説明

多分子成形品の表面処理装置

本発明は、ポリマー成形品の表面処理装置を提供する。動作において、ポリマー成形品は、製品装着及び解放ユニット(20)に、ジグ(11)によって保持され、そして製品送りユニット(10)によって移送される。第1の不純物除去ユニット(30)は製品の表面を清浄にする。製品は、入口真空ユニット(40)を通り、製品表面のイオン処理ユニットに入る。イオン処理ユニットは、イオン電流を制御し、そして雰囲気ガス供給ユニット(60)から供給されるガスを用いてプラズマカチオンを生成し、またプラズマイオンは製品の表面上で一様に走査される。表面処理済みの成形品は、第2の不純物除去ユニットを通り、製品装着及び解放ユニットに送られ、そこでジグは処理済の製品を新しい製品に交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー成形品の表面処理装置に関するものであり、そして特に、ポリマー成形品の表面でプラズマイオンビームを走査することによりポリマー成形品の表面を処理するポリマー成形品の表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話、パーソナルデジタル補助装置(PDA)、ノートブックコンピュータ、液晶表示テレビジョン(LCD TV)、携帯型無線送受信装置、CDプレーヤー、及びMP3プレーヤーのような携帯用電子機器は、場所に関して制限されずにユーザーに自由にかつ便利に使用され、従って携帯用電子機器は近年広く且つ好ましく使用されてきた。
【0003】
しかし、携帯用電子機器は、種々の電磁回路ユニットが組込まれているために、大量の有害な電磁波を放出し、そして電子機器から放出される最も有害な電磁波は、ユーザーが電子機器を携帯している間にユーザーの身体によって吸収され、従って健康を害している。
【0004】
従来の携帯用電子機器のケーシングは好ましくは、導電性被覆材料、添加剤又は充填剤をポリマー材料に添加して作った材料を用いて製作される。
【0005】
携帯用端末装置の内部電磁回路ユニットの有害な電磁波が端末装置のケーシングの外部へ漏れるのを防ぐために、ポリマー材料を用いて作られた携帯用端末装置の従来のケーシングはそれの内側及び外側表面を導電性被覆材料で被覆され、従って予定のレベルより高い導電率をもっている。
【0006】
従来の導電性被覆プロセスでは、ポリマー材料に導電率を施すために、携帯用電子機器のケーシングのポリマー材料に種々の添加剤や充填剤が加えられ得る。充填剤の例としては、粉末炭素、炭素繊維、及び粉末銀のような金属材料がある。
【0007】
関連技術においてポリマー材料に添加される粉末炭素や炭素繊維のような従来の充填剤は、容量が不十分であり、抵抗が10Ω/□以下である。粉末銀のような金属材料は、ケーシングの表面に層を形成し、ケーシングの品質を落としている。さらに、金属材料は、60%までの量でケーシングのポリマー材料に添加されなければならず、従って金属材料は、その重量、品質、物理的及び化学的性能、及びコストの面で、好ましくは用いることができない。
【0008】
さらに、電磁波を遮蔽するために上記の金属材料を用いて作った携帯用端末装置のケーシングは容易にリサイクルされない。従来のケーシングをリサイクルするためには、高価な分類機を用いなければならず、従ってケーシングをリサイクルするコストが高騰する。
【0009】
特に、粉末銀や粉末炭素のような導電性被覆材料を備えたポリマー材料を用いて製作される電子機器のケーシングは、物理的及び化学的要因で耐久性が低下し、そのため、ケーシングの表面は、色あせし、傷つき易く、或いは摩滅し易く、従って電子機器の期待した寿命期間が短縮する。
【0010】
さらに、電子機器の従来のディスプレイユニットは非導電性材料から成っており、従ってディスプレイユニットを介して電磁波が漏れるのを防止し又はディスプレイユニットが帯電するのを防止することは、従来の方法を用いては殆ど不可能である。
【0011】
ポリマー材料及び成形プロセスを用いて製造した電子製品の被覆導電性層の厚さが一様でない場合には、被覆導電性層は所望の被覆効果を奏さない。従って、電子製品に厚さの一様な被覆導電性層を形成するには、複雑で精密な高度の技術及び複雑で精密な高価な装置を用いなければならない。従って、処理装置の構造は複雑となり、処理技術は精密でなければならず、そのため、製品の製造コストは、処理装置及び処理技術を開発し、設計するコストのために、高騰する。
【0012】
