説明

多孔フィルムの製造方法

【課題】多孔フィルムを効率よく製造する。
【解決手段】ポリマーが溶剤に均一に溶解した溶液をつくる。溶剤は、ポリマーの良溶媒とこの良溶媒よりも沸点が低い低沸点液とを含む。塗布ダイ35は吐出口から溶液を支持体27に向けて吐出する。吐出した溶液は、支持体27の表面27a上で塗布膜80となる。送風吸引ユニット36は、塗布膜80に向けて湿潤空気400をあてる。塗布膜80と湿潤空気400との接触により、表面80aに水滴402が形成し、成長しながら、塗布膜80から低沸点液401が蒸発する。送風吸引ユニット38は、塗布膜80に向けて乾燥空気404をあてる。塗布膜80と乾燥空気404との接触により、塗布膜80から良溶媒406及び水滴402が蒸発し、塗布膜80から多孔フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、光学分野や電子分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求がますます大きくなっている。そのため、これらの分野に用いられるフィルムに対しては、より微細な構造(微細パターン構造)を形成すること(微細パターニング)が強く求められている。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な構造を有するフィルムが、細胞培養の場となる材料として有効である。
【0003】
フィルムの微細パターニングには、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィ技術、レーザーアブレーション技術など種々の方法が実用化されている。
【0004】
上記以外のフィルムの微細パターニングとして、ポリマーの溶液を支持体上に塗布し、湿った空気を塗布膜にあてて、多数の孔を有する多孔フィルムをつくる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この多孔フィルムの製造方法の概略について簡単に説明する。まず、疎水性の溶剤とポリマーとを含む溶液を支持体上に塗布して、支持体上に塗布膜を形成する。次に、温度、露点や溶剤の凝縮点等が調節された湿潤空気を、塗布膜の表面のうち露出する面(以下、露出面と称する)にあてて、塗布膜に含まれる溶剤の蒸発を行いつつ、結露により露出面に水滴を形成させ、成長させる。このとき、露出面上の水滴は、その寸法を維持したまま、或いは成長をしながら、塗布膜に潜り込む。そして、溶剤の蒸発により塗布膜の流動性が低下すると、水滴を鋳型として、多数の孔を有する前駆体を得ることができる。最後に、前駆体に乾燥空気をあてて、水滴を蒸発させることにより、多孔フィルムを得ることができる。
【0005】
上記の方法で得られる多孔フィルムの孔の寸法や形成密度は、製造過程における、水滴の核形成や核成長の進行度に影響を受けることが知られている。また、露出面の温度TSと露出面の近傍の空気の露点TDとによって表されるパラメータΔT(=TD−TS)を適宜調節することにより、水滴の核形成や核成長の進行度を調節できることが知られている。したがって、適宜調節されたパラメータΔTの条件の下、露出面に水滴を形成する、或いは水滴を成長させることにより、最終的に得られる多孔フィルムの孔の寸法や形成密度を所望のものにすることができる。
【特許文献1】特開2001−157574号公報
【特許文献2】特開2007−291367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような多孔フィルムの製造方法において、塗布膜に形成した水滴を、成長させ、または整列させる点から、溶液の粘度はできるだけ低いことが好ましい。したがって、この多孔フィルムの製造方法では、溶剤の含有量がポリマーの含有量に対して極めて大きい塗布液を用いる必要がある。また、ポリマーが溶剤に溶解する溶液をつくるため、溶剤として、ポリマーの良溶媒を用いる必要がある。
【0007】
ところが、このポリマーの良溶媒となる物質は、沸点が高いものが多いことから、塗布膜における溶剤の蒸発に長時間を要する。塗布膜における溶剤の蒸発を促進させるためには、塗布膜を加熱する方法や、減圧下に塗布膜をおく方法等が考えられるが、いずれの方法も、溶剤とともに、塗布膜に形成した水滴が蒸発してしまう。したがって、水滴が目標となる寸法に成長するまでは、塗布膜において溶剤の蒸発を行うことができない。