説明

外壁構造

【課題】家屋等の建物において、防水性が高く、且つ簡単に施工することができる外壁構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る外壁構造は、壁下地2と、前記壁下地2に対して屋外側の位置に設置されている第一の外壁部101及び第二の外壁部102と、通気分断部6とを備える。前記外壁部101,102が平面視において互いに交差する方向に突き合わされる。前記壁下地2と前記外壁部101,102との間に、屋外に連通する通気空間3が形成される。前記通気分断部6が、前記外壁部101,102同士が突き合わされている位置或いはその近傍で前記通気空間6を分断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居用家屋等の建物の外壁構造においては、複数の外壁材を取り付けて外壁を形成する場合、防水性を確保するために隣り合う外壁材同士の間にシーリング材を設けている。
【0003】
図16に、従来の建物の外壁構造を示す。図示の外壁構造では、隣り合う左右の外壁材10間に、シーリング材40が設けられて密閉され、防水性が確保されている。また、窓などの開口部30においても、切り抜かれた外壁材10と開口部30との間にシーリング材40が設けられている。なお、上下に隣り合う外壁材10、10は、重ね合わせて取り付けるなどして、防水性が確保されている。
【0004】
上記のような建物の外壁構造においては、シーリング材40の部分あるいはシーリング材40と外壁材10との境界部分が、年月を経ると外壁材10に比べて劣化しやすく、劣化した部分から雨水などが浸水するなどして外壁の防水性を悪化させる場合があった。また、シーリング材40によって隣り合う外壁材10間を密閉する必要があり、施工に手間がかかる場合があった。また、シーリング材40の部分にひびや割れなどが生じると、外壁の外観を損ね、意匠性が悪くなるおそれがあった。
【0005】
そこで、シーリング材40を用いずに外壁材10を施工して外壁を形成することが考えられる。外壁における隙間からの水の浸入は、風雨の強さ、言い換えれば風速(外風圧)及び降雨量に大きく依存する。そのため、ノンシーリング工法においては、図15に示すように、壁面を構成する壁下地2と、外壁材10により形成される外壁部1との間に、通気空間3を設け、この通気空間3と建物の外部空間との圧力差を小さくして、風雨の侵入を防ぐ外壁構造が考えられる。このような通気空間3は、いわゆる等圧理論により設計されるものである。
【0006】
等圧理論を利用した壁設計としては、ビル壁の構造が提案されている。例えば、特許文献1には、外側のパネルと内側のパネルとの間にスペースを設け、このスペースを密閉し、スペースの圧力を実質的に外部と均等になるようにしたビルディングの壁構造が開示されている。しかしながら、この壁構造では、隣り合う二つの外側のパネルの間に、フラッシングと称せられるパネル間のスペースを閉塞する密閉手段を設ける必要があり、この密閉手段は外壁全面に亘ってパネル接続部分に設けなければならないので、施工に手間がかかるものであった。また、密閉手段であるフラッシングは、下側に配置するパネルの外方にはみ出して取り付けられるものであるので、建物の外側に見えることとなり、意匠性を悪くするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−521427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、家屋等の建物において、防水性が高く、且つ簡単に施工することができる外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る外壁構造は、壁下地と、前記壁下地に対して屋外側の位置に設置されている第一の外壁部及び第二の外壁部と、通気分断部とを備え、
前記外壁部が平面視において互いに交差する方向に突き合わされ、
前記壁下地と前記外壁部との間に、屋外に連通する通気空間が形成され、
前記通気分断部が、前記外壁部同士が突き合わされている位置或いはその近傍で前記通気空間を分断する。
【0010】
本発明において、前記通気分断部が、第一部材と、弾性を有する二つの第二部材とを備え、
前記第一部材が、前記壁下地と前記第一の外壁部との間に介在する第一片と、前記壁下地と前記第二の外壁部との間に介在する第二片とを備え、前記第一片と前記第二片には、それぞれ前記第一の外壁部へ向けて突出する凸条及び前記第二の外壁部へ向けて突出する凸条が形成され、
二つの前記第二部材のうち一方は前記第一片における前記凸条に対して、前記外壁部同士が突き合わされている位置とは反対側の位置で前記第一片と前記第一の外壁部との間に介在し、他方は前記第二片における前記凸条に対して、前記外壁部同士が突き合わされている位置とは反対側の位置で前記第二片と前記第二の外壁部との間に介在することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記通気空間と屋外とを接続する連通口を備え、前記通気空間内の壁下地の壁面の面積に対する、前記連通口の開口面積の割合が、65cm/m以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、家屋等の建物において、防水性が高く、且つ簡単に施工することができる外壁構造が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態における外壁構造のコーナー部分の一態様を示す平面視断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態における外壁構造のコーナー部の別の態様を示す平面視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における外壁構造を示す平面視断面図である。
【図4】本発明の一実施形態における外壁構造を示す一部の側面視断面図である。
【図5】本発明の一実施形態における外壁構造を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施形態における外壁構造を示す側面視断面図である。