電磁波を遮蔽する所望の効果を達成し、かつまた電子機器の内部回路ユニットの安定しかつ信頼できる動作を維持する所望の状態を得るためには、一様な分布で、予定の遮蔽率、例えば20%の遮蔽率を維持する必要がある。しかし、技術的に限界があるために従来の技術を用いてこのような遮蔽率を達成することは殆ど不可能である。
【0013】
さらに、高価な添加剤を用いたポリマー材料製の従来の電気機器は容易にリサイクルできないので、機器の製造コストは高くなる。電磁波の遮蔽又は帯電の防止に関して機器の性能が不十分であるために、機器の誤動作の可能性が高まり、従って、製造業者に重い負担がかかる。さらに、電磁波の遮蔽又は帯電の防止における機器の性能が不十分であることは機器の容易なリサイクルを妨げている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は先行技術において生じる上記の問題を考慮してなされ、そして本発明の目的は、ポリマー材料及び成形プロセスを用いて製造した電子製品の表面を、プラズマイオンビーム走査技術を用いて処理し、成形ポリマー製品からの電磁波の漏洩を有効に阻止し、製造業者がポリマー製品を大量生産でき、それにより製品の製造コストを低減し、電磁波の遮蔽効果を高め、機器の内部電子回路ユニットの動作の信頼性を改善する、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、表面の改質を通して成形ポリマー製品の外面の硬さを著しく高め、そして製品の繊細度を達成し、それにより製品の耐久性を高める、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、CRTのような種々のディスプレイ装置に適用でき、ディスプレイ装置から放出された電磁波を有効に遮蔽し、そしてディスプレイ装置の表面における導電性抵抗の一様な分布を達成し、それによりディスプレイ装置が電気的に帯電するのを防ぎ、そしてユーザーの目を保護する、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、成形ポリマー製品の表面に所望の伝導率をもたらすことができ、それによりICパッケージ又はLCDを安全に動かすことができ、そして成形ポリマー製品を効率的かつ容易にリサイクルでき、環境汚染を低減し、製品によって生じる天然資源の浪費を防止する、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【0018】
本発明のなお別の目的は、携帯用電子機器のケーシング表面の被覆材料に対して高価な添加剤を必要とせず、従来の精確な被覆プロセスを必要とせず、従って製造コストを低減し、不良製品の数を低減する、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【0019】
本発明のなお別の目的は、単一雰囲気ガス、又は二つ以上の雰囲気ガスを予定の比率で混合して作ったガス混合物を、イオン銃の出力、イオン走査時間及び製品の基本色に応じて製品表面イオン処理ユニットへ供給できる、成形ポリマー製品の表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の特徴によれば、
ポリマー成形品を交換可能に保持し、その後多数の処理ユニットを介してポリマー成形品を供給するジグ11を備えた製品送りユニット10と、
表面処理すべきポリマー成形品が製品送りユニット10のジグ11によって保持するように配置され、そして表面処理の完了したポリマー成形品がジグ11から解放されて配置される製品装着及び解放ユニット20と、
製品装着及び解放ユニット20の側部に設けられ、製品装着及び解放ユニット20においてジグ11で保持されたポリマー成形品を、製品送りユニット10を通して送りながら、ポリマー成形品の表面から不純物を取り除く第1の不純物除去ユニット30と、
第1の不純物除去ユニット30の側部に設けられ、内部が予定の真空度に維持され、対向する端部に開放可能なゲート90をもつ入口を備え、製品送りユニット10のジグ11によって保持されたポリマー成形品が内部へ通される入口真空ユニット40と、
入口真空ユニット40の側部に設けられ、内部が予定の真空度に維持され、製品送りユニット10のジグ11によって保持され送られるポリマー成形品の表面にイオンビームを走査させるイオン銃51を備えた製品表面のイオン処理ユニット50と、
製品表面のイオン処理ユニット50に接続され、製品表面のイオン処理ユニット50へ雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給ユニット60と、
