外科手術をプランニングするための方法及びシステム
【課題】整形外科用プロテーゼのサイズと位置の選択を支援するプランニング方法及びシステムの提供。
【解決手段】患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするためのシステムは、複数の各種インプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、骨組織の表面形状情報を取得するための回路とを含む。前記システムはさらに、前記表面形状情報に基づいて、前記骨組織の仮想表現に関してインプラントを配置するためのベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、前記形状因子情報に基づいて、前記骨組織の前記仮想表現に関して、各インプラントの密着性計算と、前記骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子を評価するための回路とを含む。さらに、前記システムは、前記密着性計算のすべてから最適密着インプラントのサイズおよび位置を選択するための回路も含む。
【解決手段】患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするためのシステムは、複数の各種インプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、骨組織の表面形状情報を取得するための回路とを含む。前記システムはさらに、前記表面形状情報に基づいて、前記骨組織の仮想表現に関してインプラントを配置するためのベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、前記形状因子情報に基づいて、前記骨組織の前記仮想表現に関して、各インプラントの密着性計算と、前記骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子を評価するための回路とを含む。さらに、前記システムは、前記密着性計算のすべてから最適密着インプラントのサイズおよび位置を選択するための回路も含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2007年8月7日出願の米国特許出願第60/963,738号明細書の恩典および2008年8月8日出願の米国特許出願第60/963,916号明細書の恩典を請求するものであり、各々が全体として参照により本明細書に援用されている。
<連邦政府委託研究開発に関する引例>
該当せず。
<シーケンシャルリスティング>
該当せず。
【0002】
本発明の開示は、概して、整形外科用プロテーゼインプラントのサイズと位置との選択など、外科手術をプランニング(計画)するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科手術および/または関節形成術用のコンピューター支援外科手術システムは、各種手術のプランニングと施術との両方で有用である。ひとつの公知のシステム及び方法が、参照により本明細書に全体として援用されている、2005年11月30日出願の米国特許出願第11/290,039号明細書に記述されている。また別の公知のシステム及び方法が、2004年10月8日に出願され、米国特許出願第2006/0095047号公報として公開されている、米国特許出願第10/961,455号明細書に記述されており、さらに参照により本明細書に全体として援用されている。
【0004】
図1に図式的に示されているように、人工膝関節全置換術は、外側顆12と内側顆14とを含む大腿骨10の遠位端および、対向する脛骨16の近位端の罹患部位を除去し、除去された骨組織の部分を、大腿骨に取り付けるための大腿骨インプラント18及び脛骨に取り付けるための基板22と関節面層24とを含む脛骨インプラント20とを有するプロテーゼと置換することを含む。これを実施するため、外科医は、上側に大腿骨インプラントを受け入れるために、大腿骨インプラント18の内面層26に対して相補的な形状(破線で示されている)を有するように、大腿骨の遠位端の顆部を切除する。外科医はさらに、その上に基板22を相補的に受容できるような形状(仮想破線で示されている)に、対向する脛骨16の近位端を切除する。大腿骨インプラント18と基板22とは、骨組織10と16のそれぞれに、接着剤もしくは留め具などで固定され、関節面層24は、大腿骨インプラントに対向する基板に固定される。膝蓋骨(明確さを期すため図示せず)および、腱や筋肉(明確さを期すため図示せず)などの軟組織を膝の周囲の元の位置に正しく戻した後には、大腿骨インプラント18が、関節面層24で、膝の自然な動きを模倣した方法で関節の役割を果たすことができる。
【0005】
大腿骨10、大腿顆部12及び14、脛骨16ならびに、脛骨プラトー、腓骨および膝蓋骨など、患者の関連する部分のマップを作成するためのデータを人工膝関節全置換術の施術中に取得するのに、ナビゲーションシステムを使用でき、これは後でビデオやコンピューターモニターなどのディスプレイ上に表示されることができる。ひとつの想定可能なマッピングシステムでは、たとえば、2005年9月15日公開の、米国特許出願第2005/0199250号公報に開示されているトラッキングデバイスと共に、米国特許出願第2001/0034530号公報に開示されているナビゲーションシステムを使用でき、前記両公報はそれぞれ参照により全体が本明細書に援用されている。その他の想定可能なシステムでは、マッピングデータは、他の公知の術前技術および/または術間技術によって取得できる。マップを使用すると、外科医は、置換用プロテーゼの特定のサイズおよび/または形状を選択してから、切除個所を仮想的にレイアウトし、残存させる骨組織上におけるプロテーゼの所望の最終的密着性と配置とを実現できるよう、手順の以降のステップを仮想的にプランニングすることが可能となる。このステップは、プロテーゼの既知の形状および/またはサイズを格納したデータベースを使用して、これらの形状および/またはサイズを取得したマップデータと比較され、互いに並列にもしくは重ね合わされてディスプレイモニター上に表示される。マップとプロテーゼの形状因子データとを使用して手順のプランニングを完了すると、ナビゲーションシステムは、プランに従って手術を進めていくことができるように、様々な切除を行う等の手術の実際のステップを追跡することに使用できる。他の方法では、手術プランを実施するステップは、他の公知のレイアウト技術を採用して仮想ナビゲーションシステムの助けを借りずに実行することができる。
【0006】
特定のプロテーゼを選択するステップ、及び現存する骨組織上でのプロテーゼの好ましいレイアウトを選択するステップは、現在に至るまで、外科医など、手順をプランニングする人間の技量と経験に完全にもしくはほとんど依存してきた。たとえば、プロテーゼを視覚的に選択および調節する方法では、関連する骨組織のマップを取得した後で、外科医が骨組織のマップとの視覚的比較に関する自身の経験に基づいて、プロテーゼの特定のサイズを手作業で選択する。外科医は、どのプロテーゼが使用されているかをコンピューターに提示した後、所望の位置を選択するまで、試行錯誤を繰り返しながら、該当する骨組織の形状(ディスプレイスクリーン上に仮想的に重ね合わされて表示される)と比較することにより、プロテーゼの位置を視覚的に調節する。その後で、外科医は、選択した位置をマップに関連付けてコンピューターに記録させ、その情報を使用して手順の以降のステップを誘導させる。他の技術では、早期段階で故障が生じる可能性がより高い、応力が局所に集中するポイントを生じさせるような、骨組織の切除面の段差、又はくぼみ(切痕)が形成されるのを極力抑える、あるいはこれらを完全に形成されないようにするなどの、一つのパラメーターだけに基づいてプロテーゼのサイズと位置とを選択することしかできない。
【0007】
プロテーゼを視覚的に選択および調節するための方法では、特定の課題が生じる可能性がある。プロテーゼの適正なサイズを選択する、というひとつの課題は、外科医が骨組織のマップ情報だけに基づいて適正なサイズを選択するための能力で制約される。骨組織に対して最適に配置するためのプロテーゼの位置決めというもうひとつの課題は、外科医が選択したプロテーゼのサイズと、外科医が最適な配置を視覚化する能力との両方に制約される。プロテーゼの最適ではない位置とサイズとを選択した場合には、くぼみや、プロテーゼの縁端部と骨組織の表面とが完全には整合せず、プロテーゼの縁端部を越えた先まで骨組織の切除部分が好ましくないほど大きくずれてしまうような領域、あるいはプロテーゼの縁端部と骨組織の切除していない部分との間の大きな突出部もしくは間隙が生じてしまうという損害がある。患者に切開術を施術している時間を最小限度に抑えるために外科手術における時間が最重要であるにもかかわらず、多くの場合、プランニングは、患者に対して切開術を施術した後でしか開始および/または完了することができないという点が、外科手術を最も効率的にプランニングする外科医の能力の大きな制約となっている。
【0008】
したがって、骨組織におけるくぼみ(切痕)の形成や、その他の不十分さおよび/またはあまり望ましくない代替的設計を防止するかもしくは最小限に抑えられるようにするためには、プロテーゼの最適なサイズと位置とのプランニングを確保するのを支援するために、さらに正確で時間効率の優れた手順のプランニングを促進するシステムと方法とを有することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態では、大腿骨の切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するためのシステムは、複数の大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するための手段と、大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するための手段とを含む。このシステムはさらに、大腿骨の切除に先行して、検討すべき各サイズのインプラントごとに、定義済の漸増位置セットのうち、想定される各漸増位置の仮想密着性評価を自動的に実行するための手段と、仮想密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択するための手段とが含む。
【0010】
本発明の別の実施形態では、患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするためのシステムは、複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、骨組織の表面形状情報を取得するための回路とを含む。このシステムはさらに、表面形状情報に基づいた骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、形状因子情報と骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子とに基づいた骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するための回路とを含む。さらに、このシステムは、密着性計算のすべてから最適に密着するインプラントのサイズと位置とを選択するための回路が含む。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態では、骨組織のプロテーゼインプラントの最適なサイズと位置とを仮想的に自動計算するためのコンピューター読み取り可能媒体は、複数の各種インプラントサイズに関する定義済みの形状因子情報を取得するための第1のルーチンと、骨組織の表面形状情報を取得するための第2のルーチンとを含む。第3のルーチンは、骨組織の仮想表現に関する、インプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義する。第4のルーチンは、骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性基準に基づいて、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価する。第5のルーチンは、各密着性計算の複数の密着性基準のそれぞれに対する重み付け比較に基づいて、各密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするための方法は、複数の各種インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、骨組織の表面形状情報を取得するステップと、骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するステップと、骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子に基づいた、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するステップと、密着性計算のすべてから最適密着インプラントと位置とを選択するステップを含む。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、大腿骨切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するための方法は、大腿骨インプラントに関する既定形状因子情報を取得するステップと、大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するステップと、大腿骨切除に先行して、検討すべき各サイズのインプラントごとに、既定漸増位置セットのうち、想定可能な漸増位置すべてにおいて各々、仮想密着性評価を実行するステップとが含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図2に図式的に示されているように、患者の上脚部すなわち大腿部32が、患者の下脚部すなわち脛骨34に対して約90度の角度をなすように、脚部30を曲げた状態で、患者の脚部30を人工膝関節置換術に準備させることができる。このような脚部30の配置により、患者の膝36が手術に適した位置に置かれる。コンピューター支援外科手術ナビゲーションシステム42に連結されたカメラ40と通信可能な2個のトラッキングデバイス38が、大腿部(骨)32と脛骨34とのそれぞれに追随して動くように、大腿骨32と脛骨34とに連結されている。このような連結は、それぞれの骨組織への直接取り付け、あるいはその他の可能な連結方法であってよい。一実施形態では、コンピューター支援外科手術ナビゲーションシステム42は、本技術分野では周知のシステムであるため、本明細書ではこれ以上言及しない。好適な外科手術ナビゲーションシステム42が、米国特許出願第2001/0034530号公報に記載されている。代表的ナビゲーションシステム42には、コンピューターやビデオモニターなどのディスプレイ装置44も含まれている。さらに、ほとんどのナビゲーションシステム42は、ナビゲーションシステム42と協働するよう事前に較正ブレートされた、ポインター46などの専用ツールも使用する。ポインター46の較正により、ナビゲーションシステム42が、ポインター46上に配置されたLEDなどの一連のロケーターデバイス50を検出することによって、ポインターチップ48の正確な位置を判断することができる。一実施形態では、これらのロケーターデバイス50は、トラッキングデバイス38で使用されるデバイスと同じ種類のデバイスである。
【0015】
図3は、プロテーゼインプラント外科手術を施術するための方法70の、ひとつの実施形態を図解している。一実施形態では、方法70は、本明細書で以下に詳細に開示するように、外科手術の段階的プランニング及び実施をガイドする、コンピューター支援ナビゲーションシステム42を用いて実施するよう構成されている。ただし、方法70は、特定の実施システムで使用するよう限定されているわけではなく、この方法のステップを実行することのできる他のシステムでの使用および/または実施されるよう構成されてもよい。例示のみを目的として、本開示の方法とシステムとを、人工膝関節全置換術もしくは人工膝関節置換術のプランニングおよび実施に関連させて説明する。ただし、この方法とシステムとは、本詳細な実施例の精神から逸脱せずに、軽微な変更を加えた上で他の外科手術に応用されてもよいということが理解される。
【0016】
一実施形態では、方法70は、一実施形態ではコンピューター読取り可能形式の患者ファイルを作成し、患者データ入力ルーチン72により、患者名、日付、外科手術などの選択済パラメーターにデータを入力するステップで開始する。次に、システムセットアップルーチン74で、ポインター46などのポインターの位置を検証するステップを含むことができる、ナビゲーションシステム42などのナビゲーションシステムをセットアップする。検証後に、患者登録ルーチン76により、ポインターを使用することなどにより、患者の配置をナビゲーションシステムで登録する。患者登録ルーチン76は、一実施形態では、検証ポイント定義サブルーチンと、大腿骨登録サブルーチン78と、脛骨登録サブルーチン80と、左右どちらの脚部を手術するのかを確認すること、及び登録確認サブルーチン82とを含む。大腿骨登録サブルーチン78では、少なくとも前側(anterior)皮質ならびに、外側顆と内側顆と最近位(proximal)、遠位(distal)、内側(medial)および外側(lateral)の各ポイントを含む大腿骨の関連する表面の詳細な調査が、以後さらに詳細に述べるように、適切な調査計器を用いて実施される。同様に、脛骨登録サブルーチン80で、脛骨の関連する表面の調査が実施される。対象となる関節の運動力学など、他の関連する患者の生体力学特性に関するデータも、患者登録ルーチン76で、直接的観察および/または補間法によって収集されてもよい。次に、調査から得られたデータをコンピューターで処理して、調査した表面の仮想画像もしくはマップを生成し、ディスプレイ画面上に表示し、外科手術70の以降のステップを通じて使用できるようにする。ナビゲーションシステムで患者を登録した後には、外科医は、初期整合分析ルーチン84で、膝の手術前の整合など、対象領域の関連する生体力学特性を分析することができる。一実施形態では、初期整合分析ルーチンで、外科医は、表(テーブル)の記録、膝の内反/外反角度の分析および/または曲線の記録を行うことができる。患者登録ルーチン76と初期整合分析ルーチン84とから収集した情報を、インプラントのサイズ指定および位置決めルーチン86で使用して、以後詳細に述べるように、新しい方法で最終的インプラントのサイズおよび位置プランを取得する。最終的インプラントのサイズおよび位置プランは次いで、外科手術ナビゲーション技術及びコンピューター支援データ処理技術に従って、骨組織切除ルーチン88で骨組織を切除するステップ、試験的整合分析ルーチン90で試験的プロテーゼを取り付け、試験的整合を分析するステップ、最終的整合分析ルーチン92で最終的プロテーゼを取り付け、最終的整合を分析するステップ、周知の外科手術ナビゲーション技術とコンピューター支援データ処理技術に従った、レポート表示ルーチン94で手技に関するレポートを作成するステップなど、外科手術における以降のステップの指示及び/又は指針を提供するのに使用できる。
【0017】
