説明

多価不飽和脂肪酸合成の増強を促進する植物の種子特異的遺伝子発現を増強する調節核酸分子

本発明は原理的には脂肪酸の遺伝子組換え製造の分野に関する。本発明は、脂肪酸デサチュラーゼ、エロンガーゼ、アシルトランスフェラーゼ、ターミネーター配列および前記核酸配列と作動しうる形で連結された高発現性種子特異的プロモーターをコードする核酸配列を含み、ここで核酸発現増強性核酸(NEENA)が前記プロモーターと機能的に連結されていることを特徴とする新規核酸分子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原理的には脂肪酸の遺伝子組換え製造の分野に関する。
【0002】
本発明は、脂肪酸デサチュラーゼ、エロンガーゼ、アシルトランスフェラーゼ、ターミネーター配列および前記核酸配列と作動しうる形で連結された高発現性種子特異的プロモーターをコードする核酸配列を含み、ここで核酸発現増強性核酸(NEENA)が前記プロモーターと機能的に連結されていることを特徴とする新規核酸分子を提供する。
【0003】
本発明はまた、前記核酸分子を含有する組換え発現ベクター、前記発現ベクターをその中に導入した宿主細胞または宿主細胞培養物、および長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)またはドコサヘキサエン酸(DHA)を大規模生産する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
植物におけるトランスジーンの発現は様々な外的および内的因子の影響を強く受け、様々なかつ予想できないレベルのトランスジーン発現をもたらす。しばしば多数の形質転換体を産生させて分析し、所望の発現強度をもつ系統を同定しなければならない。所望の発現をもつ系統の形質転換とスクリーニングは高費用かつ労働集約的であるので、1以上のトランスジーンを植物で高発現させる必要性がある。特に問題になるのは、トランスジェニック植物において特定の効果を達成するためにいくつかの遺伝子を協調的に発現させる必要のある場合であって、それぞれおよび全ての遺伝子が強く発現された植物を同定しなければならないからである。
【0005】
例えば、トランスジーンの発現は、個々の形質転換事象における構築物設計およびT-DNA挿入遺伝子座の位置効果に応じて有意に変わりうる。強いプロモーターはこれらの課題を部分的に克服することができる。しかし、所望の特異性をもつ強い発現を示す好適なプロモーターの利用可能性は限られることが多い。所望の発現特異性をもつ十分なプロモーターの利用可能性を確実にするために、追加のプロモーターの同定と特徴付けがこのギャップを埋める助けになりうる。しかし、それぞれの特異性と強度をもつプロモーターの自然での利用可能性とプロモーター候補の特徴付けに費やす時間とが、好適な新しいプロモーターを同定する妨げとなる。
【0006】
これらの課題を克服するために、多様な遺伝エレメントおよび/またはモチーフが遺伝子発現にポジティブな影響を与えることが示されている。これらのなかにあって、いくつかのイントロンは遺伝子発現を改善する強い可能性をもつ遺伝エレメントであることが認識されている。その機構はほとんど判ってないが、いくつかのイントロンは、転写活性の増強、mRNA成熟の改善、核mRNAエキスポートの増強および/または翻訳開始の改善により、成熟mRNAの定常状態量にポジティブな影響を与えることが示されている(例えば、Huang and Gorman, 1990;Le Hir et al., 2003;Nott et al., 2004)。選択されたイントロンだけが発現を増加することが示されたので、スプライシングなどはおそらく観察された効果を説明することができない。
【0007】
イントロンがプロモーターに機能的に連結するときに観察される遺伝子発現の増加は、遺伝子発現のイントロン媒介性増強(IME)と呼ばれ、様々な単子葉類(例えば、Callis al., 1987;Vasil al., 1989;Bruce al., 1990;Lu al., 2008)および双子葉類植物(例えば、Chung al., 2006;Kim al., 2006;Rose al., 2008)において示されている。この点については、翻訳出発部位(ATG)との相対的なイントロンの位置が遺伝子発現のイントロン媒介性増強にとって重要であることが示されている(Rose al., 2004)。
【0008】
遺伝子発現を増強する能力の次に、少数のイントロンはまた、植物における生来のヌクレオチド環境における組織特異性に影響を与えることが示されている。
【0009】
レポーター遺伝子発現は2つまでのイントロンを含有するゲノム領域の存在に依存することが見出された(Sieburth al., 1997;Wang al., 2004)。5’UTRイントロンはまた、プロモーターエレメントの適当な機能性にとって重要であり、これはおそらくイントロンに存在する組織特異的遺伝子制御エレメントに因ることが報じられた(Fuet al., 1995a;Fuet al., 1995b;Vitaleet al., 2003;Kimet al., 2006)。しかし、これらの研究はまた、イントロンの異種プロモーターとの組み合わせが遺伝子発現の強度と異種特異性に強い負の影響を与えうることも示している(Vitaleet al., 2003;Kimet al., 2006、WO2006/003186、WO2007/098042)。
【0010】
例えば、強い構成的カリフラワーモザイクウイルスCaMV35Sプロモーターは、ゴマD2 5’UTRイントロンとの組み合わせを通して負の影響を受ける(Kimet al., 2006)。これらの観察とは対照的に、いくつかの文献は、それぞれのプロモーターの組織特異性に影響を与えることなくIMEによる核酸発現の増強を示している(Schuenmannet al., 2004)。異種プロモーターに機能的に連結された場合に、種子特異的および/または種子選好的発現を増強する、イントロンまたは核酸発現増強性核酸(NEENA)は、当該分野において示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願においては、種子特異的プロモーターと機能的に連結されるとそれらの特異性に影響を与えることなく前記プロモーターの発現を増強する、さらなる核酸分子を記載する。これらの核酸分子を本出願では「核酸発現増強性核酸」(NEENA)と記載する。イントロンはそれぞれのプレmRNAからスプライシングで除去される内因性特徴を有する。それとは対照的に、本出願で提示する核酸は、機能的に連結されたプロモーターから誘導される発現を増強するために、必ずしもmRNA中に含まれなくてもよいし、または、もしmRNA中に存在すれば、必ずしもmRNAからスプライシングで除去されなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ARA、EPAおよびDHAの生産に導く色々な酵素活性の模式図である。
【図2】本発明の植物発現プラスミドの段階的構築に使った計画である。詳しい説明は実施例4に記載されている。略語:Nco I、Pac I、Kas I、Sfo I、Fse I、Sbf I、Xma I、Not Iはクローニングに用いた制限エンドヌクレアーゼを示し;attLxおよびattRx(ここでxは1〜4の数字である)はMultisite Gateway(登録商標)システム(Invitrogen)の部位特異的組換えに対する付着部位を示し;pENTR_A、pENTR_B、pENTR_CはMultisite Gateway(登録商標)システム-エントリー-ベクターであり;Kan(カナマイシン)およびStrep(ストレプトマイシン)はクローニングに用いた抗生物質選択マーカーを示し;oriは複製起点を示す。
【図3A】植物発現ベクターVC-LJB913-1qcz(配列番号38)、VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)、VC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)の機能性エレメント(プロモーター、NEENA、遺伝子、ターミネーター)の方向および組み合わせを示す。
【図3B】植物発現ベクターVC-LJB913-1qcz(配列番号38)、VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)、VC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)の機能性エレメント(プロモーター、NEENA、遺伝子、ターミネーター)の方向および組み合わせを示す。
【図3C】植物発現ベクターVC-LJB913-1qcz(配列番号38)、VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)、VC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)の機能性エレメント(プロモーター、NEENA、遺伝子、ターミネーター)の方向および組み合わせを示す。
【図3D】植物発現ベクターVC-LJB913-1qcz(配列番号38)、VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)、VC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)の機能性エレメント(プロモーター、NEENA、遺伝子、ターミネーター)の方向および組み合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態は多価不飽和脂肪酸合成の増強を促進するポリヌクレオチドに関するものであり、それ故に、一般に多価不飽和脂肪酸の遺伝子組換え製造に関する。
【0014】
脂肪酸は多数の生物学的プロセスにおいて基本的な役割を果たす長鎖炭化水素側鎖基をもつカルボン酸である。脂肪酸は自然では遊離状態で見出されることは稀であり、むしろ、脂質の主要成分としてエステル化形で存在する。そのままで脂質/脂肪酸はエネルギーの供給源である(例えば、β-酸化)。さらに、脂質/脂肪酸は細胞膜の内在部分であり、それ故に、生物学的または生化学的情報を処理するために不可欠である。
【0015】
脂肪酸は2つのグループ:炭素一重結合で形成される飽和脂肪酸および1以上のcis-立体配置の炭素二重結合を含有する不飽和脂肪酸に分けることができる。不飽和脂肪酸は非ヘム鉄酵素のクラスに属する末端デサチュラーゼにより生産される。これらの酵素はそれぞれ1つか2つの他のタンパク質、すなわちシトクロムb5およびNADH-シトクロムb5レダクターゼに関わる電子輸送系の一部分である。シトクロムb5官能基は、単一タンパク質のデサチュラーゼ部分とn-末端で融合しうる。とりわけ、かかる酵素は、例えば、脂肪酸の酸素依存性脱水素を触媒することにより、脂肪酸分子の炭素原子間における二重結合の形成を触媒する(Sperling ら、2003)。ヒトおよび他の哺乳動物は不飽和脂肪酸の特に二重結合を形成するのに必要なデサチュラーゼの範囲が限られ、必須脂肪酸、例えば、長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を合成する能力は限られている。従って、ヒトはいくつかの脂肪酸を食事を通して接取しなければならない。かかる必須脂肪酸には、例えば、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)が含まれる。対照的に、昆虫、微生物および植物は遥かに多様な不飽和脂肪酸およびその誘導体を合成することができる。実に、脂肪酸の生合成は植物および微生物の重要な活動である。
【0016】
ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6(4,7,10,13,16,19))などの長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は哺乳動物の様々な組織および小器官(神経、網膜、脳および免疫細胞)の細胞膜の必須成分である。例えば、脳リン脂質の30%超が22:6(n-3)および20:4(n-6)である(Crawford, M.A., et al., (1997) Am. J. Clin. Nutr. 66:1032S-1041S)。網膜において、DHAは視細胞の感光部である桿体外節の全脂肪酸の60%超を占める(Giusto, N.M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391)。臨床研究は、DHAが幼児における脳の成長と発生、および成人における正常な脳機能の維持に必須であることを示している(Martinetz, M. (1992) J. Pediatr. 120:S129-S138)。DHAはまた、シグナル伝達プロセス、ロドプシン活性化、および桿状体および錐状体発生に関わる光受容体機能に大きな効果を有する(Giusto, N.M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391)。さらに、DHAのいくつかの有益な効果が高血圧、関節炎、アテローム性動脈硬化症、うつ病、血栓症および癌などの疾患でも見出された(Horrocks, L.A. and Yeo, Y.K. (1999) Pharmacol. Res. 40:211-215)。それ故に、脂肪酸の適当な食事補給はヒトの健康にとって重要である。かかる脂肪酸は幼児、若年の小児および高齢市民では効率的に合成されないので、これらの個体にとって、これらの脂肪酸を食事から摂取することは特に重要である(Spector, A.A. (1999) Lipids 34:S1-S3)。
【0017】
現在、DHAの主な供給源は魚類および藻類からの油類である。魚油はこの脂肪酸の伝統的な供給源である、しかし、通常、これは販売される時間によって酸化される。さらに魚油の供給は、特に魚資源が減少しつつあることを考えると、非常に変動しやすい。さらに、油の藻類資源は低い収率と高い抽出費用の故に高価である。
【0018】
EPAとARAは両方ともΔ5必須脂肪酸である。これらはヒトと動物に対する食物および飼料成分のなかでユニークなクラスを形成する。EPAはアシル鎖に5つの二重結合を有し、n-3シリーズに属する。EPAは海産食品で、北大西洋からの油性魚に豊富である。ARAは4つの二重結合を有し、n-6シリーズに属する。ARAはω-3位置に二重結合を欠くので、EPAと異なる特性を有する。ARAから生産するエイコサノイドは強い炎症性と血小板凝集特性を有するが、EPAから誘導されるエイコサイドは抗炎症性かつ抗血小板凝集性の特性を有する。ARAはいくつかの食品、例えば肉、魚および卵などから得ることができるが、その濃度は低い。
【0019】
γ-リノレン酸(GLA)は哺乳動物で見出される他の必須脂肪酸である。GLAは非常に長鎖のn-6脂肪酸のおよび様々な活性分子の代謝性中間体である。哺乳動物において、長鎖多価不飽和脂肪酸の形成はΔ6不飽和化(デサチュレーション)が律速である。多くの生物学的および病理学的症状、例えば、加齢、ストレス、糖尿病、湿疹、およびいくつかの感染はΔ6不飽和化(デサチュレーション)ステップを抑圧することが示されている。さらに、GLAは、ある特定の障害、例えば、癌または炎症に付随する酸化および急速な細胞分裂により容易に分解される。それ故に、GLAによる食事補給はこれらの障害のリスクを軽減しうる。臨床研究は、GLAによる食事補給がいくつかの病理学的な症状、例えば、アトピー性湿疹、月経前症候群、糖尿病、高コレステロール血症、ならびに炎症性および心血管障害を治療するのに有効であることを示している。
【0020】
多数の有益な健康効果がDHAまたはEPA/DHAの混合物について示されている。DHAはn-3の非常に長鎖の脂肪酸で、6つの二重結合をもつ。
【0021】
バイオテクノロジーは特殊脂肪酸を生産する魅力的な経路を提示するが、現行技法は不飽和脂肪酸を大規模生産する効率的な手段を提供できないでいる。それ故に、不飽和脂肪酸、例えばDHA、EPAおよびARAなどを生産するための改善された効率的な方法が必要である。
【0022】
従って、本発明は、
a)デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列;
b)前記核酸配列と作動しうる形で連結された少なくとも1つの種子特異的および/または種子選好的植物プロモーター:
c)前記核酸配列と作動しうる形で連結された少なくとも1つのターミネーター配列:および
d)前記プロモーターと機能的に連結されかつa)に定義した前記ポリペプチドに対して異種である1以上の核酸発現増強性核酸(NEENA)分子
を含むものであるポリヌクレオチドに関する。
【0023】
一実施形態において、本発明で使用する用語「ポリヌクレオチド」は、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされたデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドは、植物における発現時に、例えば、種子油または全植物もしくはその部分中のPUFAを、そして特にLCPUFAの量を増加できるであろう。かかる増加は、好ましくは、対照植物(LCPUFA合成に必要なデサチュラーゼおよびエロンガーゼのセットの当技術分野の現状値を発現するが本発明のポリヌクレオチドを発現しない、LCPUFAを生産するトランスジェニック植物)と比較して、統計的に有意である。増加が有意であるかどうかは、当技術分野で周知の統計的試験、例えば、スチューデントのt-検定により確認することができる。より好ましくは、その増加は前記対照と比較して、LCPUFAを含有するトリグリセリドの量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも30%の増加である。好ましくは、前記LCPUFAはC-20またはC-22脂肪酸体を有する多価不飽和脂肪酸、より好ましくはARA、EPAまたはDHAである。上記活性を測定するための好適なアッセイを、添付した実施例に記載する。
【0024】
本明細書で使用する用語「デサチュラーゼ」または「エロンガーゼ」は、二重結合を脂肪酸の炭素鎖中に、好ましくは18、20または22個の炭素原子をもつ脂肪酸中に導入するデサチュラーゼ、または、2個の炭素原子を脂肪酸の炭素鎖中に、好ましくは18、20または22個の炭素原子をもつ脂肪酸中に導入するエロンガーゼの活性を意味する。
【0025】
好ましいポリヌクレオチドは、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードする配列番号:95、96、97、98、99、100または101で示した核酸配列を有するものである(表3を参照)。
【0026】
他の好ましいポリヌクレオチドは、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列番号:102または103に示した核酸配列を有するものであり(表4を参照)、これらはとりわけアブラナにおける22:6n-3(DHA)の合成用に、表3に掲げたポリヌクレオチドに加えて用いられる。
【0027】
本明細書で意味する好ましい種子特異的プロモーターは、Napin、USP、Conlinin、SBP、Fae、ArcおよびLuPXRからなる群より選択される。本明細書で意味する他の好ましい種子特異的プロモーターは、配列番号:25、26、27、28、29または30に示す核酸配列によりコードされるものである。当業者は、一方向プロモーターを二方向にする方法およびプロモーター配列の相補配列または逆相補配列を用いて、元来の配列と同じプロモーター特異性を有するプロモーターを作製する方法に気付くであろう。かかる方法は、例えば、構成的ならびに誘導プロモーターについてXie et al. (2001) “Bidirectionalization of polar promoters in plants” (Nature Biotechnology 19, pages 677 - 679)に記載されている。この著者らは、同じプロモーター特異性をもつ両方向の発現を制御するプロモーターを得るには、任意の所与のプロモーターの5'プライム末端にミニマル・プロモーター(最小限必要なプロモーター)を加えることで十分であると記載している。
【0028】
以下に記載した用語「NEENA」は、「核酸発現増強性核酸」を表現するのに用いられ、NEENAが機能的に連結されたプロモーターの制御下にある核酸の発現を増強する内因的特性を有する、配列および/または特定の配列の核酸分子を言及する。従って、請求項に記載のNEENAと機能的に連結された高発現プロモーターは相補配列または逆相補配列において機能性であるので、それ故にそのNEENAも相補配列または逆相補配列において機能性である。
【0029】
原理的にNEENAは、どのプロモーター、例えば、組織特異的、誘導性、発生特異的または構成的プロモーターとでも機能的に連結することができる。それぞれのNEENAは、1以上のNEENAが機能的に連結されたそれぞれのプロモーターの制御下で、異種核酸の種子特異的発現を増強に導きうる。種子特異的プロモーター以外のプロモーター、例えば、構成的プロモーターまたは色々な組織特異性をもつプロモーターの発現の増強は、これらのプロモーターの特異性に影響しうる。プロモーターと機能的に連結されたNEENA無しで前記核酸の転写物が検出されなかったまたは弱くしか検出されなかった種子において、それぞれのプロモーターの制御下の核酸の発現は有意に増加しうる。従って、組織特異的または発生特異的またはいずれか他のプロモーターは、1以上の先に記載のNEENA分子を前記プロモーターと機能的に連結することにより、種子特異的プロモーターにすることができる。本発明にとって好ましいNEENAは、配列番号:11、12、13、14、15、16、17、18、19、10、21、22、23または24に示した配列によりコードされる。本発明にとってさらに好ましいNEENAは、配列番号:6、7、8、9または10に示した配列によりコードされる。また、(i) 配列番号6〜24で定義した配列のいずれかと80%以上の同一性をもつ、好ましくは、前記同一性が85%以上である、より好ましくは同一性が90%以上である、さらにより好ましくは、同一性が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である、最も好ましい実施形態では、配列番号6〜24で定義した配列のいずれかとの同一性が100%である配列を有する核酸分子、または(ii) (i)もしくは(ii)の核酸分子の100以上の継続塩基、好ましくは150以上の継続塩基、より好ましくは200以上の継続塩基、さらにより好ましくは250以上の継続塩基の断片であって、配列番号6〜24で定義した配列のいずれかの配列を有する対応する核酸分子の、例えば65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらにより好ましくは80%以上、85%以上または90%以上の発現増強活性を有する、最も好ましい実施形態では、95%以上の発現増強活性を有する前記断片、または(iii) 先に(i)〜(ii)のもとで記載した核酸分子のいずれかの相補配列または逆相補配列である核酸分子、または(iv) PCRにより、表6に示したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて取得可能な核酸分子、または(v)100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上または250以上のヌクレオチドの核酸分子であって、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の50℃におけるハイブリダイゼーションおよび2 X SSC、0.1%SDS中の50℃または65℃、好ましくは65℃における洗浄と等価の条件のもとで、配列番号6〜24に記載の転写増強性ヌクレオチド配列またはそれらの相補配列の少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、さらにより好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250継続ヌクレオチドを含む核酸分子とハイブリダイズする前記核酸分子は本発明に包含される。好ましくは、前記核酸分子は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の50℃におけるハイブリダイゼーションと、1 X SSC、0.1%SDS中の50℃または65℃、好ましくは65℃における洗浄と等価の条件のもとで、配列番号6〜24またはそれらの相補配列に記載の転写増強性ヌクレオチド配列の少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、さらにより好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250継続ヌクレオチドを含む核酸分子とハイブリダイズするものであり、そしてより好ましくは、前記核酸分子は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中の50℃におけるハイブリダイゼーションと、0.1 X SSC、0.1%SDS中の50℃または65℃、好ましくは65℃における洗浄と等価の条件のもとで、配列番号1〜15に定義した配列またはそれらの相補配列のいずれかに記載の転写増強性ヌクレオチド配列の少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、さらにより好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250継続ヌクレオチドを含む核酸分子とハイブリダイズするものである。
【0030】
(iv)項のもとで記載した、表6に示したオリゴヌクレオチドを用いるPCRにより取得可能な核酸分子は、例えば、シロイヌナズナ由来のゲノムDNAから以下の実施例3.2に記載の条件を用いて取得することができる。
【0031】
好ましくは、1以上のNEENAが種子特異的プロモーターと機能的に連結されていて、前記プロモーターの制御下の核酸分子の発現を増強しうる。本発明の方法で使用する種子特異的プロモーターは、植物、例えば単子葉または双子葉類植物由来、細菌および/またはウイルス由来であってもよく、または合成プロモーターであってもよい。NEENAと機能的に連結して使用される種子特異的プロモーターは、ある好ましい実施形態において、表5の配列番号1、2、3、4 または5に示したNEENAと機能的に連結された種子特異的プロモーターである。
【0032】
NEENAと機能的に連結された高い発現種子特異的プロモーターは、例えば蘚類、シダ、裸子植物または被子植物、例えば単子葉または双子葉類植物を含む植物に使うことができる。ある好ましい実施形態においては、NEENAと機能的に連結された本発明の前記プロモーターを単子葉または双子葉類植物、好ましくは作物 植物、例えばトウモロコシ、ダイズ、アブラナ、ワタ、ジャガイモ、サトウダイコン、イネ、コムギ、モロコシ、オオムギ、バナナ、サトウキビ、ススキなどに使うことができる。本発明のある好ましい実施形態においては、NEENAと機能的に連結された本発明の前記プロモーターを単子葉作物植物、例えばトウモロコシ、イネ、コムギ、モロコシ、オオムギ、バナナ、ススキまたはサトウキビに使うことができる。とりわけ好ましい実施形態においては、NEENAと機能的に連結されたプロモーターを、双子葉類作物植物、例えばダイズ、アブラナ、ワタまたはジャガイモに使うことができる。
【0033】
本出願に使用する高発現性プロモーターは、例えば、植物種子またはその部分においてプロモーターの種子特異的発現の増強を生じるNEENAと機能的に連結されたプロモーターであって、NEENAと機能的に連結されたそれぞれのプロモーターの制御下の核酸分子から誘導される種子中のRNAの蓄積またはRNAの合成速度が、本発明のNEENAを欠く同じプロモーターにより生じる種子中の発現より高い、好ましくは有意に高い前記プロモーターを意味する。好ましくは、植物中のそれぞれの核酸のRNAの量および/またはRNA合成の速度および/またはRNA安定性は、本発明のNEENAと機能的に連結されてない同じ種子特異的プロモーターを含む同じ条件下で育てられた同じ年齢の対照植物と比較して、50%以上、例えば100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、最も好ましくは20倍以上、例えば50倍増加する。