製品表面のイオン処理ユニット50の側部に設けられかつ製品表面のイオン処理ユニット50に接続され、内部が予定の真空度に維持され、対向する端部に開放可能なゲート90をそれぞれもつ入口及び出口を備え、製品送りユニット10のジグ11によって保持されたポリマー成形品が内部へ通される出口真空ユニット70と、
出口真空ユニット70と製品装着及び解放ユニット20との間に設けられ、出口真空ユニット70から送られてきたポリマー成形品の表面に不純物が突き刺すのを阻止し、ポリマー成形品の表面から不純物を取り除く第2の不純物除去ユニット80と
を有して成るポリマー成形品の表面処理装置が提供される。
【0021】
言い換えれば、表面処理すべき成形品はジグ11によって製品装着及び解放ユニット20に保持され、そして製品送りユニット10によって送られる。第1の不純物除去ユニット30において、製品から不純物が除去され、それで製品の表面は清浄される。その後、成形品は入口真空ユニット40を通り、製品表面イオン処理ユニットに到達し、こうして真空度の急激な変動による製品の生産率の低下を防いでいる。製品表面イオン処理ユニットにおいて、イオンビーム電流は、雰囲気ガス供給ユニット60から供給されるガスを用いて正に帯電したプラズマイオンを発生するように制御され、そしてプラズマイオンは製品の表面上で一様に走査される。
【0022】
その後、表面処理した成形品は、第2の不純物除去ユニット80に送られ、それにより、不純物を除去した製品は製品装着及び解放ユニット20へ送られ、そこで製品は製品送りユニット10のジグ11から解放される。解放の完了した表面処理済みの成形品を完全に解放したジグ11は、表面処理すべき新たな成形品を保持し、上記のプロセスを繰り返すように製品を製品送りユニット10へ送る。
【発明の効果】
【0023】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、ポリマー成形品の表面処理装置はプラズマイオンビーム走査技術を用いてポリマー成形品の表面を処理し、従って成形された電子製品から放出された電磁波を有効に遮蔽し、しかもポリマー成形品を大量に製造できるという利点が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、表面処理装置は別個の添加剤や充填剤を用いることなしにポリマー成形品の表面に所望の電導率を施し、従ってポリマー成形品の製造コストを低減し、製品の製造プロセスを簡単化し、そして製品を効率的にしかも容易にリサイクルでき、それにより環境汚染を低減しかつ製品によって生じる天然資源の浪費を防ぐことができるという利点が得られる。
【0025】
さらに、本発明によれば、表面処理装置は、電磁波を遮蔽する効果及びポリマー成形品の内部回路ユニットの動作の安全性と信頼性を高め、またポリマー成形品の外面の硬さを著しく高め、そして表面改質を通して製品の繊細度を獲得し、従って製品の耐久性を高めるという利点が得られる。
【0026】
このように、本発明は、ポリマー成形品の経済的効率及び動作性能を著しく高め、製品を効率的かつ容易にリサイクルできるようにし、従って電磁波を遮蔽できるポリマー成形品を大量に容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0028】
図1には、本発明によるポリマー成形品の表面処理装置の構成を概略的に示している。図示したように、本発明の表面処理装置のジグは、製品送りユニットに沿って運ばれ、製品装着及び解放ユニットにポリマー成形品を保持し、その後、第1の不純物除去ユニット、入口真空ユニット、製品表面のイオン処理ユニット及び出口真空ユニットを順次通って、再び製品装着及び解放ユニットに到達し、表面処理済みのポリマー成形品を解放し、こうして製品装着及び解放ユニットに新たに表面処理すべきポリマー成形品が挿置される。
【0029】
図2は、本発明によるポリマー成形品の表面処理装置の製品表面のイオン処理ユニットの構成及び動作を示す拡大図である。図示したように、製品表面のイオン処理ユニットはイオンビームを放出する二つ以上のイオン銃を備え、各イオン銃の下方には、ポリマー成形品の表面にエネルギーを一様に加えるようにグリッドが配置されている。
【0030】
図3は、本発明によるポリマー成形品の表面処理装置のジグを概略的に示す図である。図示したように、製品送りユニット設けられたジグは、ジグが現在あるポリマー成形品を新たなポリマー成形品に置き換える状態において四つの方向に上下に回転できる多数のジグ部品をジグが備え、従って製品の表面にイオンビームを一様に走査させるように構成されている。
【0031】
