説明

外装ケース

【課題】回路部品を基板に容易に取り付けることができる外装ケース1を提供する。
【解決手段】外装ケース1は、回路部品2を保持するケース本体3と、基板6に予め形成した取付穴5に前記ケース本体3を固定する固定手段4とを備える。前記固定手段4は、前記基板の一側表面に当接するストッパー部22と、塑性変形可能な係止片23とを有し、前記ケース本体3を前記基板6の一側6Aから挿入し、前記係止片23を折り曲げて前記係止片23を前記基板6の他側表面6Bに係合させることにより、前記外装ケース1を前記基板6に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品を基板に取り付ける外装ケースに関し、特に、取付穴を有する基板上に回路部品を取り付ける外装ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板としてのプリント基板上に、回路部品としてインダクタンス部品を取り付ける場合、外装ケースにインダクタンス部品を収容し、この外装ケースをプリント基板に固定して取り付けていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
このように、外装ケースをプリント基板に固定する場合について図6〜図8を参照して説明する。外装ケース101は、板状部材を適宜折り曲げて形成されており、インダクタンス部品としてのトランス102を左右両側から把持するケース本体103と、プリント基板104の一側表面に当接するストッパー部105と、楔形の係合爪106とを備える。また、プリント基板104には、ケース本体103を挿入する矩形状の取付穴107と、前記取付穴107の周囲に係合爪106を挿入する係合穴108とが予め穿設されている。そして、係合爪106を係合穴108の位置に合わせ、外装ケース101を取付穴107に挿入し、ストッパー部105がプリント基板104の一側表面に当接すると同時に、係合爪106が係合穴108に係合することにより、外装ケース101をプリント基板104に固定していた。
【特許文献1】特開2002−246235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、係合穴108は、係合爪106の形状に合わせて小さなスリット状に形成されているので、係合爪106を係合穴108の位置に合わせるのが困難であるだけでなく、ケース本体103を取付穴107に挿入しながら、同時に、係合爪106を係合穴108に挿入するのが困難で、トランス102をプリント基板104に取り付ける作業工数が増大するという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、回路部品を基板に容易に取り付けることができる外装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回路部品を保持するケース本体と、基板に予め形成した取付穴に前記ケース本体を固定する固定手段とを備える外装ケースにおいて、前記固定手段は、前記基板の一側表面に当接するストッパー部と、塑性変形可能な係止片とを有し、前記係止片は、前記ケース本体を前記基板の一側から前記取付穴に挿入した状態で、前記基板の他側表面に係合するように折り曲げ可能に形成され、それにより前記ケース本体を前記基板に固定するものであることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1において、前記係止片は、前記基板の他側表面に当接する一端に傾斜面を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項2において、前記係止片は、前記係止片の基端と、前記ストッパー部の前記基板に当接する一側表面との間の長さが、前記基板の厚さより短い長さとなる位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ケース本体は、平面視における形状が矩形状であって、角部に前記係止片を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ケース本体は、前記回路部品を載置する底面部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の外装ケースによれば、ケース本体を取付穴に挿入した後、係止片を折り曲げて基板の他側表面に係止片を係合させて外装ケースを基板に固定することとしたから、従来のように係合爪を係合穴の位置に合わせる必要がないので、回路部品を基板に容易に取り付けることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の外装ケースによれば、係止片の先端が基板と干渉することがないので、容易に係止片を折り曲げることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の外装ケースによれば、基端側において、係止片の一端を確実にプリント基板の他側表面に係合させることができる。
【0014】
また、請求項4に記載の外装ケースによれば、ペンチなどで容易に係止片を把持できるので、より容易に回路部品を基板に容易に取り付けることができる。
【0015】
また、請求項5に記載の外装ケースによれば、回路部品を確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
図1に示す外装ケース1は、回路部品としてのインダクタンス部品、例えば本実施形態ではトランス2、を保持するケース本体3と、固定手段4とを備え、全体として、予め取付穴5を穿設した基板としてのプリント基板6にインダクタンス部品を取り付け得るように構成されている。
【0018】