次に、図4〜6Cを参照すると、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を使用して、優先順付パラメーターセットに基づいて、一連の想定されるサイズと一連の想定される位置との各想定される組合せごとに、複数の密着性パラメーターを評価することによって、指定された大腿骨インプラントの種類の最適なサイズと位置とを含む、最適インプラントのサイズおよび位置プランが自動的に計算される、インプラントのサイズ指定および位置決めルーチン86の一実施形態が開示されている。一実施形態では、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100は、図4Aに詳細に概略的に示されているような方法で、最適なサイズの大腿骨インプラントと、大腿骨の遠位端に対する大腿骨インプラントの取り付け位置とを自動的に選択する。このとき、硬質骨組織形状パラメーターや大腿骨インプラント形状パラメーターだけが考慮され、外科医が患者に実際にインプラントを取り付けるのに使用するプロテーゼに関する最終的サイズおよび位置プランにも影響を与えるような、軟組織や、患者の体型および性別などの他の解剖学的条件は考慮されない。したがって、自動計算された最適インプラントのサイズおよび位置プランは、外科医によって必要と考えられれば、後で、インプラント小型化サブルーチン102(図4B)及びインプラント位置変更サブルーチン104(図4C)の一方もしくは両方により、外科医からの適切な入力によりに手作業で調整して、一以上の調整後のインプラントのサイズおよび位置プランを作成してもよい。一実施形態では、調整後のインプラントのサイズおよび位置プランは、外科医によって骨組織に対する密着性が評価される。外科医は次いで、自身の知識と経験に基づいて、ステップ108で検討した先行のプランすべてから、外科手術の以後のステップを実施するための最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択する。
【0018】
図4A及び図5A〜図5Eに詳細に示されている、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100の一実施形態では、予め選択された計算セットが、最小から最大に至るまでなど、各サイズの大腿骨プロテーゼの密着性を、4種類の優先順付き密着性基準について2つの自由度を有する各位置における骨組織の形状に対して、自動的に順次評価していく。大腿骨の遠位端に大腿骨インプラントを密着させるための一実施形態では、4種類の優先順付き密着性基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大のずれと、切断された骨組織の上に位置するインプラントの前側部分の近位端のパーセンテージと、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置するインプラントの前側部分の近位端輪郭のパーセンテージと、インプラントと前側皮質の切断されていない面との間の最大間隙とが含まれる。たとえば、第一の基準は、ずれが12mmを越えてはならないということであってもよい。第二の基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭の最低60%が、切断された骨組織上に位置するということであってもよい。第三の基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭の最低1%が、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置するということであってもよい。第四の基準は、インプラントの近位輪郭と切断されていない前側皮質との間の最大間隙が、1.5mmより狭いことが好ましいということであってもよい。最大のずれが12mmより大きいか、あるいはインプラントの前側部分の近位端輪郭の全体が、切除された前側皮質骨の上に置かれている場合に、切痕(notch)が存在すると計算される。一実施形態では、ナビゲーションシステム42を実行するコンピューターによって、予め既選択された計算セットが電子的に実行され、計算は、患者登録ルーチン76で取得された調査データと、1以上のプロテーゼの種類から予め選択されたプロテーゼ群および各プロテーゼの種類ごとの複数のサイズのそれぞれに関する形状因子情報を含む、電子的記憶システム等からコンピューターによってアクセス可能な予めロードされたデータベースに基づいて行われる。他の実施形態では、予め選択された計算セットは、異なる電子コンピューター、他の計算機、および人手の少なくともいずれかによって実行され、調査データは、対象となる骨組織に関する必要な解剖学的情報を提供できる他の方法によって取得される。一実施形態では、外科医が、他の因子に基づいて1種類のプロテーゼを選択し、次いでコンピューターが、すぐ後に述べるように、選択された種類に関する各サイズと位置ごとに密着性を評価する。
【0019】
自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を開始する前に、外科医は、後側(posterior)顆および遠位顆の選択した内反/外反角度、回転角度および/または表面位置を整合させるための設計パラメーターに基づいて目標再構築位置をはじめに定義してもよい。図5Aに図式的に示されているように、再構築位置は、遠位顆表面に関する設計ベースライン110と、後側顆表面に関する設計ベースライン112とを定義するが、これらの表面は、最終的インプラントのサイズおよび位置プランで、外科医が、最初、不変にしておくことを望む表面である。再構築された遠位顆および後側顆の表面が設定されている状態で、一実施形態の第一のステップ114では、最小サイズなどの第一のサイズのインプラント118aが選択され、インプラント形状因子データベース116から、それに関する形状因子情報が検索される。ステップ118では、第一のサイズのインプラント118aが、遠位顆の位置と後側顆の位置とが再構築後の設計ベースライン110と112とに常時維持されている、大腿骨10のマップに配置される。ステップ118では、大腿骨10の力学的軸120を参照して、屈曲0°および前側/後側移動(A/P移動)0.0mmのデフォルト位置に、第一のサイズのインプラント118aが配置される。図5Aの124に示されているように、少なくとも切痕の形成を評価するため、上記4種類の基準を用いて、第一のサイズのインプラント118aの密着性がステップ122で評価される。A/P移動が現在の屈曲角度に対する最大A/P移動ではない場合には、一実施形態では、図5Bに図式的に示されるようにA/P移動が、ステップ126で0.5mm単位など、前方向に漸増され、ステップ122でこの新しい位置における密着性が評価される。ステップ122と126のこのサイクルは、所与の屈曲角度で最大A/P移動が評価されるまで繰り返され、その後で、屈曲角度が、図5Cに図式的に示されているようにステップ128で増分され、A/P移動がステップ130でデフォルト位置にリセットされ、新しい屈曲角度の密着性がステップ122で評価される。122、126、128および130の各ステップは、第一のサイズのインプラント118aに関する屈曲角度とA/P移動の想定される組み合わせのすべてに対応する各位置ごとに密着性が計算されるまで繰り返される。一実施形態では、評価の対象となる屈曲角度は、1°の増分で、0°から最大5°の範囲にわたり、評価の対象となるA/P移動は、0.5mmの増分で、0.0mmから、次のサイズのインプラントに重なり合うと計算される最初の増分まで、及び/または骨組織の前側皮質に切痕が形成されなくなるまでの範囲にわたる。インプラントは、再構築される遠位顆および後側顆が、それぞれのベースライン位置に確実に維持されるように、インプラントのひとつの半径を中心として屈曲されることが好ましい。第一のサイズのインプラント118aのすべての位置で密着性を評価した後に、図5Dに図式的に示されているように、次のサイズのインプラントの増分188bがステップ130で選択され、122、126、128および130の各ステップが同様の方法で繰り返される。122、126、128および132のステップは、選択されたインプラントの種類のインプラントのサイズのすべてが、A/P移動および屈曲の両方の自由度に関してそれぞれ想定される増分位置で完全に評価されるまで、データベース内の各連続した増分サイズのインプラントに対して、同様の方法で繰り返される。各サイズのインプラントの密着性が十分に評価されたなら、評価された密着性のすべてが、ステップ134で重み付けアルゴリズムと比較され、骨組織の切痕形成およびインプラントのサイズ過大を少なくとも最低限度に押さえるか、あるいは完全に排除する、自動的最適サイズおよび位置プランを、評価の対象となったサイズと位置とのすべてから特定する。これによりステップ136で、大腿骨インプラントの画像が、図5Eに図式的に示されているように、以後のステップで使用できるように、自動的最適インプラントのサイズおよび位置プランで大腿骨の画像の上に重ね合わされる。その他の実施形態では、好ましくは検討すべき各サイズのインプラントごとに想定され、漸増位置のすべてで密着性評価が行われる限り、各想定されるサイズの各想定される位置ごとに密着性評価を取得するために、想定されるサイズと位置とのすべてについて処理を進めていくステップを、本明細書に記載されている順序とは別の順序で行ってもよい。
【0020】
図4Bおよび図6A〜図6Cに図式的に示されているように、最適インプラントのサイズおよび位置プランを計算した後に、外科医は、インプラント小型化サブルーチン102で、軟組織もしくは他の解剖学的考慮が可能となるよう調整を行うなど、サイズと位置とを手作業で変更することをオプションとして選択してもよい。ステップ150では、外科医は、自動計算された最適なサイズの次に漸減しているより小さなサイズの大腿骨インプラントを選択する。ステップ152では、新しいインプラントのサイズで、外科医は、維持すべきベースラインA/P移動の三つの選択肢のオプションから選択を行う。すなわち、1)図6Aに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの前側位置を維持する、2)図6Bに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの前側−後側間の中心を維持する、および、3)図6Cに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの後側位置を維持すること、である。外科医はさらに、前の屈曲角度を維持するかまたは残りの角度の選択肢のひとつを選択するかのいずれかを選択することによって、0°と5°との間などの、ベースライン屈曲角度を予め設定した範囲内に維持するよう選択する。次に、新しいインプラントサイズの密着性が、前述の方法と同じ方法で評価され、結果として変更されたサイズおよび位置プランが作成されて得られる。外科医は、軟組織を考慮した最適なサイズと位置とが見つかったと思うまで、自身の検査および知識と経験に基づいて、変更後インプラントのサイズおよび位置プランをステップ158で繰り返し調整することを選択してもよい。納得のいく変更後インプラントのサイズおよび位置プランが特定されたなら、その特定されたプランを、ステップ160で、以後使用できるように保存しておくことができる。
【0021】
図4Cに図式的に示されている、インプラントの位置変更サブルーチン104では、外科医は、インプラント小型化サブルーチン102に加えて、あるいはその代わりに、自身の知識と経験に基づいて軟組織および/または他の解剖学的考慮に関して必要な調節を行うために望ましい場合、内反/外反角度、近位/遠位移動距離、回転角度、A/P移動距離、屈曲角度、インプラントのサイズなどを含む、自動的に最適化されたインプラントのサイズおよび位置プランおよび/または変更後のインプラントのサイズおよび位置プランに設定されている、利用可能な自由度のすべてを変更することを、ステップ170でオプションとして選択してもよい。このような手作業の変更により、外科医は、自身の知識および経験に基づくなどして、明らかに不必要なサイズと位置の繰返しをその場で省略すること、及び/又はユーザー側からの拒否(user override)を実現できる。ステップ172では、ステップ170からの変更後インプラントのサイズおよび位置プランの密着性が評価され、外科医は、変更後インプラントのサイズおよび位置プランを視覚的に分析し、ステップ174でこのようなプランを受け入れるか否か、ステップ176でさらなる変更を試みるか否か、および/またはステップ178で前のプランを受け入れるか否かを決定する。一実施形態では、インプラント小型化サブルーチン102とインプラント位置変更サブルーチン104の両方について、手作業で選択された各々の位置で密着性が評価されて、最大ずれが12mmより大きいかまたはインプラント近位輪郭全体が前側皮質骨の切断面に位置する場合に、特定のインプラントのサイズおよび位置プランで、前側皮質に切痕が形成されるか否かを特定するので、外科医は、自身の経験および知識に基づいて手作業で選択された各々の位置を受け入れるかもしくは拒絶するかを選択できる。
【0022】
サブルーチン100、102および104のいずれかひとつの終了時に、外科医は、考慮の対象とするプランのいずれかから、外科手術の以降のステップを誘導するのに使用すべき最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択した後に、骨組織切除サブルーチン88に進むことを選択してもよい。上記ステップの実行後には、外科医は、元の自動計算された最適インプラントのサイズおよび位置プラン、もしくは変更後のインプラントのサイズおよび位置プランのいずれかから、最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択する。当然のことながら、外科医は、単に手作業の調節を省略することを選択し、自動計算された最適サイズおよび位置に依拠することを選んでもよい。
【0023】
図7〜図13は、図1に示されている人工膝関節置換術を実行するため、図2に示されているハードウェアと関連して、図3〜図6Cの上述の方法を実施するコンピューター化システムの一実施形態を示している。上記の方法を実施するためのソフトウェアは、対象の骨組織の調査およびマップデータならびにインプラント形状因子情報データベース116にもアクセスする、ナビゲーションコンピューター112などのコンピューターを駆動する。図7に示されているメインメニュースクリーン200には、外科手術を通じて外科医をガイドするのに役立つ、メインメニュー202が表示されている。メインメニュー202には、本明細書に前述した以下のルーチン、すなわち、患者データ入力ルーチン72と、システムセットアップルーチン74と、患者登録ルーチン76と、初期整合分析ルーチン84と、インプラント位置決めルーチン86と、骨切除ルーチン88と、試験的整合分析ルーチン90と、最終整合分析ルーチン92と、レポート表示ルーチン94と、のそれぞれを開始させるためのボタン204が含まれている。チェックマーク206などの視覚的表示が、ルーチンが完了したか否かを示すために各ボタンと関連付けられており、これにより外科手術を通じて外科医をガイドするのに役立つ視覚的合図を提供する。
【0024】
図8および図9に示されているように、メインメニュースクリーン200から、患者データ登録ルーチン76と関連付けられたボタン204を選択すると、屈曲股関節登録サブルーチンと、股関節中心登録サブルーチンと、内側上顆登録サブルーチンと、外側上顆登録サブルーチンと、大腿骨中心登録サブルーチンと、大腿骨A/P登録サブルーチンと、内側遠位顆登録サブルーチンと、外側遠位顆登録サブルーチンと、内側後側顆登録サブルーチンと、外側後側顆登録サブルーチンと、前側皮質登録サブルーチンとなどの、各種患者登録ステップのそれぞれを実行するためのサブルーチンボタン210を表示する、各種患者登録スクリーン208a、208bのひとつが表示される。メインメニュースクリーン200上の場合と同様の方法で、視覚的標識(インジケーター)206が各サブルーチンボタン210と関連付けられており、各種登録サブルーチンを通じて外科医を視覚的にガイドするのに役立つよう、各サブルーチンが完了しているか否かを示す。患者登録スクリーン208aは、内側顆の大部分の後側表面が調査される、内側後側顆登録サブルーチンに対応している。患者登録スクリーン208bは、大腿骨の前側皮質の表面が調査される、前側皮質登録サブルーチンに対応している。切除する骨組織の全体的形状の視覚的表現212もスクリーンに表示される。視覚的表現212は、登録およびマップする特定の骨組織を表示するために、サブルーチンボタン210のそれぞれについて選択される。たとえば、スクリーン208aには大腿骨の後側顆が表示され、スクリーン208bには大腿骨の前側皮質が表示される。208aと208bの各スクリーンでは、どのような調査データポイントが取得されたか、またそのおおよその位置がどこかを示す、点などの視覚的標識(インジケーター)214が、骨組織の上に重ね合わされて表示される。一実施形態では、調査データポイントは、ポインター46などのデジタイザーメカニズムを使用して取得される。
【0025】
図9に示されている患者登録スクリーン208bでの前側皮質登録サブルーチンでは、本明細書にすでに述べた、インプラント位置決めルーチン86で実行される計算に使用する前側皮質の輪郭の正確なマップを取得するため、大腿骨の前側皮質の詳細な調査が行われることが特に重要な点である。輪郭マップの生成においては、調査およびマッピング分野で周知のように、対象とする表面の補間後輪郭マップを生成するために、通常、観察されたデータポイント間で一定量の補間が必要とされる。補間後輪郭マップの精度は概して、取得されたデータポイントの位置と数に直接関連付けられる。たとえば、隣接した三点のデータポイント間で、長辺でなくできるだけ等辺となり、対象となる表面の全体的トポグラフィーを適切に表すように設計された三角形が形成できるように、比較的規則正しいグリッドと目標密度でデータポイントが分布していることが概して望ましい。外科医が、前側皮質登録サブルーチンで所望のデータポイントセットを収集することを支援するために、デジタル化グリッド216が、大腿骨の前側皮質の標準化された仮想モデル212上に重ね合わされ、指定された設計精度パラメーターを十分満たせるだけの前側皮質の輪郭マップを提供する、数と位置のデータポイントを取得するよう外科医を視覚的にガイドするのに役立つ。点などの視覚的標識214が、収集された各データポイントごとに、デジタル化グリッド216と前側皮質骨の標準化された仮想モデル212との上に、重ね合わされて表示される。設計精度パラメーターを満たすために最少の数および位置のデータポイントを収集した場合には、グリッドの色の変化などの、別の視覚的標識218がスクリーン上に現れる。さらに別の色で表示されるインプラント近位輪郭220などの、さらに別の視覚的標識が、プロテーゼインプラントの内側輪郭の全体的領域内にとなるよう計画されている、特に対象となる全体的もしくは隣接領域を示すために、スクリーン上に表示される。インプラント近位輪郭220は、インプラント形状因子情報を格納するデータベースから導出され、顆部の登録された位置および力学的大腿骨軸ならびに回転大腿骨軸から決定される。前側皮質登録サブルーチンで収集されたデータポイントから適切に計算されるおおよそのインプラントのサイズを示す、チェックマーク222および数字224などのさらに別の視覚的標識が、スクリーンに表示される。さらに、エラーチェックサブルーチンが、骨組織の表面で収集されなかった空中ポイントなどの、前側皮質登録サブルーチンで取得した潜在的な外れデータポイントを特定するため、数学的補間を実行する。エラーチェックサブルーチンは、前側皮質登録サブルーチンから収集されたデータポイントのすべてを数学的に補間し、たとえば周知のスプライン補間アルゴリズムなどを使用して平滑化された表面を計算する。平滑化された表面から予め指定された距離を越えて外れたデータポイントが、潜在的エラーデータポイントとして外科医に知らされる。外科医はその後、調査の対象となった表面についての自身の理解に基づき、これらのポイントを削除するか、あるいは輪郭マップを作成するのに使用するために保持するかの、いずれかを選ぶことができる。