【図7】本発明の一実施形態における外壁構造の他の形態を示す平面視断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態における外壁構造のコーナー部の更に別の態様を示す平面視断面図である。
【図9】(a)、(b)及び(c)は、本発明の一実施形態における外壁構造の更に他の形態を示す正面図である。
【図10】(a)、(b)及び(c)は、本発明の一実施形態における外壁構造の更に他の形態を示す側面視断面図である。
【図11】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態における外壁部の形態の一例を示す側面視断面図である。
【図12】(a)〜(e)は、本発明の一実施形態における外壁部の形態の一例を示す平面視断面図である。
【図13】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態における胴縁の一例を示す正面図である。
【図14】本発明の一実施形態における外壁構造の更に他の形態を示す正面図である。
【図15】本発明を説明する外壁構造の概念図である。
【図16】従来の建物の外壁構造の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図6に、本発明の建物の外壁構造の実施形態の一例を示す。この外壁構造には、壁下地2と、外壁材10によって形成される外壁部1との間に、空気層として通気空間3が形成されている。更にこの外壁構造は、外壁部1,1同士が平面視で交差する方向に突き合わされている位置或いはその近傍で通気空間3を分断する通気分断部6を備えている。
【0015】
壁下地2は外壁の下地である。本実施形態では、壁下地2は複数の柱17と、柱17に取り付けられている面材によって構成されている。面材は、隣合う柱17間の隙間を閉塞する部材である。面材としては適宜の板材などの構造用面材20、防水シート14(防水紙)などが挙げられる。本実施形態では、面材として、構造用面材20と防水シート14とが併用され、柱17に対してその屋外側に構造用面材20が設置され、更にこの板材などの構造用面材20に対してその屋外側に防水シート14が設置されている。これにより、防水シート14によって雨水などの水が屋内側に浸入することが抑制される。柱17よりも屋内側には、適宜の内壁材で構成される内壁部19が設置されている。面材と内壁部19とに挟まれた空間には断熱材18が配設されている。内壁部19の屋外側には、防湿シート14aが設けられている。このように防湿シート14aが設けられることで、屋内への湿気の侵入が抑制されるなお、柱17としては、断面正方形形状のものと断面矩形状のものが適宜に用いられている。
【0016】
壁下地2には、柱17に重ねて胴縁11が取り付けられている。胴縁11の取り付けは例えば釘やビスなどの固定具13を用いておこなわれる。図示の形態では、縦方向(垂直方向、或いは上下方向)に延伸する柱17に沿って、長手方向が縦方向と一致する胴縁11(縦胴縁)が取り付けられている。胴縁11には、外壁材10を取り付けるための外壁材取付金具12が所定の箇所に釘などの固定具13で取り付けられる。
【0017】
建物の下部には土台部(土台)8が設けられている。土台部8の上側には、柱17などを取り付けるための基礎となる長尺の基台柱(根太)16が横方向に亘って設けられている。図示の形態では、基台柱16の上側に、基台柱16と垂直に縦方向に柱17が配設され、面材は基台柱16と柱17とを覆うようにしてこれらの屋外側表面に配設されている。土台部8の上側における面材の屋外側表面には、土台水切り9が横方向に亘って設けられている。土台水切り9は、土台水切り9を壁下地2に固定するための固定片9aと、屋外側に向かって突出した水切り片9bと、水切り片9bの先端から下方に垂下する水切り先端片9cとを備えて形成されている。水切り片9bは、屋外側に向かってわずかに下り傾斜しながら、外壁部1よりも突出して形成されている。
【0018】
外壁材10は、壁下地2を覆うように壁面のほぼ全域にわたって壁下地2に取り付けられる。具体的には、外壁材10は胴縁11に取り付けられた外壁材取付金具12に係合又は載置されるなどして、壁下地2に取り付けられる。複数の外壁材10によって、外壁部1が構成される。外壁部1は建物の外壁の最外層を構成する。
【0019】
外壁部1と壁下地2との間の通気空間3の厚み(屋内−屋外方向寸法)は、胴縁11の厚みと外壁材取付金具12の突出幅により確保されている。すなわち、胴縁11及び外壁材取付金具12がスペーサとなって通気空間3が形成されている。図示の形態では、胴縁11の屋外側に外壁材取付金具12が突出して設けられているために、胴縁11を挟んで横方向に隣り合う通気空間3、3は外壁材取付金具12が突出することにより形成された隙間によって連通されている。通気空間3が横方向(水平方向)に連通していることにより、横方向への空気の移動が可能となり通気空間3内での横方向の圧力差を小さくすることができる。なお、外壁材取付金具12を胴縁11から突出しないように取り付けるなどして外壁材10を胴縁11に密着させ、通気空間3が胴縁11によって横方向に分断されるように形成してもよい。通気空間3が横方向で分断されている場合、横方向への空気の移動が抑制されて、縦方向に空気が移動しやすくなる。
【0020】
通気空間3の厚みは例えば20〜23mmに設定される。通気空間3の厚みがこの範囲であれば、通気空間3による通気が確実に確保される。例えば、厚さ18mmの胴縁11と、突出幅(働き幅)5mmの外壁材取付金具12とが用いられることで、厚み(外壁部1の裏面から壁下地2の表面までの幅)が23mmの通気空間3が形成される。
【0021】
本実施形態に係る外壁構造には、建物の外部と通気空間3とを連通する連通口4が形成されている。
【0022】
このように建物の外部(屋外)と通気空間3とを連通する連通口4が形成されていると、通気空間3と外部との圧力差が小さくなり、このため外壁部1における目地などの隙間から屋内への風雨の浸入が抑制される。これにより、防水性の高い外壁構造が実現される。連通口4は、例えば壁下地2が部分的に外壁材10で覆われていない箇所などで形成される。
