説明

外壁パネル支持構造

【課題】 外壁パネル2の取外し、交換が容易であるとともに、建物の様々な部分の外壁パネル2を建物躯体に支持させることができる外壁パネル支持具1を提供する。
【解決手段】 外壁パネル支持構造1は、建物躯体を構成する軸組9に取り付いて外壁パネル2の荷重を受けるパネル受け具6と、外壁パネル2の基材3の屋内面3aに固定されるパネル固定枠4aに形成され、パネル受け具6に嵌着する突片5aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅等の建物において建物躯体に固定されて、外壁パネルの荷重を受ける外壁パネル支持構造に関し、特に、同一種類のパネル受け具を用いて適切な高さで外壁パネルの荷重を受けることができる外壁パネル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄骨系の住宅等の建物において、建物躯体を構成する軸組に外壁パネルを固定するために溶接や接着などの様々な方法が用いられてきた。特に近年においては、外壁パネルの取り付けをより容易なものとするとともに、外壁パネルを取り外してメンテナンスすることができる種々の外壁パネル支持構造が提案されている。
【0003】
例えば、図9に示すように、外壁パネル100を軸組101に固定するために、垂直部102と水平部103とを有するL字状のパネル支持具104の垂直部102を軸組101を構成する溝型鋼に溶接Aによって固定し、水平部103が外壁パネル100の下端を下方から支持するパネル支持具104を用いた外壁パネル支持構造が開示されている(例えば特許文献1第2図参照)。このようにすると、外壁パネル100の重さはパネル支持具104で受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−115579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような外壁パネル支持構造においては、外壁パネルは建物のどの部分に固定するものであるかによって軸組との位置関係が異なるため、外壁パネルの下端と水平に架設された軸組とが上下方向に大きく離反している場合においては、支持具の垂直部を長く形成する必要があるなど、建物の部分によって複数種類の支持具が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、外壁パネルの取外し、交換が容易であるとともに、建物の様々な部分の外壁パネルを建物躯体に支持させることができる外壁パネル支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の外壁パネル支持構造は、建物躯体に取り付いて外壁パネルの荷重を受けるパネル受け具と、前記外壁パネルの屋内面に固定される枠体に形成され、前記パネル受け具に嵌着する固定部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の外壁パネル支持構造は、前記固定部は、前記パネル受け具に嵌合する突片であることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の外壁パネル支持構造は、前記固定部は、前記パネル受け具を挿入するスリット溝であることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の外壁パネル支持構造は、前記固定部が形成される前記枠体は、前記外壁パネルの屋内面の両側端にそれぞれ上下方向に延びて設置され、建物躯体に支持された外壁パネル固定具に係止されるパネル固定枠であることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の外壁パネル支持構造は、前記固定部が形成される前記枠体は、前記外壁パネルの屋内面で水平方向に延びる水平枠であることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の外壁パネル支持構造は、前記パネル受け具は、前記固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体を構成する上方に開口したC型鋼に挿入されて当該C型鋼の底部に載置される載置部とを有することを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の外壁パネル支持構造は、前記パネル受け具は、前記固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体を構成する下方に開口したC型鋼のフランジを挟持する挟持部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の外壁パネル支持構造によると、外壁パネルの屋内面に固定される枠体に固定部が形成され、建物躯体に取り付いたパネル受け具と嵌着するので、外壁パネルの荷重は固定部を介してパネル受け具が受けることができる。枠体は、外壁パネルの屋内面の任意の位置に設置することができるので、固定部を適切な位置に形成することができ、外壁パネルの下端位置が水平に架設された軸組から上下方向に大きく離反しているような場合でも外壁パネルを支持することができる。
