説明

外装用フィルム及びその製造方法

【課題】非PVCでありながらPVCのような耐傷付性を有するとともに、表面平滑性にも優れた外装用フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、表面層が形成された外装用フィルムであって、上記表面層は、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含み、表面層の厚みが20μm以下、微粒子の平均粒径が20μm以下で、かつ、微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下である外装用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装用フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広告宣伝用、車輌用等の用途における意匠性や表面の保護等を目的として、合成樹脂からなる外装用フィルムが使用されている。このような外装用フィルムは、耐傷付性等の性能が要求されていることから、従来からフィルム材料としてポリ塩化ビニル(PVC)樹脂が使用されてきたが、近年、環境保護の観点から非塩素化(非ハロゲン化)材料への代替が求められている。
【0003】
代替材料として、特に経済性や安定性を考慮してポリオレフィン系樹脂が有力視されているが、フィルムの耐傷付性が劣るという問題がある。このため、耐傷付性が求められる製品においては、PETフィルム等の他のフィルムとのラミネートやUV硬化樹脂のコーティング等により耐傷付性を高めることが行われてきたが、材料、加工コストの問題が生じてしまう。特に近年、屋内外用途の合板、鋼板用、壁紙等の化粧材、ステッカー、マーキングフィルム、看板装飾用印刷ベースフィルム、これらの表面保護フィルムとして、耐傷付性に優れたフィルムを提供することが望まれている。
【0004】
特許文献1には、フィルム等の基材上に、平均粒径3〜50μmの球状粒子及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート等の樹脂を含む組成物をコーティングした化粧シートが開示され、球状粒子の平均粒径がコーティング膜厚の30〜200%の範囲内とすることが記載されている。しかし、ポリオレフィン系基材について詳細に検討されたものではない。また、表面層(コーティング層)に使用する樹脂のガラス転移温度や球状粒子とコーティング膜厚の関係も詳細に検討されていない。
【特許文献1】特開平11−10823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、非PVCでありながらPVCのような耐傷付性を有するとともに、表面平滑性にも優れた外装用フィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、表面層が形成された外装用フィルムであって、上記表面層は、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含み、表面層の厚みが20μm以下、微粒子の平均粒径が20μm以下で、かつ、微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下であることを特徴とする外装用フィルムである。
【0007】
上記微粒子は、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ウレタン及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を用いたものであることが好ましい。
上記表面層は、更に無黄変型イソシアネートを含むものであることが好ましい。
【0008】
上記無黄変型イソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
上記基材フィルム上に、アクリル系粘着剤で形成される粘着剤層を有することが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上述の外装用フィルムの製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含む組成物を塗工して表面層を形成する工程を有し、表面層の厚みが20μm以下、微粒子の平均粒径が20μm以下で、かつ、微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下であることを特徴とする外装用フィルムの製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の外装用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、特定のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含む表面層を設けたもので、更に表面層の厚み及び微粒子の平均粒径を好適化したものである。このような構成を有しているため、本発明のフィルムは耐傷付性に優れると同時に、高い表面平滑性も有している。
【0011】
このように、本発明において耐傷付性及び表面平滑性を両立できる理由は、以下のように推察される。
表面層に使用される微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下とすると、ウレタン変性アクリル樹脂を構成成分とする表面層中の微粒子が表面層の表面側に極わずかに突出、点在した状態となる。このような表面状態の表面層が他の物品と接触した場合、突出、点在した微粒子が当該物品と接触するため、表面層におけるウレタン変性アクリル樹脂の当該物品への接触が防止されることになる。このため、本発明における表面層において、高い耐傷付性を付与できたものと推察される。