【0026】
図10に示されているように、ユーザー選択スクリーン226には、ボタン228aもしくは228bのどちらかを選択して、インプラントの位置を手作業で外科医がプランニングできるようにするか、あるいは対象となる骨組織の必要な形状と生体力学特性を検索した後で、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を自動的に実行することによって、インプラントのサイズおよび位置をコンピューターに自動的に計算させるか、を示すよう外科医に促すプロンプトが表示される。ユーザー選択スクリーン226では、デフォルト屈曲角度および切除レベルなど、計算のための他のパラメーターを外科医が設定できる。
【0027】
インプラント位置決めルーチン86は、メインメニュー202から適切なボタン206を選択することによって開始することができ、これは自動計算最適インプラントのサイズおよび位置プランを自動的に計算し、図11に示されているように、インプラント位置決めスクリーン230に骨組織とインプラントとの図形表現および数値形式でその結果を表示する。図11は、計算から得られた方法で骨組織に配置された選択したインプラントを表示している。これにより、外科医は、視覚的に、さらには表示された各種数値データから、大腿骨インプラントの自動計算されたサイズ、位置および整合が許容可能であるか否かを検証することができる。ディスプレイにはさらに、骨組織とインプラントとの図形表現上に、設計後に大腿骨インプラントによって被覆されないままとなっている前側皮質切除部の領域、インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間のあらゆる間隙、大腿骨インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間の最大間隙の位置とを示す、インプラント位置決めスクリーン上に表示される標識と同じ視覚的標識が表示される。インプラント位置決めスクリーン230には、登録ルーチンから判定される脚の実際の内反/外反および各屈曲整合、ならびに、サイズ、屈曲、A/P移動、内反/外反角度、回転角度、遠位切除レベル、後側切除レベル等を含む、大腿骨インプラントに関する計算された設計パラメーターが表示される。インプラント位置決めスクリーンには、自動サイズおよび位置計算のため事前に選択されたインプラントシステムおよびその種類も、その設計状態で表示される。インプラント位置決めスクリーン230には小型化ボタン232が含まれ、これが選択されると、インプラント小型化サブルーチン102を開始し、図12に示されるようなインプラント小型化スクリーン234に表示を変更する。インプラント位置決めスクリーンにはさらにインプラントの位置変更ボタン236も含まれ、これを選択すると、インプラント位置変更サブルーチン104を開始し、図13に示されるようなインプラント位置変更スクリーン237に表示を変更する。デフォルトボタン239は、スクリーン上に表示されているサイズおよび位置プランを自動最適化サイズおよび位置プランに戻すときに、いつでも選択することができる。
【0028】
次に図12に移ると、インプラント小型化スクリーン234には、本明細書ですでに述べた、第一の手動調整モードを実行するために外科医が選択できる選択肢が表示されている。具体的には、インプラント小型化サブルーチン102でインプラント位置決めスクリーンに表示される設計の前側位置、後側位置もしくは平均位置のどれを維持するかを外科医が選択できる、三つの別々の選択ボックス238a、238b、238cが表示される。さらに4個の別の選択ボックス240a、240b、240cおよび240dが表示されており、これらにより外科医はインプラント小型化サブルーチン102で、インプラント位置決めスクリーンに現在表示されている屈曲角度を維持するか、あるいは別の三個の屈曲角度のひとつを選択するかを選択できる。屈曲角度の維持に関連付けられた選択ボックス240aには、現在の角度設計が表示される。所望の選択が示されると、外科医は小型化ボタン242を選択し、コンピューターは、選択された基準A/P移動、基準屈曲角度と、現在の設計インプラントパラメーターから漸減するインプラントサイズに関する形状因子データとに基づいて、サイズおよび位置計算を自動的に更新し、変更後のインプラントサイズおよび位置プランを提供する。インプラント位置決めスクリーン230上の表示は、小型化ボタン242を選択すると、変更後のインプラントのサイズおよび位置プランと一致するように自動的に更新され、本明細書にすでに述べたように、切痕が形成されるとして密着性評価が計算された場合には、視覚的標識が表示される。取消しボタン244もまた表示され、このボタンを選択すると、外科医は、すでに表示されているインプラントのサイズおよび位置プランに対する変更内容を保存せずに、インプラント位置決めスクリーン230に戻ることができる。
【0029】
次に図13に移ると、インプラント変更スクリーン237は、現在のインプラントのサイズおよび位置決めプランのパラメーターに基づき、適切な骨組織上に重ね合わされた大腿骨インプラント18と脛骨インプラント20とを図形表示する。インプラント変更スクリーン237には、本明細書にすでに述べたインプラントの位置変更サブルーチン104による調整を実行するために外科医が選択できる選択肢も表示される。具体的には、骨組織が実際の位置及び整合状態で表示され、インプラントが、現在の設計位置で骨組織に重ね合わせて表示される。ディスプレイには、大腿骨インプラントによって覆われないままとなっている設計後の前側皮質切除部の領域と、インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間のあらゆる間隙、およびインプラント位置決めスクリーン上に表示されている標識と同じ標識で、大腿骨インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間の最大間隙の位置が、インプラント位置スクリーン230と同様の視覚的標識で表示される。増/減矢印コントロールボタン対246が表示され、これらにより、内反/外反角度、近位/遠位移動距離、回転角度、前側/後側移動距離、屈曲角度、大腿骨インプラントサイズとなど、大腿骨インプラントの6つの自由度のそれぞれを、外科医が選択することができる。増/減矢印コントロールボタン対246を使用すると、外科医は、たとえば、自動計算最適インプラントのサイズおよび位置プランおよび/またはインプラント小型化スクリーン234から取得した変更後インプラントのサイズおよび位置プランを、最適なインプラントサイズおよび位置を計算する自動モードでは考慮されない、軟組織の考慮を可能にするよう、これら設計を適合させる目的で変更するなど、希望どおりに各設計パラメーターを手作業で変更することができる。インプラント小型化スクリーンと同様の方法で、インプラント位置決めスクリーン230は、OKボタン248が選択されると、インプラントの位置変更スクリーンで選択された手作業で変更したパラメーターから、変更後のインプラント設計位置を反映するようすぐに更新される。デフォルトボタン250と取消しボタン252も表示され、これらはそれぞれ、外科医がその設計を自動計算最適インプラント設計に戻す、又は設計に対する変更内容を保存せずにインプラント位置決めスクリーンに戻ることを可能にする。
【0030】
外科医が、本明細書で直前に述べた各種設計から最終設計を選択した後は、残りのルーチンが、その最終設計を用いて、本技術分野では周知の方法で患者に実際にプロテーゼを取り付けるための以降のステップへと外科医をガイドする。
【0031】
図14に移ると、本開示のコンピューター化システムのディスプレイスクリーン270上に映し出されたユーザー選択スクリーンのスクリーンショットが開示されている。自動インプラントサイズ指定および位置決めを選択すると、オプションとして(任意選択的に)あるいは加えてに、次の機能も選択することができる。すなわち、屈曲/伸展間隙表示機能、M/L(内/外)突出検出機能、脛骨切断後挿入プレビュー機能、内反膝の内側顆推定機能、A/P整合へのナビゲートドリルテンプレート使用機能、および屈曲/伸展間隙表示機能のうちの少なくとも一つである。各機能は、該当するボタンもしくはダイアログボックス272を使用して選択できる。
【0032】
図15に示されているように、屈曲/伸展間隙表示ボタンは、切断が行われる前に、内側と外側の両方に関する屈曲および伸展間隙のサイズに関するプレビューを提供する。これにより、外科医は、計画された切除が目的とするインプラントにとって十分なスペースを提供するか否かを評価することができる。間隙の適切なプレビューを取得するためには、バランサーやスプレッダー(図21参照)などの、任意の機械的用具で膝関節を確実に開く(distract)ようにすることが推奨される。屈曲間隙の適切なプレビューは、膝を屈曲状態で開いた場合に与えられる。伸展間隙は膝を伸展状態で開いた場合に表示される。
【0033】
次に、図16Aおよび図16Bに移ると、屈曲/伸展間隙表示機能と関連付けられたスクリーンショットの詳細図に、屈曲/伸展間隙および脛骨切除プレビューが表示されている。間隙サイズのプレビューは、計算された遠位(後側)大腿骨切除レベルと、脛骨切除レベルとに基づいている。一実施形態では、プレビューに関しては、脛骨が切除されておらず、切断が記録されていないかぎりは、脛骨切除レベルはデフォルトで最近位(高位)の区画からの測定で8mmに設定される。
【0034】
図17を参照すると、屈曲/伸展間隙は以下の方法で計算される。最初に、デジタル化された区画の質量中心が計算される。次にこれらの質量中心が脛骨切除面276に投影される。次に投影された質量中心が1.53の係数分だけ内側/外側に平行移動される。投影および平行移動された質量中心を通過する脛骨切断面に垂直で、なおかつ大腿骨切断面278と交差する線分が描画され、この線分に沿った大腿骨切断面と脛骨切断面との間の距離dが測定される。
【0035】
図18に移ると、一実施形態によれば、ML突出検出機能は、対象となる表面のデジタル化等によって、インプラントの突出の発生に関連する内側および後側突出領域のAP位置を取得するステップが含む。たとえば、デジタル化するときには、外科医が、内側/外側軟骨組織の境界に関連するAP位置から開始し、ポインターチップを近位方向に移動させて線分を描くことができる。「インプラント位置決め」ダイアログでは、内側/外側インプラント突出の平均幅もしくは被覆されていない骨組織の幅が数値として表示される。本開示の一態様では、潜在的な内側/外側突出もしくはカバーされない骨組織は、自動サイズ指定および位置決め計算では考慮されていない。図19を参照すると、一実施形態では、ML突出検出機能で、MLインプラント突出/カバーされない骨組織の部分280が、デジタル化された突出領域のAP位置で測定され、関連する突出領域のAP位置が外科医によって判断され、内側/外側突出もしくはカバーされない骨組織の平均幅だけが数値表示される。ここでは、ML突出の計算は、計画大腿骨インプラント282に基づく。別の実施形態(不図示)では、潜在的な内側/外側インプラント突出又はカバーされない骨組織が自動サイズ設定において考慮され、別の密着性基準が生成される。
【0036】
図20は、脛骨切断後挿入プレビュー機能のスクリーンショットを表している。脛骨切断後挿入プレビュー機能を選択すると、ソフトウェアのワークフロー(ダイアログボックス286)はユーザーに、インプラント位置決めダイアログボックス288が表示される前に、はじめに近位脛骨切断を実施するよう促す。近位脛骨切断が実施され記録されると、インプラント位置決めダイアログボックス288に、どの挿入サイズ(厚さ)が、実際の近位脛骨切断部と計画された大腿骨インプラントとの間で密着するかのプレビューが提供される。
【0037】
図21を参照すると、脛骨切断後挿入プレビュー機能で、挿入サイズの適切なプレビューを取得するには、任意の種類のバランサーもしくはスプレッダー290で膝関節を開くことが好ましい。脛骨インプラントサイズのプレビューは膝の伸展状態及び屈曲状態の両方に関して表示される。脛骨インプラントのプレビュー及び計算は、記録された近位脛骨切断部と計算/計画された遠位および後側切除レベルに基づいて行われる。屈曲と伸展の両方で、近位脛骨切断部と計画した大腿骨インプラントとの間に最小の利用可能インプラントが密着しない場合には、ソフトウェアにより視覚的標識がディスプレイ上に表示される。さらに図22を参照すると、ボックス292に表示されている計算された脛骨インプラントサイズは、平均内側/外側間隙サイズだけを反映している。内反/外反不整合が3°より大きい不安定な膝294に関しては、計算されたインプラントサイズは狭い間隙に密着しないであろう。計算されたインプラントを間隙に密着させるには、靭帯のバランスをとることが好ましい。安定した膝296では、内側と外側間の間隙は中心平均間隙に等しく、計算されたインプラントのサイズが密着する。不安定な膝294では、内側と外側間の間隙サイズは、中心平均間隙サイズとは異なり、計算された挿入サイズは密着しない。
【0038】
次に図23を参照すると、人工膝関節全置換術のひとつの目的は、元の関節線300を再構築することにある。内反膝の内側顆推定機能を使用すると、もっとも突出している内側顆に関して、関節線再構築(それぞれ切除レベルを判定)が全般的に実施される。ただし内反変形の場合には、内側顆が大きく損傷を受けている可能性があり、大きく損傷した内側顆を基準とすると、大腿骨を過剰に切除し、元の関節線が近位方向に移動してしまう可能性がある。内反膝の内側顆推定機能を有攻にすると、ソフトウェアが、図24の表示スクリーンに視覚的警告で表示されているように、内側顆が大きく損傷している場合にユーザーに警告を与える。ソフトウェアは、デジタル化された外側顆がデジタル化された内側顆に比べ突出している場合に、大きな損傷が存在すると仮定する。警告が表示されると、ソフトウェアはユーザーに対し、遠位大腿骨切除レベルに関する基準として元の内側顆を推定するか、もしくはインプラントを計算するための基準としてより突出した後側で継続するか、どちらかの機会を与える。図25を参照すると、内反膝の内側顆推定機能では、内側顆を推定するのに適用される角度302は、本開示の一実施形態では2.5°に設定されている。さらに、図26を参照すると、最適インプラントのサイズおよび配置プランがソフトウェアによって計算された後に、「基準レベル選択」ボタンを使用して、インプラント位置決めダイアログ内で基準レベルを変更することができる。参照基準レベルを変更するときには、ソフトウェアが、インプラントサイズ、屈曲、及びA/P位置の計算を繰り返す。本開示の一実施形態では、すでに実施されている全ての変更(たとえば小型化、A/P移動の変更など)が失われ、新しいデフォルト位置で上書きされる。
【0039】
図27に示されているように、A/P整合用のナビゲートドリルテンプレート(Stryker Navigation社(ドイツ、フライブルグ)から入手可能なテンプレートなど)を使用すると、4分割(4-in-1)の切断ブロックの回転整合およびA/P位置をナビゲートし、準備することができる。ナビゲートドリルテンプレートは、従来のA/Pサイズ調整器(sizer)と置き換えることができる。従来のA/Pサイズ調整器とは異なり、ナビゲートドリルテンプレートは簡便に使用できるだけでなく、調査計器での調整を行わなくても、A/P移動に関する高い融通性を与えてくれる。本開示の一実施形態では、自動サイズ調整機能が利用可能な場合に、ナビゲートドリルテンプレートをシステムのユーザー設定部分で選択することもできる。図28に、もっとも明確に示されているように、ナビゲートドリルテンプレートにより、回転整合とA/P位置の、2つの自由度でのナビゲートをソフトウェアが促進する。一実施形態では、平均回転軸、大腿骨A/P軸および経上皮顆線(transepicondylar)に関して回転整合が計算され、AP位置の基準は、計算されたインプラントと仮想ペグホールであり、これらは表示スクリーンに表示される。表示スクリーン上には、仮想ペグホールのテンプレートの偏差も表示される。さらに、前側皮質の正面図が表示され、遠位大腿骨切断部とA/Pインプラント位置の所定の屈曲/伸展に対する、カバーされていない骨組織切除部の位置とサイズとのプレビューを表示する。一実施形態では、内側外側位置はナビゲート不能である。
【0040】
次に図29に移ると、一実施形態では、最適インプラントのサイズおよび位置プランが計算された後で、何らかの大腿骨ランドマークが再デジタル化されると、ソフトウェアはインプラント計算を繰り返し、ユーザーに更されたインプラントパラメーターを確認(検証)するよう促す。そのようにするために、図16に示されているインプラント位置検証ダイアログが開かれ、変更されたパラメーターが黄色で表示される。
【0041】
前述の詳細な説明は、ナビゲーションシステムを使用した人工膝関節置換術に関するが、本明細書に開示されている方法とシステムは、少なくともプロテーゼ用具を複数の異なるサイズおよび/または形状から選択し、ユーザー毎に特定される制約条件を満たすように配置させる、他の外科手術でも使用するよう容易に適合させることができる。この方法およびシステムは、他の外科手術での使用に容易に適合させることができるうえ、本発明の開示の対象範囲は本明細書に詳細に記載されている特定の外科手術に限定されないことが理解されよう。さらに、切除する骨組織の調査データなど、解剖学的データを収集するための具体的な方法は、手術中の直接的なデジタル化には限定されない。むしろ、解剖学的データは、X線走査、MRI走査、CT走査、超音波走査および他の術前方法、間接デジタル化やナビゲートされたプローブおよび針等の術中方法、光・機械または同様のローカライザーの使用、レーザーやモアレなどのレンジファインダーの使用、およびその他のデータ収集技術など、必要な解剖形状データを収集することのできる方法で解剖データを取得してもよい。さらに、インプラントを取り付けるための最終的インプラントのサイズおよび位置プランの実施は、本明細書に開示されているナビゲーション技術の使用に限定されない。むしろ、インプラントは、最終プランを満足のいく形で実行することのできる任意の方法に従って、最終インプラントのサイズおよび位置プランに基づいて取り付けられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示の技術の一実施形態では、外科医はコンピューターを利用して、人工膝関節全置換術において、大腿骨インプラントの前側インプラント輪郭と大腿骨の前側皮質との間の切痕形成を回避し、向上した整合性を達成するなど、複数の設計パラメーターを最適化するために、外科手術中に収集された患者情報に基づいて最適プロテーゼ設計をすばやく計算することができる。本発明の開示の技術は、たとえば、外科医の知識と経験とに基づいて軟組織の問題を考慮するなど、必要と考えられる調整を行うため、自動計算された最適インプラント設計を外科医が手動で変更できるようにするために使用されてもよい。本発明の開示の技術は場合によっては、インプラントの不必要に過大なサイズ指定、カバーされないままの前側骨切除部を不必要に大きいままとすること、又はインプラントの前側表面と前側皮質の切断されていない領域の間への不必要に大きな前側突出および間隙の形成など、外科医が単に視覚的観察に従ってインプラント設計を選択する等の先行の方法に関連付けられる一般的な問題を回避するのに役立つことができる。
【0043】
前述の記述に照らし、本開示に対する数々の変更は、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、本記述は、実例を挙げることだけを目的としているとみなされるべきであり、当業者が本発明の開示を作成し使用しし、さらにこれを実施するための最良の形態を教示できるようにすることを目的として提示されている。添付の請求項の対象範囲内の変更すべてに対して独占的権利が所有されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】人工膝関節全置換術に関与する、膝骨とプロテーゼとの分解部分図である。