【0034】
本明細書で使用する用語「有意に高い」は、統計的有意を意味し、当業者は、t-検定などの統計的検定をそれぞれのデータセットに応用することにより決定するやり方を理解している。
【0035】
プロモーターが与える発現を検出する方法は当技術分野で公知である。例えば、プロモーターをマーカー遺伝子、例えばGUS、GFPまたはルシフェラーゼと機能的に連結し、それぞれのマーカー遺伝子がコードするそれぞれのタンパク質の活性を植物またはその部分で確認することができる。代表例として、ルシフェラーゼを検出する方法を以下に詳しく記載する。他の方法としては、例えば、プロモーターにより制御される核酸分子のRNAの定常状態レベルまたは合成速度を、当技術分野で公知の方法、例えば、ノーザンブロット分析、qPCR、ラン-オンアッセイもしくは当技術分野で記載の他の方法により測定する、あるいはコードされるタンパク質を特異的抗体を使用して、当技術分野で公知の方法、例えば、ウェスタンブロットおよび/または酵素免疫測定法(ELISA)により検出する方法がある。
【0036】
当業者は2以上の核酸分子を機能的に連結する様々な方法を知っている。かかる方法は制限/ライゲーション、リガーゼ非依存性クローニング、リコンビニアリング、組換えまたは合成を包含しうる。他の方法を使用して2以上の核酸分子を機能的に連結してもよい。
【0037】
核酸分子またはDNAに関する用語「異種」は、自然では作動しうる形で連結されてないかまたは自然では異なる位置で作動しうる形で連結されている第2の核酸分子と、作動しうる形で連結されたまたは遺伝子操作をして作動しうる形で連結された核酸分子を意味する。例えば、本発明のNEENAはその自然環境においてその生来のプロモーターと機能的に連結されているが、本発明において前記NEENAは同じ生物由来、異なる生物由来であってもよくまたは合成プロモーターであってもよい他のプロモーターと連結される。これはまた、本発明のNEENAはその生来のプロモーターと連結されているが、前記プロモーターの制御下の核酸分子はその生来のNEENAを含むプロモーターに対して異種であるということを意味しうる。さらに理解すべきことは、本発明のNEENAと機能的に連結されたプロモーターおよび/または前記プロモーターの制御下の核酸分子が前記NEENAに対して異種であるのは、それらの配列が、例えば、挿入、欠失などの突然変異により遺伝子操作を受けて、プロモーターおよび/または前記プロモーターの制御下の核酸分子の自然配列が改変され、それ故に本発明のNEENAに対して異種になった場合である。また、理解すべきことは、NEENAが機能的に連結された核酸に対して異種であるのは、NEENAをその生来のプロモーターと機能的に連結するにあたり、前記プロモーターに対するNEENAの位置をプロモーターがかかる遺伝子操作後にさらに高い発現を示すように変えた場合である。
【0038】
本明細書で意味する、核酸分子の種子特異的発現が増強された植物は、それぞれの核酸分子と機能的に連結されたそれぞれのNEENA無しで同じ条件下にて育てた対照植物と比較して、より高い、好ましくは、統計的に有意に高い核酸分子の種子特異的発現を有する植物を意味する。かかる対照植物は、本発明の植物と同じ遺伝子を制御する同じプロモーターを含み、そのプロモーターが本発明のNEENAと連結されてない野生型植物またはトランスジェニック植物であってもよい。
【0039】
一般にNEENAは、NEENAが機能的に連結された前記プロモーターの制御下にある核酸分子に対して異種であってもよく、またはプロモーターおよび前記プロモーターの制御下の核酸分子の両方に対して異種であってもよい。
【0040】
本発明で意味する用語「エロンガーゼ活性」は、以下の節で定義される全ての伸長複合体の活性を意味し、これはまた、全ての伸長複合体の基質特異性を決定する、β-ケトアシルCoAシンターゼ活性をもつ伸長複合体の第1成分の活性として理解される。エロンガーゼ活性をシンターゼ活性だけと理解することにより、本発明のポリペプチドはまた、
e)β-ケトアシルレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列;
f)デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列または
g)エノイル-CoAレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列
を含む必要があり、ここで、e)〜g)に定義した核酸配列はデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する前記ポリペプチドに対して異種である。
【0041】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、脂肪酸が伸長された中間体の脱水および還元を触媒する活性を有する脂肪酸デヒドラターゼ-/エノイル-CoAレダクターゼ(nECR)タンパク質をコードする核酸配列を含むものである。
【0042】
脂肪酸伸長は、全伸長複合体を形成する4種の酵素:KCR(β-ケト-アシル-CoA-シンターゼ)、KCR(β-ケト-アシル-CoAレダクターゼ)、DH(デヒドラターゼ)およびECR(エノイル-CoA-レダクターゼ)により代表される4つのステップで触媒される。第1ステップにおいて、脂肪酸-CoAエステルはマロニル-CoAと縮合してβ-ケト-アシル-CoA中間体を生成し、2個の炭素原子だけ伸長されてCO2を生じる。第2ステップで、中間体のケト基はKCRによりヒドロキシル基に還元される。第3のステップで、DHはヒドロキシル基を切断し(H2Oが生成する)、2-アシレン-CoAエステルを形成する。最後のステップにおいて、位置2、3の二重結合はECRにより還元されて伸長したアシル-CoAエステルを形成する(Buchanan, Gruissem, Jones (2000) Biochemistry & Molecular biology of plants, American Society of Plant Physiologists)。なおDHおよびECR活性はまた、DH部分とECR部分の自然または人工融合体である1つの単独タンパク質(本発明では新規エノイル-CoA-レダクターゼ(nECR)として言及する)によって与えることもできる。本発明では、色々な生物由来の任意の組み合わせで、(e)〜(f)に定義したどの全ての核酸配列がポリヌクレオチドに含まれてもよく、または(e)〜(f)に定義したこれらの核酸配列の少なくとも1つだけがポリヌクレオチドに含まれてもよい。
【0043】
上述した核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドもまた、本発明の核酸分子として包含される。その断片は先に記載したnECR活性をまだ有するポリペプチドをコードするであろう。従って、このポリペプチドは、前記生物学活性を与える本発明のポリペプチドのドメインを含むかまたはから成りうる。本明細書で意味する断片は、上述した核酸配列のいずれか1つの少なくとも15、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250または少なくとも500の継続ヌクレオチドを含むか、または、上述したアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100または少なくとも150継続アミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0044】
以上に言及した変異体核酸分子または断片は、好ましくは、本ヌクレオチド配列がコードするポリペプチドが示すnECR活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を保持するポリペプチドをコードする。
【0045】
本発明で使用する用語「ポリヌクレオチド」はまた、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、アシルトランスフェラーゼ活性を有する本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、植物における発現時に例えば、種子油または全植物もしくはその部分中の、トリグリセリドにエステル化されたPUFAおよび、特にLCPUFAの量を増加できるであろう。かかる増加は、好ましくは、対照植物(LCPUFA合成に必要なデサチュラーゼおよびエロンガーゼの最小限のセットを発現するが本発明のポリヌクレオチドを発現しない、LCPUFAを生産するトランスジェニック植物)と比較して、統計的に有意である。かかるトランスジェニック植物は、好ましくは、WO2009/016202の実施例5の表11に掲げられたベクターLJB765、またはDHA合成に必要なデサチュラーゼおよびエロンガーゼの類似のセットに含まれるデサチュラーゼおよびエロンガーゼを発現することができる。増加が有意であるかどうかは、例えば、スチューデントのt-検定を含む当技術分野で周知の統計的検定により確認することができる。より好ましくは、その増加は、前記対照と比較して、LCPUFAを含有するトリグリセリドの量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも30%の増加である。好ましくは、前記LCPUFAはC-20、C-22またはC24脂肪酸体を有する多価不飽和脂肪酸、より好ましくは、EPAまたはDHA、最も好ましくは、DHAである。上記活性を測定するための好適なアッセイを、添付した実施例に記載する。先に言及した変異体核酸分子は様々な自然ならびに人工供給源から得ることができる。例えば、核酸分子は、先に述べた特定の核酸分子に基づいて、in vitroおよびin vivo変異原性手法により得ることができる。さらに、相同体またはオルソログである核酸分子は様々な動物、植物または真菌種から得ることができる。好ましくは、これらは、植物、例えば、藻類、例えばIsochrysis、Mantoniella、OstreococcusまたはCrypthecodinium;藻類/珪藻、例えばPhaeodactylum、ThalassiosiraまたはThraustochytrium;蘚類、例えばPhyscomitrellaまたはCeratodon;または高等植物、例えば、サクラソウ科(Primulaceae)、例えばAleuritia、Calendula stellata、Osteospermum spinescensまたはOsteospermum hyoseroides;微生物、例えば、真菌、例えばAspergillus、Phytophthora、Entomophthora、MucorまたはMortierella、細菌、例えばShewanella;酵母または動物から得る。好ましい動物は線虫類、例えばCaenorhabditis、昆虫または脊椎動物である。脊椎動物の中では、核酸分子は、好ましくは、ユーテレオストミー(Euteleostomi)、条鰭亜綱(Actinopterygii);新鰭亜網(Neopterygii);真骨類(Teleostei);正真骨類(Euteleostei)、原棘鰭上目(Protacanthopterygii)、サケ目(Salmoniformes);サケ科(Salmonidae)またはOncorhynchusから、より好ましくは、サケ目から、最も好ましくは、サケ科、例えばサケ(Salmo)属、例えば、Oncorhynchus mykiss、Trutta truttaまたはSalmo trutta fario属および種から誘導することができる。さらに、核酸分子は珪藻、例えば、ThallasiosiraまたはPhaeodactylum属から得ることができる。
【0046】
従って、本発明はまた、デサチュラーゼ、エロンガーゼまたはβ-ケトアシルレダクターゼ、デヒドラターゼまたはエノイル-CoAレダクターゼ活性を示す上述のポリペプチドに加えて、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含むものであるポリヌクレオチドに関する。それ故に、本発明のポリヌクレオチドはまた、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含むものであって、ここで、核酸配列はデサチュラーゼ、エロンガーゼ、β-ケトアシルレダクターゼ、デヒドラターゼまたはエノイル-CoAレダクターゼ活性を有する前記ポリペプチドに対して異種であり、そしてここで、少なくとも1つの種子特異的植物プロモーターおよび少なくとも1つのターミネーター配列は前記核酸配列と作動しうる形で連結されており、そしてここで、1以上の核酸発現増強性核酸(NEENA)分子は前記プロモーターと機能的に連結されかつ前記プロモーターに対して異種である。
【0047】
本明細書で使用する用語「アシルトランスフェラーゼ活性」または「アシルトランスフェラーゼ」は、トランスエステル化プロセスにより、PUFA、特に;LCPUFAを、アシル-CoAプールまたは膜リン脂質からトリグリセリドへ、アシル-CoAプールから膜脂質へ、および膜脂質からアシル-CoAプールへ輸送する能力のあるまたは輸送に関わる全ての酵素活性および酵素を包含する。このアシルトランスフェラーゼ活性は、例えば、種子油に含まれるトリグリセリドにエステル化されたLCPUFAの増加をもたらしうることは理解されるであろう。特に想定されるのは、これらのアシルトランスフェラーゼはエステル化されたEPAもしくはさらにDHAを有するトリグリセリドを生成することができること、またはこれらのアシルトランスフェラーゼは、アシル-CoAプール(伸長場所)と膜脂質(デサチュレーション優性場所)の間の所望のPUFAの特異的中間体の流動を増加することにより、所望のPUFAの合成を増強できることである。具体的に、本明細書で使用するアシルトランスフェラーゼ活性は、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ(LPLAT)活性、好ましくは、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)またはリゾホスファチジルエタノールアミンアシルトランスフェラーゼ(LPEAT)活性、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)活性、リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)活性、グリセロール-3-リン酸塩アシルトランスフェラーゼ(GPAT)活性またはジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)、および、より好ましくは、LPLAT、LPAAT、DGAT、PDATまたはGPAT活性に関する。
【0048】
上記のアシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、Phythophthora infestance(ジャガイモ疫病菌)から得ることができる。上記のデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは本発明によって、例えば、Thraustochytrium種(ヤブレツボカビ)から得ることができる。宿主細胞中に存在するのが好ましいアシルトランスフェラーゼは、LPLAT、LPAAT、DGAT、PDATおよびGPATからなる群より選択される少なくとも1つの酵素である。とりわけ好ましいのは、LPLAT関連:Caenorhabditis elegans(線虫)由来のLPLAT(Ce)(WO2004076617)、Mantoniella squamata(油糧性糸状菌)由来のLPCAT(Ms)(WO2006069936)およびOstreococcus tauri(プラシノ藻類)由来のLPCAT(Ot)(WO2006069936)、pLPLAT_01332(Pi)(配列番号104、ポリペプチド配列番号125をコードする)、pLPLAT_01330(Pi)(配列番号105、ポリペプチド配列番号126をコードする)、pLPLAT_07077(Pi)(配列番号106、ポリペプチド配列番号127をコードする)、LPLAT_18374(Pi)(配列番号107、ポリペプチド配列番号128をコードする)、pLPLAT_14816(Pi)(配列番号108、ポリペプチド配列番号129をコードする)、LPCAT_02075(Pi)(配列番号111、ポリペプチド配列番号132をコードする)、Phythophthora infestance由来のpLPAAT_06638(Pi)(配列番号112、ポリペプチド 配列番号133をコードする)、LPAAT関連:Mortierella alpina(油糧性糸状菌)由来のLPAAT(Ma)1.1(WO2004087902)、Mortierella alpina由来のLPAAT(Ma)1.2(WO2004087902)、LPAAT_13842(Pi)(配列番号109、ポリペプチド配列番号130をコードする)、Phythophthora infestance由来のpLPAAT_10763(Pi)(配列番号110、ポリペプチド配列番号131をコードする)、DGAT関連:Crypthecodinium cohnii(藻類)由来のDGAT2(Cc)(WO2004087902)、pDGAT1_12278(Pi)(配列番号113、ポリペプチド配列番号134をコードする)、DGAT2_03074(Pi)(配列番号114、ポリペプチド配列番号135をコードする)、pDGAT2_08467(Pi)(配列番号115、ポリペプチド配列番号136をコードする)、DGAT2_08470(Pi)(配列番号116、ポリペプチド配列番号137をコードする)、pDGAT2_03835-mod(Pi)(配列番号117、ポリペプチド配列番号138をコードする)、DGAT2_11677-mod(Pi)(配列番号118、ポリペプチド配列番号139をコードする)、DGAT2_08432-mod(Pi)(配列番号119、ポリペプチド配列番号140をコードする)、pDGAT2_08431(Pi)(配列番号120、ポリペプチド配列番号141をコードする)、DGAT_13152-mod(Pi)(配列番号121、ポリペプチド配列番号142をコードする)、PDAT関連:pPDAT_11965-mod(Pi)(配列番号122、ポリペプチド配列番号143をコードする)、ならびにGPAT関連:pGPAT-PITG_18707(配列番号123、ポリペプチド配列番号144をコードする)およびpGPAT-PITG_03371(配列番号124、ポリペプチド配列番号145をコードする)である。
【0049】
しかし、オルソログ、パラログまたは他の同族体を他の種から同定してもよい。好ましくは、これらは、植物、例えば、藻類、例えばIsochrysis、Mantoniella、OstreococcusまたはCrypthecodinium;藻類/珪藻、例えばPhaeodactylumまたはThalassiosiraまたはThraustochytrium;蘚類、例えばPhyscomitrellaまたはCeratodon;または高等植物、例えば、サクラソウ科(Primulaceae)、例えばAleuritia、Calendula stellata、Osteospermum spinescensまたはOsteospermum hyoseroides;微生物、例えば、真菌、例えばAspergillus、Phytophthora、Entomophthora、MucorまたはMortierella、細菌、例えば、Shewanella、酵母または動物から得る。好ましい動物は線虫類、例えばCaenorhabditis、昆虫または脊椎動物である。脊椎動物の中では、核酸分子は、好ましくは、ユーテレオストミー(Euteleostomi)、条鰭亜綱(Actinopterygii);新鰭亜網(Neopterygii);真骨類(Teleostei);正真骨類(Euteleostei)、原棘鰭上目(Protacanthopterygii)、サケ目(Salmoniformes);サケ科(Salmonidae)またはOncorhynchusから、より好ましくは、サケ目から、最も好ましくは、サケ科、例えばサケ(Salmo)属、例えば、Oncorhynchus mykiss、Trutta truttaまたはSalmo trutta fario属および種から誘導することができる。さらに、核酸分子は珪藻、例えば、ThallasiosiraまたはPhaeodactylum属から得ることができる。
【0050】
従って、本発明で使用する用語「ポリヌクレオチド」はさらに、本発明のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログまたは他の同族体を表す上述の特定のポリヌクレオチドの変異体を包含する。さらに、本発明のポリヌクレオチドの変異体はまた、人工的に作製された突然変異タンパク質を含む。前記突然変異タンパク質は、例えば、基質特異性を改変する変異原性技法またはコドン最適化したポリヌクレオチドにより作製された酵素を含む。ポリヌクレオチド変異体は、好ましくは、その配列が、アミノ酸配列(すなわち、アシルトランスフェラーゼに対する配列番号:125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144または145のいずれか1つに示した)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより配列番号:95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123または124のいずれか1つで示された上述の特定の核酸配列から、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加および/または欠失により誘導することができ、その際、変異体核酸配列はなお、先に記載のデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードすることで特徴付けられる核酸配列を含むものである。変異体はまた、上記の特定の核酸配列と、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズできる核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に対する好ましい例は、およそ45℃にて6 x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)、次いで1回以上の50〜65℃にて0.2 x SSC、0.1% SDSの洗浄ステップのハイブリダイゼーション条件である。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が核酸の型に応じて、および、例えば、有機溶媒が存在する場合、バッファーの温度および濃度について異なることを知っている。例えば、「標準的ハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、核酸の型に応じて0.1〜5 x SSC(pH 7.2)の濃度の水性バッファー中で42〜58℃の間で異なる。有機溶媒が上記バッファー中に存在する場合、例えば、50%ホルムアミドの場合、標準条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1 x SSCおよび20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドに対するハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1 x SSCおよび30℃〜55℃、好ましくは45℃〜55℃である。上記のハイブリダイゼーション温度は、例えば、ホルムアミドの非存在下で長さ約100bp(=塩基対)および50%のG+C含量を有する核酸について決定したものである。当業者は、上記または下記の教科書:Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989;Hames and Higgins (Ed.) 1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxfordなどの教科書を参照することにより必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を知っている。あるいは、ポリヌクレオチド変異体は、PCRに基づく技法、例えば、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅、すなわち、本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する縮重プライマーの使用により取得可能である。本発明のポリペプチドの保存されたドメインを、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列または本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の配列比較により同定することができる。PCRプライマーとして好適なオリゴヌクレオチドならびに好適なPCR条件は、添付の実施例に記載されている。テンプレートとして、細菌、真菌、植物または動物由来のDNAまたはcDNAを用いることができる。さらに、変異体は、配列番号:95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123または124のいずれか1つに示した核酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸配列を含み、好ましくは、上記のデサチュラーゼ、エロンガーゼ、またはアシルトランスフェラーゼ活性を保持するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。さらにまた、配列番号95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122,123または124のいずれか1つに示される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列(すなわち、アシルトランスフェラーゼに対する配列番号:125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144または145のいずれか1つに示した)と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有し、好ましくは、上記のデサチュラーゼ、エロンガーゼ、またはアシルトランスフェラーゼ活性を保持するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが包含される。%同一性値は、好ましくは、アミノ酸または核酸配列領域全体にわたって計算される。色々な配列を比較するための様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。ある好ましい実施形態においては、2つのアミノ酸配列の%同一性を、NeedlemanおよびWunschアルゴリズム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. (48):444-453)を用いて決定し、これらのアルゴリズムはEMBOSSソフトウエアパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice,P., Longden,I., and Bleasby,A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のneedleプログラム中に組み込まれていて、遠隔の関係タンパク質にはBLOSUM45またはPAM250スコアリング・マトリックスのどちらかを、または、近くの関係タンパク質にはBLOSUM62またはPAM160スコアリング・マトリックスのどちらかを、そしてギャップ・オープニング・ペナルティ16、14、12、10、8、6、または4およびギャップ・エキステンション・ペナルティ0.5、1、2、3、4、5、または6を使用する。EMBOSSパッケージのインストールならびにウエブ-サービスへのリンクの手引きはhttp://emboss.sourceforge.netに見出すことができる。needeleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインするために用いるパラメーターの好ましい例は、限定されるものでないが、デフォールトパラメーター(EBLOSUM62スコアリング・マトリックスを含む)、ギャップオープニング・ペナルティ10およびギャップエキステンション・ペナルティ0.5である。さらに他の好ましい実施形態においては、2つのヌクレオチド配列の%同一性を、EMBOSSソフトウエアパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice,P., Longden,I., and Bleasby,A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のneedleプログラムを用いて決定し、EDNAFULLスコアリングマトリックスおよびギャップオープニングペナルティ16、14、12、10、8、6、または4およびギャップエキステンションペナルティ0.5、1、2、3、4、5、または6を用いる。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインする際に用いるパラメーターの好ましい例は、限定されるものでないが、デフォールトパラメーター(EDNAFULLスコアリング・マトリックスを含む)、ギャップオープニング・ペナルティ10およびギャップエキステンション・ペナルティ0.5である。本発明の核酸およびタンパク質配列をさらに「クエリー配列」として用いて、公共データベースを検索する、例えば、他のファミリーメンバーまたは関係配列を同定することができる。かかる検索は、Altschulら(Altschul 1990、J. Mol. Biol. 215:403-10)のBLASTシリーズのプログラム(バージョン2.2)を用いて行うことができる。本発明の核酸配列をクエリー配列として用いるBLASTを、BLASTn、BLASTxまたはtBLASTxプログラムによりデフォールトパラメーターを使って、本発明の核酸配列がコードする配列と相同性のヌクレオチド配列(BLASTn、tBLASTx)またはアミノ酸配列(BLASTx)のどちらかを得ることができる。本発明の核酸配列がコードするタンパク質をクエリー配列として用いるBLASTを、BLASTpまたはtBLASTnプログラムによりデフォールトパラメーターを使って、本発明の配列と相同性のアミノ酸配列(BLASTp)または核酸配列(tBLASTn)のどちらかを得ることができる。比較のためのギャップ付きアラインメントを得るために、デフォールトパラメーターを用いるギャップ付きBLASTを、Altschulら(Altschul 1997, Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)が記載したように利用することができる。
