説明

外熱式ロータリーキルン

【課題】耐スポーリング性に優れ、被加熱物と炉心管との反応を抑制して高能率な熱処理を可能とする大型の外熱式ロータリーキルンを提供する。
【解決手段】炉心管34は、金属材料から成る円筒状の外管52と、その外管52の内側に挿入されたセラミック材料から成る円筒状の内管54とを、備え、その内管54は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部58が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部60が形成された円筒状の部分管56が、その雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合により軸心方向に複数連結されて構成されたものであることから、例えば径寸法500mmφ×長手寸法5mといった比較的大型の炉心管34を作成できることに加え、雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合によりそれら複数の部分管56の連結を行うことで、粉体状の被加熱物の漏れが抑制されて十分な気密性及び耐スポーリング性を保証できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の炉心管を備えた外熱式ロータリーキルンに関し、特に、耐スポーリング性を向上させ、被加熱物の漏れ及びその炉心管との反応を抑制して能率的な熱処理を可能とするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に対して傾斜させられた円筒状の炉心管を備え、その炉心管を軸心まわりに回転させつつ外側から加熱することで、その炉心管内に投入された被加熱物の熱処理及び移送を行う外熱式ロータリーキルンが知られている。斯かる外熱式ロータリーキルンは、粒状(粉体状)や塊状の被加熱物を連続して均一に焼成できるという特長があり、ジルコンチタン酸鉛系の圧電体材料やチタン酸バリウム系の誘電体材料の焼成等に好適に用いられる。
【0003】
上記外熱式ロータリーキルンの一形態として、上記炉心管を外管及びその内側に挿入された内管の二重構造とし、その内管をセラミック材料から構成するものが提案されている。例えば、特許文献1に記載されたセラミック仮焼炉、特許文献2に記載された仮焼炉がそれである。この特許文献1に記載されたセラミック仮焼炉では、炉心管が耐熱性金属から成る外管と、その外管内に挿入された高純度且つ高密度のセラミック素材から成る内管とから構成されているため、熱処理に際して炉心管と被加熱物との反応を抑制して好適な熱処理を実現できるとされている。また、上記特許文献2に記載された仮焼炉では、炉心管が外管及び複数の短管から構成されており、その短管は高純度セラミック材料を用いて緻密に焼成され且つ互いに突き合わせ連結された上で上記外管の内部に挿入されたものであるため、炉心管の熱間強度を低下させることなく、重金属蒸気と炉心管との反応を少なくすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3054号公報
【特許文献2】特開平5−45061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、炉心管を外管及びその内側に挿入された内管の二重構造とし、その内管をセラミック材料から構成した外熱式ロータリーキルンの実用を考えた場合、採算を取るためにはある程度の大型化が求められ、例えば径寸法500mmφ×長手寸法5mといったサイズの炉心管を作成する必要がある。しかしながら、前記特許文献1に記載されたセラミック仮焼炉のように、内管を長尺状の一体管として形成するものでは、径寸法200〜300mmφ×長手寸法1mといったサイズが技術的な限界であり、それ以上の大きさのものは作成が困難であった。
【0006】
また、前記特許文献2に記載された仮焼炉のように、複数の短管を連結して内管を構成するものでは、気密性及び被加熱物と炉心管との反応性の点で問題がある。すなわち、例えばリチウム電池材料の粉体焼成に外熱式ロータリーキルンを用いる場合、炉心管内をその焼成に必要な雰囲気とする必要があるが、複数の短管を突き合わせることにより連結した内管では気密性に乏しく、雰囲気作りが困難であるという不具合があった。また、突き合わせ連結された内管の連結部分(繋ぎ目)から外管側に被加熱物が漏れ、外管の材料によってはその被加熱物と外管とが反応することにより歩留まりが低下するおそれがあった。
【0007】