以上の経緯から、塗布膜における溶剤の蒸発に長時間を要することが避けられず、結果として、多孔フィルムの製造方法の生産性を向上することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、多孔フィルムを効率よく製造することができる多孔フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多孔フィルムの製造方法は、ポリマーの良溶媒、及びこの良溶媒よりも沸点が低い低沸点物質のうち少なくとも一つが疎水性であって、前記ポリマー、前記良溶媒、及び前記低沸点物質を含む溶液を支持体上に塗布して、この支持体上に塗布膜を形成する膜形成工程と、前記塗布膜に湿潤空気を接触させて、結露により前記塗布膜の表面上に水滴を形成し、前記水滴を成長させながら、前記塗布膜から前記低沸点物質を蒸発させる湿潤空気接触工程と、前記湿潤空気接触工程を経た前記塗布膜を乾燥して、前記水滴を鋳型として前記塗布膜に孔を形成する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
前記膜形成工程において、前記溶液における前記低沸点物質の質量濃度が、前記溶液における前記良溶媒の質量濃度よりも大きいことが好ましい。また、前記低沸点物質が前記ポリマーの貧溶媒でもよい。更に、前記良溶媒と前記低沸点物質とのうち、前記溶液における質量濃度が大きいほうが疎水性であることが好ましい。加えて、前記溶液における前記ポリマーの質量濃度が5質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリマー、良溶媒、低沸点物質を含む溶液を支持体上に塗布して、塗布膜を形成し、塗布膜に湿潤空気を接触させて、結露により塗布膜の表面上に水滴を形成し、水滴を成長させながら、塗布膜から低沸点物質を蒸発させるため、従来の方法に比べ、塗布膜における良溶媒及び低沸点物質の蒸発を短時間で行うことが可能となる。したがって、本発明によれば、多孔フィルムを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(A)に示すように、本発明により得られる多孔フィルム10は、表面に孔11を有する。孔11は、ハチの巣状、いわゆるハニカム構造となるように多孔フィルム10に密に配列する。そして、図1(B)及び(C)に示すように、孔11は、多孔フィルム10の両表面を突き抜けるように形成される。なお、図1(D)のように、孔11の代わりに、窪み13が片方の表面側に形成される多孔フィルム14や、隣り合う孔11が連通しないような多孔フィルムも本発明の多孔フィルムに含まれる。
【0013】
なお、本明細書において、ハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの孔の周囲を複数(例えば、6つ)の孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や六方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。なお、同一平面上において、1つの孔の周囲に形成される孔の数は、6個に限らず、3〜5個或いは7個以上でも良い。
【0014】
本発明により製造される多孔フィルム10の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、多孔フィルム10の厚みTH1が0.05μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上30μm以下であることが特に好ましい。そして、この孔11の寸法や形成ピッチは、後述する製造条件によって異なるが、特に限定されるものではなく、例えば、孔11の径D1が0.05μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上30μm以下であることが特に好ましい。孔11の形成ピッチP1が0.1μm以上120μm以下であることが好ましく、0.1μm以上60μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0015】
図2に示すように、本発明を実施した多孔フィルム製造設備20は、支持体送出装置21、塗布室22、及び製品カット装置23から構成されている。支持体送出装置21は、支持体ロール26から長尺状の支持体27を引き出して、支持体27を塗布室22に送る。塗布室22は、支持体27の上に溶液28を塗布して乾燥させることにより、多孔フィルム10を製造する。製品カット装置23は、得られた多孔フィルム10を、支持体27とともに所定のサイズに切断し、中間製品とする。この中間製品に対し各種加工を施すことで、最終製品が得られる。支持体27としては、ステンレス製やガラス製、さらにはポリマー製の板材が用いられる。なお、支持体送出装置21、製品カット装置23は、連続的に大量に多孔フィルム10を製造する場合に用いられるものであり、製造規模に応じて適宜省略してもよい。
【0016】