【0023】
連通口4が形成されていない場合には、例えば外壁部1に風が吹き当てられることで外壁部1の屋外側の圧力が高くなると、隣合う外壁材10間の目地などから屋内側へ外気が流入することで雨水等が流れ込みやすくなる。しかし、本実施形態では連通口4が形成されることで通気空間3と屋外との間の圧力差が小さくなるため、屋外から屋内へ外気や雨水等が流れ込みにくくなる。連通口4から外気や雨水等が流入するとしても、その量は僅かであり、しかも例えば本実施形態では第一の連通口401から速やかに外部に排出される。また多少の水分が壁下地2に付着した程度であれば、屋内への水分の浸入は防水シート14によって十分に抑制される。
【0024】
屋内への雨水等の流入が十分に抑制されるためには、通気空間3と屋外との圧力差は、外壁部1へ吹き当てられる風の風速が20m/sec以下の条件下で50Pa以下となることが好ましい。この場合の外壁部1へ吹き当てられる風は、正面風(壁面に垂直な風)と斜面風(上斜め45°から壁面に向かって吹き降ろす風)の少なくとも一方であればよいが、両方の場合に共に前記圧力差が50Pa以下となることが好ましい。このような外壁構造の性能評価をおこなうための建物に対する散水加圧試験は、JIS A1414「建築構成材(パネル)およびその構造部分の性能試験、6.5 水密試験」に準じて行われ得る。
【0025】
屋内への雨水等の流入が十分に抑制されるためには、通気空間3内の壁下地2の壁面の面積に対する、連通口4の開口面積の割合が、65cm/m以上であることが好ましい。すなわち、壁面1m当たりの連通口4の開口面積が65cm以上であることが好ましい。ここでいう壁面とは、建物の壁を構成する面のことであり、壁下地2の屋外側の面で構成される、壁面は、概ね土台部8よりも上側でかつ軒天部7よりも下側の面状の部分である。壁面には、窓や換気口などの開口部30の領域は含まれない。通気空間3に連通する連通口4が複数ある場合には、この複数の連通口4の開口面積の合計量の割合が65cm/m以上であることが好ましい。尚、連通口4は壁面の一部分に集中して設けたり、あるいは、壁面に分散させて設けたりしてもよい。したがって、壁面の面積をSmとした場合に連通口4の面積の合計が65×Scm以上となっていればよい。連通口4の開口面積の割合がこれより小さいと圧力差を小さくすることができなくなるおそれがある。この連通口4の開口面積の割合の上限には特に制限がない。水仕舞いが十分になされることで連通口4からの雨水等の流入が十分に抑制されていれば、連通口4の開口面積の割合は大きいほどよい。なお、連通口4の開口面積の割合が110cm/mまでの範囲では、連通口4の開口面積の割合が増大するに従って差圧が小さくなることが実験により確認されている。
【0026】
連通口4は外壁部1の下端における土台部8の上側と、外壁部の上端における軒天部7の下側とに形成されている。すなわち、外壁部1の最下端に配置されている外壁材10の下端部は、土台部8や土台水切り9などに接触せずに、開放された空間を垂下しており、それにより、外壁部1の開口が形成されている。この開口によって壁面の下端部に直線状の連通口4が、外壁部1の下端に亘って形成されている。また、外壁部1の上端に配置した外壁材10は、その上端部が軒天部7と接触せずに突出しており、それにより、外壁部1の開口が形成されている。この開口によって壁面の上端部に直線状の連通口4が、外壁部1の上端に亘って形成されている。すなわち、外壁部1の下端と水切り片9bの屋外側端部との間に、外壁に沿った水平方向に長い開口が形成されており、この開口が、通気空間3と屋外とを接続する連通口4(第一の連通口401)となる。
【0027】
そして、壁面の上側に形成された連通口4(第二の連通口402)と下側に形成された連通口4(第一の連通口401)との開口面積の合計が65cm/m以上となっている。図示のように本形態では、第一の連通口401は第二の連通口402よりも開口面積が大きく形成されている。このように、連通口4は少なくとも土台部8の上側に設けられることが好ましい。連通口4を土台部8の上側に設けると、この連通口4から雨水を排出することが可能になる。また、土台部8の上側に連通口4を形成することにより、風雨が壁下地2に直接あたる割合を低減することができる。そのため、連通口4を複数設ける場合には、土台部8の上側に形成された連通口4の開口面積を他の連通口4よりも大きくすることが好ましい。
【0028】
本形態では、連通口4は外壁に沿って水平方向に長い直線状に形成されているため、その開口面積は、直線の幅(隙間幅)と直線の長さ(壁面の横方向の距離)とをかけ合わせて算出される。
【0029】
第一の連通口401の開口量は、間口(壁面の横方向の長さ)1mあたり150cm以上であることが好ましい。開口量がこの範囲になることにより、外部と通気空間3の間における空気の連通を確実に行うことが可能となる。この値を満たすためには、例えば、横方向に直線状に延伸して開口する連通口4の場合、連通口4の上下方向の長さ(隙間幅)を10〜30mm程度、例えば、18mmにすることが好ましい。また、連通口4の上下方向の長さを胴縁11の厚みよりも大きくすることも好ましい。連通口4の上下方向の長さがこのように設定されることにより、差圧の小さい通気空間3を形成するための十分な開口を外壁部1に設けることができる。
【0030】
また、土台部8の上側に形成された連通口4の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積の半分より大きいことが好ましい。水平方向における通気空間3の最小断面積部分は、通気空間3内で空気が流れる際の律速部分となるものであり、この律速となる最小断面積部分の半分よりも連通口4の開口面積が大きくなることにより、空気の流れを妨げることを防いで圧力差を小さくすることができるものである。通気空間3の水平方向での最小断面積とは、外壁材10と壁下地2との間の、胴縁11と外壁材取付金具12とを除いた領域の面積のことである。ただし、外壁材取付金具12は断面積が他に比べて十分小さいので計算上無視してもよい。したがって、この領域の面積は、通気空間3の幅(外壁材10と壁下地2との間の距離)と、壁面の横方向の長さとを掛け合わせ、壁面に配された胴縁11の断面積を減じたものと略等しい。