トランス2は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、コア7、1次巻線8及び2次巻線9とを備える。このトランス2は、全体として、1次巻線8に断続的に電流を流すことにより、コア7内を通る磁束を発生、変化させる。このように発生、変化した磁束が2次巻線9と鎖交することにより、2次巻線9、すなわちトランス2の2次側に電圧を誘起し得るように構成されている。
【0019】
コア7は、例えば鉄心又はフェライトコア7などの高透磁率部材からなり、円筒状の脚部10を備える。1次巻線8は、従来と同様の3層絶縁電線からなり、前記電線を径大方向へ順に複数回巻き回して形成したコイル部を備える。この1次巻線8のコイル部はコア7の脚部10に巻装される。2次巻線9は、例えば銅板などの扁平板状の金属板材から形成されている。また、1次巻線8の中間には、絶縁板(図示しない)が設けられている。2次巻線9は、前記コア7の脚部10を挿通する貫通穴12を有し、前記1次巻線8をサンドイッチ状に挟み込むように配置され、ボルト13で一体化される。このように構成されたトランス2は、コア7の脚部10の中心軸が鉛直方向となる向きに設置される。
【0020】
プリント基板6に形成された取付穴5は、平面視における形状が、矩形状の外装ケース1を挿入し得るように矩形状で構成される。因みに、後述するように固定手段4は、従来のように係合爪を有しないので、取付穴5の周囲に係合爪を挿入する係合穴を形成する必要はない。
【0021】
図2に示す外装ケース1は、銅やアルミニウムなどの金属のばね性を有する略矩形の板状部材を、適宜プレス加工により折り曲げるなどして一体形成されている。ケース本体3は、底面部20、側面部21及び固定手段4とを備える。底面部20はトランス2の平面形状に相当する矩形状からなり、この底面部20の一対の短辺には、それぞれ前記側面部21が垂直に立ち上げ形成されている。この側面部21の高さ方向の長さは、トランス2の高さ方向の長さに略等しい長さに形成されている。
【0022】
前記底面部20の一対の長辺には、それぞれ前記固定手段4が形成されている。以下、本発明の特徴的構成である固定手段4の構成について詳細に説明する。固定手段4は、ストッパー部22,22,22及び係止片23,23,23,23からなり、プリント基板6を狭持してケース本体3をプリント基板6に固定し得るように構成されている。底面部20の長辺には、立設部24が垂直に立ち上げ形成されており、該立設部24の上端を外側へ直角に折り曲げてストッパー部22,…,22を形成している。
【0023】
図3に示すように、一対の長辺の一方には幅の短いストッパー部22が両端にそれぞれ1個、合計2個形成されており、一対の長辺の他方には幅の長いストッパー部22が中央に1個形成されている。
【0024】
また、立設部24の両端と底面部20との接合部分に切り欠き25,…,25を設けることにより、係止片23,…,23がケース本体3の幅方向の外形を構成する立設部24に一体的に形成される。従って、係止片23,…,23は、底面部20の角部である四隅に設けられ、先端が底面部20の長さ方向の外側に位置するように形成されている。
【0025】
この係止片23,…,23は、図4に示すように、立設部24の長手方向端部の延長線上に突設されてなり、基端23Aを支点として塑性変形可能に形成されている。さらに係止片23,…,23は、プリント基板6の他側表面(本図には図示しない)に当接する一端としての上端26に、傾斜面26Aを備える。この傾斜面26Aは、係止片23,…,23の基端側から先端側へいくに従って下方へ傾斜し、傾斜面26Aの基端側及び先端側の両端において水平面26B,26Cに繋がっている。係止片23,…,23は、傾斜面26Aに繋がっている水平面26B,26Cのうち、係止片23,…,23の基端としての係止片23,…,23の基端23A側の水平面26Bと、ストッパー部22,…,22のプリント基板6に当接する一側表面22Aとの間の長さLが、プリント基板6の厚さTより短い長さとなるように形成されている。また、係止片23,…,23の先端下側の角はR形状に形成されている。
【0026】
次に、トランス2をプリント基板6に取り付ける方法について説明する。まず、コア7に1次巻線8及び2次巻線9を組み付けたトランス2は、コア7の脚部10の中心軸が鉛直方向となる向きにケース本体3の底面部20に載置され、側面部21及び立設部24で狭持される。このようにして、外装ケース1は、トランス2を保持する。
【0027】
次いで、トランス2を保持した外装ケース1は、プリント基板6に予め穿設してある取付穴5に、ケース本体3を底面部20から挿入する。ここで、本実施形態の特徴的構成である固定手段4は、従来のように係合爪を有さず、さらに、係止片23,…,23は平面視において、ケース本体3の幅方向の外形を構成する立設部24の延長線上に一体的に形成されているので、ケース本体3の底面部20を取付穴5に位置決めするだけでケース本体3を取付穴5に挿入することができる。従って、従来のように係合爪を係合穴の位置に合わせる必要がないので、従来に比べ格段と容易にケース本体3の底面部20を取付穴5に挿入することができる。
【0028】
外装ケース1は、ケース本体3のストッパー部22,…,22がプリント基板6の一側表面6Aに当接するまで挿入される。ここで、ストッパー部22,…,22は、一対の長辺の一方には幅の短いストッパー部22が両端にそれぞれ1個形成されており、一対の長辺の他方には幅の長いストッパー部22が中央に1個形成されている。従って、外装ケース1は、3箇所においてプリント基板6に対する外装ケース1の鉛直方向の位置決めをするので、ケース本体3とプリント基板6の一側表面6Aとの間のがたつきを防止することができる。
【0029】
