説明

外観検査装置、表面検査装置、及び外観検査方法

【課題】円盤形状の被検査物品の欠損を高精度に検出する。
【解決手段】撮像手段30は、円盤形状の被検査物品の上面、及び反射手段20を通して得られる6方向の側面を撮像する。下側エッジ検出手段81は、撮像手段30により撮像された、被検査物品の映像から、輝度差に基づいて被検査物品の下側エッジを検出し、実測エッジ形状として出力する。傾き角度・方向算出手段82は、実測エッジ形状から、被検査物品の姿勢を算出する。理論エッジ形状算出手段83は、被検査物品の姿勢、被検査物品の半径、被検査物品の側面を見る角度から、各方向に投影されるべき理論エッジ形状を算出する。欠損検出手段84は、理論エッジ形状と実測エッジ形状とを比較することにより、その差分から円盤状の被検査物品の欠損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤などの被検査物品の形状における欠損を検査する外観検査装置、表面検査装置、及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、錠剤やキャンディー、チョコレートなどの物品に、異物の付着や汚れ、欠けや割れ等の変形、あるいは印刷不良などの欠損が生じているか否かを検査する外観検査が行われている。
【0003】
物品の外観検査に用いられる検査装置としては、被検査物である物品に光を照射して得られた被検査物品からの反射光を撮像手段に入射させて撮像し、得られた映像信号を処理することにより外観を検査する検査装置がある。
【0004】
このような検査装置としては、例えば、検査対象の円盤形状をした被検査物の側面に対して垂直、すなわち照射角0°で照射する円盤側面照明手段と、被検査物の真上方向(中心軸方向)に配置され、被検査物の側面から反射した照明光を受光して、被検査物の濃淡画像データを出力する円盤形状部品撮像手段と、円盤形状部品撮像手段から出力された被検査物の濃淡画像データを処理して円盤形状をした被検査物の欠け不良を判定する電子計算機とを備えている検査装置(例えば、特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4369276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術による検査装置では、円盤形状をした被検査物の側面から反射した照明光を受光して撮像する方法で被検査物の欠け不良(欠損)の検出を行うため、図12(a)に示すように、エッジ部分の欠け100が被検査物の下側にあった場合や、欠け100が微細だった場合には、欠け100を検出し難いという問題がある。特に、図12(b)に示すように、欠け100が円周方向になだらかな形状である場合には、被検査物の側面から反射した照明光から得られる画像データでは、その形状がほとんど変化しないので、欠損を高精度に検出することが期待できないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、被検査物品の欠損を高精度に検出することができる外観検査装置、表面検査装置、及び外観検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、円盤形状の被検査物品の上面と複数の斜め上方向から前記被検査物品の側面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された映像から前記被検査物品の下側エッジ形状を検出する下側エッジ形状検出手段と、前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、前記被検査物品の姿勢を算出する被検査物品姿勢算出手段と、前記被検査物品姿勢算出手段により算出された前記被検査物品の姿勢に基づいて、前記被検査物品が当該姿勢であるときの前記被検査物品の下側エッジの理論エッジ形状を算出する理論エッジ形状算出手段と、前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記下側エッジ形状と前記理論エッジ形状算出手段により算出された前記理論エッジ形状との差分に基づいて、前記被検査物品の欠損を検出する欠損検出手段とを備えることを特徴とする外観検査装置である。
【0009】