図1に示すように、本発明によるポリマー成形品の表面処理装置は、製品装着及び解放ユニット20と、第1の不純物除去ユニット30と、入口真空ユニット40と、製品表面のイオン処理ユニット50と、出口真空ユニット70とを有し、これらのユニットは、ポリマー成形品を保持するジグをこれらのユニットに順次通させるように順次配列されている。
【0032】
製品送りユニット10は、ポリマー成形品を交換可能に保持するジグ11を備えている。ジグ11は、製品装着及び解放ユニット20、第1の不純物除去ユニット30、入口真空ユニット40、製品表面のイオン処理ユニット50及び出口真空ユニット70を通って、プロセスラインを形成しているコンベアベルト(図示していない)に沿って再び製品装着及び解放ユニット20に到達する。
【0033】
図3に示すように、ジグ11は、多数のジグ部品11’を備え、ジグ部品11’は多数のポリマー成形品を交換可能に保持でき、各ジグ部品11’は、現在ある製品が新たな製品に交換される状態において四つの方向に上下に回転できる。従って、ポリマー成形品の表面の処理工程中に、ジグ部品11’は、各ジグ部品11’が四つの方向に対して予定の上向きまたは下向き角度をもつ位置に維持されている間に、ポリマー成形品の表面を一様に処理できる。
【0034】
詳細に説明すると、製品送りユニット10のジグ11は製品装着及び解放ユニット20にポリマー成形品を保持し、そしてコンベアベルトによって運ばれる。従って、ジグ11は、第1の不純物除去ユニット30、入口真空ユニット40、製品表面のイオン処理ユニット50及び出口真空ユニット70を通って、順次移送され、ポリマー成形品の表面のイオン処理が行われる。その後、表面処理を施したポリマー成形品を保持しているジグ11は再び製品装着及び解放ユニット20に到着し、この製品装着及び解放ユニット20において、ジグ11は、表面処理を施したポリマー成形品を解放し、そしてユニット20に製品を置き、その後新たなポリマー成形品を保持する。新たなポリマー成形品を保持したジグ11は上記複数のユニットに順次通され、上記の処理工程を繰り返して、新たなポリマー成形品の表面をイオン処理する。
【0035】
製品装着及び解放ユニット20は、予定の長さと平坦な上面をもつ製品待ちプレート21を備えている。製品送りユニット10のジグ11の移動方向において製品待ちプレート21の上面の前方には、新たに表面処理すべきポリマー成形品が置かれる。製品待ちプレート21の上面の後方部分には、表面処理済みの製品が置かれる。
【0036】
製品待ちプレート21の上面の前方に置かれたポリマー成形品は製品送りユニット10のジグ11によって保持され、コンベアベルトラインに沿って運ばれる。
【0037】
製品装着及び解放ユニット20の側部において、第1の不純物除去ユニット30はユニット20に接続され、それで第1の不純物除去ユニット30は、ポリマー成形品の表面から不純物を除去できる。こうして、第1の不純物除去ユニット30は、ジグ11で保持されたゼポリマー成形品の表面から不純物を除去し、第1の不純物除去ユニット30の入口及び出口に、これら入口及び出口を開閉する二つのゲート90が設けられている。
【0038】
第1の不純物除去ユニット30は第1の空気ブロワー31を備え、この第1の空気ブロワー31は、ヒータで加熱した熱い空気をポリマー成形品の表面に吹き付けることによってポリマー成形品を予熱できる。第1の不純物除去ユニット30は、ヒータで加熱し、第1の空気ブロワー31で吹き付けられる熱い空気を用いて、ジグ11デ保持されるポリマー成形品の表面から不純物を除去するが、さらに、第1の不純物除去ユニット30は熱い空気を用いてポリマー成形品の表面を予め加熱しかつイオン化するので、イオンビーム走査時間は短縮できる。
【0039】
第1の空気ブロワー31の空気吸い込み入口にはアニオン化装置32が設けられ、ポリマー成形品の表面から不純物を取り除く工程中に発生されるダストが第1の不純物除去ユニット30の内面に付くのを防止する。本装置は、ポリマー成形品を第1の不純物除去ユニット30内へ送り込んだ後入口ゲート90を閉じる際に、装置の外部へダストを容易に放出できるように構成される。
【0040】
第1の不純物除去ユニット30の入口ゲート90が閉じられると、真空ポンプが作動され、第1の不純物除去ユニット30の真空度を1.2×10−3torrに維持する。
【0041】
第1の不純物除去ユニット30の側部には、出口ゲート90を介して連通する入口真空ユニット40が設けられている。入口真空ユニット40の内部は予定の真空度に維持され、それでポリマー成形品は真空度の急激な変動によって影響を受けない。入口真空ユニット40は、予定の真空度を維持する真空ポンプを備えた第1の真空制御ユニット41を有している。