【0015】
しかも、外壁パネルには従来より、例えばコンクリートなどで形成された外壁パネルの基材に金属などで形成された枠体が固定されて、建物躯体に固定された外壁パネル固定具に係止されるものが多く採用されており、通常外壁パネルの基材よりも枠体の方が強固である。したがって、強固な枠体に固定部を形成することで、パネル受け具が少ない接点で確実に外壁パネルの荷重を支持することができる。
【0016】
請求項2に記載の外壁パネル支持構造によると、固定部は、パネル受け具に嵌合する突片であるので、この突片をパネル受け具に嵌合することにより、極めて容易に建物躯体に外壁パネルを支持させることができるとともに、この突片をパネル受け具から引きはずすことで、極めて容易に建物躯体から外壁パネルを取り外すことができる。
【0017】
請求項3に記載の外壁パネル支持構造によると、固定部は、パネル受け具を挿入するスリット溝であるので、このスリット溝にパネル受け具を挿入することにより、極めて容易に建物躯体に外壁パネルを支持させることができるとともに、パネル受け具からスリット溝を引きはずすことで、極めて容易に建物躯体から外壁パネルを取り外すことができる。
【0018】
請求項4に記載の外壁パネル支持構造によると、従来から外壁パネルの固定に用いているパネル固定枠を枠体として固定部を形成するので、新たに別の金具などを外壁パネルに固定する必要がなく、コストを削減することができる。また、パネル固定枠は上下方向に延びて設置されているので、固定部を、上下方向に適切な高さに形成することができる。
【0019】
請求項5に記載の外壁パネル支持構造によると、枠体は外壁パネルの屋内面で水平方向に延びて設置される水平枠であるので、この水平枠に形成される固定部を、水平方向に適切な位置に形成することができる。
【0020】
請求項6に記載の外壁パネル支持構造によると、パネル受け具は、固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体のC型鋼の底部に載置される載置部とを有するので、受け部が受け止めた外壁パネルの荷重を載置部を介してC型鋼に支持させることができる。載置部は、C型鋼の底部に載置されるだけであるので極めて簡単に取付及び取外しすることができる。
【0021】
請求項7に記載の外壁パネル支持構造によると、パネル受け具は、固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体を構成する下方に開口したC型鋼のフランジを挟持する挟持部と、を有するので、受け部が受け止めた外壁パネルの荷重を挟持部を介してC型鋼に支持させることができる。挟持部は下方に開口したC型鋼のフランジを挟持することができるので、例えば軸組みの上側の枠にパネル受け金具を吊り下げるように設置して外壁パネルの荷重を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る外壁パネル支持構造のパネル固定枠及びパネル受け具の構成を説明する斜視図。
【図2】第1の実施形態の外壁パネルを屋内側から見た正面図。
【図3】第1の実施形態に係る外壁パネル支持構造を上方から見た断面図。
【図4】第1の実施形態に係る外壁パネル支持構造を建物躯体に固定する前の状態を説明する断面図。
【図5】第1の実施形態に係る外壁パネル支持構造を水平方向から見た断面図。
【図6】第2の実施形態に係る外壁パネル支持構造の水平枠及びパネル受け具の構成を説明する斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る外壁パネル支持構造の外壁パネルを建物躯体に固定する前の状態を説明する断面図。
【図8】第2の実施形態に係る外壁パネル支持構造を水平方向から見た断面図。
【図9】従来の外壁パネル支持構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明における外壁パネル支持構造1の第1の実施形態について、図1から図5を参照しつつ説明する。この実施形態に係る外壁パネル支持構造1は、図1に示すように、外壁パネル2の基材3の屋内面3aの両側端にそれぞれ上下方向に延びて設置される枠体4としてのパネル固定枠4aに形成される固定部5としての突片5aと、この突片5aに嵌着されて外壁パネル2の荷重を受け止めるパネル受け具6と、により構成される。
【0024】