【0012】
一方、微粒子の平均粒径が表面層の厚みより大きいと、上記作用機能が高められることにより、より高い耐傷付性が得られるが、微粒子が表面から大きく突出した状態になるため、表面外観が荒れた状態となる。しかし、本発明では、上述したように、微粒子が表面層の表面から極わずかに突出、点在した状態となっているため、表面層の表面において優れた平滑性も得られていると推察される。
【0013】
上記外装用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルムを有している。上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、なかでも、ポリプロピレン系樹脂を使用することがより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーをすべて使用すること(3種混合系)が特に好ましい。これにより、優れた耐傷付性及び表面平滑性を得ることができる。また、耐薬品性、後加工性、耐候性も確保できる。
【0014】
上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、単独重合ポリプロピレン(h−PP)、ランダム共重合ポリプロピレン(r−PP)、ブロック共重合ポリプロピレン(b−PP)等を挙げることができる。なかでも、ランダム共重合ポリプロピレンが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0015】
上記ポリエチレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等を挙げることができる。なかでも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0016】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、TPOともいう)としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。TPOを使用することにより、従来から使用されている塩化ビニル樹脂のような優れた柔軟性と伸縮性を得ることができる。
【0017】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−プロピレン共重合体成分及び/又はポリブチレン成分と、ポリプロピレン成分とを有する共重合体であることが好ましい。このような共重合体は、ハードセグメントとなる結晶性のポリプロピレン樹脂とソフトセグメントとなるエチレン−プロピレンゴム成分やブチルゴム成分とからなるものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合を調節することによって、種々の物性のものを得ることができる。上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含むモノマー組成物により得られる共重合体であってもよい。
【0018】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、上記ハードセグメントとソフトセグメントに必要に応じて架橋剤や可塑化オイル等を混合し、押出機を用いて溶融混練し、架橋させるような従来から用いられている方法の他、近年、上記ハードセグメントとソフトセグメントとを重合反応によって直接に製造する方法も知られており、特に、後者の方法によるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で製造するオレフィン系熱可塑性エラストマーという趣旨から、リアクターTPOと呼ばれている。
【0019】
上記基材フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる場合、上記ポリエチレン系樹脂の配合量は、上記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましい。また、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーの配合量は、上記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して50〜150質量部であることが好ましい。上記範囲内であると、本発明の効果を良好に得ることができる。
【0020】
上記基材フィルムは、上記ポリオレフィン系樹脂のほかに、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、改質剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、粘着付与剤、充填剤、防カビ剤等、一般に樹脂に添加される公知の添加剤を適量添加してもよい。
【0021】
上記基材フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、必要に応じて添加剤等の他の成分を含むポリオレフィン系樹脂組成物を押し出し成形、カレンダー成形等で成形することによって製造することができる。
【0022】
上記基材フィルムがカレンダー成形により得られるものである場合、ポリ塩化ビニル樹脂用のカレンダー加工設備を用いて、上記ポリオレフィン系樹脂組成物をカレンダー加工することにより、均質な薄いフィルムを得ることができる。上記カレンダー加工に用いられるカレンダー形式は、特に限定されないが、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等を挙げることができる。
【0023】
上記基材フィルムは、厚さが0.05〜0.2mmであることが好ましい。0.05mm未満である場合や0.2mmを超える場合には、貼り付けが困難になるおそれがある。0.06〜0.15mmであることがより好ましい。
