説明

外科手術用のメッシュ状インプラント

少なくとも2つの層を形成するために相互にルーピングしているか相互に絡み合っている少なくとも2つのタイプの糸を含んでいる三次元メッシュを含む外科用プロテーゼ。その場合、前記少なくとも2つの層のうちの一方が、実質的に非生分解性である。癒着バリアは、三次元メッシュの第2の実質的に生分解層と相互に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用プロテーゼに関し、特に体腔内の開口部を治療するために使用する外科用プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
切開によるヘルニアのような体腔内の望ましくない開口部は、多くの場合、壁の開口部のところで体腔の内面を裏張りするために、ポリプロピレン・メッシュ、またはPCT出願WO01/43789号公報および米国特許第6,264,702号に記載されている生分解性の癒着バリア層を含むポリプロピレン・メッシュのような補綴メッシュにより治療される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
通常、ある態様においては、本発明は外科用プロテーゼを特徴とする。外科用プロテーゼは、少なくとも2つの層を形成するために相互にルーピングしているか、相互に絡み合っている、少なくとも2つのタイプの糸を含んでいる三次元メッシュを含む。この場合、少なくとも2つの層のうちの一方は実質的に非生分解性であり、少なくとも2つの層のうちの他方は実質的に生分解性である。癒着バリアは、三次元メッシュの第2の実質的に生分解性の層と相互に接続している。
【0004】
実施形態は、下記の特徴の1つまたは複数を含むことができる。三次元メッシュ内の少なくとも2つのタイプの糸のうちの一方は、非生分解性の糸である。非生分解性の糸は、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレートまたはこれらの組合せから選択される。非生分解性の糸は、約0.001〜約0.010インチの直径を有し、好適には約0.005インチの直径を有することが好ましい。
【0005】
また、実施形態は下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。少なくとも2つのタイプの糸のうちの一方は、生分解性の糸である。生分解性の糸は、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される。生分解性の糸は、約120デニール程度の直径を有する。ある実施形態の場合には、生分解性の糸は、約100デニール程度の直径を有する。
【0006】
ある実施形態の場合には、外科用プロテーゼの三次元メッシュは、少なくとも1つの非生分解性モノフィラメント糸、および少なくとも1つの生分解性マルチフィラメント糸を含む。ある実施形態の場合には、外科用プロテーゼの三次元メッシュは、少なくとも1つの非生分解性モノフィラメント糸および少なくとも2つの生分解性マルチフィラメント糸を含む。
【0007】
実施形態は、また、下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。外科用プロテーゼの癒着バリアは、高分子ヒドロゲルを含む。癒着バリアは、カルボジイミドとの反応で変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む。ある実施形態の場合には、癒着バリアは、架橋高分子ヒドロゲルだけ、または架橋高分子ヒドロゲルとカルボジイミドとの反応で変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類との組合せを含む。架橋高分子ヒドロゲルは、1つまたは複数の親水性ブロックと、1つまたは複数の生分解性ブロックと、1つまたは複数の架橋ブロックとを含む。架橋高分子ヒドロゲルは、アクリレート・エステルで末端がキャップされた光重合性ポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含むモノマーの重合により形成される。
カルボジイミドとの反応で変性したポリアニオン性多糖類は、カルボジイミド変性ヒアルロン酸と、カルボジイミド変性カルボキシメチルセルロースとを含む。
【0008】
実施形態は、また、下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。癒着バリアは、フィルム、フォームまたはゲルの形をしている。癒着バリアは、1平方フィート当たり約5グラムの全ポリマーの密度を有する。外科用プロテーゼは、約2%以下の水分を含む。ある実施形態の場合には、外科用プロテーゼは、約1.2%以下の水分を含む。
【0009】
他の態様においては、本発明は、実質的に非生分解性の糸からできている第1の層、実質的に第1の生分解性の糸からできている第2の層、および第2の層内に埋め込まれている癒着バリアを含む外科用プロテーゼを特徴とする。外科用プロテーゼの第1および第2の層は、第2の生分解性の糸で接続している。第1の層は、外科用プロテーゼの第1の外面を形成し、癒着バリアは、外科用プロテーゼの第2の外面を形成する。この場合、第1の外面は、組織が第1の層に向かって内側に延びることができるマクロ多孔性構造を有し、外科用プロテーゼの第2の外面は、第2の外面に隣接する組織の癒着の形成を最小限度に低減することができる。
【0010】
実施形態は、下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。外科用プロテーゼの第2の外面は、孔部のサイズが約10ミクロン以下である微多孔性構造を有する。外科用プロテーゼの第1の外面のマクロ多孔性構造の孔部のサイズは、約100ミクロン以上である。
【0011】
実施形態は、また下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。非生分解性糸は、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレートまたはこれらの組合せから選択される。第1の生分解性糸は、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される。第2の生分解性糸は、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される。
【0012】
実施形態は、また下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。癒着バリアは、架橋高分子ヒドロゲルと、カルボジイミドとの反応で変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類とを含む。架橋高分子ヒドロゲルは、1つまたは複数の親水性ブロックと、1つまたは複数の生分解性ブロックと、1つまたは複数の架橋ブロックとを含む。ある実施形態の場合には、架橋高分子ヒドロゲルは、アクリレート・エステルで末端がキャップされた光重合性ポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含むモノマーの重合により形成される。カルボジイミドとの反応で変性されたポリアニオン性多糖類は、カルボジイミド変性ヒアルロン酸と、カルボジイミド変性カルボキシメチルセルロースとを含む。
【0013】
一般的に言って、他の態様においては、本発明は、外科用プロテーゼの製造方法を特徴とする。この方法は、実質的に非生分解性糸からできている第1の層および生分解性糸からできている第2の層を含む織物を供給するステップと、マクロマーおよび開始剤を含む液剤を供給するステップと、第2の層が液剤と流体接触するように、液剤と一緒に織物を設置するステップと、液剤を光源で照射するステップとを含む。
【0014】
実施形態は下記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。使用する光源は、約1〜約100mW/cmの輝度を有するLEDアレイである。液剤で使用する開始剤は、例えば、エオシンYのような光開始剤である。液剤は、さらに、生体高分子、促進剤および緩衝剤を含む。生体高分子は、カルボジイミドとの反応で変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む。緩衝剤は、トリエタノルアミンおよび/またはリン酸カ