【0031】
土台部8の上側に形成された連通口4は、図示の形態では、土台水切り9と外壁材10との間に設けられている。すなわち、土台水切り9の水切り片9bが外壁部1よりも屋外側に突出しており、壁面の下端部に配置された外壁材10の下側には、空間をおいて水切り片9bが配置されている。このような構造で土台水切り9を設置することにより、外壁材10の裏面をつたって通気空間3を流下した雨水は土台水切り9の水切り片9b上に落下し、この土台水切り9の表面をつたって外部に排出されるものであり、排出される水を所定の位置に流すことができるものである。また、土台水切り9によって通気空間3の下方が閉塞されるので、下から巻き上がる風雨が通気空間3に吹き込まれることを少なくして通気空間3内に風力が侵入することを防ぐことができるものである。
【0032】
図6に示すように、軒天部7の下側に設けられた連通口4(第二の連通口402)の屋外側には、外壁部1から屋外側に所定の距離をおいて連通口4の開口の前面を塞ぐとともに、開口により連通口4を介して通気空間3と外部とを連通させる通気見切り縁15を横方向に亘って設けることが好ましい。通気見切り縁15を設けることにより、軒天部7の下側の開口を目立たなくすることができ、また、連通口4の開口の前面を塞ぐことによって、風雨が壁下地2に直接あたることを低減できる。
【0033】
通気空間3は、連通口4を介して外部と連通しているために、外気が侵入し通り抜ける空間となる。本形態においては、図6の矢印で示すように、外気は(i)から(ii)の方向に流れる。すなわち、外気は土台部8側の連通口4から通気空間3内に侵入し、侵入した外気は通気空間3内を上昇し、軒天部7側の連通口4を通って再び外部に排出される。このとき、通気見切り縁15が軒天部7の下側に設けられていれば、外気の流れ方向を軒天部7から遠ざけることができ、外気をスムーズに流すことができる。また、外気が湿気を含んでいる場合であっても、外気が直接軒天部7にあたることを低減することができる。
【0034】
軒天部7の下側に形成された連通口4の開口面積の合計は、壁面1mに対して6.0cm以下であることが好ましい。この位置での連通口4の開口面積がこれよりも大きくなると、開口を塞ぐための通気見切り縁15が大きくなりすぎるおそれがある。
【0035】
図3に示すように、建物の外壁においては、一の壁面(例えば図面において下側の壁面)と、他の壁面(例えば図面において右側又は左側の壁面)とが平面視で交差するように突き合わされてコーナー部5が形成される。コーナー部5は、建物の出隅と入隅に形成される。このコーナー部5の周辺において、二つの外壁部1(便宜上、第一の外壁部101及び第二の外壁部102という)が、平面視において互いに交差する方向に突き合わされる。この外壁構造にあっては、コーナー部5において一の壁面に設けられた通気空間3と他の壁面に設けられた通気空間3とを分断する通気分断部6が設けられている。この通気分断部6は、第一の外壁部101と第二の外壁部102とが突き合わされている位置或いはその近傍で通気空間3を分断する。
【0036】
本実施形態の一態様における、建物の出隅における通気分断部6を図1(a)に、建物の入隅における通気分断部6を図1(b)に示す。いずれの場合も、通気分断部6は第一部材61と、弾性を有する二つの第二部材62とを備える。
【0037】
第一部材61は、平面視L字状に組み合わされた二つの片部63,63で構成される。すなわち第一部材61は、壁下地2と第一の外壁部101との間に介在する片部63(第一片631)と、壁下地2と第二の外壁部102との間に介在する片部63(第二片632)とを備える。第一片631と第二片632には、それぞれ第一の外壁部101へ向けて突出する上下方向に長い凸条64及び第二の外壁部102へ向けて突出する上下方向に長い凸条64が形成されている。これらの凸条64は、第一の外壁部101又は第二の外壁部102に接触し或いは近接することが好ましい。特に凸条64と第一の外壁部101又は第二の外壁部102との間の距離が0〜1.5mmの範囲であることが好ましく、0〜1.0mmの範囲であれば更に好ましい。
【0038】
二つの第二部材62,62のうち一方の第二部材62は第一片631における凸条64よりも外側(外壁部101,102同士の突き合わせ位置とは反対側)で第一片631と第一の外壁部101との間に介在する。この第二部材62は、第一片631と第一の外壁材に弾接する。二つの第二部材62,62のうちもう一方の第二部材62は第二片632における凸条64よりも外側で第二片632と第二の外壁部102との間に介在する。この第二部材62は、第二片632と第二の外壁材に弾接する。そのためには、第二部材62が外力により圧縮していない状態では、第二部材62の厚み(屋内−屋外方向寸法)が、凸条64の突出寸法(屋内−屋外方向寸法)よりも大きいことが好ましい。
【0039】
第一部材61は適宜の材質から形成されるが、例えば金属板材などから形成される。第二部材62は適宜の弾性を有する材料から形成されるが、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)から形成される。
【0040】
本態様によれば、第一の外壁部101と第二の外壁部102とが突き合わされている位置の近傍で、二つの第二部材62によって通気空間3が分断される。更に第二部材62に対して、第一の外壁部101と第二の外壁部102とが突き合わされている位置側には、凸条64が配置されている。このため凸条64は、第一の外壁部101と第二の外壁部102と間の隙間から差し込む紫外線や、この隙間から浸入する雨水などを、第二部材62から遮蔽し、これにより紫外線、水などによる第二部材62の劣化が抑制される。更に、第二部材62の近傍で凸条64によって壁下地と外壁部との間隔が規制されるため、壁下地と外壁部との間隔が狭くなることで第二部材62が押しつぶされて損傷するようなことが抑制される。
【0041】