【図2】外科手術ナビゲーションシステムの一実施形態のコンポーネントを用いて、人工膝関節置換術に備えた患者の膝の概略図である。
【図3】本開示の一態様の流れ図である。
【図4】本開示の別の態様の流れ図である。
【図4A】本開示のさらなる態様の流れ図である。
【図4B】本開示のさらに別の態様の流れ図である。
【図4C】本開示のさらにまた別の態様の流れ図である。
【図5A】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5B】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5C】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5D】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5E】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図6A】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図6B】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図6C】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図7】本開示のシステムのメインナビゲーションメニューの一態様を表すスクリーンショットである。
【図8】前記システムの骨組織マッピング機能の一態様を表すスクリーンショットである。
【図9】前記システムの別の骨組織マッピング機能の一態様を表すスクリーンショットである。
【図10】前記システムのインプラント位置決め機能の態様を表すスクリーンショットである。
【図11】前記システムの前記インプラント位置決めおよびサイズ指定機能の別の態様を表すスクリーンショットである。
【図12】前記システムの手動変更機能を表すスクリーンショットである。
【図13】前記システムの別の手動変更機能を表すスクリーンショットである。
【図14】前記システムの追加的な機能のスクリーンショットを示す。
【図15】前記システムのインプラント位置決め機能のスクリーンショットを示す。
【図16A】図15のスクリーンショットの詳細部分を示す。
【図16B】図15のスクリーンショットの詳細部分を示す。
【図17】屈曲間隙と伸展間隙を表している膝関節の線図である。
【図18】前記システムの大腿骨登録機能のスクリーンショットを示す。
【図19】インプラントの内側/外側への突出を示している大腿骨の遠位端の別の線図である。
【図20】前記システムの近位脛骨リセット機能のスクリーンショットを示す。
【図21】前記インプラント位置決め機能のスクリーンショット、及びスプレッダーが挿入された、切除された膝関節の線図である。
【図22】前記システムの別の態様の線図表現である。
【図23】損傷を受けた膝関節のX線写真の線図表現である。
【図24】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【図25】生体力学情報が重ね合わされて含までる、大腿骨の遠位端の線図表現である。
【図26】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【図27】全膝関節全置換術中に使用するための外科用具と膝関節の線図表現である。
【図28】前記システムのさらなる態様のスクリーンショットを示す。
【図29】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2007年8月7日出願の米国特許出願第60/963,738号明細書の恩典および2008年8月8日出願の米国特許出願第60/963,916号明細書の恩典を請求するものであり、各々が全体として参照により本明細書に援用されている。
<連邦政府委託研究開発に関する引例>
該当せず。
<シーケンシャルリスティング>
該当せず。
【0002】
本発明の開示は、概して、整形外科用プロテーゼインプラントのサイズと位置との選択など、外科手術をプランニング(計画)するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科手術および/または関節形成術用のコンピューター支援外科手術システムは、各種手術のプランニングと施術との両方で有用である。ひとつの公知のシステム及び方法が、参照により本明細書に全体として援用されている、2005年11月30日出願の米国特許出願第11/290,039号明細書に記述されている。また別の公知のシステム及び方法が、2004年10月8日に出願され、米国特許出願第2006/0095047号公報として公開されている、米国特許出願第10/961,455号明細書に記述されており、さらに参照により本明細書に全体として援用されている。
【0004】
図1に図式的に示されているように、人工膝関節全置換術は、外側顆12と内側顆14とを含む大腿骨10の遠位端および、対向する脛骨16の近位端の罹患部位を除去し、除去された骨組織の部分を、大腿骨に取り付けるための大腿骨インプラント18及び脛骨に取り付けるための基板22と関節面層24とを含む脛骨インプラント20とを有するプロテーゼと置換することを含む。これを実施するため、外科医は、上側に大腿骨インプラントを受け入れるために、大腿骨インプラント18の内面層26に対して相補的な形状(破線で示されている)を有するように、大腿骨の遠位端の顆部を切除する。外科医はさらに、その上に基板22を相補的に受容できるような形状(仮想破線で示されている)に、対向する脛骨16の近位端を切除する。大腿骨インプラント18と基板22とは、骨組織10と16のそれぞれに、接着剤もしくは留め具などで固定され、関節面層24は、大腿骨インプラントに対向する基板に固定される。膝蓋骨(明確さを期すため図示せず)および、腱や筋肉(明確さを期すため図示せず)などの軟組織を膝の周囲の元の位置に正しく戻した後には、大腿骨インプラント18が、関節面層24で、膝の自然な動きを模倣した方法で関節の役割を果たすことができる。
【0005】
大腿骨10、大腿顆部12及び14、脛骨16ならびに、脛骨プラトー、腓骨および膝蓋骨など、患者の関連する部分のマップを作成するためのデータを人工膝関節全置換術の施術中に取得するのに、ナビゲーションシステムを使用でき、これは後でビデオやコンピューターモニターなどのディスプレイ上に表示されることができる。ひとつの想定可能なマッピングシステムでは、たとえば、2005年9月15日公開の、米国特許出願第2005/0199250号公報に開示されているトラッキングデバイスと共に、米国特許出願第2001/0034530号公報に開示されているナビゲーションシステムを使用でき、前記両公報はそれぞれ参照により全体が本明細書に援用されている。その他の想定可能なシステムでは、マッピングデータは、他の公知の術前技術および/または術間技術によって取得できる。マップを使用すると、外科医は、置換用プロテーゼの特定のサイズおよび/または形状を選択してから、切除個所を仮想的にレイアウトし、残存させる骨組織上におけるプロテーゼの所望の最終的密着性と配置とを実現できるよう、手順の以降のステップを仮想的にプランニングすることが可能となる。このステップは、プロテーゼの既知の形状および/またはサイズを格納したデータベースを使用して、これらの形状および/またはサイズを取得したマップデータと比較され、互いに並列にもしくは重ね合わされてディスプレイモニター上に表示される。マップとプロテーゼの形状因子データとを使用して手順のプランニングを完了すると、ナビゲーションシステムは、プランに従って手術を進めていくことができるように、様々な切除を行う等の手術の実際のステップを追跡することに使用できる。他の方法では、手術プランを実施するステップは、他の公知のレイアウト技術を採用して仮想ナビゲーションシステムの助けを借りずに実行することができる。
【0006】
特定のプロテーゼを選択するステップ、及び現存する骨組織上でのプロテーゼの好ましいレイアウトを選択するステップは、現在に至るまで、外科医など、手順をプランニングする人間の技量と経験に完全にもしくはほとんど依存してきた。たとえば、プロテーゼを視覚的に選択および調節する方法では、関連する骨組織のマップを取得した後で、外科医が骨組織のマップとの視覚的比較に関する自身の経験に基づいて、プロテーゼの特定のサイズを手作業で選択する。外科医は、どのプロテーゼが使用されているかをコンピューターに提示した後、所望の位置を選択するまで、試行錯誤を繰り返しながら、該当する骨組織の形状(ディスプレイスクリーン上に仮想的に重ね合わされて表示される)と比較することにより、プロテーゼの位置を視覚的に調節する。その後で、外科医は、選択した位置をマップに関連付けてコンピューターに記録させ、その情報を使用して手順の以降のステップを誘導させる。他の技術では、早期段階で故障が生じる可能性がより高い、応力が局所に集中するポイントを生じさせるような、骨組織の切除面の段差、又はくぼみ(切痕)が形成されるのを極力抑える、あるいはこれらを完全に形成されないようにするなどの、一つのパラメーターだけに基づいてプロテーゼのサイズと位置とを選択することしかできない。
【0007】
プロテーゼを視覚的に選択および調節するための方法では、特定の課題が生じる可能性がある。プロテーゼの適正なサイズを選択する、というひとつの課題は、外科医が骨組織のマップ情報だけに基づいて適正なサイズを選択するための能力で制約される。骨組織に対して最適に配置するためのプロテーゼの位置決めというもうひとつの課題は、外科医が選択したプロテーゼのサイズと、外科医が最適な配置を視覚化する能力との両方に制約される。プロテーゼの最適ではない位置とサイズとを選択した場合には、くぼみや、プロテーゼの縁端部と骨組織の表面とが完全には整合せず、プロテーゼの縁端部を越えた先まで骨組織の切除部分が好ましくないほど大きくずれてしまうような領域、あるいはプロテーゼの縁端部と骨組織の切除していない部分との間の大きな突出部もしくは間隙が生じてしまうという損害がある。患者に切開術を施術している時間を最小限度に抑えるために外科手術における時間が最重要であるにもかかわらず、多くの場合、プランニングは、患者に対して切開術を施術した後でしか開始および/または完了することができないという点が、外科手術を最も効率的にプランニングする外科医の能力の大きな制約となっている。
【0008】
したがって、骨組織におけるくぼみ(切痕)の形成や、その他の不十分さおよび/またはあまり望ましくない代替的設計を防止するかもしくは最小限に抑えられるようにするためには、プロテーゼの最適なサイズと位置とのプランニングを確保するのを支援するために、さらに正確で時間効率の優れた手順のプランニングを促進するシステムと方法とを有することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態では、大腿骨の切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するためのシステムは、複数の大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するための手段と、大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するための手段とを含む。このシステムはさらに、大腿骨の切除に先行して、検討すべき各サイズのインプラントごとに、定義済の漸増位置セットのうち、想定される各漸増位置の仮想密着性評価を自動的に実行するための手段と、仮想密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択するための手段とが含む。
【0010】
本発明の別の実施形態では、患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするためのシステムは、複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、骨組織の表面形状情報を取得するための回路とを含む。このシステムはさらに、表面形状情報に基づいた骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、形状因子情報と骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子とに基づいた骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するための回路とを含む。さらに、このシステムは、密着性計算のすべてから最適に密着するインプラントのサイズと位置とを選択するための回路が含む。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態では、骨組織のプロテーゼインプラントの最適なサイズと位置とを仮想的に自動計算するためのコンピューター読み取り可能媒体は、複数の各種インプラントサイズに関する定義済みの形状因子情報を取得するための第1のルーチンと、骨組織の表面形状情報を取得するための第2のルーチンとを含む。第3のルーチンは、骨組織の仮想表現に関する、インプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義する。第4のルーチンは、骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性基準に基づいて、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価する。第5のルーチンは、各密着性計算の複数の密着性基準のそれぞれに対する重み付け比較に基づいて、各密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするための方法は、複数の各種インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、骨組織の表面形状情報を取得するステップと、骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するステップと、骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子に基づいた、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するステップと、密着性計算のすべてから最適密着インプラントと位置とを選択するステップを含む。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、大腿骨切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するための方法は、大腿骨インプラントに関する既定形状因子情報を取得するステップと、大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するステップと、大腿骨切除に先行して、検討すべき各サイズのインプラントごとに、既定漸増位置セットのうち、想定可能な漸増位置すべてにおいて各々、仮想密着性評価を実行するステップとが含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図2に図式的に示されているように、患者の上脚部すなわち大腿部32が、患者の下脚部すなわち脛骨34に対して約90度の角度をなすように、脚部30を曲げた状態で、患者の脚部30を人工膝関節置換術に準備させることができる。このような脚部30の配置により、患者の膝36が手術に適した位置に置かれる。コンピューター支援外科手術ナビゲーションシステム42に連結されたカメラ40と通信可能な2個のトラッキングデバイス38が、大腿部(骨)32と脛骨34とのそれぞれに追随して動くように、大腿骨32と脛骨34とに連結されている。このような連結は、それぞれの骨組織への直接取り付け、あるいはその他の可能な連結方法であってよい。一実施形態では、コンピューター支援外科手術ナビゲーションシステム42は、本技術分野では周知のシステムであるため、本明細書ではこれ以上言及しない。好適な外科手術ナビゲーションシステム42が、米国特許出願第2001/0034530号公報に記載されている。代表的ナビゲーションシステム42には、コンピューターやビデオモニターなどのディスプレイ装置44も含まれている。さらに、ほとんどのナビゲーションシステム42は、ナビゲーションシステム42と協働するよう事前に較正ブレートされた、ポインター46などの専用ツールも使用する。ポインター46の較正により、ナビゲーションシステム42が、ポインター46上に配置されたLEDなどの一連のロケーターデバイス50を検出することによって、ポインターチップ48の正確な位置を判断することができる。一実施形態では、これらのロケーターデバイス50は、トラッキングデバイス38で使用されるデバイスと同じ種類のデバイスである。
【0015】
図3は、プロテーゼインプラント外科手術を施術するための方法70の、ひとつの実施形態を図解している。一実施形態では、方法70は、本明細書で以下に詳細に開示するように、外科手術の段階的プランニング及び実施をガイドする、コンピューター支援ナビゲーションシステム42を用いて実施するよう構成されている。ただし、方法70は、特定の実施システムで使用するよう限定されているわけではなく、この方法のステップを実行することのできる他のシステムでの使用および/または実施されるよう構成されてもよい。例示のみを目的として、本開示の方法とシステムとを、人工膝関節全置換術もしくは人工膝関節置換術のプランニングおよび実施に関連させて説明する。ただし、この方法とシステムとは、本詳細な実施例の精神から逸脱せずに、軽微な変更を加えた上で他の外科手術に応用されてもよいということが理解される。
【0016】
一実施形態では、方法70は、一実施形態ではコンピューター読取り可能形式の患者ファイルを作成し、患者データ入力ルーチン72により、患者名、日付、外科手術などの選択済パラメーターにデータを入力するステップで開始する。次に、システムセットアップルーチン74で、ポインター46などのポインターの位置を検証するステップを含むことができる、ナビゲーションシステム42などのナビゲーションシステムをセットアップする。検証後に、患者登録ルーチン76により、ポインターを使用することなどにより、患者の配置をナビゲーションシステムで登録する。患者登録ルーチン76は、一実施形態では、検証ポイント定義サブルーチンと、大腿骨登録サブルーチン78と、脛骨登録サブルーチン80と、左右どちらの脚部を手術するのかを確認すること、及び登録確認サブルーチン82とを含む。大腿骨登録サブルーチン78では、少なくとも前側(anterior)皮質ならびに、外側顆と内側顆と最近位(proximal)、遠位(distal)、内側(medial)および外側(lateral)の各ポイントを含む大腿骨の関連する表面の詳細な調査が、以後さらに詳細に述べるように、適切な調査計器を用いて実施される。同様に、脛骨登録サブルーチン80で、脛骨の関連する表面の調査が実施される。対象となる関節の運動力学など、他の関連する患者の生体力学特性に関するデータも、患者登録ルーチン76で、直接的観察および/または補間法によって収集されてもよい。次に、調査から得られたデータをコンピューターで処理して、調査した表面の仮想画像もしくはマップを生成し、ディスプレイ画面上に表示し、外科手術70の以降のステップを通じて使用できるようにする。ナビゲーションシステムで患者を登録した後には、外科医は、初期整合分析ルーチン84で、膝の手術前の整合など、対象領域の関連する生体力学特性を分析することができる。一実施形態では、初期整合分析ルーチンで、外科医は、表(テーブル)の記録、膝の内反/外反角度の分析および/または曲線の記録を行うことができる。患者登録ルーチン76と初期整合分析ルーチン84とから収集した情報を、インプラントのサイズ指定および位置決めルーチン86で使用して、以後詳細に述べるように、新しい方法で最終的インプラントのサイズおよび位置プランを取得する。最終的インプラントのサイズおよび位置プランは次いで、外科手術ナビゲーション技術及びコンピューター支援データ処理技術に従って、骨組織切除ルーチン88で骨組織を切除するステップ、試験的整合分析ルーチン90で試験的プロテーゼを取り付け、試験的整合を分析するステップ、最終的整合分析ルーチン92で最終的プロテーゼを取り付け、最終的整合を分析するステップ、周知の外科手術ナビゲーション技術とコンピューター支援データ処理技術に従った、レポート表示ルーチン94で手技に関するレポートを作成するステップなど、外科手術における以降のステップの指示及び/又は指針を提供するのに使用できる。