リウムを含む。促進剤は、N−ビニルカプロラクタムを含む。ある実施形態の場合には、液剤は、1重量%のカルボジイミド変性ヒアルロン酸およびカルボジイミド変性カルボキシメチルセルロースと、アクリレート・エステルで末端がキャップされた2.5重量%のポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーと、40ppmのエオシンYと、4000ppmのN−ビニルカプロラクタムと、0.54重量%のトリエタノールアミンと、0.8重量%のリン酸カリウムとを含む。
【0015】
他の態様においては、本発明は、外科用プロテーゼの製造方法を特徴とする。この方法は、実質的に非生分解性糸からできている第1の層と生分解性糸からできている第2の層とを含む織物を供給するステップと、第1の高分子系、第2の高分子系および光開始剤を含む液剤を供給するステップと、第2の層が液剤と流体接触するように液剤上に織物を設置するステップと、液剤の高分子系のうちの少なくとも一方を重合させるために、光開始剤を作動するために液剤を光源で照射するステップとを含む。
【0016】
実施形態は下記のもののうちの1つまたは複数を含むことができる。高分子系の少なくとも一方が重合すると、織物の第2の層内に一部が埋め込まれているバリア層が形成される。第1の高分子系は、カルボジイミド変性ヒアルロン酸およびカルボジイミド変性カルボキシメチルセルロースを含み、第2の高分子系は、アクリレート・エステルで末端がキャップされたポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含む。光開始剤はエオシンYを含む。液剤は、さらに促進剤および少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある実施形態の場合には、液剤は、例えばn−ビニルカプロラクタムのような促進剤と、トリエタノルアミンおよびリン酸カリウムのような2つの緩衝剤とを含む。
【0017】
実施形態は、また下記のもののうちの1つまたは複数を含むことができる。光開始剤を作動するために使用する光源は、約1〜約100mW/cmの輝度を有するLEDアレイである。形成された外科用プロテーゼはコンベクション・オーブン内で乾燥される。
【0018】
通常、他の態様においては、本発明は、患者の体腔を囲む壁部内の開口部を治療する方法を特徴とする。この方法は、例えば、上記外科用プロテーゼのような外科用プロテーゼを供給するステップと、癒着バリアが癒着を防止する内臓または組織の方に向くように、患者の壁部開口部上に外科用プロテーゼを固定するステップとを含む。
【0019】
実施形態は下記の利点のうちの1つまたは複数を含むことができる。外科用プロテーゼは、最小限度の癒着でまたは全然癒着を起こさないで、患者の体腔内の開口部を治療するために使用することができる。メッシュに癒着バリアを内蔵しているために、親水性癒着バリアと疎水性ポリプロピレン・メッシュとの間に強力な機械的接続が行われる。その結果、メッシュから癒着バリアが剥離する可能性が低減する。この外科用プロテーゼのもう1つの利点は、メッシュの2つの層を形成している相互にルーピングしているか、相互に絡み合っている糸を含んでいることである。相互にルーピングしているか、相互に絡み合っている糸を使用しているために、外科用プロテーゼを形成するための接着剤の使用量が低減したり、使用しないですむようになる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「非生分解性」という用語は、体腔内に位置している場合、容易に劣化しないか、吸収されないかまたは他の方法で分解しない成分を含む材料を意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「生分解性」という用語は、移植後数週間または数カ月後のような外科用プロテーゼを移植した後のある時間内に劣化および/または吸収することができる成分を含む材料を意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、指定したものが大部分ではあるが全体ではないことを意味する。層が実質的に非生分解性であるという場合には、大部分が非生分解性材料でできているが、層の一部において非生分解性材料が生分解性材料と相互に絡み合っている層を意味する。層が実質的に生分解性であるという場合には、大部分が生分解性材料からできているが、層の一部において生分解性材料が非生分解性材料と相互に絡み合っている層を意味する。
【0023】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を添付の図面に図示し、以下に説明する。図面を見、説明および特許請求の範囲を読めば、本発明の他の機能および利点を理解することができるだろう。
【0024】
図面全体を通して類似の参照符号は類似の要素を示す。
図1A〜図1Cを参照すると、腹部内の開口部のような体腔内の望ましくない開口部を治療するための外科用プロテーゼ10は、三次元メッシュ30により支持されている癒着バリア20を含む。図1A〜図1Cの場合には癒着バリア20を含んでいるが、図2A〜図2Cの場合には癒着バリア20を含んでいない三次元メッシュ30は、少なくとも2つの層(この場合は2つである)を形成する生分解性糸32および非生分解性糸34から形成される。特に図1Bを参照すると、少なくとも2つの層のうちの一方、層33は、第1のメッシュ表面35を形成していて、実質的に非生分解性である。特に図1Cを参照すると、少なくとも2つの層のうちの他方、層37は、第2のメッシュ表面39を形成していて、実質的に生分解性である。層33および37は、生分解性結合糸40により相互に接続している。外科用プロテーゼ上で癒着が起こるのを実質的に防止する癒着バリア20は、生分解性層37上に直接形成され(例えば、重合され)、それにより癒着バリア20とメッシュ30とを相互に接続する。
【0025】
外科用プロテーゼ10を形成するために癒着バリア20をメッシュ30に塗布する前で、まだ圧縮していない場合には、メッシュ30は約2.5〜3.0ミリメートルの厚さを有し、約13〜16g/ftの面密度を有し、第1のメッシュ面35および第2のメッシュ面39からアクセスすることができるマクロ多孔性構造(例えば、約100ミクロン以上の孔部サイズを有する)を含む。メッシュ30に癒着バリア20を塗布し、空気乾燥した後で、外科用プロテーゼ10の厚さは約0.45〜0.9ミリメートルになり、面密度は約18〜21g/ftになり、第1のメッシュ面35からだけアクセスすることができるマクロ多孔性構造を含む。すなわち、癒着バリア20が第2のメッシュ面39を越えて、メッシュ30の生分解性層37のマクロ多孔性構造内に延び、それにより、層37のマクロ多孔性構造の少なくとも一部が充填されるように、癒着バリア20がメッシュ30に塗布される。ある実施形態の場合には、層37のマクロ多孔性構造は、微多孔性構造(例えば、約50ミクロン以下、好適には10ミクロン以下の孔部サイズを有する)により置き換えられる。
【0026】
(メッシュ)
メッシュ30は、生分解性糸32および非生分解性糸34を含む、任意の織ったまたは編んだ構造である。通常、メッシュ内の生分解性糸に対する非生分解性糸の比率は約0.1〜9である。ある実施形態の場合には、生分解性糸に対する非生分解性糸の比率は1〜2.33である。メッシュ30は、一方の側面上には、癒着バリア20が生分解性層37内で絡み合い結合することができる構造を有し、他方の側面上には、細胞の内部への生長および治療のための強力な支持フレームを供給する構造を有する。例えば、図2A〜図2Cの実施形態のようなある実施形態の場合には、メッシュ30は、層33および37を形成するために相互に絡み合い、および/または相互にルーピングしている生分解性糸および非生分解性糸を含む。例えば、図3A〜図3Bの実施形態のようなある実施形態の場合
には、メッシュ30は、非生分解性糸34からできている予め形成済みの非生分解性メッシュ33、および生分解性結合糸40と一緒に縫い合わされている生分解性糸32からできている予め形成済みの生分解性メッシュ37を含む。
【0027】
通常、メッシュ30内の非生分解性糸34は、必要に応じて選択することができる。通常、非生分解性糸34は、外科用プロテーゼ10を使用する患者により生分解性になるように選択される。さらに、メッシュ30で使用する非生分解性糸34は、通常、ASTM規格#D2256−95Aによる方法で測定した場合、約1.0〜2.0ポンドの直線引っ張り強さを有する。ある実施形態の場合には、非生分解性糸34は、直径約0.001インチ〜約0.010インチのモノフィラメント糸である。ある実施形態の場合には、非生分解性糸34は、約0.005インチの直径を有する。非生分解性糸の例としては、ポリプロピレンおよびポリエチレン・テレフタレート等がある。