外壁パネル2は、図1から図3に示すように、サイディング等の長方形の基材3と、この基材3の屋内面3aの両側端に枠固定用螺子7等で固定される上下に長いパネル固定枠4aと、からなる。このパネル固定枠4aは、図3に示すように、断面クランク状に形成されており、外壁パネル2に当接して枠固定用螺子7で固定されるパネル側固定片4bが外壁パネル2の中央方向に延びるとともに、外壁パネル2からやや離れるように折曲された係止片4cが外壁パネル2の側縁方向に延びて形成されている。この外壁パネル2を固定する際には、基端部8aが建物躯体に固定された外壁パネル固定具8の先端部8bを係止片4cに引っ掛けて、外壁パネル固定具8と建物躯体を構成する軸組9とでこの係止片4cを挟んで固定する。
【0025】
パネル固定枠4aのパネル側固定片4bには、高さ方向の予め設計された位置に固定部5としての突片5aが設けられている。この突片5aは、図1に示すように、パネル側固定片4bの一部が四角形に切り込まれて屋内方向に引き倒されるように折曲されることにより、屋内方向に突出して形成されている。なお、この突片5aの形状はこれに限定されるものではなく、例えばL字状に形成された金属片の一方の面を、パネル固定枠4aのパネル側固定片4bに溶接又は螺子固定等により固定し、他方の面が外壁パネル2の屋内方向に突出するように形成しても良い。
【0026】
パネル受け具6は、図1及び図5に示すように、突片5aを挟み込むように屋外方向に突き出す3つの挟着片10a、及びこれらの挟着片10aを連結する基部10bからなる受け部10と、下端が軸組9のC型鋼に挿入され、基部10bの中央を貫通するボルト11a及びナット11bからなる載置部11と、を有する。
【0027】
外壁パネル2を建物躯体を構成する軸組9に固定するときには、まず、図4に示すように、パネル固定枠4aに設けられている突片5aを挟着片10aで挟んで、外壁パネル2にパネル受け具6を固定する。そして、図5に示すように、パネル受け具6の載置部11を軸組9の上方が開口するC型鋼9aの内部に挿入して、C型鋼9aの底面に載置する。その後、図3に示すように、パネル固定枠4aの係止片4cを、建物躯体に固定された外壁パネル固定具8と建物躯体を構成する軸組9とで挟んで固定する。
【0028】
このように、第1の実施形態の外壁パネル支持構造によると、パネル固定枠4aに突片5aが形成され、この突片5aにパネル受け具6の挟着片10aが挟着するので、外壁パネル2の荷重をパネル受け具6が受けることができ、このパネル受け具6は、載置部11により建物躯体を構成する軸組9のC型鋼9aの底部に載置されるので、外壁パネル2の荷重を軸組9で支持することができる。
【0029】
しかもこのパネル固定枠4aは、外壁パネル2の基材3の両側縁に沿ってその屋内面3aに上下方向に延びて固定されているので、予め設計された上下方向の適切な位置に突片5aを形成することができ、例えば、外壁パネル2の下端位置が水平に架設された軸組9から上下方向に大きく離反しているような場合でも外壁パネル2を支持することができる。
【0030】
外壁パネル2のパネル固定枠4aはもともと外壁パネル2を建物躯体に固定するための金具であるので、外壁パネル2の基材3に比べて垂直方向の荷重に対して強固に構成されており、このような強固に構成されたパネル固定枠4aに突片5aを形成することで、パネル受け具6が少ない接点で確実に外壁パネル2の荷重を受けることができる。
【0031】
次に、外壁パネル支持構造1の第2の実施形態について、図6から図8を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成にについては、同じ符号を付して説明を省略する。第2の実施形態に係る外壁パネル支持構造1は、図6に示すように、外壁パネル2の基材3の屋内面3aに水平方向に延びて設置される水平枠4dに形成される固定部5としてのスリット溝5bと、このスリット溝5bに挿入されて外壁パネル2の荷重を受け止めるパネル受け具6と、により構成される。
【0032】
水平枠4dは、図6に示すように、外壁パネル2の上縁に沿って外壁パネル2の基材3の屋内面3aに固定されており、下部4eが外壁パネル2に当接して、図示しない螺子等により外壁パネル2の基材3に固定されるとともに、中間部4fが屋外側に屈曲して設けられ、さらに、上部4gが上方に屈曲して、外壁パネル2から距離を離して形成されている。そして、この水平枠4dの上部4gの所定位置にはスリット溝5bが貫通している。
【0033】
パネル受け具6は、図6及び図8に示すように、スリット溝5bに挿入される大きさの中央挟着片10c、中央挟着片10cの両側部にこの中央挟着片10cよりもやや下がった位置に設けられる側部挟着片10d、及びこれら中央挟着片10c及び側部挟着片10dを連結する基部10bからなる受け部10と、基部10bの中央を貫通するボルト12a、このボルト12aに螺合するナット12b、及びC型鋼9bのフランジ9cを挟持する2枚の挟持板12cにより構成される挟持部12と、を有する。
【0034】
外壁パネル2を建物躯体を構成する軸組9に固定するときには、まず、図7に示すように、パネル受け具6を下方が開口したC型鋼9bの軸組9に固定する。具体的には、一方の挟持板12cをC型鋼9bの内部に保持し、この他方の挟持板12cをC型鋼9bの下側に保持した状態で両挟持板12cをボルト12aで貫通し、さらにこのボルト12aに螺合するナット12bで両側から挟持板12cを締め付け、C型鋼9bのフランジ9cを両挟持板12cで挟持する。ボルト12aの下端には、受け部10が外嵌されて、ナット12bによりボルト12aに固定されている。