すなわち、前述したような従来の技術により炉心管を外管及びその内側に挿入された内管の二重構造とし、その内管をセラミック材料から構成した外熱式ロータリーキルンを構成することを考えた場合、比較的小型の装置は実現できるものの、実機炉サイズすなわち実用に足る大きさの外熱式ロータリーキルンを提供することは困難であった。更に、実用上、炉心管をセラミック材料で構成することに伴う耐スポーリング性を向上させ、被加熱物と炉心管との反応を抑制して好適な熱処理を可能とすることが求められるが、そのような条件を満たす大型の外熱式ロータリーキルンは、未だ開発されていないのが現状である。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、耐スポーリング性に優れ、被加熱物と炉心管との反応を抑制して高能率な熱処理を可能とする大型の外熱式ロータリーキルンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、水平方向に対して傾斜させられた円筒状の炉心管を備え、その炉心管を軸心まわりに回転させつつ外側から加熱することで、その炉心管内に投入された粉体状の被加熱物の熱処理及び移送を行う外熱式ロータリーキルンであって、前記炉心管は、金属材料から成る円筒状の外管と、その外管の内側に挿入されたセラミック材料から成る円筒状の内管とを、備え、その内管は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部が形成された円筒状の部分管が、その雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合により軸心方向に複数連結されて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このようにすれば、前記炉心管は、金属材料から成る円筒状の外管と、その外管の内側に挿入されたセラミック材料から成る円筒状の内管とを、備え、その内管は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部が形成された円筒状の部分管が、その雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合により軸心方向に複数連結されて構成されたものであることから、複数の部分管を連結して内管を構成することで、例えば径寸法500mmφ×長手寸法5mといった比較的大型の炉心管を作成できることに加え、前記雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合によりそれら複数の部分管の連結を行うことで、粉体状の被加熱物の漏れが抑制されて十分な気密性及び耐スポーリング性を保証できる。すなわち、耐スポーリング性に優れ、被加熱物と炉心管との反応を抑制して高能率な熱処理を可能とする大型の外熱式ロータリーキルンを提供することができる。
【0011】
ここで、好適には、前記部分管は、鋳込み成形された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部及び雌ねじ部が切削加工により形成されて成るものである。このようにすれば、鋳込み成形により前記部分管を形成することで、その表層を比較的細粒(緻密質)とし且つ内部を比較的粗粒に構成することができ、耐スポーリング性に優れた炉心管を実用的な態様で実現することができる。
【0012】
また、好適には、前記部分管は、少なくとも前記雄ねじ部及び雌ねじ部に釉薬が施されたものである。このようにすれば、切削加工により比較的粗粒な構成が露出した前記雄ねじ部及び雌ねじ部に釉薬を施すことで、気密性及び耐スポーリング性を更に向上させることができる。
【0013】
また、好適には、前記部分管は、軸心方向の一方の端部の内径が他方の端部の内径より小径とされたものであり、その小径とされた側の端部が前記被加熱物の移送方向行先側となるように相互に連結されたものである。このようにすれば、前記部分管の連結部分(繋ぎ目)から外管側に被加熱物が漏れるのを抑制できると共に、その被加熱物の好適な移送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例である外熱式ロータリーキルンの構成を説明する側面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図1のIII-III視断面図である。
【図4】図1の外熱式ロータリーキルンに備えられた炉心管の構成を詳しく説明するために、その軸心を含む平面で切断して示す視断面図である。
【図5】図4の炉心管に備えられた部分管を軸心方向に見た平面図である。
【図6】図4の炉心管に備えられた部分管を軸心に垂直な方向から見た正面図であり、紙面向かって右半分においてその断面形状を示している。
【図7】図4の炉心管に備えられた部分管における雄ねじ部の構成を詳しく説明する部分断面図である。
【図8】図4の炉心管に備えられた部分管における雌ねじ部の構成を詳しく説明する部分断面図である。
【図9】図4の炉心管に備えられた部分管における連結部分について詳しく説明する部分断面図である。
【図10】図4に示す炉心管の製造工程の一部である、部分管の製造工程の一例を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例である外熱式ロータリーキルン10の構成を説明する側面図である。また、図2はそのII-II視断面図、図3はそのIII-III断面図である。図1に示すように、本実施例の外熱式ロータリーキルン10は、床面等に設置されたフレーム12、そのフレーム12上に設けられた台座14、その台座14上に設けられた原料供給装置16、熱処理装置18、及び製品排出装置20を備えて構成されている。この外熱式ロータリーキルン10は、後述するように水平方向に対して例えば1°程度の角度で傾斜させられる円筒状の炉心管34(図1では水平方向とされている)を備え、その炉心管34を軸心まわりに回転させつつ上記熱処理装置18により外側から加熱することで、その炉心管34内に投入された被加熱物の熱処理及び移送を行う加熱炉(回転円筒釜)であり、例えばリチウム電池材料、薄型ディスプレイパネル用蛍光体、ジルコンチタン酸鉛系の圧電体材料、及びチタン酸バリウム系の誘電体材料等の粉体材料の焼成に好適に用いられる。