【0028】
また、メッシュ30内の生分解性糸32、40は、必要に応じて選択することができる。通常、生分解性糸は、癒着バリア20と互換性を有するように選択される。ある実施形態の場合には、生分解性糸は親水性である。ある実施形態の場合には、メッシュ30で使用する生分解性糸32は、ASTM規格#D2256−95Aによる方法で測定した場合、約0.4〜1.8ポンドの直線引っ張り強さを有する。ある実施形態の場合には、生分解性糸は、90デニール以下のマルチフィラメント糸である。マルチフィラメント糸は、それぞれが約0.0006インチの厚さを有する10〜50のモノフィラメント繊維を含むことができる。生分解性糸の例としては、ポリ(グリコール)酸(PGA)、ポリ酢酸(PLA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリカプロラクトン(PCL)、アルギン酸カルシウムまたはこれらのコポリマー等がある。
【0029】
ある実施形態の場合には、糸を容易に編むことができるようにするために、非生分解性糸および/または生分解性糸を潤滑剤でコーティングすることができる。非生分解性糸および生分解性糸のための潤滑剤の適当な例としては、例えば、脂肪酸アルコールのエステルのような無毒の疎水性ワックス、または例えば、ポリアルキル・グリコールのような親水性潤滑剤等がある。非生分解性糸に対して特に優れた結果をもたらすある特定の紡糸仕上げ剤は、Lurol PP−3772(ノースカロライナ州モンロー所在のGoulston Technologies,Inc.)である。Poloxamer184、Polysorbate20、ラウリル硫酸ナトリウム、プロピレン・グリコール・メチル・エーテルおよびトルエンの紡糸仕上げ剤ブレンドは生分解性糸に対して優れた結果を示してきた。
【0030】
(癒着バリア)
癒着バリア20組成物は、生分解性材料からなるゲル、フォーム、フィルムまたは膜を含むことができる。癒着バリア20は、ヒアルロン酸および任意のその塩、カルボキシメチルセルロースおよび任意のその塩、酸化再生セルロース、コラーゲン、ゼラチン、リン脂質、および以下に説明する第1および第2の高分子系、およびその任意の架橋または誘導形から選択した1つまたは複数の成分から作ることができる。ある実施形態の場合には、バリアは、塩水、リン酸緩衝液、または体液のような水性流体と接触するとヒドロゲルを形成することができる材料から作られる。
【0031】
好適な実施形態の場合には、癒着バリア20組成物は、少なくとも2つの高分子系の混合物を含む。第1の高分子系は、三次元高分子網目を含む架橋生分解性マルチブロック・ポリマー・ヒドロゲルを含む。第2の高分子系は、カルボジイミド化合物との反応で変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む。
【0032】
第1の高分子系の架橋高分子ヒドロゲルは、マクロマーの重合中に形成された親水性ブ
ロックと、生分解性ブロックと、架橋ブロックとを含む。マクロマーは、少なくとも1つの親水性ブロックと、少なくとも1つの生分解性ブロックと、少なくとも1つの重合性基とを含む大きな分子である。これらのブロックのうちの1つまたは複数の性質は重合性のものであってもよい。生分解性ブロックのうちの少なくとも1つは、炭酸塩またはエステル基をベースとする結合を含み、マクロマーは、炭酸塩またはエステル基の他に他の分解性結合または基を含有することができる。米国特許第6,083,524号および米国特許第5,410,016号に、高分子ヒドロゲルを形成する適当なマクロマーおよびその製造方法が記載されている。これらの米国特許の内容は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0033】
適当な親水性ポリマー・ブロックとしては、マクロマーに混入する前は、ポリ(エチレン・グリコール)、ポリ(酸化エチレン)、部分的または全体を加水分解したポリ(ビニル・アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(酸化エチレン)−コポリ(酸化プロピレン)ブロック・コポリマー(ポロキサマおよびメロキサポル)、ポロキサミン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキレート・セルロース(ヒドロキシエチル・セルロースおよびメチルヒドロキシプロピル・セルロースなど)、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類または炭水化物(Ficoll(登録商標)ポリサッカロースなど)、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパリン硫酸(heparin sulfate)、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、またはアルギン酸塩、および蛋白質(ゼラチン、コラーゲン、アルブミンまたはオバルブミンなど)のような水溶性であるブロック等がある。好適な親水性ポリマー・ブロックは、ポリ(エチレン・グリコール)およびポリ(酸化エチレン)から得られる。
【0034】
生分解性ブロックは、好適には、生体内で加水分解できるものであることが好ましい。生分解性ブロックは、ヒドロキシ酸のポリマーおよびオリゴマー、炭酸塩、または無毒であるかまたは体内に通常の代謝産物として存在する物質を生み出す他の生分解性ポリマーを含むことができる。ヒドロキシ酸の好適なオリゴマーおよびポリマーとしては、ポリグリコレートとも呼ばれるポリ(グリコール酸)、ポリ(DL−乳酸)およびポリ乳酸塩とも呼ばれるポリ(L−乳酸)がある。他の有用な材料としては、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)、およびポリ(ホスホエステル)等がある。例えば、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(デルタ−バレロラクトン)、ポリ(ガンマ−ブチロラクトン)、およびポリ(ベータ−ヒドロキシブチレート)のようなポリラクトンも有用である。好適な炭酸塩は、水を分離しないでヒドロキシ末端ポリマーと反応することができる環式炭酸塩から入手される。適当な炭酸塩は、炭酸エチレン(1、3−ジオキソラン−2−オン)、炭酸プロピレン(4−メチル−1、3−ジオキソラン−2−オン)、炭酸トリメチレン(1、3−ジオキサン−2−オン)、および炭酸テトラメチレン(1、3−ジオキセパン−2−オン)から入手される。
【0035】
重合することができる基は、マクロマー連結となる追加の共有結合を形成することができる反応性官能基である。重合することができる基は、特に、遊離基重合により重合を行うことができる基、およびカチオン性またはヘテロリシス性重合により重合することができる基を含む。適当な基としては、エチレン性またはアセチレン性不飽和基、イソシアネート、エポキシド(オキシラン)、スルフヒドリル、サクシンイミド、マレイミド、アミン、イミン、アミド、カルボキシル酸、スルフォン酸、およびリン酸基等があるが、これらに限定されない。エチレン性不飽和基としては、ビニル・エーテル、N−ビニル・アミド、アリル、不飽和モノカルボキシル酸またはそのエステルまたはアミド、不飽和ジカルボキシル酸またはそのエステルまたはアミド、および不飽和トリカルボキシル酸またはそのエステルまたはアミドのようなビニル基等がある。不飽和モノカルボキシル酸としては、アクリル酸、メタアクリル酸、およびクロトン酸またはそのエステルまたはアミド等がある。不飽和ジカルボキシル酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコニ
ン酸、またはシトラコン酸またはそのエステルまたはアミド等がある。不飽和トリカルボキシル酸としては、アコニン酸またはそのエステルまたはアミド等がある。また、重合性基は、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、および類似のビニルおよびアリル化合物のようなこのような材料の誘導体であってもよい。
【0036】
