説明

外用貼付剤

【課題】 有効成分としてニコチンを含有する外用貼付剤を使用した際に発生する、貼付部位における皮膚障害を抑制することが可能な外用貼付剤を提供すること。
【解決手段】薬物不透過性の支持体、ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する膏体層、および剥離ライナーより構成される外用貼付剤であって、前記膏体層がさらにモノテルペン類を含有することを特徴とする外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有効成分としてニコチンを含有する外用貼付剤に関し、さらに詳しくは、貼付部位における皮膚障害の発生を抑制することが可能な外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外用貼付剤は、経口剤を服用した場合に問題となる薬物の副作用の発現や、生物学的利用率の低下等がなく、かつ薬物を持続的に投与できる点で、非常に優れた投与形態の一つである。例えば、薬物としてインドメタシンなどの消炎鎮痛薬、ニトログリセリンなどの狭心症/心不全治療薬、エストラジオールなどの更年期障害/骨粗鬆症治療薬、ツロブテロールなどの気管支拡張作用薬を含有した外用貼付剤が開発され、市販されている。
【0003】
しかしながら、外用貼付剤の貼付や剥離による物理的な影響から、皮膚呼吸の妨害やむれ、角質層剥離などの障害が発生することがしばしば問題となる。また膏体成分自体の影響から、投与部位においてこれらの皮膚刺激等を原因とした皮膚障害、例えば、皮膚の紅斑、浮腫あるいは掻痒などが発生する事例も報告されている。さらに、外用貼付剤が長時間連続的に貼付された場合や、同一部位への貼付回数が多くなると、皮膚障害の発生頻度が増加し、その程度が重くなるという問題もあった。そのため、皮膚障害の発生を抑制するための技術が開発されてきた。
【0004】
例えば、インドール酢酸系の非ステロイド系消炎鎮痛薬であるインドメタシンを含有する外用剤により発生する皮膚障害を低減させるための技術が種々開示されており、例えば、インドメタシン及びl−メントールを含有する外用貼付剤に、皮膚刺激低減化剤として分子量500〜20000のポリオキシアルキレングリコール等を含有させた消炎鎮痛貼付剤が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方、有効成分としてニコチンを含有する貼付剤においても、紅斑や痒みの発生等の皮膚障害の問題が確認されている。そのため、ニコチンを含有する貼付剤における皮膚障害抑制技術の開発が求められており、アクリル系、シリコーン系あるいはポリイソブチレン系接着剤からなる感圧接着剤を含むキャリヤー中にニコチンあるいはその塩類を配合するニコチン経皮パッチに、ニコチンの経皮デリバリーに伴う掻痒症を処置する止痒薬としてビサボロール等を含有させた技術が開示されている(特許文献2)。この技術は、詳しくは、10〜20%のニコチンを含有するニコチンパッチにα(−)ビサボロールを0.5〜1%配合することにより、ニコチンパッチ貼付によるかゆみ(副作用)の発現を大幅に低下させることを可能とした発明である。しかしながら、特許文献2にはかゆみの軽減についての有効性に関する記載はあるが、かゆみ以外の副作用、具体的には紅斑や浮腫等に対する効果についての記載は全くない。
【0006】
その他、ニコチン外用剤に関する技術が多数報告されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ニコチン外用剤に関して、皮膚障害の発生を抑制するための技術はほとんど報告されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−256183号公報
【特許文献2】特表平4−503357号公報
【特許文献3】特開昭64−6216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、有効成分としてニコチンを含有する外用貼付剤を使用した際に発生する、貼付部位における皮膚障害を抑制することが可能な外用貼付剤を提供することがその課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、ニコチンを含有する外用貼付剤に皮膚障害抑制成分としてモノテルペン類を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
すなわち本発明は、薬物不透過性の支持体、ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する膏体層、および剥離ライナーより構成される外用貼付剤であって、前記膏体層がさらにモノテルペン類を含有することを特徴とする外用貼付剤である。
【0011】
また、本発明は、ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する外用貼付剤の膏体層中にモノテルペン類を含有せしめることを特徴とする外用貼付剤の皮膚障害性の抑制方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の外用貼付剤における膏体層は、基剤であるゴム系粘着剤に、有効成分としてのニコチンを含有せしめたものである。
【0013】
有効成分であるニコチンとしては、ニコチン、またはその誘導体、塩類、あるいは溶媒和物の何れであってもよく、例えば塩酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩などが挙げられる。上記ニコチンは膏体層を構成する組成物全体に対して0.1〜50質量%(以下単に「%」という)、好ましくは1〜20%の範囲の量で用いられる。0.1%未満では、十分な薬物の経皮吸収量が得られず、好ましくない。また、50%を超える量では、薬物の影響により膏体層の凝集性が低下し、良好な膏体層が得られない。
【0014】
また、上記膏体層は、基剤中にゴム系粘着剤を含有するものである。このゴム系粘着剤は、エラストマーとして天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブチルゴムおよびスチレン・ブタジエンゴムから選ばれた1種を単独で使用するか、あるいは2種以上を併用するものであることが好ましい。
【0015】
本発明の外用貼付剤は、上記膏体層中に、皮膚障害抑制成分としてモノテルペン類を含有せしめた点に特徴を有するものである。本発明において用いられるモノテルペン類は、モノテルペンアルコール類とモノテルペンケトン類とに分類されるが、本発明においてはそのいずれも用いることができる。中でもモノテルペンアルコール類の一種であるメントールを使用することが好ましい。このモノテルペン類は、膏体層を構成する組成物全体に対して0.1〜20%、好ましくは1〜10%の範囲の量で用いられる。0.1%未満では、十分な薬物の皮膚障害抑制効果が得られず、好ましくない。また、20%を超える量では、薬物の影響により膏体層の凝集性が低下し、良好な膏体層が得られず、また、皮膚障害抑制効果の増強も期待できない。
【0016】