【0017】
次に、図4〜6Cを参照すると、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を使用して、優先順付パラメーターセットに基づいて、一連の想定されるサイズと一連の想定される位置との各想定される組合せごとに、複数の密着性パラメーターを評価することによって、指定された大腿骨インプラントの種類の最適なサイズと位置とを含む、最適インプラントのサイズおよび位置プランが自動的に計算される、インプラントのサイズ指定および位置決めルーチン86の一実施形態が開示されている。一実施形態では、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100は、図4Aに詳細に概略的に示されているような方法で、最適なサイズの大腿骨インプラントと、大腿骨の遠位端に対する大腿骨インプラントの取り付け位置とを自動的に選択する。このとき、硬質骨組織形状パラメーターや大腿骨インプラント形状パラメーターだけが考慮され、外科医が患者に実際にインプラントを取り付けるのに使用するプロテーゼに関する最終的サイズおよび位置プランにも影響を与えるような、軟組織や、患者の体型および性別などの他の解剖学的条件は考慮されない。したがって、自動計算された最適インプラントのサイズおよび位置プランは、外科医によって必要と考えられれば、後で、インプラント小型化サブルーチン102(図4B)及びインプラント位置変更サブルーチン104(図4C)の一方もしくは両方により、外科医からの適切な入力によりに手作業で調整して、一以上の調整後のインプラントのサイズおよび位置プランを作成してもよい。一実施形態では、調整後のインプラントのサイズおよび位置プランは、外科医によって骨組織に対する密着性が評価される。外科医は次いで、自身の知識と経験に基づいて、ステップ108で検討した先行のプランすべてから、外科手術の以後のステップを実施するための最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択する。
【0018】
図4A及び図5A〜図5Eに詳細に示されている、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100の一実施形態では、予め選択された計算セットが、最小から最大に至るまでなど、各サイズの大腿骨プロテーゼの密着性を、4種類の優先順付き密着性基準について2つの自由度を有する各位置における骨組織の形状に対して、自動的に順次評価していく。大腿骨の遠位端に大腿骨インプラントを密着させるための一実施形態では、4種類の優先順付き密着性基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大のずれと、切断された骨組織の上に位置するインプラントの前側部分の近位端のパーセンテージと、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置するインプラントの前側部分の近位端輪郭のパーセンテージと、インプラントと前側皮質の切断されていない面との間の最大間隙とが含まれる。たとえば、第一の基準は、ずれが12mmを越えてはならないということであってもよい。第二の基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭の最低60%が、切断された骨組織上に位置するということであってもよい。第三の基準は、インプラントの前側部分の近位端輪郭の最低1%が、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置するということであってもよい。第四の基準は、インプラントの近位輪郭と切断されていない前側皮質との間の最大間隙が、1.5mmより狭いことが好ましいということであってもよい。最大のずれが12mmより大きいか、あるいはインプラントの前側部分の近位端輪郭の全体が、切除された前側皮質骨の上に置かれている場合に、切痕(notch)が存在すると計算される。一実施形態では、ナビゲーションシステム42を実行するコンピューターによって、予め既選択された計算セットが電子的に実行され、計算は、患者登録ルーチン76で取得された調査データと、1以上のプロテーゼの種類から予め選択されたプロテーゼ群および各プロテーゼの種類ごとの複数のサイズのそれぞれに関する形状因子情報を含む、電子的記憶システム等からコンピューターによってアクセス可能な予めロードされたデータベースに基づいて行われる。他の実施形態では、予め選択された計算セットは、異なる電子コンピューター、他の計算機、および人手の少なくともいずれかによって実行され、調査データは、対象となる骨組織に関する必要な解剖学的情報を提供できる他の方法によって取得される。一実施形態では、外科医が、他の因子に基づいて1種類のプロテーゼを選択し、次いでコンピューターが、すぐ後に述べるように、選択された種類に関する各サイズと位置ごとに密着性を評価する。
【0019】
自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を開始する前に、外科医は、後側(posterior)顆および遠位顆の選択した内反/外反角度、回転角度および/または表面位置を整合させるための設計パラメーターに基づいて目標再構築位置をはじめに定義してもよい。図5Aに図式的に示されているように、再構築位置は、遠位顆表面に関する設計ベースライン110と、後側顆表面に関する設計ベースライン112とを定義するが、これらの表面は、最終的インプラントのサイズおよび位置プランで、外科医が、最初、不変にしておくことを望む表面である。再構築された遠位顆および後側顆の表面が設定されている状態で、一実施形態の第一のステップ114では、最小サイズなどの第一のサイズのインプラント118aが選択され、インプラント形状因子データベース116から、それに関する形状因子情報が検索される。ステップ118では、第一のサイズのインプラント118aが、遠位顆の位置と後側顆の位置とが再構築後の設計ベースライン110と112とに常時維持されている、大腿骨10のマップに配置される。ステップ118では、大腿骨10の力学的軸120を参照して、屈曲0°および前側/後側移動(A/P移動)0.0mmのデフォルト位置に、第一のサイズのインプラント118aが配置される。図5Aの124に示されているように、少なくとも切痕の形成を評価するため、上記4種類の基準を用いて、第一のサイズのインプラント118aの密着性がステップ122で評価される。A/P移動が現在の屈曲角度に対する最大A/P移動ではない場合には、一実施形態では、図5Bに図式的に示されるようにA/P移動が、ステップ126で0.5mm単位など、前方向に漸増され、ステップ122でこの新しい位置における密着性が評価される。ステップ122と126のこのサイクルは、所与の屈曲角度で最大A/P移動が評価されるまで繰り返され、その後で、屈曲角度が、図5Cに図式的に示されているようにステップ128で増分され、A/P移動がステップ130でデフォルト位置にリセットされ、新しい屈曲角度の密着性がステップ122で評価される。122、126、128および130の各ステップは、第一のサイズのインプラント118aに関する屈曲角度とA/P移動の想定される組み合わせのすべてに対応する各位置ごとに密着性が計算されるまで繰り返される。一実施形態では、評価の対象となる屈曲角度は、1°の増分で、0°から最大5°の範囲にわたり、評価の対象となるA/P移動は、0.5mmの増分で、0.0mmから、次のサイズのインプラントに重なり合うと計算される最初の増分まで、及び/または骨組織の前側皮質に切痕が形成されなくなるまでの範囲にわたる。インプラントは、再構築される遠位顆および後側顆が、それぞれのベースライン位置に確実に維持されるように、インプラントのひとつの半径を中心として屈曲されることが好ましい。第一のサイズのインプラント118aのすべての位置で密着性を評価した後に、図5Dに図式的に示されているように、次のサイズのインプラントの増分188bがステップ130で選択され、122、126、128および130の各ステップが同様の方法で繰り返される。122、126、128および132のステップは、選択されたインプラントの種類のインプラントのサイズのすべてが、A/P移動および屈曲の両方の自由度に関してそれぞれ想定される増分位置で完全に評価されるまで、データベース内の各連続した増分サイズのインプラントに対して、同様の方法で繰り返される。各サイズのインプラントの密着性が十分に評価されたなら、評価された密着性のすべてが、ステップ134で重み付けアルゴリズムと比較され、骨組織の切痕形成およびインプラントのサイズ過大を少なくとも最低限度に押さえるか、あるいは完全に排除する、自動的最適サイズおよび位置プランを、評価の対象となったサイズと位置とのすべてから特定する。これによりステップ136で、大腿骨インプラントの画像が、図5Eに図式的に示されているように、以後のステップで使用できるように、自動的最適インプラントのサイズおよび位置プランで大腿骨の画像の上に重ね合わされる。その他の実施形態では、好ましくは検討すべき各サイズのインプラントごとに想定され、漸増位置のすべてで密着性評価が行われる限り、各想定されるサイズの各想定される位置ごとに密着性評価を取得するために、想定されるサイズと位置とのすべてについて処理を進めていくステップを、本明細書に記載されている順序とは別の順序で行ってもよい。
【0020】
図4Bおよび図6A〜図6Cに図式的に示されているように、最適インプラントのサイズおよび位置プランを計算した後に、外科医は、インプラント小型化サブルーチン102で、軟組織もしくは他の解剖学的考慮が可能となるよう調整を行うなど、サイズと位置とを手作業で変更することをオプションとして選択してもよい。ステップ150では、外科医は、自動計算された最適なサイズの次に漸減しているより小さなサイズの大腿骨インプラントを選択する。ステップ152では、新しいインプラントのサイズで、外科医は、維持すべきベースラインA/P移動の三つの選択肢のオプションから選択を行う。すなわち、1)図6Aに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの前側位置を維持する、2)図6Bに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの前側−後側間の中心を維持する、および、3)図6Cに図式的に示されているように、小型化の際にインプラントの後側位置を維持すること、である。外科医はさらに、前の屈曲角度を維持するかまたは残りの角度の選択肢のひとつを選択するかのいずれかを選択することによって、0°と5°との間などの、ベースライン屈曲角度を予め設定した範囲内に維持するよう選択する。次に、新しいインプラントサイズの密着性が、前述の方法と同じ方法で評価され、結果として変更されたサイズおよび位置プランが作成されて得られる。外科医は、軟組織を考慮した最適なサイズと位置とが見つかったと思うまで、自身の検査および知識と経験に基づいて、変更後インプラントのサイズおよび位置プランをステップ158で繰り返し調整することを選択してもよい。納得のいく変更後インプラントのサイズおよび位置プランが特定されたなら、その特定されたプランを、ステップ160で、以後使用できるように保存しておくことができる。
【0021】
図4Cに図式的に示されている、インプラントの位置変更サブルーチン104では、外科医は、インプラント小型化サブルーチン102に加えて、あるいはその代わりに、自身の知識と経験に基づいて軟組織および/または他の解剖学的考慮に関して必要な調節を行うために望ましい場合、内反/外反角度、近位/遠位移動距離、回転角度、A/P移動距離、屈曲角度、インプラントのサイズなどを含む、自動的に最適化されたインプラントのサイズおよび位置プランおよび/または変更後のインプラントのサイズおよび位置プランに設定されている、利用可能な自由度のすべてを変更することを、ステップ170でオプションとして選択してもよい。このような手作業の変更により、外科医は、自身の知識および経験に基づくなどして、明らかに不必要なサイズと位置の繰返しをその場で省略すること、及び/又はユーザー側からの拒否(user override)を実現できる。ステップ172では、ステップ170からの変更後インプラントのサイズおよび位置プランの密着性が評価され、外科医は、変更後インプラントのサイズおよび位置プランを視覚的に分析し、ステップ174でこのようなプランを受け入れるか否か、ステップ176でさらなる変更を試みるか否か、および/またはステップ178で前のプランを受け入れるか否かを決定する。一実施形態では、インプラント小型化サブルーチン102とインプラント位置変更サブルーチン104の両方について、手作業で選択された各々の位置で密着性が評価されて、最大ずれが12mmより大きいかまたはインプラント近位輪郭全体が前側皮質骨の切断面に位置する場合に、特定のインプラントのサイズおよび位置プランで、前側皮質に切痕が形成されるか否かを特定するので、外科医は、自身の経験および知識に基づいて手作業で選択された各々の位置を受け入れるかもしくは拒絶するかを選択できる。
【0022】
サブルーチン100、102および104のいずれかひとつの終了時に、外科医は、考慮の対象とするプランのいずれかから、外科手術の以降のステップを誘導するのに使用すべき最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択した後に、骨組織切除サブルーチン88に進むことを選択してもよい。上記ステップの実行後には、外科医は、元の自動計算された最適インプラントのサイズおよび位置プラン、もしくは変更後のインプラントのサイズおよび位置プランのいずれかから、最終的インプラントのサイズおよび位置プランを選択する。当然のことながら、外科医は、単に手作業の調節を省略することを選択し、自動計算された最適サイズおよび位置に依拠することを選んでもよい。
【0023】
図7〜図13は、図1に示されている人工膝関節置換術を実行するため、図2に示されているハードウェアと関連して、図3〜図6Cの上述の方法を実施するコンピューター化システムの一実施形態を示している。上記の方法を実施するためのソフトウェアは、対象の骨組織の調査およびマップデータならびにインプラント形状因子情報データベース116にもアクセスする、ナビゲーションコンピューター112などのコンピューターを駆動する。図7に示されているメインメニュースクリーン200には、外科手術を通じて外科医をガイドするのに役立つ、メインメニュー202が表示されている。メインメニュー202には、本明細書に前述した以下のルーチン、すなわち、患者データ入力ルーチン72と、システムセットアップルーチン74と、患者登録ルーチン76と、初期整合分析ルーチン84と、インプラント位置決めルーチン86と、骨切除ルーチン88と、試験的整合分析ルーチン90と、最終整合分析ルーチン92と、レポート表示ルーチン94と、のそれぞれを開始させるためのボタン204が含まれている。チェックマーク206などの視覚的表示が、ルーチンが完了したか否かを示すために各ボタンと関連付けられており、これにより外科手術を通じて外科医をガイドするのに役立つ視覚的合図を提供する。
【0024】
図8および図9に示されているように、メインメニュースクリーン200から、患者データ登録ルーチン76と関連付けられたボタン204を選択すると、屈曲股関節登録サブルーチンと、股関節中心登録サブルーチンと、内側上顆登録サブルーチンと、外側上顆登録サブルーチンと、大腿骨中心登録サブルーチンと、大腿骨A/P登録サブルーチンと、内側遠位顆登録サブルーチンと、外側遠位顆登録サブルーチンと、内側後側顆登録サブルーチンと、外側後側顆登録サブルーチンと、前側皮質登録サブルーチンとなどの、各種患者登録ステップのそれぞれを実行するためのサブルーチンボタン210を表示する、各種患者登録スクリーン208a、208bのひとつが表示される。メインメニュースクリーン200上の場合と同様の方法で、視覚的標識(インジケーター)206が各サブルーチンボタン210と関連付けられており、各種登録サブルーチンを通じて外科医を視覚的にガイドするのに役立つよう、各サブルーチンが完了しているか否かを示す。患者登録スクリーン208aは、内側顆の大部分の後側表面が調査される、内側後側顆登録サブルーチンに対応している。患者登録スクリーン208bは、大腿骨の前側皮質の表面が調査される、前側皮質登録サブルーチンに対応している。切除する骨組織の全体的形状の視覚的表現212もスクリーンに表示される。視覚的表現212は、登録およびマップする特定の骨組織を表示するために、サブルーチンボタン210のそれぞれについて選択される。たとえば、スクリーン208aには大腿骨の後側顆が表示され、スクリーン208bには大腿骨の前側皮質が表示される。208aと208bの各スクリーンでは、どのような調査データポイントが取得されたか、またそのおおよその位置がどこかを示す、点などの視覚的標識(インジケーター)214が、骨組織の上に重ね合わされて表示される。一実施形態では、調査データポイントは、ポインター46などのデジタイザーメカニズムを使用して取得される。
【0025】
図9に示されている患者登録スクリーン208bでの前側皮質登録サブルーチンでは、本明細書にすでに述べた、インプラント位置決めルーチン86で実行される計算に使用する前側皮質の輪郭の正確なマップを取得するため、大腿骨の前側皮質の詳細な調査が行われることが特に重要な点である。輪郭マップの生成においては、調査およびマッピング分野で周知のように、対象とする表面の補間後輪郭マップを生成するために、通常、観察されたデータポイント間で一定量の補間が必要とされる。補間後輪郭マップの精度は概して、取得されたデータポイントの位置と数に直接関連付けられる。たとえば、隣接した三点のデータポイント間で、長辺でなくできるだけ等辺となり、対象となる表面の全体的トポグラフィーを適切に表すように設計された三角形が形成できるように、比較的規則正しいグリッドと目標密度でデータポイントが分布していることが概して望ましい。外科医が、前側皮質登録サブルーチンで所望のデータポイントセットを収集することを支援するために、デジタル化グリッド216が、大腿骨の前側皮質の標準化された仮想モデル212上に重ね合わされ、指定された設計精度パラメーターを十分満たせるだけの前側皮質の輪郭マップを提供する、数と位置のデータポイントを取得するよう外科医を視覚的にガイドするのに役立つ。点などの視覚的標識214が、収集された各データポイントごとに、デジタル化グリッド216と前側皮質骨の標準化された仮想モデル212との上に、重ね合わされて表示される。設計精度パラメーターを満たすために最少の数および位置のデータポイントを収集した場合には、グリッドの色の変化などの、別の視覚的標識218がスクリーン上に現れる。さらに別の色で表示されるインプラント近位輪郭220などの、さらに別の視覚的標識が、プロテーゼインプラントの内側輪郭の全体的領域内にとなるよう計画されている、特に対象となる全体的もしくは隣接領域を示すために、スクリーン上に表示される。インプラント近位輪郭220は、インプラント形状因子情報を格納するデータベースから導出され、顆部の登録された位置および力学的大腿骨軸ならびに回転大腿骨軸から決定される。前側皮質登録サブルーチンで収集されたデータポイントから適切に計算されるおおよそのインプラントのサイズを示す、チェックマーク222および数字224などのさらに別の視覚的標識が、スクリーンに表示される。さらに、エラーチェックサブルーチンが、骨組織の表面で収集されなかった空中ポイントなどの、前側皮質登録サブルーチンで取得した潜在的な外れデータポイントを特定するため、数学的補間を実行する。エラーチェックサブルーチンは、前側皮質登録サブルーチンから収集されたデータポイントのすべてを数学的に補間し、たとえば周知のスプライン補間アルゴリズムなどを使用して平滑化された表面を計算する。平滑化された表面から予め指定された距離を越えて外れたデータポイントが、潜在的エラーデータポイントとして外科医に知らされる。外科医はその後、調査の対象となった表面についての自身の理解に基づき、これらのポイントを削除するか、あるいは輪郭マップを作成するのに使用するために保持するかの、いずれかを選ぶことができる。