溶液28は、溶剤と、この溶剤に溶解するポリマーとを含む。必要に応じて、溶液28に添加剤を添加してもよい。溶剤は、ポリマーの良溶媒、及び良溶媒よりも沸点が低い低沸点液が含まれる。ポリマー、良溶媒、及び低沸点液等の詳細については後述する。
【0017】
塗布室22は、支持体27の走行方向(以下、X方向と称する)の上流側から順に、第1室31、第2室32、第3室33に区画されている。第1室31には、塗布ダイ35が設けられる。第2室32には送風吸引ユニット36が設けられ、第3室33には送風吸引ユニット38が設けられている。
【0018】
塗布ダイ35は、スリットと吐出口とを有する。スリットは、配管43を介して溶液28を貯留するタンク(図示しない)と連通する。この配管43にはポンプ44が設けられる。吐出口42はスリットと連通し、支持体27と対向するように塗布ダイ35に設けられる。なお、塗布ダイ35に温調機を設け、スリットを通過する溶液28の温度を所定の範囲に調整する、或いは、リップ先端部45で結露が発生しないように、リップ先端部45等、塗布ダイ35の各部の温度を調節してもよい。
【0019】
第2室32には、2つの送風吸引ユニット36が、方向Xに並ぶように設けられている。送風吸引ユニット36は、送風口51及び吸気口52を有するダクトと、送風部53とを備える。送風部53は、送風口51から送り出す湿潤空気400の温度、露点TD、溶剤が凝縮する温度であるガス露点や風量を制御し、吸気口52から塗布膜の周辺気体を吸排気する。なお、第2室32に送風吸引ユニット36を設ける数は、1つ、或いは3つ以上であってもよい。
【0020】
第3室33には、4つの送風吸引ユニット38が、方向Xに並ぶように設けられている。送風吸引ユニット38は、送風口61及び吸気口62を有するダクトと、送風部63とを備える。送風部63は、送風口61から送り出す乾燥空気404の温度、露点、ガス露点や風量を制御し、吸気口62から塗布膜の周辺気体を吸排気する。なお、第3室33に送風吸引ユニット38を設ける数は、1つ、2つ、3つ、或いは5つ以上であってもよい。
【0021】
各室31〜33には、複数のローラ65が適宜設けられている。ローラ65は主要なもののみ図示し、その他は省略している。このローラ65は、駆動ローラとフリーローラとから構成されている。駆動ローラが適宜配置されることにより、各室31〜33内で支持体27が一定速度で搬送される。また、各ローラ65は、図示しない温度コントローラにより各室毎に温度制御されている。また、各ローラ65の間で、支持体27に近接して表面27a(図3参照)とは反対側に、図示しない温度制御板が配置されている。温度制御板の温度は、支持体27の表面27aの温度が所定の範囲内となるように調節されている。
【0022】
塗布室22の各室31〜33には図示しない溶剤回収装置が設けられており、各室31〜33の雰囲気に含まれる溶剤、すなわち、溶液28に含まれる良溶媒や低沸点液を回収する。回収した溶剤は、図示しない再生装置で再生されて再利用される。
【0023】
次に、多孔フィルム製造設備20(図2参照)にて行われる多孔フィルムの製造方法について説明する。ローラ65は回転駆動し、支持体送出装置21は支持体27を塗布室22に送る。図示しない温度制御板により、支持体27の表面27aの温度は、所定の範囲内(0℃以上30℃以下)でほぼ一定となるように保持される。支持体27は、第1室31、第2室32、及び第3室33を、所定の速度(0.001m/分以上50m/分以下)で順次通過する。ポンプ44は、温度が所定の範囲(0℃以上30℃以下)内でほぼ一定に調節された所定の流量の溶液28を、タンクから塗布ダイ35へ供給する。
【0024】
(膜形成工程)
第1室31では膜形成工程が行われる。図2及び図3(A)に示すように、膜形成工程では、塗布ダイ35は、溶液28を支持体27の表面27a上に塗布し、表面27a上に塗布膜80を形成する。塗布膜80の厚さTH0は、溶液28の粘度及び流量、スリットのクリアランスや、支持体の移動速度などにより調節することができる。形成直後の塗布膜80の厚さTH0は1500μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。なお、膜厚が均一の塗布膜80を形成するためには、厚さTH0を10μm以上とすることが好ましい。
【0025】
(湿潤空気接触工程)
第2室32では湿潤空気接触工程が行われる。図2及び図3(B)に示すように、湿潤空気接触工程では、送風吸引ユニット36は、所定の条件に調節された湿潤空気400を、塗布膜80に向けて送る。湿潤空気400との接触により、塗布膜80の表面80aには、結露により水滴402が形成され、塗布膜80から低沸点液401が蒸発する。湿潤空気接触工程では、低沸点液401が塗布膜80から蒸発するに従って、塗布膜80中の溶液28の粘性が増大するものの、水滴の整列、成長を抑える程度にまでには至らない。したがって、表面80a上の水滴402は、毛細管力等により整列し、湿潤空気400との接触により成長する。こうして、表面80a上における水滴402の配列はハニカム構造を有し、水滴402は目標寸法となるまで成長する。そして、塗布膜80からの低沸点液401の蒸発に伴い、塗布膜80中の溶液28の流動性が低くなる結果、水滴402の整列、成長は抑えられ、この水滴402が鋳型となって、塗布膜80は多孔フィルムの前駆体となる。