本発明の上記膏体層中には、前記した成分の他に、公知の任意成分を加えることができる。該任意成分としては、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤、流動パラフィン、ひまし油、ラノリンなどの軟化剤、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤などが挙げられる。
【0017】
本発明の外用貼付剤は、薬物不透過性の支持体上に上記膏体層が形成され、支持体と反対側の膏体層上に剥離ライナーを貼り合わせた構造を有するものである。
【0018】
上記膏体層の厚さに特に制限はないが、30〜1000μmが好ましい。30μm未満もしくは1000μmを超えると、膏体層の厚さを精度良く調整することが困難であり、良好な膏体層が得られないため好ましくない。また、上記膏体層としては、薬物と粘着剤とを含む薬物含有粘着剤層の1層からなるものの他に、粘着剤を含む基剤中に薬物を含有する膏体層と、粘着剤を含む基剤中に薬物を含有するまたは含有しない膏体層の2層を積層させて形成したもの、あるいは3層以上の膏体層を積層させて形成したものを使用することも出来る。
【0019】
一方、本発明の外用貼付剤に使用する支持体は、薬物不透過性のものであり、この支持体として、伸縮性または非伸縮性のものを使用することができる。該支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂フィルム又はシートあるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、及び不織布などが挙げられる。
【0020】
また、上記支持体として、前記合成樹脂フィルムの積層体であるラミネートフィルムを使用する場合、積層するフィルム層の間に印刷層を設けても良い。該印刷層は、光の透過を抑制し、かつ、貼付剤を貼付していることが目立たないように肌色などに着色するものであり、特に制限等はなく、必要に応じて取り扱い方法、注意事項、商品名などを表示することもできる。印刷は、任意の印刷インクを用いて公知の印刷方法を用いて印刷される。
【0021】
更に、本発明の外用貼付剤に使用する剥離ライナーも、薬物不透過性のものを使用することが好ましい。この剥離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子材料で作られたフィルムや、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイル等を塗付したものなどが挙げられるが、ニコチンの透過がなく、加工性や低コストなどの点でポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。さらに、該剥離ライナーは、複数の材料を貼り合わせたラミネートフィルム等を使用しても良い。
【0022】
なお、外用貼付剤は、その構成として、必要な薬物を貯蔵するための薬物含有手段と、該薬物含有層を皮膚上に固定するための固定手段とを含み、その代表的な貼付剤として、薬物を含有する薬物貯蔵層と皮膚に固定するための粘着剤層の2層からなるリザバー型貼付剤、また、該2層が一体であり、薬物と粘着剤とを含む薬物含有粘着剤層からなるマトリックス型貼付剤とがあるが、本発明の外用貼付剤は何れでもよい。しかしながら、リザバー型貼付剤は薬物貯蔵層と粘着剤層を使用することにより製剤設計が複雑となり、高価な材料を使用する場合にはコストも上昇することから、本発明の外用貼付剤はマトリックス型貼付剤が好ましい。
【0023】
本発明の外用貼付剤の製造方法に特に制限はなく、公知の製造方法により製造することができる。例えば、膏体層に配合する薬物および他の成分を適当な塗工方法で剥離ライナー等に塗布・展延してマトリックス層を設け、該マトリックス層に支持体を貼り合わせることにより実施することができる。また、別の方法としては、膏体層に配合する薬物および他の成分を適当な塗工方法で支持体に塗布・展延してマトリックス層を設け、該マトリックス層に剥離ライナー等を貼り合わせる方法も挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0025】
実施例 1
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)生ゴム 20部
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(4)流動パラフィン 22部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(6)メントール 5部
(商品名:天然はっか脳、小城製薬)
【0026】
( 製 法 )
ニコチン、生ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン、水添テルペン樹脂およびメントールをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて膏体層を得た。その後、膏体層をラミネートフィルム(上面:ポリエチレン(PE)/ポリエチレンテレフタレート(PET)/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。それから、裁断・包装して外用貼付剤(本発明品1)を得た。
【0027】
実施例 2
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 10部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(3)脂環族飽和炭化水素樹脂 45部
(商品名:アルコンP−100、荒川化学)
(4)流動パラフィン 17部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)メントール 3部
(商品名:天然はっか脳、小城製薬)
【0028】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、脂環族飽和炭化水素樹脂、流動パラフィンおよびメントールをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが50μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて膏体層を得た。その後、膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。それから裁断・包装し、外用貼付剤(本発明品2)を得た。
【0029】
実施例 3
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 10部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(3)ロジンエステル 44部
(商品名:KE−311、荒川化学)
(4)流動パラフィン 20部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)メントール 1部
(商品名:天然はっか脳、小城製薬)