【0042】
入口真空ユニット40はさらに、1.2×10−4torrの真空度に維持される第1の予備真空チャンバ42と、1.2×10−5torrの真空度に維持される第2の予備真空チャンバ43とを有している。
【0043】
第1の不純物除去ユニット30と第1の予備真空チャンバ42との間には開放可能なゲート90が設けられ、また第1の予備真空チャンバ42と第2の予備真空チャンバ43との間に別の開放可能なゲート90が設けられている。開放可能なゲート90は、製品送りユニット10を用いてポリマー成形品を移送するように開閉される。
【0044】
第1の不純物除去ユニット30、第1の予備真空チャンバ42及び第2の予備真空チャンバ43は、ユニット30、第1の予備真空チャンバ42及び第2の予備真空チャンバ43の順で徐々に高くなる異なる真空度にされている。従って、第1の不純物除去ユニット30、第1の予備真空チャンバ42及び第2の予備真空チャンバ43を順次通るポリマー成形品は、表面イオン化処理工程中に真空度の急激な変動によって影響されることがなく、それで製品の生産率は低減されない。
【0045】
さらに、以下で詳細に説明する製品表面のイオン処理ユニット50へポリマー成形品を送るためにゲート90が開放されても、製品表面のイオン処理ユニット50の真空度は下がらず、予定の一定の真空度に望ましく維持される。本発明は、製品を大量に生産する工程中、不良製品の生産を防止しながら一様な動作性能をもつ製品を生産できる。
【0046】
製品表面のイオン処理ユニット50は入口真空ユニット40の出口に接続されている。製品表面のイオン処理ユニット50は第2の真空制御ユニット52を備え、この第2の真空制御ユニット52は、第2の予備真空チャンバ43の真空度と同じである1.2×10−5torrにユニット50の真空度を維持する真空ポンプを備えている。
【0047】
さらに、製品表面のイオン処理ユニット50には、イオンビームを放出する二つ以上イオン銃51が設けられている。各イオン銃51は50〜100keVの電圧及び10〜100mAの電流を用いて作動される。
【0048】
各イオン銃51の下方には加速管53が設けられ、イオンビームがこの加速管53を介してポリマー成形品の表面を深くかつ迅速に貫通するようにしている。ポリマー成形品にはバイアス電圧が印加され、それで加速管の機能を強め、ビーム走査時間を短くし、それによりポリマー成形品を大量に生産できるようにしている。
【0049】
イオン銃51の下方にはグリッド54が設けられ、イオンビームの幅を最大化し、かつポリマー成形品の表面にエネルギーを一様に加えるようにしている。グリッド54は二つ以上の孔を備えており、従ってイオンビームの形状を変えることができ、またイオンビームの重なり部分を制限でき、それにより有効なビーム幅を最大化できる。
【0050】
詳しく説明すると、複数のイオン銃51から走査されたイオンビームはポリマー成形品の表面で互いに重なり合う。本発明は、イオンビームの重なり部分を25mm未満に制限し、それにより有効なビーム幅を400mm(長さ)×900mm(幅)に設定する。
【0051】
さらに、イオン銃51は、二つのイオン銃51間の間隔を調整できるようにロックボルトを用いて製品表面のイオン処理ユニット50に固定されている。
【0052】
従って、製品表面のイオン処理ユニット50において表面処理されるポリマー成形品の大きさやその他のファクタのために二つのイオン銃51の間隔を調整する必要がある場合には、ロックボルトを緩めて、イオン銃51の間隔を所望のように調整することができる。従って、イオン銃51は種々のポリマー成形品を表面処理するのに有効に用いることができる。
【0053】
本発明においては、各イオン銃51とポリマー成形品との間の間隔は好ましくは1m〜2mに設定される。走査時間を短くしなければならないポリマー成形品の場合には、イオンビームの有効幅は減少されるが、各イオン銃51とポリマー成形品との間の間隔は短くなるように調整される。
【0054】
詳しく説明すると、各イオン銃51とポリマー成形品との間の間隔は製品の大きさに応じて制御され、製品が寸法の小さいものである場合には走査時間を短縮するためにこの間隔は狭くされるが、製品が寸法の大きいものである場合には間隔を広げてイオンビーム幅を最大化し、寸法の大きいポリマー成形品を大量に生産できるようにする。
【0055】
ポリマー成形品の表面色は、イオン銃51の出力、走査時間及び製品の基本色に応じて種々変えることができる。従って、ポリマー成形品の表面は種々の色となりかつ所望の硬さ及び繊細度となるように物理的に改質される。
【0056】