【0026】
水滴402の各形成、または核成長の進行度は、湿潤空気400の露点TDと、塗布膜80の表面80aの温度TSとによって表されるパラメータΔTw(=TD−TS)により調節することができる。温度TSは、支持体27の表面27aの温度や溶液28の温度により調節することができる。結露を生じさせる点から、第1室31におけるΔTwは、少なくとも0℃以上であることが好ましい。また、ΔTwは0.5℃以上30℃以下であることが好ましく、1℃以上25℃以下であることがより好ましく、1℃以上20℃以下であることが特に好ましい。
【0027】
また、塗布膜80から低沸点液401を蒸発させるためには、湿潤空気400の低沸点液401についてのガス露点TRと塗布膜80の近傍の雰囲気温度TAとによって表されるパラメータΔTs(=TA−TR)を所定の範囲に調節することができる。なお、雰囲気温度TAは、第1室32における雰囲気温度や湿潤空気400の温度によって調節することができる。ガス露点TRは、溶剤回収装置により調節することができる。例えば、ΔTsは0℃より大きいであることが好ましい。
【0028】
湿潤空気接触工程では、塗布膜80における溶液28の粘度が、水滴の整列、成長を抑える程度まで増大させることが好ましい。したがって、第2室32における湿潤空気接触工程において、溶液28の粘度が10Pa・s以上となるまで、或いは溶液28の残留溶剤量が500質量%以上となるまで、低沸点液401を蒸発させればよい。ここで、残留溶剤量は、溶液28や塗布膜80に残留する溶剤量を乾量基準で示したものを残留溶剤量とする。残留溶剤量は、対象となる塗布膜からサンプル膜を採取し、採取時のサンプル膜の重量をx、サンプル膜を乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で表される。
【0029】
(乾燥工程)
第3室33では乾燥工程が行われる。乾燥工程では、送風吸引ユニット38は、所定の条件に調節された乾燥空気404を塗布膜80に向けて送る。図2及び図3(C)に示すように、乾燥空気404との接触により、塗布膜80から良溶媒406が蒸発する。続いて、図2及び図3(D)に示すように、乾燥空気404との接触により、塗布膜80から及び水滴402が蒸発する。こうして、乾燥工程により、塗布膜80から多孔フィルム10が得られる。なお、良溶媒406及び水滴402を同時に塗布膜80から蒸発させても良いし、塗布膜80に低沸点液401が残留する場合には、良溶媒406や水滴402とともに低沸点液401を塗布膜80から蒸発させても良い。
【0030】
本発明では、多孔フィルムの製造方法において、ポリマー、ポリマーの良溶媒406とともに、良溶媒406よりも沸点の低い低沸点液401を含む溶液28を用いたため、湿潤空気接触工程にて、水滴402を形成し、整列し、成長させながら、低沸点液401を塗布膜80から蒸発させることができる。したがって、本発明は、水滴402の形成、整列、及び成長を阻害せずに、湿潤空気接触工程の後に行われる乾燥工程を短時間にすることが可能となり、結果として、多孔フィルムの製造を従来に比べ短時間で行うことができる。
【0031】
また、乾燥工程において、塗布膜80に良溶媒406よりも沸点の低い低沸点液401が含まれている場合には、塗布膜80に良溶媒406のみが含まれている場合に比べ、塗布膜80から良溶媒406が蒸発しやすくなるため、従来に比べ、多孔フィルムの製造を短時間で行うことができる。
【0032】
湿潤空気接触工程では、目標とする寸法まで水滴402が成長したときに、塗布膜80中の溶液28の粘度が水滴の整列、成長を抑える程度となるように、塗布膜80から低沸点液401を蒸発させてもよい。また、水滴402が目標とする寸法まで成長すると同時に、塗布膜80中の溶液28の粘度が水滴の整列、成長を抑える程度となるように、塗布膜80から低沸点液401を蒸発させることが好ましい。このような湿潤空気接触工程を行うためには、塗布膜80における低沸点液401の蒸発速度や、溶液28における良溶媒406や低沸点液401の組成割合などを適宜決定すればよい。
【0033】
低沸点液401の蒸発速度は、ΔTsにより調節することが可能である。ΔTsが大きくなるに従い、低沸点液401の蒸発速度が大きくなり、ΔTsが小さくなるに従い、低沸点液401の蒸発速度が小さくなる。また、塗布膜80中の溶液28の温度の調節により、低沸点液401の蒸発速度を調節してもよい。塗布膜80中の溶液28の温度の調節は、支持体27の温度の調節により可能となる。なお、溶液28における良溶媒406や低沸点液401の組成割合などの決定方法については後述する。