【0035】
そして、図8に示すように、外壁パネル2を移動させて、外壁パネル2の基材3に固定されている水平枠4dのスリット溝5bを、受け部10の中央挟着片10cに外嵌させる。このようにして、水平枠4dの中間部4fを中央挟着片10c及び側部挟着片10dで挟んで固定する。
【0036】
このように第2の実施形態の外壁パネル支持構造1によると、スリット溝5bにパネル受け具6の中央挟着片10cを挿入することにより、極めて容易に建物躯体を構成する軸組9に外壁パネル2を支持させることができるとともに、パネル受け具6からスリット溝5bを引きはずすことで、極めて容易に軸組6から外壁パネル2を取り外すことができる。しかも、水平枠4dは外壁パネル2の基材3の屋内面3aに水平方向に延びて設置されているので、この水平枠4dに形成されるスリット溝5bは、予め設計された水平方向に適切な位置に形成することができる。
【0037】
そして、パネル受け具6は、スリット溝5bに嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部10と、建物躯体を構成する軸組9の下方に開口したC型鋼9bのフランジ9cを挟持して固定される挟持部12と、を有するので、受け部10が受け止めた外壁パネル2の荷重を挟持部12を介してC型鋼9bに支持させることができる。挟持部12は下方に開口したC型鋼9bのフランジ9cを挟持することができるので、軸組9の上側の枠にパネル受け金具6を吊り下げるように設置して外壁パネル2の荷重を受けることができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る外壁パネル支持構造1は、例えば住宅の外壁パネル2を支持する治具として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 外壁パネル支持構造
2 外壁パネル
3a 屋内面
4 枠体
4a パネル固定枠
4d 水平枠
5 固定部
5a 突片
5b スリット溝
6 パネル受け具
8 外壁パネル固定具
9 軸組(建物躯体)
9a、9b C型鋼
10 受け部
11 載置部
12 挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に取り付いて外壁パネルの荷重を受けるパネル受け具と、前記外壁パネルの屋内面に固定される枠体に形成され、前記パネル受け具に嵌着する固定部と、を備えることを特徴とする外壁パネル支持構造。
【請求項2】
前記固定部は、前記パネル受け具に嵌合する突片であることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル支持構造。
【請求項3】
前記固定部は、前記パネル受け具を挿入するスリット溝であることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル支持構造。
【請求項4】
前記固定部が形成される前記枠体は、前記外壁パネルの屋内面の両側端にそれぞれ上下方向に延びて設置され、建物躯体に支持された外壁パネル固定具に係止されるパネル固定枠であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁パネル支持構造。
【請求項5】
前記固定部が形成される前記枠体は、前記外壁パネルの屋内面で水平方向に延びる水平枠であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁パネル支持構造。
【請求項6】
前記パネル受け具は、前記固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体を構成する上方に開口したC型鋼に挿入されて当該C型鋼の底部に載置される載置部とを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の外壁パネル支持構造。
【請求項7】
前記パネル受け具は、前記固定部に嵌着されて外壁パネルの荷重を受け止める受け部と、建物躯体を構成する下方に開口したC型鋼のフランジを挟持する挟持部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の外壁パネル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−275764(P2010−275764A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128818(P2009−128818)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】