好適には、重合性基は、マクロマーの1つまたは複数の端部に位置することが好ましい。別の方法としては、重合性基は、マクロマー内に位置することもできる。マクロマーの少なくとも一部は、ゲルを形成するために、結果として得られる親水性ポリマーが架橋することができるように、分子毎に2つ以上の反応性の基を含むことができる。本明細書においては、1つの分子に対して2つ以上の重合性基を有するマクロマーを架橋剤と呼ぶ。必要な架橋剤の最小の割合は、形成するヒドロゲルの所望の特性、および溶液内のマクロマーの初期濃度により異なる。マクロマー溶液内の架橋剤の割合は、溶液内のすべてのマクロマーの約100%であってもよい。例えば、マクロマーは、平均少なくとも1.02の重合性基を含むが、より好適には、マクロマーは、それぞれ平均2つ以上の重合性基を含むことが好ましい。ポロキサミン(親水性ブロックを形成するのに適している水溶性ポリマー成分の一例)は、4本の腕を有し、そのため4つの重合性基を含むように容易に変性することができる。
【0037】
好適なマクロマーの例を以下に示す。
この場合、ポリエチレン・グリコール反復単位は、−(CH−CH−O)−または(PEG)であり、炭酸トリメチレン反復単位は、−(C(O)−O−(CH−O)−または(TMC)であり、乳酸残基は、−(O−CH(CH)−CO)−または(L)であり、アクリレート残基は、CH=CH−CO−またはAであり、q、w、w'、y、y'およびxは整数である。
【0038】
A−(L)−(TMC)−[(PEG)−(TMC)']−(L)'−A
A−(L)−[(PEG)−(TMC)']−(L)'−A
A−[(PEG)−(TMC)']−(L)'−A]
マクロマーの重合は、光化学的手段、非光化学的類似レドックス(Fenton化学)、または熱的開始(過酸化物等)によりスタートすることができる。適当な光化学的手段は、好適には、エオシンYであることが好ましい、染料のような紫外線または光感光化合物のような光重合開始剤の存在下での可視光線または紫外線によるマクロマー溶液の照射等がある。
【0039】
マクロマーの重合は、重合反応の促進剤としての働きをする少量のモノマーの存在下で行うことができる。好適には、モノマーは、重合性物質の全量の2%以下、より好適には、1%以下であることが好ましく、通常は約4,000ppmである。好適な促進剤としてはビニル・カプロラクタムがある。
【0040】
以下の説明および例の場合には、マクロマーをフォームxxkZnAのコードで表すことができる。この場合、xxkは、別段の指示がない限り、ポリエチレン・グリコール(「PEG」)である背骨ポリマーのダルトン内の分子量を表す。この場合、xは数字であり、kは数千に対する乗数である。Zは、生分解性ブロックが得られる分子単位であり、L、G、D、CまたはTの1つまたは複数の値をとることができる。この場合、Lは乳酸に対するものであり、Gはグリコール酸に対するものであり、Dはジオキサノンに対するものであり、Cはカプロラクトンに対するものであり、Tは炭酸トリメチレンに対するものである。nは背骨ポリマーの各端部上にランダムに分布している分解性の基の平均数である。Aはアクリレートに対するものであり、mは各マクロマー分子毎の重合性基の数に対するものである。それ故、例のところで使用する20kTLAは、第1の炭酸トリ
メチレン残基(マクロマー毎に7以上、平均約12の残基)およびグリコール・コアの両方の端部に順次延び、また両方の端部間にランダムに分布し、2つのアクリレート基で終わっている乳酸残基(マクロマー毎に5以下の残基)を有する20×10Daポリエチレン・グリコール・コアを有するマクロマーである。
【0041】
第2の高分子系は、カルボジイミドにより変性した少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む。米国特許第5,017,229号および米国特許第5,527,983号に、これらの変性したポリマーの製造方法が記載されている。これらの米国特許の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0042】
適当なポリアニオン性多糖類は、下記のもののうちの1つまたは複数から選択することができる。ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル・アミロース、カルボキシメチル・チトサン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、アルギン酸、およびナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウムまたはこれらの混合物を含むその塩のうちの任意のもの。
【0043】
ポリアニオン性多糖類は、N−アシル尿素誘導体を形成するためにカルボジイミドとの反応により変性され、不水溶性になるが、これらポリアニオン性多糖類は依然として親水性であり、水を吸収してヒドロゲルとも呼ばれるゲルを形成する。カルボジイミドとの反応条件は、上記特許に詳細に記載されている。好適なカルボジイミドとしては、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド(EDC)、または1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド・メチオダイド(ETC)のような水溶性のカルボジイミドがある。
【0044】
カルボジイミドとの反応後、変性されたポリアニオン性多糖類組成物は、含水率が約20%以下、好適には約9%に乾燥させ、粉末の形で貯蔵することができる。
バリア組成物を調製する目的で、第2の高分子系のマクロマー溶液と混合する前に、流体ゲルを形成するために、変性したポリアニオン性多糖類組成物を、緩衝溶液内だけで再度水和することができる。また、バリア組成物は、第2の高分子系のマクロマー溶液の緩衝溶液内で、変性したポリアニオン性多糖類組成物を再度水和し、それにより両方の高分子系を含む流体ゲルを形成することにより調製することができる。次に、流体ゲルを所望の形の皿に入れ、本発明のバリア組成物を形成するために、紫外線または可視光線のような重合条件で処理が行われる。流体ゲル内のマクロマーが重合すると、バリア組成物は、改善された処理特性を有し、裂けにくい水和された柔軟でゴム状の物質を形成する。バリア組成物は、適当な鋳型を選択することによりまたは押し出すことにより、シート、ディスク、チューブまたはロッドのような所望の形の物品に重合することができる。
【0045】
バリア組成物は、包装のためにさらに乾燥することができ、次に、患者(人間または人間でないほ乳類のような動物など)の身体内に移植する前に再度水和することができる。好適には、バリア組成物または整形した物品は、フィルムまたは膜を形成するためにコンベクション・オーブン内で含水率が約5%以下、好適には約2%以下になるように乾燥するか、フォームを形成するために真空内でフリーズ乾燥することが好ましい。バリア組成物は、外科手術による合併症を治療または防止するために単独で使用することができる(例えば、癒着の形成を防止する目的で)。
【0046】
バリア組成物は、織物(例えば、メッシュ、ニット、フリースおよびマットのような織ったまたは織っていない織物)のような医療用デバイスの表面上に流体として堆積し、任意の周知の方法により乾燥することができる。バリア組成物がフィルムまたはフォームの形をしている実施形態の場合には、バリア組成物を、任意の周知の方法で織物上に積層および/または縫いつけることができる。バリア組成物がマクロマー(例えば、流体ゲル)
を含む溶液から形成される実施形態の場合には、バリア組成物を流体ゲル内で織物を入れて、重合をスタートさせることにより織物の上に堆積することができる。疎水性の織物は流体ゲルの表面上に浮く。極性基を有する織物のような疎水性がもっと低い織物(例えば、エステル、アミド、ケトン、および炭酸塩)は、織物の存在下でマクロマー上の官能基の重合によりバリア組成物が織物にもっと密着するように、流体ゲル内に表面を通してある程度貫通することができる。ある層が他の層より疎水性が低い本発明の合成多重層織物の場合には、織物の疎水性の低い面を流体ゲル上に置くと、織物のその面上の繊維は流体ゲルを貫通し、一方、織物の他の面上の疎水性繊維は流体ゲル上に浮く。組成物が重合すると、高分子網目の一部は、織物の疎水性の低い繊維を捕捉し、織物上のバリアの接着強度が増大する。
【0047】
デバイスまたは繊維に塗布すると、バリア組成物を長期間の貯蔵および包装のために乾燥し、次に患者の身体内に移植する前に再度水和することができる。
通常、癒着バリアは、フィルム、フォーム、またはゲルの形をとることができる。ある実施形態の場合には、癒着バリアは、1平方フィート当たり全ポリマーの約20グラム以下の密度を有する。ある実施形態の場合には、癒着バリアは、1平方フィート当たり全ポリマーの約4〜約6グラムの密度を有する。ある実施形態の場合には、癒着バリアは、1平方フィート当たり全ポリマーの約5グラムの密度を有する。
【0048】