【0051】
次のブロック図は、様々なBLASTプログラムに対する、クエリーの配列型とヒット配列との関係を示す。
【0052】

上述した核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドも本発明のポリヌクレオチドに包含される。この断片は先に記載したデサチュラーゼおよびエロンガーゼ活性をなお有するポリペプチドをコードするであろう。従って、このポリペプチドは、前記生物学的活性を与える本発明のポリペプチドのドメインを含むかまたはから成りうる。本明細書で意味する断片は、好ましくは、上述した核酸配列のいずれか1つの少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250または少なくとも500個の継続ヌクレオチドを含むか、または上述したアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100または少なくとも150個の継続アミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0053】
先に言及した変異体ポリヌクレオチドまたは断片は、好ましくは、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有意な程度、好ましくは、配列番号:95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122,123または124のいずれか1つに示した核酸配列がコードするポリペプチド(すなわち、アシルトランスフェラーゼに対する配列番号125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144または145のいずれか1つに示した)のいずれか1つが示すデサチュラーゼおよびエロンガーゼ活性の、好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を保持するポリペプチドをコードする。活性は、添付する実施例に記載の通り試験することができる。
【0054】
本発明のポリヌクレオチドは、本質的に上述した核酸配列から成るかまたは上述した核酸配列を含む。従って、これらはさらなる核酸配列を含有してもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、オープンリードフレームに加えて、さらなる非翻訳配列をコーディング遺伝子領域の3'および5'末端に:コード領域の5'末端の上流に少なくとも500、好ましくは200、より好ましくは100ヌクレオチドの配列およびコーディング遺伝子領域の3'末端の下流に少なくとも100、好ましくは50、より好ましくは20ヌクレオチドの配列を含んでもよい。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質の1つのパートナーが上に挙げた核酸配列によりコードされたポリペプチドである、融合タンパク質をコードしてもよい。かかる融合タンパク質はさらなる部分として、脂肪酸またはPUFA生合成経路の他の酵素、モニタリング発現のためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色または赤蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼなど)または検出可能なマーカーとしてまたは精製のための補助尺度として役立ちうるいわゆる「タグ」を含んでもよい。色々な目的のためのタグは当技術分野では周知であり、これにはFLAG-タグ、6-ヒスチジン-タグ、MYC-タグなどが含まれる。
【0055】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(すなわち、精製されたまたは少なくともその自然環境、例えばその自然遺伝子座から単離された)または遺伝的に改変されたまたは外因的に(すなわち、人工的に)操作された形態のどちらかで提供される。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、その核酸が誘導された細胞のゲノムDNAにおいて自然で核酸分子に近接するヌクレオチド配列のおよそ5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、好ましくは、二本鎖または一本鎖分子の形で提供される。本発明はまた、上述の本発明のポリヌクレオチドのいずれかを言及することにより、先に言及した特定の配列またはその変異体の相補鎖または逆相補鎖も言及することは理解されるであろう。ポリヌクレオチドは、cDNAおよびゲノムDNAを含むDNA、またはRNAポリヌクレオチドを包含する。
【0056】
しかし、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドから誘導されそして本発明のポリヌクレオチドの転写または翻訳を妨害することができるポリヌクレオチド変異体にも関する。かかる変異体ポリヌクレオチドは、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNA分子、モルホリノ核酸(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴ)、三本鎖らせん形成オリゴヌクレオチド、阻害性オリゴヌクレオチド、またはミクロRNA分子を含み、これらは全て、相補性または実質的に相補性配列の存在によって本発明のポリヌクレオチドを特異的に認識するものである。これらの技法は当業者に周知である。上述の種類の好適な変異体ポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの構造に基づいて容易に設計することができる。
【0057】
さらにまた、化学的に改変されたポリヌクレオチドも含まれ、それには天然の改変されたポリヌクレオチド、例えば、グリコシル化もしくはメチル化ポリヌクレオチドまたは人工の改変されたもの、例えば、ビオチン化ポリヌクレオチドが含まれる。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドのある好ましい実施形態においては、前記ポリヌクレオチドはさらに、前記核酸配列と作動しうる形で連結された発現制御配列を含む。
【0059】
本明細書で使用する用語「発現制御配列」は、目的の核酸配列、本事例では上記の核酸配列の転写を支配する、すなわち開始しかつ制御することができる核酸配列を意味する。かかる配列は通常、プロモーターまたはプロモーターとエンハンサー配列の組み合わせを含むかまたはから成りうる。ポリヌクレオチドの発現は、核酸分子の、好ましくは、翻訳可能なmRNA中への転写を含む。さらなる調節エレメントは転写ならびに翻訳エンハンサーを含んでもよい。次のプロモーターおよび発現制御配列を、好ましくは、本発明による発現ベクターに用いることができる。cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRまたはλ-PLプロモーターは、好ましくは、グラム陰性菌に用いる。グラム陽性菌については、プロモーターamyおよびSPO2を用いることができる。酵母または真菌からは、プロモーターADC1、AOX1r、GAL1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHが好ましくは用いられる。動物細胞または生物発現については、プロモーターCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサーを好ましくは用いる。植物からは、プロモーターCaMV/35S(Franck 1980, Cell 21: 285-294)、PRP1(Ward 1993, Plant. Mol. Biol. 22)、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nosまたはユビキチンまたはファセオリンプロモーターが用いられる。この文脈において好ましいのはまた、誘導プロモーターであり、例えば、EP 0 388 186 A1(すなわち、ベンジルスルホンアミド誘導プロモーター)、Gatz 1992, Plant J. 2:397-404(すなわち、テトラサイクリン誘導プロモーター)、EP 0 335 528 A1(すなわちアブシジン酸誘導プロモーター)またはWO 93/21334(すなわち、エタノールまたはシクロヘキセノール誘導プロモーター)に記載のプロモーターが挙げられる。さらなる好適な植物プロモーターは、ジャガイモ由来の細胞質FBPaseのプロモーターもしくはST-LSIプロモーター(Stockhaus 1989, EMBO J. 8, 2445)、ダイズ由来のホスホリボシル-ピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター (Genbank受託番号U87999)またはEP-A-0 249 676 A1に記載の結節特異的プロモーターである。特に好ましいのは、脂肪酸の生合成に関わる組織中での発現を可能にするプロモーターである。また、特に好ましいのは、種子特異的プロモーター、例えば慣用のUSPプロモーターなどであるが、他のプロモーター、例えばLeB4、DC3、ファセオリンまたはナピンプロモーターなども好ましい。さらにとりわけ 好ましいプロモーターは、単子葉植物もしくは双子葉植物に用いることができる種子特異的プロモーターであって、米国特許第5,608,152号(アブラナ由来のnapinプロモーター)、WO 98/45461 (シロイヌナズナ由来のoleosinプロモーター)、米国特許第5,504,200号(インゲンマメ由来のphaseoinプロモーター)、WO 91/13980(アブラナ由来Bce4プロモーター)、Baeumlein et al., Plant J., 2, 2, 1992:233-239 (マメ科植物由来のLeB4プロモーター)に記載されており、これらのプロモーターは双子葉植物に好適である。以下のプロモーター:オオムギ由来のlpt-2またはlpt-1プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、好適でありかつWO 99/16890に記載されたオオムギ由来のhordeinプロモーターおよび他のプロモーターは、単子葉植物に好適である。原理的には、新規プロセスにおいて、全ての自然のプロモーターを、上記のもののようなそれらの調節配列と共に用いることができる。同様に、合成プロモーターを追加的にまたは単独で、特にそれらが、例えば、WO 99/16890に記載のように種子特異的発現を媒介する場合、使用することができるしかつそれは有利である。特別な実施形態においては、種子特異的プロモーターを利用して所望のPUFAまたはLCPUFAの生産を増強する。本発明のある好ましい実施形態においては、配列番号:25、26、27、28、29または30のいずれか1つに示した核酸配列がコードするプロモーターを用いる。
【0060】
本明細書で使用する用語「作動しうる形で連結された」は、発現制御配列と目的の核酸が連結され、その結果、前記発現制御配列が前記目的の核酸を支配することができる、すなわち、前記発現制御配列が前記発現すべき核酸配列と機能的に連結されることを意味する。従って、発現制御配列と発現すべき核酸配列は物理的にお互いと、例えば、発現すべき核酸配列の5'末端に発現制御配列を挿入することによって、連結される。あるいは、発現制御配列と発現すべき核酸を単に物理的に近位に発現させ、発現制御配列が少なくとも1つの目的の核酸配列の発現を支配できるようにしてもよい。発現制御配列と発現すべき核酸は、好ましくは、500bp、300bp、100bp、80bp、60bp、40bp、20bp、10bpまたは5bp以下しか離れていない。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドのさらなる好ましい実施形態において、前記ポリヌクレオチドはさらに、核酸配列と作動しうる形で連結されたターミネーター配列を含む。好ましくは、使用するターミネーターは配列番号36または37に示したヌクレオチド配列によりコードされたものである。より好ましくは、使用するターミネーターは配列番号:31、32、33、34または35に示したヌクレオチド配列によりコードされたものである。
【0062】
本明細書で使用する用語「ターミネーター」は、転写を終結できる核酸配列を意味する。これらの配列は、転写機構の転写すべき核酸配列からの解離を引き起こしうる。好ましくは、このターミネーターは植物、特に植物種子において活性であるだろう。好適なターミネーターは当技術分野で公知であり、好ましくは、発現すべき核酸配列の下流に、ポリアデニル化 シグナル、例えばSV40-ポリ-A部位またはtk-ポリ-A部位またはLokeら(Loke 2005, Plant Physiol 138, pp. 1457-1468)が示した植物特異的シグナルの1つを含む。
【0063】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0064】
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルスベクターならびに人工染色体、例えば細菌または酵母の人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、標的化構築物をゲノムDNA中に無作為にまたは部位特異的に組み込むことを可能にする標的化構築物に関する。かかる標的構築物は、好ましくは、以下に詳しく記載したように相同的または異種組換えのどちらかのために十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、さらに、宿主における増殖および/または選択のための選択マーカーを含む。ベクターは当技術分野で周知の様々な技法により宿主細胞中に組み込むことができる。ベクターは、宿主細胞中に導入されれば、細胞質に常在するかまたはゲノム中に組み込まれうる。後者の場合、ベクターはさらに、相同組換えまたは異種挿入を可能にする核酸配列を含みうると理解すべきである。ベクターを、慣用の形質転換またはまたはトランスフェクション技法を介して原核生物または真核生物細胞中に導入することができる。本明細書の文脈で使用する用語「形質転換」および「トランスフェクション」、「コンジュゲーション」および「形質導入」は外来の核酸(例えばDNA)を宿主細胞中に導入するための当技術分野の多様なプロセスを含むことを意図しており、前記用語には、リン酸カルシウム、塩化ルビジウムまたは塩化カルシウム共沈降、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、リポフェクション、自然のコンピテンス、炭素に基づくクラスター、化学的に媒介する導入、エレクトロポレーションまたは粒子ボンバードメントが含まれる。植物細胞を含む宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのための好適な方法は、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989) and other laboratory manuals, such as Methods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, Ed.: Gartland and Davey, Humana Press, Totowa, New Jerseyに見出すことができる。あるいは、プラスミドベクターを熱ショックまたはエレクトロポレーション技法により導入してもよい。ベクターがウイルスであれば、これをin vitroで適当なパッケージング細胞株を用いて包み込んだ後に宿主細胞に適用することができる。
【0065】
好ましいものとして、本明細書で言及するベクター(VC-LJBXXX)はクローニングベクターとして好適である、すなわち微生物系で複製可能である。かかるベクターは、細菌および好ましくは酵母もしくは真菌において効率的なクローニングを保証し、植物の安定な形質転換を可能にする。特記すべきベクターは、様々な二成分および共組込みベクター系であり、これらはT-DNA媒介型形質転換にとって好適である。かかるベクター系は、概して、少なくともアグロバクテリア媒介型形質転換に必要なvir遺伝子およびT-DNAを区切る配列(T-DNAボーダー)を含有することが特徴である。これらのベクター系はまた、好ましくは、さらなるcis-調節領域、例えば、プロモーターおよびターミネーターおよび/または好適な形質転換宿主細胞または生物を同定できる選択マーカーを含む。共組込みベクター系は同じベクター上に配置されたvir遺伝子およびT-DNA配列を有する一方、二成分系は少なくとも2つのベクターに基づき、そのうちの1つはvir遺伝子を保持するがT-DNAを保持しないものの、第2のベクターはT-DNAを保持するがvir遺伝子を保持しない。その結果、後者のベクターは比較的小さく取扱いが容易であって、大腸菌およびアグロバクテリアの両方で複製することができる。これらの二成分ベクターは、pBIB-HYG、pPZP、pBecks、pGreenシリーズ由来のベクターを含む。本発明に使用するのに好ましいのはBin19、pBI101、pBinAR、pGPTV および pCAMBIAである。二成分系ベクターの概要とそれらの使用は、Hellens et al, Trends in Plant Science (2000) 5, 446-451に見出すことができる。さらに、適当なクローニングベクターを用いることにより、このポリヌクレオチドを宿主細胞または生物、例えば、植物もしくは動物に導入することができ、従って、植物の形質転換に用いることができる;これらの例は次の文献に刊行されかつ引用されている:in: Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), chapter 6/7, pp. 71-119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, 15-38; . Jenes et al., Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128-143; Potrykus 1991, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42, 205-225。
【0066】
より好ましくは、本発明のベクターは発現ベクターである。かかる発現ベクターは、発現制御配列(「発現カセット」ともいう)と作動しうる形で連結された核酸配列を有する本発明のポリヌクレオチドを含むベクターであり、原核生物または真核生物細胞またはそれらの単離された画分の発現を可能にする。好適な発現ベクターは、当技術分野で公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene)またはpSPORT1(GIBCOBRL)がある。典型的な融合発現ベクターの例は、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith 1988, Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)であり、ここではグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE-結合タンパク質およびタンパク質Aがそれぞれ、組換え標的タンパク質と融合している。好適な誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例は、とりわけ、pTrc(Amann 1988, Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studier 1990, Methods in Enzymology 185, 60-89)である。pTrcベクターの標的遺伝子発現は、宿主RNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの転写に基づく。pET 11d ベクターからの標的遺伝子発現は、共発現したウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介されるT7-gn10-lac 融合 プロモーターの転写に基づく。このウイルスポリメラーゼは、宿主菌株sBL21(DE3)またはlacUV 5プロモーターの転写制御下のT7 gn1遺伝子を保持する常在性λ-プロファージからのHMS174(DE3)により提供される。当業者は原核生物において好適である他のベクターに精通している:これらのベクターは、例えば、大腸菌では、pLG338、pACYC184、pBRシリーズ、例えばpBR322、pUCシリーズ、例えばpUC18またはpUC19、 M113mp シリーズ、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11またはpBdCl、ストレプトマイセス菌ではplJ101、plJ364、plJ702またはplJ361、バシラス菌ではpUB110、pC194またはpBD214、コリネバクテリウムではpSA77またはpAJ667である。酵母サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)における発現用のベクターの例は、pYep Sec1(Baldari 1987, Embo J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan 1982, Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz 1987, Gene 54:113-123)およびpYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)を含む。他の真菌、例えば、糸状真菌での使用に好適であるベクターおよびベクターを構築するプロセスは、van den Hondel, C.A.M.J.J., & Punt, P.J. (1991) Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi、Applied Molecular Genetics of fungi, J.F. Peberdy et al., Ed., pp. 1-28, Cambridge University Press: Cambridge、またはMore Gene Manipulations in Fungi (J.W. Bennett & L.L. Lasure, Ed., pp. 396-428: Academic Press: San Diego)に詳しく記載されたものを含む。さらなる好適な酵母ベクターは、例えば、pAG-1、YEp6、YEp13またはpEMBLYe23である。代わりに、本発明のポリヌクレオチドはまた、昆虫細胞に、バキュロウイルス発現ベクターを用いて発現することができる。培養した昆虫細胞(例えばSf9細胞)中のタンパク質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターはpAcシリーズ(Smith 1983, Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklow 1989, Virology 170:31-39)を含む。
【0067】
上述のベクターは、本発明により用いるベクターのほんのわずかを概観したに過ぎない。さらなるベクターが当業者に公知であり、例えば、Cloning Vectors (Ed., Pouwels, P.H., et al., Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に記載されている。原核生物および真核生物細胞に対する好適な発現系については、Sambrook引用文中の第16および17章を参照されたい。
【0068】