【0034】
図2に示すように、上記実施形態では、製品カット装置23は、多孔フィルム10を支持体27とともに所定の寸法に切断したが、本発明はこれに限られない。例えば、支持体27が、ステンレス製のエンドレスバンドやドラム、その他のポリマー製フィルムなどのように、第1室31〜第3室33を順次エンドレスに走行する場合には、多孔フィルム10を支持体27から剥ぎ取った後、多孔フィルム10を製品カット装置23に導入すればよい。また、少量生産の場合には、支持体27の代わりに、シート状に切断されたカットシートを用いてもよい。
【0035】
(溶液)
溶液28におけるポリマーの質量濃度は、支持体27の表面27a上に、膜厚が均一の塗布膜80が形成できる範囲内であれば良く、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。前記ポリマーの質量濃度が0.01質量%未満であると、フィルムの生産性に劣り工業的大量生産に適さないおそれがある。また、前記ポリマーの質量濃度が30質量%を超える質量濃度であると、溶液28の粘性が増大し、塗布膜80の形成が困難となるため、好ましくない。また、ポリマーの質量濃度は5%以下であることが好ましく、0.01%以上5%以下であることがより好ましく、0.05%以上3%以下であることが更に好ましく、0.1%以上2%以下であることが特に好ましい。
【0036】
溶液28の粘度は、1×10−4Pa・s以上1×10−1Pa・s以下であることが好ましい。溶液の粘度が1×10−1Pa・sを超えると、溶液の低い流動性に起因し、塗布膜における水滴の配列が起こりにくくなる結果、孔の形成ピッチにばらつきが生じる点で好ましくなく、溶液の粘度が1×10−4Pa・s未満であると、溶液の高い流動性に起因して、形成した水滴が連結する結果、孔の寸法にばらつきが生じる点で好ましくない。
【0037】
溶液28と水との界面張力が、5mN/m以上20mN/m以下であることが好ましい。溶液28と水との界面張力が20mN/mを超えると、溶液28の液面上に微小な水滴を形成することが困難になる点で好ましくない。溶液28と水との界面張力が5mN/m未満であると、水滴の径を大きくすることが困難となる点で好ましくない。
【0038】
(良溶媒)
良溶媒406は、有機溶剤など、ポリマーを溶解させることができる溶剤であれば特に制限はなく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン,四塩化炭素等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。
【0039】
ある物質がポリマーの貧溶媒であるか良溶媒であるかを、温度5℃以上30℃以下の範囲内において、ポリマーが全重量の5質量%となるように当該物質とポリマーとを混合することにより判断することができる。そして、その混合物中に不溶解物が有る場合には当該物質は貧溶媒であり、その混合物中に不溶解物がない場合には当該物質は良溶媒であると判断することができる。
【0040】
(低沸点液)
低沸点液401は、良溶媒406と相溶する物質であることが好ましい。なお、低沸点液401としては、良溶媒406に溶解させる前において、液状でもよいし、良溶媒406と相溶するものであれば、固体であってもよい。
【0041】
低沸点液401の沸点は、良溶媒406の沸点よりも低いことが好ましい。例えば、低沸点液401の沸点は30℃以上70℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。低沸点液401としては、ポリマーの良溶媒でもよいし、ポリマーの貧溶媒でもよい。
【0042】
(貧溶媒)
ポリマーがエチレン酢酸ビニル重合体である場合には、貧溶媒として、例えば、ジクロロメタンが用いられる。
【0043】
溶液28における良溶媒406の組成割合は、水滴を鋳型として塗布膜80に孔を形成する点から、溶液28に含まれるポリマーが良溶媒406に溶解し得る最低限の割合(以下、限界割合と称する)以上である必要がある。しかしながら、溶液28における良溶媒406の組成割合が、この限界割合よりも大きくなると、良溶媒406の蒸発に要する時間が長くなるため好ましくない。したがって、溶液28における良溶媒406の組成割合は、限界割合であることが最も好ましい。
【0044】