雰囲気ガス供給ユニット60は製品表面のイオン処理ユニット50内へ雰囲気ガスを供給するように製品表面のイオン処理ユニット50に接続されている。言い換えれば、雰囲気ガスは雰囲気ガス供給ユニット60から製品表面のイオン処理ユニット50に供給される。
【0057】
雰囲気ガス供給ユニット60は、それぞれ窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス及び水素ガスを貯蔵する複数の雰囲気ガスタンク61を備えている。複数の雰囲気ガス供給管62は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス及び水素ガス用の雰囲気ガスタンク61を製品表面のイオン処理ユニット50に接続している。雰囲気ガス供給ユニット60は、さらに、複数の雰囲気ガス制御弁63を備え、これらの雰囲気ガス制御弁63はそれぞれの雰囲気ガス供給管62に取り付けられて、製品表面のイオン処理ユニット50に供給される雰囲気ガスを制御する。
【0058】
雰囲気ガス供給ユニット60は、製品表面のイオン処理ユニット50へポリマー成形品で使用するのに適した適当な雰囲気ガスを供給する。雰囲気ガス供給ユニット60は、イオン銃51の出力、走査時間及び製品の基本色に応じて製品表面のイオン処理ユニット50において予定の混合比で二種類以上の混合して得られたガス混合物或いは単一雰囲気ガスを供給し、こうしてポリマー成形品の色を種々変えることができる。
【0059】
本装置の動作において、製品表面のイオン処理ユニット50の入口ゲート90を開放して、ポリマー成形品を製品表面のイオン処理ユニット50に入れる。成形品がユニット50の適位置に置かれると、ユニット50の入口ゲート90は閉じられ、製品の表面をイオン処理するのに必要な雰囲気ガスが雰囲気ガス供給ユニット60から製品表面のイオン処理ユニット50に供給される。
【0060】
上記の状態において、製品表面のイオン処理ユニット50に設けたイオン銃51に印加される電圧は、イオンビーム電流を予定のレベルに制御し、こうしてイオン銃51からフィラメント加熱すなわち電気アークが発生し、このフィラメント加熱すなわち電気アークによってプラズマが生成される。従って、正に帯電したイオンすなわち陽イオンが雰囲気ガスから生成され、ポリマー成形品の表面に一様に放出される。
【0061】
上記の場合に、イオン走査時間及びイオン密度は両方とも、ポリマー成形品の耐熱性、製品の所望の表面硬さ及び製品の電導率に応じて、種々設定される。イオンビームの出力が低下し、イオン走査時間が長くなると、ポリマー成形品の表面色は基本色と明るい褐色との混合したものとなる。一方、イオンビームの出力が高くされ、イオン走査時間が短くなると、製品表面の基本色は消え、暗褐色に変わる。
【0062】
上記で説明したように、ポリマー成形品の表面上でイオンビームを走査させると、製品送りユニット10のジグ11はモータによって四つの方向において予定の角度で上方及び下方に傾斜され、その結果、ポリマー成形品の表面においてイオンビームは一様に走査できる。
【0063】
出口真空ユニット70は、製品表面のイオン処理ユニット50の出口に接続されている。この出口真空ユニット70は予定の真空度に維持され、ポリマー成形品は真空度の急激な変動によって影響されないようにしている。出口真空ユニット70は第3の真空制御ユニット71を備えており、第3の真空制御ユニット71は、出口真空ユニット70を予定の真空度に維持する真空ポンプを備えている。
【0064】
出口真空ユニット70はさらに、1.2×10−5torrの真空度に維持される第3の予備真空チャンバ72と、1.2×10−4torrの真空度に維持される第4の予備真空チャンバ73とを有している。
【0065】
さらに、第2の不純物除去ユニット80は出口真空ユニット70の出口に接続されている。第2の不純物除去ユニット80は、表面処理済みの成形品の表面に不純物が付くのを防止し、また表面処理済みの成形品の表面から不純物を除去する。
【0066】
第2の不純物除去ユニット80は、1.2×10−3torrの真空度に維持され、またポリマー成形品の表面に純粋な空気を吹き付ける第2の空気ブロワー81を備えている。第1の空気ブロワー31から吹き付けられる空気が純粋であるために、第2の不純物除去ユニット80は、ジグ11で保持されたポリマー成形品の表面に不純物が付くのを防止し、出口を通ってユニット80内へ不純物を含んだ空気が入り込むのを防止する。
【0067】
第3の予備真空チャンバ72と、第4の予備真空チャンバ73と、第2の不純物除去ユニット80との間には、複数の開放可能なゲート90が配置され、これらのゲート90を通って製品送りユニット10によってポリマー成形品を移送できる。
