外形カイラリティーに基づく集積光偏光変換器
集積光偏光変換器が、徐々にねじれた導波路を近似するために使用される複数のコア層を含み、最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に伝播モードを断熱的に変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積光偏光変換器の分野に関し、詳細には、モード展開(mode evolution)または外形カイラリティー(structural chirality)に基づく集積光偏光変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年10月30日出願の仮出願第60/422,414号、および2003年6月16日出願の仮出願第60/478,751号に基づき優先権を主張するものであり、ともに参照によって本明細書にその全体を組み込むものとする。
【0003】
光ファイバ通信の普及が進むにつれて、光信号をより複雑に処理したいという要求が増大し続けている。光集積デバイスによって、多くの光の機能をチップ上に集積することが可能になり、光集積回路手法が、おそらく、光信号をより複雑に処理したいという要求を満たすことになる。しかし、機能性を向上させ、機能当りのコストを低減するためには、チップ上の構成要素の密度を増加しなければならない。
【0004】
所与の波長で、誘電体導波路中にモードの閉じ込めが、コアとクラッドの屈折率のコントラストで決まり、コントラストが大きいほど、ますます閉じ込めが強くなる。閉じ込めがより強くなった結果、実質的な放射損失を生じることなく、導波路を互いにより接近させてパッキングし、より鋭い屈曲部のまわりで光を誘導する能力が得られる。これらは、デバイス密度に影響を与える2つのもっともクリティカルなパラメータであるので、屈折率のコントラストが大きくなればなるほど、デバイス密度がますます高くなると一般に言うことができる。しかし、屈折率のコントラストが大きくなるにつれて、導波路中を伝播する水平電界モード(TE)および水平磁界モード(TM)が、様々な特性を示し始める。正方形の導波路の直線部分では、TEモードおよびTMモードは、同じ速度で伝播するが、屈曲部では、TEモードおよびTMモードは、実質的に互いに異なる速度で伝播する。1対の正方形の、高屈折率コントラスト(HIC)誘導路を結合したとき、TEモードおよびTMモードは、異なる速度で結合することになる。大部分の光集積構成要素は、伝播速度および誘導路対誘導路結合の影響をともに受け易く、これら作用の結果、性能が偏光に依存することになり、電気通信用途において使用される標準シングルモード・ファイバから生じるランダムな偏光状態に対応できない結果になる。
【0005】
屈曲部のまわりの伝播に自然に起こるコントラストを補償し、かつ/または誘導路対誘導路結合を等化するために、長方形の導波路の形状を使用し、誘導路の縦横比を変更することが、これらの作用を補償するための一方法である。しかし、ある特定のデバイスについて、これらの作用の一方または他方をこの方法で補償できるが、屈折率のコントラストが大きくなるにつれて、チップ上のデバイスすべてに適用し、ともに同時に補償することが不可能でないとしても、補償することは困難になる。
【0006】
HICの光集積部品の偏光感受性を克服するための他の手法は、偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて、シングルモード(SM)ファイバから生じるランダムな入力偏光を分割し、偏光保存(PM)ファイバに出力部を結合し、これらのPMファイバの1つを90°だけねじり、2つのファイバを結合し、そのようにして光集積チップ上の経路を分離することである。これらの経路のそれぞれ上に、同一の構造を使用して2つの成分を独立に処理する。出力部において、別の1対のPMファイバに結合することによってこの成分を再結合し、以前はねじられていなかった経路のPMファイバをねじり、SMファイバ出力部を有する別のPBSに両方のファイバを結合する。その手法は、通常「偏光ダイバーシティ」スキームとして呼ばれ、実現可能であるが、大量の光部品によって実現されたとき、扱いにも困る。PMファイバの位置合わせは、困難であり高価になる。信号の完全性を保存するために、経路長は、少なくともビット長の1/10内と一致しなければならない。(すなわち、屈折率を1.5と仮定した場合、10Gb/sの信号に対して、ほぼ2mm、40Gb/sの信号に対して、ほぼ0.5mmである。)
PBSによる分割機能とねじれたPMファイバによる回転機能を光集積チップ上に集積することが、より良い手法である。そうすると、PMファイバを位置合わせする必要がなくなり、経路長をリソグラフィによって容易に一致させることができるはずである。
【0007】
いくつかの光集積偏光スプリッタおよび回転器(または変換器)が、提案されている。しかし、今日まで提案された大部分のデバイスでは、一対の導波路モードを結合することに依拠している。結合モードに基づくデバイスは、一般に、構造中を伝播するスーパモードの発散のコントラストから生じる波長感度を示す。さらに、その手法は、製造上の誤差の影響を非常に受け易い。導波路形状または間隔のわずかな変動によってさえ、デバイス性能に著しい影響を与え得る。
【0008】
モード展開の原理を使用することが、偏光スプリッタまたは回転器を形成するためのより良い方法である。導波路形状を徐々に(または断熱的に)変化させることによって、誘導路中のモードを調節し、偏光状態を分離または回転することができる。その手法では、ただモードが互いにパワーを交換しないことが必要であり、それは、適切な導波路の設計と構造の緩やかな漸進的変化によって確実にすることができる。モードを結合させないという要求は、比較的緩やかなので、モード展開に基づくデバイスは、波長に感度がなく製造上の許容範囲が広くなる傾向がある。モード展開に基づく偏光スプリッタを形成できることが言われ実証されてきたが、しかしこの手法には、複数の導波路材料が必要になるという不利益がある。今日まで、モード展開の原理を利用する偏光変換器は、提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、本発明の目的は、モード展開または外形カイラリティーの原理に基づく光集積デバイスによって、TM入力偏光をTE出射偏光に変換する、またはその逆も同様に変換することである。
【0010】
本発明の別の目的は、波長感応性をデバイスからなくし、製造上の誤差を広く許容できるようにし、構築するためには、単一の材料からなるシステムだけを必要とさせることである。
