説明

外装ケース、及び電子機器

【課題】外装ケースを容易に製造でき、また、装飾効果及び耐久性を向上させる。
【解決手段】不透明樹脂層8の上方に透明樹脂層9を一体成形した外装ケース7であって、その透明樹脂層9の上方に蒸着薄膜層11を形成する。その蒸着薄膜層11は不連続蒸着により形成される。なお、不透明樹脂層8は一部が切り欠かれている(切欠孔8a参照)。また、透明樹脂層9と蒸着薄膜層11との間にアンダーコート層10が形成されている。そして、蒸着薄膜層11の上方にミドルコート層12が形成されて、さらに、そのミドルコート層12の上方にトップコート層13が形成されている。そのトップコート層13は紫外線硬化型塗料の塗装により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形による外装ケースと、その外装ケースを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機や携帯ゲーム機において、白色のABS系樹脂製の外装部品の表面に、希土類酸化物超微粒子(Ho2O2(酸化ホルミューム)やNd2O2(酸化ネオジューム)等の微粒子が混入されたアクリル系樹脂塗料をスプレー塗装して可逆的変色性(演色性)を有する塗膜層を形成し、その上に紫外線硬化型塗料をスプレー塗装して透明塗膜層を形成したものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、フレーク状や粒子状の光輝性顔料が混入されたアクリル系樹脂塗料をスプレー塗装してベース塗膜層を形成し、その上に、紫外線硬化型クリヤー塗料をスプレー塗装してトップクリヤー塗膜層を形成したものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−205181号公報
【特許文献2】特開2004−160718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2の技術では、ケース本体を形成した後に装飾層を塗装する方法であるため、製造に手間が掛かる。また、塗装の場合、層厚を数百ミクロン程度まで厚くすると、ウエルドや亀裂が生じるので、層厚は数十ミクロン程度までが限界であり、深みのある色を出すことが出来なかった。
【0005】
本発明の課題は、外装ケースを容易に製造でき、また、装飾効果及び耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、不透明樹脂層の上方に透明樹脂層を一体成形した外装ケースであって、前記透明樹脂層の上方に蒸着薄膜層を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の外装ケースであって、前記蒸着薄膜層は不連続蒸着により形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の外装ケースであって、前記蒸着薄膜層は光学蒸着により形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の外装ケースであって、前記不透明樹脂層は一部が切り欠かれており、その切り欠き部と対向する位置に設けられ発光する表示部を備え、この表示部の表示を切り欠き部から可視できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の外装ケースであって、前記透明樹脂層と前記蒸着薄膜層との間にアンダーコート層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の外装ケースであって、前記蒸着薄膜層の上方にミドルコート層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の外装ケースであって、前記ミドルコート層の上方にトップコート層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の外装ケースであって、前記トップコート層は紫外線硬化型塗料の塗装により形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、不透明樹脂層の上方に透明樹脂層を一体成形した外装ケースであって、前記透明樹脂層の上方に形成した蒸着薄膜層と、前記蒸着薄膜層の上方に形成したトップコート層と、を形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の外装ケースを備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外装ケースを容易に製造でき、また、耐久性を向上させ、装飾効果を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示すもので、図1(a)は携帯電話を開いた状態、図1(b)は折り畳んだ状態を示しており、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3はヒンジ部、4は操作部、5はメイン表示部、6はバックライト付のサブ表示部、7は外装ケースである。