【0030】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジンエステル、流動パラフィンおよびメントールをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて膏体層を得た。その後、膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。それから裁断・包装して外用貼付剤(本発明品3)を得た。
【0031】
実施例 4
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25部
(商品名:クレイトンD−1107CP、
クレイトンポリマージャパン)
(3)流動パラフィン 27部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)ロジンエステル 40部
(商品名:エステルガムH、荒川化学)
(5)カンフル 5部
(商品名:dl−カンフル、日本精化)
【0032】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン、ロジンエステルおよびカンフルをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて膏体層を得た。その後、膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。それから、裁断・包装して外用貼付剤(本発明品4)を得た。
【0033】
実施例 5
( 組 成 ) 重量部
A.第1の膏体層
(1)ニコチン 15部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(3)水添テルペン樹脂 40部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(4)流動パラフィン 20部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
B.第2の膏体層
(1)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(2)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(3)流動パラフィン 35部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)メントール 5部
(商品名:天然はっか脳、小城製薬)
【0034】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水添テルペン樹脂および流動パラフィンをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて第1の膏体層を得た。その後、第1の膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。次に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水添テルペン樹脂、流動パラフィンおよびメントールを加熱混合し、厚さが400μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延して第2の膏体層を得た。それから、第1の膏体層のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去して第2の膏体層を積層させた後、裁断・包装して外用貼付剤(本発明品5)を得た。
【0035】
実施例 6
( 組 成 ) 重量部
A.第1の膏体層
(1)ニコチン 30部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 40部
(商品名:クレイトンD−1107CP、
クレイトンポリマージャパン)
(3)ロジンエステル 30部
(商品名:KE−311、荒川化学)
B.第2の膏体層
(1)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30部
(商品名:クレイトンD−1107CP、
クレイトンポリマージャパン)
(2)ロジンエステル 30部
(商品名:KE−311、荒川化学)
(3)流動パラフィン 35部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)メントール 5部
(商品名:天然はっか脳、小城製薬)
【0036】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびロジンエステルをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて第1の膏体層を得た。その後,第1の膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。次に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジンエステル、流動パラフィンおよびメントールを加熱混合し、厚さが800μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延して第2の膏体層を得た。それから、第1の膏体層のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去して第2の膏体層を積層させた後、裁断・包装して外用貼付剤(本発明品6)を得た。
【0037】
実施例 7
( 組 成 ) 重量部
A.第1の膏体層
(1)ニコチン 15部
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(3)水添テルペン樹脂 40部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(4)流動パラフィン 20部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
B.第2の膏体層
(1)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(2)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(3)流動パラフィン 35部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)カンフル 5部
(商品名:dl−カンフル、日本精化製)
【0038】
( 製 法 )
ニコチン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水添テルペン樹脂および流動パラフィンをトルエンに溶解させ、溶剤留去後の厚さが100μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを留去させて第1の膏体層を得た。その後、第1の膏体層をラミネートフィルム(上面:PE/PET/印刷層/アルミニウム/PET:下面)の下面側に貼り合わせた。次に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水添テルペン樹脂、流動パラフィンおよびカンフルを加熱混合し、厚さが400μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延して第2の膏体層を得た。それから、第1の膏体層のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去して第2の膏体層を積層させた後、裁断・包装して外用貼付剤(本発明品7)を得た。
