外観検査装置及び外観検査方法
【課題】検査対象物の部分によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物全体の露光調節を行うことができるとともに、検査対象物の形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥の有無を正確に判定することが可能となる、外観検査装置及び外観検査方法を提供する。
【解決手段】撮像手段33は、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで検査対象物Wを撮像し、画像処理手段11が備える判定手段14は、第一露光条件で撮像した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像である撮像エリア画像SP1と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像である第二画像P2と、を組み合わせて組み合わせ画像P3を作成することにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を判定する。
【解決手段】撮像手段33は、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで検査対象物Wを撮像し、画像処理手段11が備える判定手段14は、第一露光条件で撮像した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像である撮像エリア画像SP1と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像である第二画像P2と、を組み合わせて組み合わせ画像P3を作成することにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置及び外観検査方法に関し、詳しくは、検査対象物の外観を画像処理にて検査し、その表面における欠陥の有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDカメラなどの撮像手段により金属板などの検査対象物を撮像し、撮像した画像により検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−19797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、レンズ絞りを一定にした状態で検査対象物の色調及び/又は光沢に応じて照明灯の明るさを変化させて、CCDカメラの露光を調節する技術が記載されている。
しかし、上記技術によれば、検査対象物の部位によって色調又は光沢が異なる場合は、検査対象物全体の露光調節を行うことが困難であった。
【0005】
一方、カムシャフトなどの検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する場合、撮像手段により検査対象物を撮像した画像と、予め準備した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像データ(基準画像データ)と、を組み合わせることにより、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する技術が用いられている。
【0006】
上記従来技術について、具体的に図9から図13を用いて説明する。ここで用いられる検査対象物は、円形の溝部とこの溝部の周囲に形成された平板部とを有する(図2を参照)。このため、検査対象物を撮像した画像には、溝部の形状による陰影(図9における網掛け部分)が表れる。詳細には図9に示す如く、検査対象物の画像において、溝部の内外の両側面に陰影が表れ、溝部の中央部には陰影が表れていない。
【0007】
検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する場合は図9に示す如く、検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像である、基準画像データを予め準備する。この基準画像データとなる撮像エリアは、図9中のa1部分に示す如く、前記溝部の周囲に形成された平板部の一部であり、平板部の内周端と外周端との間にある所定の部分である。
【0008】
そして、図9に示す画像の如く、撮像手段で検査対象物を撮像する。
さらに、撮像した画像から、所定の輝度測定ライン(図9におけるL01)に沿って輝度プロファイルを作成する。図10(a)は検査対象物を輝度測定ラインL01で軸方向に切断した場合の仮想断面図である。また、図10(b)は図10(a)における破線で示した領域α0の輝度プロファイルである。図10(b)に示す如く、陰影が表れる溝部の両側面は輝度が低下し、陰影が表れない平板部及び溝部の中央部は輝度が上昇する。即ち、溝部の外側面に形成された陰影の部分から外側へいくに従って輝度が上昇し、最大値に達する部分(図10(b)に示すFe01)に該当する箇所(図10(b)に示すE01)が平板部の内周端E01であると認定するのである。
【0009】
そして、図9に示す如く、撮像した画像において平板部の内周端E01と認定した部分と、基準画像データにおける内側の基準エッジとが一致するように、基準画像データを撮像した画像に組み合わせる。これにより、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定するのである。より詳細には、欠陥が撮像エリア内の基準エッジに対して位置する場所によって、検査対象物における欠陥の位置や大きさを特定する。換言すれば、基準画像データとなる撮像エリアは、平板部の内周端と外周端をそれぞれ内側と外側の基準エッジとし、この基準エッジからの距離や位置関係によって欠陥の位置や大きさを特定するのである。
【0010】
しかし、上記従来技術において、検査対象物の溝部は、製造時の公差によってその形状が異なる場合があり、この場合に検査対象物の欠陥の有無を正確に判定することが困難となることがある。
【0011】
例えば、図11(a)に示す仮想断面図の如く溝部の幅が大きい場合(図11(a)に示した二点差線が平均的な溝部の形状であるとする)は、撮像手段で撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができなくなる。具体的には、図11(a)における破線で示した領域β0の輝度プロファイルである図11(b)に示す如く、溝部の外側面に形成された陰影の外側で輝度が大きくなる部分(図11(b)に示すFe02)に該当する箇所(図11(b)に示すE02)が平板部の内周端であると認定される。一方、基準画像データは予め準備されたものであるため、平板部の内周端と、基準画像データにおける内側の基準エッジとが一致するように、撮像した画像に基準画像データを組み合わせると、撮像した画像と基準画像データとが一致しないのである。このため、検査対象物の溝部が製造時の公差によって大きくなった場合は、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を正確に判定することが難しかったのである。