本発明は、上記の発明において、前記被検査物品の側面からの反射光を反射させて前記撮像手段に入射させる反射手段を更に備え、前記撮像手段は、前記被検査物品の上面からの反射光を撮像するとともに、前記反射手段により入射される、前記被検査物品の側面からの反射光を撮像することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記反射手段は、前記被検査物品の上面側から見たときに前記被検査物品を取り囲むように配置された複数の反射体からなり、前記複数の反射体は、それぞれの配置位置で、前記被検査物品の側面からの反射光を反射させて前記撮像手段に入射させることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記被検査物品姿勢算出手段は、前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、前記複数の斜め上方向から撮像された前記被検査物品の側面毎に前記被検査物品の傾き角度を算出し、該傾き角度が所定の閾値以上である場合、該傾き角度を前記被検査物品の姿勢を算出する際のデータから除外することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記被検査物品姿勢算出手段は、少なくとも3つ以上の前記傾き角度に基づいて、前記被検査物品の姿勢を算出することを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、円盤形状の前記被検査物品の厚さ方向のいずれかの面を外周面に保持しながら回転することにより、前記被検査物品を搬送する第1検査ドラムと、前記第1検査ドラムの下側に外周面を近接させた状態に回転自在に設置され、前記第1検査ドラムから前記被検査物品を受け取って前記被検査物品を前記第1検査ドラムの搬送状態と反転させた状態で外周面に保持しながら回転する第2検査ドラムと、前記第1検査ドラムの外周面に保持された前記被検査物品の外観を検査する第1外観検査装置と、前記第2検査ドラムの外周面に保持された前記被検査物品の外観を検査する第2外観検査装置とが具備されてなり、前記第1外観検査装置および前記第2外観検査装置を備えることを特徴とする表面検査装置である。
【0014】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、円盤形状の被検査物品の上面と複数の斜め上方向から前記被検査物品の側面を撮像手段により撮像するステップと、前記撮像された映像から下側エッジ形状検出手段により前記被検査物品の下側エッジ形状を検出するステップと、前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、被検査物品姿勢算出手段により前記被検査物品の姿勢を算出するステップと、前記被検査物品の姿勢に基づいて、理論エッジ形状算出手段により前記被検査物品が当該姿勢であるときの前記被検査物品の下側エッジの理論エッジ形状を算出するステップと、前記下側エッジ形状と前記理論エッジ形状との差分に基づいて、欠損検出手段により前記被検査物品の欠損を検出するステップとを含むことを特徴とする外観検査方法である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、円盤形状の被検査物品のエッジ部分に存在する、円周方向になだらかな形状の欠損であっても、高精度に確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態よる表面検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態による表面検査装置での検査状態を説明するための模式図である。
【図3】本実施形態による第1外観検査装置8の一構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施形態による反射手段20と撮像手段30との構成を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態による6つの反射体22から構成される反射手段20の構造を示す斜視図である。
【図6】本実施形態の第1外観検査装置8による、撮像手段30、反射体22、被検査物品Sとの光学的関係を示す概念図である。
【図7】本実施形態による第1外観検査装置8の6つの反射体22を介して撮像された、被検査物品Sの側面の画像例を示す概念図である。
【図8】本実施形態による第1外観検査装置8で得られる画像例を示す模式図である。
【図9】円盤形状の被検査物品Sを楕円に置き換え、Z軸中心に角度γだけ回転させた図である。
【図10】図9に示す被検査物品SがX軸を中心とし、Y軸方向に角度Δβだけ傾いたことを表わす図である。