【0039】
比較例 1
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)生ゴム 20部
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(4)流動パラフィン 27部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
【0040】
( 製 法 )
メントールを配合しないこと以外は、実施例1と同様な製法により、外用貼付剤(比較品1)を得た。
【0041】
比較例 2
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)生ゴム 20部
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(4)流動パラフィン 22部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(6)クロタミトン 5部
(商品名:クロタミトン、住化ファインケム)
【0042】
( 製 法 )
メントールに代えて鎮痒成分であるクロタミトンを配合すること以外は、実施例1と同様な製法により、外用貼付剤(比較品2)を得た。
【0043】
比較例 3
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)生ゴム 20部
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(4)流動パラフィン 22部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(6)グリチルレチン酸 5部
(商品名:グリチルレチン酸、丸善製薬)
【0044】
( 製 法 )
メントールに代えて抗炎症成分であるグリチルレチン酸を配合すること以外は、実施例1と同様な製法により、外用貼付剤(比較品3)を得た。
【0045】
比較例 4
( 組 成 ) 重量部
(1)ニコチン 3部
(2)生ゴム 20部
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20部
(商品名:クレイトンD−KX−401CS、
クレイトンポリマージャパン)
(4)流動パラフィン 22部
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)水添テルペン樹脂 30部
(商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル)
(6)ジフェンヒドラミン 5部
(商品名:ジフェンヒドラミン、金剛化学)
【0046】
( 製 法 )
メントールに代えて抗ヒスタミン成分であるジフェンヒドラミンを配合すること以外は、実施例1と同様な製法により、外用貼付剤(比較品4)を得た。
【0047】
試験例 1
(貼付試験)
上記実施例1および4、比較例1ないし4で得られた本発明品1、本発明品4、比較品1、比較品2、比較品3および比較品4並びに市販のニコチンパッチ(比較品5)について、その皮膚に対する影響を調べた。各製剤を直径12mmの円形に裁断した後、15名の被験者の腰背部にそれぞれ約20時間貼付した。製剤除去30分後に皮膚状態を観察し、紅斑の有無を判定した。また、被験者へのアンケート調査を行い、貼付中における掻痒の発現の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、比較品1〜5はニコチンに起因するものと思われる皮膚障害が確認された。具体的には比較品1〜5では、貼付により紅斑が認められた被験者が15例中4〜6例、掻痒が認められた被験者が15例中6〜10例であった。それに対して、本発明品1および4では、貼付により紅斑が認められた被験者が15例中0〜2例、掻痒が認められた被験者が15例中1〜2例であり、いずれも比較品の例数よりも少ない結果であった。本結果から、モノテルペンの配合による明らかな皮膚障害の抑制、すなわち皮膚刺激軽減および掻痒の抑制効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上述したように、ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する膏体層中にモノテルペン類を配合することにより、貼付部位における皮膚障害を抑制した外用貼付剤を得ることが可能である。したがって、従来のニコチン貼付剤より皮膚障害発生の可能性は低く、ニコチン置換療法にて必要とする貼付時間に亘り、ニコチン貼付剤を安全に貼付することが可能となり、非常に有用である。
【0051】
また、本発明の外用貼付剤は、皮膚障害抑制のための特殊な加工を必要とせず、高価な物質等を使用することもなく、さらに製造においても一般的な製造設備等を利用できるためコスト上昇等の問題はほとんどなく、従来品と同様な方法で製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物不透過性の支持体、ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する膏体層、および剥離ライナーより構成される外用貼付剤であって、前記膏体層がさらにモノテルペン類を含有することを特徴とする外用貼付剤。
【請求項2】
膏体層におけるニコチンの含有量が1〜20質量%、モノテルペン類の含有量が0.1〜20質量%である請求項第1項記載の外用貼付剤。
【請求項3】
モノテルペン類がメントールである請求項第1項または第2項記載の外用貼付剤。
【請求項4】
ゴム系粘着剤が、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブチルゴムおよびスチレン・ブタジエンゴムから選ばれた少なくとも一種のエラストマーを使用するものである請求項第1項ないし第3項のいずれかの項に記載の外用貼付剤。
【請求項5】
ゴム系粘着剤が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体をエラストマーとして使用するものである請求項第4項記載の外用貼付剤。
【請求項6】
ゴム系粘着剤と有効成分であるニコチンとを含有する外用貼付剤の膏体層中にモノテルペン類を含有せしめることを特徴とする外用貼付剤の皮膚障害性の抑制方法。
【請求項7】
モノテルペン類がメントールである請求項第6項記載の外用貼付剤の皮膚障害性の抑制方法。

【公開番号】特開2007−45779(P2007−45779A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233354(P2005−233354)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(390000929)祐徳薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】