【0012】
一方、図12(a)に示す如く溝部の深さが浅い場合(図12(a)に示した二点差線が平均的な溝部の形状であるとする)には、照明光による反射光が強くなり、図13に示す如く検査対象物を撮像した画像に溝部の形状による陰影が部分的にしか表れないことがある。この場合、撮像手段で撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができなくなる場合がある。具体的には、図12(a)における破線で示した領域γ0の輝度プロファイルである図12(b)に示す如く輝度プロファイルを作成しても、反射光が強いために、溝部の両側面で輝度が低下することがない。つまり、溝部の外側面に形成された陰影の外側で輝度が大きくなる部分が現れず、平板部の内周端を認定することができないのである。このため、検査対象物の溝部が製造時の公差によって浅くなった場合は、図13に示す如く、撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができず、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定することができなかったのである。
【0013】
そこで本発明は、上記現状に鑑み、検査対象物の部分によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物全体の露光調節を行うことができるとともに、検査対象物の形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥の有無を正確に判定することが可能となる、外観検査装置及び外観検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、検査対象物の画像を異なる露光条件で撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した検査対象物の画像から、前記検査対象物の表面における欠陥の有無を判定する画像処理手段と、を備える外観検査装置であって、前記撮像手段は、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで前記検査対象物を撮像し、前記画像処理手段は、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定するものである。
【0016】
請求項2においては、第一露光条件で、検査対象物における撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件で、前記撮像エリアを撮像する、第二撮像工程と、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、判定工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明により、外観検査装置及び外観検査方法において、検査対象物の部分によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物全体の露光調節を行うことができるとともに、検査対象物の形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥の有無を正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態に係る外観検査装置のブロック構成図。
【図2】同じく外観検査装置において第一露光条件で撮像した検査対象物を示した図。
【図3】同じく外観検査装置における外観検査のフローチャートを示した図。
【図4】同じく外観検査装置における第一画像及び撮像エリア画像を示した図。
【図5】(a)は検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域αの輝度プロファイルを示した図。
【図6】同じく外観検査装置において第二露光条件で撮像した検査対象物を示した図。
【図7】同じく外観検査装置における第二画像、撮像エリア画像、及び、組み合わせ画像を示した図。
【図8】第二実施形態に係る外観検査装置における撮像手段を示した図。
【図9】従来技術に係る外観検査装置における画像、基準画像データ、及び、組み合わせ画像を示した図。
【図10】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域α0の輝度プロファイルを示した図。
【図11】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域β0の輝度プロファイルを示した図。
【図12】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域γ0の輝度プロファイルを示した図。
【図13】同じく従来技術に係る外観検査装置における画像及び基準画像データを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0021】
[外観検査装置10]
まず始めに、本発明の第一実施形態に係る外観検査装置10の概略について、図1を用いて説明する。
本実施形態に係る外観検査装置10は図1に示す如く、汎用型の電子計算機で構成された画像処理手段11、及び、この画像処理手段11に内蔵される制御手段12とフィールドネットワーク通信機器等によりそれぞれ電気的に接続された、入力手段31、出力手段32、照明を具備する撮像手段33などを主な要素として備える。また、画像処理手段11はその内部に、制御手段12とそれぞれ電気的に接続された記憶手段13、及び、各種の演算を行って、撮像手段33で撮像した検査対象物Wの画像から、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥B(図6を参照)の有無を判定する判定手段14を備えている。
【0022】
前記の各種手段について、例えば、入力手段31としては、画像処理手段11に接続されたキーボードやマウス等が用いられる。入力手段31からは、検査対象物Wの初期データや演算プログラム等が入力される。出力手段32としては、画像処理手段11に接続されたモニタ等が用いられる。出力手段32では、判定手段14による演算結果や判定結果等が出力される。
【0023】
撮像手段33は図2に示す検査対象物Wの撮影を行うものであり、本実施形態においてはその内部に照明を備えたCCDカメラ又はCMOSカメラが用いられる。撮像手段33は、検査対象物Wの画像を異なる露光条件で撮像することが可能である。具体的には後述するように、撮像手段33は検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで検査対象物Wを撮像することが可能である。
【0024】