【0024】
上記基材フィルムは、上記オレフィン系樹脂組成物を用いて得られたフィルムの一方の面に表面活性化処理を施したものであることが好ましい。上記表面活性化処理とは、処理の前後で、処理される表面の化学構造に変化を生ずるものを意味する。上記表面活性化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理等を挙げることができ、なかでも、簡便に充分な処理効果を得ることができる点から、コロナ処理を施すことがより好ましい。
【0025】
本発明の外装用フィルムは、上記基材フィルム上に、特定のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含む表面層が形成されたものである。このような両成分を含む表面層が設けられているため、フィルムに優れた耐傷付性及び表面平滑性を付与できる。
【0026】
上記ウレタン変性アクリル樹脂は、アクリル樹脂をウレタン成分で変性したものであり、ウレタン樹脂とアクリル樹脂成分を化学的に結合させることにより製造することができる。
ウレタン樹脂には種々の組成があり、例えば、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエーテル系、ラクトン系等が挙げられるが、ポリエステル系は、耐水性が弱いため屋外での使用には適さず、イソプロピルアルコール等のアルコールを含有している薬品にも弱く接触した場合に白濁が顕著となる。また、耐傷付性もPVCには及ばない。ポリカーボネート系は、耐水性や耐傷付性に優れるもののアルコールや酸には弱い傾向にあり、ポリエーテル系は、光、熱、油への耐久性が悪い。これに対し、本発明では、上記特定のウレタン変性アクリル樹脂を用いているため、耐傷付性や表面平滑性だけでなく、耐薬品性、後加工性(3次元追従性)、耐侯性にも優れたフィルムを得ることができる。
【0027】
上記化学的に結合させる具体的方法としては、例えば、(1)β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を用いて得られたアクリル重合体に水酸基を導入したポリマーと分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとを反応させる方法、(2)分子末端(片末端又は両末端)に水酸基を有するアクリル成分と分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとを反応させる方法、(3)アクリルジオール混合系にジイソシアネートを添加する方法、(4)アクリルモノマーに両末端又は片末端イソシアネートポリエステル、ポリエーテル等を付加した後、そのウレタンアクリレートを重合する方法、等を挙げることができる。このような方法で得られるウレタン変性アクリル樹脂において、ウレタン鎖とアクリル鎖とは互いにブロック型で結合していてもよく、グラフト型で結合していてもよい。これらの合成に用いられるアクリル樹脂成分としては、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、マレイン酸、これらの誘導体等の重合性モノマーを共重合したもの等を挙げることができる。これらのウレタン変性アクリル樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ウレタン変性アクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃である。本発明では、上記範囲内のTgを有するウレタン変性アクリル樹脂を使用することにより、耐薬品性、後加工性、耐侯性の性能を確保できる。また、優れた耐傷付性及び表面平滑性も得ることができる。60℃未満であると、耐薬品(アルコール)性に劣り、100℃を超えると、後加工の折り曲げ時に割れや白化が生じる。Tgは、65〜95℃であることがより好ましい。
【0029】
本明細書におけるガラス転移温度(Tg)とは、JIS K7121(1987年)に準拠して、加熱速度10℃/minの昇温条件で熱流束DSCにより求めた中間点ガラス転移温度(℃)をいい、試験片の状態調節については「一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用するものとする。なお、使用装置は、示差走査熱量計(DSC6200、セイコー社製)である。
【0030】
上記表面層は、平均粒径20μm以下の微粒子を含んでいる。上記ウレタン変性アクリル樹脂を構成成分とする表面層に更に平均粒径20μm以下の微粒子を添加することにより、フィルムの表面層において、表面平滑性及び耐傷付性を両立できる。高い表面平滑性を有しているため、ツヤ消し(マット)タイプのフィルムにおいてギラつきを抑えることができ、外観が滑らかに見える。上記微粒子の平均粒径は、5〜20μmであることが好ましく、6〜10μmであることがより好ましい。
【0031】
上記微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された値である。同装置としては、「SALD−2000」(島津製作所社製)、「LA−920」(堀場製作所社製)等を挙げることができる。
【0032】