【0018】
図示例では、第1の筐体1と第2の筐体2がヒンジ部3を介して折り畳み(開閉)自在に結合され、第1の筐体1に操作部4が設けられる一方、第2の筐体2にメイン表示部5及びサブ表示部6が設けられており、サブ表示部6は第2の筐体2の外装ケース7に設けられている。
【0019】
(実施形態1)
図2は図1の外装ケース7の全体に施された層構成を示すもので、8は不透明樹脂層、9は透明樹脂層、10はアンダーコート層、11は蒸着薄膜層、12はミドルコート層、13はトップコート層である。
【0020】
外装ケース7は、不透明樹脂層8の上に透明樹脂層9を二色成形により一体に形成したもので、不透明樹脂層8は、例えば黒色顔料を混入したABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(Acrylonitrile butadiene styrene))により形成され、透明樹脂層9は、例えば無色透明のPMMA樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate))により形成されている。この場合、透明樹脂層9が一次成形され、不透明樹脂層8が二次成形される。なお、不透明樹脂層8には、前記サブ表示部6の位置・大きさ・形状に対応する切欠孔8aが形成されている。
【0021】
そして、透明樹脂層9の上には、アンダーコート層10、蒸着薄膜層11、ミドルコート層12及びトップコート層13が積層されている。すなわち、透明樹脂層9の上に、例えば黒色塗料によるアンダーコート層10を塗装して、そのアンダーコート層10の上に金属の不連続蒸着による蒸着薄膜層11を形成する。
【0022】
ここで、不連続蒸着とは、樹脂表面に非導通の金属薄膜を形成するもので、あえて蒸着にむら(しま模様)を作り光沢に深みを持たせる加飾処理である。その蒸着材料としては、アルミニウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属が使用される。
【0023】
以上の蒸着薄膜層11の上に適宜色塗料によるミドルコート層12を塗装して、さらに、そのミドルコート層12の上に紫外線硬化型塗料による透明なトップコート(UVコート)層13を塗装する。
【0024】
以上、実施形態の外装ケース7によれば、黒色の不透明樹脂層8の上に透明樹脂層9を二色成形により一体に設けることで、耐久性を向上でき、さらに、その透明樹脂層9の上に黒色のアンダーコート層10を介して不連続蒸着による蒸着薄膜層11を設けることで、サブ表示部6において、切欠孔8aと対向する位置の内部には図示しないサブ液晶モジュールが設けられている。そして、サブ液晶モジュールを外観から見えなくしながら、バックライトを点灯させたサブ液晶表示時には文字等を浮かび上がらせることが可能であり文字などの視認も容易となる。なお、文字等を表示するためサブ液晶モジュール以外の表示モジュール、例えばLEDモジュールを用いてもよい。
【0025】
このように、表面にサブ液晶モジュールが見えなくなることで、意匠性がより自由になる。
そして、サブ液晶モジュール等を外観表面から完全に隠すための部品を追加する必要がなくなるので、部品点数の削減が図れる。
従って、外装ケース7を容易に製造できて、耐久性を向上させ、装飾効果を大幅に向上させることができる。
【0026】
また、黒色の不透明樹脂層8の上の透明樹脂層9で発現する色に加えて、その上の黒色のアンダーコート層10を介して設けた不連続蒸着による蒸着薄膜層11によるむら(しま模様)による光沢に深みを持たせた加飾処理によって、装飾効果を大幅に向上でき、意匠のバリエーションに富んだ高級感のある外装ケース7とすることができる。
【0027】
さらに、蒸着薄膜層11の上に適宜色のミドルコート層12を介してUVコートによる透明なトップコート層13を設けることで、カラーバリエーションに富むとともに、UVコートによる傷付き防止も図れる。
【0028】
そして、アンダーコート層10、蒸着薄膜層11、ミドルコート層12及びトップコート層13の色や膜厚等を変化させて、切欠孔8aの内部から液晶表示の透過率を調整することで、外装ケース7の表面に文字等を薄っすらと浮かび上がらせるための明るさを調整することができる。
【0029】
また、各層の色を変更して各種組み合わせることで、多種多様のカラーバリエーションを揃えることが可能である。
【0030】
(実施形態2)
図3は図1の外装ケース7の全体に施された層構成を示すもので、前述した実施形態1と同様、8は不透明樹脂層、9は透明樹脂層、10はアンダーコート層、11は蒸着薄膜層、12はミドルコート層、13はトップコート層である。
【0031】
実施形態2は、実施形態1で蒸着薄膜層11を不連続蒸着により形成したのに替えて、蒸着薄膜層11を不連続でない光学蒸着により形成した点が実施形態1と異なり、他の層形成は実施形態1と同様である。
【0032】
すなわち、実施形態2においては、透明樹脂層9の上に塗装したアンダーコート層10の上に光学蒸着による蒸着薄膜層11を形成する。
【0033】