判定手段14による検査対象物Wにおける欠陥Bの有無についての判定精度を高めるためには、撮像手段33として画素数の高いカメラを用いることが望ましい。なお、撮像手段33は、アナログカメラ又はデジタルカメラの何れについても用いることが可能である。
【0025】
制御手段12としては、画像処理手段11に接続されている前記各手段の動作や作業工程を制御する制御盤等が用いられる。
記憶手段13や判定手段14としては、電子計算機におけるRAMやROM等からなる記憶部や、CPUからなる演算処理部等が用いられる。判定手段14には画像処理を行う画像処理ボードが配設される。記憶手段13には、検査対象物Wに関するCAD(Computer Aided Design)データの情報や、その他演算処理を実行するためのプログラム等が格納される。
【0026】
そして、画像処理手段11が備える判定手段14は後述する如く、第一露光条件で撮像した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像(図4における撮像エリア画像SP1)と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像(図7における第二画像P2)と、を組み合わせた画像(図7における組み合わせ画像P3)を作成することにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を判定するのである。
【0027】
[検査対象物W]
次に、本実施形態に係る外観検査装置10の検査対象である検査対象物Wについて、図2を用いて説明する。
本実施形態に係る検査対象物Wとしては図1及び図2に示す如く、カムシャフトが用いられる。検査対象物Wであるカムシャフトは、軸の周囲に形成された円形の溝部Wdと、この溝部Wdの周囲に形成された円盤状の平板部Wfとを有する。そして、本実施形態においては、外観検査装置10で平板部Wfにおける欠陥Bの有無を判定するものとする。具体的には、平板部Wfを図2の破線で示す如く、撮像エリアとして45度ずつ八箇所の部分に分割し、矢印Rのように回転させながらそれぞれの部分について撮像して、欠陥Bがないかどうかを判断するのである。
【0028】
なお、検査対象物Wの形状は、本実施形態で図2に示す形状に限定されず、他の形状を検査対象物とすることも可能である。また、本実施形態において検査対象物Wはカムシャフトが用いられるが、他の部品に対して外観検査装置10を用いて外観検査を行うことも可能である。さらに、検査対象物Wの撮像エリアを分割することなく、一回のみの撮像で全エリアを撮像する構成とすることも可能である。
【0029】
[ワーク種別判別方法]
次に、上記の如く構成された外観検査装置10において、検査対象物Wにおける欠陥Bの有無を判定する方法を、図3から図7を用いて説明する。
本実施形態に係る外観検査装置10で行う外観検査方法は図3に示す如く、第一露光条件で、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程(図3中のステップS11からステップS1n)と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件で、撮像エリアを撮像する、第二撮像工程(図3中のステップS21からステップS2m)と、を備える。そして、外観検査方法はさらに、第一露光条件で撮像した検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭の画像と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像と、を組み合わせる(図3中のステップS31)ことにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する(図3中のステップS32)、判定工程と、を備える。
【0030】
以下、上記の各工程について具体的に説明する。
第一撮像工程においては、撮像手段33において第一露光条件で、検査対象物Wにおける撮像エリアA1(図2において分割した部分のうちの一つ)の輪郭を撮像する。第一露光条件で撮像した画像を第一画像P1とする。第一露光条件とは、図2及び図4に示す如く、第一画像P1に溝部Wdの形状による陰影(図2及び図4における網掛け部分)が表れる程度に調節された露光条件である。換言すれば、第一画像P1には、溝部Wdの形状による陰影が表れるのである。詳細には、第一画像P1には図2及び図4に示す如く溝部Wdの内外の両側面に陰影が表れ、溝部の中央部には陰影が表れていない。このように、第一露光条件は、検査対象物Wの製造時の公差によって溝部Wdの形状が異なった場合でも、後述する如く画像処理手段11において溝部Wdの形状による陰影が認識できる程度の露光条件であれば良い。
【0031】
そして、画像処理手段11において、第一画像P1から所定の輝度測定ライン(図4におけるL1)に沿って輝度プロファイルを作成する。図5(a)は検査対象物Wを輝度測定ラインL1で軸方向に切断した場合の仮想断面図である。また、図5(b)は図5(a)における破線で示した領域α1の輝度プロファイルである。図5(b)に示す如く、陰影が表れる溝部Wdの両側面(図5(b)中のd1及びd2)は輝度が低下し、陰影が表れない溝部の中央部(図5(b)中のb1)及び平板部(図5(b)中のb2)は輝度が上昇する。そして、溝部の外側面に形成された陰影の部分(図5(b)中のd2)から外側へいくに従って輝度が上昇し、最大値に達する部分、即ち、輝度プロファイルの傾きが0となる部分(図5(b)に示すFe1)に該当する箇所(図5(b)に示すE1)が、図4に示す一つの撮像エリアA1における平板部Wfの内周端E1であると認定するのである。
【0032】
さらに、図4に示す如く、第一画像P1において平板部Wfの内周端E1と認定した部分を、欠陥Bの判定において位置関係の基準とする基準エッジSeとして、第一画像P1に基づいて基準画像データSd1を作成する。基準画像データSd1は検査対象物Wにおける一つの撮像エリアを示している。そして、この基準画像データSd1を包含する画像を撮像エリア画像SP1として作成するのである。
【0033】
より詳細には、図2に示す如く八つの部分に分割した撮像エリアのうち、検査対象物Wを矢印Rのように回転させながら第一露光条件で複数個(n個:本実施形態においてはn≦8)の部分についてn回撮像し、それぞれの第一画像P1で認定された内周端E1の位置の平均値を用いて基準エッジSeの位置を算出するのである。なお、本実施形態においては第一露光条件で複数回(n回)の撮像をする構成としているが、第一露光条件による撮像は一回のみとすることも可能である。ただし、基準エッジSeの位置精度を向上させる観点からは、第一露光条件による撮像を複数回行うことが好ましい。
【0034】