【図11】本実施形態による第1外観検査装置8の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来技術による外観検査での問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態よる表面検査装置の全体構成を示す図である。図1に示す表面検査装置は、ステージ1に立設された壁部2により水平に支持されて上下に隣接配置された表面検査ドラム5及び裏面検査ドラム6と、表面検査ドラム5に錠剤やキャンディー、チョコレートなどの被検査物品を供給するための供給装置7と、表面検査ドラム5の側方側に配置された第1外観検査装置8と、裏面検査ドラム6の側方側に配置された第2外観検査装置9と、裏面検査ドラム6からの検査後の良品を排出するための排出コンベア10と、裏面検査ドラム6からの検査後の不良品を回収するための受部11と、前記裏面検査ドラム6からの排出不良となった被検査物品を受けるための排出不良品の受部12とを主体として構成されている。
【0019】
表面検査ドラム5(第1検査ドラム)は、被検査物品の上面を外側に向けた状態で被検査物品を外周面に吸着支持して保持しながら回転することにより、被検査物品を搬送するものである。表面検査ドラム5の下側には、図1に示すように、表面検査ドラム5に外周面を近接させた状態で裏面検査ドラム6(第2検査ドラム)が回転自在に設置されている。裏面検査ドラム6は、表面検査ドラム5から被検査物品を受け取って、被検査物品の下面を外側に向けた状態で被検査物品を外周面に吸着支持して保持しながら回転するものである。
【0020】
図1に示す表面検査ドラム5の左側上方には、ホッパ50に接続されてホッパ50の内部に収容されている被検査物品を表面検査ドラム5の上部側へ供給するための搬送装置7が組み込まれ、この搬送装置7に備えられている傾斜式のシュート52により被検査物品が表面検査ドラム5に供給される。
【0021】
また、図1に示す裏面検査ドラム6の中央下方側には、逆V字型の搬送通路60が設置されている。搬送路60の分岐部分には通路切換弁61が組み込まれ、搬送路60の左側の分岐路62側には排出不良品を受けるための受部12が接続され、搬送路60の右側の分岐路63側には良品搬出用のコンベア装置10が接続されている。
【0022】
表面検査ドラム5の右側には、第1外観検査装置8がフレーム53に支持されて設置されている。第1外観検査装置8は、表面検査ドラム5の外周面に保持された被検査物品の外観を検査するためのものである。また、裏面検査ドラム6の左側方側には、第2外観検査装置9がフレーム54に支持されて設置されている。第2外観検査装置9は、裏面検査ドラム6の外周面に保持された被検査物品の外観を検査するためのものである。
【0023】
図2は、本実施形態による表面検査装置での検査状態を説明するための模式図である。表面検査装置では、図2(a)に示すように、回転する表面検査ドラム5、または裏面検査ドラム6の外周面に被検査物品Sが吸着支持された状態で検査される。この際に、図2(b)に示すように、被検査物品Sが表面検査ドラム5、または裏面検査ドラム6の外周面に対して吸着不足、搬送位置のズレ等により斜めに傾いて吸着支持される場合がある。
【0024】
このように、被検査物品Sが斜めに傾いて吸着支持された場合、正確に被検査物品Sの側面を撮像することができないため、欠け(欠損)部分を検出し難いという問題がある。そこで、本実施形態では、被検査物品Sがドラムの外周面に斜めに吸着支持された場合であっても、被検査物品Sのエッジ部分にある欠損を確実に検出するために、第1外観検査装置8、及び第2外観検査装置9は、被検査物品Sの上面に加えて、複数の斜め上方向から被検査物品Sの側面を撮像するようになっている。
【0025】
そして、複数の斜め上方向から撮像した、被検査物品Sの側面の映像から、被検査物品Sのエッジ形状(実測エッジ形状、座標)を検出し、これら実測エッジ形状を総合的に解析することにより、被検査物品Sが傾いている場合の理論的なエッジ形状(理論的エッジ形状、座標)を算出し、該理論的エッジ形状と上記実測エッジ形状とを比較することで、局所的な欠損のみならず、円周方向のなだらかな欠損も検出可能としている。なお、第1外観検査装置8と第2外観検査装置9とは基本的に同一の構成であるので、以下では第1外観検査装置8についてのみ説明する。
【0026】
図3は、本実施形態による第1外観検査装置8の一構成例を示すブロック図である。図3において、第1外観検査装置8は、反射手段20、撮像手段30、照明手段40、及び処理手段80を備えている。撮像手段30は、被検査物品Sの上面、及び反射手段20を通して得られる6方向からの側面を撮像する。照明手段40は、被検査物品Sの上面、及び側面を撮像するために十分な照度を得るために被検査物品Sを照らす。