【0026】
図10に示されているように、ユーザー選択スクリーン226には、ボタン228aもしくは228bのどちらかを選択して、インプラントの位置を手作業で外科医がプランニングできるようにするか、あるいは対象となる骨組織の必要な形状と生体力学特性を検索した後で、自動サイズ/位置最適化サブルーチン100を自動的に実行することによって、インプラントのサイズおよび位置をコンピューターに自動的に計算させるか、を示すよう外科医に促すプロンプトが表示される。ユーザー選択スクリーン226では、デフォルト屈曲角度および切除レベルなど、計算のための他のパラメーターを外科医が設定できる。
【0027】
インプラント位置決めルーチン86は、メインメニュー202から適切なボタン206を選択することによって開始することができ、これは自動計算最適インプラントのサイズおよび位置プランを自動的に計算し、図11に示されているように、インプラント位置決めスクリーン230に骨組織とインプラントとの図形表現および数値形式でその結果を表示する。図11は、計算から得られた方法で骨組織に配置された選択したインプラントを表示している。これにより、外科医は、視覚的に、さらには表示された各種数値データから、大腿骨インプラントの自動計算されたサイズ、位置および整合が許容可能であるか否かを検証することができる。ディスプレイにはさらに、骨組織とインプラントとの図形表現上に、設計後に大腿骨インプラントによって被覆されないままとなっている前側皮質切除部の領域、インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間のあらゆる間隙、大腿骨インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間の最大間隙の位置とを示す、インプラント位置決めスクリーン上に表示される標識と同じ視覚的標識が表示される。インプラント位置決めスクリーン230には、登録ルーチンから判定される脚の実際の内反/外反および各屈曲整合、ならびに、サイズ、屈曲、A/P移動、内反/外反角度、回転角度、遠位切除レベル、後側切除レベル等を含む、大腿骨インプラントに関する計算された設計パラメーターが表示される。インプラント位置決めスクリーンには、自動サイズおよび位置計算のため事前に選択されたインプラントシステムおよびその種類も、その設計状態で表示される。インプラント位置決めスクリーン230には小型化ボタン232が含まれ、これが選択されると、インプラント小型化サブルーチン102を開始し、図12に示されるようなインプラント小型化スクリーン234に表示を変更する。インプラント位置決めスクリーンにはさらにインプラントの位置変更ボタン236も含まれ、これを選択すると、インプラント位置変更サブルーチン104を開始し、図13に示されるようなインプラント位置変更スクリーン237に表示を変更する。デフォルトボタン239は、スクリーン上に表示されているサイズおよび位置プランを自動最適化サイズおよび位置プランに戻すときに、いつでも選択することができる。
【0028】
次に図12に移ると、インプラント小型化スクリーン234には、本明細書ですでに述べた、第一の手動調整モードを実行するために外科医が選択できる選択肢が表示されている。具体的には、インプラント小型化サブルーチン102でインプラント位置決めスクリーンに表示される設計の前側位置、後側位置もしくは平均位置のどれを維持するかを外科医が選択できる、三つの別々の選択ボックス238a、238b、238cが表示される。さらに4個の別の選択ボックス240a、240b、240cおよび240dが表示されており、これらにより外科医はインプラント小型化サブルーチン102で、インプラント位置決めスクリーンに現在表示されている屈曲角度を維持するか、あるいは別の三個の屈曲角度のひとつを選択するかを選択できる。屈曲角度の維持に関連付けられた選択ボックス240aには、現在の角度設計が表示される。所望の選択が示されると、外科医は小型化ボタン242を選択し、コンピューターは、選択された基準A/P移動、基準屈曲角度と、現在の設計インプラントパラメーターから漸減するインプラントサイズに関する形状因子データとに基づいて、サイズおよび位置計算を自動的に更新し、変更後のインプラントサイズおよび位置プランを提供する。インプラント位置決めスクリーン230上の表示は、小型化ボタン242を選択すると、変更後のインプラントのサイズおよび位置プランと一致するように自動的に更新され、本明細書にすでに述べたように、切痕が形成されるとして密着性評価が計算された場合には、視覚的標識が表示される。取消しボタン244もまた表示され、このボタンを選択すると、外科医は、すでに表示されているインプラントのサイズおよび位置プランに対する変更内容を保存せずに、インプラント位置決めスクリーン230に戻ることができる。
【0029】
次に図13に移ると、インプラント変更スクリーン237は、現在のインプラントのサイズおよび位置決めプランのパラメーターに基づき、適切な骨組織上に重ね合わされた大腿骨インプラント18と脛骨インプラント20とを図形表示する。インプラント変更スクリーン237には、本明細書にすでに述べたインプラントの位置変更サブルーチン104による調整を実行するために外科医が選択できる選択肢も表示される。具体的には、骨組織が実際の位置及び整合状態で表示され、インプラントが、現在の設計位置で骨組織に重ね合わせて表示される。ディスプレイには、大腿骨インプラントによって覆われないままとなっている設計後の前側皮質切除部の領域と、インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間のあらゆる間隙、およびインプラント位置決めスクリーン上に表示されている標識と同じ標識で、大腿骨インプラントと前側皮質の切断されていない領域との間の最大間隙の位置が、インプラント位置スクリーン230と同様の視覚的標識で表示される。増/減矢印コントロールボタン対246が表示され、これらにより、内反/外反角度、近位/遠位移動距離、回転角度、前側/後側移動距離、屈曲角度、大腿骨インプラントサイズとなど、大腿骨インプラントの6つの自由度のそれぞれを、外科医が選択することができる。増/減矢印コントロールボタン対246を使用すると、外科医は、たとえば、自動計算最適インプラントのサイズおよび位置プランおよび/またはインプラント小型化スクリーン234から取得した変更後インプラントのサイズおよび位置プランを、最適なインプラントサイズおよび位置を計算する自動モードでは考慮されない、軟組織の考慮を可能にするよう、これら設計を適合させる目的で変更するなど、希望どおりに各設計パラメーターを手作業で変更することができる。インプラント小型化スクリーンと同様の方法で、インプラント位置決めスクリーン230は、OKボタン248が選択されると、インプラントの位置変更スクリーンで選択された手作業で変更したパラメーターから、変更後のインプラント設計位置を反映するようすぐに更新される。デフォルトボタン250と取消しボタン252も表示され、これらはそれぞれ、外科医がその設計を自動計算最適インプラント設計に戻す、又は設計に対する変更内容を保存せずにインプラント位置決めスクリーンに戻ることを可能にする。
【0030】
外科医が、本明細書で直前に述べた各種設計から最終設計を選択した後は、残りのルーチンが、その最終設計を用いて、本技術分野では周知の方法で患者に実際にプロテーゼを取り付けるための以降のステップへと外科医をガイドする。
【0031】
図14に移ると、本開示のコンピューター化システムのディスプレイスクリーン270上に映し出されたユーザー選択スクリーンのスクリーンショットが開示されている。自動インプラントサイズ指定および位置決めを選択すると、オプションとして(任意選択的に)あるいは加えてに、次の機能も選択することができる。すなわち、屈曲/伸展間隙表示機能、M/L(内/外)突出検出機能、脛骨切断後挿入プレビュー機能、内反膝の内側顆推定機能、A/P整合へのナビゲートドリルテンプレート使用機能、および屈曲/伸展間隙表示機能のうちの少なくとも一つである。各機能は、該当するボタンもしくはダイアログボックス272を使用して選択できる。
【0032】
図15に示されているように、屈曲/伸展間隙表示ボタンは、切断が行われる前に、内側と外側の両方に関する屈曲および伸展間隙のサイズに関するプレビューを提供する。これにより、外科医は、計画された切除が目的とするインプラントにとって十分なスペースを提供するか否かを評価することができる。間隙の適切なプレビューを取得するためには、バランサーやスプレッダー(図21参照)などの、任意の機械的用具で膝関節を確実に開く(distract)ようにすることが推奨される。屈曲間隙の適切なプレビューは、膝を屈曲状態で開いた場合に与えられる。伸展間隙は膝を伸展状態で開いた場合に表示される。
【0033】
次に、図16Aおよび図16Bに移ると、屈曲/伸展間隙表示機能と関連付けられたスクリーンショットの詳細図に、屈曲/伸展間隙および脛骨切除プレビューが表示されている。間隙サイズのプレビューは、計算された遠位(後側)大腿骨切除レベルと、脛骨切除レベルとに基づいている。一実施形態では、プレビューに関しては、脛骨が切除されておらず、切断が記録されていないかぎりは、脛骨切除レベルはデフォルトで最近位(高位)の区画からの測定で8mmに設定される。
【0034】
図17を参照すると、屈曲/伸展間隙は以下の方法で計算される。最初に、デジタル化された区画の質量中心が計算される。次にこれらの質量中心が脛骨切除面276に投影される。次に投影された質量中心が1.53の係数分だけ内側/外側に平行移動される。投影および平行移動された質量中心を通過する脛骨切断面に垂直で、なおかつ大腿骨切断面278と交差する線分が描画され、この線分に沿った大腿骨切断面と脛骨切断面との間の距離dが測定される。
【0035】
図18に移ると、一実施形態によれば、ML突出検出機能は、対象となる表面のデジタル化等によって、インプラントの突出の発生に関連する内側および後側突出領域のAP位置を取得するステップが含む。たとえば、デジタル化するときには、外科医が、内側/外側軟骨組織の境界に関連するAP位置から開始し、ポインターチップを近位方向に移動させて線分を描くことができる。「インプラント位置決め」ダイアログでは、内側/外側インプラント突出の平均幅もしくは被覆されていない骨組織の幅が数値として表示される。本開示の一態様では、潜在的な内側/外側突出もしくはカバーされない骨組織は、自動サイズ指定および位置決め計算では考慮されていない。図19を参照すると、一実施形態では、ML突出検出機能で、MLインプラント突出/カバーされない骨組織の部分280が、デジタル化された突出領域のAP位置で測定され、関連する突出領域のAP位置が外科医によって判断され、内側/外側突出もしくはカバーされない骨組織の平均幅だけが数値表示される。ここでは、ML突出の計算は、計画大腿骨インプラント282に基づく。別の実施形態(不図示)では、潜在的な内側/外側インプラント突出又はカバーされない骨組織が自動サイズ設定において考慮され、別の密着性基準が生成される。
【0036】
図20は、脛骨切断後挿入プレビュー機能のスクリーンショットを表している。脛骨切断後挿入プレビュー機能を選択すると、ソフトウェアのワークフロー(ダイアログボックス286)はユーザーに、インプラント位置決めダイアログボックス288が表示される前に、はじめに近位脛骨切断を実施するよう促す。近位脛骨切断が実施され記録されると、インプラント位置決めダイアログボックス288に、どの挿入サイズ(厚さ)が、実際の近位脛骨切断部と計画された大腿骨インプラントとの間で密着するかのプレビューが提供される。
【0037】
図21を参照すると、脛骨切断後挿入プレビュー機能で、挿入サイズの適切なプレビューを取得するには、任意の種類のバランサーもしくはスプレッダー290で膝関節を開くことが好ましい。脛骨インプラントサイズのプレビューは膝の伸展状態及び屈曲状態の両方に関して表示される。脛骨インプラントのプレビュー及び計算は、記録された近位脛骨切断部と計算/計画された遠位および後側切除レベルに基づいて行われる。屈曲と伸展の両方で、近位脛骨切断部と計画した大腿骨インプラントとの間に最小の利用可能インプラントが密着しない場合には、ソフトウェアにより視覚的標識がディスプレイ上に表示される。さらに図22を参照すると、ボックス292に表示されている計算された脛骨インプラントサイズは、平均内側/外側間隙サイズだけを反映している。内反/外反不整合が3°より大きい不安定な膝294に関しては、計算されたインプラントサイズは狭い間隙に密着しないであろう。計算されたインプラントを間隙に密着させるには、靭帯のバランスをとることが好ましい。安定した膝296では、内側と外側間の間隙は中心平均間隙に等しく、計算されたインプラントのサイズが密着する。不安定な膝294では、内側と外側間の間隙サイズは、中心平均間隙サイズとは異なり、計算された挿入サイズは密着しない。
【0038】
次に図23を参照すると、人工膝関節全置換術のひとつの目的は、元の関節線300を再構築することにある。内反膝の内側顆推定機能を使用すると、もっとも突出している内側顆に関して、関節線再構築(それぞれ切除レベルを判定)が全般的に実施される。ただし内反変形の場合には、内側顆が大きく損傷を受けている可能性があり、大きく損傷した内側顆を基準とすると、大腿骨を過剰に切除し、元の関節線が近位方向に移動してしまう可能性がある。内反膝の内側顆推定機能を有攻にすると、ソフトウェアが、図24の表示スクリーンに視覚的警告で表示されているように、内側顆が大きく損傷している場合にユーザーに警告を与える。ソフトウェアは、デジタル化された外側顆がデジタル化された内側顆に比べ突出している場合に、大きな損傷が存在すると仮定する。警告が表示されると、ソフトウェアはユーザーに対し、遠位大腿骨切除レベルに関する基準として元の内側顆を推定するか、もしくはインプラントを計算するための基準としてより突出した後側で継続するか、どちらかの機会を与える。図25を参照すると、内反膝の内側顆推定機能では、内側顆を推定するのに適用される角度302は、本開示の一実施形態では2.5°に設定されている。さらに、図26を参照すると、最適インプラントのサイズおよび配置プランがソフトウェアによって計算された後に、「基準レベル選択」ボタンを使用して、インプラント位置決めダイアログ内で基準レベルを変更することができる。参照基準レベルを変更するときには、ソフトウェアが、インプラントサイズ、屈曲、及びA/P位置の計算を繰り返す。本開示の一実施形態では、すでに実施されている全ての変更(たとえば小型化、A/P移動の変更など)が失われ、新しいデフォルト位置で上書きされる。
【0039】
図27に示されているように、A/P整合用のナビゲートドリルテンプレート(Stryker Navigation社(ドイツ、フライブルグ)から入手可能なテンプレートなど)を使用すると、4分割(4-in-1)の切断ブロックの回転整合およびA/P位置をナビゲートし、準備することができる。ナビゲートドリルテンプレートは、従来のA/Pサイズ調整器(sizer)と置き換えることができる。従来のA/Pサイズ調整器とは異なり、ナビゲートドリルテンプレートは簡便に使用できるだけでなく、調査計器での調整を行わなくても、A/P移動に関する高い融通性を与えてくれる。本開示の一実施形態では、自動サイズ調整機能が利用可能な場合に、ナビゲートドリルテンプレートをシステムのユーザー設定部分で選択することもできる。図28に、もっとも明確に示されているように、ナビゲートドリルテンプレートにより、回転整合とA/P位置の、2つの自由度でのナビゲートをソフトウェアが促進する。一実施形態では、平均回転軸、大腿骨A/P軸および経上皮顆線(transepicondylar)に関して回転整合が計算され、AP位置の基準は、計算されたインプラントと仮想ペグホールであり、これらは表示スクリーンに表示される。表示スクリーン上には、仮想ペグホールのテンプレートの偏差も表示される。さらに、前側皮質の正面図が表示され、遠位大腿骨切断部とA/Pインプラント位置の所定の屈曲/伸展に対する、カバーされていない骨組織切除部の位置とサイズとのプレビューを表示する。一実施形態では、内側外側位置はナビゲート不能である。
【0040】
次に図29に移ると、一実施形態では、最適インプラントのサイズおよび位置プランが計算された後で、何らかの大腿骨ランドマークが再デジタル化されると、ソフトウェアはインプラント計算を繰り返し、ユーザーに更されたインプラントパラメーターを確認(検証)するよう促す。そのようにするために、図16に示されているインプラント位置検証ダイアログが開かれ、変更されたパラメーターが黄色で表示される。
【0041】
前述の詳細な説明は、ナビゲーションシステムを使用した人工膝関節置換術に関するが、本明細書に開示されている方法とシステムは、少なくともプロテーゼ用具を複数の異なるサイズおよび/または形状から選択し、ユーザー毎に特定される制約条件を満たすように配置させる、他の外科手術でも使用するよう容易に適合させることができる。この方法およびシステムは、他の外科手術での使用に容易に適合させることができるうえ、本発明の開示の対象範囲は本明細書に詳細に記載されている特定の外科手術に限定されないことが理解されよう。さらに、切除する骨組織の調査データなど、解剖学的データを収集するための具体的な方法は、手術中の直接的なデジタル化には限定されない。むしろ、解剖学的データは、X線走査、MRI走査、CT走査、超音波走査および他の術前方法、間接デジタル化やナビゲートされたプローブおよび針等の術中方法、光・機械または同様のローカライザーの使用、レーザーやモアレなどのレンジファインダーの使用、およびその他のデータ収集技術など、必要な解剖形状データを収集することのできる方法で解剖データを取得してもよい。さらに、インプラントを取り付けるための最終的インプラントのサイズおよび位置プランの実施は、本明細書に開示されているナビゲーション技術の使用に限定されない。むしろ、インプラントは、最終プランを満足のいく形で実行することのできる任意の方法に従って、最終インプラントのサイズおよび位置プランに基づいて取り付けられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示の技術の一実施形態では、外科医はコンピューターを利用して、人工膝関節全置換術において、大腿骨インプラントの前側インプラント輪郭と大腿骨の前側皮質との間の切痕形成を回避し、向上した整合性を達成するなど、複数の設計パラメーターを最適化するために、外科手術中に収集された患者情報に基づいて最適プロテーゼ設計をすばやく計算することができる。本発明の開示の技術は、たとえば、外科医の知識と経験とに基づいて軟組織の問題を考慮するなど、必要と考えられる調整を行うため、自動計算された最適インプラント設計を外科医が手動で変更できるようにするために使用されてもよい。本発明の開示の技術は場合によっては、インプラントの不必要に過大なサイズ指定、カバーされないままの前側骨切除部を不必要に大きいままとすること、又はインプラントの前側表面と前側皮質の切断されていない領域の間への不必要に大きな前側突出および間隙の形成など、外科医が単に視覚的観察に従ってインプラント設計を選択する等の先行の方法に関連付けられる一般的な問題を回避するのに役立つことができる。