次に、第二撮像工程においては、撮像手段33において、それぞれの撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件で、第一撮像工程で撮像した撮像エリアA1と同じ撮像エリアA1を撮像する。第二露光条件で撮像した画像を第二画像P2とする。第二露光条件とは、図6及び図7に示す如く、第二画像P2に欠陥Bによる陰影が表れる程度に調節された露光条件であり、第一露光条件よりも露光が大きく設定される。このため、第二画像P2には、溝部Wdの形状による陰影(図6及び図7における網掛け部分)が部分的にしか表れない場合がある。
【0035】
より詳細には、図6に示す如く八つの部分に分割した撮像エリアのうち、検査対象物Wを矢印Rのように一方向へ回転させながら第二露光条件で複数個(m個:本実施形態においてはm=8)の部分についてm回撮像し、m個の第二画像P2を作成するのである。
【0036】
そして、判定工程においては図7に示す如く、画像処理手段11により、第一露光条件で撮像した検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭の画像である撮像エリア画像SP1と、第二露光条件で撮像した撮像エリアA1の画像である第二画像P2と、を組み合わせて、組み合わせ画像P3を作成する。そして、判定手段14において組み合わせ画像P3を用いて、検査対象物Wにおける撮像エリアA1の輪郭内における欠陥Bの有無を判定する。
【0037】
より詳細には、欠陥Bが撮像エリアA1内において、基準エッジSeに対してどこに位置するかによって、検査対象物Wにおける欠陥Bの位置や大きさを特定する。換言すれば、基準エッジSeからの距離や位置関係によって欠陥Bの位置や大きさを特定するのである。また、他の撮像エリアについても撮像エリアA1と同様にして、欠陥Bの有無を判定するのである。
【0038】
上記の如く、本実施形態に係る外観検査装置10による外観検査方法によれば、検査対象物Wの部位によって色調又は光沢が異なる場合であっても、露光条件を調節して異なる露光条件(第一露光条件及び第二露光条件)で検査対象物Wを撮像することにより、欠陥Bの有無を判定することができる。具体的には、画像処理手段11において溝部Wdの形状による陰影が認識できる第一露光条件と、第一露光条件よりも露光が大きく、欠陥Bによる陰影が表れる程度に調節された第二露光条件と、の二つの露光条件で検査対象物Wを撮像することにより、欠陥Bの有無が判定可能となる。このため、検査対象物Wの部位ごとに外観検査の評価基準(欠陥Bの有無の判定基準)を変更することが可能となるのである。
【0039】
また、本実施形態においては、検査対象物Wの形状が製造時の公差によって異なる場合であっても、検査対象物Wの欠陥Bの有無を正確に判定することが可能となる。
【0040】
具体的には、本実施形態によれば、溝部Wdの形状に応じて平板部Wfの内周端E1と認定した部分を基準エッジSeとして基準画像データSd1を作成し、撮像エリア画像SP1として作成する構成としている。このため、検査対象物Wの溝部Wdの幅が、図11(a)に示す仮想断面図の如く大きい場合であっても、図7に示す如く、第二画像P2における平板部Wfの内周端と基準画像データSd1における内側の基準エッジSeとが一致するように、第二画像P2と、溝部Wdの形状に応じて作成した撮像エリア画像SP1と、を組み合わせることができるのである。これにより、組み合わせ画像P3において基準画像データSd1の基準エッジSeを用いることが可能となり、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を正確に判定することができるのである。
【0041】
また、本実施形態によれば、第一撮像工程において、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を、溝部Wdの形状による陰影が認識できる第一露光条件で撮像し、基準画像データSd1を作成する構成としている。このため、図12(a)に示す如く検査対象物Wの溝部Wdの深さが浅く、第二露光条件において検査対象物Wを撮像した第二画像P2に溝部Wdの形状による陰影が照明光による反射光によって表れない場合であっても、図7に示す如く、第二画像P2と撮像エリア画像SP1とを組み合わせることによって、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を正確に判定することができるのである。
【0042】
上記の如く、本実施形態に係る外観検査装置10による外観検査方法によれば、検査対象物Wの部位によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物Wの全体の露光調節を行うことができる。また、検査対象物Wの形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥Bの有無を正確に判定することが可能となるのである。
【0043】
なお、本実施形態において、基準エッジSeの作成にあたっては検査対象物Wであるカムシャフトの溝部Wdを用いたが、基準エッジSeとする箇所は限定されるものではない。つまり、第一露光条件において、画像処理手段11において検査対象物Wの形状による陰影が認識できる部位であれば、基準エッジSeの作成に用いることが可能である。
【0044】
また、本実施形態においては、第一露光条件で検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を撮像する第一撮像工程の後に、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な第二露光条件で撮像エリアを撮像する第二撮像工程を行う構成としたが、この順序は逆にすることも可能である。
【0045】
さらに、第二実施形態に係る外観検査装置によれば、第一撮像工程と第二撮像工程を同時に行うことも可能である。具体的には、本実施形態に係る外観検査装置は図8に示す如く、撮像手段として、第一露光条件で撮像を行う第一撮像手段33aと、第二露光条件で撮像を行う第二撮像手段33bとを備える。なお、本実施形態においては、前記第一実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0046】
そして、図8に示す如く分光器によって第一撮像手段33aおよび第二撮像手段33bに入射する光の量を調節して、それぞれの撮像手段における露光条件を変更することにより、第一撮像工程と第二撮像工程とを同時に行う構成としているのである。
【符号の説明】
【0047】
10 外観検査装置
11 画像処理手段
14 判定手段
33 撮像手段
B 欠陥
W 検査対象物
SP1 撮像エリア画像
P2 第二画像
P3 組み合わせ画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置及び外観検査方法に関し、詳しくは、検査対象物の外観を画像処理にて検査し、その表面における欠陥の有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDカメラなどの撮像手段により金属板などの検査対象物を撮像し、撮像した画像により検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−19797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、レンズ絞りを一定にした状態で検査対象物の色調及び/又は光沢に応じて照明灯の明るさを変化させて、CCDカメラの露光を調節する技術が記載されている。