【0027】
処理手段80は、撮像手段30からの映像信号を処理するものであり、撮像手段30と電気的に接続されている。処理手段80は、その機能として、下側エッジ検出手段81、傾き角度・方向算出手段82、理論エッジ形状算出手段83、欠損検出手段84から構成されている。下側エッジ検出手段81は、撮像手段30により撮像された、被検査物品Sの上面、及び6方向からの側面を含む映像から、画像処理により、輝度差、色の違い等に基づいて、被検査物品Sの下側エッジを検出し、実測エッジ形状(座標)として出力する。
【0028】
傾き角度・方向算出手段82は、上記実測エッジ形状(座標)から、被検査物品Sの傾いている方向を示す傾き方向(位相Ψ)、被検査物品Sの傾いている角度を示す傾き角度(角度Δβ)を算出する。理論エッジ形状算出手段83は、上記被検査物品Sの傾き方向(位相Ψ)、被検査物品Sの傾き角度(角度Δβ)などから、各方向に投影されるべき理論エッジ形状(座標)を算出する。欠損検出手段84は、算出された理論エッジ形状と実測エッジ形状とを比較することにより、円盤形状(円板形状)の被検査物品Sの欠損を検出する。
【0029】
処理手段80としては、例えば、CPU(中央処理装置)及びメモリ等を備えたコンピュータや、ハードウェアLSI(Large Scale Integration)などを用いることができる。処理手段80としての機能は、処理手段80としての機能を実現するためのプログラムを、メモリにロードしてCPUが実行することによりその機能を実現してもよいし、ハードウェアLSIなどによりその機能を実現してもよい。また、第1外観検査装置8には、モニタを備えていてもよい。モニタとしては、CRT(Cathode Ray Tube)や、液晶ディスプレイなどからなる表示装置を用いることができる。また、処理手段80は、撮像手段30が出力した画像信号を一時的に記憶するバッファメモリを備えていてもよい。
【0030】
また、処理手段80は、被検査物品Sの位置を検出(例えば、ドラム5及び6の回転位相を管理)して、撮像手段30によって被検査物品Sを撮像させたり、撮像範囲の中央に被検査物品Sが撮像させたりするように各部を制御する。
【0031】
図4は、本実施形態による、反射手段20と撮像手段30との構成を示す概略構成図である。なお、図4おいては図面を見やすくするために、照明手段40の記載を省略してある。また、本実施形態においては、円盤形状の被検査物品Sを、円形である上面S1側から撮像して外観検査を行う第1外観検査装置8について説明する。
【0032】
図4において、撮像手段30は、反射手段20から出射された出射光2dと、被検査物品Sの上面S1からの反射光2eとを撮像するものである。撮像手段30としては、撮像レンズとエリアセンサ又はラインセンサとからなるものなどを用いることができる。反射手段20は、被検査物品Sの側面S2からの反射光2aを反射させるものである。反射手段20は、6個の反射体22と、反射体22の上部を挟み込むように支持するコ字状の支持部材23と、支持部材23が取り付けられた固定板21とを備えている。
【0033】
6個の反射体22は、支持部材23と固定板21とによって所定の位置に固定されている。なお、固定板21は、リング状の形状とされており、反射体22から撮像手段30に向かって出射される出射光2dや、被検査物品Sの上面S1からの反射光2eを遮ることのないようになっている。
【0034】
図5は、本実施形態による6つの反射体22から構成される反射手段20の構造を示す斜視図である。各反射体22、22、…は、ガラスなどからなるプリズムである。また、図5に示すように、反射体22、22、…は、すべて被検査物品Sの上面S1よりも上方向に配置されている。6個の反射体22、22、…は、被検査物品Sの上面S1側から見たときに被検査物品Sを中心として、60度間隔で、取り囲むように環状に配置されており、円盤形状である被検査物品Sの外形と相似形状の軌跡上に等間隔で配置されている。
【0035】
図6は、本実施形態の第1外観検査装置8による、撮像手段30、反射体22、被検査物品Sとの光学的関係を示す概念図である。上述した構成による第1外観検査装置8では、撮像手段30で撮像される映像は、被検査物品Sの正面と角度αの傾きで被検査物品Sの側面とを撮像したものとなる。つまり、被検査物品Sの側面は、角度αの傾きで、撮像手段30’で撮像した映像と同等である。
【0036】