以上から、前記ベクターは発現ベクターであることが好ましい。より好ましくは、前記本発明のポリヌクレオチドは、本発明のベクター中の種子特異的プロモーターの制御下にある。本明細書で意味する好ましい種子特異的プロモーターはConlinin 1、Conlinin 2、napin、LuFad3、USP、LeB4、Arc、Fae、ACP、LuPXR、および SBPからなる群より選択される。詳細については、例えば、米国特許出願公開第2003-0159174号を参照されたい。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドは、植物発現ベクターを用いることにより、単細胞植物細胞(藻類など)(Falciatore 1999, Marine Biotechnology 1 (3):239-251およびそこに引用された参考文献を参照)、および高等植物由来の植物細胞(例えば、耕地作物などの種子植物)中で発現させることができる。植物発現ベクターの例としては、Becker 1992, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;Bevan 1984, Nucl. Acids Res. 12:8711-8721; Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.;Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, p. 15-38に詳細に記載されたものが挙げられる。植物発現カセットは、好ましくは、植物細胞中での遺伝子発現を制御することができ、各配列がその機能(転写終結など、例えばポリアデニル化シグナル)を果たすことができるように、機能し得る形で連結された調節配列を含む。好ましいポリアデニル化シグナルは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのT-DNA、例えばオクトパインシンターゼ(Gielen 1984, EMBO J. 3, 835)として公知のTiプラスミドpTiACH5の遺伝子3由来のもの、またはそれらの機能的等価物であるが、植物において機能的に活性である全ての他のターミネーターも好適である。植物遺伝子発現は転写レベルを限定されないことが非常に多いので、植物発現カセットは、好ましくは、翻訳エンハンサーなどの他の機能し得る形で連結された配列、例えば、タンパク質/RNA比を増加させる、5'非翻訳タバコモザイクウイルスリーダー配列を含むオーバードライブ配列(Gallie, 1987, Nucl. Acids Research 15:8963-8711)を含む。上記のように、植物遺伝子発現を好適なプロモーターに機能的に連結し、遺伝子の発現をタイムリーに、細胞特異的または組織特異的な方式で実施しなければならない。使用できるプロモーターは構成的プロモーター(Benfey 1989, EMBO J. 8:2195-2202)、例えば、植物ウイルス由来のもの、例えば35S CAMV (Franck 1980, Cell 21:285-294)、19S CaMV (米国特許第5,352,605号およびWO 84/02913を参照)、または植物プロモーター、例えば、米国特許第4,962,028号に記載されたRubisco小サブユニットのプロモーターなどである。植物遺伝子発現カセット中での機能的連結における使用のための他の好ましい配列は、遺伝子産物をその関係する細胞コンパートメントに標的化するために必要な標的化配列であって(総括は、Kermode 1996, Crit. Rev. Plamt Sci. 15, 4: 285-423およびそこに引用される参考文献を参照されたい)、前記細胞コンパートメントとしては、例えば、植物細胞の液胞、核、アミロプラスト、クロロプラスト、クロモプラストなどのあらゆる型のプラスチド、細胞外空間、ミトコンドリア、小胞体、油体、ペルオキシソームおよび他のコンパートメントが挙げられる。上記のように、植物遺伝子発現はまた、化学誘導プロモーターを介して容易にすることができる(総説は、Gatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108を参照されたい)。化学誘導プロモーターは、遺伝子を時間特異的方式で発現させることが所望の場合に特に好適である。かかるプロモーターの例は、サリチル酸誘導プロモーター(WO 95/19443)、テトラサイクリン誘導プロモーター(Gatz, (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導プロモーターである。生物的または非生物的ストレス条件に応答するプロモーターも好適なプロモーターであり、例えば、病原体誘導性PRP1遺伝子プロモーター(Ward, Plant Mol. Biol. 22 (1993) 361-366)、トマト由来の熱誘導性hsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号)、ジャガイモ由来の低温誘導性α-アミラーゼプロモーター(WO 96/12814)または創傷誘導性pinIIプロモーター(EP A 0 375 091)が挙げられる。とりわけ好ましいプロモーターは、脂肪酸、脂質および油生合成が起こる組織および器官、内胚乳および発生中の胚の細胞などの種子細胞中で遺伝子の発現をもたらすものである。好適なプロモーターは、アブラナ由来のnapin遺伝子プロモーター(米国特許第5,608,152号)、ソラマメ由来のUSPプロモーター(Baeumlein, 1991, Mol. Gen. Genet., 1991, 225 (3):459-67)、シロイヌナズナ由来のoleosinプロモーター(WO 98/45461)、インゲンマメ由来のphaseolinプロモーター(米国特許第5,504,200号)、アブラナ由来のBce4プロモーター(WO 91/13980)またはレグミン由来のB4プロモーター(LeB4; Baeumlein, 1992, Plant Journal, 2 (2):233-9)、ならびにトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、コメなどの単子葉植物において種子特異的発現をもたらすプロモーターである。考慮すべき好適なプロモーターは、オオムギ由来のlpt2もしくはlpt1遺伝子プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)またはWO 99/16890に記載されたもの(オオムギhordein遺伝子、イネglutelin遺伝子、イネoryzin遺伝子、イネprolamin遺伝子、コムギgliadin遺伝子、コムギglutelin遺伝子、トウモロコシzein遺伝子、カラスムギglutelin遺伝子、モロコシkasirin遺伝子、ライムギsecalin遺伝子に由来するプロモーター)である。同様に、特に好適なものはプラスチド特異的発現をもたらすプロモーターであり、プラスチドは脂質生合成の前駆体およびいくつかの最終生成物が合成されるコンパートメントであるからである。好適なプロモーター、例えばウイルスRNA-ポリメラーゼプロモーターはWO 95/16783およびWO 97/06250に記載されており、シロイヌナズナ由来のclpPプロモーターはWO 99/46394に記載されている。
【0070】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」はまた、「宿主細胞培養物」を意味する。
【0071】
好ましくは、前記宿主細胞は、植物細胞または植物細胞培養物であり、より好ましくは、油種子作物から得られた植物細胞である。より好ましくは、前記油種子作物を、アマ(Linum種)、アブラナ(Brassica種)、ダイズ(Glycine種)、ヒマワリ(Helianthus種)、ワタ(Gossypium種)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea種)、ベニバナ(Carthamus種)、ココア(Theobroma cacoa)、ピーナッツ(Arachis種)、アサ、カメリナ、ハマナ、アブラヤシ、ココナッツ、アメリカホドイモ、ゴマ種子、トウゴマの種子、ブラッダーポッド、シラキ、シアの実、タングナッツ、カポックの実、ポピー種子、ホホバ種子およびエゴマからなる群より選択する。
【0072】
好ましくはまた、前記宿主細胞は微生物である。より好ましくは、前記微生物は細菌、真菌または藻類である。より好ましくは、前記微生物細胞は、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、リポミセス(Lipomyces)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、ヤロウイア(Yarrowia)およびシゾキトリウム(Schizochytrium)からなる群より選択される。
【0073】
さらに、本発明による宿主細胞または宿主細胞培養物はまた、動物細胞であってもよい。好ましくは、前記動物宿主細胞は魚類またはそれから得た細胞株の宿主細胞である。より好ましくは、魚類宿主細胞は、ニシン、サケ、イワシ、レッドフィッシュ、ウナギ、コイ、マス、オヒョウ、サバ、ザンダーまたはマグロ由来である。
【0074】
一般に、LCPUFAの生産、すなわち長鎖不飽和脂肪酸生合成経路の制御ステップは、膜関連脂肪酸デサチュラーゼおよびエロンガーゼにより触媒される。植物およびほとんどの他の真核生物は、二重結合の導入および18個を越える炭素原子(C18)をもつ脂肪酸の伸長のための特異化したデサチュラーゼおよびエロンガーゼ系を有する。エロンガーゼ反応物は脂肪酸シンターゼ複合体(FAS)と共通したいくつかの重要な特徴を有する。しかし、エロンガーゼ複合体はFAS複合体と異なりサイトゾルに限局性でありかつ膜結合であって、ACPは関与しない、そしてエロンガーゼである3-ケト-アシル-CoA-シンターゼはマロニル-CoAのアシルプライマーとの縮合を触媒する。エロンガーゼ複合体は、異なる触媒機能をもつ4つの構成要素から構成される:ケト-アシル-シンターゼ(マロニル-CoAのアシル-CoAとの縮合反応、2個の炭素原子だけ長いケト-アシル-CoA脂肪酸の作製)、ケト-アシル-レダクターゼ(3-ケト基の3-ヒドロキシ基への還元)、デヒドラターゼ(脱水して3-エノイル-アシル-CoA脂肪酸を生じる)、およびエノイル-CoA-レダクターゼ(位置3の二重結合の還元、複合体から遊離)。ARA、EPAおよび/またはDHAを含むLCPUFAの生産にとって、伸長反応はデサチュラーゼ反応と共に必須である。高等植物はLCPUFA(4つ以上の二重結合、20以上の炭素原子)を生産するために必要な酵素を有しない。それ故に、その触媒活性を植物または植物細胞に付与しなければならない。本発明のポリヌクレオチドは、ARA、EPAおよび/またはDHAの形成に必要な不飽和化(デサチュレーション)および伸長活性を触媒する。新規のデサチュラーゼおよびエロンガーゼを送達することにより、生産するPUFAおよびLCPUFAのレベルが増加する。
【0075】
しかし、当業者は、宿主細胞に応じて、例えば、遺伝子組換え技法により、さらに、酵素活性を宿主細胞に与えうることを知っている。従って、本発明は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドに加えて、選択した宿主細胞に応じて必要なデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を想定している。宿主細胞中に存在すべき好ましいデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼは、Δ-4-デサチュラーゼ、Δ-5-デサチュラーゼ、Δ-5-エロンガーゼ、Δ-6-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ15-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼおよびΔ-6-エロンガーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素である。とりわけ好ましいのは、二官能性d12d15-デサチュラーゼ類、d12d15Des(Ac)[Acanthamoeba castellanii由来](WO2007042510)、d12d15Des(Cp)[Claviceps purpurea由来](WO2008006202) および d12d15Des(Lg)1[Lottia gigantea由来](WO2009016202)、d12-デサチュラーゼ類、d12Des(Co)[Calendula officinalis由来](WO200185968)、d12Des(Lb)[Laccaria bicolor由来](WO2009016202)、d12Des(Mb)[Monosiga brevicollis由来](WO2009016202)、d12Des(Mg)[Mycosphaerella graminicola由来](WO2009016202)、d12Des(Nh)[Nectria haematococca由来](WO2009016202)、d12Des(Ol)[Ostreococcus lucimarinus由来](WO2008040787)、d12Des(Pb)[Phycomyces blakesleeanus由来](WO2009016202)、d12Des(Ps)[Phytophthora sojae由来](WO2006100241)およびd12Des(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2006069710)、d15-デサチュラーゼ類、d15Des(Hr)[Helobdella robusta由来](WO2009016202)、d15Des(Mc)[Microcoleus chthonoplastes由来](WO2009016202)、d15Des(Mf)[Mycosphaerella fijiensis由来](WO2009016202)、d15Des(Mg)[Mycosphaerella graminicola由来](WO2009016202) および d15Des(Nh)2[Nectria haematococca由来](WO2009016202)、d4-デサチュラーゼ類、d4Des(Eg)[Euglena gracilis由来](WO2004090123)、d4Des(Tc)[Thraustochytrium sp.由来](WO2002026946)およびd4Des(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2006069710)、d5-デサチュラーゼ類、d5Des(オール)2[Ostreococcus lucimarinus由来](WO2008040787)、d5Des(Pp)[Physcomitrella patens由来](WO2004057001)、d5Des(Pt)[Phaeodactylum tricornutum由来](WO2002057465)、d5Des(Tc)[Thraustochytrium sp.由来](WO2002026946)、d5Des(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2006069710)およびd6-デサチュラーゼ類、d6Des(Cp)[Ceratodon purpureus由来](WO2000075341)、d6Des(Ol)[Ostreococcus lucimarinus由来](WO2008040787)、d6Des(Ot)[Ostreococcus tauri由来](WO2006069710)、d6Des(Pf)[Primula farinosa由来](WO2003072784)、d6Des(Pir)_BO[Pythium irregulare由来](WO2002026946)、d6Des(Pir)[Pythium irregulare由来](WO2002026946)、d6Des(Plu)[Primula luteola由来](WO2003072784)、d6Des(Pp)[Physcomitrella patens由来](WO200102591)、d6Des(Pt)[Phaeodactylum tricornutum由来](WO2002057465)、d6Des(Pv)[Primula vialii由来](WO2003072784)およびd6Des(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2006069710)、d8-デサチュラーゼ類、d8Des(Ac)[Acanthamoeba castellanii由来](EP1790731)、d8Des(Eg)[Euglena gracilis由来](WO200034439)およびd8Des(Pm)[Perkinsus marinus由来](WO2007093776)、o3-デサチュラーゼ類、o3Des(Pi)[Phytophthora infestans由来](WO2005083053)、o3Des(Pir)[Pythium irregulare由来](WO2008022963)、o3Des(Pir)2[Pythium irregulare由来](WO2008022963)およびo3Des(Ps)[Phytophthora sojae由来](WO2006100241)、二官能性d5d6-エロンガーゼ類、d5d6Elo(Om)2[Oncorhynchus mykiss由来](WO2005012316)、d5d6Elo(Ta)[Thraustochytrium aureum由来](WO2005012316)およびd5d6Elo(Tc)[Thraustochytrium sp.由来](WO2005012316)、d5-エロンガーゼ類、d5Elo(At)[Arabidopsis thaliana由来](WO2005012316)、d5Elo(At)2[Arabidopsis thaliana由来](WO2005012316)、d5Elo(Ci)[Ciona intestinalis由来](WO2005012316)、d5Elo(Ol)[Ostreococcus lucimarinus由来](WO2008040787)、d5Elo(Ot)[Ostreococcus tauri由来](WO2005012316)、d5Elo(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2005012316)およびd5Elo(Xl)[Xenopus laevis由来](WO2005012316)、d6-エロンガーゼ類、d6Elo(Ol)[Ostreococcus lucimarinus由来](WO2008040787)、d6Elo(Ot)[Ostreococcus tauri由来](WO2005012316)、d6Elo(Pi)[Phytophthora infestans由来](WO2003064638)、d6Elo(Pir)[Pythium irregulare由来](WO2009016208)、d6Elo(Pp)[Physcomitrella patens由来](WO2001059128)、d6Elo(Ps)[Phytophthora sojae由来](WO2006100241)、d6Elo(Ps)2[Phytophthora sojae由来](WO2006100241)、d6Elo(Ps)3[Phytophthora sojae由来](WO2006100241)、d6Elo(Pt)[Phaeodactylum tricornutum由来](WO2005012316)、d6Elo(Tc)[Thraustochytrium sp.由来](WO2005012316)およびd6Elo(Tp)[Thalassiosira pseudonana由来](WO2005012316)、d9-エロンガーゼ類、d9Elo(Ig)[Isochrysis galbana由来](WO2002077213)、d9Elo(Pm)[Perkinsus marinus由来](WO2007093776)およびd9Elo(Ro)[Rhizopus oryzae由来](WO2009016208)である。特に、もし高等植物におけるARAの製造を想定するのであれば、下の表3に掲げた酵素(すなわち、さらにd6-デサチュラーゼ、d6-エロンガーゼ、d5-エロンガーゼ、d5-デサチュラーゼ、d12-デサチュラーゼ、およびd6-エロンガーゼ)または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞中で組み合わせてもよい。もし高等植物におけるEPAの製造を想定するのであれば、さらにd6-デサチュラーゼ、d6-エロンガーゼ、d5-デサチュラーゼ、d12-デサチュラーゼ、d6-エロンガーゼ、オメガ-3-デサチュラーゼおよびd15-デサチュラーゼ、または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞中で組み合わせてもよい。もし高等植物におけるDHAの製造を想定するのであれば、さらにd6-デサチュラーゼ、d6-エロンガーゼ、d5-デサチュラーゼ、d12-デサチュラーゼ、d6-エロンガーゼ、オメガ-3-デサチュラーゼ、d15-デサチュラーゼ、d5-エロンガーゼ、およびd4-デサチュラーゼ活性、または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞中で組み合わせてもよい。
【0076】
本発明はまた、以上に説明した細胞、好ましくは、宿主細胞、または本明細書の随所に記載した非ヒト生物の細胞であって、本発明のポリヌクレオチドから点突然変異、切詰め、逆転、欠失、付加、置換および相同組換えにより得られたポリヌクレオチドを含む前記細胞に関する。かかる改変をポリヌクレオチドに行う方法は当業者には周知であり、本明細書の随所に詳しく記載している。
【0077】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドのいずれかによりコードされたポリペプチドの製造方法であって、
a)前記ポリペプチドの生産を可能にする条件下で本発明の宿主細胞を培養するステップ;および
b)ステップa)の宿主細胞からポリペプチドを取得するステップ
を含むものである前記方法に関する。
【0078】
宿主細胞に含まれる本発明のポリヌクレオチドの発現を可能にする好適な条件は、宿主細胞ならびに前記ポリヌクレオチドの発現を支配するために使う発現制御配列に依存する。これらの条件およびそれらを選択する方法は当業者にとって周知である。発現されたポリペプチドは、例えば、全ての慣用の精製技法により得ることができ、前記精製技法としては、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)および抗体沈降を含む沈降技法が挙げられる。理解すべきことは、この方法によりポリペプチドの本質的に純粋な調製物を得ることは好ましいが、必ずしも得られるわけではない。理解すべきことは、上述した方法に使う宿主細胞に応じて、生産されたポリペプチドを翻訳後に改変するかまたは他の方法で処理してもよい。
【0079】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるかまたは上述の方法により取得可能なポリペプチドを包含する。
【0080】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」は本質的に精製されたポリペプチドまたはさらに他のタンパク質を含むポリペプチド調製物を包含する。さらに、この用語はまた、先に言及した本発明のポリヌクレオチドにより少なくとも部分的にコードされている融合タンパク質またはポリペプチド断片に関する。さらに、これは化学的に改変されたポリペプチドを含む。かかる改変は人工的改変または天然の改変、例えば、リン酸化、グリコシル化、ミリスチル化 などであってもよい(Mann 2003, Nat. Biotechnol. 21, 255-261の総括およびHuber 2004, Curr. Opin. Plant Biol. 7, 318-322の植物についての総括を参照)。現在、300を超える翻訳後改変が公知である(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.homeの全ABFRC Delta Massリストを参照されたい)。本発明のポリペプチドは、先に言及したデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を示すであろう。
【0081】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む非ヒトトランスジェニック生物を考えている。
【0082】
好ましくは、非ヒトトランスジェニック生物は植物または植物部分である。本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを導入するために用いる好ましい植物は、脂肪酸を合成する能力のある植物、例えば、全ての双子葉類または単子葉植物、藻類または蘚類である。理解すべきこととして、植物由来の宿主細胞も本発明による植物を生産するために用いることができる。好ましい植物部分は植物からの種子である。好ましい植物は植物科、アブラゴケ科(Adelotheciaceae)、ウルシ科(Anacardiaceae)、キク科(Asteraceae)、セリ科(Apiaceae)、カバノキ科(Betulaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、パパイヤ科(Caricaceae)、アサ科(Cannabaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、クリプテコジニアセア科(Crypthecodiniaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、キンシゴケ科(Ditrichaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、クルミ科(Juglandaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、または野菜植物またはマンジュギクなどの観賞植物からなる群より選択される。述べることができる例は、アブラゴケ科(Adelotheciaceae)、例えば、フィスコミトレラ属(Physcomitrella)、例えば、属および種Physcomitrella patens、ウルシ科(Anacardiaceae)、例えば、カイノキ属(Pistacia)、マンゴー属(Mangifera)、カシュー属(Anacardium)、例えば属および種Pistacia vera[ピスタチオ]、Mangifer indica[マンゴー]もしくはAnacardium occidentale[カシュー]、キク科(Asteraceae)、例えばキンセンカ属(Calendula)、ベニバナ属(Carthamus)、 ヤグルマギク属(Centaurea)、キコリウム属(Cichorium)、チョウセンアザミ属(Cynara)、ヒマワリ属 (Helianthus)、アキノゲシ属(Lactuca)、Locusta属、タゲテス属(Tagetes)、カノコソウ属(Valeriana)、例えば属および種Calendula officinalis[一般のマリゴールド]、Carthamus tinctorius[ベニバナ]、Centaurea cyanus[コーンフラワー]、Cichorium intybus[チコリー]、Cynara scolymus[チョウセンアザミ]、Helianthus annus[ヒマワリ]、Lactuca sativa、Lactuca crispa、Lactuca esculenta、Lactuca scariola L. ssp. sativa、Lactuca scariola L. var. integrata、Lactuca scariola L. var. integrifolia、Lactuca sativa subsp. romana、Locusta communis、Valeriana locusta [サラダ野菜]、Tagetes lucida、Tagetes erectaもしくはTagetes tenuifolia[アフリカもしくはフレンチマリーゴールド]、セリ科(Apiaceae)、例えばニンジン属(Daucus)、例えば属および種 Daucus carota[ニンジン]、カバノキ科(Betulaceae)、例えばハシバミ属(Corylus)、例えば属および種Corylus avellanaもしくはCorylus colurna[ヘーゼルナッツ]、ムラサキ科(Boraginaceae)、例えばボラゴ属(Borago)、例えば属および種Borago officinalis[ボリジ]、アブラナ科(Brassicaceae)、例えばアブラナ属(Brassica)、メラノシナピス属(Melanosinapis)、シロガラシ属(Sinapis)、シロイナズナ属(Arabadopsis)、例えば属および種Brassica napus、Brassica rapa ssp.