第一片631及び第二片632の各々には、図2に示されるように二以上の複数の凸条64が形成されることも好ましい。複数の凸条64は第一片631及び第二片632の各々において、間隔をあけて並行並列に形成される。この場合、第二部材62は、複数の凸条64のうち、外壁部同士の突き合わせ位置から最も遠い位置にある凸条64に対して、外壁部同士の突き合わせ位置とは反対側に配置されることが好ましい。このような態様では、第二部材62は複数の凸条64によって遮蔽されるため第二部材62の劣化が更に抑制される。更に、第二部材62の近傍では複数の凸条64によって壁下地と外壁部との間隔が規制されるため、壁下地と外壁部との間隔が狭くなることで第二部材62が押しつぶされて損傷するようなことが更に抑制される。
【0042】
上記各態様において、第一片631と第二片632との突き合わせ位置と、複数の凸条64の各々との間の間隔は、5〜20mmの範囲であることが好ましい。また、凸条64と二つの第二部材62の各々との間の間隔は、万一凸条64と第二部材62との間に水が浸入した場合の排水性を考慮すると4mm以上であることが好ましく、部材の大型化抑制の観点からは20mm以下であることが好ましい。
【0043】
このように通気分断部6によって、壁面毎に通気空間3を区画することにより、一の壁面における通気空間3から他の壁面における通気空間3へ空気が流れるのを防ぐことができ、通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができるものである。
【0044】
例えば第一の外壁部101へ向けて風が吹き付けられると、第一の外壁部101の周囲の外気圧が、第二の外壁部102の周囲の外気圧よりも高くなる。それに伴って第一の外壁部101と壁下地との間の通気空間3に外気が流れ込むことで、第一の外壁部101と壁下地との間で通気空間3の圧力が、第二の外壁部102と壁下地との間での通気空間3の圧力よりも高くなる。しかし、このような通気空間3,3間での圧力差が生じても、本実施形態では通気空間3,3が通気分断部6により分断されているため、通気空間3,3間での空気の移動による第一の外壁部101と壁下地との間で通気空間3の圧力の低下が生じにくくなる。このため、第一の外壁部101の周囲の外気圧と、第一の外壁部101と壁下地との間での通気空間3の圧力との差が生じにくくなる。これにより、風雨に曝された場合の防水性が非常に高い外壁構造が実現される。
【0045】
また、このように外気圧と通気空間3との間の圧差が抑制されることで高い防水性が実現されるため、複数の外壁材1を設置することで外壁部1を構成するにあたり、隣合う外壁材1,1間にシーリング材が充填されないノンシーリング工法であっても、外壁材1,1間の隙間からの雨水等の浸入が抑制される。このため、ノンシーリング工法において、簡易な構造により、外壁構造が高い防水性を発揮するようになる。尚、本実施形態において、外壁材1,1間にシーリング材が充填されていてもよい。
【0046】
図7は、通気分断部6の他の形態を示す。本形態では、通気分断部6は、上下方向に長い長尺に形成された気密パッキン6aを縦方向に亘って配置することによって形成されている。このような通気分断部6も、図7に示すように、出隅部5aを形成するコーナー部5にも、入隅部5bを形成するコーナー部5にも、用いることができる。
【0047】
通気分断部6の構成は、これらに限られるものでなく、例えば図8(a)及び(b)に示すように、コーナー部5においてそれぞれの壁面を構成する壁下地2に胴縁11を設け、ハット型ジョイナーといったジョイナー部材6bなどを通気分断部6として機能させて胴縁11と外壁部1との隙間を埋めて、通気空間3を分断してもよい。なお、図8の形態では、ジョイナー部材6bの屋外側にシーリング材40が設けられている。また、図8(a)の形態では、出隅部5aには、断面L字形状のコーナー用外壁材10aが配設されている。
【0048】
上記の各形態では、複数の面材が敷き詰められることで壁下地2が構成されている。面材としては合板などの構造用面材20を用いることができる。このように、面材によって壁下地2を形成することにより気密性を確保することができるものである。
【0049】
通気空間3と外部との圧力差を小さくするためには、壁下地2には隙間が形成されないことが理想的である。但し、実際の外壁の施工においては、面材と開口部30との接合部分など、具体的にはサッシ(窓枠)や換気扇といった設備の取り付け部などにおいて、わずかな隙間が形成されてしまうことがある。そこで、通気空間3と外部との圧力差を小さくするためには、壁下地2の隙間をできるだけ少なくし、その壁面に対する合計面積が9cm/m以下になるようにすることが好ましい。隙間の壁面に対する合計面積が9cm/mよりも大きいと通気空間3から屋内側へ空気が移動して通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができなくなるおそれがある。隙間の合計面積は、開口部30などを設けずに合板などの面材で隙間なく壁一面を覆うことができれば、理論的には0cm/mとなるが、現場の施工においては3cm/m以下であることが現実的である。
【0050】
開口部30など、屋内外を貫通する開口が設けられる場合は、壁下地2における開口部30の周囲に気密テープを貼着することが好ましい。それにより、気密性を確保することが可能になる。面材20と面材20との突合せ部分にも隙間ができることがあるが、この突合せ部分には、面材20間を架け渡して防水シート14を貼着するようにすれば、気密性を高めることができる。
【0051】
壁下地2にはエアコン等により、外壁の施工後に、開口が設けられることがある。そこで、外壁施工時における隙間の開口面積の合計は5cm/m以下であることが好ましい。隙間の開口面積をこの範囲にすることにより、気密性を確保することがより可能となる。
【0052】
図9に、壁面の高さの高い外壁構造の形態を示す。このような形態は、二階建て又は三階建て以上の建物に用いられるものである。壁面の高さが高くなると、壁面の面積も必然的に大きくなるため、それに従い連通口4の開口面積も大きくする必要がある。
【0053】