本実施形態では、被検査物品Sを予め分かっている角度αで複数の方向から見たときに、そのエッジ形状から被検査物品Sの傾き方向と傾き角度とを算出し、その結果より計算上求められる理論エッジ形状と、撮像手段30により撮像された実測エッジ形状とを比較し、エッジ部分の欠損を高精度に検出することを可能としている。
【0037】
なお、本実施形態では、被検査物品Sは、撮像手段30の画角の中心に位置することを前提としているが、実際には、撮像手段30の画角の中心からずれる場合もある。このような場合には、撮像手段30により撮像された映像を画像処理などにより適宜補正するなどして対処すればよい。
【0038】
図7(a)、(b)は、本実施形態による第1外観検査装置8の6つの反射体22を介して撮像された、被検査物品Sの側面の画像例を示す概念図である。ある1つの反射体22からの画像に注目すると、図7(a)に示すような画像が得られる。図7(a)において、白い部分が被検査物品(虚像)S、黒い部分が背景(ドラム5)であり、被検査物品(虚像)Sの上面と(下側)エッジLを含む側面とが撮像される。第1外観検査装置8では、背景(ドラム5)と被検査物品(虚像)Sとの輝度差や、色成分差、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタなどの手法を用いて、被検査物品Sと背景との色の違い(境界)を、被検査物品Sの(下側)エッジLとして検出する。
【0039】
6つの反射体22の各々からは、図7(a)に示す画像が得られる。円盤形状の被検査物品Sが傾いていない場合には、6つの反射体22の各々の画像から得られる(下側)エッジ形状(座標)は、傾いていないものとして理論的に算出された理論エッジ形状と一致する。これに対して、円盤形状の被検査物品Sが傾いている場合には、少なくとも1つ以上の反射体22から、図7(b)に示すような画像が得られる。点線は、図7(a)に示したように、円盤形状の被検査物品Sが傾いていないときのエッジ形状である。図示のように、円盤形状の被検査物品Sが傾いている場合には、被検査物品Sが傾いているときのエッジ形状と、傾いていないときのエッジ形状とに相違が見られる(矢印部分)。本実施形態では、この相違から被検査物品Sの傾きの有無を検出する。
【0040】
図8(a)、(b)は、本実施形態による第1外観検査装置8で得られる画像例を示す模式図である。図8(a)には、被検査物品Sが傾かずにドラムに吸着支持された場合に得られる画像が示されている。一方、図8(b)には、被検査物品Sが傾いてドラムに吸着支持された場合に得られる画像が示されている。
【0041】
撮像手段30からは、図8(a)、(b)に示すように、中央部に、円盤形状の被検査物品Sの上面の画像(円盤)が得られるとともに、その周囲には、6つの反射体22を介して撮像された、被検査物品Sの側面の画像が得られる。各側面の画像における、線分L1〜L6は、円盤形状の被検査物品Sの下側エッジ部分に相当する。
【0042】
図8(a)に示すように、被検査物品Sが傾かずにドラムに吸着支持された場合には、被検査物品Sの側面(虚像)の画像の形状(位置、曲率、座標)が、被検査物品Sの実像を中心に対称となる。これに対して、図8(b)に示すように、被検査物品Sが傾いてドラムに吸着支持された場合には、被検査物品Sの側面(虚像)の画像の形状が、被検査物品Sの実像を中心とした対称となっていない。図8(b)に図示した例では、被検査物品の右上がドラムに対して浮いている状態が示されており、このため、線分L1〜線分L6は、それぞれの形状が異なっている。
【0043】
次に、被検査物品Sを複数の斜め上から見た映像から、その被検査物品Sの姿勢(傾き角度、傾き方向)を算出する方法について詳細に説明する。説明のため、円盤形状の被検査物品Sを、厚さを無視した円に置き換え、Z軸中心に角度γだけ回転させた図を、図9に示す。また、図10は、図9に示す被検査物品SがX軸を中心とし、Y軸方向に微少角度Δβだけ傾いたことを表わす図である。
【0044】
前述した図6に示すように、被検査物品Sを斜め上(固定角α)からみたときの被検査物品Sの下側エッジの見え方について説明する。円盤形状の被検査物品Sを斜め上から見たときの下側のエッジ形状を考えると、それは、水平面XY(ドラム外周表面)に置かれた円を斜め上からみたのと同じになる。水平面XYに置かれた半径Rの円をZ軸からY軸方向に角度αだけ傾いた方向から円の中心をみると、数式(1)で表わされるように、X軸方向を長軸、Y軸方向を短軸とした長軸長2R、短軸長2R・cos(α)の楕円に見える。
【0045】
【数1】

【0046】
被検査物品Sが水平面に対して平行であるときは、図9に示すように、被検査物品SをZ軸周りに任意角度γ(XY平面における角度)だけ回転させても、数式(1)で表わされる楕円に見える。また、上記関係は、円盤形状の被検査物品Sを固定し、見る方向が任意角度(−γ)だけ変化したのと同意である。