[アブラナ]、Sinapis arvensis、Brassica juncea、Brassica juncea var. juncea、Brassica juncea var. crispifolia、Brassica juncea var. foliosa、Brassica nigra、Brassica sinapioides、Melanosinapis communis[カラシ]、Brassica oleracea [飼料用ビート]もしくはArabidopsis thaliana、パイナップル科(Bromeliaceae)、例えばアナナ属(Anana)、パイナップル属(Bromelia)(パイナップル)、例えば属および種Anana comosus、Ananas ananasもしくはBromelia comosa[パイナップル]、パパイヤ科(Caricaceae)、例えばパパイヤ属(Carica)、例えば属および種Carica papaya[パパイヤ]、アサ科(Cannabaceae)、例えばアサ属(Cannabis)、例えばCannabis sativa[麻]、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、例えばサツマイモ属(Ipomea)、ヒルガオ属(Convolvulus)、例えば属および種Ipomoea batatus、Ipomoea pandurata、Convolvulus batatas、Convolvulus tiliaceus、Ipomoea fastigiata、Ipomoea tiliacea、Ipomoea trilobaもしくはConvolvulus panduratus[カンショ、batate]、アカザ科(Chenopodiaceae)、例えばフダンソウ属(Beta)、例えば属および種 Beta vulgaris、Beta vulgaris var. altissima、Beta vulgaris var. vulgaris、Beta maritima、Beta vulgaris var. perennis、Beta vulgaris var. conditivaもしくはBeta vulgaris var. esculenta[テンサイ]、クリプテコジニアセア科(Crypthecodiniaceae)、例えばクリプセコジニウム属(Crypthecodinium)、例えば属および種Crypthecodinium cohnii、ウリ科(Cucurbitaceae)、例えばカボチャ属(Cucurbita)、例えば属および種Cucurbita maxima、Cucurbita mixta、Cucurbita pepoもしくはCucurbita moschata[カボチャ/スカッシュ]、キンベラ科(Cymbellaceae)、例えば、アンホラ属(Amphora)、キンベラ属(Cymbella)、オケデニア属(Okedenia)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、レイメリア属(Reimeria)、例えば、属および種Phaeodactylum tricornutum、キンシゴケ科(Ditrichaceae)、例えば、キンシゴケ属(Ditrichaceae)、アストミオプシス属(Astomiopsis)、セラトドン属(Ceratodon)、クリゾブラステラ属(Chrysoblastella)、ディトリカム属(Ditrichum)、ディストリチウム属(Distichium)、エクレミジウム属(Eccremidium)、ロフィジオン属(Lophidion)、フィリベルチエラ属(Philibertiella)、プレウリジウム属(Pleuridium)、サエラニア属(Saelania)、トリコドン属(Trichodon)、スコッツバージア属(Skottsbergia)、例えば、属および種Ceratodon antarcticus、Ceratodon columbiae、Ceratodon heterophyllus、Ceratodon purpureus、Ceratodon purpureus、Ceratodon purpureus ssp. convolutus、Ceratodon、purpureus spp. stenocarpus、Ceratodon purpureus var. rotundifolius、Ceratodon ratodon、Ceratodon stenocarpus、Chrysoblastella chilensis、Ditrichum ambiguum、Ditrichum brevisetum、Ditrichum crispatissimum、Ditrichum difficile、Ditrichum falcifolium、Ditrichum flexicaule、Ditrichum giganteum、Ditrichum heteromallum、Ditrichum lineare、Ditrichum lineare、Ditrichum montanum、Ditrichum montanum、Ditrichum pallidum、Ditrichum punctulatum、Ditrichum pusillum、Ditrichum pusillum var. tortile、Ditrichum rhynchostegium、Ditrichum schimperi、Ditrichum tortile、Distichium capillaceum、Distichium hagenii、Distichium inclinatum、Distichium macounii、Eccremidium floridanum、Eccremidium whiteleggei、Lophidion strictus、Pleuridium acuminatum、Pleuridium alternifolium、Pleuridium holdridgei、Pleuridium mexicanum、Pleuridium ravenelii、Pleuridium subulatum、Saelania glaucescens、Trichodon borealis、Trichodon cylindricusまたはTrichodon cylindricus var. oblongus、グミ科(Elaeagnaceae)、例えばグミ属(Elaeagnus)、例えば属および種Olea europaea[オリーブ]、ツツジ科(Ericaceae)、例えばカルミア属(Kalmia)、例えば属および種Kalmia latifolia、Kalmia angustifolia、Kalmia microphylla、Kalmia polifolia、Kalmia occidentalis、Cistus chamaerhodendrosもしくはKalmia lucida[マウンテンローレル]、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、例えばキャッサバ属(Manihot)、ジャニファ属(Janipha)、タイワンアブラギリ属(Jatropha)、ヒマ属(Ricinus)、例えば属および種Manihot utilissima、Janipha manihot、Jatropha manihot、Manihot aipil、Manihot dulcis、Manihot manihot、Manihot melanobasis、Manihot esculenta[キャッサバ]もしくはRicinus communis[ヒマシ油植物]、マメ科(Fabaceae)、例えばエンドウ属(Pisum)、ネムノキ属(Albizia)、カトルミオン属(Cathormion)、フェビレア属(Feuillea)、インガ属(Inga)、ピテコロビウム属(Pithecolobium)、アカシア属(Acacia)、
オジギソウ属(Mimosa)、ウマゴヤシ属(Medicajo)、ダイズ属(Glycine)、ドリコス属(Dolichos)、インゲン属 (Phaseolus)、ダイズ(Soja)、例えば属および種Pisum sativum、Pisum arvense、Pisum humile[エンドウマメ]、Albizia berteriana、Albizia julibrissin、Albizia lebbeck、Acacia berteriana、Acacia littoralis、Albizia berteriana、Albizzia berteriana、Cathormion berteriana、Feuillea berteriana、Inga fragrans、Pithecellobium berterianum、Pithecellobium fragrans、Pithecolobium berterianum、Pseudalbizzia berteriana、Acacia julibrissin、Acacia nemu、Albizia nemu、Feuilleea julibrissin、Mimosa julibrissin、Mimosa speciosa、Sericanrda julibrissin、Acacia lebbeck、Acacia macrophylla、Albizia lebbeck、Feuilleea lebbeck、Mimosa lebbeck、Mimosa speciosa[ネムノキ]、Medicago sativa、Medicago falcata、Medicago varia[アルファルファ]、Glycine max、Dolichos soja、Glycine gracilis、Glycine hispida、Phaseolus max、Soja hispidaもしくはSoja max[ダイズ]、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)、例えば、アファノレグマ属(Aphanorrhegma)、エントストドン属(Entosthodon)、フナリア属(Funaria)、フィスコミトレラ属(Physcomitrella)、フィスコミトリウム属(Physcomitrium)、例えば、属および種Aphanorrhegma serratum、Entosthodon attenuatus、Entosthodon bolanderi、Entosthodon bonplandii、Entosthodon californicus、Entosthodon drummondii、Entosthodon jamesonii、Entosthodon leibergii、Entosthodon neoscoticus、Entosthodon rubrisetus、Entosthodon spathulifolius、Entosthodon tucsoni、Funaria americana、Funaria bolanderi、Funaria calcarea、Funaria californica、Funaria calvescens、Funaria convoluta、Funaria flavicans、Funaria groutiana、Funaria hygrometrica、Funaria hygrometrica var. arctica、Funaria hygrometrica var. calvescens、Funaria hygrometrica var. convoluta、Funaria hygrometrica var. muralis、Funaria hygrometrica var. utahensis、Funaria microstoma、Funaria microstoma var. obtusifolia、Funaria muhlenbergii、Funaria orcuttii、Funaria plano-convexa、Funaria polaris、Funaria ravenelii、Funaria rubriseta、Funaria serrata、Funaria sonorae、Funaria sublimbatus、Funaria tucsoni、Physcomitrella californica、Physcomitrella patens、Physcomitrella readeri、Physcomitrium australe、Physcomitrium californicum、Physcomitrium collenchymatum、Physcomitrium coloradense、Physcomitrium cupuliferum、Physcomitrium drummondii、Physcomitrium eurystomum、Physcomitrium flexifolium、Physcomitrium hookeri、Physcomitrium hookeri var. serratum、Physcomitrium immersum、Physcomitrium kellermanii、Physcomitrium megalocarpum、Physcomitrium pyriforme、Physcomitrium pyriforme var. serratum、Physcomitrium rufipes、Physcomitrium sandbergii、Physcomitrium subsphaericum、Physcomitrium washingtoniense、フウロソウ科(Geraniaceae)、例えばペラルゴニウム属(Pelargonium)、ココヤシ属(Cocos)、オレウム属(Oleum)、例えば属および種Cocos nucifera、Pelargonium grossularioidesもしくはOleum cocois[ココナッツ]、イネ科(Gramineae)、例えばサトウキビ属(Saccharum)、例えば属および種Saccharum officinarum、クルミ科(Juglandaceae)、例えばクルミ属(Juglans)、ワリア属(Wallia)、例えば属および種Juglans regia、Juglans ailanthifolia、Juglans sieboldiana、Juglans cinerea、Wallia cinerea、Juglans bixbyi、Juglans californica、Juglans hindsii、Juglans intermedia、Juglans jamaicensis、Juglans major、Juglans microcarpa、Juglans nigraもしくはWallia nigra[クルミ]、クスノキ科(Lauraceae)、例えばワニナシ属(Persea)、ゲッケイジュ属(Laurus)、例えば属および種Laurus nobilis[月桂樹]、Persea americana、Persea gratissimaもしくはPersea persea [アボカド]、マメ科(Leguminosae)、例えばラッカセイ属(Arachis)、例えば属および種Arachis hypogaea[落花生]、アマ科(Linaceae)、例えばリナム属(Linum)、アデノリナム属(Adenolinum)、例えば属および種Linum usitatissimum、Linum humile、Linum austriacum、Linum bienne、Linum angustifolium、Linum catharticum、Linum flavum、Linum grandiflorum、Adenolinum grandiflorum、Linum lewisii、Linum narbonense、Linum perenne、Linum perenne var. lewisii、Linum pratense もしくはLinum trigynum[アマニ]、Lythrarieae科、例えばザクロ属(Punica)、例えば属および種Punica granatum [ザクロ]、アオイ科(Malvaceae)、例えばワタ属(Gossypium)、例えば属および種Gossypium hirsutum、Gossypium arboreum、Gossypium barbadense、Gossypium herbaceumもしくは Gossypium thurberi[木綿]、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、例えばゼニゴケ属(Marchantia)、例えば属および種 Marchantia berteroana、Marchantia foliacea、Marchantia macropora、バショウ科(Musaceae)、例えばバショウ属(Musa)、例えば属および種Musa nana、Musa acuminata、Musa paradisiaca、Musa spp. [バナナ]、アカバナ科(Onagraceae)、例えばカミソニア属(Camissonia)、オエノセラ属(Oenothera)、例えば属および種 Oenothera biennisもしくはCamissonia brevipes[月見草]、ヤシ科(Palmae)、例えばアブラヤシ属(Elaeis)、例えば属および種Elaeis guineensis[油ヤシ]、ケシ科(Papaveraceae)、例えば、ケシ属(Papaver)、例えば属および種Papaver orientale、Papaver rhoeas、Papaver dubium [ケシ]、ゴマ科(Pedaliaceae)、例えばゴマ属(Sesamum)、例えば属および種Sesamum indicum[ゴマ]、コショウ科(Piperaceae)、例えばコショウ属(Piper)、アルタンテ属(Artanthe)、サダソウ属(Peperomia)、ステフェンシア属(Steffensia)、例えば属および種Piper aduncum、Piper amalago、Piper angustifolium、Piper auritum、Piper betel、Piper cubeba、Piper longum、Piper nigrum、Piper retrofractum、Artanthe adunca、Artanthe elongata、Peperomia elongata、Piper elongatum、Steffensia elongata[カイエンペッパー]、イネ科(Poaceae)、例えばオオムギ属(Hordeum)、ライムギ属(Secale)、エンバク属(Avena)、ソルガム属(Sorghum)、ウシクサ属(Andropogon)、シラゲガヤ属(Holcus)、キビ属(Panicum)、イネ属(Oryza)、トウモロコシ属(Zea(トウモロコシ))、コムギ属(Triticum)、例えば属および種Hordeum vulgare、Hordeum jubatum、Hordeum murinum、Hordeum secalinum、Hordeum distichon、Hordeum aegiceras、Hordeum hexastichon、Hordeum hexastichum、Hordeum irregulare、Hordeum sativum、Hordeum secalinum[オオムギ]、Secale cereale[ライムギ]、Avena sativa、Avena fatua、Avena byzantina、Avena fatua var. sativa、Avena hybrida[オートムギ]、Sorghum bicolor、Sorghum halepense、Sorghum saccharatum、Sorghum vulgare、Andropogon drummondii、Holcus bicolor、Holcus sorghum、Sorghum aethiopicum、Sorghum arundinaceum、Sorghum caffrorum、Sorghum cernuum、Sorghum dochna、Sorghum drummondii、Sorghum durra、Sorghum guineense、Sorghum lanceolatum、Sorghum nervosum、Sorghum saccharatum、Sorghum subglabrescens、Sorghum verticilliflorum、Sorghum vulgare、Holcus halepensis、Sorghum miliaceum、Panicum militaceum[ミレット]、Oryza sativa、Oryza latifolia [イネ]、Zea mays[トウモロコシ]、Triticum aestivum、Triticum durum、Triticum turgidum、Triticum hybernum、Triticum macha、Triticum sativumもしくはTriticum vulgare[コムギ]、チノリモ科(Porphyridiaceae)、例えばクロテス属(Chroothece)、フリンチエラ属(Flintiella)、ペトロバネラ属(Petrovanella)、チノリモ属(Porphyridium)、ロデラ属(Rhodella)、ロドソラス属(Rhodosorus)、バンホエフェニア属(Vanhoeffenia)、例えば属および種Porphyridium cruentum、ヤマモガシ科(Proteaceae)、例えばマカデミア属(Macadamia)、例えば属および種Macadamia intergrifolia[マカデミア]、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、例えば、ネフロセルミス属(Nephroselmis)、プラシノコッカス属(Prasinococcus)、シェルフェリア属(Scherffelia)、テトラセルミス属(Tetraselmis)、マントニエラ属(Mantoniella)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、例えば、属および種Nephroselmis olivacea、Prasinococcus capsulatus、Scherffelia dubia、Tetraselmis chui、Tetraselmis suecica、Mantoniella squamata、Ostreococcus tauri、アカネ科(Rubiaceae)、例えばコーヒーノキ属(Coffea)、例えば属および種Coffea spp.、Coffea arabica、Coffea canephoraもしくはCoffea liberica [コーヒー]、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、例えば、モウズイカ属(Verbascum)、例えば属および種Verbascum blattaria、Verbascum chaixii、Verbascum densiflorum、Verbascum lagurus、Verbascum longifolium、Verbascum lychnitis、Verbascum nigrum、Verbascum olympicum、Verbascum phlomoides、Verbascum phoenicum、Verbascum pulverulentumもしくはVerbascum thapsus[ビロードモウズイカ]、ナス科(Solanaceae)、例えばトウガラシ属(Capsicum)、タバコ属(Nicotiana)、ナス属(Solanum)、トマト属(Lycopersicon)、例えば属および種Capsicum annuum、Capsicum annuum var. glabriusculum、Capsicum frutescens[コショウ]、Capsicum annuum[パプリカ]、Nicotiana tabacum、Nicotiana alata、Nicotiana attenuata、Nicotiana glauca、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana rustica、Nicotiana sylvestris[タバコ]、Solanum tuberosum[ジャガイモ]、Solanum melongena[ナス]、Lycopersicon esculentum、Lycopersicon lycopersicum、Lycopersicon pyriforme、Solanum integrifoliumもしくはSolanum lycopersicum[トマト]、アオギリ科(Sterculiaceae)、例えばカカオ属(Theobroma)、例えば属および種 Theobroma cacao[カカオ]またはツバキ科(Theaceae)、例えばツバキ属(Camellia)、例えば属および種Camellia sinensis[茶]からなる群より選択される植物である。本発明に従ってトランスジェニック植物として用いられる特に好ましい植物は、大量の脂質化合物を含む油果実作物、例えば、ラッカセイ、菜種、キャノーラ、ヒマワリ、紅花、ケシ、カラシ、麻、ヒマシ油植物、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、月見草、ビロードモウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、月桂樹、カボチャ、亜麻仁、大豆、ピスタチオ、ルリヂサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ、クルミ)または作物、例えば、トウモロコシ、小麦、ライ麦、オート麦、ライ小麦、コメ、大麦、綿、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマトなどのナス科植物、ソラマメ種、エンドウ豆、アルファルファもしくは低木(コーヒー、カカオ、茶)、ヤナギ種、ならびに多年草および飼料作物である。本発明に従う好ましい植物は、ピーナッツ、菜種、キャノーラ、ヒマワリ、紅花、ケシ、カラシ、麻、ヒマシ油植物、オリーブ、キンセンカ、ザクロ、月見草、カボチャ、亜麻仁、大豆、ルリヂサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ)である。特に好ましいのは、ヒマワリ、紅花、タバコ、ビロードモウズイカ、ゴマ、綿、カボチャ、ケシ、月見草、クルミ、亜麻仁、麻、アザミまたは紅花である。非常に特に好ましい植物は、紅花、ヒマワリ、ケシ、月見草、クルミ、亜麻仁、または麻などの植物である。
【0083】
好ましい蘚類は、PhyscomitrellaまたはCeratodonである。好ましい藻類は、Isochrysis、Mantoniella、Ostreococcus)もしくはCrypthecodinium、およびPhaeodactylumもしくはThraustochytriumなどの藻類/珪藻である。より好ましくは、前記藻類または蘚類は、Emiliana、Shewanella、Physcomitrella、Thraustochytrium、Fusarium、Phytophthora、Ceratodon、Isochrysis、Aleurita、Muscarioides、Mortierella、Phaeodactylum、Cryphthecodinium、特に、属および種Thallasiosira pseudonona、Euglena gracilis、Physcomitrella patens、Phytophtora infestans、Fusarium graminaeum、Cryptocodinium cohnii、Ceratodon purpureus、Isochrysis galbana、Aleurita farinosa、Thraustochytrium sp.、Muscarioides viallii、Mortierella alpina、Phaeodactylum tricornutumまたはCaenorhabditis elegansまたはとりわけ有利なものは、Phytophtora infestans、Thallasiosira pseudononaおよびCryptocodinium cohniiからなる群より選択される。
【0084】
トランスジェニック植物は本明細書の随所に記載の形質転換技法により得ることができる。好ましくは、トランスジェニック植物はT-DNAを介する形質転換によって得ることができる。かかるベクター系は、一般に、それらがアグロバクテリウムを介する形質転換に必要とされる少なくともvir遺伝子と、T-DNAを区切る配列(T-DNAボーダー)とを含むことを特徴とする。好適なベクターは、本明細書の随所に詳細に記載されている。
【0085】
また、本発明に包含されているのは、本発明のベクターまたはポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物である。本発明で想定している好ましい非ヒトトランスジェニック動物は魚類、例えば、ニシン、サケ、イワシ、レッドフィッシュ、ウナギ、コイ、マス、オヒョウ、サバ、ザンダーまたはマグロである。
【0086】