しかし、上記技術によれば、検査対象物の部位によって色調又は光沢が異なる場合は、検査対象物全体の露光調節を行うことが困難であった。
【0005】
一方、カムシャフトなどの検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する場合、撮像手段により検査対象物を撮像した画像と、予め準備した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像データ(基準画像データ)と、を組み合わせることにより、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する技術が用いられている。
【0006】
上記従来技術について、具体的に図9から図13を用いて説明する。ここで用いられる検査対象物は、円形の溝部とこの溝部の周囲に形成された平板部とを有する(図2を参照)。このため、検査対象物を撮像した画像には、溝部の形状による陰影(図9における網掛け部分)が表れる。詳細には図9に示す如く、検査対象物の画像において、溝部の内外の両側面に陰影が表れ、溝部の中央部には陰影が表れていない。
【0007】
検査対象物の表面における欠陥の有無を検査する場合は図9に示す如く、検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像である、基準画像データを予め準備する。この基準画像データとなる撮像エリアは、図9中のa1部分に示す如く、前記溝部の周囲に形成された平板部の一部であり、平板部の内周端と外周端との間にある所定の部分である。
【0008】
そして、図9に示す画像の如く、撮像手段で検査対象物を撮像する。
さらに、撮像した画像から、所定の輝度測定ライン(図9におけるL01)に沿って輝度プロファイルを作成する。図10(a)は検査対象物を輝度測定ラインL01で軸方向に切断した場合の仮想断面図である。また、図10(b)は図10(a)における破線で示した領域α0の輝度プロファイルである。図10(b)に示す如く、陰影が表れる溝部の両側面は輝度が低下し、陰影が表れない平板部及び溝部の中央部は輝度が上昇する。即ち、溝部の外側面に形成された陰影の部分から外側へいくに従って輝度が上昇し、最大値に達する部分(図10(b)に示すFe01)に該当する箇所(図10(b)に示すE01)が平板部の内周端E01であると認定するのである。
【0009】
そして、図9に示す如く、撮像した画像において平板部の内周端E01と認定した部分と、基準画像データにおける内側の基準エッジとが一致するように、基準画像データを撮像した画像に組み合わせる。これにより、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定するのである。より詳細には、欠陥が撮像エリア内の基準エッジに対して位置する場所によって、検査対象物における欠陥の位置や大きさを特定する。換言すれば、基準画像データとなる撮像エリアは、平板部の内周端と外周端をそれぞれ内側と外側の基準エッジとし、この基準エッジからの距離や位置関係によって欠陥の位置や大きさを特定するのである。
【0010】
しかし、上記従来技術において、検査対象物の溝部は、製造時の公差によってその形状が異なる場合があり、この場合に検査対象物の欠陥の有無を正確に判定することが困難となることがある。
【0011】
例えば、図11(a)に示す仮想断面図の如く溝部の幅が大きい場合(図11(a)に示した二点差線が平均的な溝部の形状であるとする)は、撮像手段で撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができなくなる。具体的には、図11(a)における破線で示した領域β0の輝度プロファイルである図11(b)に示す如く、溝部の外側面に形成された陰影の外側で輝度が大きくなる部分(図11(b)に示すFe02)に該当する箇所(図11(b)に示すE02)が平板部の内周端であると認定される。一方、基準画像データは予め準備されたものであるため、平板部の内周端と、基準画像データにおける内側の基準エッジとが一致するように、撮像した画像に基準画像データを組み合わせると、撮像した画像と基準画像データとが一致しないのである。このため、検査対象物の溝部が製造時の公差によって大きくなった場合は、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を正確に判定することが難しかったのである。
【0012】
一方、図12(a)に示す如く溝部の深さが浅い場合(図12(a)に示した二点差線が平均的な溝部の形状であるとする)には、照明光による反射光が強くなり、図13に示す如く検査対象物を撮像した画像に溝部の形状による陰影が部分的にしか表れないことがある。この場合、撮像手段で撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができなくなる場合がある。具体的には、図12(a)における破線で示した領域γ0の輝度プロファイルである図12(b)に示す如く輝度プロファイルを作成しても、反射光が強いために、溝部の両側面で輝度が低下することがない。つまり、溝部の外側面に形成された陰影の外側で輝度が大きくなる部分が現れず、平板部の内周端を認定することができないのである。このため、検査対象物の溝部が製造時の公差によって浅くなった場合は、図13に示す如く、撮像した画像に基準画像データを組み合わせることができず、検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定することができなかったのである。
【0013】
そこで本発明は、上記現状に鑑み、検査対象物の部分によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物全体の露光調節を行うことができるとともに、検査対象物の形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥の有無を正確に判定することが可能となる、外観検査装置及び外観検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、検査対象物の画像を異なる露光条件で撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した検査対象物の画像から、前記検査対象物の表面における欠陥の有無を判定する画像処理手段と、を備える外観検査装置であって、前記撮像手段は、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで前記検査対象物を撮像し、前記画像処理手段は、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定するものである。
【0016】
請求項2においては、第一露光条件で、検査対象物における撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件で、前記撮像エリアを撮像する、第二撮像工程と、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、判定工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明により、外観検査装置及び外観検査方法において、検査対象物の部分によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物全体の露光調節を行うことができるとともに、検査対象物の形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥の有無を正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施形態に係る外観検査装置のブロック構成図。
【図2】同じく外観検査装置において第一露光条件で撮像した検査対象物を示した図。
【図3】同じく外観検査装置における外観検査のフローチャートを示した図。
【図4】同じく外観検査装置における第一画像及び撮像エリア画像を示した図。
【図5】(a)は検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域αの輝度プロファイルを示した図。
【図6】同じく外観検査装置において第二露光条件で撮像した検査対象物を示した図。
【図7】同じく外観検査装置における第二画像、撮像エリア画像、及び、組み合わせ画像を示した図。
【図8】第二実施形態に係る外観検査装置における撮像手段を示した図。
【図9】従来技術に係る外観検査装置における画像、基準画像データ、及び、組み合わせ画像を示した図。
【図10】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域α0の輝度プロファイルを示した図。
【図11】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域β0の輝度プロファイルを示した図。
【図12】(a)は従来技術に係る検査対象物における仮想断面図、(b)は(a)中の領域γ0の輝度プロファイルを示した図。
【図13】同じく従来技術に係る外観検査装置における画像及び基準画像データを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0021】
[外観検査装置10]
まず始めに、本発明の第一実施形態に係る外観検査装置10の概略について、図1を用いて説明する。
本実施形態に係る外観検査装置10は図1に示す如く、汎用型の電子計算機で構成された画像処理手段11、及び、この画像処理手段11に内蔵される制御手段12とフィールドネットワーク通信機器等によりそれぞれ電気的に接続された、入力手段31、出力手段32、照明を具備する撮像手段33などを主な要素として備える。また、画像処理手段11はその内部に、制御手段12とそれぞれ電気的に接続された記憶手段13、及び、各種の演算を行って、撮像手段33で撮像した検査対象物Wの画像から、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥B(図6を参照)の有無を判定する判定手段14を備えている。
【0022】
前記の各種手段について、例えば、入力手段31としては、画像処理手段11に接続されたキーボードやマウス等が用いられる。入力手段31からは、検査対象物Wの初期データや演算プログラム等が入力される。出力手段32としては、画像処理手段11に接続されたモニタ等が用いられる。出力手段32では、判定手段14による演算結果や判定結果等が出力される。
【0023】
撮像手段33は図2に示す検査対象物Wの撮影を行うものであり、本実施形態においてはその内部に照明を備えたCCDカメラ又はCMOSカメラが用いられる。撮像手段33は、検査対象物Wの画像を異なる露光条件で撮像することが可能である。具体的には後述するように、撮像手段33は検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで検査対象物Wを撮像することが可能である。
【0024】
判定手段14による検査対象物Wにおける欠陥Bの有無についての判定精度を高めるためには、撮像手段33として画素数の高いカメラを用いることが望ましい。なお、撮像手段33は、アナログカメラ又はデジタルカメラの何れについても用いることが可能である。
【0025】
制御手段12としては、画像処理手段11に接続されている前記各手段の動作や作業工程を制御する制御盤等が用いられる。
記憶手段13や判定手段14としては、電子計算機におけるRAMやROM等からなる記憶部や、CPUからなる演算処理部等が用いられる。判定手段14には画像処理を行う画像処理ボードが配設される。記憶手段13には、検査対象物Wに関するCAD(Computer Aided Design)データの情報や、その他演算処理を実行するためのプログラム等が格納される。
【0026】
そして、画像処理手段11が備える判定手段14は後述する如く、第一露光条件で撮像した検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像(図4における撮像エリア画像SP1)と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像(図7における第二画像P2)と、を組み合わせた画像(図7における組み合わせ画像P3)を作成することにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を判定するのである。
【0027】
[検査対象物W]
次に、本実施形態に係る外観検査装置10の検査対象である検査対象物Wについて、図2を用いて説明する。
本実施形態に係る検査対象物Wとしては図1及び図2に示す如く、カムシャフトが用いられる。検査対象物Wであるカムシャフトは、軸の周囲に形成された円形の溝部Wdと、この溝部Wdの周囲に形成された円盤状の平板部Wfとを有する。そして、本実施形態においては、外観検査装置10で平板部Wfにおける欠陥Bの有無を判定するものとする。具体的には、平板部Wfを図2の破線で示す如く、撮像エリアとして45度ずつ八箇所の部分に分割し、矢印Rのように回転させながらそれぞれの部分について撮像して、欠陥Bがないかどうかを判断するのである。
【0028】
なお、検査対象物Wの形状は、本実施形態で図2に示す形状に限定されず、他の形状を検査対象物とすることも可能である。また、本実施形態において検査対象物Wはカムシャフトが用いられるが、他の部品に対して外観検査装置10を用いて外観検査を行うことも可能である。さらに、検査対象物Wの撮像エリアを分割することなく、一回のみの撮像で全エリアを撮像する構成とすることも可能である。
【0029】
[ワーク種別判別方法]
次に、上記の如く構成された外観検査装置10において、検査対象物Wにおける欠陥Bの有無を判定する方法を、図3から図7を用いて説明する。
本実施形態に係る外観検査装置10で行う外観検査方法は図3に示す如く、第一露光条件で、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程(図3中のステップS11からステップS1n)と、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件で、撮像エリアを撮像する、第二撮像工程(図3中のステップS21からステップS2m)と、を備える。そして、外観検査方法はさらに、第一露光条件で撮像した検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭の画像と、第二露光条件で撮像した撮像エリアの画像と、を組み合わせる(図3中のステップS31)ことにより、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する(図3中のステップS32)、判定工程と、を備える。
【0030】
以下、上記の各工程について具体的に説明する。
第一撮像工程においては、撮像手段33において第一露光条件で、検査対象物Wにおける撮像エリアA1(図2において分割した部分のうちの一つ)の輪郭を撮像する。第一露光条件で撮像した画像を第一画像P1とする。第一露光条件とは、図2及び図4に示す如く、第一画像P1に溝部Wdの形状による陰影(図2及び図4における網掛け部分)が表れる程度に調節された露光条件である。換言すれば、第一画像P1には、溝部Wdの形状による陰影が表れるのである。詳細には、第一画像P1には図2及び図4に示す如く溝部Wdの内外の両側面に陰影が表れ、溝部の中央部には陰影が表れていない。このように、第一露光条件は、検査対象物Wの製造時の公差によって溝部Wdの形状が異なった場合でも、後述する如く画像処理手段11において溝部Wdの形状による陰影が認識できる程度の露光条件であれば良い。
【0031】
そして、画像処理手段11において、第一画像P1から所定の輝度測定ライン(図4におけるL1)に沿って輝度プロファイルを作成する。図5(a)は検査対象物Wを輝度測定ラインL1で軸方向に切断した場合の仮想断面図である。また、図5(b)は図5(a)における破線で示した領域α1の輝度プロファイルである。図5(b)に示す如く、陰影が表れる溝部Wdの両側面(図5(b)中のd1及びd2)は輝度が低下し、陰影が表れない溝部の中央部(図5(b)中のb1)及び平板部(図5(b)中のb2)は輝度が上昇する。そして、溝部の外側面に形成された陰影の部分(図5(b)中のd2)から外側へいくに従って輝度が上昇し、最大値に達する部分、即ち、輝度プロファイルの傾きが0となる部分(図5(b)に示すFe1)に該当する箇所(図5(b)に示すE1)が、図4に示す一つの撮像エリアA1における平板部Wfの内周端E1であると認定するのである。
【0032】
さらに、図4に示す如く、第一画像P1において平板部Wfの内周端E1と認定した部分を、欠陥Bの判定において位置関係の基準とする基準エッジSeとして、第一画像P1に基づいて基準画像データSd1を作成する。基準画像データSd1は検査対象物Wにおける一つの撮像エリアを示している。そして、この基準画像データSd1を包含する画像を撮像エリア画像SP1として作成するのである。
【0033】
より詳細には、図2に示す如く八つの部分に分割した撮像エリアのうち、検査対象物Wを矢印Rのように回転させながら第一露光条件で複数個(n個:本実施形態においてはn≦8)の部分についてn回撮像し、それぞれの第一画像P1で認定された内周端E1の位置の平均値を用いて基準エッジSeの位置を算出するのである。なお、本実施形態においては第一露光条件で複数回(n回)の撮像をする構成としているが、第一露光条件による撮像は一回のみとすることも可能である。ただし、基準エッジSeの位置精度を向上させる観点からは、第一露光条件による撮像を複数回行うことが好ましい。
【0034】
次に、第二撮像工程においては、撮像手段33において、それぞれの撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な、第一露光条件と異なる第二露光条件で、第一撮像工程で撮像した撮像エリアA1と同じ撮像エリアA1を撮像する。第二露光条件で撮像した画像を第二画像P2とする。第二露光条件とは、図6及び図7に示す如く、第二画像P2に欠陥Bによる陰影が表れる程度に調節された露光条件であり、第一露光条件よりも露光が大きく設定される。このため、第二画像P2には、溝部Wdの形状による陰影(図6及び図7における網掛け部分)が部分的にしか表れない場合がある。
【0035】
より詳細には、図6に示す如く八つの部分に分割した撮像エリアのうち、検査対象物Wを矢印Rのように一方向へ回転させながら第二露光条件で複数個(m個:本実施形態においてはm=8)の部分についてm回撮像し、m個の第二画像P2を作成するのである。
【0036】
そして、判定工程においては図7に示す如く、画像処理手段11により、第一露光条件で撮像した検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭の画像である撮像エリア画像SP1と、第二露光条件で撮像した撮像エリアA1の画像である第二画像P2と、を組み合わせて、組み合わせ画像P3を作成する。そして、判定手段14において組み合わせ画像P3を用いて、検査対象物Wにおける撮像エリアA1の輪郭内における欠陥Bの有無を判定する。
【0037】
より詳細には、欠陥Bが撮像エリアA1内において、基準エッジSeに対してどこに位置するかによって、検査対象物Wにおける欠陥Bの位置や大きさを特定する。換言すれば、基準エッジSeからの距離や位置関係によって欠陥Bの位置や大きさを特定するのである。また、他の撮像エリアについても撮像エリアA1と同様にして、欠陥Bの有無を判定するのである。
【0038】
上記の如く、本実施形態に係る外観検査装置10による外観検査方法によれば、検査対象物Wの部位によって色調又は光沢が異なる場合であっても、露光条件を調節して異なる露光条件(第一露光条件及び第二露光条件)で検査対象物Wを撮像することにより、欠陥Bの有無を判定することができる。具体的には、画像処理手段11において溝部Wdの形状による陰影が認識できる第一露光条件と、第一露光条件よりも露光が大きく、欠陥Bによる陰影が表れる程度に調節された第二露光条件と、の二つの露光条件で検査対象物Wを撮像することにより、欠陥Bの有無が判定可能となる。このため、検査対象物Wの部位ごとに外観検査の評価基準(欠陥Bの有無の判定基準)を変更することが可能となるのである。
【0039】