【0047】
次に、図10に示すように、先ほどの同じ条件で、該円盤形状の被検査物品SがX軸周りに微少角度Δβ(YZ平面における角度)だけ手前に傾いていたとすると、X軸方向を長軸、Y軸方向を短軸とした長軸長2R、短軸長2R・cos(α−Δβ)とする、数式(2)で表わされる楕円に見える。
【0048】
【数2】

【0049】
円盤形状の被検査物品Sを見る角度αに対し、被検査物品Sの傾きΔβが十分に小さければ、この傾いた被検査物品SをZ軸中心にどのように回転させても短軸長は変化するが、長軸の傾きと長軸長とがほぼ一定の楕円として見える。
【0050】
円盤形状の被検査物品Sを見る角度αに対し、被検査物品Sの傾きΔβが十分に小さければ、この傾いた被検査物品SをZ軸中心にどのように回転させても見た目の長軸方向と長さがあまり変化しないので、撮像された画像から得た実測エッジ形状と数式(2)で表現される楕円盤形状とのマッチングを行うことにより、円盤形状の被検査物品SがY軸方向に傾いている角度の近似値Δβ´を得ることができる。
【0051】
このマッチングを予め分かっているZ軸中心角γ1、γ2、…、γn(本実施形態ではn=6)の複数の方向から行うことにより、その被検査物品Sがγi(i=1、2、…、n)方向に傾いている角度Δβ´i(i=1、2、…、n)を得ることができる。
【0052】
以上のより得られた回転角γ1、γ2、…、γnを横軸、傾きΔβ´1、Δβ´2、…、Δβ´nを縦軸にとり、グラフを描くと、横軸360度を1周期とした位相Ψ、高さΔβの正弦波にマッチングすることができる。このマッチングにより得られた位相Ψが円盤形状の被検査物品Sの傾き方向、高さΔβが被検査物品Sの傾き角度となる。これら被検査物品Sの傾き方向(位相Ψ)、被検査物品Sの傾き角度(高さΔβ)とは、被検査物品Sの姿勢を表す情報となる。
【0053】
XY平面に水平に配置される半径Rの円の座標を回転角θで表わすと、数式(3)で表わされる。
【0054】
【数3】

【0055】
上記数式(3)において、R:円盤形状の被検査物品Sの半径、Δβ:円盤形状の被検査物品Sの傾き角度、γ1、γ2、…、γn:円盤形状の被検査物品SをZ軸方向に回転させる角度(被検査物品Sを見る方向をZ軸方向に−(γ1、γ2、…、γn)だけ変化させたものと同意)、α:円盤形状の被検査物品Sを見る角度、Ψ:円盤形状の被検査物品Sの傾きの方向と置き、回転角γ1、γ2、…、γnで円盤形状の被検査物品Sを見たときに見える座標系X´Y´に座標変換すると、数式(4)、数式(5)で表される。そして、該数式(4)、(5)により計算される理論エッジ形状と実測エッジ形状とを比較することにより、円盤形状の被検査物品Sの(下側)エッジ部分に存在する欠損が、円周方向になだらかな形状の欠損であっても、高精度に確実に欠損を検出することができる。
【0056】
【数4】

【0057】
【数5】

【0058】
次に、図11は、本実施形態による第1外観検査装置8の動作を説明するためのフローチャートである。まず、撮像手段30により、円盤形状の被検査物品Sの上面と、6つの反射体22を介して斜め上方向からの被検査物品Sの側面とを撮像する(ステップS1)。次に、下側エッジ検出手段81により、各斜め上方向から撮像した被検査物品Sの側面の画像から、背景画像と被検査物品Sとの輝度差などを用いて、被検査物品Sの下側エッジ形状(座標)を検出する(ステップS2)。
【0059】
次に、傾き角度・方向算出手段82により、検出した下側エッジ形状から、被検査物品Sのγi(i=1、2、…、n)方向に対して、傾き角度Δβ´i(i=1、2、…、n)を算出し(ステップS3)、傾き角度Δβ´iが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。そして、所定の閾値以上である傾き角度Δβ´iについては、正弦波形状とのマッチングに不採用のデータとする(ステップS5)。
【0060】
次に、3点以上のデータ(傾き角度Δβ´i)が残っているか否かを判定し(ステップS6)、残ったデータ(傾き角度Δβ´i)が3点以上なければ(ステップS6のNO)、データ不足として処理を終了する。一方、3点以上のデータ(傾き角度Δβ´i)が残っていれば(ステップS6のYES)、採用された傾き方向γ1〜γnと傾き角度Δβ´1〜Δβ´nを、正弦波形状とマッチングし、被検査物品Sの傾き方向Ψと傾き角度Δβとを算出する(ステップS7)。
【0061】