【0043】
前述の記述に照らし、本開示に対する数々の変更は、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、本記述は、実例を挙げることだけを目的としているとみなされるべきであり、当業者が本発明の開示を作成し使用しし、さらにこれを実施するための最良の形態を教示できるようにすることを目的として提示されている。添付の請求項の対象範囲内の変更すべてに対して独占的権利が所有されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】人工膝関節全置換術に関与する、膝骨とプロテーゼとの分解部分図である。
【図2】外科手術ナビゲーションシステムの一実施形態のコンポーネントを用いて、人工膝関節置換術に備えた患者の膝の概略図である。
【図3】本開示の一態様の流れ図である。
【図4】本開示の別の態様の流れ図である。
【図4A】本開示のさらなる態様の流れ図である。
【図4B】本開示のさらに別の態様の流れ図である。
【図4C】本開示のさらにまた別の態様の流れ図である。
【図5A】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5B】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5C】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5D】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図5E】図4Aに示されているステップを図で表現したものである。
【図6A】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図6B】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図6C】図4Bに示されているオプションを図で表現したものである。
【図7】本開示のシステムのメインナビゲーションメニューの一態様を表すスクリーンショットである。
【図8】前記システムの骨組織マッピング機能の一態様を表すスクリーンショットである。
【図9】前記システムの別の骨組織マッピング機能の一態様を表すスクリーンショットである。
【図10】前記システムのインプラント位置決め機能の態様を表すスクリーンショットである。
【図11】前記システムの前記インプラント位置決めおよびサイズ指定機能の別の態様を表すスクリーンショットである。
【図12】前記システムの手動変更機能を表すスクリーンショットである。
【図13】前記システムの別の手動変更機能を表すスクリーンショットである。
【図14】前記システムの追加的な機能のスクリーンショットを示す。
【図15】前記システムのインプラント位置決め機能のスクリーンショットを示す。
【図16A】図15のスクリーンショットの詳細部分を示す。
【図16B】図15のスクリーンショットの詳細部分を示す。
【図17】屈曲間隙と伸展間隙を表している膝関節の線図である。
【図18】前記システムの大腿骨登録機能のスクリーンショットを示す。
【図19】インプラントの内側/外側への突出を示している大腿骨の遠位端の別の線図である。
【図20】前記システムの近位脛骨リセット機能のスクリーンショットを示す。
【図21】前記インプラント位置決め機能のスクリーンショット、及びスプレッダーが挿入された、切除された膝関節の線図である。
【図22】前記システムの別の態様の線図表現である。
【図23】損傷を受けた膝関節のX線写真の線図表現である。
【図24】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【図25】生体力学情報が重ね合わされて含までる、大腿骨の遠位端の線図表現である。
【図26】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【図27】全膝関節全置換術中に使用するための外科用具と膝関節の線図表現である。
【図28】前記システムのさらなる態様のスクリーンショットを示す。
【図29】前記システムのさらに別の態様のスクリーンショットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨の切除に先行して、前記大腿骨の遠位端への選択した方向での大腿骨インプラントの密着性を評価するためのシステムであって、
複数の大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するための手段と、
前記大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するための手段と、
前記大腿骨の切除に先行して検討すべき各サイズのインプラントごとに、定義済の既定漸増位置セットの各想定される漸増位置の仮想密着性評価を自動的に実行するための手段と、
前記仮想密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択するための手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
目標再構築位置が、選択した内反角度又は外反角度と、回転角度と、前記大腿骨の後側顆および遠位顆の表面位置とを整合させるための設計パラメーターに基づいて定義される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記選択するための手段が、前記大腿骨インプラントの近位端輪郭からの前記大腿骨の前側切除部の最大ずれを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記選択するための手段が、切断された前側皮質骨上に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記選択するための手段が、切断されていない前側皮質骨上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記選択するための手段が、前記大腿骨インプラントと前記切断されていない前側皮質骨との間の最大間隙を計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記選択するための手段が、前記骨組織の切痕化と前記インプラントのサイズ過大とを最低限度に押さえる最適なインプラントのサイズと位置とを特定するため、重み付けアルゴリズムと各評価された密着性とを比較するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
内側/外側への突出を検出するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
近位脛骨を切断し、挿入をプレビューするための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
内反膝の内側顆を推定するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的に計画するためのシステムであって、
複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するための調査システムと、
前記表面形状情報に基づいて前記骨組織の仮想表現に関するインプラント配置のための、ベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、
前記形状因子情報と、前記骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子とに基づいて、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するための回路と、
前記密着性計算のすべてから、最適に密着するインプラントのサイズと位置とを選択するための回路と、
を備えるシステム。
【請求項14】
前記調査システムが、デジタイザーと、前記骨組織の表面の調査を実施するためのもうひとつの回路とが含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記評価するための回路及び前記選択するための回路が、前記骨組織を切除するためのシステムを作動させる前に、作動される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記最適に密着するインプラントのサイズと位置とを手作業で調節するための回路をさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記選択のための回路が、複数の密着性パラメーターを評価するための1以上のシステムを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の密着性パラメーターが、硬質骨組織形状パラメーターとインプラント形状パラメーターを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記評価するための回路が、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前記前側部分の前記近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない表面の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙と、を計算するための1以上の回路を含むことを特徴とする、
請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記選択するための回路が、最適なサイズと位置とを特定するため、評価されたパラメーターを重み付けアルゴリズムで処理するための回路を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記最適に密着するインプラントのサイズと位置とに一致する前記骨組織の切除レベルを判断するための回路をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記ベースライン配置パラメーターを定義するための回路が、前記インプラントと、前記骨組織の前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙を計算するための回路を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項23】
前記密着性計算を評価するための回路が、前記骨組織の内側/外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするための回路と、内側および外側への突出を検出するための回路と、近位脛骨を切断し、挿入をプレビューするための回路と、内反膝の内側顆を推定するための回路と、前側/後側整合のためのナビゲートドリルテンプレートを使用するための回路と、のうち少なくとも一つを任意選択的に含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
骨組織に関するプロテーゼインプラントの最適なサイズと位置とを仮想的に自動計算するためのコンピューター読取り可能媒体であって、
複数の異なるインプラントサイズに関する定義済の既定形状因子情報を取得するための第一のルーチンと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するための第二のルーチンと、
前記骨組織の仮想表現に関するインプラント配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するための第三のルーチンと、
前記骨組織に関する複数の漸増位置の各々における、複数の密着性基準に基づいて前記骨組織の前記仮想表現に関して各インプラントごとに密着性計算を評価するための第四のルーチンと、
前記複数の密着性基準の各々への各密着性計算の重み付け比較に基づいて各密着性評価から最適なインプラントサイズと位置とを選択するための第五のルーチンと、
を含むプログラミングを含む、コンピューター読取り可能媒体。
【請求項25】
前記表面形状を取得するためのルーチンが、ポインタを使用して前記骨組織の調査データポイントを取得するためのルーチンと、指定された設計精度パラメーターを満たすのに十分な前記骨組織の表面形状の輪郭マップを提供するために、ユーザが望ましいデータポイントセットを取得することを支援するルーチンと、を含む、請求項24に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項26】
前記ベースライン配置パラメーターを定義するためのルーチンが、選択した内反/外反角度と、回転角度と、インプラントの後部顆および遠位顆の表面位置とを整合させるためのルーチンをさらに含む、請求項25に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項27】
前記密着性計算を評価するためのルーチンが、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前記前側部分の前記近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない部分の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の前記切断されていない部分との間の最大間隙とを含む、密着性基準を計算するための1以上のルーチンをさらに含む、請求項26に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項28】
前記最適インプラントのサイズと位置とを選択するためのルーチンが、前記最適なインプラントのサイズおよび位置プランを、評価されたサイズと位置とのすべてから特定するために、各密着性基準の重み付けアルゴリズムと各密着性計算とを比較するためのルーチンを含み、最適なインプラントのサイズは少なくとも前記インプラントの切痕化とサイズ過大とを最低限度に抑える、請求項27に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項29】
患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするための方法であって、
複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するステップと、
前記骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するステップと、
前記骨組織に関する複数の漸増位置の各々における、複数の密着性因子に基づいて、前記骨組織の前記仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するステップと、
前記密着性計算のすべてから、最適に密着するインプラントと位置とを選択するステップと、
を含む方法。
【請求項30】
前記骨組織の表面形状を取得するステップが、前記骨組織表面の調査を実施するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記評価するステップ及び選択するステップが、前記骨組織を切除するステップに先行して実行される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記計算された最適なサイズと位置とを手作業で調節するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記計算するステップが、複数の密着性パラメーターを評価するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の密着性パラメーターが硬質骨組織形状パラメーター及びインプラント形状パラメーターを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記密着性計算を評価するステップが、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前側部分の近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない部分の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙と、に基づいて、前記インプラントを評価することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記最適に密着するインプラントと位置とを選択するステップが、最適なサイズと位置とを特定するため、評価された密着性を重み付けアルゴリズムと比較するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記骨組織の切除レベルを判定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記ベースライン配置パラメーターが、前記インプラントと、前側皮質骨の切断されていない表面との間の最大間隙を計算するために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記密着性計算を評価するステップが、内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするステップと、内側/外側への突出を検出するステップと、近位脛骨を切断し挿入をプレビューするステップと、内反膝の内側顆を推定するステップと、前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するステップと、を任意選択的に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
大腿骨の切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するための方法であって、
前記大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、
前記大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するステップと、
前記大腿骨の切除に先行して検討すべき各サイズのインプラントごとに定義済の漸増位置セットのすべての想定される漸増位置の各々において、仮想密着性評価を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項41】
