説明

外観検査装置

【課題】光切断法を用いた外観検査装置において、エリアセンサカメラのシャッタ速度を速め、高精度な検査を実現することができる外観検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物を搬送する搬送手段10と、検査対象物Kの表面形状を検査する表面形状検査手段とを備える。表面形状検査手段は、帯状のスリット光検査対象物Kの表面に照射するスリット光照射部23と、スリット光の画像を撮像するエリアセンサカメラ22と、スリット光の反射光を、搬送方向下流側から受光してエリアセンサカメラ22に導く第1光学機構30、及び上流側から受光してエリアセンサカメラ22に導く第2光学機構40と、エリアセンサカメラ22により撮像された2つの画像を基に、検査対象物K表面の適否を判定する形状判定部とを備える。第1光学機構30及び第2光学機構40の各光学経路は、各反射光を、エリアセンサカメラ22に横並びで結像させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品(錠剤,カプセル等),食品,機械部品や電子部品等(以下、「検査対象物」という)の外観を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記検査対象物表面の外観を検査する装置として、例えば、特開2004−317126号公報に開示された装置が知られている。
【0003】
この装置は、検査対象物表面にレーザスリット光を照射し、照射されたレーザスリット光の画像を適宜撮像装置によって撮像し、得られた画像を光切断法に従い解析して検査対象物表面の高さに係る情報を取得し、得られた高さ情報を基に、検査対象物の表面に存在する傷や欠け等を検出し、また、検査対象物の体積を算出するというものである。
【0004】
ところで、このような光切断法を用いた検査において、レーザスリット光を1方向からのみ撮像すると、検査対象物の表面形状によっては、撮像方向の死角となる場所を生じることがあり、かかる死角部では、レーザ光の反射光を受光することが出来ないため、正確な検査を行うことができないという問題がある。図18に示すように、検査対象物Kの表面に欠損部200がある場合、カメラ201が実線で示した方向から撮像すると、死角部200aを生じるが、その反対方向(2点鎖線で示した方向)から撮像すると、この死角部200aを撮像することができる。
【0005】
そこで、本願出願人は、特願2009−281084及び特願2009−281087において、検査対象物の搬送方向の前後方向から前記レーザスリット光を撮像するようにした外観検査装置を提案している。
【0006】
この外観検査装置は、図19に示すように、画像撮像装置110として、直線搬送部100の搬送路上方に配設されたエリアセンサカメラ111と、帯状のスリット光を照射するスリット光照射器112と、このスリット光照射器112から照射されたスリット光をエリアセンサカメラ111の直下方向に導き、直線搬送部100によって搬送される検査対象物Kに照射させるミラー113,114と、検査対象物Kに照射されたスリット光の反射光を、直線搬送部100の搬送方向(矢示方向)下流側から受光して、エリアセンサカメラ111に導き入れるミラー115,116と、同反射光を搬送方向上流側から受光して、エリアセンサカメラ111に導き入れるミラー117,118とを備える。
【0007】
前記エリアセンサカメラ111は複行複列に配置された素子から構成されるエリアセンサを備えており、前記2つの反射光は、図20に示すように、エリアセンサの領域(一転鎖線で示した領域)内で、そのラスター方向と直交する方向に並んだ状態(縦並び状態)で、当該エリアセンサ上に結像される。尚、それぞれ2枚のミラーを用いて搬送方向の上流側と下流側から撮像する従来の装置では、その画像は、必然的に、上記縦並び状態でエリアセンサ上に結像される。
【0008】
そして、エリアセンサカメラ111は、予め設定した幅のライン分について、例えば、図20に示すA及びBのライン幅について、ラスター方向に走査しながら、それぞれ輝度データを有する複行複列の画素からなる画像データとして出力し、出力された画像データが検査に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−317126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記外観検査装置において、高精度な検査を行うには、エリアセンサカメラ111のシャッタ速度を速めて、検査対象物の搬送方向に沿って高い密度でスリット光の画像を得る必要がある。
【0011】
ところが、上記従来の外観検査装置では、照射されたスリット光の画像を斜め方向から撮像する関係上、撮像画像はライン状ではなく、所定幅のバンド状の領域を有しており、特に、前後2方向からの反射光が、縦並び状態でエリアセンサカメラ111に結像されることから、図20に示すように、A及びBの2つのライン幅分について、そのラスター方向のデータを出力する必要があり、このため、画像データ出力に要する時間が長引くことから、高精度な検査を行うために必要な速いシャッタ速度を得ることができないという問題があった。
【0012】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、光切断法を用いた所謂三次元外観検査装置において、エリアセンサカメラのシャッタ速度を速めることができ、その結果として、高精度な検査を実現することができる外観検査装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
所定の搬送面に沿って検査対象物を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送される前記検査対象物の表面形状を検査する表面形状検査手段とを備えた外観検査装置であって、
前記表面形状検査手段は、前記搬送手段の近傍に配設され、帯状のスリット光を、前記搬送面に対して垂直に、且つその照射ラインが前記検査対象物の搬送方向と直交するように、前記検査対象物表面に照射するスリット光照射部と、
前記検査対象物表面に照射されたスリット光の画像を撮像するエリアセンサカメラと、
前記検査対象物表面に照射されたスリット光の反射光を、前記検査対象物の搬送方向に沿った下流側から受光して前記エリアセンサカメラに導く光学経路を有する第1光学機構及び、前記反射光を前記搬送方向に沿った上流側から受光して前記エリアセンサカメラに導く光学経路を有する第2光学機構と、
前記エリアセンサカメラにより撮像された2つの画像を基に、前記検査対象物表面の形状特徴を認識して該形状に関する適否を判定する形状判定部とを備えてなり、
前記第1光学機構及び第2光学機構の各光学経路は、前記各反射光を、前記エリアセンサカメラの結像部において横並びで結像させる経路となった外観検査装置に係る。
【0014】
この外観検査装置によれば、前記搬送手段によって搬送される検査対象物の表面形状が、前記表面形状検査手段によって検査される。
【0015】
即ち、まず、搬送される検査対象物の表面に、スリット光照射部からスリット光が照射される。照射されたスリット光は、その反射光が、搬送方向の下流側から受光する第1光学機構及び、上流側から受光する第2光学機構の各光学経路を経て、エリアセンサカメラに導かれ、その結像部の予め設定された領域内において横並びに結像する。
【0016】
そして、エリアセンサカメラは、前記設定領域内に結像された画像に係るデータを、所定のシャッタ間隔毎に順次出力する。尚、検査対象物の移動に伴って、その表面に照射されるスリット光の位置はずれていくが、エリアセンサカメラは、少なくとも検査対象物の全表面についての前記スリット光の画像データを前記形状判定部に向けて出力する。
【0017】
前記形状判定部では、エリアセンサカメラから受信した検査対象物1個分についての2つの画像データを基に、当該検査対象物の表面形状に関し、その適否を判定する。即ち、形状判定部は、まず、受信した2つの画像データを基に、それぞれ光切断法により検査対象物表面の三次元形状に係るデータを算出し、ついで、算出した2つのデータを合成した後、この合成データを基に、検査対象物の表面形状に関する特徴を認識し、認識した特徴からその形状についての適否、例えば、欠損の有無や、刻印が付されている場合にはその良否について判定する。
【0018】
斯くして、本発明に係る外観検査装置によれば、第1光学機構及び第2光学機構の各光学経路を、これらを経由してエリアセンサカメラに導かれる反射光が、その結像部において横並びに結像する経路としたので、結像部の所定バンド幅の領域内に2つ像が結像され、したがって、当該バンド幅のデータを出力することで、前記2つの画像データを一時に出力することができる。
【0019】
このように、本発明によれば、2つの画像データを一時に出力することができ、従来の外観検査装置に比べて、その出力時間が半分となるので、エリアセンサカメラのシャッタ速度を速めることができ、延いては、高精度な外観検査を実現することができる。
【0020】
尚、前記エリアセンサカメラによって撮像される2つの画像は、相互間で上下が同じ向きであることが、前記形状判定部において上下反転処理を行う必要が無く、迅速な処理を行うことができるという観点から好ましい。
【0021】
このような、上下が同じ向きの画像を撮像するためには、前記第1光学機構及び第2光学機構を、
前記搬送方向と直交し且つ前記搬送面と平行な第1軸の軸方向に沿って配設された反射面を有し、前記検査対象物表面に照射されたスリット光の反射光を前記反射面に受光して反射する第1ミラーと、
前記搬送面と直交する第2軸の軸方向に沿って配設された反射面を有し、前記第1ミラーによって反射された光を受光して反射する第2ミラーと、
前記搬送方向に沿って配設された反射面を有し、前記第2ミラーによって反射された光を受光して反射し、該反射光を前記エリアセンサカメラに導く第3ミラーとの3つのミラーから構成すると良い。
【0022】
この場合、第1光学機構及び第2光学機構の各第1ミラーを、それぞれ同じ仰角の反射光を受光するように構成するのが好ましい。このようにすれば、両画像によって得られる高さ情報が一致したものとなり、このため、後の補正処理などが不要となり、より迅速且つ正確な検査を行うことができる。
【0023】
また、前記第1光学機構及び第2光学機構は、前記第1軸と平行な軸回りに前記第1ミラーを回転させる第1角度調整部と、前記第2軸と平行な軸回りに前記第2ミラーを回転させる第2角度調整部とをそれぞれ備えているのが好ましい。
【0024】
前記第1ミラー及び第2ミラーの各反射面の角度を調整することで、前記2つ反射光が前記エリアセンサカメラに横並びで結像される縦方向の位置を両者間で一致させることができ、その結果、前記形状判定部におけるデータ処理を迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、エリアセンサカメラから2つの画像データを出力する時間を従来の外観検査装置に比べて半分にすることができるため、当該エリアセンサカメラのシャッタ速度を速めることができ、その結果、高解像度の画像データを得ることができ、高精度な外観検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置を示した正面図である。
【図2】本実施形態に係る形状判定部の構成を示したブロック図である。
【図3】図1における矢視A−A方向の断面図である。
【図4】本実施形態に係る画像撮像部を示した正面図である。
【図5】図4に示した画像撮像部の右側面図である。
【図6】図4に示した画像撮像部の平面図である。
【図7】本実施形態においてスリット光が照射される態様を示した説明図である。
【図8】図7に示したスリット光を、検査対象物の搬送前後方向から視た状態を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るエリアセンサカメラに結像される画像を示した説明図である。
【図10】本実施形態に係る第1光学機構及び第2光学機構の各ミラーの角度を調整する態様を説明するための説明図である。
【図11】本実施形態に係る第1光学機構及び第2光学機構の各ミラーの角度を調整する態様を説明するための説明図である。
【図12】本実施形態に係る第1光学機構及び第2光学機構の各ミラーの角度を調整する態様を説明するための説明図である。
【図13】本実施形態に係る第1光学機構及び第2光学機構の各ミラーの角度を調整する態様を説明するための説明図である。
【図14】本実施形態に係る輝度データ変換処理部における処理を説明するための説明図である。
【図15】本実施形態に係る輝度データ変換処理部における処理を説明するための説明図である。
【図16】本実施形態に係る画像合成処理部における処理を説明するための説明図である。
【図17】本実施形態に係る形状特徴抽出部における処理を説明するための説明図である。
【図18】従来の画像撮像に関する説明図である。
【図19】従来の画像撮像装置を示した正面図である。
【図20】従来の画像撮像装置によって撮像される画像を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一具体的な実施の態様につき、図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、本例の外観検査装置1は、検査対象物Kを整列して供給する供給部3と、供給された検査対象物Kを直線搬送する直線搬送部10と、搬送される検査対象物Kの表面形状を検査して選別する表面形状検査部20とを備える。
【0029】
なお、本例における検査対象物Kとしては、医薬品(錠剤,カプセル等),食品,機械部品や電子部品等を例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0030】
以下、上記各部の詳細について説明する。
【0031】
[供給部]
前記供給部3は、多数の検査対象物Kが投入されるホッパ4、ホッパ4の下端部から排出される検査対象物Kに振動を付与して前進させる振動フィーダ5、振動フィーダ5の搬送終端から排出される検査対象物Kを滑落させるシュート6、水平回転し、シュート6から供給された検査対象物Kを一列に整列して排出する整列テーブル7、垂直面内で回転する円盤状の部材を有し、前記整列テーブル7から排出された検査対象物Kをこの円盤状の部材の外周面に吸着して搬送する回転搬送部8からなり、多数の検査対象物Kを一列に整列させて、順次前記直線搬送部10に受け渡す。
【0032】
[直線搬送部]
図3は、図1における矢視A−A方向の一部断面図であるが、この図に示すように、前記直線搬送部10は、所定の間隔で対向するように配置された側板11,12と、この側板11,12の上面に形成されたガイド溝に案内され、当該ガイド溝に沿って走行するエンドレスの丸ベルト13,14とを備える。
【0033】
側板11,12によって挟まれた空間は、その上部が開放されるように側板11,12及び他の部材(図示せず)によっ閉塞され、図示しない真空ポンプによって負圧に維持されている。
【0034】
斯くして、前記空間内が負圧に維持されることで、ガイド溝に沿って走行する丸ベルト13,14間に負圧による吸引力が生じ、検査対象物Kがこの丸ベルト13,14上に載置されると、前記吸引力によって丸ベルト13,14上に吸引,吸着され、丸ベルト13,14の走行に伴なって同走行方向に搬送される。
【0035】
[表面形状検査部]
前記表面形状検査部20は、画像撮像部21、形状判定部50及び選別部60から構成される。
【0036】
図4に示すように、画像撮像部21は、前記直線搬送部10の搬送路上方に配設されたエリアセンサカメラ22と、帯状のスリット光Lを照射するスリット光照射器23と、このスリット光照射器23から照射されたスリット光Lを、直線搬送部10の搬送路上に照射させるミラー24,25と、スリット光Lの反射光Lを、直線搬送部10の搬送方向(矢示方向)下流側から受光して、エリアセンサカメラ22に導き入れる第1光学機構30と、同反射光Lを搬送方向上流側から受光して、エリアセンサカメラ22に導き入れる第2光学機構40とを備える。
【0037】
スリット光照射器23及びミラー24,25は、前記スリット光Lを、その照射ラインが、直線搬送部10によって搬送される検査対象物Kの搬送方向(矢示方向)に対して直交するように、鉛直下方に照射する。かかるスリット光Lが検査対象物Kの表面に照射された状態を図7に示す。
【0038】
図4乃至図6に示すように、前記第1光学機構30及び第2光学機構40は、それぞれ第1ミラー31,41及び第2ミラー32,42を備えており、それぞれの共有のミラーとして第3ミラー35を備えている。尚、この第3ミラーは本例のように一つの一体のミラーとした態様でも、分離した2つのミラーとした態様でもいずれでも良い。
【0039】
前記第1ミラー31は、前記直線搬送部10の搬送方向と直交し且つその搬送面(丸ベルト13,14によって形成される搬送面)と平行な第1軸(仮想軸)の軸方向に沿って配設された反射面31aを有し、前記検査対象物Kの表面に照射されたスリット光Lの反射光Lを、前記下流側から当該反射面31aに受光して反射するように構成されている。
【0040】
同様に、前記第1ミラー41も、前記仮想の第1軸の軸方向に沿って配設された反射面41aを有し、前記検査対象物Kの表面に照射されたスリット光Lの反射光Lを、前記上流側から当該反射面41aに受光して反射するように構成される。