次に、理論エッジ形状算出手段83により、上記被検査物品Sの傾き方向Ψと傾き角度Δβ、被検査物品Sの観測パラメータであるα(被検査物品Sの側面を見る角度)、γ1〜γn(被検査物品SをZ軸方向に回転させる角度)、被検査物品Sの半径Rを、数式(4)、数式(5)に代入し、各方向に投影される理論エッジ形状を算出する(ステップS8)。
【0062】
次に、欠損検出手段84により、上記理論エッジ形状と実測エッジ形状とのマッチングを行い(ステップS9)、理論エッジ形状と実測エッジ形状との差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS10)。そして、理論エッジ形状と実測エッジ形状との差分が所定の閾値以上である場合には、欠損ありとして出力し(ステップS11)、理論エッジ形状と実測した下側エッジ形状との差分が所定の閾値以上でない場合には、欠損なしとして出力する。そして、当該検査が終了であるか否かを判定し(ステップS143)、終了でない場合には、ステップS1に戻り、次の被検査物品Sに対する検査処理を継続し、終了である場合には、当該処理を終了する。
【0063】
このように、ステップS6、S7で、3点以上の信頼性のあるデータを基に被検査物品の姿勢を算出しているため、より現実に近い姿勢を把握でき、エッジ部分の今までは検出できなかった円周方向のなだらかな形状の欠損であっても、高精度に確実に検出することができる。
【0064】
なお、実際には、まず、第1外観検査装置8で、表面検査ドラム5上の被検査物品Sに対して、上述したフローチャートに従って検査し、その後、第2外観検査装置9でも、裏面検査ドラム6上の被検査物品Sに対して、上述したフローチャートに従って検査する。したがって、第1外観検査装置8での検査において、被検査物品Sの上側エッジに欠損があった場合でも、第2外観検査装置9での検査では、被検査物品Sが裏返しになり、上記欠損は下側エッジにくる。
【0065】
このため、第1外観検査装置8での検査において、上側エッジにあった欠損が検出できない場合であっても、第2外観検査装置9での検査で、下側エッジの欠損として確実に検出される。そして、上述した処理により、良品と判定された検査後の被検査物品Sは、裏面検査ドラム6から排出コンベア10で排出され、不良品と判定された検査後の被検査物品Sは、裏面検査ドラム6から受部11に回収される。
【0066】
なお、上述した実施形態において、反射手段20を6つの反射体22から構成したが、これに限らず、少なくとも3つの反射体22から構成されていればよい。また、被検査物品Sの側面を斜め上方向から撮像するために、プリズムからなる反射体22を用いたが、これに限らず、被検査物品Sの側面を斜め上方向から撮像可能であれば、例えば、被検査物品Sの周囲を周回しながら、斜め上方向から被検査物品Sの側面を撮像する手段としたり、被検査物品Sの側面を斜め上方向から撮像可能な位置(周囲)に複数の撮像手段を配置してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態において、数式(1)〜(5)に従って演算する以外に、入力する値に対して、数式(1)〜(5)に従った演算結果を出力するような変換テーブルを備えるようにしてもよい。
【0068】
また、図11に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0069】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0070】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0071】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0072】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0073】
S 被検査物品
5 表面検査ドラム
6 裏面検査ドラム
8 第1外観検査装置
9 第2外観検査装置
20 反射手段
22 反射体
30 撮像手段
40 照明手段
80 処理手段
81 下側エッジ検出手段
82 傾き角度・方向算出手段
83 理論エッジ形状算出手段
84 欠損検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状の被検査物品の上面と複数の斜め上方向から前記被検査物品の側面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された映像から前記被検査物品の下側エッジ形状を検出する下側エッジ形状検出手段と、
