説明

外装部構築方法

【課題】外装部を安全かつ精度良く構築できる外装部構築方法を提供すること。
【解決手段】外装部構築方法は、建物1の外壁面3Aから所定間隔離れて鉛直方向に延びるウイング部20を構築する。ウイング部20は、外壁面3Aの所定位置に配置された複数のニードル30A〜30Cおよびロッド40A〜40Dを介して建物の接続プレート15A、15Bに支持される構造である。ウイング部20をニードル30A〜30Cおよびロッド40A〜40Dで支持しながら下層から上層に向かって組み立てるとともに、この組み立て工程では、組み立て途中のウイング部20の最上部の耐風梁21を仮設ロッド60で建物の接続プレート15Bに仮支持させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部構築方法に関する。詳しくは、構造物の外壁面の外側に所定間隔離れて外装部を構築する外装部構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の周囲に外装パネルを取付けて、この外装パネルにより外壁面を構築することが行われている。具体的には、外装パネルは、建物の外周部の床や梁などの構造体に、ファスナーを介して取り付けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−59639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この外装パネルが建物から所定間隔離れて設けられる場合がある。この場合、建物の外壁面と外装部との間隔が広くなるため、上述のファスナーを用いることはできず、例えば棒状の支持部材を用いて外装パネルを建物の構造体に支持させる。
このような外装パネルは、支持部材で建物から支持しながら、下層から上層に向かって取付けてゆくが、組み立て途中の最上部の外装パネルを確実に支持できない場合があり、施工の安全性や施工精度を確保するのが困難であった。
【0005】
本発明は、外装部を安全かつ精度良く構築できる外装部構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の外装部構築方法は、構造物の外壁面から所定間隔離れて鉛直方向に延びる外装部を構築する外装部構築方法であって、前記外装部は、前記外壁面の所定位置に配置された複数の支持部材を介して前記構造物に支持される構造であり、前記外装部を前記支持部材で支持しながら下層から上層に向かって組み立てるとともに、当該組み立て工程では、組み立て途中の外装部の最上部の部材を仮設支持部材で前記構造物に仮支持させておくことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、外装部を下層から上層に向かって組み立てる際に、組み立て途中の最上部の部材を仮設支持部材で構造物に仮支持させておく。よって、組み立て途中でも、最上部の部材を確実に構造物から支持できるので、安全かつ精度良く外装部を構築できる。
【0008】
請求項2に記載の外装部構築方法は、前記仮設支持部材を下層から上層に盛り替えて用いることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、仮設支持部材を下層から上層に盛り替えて用いたので、仮設支持部材の製作個数を低減できるから、施工費用を低減できる。
【0010】
請求項3に記載の外装部構築方法は、前記仮設支持部材の長さを調整して、前記最上部の部材の高さレベルを調整することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、仮設支持部材の長さを調整して、最上部の部材のレベルを調整したので、外装部を構成する部材の位置や姿勢を容易に調整して、施工精度をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外装部を下層から上層に向かって組み立てる際に、組み立て途中の最上部の部材を仮設支持部材で構造物に仮支持させておく。よって、組み立て途中でも、最上部の部材を確実に構造物から支持できるので、安全かつ精度良く外装部を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る外装部構築方法が適用された建物のウイング部の横断面図である。
【図2】前記実施形態に係る建物のII−II断面図である。
【図3】前記実施形態に係るニードルおよびロッドの配置パターンを示す斜視図である。
【図4】前記実施形態に係る配置パターンの第1層部分の拡大斜視図である。
【図5】前記実施形態に係るウイング部を構築する手順を説明するための図である。
【図6】前記実施形態に係る仮設ロッドの斜視図である。
【図7】前記実施形態に係る仮設ロッドの調整機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る外装部構築方法が適用された建物1のウイング部20の横断面図であり、図2は、建物1のII−II断面図である。
建物1は、平面視で略形状であり、建物1の正面側の両端部は、内側に凹んだ凹部2となっている。この建物1の正面側には、凹部2を覆うように側方に突出して鉛直方向に延びる外装部としてのウイング部20が設けられている。
【0015】
以下、建物1を正面側から視て、左側のウイング部20について説明する。なお、右側のウイング部20についても、この左側のウイング部20と同様の構成である。