【0068】
第3の予備真空チャンバ72及び第4の予備真空チャンバ73の真空度、並びに第2の不純物除去ユニット80の真空度は、チャンバ72、73及びユニット80の順に漸減するように設定される。従って、製品表面のイオン処理ユニット50で表面処理されそして続いて第3の予備真空チャンバ72、第4の予備真空チャンバ73及び第2の不純物除去ユニット80を通過して表面処理装置から放出されるポリマー成形品は、真空度の急な変動による影響を防止する。その結果、ポリマー成形品の生産率は低下されない。
【0069】
さらに、製品表面のイオン処理ユニット50へポリマー成形品を送るためにゲート90が開放されても、製品表面のイオン処理ユニット50の真空度は下がらず、予定の一定の真空度に維持される。従って、本表面処理装置は、製品を大量に生産する工程中、不良製品を造ることなく一様な動作性能をもつポリマー成形品を生産できる。
【0070】
第2の不純物除去ユニット80の出口は製品装着及び解放ユニット20の端部に接続され、それで第2の不純物除去ユニット80から放出された表面処理済みのポリマー成形品は製品装着及び解放ユニット20へ送られる。製品装着及び解放ユニット20において、表面処理済みのポリマー成形品は製品送りユニット10のジグ11から解放され、製品装着及び解放ユニット20の放出部に置かれる。
【0071】
ジグ11から解放され、製品装着及び解放ユニット20の放出部に置かれた表面処理済みのポリマー成形品は二次処理段階へ送られ、製品送りユニット10の空になったジグ11は、製品装着及び解放ユニットの前方部分に設けた装着部に置かれた新しいポリマー成形品を保持し、そしてこの新しいポリマー成形品の表面処理を実行するために再び上述の処理工程を循環する。従って、本発明によるポリマー成形品の表面処理装置は、大量のポリマー成形品の表面をイオン処理するために有効に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明によるポリマー成形品の表面処理装置の構造を概略的に示す図。
【図2】本発明によるポリマー成形品の表面処理装置の製品表面イオン処理ユニットの構造及び動作を示す拡大図。
【図3】本発明によるポリマー成形品の表面処理装置のジグを概略的に示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成形品を交換可能に保持し、その後多数の処理ユニットを介してポリマー成形品を供給するジグ(11)を備えた製品送りユニット(10)と、
表面処理すべきポリマー成形品が製品送りユニット(10)のジグ(11)によって保持するように配置され、そして表面処理の完了したポリマー成形品がジグ(11)から解放されて配置される製品装着及び解放ユニット(20)と、
製品装着及び解放ユニット(20)の側部に設けられ、製品装着及び解放ユニット(20)においてジグ(11)で保持されたポリマー成形品を、製品送りユニット(10)を通して送りながら、ポリマー成形品の表面から不純物を取り除く第1の不純物除去ユニット(30)と、
第1の不純物除去ユニット(30)の側部に設けられ、内部が予定の真空度に維持され、対向する端部に開放可能なゲート(90)をもつ入口を備え、製品送りユニット(10)のジグ(11)によって保持されたポリマー成形品が内部へ通される入口真空ユニット(40)と、
入口真空ユニット(40)の側部に設けられ、内部が予定の真空度に維持され、製品送りユニット(10)のジグ(11)によって保持され送られるポリマー成形品の表面にイオンビームを走査させるイオン銃(51)を備えた製品表面のイオン処理ユニット(50)と、
製品表面のイオン処理ユニット(50)に接続され、製品表面のイオン処理ユニット(50)へ雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給ユニット(60)と、
製品表面のイオン処理ユニット(50)の側部に設けられかつ製品表面のイオン処理ユニット(50)に接続され、内部が予定の真空度に維持され、対向する端部に開放可能なゲート(90)をそれぞれもつ入口及び出口を備え、製品送りユニット(10)のジグ(11)によって保持されたポリマー成形品が内部へ通される出口真空ユニット(70)と、
出口真空ユニット(70)と製品装着及び解放ユニット(20)との間に設けられ、出口真空ユニット(70)から送られてきたポリマー成形品の表面に不純物が突き刺すのを阻止し、ポリマー成形品の表面から不純物を取り除く第2の不純物除去ユニット(80)と