図9(a)では、土台部8の上側に面積の大きい連通口4を形成し、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成している。このような設計では、開口面積を上記に示す範囲にしようとした場合、土台部8での連通口4による開口が大きくなりすぎるおそれがあり、例えば、一階建てであれば開口幅18mmにて設計される連通口4が二階建てでは開口幅36mmになり、風雨が入り込んだり外観が悪くなったりするおそれがある。
【0054】
そこで、図9(b)では、土台部8の上側と、階高の途中(上階部と下階部の境界部分など)とに、面積の大きい連通口4を形成し、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成している。このとき、それぞれの連通口4、4間の距離は3m以内であることが好ましい。この形態では、連通口4による開口が所定の箇所に分散されるため、それぞれの開口面積を小さくすることができる。
【0055】
また、図9(c)では、土台部8の上側に面積の大きい連通口4を形成するとともに、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成し、さらに上下に隣り合う外壁材10、10間(いわゆる横目地部)に横方向に延伸する隙間として連通口4を形成するようにしている。この場合、連通口4の開口がさらに分散されて、開口をより目立たなくすることができる。なお、左右に隣り合う外壁材10、10間(いわゆる縦目地部)に隙間を形成して連通口4を設けるようにしてもよい。
【0056】
図10に、階高の途中に連通口4が形成された構造の一例を示す。図10(a)及び(b)は、図9(b)の形態に対応するものであり、階高水切り22によって外壁部1が分断されており、この階高水切り22の上下両側に連通口4が設けられている。階高水切り22を用いることにより階高の途中で水切りを行うことができ、また開口を目立たなくすることができる。そして、図示の階高水切り22においては、垂下する階高水切り先端片22aが、階高水切り22の下側に設けられた連通口4の開口前面を覆っているので、階高水切り22の下側の連通口4に直接風雨が吹き込むようなことを防ぐことができる。
【0057】
図10(a)では、階高水切り22は胴縁11の屋外側の表面に取り付けられている。この形態では、胴縁11が分断されておらず、縦方向に亘って取り付けられた胴縁11により、建物の強度を補強することができる。また、図10(b)では、階高水切り22は壁下地2の表面に取り付けられており、外壁部1及び胴縁11が上下方向で分断されている。この形態では、各階毎に胴縁11と外壁部1とを形成することが可能となる。図10(a)及び(b)においては、下階部と上階部との境界に屋根部21が形成される場合、連通口4をこの屋根に隣接して形成すると開口がより目立たなくなるので好ましい。
【0058】
図10(c)は、図9(c)の形態に対応するものであり、外壁材10、10間の隙間により連通口4が形成されている。外壁材10、10間の隙間を連通口4にする場合、開口を分散してより目立たなくすることができる。外壁材10、10間の隙間の幅Lは、適宜に設計することができ、例えば1〜5mm程度、具体的には3mmなどにすることができる。連通口4の開口面積の合計量が上記の範囲を満たすためには、外壁材10、10間の隙間の幅Lは1.5mm以上であることが好ましい。
【0059】
図11に、上下に隣り合う外壁材10、10の接合部分の一例を示す。図11の形態では、下側に配設される外壁材10の受け部31の屋外側に、上側に配設される外壁材10の重ね部32が配置されて、外壁部1が形成されている。このような接合構造は、上方に突出する係合部を有する外壁材取付金具12を上下の外壁材10の間に配設し、上側の外壁材10の下端部を外壁材取付金具12の係合部に係合させることにより形成することができる。
【0060】
図11(a)では、上側の外壁材10の下端部と下側の外壁材10の上端部とが当接しており、隙間が形成されていない。なお、下側の外壁材10の受け部31と、上側の外壁材10の重ね部32との間には外壁材用パッキン33が設けてられていてもよい。
【0061】
図11(b)は、図10(c)の形態の具体例を示すものである。この形態では、上側の外壁材10の下端部と下側の外壁材10の上端部が当接しておらず、外壁材10、10間で隙間が形成されている。外壁材10、10間に形成される隙間は、外壁材10の重ね合わせ形状に沿って屈曲し、外部と通気空間3とを連通しており、この隙間が連通口4となる。そして、本形態では、通気空間3の開口部分の前方が外壁材10の重ね部32によって覆われている。このように外壁材10の重ね合わせにより開口を覆う場合、壁下地2が外部から見えないようにすることができ、開口をより目立たなくすることができるとともに、開口に直接風雨が当たることを防止し、防水性をさらに高めることができるものである。なお、外壁材10、10間に形成される隙間が屈曲して連通口4が形成される場合、連通口4の開口面積は、隙間の幅が上下方向で最小となる値を幅Lとし、この幅Lに基づき計算される。隙間の幅が最小となる部分が空気の流れの律速となるからである。
【0062】
図12に、左右に隣り合う外壁材10、10の接合部分(縦目地部)の一例を示す。上下に重ね合わせて外壁材10を取り付ける場合、一般的には、左右の外壁材10、10間に隙間が発生する。この隙間はシーラーやパッキンなどの閉塞部材によって閉塞することができるが、ノンシーリング工法では、閉塞部材が外面に露出しないようにして閉塞することができる。あるいは、この隙間を連通口4に用いることもできる。図12(a)(b)及び(c)は、外壁材10、10間の隙間が閉塞されている例である。図12(d)及び(e)は、外壁材10、10の隙間が閉塞されずに、外壁材10、10の隙間を連通口4として機能させて、外部と通気空間3とを連通させた例である。
【0063】
図12(a)及び(b)では、鋼板下地材27の表面に設けられた鋼板材26と外壁材10との間に、エプトシーラーなどのシーラー材25を設けることによって、外壁材10の隙間が閉塞され、外部と通気空間3とが分断されている。図12(a)では、側端部の端面が平坦な面となった外壁材10を用い、外壁材10を横方向に突き合せて外壁部1を形成した例を示している。図12(b)では、一方の側端部に横受け部28が形成され、他方の側端部に横重ね部29が形成された外壁材10を用い、横受け部28の屋外側に横重ね部29を重ねて外壁部1を形成した例を示している。図12(b)の場合、壁下地2を隠して隙間を目立ちにくくすることができる。なお、図12(a)及び(b)の形態では、通気空間3が横方向で分断されている。
【0064】
図12(c)では、外壁材10、10間に、外壁材10、10の隙間の前面を覆う縦目地被覆部23を備えた縦目地被覆材24を配置し、この縦目地被覆部23の裏面と外壁材10の表面との間にシーラー材25を設けて外壁材10、10間の隙間を閉塞している。この形態では、外壁材10の隙間を隠して目立ちにくくすることができる。また、縦目地被覆材24の通気空間3と隣接する部分に、横方向に開口する穴を形成すれば、通気空間3を横方向に亘って連通するように形成することができる。
【0065】
図12(d)では、外壁材10の隙間の位置での壁下地2に鋼板材26が取り付けられ、外壁材10の側端部の裏面にシーラー材25が設けられているが、鋼板材26とシーラー材25とは接触していない。そのため、外壁材10、10の隙間によって、外部と通気空間3とが連通している。外壁材10、10の隙間の幅Lは、例えば5〜20mm程度、具体的には12mmに設定することができる。
【0066】
図12(e)では、図12(d)の形態に加えて、外壁材10、10の隙間の前面を覆う縦目地被覆部23を備えた縦目地被覆材24が、外壁材10、10間に配置されている。この形態では、外壁材10の隙間を隠して目立ちにくくすることができる。外壁材10、10の隙間の幅Lは、例えば5〜20mm程度、具体的には12mmに設定することができる。
【0067】
なお、上記の縦目地構造においてはシーラー材25を用いているが、このシーラー材25は外壁の外表面に露出していないので劣化されにくくすることができるものである。
【0068】
上記の実施の形態では、胴縁11として、その長手方向を縦方向(垂直方向)に沿って配置した縦胴縁を用いた外壁構造の例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、長手方向を横方向(水平方向)に沿って配置した横胴縁を用いた外壁構造であってもよい。
【0069】
図13に、胴縁11の取り付け構造の一例を示す。図13(a)は縦胴縁の例であり、図13(b)は横胴縁の例である。これらの例では、壁面の左下端部に外壁材10を取り付けた様子を示している。図13(a)の例では、矩形状の外壁材10が長手方向を横方向にして配設され、いわゆる横張りで取り付けられている。図13(b)の例では、矩形状の外壁材10が長手方向を縦方向にして配設され、いわゆる縦張りで取り付けられている。
【0070】
胴縁11は通気空間3内に配置されるため空気の移動を妨げるおそれがある。したがって、空気の流れをスムーズにするために、連通口4は胴縁11の長手方向と垂直な方向に形成されること、すなわち胴縁11と連通口4とが略直交して形成されることが好ましい。
【0071】
図13(a)の場合、上述したように、壁面の下端部(土台部8の上側)と壁面の上端部(軒天部7の下側)に連通口4を設けることができ、さらに上下の外壁材10の隙間にも連通口4を設けることができる。これにより、縦胴縁と垂直な方向である横方向に直線状の連通口4を形成することができる。
【0072】
図13(b)の場合、壁面の側端部において外壁材10が壁下地2を覆わない部分を設けて連通口4を形成することができ、また、左右の外壁材10の隙間に連通口4を設けることができる。これにより、横胴縁と垂直な方向である縦方向に直線状の連通口4を形成することができる。図13(b)の場合においても、土台部8の上側や軒天部7の下側に連通口4を設けてもよい。図13(b)の形態でも差圧を小さくすることができるが、外部空間との差圧をより小さくするためには、図13(b)のような横胴縁を用いた形態よりも、図13(a)のような縦胴縁を用いた形態の方が好ましい。
【0073】
なお、上記の実施の形態では、土台部8の上側と軒天部7の下側との両方に連通口4が形成された形態を主に示したが、本発明はこれに限られるものではなく、土台部8の上側と軒天部7の下側のどちらか一方に連通口4を設けるようにしてもよい。あるいは、土台部8の上側と軒天部7の下側のどちらにも連通口4を設けないようにし、連通口4に必要な開口面積を、外壁材10間の隙間によって確保するようにしてもよい。
【0074】
図14に、外壁材10間の隙間によって連通口4を形成した外壁構造の一例を示す。この形態では、上下左右に隣り合う外壁材10、10間に連通口4が形成されている。すなわち、各外壁材10の周囲に連通口4が形成されており、連通口4は壁面全体として格子形状になっている。この場合も、連通口4の開口面積の合計が上述の範囲となるようにするものである。
【0075】
上記の実施の形態では、外壁材10を胴縁11を介して壁下地2に取り付けることにより、外壁部1と通気空間3とが形成された形態を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、胴縁11を用いずに、通気空間3の厚みを働き幅とする外壁材取付金具12をスペーサとして機能させ、この外壁材取付金具12を壁下地2に取り付けるとともに外壁材取付金具12に外壁材10を取り付けることにより、外壁部1と壁下地2との間に通気空間3を形成してもよい。あるいは、胴縁11の代わりに、通気空間3の厚みを確保するためのスペーサ部材を用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0076】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0077】
[試験例1]
実施例1では、図1に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの胴縁11、突出幅5mmの外壁材取付金具12を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。胴縁11は縦胴縁とし、矩形状の外壁材10を横張りして外壁部1を形成した。また、壁面を図1に示す構造の通気分断部6によって面毎に区画分けした。通気分断部6の第一部材61の寸法に関しては第一片を25〜80mmの範囲、第二片を25〜80mmの範囲とし、凸条の突出寸法を5mmとし、また第二部材62の材質をEPDM、その平断面寸法を10mm×10mmとした。また、壁下地2には合板による構造面材20を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m)とした。開口部30は設けなかった。連通口4の位置は、土台部8の上側と、軒天部7の下側(見切部)とし、連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。
【0078】
比較例1では、実施例1において、通気分断部6を設けなかった。
【0079】
その他の仕様は、表1の通りである。
【0080】
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。なお、表1における差圧の平均値は、1面当たり測定箇所48点の平均で求めた。結果を表1に示す。
【0081】
表1に示すように、通気分断部6が設けられている実施例1では、比較例1に比べて差圧が小さくなることが確認された。
【0082】
【表1】

【0083】
[試験例2]
図7に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの胴縁11、突出幅5mmの外壁材取付金具12を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。また、壁面を通気分断部6(気密パッキン6a)によって面毎に区画分けした。また、壁下地2には合板による構造面材を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m)とした。開口部30は設けなかった。連通口4の位置は、土台部8の上側と、軒天部7の下側(見切部)とし、連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。その他の仕様は、表2の通りである。
【0084】
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。なお、表2における差圧の平均値は、1面当たり測定箇所48点の平均で求めた。結果を表2に示す。
【0085】
表2に示すように、連通口4の開口面積が大きいと差圧が小さくなることが確認された。
【0086】
【表2】

【0087】
[試験例3]
図7に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの胴縁11、突出幅5mmの外壁材取付金具12を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。胴縁11は縦胴縁とし、矩形状の外壁材10を横張りして外壁部1を形成した。また、壁面を通気分断部6(気密パッキン6a)によって面毎に区画分けした。壁面内では区画分けしなかった。また、壁下地2には合板による構造面材を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁下地2の開口面積は、実際の隙間が9cm/mであり、抵抗を計算した有効開口面積が5cm/mであった。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m)とした。開口部30は設けなかった。連通口4の位置は、土台部8の上側と、軒天部7の下側(見切部)と、外壁材10、10間の隙間(基材部)とし、連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。その他の仕様は、表3の通りである。
【0088】
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。結果を表3に示す。
【0089】
表3に示すように、連通口4の開口面積が大きくなると、差圧ΔPが小さくなることが確認された。更に、壁下地に開口が局所的にあいていても均一にあいていても結果に大きな差異は生じないことが確認された。更に、連通口は土台部側に形成されている方が、差圧が小さくなりやすいことが確認された。
【0090】
【表3】

【符号の説明】
【0091】
101 第一の外壁部
102 第二の外壁部
2 壁下地
3 通気空間
6 通気分断部
61 第一部材
62 第二部材
631 第一片
632 第二片
64 凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地と、前記壁下地に対して屋外側の位置に設置されている第一の外壁部及び第二の外壁部と、通気分断部とを備え、
前記外壁部が平面視において互いに交差する方向に突き合わされ、
前記壁下地と前記外壁部との間に、屋外に連通する通気空間が形成され、
前記通気分断部が、前記外壁部同士が突き合わされている位置或いはその近傍で前記通気空間を分断する外壁構造。
【請求項2】
前記通気分断部が、第一部材と、弾性を有する二つの第二部材とを備え、
前記第一部材が、前記壁下地と前記第一の外壁部との間に介在する第一片と、前記壁下地と前記第二の外壁部との間に介在する第二片とを備え、前記第一片と前記第二片には、それぞれ前記第一の外壁部へ向けて突出する凸条及び前記第二の外壁部へ向けて突出する凸条が形成され、
二つの前記第二部材のうち一方は前記第一片における前記凸条に対して、前記外壁部同士が突き合わされている位置とは反対側の位置で前記第一片と前記第一の外壁部との間に介在し、他方は前記第二片における前記凸条に対して、前記外壁部同士が突き合わされている位置とは反対側の位置で前記第二片と前記第二の外壁部との間に介在する外壁構造。
【請求項3】
前記通気空間と屋外とを接続する連通口を備え、前記通気空間内の壁下地の壁面の面積に対する、前記連通口の開口面積の割合が、65cm/m以上である請求項1又は2に記載の外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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