壁パネル105のパネルフレーム106と連結されるファスナー107を位置調整可能なように支承するものとされる。
【0003】
ここで、ファスナー107の上下方向の位置調整は、ファスナー107の躯体接続部107aに螺合し、かつ台座104に軸先端が当接するレベル調整ボルト108の進退によりなされものとされる。つまり、レベル調整ボルト108の軸先端が台座104に当接し、その状態でレベル調整ボルト108を回転することにより外壁パネル105の上下方向位置調整がなされる。
【0004】
ところが、レベル調整ボルト108により位置調整を実行する際に、その回転の摩擦力によってファスナー107の位置が水平方向に移動してしまうことがあり、外壁パネル105の水平方向(建物内外方向および左右方向)の位置調整が予めなされている場合(通常水平方向が先に位置決めされる)には、上下方向の位置調整を終えてから水平方向の位置調整を再度行う必要が生じ、調整作業が効率的に行えないといった問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、外壁パネルを構造躯体に取り付ける際の位置調整作業の作業効率を向上させることができる外壁パネル接合構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外壁パネル接合構造は、外壁パネルをファスナーを用いて構造躯体に接合する外壁パネル接合構造であって、外壁パネルのレベルを調整するレベル調整ボルト先端の水平方向の位置ずれを防止するずれ防止手段を備えてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の外壁パネル接合構造においては、ずれ防止手段が、レベル調整ボルトの先端が係合される透孔を有する水平位置固定用プレートとされ、該プレートがファスナーの躯体接続部に仮固定され、レベル調整時に台座に固定されてなるのが好ましい。
【0008】
本発明の外壁パネル接合構造の施工方法は、外壁パネルをファスナーを用いて構造躯体に接合する外壁パネル接合構造の施工方法であって、外壁パネルの水平方向の位置を調整する手順と、外壁パネルのレベルをずれ防止手段により、レベル調整ボルト先端の水平方向の位置ずれを防止しながらなす手順とを含んでいることを特徴とする。
【0009】
本発明の外壁パネル接合構造の施工方法においては、ずれ防止手段が、レベル調整ボルトの先端が係合される透孔を有する水平位置固定用プレートとされ、前記プレートをファスナーの躯体接続部に仮固定する手順と、前記プレートをレベル調整時に台座に固定する手順とを含んでいるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レベル調整時に外壁パネルの水平方向の位置ずれが阻止し得るので、再調整の必要がなく取付位置調整作業の効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係る外壁パネル接合構造の要部を一部断面図により示す。
【0013】
外壁パネル接合構造Kは、上下に並ぶ外壁パネル1の下端部および上端部を、ファスナー2により構造躯体としての鉄骨梁3に取り付けるに際し、外壁パネルのレベル調整が容易である接合構造とされる。
【0014】
外壁パネル1は、タイル1aにより表面の仕上げがなされた面材1bと、面材1bの裏面に取り付けられたパネルフレーム1cとからなる。ここで、上下の外壁パネル1,1の面材1b,1b間の目地(横目地)は、レインバリア1dおよびウインドバリア1eにより止水、止風される。
【0015】
ファスナー2は、上側外壁パネル1のパネルフレーム1cの下端部および下側外壁パネル1のパネルフレーム1cの上端部とボルト止めされるパネル接続部2aと、レベル調整ボルト11、台座12、コンクリート止めL字型部材、例えばアングル13および台座受け14を介して鉄骨梁3と接続される躯体接続部2bとが一体的に形成されてなるものとされる。
【0016】
レベル調整ボルト11は、ファスナー2の躯体接続部2bに貫設された雌ネジ孔2cと螺合し、軸部先端面(下端面)11aが台座12と当接した状態で鉛直上下方向に進退し、これによってファスナー2の鉛直上下方向の位置、つまり外壁パネル1の上下方向の位置(レベル)を調整するものとされる。ここで、台座12の上面には、レベル調整ボルト11の先端部と係合して、レベル調整ボルト11が位置調整時に水平方向に移動するのを阻止する水平位置固定用プレート(ずれ防止手段。以下、単にプレートという)20が設けられるものとされる。
【0017】
すなわち、プレート20には、レベル調整ボルト11先端部が遊嵌される係合孔21が貫設されており、レベル調整ボルト11は、プレート20の係合孔21を通して軸部先端面11aを台座12と当接するものとされる。
【0018】
また、プレート20は、レベル調整ボルト11による位置調整時には、例えば溶接により台座12上面に固定される一方、位置調整を実施する前の段階では、図3に示すように、係合孔21にレベル調整ボルト11が所定長さ挿通された状態で磁石22によりファスナー2の躯体接続部2bに付設されるものとされる。
【0019】
以下、かかる構成とされている外壁パネル接合構造Kの施工手順を説明する。
【0020】
手順1:ファスナー2を下側外壁パネル1に先付けし、その状態で下側外壁パネル1を所定位置に設置する。このとき、プレート20は、レベル調整ボルト11が係合孔21に所定長さ挿通された状態で、磁石22によりファスナー2の躯体接続部2bに付設されている。