外装ケース1は、ケース本体3のストッパー部22,…,22がプリント基板6の一側表面6Aに当接するまで挿入された後、図5に示すように、プリント基板6の他側表面6Bにおいて、基端23Aを支点として係止片23,…,23を底面部20の外側へ折り曲げることにより、プリント基板6の他側表面6Bに係止片23,…,23が係合する。このようにして、外装ケース1は、ストッパー部22,…,22と係止片23,…,23とでプリント基板6を狭持することにより、ケース本体3をプリント基板6に固定する。
【0030】
ここで、係止片23,…,23を折り曲げるには、公知のペンチ(図示しない)を用いることができ、さらに本実施形態に係る外装ケース1では、係止片23,…,23が、底面部20の角部としての四隅であって、先端が外側に位置するように形成されている。従って、底面部20などのケース本体3と干渉することなくペンチで容易に係止片23,…,23を把持することができるので、容易に基端23Aを支点として係止片23,…,23を折り曲げることができる。
【0031】
また、外装ケース1は、係止片23,…,23がプリント基板6の他側表面6Bに当接する一端としての上端に、係止片23,…,23の基端側から先端側へいくに従って下方へ傾斜する傾斜面26Aを備える。これにより、外装ケース1は、係止片23,…,23の先端がプリント基板6と干渉することがないので、基端23Aを支点として容易に係止片23,…,23を折り曲げることができる。
【0032】
さらに、外装ケース1は、該傾斜面26Aに繋がっている水平面26B,26Cのうち、係止片23,…,23の基端23A側の水平面26Bと、ストッパー部22,…,22のプリント基板6に当接する一側表面22Aとの間の長さLが、プリント基板6の厚さTより短い長さとなるように形成されている。これにより、基端23A側において、係止片23,…,23の一端26を確実にプリント基板6の他側表面6Bに係合させることができる。
【0033】
また、外装ケース1は、係止片23,…,23の先端下側の角をR形状に形成したことにより、係止片23,…,23が取付穴5の内縁に引っ掛かるのを防止することができるので、ケース本体3を取付穴5に容易に挿入することができる。
【0034】
また、外装ケース1では、係止片23,…,23を折り曲げてプリント基板6の他側表面6Bに係合させることによりケース本体3をプリント基板6に確実に固定することとしたから、半田付けの必要もない。
【0035】
本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記した実施形態では、基板がプリント基板6の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、基板は、単なる板状部材であってもよい。
【0036】
また、上記した実施形態では、回路部品としてのインダクタンス部品がトランス2である場合について説明したが、チョークコイル等のようなコア7を有する他のインダクタンス部品でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る外装ケースの使用状態を示す斜視図であり、取付前の状態を示す図である。
【図2】本実施形態に係る外装ケースの構成を示す斜視図である。
【図3】同上、平面図である。
【図4】同上、係止片の構成を示す部分拡大図である。
【図5】同上、使用状態を示す底面から見た斜視図であり、取り付けている状態を段階的に示す図である。
【図6】従来例に係る外装ケースの使用状態を示す斜視図であり、取付前の状態を示す図である。
【図7】従来例に係る外装ケースの構成を示す斜視図である。
【図8】同上、使用状態を示す底面から見た斜視図であり、取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 外装ケース
2 トランス(回路部品)
3 ケース本体
4 固定手段
5 取付穴
6 プリント基板(基板)
6A 一側表面
6B 他側表面
20 底面部
22 ストッパー部
23 係止片
23A 基端
26A 傾斜面
26 一端
L 長さ
T 基板の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部品を保持するケース本体と、基板に予め形成した取付穴に前記ケース本体を固定する固定手段とを備える外装ケースにおいて、
前記固定手段は、
前記基板の一側表面に当接するストッパー部と、
塑性変形可能な係止片とを有し、
前記係止片は、前記ケース本体を前記基板の一側から前記取付穴に挿入した状態で、前記基板の他側表面に係合するように折り曲げ可能に形成され、それにより前記ケース本体を前記基板に固定するものである
ことを特徴とする外装ケース。
【請求項2】
前記係止片は、前記基板の他側表面に当接する一端に傾斜面を備えることを特徴とする請求項1記載の外装ケース。
【請求項3】
前記係止片は、前記係止片の基端と、前記ストッパー部の前記基板に当接する一側表面との間の長さが、前記基板の厚さより短い長さとなる位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載の外装ケース。
【請求項4】
前記ケース本体は、平面視における形状が矩形状であって、角部に前記係止片を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の外装ケース。
【請求項5】
前記ケース本体は、前記回路部品を載置する底面部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の外装ケース。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−262987(P2008−262987A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103114(P2007−103114)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】