しかし、上記の非ヒトトランスジェニック生物に応じて、さらに酵素活性を前記生物に、例えば、組換え技法により与えうることは理解されるであろう。従って、本発明は、好ましくは、上記の非ヒトトランスジェニック生物は本発明のポリヌクレオチドに加えて、選択された宿主細胞に応じて必要とされるデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを含むと想定している。生物中に存在すべきデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼは、デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ、または特に本明細書の随所に記載の組み合わせの群から選択される少なくとも1つの酵素である(表3、4および5を参照されたい)。
【0087】
さらに、本発明は、多価不飽和脂肪酸を製造する方法であって、
a)前記宿主細胞中の多価不飽和脂肪酸の生産を可能にする条件のもとで本発明の宿主細胞を培養するステップ;
b)前記宿主細胞から前記多価不飽和脂肪酸を得るステップ
を含む前記方法を包含する。
【0088】
本明細書で使用する用語「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」は、少なくとも2、好ましくは、3、4、5または6つの二重結合を含む脂肪酸を言及する。さらに、理解すべきことは、かかる脂肪酸は、脂肪酸鎖に好ましくは18〜24個の炭素原子を含むことである。より好ましくは、この用語は脂肪酸鎖に好ましくは20〜24個の炭素原子を有する長鎖PUFA(LCPUFA)に関する。本発明の意味における好ましい 不飽和脂肪酸は、DGLA 20:3(8,11,14)、ARA 20:4(5,8,11,14)、iARA 20:4(8,11,14,17)、EPA 20:5(5,8,11,14,17)、DPA 22:5(4,7,10,13,16)、DHA 22:6(4,7,10,13,16,19)、20:4(8,11,14,17)、より好ましくは、アラキドン酸(ARA)20:4(5,8,11,14)、エイコサペンタエン酸(EPA)20:5(5,8,11,14,17)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)22:6(4,7,10,13,16,19)からなる群より選択される。従って、最も好ましくは、本発明により提供される方法はARA、EPAまたはDHAの製造に関することが理解されるであろう。さらにまた、合成中に生じるLCPUFAの中間体が包含される。かかる中間体は、好ましくは、基質から本発明のポリペプチドのデサチュラーゼまたはエロンガーゼによって形成される。好ましくは、基質は、LA 18:2(9,12)、ALA 18:3(9,12,15)、エイコサジエン酸20:2(11,14)、エイコサトリエン酸20:3(11,14,17))、DGLA 20:3(8,11,14)、ARA 20:4(5,8,11,14)、エイコサテトラエン酸20:4(8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸20:5(5,8,11,14,17)、ドコサヘキサペンタン酸22:5(7,10,13,16,19)を包含する。
【0089】
本明細書で使用する用語「培養する」は宿主細胞を、細胞が前記多価不飽和脂肪酸、すなわち、先に言及したPUFAおよび/またはLCPUFAを生産することが可能な培養条件のもとに維持しかつ増殖することを意味する。これは本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞中に発現させて、デサチュラーゼおよびエロンガーゼ活性を存在させることを意味する。宿主細胞を培養するための好適な培養条件を以下に詳しく記載する。
【0090】
本明細書で使用する用語「取得する」は、宿主細胞および培地を含む細胞培養物の提供ならびに、遊離した、または膜リン脂質として-CoA結合した形で、またはトリアシルグリセリドエステルとして、多価不飽和脂肪酸、好ましくは、ARA、EPA、DHA、を含む、精製されたまたは部分的に精製された調製物の提供を包含する。より好ましくは、PUFAおよびLCPUFをトリグリセリドエステルとして、例えば、油の形で得ることである。精製技法のより詳細は、以下の本明細書の随所で見出すことができる。
【0091】
本発明の方法で使用する宿主細胞は当業者の手慣れた方式で宿主生物に応じて増殖または培養される。通常、宿主細胞を液培地(通常、糖類の形態の炭素源、通常、酵母抽出物などの有機窒素源の形態の窒素源、鉄、マンガンおよびマグネシウムの塩などの痕跡量の元素、および、適宜、ビタミンを含む)中で、0〜100℃、好ましくは10〜60℃の温度にて、生物のタイプに応じて、酸素または嫌気性雰囲気のもとで増殖する。液培地のpHは培養期間中、一定に、すなわち、調節して保ってもまたは保たなくてもよい。培養物は回分式で、半回分式でまたは連続的に増殖してもよい。栄養分を、発酵の最初にまたは半連続的にまたは連続的に与えてもよい。生産したPUFAまたはLCPUFAは、上記のように、当業者に公知のプロセスにより、例えば、抽出、蒸留、晶出、適宜、塩による沈降、および/またはクロマトグラフィにより、宿主細胞から単離することができる。精製前に宿主細胞を破壊する必要がありうる。このために、宿主細胞を予め破壊してもよい。使用する培地は問題の宿主細胞の要件に好適に適合しなければならない。本発明による宿主細胞として利用できる様々な微生物用の培地は、教科書"Manual of Method for General Bacteriology"(the American Society for Bacteriology, Washington D.C.、USA、1981)に記載されている。培地はまた、様々な商業的供給者から得ることができる。全ての培地成分を熱または濾過により滅菌する。全ての培地成分を培養の出発時に存在させてもよく、または連続的にもしくは回分式で所望のように加えてもよい。もし宿主細胞に導入する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターがさらに発現しうる選択マーカー、例えば抗生物質耐性遺伝子を含むのであれば、培地に選択剤、例えば抗生物質を加えて導入するポリヌクレオチドの安定性を維持する必要がありうる。培養を、所望の産物の形成が最大になるまで続ける。これは通常10〜160時間内に達成される。発酵ブロスを直接用いてもよくまたはさらに処理してもよい。バイオマスは、必要に応じて、分離方法、例えば、遠心分離、濾過、デカントまたはこれらの方法の組み合わせにより、完全にまたは部分的に発酵ブロスから除去してもよい。本発明の方法により得られる脂肪酸調製物、例えば、所望のPUFAまたはLCPUFAをトリグリセリドエステルとして含む油も、さらなる目的の産物の化学合成用出発材料として好適である。例えば、これらをお互いに組み合わせてまたは単独で、医薬品または化粧組成物、食品、または動物飼料の調製用に用いることができる。所望のPUFAまたはLCPUFAを含む化学的に純粋なトリグリセリドも上記の方法により製造することができる。この目的のためには、脂肪酸調製物をさらに、抽出、蒸留、晶出、クロマトグラフィまたはこれらの方法の組み合わせにより調製する。リグリセリドから脂肪酸部分を遊離させるために、加水分解が必要な場合もある。前記の化学的に純粋なトリグリセリドまたは遊離脂肪酸は、特に、食品産業向けまたは化粧および薬用組成物向けの応用に好適である。
【0092】
さらに、本発明は多価不飽和脂肪酸を製造する方法であって、
a)本発明の非ヒトトランスジェニック生物を、前記非ヒトトランスジェニック生物中で多価不飽和脂肪酸の生産を可能にする条件下で栽培するステップ;および
b)前記多価不飽和脂肪酸を、前記非ヒトトランスジェニック生物から取得するステップ
を含むものである前記方法に関する。
【0093】
さらに、上記方法に続いて、油、脂質または脂肪酸組成物を製造する方法であって、上記方法のいずれか1つのステップおよびPUFAもしくはLCPUFAを油、脂質または脂肪酸組成物として処方するさらなるステップを含むものである前記方法も本発明により想定される。好ましくは、前記の油、脂質または脂肪酸組成物は飼料、食品、化粧品または医薬品として使用される。従って、PUFAまたはLCPUFAの処方は、個々の想定される産物に対するGMP標準によって行わなければならない。例えば、油は植物種子からオイルミルにより得ることができる。しかし、製品安全の理由で、適用可能なGMP標準下では滅菌を要求されうる。同様な標準は化粧品または医薬品組成物に応用する脂質または脂肪酸組成物に適用されうる。製品として油、脂質または脂肪酸組成物を処方するための全てのこれらの対策は上述の製造者に受け入れられている。
【0094】
用語「油」は、トリグリセリドにエステル化された不飽和および/または 飽和 脂肪酸を含む脂肪酸混合物を意味する。好ましくは、本発明の油中のトリグリセリドは先に言及したPUFAまたはLCPUFAを含む。エステル化されたPUFAおよび/またはLCPUFAの量は好ましくは、およそ30%であり、50%の含量がより好ましく、60%、70%、80%またはそれ以上の含量がさらにより好ましい。油はさらに遊離した脂肪酸、好ましくは、先に言及したPUFAおよびLCPUFAを含みうる。分析については、脂肪酸含量は、例えば、脂肪酸をトランスエステル化によりメチルエステルに転化した後にGC分析により測定することができる。油および脂肪中の様々な脂肪酸の含量は、特に供給源に応じて変化しうる。油はしかし、PUFAおよび/またはLCPUFA組成および含量については非天然組成を有するであろう。油のトリグリセリド中のかかるユニークな油組成およびPUFAおよびLCPUFAのユニークなエステル化パターンは、上記の本発明の方法を適用することによってのみ得られるであろうことは理解されよう。さらに、本発明の油は他の分子種も含みうる。具体的には、前記油は本発明のポリヌクレオチドもしくはベクターの小量の不純物を含みうる。かかる不純物はしかし、高感度の技法、例えばPCRなどによってのみ検出することができる。
【0095】
他の実施形態は、先に定義したNEENAを含むポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドをNEENAと共に含む組換えベクターの、定義した多価不飽和脂肪酸生合成経路の少なくとも1つの酵素の発現を増強するための、植物またはその部分における使用であり、より好ましい実施形態においては、先に定義したNEENAを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをNEENAと共に含む組換えベクターを、多価不飽和脂肪酸生合成経路の少なくとも1つの酵素の発現を増強するために植物種子において使用する。
【0096】
他の好ましい実施形態は、宿主細胞または宿主細胞培養物の、または先に記載したトランスジェニック非ヒト生物または植物から誘導された非ヒトトランスジェニック生物、トランスジェニック植物、植物部分または植物種子の、食品、動物飼料、種子、医薬品またはファインケミカルを生産するための使用である。
【0097】
定義
略語は次の通りである:NEENA、核酸発現増強性核酸;GFP、緑色蛍光タンパク質;GUS、β-グルクロニダーゼ;BAP、6-ベンジルアミノプリン;2,4-D、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸;MS、MurashigeおよびSkoog培地; Kan、カナマイシン硫酸塩;GA3、ジベレリン酸; microl、マイクロリットル。
【0098】
理解すべきこととして、本発明は特別な手法またはプロトコルに限定されるものでない。理解すべきこととしてまた、本明細書で使用する用語法は特別な実施形態を記載することだけを目的とし、添付した請求の範囲が限定しうる本発明の範囲を限定することを意図しない。注意しなければならないこととして、本明細書および添付した請求の範囲における使用で、単数形の冠詞「a」「an」および「the」は、文脈が明確に断らない限り、複数の言及を含むものである。従って、例えば、「a」ベクターは1以上のベクターへの言及であり、当業者に公知のその等価物などを含むものである。本明細書で使用する用語「約」は、およそ、大雑把に、大体、またはその範囲のを意味する。用語「約」を数字の範囲と共に用いる場合、この用語は記載した数値の上限および下限の境界を拡げることにより範囲を改変する。一般に、本明細書では用語「約」を用いて、記載した値の上限および下限の数値を20%、好ましくは10%上方もしくは下方(高いもしくは低い)の分散をもつ値に改変する。本明細書で使用する用語「または」は特別なリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含むものである。用語「含むものである(compriseとその変化形)」「含む(includeとその変化形)」は、本明細書および以下の請求の範囲で使用する場合、1以上の記載した特徴、整数、成分、またはステップの存在を説明することを意図するが、これらの用語は他の特徴、整数、成分、またはステップ、またはその群の存在もしくは付加を排除するものではない。明確にするために述べると、本明細書に使用するある特定の用語は次の通り定義されかつ使用される。
【0099】
アンチパラレル:ここで「アンチパラレル」は、5'-3'方向に走る1つのヌクレオチド配列と3'-5'方向に走る他のヌクレオチド配列との、リン酸ジエステル結合をもつ相補性塩基残基の間の水素結合を介して対合した2つのヌクレオチド配列を意味する。
【0100】
アンチセンス:用語「アンチセンス」は、転写または機能のためのその通常の配向に対して反転していて、そのために、宿主細胞内で発現される標的遺伝子mRNA分子と相補的であるRNA転写物を発現する(例えば、これは標的遺伝子mRNA分子または1本鎖ゲノムDNAとワットソン-クリック塩基対合を介してハイブリダイズすることができる)か、または標的DNA分子、例えば、宿主細胞に存在するゲノムDNAと相補的であるヌクレオチド配列を意味する。
【0101】
コード領域:本発明で使用する用語「コード領域」は、構造遺伝子を言及して用いる場合、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチドに見出されるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を意味する。コード領域は、真核生物においては、5'側にヌクレオチドトリプレット「ATG」(イニシエーターのメチオニンをコードする)および3'側に停止コドンを表す3つのトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)の1つが結合されている。イントロンを含有するだけでなく、遺伝子のゲノム形態はまた、RNA転写物に存在する配列の5'と3'末端の両方に位置する配列も含みうる。これらの配列は、「隣接する(flanking)」配列または領域と呼ばれる(これらの隣接する領域はmRNA転写物に存在する非翻訳配列に対して5'もしくは3'に位置する)。5'に隣接する領域は、調節配列、例えば、遺伝子の転写を制御または影響するプロモーターおよびエンハンサーを含有しうる。3'に隣接する領域は、転写の終結、転写後の切断およびポリアデニル化を指令する配列を含有しうる。
【0102】
相補性:「相補的」または「相補性」は、アンチパラレルなヌクレオチド配列が相補的塩基残基間で水素結合を形成すると(塩基対合規則により)お互いに対合することができるアンチパラレルなヌクレオチド配列を含むものである、2つのヌクレオチド配列を意味する。例えば、配列 5'-AGT-3'は配列 5'-ACT-3'と相補的である。相補性は「部分的」であってもまたは「全体」であってもよい。「部分的」相補性は、1以上の核酸塩基が塩基対合規則によってマッチしない場合である。「全体」または「完全」相補性は、それぞれおよび全ての核酸塩基が他の塩基と、塩基対合規則のもとでマッチする場合である。核酸分子鎖間の相補性の程度は、核酸分子鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強度に有意な効果を有する。本明細書で使用する核酸配列の「相補配列」は、その核酸分子が核酸配列の核酸分子に対して全体相補性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0103】
2本鎖RNA:「2本鎖 RNA」分子または「dsRNA」分子は、ヌクレオチド配列のセンスRNA断片とヌクレオチド配列のアンチセンスRNA断片を含むものであって、両方のRNA断片がお互いに相補的なヌクレオチド配列を含み、それにより、センスとアンチセンスRNA断片が対合して2本鎖RNA分子を形成することができる。
【0104】
内因性:「内因性」ヌクレオチド配列は、未翻訳の植物細胞のゲノム中に存在するヌクレオチド配列を意味する。
【0105】
発現の増強:植物細胞中の核酸分子の発現の「増強」または「増加」を本明細書では同じ意味で使用し、本発明の方法の適用後の植物、植物の部分または植物細胞における核酸分子の発現のレベルは、本発明の方法の適用前の植物、植物の部分または植物細胞におけるその発現のレベルよりまたは本発明の組換え核酸分子を欠く参照植物と比較して高いことを意味する。例えば、参照植物はそれぞれのNEENAを欠くだけである同じ構築物を含むものである。本明細書で使用する用語「増強」または「増加」は同義であり、ここでは発現すべき核酸分子のより高い、好ましくは有意により高い発現を意味する。本明細書で使用する、作用物質、例えばタンパク質、mRNAまたはRNAのレベルの「増強」または「増加」は、本発明の組換え核酸分子を欠く、例えば、本発明のNEENA分子、組換え構築物または組換えベクターを欠く、実質的に同一条件のもとで育てた実質的に同一の植物、植物の部分、または植物細胞と比較して、そのレベルが増加したことを意味する。本明細書で使用する、標的遺伝子により発現された作用物質、例えばpreRNA、mRNA、rRNA、tRNA、snoRNA、snRNAのおよび/またはそれがコードするタンパク質産物のレベルの「増強」または「増加」は、そのレベルが本発明の組換え核酸分子を欠く細胞または生物と比較して、50%以上、例えば100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、最も好ましくは20倍以上例えば50倍増加することを意味する。その増強または増加は、当業者になじみのある方法により測定することができる。従って、核酸またはタンパク質の量の増強または増加はタンパク質の免疫学的検出により測定することができる。さらに、タンパク質アッセイ、蛍光、ノーザンハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護アッセイ、逆転写(定量RT-PCR)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)または他のイムノアッセイおよび蛍光活性化細胞分析(FACS)などの技法を使って植物または植物細胞中の特定のタンパク質またはRNAを測定することができる。誘発されるタンパク質産物の型に応じて、生物または細胞の表現型に与えるその活性または効果を測定してもよい。タンパク質の量を測定する方法は当業者に公知である。記載しうる例には次のものがある:マイクロ-ビウレット法(Goa J (1953) Scand J Clin Lab Invest 5:218-222)、フォーリン-チオカルト法(Lowry OH ら (1951) J Biol Chem 193:265-275) または CBB G-250の吸収を測定する方法(Bradford MM (1976) Analyt Biochem 72:248-254)。タンパク質の活性を定量化する一例として、ルシフェラーゼ活性の検出を以下の実施例に記載した。
【0106】
発現:「発現」は細胞における、遺伝子産物の生合成、好ましくは、ヌクレオチド配列、例えば、内因性遺伝子または異種遺伝子の転写および翻訳を意味する。例えば、構造遺伝子の事例では、発現は構造遺伝子のmRNA中への転写および、場合によっては、引き続いてmRNAの1以上のポリペプチドへの翻訳に関わる。他の場合では、発現はRNA分子を保持するDNAの転写だけに関わりうる。
【0107】
発現構築物:本明細書で使用する「発現構築物」は、適当な植物の部分または植物細胞中の特別なヌクレオチド配列の発現を指令することができるDNA配列であって、目的のヌクレオチド配列と作動しうる形で連結された(場合によっては、終結シグナルと作動しうる形で連結された)、その中へ導入されるであろう前記植物の部分または植物細胞中で機能的なプロモーターを含む前記DNA配列を意味する。もし翻訳が必要であれば、発現構築物は典型的には、ヌクレオチド配列の適当な翻訳に必要な配列も含む。コード領域は目的のタンパク質をコードしうるがまた、目的の機能性RNA、例えばRNAa、siRNA、snoRNA、snRNA、マイクロRNA、ta-siRNAまたは任意の他の非コード調節性RNAをセンスまたはアンチセンス方向にコードしてもよい。目的のヌクレオチド配列を含む発現構築物はキメラ(1以上のその成分が1以上のその他の成分に対して異種であることを意味する)であってもよい。発現構築物はまた、天然であるが、異種発現にとって有用な組換え体の形態で得たものであってもよい。しかし典型的には、発現構築物は宿主に対して異種であり、すなわち、発現構築物の特別なDNA配列は宿主細胞で天然に生じるものでなく、宿主細胞中に宿主細胞の祖先中に形質転換事象によって導入されてなければならない。発現構築物中のヌクレオチド配列の発現は、種子特異的プロモーターまたは、宿主細胞をいくつかの特別な外界の刺激に曝したときにだけ転写を開始する誘導プロモーターの制御のもとで生じる。植物の事例では、プロモーターも特別な組織または器官または発生段階に特異的でありうる。
【0108】
外来:用語「外来」は、細胞のゲノム中に実験操作により導入されたいずれかの核酸分子(例えば、遺伝子配列)を意味し、導入された配列がいくつかの改変(例えば、点突然変異、選択マーカー遺伝子の存在など)を含有する限り、天然の配列とは異なる配列がその細胞中に見出される。
【0109】
機能的連結:用語「機能的連鎖」または「機能的連結」は、調節エレメント(例えば、プロモーター)の発現すべき核酸配列との、および、適宜、さらなる調節エレメント(例えば、ターミネーターまたはNEENAなど)との配列の配置であって、それぞれの調節エレメントがその意図する機能を完遂して前記核酸配列の発現を可能にし、改変し、促進しまたはさもなくば影響を与え得る前記配列の配置を意味すると理解される。同義語として、表現「作動しうる連鎖」または「作動しうる連結」を使用してもよい。発現は、核酸配列のセンスまたはアンチセンスRNAと関係した配置に依存してもたらされうる。この目的にとって、化学的意味の直接連結は必ずしも必要でない。例えば、エンハンサー配列などの遺伝子制御配列も、さらに離れた位置から、 または他のDNA分子からでも、標的配列に対するその機能を果たしうる。好ましい配置は、発現すべき核酸配列が組換えによってプロモーターとして作用する配列の後方に位置し、2つの配列がお互いに共有結合で連結される配置である。プロモーター配列と組換えで発現すべき核酸配列の間の距離は、好ましくは200塩基対未満、とりわけ好ましくは100塩基対未満、非常にとりわけ好ましくは50塩基対未満である。好ましい実施形態においては、転写開始が本発明のキメラRNAの所望の開始と同一であるように、転写すべき核酸配列をプロモーターの後ろに配置する。機能的連鎖、および発現構築物は、記載された通例の組換えおよびクローニング技法を用いて作製することができる(例えば、Maniatis T, Fritsch EF and Sambrook J (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (NY);Silhavy et al. (1984) Expeiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (NY);Ausubel et al., (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience;Gelvin et al., (Eds) (1990) Plant Molecular Biology Manual; Kluwer Academic Publisher, Dordrecht, The Netherlands)。しかし、例えば、制限酵素に対する特異的切断部位をもつリンカーとして、またはシグナルペプチドとして作用するさらなる配列も2つの配列の間に配置することができる。配列の挿入はまた、融合タンパク質の発現をもたらしうる。好ましくは、調節領域、例えばプロモーターおよび発現すべき核酸配列の連鎖から成る発現構築物をベクターに組込まれた形で存在させてもよく、例えば、形質転換により植物ゲノム中に挿入することができる。
【0110】
遺伝子:用語「遺伝子」は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチドまたは機能性RNA)の発現をいくつかの方式で調節することができる適当な調節配列と作動しうる形で接続された領域を意味する。遺伝子は、コード領域(オープンリードフレーム、ORF)に先行する(上流の)および後続する(下流の)DNAの非翻訳調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサーなど)ならびに、適用可能であれば、個々のコード領域(すなわち、液損)の間に介在配列(すなわち、イントロン)を含む。本明細書で使用する用語「構造遺伝子」は、mRNAに転写され、次いで特定のポリペプチドの特徴であるアミノ酸の配列に翻訳されるDNA配列を意味することを意図している。
【0111】
ゲノムとゲノムDNA:用語「ゲノム」または「ゲノムDNA」は、宿主生物の遺伝性の遺伝子情報を意味する。前記ゲノムDNAは核DNA(染色体DNAとも呼ばれる)を含むがまた、色素体(例えば、葉緑体)および他の細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)のDNAも含む。好ましくは、用語「ゲノム」または「ゲノムDNA」は核の染色体DNAを意味する。
【0112】
異種:核酸分子またはDNAに関する用語「異種」は、自然では作動しうる形で連結されてないまたは自然では異なる位置で作動しうる形で連結された第2の核酸分子と、作動しうる形で連結された、または作動しうる形で連結されるように遺伝子操作された核酸分子を意味する。核酸分子およびそれと連結された1以上の調節核酸分子(プロモーターまたは転写終結シグナルなど)を含む異種発現構築物は、例えば、実験遺伝子操作に由来する構築物であって、a)前記核酸分子、またはb)前記調節核酸分子、またはc)両方(すなわち(a)と(b))がその自然(生来)の遺伝環境に位置しないか、または、実験遺伝子操作により改変されている(改変の例は1以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、反転または挿入である)前記構築物である。
【0113】
自然の遺伝環境は、起源の生物における自然の染色体遺伝子座、またはゲノムライブラリー中の存在を意味する。ゲノムライブラリーの場合、核酸分子の配列の自然の遺伝環境は好ましくは、少なくとも部分において保持される。前記環境は核酸配列に少なくとも1つの側において隣接し、そして少なくとも50bp、好ましくは少なくとも500bp、とりわけ好ましくは少なくとも1,000bp、非常にとりわけ好ましくは少なくとも5,000bpの長さの配列を有する。天然の発現構築物(例えば、プロモーターの対応する遺伝子との天然の組み合わせ)は、非自然、合成の「人工的」方法、例えば変異誘発により改変されると、トランスジェニック発現構築物になる。かかる方法は記載されている(US 5,565,350;WO 00/15815)。例えば、この分子の生来のプロモーターでないプロモーターと作動しうる形で連結されたタンパク質をコードする核酸分子は、プロモーターについて異種であるとみなされる。好ましくは、それを導入した細胞に対して内因性でないかまたは自然で随伴しないが、他の細胞から得られたかまたは合成された異種DNAは内因性でない。異種DNAはまた、内因性DNA配列のいくつかの改変、非天然、多コピーを含有する内因性DNA配列、それに物理的に連結された他のDNA配列を自然で随伴しないDNA配列を含む。一般に、必ずではないが、異種DNAはそれが発現される細胞により通常産生されないRNAまたはタンパク質をコードする。