【0017】
上記台座14は、例えばスチール等により長手板状に構成されたものであり、その長手方向(炉心管34の軸心方向)に係る被加熱物の移送方向行先(出口)側に設けられた支点部22において、上記フレーム12に対してその支点部22まわりの回動可能に支持されている。また、上記台座14は、その長手方向に係る被加熱物の移送方向手前(入口)側に設けられたねじ機構或いは油圧シリンダ等による昇降部24において、上記フレーム12に対する上下方向(鉛直方向)の移動可能(昇降可能)すなわちそのフレーム12との距離が調節可能に支持されている。この昇降部24により上記台座14が上記フレーム12に対して昇降させられ、その昇降部24における上記フレーム12と台座14との距離が調節されることで、その台座14が上記支点部22まわりに回動させられ、上記台座14の水平方向に対する傾斜角度延いては後述する図4に示す炉心管34の水平方向に対する傾斜角度θfcが調節(変更)できるようになっている。
【0018】
前記原料供給装置16は、前記台座14の長手方向に係る被加熱物の移送方向手前(入口)側に設けられたものであり、原料すなわち被加熱物を受け入れる供給ホッパ26と、その供給ホッパ26に供給された被加熱物を前記熱処理装置18へ送り込む投入フィーダ28とを、備えている。この投入フィーダ28は、モータ30と、そのモータ30により軸心まわりに回転駆動されるスクリュー装置32とを、備えており、そのスクリュー装置32におけるモータ30とは反対側の端部が前記熱処理装置18における炉心管34内に突き入れられている。そして、上記スクリュー装置32がモータ30により軸心まわりに回転させられることにより、上記供給ホッパ26に供給された粉体状の被加熱物が上記熱処理装置18に向けて順次連続的に移送され、その熱処理装置18に備えられた炉心管34内に投入されるようになっている。
【0019】
前記熱処理装置18は、両端部に設けられたローラ装置36a、36b(以下、特に区別しない場合には単にローラ装置36という)により前記フレーム12に対して軸心まわりの回転(自転)可能に支持された円筒状の炉心管34と、その炉心管34の外側に設けられた加熱室38と、上記炉心管34をその軸心まわりに回転駆動するための駆動装置40とを、備えている。
【0020】
上記加熱室38は、例えば図1及び図3に示すように、上記炉心管34の外側に、その炉心管34における両端部を除く大方の部分を囲繞するように設けられた長手直方体状の筐体内に赤外線ヒータ等の加熱装置が備えられたものであり、上記炉心管34は、その加熱室38に対して軸心まわりの相対回転(自転)可能とされている。また、上記駆動装置40は、例えば図1及び図2に示すように、モータ42と、そのモータ42の出力軸に取り付けられたスプロケット44と、上記炉心管34の外周側に同軸且つ相対回転不能に設けられたスプロケット46と、上記スプロケット44及び46の間に巻回されたチェーン48とを、備えて構成されている。そのように構成された駆動装置40では、上記モータ42の駆動によりそれらスプロケット44、46及びチェーン48を介して上記炉心管34がその軸心まわりに回転(自転)させられるようになっている。
【0021】
前記製品排出装置20は、前記台座14の長手方向に係る被加熱物の移送方向行先(出口)側に設けられたものであり、前記炉心管34における被加熱物の移送方向行先側の端部が突き入れられる開口が設けられると共に、その底部が漏斗状に構成されている。前記熱処理装置18において熱処理が施された被加熱物は、前記炉心管34の回転に伴う移送によって上記開口から製品排出装置20内に排出され、更にその底部に設けられた漏斗状の構成を介して下方に設置された製品受けタンク50内に排出されるようになっている。
【0022】
以上のように構成された外熱式ロータリーキルン10は、前記昇降部24において前記フレーム12と台座14との距離が調節されることで、その台座14が例えば後述する図4に二点鎖線で示す水平方向に対して所定の傾斜角度θfc(例えば1°程度)傾斜させられた状態で粉体状の被加熱物の熱処理を行う。すなわち、前記原料供給装置16の供給ホッパ26に供給された原料である被加熱物が、前記投入フィーダ28により前記熱処理装置18の炉心管34内に送り込まれ、その熱処理装置18において炉心管34が前記駆動装置40によりその軸心まわりに回転させられつつ前記加熱室38により外側から加熱されることで、その炉心管34内に投入された被加熱物の熱処理及び移送が行われる。そして、前記熱処理装置18において熱処理の施された製品である被加熱物が前記炉心管34から前記製品排出装置20内に排出され、更に製品受けタンク50へ排出される。以上のようにして、リチウム電池の材料となる粉体の焼成等の熱処理が行われる。
【0023】