図4〜図6を参照すると、外科用プロテーゼ10は、臓側面122(例えば、腸、網)を露出している患者の体腔120の壁部110内の開口部100を治療するために使用することができる。開口部100を治療するために、医療スタッフは、開口部100を通して体腔120内に外科用プロテーゼ10を挿入する。外科用プロテーゼ10は、層37が臓側面122の方を向き、層33が壁部110の方を向き、開口部100をカバーするように設置される。外科用プロテーゼ10が設置されると、医療スタッフは、縫い目130により開口部100を閉じる。
【0049】
時間が経過すると、メッシュ30の癒着バリア20(例えば、約3〜28日)および層37(例えば、約60〜90日)が人体により吸収され、層33が臓側面122に接触したまま残る。しかし、時間が経過するにつれて、癒着バリア20は吸収され、開口部100が、内臓と外科用プロテーゼ10との間を形成する癒着の尤度が最小になるように(例えば、開口部100上に新しい腹膜面が形成される)程度に治癒する。さらに、生分解性糸32でできている層37は、癒着防止のための第2の防衛となる。すでに説明したように、層37は、約60〜90日中に人体により吸収される。その結果、癒着バリア20の失敗によりまたは癒着バリア20が吸収された後に形成されたかもしれない任意の癒着が、層37が吸収されると解放される。
【0050】
癒着バリア20および層37の両方が患者の人体により吸収されている間に、外科用プロテーゼ10の層33が壁部110内に吸収される。実質的に非生分解性糸34でできている層33は、開口部100を治療するために、組織が内側に生長することができる強力なマクロ多孔性構造を供給する(例えば、層33は、100ミクロン以上の孔部サイズを有する)。
【0051】
通常、外科用プロテーゼ10は、所望の必要な方法で作ることができる。ある実施形態の場合には、外科用プロテーゼ10は下記のように作られる。最初に、三次元メッシュ30が、生分解性糸32および非生分解性糸34により生成される。糸32、34は、二重ニードル・バー編み機のような工業用編み機内に導入される。糸32および34は、生分解性層(例えば、層37)および非生分解性層(例えば、層33)を有する、三次元マクロ多孔性構造を生成する任意の編みパターンに一緒に編まれる。ある実施形態の場合には、メッシュ30は、非生分解性糸、第1の生分解性糸、および第2の生分解性糸を一緒に
編むことにより形成される。この場合、非生分解性糸および第1の生分解性糸は、層33および層37をそれぞれ形成し、また第2の生分解性糸は層33および37を一緒に結合する。メッシュ30に癒着バリア20を塗布するために、光開始剤および癒着バリア前駆体成分を含む液剤がガラスのトレイに追加される。次に、メッシュ30は、トレイ内に入れられるが、その場合、生分解性面(層37)はトレイの底面を向いている(例えば、生分解性層は液剤と流体接触している)。光開始剤(例えば、約450nm〜約550nmの波長を有し、約1mW/cm〜約100mW/cmの輝度を有する光源)を作動する光源でトレイを照射することにより液剤が光重合する。光開始の結果、トレイ内の層37の少なくとも一部の周囲にヒドロゲルが形成される。次に、結果として得られるメッシュ/ヒドロゲルが、約2%以下(例えば、約0.8%のような、約1.2%以下の)の含水率になるようにヒドロゲルの乾燥が行われる。次に、メッシュ/乾燥したヒドロゲルは殺菌されて外科用プロテーゼ10になる。
【0052】
少なくとも3つの理由で、光重合中には層33の多孔性構造内ではヒドロゲルは形成されないと考えられている。第一に、ガラス・トレイに追加された液剤の量が、層37の厚さと等しいかまたはそれ以下の厚さを有するヒドロゲルを生成するために制御される。例えば、トレイの1平方インチ当たりに、光開始剤および癒着バリア前駆体成分を含む約1ミリリットルの溶液が追加される。第二に、約2.5ミリメートルの被圧縮厚さを有する生分解性層を含む14.5g/ftの面密度を有するメッシュがトレイに追加される。次に、(例えば、疎水性の)非生分解性糸34および親水性前駆体成分との間に互換性がないために、液剤は層33の孔部構造内に吸い上げられない。その結果、液剤が重合すると、液剤は層37の周囲にだけヒドロゲルを形成する。第三に、大部分が水である重合したヒドロゲルが空気乾燥すると、ヒドロゲルの厚さが非常に薄くなる。その結果、癒着バリアは層37の周囲にしか存在しなくなる。
【0053】
下記の実施例は例示のためのものであって、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
三次元メッシュを作るために、2つの5ミルのポリプロピレン・モノフィラメント繊維(サウスカロライナ州コロンビア所在のShakespeare Monofilament and Specialty Polymers社)、45デニールのポリグリコール酸マルチフィラメント繊維(コネチカット州コベントリ所在のTeleflex Medical社)、および90デニールのポリグリコール酸マルチフィラメント繊維(コネチカット州コベントリ所在のTeleflex Medical社)を二重ニードル・バー編み機(ドイツ、Oberlshausen所在の、Karl Mayer Textimaschinenfabrik GmbH社)に導入した。図2A〜図2Cを参照すると、表面上に実質的にポリ(グリコール)酸からできている層(図2C)、裏面上に実質的にポリプロピレンでできている層(図2B)、および2つの層を一緒に接続しているポリグリコール酸バインダー繊維(図2A)を有するメッシュが示されている。このメッシュは、下記のバー・パターンで、ペンシルバニア州パーカシー所在のSecant Medical社によって、繊維を一緒に編組することによって生成された。
【0054】
【表1】

製造後、三次元メッシュを繊維用精錬システムでクリーニングし、三次元メッシュ構造を安定にするために熱硬化フレーム内で150℃でアニーリング処理した。結果として得られた三次元メッシュは、インチ当たり平均18の畝、インチ当たり28の層、0.0319インチの厚さ、1平方ヤード当たり4.60オンスの面密度、ASTM規格#D3787−89に基づく方法により測定した場合、762±77ニュートンの破壊強度、ASTM規格#D5587−96に基づく方法により測定した場合、機械方向に平行な方向に127±21ニュートン、および機械方向に垂直な方向に203±15ニュートンの裂け伝搬強度、メッシュの縁部から5ミリメートルのところに置いた20ゲージのニードルの引っ張り力により測定した場合、機械方向に平行な方向に60±12ニュートン、および機械方向に垂直な方向に80±9ニュートンの縫い目保持強度を有していた。
【0055】
(実施例2)
癒着バリア20の前駆体を含む液剤を下記のように製造した。最初に、懸濁液を作るために、米国特許第5,017,229号および第5,527,893号の記述により調製した1グラムの変性し、照射したヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(HA/CMC)の粉末を、大きなセン断力の下で86グラムの脱イオン水と混合した。次に、アクリル酸エステル(20kTLA)で末端がキャップされた、米国特許第6,177,095号に記載のポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーをベースとする2.5グラムの光重合することができる化合物の粉末を懸濁液と混合した。次に、40ppmのエオシンY、光開始剤、4,000ppmのN−ビニルカプロラクタム、促進剤、0.54グラムのトリエタノールアミン、緩衝剤、および電子移動成分、および0.8グラムのリン酸カリウム、第2の緩衝剤を懸濁液と混合した。液剤を終了する目的で、最終量を100グラムにするために追加の脱イオン水を加えた。
【0056】
(実施例3)
一方の面が組織を内側に向けて生長させるためのものであり、他方の面が癒着防止特性を有する柔組織修復用の外科用プロテーゼを形成するために、実施例1に記載したメッシュを例2に記載した癒着バリアと結合した。
【0057】
癒着バリアをメッシュに結合するために、例2に記載した液剤を1平方フィート当たり5グラムの全ポリマーの流し込み密度でガラス板上に流した。ポリグリコール酸の層がガラス板の方を向いている状態で、メッシュを液剤内に入れた。このエリアを、120秒間、約4mW/cmの輝度でLEDアレイからの可視光線(450〜550nm)で照射した。光重合できる合成物を4時間の間、50℃でコンベクション・オーブン内で乾燥した。乾燥した合成物をガラス板から剥離し、種々のサイズに切断し、包装し、酸化エチレンで殺菌した。
【0058】
(実施例4)
実施例3で作った外科用プロテーゼを、擦剥した腸によりウサギのヘルニアの治療モデ