【0114】
高発現性種子特異的プロモーター:本明細書で使用する「高発現性種子特異的プロモーター」は、植物またはその部分における種子特異的または種子選好的発現を引き起こすプロモーターであって、それぞれのプロモーターの制御下の核酸分子由来のRNAの蓄積または合成速度またはRNAの安定性が、本発明のNEENAを欠くプロモーターにより引き起こされる発現より高い、好ましくは、有意に高い前記プロモーターを意味する。好ましくは、RNAの量および/またはRNA合成の速度および/またはRNAの安定性が、本発明のNEENAを欠く種子特異的または種子選好的プロモーターと比較して、50%以上,例えば100%以上,好ましくは200%以上,より好ましくは5倍以上,さらにより好ましくは10倍以上,最も好ましくは20倍以上例えば50倍増加する。
【0115】
ハイブリダイゼーション:本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は「核酸分子の1つの鎖が塩基対合を介して相補鎖に参加する任意のプロセス」を含む(J. Coombs (1994) Dictionary of Biotechnology, Stockton Press, New York)。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸分子間の連合の強度)は、核酸分子間の相補性の程度、関わる条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、および核酸分子内のG:C比などの因子の影響を受ける。本明細書で使用する用語「Tm」は「融点」の意味で使用される。融点は2本鎖の核酸分子が半分に解離して1本鎖になる温度である。核酸分子のTmを計算する式は当技術分野において周知である。標準の参考文献に示されるように、核酸分子が1M NaClの水溶液中に含まれる場合、Tm値の単純な計算は式:Tm=81.5+0.41(% G+C)により計算することができる[例えば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照]。他の参考文献は、構造ならびに配列の特徴を考慮に入れてTmを計算するさらに複雑な計算を含む。厳密な条件は、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0116】
「同一性」:「同一性」は、2以上の核酸またはアミノ酸分子の比較について使用する場合、前記分子がある特定の程度の配列類似性を共有し、配列が部分的に同一であることを意味する。
【0117】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸分子のパーセント同一性(本明細書では相同性を互換的に使用する)を決定するために、配列の1つを他の配列の下に書いて最適な比較を行う(例えば、ギャップを1つのタンパク質の配列中に挿入し、他のタンパク質または他の核酸と最適なアラインメントを作り出すことができる)。
【0118】
対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基または核酸分子を次いで比較する。もし1つの配列の1つの位置が他配列の対応する位置と同じアミノ酸残基または同じ核酸分子により占められていれば、その分子はこの位置において相同性である(すなわち、本明細書の文脈で使用するアミノ酸または核酸「相同性」はアミノ酸または核酸「同一性」に対応する)。2つの配列間のパーセント相同性は、配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の全数)である。用語「相同性」および「同一性」は従って、同義語と考えるべきである。
【0119】
2以上のアミノ酸または2以上のヌクレオチド配列のパーセント同一性 を確認するために、いくつかのコンピューターソフトウエアプログラムが開発されている。2以上配列の同一性は、例えば、ソフトウエアfastaを用いて計算することができ、これは現在バージョンfasta 3が使用されている(W. R. Pearson and D. J. Lipman, PNAS 85, 2444(1988);W. R. Pearson, Methods in Enzymology 183, 63 (1990);W. R. Pearson and D. J. Lipman, PNAS 85, 2444 (1988);W. R. Pearson, Enzymology 183, 63 (1990))。異なる配列の同一性を計算する他の有用なプログラムは標準blastプログラムであって、これはBiomax pedantソフトウエアに含まれている(Biomax、Munich、Federal Republic of Germany)。このソフトウエアは残念ながら、 blastが主題およびクエリの完全な配列を常に含まないので、最適性の劣る結果をもたらすことがある。それにも関わらず、このプログラムは非常に効率的であるので、膨大な数の配列を比較するために用いることができる。以下の設定は、配列のかかる比較のための典型的なものである。
【0120】
イントロン:イントロンは、その遺伝子が産生するタンパク質の部分をコードせず、細胞核からエキスポートされる前に、遺伝子から転写されるmRNAからスプライシングで取除かれる遺伝子内のDNAのセクション(介在配列)を意味する。イントロン配列はイントロンの核酸配列を意味する。従って、イントロンは、コード配列(エキソン)と共に転写されるが、成熟mRNAの形成中に取り除かれるDNA配列の領域である。イントロンは実コード領域内にまたはプレmRNA(未スプライシングmRNA)の5'もしくは3'非翻訳リーダー内に位置しうる。一次転写物中のイントロンは切除され、コード配列は同時にかつ正確にライゲートされて成熟RNAを形成する。イントロンとエキソンの接合部がスプライス部位を形成する。イントロンの配列はGUで始まりかつAGで終わる。さらに、植物においては、2例のAU-AC イントロンが記載されている;シロイヌナズナ由来のRecA様タンパク質遺伝子の第14番目イントロンおよびG5遺伝子の第7イントロンはAT-ACイントロンである。イントロンを含有するプレmRNAは、(他の配列に加えて)正確にスプライスされるイントロンにとって必須である3つの短い配列を有する。これらの配列は5'スプライス位置、3'スプライス部位、および分岐点である。mRNAスプライシングは一次mRNA転写物中に存在する介在配列(イントロン)の除去およびエキソン配列の接続またはライゲーションである。これはまた、介在配列(イントロン)の除去と共に同じmRNA上の2つのエキソンを接続するcis-スプライシングとして公知である。イントロンの機能性エレメントは、スプライセソーム(例えば、イントロンの末端のスプライシングコンセンサス配列)の特異的タンパク質成分により認識されかつ結合される配列を含んでいる。機能性エレメントのスプライセオソームとの相互作用によって、成熟前mRNAからのイントロン配列の除去とエキソン配列の再接続がもたらされる。イントロンは3つの短い配列を有し、これらは、イントロンが正確にスプライスされるために(十分ではないが)必須である。これらの配列は、5'スプライス部位、3'スプライス部位および分岐点である。分岐点配列は植物におけるスプライシングおよびスプライス部位選択において重要である。分岐点配列は通常、3'スプライス部位の10〜60ヌクレオチド上流に位置する。
【0121】
単離された:本明細書で使用する用語「単離された」は、材料が人手により取り出されていて、その元来の、生来の環境から離れて存在し、それ故に自然の産物でないことを意味する。単離された材料または分子(DNA分子または酵素など)は精製された形態で存在しうるしまたは例えば、トランスジェニック宿主細胞などの非生来の環境で存在しうる。例えば、生存植物中に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されてないが、自然の系で共存する材料のいくつかのまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。かかるポリヌクレオチドはベクターの部分でありうるしおよび/またはかかるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の部分でありうるのであって、かかるベクターまたは組成物が元来の環境の部分でないという点では単離されているであろう。好ましくは、核酸分子に関係して、「単離された核酸配列」のように使用される場合の「単離された」は、同定され、自然源で元来随伴している少なくとも1つの夾雑核酸分子から分離された核酸配列を意味する。単離された核酸分子は、自然で見出されるのとは異なる形態または設定で存在する核酸分子である。対照的に、単離されてない核酸分子は、それらが自然で存在する状態で見出されたDNAおよびRNAなどの核酸分子である。例えば、所与のDNA配列(例えば、遺伝子)は宿主細胞染色体において、隣接する遺伝子の近位で見出され;RNA配列、例えば、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列は細胞において、多数のタンパク質をコードする数多くの他のmRNAとの混合物として見出される。しかし、例えば配列番号1を含む単離された核酸配列は、例として挙げれば、配列番号1を通常含有する細胞中のかかる核酸配列であって、その核酸配列が自然の細胞とは異なる染色体もしくは染色体外の位置にあるか、または、さもなくば、自然に見出されるのとは異なる核酸配列が隣接する前記核酸配列を含むものである。単離された核酸配列は1本鎖または2本鎖の形態で存在しうる。単離された核酸配列をタンパク質を発現するために利用する場合、その核酸配列は最小限、少なくともセンスまたはコード鎖の部分を含有してもよい(すなわち、核酸配列は1本鎖であってもよい)。あるいは、センスとアンチセンス鎖の両方を含有してもよい(すなわち、核酸配列は2本鎖であってもよい)。
【0122】
最小プロモーター:不活性であるかまたは非常に弱いプロモーター活性を有し、上流活性化が存在しないプロモーターエレメント、特にTATAエレメント。好適な転写因子が存在すると、最小プロモーターは転写を認める機能を果たす。
【0123】
NEENA:「核酸発現増強性核酸」を参照されたい。
【0124】
核酸発現増強性核酸(NEENA):用語「核酸発現増強性核酸」は、NEENAが機能的に連結されたプロモーターの制御下の核酸の発現を増強する内因性の特性を有する特定の配列の配列および/または核酸分子を意味する。プロモーター配列と異なり、NEENAの類は発現を駆動することはできない。NEENAと機能的に連結された核酸分子の発現を増強する機能を遂行するために、NEENA自体がプロモーターと機能的に連結されていなければならない。当技術分野で公知のエンハンサー配列とは対照的に、NEENAはin cisで作用するが、in transでは作用しないし、発現される核酸の転写出発部位に近接して位置しなければならない。
【0125】
核酸およびヌクレオチド:用語「核酸」および「ヌクレオチド」は天然または合成または人工の核酸またはヌクレオチドを意味する。用語「核酸」および「ヌクレオチド」はデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたは任意のヌクレオチド類似体およびポリマーまたはそれらのハイブリッドを、1本鎖もしくは2本鎖のセンスもしくはアンチセンス型で含む。特に断らない限り、特別な核酸配列はまた、暗黙のうちに保存して改変されたそれらの変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明確に示した配列を包含する。用語「核酸」は、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」と本明細書では互換的に使用される。ヌクレオチド類似体は、塩基、糖および/またはリン酸塩の化学構造に改変を有するヌクレオチドを含み、前記改変には、限定されるものでないが、5-位置ピリミジン改変、8-位置プリン改変、シトシン環外アミン類における改変、5-ブロモ-ウラシルの置換など;および限定されるものでないが、2'-位置糖改変(2'-OHがH、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCNから選択される群により置換された糖改変を含む)されたリボヌクレオチドが含まれる。ショートヘアピンRNA(shRNA)はまた、非自然エレメント、例えば、非自然塩基、例えばイオノシンおよびキサンチン、非自然糖類、例えば2'-メトキシリボース、または非自然リン酸ジエステル連鎖、例えばホスホン酸メチル、ホスホロチオアートおよびペプチドを含みうる。
【0126】
核酸配列:表現「核酸配列」は、5'から3'末端へ読まれたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の1本鎖または2本鎖のポリマーを意味する。核酸配列は染色体のDNA、自己複製プラスミド、DNAまたはRNAの感染性ポリマーおよび主に構造的役割を果たすDNAまたはRNAを含む。「核酸配列」はまた、ヌクレオチドを表す略語、文字、記号または言語の継続的列挙を意味する。一実施形態において、核酸は長さが通常100ヌクレオチド未満の比較的短い核酸である「プローブ」であってもよい。核酸プローブは長さが約50ヌクレオチド〜長さが約10ヌクレオチドであることが多い。核酸の「標的領域」は目的のものであると同定された核酸の一部分である。
【0127】
オリゴヌクレオチド:用語「オリゴヌクレオチド」はリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの擬似体のオリゴマーまたはポリマー、ならびに同様に機能する非天然部分を有するオリゴヌクレオチドを意味する。かかる改変されたまたは置換されたオリゴヌクレオチドは、所望の特性、例えば、細胞取込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強およびヌクレアーゼの存在のもとでの安定性の故に、しばしば、生来の型よりも好ましい。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、連鎖(例えば、リン酸ジエステル)または代わる連鎖によりお互いに共役結合された2以上のヌクレオモノマーを含む。
【0128】
植物:植物は一般に、光合成の能力があるいずれかの真核生物の単または多細胞生物またはその細胞、組織、器官、部分または繁殖材料(例えば、種子または果実)を意味すると理解される。本発明の目的に含まれるのは、高等および下等植物の全ての属および種である。一年生、多年生、単子葉および双子葉植物が好ましい。この用語は、成熟植物、種子、シュートおよび実生およびそれらの誘導された部分、繁殖材料(種子または小胞子など)、植物器官、組織、プロトプラスト、カルスおよび他の培養、例えば細胞培養、および機能または構造単位を与える植物細胞分類のいずれか他の型を含む。成熟植物は実生の段階後の任意の所望の発生段階の植物を意味する。実生は、初期の発生段階の若い未成熟植物を意味する。一年生、多年生、単子葉および双子葉植物はトランスジェニック植物を作製するための好ましい宿主生物である。遺伝子の発現はさらに全ての観賞植物、有用または観賞用植物樹木、花、切り花、低木または芝生において有利である。例として挙げられる植物は、限定されるものでないが、被子植物、コケ植物、例えば、苔類(ゼニゴケ)および蘚類(藻類);
シダ植物、例えば、シダ類、トクサ類およびヒカゲノカズラ類;裸子植物、例えば、針葉樹類、ソテツ類、イチョウ類およびグネツム類;藻類、例えば、緑藻綱、褐藻網、紅藻網、藍藻網、黄緑藻綱、珪藻綱(珪藻)、およびミドリムシ綱である。好ましいのは、食品または飼料に用いられる植物であり、例えば、マメ科、例えば、エンドウマメ、アルファルファおよびダイズ;イネ科、例えば、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、モロコシ、ミレット、ライムギ、ライコムギ、またはオート麦;セリ科、とりわけ、Daucus属、特にとりわけcarota種(ニンジン)およびApium属、特にとりわけGraveolensdulce種(セロリ)その他の多くの種;ナス科、とりわけLycopersicon属、特にとりわけesculentum種(トマト)およびナス属、特にとりわけtuberosum種(ジャガイモ)およびmelongena種(ナス)、その他の多くの種(タバコなど);およびCapsicum属、特にとりわけannuum種(コショウ)その他の多くの種;マメ科、とりわけGlycine属、特にとりわけmax種(ダイズ)、アルファルファ、エンドウマメ、ムラサキウマゴヤシ、マメまたはピーナッツおよびその他の多くの種; および十字花科(アブラナ科)、とりわけBrassica属、特にとりわけnapus種(ナタネ)、campestris種(ビート)、oleracea cv Tastie(キャベツ)、oleracea cv SnowballY(カリフラワー)およびoleracea cv Emperor(ブロッコリー);およびArabidopsis属、特にとりわけthaliana種(シロイヌナズナ)およびその他の多くの種;Compositae(キク)科、とりわけLactuca属、特にとりわけsativa種(レタス)およびその他の多くの種;Asteraceae(キク)科、例えば、ヒマワリ、マリーゴールド、レタスまたはCalendula種(ワタゲハナグルマ)およびその他の多くの種;ならびにウリ科、例えば、メロン、カボチャ/カボチャまたはズッキーニ、および亜麻仁である。さらなる好ましい植物は、ワタ、サトウキビ、アサ、亜麻、チリー、および様々な樹木、ナッツおよびワイン種である。
【0129】
ポリペプチド: 用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、「遺伝子産物」、「発現産物」および「タンパク質」は本明細書では互換的に使用されていて、連続するアミノ酸残基のポリマーまたはオリゴマーを意味する。
【0130】
一次転写物:本明細書で使用する用語「一次転写物」は遺伝子の未成熟RNA転写物を意味する。「一次転写物」は例えば、まだ、イントロンを含有し、および/またはなおpolyAテールまたはcap構造を含まず、および/またはトリミングまたはエディッティングなどの転写物としての正しい機能に必要な他の改変が行われてない。
【0131】
プロモーター:「プロモーター」または「プロモーター配列」は等価であり、本明細書で使用する場合、目的のヌクレオチド配列に連結されると目的のヌクレオチド配列のRNA中への転写を制御することができるDNA配列を意味する。かかるプロモーターは、例えば、次の公共データベースに見出すことができる:http://www.grassius.org/grasspromdb.html、http://mendel.cs.rhul.ac.uk/mendel.php?topic=plantprom、http://ppdb.gene.nagoya-u.ac.jp/cgi-bin/index.cgi。そこに掲げられたプロモーターは本発明の方法について呼び出すことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。プロモーターは、目的のヌクレオチド配列(mRNA中へのその転写を制御する)の転写出発部位の5'(すなわち、上流)の近位に位置し、そして転写開始のためのRNAポリメラーゼおよび他の転写因子による特異的結合のための部位を提供する。前記プロモーターは、例えば、転写出発部位に対して、例えば少なくとも10kb、例えば5kbまたは2kb近位にある。これはまた、転写出発部位に対して、少なくとも1500bp近位、好ましくは少なくとも1000bp、より好ましくは少なくとも500bp、さらにより好ましくは少なくとも400bp、少なくとも300bp、少なくとも200bpまたは少なくとも100bpにあってもよい。さらなる好ましい実施形態において、プロモーターは転写出発部位に対して、少なくとも50bp近位、例えば、少なくとも25bpであってもよい。プロモーターはエキソンおよび/またはイントロン領域または5'非翻訳領域を含まない。プロモーターはそれぞれの植物に対して異種または相同性であってもよい。ポリヌクレオチド配列は、もし外来種に由来するか、またはもし同じ種由来であってその元来の形態から改変されていれば、生物または第2のポリヌクレオチド配列に対して異種である。例えば、異種コード配列と作動しうる形で連結されたプロモーターという場合、そのコード配列は、そのプロモーターが由来する種と異なる種由来のコード配列、または、もし同じ種由来であれば、そのプロモーターに自然では随伴しないコード配列(例えば、遺伝子操作で作られたコード配列または異なるエコタイプもしくは変異体からの対立遺伝子)を意味する。好適なプロモーターは、発現が起こるべき宿主細胞の遺伝子からまたは宿主細胞に対する病原体(例えば、植物または植物ウイルスのような植物病原体)から誘導することができる。植物特異的プロモーターは植物中の発現を調節するのに好適なプロモーターである。これは植物からであってもよいが、植物病原体からであってもよくまたは人手により設計された合成プロモーターであってもよい。もしプロモーターが誘導プロモーターであれば、誘導剤に応答して転写速度が増加する。また、プロモーターを組織特異的または組織に好ましい方式で調節して、特定の組織型、例えば、葉、根または分裂組織の関係するコード領域を転写するのだけにまたは優性に活性があるようにすることができる。プロモーターに適用する用語「組織特異的」は、色々な型の組織(例えば、根)において同じ目的のヌクレオチド配列が発現しないのと比較して、特定の型の組織(例えば、花弁)において目的のヌクレオチド配列の選択的発現を指令することができるプロモーターを意味する。プロモーターの組織特異性は、例えば、レポーター遺伝子をレポーター構築物を作製するプロモーター配列と作動しうる形で連結し、そのレポーター遺伝子が植物のゲノム中に導入して得られるトランスジェニック植物の全ての組織中に組み込まれるようにし、そしてトランスジェニック植物の色々な組織中のレポーター遺伝子の発現(例えば、レポーター遺伝子がコードするmRNA、タンパク質、またはタンパク質の活性)を検出することにより評価することができる。1以上の組織におけるレポーター遺伝子の発現のレベルが他の組織におけるレポーター遺伝子の発現のレベルより高いことを検出すれば、そのプロモーターが高い発現のレベルを検出した組織にとって特異的であることが示される。プロモーターに適用する用語「細胞型特異的」は、同じ組織内の色々な型の細胞において同じ目的のヌクレオチド配列が発現しないのと比較して、特定の型の細胞において目的のヌクレオチド配列の選択的発現を指令することができるプロモーターを意味する。プロモーターに適用する用語「細胞型特異的」はまた、1つの組織内のある領域のヌクレオチド配列の選択的発現を促進することができるプロモーターを意味する。プロモーターの細胞型特異性は、当技術分野で周知の方法、例えば、GUS活性染色、GFPタンパク質または免疫組織化学的染色を用いて評価することができる。プロモーターまたはプロモーターに由来する発現に適用する用語「構成的」は、植物組織および細胞の大部分において、植物または植物の部分の実質的に全生存期間を通して、刺激(例えば、熱ショック、化学品、光など)の非存在のもとで、プロモーターが作動しうる形で連結された核酸分子の転写を指令することができることを意味する。典型的には、構成的プロモーターは実質的にいずれの細胞およびいずれの組織においても、トランスジーンの発現を指令することができる。
【0132】
プロモーター特異性:プロモーターを言及する場合、用語「特異性」はそれぞれのプロモーターが与える発現のパターンを意味する。特異性は、そのプロモーターが、それぞれのプロモーターの制御下で核酸分子の発現を与える植物またはその部分の組織および/または発生状態を記載する。プロモーターの特異性はまた、そのもとでプロモーターが活性化または下方調節されうる環境条件、例えば、寒冷、乾燥、創傷または感染などの生物学的または環境ストレスによる誘導または抑圧を含みうる。
【0133】
精製された:本明細書で使用する用語「精製された」は、その自然環境から取り出され、単離されるかまたは分離された分子、核酸もしくはアミノ酸配列を意味する。「実質的に精製された」分子は、それが自然で随伴する他成分の少なくとも60%を含有しない、好ましくは少なくとも75%を含有しない、そしてより好ましくは少なくとも90%を含有しない。精製された核酸配列は単離された核酸配列であってもよい。
【0134】
組換え体:核酸分子に関する用語「組換え体」は組換えDNA技法により産生された核酸分子を意味する。好ましくは、「組換え核酸分子」は、天然の核酸分子とは少なくとも1つの核酸が異なる非天然の核酸分子である。「組換え核酸分子」はまた、好ましくは作動しうる形で連結された自然ではその順で存在しない核酸分子の配列を含む「組換え構築物」を含みうる。前記組換え核酸分子を産生する好ましい方法は、クローニング技法、定方向または非部位特異的な突然変異誘発、合成または組換え技法を含みうる。
【0135】
本発明の文脈における「種子特異的プロモーター」は、種子においてそれぞれのプロモーターの制御下の核酸分子の転写を調節しているプロモーターであって、その種子中の組織または細胞における転写が、その発生段階を通して、全植物中の前記核酸配列に転写されるRNAの全量の90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超に寄与する前記プロモーターを意味する。用語「種子特異的発現」および「種子特異的NEENA」もこれに従って理解されるものとする。それ故に、「種子特異的NEENA」は、それぞれのNEENAと機能的に連結された前記プロモーターに誘導される種子における転写が、その発生段階を通して、全植物中のNEENAと機能的に連結されたそれぞれのプロモーターの制御下で転写されるRNAの全量の90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超に寄与するというように、種子特異的または種子選好的プロモーターの転写を増強する。
【0136】
本発明の文脈における「種子選好的プロモーター」は、種子においてそれぞれのプロモーターの制御下の核酸分子の転写を調節しているプロモーターであって、その種子中の組織または細胞における転写が、その発生段階を通して、全植物中の前記核酸配列に転写されるRNAの全量の50%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超に寄与する前記プロモーターを意味する。用語「種子選好的発現」および「種子選好的NEENA」もこれに従って理解されるものとする。それ故に、「種子特異的NEENA」は、それぞれのNEENAと機能的に連結された前記プロモーターに誘導される種子における転写が、その発生段階を通して、全植物中のNEENAと機能的に連結されたそれぞれのプロモーターの制御下で転写されるRNAの全量の50%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超に寄与するというように、種子特異的または種子選好的プロモーターの転写を増強する。
【0137】
センス:用語「センス」は標的配列、例えば、タンパク質転写因子と結合する、および所与の遺伝子の発現に関わる配列と相補性または同一である配列を有する核酸分子を意味すると理解される。好ましい実施形態によれば、核酸分子は目的の遺伝子および前記目的の遺伝子の発現を可能にするエレメントを含む。
【0138】
有意な増加または減少:測定技法に固有の誤差限界より大きい、例えば酵素活性または遺伝子発現の増加または減少、好ましくは、対照酵素の活性または対照細胞の発現の約2倍以上の増加または減少、より好ましくは、約5倍以上の増加または減少、そして最も好ましくは、約10倍以上の増加または減少を意味する。
【0139】