【0011】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下の詳しい記述と添付図面から当業者に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、集積光偏光変換器が提供される。集積光偏光変換器は、徐々にねじれた導波路を近似するために使用される複数のコア層を含み、最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に断熱的に伝播モードを変換する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、集積光偏光変換器を形成する方法が提供される。この方法は、最初の偏光状態を受け取るステップを含む。この方法は、徐々にねじれた導波路を近似し、最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に断熱的に伝播モードを変換するための複数のコア層を形成するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般の四角形誘電体導波路のモード構造は、最低限2つの誘導電磁モード、TE(または疑似TE)モードおよびTM(または疑似TM)モードと、誘導されない(または放射)電磁モードの無限和とから構成される。四角形の導波路を90°回転した場合、そのモード構造は、同様に回転し、TEモードがTMモードになり、逆も同様である。したがって、四角形の導波路とその回転した相手方の間で滑らかに遷移することによって、モード展開による偏光変換が可能になるに違いない。しかし、最初の構造にどんな摂動があっても、モード間の結合を誘発することになる。モード展開手法が働くためには、モード間のパワーの交換を阻止しなければならない。
【0015】
四角形の導波路とその回転した相手方の間で遷移させる一方法は、最初の構造をねじることである。図1に、入力部102と出力部104とを有した、断熱的にねじられた誘電体導波路100の概略図を示す。導波路100をねじることは、誘導モード間、および誘導モードと放射モードの間の結合を誘発する、四角形誘導のモード構造への摂動として働く。誘導モードと放射モードの間の結合には、強い摂動が必要なので、放射モードへの結合は、緩やかに漸進的に変化する構造では、一般に無視することができる。しかし、誘導モード間の結合には、重要な影響が残る。
【0016】
図1の導波路100が正方形である場合、誘導モードは縮退して、したがって同じ速度で伝播するはずである。ねじられることによって誘発された場の結合が、構造の長さに沿ってコヒーレントに加わり、モード間のパワー交換が著しくなるはずである。これは、ねじられた導波路100が、モード結合ではなくモード展開の原理に基づき働くように企図されているので、不要の結果のはずである。結合を抑制するために、誘導モードが互いに異なる速度で伝播するように、縦横比が大きい四角形の導波路を使用する。この場合、構造の長さに沿ってあるモードから他のモードに結合するパワーは、構造が十分に長くてモードの位相分離が可能であるかぎり、インコヒーレントに加わることになる。屈折率のコントラスト、縦横比および遷移する長さが増加するにつれて、インコヒーレンスの程度も増加し、構造の長さに沿って交換されるパワーの蓄積を、任意に低下することができる。遷移する長さがあまりにも短い、または誘導の縦横比があまりにも小さくて、位相分離を起こすことが可能にならないときだけ、性能は、理想状態から逸脱する。
【0017】
図1の構造100は、導波路が正確にねじられた理想的な構造である。しかし、デバイスの実際の実装では、その幾何形状は、すべて微細加工技術によって形成されるべきで、一般に、リソグラフィで画定された特徴を有して階層化プロセスによって、構造を形成することが必要である。したがって、このねじられた導波路を有限の数の層を用いて近似することが望ましい。本明細書では、垂直方向に屈折率の変化がない導波路断面を貫通する水平の薄片として、層を定義する。
【0018】
光導波路は、通常様々な屈折率の誘電性材料から形成される。一般に、より高い屈折率の材料は、コア材料と考えられ、一方より低い屈折率の材料は、クラッド材料と考えられる。具体的に言うと、本明細書では、クラッド材料を、層のうちでもっとも低い屈折率の材料として定義する。したがって、層のうちの他の材料は、すべてコア材料である。コア層を、コア材料を含む層として定義する。
【0019】
構造が偏光変換器として動作するための基本要求事項は、極めて緩やかであり、主な要求は、外形カイラリティー、または電磁的意味でのねじれが、保存されることである。可能な幾何形状のいくつかを以下に述べる。
【0020】
図2に、ねじられた導波路を近似し、垂直方向に位置合わせされた四角形導波路から水平磁界に位置合わせされた四角形導波路に構造を変換するために、高さが、それぞれh1、h2、h3である、3つのコア層4、6、8を使用した集積光偏光変換器2の概略図を示す。この記述された実施形態では、層4、6、8の各層は、入力部で幅がw1である。この構造2の出力部で、導波路の幅は、w2であり、これは、h1、h2、h3の高さの和にほぼ等価である。出力部の高さは、中間層の高さh2である。しかし、この構造の幾何形状は、用途による要求に依存して変えることができる。
【0021】
屈折率がコア層より低いクラッド層は、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込めを行う。
導波路軸の回転を近似するように、上側コア層4と下側コア層8から材料を取り除き中間コア層6に材料を追加することによって、形状の遷移が達成される。
【0022】
図3Aおよび3Bに、本発明の導波路中を伝播する基本モードの場のグレースケール像を示す。図3Aに、開始部構造10、中間部構造12および終端部構造14について、基本モードの電界プロフィールの^x(xの上側^を付した記号を表す)に成分のグレースケール像を示す。図3Bに、開始部構造16、中間部構造18および終端部構造20について、基本モードの電界プロフィールの^y(yの上側^を付した記号を表す)成分のグレースケール像を示す。
【0023】
このモード・プロフィールから、モードは、最初^y方向に沿って偏光されているが、構造に沿った中間点で、モードの場の成分がいくらか均等に分割され、構造の終端部では、モードは、主に^x方向に沿って偏光されていることが示される。ローカル・モードの結合理論により言うと、これらの構造間の断熱的な遷移によって、最初の誘導中の^y偏光状態から最終の誘導中の^x偏光状態へのモード変換が可能になる。第1および第2のモードがともに変換されるので、その逆も真である。すなわち、最初の誘導中の^x偏光状態が、一般に、最終の誘導中の^y偏光状態に変換されることになる。さらに、相互性の原理によって、デバイスが逆に動作することが保証される。すなわち、構造の終端部から始まる^xおよび^yの偏光状態は、それぞれ構造の開始部で^yおよび^xの偏光状態に断熱的に変換されることになる。
【0024】