【0016】
建物1は、複数の柱10と、これら柱10の柱頭部同士の間に架設された複数の梁11と、梁11に支持される図示しない床スラブと、外周の梁11に支持された複数のカーテンウォール12と、を備える。
【0017】
外周の梁11には、所定箇所にブラケット13が取り付けられ、カーテンウォール12は、このブラケット13の先端にファスナー14を介して取り付けられている。
【0018】
カーテンウォール12は、平板矩形状であり、水平方向および鉛直方向に並んで配置されて、屋内と屋外とを仕切る外壁面3を形成するものである。
【0019】
以下、凹部2の正面側の外壁面3を外壁面3Aとし、凹部2の側面側の外壁面3を外壁面3Bとし、建物1の正面側の外壁面3を外壁面3Cとする。
外壁面3Aは、カーテンウォール12が水平方向に3枚並んで構成され、これらのカーテンウォール12は、4つのブラケット13に設けられたファスナー14で支持されている。
【0020】
これら4つのブラケット13のうち中央の2つには、接続プレート15A、15Bが設けられており、これら接続プレート15A、15Bは、カーテンウォール12同士の隙間を通って外壁面3Aから外部に突出している。
ここで、接続プレート15A、15Bのうち、内側(外壁面3B側)に位置するものを接続プレート15Aとし、外側に位置するものを接続プレート15Bとする。
【0021】
ウイング部20は、外壁面3Bと外壁面3Cとの出隅部から、外壁面3Cに略平行に延びている。
このウイング部20は、外壁面3Aの所定位置に設けられた複数の支持部材としてのニードル30A、30B、30Cおよびロッド40A、40B、40C、40Dを介して、外壁面3Aから所定間隔離れて建物1の構造体に支持されている。
【0022】
ウイング部20の外観は、建物1の外壁面3Cの外観と同様であり、さらに、このウイング部20の正面は、建物1の外壁面3Cと面一となっている。このため、建物1の正面の外観(ファサード)では、凹部2が隠れるようになっている。
【0023】
ウイング部20は、各層の床レベルで設けられて水平方向に延びる複数の耐風梁21と、鉛直方向に2列に設けられて耐風梁21同士を連結する断面T字形状の複数のマリオンサポート22A、22Bと、これら耐風梁21およびマリオンサポート22A、22Bに取り付けられた平板矩形状のパネル23と、を備える。
【0024】
耐風梁21は、ジョイントピース24を介して外壁面3Cと外壁面3Bとの出隅部のブラケット13に連結されている。
ここで、マリオンサポート22A、22Bのうち、内側(外壁面3C側)に位置するものをマリオンサポート22Aとし、外側に位置するものをマリオンサポート22Bとする。
【0025】
図3は、ニードル30A〜30Cおよびロッド40A〜40Dの配置パターンを示す斜視図である。
ウイング部20を支持する30A〜30Cおよびロッド40A〜40Dの配置は、第1層から第6層までの6層分を1ロットとして、このロットを複数回繰り返す構成である。
【0026】
ニードル30Aは、第6層に設けられ、接続プレート15Aから略水平に延びて、この接続プレート15Aと同じ高さの耐風梁21のマリオンサポート22Aの位置に連結されている。
ニードル30Bは、第1層から第6層まで全ての層に設けられ、接続プレート15Bから略水平に延びて、この接続プレート15Bと同じ高さの耐風梁21のマリオンサポート22Bの位置に連結されている。
ニードル30Cは、第6層に設けられ、接続プレート15Bから外側に向かって略水平に延びて、この接続プレート15Bと同じ高さの耐風梁21の外端部に連結されている。
【0027】
ロッド40Aは、第1層に設けられ、接続プレート15Aから斜め下方に延びて、この接続プレート15Aの下層の耐風梁21のマリオンサポート22Aの位置に連結されている。
ロッド40Bは、第1層に設けられ、接続プレート15Bから斜め下方に延びて、この接続プレート15Bの下層の耐風梁21のマリオンサポート22Bの位置に連結されている。
ロッド40Cは、第1層に設けられ、接続プレート15Bから外側に向かって斜め下方に延びて、この接続プレート15Bの下層の耐風梁21の外端部に連結されている。
ロッド40Dは、第1層に設けられ、接続プレート15Bから斜め上方に延びて、この接続プレート15Bの上層の耐風梁21のマリオンサポート22Bの位置に連結されている。
【0028】
図4は、配置パターンの第1層部分の拡大斜視図である。図4では、ウイング部20のうち耐風梁21のみを表示している。
ロッド40A〜40Dは、外壁面3Aから突出する接続プレート15A、15Bに連結されるフォークエンド41と、耐風梁21に連結されるフォークエンド42と、これらフォークエンド41、42を連結する棒状のロッド本体43と、を備える。
【0029】
フォークエンド41は、略水平かつ外壁面3Aに沿った方向を回動軸として、接続プレート15A、15Bに回動可能に連結される。
【0030】
耐風梁21の上面または下面には、接続プレート211が突出して設けられている。フォークエンド42は、略水平かつ外壁面3Aに沿った方向を回動軸として、接続プレート211に回動可能に連結される。
【0031】
以上のウイング部20は、以下の手順で構築される。
すなわち、図5に示すように、3層分高さを有する吊り足場50を凹部2内で組み立てて、建物1の構造体から吊り下げ支持しておく。この吊り足場50を上昇させながら、ニードル30A〜30Cおよびロッド40A〜40Dを取り付けて、ウイング部20を1層分ずつ組み立ててゆく。