【0021】
手順2:下側外壁パネル1の水平方向(建物内外方向および左右方向)の位置を調整する。水平方向の位置調整は、公知の手法による。
【0022】
手順3:水平方向の位置調整が終了した後、レベル調整ボルト11の軸部先端面11aが台座12の上面に軽く当接する位置まで降りるようにボルト11を回転する。
【0023】
手順4:プレート20を躯体接続部2bから取り外し、ボルト11軸部を係合孔21に挿通したままの状態で溶接によりプレート20を台座20に固定する。
【0024】
手順5:外壁パネル1の上下方向の位置(レベル)が所望位置となるように、レベル調整ボルト11を回転する。
【0025】
このように、実施形態の外壁パネル接合構造Kは、レベル調整ボルト11先端部が台座12に取り付けられる水平位置固定用プレート20と係合した状態で外壁パネル1の上下方向の位置を調整するものとされる。したがって、外壁パネル1の水平方向位置が上下位置調整時にずれることがなく、位置調整作業の効率を向上させることができる。
【0026】
また、プレート20は、例えば磁石22によりファスナー2に付設されるものであるために、ファスナー2として従来のファスナーを用いればよく、コスト増大が抑制される。
【0027】
また、従来、レベル調整ボルト11による位置調整時のずれを抑制するために先丸形状のボルトを用いることが多い。ところが、この場合にも水平方向のずれは完全には阻止し得ないとともに、ボルトが特殊品であることによるコスト増大を招く。これに対して、実施形態の外壁パネル接合構造Kによれば単価の安い平先のボルトを用いることができるので、コスト削減を図ることができる。
【0028】
また、プレート20は、ファスナー2に磁石22で付設されるものであるために、ファスナー2から取り外して直ちに使用することができる。したがって、作業効率がさらに向上する。
【0029】
実施形態2
図4に、本発明の実施形態2を示す。実施形態2は実施形態1を改変したものであり、水平位置固定用プレートとして両面テープ22Aによりファスナー2に付設されるプレート20Aを用いてなるものとされる。これにより、水平方向のずれ防止手段をさらに安価な構成でファスナー2に付設することができる。
【0030】
なお、両面テープ22Aに代えて、ガムテープにより水平位置固定用プレートをファスナー2に付設したり、養生テープ(コンクリート養生時に仮止めするためのテープ)により付設したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ファスナーを用いて外壁パネルを構造躯体に接合する構成に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1に係る外壁パネル接合構造の概略構成を示す一部断面図である。
【図2】同構造の要部を模式化して示す斜視図である。
【図3】図2と同様の図であり、位置調整前の状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態2の外壁パネル接合構造の要部を示す図であり、同(a)は、一部断面図、同(b)は、水平位置固定用プレートの斜視図である。
【図5】従来の外壁パネル接合構造の一例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0033】
K 外壁パネル接合構造
1 外壁パネル
2 ファスナー
3 鉄骨梁
11 レベル調整ボルト
12 ファスナー台座
20 水平位置固定用プレート(ずれ防止手段)
21 係合孔
22 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルをファスナーを用いて構造躯体に接合する外壁パネル接合構造であって、
外壁パネルのレベルを調整するレベル調整ボルト先端の水平方向の位置ずれを防止するずれ防止手段を備えてなることを特徴とする外壁パネル接合構造。
【請求項2】
ずれ防止手段が、レベル調整ボルトの先端が係合される透孔を有する水平位置固定用プレートとされ、該プレートがファスナーの躯体接続部に仮固定され、レベル調整時に台座に固定されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁パネル接合構造。
【請求項3】
外壁パネルをファスナーを用いて構造躯体に接合する外壁パネル接合構造の施工方法であって、
外壁パネルの水平方向の位置を調整する手順と、
外壁パネルのレベルをずれ防止手段により、レベル調整ボルト先端の水平方向の位置ずれを防止しながらなす手順
とを含んでいることを特徴とする外壁パネル接合構造の施工方法。
【請求項4】
ずれ防止手段が、レベル調整ボルトの先端が係合される透孔を有する水平位置固定用プレートとされ、
前記プレートをファスナーの躯体接続部に仮固定する手順と、
前記プレートをレベル調整時に台座に固定する手順
とを含んでいることを特徴とする請求項3記載の外壁パネル接合構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−97351(P2006−97351A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285478(P2004−285478)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】