上記微粒子としては、例えば、アルミナ、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ナイロン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、パラフィン、ポリテトラフルオロエチレン等のワックス系、シリコン系、アマイド系微粒子等が挙げられる。なかでも、アルミナ、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ナイロン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂の微粒子が好ましい。この場合、価格や取り扱いやすさの点で有利である。また、優れた耐傷付性や表面平滑性を得ることもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記微粒子の具体的な形状としては特に限定されず、例えば、球状、楕円球状、円柱状、不定形状等、任意の形状を採用することができる。例えば、樹脂系の微粒子である場合は、原料樹脂を押出機内で溶融した後、押出機からストランド状に押出した線状樹脂を、カッター等で切断する方法により粒子状としたものを製造できる。
【0034】
上記表面層において、上記微粒子の含有量は、上記ウレタン変性アクリル樹脂100質量部に対して、3〜15質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。3質量部未満であると、耐傷付性が不足するおそれがある。15質量部を超えると、表面層が白濁して見え、基材フィルムの色調(鮮やかさ)が失われるおそれがある。
【0035】
上記表面層は、更にイソシアネート系硬化剤を用いて得られるものが好ましい。上記ウレタン変性アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤を併用することにより、耐傷付性、耐薬品性、後加工性、耐侯性をより向上させることができる。この場合、ウレタン変性アクリル樹脂として、末端又は側鎖に活性水素基を含むものを用い、ポリイソシアネート化合物で架橋させることができる。
【0036】
上記イソシアネート系硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネート、2,4又は2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート化合物;2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。なかでも、HDIを用いることが特に好ましい。TDIに代表される黄変型イソシアネートは耐候劣化により黄変が生じるが、HDIに代表される無黄変型イソシアネートはこのような問題を抑制できる。また、上記表面層において、上記ウレタン変性アクリル樹脂及びHDIを併用することによって、本発明の効果をより良好に得ることができる。
【0037】
上記表面層は、上記ウレタン変性アクリル樹脂、微粒子のほかに、公知の添加剤(紫外線吸収剤等)を適量含むものであってもよい。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、なかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0038】
上記表面層の形成方法としては特に限定されず、例えば、上記ウレタン変性アクリル樹脂、微粒子、必要に応じて他の成分を含む組成物を、従来公知の塗工方法により基材フィルム上に形成することができる。
【0039】
上記表面層の厚みは、20μm以下である。これにより、フィルムの表面層において、優れた表面平滑性及び耐傷付性を得ることができる。5〜20μmであることが好ましく、6〜15μmであることがより好ましい。
【0040】
上記微粒子の平均粒径は、上記表面層の厚み以下である。本発明では、平均粒径が20μm以下で、かつ形成する表面層の厚み以下の微粒子と、上記ウレタン変性アクリル樹脂とを使用して、厚み20μm以下の表面層を基材フィルム上に設けている。このような構成で表面層を形成することが本発明では重要であり、これにより、耐傷付性及び表面平滑性に優れた外装用フィルムを得ることができる。
【0041】
上記微粒子の平均粒径(μm)は、上記表面層(μm)の厚みの30〜100%の範囲内であることが好ましく、60〜90%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であると、優れた耐傷付性及び表面平滑性を得ることができる。
【0042】
本発明の外装用フィルムは、基材フィルム側(基材フィルムの表面層が形成されていない面)に、粘着剤層を有するものであることが好ましい。これにより、車輛や広告宣伝等の種々の用途において、フィルムを良好に貼付することができる。
【0043】
上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を用いて形成されるものであることが好ましい。上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含む粘着剤である。これにより、粘着加工品に優れた耐侯性を付与することができる。
【0044】
上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はこれらの共重合体等を挙げることができる。上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性単量体とを共重合して得られる共重合体が好ましい。
【0045】
上記アクリル系重合体の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートと2−メトキシエチルアクリレートと酢酸ビニルとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートと2−メトキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとアクリル酸とからなる共重合体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記粘着剤層は、粘着付与剤、硬化剤、公知の添加剤等を含むものであってもよい。