また、本実施形態においては、検査対象物Wの形状が製造時の公差によって異なる場合であっても、検査対象物Wの欠陥Bの有無を正確に判定することが可能となる。
【0040】
具体的には、本実施形態によれば、溝部Wdの形状に応じて平板部Wfの内周端E1と認定した部分を基準エッジSeとして基準画像データSd1を作成し、撮像エリア画像SP1として作成する構成としている。このため、検査対象物Wの溝部Wdの幅が、図11(a)に示す仮想断面図の如く大きい場合であっても、図7に示す如く、第二画像P2における平板部Wfの内周端と基準画像データSd1における内側の基準エッジSeとが一致するように、第二画像P2と、溝部Wdの形状に応じて作成した撮像エリア画像SP1と、を組み合わせることができるのである。これにより、組み合わせ画像P3において基準画像データSd1の基準エッジSeを用いることが可能となり、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を正確に判定することができるのである。
【0041】
また、本実施形態によれば、第一撮像工程において、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を、溝部Wdの形状による陰影が認識できる第一露光条件で撮像し、基準画像データSd1を作成する構成としている。このため、図12(a)に示す如く検査対象物Wの溝部Wdの深さが浅く、第二露光条件において検査対象物Wを撮像した第二画像P2に溝部Wdの形状による陰影が照明光による反射光によって表れない場合であっても、図7に示す如く、第二画像P2と撮像エリア画像SP1とを組み合わせることによって、検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭内における欠陥Bの有無を正確に判定することができるのである。
【0042】
上記の如く、本実施形態に係る外観検査装置10による外観検査方法によれば、検査対象物Wの部位によって色調又は光沢が異なる場合でも検査対象物Wの全体の露光調節を行うことができる。また、検査対象物Wの形状が製造時の公差によって異なる場合であっても欠陥Bの有無を正確に判定することが可能となるのである。
【0043】
なお、本実施形態において、基準エッジSeの作成にあたっては検査対象物Wであるカムシャフトの溝部Wdを用いたが、基準エッジSeとする箇所は限定されるものではない。つまり、第一露光条件において、画像処理手段11において検査対象物Wの形状による陰影が認識できる部位であれば、基準エッジSeの作成に用いることが可能である。
【0044】
また、本実施形態においては、第一露光条件で検査対象物Wにおける撮像エリアの輪郭を撮像する第一撮像工程の後に、撮像エリアにおける欠陥Bが撮像可能な第二露光条件で撮像エリアを撮像する第二撮像工程を行う構成としたが、この順序は逆にすることも可能である。
【0045】
さらに、第二実施形態に係る外観検査装置によれば、第一撮像工程と第二撮像工程を同時に行うことも可能である。具体的には、本実施形態に係る外観検査装置は図8に示す如く、撮像手段として、第一露光条件で撮像を行う第一撮像手段33aと、第二露光条件で撮像を行う第二撮像手段33bとを備える。なお、本実施形態においては、前記第一実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0046】
そして、図8に示す如く分光器によって第一撮像手段33aおよび第二撮像手段33bに入射する光の量を調節して、それぞれの撮像手段における露光条件を変更することにより、第一撮像工程と第二撮像工程とを同時に行う構成としているのである。
【符号の説明】
【0047】
10 外観検査装置
11 画像処理手段
14 判定手段
33 撮像手段
B 欠陥
W 検査対象物
SP1 撮像エリア画像
P2 第二画像
P3 組み合わせ画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の画像を異なる露光条件で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した検査対象物の画像から、前記検査対象物の表面における欠陥の有無を判定する画像処理手段と、を備える外観検査装置であって、
前記撮像手段は、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで前記検査対象物を撮像し、
前記画像処理手段は、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、
ことを特徴とする、外観検査装置。
【請求項2】
第一露光条件で、検査対象物における撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程と、
前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件で、前記撮像エリアを撮像する、第二撮像工程と、
前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、判定工程と、を備える、
ことを特徴とする、外観検査方法。
【請求項1】
検査対象物の画像を異なる露光条件で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した検査対象物の画像から、前記検査対象物の表面における欠陥の有無を判定する画像処理手段と、を備える外観検査装置であって、
前記撮像手段は、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭が撮像可能な第一露光条件と、前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件と、のそれぞれで前記検査対象物を撮像し、
前記画像処理手段は、前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、
ことを特徴とする、外観検査装置。
【請求項2】
第一露光条件で、検査対象物における撮像エリアの輪郭を撮像する、第一撮像工程と、
前記撮像エリアにおける欠陥が撮像可能な、前記第一露光条件と異なる第二露光条件で、前記撮像エリアを撮像する、第二撮像工程と、
前記第一露光条件で撮像した前記検査対象物における撮像エリアの輪郭の画像と、前記第二露光条件で撮像した前記撮像エリアの画像と、を組み合わせることにより、前記検査対象物における撮像エリアの輪郭内における欠陥の有無を判定する、判定工程と、を備える、
ことを特徴とする、外観検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−72724(P2013−72724A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211364(P2011−211364)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]