図4は、図2に示す変換器のある特定の実装による性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、h1=h2=h3=w1=0.25μm、w2=0.75μm、コア屈折率が2.2で、クラッド屈折率が1.445であり、遷移形態は、伝播方向^z(zの上側^を付した記号を表す)に沿って線形であるが、他の実施形態では、これらのパラメータを変えることができ、非線形な遷移形態を使用することができる。3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。モード散乱シミュレーションは、システムを表現するために、導波路断面当りいくつかのモードだけが必要なとき、特に正確なモデル化ツールになる。放射モードが、実質的にモード展開に基づく手法の動作に影響を与えないので、モード散乱技法は、この問題によく適している。さらに、もたらされた結果は、完全3次元有限差時間領域(FDTD)シミュレーションを用いていくつかのデバイス長で確認した。FDTD法は、マックスウェル方程式の完全な数値計算法である。図4に示したモード散乱シミュレーション結果は、パワーの99%またはそれより多いパワーが、テーパを付けたられた形状で200μmだけの長さに沿ってTM偏光からTE偏光に成功裡に伝達されることを示す。純粋のねじりを用いた誘導について仮定したように、テーパがあまりにも短く、したがって摂動があまりにも大きくて位相分離が可能でないとき、誘導モードがパワーを交換し、デバイス性能が劣化し、それによってTM偏光状態中にパワーが残ることが分かった。
【0025】
図5は、デバイス長を200μmに設定したときの、図4で検討した特定の実施形態のブロードバンド性能を示すグラフである。ここでやはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを実施した。図5によって、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体、すなわち電気通信用の実用的な波長範囲にわたって、認められないことが示されている。この手法のブロードバンド性能は、動作の基礎理論と一致する。狙いは、モード間の結合を導入することなく、モードを一方の状態から他方の状態に遷移させることであるので、帯域幅は、モード間の結合が、他方の波長に相対的に一方の波長において増加する程度だけ、制限される。短波長では、追加のモードの出現によって、この結合が助長され、長波長では、モードが、より密接に位相が一致した状態になり、それによって主な作用が低減されて、モード間の結合が抑制される。どちらの場合も、波長の大きな変化が、この現象を引き起こすために必要である。これは、スーパモードの発散のコントラストに関連する固有の帯域幅限界を被る結合モードに基づく手法とは著しく違う。
【0026】
多くの基本構造の変更が可能である。幾何形状と屈折率は、ともに記述された特定の実施形態とは相違することができる。
図6は、本発明の偏光変換器24の別の実施形態の概略図である。加工の制限によって、上側層26および下側層28が、滑らかに微小な幅に到達しない恐れがある。したがって、図6に示すように、最終の遷移形態が、中間層30から上側層26および下側層28を分離することによって行われる構造を検討するのが有利になる場合がある。この結果、最終の出力導波路までほぼ等価な断熱的な遷移が行われる。
【0027】
最初、上側層26、中間層30および下側層28は、それぞれ高さがh1、h2およびh3になるように構造24を設計する。さらに、層26、28、30の各層は、幅を、入力部でw1にする。構造24の出力部において、幅がw2であり、それは、高さh1、h2およびh3の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、中間層の高さh2である。
【0028】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図7は、図6の偏光変換器と本質的に同様な本発明の偏光変換器32の別の実施形態の概略図である。しかし、ここでは、上側層34および下側層38は、実際まったくテーパを付けられた形状でなく、中間層36からむしろ徐々に分かれている。このように、最低形状サイズをより大きくさえし、それによってさらに加工を容易に行えるようにする。上側層34および中間層36を出力部で間隔sだけ分離し、中間層36および下側層38を出力部で間隔sだけ分離する。
【0029】
最初、上側層34、中間層36および下側層38は、それぞれ高さがh1、h2およびh3になるように構造32を設計する。さらに、層34、36、38の各層は、幅をw1にする。構造32の出力部において、幅がw2であり、それは、h1、h2およびh3の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、中間層の高さh2である。
【0030】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図8は、図7に示す偏光変換器のある特定の実施形態の性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、パラメータを次のように設定した。h1=h2=h3=0.25μm、w1=0.25μm、w2=0.75μm、s=0.125μm、コア屈折率およびクラッド屈折率が、それぞれ2.2および1.445である。他の実施形態では、これらのパラメータを変更することができる。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。元の実施形態の性能と同様の性能が、2、3百ミクロンだけのデバイス長を用いて得られる。
【0031】
図9は、構造長を100μmに設定したときの、図7で検討した特定の実施形態のブロードバンド性能を示すグラフである。ここでやはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行った。図9には、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体にわたって認められないことが示されている。
【0032】
3つの層は、最低限デバイスが対称的であるために必要であるが、前述の手法のどれもが、2つのコア層だけから構成されるデバイスに適用することができる。図10は、2つのコア層42、44だけを使用した偏光変換器40の概略図である。この実施形態では、上側層42および下側層44は、ともに同時にテーパを付けられ、分離されている。
【0033】
最初、上側層42および下側層44は、それぞれ高さがh1およびh2になるように偏光変換器40を設計する。さらに、層42、44の各層は、入力部で幅をw1にする。出力部において、上側層は、幅がw3である。キラル導波路構造40の出力部において、幅がw2であり、それは、h1およびh2の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、下側層の高さh2である。デバイスの性能は、層の順序付け(すなわち、どの層が上にあるか)によっては影響されない。