ル内で評価した。
【0059】
外科手術の際にそれぞれの体重が3kg〜5kgの20匹の性的に成熟したメスのニュージーランド白ウサギに麻酔をかけ、5cm×7cmの全厚の腹部筋肉切開を行い、盲腸剥離外科処置を行った。各ウサギに、実施例3で調製したポリプロピレン・メッシュの5cm×7cmの切片または外科用プロテーゼを使用した。すべてのウサギは外科処置から回復することができた。
【0060】
外科手術後28日目に、ウサギを安楽死させ、癒着形成および組織の内側への生長を含む材料の全性能を評価した。癒着形成を評価し、癒着による被覆の広がりについて視覚的に採点した。視覚的検査中、下記の基準、すなわち、0=癒着なし、1=癒着によりカバーされた欠陥が25%以下、2=癒着によりカバーされた欠陥が26%〜50%、3=癒着によりカバーされた欠陥が51%〜750%、4=癒着によりカバーされた欠陥が75%以上を使用した。
【0061】
視覚的検査の他に、欠陥の全表面積および癒着によりカバーされた表面積を計算するために画像分析を使用した。機械的試験結果およびSEMサンプルも収集し、分析した。下記の表2および3は結果を示す。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

表2の結果は、実施例3に記載した外科用プロテーゼが、生体内において大きな腸の癒着の防止に有意に効果的であったことを示す。さらに、実施例3に記載した外科用プロテーゼが、表3に示すように、優れた組織取り込み強度を有していた。
【0064】
(実施例5)
56.7平方センチメートルの面積を有するポリスチレンの皿内の10〜12mlの液剤内に、実施例1に記載したメッシュの生分解性ポリグリコン酸側を浸すことにより外科用プロテーゼを調製した。液剤の場合には、90グラムの水内の2グラムのカルボジイミ
ド変性HA/CMC粉末を100グラムの脱イオン水内の5%20kTLAマクロマーと混合した。脱イオン水内の40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタム、1.08グラムのトリエタノルアミン、および1.6グラムのリン酸カリウムからなる追加溶液を加えて、最終量を200グラムにした。
【0065】
次に、液剤を、45秒間、約4mW/cmの輝度で、LEDアレイ(450〜550nm)でヒドロゲルに光重合した。ヒドロゲルを含むメッシュは、ポリスチレン皿から剥離する前に、約−30℃および200ミリトルでフリーズ乾燥した。結果として得られた外科用プロテーゼを、テフロンでコーティングしたプレート間で10秒間5,000ポンドの力で圧縮し、蒸気が浸透できるパウチ内に二重包装した。この外科用プロテーゼを、使用前に酸化エチレンで殺菌した。
【0066】
実施例4に記述したプロセスにより、この実施例に記述するポリプロピレン・メッシュまたは外科用プロテーゼの5cm×7cmの切片を14日間、10匹のウサギの擦り剥がした腸を有するウサギ・ヘルニア治療モデルに、また28日間、10匹の異なるウサギに移植した。下記の表4が結果を示す。
【0067】
【表4】

癒着低減効率結果は、この実施例で記述した外科用プロテーゼが生体内で癒着の防止に効果的であることを示していた。
【0068】
(実施例6)
2.5%の20kTLA2、40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタム、0.54%のトリエタノルアミン、0.8%のリン酸カリウム、および1%のカルボジイミド変性HA/CMCの液剤を調製し、32mlの液剤を32平方インチのガラス板の上に広げた。実施例1のメッシュを生分解性ポリグリコール酸側を下にして液剤内に浸した。液剤を4分間約4mW/cmの輝度を有する発光ダイオードのアレイにより照射することにより光重合させた。ヒドロゲルで補強された結果として得られたメッシュを、ガラス板を除去する前に、4時間の間50℃で空気乾燥した。次に、補強したメッシュを外科用プロテーゼを形成するために7時間100℃で脱水した。
【0069】
(実施例7)
実施例6の外科用プロテーゼの外科処理特性を試験した。外科用プロテーゼの腹腔鏡臨床用途をシミュレートするために、大人の豚の腹部−骨盤腔を使用した。
【0070】
大人の豚の腹部−骨盤腔内に外科用プロテーゼを挿入した外科医は、湿ったまた乾燥した外科用プロテーゼの正しい面を見分けることができた。挿入する前に、外科医は、外科用プロテーゼの各端部にステイ縫い目を取り付けた。次に、外科医は、12ミリメートルのトロカールを通して外科用プロテーゼを供給する前に、数秒間、外科用プロテーゼに塩水内で水分を与えた。ステイ縫い目の一部は腹壁を貫通して固定された。外科用プロテーゼは、螺旋チタン鋲で側壁に固定された。設置中、外科用プロテーゼをある程度操作したが、全然剥離は起こらなかった。全体を通して、外科医は、外科用プロテーゼの処理、設置および耐久性に満足した。
【0071】
(実施例8)
9.4mg/cmの質量面積を有し、6ミルのポリプロピレン繊維からできている1つのアトラス・ポリプロピレン・メッシュに、約7mg/cmの質量/面積を有し、厚さ約1ミリメートルのポリグリコール酸(PGA)不織フェルト織物を一緒に縫いつけることにより外科用プロテーゼ用メッシュを形成した。PGA不織フェルト織物は、Scaffix International社(マサチューセッツ州ドーバ所在)から入手し、1つのアトラス・ポリプロピレン・メッシュはGenzyme Biosurgery社(マサチューセッツ州フォールリバー所在)から入手した。
【0072】
標準ミシンでBondek(登録商標)ポリグリコール酸縫い目サイズ6−0(コネチカット州コベントリ所在の現在のTeleflex Medical社である、コネチカット州コベントリ所在のGenzyme Biosurgery社が販売している)により、不織フェルト織物をポリプロピレン・メッシュに縫いつけた。一緒に縫いつけたメッシュの質量/面積は16〜17mg/cmであった。
【0073】
外科用プロテーゼを形成するために、メッシュを、PGA不織フェルト面を下にして、56.7cmの面積を有するポリスチレン皿内の20kTLA、40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタム、0.54%のトリエタノルアミン、0.8%のリン酸カリウムの、10mlの2.5%の液剤内に浸した。キセノン光源から5回の40秒サイクルで、液剤を光重合させてヒドロゲルにした。ヒドロゲルを含むメッシュを、−30℃および200ミリトルでフリーズ乾燥した。しっかりと組み込まれた柔軟で乾燥したサンプルが得られた。外科用プロテーゼを酸化エチレンで殺菌した。最初の加水の後で、外科用プロテーゼは優れたウェット取り扱い耐久性を示した。
【0074】
(実施例9)
実施例8のプロセスにより外科用プロテーゼ用メッシュを形成した。Genzyme社(マサチューセッツ州フレーミングハム所在)から入手した2.3%のカルボジイミド変性HA/CMC、および0.073mlのグリセロール、可塑剤を含む12グラムの懸濁液を含む56.7cmのポリスチレン皿に不織フェルト織物側を下にして浸した。皿は懸濁液を含み、メッシュを一晩空気乾燥した。
【0075】
すべての成分がしっかりと取り付けられ、質量/面積比が21.7mg/cmである高品質の合成サンプルが得られた。走査電子顕微鏡(SEM)により、可塑化したHA/CMC膜が、メッシュの不織フェルト織物側の繊維内に埋め込まれているのが観察された。癒着バリア内に気泡によるものと思われる隙間が観察された。
【0076】
残りの水分を除去するために、コンベクション・オーブン内で100℃で7時間サンプ
ルを加熱した。加水した場合、外科用プロテーゼの1つの面上でHA/CMCの親水性を有する潤滑な層が視覚により認識できた。最初の加水後および室温での24時間の水への浸漬の後で、外科用プロテーゼは優れたウェット取り扱い特性を示した。加水したサンプルを親指と人差し指の間で強く擦ったが剥離が起こらず、手で剥離することができなかった。
【0077】
(実施例10)
実施例8のプロセスにより外科用プロテーゼ用メッシュを形成した。20kTLA、40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタム、0.54%のトリエタノルアミン、0.8%のリン酸カリウム、および5%のヒアルロン酸の5mlの5%溶液を有する56.7cmのポリスチレン皿内に、不織フェルト織物側を下にして浸した。次に、Genzyme Biosurgery社(マサチューセッツ州レキシントン所在)から入手したキセノン光源から4回の40秒サイクルで、溶液を光重合させてヒドロゲルにした。
【0078】