上記粘着剤層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の塗工方法によって形成することができる。上記粘着剤層は、厚さが3〜50μmであることが好ましい。3μm未満であると、充分な密着性及び接着力を得ることができないおそれがある。50μmを超えても、効果の向上は望めず、経済的に不利となるおそれがある。
【0047】
上記外装用フィルムは、上記粘着剤層に加えて、更に離型層を有するものであってもよい。上記離型層は、フィルムを貼り付ける際に、剥離するものである。上記離型層は、粘着剤層において、基材フィルムと反対側の表面に積層される。上記離型層の積層は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、離型層に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成した後、粘着剤層を基材フィルムに貼着(積層)する方法が好適である。
【0048】
上記離型層としては、例えば、離型処理が施されたフィルムを用いることができる。
上記離型処理が施されたフィルムの材質としては、PET、紙、オレフィン系樹脂フィルム等を挙げることができる。上記離型処理を施す際に使用する離型剤としては、シリコーン系のものが好適に用いられる。上記離型層の厚さは、粘着剤層との組み合わせ、又は、目的や用途等に応じて設定すればよい。
【0049】
以下、本発明の外装フィルムの例を図1、2を用いて更に具体的に説明する。
図1、2は、本発明の外装用フィルムの概略図の一例を示した図である。図1で示された外装用フィルムは、表面層1、基材フィルム2及び粘着剤層3が積層されているものである。図2で示された外装用フィルムは、表面層1、基材フィルム2、粘着剤層3及び離型層4が積層されているものである。図1、2の表面層1には、微粒子5が含まれている。
これらの外装用フィルムは、耐傷付性に優れているとともに、高い表面平滑性も有している。これは、図1、2に示されているように、微粒子5がわずかに突出していることによると推察される。また、優れた耐薬品性、後加工性、耐侯性も有している。
【0050】
上記外装用フィルムの製造方法としては、上記ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、上記特定のウレタン変性アクリル樹脂及び平均粒径20μm以下の微粒子を含む組成物を塗工して、厚み20μm以下の表面層を形成する工程を有し、その工程を微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下となるように調整する方法を挙げることができる。上記基材フィルムの製造、上記ウレタン変性アクリル樹脂を含む組成物の塗工は、上述した方法により行うことができる。上記製造方法により、優れた耐傷付性及び表面平滑性を有するフィルムを製造できる。また、耐薬品性、後加工性、耐侯性も付与できる。このような製造方法も本発明の1つである。
【発明の効果】
【0051】
本発明の外装用フィルムは、上述した構成からなるので、優れた耐傷付性を有すると同時に、高い表面平滑性も有している。また、耐薬品性、後加工性、耐侯性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0053】
実施例1
(基材フィルムの作製)
ランダム共重合ポリプロピレン樹脂(r−PP樹脂)(「F794NV」、プライムポリマー社製)50質量部に、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂(TPO樹脂)(「T−310E」、プライムポリマー社製)30質量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE樹脂)(「KF−271」、日本ポリエチレン社製)20質量部と、フェノール系酸化防止剤(「アンチオックス10」、日本油脂社製)0.2質量部、紫外線吸収剤(バイオソーブ130)0.2質量部とを混合し、押出機を用いて150〜180℃の温度で溶融混練し、得られた樹脂組成物を4本逆L字ロール型24インチカレンダーに供給し、ロール温度160〜190℃で0.10mmの厚みに圧延し、フィルムを得た。このフィルムにコロナ処理を行い、基材フィルム(ポリプロピレン系フィルム)を得た。
【0054】
(表面層の形成)
得られた基材フィルム上に、ウレタン変性アクリル樹脂(「UCクリヤーG−407NT」、大日本インキ化学工業社製、Tg 100℃)100質量部、アクリル樹脂系微粒子(平均粒径7μm)5質量部、HDI 10質量部、紫外線吸収剤(「バイオソーブ583」、共同薬品社製)0.5質量部を混合した樹脂組成物を、乾燥後の厚みが10μmになるように塗工し、硬化させた。
【0055】
(粘着製品の作製)
110g/mの上質紙の上にシリコーン系の離型剤で処理した離型紙に、乾燥後の厚みが30μmとなるように粘着剤(アクリル系粘着剤:「SKダイン1340」、綜研化学社製)を塗布して粘着剤層を形成し乾燥したものを、上記の表面層が形成された基材フィルムと貼り合わせて粘着製品を得た。
なお、上記の製造方法において、樹脂成分の配合量は、樹脂固形分の質量部である。
【0056】
実施例2〜6、比較例1〜3
ウレタン変性アクリル樹脂のTg、表面層の厚み、微粒子の種類、平均粒径及び含有量を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして粘着製品を得た。
【0057】
比較例4
表面層の形成において、カーボネート系ウレタン樹脂(「タイフォースCS−397」、大日本インキ化学工業社製)100質量部、紫外線吸収剤(「バイオソーブ583」、共同薬品社製)0.5質量部を混合した樹脂組成物を、乾燥後の厚みが15μmになるように塗工し、硬化させて形成した以外は、実施例1と同様にして粘着製品を得た。