を有して成ることを特徴とするポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項2】
ジグ(11)が、多数のポリマー成形品を交換し、ジグ(11)で存在しているポリマー成形品を新しいポリマー成形品に交換する状態において四つの方向に上下に回転されるように構成され、それにより種々のポリマー成形品をイオンビームで一様に走査することを特徴とする請求項1記載のポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項3】
第1の不純物除去ユニット(30)が真空ポンプを用いて1.2×10−3トールの真空度に維持され、ヒータで加熱した熱風をポリマー成形品に吹き付けることによりポリマー成形品を予熱する第1の空気ブロワー(31)及び第1の空気ブロワー(31)の吸気口に設けられたアニオン化装置(32)の両方を備えていることを特徴とする請求項1記載のポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項4】
製品表面のイオン処理ユニット(50)のイオン銃(51)が、ロックボルトを用いて製品表面のイオン処理ユニット(50)に取り外し可能に装着された二つのイオン銃を備え、イオン銃(51)の下側には加速管(53)を設けて、イオンビームが加速管を通ってポリマー成形品の表面に深くかつ迅速に貫通するようにし、また、ポリマー成形品に対してバイアス電圧を印加して加速管の機能を高め、ビーム走査時間を短縮し、それにより、大量にポリマー成形品を製造できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項5】
イオン銃(51)の下方には、イオンビーム幅を最大化しかつポリマー成形品の表面にエネルギーを一様に加えるグリッド(54)が設けられ、グリッド(54)が2つ以上の穴を備え、イオンビームの形状を変えかつイオンビームの重なり部分を25mm未満に制限し、それにより有効なビーム幅を最大化することを特徴とする請求項1に記載のポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項6】
雰囲気ガス供給ユニット(60)が、それぞれ窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス及び水素ガスを収容する多数の雰囲気ガスタンク(61)と、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス及び水素ガス用の雰囲気ガスタンク(61)を製品表面のイオン処理ユニット(50)に接続する多数の雰囲気ガス供給管(62)と、それぞれの雰囲気ガス供給管(62)に装着され、製品表面のイオン処理ユニット(50)へ供給される雰囲気ガスを制御する多数の雰囲気ガス制御弁(63)とを備え、雰囲気ガス供給ユニット(60)が、ポリマー成形品の使用に適した適切な雰囲気ガスを製品表面のイオン処理ユニット(50)へ供給し、また雰囲気ガス供給ユニットが、単一雰囲気ガス又は二種以上の雰囲気ガスを予定の混合比率で混合して作ったガス混合物を、イオン銃(51)の出力、イオン走査時間及び製品の基本色に応じて製品表面のイオン処理ユニット(50)へ供給し、こうしてポリマー成形品の色を種々変えることを特徴とする請求項1に記載のポリマー成形品の表面処理装置。
【請求項7】
イオン銃(51)がポリマー成形品から1m〜2mの距離離され、イオン銃とポリマー成形品との距離がポリマー成形品の大きさに応じて制御され、それによりポリマー成形品が寸法の小さな製品である場合には該距離が走査時間を短縮するように減少され、一方ポリマー成形品が寸法の大きな製品である場合には、該距離がイオンビーム幅を最大化しかつサイズの大きなポリマー成形品を大量に製造できるように増大されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー成形品の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−534731(P2008−534731A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503935(P2008−503935)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001004
【国際公開番号】WO2006/104323
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507325884)
【Fターム(参考)】