外科用プロテーゼは、非常に優れたウェット取り扱い耐久性を有し、そのままでまたはフリーズ乾燥して後で使用することができた。
(実施例11)
9.4mg/cmの質量面積比を有し、6ミルのポリプロピレン繊維からできていて、Genzyme Biosurgery社(マサチューセッツ州フォールリバー所在)から入手した1つのアトラス・ポリプロピレン・メッシュに、ポリグラクチン910、ポリグリコール酸およびポリ酢酸繊維のコポリマーからできていて、Ethicon社(ニュージャージー州ニューブランズウィック所在)から入手したVicryl(登録商標)編みメッシュを一緒に縫いつけることにより外科用プロテーゼ用メッシュを形成した。
【0079】
標準ミシンでBondek(登録商標)ポリグリコール酸縫い目サイズ6−0(コネチカット州コベントリ所在の現在のTeleflex Medical社であるコネチカット州コベントリ所在のGenzyme Biosurgery社が販売している)により、Vicryl(登録商標)編みメッシュをポリプロピレン・メッシュに縫いつけた。一緒に縫いつけたメッシュの質量/面積は約15mg/cmであった。
【0080】
外科用プロテーゼを形成するために、56.7cmの面積を有するポリスチレン皿内の20kTLA、40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタム、0.54%のトリエタノルアミン、0.8%のカリウムの5mlの5%溶液内に、Vicryl(登録商標)面を下にしてメッシュを浸した。キセノン光源から4回の40秒サイクルで、溶液を光重合させてヒドロゲルにした。外科用プロテーゼを−30℃および200ミリトルでフリーズ乾燥した。しっかりと組み込まれた柔軟な乾いた外科用プロテーゼが得られた。最初の加水の後で、外科用プロテーゼは優れたウェット取り扱い耐久性を示した。
【0081】
個々の各公報または特許が、その全体を参照により組み込むものとすると詳細におよび個別に表示されているように、本出願に記載したすべての公報、出願および特許は、本明細書においては、同じ程度に参照により組み込むものとする。
【0082】
本明細書に開示するすべての機能は、任意に組合せることができる。本明細書に開示する各機能は、同じ、等価のまたは類似の目的のために機能する他の機能により置き換えることができる。それ故、別段の指示がない限り、本明細書に開示する各機能は、一般的な一連の等価または類似の機能の例にしか過ぎない。
【0083】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】外科用プロテーゼのある実施形態の断面図。
【図1B】図1Aの外科用プロテーゼの第1の表面の表面図。
【図1C】図1Aの外科用プロテーゼの第2の表面の表面図。
【図2A】外科用プロテーゼを形成するために使用するメッシュの断面図。
【図2B】図2Aのメッシュの非生分解性層の表面図。
【図2C】図2Aのメッシュの生分解性層の表面図。
【図3A】外科用プロテーゼを形成するために使用するメッシュのもう1つの実施形態の表面図。
【図3B】図3Aのメッシュの断面図。
【図4】治療前の体腔の壁部内の開口部の表面図。
【図5】治療のために正しく設置した図1Aの外科用プロテーゼを含む図4の開口部の表面図。
【図6】図5の開口部および外科用プロテーゼの表面図。この図においては、開口部は縫い目により閉じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用プロテーゼであって、
少なくとも2つの層を形成するために相互にルーピングしているか相互に絡み合っている少なくとも2つのタイプの糸を含む三次元メッシュであって、前記少なくとも2つの層のうちの一方が実質的に非生分解性であり、前記少なくとも2つの層のうちの他方が、実質的に生分解性である三次元メッシュと、
また前記三次元メッシュの第2の実質的に生分解層と相互に接続している癒着バリアとを備える外科用プロテーゼ。
【請求項2】
前記少なくとも2つのタイプの糸の一方が非生分解性糸である請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項3】
前記非生分解性糸が、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレート、またはこれらの組合せから選択される請求項2に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項4】
前記非生分解性糸が、約0.005インチの直径を有する請求項2に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項5】
前記少なくとも2つのタイプの糸の一方が生分解性糸である請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項6】
前記生分解性糸が、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される請求項5に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項7】
前記生分解性糸が、約90デニール程度の直径を有する請求項5に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項8】
前記三次元メッシュが、少なくとも1つの非生分解性モノフィラメント糸と、少なくとも1つの生分解性マルチフィラメント糸とを含む請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項9】
前記癒着バリアが架橋ポリマー・ヒドロゲルを含む請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項10】
前記癒着バリアが、カルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項11】
前記癒着バリアが、架橋ポリマー・ヒドロゲルと、カルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類とを含む請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項12】
前記架橋ポリマー・ヒドロゲルが、1つまたは複数の親水性ブロックと、1つまたは複数の生分解性ブロックと、1つまたは複数の架橋ブロックとを含む請求項11に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項13】
前記架橋ポリマー・ヒドロゲルが、アクリル酸エステルにより末端がキャップされた光重合性ポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含むモノマーの光重合により形成される請求項11に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項14】
カルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類が、カ
ルボジイミドで変性されたヒアルロン酸と、カルボジイミドで変性されたカルボキシメチルセルロースとを含む請求項11に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項15】
前記癒着バリアが、フィルムまたはフォームの形をしている請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項16】
前記癒着バリアが、ゲルの形をしている請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項17】
前記外科用プロテーゼが、約2%以下の含水率を有する請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項18】
前記外科用プロテーゼが、約1.2%以下の含水率を有する請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項19】
前記癒着バリアが、平方フィート当たり約5グラムの全ポリマーの密度を有する請求項1に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項20】
外科用プロテーゼであって、
非生分解性糸から実質的に形成されている第1の層であって、前記外科用プロテーゼの第1の外面を形成している第1の層と、
第1の生分解性糸から実質的に形成されている第2の層であって、第2の生分解性糸を含む前記第1の層に接続している第2の層と、