【0032】
この組み立て工程では、仮設支持部材としての仮設ロッド60を用意し、この仮設ロッド60を用いて、組み立て途中の最上部の耐風梁21を建物1の接続プレート15Bから仮支持するとともに、この仮設ロッド60の長さを調整して、この最上部の耐風梁21の高さレベルを調整する。この仮設ロッド60の配置を、図3中破線で示す。
【0033】
ここで、この仮設ロッド60を下層から上層に盛り替えて用いている。具体的には、2層分下の仮設ロッド60を取り外して、転用している。
【0034】
図6は、仮設ロッド60の斜視図である。
仮設ロッド60は、外壁面3Aから突出する接続プレート15Bに連結されるフォークエンド61と、このフォークエンド61に連結された棒状のロッド本体62と、耐風梁21に連結されるフォークエンド63と、このフォークエンド63に連結された棒状のロッド本体64と、これらロッド本体62、64の距離を調整可能な調整機構65と、を備える。
【0035】
フォークエンド61は、略水平かつ外壁面3Aに沿った方向を回動軸として、接続プレート15Bに回動可能に連結される。
【0036】
耐風梁21の上面には、接続プレート211が取付けられている。フォークエンド63は、略水平かつ外壁面3Aに沿った方向を回動軸として、接続プレート211に回動可能に連結される。
【0037】
図7は、仮設ロッド60の調整機構65の拡大図である。
調整機構65は、所定長さの箱状の本体651と、この本体に長さ方向に摺動可能な摺動部652と、この摺動部652を進退させる油圧機構653と、を備える。
ロッド本体62は、本体の一端面に固定されている。
ロッド本体64は、本体の他端面を貫通して、摺動部652に固定されている。
【0038】
この調整機構65では、以下の手順で仮設ロッド60の長さを調整する。
まず、手動の油圧ポンプ66を油圧機構653に連結して駆動することで、摺動部652が進退させ、ロッド本体62、64の距離を調整して、仮設ロッド60の長さを調整する。
次に、ナット654で締付けて、ロッド本体64を本体651の他端側に係止させて、仮設ロッド60の長さを固定する。
その後、油圧ポンプ66を油圧機構653から取り外す。
【0039】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ウイング部20を下層から上層に向かって組み立てる際に、組み立て途中の最上部の耐風梁21を仮設ロッド60で建物1に仮支持させておく。よって、組み立て途中でも、最上部の耐風梁21を確実に建物1の構造体から支持できるので、安全かつ精度良くウイング部20を構築できる。
【0040】
(2)仮設ロッド60を下層から上層に盛り替えて用いたので、仮設ロッド60の製作個数を低減できるから、施工費用を低減できる。
【0041】
(3)仮設ロッド60の長さを調整して、最上部の耐風梁21のレベルを調整したので、ウイング部20を構成する耐風梁21の位置や姿勢を容易に調整して、施工精度をさらに向上できる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…建物(構造物)
2…凹部
3…外壁面
3A…凹部の正面側の外壁面
3B…凹部の側面側の外壁面
3C…建物の正面側の外壁面
10…柱
11…梁
12…カーテンウォール
13…ブラケット
14…ファスナー
15A、15B…接続プレート
20…ウイング部(外装部)
21…耐風梁
22A、22B…マリオンサポート
23…パネル
24…ジョイントピース
30A、30B、30C…ニードル(支持部材)
40A、40B、40C、40D…ロッド(支持部材)
41、42…フォークエンド
43…ロッド本体
50…吊り足場
60…仮設ロッド(仮設支持部材)
61…フォークエンド
62…ロッド本体
63…フォークエンド
64…ロッド本体
65…調整機構
66…油圧ポンプ
211…接続プレート
651…本体
652…摺動部
653…油圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の外壁面から所定間隔離れて鉛直方向に延びる外装部を構築する外装部構築方法であって、
前記外装部は、前記外壁面の所定位置に配置された複数の支持部材を介して前記構造物に支持される構造であり、
前記外装部を前記支持部材で支持しながら下層から上層に向かって組み立てるとともに、
当該組み立て工程では、組み立て途中の外装部の最上部の部材を仮設支持部材で前記構造物に仮支持させておくことを特徴とする外装部構築方法。
【請求項2】
前記仮設支持部材を下層から上層に盛り替えて用いることを特徴とする請求項1に記載の外装部構築方法。
【請求項3】
前記仮設支持部材の長さを調整して、前記最上部の部材の高さレベルを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の外装部構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229545(P2012−229545A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97847(P2011−97847)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】