目標再構築位置が、選択された内反角度もしくは外反角度と、回転角度と、前記大腿骨の後側顆および遠位顆の表面位置と、を整合させるための設計パラメーターに基づいて定義される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記密着性評価を実行するステップが、前記大腿骨インプラントの近位端輪郭からの、前記大腿骨の前側切除部の最大ずれを計算するステップが含まれていることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記密着性評価を実行するステップが、切断された前側皮質骨上に位置する近位端輪郭のパーセンテージを計算するステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記密着性評価を実行するステップが、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するステップを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記密着性評価を実行するステップが、前記大腿骨インプラントと、前記切断されていない前側皮質骨との間の最大間隙を計算するステップを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記密着性評価を実行するステップが、最適なサイズと位置とを特定するために、評価された密着性を重み付けアルゴリズムと比較するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記密着性評価を実行するステップが、内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするステップと、内側/外側への突出を検出するステップと、近位脛骨を切断し挿入をプレビューするステップと、内反膝の内側顆を推定するステップと、前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するステップと、を任意選択的に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項1】
大腿骨の切除に先行して、前記大腿骨の遠位端への選択した方向での大腿骨インプラントの密着性を評価するためのシステムであって、
複数の大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するための手段と、
前記大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するための手段と、
前記大腿骨の切除に先行して検討すべき各サイズのインプラントごとに、定義済の既定漸増位置セットの各想定される漸増位置の仮想密着性評価を自動的に実行するための手段と、
前記仮想密着性評価から最適なインプラントのサイズと位置とを選択するための手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
目標再構築位置が、選択した内反角度又は外反角度と、回転角度と、前記大腿骨の後側顆および遠位顆の表面位置とを整合させるための設計パラメーターに基づいて定義される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記選択するための手段が、前記大腿骨インプラントの近位端輪郭からの前記大腿骨の前側切除部の最大ずれを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記選択するための手段が、切断された前側皮質骨上に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記選択するための手段が、切断されていない前側皮質骨上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記選択するための手段が、前記大腿骨インプラントと前記切断されていない前側皮質骨との間の最大間隙を計算するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記選択するための手段が、前記骨組織の切痕化と前記インプラントのサイズ過大とを最低限度に押さえる最適なインプラントのサイズと位置とを特定するため、重み付けアルゴリズムと各評価された密着性とを比較するための手段を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
内側/外側への突出を検出するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
近位脛骨を切断し、挿入をプレビューするための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
内反膝の内側顆を推定するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的に計画するためのシステムであって、
複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を格納したデータベースと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するための調査システムと、
前記表面形状情報に基づいて前記骨組織の仮想表現に関するインプラント配置のための、ベースライン配置パラメーターを定義するための回路と、
前記形状因子情報と、前記骨組織に関する複数の漸増位置のそれぞれにおける複数の密着性因子とに基づいて、骨組織の仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するための回路と、
前記密着性計算のすべてから、最適に密着するインプラントのサイズと位置とを選択するための回路と、
を備えるシステム。
【請求項14】
前記調査システムが、デジタイザーと、前記骨組織の表面の調査を実施するためのもうひとつの回路とが含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記評価するための回路及び前記選択するための回路が、前記骨組織を切除するためのシステムを作動させる前に、作動される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記最適に密着するインプラントのサイズと位置とを手作業で調節するための回路をさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記選択のための回路が、複数の密着性パラメーターを評価するための1以上のシステムを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の密着性パラメーターが、硬質骨組織形状パラメーターとインプラント形状パラメーターを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記評価するための回路が、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前記前側部分の前記近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない表面の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙と、を計算するための1以上の回路を含むことを特徴とする、
請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記選択するための回路が、最適なサイズと位置とを特定するため、評価されたパラメーターを重み付けアルゴリズムで処理するための回路を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記最適に密着するインプラントのサイズと位置とに一致する前記骨組織の切除レベルを判断するための回路をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記ベースライン配置パラメーターを定義するための回路が、前記インプラントと、前記骨組織の前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙を計算するための回路を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項23】
前記密着性計算を評価するための回路が、前記骨組織の内側/外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするための回路と、内側および外側への突出を検出するための回路と、近位脛骨を切断し、挿入をプレビューするための回路と、内反膝の内側顆を推定するための回路と、前側/後側整合のためのナビゲートドリルテンプレートを使用するための回路と、のうち少なくとも一つを任意選択的に含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
骨組織に関するプロテーゼインプラントの最適なサイズと位置とを仮想的に自動計算するためのコンピューター読取り可能媒体であって、
複数の異なるインプラントサイズに関する定義済の既定形状因子情報を取得するための第一のルーチンと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するための第二のルーチンと、
前記骨組織の仮想表現に関するインプラント配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するための第三のルーチンと、
前記骨組織に関する複数の漸増位置の各々における、複数の密着性基準に基づいて前記骨組織の前記仮想表現に関して各インプラントごとに密着性計算を評価するための第四のルーチンと、
前記複数の密着性基準の各々への各密着性計算の重み付け比較に基づいて各密着性評価から最適なインプラントサイズと位置とを選択するための第五のルーチンと、
を含むプログラミングを含む、コンピューター読取り可能媒体。
【請求項25】
前記表面形状を取得するためのルーチンが、ポインタを使用して前記骨組織の調査データポイントを取得するためのルーチンと、指定された設計精度パラメーターを満たすのに十分な前記骨組織の表面形状の輪郭マップを提供するために、ユーザが望ましいデータポイントセットを取得することを支援するルーチンと、を含む、請求項24に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項26】
前記ベースライン配置パラメーターを定義するためのルーチンが、選択した内反/外反角度と、回転角度と、インプラントの後部顆および遠位顆の表面位置とを整合させるためのルーチンをさらに含む、請求項25に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項27】
前記密着性計算を評価するためのルーチンが、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前記前側部分の前記近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない部分の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の前記切断されていない部分との間の最大間隙とを含む、密着性基準を計算するための1以上のルーチンをさらに含む、請求項26に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項28】
前記最適インプラントのサイズと位置とを選択するためのルーチンが、前記最適なインプラントのサイズおよび位置プランを、評価されたサイズと位置とのすべてから特定するために、各密着性基準の重み付けアルゴリズムと各密着性計算とを比較するためのルーチンを含み、最適なインプラントのサイズは少なくとも前記インプラントの切痕化とサイズ過大とを最低限度に抑える、請求項27に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項29】
患者の骨組織に関するプロテーゼインプラントのサイズと位置とを仮想的にプランニングするための方法であって、
複数の異なるインプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、
前記骨組織の表面形状情報を取得するステップと、
前記骨組織の仮想表現に関するインプラントの配置のためのベースライン配置パラメーターを定義するステップと、
前記骨組織に関する複数の漸増位置の各々における、複数の密着性因子に基づいて、前記骨組織の前記仮想表現に関する各インプラントの密着性計算を評価するステップと、
前記密着性計算のすべてから、最適に密着するインプラントと位置とを選択するステップと、
を含む方法。
【請求項30】
前記骨組織の表面形状を取得するステップが、前記骨組織表面の調査を実施するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記評価するステップ及び選択するステップが、前記骨組織を切除するステップに先行して実行される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記計算された最適なサイズと位置とを手作業で調節するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記計算するステップが、複数の密着性パラメーターを評価するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の密着性パラメーターが硬質骨組織形状パラメーター及びインプラント形状パラメーターを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記密着性計算を評価するステップが、前記インプラントの前側部分の近位端輪郭からの前側切除部の最大ずれと、切除された骨組織上に位置する前記インプラントの前側部分の近位端輪郭のパーセンテージと、前側皮質の切断されていない部分の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージと、前記インプラントと前記前側皮質の切断されていない表面との間の最大間隙と、に基づいて、前記インプラントを評価することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記最適に密着するインプラントと位置とを選択するステップが、最適なサイズと位置とを特定するため、評価された密着性を重み付けアルゴリズムと比較するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記骨組織の切除レベルを判定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記ベースライン配置パラメーターが、前記インプラントと、前側皮質骨の切断されていない表面との間の最大間隙を計算するために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記密着性計算を評価するステップが、内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするステップと、内側/外側への突出を検出するステップと、近位脛骨を切断し挿入をプレビューするステップと、内反膝の内側顆を推定するステップと、前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するステップと、を任意選択的に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
大腿骨の切除に先行して、選択した方向での大腿骨の遠位端への大腿骨インプラントの密着性を評価するための方法であって、
前記大腿骨インプラントに関する定義済の形状因子情報を取得するステップと、
前記大腿骨の遠位端の表面形状情報を取得するステップと、
前記大腿骨の切除に先行して検討すべき各サイズのインプラントごとに定義済の漸増位置セットのすべての想定される漸増位置の各々において、仮想密着性評価を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項41】
目標再構築位置が、選択された内反角度もしくは外反角度と、回転角度と、前記大腿骨の後側顆および遠位顆の表面位置と、を整合させるための設計パラメーターに基づいて定義される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記密着性評価を実行するステップが、前記大腿骨インプラントの近位端輪郭からの、前記大腿骨の前側切除部の最大ずれを計算するステップが含まれていることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記密着性評価を実行するステップが、切断された前側皮質骨上に位置する近位端輪郭のパーセンテージを計算するステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記密着性評価を実行するステップが、切断されていない前側皮質骨の上もしくはその上方に位置する前記近位端輪郭のパーセンテージを計算するステップを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記密着性評価を実行するステップが、前記大腿骨インプラントと、前記切断されていない前側皮質骨との間の最大間隙を計算するステップを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記密着性評価を実行するステップが、最適なサイズと位置とを特定するために、評価された密着性を重み付けアルゴリズムと比較するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記密着性評価を実行するステップが、内側および外側への屈曲および伸展間隙のサイズをプレビューするステップと、内側/外側への突出を検出するステップと、近位脛骨を切断し挿入をプレビューするステップと、内反膝の内側顆を推定するステップと、前側/後側整合にナビゲートドリルテンプレートを使用するステップと、を任意選択的に含む、請求項40に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2009−56299(P2009−56299A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−202981(P2008−202981)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(504409347)シュトリュカー ライビンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Stryker Leibinger GMBH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 41, 79111 Freiburg Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202981(P2008−202981)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(504409347)シュトリュカー ライビンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Stryker Leibinger GMBH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 41, 79111 Freiburg Germany
【Fターム(参考)】
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