前記第2の層内に埋め込まれている癒着バリアであって、前記外科用プロテーゼの第2の外面を形成している癒着バリアとを備え、
前記外科用プロテーゼの前記第1の外面が、組織が前記第1の層内に生長することができるマクロ多孔性構造を有し、前記外科用プロテーゼの前記第2の外面が、前記第2の外面に隣接する組織の癒着の形成を最小限度にすることができる外科用プロテーゼ。
【請求項21】
前記外科用プロテーゼの前記第2の外面が微多孔性である請求項記20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項22】
前記マクロ多孔性構造が、約100ミクロン以上の孔部サイズを有する請求項記20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項23】
前記非生分解性糸が、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレート、またはこれらの組合せから選択される請求項記20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項24】
前記第1の生分解性糸が、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される請求項20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項25】
前記第2の生分解性糸が、ポリ(グリコール)酸、ポリ酢酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、アルギン酸カルシウムまたはこれらの組合せから選択される請求項20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項26】
前記バリアが、架橋ポリマー・ヒドロゲル、およびカルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む請求項20に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項27】
前記架橋ポリマー・ヒドロゲルが、1つまたは複数の親水性ブロックと、1つまたは複数
の生分解性ブロックと、1つまたは複数の架橋ブロックとを含む請求項26に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項28】
前記架橋ポリマー・ヒドロゲルが、アクリル酸エステルにより末端がキャップされた光重合性ポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含むモノマーの光重合により形成される請求項26に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項29】
カルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類が、カルボジイミドで変性されたヒアルロン酸と、カルボジイミドで変性されたカルボキシメチルセルロースとを含む請求項26に記載の外科用プロテーゼ。
【請求項30】
外科用プロテーゼを製造するための方法であって、
実質的に非生分解性糸からできている第1の層、および生分解性糸からできている第2の層を含む織物を供給するステップと、
マクロマーおよび開始剤を含む液剤を供給するステップと、
前記第2の層が前記液剤と流体接触するように前記液剤内に織物を入れるステップと、
前記液剤を光源で照射するステップとを含む方法。
【請求項31】
前記開剤が光開始剤である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記光開始剤がエオシンYを含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記液剤が、生体高分子と、促進剤と、緩衝剤とをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記生体高分子が、カルボジイミドとの反応により変性された少なくとも1つのポリアニオン性多糖類を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記緩衝剤がトリエタノルアミンを含む請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記緩衝剤がリン酸カリウムを含む請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記促進剤がN−ビニルカプロラクタムを含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記液剤が、1重量%のカルボジイミド変性ヒアルロン酸およびカルボキシメチルセルロースと、アクリル酸エステルにより末端がキャップされた2.5重量%のポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーと、40ppmのエオシンY、4000ppmのN−ビニルカプロラクタムと、0.54重量%のトリエタノルアミンと、0.8重量%のリン酸カリウムとを含む請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記光源が、約1〜約100mW/cmの輝度を有するLEDアレイである請求項30に記載の方法。
【請求項40】
外科用プロテーゼを製造するための方法であって、
実質的に非生分解性糸からできている第1の層、および生分解性糸からできている第2の層を含む織物を供給するステップと、
第1の高分子系、第2の高分子系および光開始剤を含む液剤を供給するステップと、
前記第2の層が液剤と流体接触するように、前記液剤上に織物を置くステップと、
前記液剤内の前記高分子系のうちの少なくとも一方を重合させる目的で、光開始剤を作動させるために前記液剤を光源で照射するステップとを含む方法。
【請求項41】
前記高分子系のうちの少なくとも1つの重合により、前記織物の前記第2の層内に一部が埋め込まれているバリア層が形成される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の高分子系が、カルボジイミド変性ヒアルロン酸およびカルボジイミド変性カルボキシメチルセルロースを含み、前記第2の高分子系が、アクリル酸エステルにより末端がキャップされたポリ(エチレン・グリコール)−炭酸トリメチレン/乳酸系マルチブロック・ポリマーを含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記光開始剤がエオシンYを含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記液剤が、促進剤および少なくとも1つの緩衝剤をさらに含む請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記液剤が、第1の緩衝剤および第2の緩衝剤をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記促進剤がN−ビニルカプロラクタムを含み、前記第1の緩衝剤がトリエタノルアミンを含み、前記第2の緩衝剤がリン酸カリウムを含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記光源が、約1〜約100mW/cmの輝度を有するLEDアレイである請求項40に記載の方法。
【請求項48】
コンベクション・オーブン内で前記織物および前記バリア層を乾燥するステップをさらに含む請求項41に記載の方法。
【請求項49】
患者の体腔を囲む壁部内の開口部を治療するための方法であって、
請求項1に記載の外科用プロテーゼを供給するステップと、
癒着バリアが癒着を防止する内臓または組織の方を向くように、前記患者の前記壁部開口部上の前記外科用プロテーゼを固定するステップとを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533405(P2007−533405A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509511(P2007−509511)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012312
【国際公開番号】WO2005/105172
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】