また、湿潤空気接触工程において、塗布膜80中の溶液28の粘度が、水滴の整列、成長が起こる程度の粘性を有する必要がある。したがって、湿潤空気接触工程では、水滴402が目標とする寸法まで成長するまでは、塗布膜80中の溶液28の粘度が、水滴の整列、成長が起こる程度となるように、そして、水滴402が目標とする寸法まで成長した後には、塗布膜80中の溶液28の粘度が、水滴の整列、成長が抑えられる程度となるように、溶液28に良溶媒406及び低沸点液401の組成割合を適宜調節してもよい。なお、水滴402が目標とする寸法まで成長すると同時に、塗布膜80中の溶液28の粘度が水滴の整列、成長を抑える程度となるように、溶液28に良溶媒406及び低沸点液401の組成割合を適宜調節してもよい。
【0045】
水滴を形成、成長させる点から、低沸点液401及び良溶媒406のうち少なくとも一方は疎水性であることが好ましい。特に、低沸点液401及び良溶媒406のうち、溶液28における質量濃度が大きいほうが疎水性であることが好ましい。
【0046】
また、溶液28における低沸点液401の質量濃度Mtは、良溶媒406の質量濃度Mrよりも大きいことが好ましい。より具体的には、Mt/Mrの値は1以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。
【0047】
(ポリマー)
ポリマーとしては、非水溶性溶剤に溶解するポリマー(以下、「疎水性ポリマー」と称する)を用いることが好ましい。また、前記疎水性ポリマーだけでも多孔フィルムを形成することができるが、両親媒性ポリマーを共に用いることが好ましい。
【0048】
(疎水性ポリマー)
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、セルロースアシレート(トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。光学用途に使う場合には、例えば、セルロースアシレート、環状ポリオレフィンなどが好ましい。
【0049】
(両親媒性ポリマー)
前記両親媒性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。
【0050】
前記疎水性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。該疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
【0051】
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶剤の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(親水基:疎水基)=0.1:9.9〜4.5:5.5であることが好ましい。また、コポリマーの場合、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶剤への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
【0052】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
【0053】
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性ポリマーとの組成比率(質量比率)は、99:1〜50:50が好ましく、98:2〜70:30がより好ましい。前記両親媒性ポリマーの比率が1質量%未満であると、均一な多孔フィルムが得られなくなることがある。一方、前記両親媒性ポリマーの比率が50質量%を超えると、塗布膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがある。
【0054】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることも好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
【0055】
前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーと併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーである場合には、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
【0057】
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0058】
前記光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0059】
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
【0060】
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0062】