実質的に相補的な:その最も広い意味で、用語「実質的に相補的な」は、参照または標的ヌクレオチド配列と比較してヌクレオチド配列について本明細書で使用する場合、前記参照または標的ヌクレオチド配列の実質的に相補的なヌクレオチド配列と正確に相補的な配列の間のパーセント同一性は少なくとも60%、より望ましくは少なくとも70%、より望ましくは少なくとも80%または85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも93%、さらにより好ましくは少なくとも95%または96%、なおさらにより好ましくは少なくとも97%または98%、またさらにより好ましくは少なくとも99%または最も好ましくは100%(最後の場合、この文脈では用語「同一」と等しい)であるヌクレオチド配列を意味する。(以下で特に断らなければ)好ましくは、同一性を核酸配列の少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは全長にわたり前記参照配列に対して評価する。配列比較は、デフォールトGAP分析を用いて、GAPのSEQWEBアプリケーション(University of Wisconsin GCG)により、NeedlemanおよびWunsch(Needleman and Wunsch (1970) J Mol. Biol. 48: 443-453;先に定義した通り)のアルゴリズムに基づいて実施する。参照ヌクレオチド配列に「実質的に相補的な」ヌクレオチド配列は参照ヌクレオチド配列と低ストリンジェンシー条件、好ましくは中ストリンジェンシー条件、最も好ましくは高ストリンジェンシー条件(先に定義した通り)のもとでハイブリダイズする。
【0140】
トランスジーン:本明細書で使用する用語「トランスジーン」は、実験遺伝子操作により細胞のゲノム中に導入される任意の核酸配列を意味する。トランスジーンは「内因性DNA配列」または「異種DNA配列」(すなわち「外来のDNA」)であってもよい。用語「内因性DNA配列」は、天然の配列に関係して何らかの改変(例えば、点突然変異、選択マーカー遺伝子の存在など)のない限り、導入される細胞において自然で見出されるヌクレオチド配列を意味する。
【0141】
トランスジェニック:生物に言及する場合、用語「トランスジェニック」は、形質転換された、好ましくは目的のDNA配列と作動しうる形で連結された好適なプロモーターを含む組換えDNA分子によって、好ましくは安定して形質転換されたことを意味する。
【0142】
ベクター:用語「ベクター」は、連結されている他の核酸分子を輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターの1つの型はゲノムに組み込まれたベクター、すなわち、宿主細胞の染色体DNA中に組み込むことができる「組み込みベクター」である。ベクターの他の型はエピソームベクター、すなわち、染色体外複製の能力がある核酸分子である。作動しうる形で連結された遺伝子の発現を指令する能力のあるベクターを本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。本明細書においては、文脈からそうでないことが明らかでない限り、「プラスミド」と「ベクター」を互換的に使用する。本明細書に記載のRNAを産生するように設計された発現ベクターは、in vivoまたはin vitroでRNAポリメラーゼ(ミトコンドリアのRNAポリメラーゼ、RNA pol I、RNA pol II、および RNA pol IIIを含む)により認識される配列を含有しうる。これらのベクターを用いて本発明に従い、細胞において所望のRNA分子を転写することができる。植物形質転換ベクターは植物形質転換のプロセスに好適なベクターと理解されたい。
【0143】
野生型:生物、ポリペプチド、または 核酸配列に関する用語「野生型」、「自然の」または「自然の起源」は、前記生物が天然であるかまたは、少なくとも、改変、突然変異誘発またはさもなくば人手による遺伝子操作が行われていない天然の生物において入手できるものを意味する。
【0144】
本明細書で引用した全ての引用をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【実施例】
【0145】
実施例1:一般的なクローニング方法
クローニング方法、例えば、特定部位における二本鎖DNAを切断する制限エンドヌクレアーゼの使用、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、核酸のニトロセルロースおよびナイロンメンブランへの転写、DNA断片の接続、大腸菌細胞の形質転換および細菌の培養などは、Sambrookら(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press: ISBN 0-87965-309-6)に記載の通り実施した。ポリメラーゼ連鎖反応は、Phusion(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB、Frankfurt、Germany)を用いて製造業者のマニュアルに従って実施した。一般に、PCRに用いたプライマーは、プライマーの3'末端の少なくとも20ヌクレオチドがテンプレートと完全にアニールするように設計した。制限部位は、認識部位の対応するヌクレオチドをプライマーの5'末端に付着させることにより加えた。融合PCR(例えば、K. Heckman and L. R. Pease, Nature Protocols (2207) 2, 924-932に記載された)を代わりの方法として用いて、目的の2つの断片、例えばプロモーターを遺伝子と、または遺伝子をターミネーターと接続した。
【0146】
実施例2:組換えDNAの配列分析
組換えDNA分子の配列決定は、レーザー-蛍光DNAシーケンサー(Applied Biosystems Inc, USA)を使い、サンガー法(Sanger et al, (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74, 5463-5467)を用いて実施した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得た断片を保持する発現構築物の配列決定を行い、プロモーター、発現すべき核酸分子およびターミネーターから構成される発現カセットの正しさを確認して、クローニング中にDNAの取扱いから生じうる突然変異、例えば、不正なプライマーによる突然変異、紫外線曝露もしくはポリメラーゼのエラーからの突然変異などを回避した。
【0147】
実施例3:種子選好的発現をする遺伝子からの核酸発現増強性核酸(NEENA)の同定
3.1 シロイヌナズナ(A. thaliana)遺伝子からのNEENA分子の同定
公的に利用可能なゲノムDNA配列(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genoms/PLANTS/PlantList.html)および転写物発現データ(例えば、http://www.weigelworld.org/resources/microarray/AtGenExpress/)を用いて、種子選好的発現をするシロイヌナズナ転写物由来の19個の潜在NEENA候補の1セットを選択して詳細な分析を行った。候補名は次の通りである:
表1:種子特異的NEENA候補(NEENAss)
【表1】

【0148】
3.2 NEENA候補の単離
ゲノムDNAを、シロイヌナズナ緑色組織からQiagen DNeasy植物ミニキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて抽出した。NEENA分子を含有するゲノムDNA断片を、通常のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離した。プライマーは多数のNEENA候補をもつシロイヌナズナのゲノム配列に基づいて設計した。ポリメラーゼ連鎖反応は、Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Cat No F-540L, New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)に概説されたプロトコルに従った。単離されたDNAを、次のプライマーを用いるPCR増幅のテンプレートDNAとして使用した。反応は19セットのプライマー(表2)を含むものであり、Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Cat No F-540L, New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)に概説されたプロトコルに従った。単離されたDNAを、次のプライマーを用いるPCR増幅のテンプレートDNAとして使用した。
【0149】
表2:NEENAを単離するためのプライマー配列
【表2】


【0150】
PCR中の増幅は次の組成物(50μl)を用いて行った:
3.00μl シロイヌナズナゲノムDNA
10.00μl 5x Phusion HF バッファー
4.00μl dNTP(2.5 mM)
2.50μl for プライマー(10 microM)
2.50μl rev プライマー(10 microM)
0.50μl Phusion HF DNA ポリメラーゼ(2U/μl)
次のパラメーターによるPCRに、タッチダウン手法を使った:98.0℃にて30秒(1サイクル)、98.0℃にて30秒、56.0℃にて30秒、および72.0℃にて60秒(4サイクル)、4回の追加サイクル、それぞれ54.0℃、51.0℃および49.0℃のアニーリング温度、引き続いて20サイクル98.0℃にて30秒、46.0℃にて30秒および72.0℃にて60秒(4サイクル)ならびに72.0℃にて5分。増幅産物を2%(w/v)アガロースゲルに供給し、80Vで分離した。PCR産物をゲルから切り取り、Qiagenゲル抽出キット(Qiagen, Hilden, Germany)で精製した。精製したPCR産物をpCR2.1 TOPO(Invitrogen)ベクター中に、製造業者マニュアルに従ってクローニングし、次いで配列決定を行った。これらのプラスミドは、さらなるクローニングステップのための源としてまたはさらなるPCR、例えば、実施例4に記載したプライマーとの融合のための融合PCRに対するテンプレートとして役立った。
【0151】
実施例4:T-プラスミド内のPUFA合成に必要な遺伝子のアセンブリー
Brassica napus(セイヨウアブラナ)種子においてLC-PUFAを合成するために、代謝性LC-PUFA経路をコードする遺伝子のセット(表3)を発現エレメント(プロモーター、ターミネーター、NEENA、表5)と組み合わせ、そして実施例5に記載した植物のアグロバクテリアを介する形質転換に用いた。この目的のために図2に記載の一般クローニング計画を用いた:表3に掲げた遺伝子を、製造業者のマニュアルに従いPhusion(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB, Frankfurt, Germany)を使い、cDNAから、Nco Iおよび/またはAsc I制限部位を5'末端におよびPac I制限部位を3'末端に導入するプライマーを用いて、PCR増幅した(図2A)。プロモーター-ターミネーターモジュールまたはプロモーター-NEENA-ターミネーターモジュールを、実施例1に記載の融合PCRを用いて対応する表2に掲げた発現エレメントを接続し、そのPCR産物をTOPO-ベクターpCR2.1(Invitrogen)中に製造業者の取扱説明書に従ってクローニングすることにより、作製した。限定されない例として、アブラナの種子中のアラキドン酸を合成するのに必要な経路遺伝子のセットを含有するプラスミドVC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)が保持するプロモーター-NEENAの融合体を作製するために用いたプライマー組み合わせを表6に掲げた。ターミネーター配列をプロモーター配列またはプロモーター-NEENA配列に融合PCRを用いて接続する一方、プライマーは図2に示した制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列をモジュールの両サイドに加えるように設計して、制限エンドヌクレアーゼの認識部位Nco I、Asc IおよびPac Iをプロモーターおよびターミネーターの間またはNEENAおよびターミネーターの間に導入した(図2Bを参照)。最終的な発現モジュールを得るために、PCR増幅した遺伝子を、プロモーターおよびターミネーターまたはNEENAおよびターミネーターの間にNcoIおよび/またはPacI制限部位を介してクローニングした(図2C)。特別注文のマルチクローニングサイト(MCS)配列番号41を使い、3つまでのこれら
の発現モジュールを、pENTR/A、pENTR/BまたはpENTR/Cのうちのどれか1つが保持する所望の発現カセットと組み合わせた(図2D)。いくつかのエレメントまたは結合エレメントは、図2に示した計画から逸脱して、サービスプロバイダーで合成するかまたは平滑末端ライゲーションを用いてクローニングした。最後に、Multisite Gateway(登録商標)系(Invitrogen)を用いてpENTR/A、pENTR/BおよびpENTR/Cが保持する3つの発現カセットを組み合わせ(図2E)、最終的な二成分pSUNT-プラスミド、VC-LJB913-1qcz(配列番号38)、VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)およびVC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)を得た。機能性エレメント(プロモーター、NEENA、遺伝子、ターミネーター)の配向と組み合わせを図3A、3B、3Cおよび3Dに図示する。二成分ベクターとその使用法の概説は、Hellens et al、Trends in Plant Science (2000) 5: 446-451に記載されている。
【0152】
表3:アブラナにおける20:4n-6(ARA)合成用に用いた遺伝子
【表3】

【0153】
表4:アブラナにおける22:6n-3(DHA)合成用に、表3に掲げた遺伝子に加えて用いた遺伝子
【表4】

【0154】
表5:アブラナにおいて20:4n-6(ARA)または22:6n-3(DHA)の合成用に用いた発現エレメント
【表5】


【0155】
表6:実施例1に記載した融合PCRを使って、プロモーターとNEENAエレメントの間の融合体を作製するために用いたプライマー
【表6】



【0156】
アブラナにおけるドコサヘキサエン酸(DHA)合成用の機能性発現モジュールを保持する二成分T-プラスミドを類似の方式で得ることができる。この目的のために、合成ARA用に記載した機能性モジュールs(プロモーター-遺伝子-ターミネーターおよび/またはプロモーター-NEENA-遺伝子-ターミネーター)に加えて、構築物はまた、表4に掲げた遺伝子の発現用に必要な機能性モジュールも含有する。これらの発現モジュールに用いるプロモーターは配列番号25、26、27、28、29 および/または30であってもよく、NEENAは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23および/または24のいずれかであってもまたはなくてもよく、そしてターミネーターは 配列番号31、32、33、34、35、36 および37であってもよい。
【0157】
実施例5:トランスジェニック植物の生産
a)トランスジェニックアブラナ植物の作製(Moloney et al. 1992, Plant Cell Reports, 8:238-242による修正プロトコル)
トランスジェニックアブラナ植物の作製のために、実施例3に記載した二成分ベクターをAgrobacterium tumefaciens C58C1:pGV2260 (Deblaere et al. 1984, Nucl. Acids. Res. 13: 4777-4788)中に形質転換した。アブラナ植物の形質転換(Kumilyを参照)については、3%サッカロースを補給したMurashige-Skoog培地(Murashige and Skoog 1962 Physiol. Plant. 15, 473)(3MS培地)中で増殖させた陽性形質転換アグロバクテリウムコロニーの一晩培養物の1:50希釈液を用いた。滅菌アブラナ植物の葉柄または子葉下を、1:50のアグロバクテリウム希釈液と共に5〜10分間、ペトリ皿中でインキュベートした。次いで、暗所、25℃にて0.8%バクト寒天を含む3MS培地上で、3日間の同時インキュベーションを行った。3日後、培養物を毎週、16時間明所/8時間暗所にて、500mg/lクラフォラン(セフォタキシム-ナトリウム)、100nMイマゼタピル、20μMベンジルアミノプリン(BAP)および1.6g/lグルコースを含むMS培地上に置いた。成長する芽を、2%ショ糖、250mg/lクラフォランおよび0.8%バクト寒天を含むMS培地に移した。3週間後でも根の形成は観察されなかったので、根の形成を増強するために、成長ホルモン2-インドール酪酸を培地に添加した。
【0158】
イマゼタピルおよびクラフォランを含む2MS培地上で、再生された芽が得られ、これを温室に移して発芽させた。開花後、成熟種子を収穫し、Qui et al. 2001, J. Biol. Chem. 276, 31561-31566に記載のように脂質分析を介してデサチュラーゼ遺伝子の発現について分析した。
【0159】
b)トランスジェニック・アマ植物の作製
トランスジェニック・アマ植物の作製は、粒子ボンバードメントを用いるBell et al., 1999, In Vitro Cell. Dev. Biol. Plant 35(6):456-465の方法に従って実施することができる。アグロバクテリウム形質転換は、Mlynarova et al. (1994), Plant Cell Report 13: 282-285に従って実施しうる。
【0160】
実施例6:脂質抽出および植物油の脂質分析
植物の遺伝子改変の所望の分子、例えば、ある特定の脂肪酸の生産に与える結果は、植物を、例えば、以下に記載の好適な条件下で成長させ、成長培地および/または細胞成分を、所望の分子、例えば脂質もしくはある特定の脂肪酸の生産の増強について分析することにより確認することができる。脂質は標準の文献に記載に従って抽出することができ、前記文献としては、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd. A2, S. 89-90 und S. 443-613, VCH: Weinheim (1985);Fallon, A., et al., (1987) “Applications of HPLC in Biochemistry“ in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17; Rehm et al. (1993) Biotechnology, Bd. 3, Kapitel III: “Product recovery and purification“, S. 469-714, VCH: Weinheim;Belter, P.A., et al. (1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley and Sons;Kennedy, J.F., und Cabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley and Sons;Shaeiwitz, J.A., und Henry, J.D. (1988) Biochemical Separations, in: Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd. B3; Kapitel 11, S. 1-27, VCH: Weinheim;ならびにDechow, F.J. (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publicationsが挙げられる。
【0161】
あるいは、抽出は、Cahoon et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940、およびBrowse et al. (1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載のように実施しうる。脂質または脂肪酸の定量および定性分析は、Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2);Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids. A Practical Guide - Ayr, Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 S. (Oily Press Lipid Library; 1); “Progress in Lipid Research, Oxford: Pergamon Press, 1 (1952) - 16 (1977) u.d.T.: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載のように実施しうる。
【0162】
実施例4に記載の二成分T-プラスミドを、実施例5に記載の通りアブラナ(Brassica napus)中に形質転換した。トランスジェニック植物をPCRを用いて選択した後、植物を成長させて(昼/夜サイクル:200mEおよび21℃にて16時間、暗所および19℃にて8時間)成熟した種子を発生させた。収穫した種子から脂肪酸を抽出し、ガスクロマトグラフィを用いて分析した。分析した脂質に基づいて、NEENAのデサチュラーゼおよびエロンガーゼに与える効果を確認することができる、何故なら、首尾よく形質転換された植物種子の脂質パターンは、対照植物種子、例えば、NEENAの増強効果なしにデサチュラーゼおよびエロンガーゼのセットを発現する植物のパターンとは異なりうるからである。
【0163】
表7は各二成分T-プラスミドについて得たトランスジェニック系統のベスト5の結果である。表8は表3の表題で掲げた脂肪酸の命名法を示す。
【0164】
驚くべきことに、構築物VC-VC-LJB1327-1qcz(配列番号39)VC-LJB2003-1qcz(配列番号40)およびVC-LJB2197-1qcz(配列番号146)による形質転換から得たトランスジェニック植物は、VC-LJB913-1qcz(配列番号38)で形質転換した植物と比較して遥かに高いARA対GLA比を示し、そしてVC-LJB2003-1qcz(53.3に達するARA:GLA比)で形質転換した植物が最高であった。さらにもっと驚くべきことは、酵素d6Des(Pir_GAI)を発現する発現モジュールを除去したにも関わらず、VC-LJB913-1qcz形質転換植物と比較して、構築物VC-LJB2003-1qczおよびVC-LJB2197-1qcz(NEENAを組み込んでいる)の植物は、VC-LJB913-1qczおよびVC-LJB1327-1qczより高いARAレベルに達した(最高値はVC-LJB913-1qcz:25.6%;VC-LJB1327-1qcz:22%,VC-LJB2003-1qcz:28.7%およびforVC-LJBV2197-1qcz:33.1%である)。
【0165】
表7:トランスジェニックアブラナ植物からの種子油の脂肪酸組成物のガスクロマトグラフィ分析
【表7】



【0166】
表8:使用した命名法
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列;
b) a)に定義した前記核酸配列と作動しうる形で連結された少なくとも1つの種子特異的植物プロモーター;
c)前記核酸配列と作動しうる形で連結された少なくとも1つのターミネーター配列;
ならびに
d)前記プロモーターと機能的に連結され、かつ前記プロモーターに対しておよびa)に定義した前記ポリペプチドに対して異種である1以上の核酸発現増強性核酸(NEENA)分子
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
e)β-ケトアシルレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列;
f)デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列および/または
g)エノイル-CoAレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列
を含み、e)〜g)に定義した核酸配列がデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する前記ポリペプチドに対して異種である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含むものであって、核酸配列がデサチュラーゼ、エロンガーゼ、β-ケトアシルレダクターゼ、デヒドラターゼまたはエノイル-CoAレダクターゼ活性を有する前記ポリペプチドに対して異種である、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを製造する方法であって、
a)請求項5に記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの生産を可能にする条件下で培養するステップ;および
b)ステップa)の宿主細胞からポリペプチドを取得するステップ
を含む、上記方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のベクターを含む、非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項8】
植物または植物部分である、請求項7に記載の非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項9】
多価不飽和脂肪酸を製造する方法であって、
a)請求項5に記載の宿主細胞を、前記宿主細胞における多価不飽和脂肪酸の生産を可能にする条件下で培養するステップ;および
b)前記多価不飽和脂肪酸を前記宿主細胞から取得するステップ
を含む、上記方法。
【請求項10】
多価不飽和脂肪酸を製造する方法であって、
a)請求項7または8に記載の非ヒトトランスジェニック生物を、前記非ヒトトランスジェニックにおける多価不飽和脂肪酸の生産を可能にする条件下で栽培するステップ;および
b)前記多価不飽和脂肪酸を前記非ヒトトランスジェニック生物から取得するステップ
を含む、上記方法。
【請求項11】
前記多価不飽和脂肪酸がアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法に記載されるステップおよび多価不飽和脂肪酸を油、脂質または脂肪酸組成物として処方するさらなるステップを含む、油、脂質または脂肪酸組成物を製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクターの使用であって、植物またはその部分における請求項1〜3に定義した多価不飽和脂肪酸の生合成経路の少なくとも1つの酵素の発現を増強するための、上記使用。
【請求項14】
請求項5に記載の宿主細胞もしくは宿主細胞培養物、または、請求項7または8に記載のトランスジェニック非ヒト生物もしくは植物から誘導された非ヒトトランスジェニック生物、トランスジェニック植物、植物部分もしくは植物種子の、食品、動物飼料、種子、医薬品もしくはファインケミカルを生産するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2013−502914(P2013−502914A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526077(P2012−526077)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062561
【国際公開番号】WO2011/023800
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512005634)ビーエーエスエフ プラント サイエンス カンパニー ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】