前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、前記被検査物品の姿勢を算出する被検査物品姿勢算出手段と、
前記被検査物品姿勢算出手段により算出された前記被検査物品の姿勢に基づいて、前記被検査物品が当該姿勢であるときの前記被検査物品の下側エッジの理論エッジ形状を算出する理論エッジ形状算出手段と、
前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記下側エッジ形状と、前記理論エッジ形状算出手段により算出された前記理論エッジ形状と、の差分に基づいて、前記被検査物品の欠損を検出する欠損検出手段と
を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記被検査物品の側面からの反射光を反射させて前記撮像手段に入射させる反射手段を更に備え、
前記撮像手段は、前記被検査物品の上面からの反射光を撮像するとともに、前記反射手段により入射される、前記被検査物品の側面からの反射光を撮像することを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記反射手段は、前記被検査物品の上面側から見たときに前記被検査物品を取り囲むように配置された複数の反射体からなり、
前記複数の反射体は、それぞれの配置位置で、前記被検査物品の側面からの反射光を反射させて前記撮像手段に入射させることを特徴とする請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記被検査物品姿勢算出手段は、前記下側エッジ形状検出手段により検出された前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、前記複数の斜め上方向から撮像された前記被検査物品の側面毎に前記被検査物品の傾き角度を算出し、該傾き角度が所定の閾値以上である場合、該傾き角度を前記被検査物品の姿勢を算出する際のデータから除外することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記被検査物品姿勢算出手段は、少なくとも3つ以上の前記傾き角度に基づいて、前記被検査物品の姿勢を算出することを特徴とする請求項4に記載の外観検査装置。
【請求項6】
円盤形状の前記被検査物品の厚さ方向のいずれかの面を外周面に保持しながら回転することにより、前記被検査物品を搬送する第1検査ドラムと、
前記第1検査ドラムの下側に外周面を近接させた状態に回転自在に設置され、前記第1検査ドラムから前記被検査物品を受け取って前記被検査物品を前記第1検査ドラムの搬送状態と反転させた状態で外周面に保持しながら回転する第2検査ドラムと、
前記第1検査ドラムの外周面に保持された前記被検査物品の外観を検査する第1外観検査装置と、前記第2検査ドラムの外周面に保持された前記被検査物品の外観を検査する第2外観検査装置とが具備されてなり、
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の前記第1外観検査装置および前記第2外観検査装置を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項7】
円盤形状の被検査物品の上面と複数の斜め上方向から前記被検査物品の側面を撮像手段により撮像するステップと、
前記撮像された映像から下側エッジ形状検出手段により前記被検査物品の下側エッジ形状を検出するステップと、
前記被検査物品の下側エッジ形状に基づいて、被検査物品姿勢算出手段により前記被検査物品の姿勢を算出するステップと、
前記被検査物品の姿勢に基づいて、理論エッジ形状算出手段により前記被検査物品が当該姿勢であるときの前記被検査物品の下側エッジの理論エッジ形状を算出するステップと、
前記下側エッジ形状と前記理論エッジ形状との差分に基づいて、欠損検出手段により前記被検査物品の欠損を検出するステップと
を含むことを特徴とする外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−137704(P2011−137704A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297590(P2009−297590)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000115418)ライオンエンジニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】