図4は、本実施例の外熱式ロータリーキルン10に備えられた炉心管34の構成を詳しく説明するために、その軸心を含む平面で切断して示す視断面図である。この図4に示すように、前記外熱式ロータリーキルン10に備えられた炉心管34は、円筒状の外管52と、その外管52の内側に挿入された円筒状の内管54とを、備えて構成されている。すなわち、本実施例の外熱式ロータリーキルン10に備えられた炉心管34は、上記外管52及びその内側に挿入された上記内管54の二重構造とされたものである。また、図4に示すように、前記内管54は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部58が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部60が形成された複数(例えば14個、図4では6個のみを図示)の円筒状の部分管56a、56b、56c、・・・、56n(以下、特に区別しない場合には単に部分管56という)が、その内周側端面57が相互に当接するまでその雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合により軸心方向に連結されて構成されている。
【0024】
上記外管52は、例えばインコネル等のニッケル基合金、コバルト基合金、クロム基合金等の850〜950℃の焼成温度に耐え得る耐熱合金から成り、例えば内径寸法500mmφ程度、肉厚20mm程度、長さ寸法5m程度の円筒状(管状)に構成されたものである。また、上記内管54は、例えばアルミナ(Al23)を84〜93重量%程度、シリカ(SiO2)を0.06〜8.5重量%程度、酸化マグネシウム(MgO)を0〜15重量%程度含むセラミック材料から成り、例えば外径寸法500mmφ程度、肉厚20mm程度、長さ寸法5m程度の円筒状(管状)に構成されたものである。
【0025】
図5は、前記部分管56を軸心方向に見た平面図である。また、図6は、前記部分管56を軸心に垂直な方向から見た正面図であり、紙面向かって右半分においてその断面形状を示している。この部分管56は、好適には、上記セラミック材料の原料が鋳込み成形された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60が切削加工により形成されて成るものであり、また、好適には、少なくとも上記雄ねじ部58及び雌ねじ部60に、更に好適には、それに加えて外周面62に例えば0.1mm程度の厚みの釉薬(特殊コート剤)が施されたものである。上記雄ねじ部58及び雌ねじ部60は、好適にはテーパねじとされたものであるが、平行ねじとされたものであってもよい。また、好適には、前記複数の部分管56は、図4に示すように、前記雄ねじ部58が被加熱物の移送方向行先(出口)側、前記雌ねじ部60が被加熱物の移送方向手前(入口)側となるように相互に連結される。また、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60のねじ方向は、前記外熱式ロータリーキルン10による熱処理に際して前記炉心管34が軸心まわりに右回転させられる場合には右ねじ、左回転させられる場合には左ねじというように、前記駆動装置40による炉心管34の回転駆動により前記雄ねじ部58が雌ねじ部60に対して締め込まれる方向とされることが望ましい。
【0026】
本実施例の外熱式ロータリーキルン10における炉心管34では、図4に示すように、相互に隣接する部分管56における雄ねじ部58及び雌ねじ部60が螺合させられることにより、軸心C方向に複数の部分管56が連結されて内管54が構成されている。そして、その内管54が外管52の内周に挿入され、その両端に環状の蓋部材64、66が嵌め付けられることで、前記外管52に対する内管54の軸心方向の相対移動が阻止されている。図4では、前記製品排出装置20側すなわち被加熱物の移送方向行先(出口)側において、上記蓋部材66がピン68により前記内管54に固定されると共に、その外周部に設けられた爪部70により前記外管52に掛止させられている。また、前記原料供給装置16のスクリュー装置32側すなわち被加熱物の移送方向手前(入口)側において、上記蓋部材64が前記外管52にボルト72により固定されると共に、その蓋部材64と前記内管54との間に設けられたスプリング74によりその内管54の位置が上記蓋部材64、66の間で固定され、更に前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合の緩みが抑制されるようになっている。
【0027】
図7〜図9は、前記部分管56における連結部分すなわち前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合部分について詳しく説明する部分断面図である。本実施例の外熱式ロータリーキルン10において、前記内管54を構成する部分管56は、好適には、軸心方向の一方の端部の内径が他方の端部の内径より小径とされたものであり、その小径とされた側の端部が前記被加熱物の移送方向行先(出口)側となるように相互に連結されたものである。例えば、前記雄ねじ部58が被加熱物の移送方向行先側、前記雌ねじ部60が被加熱物の移送方向手前側となるように相互に連結される構成においては、図7に示す前記雄ねじ部58側(下流側)の内周面半径r1が図8に示す前記雌ねじ部60側(上流側)の内周面半径r2よりも小径(r1<r2)とされている。