【0034】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図11は、図10に示す構造のある特定の実施形態の性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、パラメータを次のように設定した。h1=h2=0.4μm、w1=0.4μm、w2=0.8μm、w3=0.25μm、s=0.25μm、コア屈折率およびクラッド屈折率が、それぞれ2.2および1.445である。他の実施形態では、これらのパラメータを変更することができる。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。2つの層の実施形態に固有の非対称性にもかかわらず、この構造は、非常にうまく動作し、長さが200μmだけの構造の場合、パワーの99%より多いパワーが、TM偏光からTE偏光に伝達される。
【0035】
図12は、図11のシミュレーションに使用した実施形態の、長さが100μmである実装によるブロードバンド性能を表したグラフである。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行った。図12には、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体にわたって認められないことが示されている。
【0036】
本発明は、いくつかの好ましいその実施形態によってそれを示し述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その形状および細部に様々な変更、省略および追加を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ねじれた導波路の概略図である。
【図2】3つの断熱的にテーパを付けられたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図3】図3Aは、本発明の導波路中を伝播する基本モードの電界のグレースケール像である。
【0038】
図3Bは、本発明の導波路中を伝播する基本モードの電界のグレースケール像である。
【図4】図2のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図5】図2のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【図6】3つの断熱的にテーパを付けられ、分離されたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図7】中間のコア層が断熱的にテーパを付けられ、上側および下側のコア層が断熱的に分離されたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図8】図7のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図9】図7のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【図10】2つの断熱的にテーパを付けられ、分離されたコア層だけを使用した偏光変換器の概略図である。
【図11】図10のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図12】図10のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積光偏光変換器の分野に関し、詳細には、モード展開(mode evolution)または外形カイラリティー(structural chirality)に基づく集積光偏光変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年10月30日出願の仮出願第60/422,414号、および2003年6月16日出願の仮出願第60/478,751号に基づき優先権を主張するものであり、ともに参照によって本明細書にその全体を組み込むものとする。
【0003】
光ファイバ通信の普及が進むにつれて、光信号をより複雑に処理したいという要求が増大し続けている。光集積デバイスによって、多くの光の機能をチップ上に集積することが可能になり、光集積回路手法が、おそらく、光信号をより複雑に処理したいという要求を満たすことになる。しかし、機能性を向上させ、機能当りのコストを低減するためには、チップ上の構成要素の密度を増加しなければならない。
【0004】
所与の波長で、誘電体導波路中にモードの閉じ込めが、コアとクラッドの屈折率のコントラストで決まり、コントラストが大きいほど、ますます閉じ込めが強くなる。閉じ込めがより強くなった結果、実質的な放射損失を生じることなく、導波路を互いにより接近させてパッキングし、より鋭い屈曲部のまわりで光を誘導する能力が得られる。これらは、デバイス密度に影響を与える2つのもっともクリティカルなパラメータであるので、屈折率のコントラストが大きくなればなるほど、デバイス密度がますます高くなると一般に言うことができる。しかし、屈折率のコントラストが大きくなるにつれて、導波路中を伝播する水平電界モード(TE)および水平磁界モード(TM)が、様々な特性を示し始める。正方形の導波路の直線部分では、TEモードおよびTMモードは、同じ速度で伝播するが、屈曲部では、TEモードおよびTMモードは、実質的に互いに異なる速度で伝播する。1対の正方形の、高屈折率コントラスト(HIC)誘導路を結合したとき、TEモードおよびTMモードは、異なる速度で結合することになる。大部分の光集積構成要素は、伝播速度および誘導路対誘導路結合の影響をともに受け易く、これら作用の結果、性能が偏光に依存することになり、電気通信用途において使用される標準シングルモード・ファイバから生じるランダムな偏光状態に対応できない結果になる。
【0005】
屈曲部のまわりの伝播に自然に起こるコントラストを補償し、かつ/または誘導路対誘導路結合を等化するために、長方形の導波路の形状を使用し、誘導路の縦横比を変更することが、これらの作用を補償するための一方法である。しかし、ある特定のデバイスについて、これらの作用の一方または他方をこの方法で補償できるが、屈折率のコントラストが大きくなるにつれて、チップ上のデバイスすべてに適用し、ともに同時に補償することが不可能でないとしても、補償することは困難になる。
【0006】