【0058】
比較例5
以下の方法により基材フィルムを作製し、その基材フィルムを用いて実施例1と同様の方法で粘着製品を作製した(表面層の形成は行わなかった)。
(基材フィルムの作製)
メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル共重合体(「パラペットHR−A」、クラレ社製)50質量部、メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル・スチレン共重合体(「メタブレンW341」、三菱レイヨン社製)50質量部、酸化防止剤(「イルガノックス1076」、チバスペシャリティーケミカル社製)1質量部、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部、ステアリン酸亜鉛0.2質量部、滑剤として「LS−5」(旭電化工業社製)1質量部をバンバリーミキサーを用いて150〜180℃の温度で溶融混練し、得られた樹脂組成物を4本逆L字ロール型24インチカレンダーに供給し、ロール温度170〜200℃で0.10mmの厚みに圧延して、基材フィルム(アクリルフィルム)を得た。
【0059】
〔評価〕
実施例、比較例で得られた粘着製品に対して、次の評価を行い、結果を表1に示した。
(1)耐傷付性
1mm厚みのアルミ板に各フィルムを貼り付けた後、室温で5日間放置し、テーバー摩耗試験機にてフィルム表面の擦り傷を目視確認した。
摩耗輪CS17×荷重1kg×2000回転で擦り傷が目立たなければ○、目立てば×とした。
【0060】
(2)耐アルコール性
イソプロピルアルコール(99%)1ccをフィルム(コート層)上に滴下し、23℃で24時間放置した後、表面を洗浄して滴下痕跡を目視で確認した。
痕跡が目立たなければ○、痕跡が目立てば×とした。
【0061】
(3)曲面追従性
1mm厚みのアルミ板に各フィルムを貼り付けた後、室温で5日間放置し、外径32mm×深さ3mmの条件で丸型(丸い帽子の形)に絞り加工を施した。
フィルム浮きや割れ、裂け、白化、部分伸び(ネッキング)等の外観異常が発生しなければ○、発生すれば×とした。
【0062】
(4)表面平滑性
室内蛍光灯及び太陽光の下で、60度斜めから見たときの滑らかさを目視にて、またフィルム表面を触感で確認した。
平滑であれば○、平滑でなければ×とした。
【0063】
(5)耐候性
サンシャインW−O−M(JIS−A−1415準拠)で2000時間促進後の外観を目視で確認した。
○:変退色が目立たず、基材フィルムから表面層の剥離が認められない。
×:変退色が目立ち、かつ、基材フィルムから表面層の剥離が認められる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1〜2から、実施例の製品の場合、耐傷付性と表面平滑性の両特性に優れていた。また、耐アルコール性、曲面追従性、耐候性の性能も確保することが可能であった。一方、ウレタン変性アクリル樹脂のTgが特定範囲外の場合や、表面層の厚みより微粒子の平均粒径が大きい場合は、性能に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の外装用フィルムは、広告宣伝用、車輌用等の用途に好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の外装用フィルムの概略図の一例である。
【図2】本発明の外装用フィルムの概略図の一例である。
【符号の説明】
【0069】
1 表面層
2 基材フィルム
3 粘着剤層
4 離型層
5 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、表面層が形成された外装用フィルムであって、
前記表面層は、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含み、
表面層の厚みが20μm以下、微粒子の平均粒径が20μm以下で、かつ、微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下である
ことを特徴とする外装用フィルム。
【請求項2】
微粒子は、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ウレタン及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を用いたものである請求項1記載の外装用フィルム。
【請求項3】
表面層は、更に無黄変型イソシアネートを含むものである請求項1又は2記載の外装用フィルム。
【請求項4】
無黄変型イソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項3記載の外装用フィルム。
【請求項5】
基材フィルム上に、アクリル系粘着剤で形成される粘着剤層を有する請求項1、2、3又は4記載の外装用フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の外装用フィルムの製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のウレタン変性アクリル樹脂及び微粒子を含む組成物を塗工して表面層を形成する工程を有し、
表面層の厚みが20μm以下、微粒子の平均粒径が20μm以下で、かつ、微粒子の平均粒径が表面層の厚み以下である
ことを特徴とする外装用フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−45862(P2009−45862A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215114(P2007−215114)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】