そのように構成された前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60が螺合により連結されることで、図9に示すように、隣接する前記部分管56の連結部分(繋ぎ目)に着目すれば、被加熱物の移送方向に小径から大径へと径寸法が拡大する段差d(=r2−r1)が形成される。前記被加熱物の熱処理に際して、その被加熱物は傾斜した前記炉心管34内を図9に白抜矢印で示す方向に移送させられるため、斯かる段差dが形成されていることで、前記内管54から外管52側への被加熱物の漏れ(こぼれ出し)が抑制され、好適な移送が実現される。なお、隣接する前記部分管56相互に当接する内周側端面57は、図7〜図9に示すように回転軸心に対して直交する面であってもよいが、被加熱物の移送方向に向かうに従って小径となるテーパ面であってもよい。
【0028】
図10は、前記炉心管34の製造工程の一部である、前記部分管56の製造工程の一例を説明する工程図である。この図10に示す例では、先ず、原料調合工程P1において、前記部分管56の原料であるアルミナ等のセラミック材料及び結合剤等が調合される。また、この原料調合工程P1と併行する鋳型作成工程P2において、前記部分管56の鋳型が石膏等により作成される。次に、鋳込み成形工程P3において、原料調合工程P1にて調合された原料が鋳型作成工程P2にて作成された鋳型内に振動を与えられつつ流し込まれ、成形が行われる。次に、脱型工程P4において、成形の完了した材料から鋳型が取り外される。次に、一次焼成工程P5において、脱型された材料に対して例えば1400〜1450℃程度の温度雰囲気にて48時間程度の熱処理(一次焼成)が行われる。次に、ねじ切り工程P6において、一次焼成された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60が例えばねじ切りバイト等による切削加工により形成される。次に、施釉工程P7において、円筒状部材における少なくとも前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60に釉薬が塗布される。また、好適には外周面62に対しても釉薬が塗布される。次に、二次焼成工程P8において、釉薬が塗布された材料に対して例えば1250〜1300℃程度の温度雰囲気にて12時間程度の熱処理(二次焼成)が行われることで、前記部分管56が作成される。
【0029】
以上、図10を用いて説明したように、本実施例の外熱式ロータリーキルン10において、前記内管54を構成する部分管56は、好適には、鋳込み成形された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60が切削加工により形成されて成るものであり、少なくともそれら雄ねじ部58及び雌ねじ部60に釉薬が施されたものである。セラミック組織は、一般に細粒(緻密質)であるほど耐スポーリング性に劣り、温度衝撃に弱い反面、粉体原料等の浸透乃至反応が発生しにくい。一方、粗粒であるほど耐スポーリング性に優れ、温度衝撃に強い反面、粉体原料等の浸透乃至反応が発生しやすくなり、緻密質に比べて欠けやすくコンタミネーションが増加する。上述のように構成された本実施例の部分管56においては、鋳込み成形により作成されることで表層が細粒(緻密質)、内部が粗粒となっている。従って、耐スポーリング性に優れ、温度衝撃に強く、且つ粉体原料等の浸透乃至反応が発生しにくいという特長がある。更に、切削加工により前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60を形成することにより、表層の面(緻密質部)が削れて内部の粗粒部分が表面に出てくるが、斯かる切削加工を施した部分に釉薬を施すことで、粉体原料等の浸透乃至反応が抑えられると共に、粗粒部の欠けが抑制されてコンタミネーションが減少する。
【0030】
本発明の効果を検証するために、本発明者は、セラミック材料(原料)の化学組成を様々に変化させつつ前述した図10に示す製造方法で前記部分管56を作成し、斯かる部分管56を連結して構成した前記炉心管34による熱処理の特性を調べた。この結果、Al23=90.9重量%、SiO2=8.5重量%とした第1試料、Al23=93.2重量%、SiO2=6.5重量%とした第2試料、Al23=84.0重量%、SiO2=0.06重量%、MgO=15.3重量%とした第3試料において特に良好な耐スポーリング性、被加熱物との耐反応性、及び気密性が得られた。
【0031】
このように、本実施例によれば、前記炉心管34は、金属材料から成る円筒状の外管52と、その外管52の内側に挿入されたセラミック材料から成る円筒状の内管54とを、備え、その内管54は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部58が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部60が形成された円筒状の部分管56が、その雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合により軸心方向に複数連結されて構成されたものであることから、複数の部分管56を連結して内管54を構成することで、例えば径寸法500mmφ×長手寸法5mといった比較的大型の炉心管34を作成できることに加え、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60の螺合によりそれら複数の部分管56の連結を行うことで、粉体状の被加熱物の漏れが抑制されて十分な気密性及び耐スポーリング性を保証できる。すなわち、耐スポーリング性に優れ、被加熱物と炉心管34との反応を抑制して高能率な熱処理を可能とする大型の外熱式ロータリーキルン10を提供することができる。