ここで、光学蒸着は、主にSiO2、TiO2、ZrO2などの酸化物を使用して、不連続ではなく、光学特性を有する薄膜を形成する加飾処理である。
【0034】
以上、実施形態2の外装ケース7によれば、光学蒸着にすることで、光学特性を有する蒸着薄膜層11によって、実施形態1の通常の蒸着とは違うバリエーション展開が可能になる。
【0035】
(実施形態3)
図4は図1の外装ケースの全体に施された層構成を示すもので、前述した実施形態1と同様、8は不透明樹脂層、9は透明樹脂層、11は蒸着薄膜層、13はトップコート層である。
【0036】
実施形態3は、実施形態1におけるアンダーコート層10とミドルコート層12をなくした点が実施形態1と異なり、他の層形成は実施形態1と同様である。
【0037】
このように、透明樹脂層9の上に金属の不連続蒸着または光学蒸着による蒸着薄膜層11を形成して、その上にUVコートによる透明なトップコート層13を形成しても、同様の作用効果が得られる。
【0038】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書、その他の修飾されたケースを備える電子機器すべてに用いることができる。
また、実施形態では、不透明樹脂層として黒色顔料を混入したABS樹脂としたが、他の色でも良く、材料もABS樹脂に限らず任意である。
さらに、蒸着薄膜層として耐久性を向上させる材料(例えば硬い金属)で蒸着することでトップコート層をなくすようにしても良い。
また、他の透明樹脂層や蒸着薄膜層やコート層の材料や厚み等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。例えばミドルコート層はなくても良い。
また、外装ケースの全体に施さずに、その一部に本発明の層構成を適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話を開いた状態を示した正面図(a)と、折り畳んだ状態を示した正面図(b)である。
【図2】図1の外装ケースの全体に施された層構成を示すもので、実施形態1を示した断面図である。
【図3】図1の外装ケースの全体に施された層構成を示すもので、実施形態2を示した断面図である。
【図4】図1の外装ケースの全体に施された層構成を示すもので、実施形態3を示した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 筐体
5 メイン表示部
6 サブ表示部
7 外装ケース
8 不透明樹脂層
8a 切欠孔
9 透明樹脂層
10 アンダーコート層
11 蒸着薄膜層
12 ミドルコート層
13 トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明樹脂層の上方に透明樹脂層を一体成形した外装ケースであって、
前記透明樹脂層の上方に蒸着薄膜層を形成したことを特徴とする外装ケース。
【請求項2】
前記蒸着薄膜層は不連続蒸着により形成されることを特徴とする請求項1に記載の外装ケース。
【請求項3】
前記蒸着薄膜層は光学蒸着により形成されることを特徴とする請求項1に記載の外装ケース。
【請求項4】
前記不透明樹脂層は一部が切り欠かれており、その切り欠き部と対向する位置に設けられ発光する表示部を備え、この表示部の表示を切り欠き部から可視できるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の外装ケース。
【請求項5】
前記透明樹脂層と前記蒸着薄膜層との間にアンダーコート層が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の外装ケース。
【請求項6】
前記蒸着薄膜層の上方にミドルコート層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の外装ケース。
【請求項7】
前記ミドルコート層の上方にトップコート層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の外装ケース。
【請求項8】
前記トップコート層は紫外線硬化型塗料の塗装により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の外装ケース。
【請求項9】
不透明樹脂層の上方に透明樹脂層を一体成形した外装ケースであって、
前記透明樹脂層の上方に形成した蒸着薄膜層と、
前記蒸着薄膜層の上方に形成したトップコート層と、
を形成したことを特徴とする外装ケース。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の外装ケースを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82940(P2010−82940A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253446(P2008−253446)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】