HICの光集積部品の偏光感受性を克服するための他の手法は、偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて、シングルモード(SM)ファイバから生じるランダムな入力偏光を分割し、偏光保存(PM)ファイバに出力部を結合し、これらのPMファイバの1つを90°だけねじり、2つのファイバを結合し、そのようにして光集積チップ上の経路を分離することである。これらの経路のそれぞれ上に、同一の構造を使用して2つの成分を独立に処理する。出力部において、別の1対のPMファイバに結合することによってこの成分を再結合し、以前はねじられていなかった経路のPMファイバをねじり、SMファイバ出力部を有する別のPBSに両方のファイバを結合する。その手法は、通常「偏光ダイバーシティ」スキームとして呼ばれ、実現可能であるが、大量の光部品によって実現されたとき、扱いにも困る。PMファイバの位置合わせは、困難であり高価になる。信号の完全性を保存するために、経路長は、少なくともビット長の1/10内と一致しなければならない。(すなわち、屈折率を1.5と仮定した場合、10Gb/sの信号に対して、ほぼ2mm、40Gb/sの信号に対して、ほぼ0.5mmである。)
PBSによる分割機能とねじれたPMファイバによる回転機能を光集積チップ上に集積することが、より良い手法である。そうすると、PMファイバを位置合わせする必要がなくなり、経路長をリソグラフィによって容易に一致させることができるはずである。
【0007】
いくつかの光集積偏光スプリッタおよび回転器(または変換器)が、提案されている。しかし、今日まで提案された大部分のデバイスでは、一対の導波路モードを結合することに依拠している。結合モードに基づくデバイスは、一般に、構造中を伝播するスーパモードの発散のコントラストから生じる波長感度を示す。さらに、その手法は、製造上の誤差の影響を非常に受け易い。導波路形状または間隔のわずかな変動によってさえ、デバイス性能に著しい影響を与え得る。
【0008】
モード展開の原理を使用することが、偏光スプリッタまたは回転器を形成するためのより良い方法である。導波路形状を徐々に(または断熱的に)変化させることによって、誘導路中のモードを調節し、偏光状態を分離または回転することができる。その手法では、ただモードが互いにパワーを交換しないことが必要であり、それは、適切な導波路の設計と構造の緩やかな漸進的変化によって確実にすることができる。モードを結合させないという要求は、比較的緩やかなので、モード展開に基づくデバイスは、波長に感度がなく製造上の許容範囲が広くなる傾向がある。モード展開に基づく偏光スプリッタを形成できることが言われ実証されてきたが、しかしこの手法には、複数の導波路材料が必要になるという不利益がある。今日まで、モード展開の原理を利用する偏光変換器は、提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、本発明の目的は、モード展開または外形カイラリティーの原理に基づく光集積デバイスによって、TM入力偏光をTE出射偏光に変換する、またはその逆も同様に変換することである。
【0010】
本発明の別の目的は、波長感応性をデバイスからなくし、製造上の誤差を広く許容できるようにし、構築するためには、単一の材料からなるシステムだけを必要とさせることである。
【0011】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下の詳しい記述と添付図面から当業者に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、集積光偏光変換器が提供される。集積光偏光変換器は、徐々にねじれた導波路を近似するために使用される複数のコア層を含み、最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に断熱的に伝播モードを変換する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、集積光偏光変換器を形成する方法が提供される。この方法は、最初の偏光状態を受け取るステップを含む。この方法は、徐々にねじれた導波路を近似し、最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に断熱的に伝播モードを変換するための複数のコア層を形成するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般の四角形誘電体導波路のモード構造は、最低限2つの誘導電磁モード、TE(または疑似TE)モードおよびTM(または疑似TM)モードと、誘導されない(または放射)電磁モードの無限和とから構成される。四角形の導波路を90°回転した場合、そのモード構造は、同様に回転し、TEモードがTMモードになり、逆も同様である。したがって、四角形の導波路とその回転した相手方の間で滑らかに遷移することによって、モード展開による偏光変換が可能になるに違いない。しかし、最初の構造にどんな摂動があっても、モード間の結合を誘発することになる。モード展開手法が働くためには、モード間のパワーの交換を阻止しなければならない。
【0015】
四角形の導波路とその回転した相手方の間で遷移させる一方法は、最初の構造をねじることである。図1に、入力部102と出力部104とを有した、断熱的にねじられた誘電体導波路100の概略図を示す。導波路100をねじることは、誘導モード間、および誘導モードと放射モードの間の結合を誘発する、四角形誘導のモード構造への摂動として働く。誘導モードと放射モードの間の結合には、強い摂動が必要なので、放射モードへの結合は、緩やかに漸進的に変化する構造では、一般に無視することができる。しかし、誘導モード間の結合には、重要な影響が残る。
【0016】
図1の導波路100が正方形である場合、誘導モードは縮退して、したがって同じ速度で伝播するはずである。ねじられることによって誘発された場の結合が、構造の長さに沿ってコヒーレントに加わり、モード間のパワー交換が著しくなるはずである。これは、ねじられた導波路100が、モード結合ではなくモード展開の原理に基づき働くように企図されているので、不要の結果のはずである。結合を抑制するために、誘導モードが互いに異なる速度で伝播するように、縦横比が大きい四角形の導波路を使用する。この場合、構造の長さに沿ってあるモードから他のモードに結合するパワーは、構造が十分に長くてモードの位相分離が可能であるかぎり、インコヒーレントに加わることになる。屈折率のコントラスト、縦横比および遷移する長さが増加するにつれて、インコヒーレンスの程度も増加し、構造の長さに沿って交換されるパワーの蓄積を、任意に低下することができる。遷移する長さがあまりにも短い、または誘導の縦横比があまりにも小さくて、位相分離を起こすことが可能にならないときだけ、性能は、理想状態から逸脱する。
【0017】
図1の構造100は、導波路が正確にねじられた理想的な構造である。しかし、デバイスの実際の実装では、その幾何形状は、すべて微細加工技術によって形成されるべきで、一般に、リソグラフィで画定された特徴を有して階層化プロセスによって、構造を形成することが必要である。したがって、このねじられた導波路を有限の数の層を用いて近似することが望ましい。本明細書では、垂直方向に屈折率の変化がない導波路断面を貫通する水平の薄片として、層を定義する。
【0018】
光導波路は、通常様々な屈折率の誘電性材料から形成される。一般に、より高い屈折率の材料は、コア材料と考えられ、一方より低い屈折率の材料は、クラッド材料と考えられる。具体的に言うと、本明細書では、クラッド材料を、層のうちでもっとも低い屈折率の材料として定義する。したがって、層のうちの他の材料は、すべてコア材料である。コア層を、コア材料を含む層として定義する。
【0019】
構造が偏光変換器として動作するための基本要求事項は、極めて緩やかであり、主な要求は、外形カイラリティー、または電磁的意味でのねじれが、保存されることである。可能な幾何形状のいくつかを以下に述べる。
【0020】
図2に、ねじられた導波路を近似し、垂直方向に位置合わせされた四角形導波路から水平磁界に位置合わせされた四角形導波路に構造を変換するために、高さが、それぞれh1、h2、h3である、3つのコア層4、6、8を使用した集積光偏光変換器2の概略図を示す。この記述された実施形態では、層4、6、8の各層は、入力部で幅がw1である。この構造2の出力部で、導波路の幅は、w2であり、これは、h1、h2、h3の高さの和にほぼ等価である。出力部の高さは、中間層の高さh2である。しかし、この構造の幾何形状は、用途による要求に依存して変えることができる。
【0021】
屈折率がコア層より低いクラッド層は、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込めを行う。
導波路軸の回転を近似するように、上側コア層4と下側コア層8から材料を取り除き中間コア層6に材料を追加することによって、形状の遷移が達成される。
【0022】
図3Aおよび3Bに、本発明の導波路中を伝播する基本モードの場のグレースケール像を示す。図3Aに、開始部構造10、中間部構造12および終端部構造14について、基本モードの電界プロフィールの^x(xの上側^を付した記号を表す)に成分のグレースケール像を示す。図3Bに、開始部構造16、中間部構造18および終端部構造20について、基本モードの電界プロフィールの^y(yの上側^を付した記号を表す)成分のグレースケール像を示す。
【0023】
このモード・プロフィールから、モードは、最初^y方向に沿って偏光されているが、構造に沿った中間点で、モードの場の成分がいくらか均等に分割され、構造の終端部では、モードは、主に^x方向に沿って偏光されていることが示される。ローカル・モードの結合理論により言うと、これらの構造間の断熱的な遷移によって、最初の誘導中の^y偏光状態から最終の誘導中の^x偏光状態へのモード変換が可能になる。第1および第2のモードがともに変換されるので、その逆も真である。すなわち、最初の誘導中の^x偏光状態が、一般に、最終の誘導中の^y偏光状態に変換されることになる。さらに、相互性の原理によって、デバイスが逆に動作することが保証される。すなわち、構造の終端部から始まる^xおよび^yの偏光状態は、それぞれ構造の開始部で^yおよび^xの偏光状態に断熱的に変換されることになる。
【0024】
図4は、図2に示す変換器のある特定の実装による性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、h1=h2=h3=w1=0.25μm、w2=0.75μm、コア屈折率が2.2で、クラッド屈折率が1.445であり、遷移形態は、伝播方向^z(zの上側^を付した記号を表す)に沿って線形であるが、他の実施形態では、これらのパラメータを変えることができ、非線形な遷移形態を使用することができる。3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。モード散乱シミュレーションは、システムを表現するために、導波路断面当りいくつかのモードだけが必要なとき、特に正確なモデル化ツールになる。放射モードが、実質的にモード展開に基づく手法の動作に影響を与えないので、モード散乱技法は、この問題によく適している。さらに、もたらされた結果は、完全3次元有限差時間領域(FDTD)シミュレーションを用いていくつかのデバイス長で確認した。FDTD法は、マックスウェル方程式の完全な数値計算法である。図4に示したモード散乱シミュレーション結果は、パワーの99%またはそれより多いパワーが、テーパを付けたられた形状で200μmだけの長さに沿ってTM偏光からTE偏光に成功裡に伝達されることを示す。純粋のねじりを用いた誘導について仮定したように、テーパがあまりにも短く、したがって摂動があまりにも大きくて位相分離が可能でないとき、誘導モードがパワーを交換し、デバイス性能が劣化し、それによってTM偏光状態中にパワーが残ることが分かった。
【0025】
図5は、デバイス長を200μmに設定したときの、図4で検討した特定の実施形態のブロードバンド性能を示すグラフである。ここでやはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを実施した。図5によって、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体、すなわち電気通信用の実用的な波長範囲にわたって、認められないことが示されている。この手法のブロードバンド性能は、動作の基礎理論と一致する。狙いは、モード間の結合を導入することなく、モードを一方の状態から他方の状態に遷移させることであるので、帯域幅は、モード間の結合が、他方の波長に相対的に一方の波長において増加する程度だけ、制限される。短波長では、追加のモードの出現によって、この結合が助長され、長波長では、モードが、より密接に位相が一致した状態になり、それによって主な作用が低減されて、モード間の結合が抑制される。どちらの場合も、波長の大きな変化が、この現象を引き起こすために必要である。これは、スーパモードの発散のコントラストに関連する固有の帯域幅限界を被る結合モードに基づく手法とは著しく違う。
【0026】
多くの基本構造の変更が可能である。幾何形状と屈折率は、ともに記述された特定の実施形態とは相違することができる。
図6は、本発明の偏光変換器24の別の実施形態の概略図である。加工の制限によって、上側層26および下側層28が、滑らかに微小な幅に到達しない恐れがある。したがって、図6に示すように、最終の遷移形態が、中間層30から上側層26および下側層28を分離することによって行われる構造を検討するのが有利になる場合がある。この結果、最終の出力導波路までほぼ等価な断熱的な遷移が行われる。
【0027】
最初、上側層26、中間層30および下側層28は、それぞれ高さがh1、h2およびh3になるように構造24を設計する。さらに、層26、28、30の各層は、幅を、入力部でw1にする。構造24の出力部において、幅がw2であり、それは、高さh1、h2およびh3の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、中間層の高さh2である。
【0028】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図7は、図6の偏光変換器と本質的に同様な本発明の偏光変換器32の別の実施形態の概略図である。しかし、ここでは、上側層34および下側層38は、実際まったくテーパを付けられた形状でなく、中間層36からむしろ徐々に分かれている。このように、最低形状サイズをより大きくさえし、それによってさらに加工を容易に行えるようにする。上側層34および中間層36を出力部で間隔sだけ分離し、中間層36および下側層38を出力部で間隔sだけ分離する。
【0029】
最初、上側層34、中間層36および下側層38は、それぞれ高さがh1、h2およびh3になるように構造32を設計する。さらに、層34、36、38の各層は、幅をw1にする。構造32の出力部において、幅がw2であり、それは、h1、h2およびh3の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、中間層の高さh2である。
【0030】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図8は、図7に示す偏光変換器のある特定の実施形態の性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、パラメータを次のように設定した。h1=h2=h3=0.25μm、w1=0.25μm、w2=0.75μm、s=0.125μm、コア屈折率およびクラッド屈折率が、それぞれ2.2および1.445である。他の実施形態では、これらのパラメータを変更することができる。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。元の実施形態の性能と同様の性能が、2、3百ミクロンだけのデバイス長を用いて得られる。
【0031】
図9は、構造長を100μmに設定したときの、図7で検討した特定の実施形態のブロードバンド性能を示すグラフである。ここでやはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行った。図9には、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体にわたって認められないことが示されている。
【0032】
3つの層は、最低限デバイスが対称的であるために必要であるが、前述の手法のどれもが、2つのコア層だけから構成されるデバイスに適用することができる。図10は、2つのコア層42、44だけを使用した偏光変換器40の概略図である。この実施形態では、上側層42および下側層44は、ともに同時にテーパを付けられ、分離されている。
【0033】
最初、上側層42および下側層44は、それぞれ高さがh1およびh2になるように偏光変換器40を設計する。さらに、層42、44の各層は、入力部で幅をw1にする。出力部において、上側層は、幅がw3である。キラル導波路構造40の出力部において、幅がw2であり、それは、h1およびh2の高さの和にほぼ等価であることに留意されたい。出力部の高さは、下側層の高さh2である。デバイスの性能は、層の順序付け(すなわち、どの層が上にあるか)によっては影響されない。
【0034】
クラッド層は、屈折率がコア層より低く、通常コア層のまわりに配置されて光を閉じ込める。
図11は、図10に示す構造のある特定の実施形態の性能を構造長の関数として表したグラフである。この実施形態では、パラメータを次のように設定した。h1=h2=0.4μm、w1=0.4μm、w2=0.8μm、w3=0.25μm、s=0.25μm、コア屈折率およびクラッド屈折率が、それぞれ2.2および1.445である。他の実施形態では、これらのパラメータを変更することができる。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行い、検討した波長は、1.55μmであった。2つの層の実施形態に固有の非対称性にもかかわらず、この構造は、非常にうまく動作し、長さが200μmだけの構造の場合、パワーの99%より多いパワーが、TM偏光からTE偏光に伝達される。
【0035】
図12は、図11のシミュレーションに使用した実施形態の、長さが100μmである実装によるブロードバンド性能を表したグラフである。やはり、3次元のモード散乱公式を使用してシミュレーションを行った。図12には、波長感度が、1.45μmから1.65μmのレジーム全体にわたって認められないことが示されている。
【0036】
本発明は、いくつかの好ましいその実施形態によってそれを示し述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その形状および細部に様々な変更、省略および追加を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ねじれた導波路の概略図である。
【図2】3つの断熱的にテーパを付けられたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図3】図3Aは、本発明の導波路中を伝播する基本モードの電界のグレースケール像である。
【0038】
図3Bは、本発明の導波路中を伝播する基本モードの電界のグレースケール像である。
【図4】図2のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図5】図2のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【図6】3つの断熱的にテーパを付けられ、分離されたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図7】中間のコア層が断熱的にテーパを付けられ、上側および下側のコア層が断熱的に分離されたコア層を使用した偏光変換器の概略図である。
【図8】図7のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図9】図7のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【図10】2つの断熱的にテーパを付けられ、分離されたコア層だけを使用した偏光変換器の概略図である。
【図11】図10のデバイスのある特定の実現による性能をデバイス長の関数として表したグラフである。
【図12】図10のデバイスのある特定の実現による性能を電磁界の波長の関数として表したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐々にねじれた導波路を近似するために使用される複数のコア層を含み、最初の偏光状態から異なる最終の偏光状態に伝播モードをその中で断熱的に変換する、集積光偏光変換器。
【請求項2】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、線形にテーパを付けられた、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項3】