【0032】
また、前記部分管56は、鋳込み成形された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60が切削加工により形成されて成るものであるため、鋳込み成形により前記部分管56を形成することで、その表層を比較的細粒(緻密質)とし且つ内部を比較的粗粒に構成することができ、耐スポーリング性及び被加熱物との耐反応性に優れた炉心管34を実用的な態様で実現することができる。
【0033】
また、前記部分管56は、少なくとも前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60に釉薬が施されたものであるため、切削加工により比較的粗粒な構成が露出した前記雄ねじ部58及び雌ねじ部60に釉薬を施すことで、気密性、被加熱物との耐反応性、及び耐スポーリング性を更に向上させることができる。
【0034】
また、前記部分管56は、軸心方向の一方の端部の内周面半径r1が他方の端部の内周面半径r2より小径とされたものであり、その小径とされた側の端部が前記被加熱物の移送方向行先側となるように相互に連結されたものであるため、前記部分管56の連結部分(繋ぎ目)から外管52側に被加熱物が漏れるのを抑制できると共に、その被加熱物の好適な移送を実現することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0036】
例えば、前述の実施例において、前記加熱室38は、赤外線ヒータ等の加熱装置により前記被加熱物に対する熱処理を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばアーク炉、抵抗炉、或いは誘導炉等の電気炉であってもよい。すなわち、被加熱物に対する熱処理に十分な加熱を行い得る加熱装置であればその態様は問わない。
【0037】
また、前述の実施例では、例えばリチウム電池材料等、専ら粉体材料の熱処理に用いられる外熱式ロータリーキルン10について説明したが、被加熱物の粒子の大きさは特に限定されるものではなく、比較的粗い粒体(塊状の材料)に対する熱処理に本発明の外熱式ロータリーキルンが用いられるものであってもよい。
【0038】
また、本発明とは直接関係ないが、前記実施例における部分管56と同様に、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部が形成されたカーボンから成る円筒状の部分管が、その雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合により軸心方向に複数連結されて構成された内管と、その内管の外周側に設けられた外管とを有する炉心管を備えた外熱式ロータリーキルンにおいても、実機炉サイズすなわち実用に足る大きさの装置を構成することができる。
【0039】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0040】
10:外熱式ロータリーキルン
34:炉心管
52:外管
54:内管
56:部分管
58:雄ねじ部
60:雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に対して傾斜させられた円筒状の炉心管を備え、該炉心管を軸心まわりに回転させつつ外側から加熱することで、該炉心管内に投入された粉体状の被加熱物の熱処理及び移送を行う外熱式ロータリーキルンであって、
前記炉心管は、
金属材料から成る円筒状の外管と、
該外管の内側に挿入されたセラミック材料から成る円筒状の内管と
を、備え、
該内管は、軸心方向の一方の端部外周に雄ねじ部が形成されると共に他方の端部内周に雌ねじ部が形成された円筒状の部分管が、該雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合により軸心方向に複数連結されて構成されたものである
ことを特徴とする外熱式ロータリーキルン。
【請求項2】
前記部分管は、鋳込み成形された円筒状部材における軸心方向の端部に、前記雄ねじ部及び雌ねじ部が切削加工により形成されて成るものである請求項1に記載の外熱式ロータリーキルン。
【請求項3】
前記部分管は、少なくとも前記雄ねじ部及び雌ねじ部に釉薬が施されたものである請求項2に記載の外熱式ロータリーキルン。
【請求項4】
前記部分管は、軸心方向の一方の端部の内径が他方の端部の内径より小径とされたものであり、該小径とされた側の端部が前記被加熱物の移送方向行先側となるように相互に連結されたものである請求項1から3の何れか1項に記載の外熱式ロータリーキルン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate