説明

外面にテキスチャーを有する肉代替品

約5質量%と約40質量%の間のタンパク質を含有する肉代替品を押出調理器内で製造する方法が開示されている。混合物が周囲温度と大気圧に押し出され、その際に、押出素材の断面積が、押出孔の断面積の少なくとも2倍まで膨張し、押出物は、周囲温度および大気圧の条件に保持されて、押出物の外面の「表皮」の形成が促進され、押出物の断面積の収縮により、「表皮」に、調理済みの筋肉部位の肉の外観を与える様式で皺を寄せさせる。また、肉代替品であって、代替品の大半がデンプンおよびタンパク質から実質的になり、代替品が、皺の寄った外観を有し、代替品の中心そんざいするよりもタンパク質の割合が高い外面を有する肉代替品も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉代替製品の工業製造の分野に関する。特に、本発明は、本物の肉に似た外面テキスチャーを有する、比較的低コストの炭水化物に基づく肉代替品を製造する改良方法、およびそれにより製造された肉代替品に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のペットフード製品の製造業者にとって、ペットに健康的で食欲をそそるミールを提供していると感じる欲求を満足させるようにペットの飼い主に十分に視覚的に訴える、動物用の食品を提供することが継続している課題である。これは簡単な仕事ではない。何故ならば、ペットフードの製造業者が、競合できる売れる価格でミールを提供できることを確実にするために、この製造業者が入手できる原料は典型的に、人が食べるグレードの素材よりも品質が低いからである。
【0003】
それゆえ、ペットフードの製造業者は、特に、ドッグフードやキャットフードに関して、低コストの原料、典型的に、数多くの加工が可能な肉の切れ端および臓器などのタンパク質の豊富な素材から、上等な肉の外観に似た肉代替品の塊を製造することを目指している。
【0004】
しかしながら、ペットフード製品が、低コストのペットフード配合物の選択により特徴付けられる、非常に「予算重視の」市場の区分を対象とする場合、ペットフードの製造業者は、ペットフードの配合コストをさらに最少にするために、植物素材または穀物素材を優先して、肉または他のタンパク質の豊富な素材の含有を余儀なく最少にしている。
【0005】
タンパク質の少ない素材を肉製品に似せることは典型的に一層難しいので、このため、ペットフードの製造業者にさらなる課題が突きつけられている。過去に採用された手法の1つに、押出物中に筋の付いた内部テキスチャーを生成する、大豆タンパク質や小麦グルテンなどの穀物タンパク質の混合物の押出調理が挙げられる。切断して開かれたときに、内部のテキスチャーは、筋肉部位の肉に似ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この押出物は、「肉様」テキスチャーを実際に現すために、切断して開く必要があるので、パッケージを開けたときに「本物の肉」の外観がペットの飼い主に直ちにはっきり分かるように、外面に筋肉部位の肉(muscle meat)に相当似ており、好んでやりそうもないが、ペットの飼い主にペットフードの手の込んだ取扱いを強いらせずに、比較的タンパク質の少ない肉代替品を製造する必要性が依然としてある。さらに、内部にテキスチャーを形成するために機能性タンパク質を使用する必要があるために、肉代替品の原料コストが高くなってしまう。
【0007】
本発明の課題は、従来技術の肉代替品よりも、筋肉部位の肉に酷似した外観を有する、比較的タンパク質の少ないペットフード成分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、肉代替品を製造する方法であって、
約5質量%と約40質量%の間のタンパク質を含有する構成素材を混合する工程、
この混合物を、公知の断面積の押出孔を有する押出調理器中に供給する工程、
この押出調理器内で混合物を所定の温度と圧力で加工処理する工程であって、この温度と圧力が、加工処理された混合物に押出孔の断面積の少なくとも2倍まで膨張させるように選択されたものである工程、
押出調理器から押出孔を介して混合物を周囲温度と大気圧中に押し出す工程であって、その際に、押し出された素材(押出物)の断面積が、押出孔の断面積の少なくとも2倍まで膨張している工程、および
押出物を周囲温度と大気圧の条件に保持し、それによって、押出物の外面上の「表皮」の形成および押出物の断面積の収縮を促進し、それによって、調理済みの筋肉部位の肉の外観に似た様式で「表皮」に皺を寄せさせる工程、
を有してなる方法が提供される。この「表皮」は、このプロセスの結果として、この配合物中のタンパク質の、一片の表面で凝集する傾向の結果として形成されると考えられる。
【0009】
この素材のタンパク質含有量が、約10質量%と約30質量%の間にあることが好ましい。
【0010】
冷却の際に、押出物の収縮後にこの押出物に圧縮力を印加し、それによって、「表皮」の皺の寄った外観の形成を促進させることが好ましい。これに、当該技術分野によく知られた任意の押出物切断技法による押出物の切断を含ませてもよい。
【0011】
その上、または代わりに、押出物の外部のテキスチャー形成を、冷却の際の押出物の収縮および圧縮後に、この押出物にひだを入れることによって促進してもよい。このひだ入れ力は、圧縮ローラにより、真空収縮により、または任意の他の適切な手段により、印加してもよい。
【0012】
押出調理器内の圧力および温度条件が、加工処理済み混合物に、押出孔の断面積の2倍と3倍の間まで膨張させるように選択される場合に、最良の結果が観察された。
【0013】
構成素材は、約15質量%と約25質量%の間のタンパク質および約55質量%と約65質量%の間の穀物を含有することが都合よい。こらの構成素材のよく実施される配合は、約62%の穀物、約25%の乳化肉または肉副産物、および約8%の湿潤剤を含む。好ましいタンパク質源は、粉砕レバー、家禽の内蔵、および牛の心臓である。
【0014】
本発明の別の態様において、上述した方法により製造された肉代替製品が提供される。
【0015】
本発明の別の態様において、約5質量%と約40質量%の間のタンパク質を含有し、皺の寄った外観を有する外面を持つ肉代替品であって、この代替品の塊の大半が、タンパク質およびデンプンの基質から実質的になり、代替品の表面が、代替品の中心に存在するよりも、タンパク質の割合が多い肉代替品が提供される。これは、上述した方法により製造された代替品に関連する物理的構造である。
【0016】
ここで、図面を参照して、本発明の非限定的な特別な好ましい実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による塊を形成する低タンパク質素材を押し出すのに用いられる押出調理器のノズルの概略図
【図2】図1に示されたノズルの別の概略図
【図3】本発明による比較的低タンパク質の肉代替品塊を多数示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明をここに、以下のプロセスおよびその結果得られる製品により具現化する。
【0019】
使用した基本プロセスは、当業者によく知られている。本発明は、ペットフード製品に含ませるのに適した比較的低タンパク質の肉代替製品を製造するための配合の詳細、およびその製品を製造するために選択されたプロセス条件および設備の設定にある。
【実施例】
【0020】
原料の配合が、以下の表1に要約されている。
【表1】

【0021】
レバーは、3mmのホールプレートに通して粉砕することにより調製される。このレバーは、押出物が押出調理器を出るときに、押出物内の加熱された蒸気とガスが押出物の内部に残り、ダイプレートを出る際に急に蒸発してなくなる傾向にはないための構造を提供するという点で、配合物における特別な利点を提供する。米は、特に良好な炭水化物源を提供することが分かっている。
【0022】
次いで、素材の全てを、リボン・ブレンダまたは同等のミキサ内でブレンドし、押出調理器の供給ホッパに送る。
【0023】
この場合、使用する押出調理器は、Werner and Pfleiderer C58二軸スクリュー押出機である。スクリューのプロファイルは、以下の表2にその概要が説明されている。
【表2】

【0024】
この特別な実施例に使用されたダイプレートが図1および2に示されている。ダイプレート5は重い鋼板10を含み、この鋼板は、押出機(図示せず)の出口に固定される。この鋼板は、直径10mmの1つの円形孔を備え、加圧された押出物がこの中を通って、細長い管状ノズル15に通過する。この10mmの内径は、ノズル15内でずっと維持され、これは、10mmの孔20で終わり、ここから、押出物が現れる。
【0025】
ダイプレートの孔の正確な寸法は、本発明の作業にとっては本質的に重要ではない。
【0026】
押出調理器の典型的な運転条件は、以下の表3にその概要が説明されている。
【表3】

【0027】
これらの条件により、米の中のデンプンが、押出機のバレル内でゲル化する。このことは、比較的低タンパク質含有量であることを考慮すると、凝集性押出物の形成にとって重要である。
【0028】
これにより、ダイプレートの孔20の断面積の約2から3倍の断面積に膨張する押出物が生成される。周囲空気と接触した際に、ゲル化デンプンの退化と、押出物の構造内のレバーのタンパク質の作用のために、押出物の外面に「表皮」が形成される。
【0029】
押出物が周囲条件において冷めるときに、加熱されたガスおよび蒸気は、押出物の内部に留まり、押出物の内部にある膨張したガスが冷却されるために、膨張が縮小する。しかしながら、表皮が表面に形成されたので、その表面は収縮できない。これにより、表皮が強制的に皺になり、「皺が寄せられる」。この皺寄せ作用により、押出物の外面に所望の「肉様」外観が生じる。
【0030】
典型的に、押出物は、当該技術分野においてよく知られた数多くの押出物切断技法の内の任意の1つ、例えば、回転ナイフを使用することによって、プロセスのこの地点で所定の長さに切断される。
【0031】
あるいは、さらなる加工処理によって、この皺寄せ作用を促進してもよい。例えば、押出物のロープ状体は、冷却される間に、協働するひだ付けローラに通してもよい。これらのローラは不均一な表面を有するものであってよい。これにより、冷めている押出物が不均一に押しつぶされ、このことは、肉代替品の「肉様」外観の生成に寄与する。
【0032】
真空収縮などの、他のそのようなプロセスを用いて、皺寄せ作用を向上させてもよい。
【0033】
代替品の内部と「表皮層」の構造に行った顕微鏡を使用した研究により、この代替品は、タンパク質、脂質およびデンプンの基質から実質的に構成されていることが示されている。特に、凝集したタンパク質並びに脂質の濃度が、代替品塊の中心すなわち中身に見られるよりも、表皮層のほうが高い傾向にあることが観察された。特に、表面すなわち表皮でのこのタンパク質の濃度は、押出物の特に「本物の」表面の外観に寄与すると理論付けられる。
【0034】
図3に示したように、上述したプロセスにしたがって製造された最終的な肉代替品の塊は、非常に「肉様」に見える外観を有し、この外観のために、このような塊が、工業製造されたペットフードに含ませるのに非常に美的に適したものとなる。
【0035】
上述した実施例は単に、本発明の概念を適用できる1つの様式である。本発明の精神および範囲に含まれる本発明の他の実施の形態が考えられる。
【符号の説明】
【0036】
5 ダイプレート
10 鋼板
15 ノズル
20 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉代替品を製造する方法であって、
約5質量%と約40質量%の間のタンパク質を含有する構成素材を混合する工程、
前記混合物を、公知の断面積の押出孔を有する押出調理器中に供給する工程、
前記押出調理器内で前記混合物を、加工処理された混合物に、前記押出孔の断面積の少なくとも2倍まで膨張させるように選択された所定の温度と圧力に加工処理する工程、
前記押出調理器から前記押出孔を介して前記混合物を周囲温度と大気圧中に押し出す工程であって、その際に、押し出された素材である押出物の断面積が、前記押出孔の断面積の少なくとも2倍まで膨張している工程、および
前記押出物を周囲温度と大気圧の条件に保持し、それによって、該押出物の外面上の表皮の形成および該押出物の断面積の収縮を促進し、それによって、調理済みの筋肉部位の肉の外観に似た様式で前記表皮に皺を寄せさせる工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記押出物の収縮後に、冷却の際に、該押出物に圧縮力を印加し、それによって、前記表皮の前記皺の寄った外観の形成を促進させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記押出物の収縮および圧縮後に、冷却の際に該押出物にひだを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮力が圧縮ローラにより印加されることを特徴とする請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
前記押出調理器内の前記圧力および温度の条件が、前記加工処理された混合物に、前記押出孔の断面積の2倍と3倍の間まで膨張させるように選択されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記素材のタンパク質含有量が、約10質量%と約30質量%の間にあることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記構成素材が、約15質量%と約25質量%のタンパク質を含有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が、粉砕レバー、家禽の内蔵および牛の心臓からなる群より選択される1種類以上の素材により実質的に提供されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記構成素材が、約55質量%と約65質量%の間の穀物を含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記構成素材が、約62%の穀物、約25%の乳化肉または肉副産物、および約8%の湿潤剤を含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記構成素材が、米由来の炭水化物素材を含有することを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11いずれか1項記載の方法により製造された肉代替品。
【請求項13】
約5質量%と約40質量%の間のタンパク質を含有し、皺の寄った外観を有する外面を持つ肉代替品であって、該代替品の塊の大半が、タンパク質およびデンプンの基質から実質的になり、該代替品の表面が、該代替品の中心に存在するよりも、タンパク質の割合が多いことを特徴とする肉代替品。
【請求項14】
前記デンプンが米由来であることを特徴とする請求項13記載の肉代替品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530742(P2010−530742A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511449(P2010−511449)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000853
【国際公開番号】WO2008/151381
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】