少なくとも1つの前記コア層が、前記偏光変換器の長さに沿って、非線形にテーパを付けられた、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項4】
前記複数のコア層は、2つのコア層を含む、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項5】
前記複数のコア層は、3つのコア層を含む、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項6】
いくつかの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、一定に維持された、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項7】
前記コア層が、前記偏光変換器の長さに沿って、水平磁界に分離された、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項8】
最初の偏光状態を受け取るステップと、
徐々にねじれた導波路を近似し、前記最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に伝播モードをその中で断熱的に変換するように複数のコア層を形成するステップと、
を含む集積光偏光変換器を使用する方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、線形にテーパを付けられた、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、非線形にテーパを付けられた、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のコア層は、2つのコア層を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のコア層は、3つのコア層を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
いくつかの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、一定に維持された、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、水平磁界に分離された、請求項8に記載の方法。
【請求項1】
徐々にねじれた導波路を近似するために使用される複数のコア層を含み、最初の偏光状態から異なる最終の偏光状態に伝播モードをその中で断熱的に変換する、集積光偏光変換器。
【請求項2】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、線形にテーパを付けられた、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項3】
少なくとも1つの前記コア層が、前記偏光変換器の長さに沿って、非線形にテーパを付けられた、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項4】
前記複数のコア層は、2つのコア層を含む、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項5】
前記複数のコア層は、3つのコア層を含む、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項6】
いくつかの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、一定に維持された、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項7】
前記コア層が、前記偏光変換器の長さに沿って、水平磁界に分離された、請求項1に記載の偏光変換器。
【請求項8】
最初の偏光状態を受け取るステップと、
徐々にねじれた導波路を近似し、前記最初の偏光状態からそれとは異なる最終の偏光状態に伝播モードをその中で断熱的に変換するように複数のコア層を形成するステップと、
を含む集積光偏光変換器を使用する方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、線形にテーパを付けられた、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、非線形にテーパを付けられた、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のコア層は、2つのコア層を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のコア層は、3つのコア層を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
いくつかの前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、一定に維持された、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記コア層は、前記偏光変換器の長さに沿って、水平磁界に分離された、請求項8に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−509264(P2006−509264A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502227(P2005−502227)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034577
【国際公開番号】WO2004/042458
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(591013573)マサチューセッツ・インスティチュート・オブ・テクノロジー (26)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【出願人】(503437727)ピレリ・アンド・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034577
【国際公開番号】WO2004/042458
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(591013573)マサチューセッツ・インスティチュート・オブ・テクノロジー (26)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【出願人】(503437727)ピレリ・アンド・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (35)
【Fターム(参考)】
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