【0041】
これら第1ミラー31,41は、それぞれ前記仮想の第1軸に沿った回転軸31b,41bを備え、この回転軸31b,41bをその軸回りに回転させることで、水平面に対する前記反射面31a,41aの角度を調整することができるようになっており、この回転軸31b,41bが角度調整部として機能する。
【0042】
また、前記第2ミラー32は、前記搬送面と直交する第2軸(仮想軸)の軸方向に沿って配設された反射面32aを有し、前記第1ミラー31によって反射された光を当該反射面32aに受光し、前記第3ミラー35に向けて反射するように配置されている。
【0043】
同様に、前記第2ミラー42も、前記仮想の第2軸の軸方向に沿って配設された反射面42aを有し、前記第1ミラー41によって反射された光を当該反射面42aに受光し、前記第3ミラー35に向けて反射するように配置される。
【0044】
これら第2ミラー32,42は、それぞれ前記仮想の第2軸に沿った回転軸32b,42bを備え、この回転軸32b,42bをその軸回りに回転させることで、垂直面に対する前記反射面32a,42aの角度を調整することができるようになっており、この回転軸32b,42bが角度調整部として機能する。
【0045】
前記第3ミラー35は、前記搬送方向に沿って配設された反射面35aを有し、前記第2ミラー32,42によってそれぞれ反射された光を当該反射面35aに横並び状態で受光し、当該横並び状態の反射光を前記エリアセンサカメラ22に導く。
【0046】
前記エリアセンサカメラ22は、複行複列に配置された素子から構成されるエリアセンサを備えており、前記下流側で受光される反射光L及び上流側で受光される反射光Lが、それぞれ前記第1光学機構30の光学経路及び前記第2光学機構40の光学経路を経て当該エリアセンサカメラ22内に横並び状態で導き入れられ、そのエリアセンサ上に横並び状態で結像される。
【0047】
図8に、スリット光Lが照射された検査対象物Kを、前記下流側と上流側のそれぞれ斜め上方から肉眼で見た図を示す。図示するように、検査対象物Kの表面から反射光L2s,L3sは、基面からの反射光L2b,L3bから上方にシフトした状態となっている。これは、視る方向がスリット光Lの照射方向と交差することに起因するもので、所謂光切断法と呼ばれ、対象表面に照射されたスリット光は、当該対象表面の高さに応じて、基面に照射されたスリット光から上方にシフトして視える。エリアセンサカメラ22には、このような画像がそのエリアセンサ上に結像される。
【0048】
このエリアセンサカメラ22によって撮像される画像の一例を図9に示す。図9では、前記第1光学機構30の光学経路によって導かれる反射光L2s,L2bと、前記第2光学機構40の光学経路によって導かれる反射光L3s,L3bとが、エリアセンサ(一点鎖線で示す領域)に結像された状態を示している。
【0049】
尚、エリアセンサは、ラスター方向にX列、これと垂直な方向にY行の素子を有しており、前記反射光L2s,L2bと反射光L3s,L3bとは、Y〜Y行(以下、ラインという)の範囲内でラスター方向に横並びに結合されるようになっている。また、結像される両画像は、相互に左右反転された像となっている。
【0050】
そして、エリアセンサカメラ22は、所定のシャッタ速度間隔で、前記Y〜Yライン内の素子のデータをラスター方向に順次走査して、各素子によって検出された輝度データを読み出し、同図9に示すように、X方向の画素位置(X)とその列内で最大輝度を有する画素位置(Y)とからなる位置データ(X,Y)と、その輝度データとを関連付けたデータを画像データとして形状判定部50に送信する。このようにすれば、全素子についてその輝度データを送信する場合に比べて、送信するデータ量が少なくなり、その送信速度や形状判定部50における処理速度を高めることができ、迅速な処理を行うことができる。
【0051】
尚、エリアセンサカメラ22は、少なくとも、検査対象物Kの表面にレーザ光Lが照射されている間の前記画像データを、シャッタ毎に得られたフレーム画像として前記形状判定部50に送信する。
【0052】
ところで、上述のように、対象表面に照射されたスリット光は、当該対象表面の高さに応じて、基面に照射されたスリット光から上方にシフトして視えるが、そのシフト量は視る角度(仰角)によって異なる。
【0053】
したがって、前記第1ミラー31,41は、その前記仰角が同じ角度となるように、前記スリット光Lの搬送路上への照射位置からそれぞれ前後方向に等距離だけ離れ、且つ上方の高さ位置が同じ高さ位置となるように、配設されているのが好ましい。
【0054】
このようにすれば、エリアセンサカメラ22によって撮像される前後方向2つの画像間で、これに含まれる高さ情報が同じものとなるため、後工程での補正処理が不要となる。
【0055】
また、エリアセンサカメラ22によって撮像される2画像は、前記列方向における位置が同じ位置である方が、後工程での処理上好ましい。このため、本例では、検査を開始する前に、図10〜図12に示した手法により、エリアセンサカメラ22に結像される2つの像の位置を調整している。
【0056】
すなわち、図10に示すように、まず、平板状の基板上に半円筒状の突起を形成したテストピースTを、突起部の長手方向が前記搬送方向に沿うように、前記搬送路上に載置した後、スリット光照射器23からスリット光を照射する。
【0057】
次に、この状態で、第1ミラー31の回転軸31bと、第1ミラー41の回転軸41bのいずれか一方、又は両方を回転させて、図12に示すように、水平面に対する各反射面31a,41aの角度を調整し、第2ミラー32,42によって反射された後、第3ミラー35によって受光される反射光L,Lの受光高さ位置が相互間で同じ高さ位置となるように調整するとともに、図13に示すように、これら反射光L,Lが前記エリアセンサのYライン〜Yラインの間に結像されるように調整する。
【0058】
ついで、図11に示すように、第2ミラー32の回転軸32bと、第2ミラー42の回転軸42bのいずれか一方、又は両方を回転させて、垂直面に対する各反射面32a,42aの角度を調整して、第3ミラー35における反射光L,Lの水平方向の受光位置を調整し、当該反射光L,LがX方向にはみ出すことなくエリアセンサ上に結像されるようにする。
【0059】
以上のように調整することで、図13に示すように、反射光L,Lが前記エリアセンサ上で、Yライン〜Yラインの間に、且つX方向にはみ出すことなく、しかも相互間の同じ高さ位置が同じ位置となるように結像される。
【0060】
前記形状判定部50は、図2に示すように、画像記憶部51、輝度データ変換処理部52、画像合成処理部53、形状特徴抽出処理部54、形状判定処理部55及び選別制御部56からなる。
【0061】
画像記憶部51は、前記画像撮像部21から受信した画像データ(フレーム画像)をそれぞれ記憶する。
【0062】
輝度データ変換処理部52は、画像記憶部51に格納されたフレーム画像を読み出し、以下の処理を行って、高さ成分に由来する位置データをその高さ成分に応じて設定した輝度データに変換し、高さ成分が輝度データで表現された新たな画像データを生成する。
【0063】
具体的には、輝度データ変換処理部52は、まず、フレーム画像データを順次読み出して、各フレーム画像について、図14に示すように、(a)の領域についてはラスター方向に走査して、輝度データの存在する画素位置(X,Y)を検出し、図15に示すように、高さ成分に相当する画素位置に係るデータ(Y)を256階調の輝度データに変換して、画素位置(X)と輝度データからなる画像データを生成する。
【0064】
同様に、(b)の領域については前記ラスター方向と反対方向に走査して、同様の変換処理を行い、画素位置(X)と輝度データからなる画像データを生成する。
【0065】
そして、順次全てのフレーム画像について変換して、(a),(b)各領域について、それぞれ新たな画像データ(2次元平面の位置データと、各位置における高さ情報を表す輝度データからなる画像データ、以下「輝度画像データ」という)を生成する。
【0066】
尚、言うまでも無く、前記領域(a),(b)は、前記2方向から撮像されたレーザ光Lの画像がそれぞれ存在する領域であり、上記処理によって、当該2方向の画像について、それぞれ輝度画像データが生成される。
【0067】
また、図14における点線は、基面に照射されたスリット光の画像であり、以降の処理では不要であるので、当該画像データについては、上記処理では無視している。
【0068】
また、2つの画像は、その相互間で左右反転されたものとなっているが、上記のように、2つの画像間でその走査方向を逆にすることで、変換された両画像を、相互間で正画像とすることができ、後工程での反転処理が不要となっている。
【0069】
前記画像合成処理部53は、前記輝度データ変換処理部52によって生成された2方向の輝度画像データを合成して、一つの輝度画像データとする処理を行う。検査対象物Kを搬送方向下流側の斜め上方から撮像する場合、検査対象物Kの後部の反射光が弱く、搬送方向上流側の斜め上方から撮像する場合には、検査対象物Kの前部の反射光が弱くなるため、これらの部分についての画像データが不正確なものとなる。
【0070】
検査対象物Kをその搬送方向下流側から撮像して得られた画像を前記輝度データ変換処理部52によって変換した画像を図16(a)に示し、同じく、搬送方向上流側から撮像した画像の変換画像を図16(b)に示す。図16(a)では画像の上部(白線で囲んだ部分)が不正確となっており、図16(b)では画像の下部(白線で囲んだ部分)が不正確となっている。そこで、これら2つの画像を合成、例えば、相互間でデータが欠けている場合は、存在する方のデータを当て、相互にデータが存在する場合には、その平均値を当てることで、図16(c)に示すような、検査対象物Kの表面全面が正確に表された画像を得ることができる。
【0071】
前記形状特徴抽出部54は、前記画像合成処理部53によって生成された合成画像を基に、形状特徴を抽出する処理を行う。具体的には、合成画像を所謂平滑化フィルタにより平滑化処理し、得られた平滑化画像データと前記合成画像データとの差分をとった特徴画像データを生成する。
【0072】
合成画像は高さ成分を輝度データに変換したものであり、輝度は検査対象物Kの表面の高さを表すものであるが、合成画像から平均化画像を差し引くことで、表面の高さ方向の変化量の大きいところが強調された画像を得ることができる。例えば、図17に示すように、合成画像(図17(a))から平滑化画像(図17(b))を差し引くことで、図17(c)に示すように、検査対象物Kの外周の輪郭と、表面(A面)に印刻された数字「678」が濃色部として強調される。
【0073】
前記形状判定処理部55は、前記形状特徴抽出部54によって生成された表面形状に係る特徴画像を基に、これと適正な表面形状に係るデータとを比較して、印刻の適否や欠けの有無等、その良否を判別する。
【0074】
前記選別制御部56は、前記形状判定処理部55から判定結果を受信し、不良の判定結果を受信すると、当該不良と判定された検査対象物Kが前記選別部60に到達するタイミングで当該選別部60に選別信号を送信する。
【0075】
前記選別部60は、直線搬送部10の搬送終端に設けられるもので、図示しない選別回収機構と良品回収室及び不良品回収室とを備え、前記形選別制御部56から選別信号を受信したとき、前記選別回収機構を駆動し、直線搬送部10の搬送終端に搬送された検査対象物Kの内、良品を良品回収室に回収し、不良品を不良品回収室に回収する。
【0076】
以上の構成を備えた本例の外観検査装置1によれば、まず、検査対象物Kが直線搬送部10によって搬送される間に、その表面に照射されるスリット光Lの画像が画像撮像部21によって撮像され、撮像された画像データが画像撮像部21から形状判定部50に送信される。
【0077】
ついで、撮像された画像を基に、形状判定部50において検査対象物Kの表面の形状に関する適否が自動的に検査され、検査結果に従って、選別部60により、その良品と不良品とが自動的に選別される。
【0078】
そして、本例の外観検査装置1では、スリット光Lの画像を撮像する際に、搬送方向の下流側の第1光学機構30、及び上流側の第2光学機構40の両光学経路を経て導かれる各反射光L,Lが、エリアセンサカメラ22のエリアセンサに横並び状態で結像するようになっているので、かかる2つの画像データを、1つの画像に係るライン幅分について、そのラスター方向に走査し読み出すことができ、従来に比べて、その出力時間を半分にすることができる。
【0079】
したがって、エリアセンサカメラ22のシャッタ速度を従来比べて2倍の速さにすることができ、これにより、高解像度の画像得ることができることから、高精度な外観検査を実現することができる。
【0080】
また、前記エリアセンサカメラ22によって撮像される2つの画像は、相互間で上下が同じ向きとなっているので、形状判定部50において上下反転処理を行う必要が無く、迅速な処理を行うことができる。
【0081】
また、第1光学機構30及び第2光学機構40の各第1ミラー31,41が、それぞれ同じ仰角の反射光L,Lを受光するように構成されているので、両画像によって得られる高さ情報が一致したものとなり、後の補正処理などが不要となるため、より迅速且つ正確な検査を行うことができる。
【0082】
更に、前記第1ミラー31,41の各反射面31a,41a、及び第2ミラー32,42の各反射面32a,42a、の各角度を調整することができるようになっているので、前記2つ反射光L,Lが前記エリアセンサカメラ22に結像されるライン方向の位置を両者間で一致させることができ、前記形状判定部50において位置補正などの補正処理が不要となり、この面からしても、データ処理を迅速に行うことが可能となる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の態様を採り得る。
【符号の説明】
【0084】
1 外観検査装置
10 直線搬送部
20 表面形状検査部
21 画像撮像部
22 エリアセンサカメラ
23 スリット光照射器
30 第1光学機構
31 第1ミラー
32 第2ミラー
35 第3ミラー
40 第2光学機構
41 第1ミラー
42 第2ミラー
50 形状判定部
60 選別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送面に沿って検査対象物を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送される前記検査対象物の表面形状を検査する表面形状検査手段とを備えた外観検査装置であって、
前記表面形状検査手段は、前記搬送手段の近傍に配設され、帯状のスリット光を、前記搬送面に対して垂直に、且つその照射ラインが前記検査対象物の搬送方向と直交するように、前記検査対象物表面に照射するスリット光照射部と、
前記検査対象物表面に照射されたスリット光の画像を撮像するエリアセンサカメラと、
前記検査対象物表面に照射されたスリット光の反射光を、前記検査対象物の搬送方向に沿った下流側から受光して前記エリアセンサカメラに導く光学経路を有する第1光学機構及び、前記反射光を前記搬送方向に沿った上流側から受光して前記エリアセンサカメラに導く光学経路を有する第2光学機構と、
前記エリアセンサカメラにより撮像された画像を基に、前記検査対象物表面の形状特徴を認識して該形状に関する適否を判定する形状判定部とを備えてなり、
前記第1光学機構及び第2光学機構の各光学経路は、前記各反射光を、前記エリアセンサカメラの結像部において横並びで結像させる経路となっていることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記第1光学機構及び第2光学機構は、
前記搬送方向と直交し且つ前記搬送面と平行な第1軸の軸方向に沿って配設された反射面を有し、前記検査対象物表面に照射されたスリット光の反射光を前記反射面に受光して反射する第1ミラーと、
前記搬送面と直交する第2軸の軸方向に沿って配設された反射面を有し、前記第1ミラーによって反射された光を受光して反射する第2ミラーと、
前記搬送方向に沿って配設された反射面を有し、前記第2ミラーによって反射された光を受光して反射し、該反射光を前記エリアセンサカメラに導く第3ミラーとから構成されることを特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記第1光学機構及び第2光学機構の各第1ミラーは、それぞれ同じ仰角の反射光を受光するように構成されている請求項2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記第1光学機構及び第2光学機構は、
前記第1軸と平行な軸回りに前記第1ミラーを回転させる第1角度調整部と、
前記第2軸と平行な軸回りに前記第2ミラーを回転させる第2角度調整部とをそれぞれ備えていることを特徴とする請求項2又は3記載の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−242319(P2011−242319A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116044(P2010−116044)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(305021292)第一実業ビスウィル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】