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0063】
前記光ラジカル開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
【0064】
前記光ラジカル開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0065】
なお、前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。外光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
【0066】
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。
【0067】
具体的には、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の実施例を説明する。各実験の説明は実験1で詳細に行い、実験2〜6については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
【0069】
(実験1)
次に、実験1について説明する。
【0070】
(溶液の調製)
以下組成の溶液28を調整した。
疎水性ポリマー(ポリスチレン) 1 質量%
両親媒性ポリマー(ポリアクリルアミド) 0.1質量%
良溶媒(トルエン) 10 質量%
低沸点溶媒(ジクロロメタン) 88.9質量%
この溶液28に濾過処理を行い、異物を除去した。
【0071】
(多孔フィルムの製造)
図2に示すように、塗布ダイ35は、温度が10℃以上30℃以下の範囲内でほぼ一定の保持された溶液28を支持体27に吐出し、支持体27の表面27aに塗布膜80を形成し、膜形成工程を行った。塗布膜80の膜厚TH0は、700μmであった。
【0072】
送風部53は、温度が30℃、露点TDが20℃、露点TRが5℃以下の範囲内でそれぞれほぼ一定となるように湿潤空気400を調節した。そして、送風吸引ユニット36は、塗布膜80に湿潤空気400をあてて、溶液28の残留溶剤量が500質量%以上となるまで湿潤接触工程を行った。
【0073】
送風部63は、温度が40℃、露点TDが10℃、ガス露点TRが0℃以下の範囲内でそれぞれほぼ一定となるように乾燥空気404を調節した。そして、送風吸引ユニット38は、塗布膜80に乾燥空気404をあてて、乾燥工程を行った。
【0074】
湿潤空気接触工程に要した時間T2は5分であり、乾燥工程に要した時間T3は10分であった。
【0075】
得られた多孔フィルム10の厚みTH1が約3.0μmであり、孔11の径D1が約5.0μmであり、孔11の形成ピッチP1が約6.0μmであった。
【0076】
(実験2〜6)
実験2〜6では、各パラメータを表1に示す値にしたこと以外は実験1と同様にしてフィルム20を製造した。ただし、実験4、5における疎水性ポリマーとして、ポリスチレンに代えて、エチレン酢酸ビニル共重合体(40質量%酢酸ビニル)を用いた。なお、表1中のCsは溶液28における疎水性ポリマーの質量濃度であり、Crは溶液28における両親媒性ポリマーの質量濃度である。得られた多孔フィルムの厚みTH1、孔の径D1、形成ピッチは、実験1と同等のものであった。
【0077】
【表1】

【0078】
1.生産性の評価
実験1〜6について、以下基準で評価した。実験1〜6についての評価結果は表1に示す。
A:(T2+T3)の値が15分以内であった。
B:(T2+T3)の値が15分より大きく30分以内であった。
C:(T2+T3)の値が30分より大きく45分以内であった。
D:(T2+T3)の値が45分より大きかった。
【0079】
実験1〜6の結果より、本発明によれば、塗布膜の乾燥に要する時間が短くなるため、効率よく多孔フィルムを製造できることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(A)は、複数の貫通孔を有する多孔フィルムの概要を示す平面図であり、(B)はB−B線断面図、(C)はC−C線断面図である。(D)は、複数のくぼみを有する多孔フィルムの平面図である。
【図2】多孔フィルムの製造設備の概要を示す説明図である。
【図3】多孔フィルムの製造方法の各工程における塗布膜の概要を示す説明図である。(A)は膜形成工程における塗布膜の概要を示す説明図であり、(B)は湿潤空気接触工程における塗布膜の概要を示す説明図であり、(C)、(D)は乾燥工程における塗布膜の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
10 多孔フィルム
11 孔
27 支持体
28 溶液
35 塗布ダイ
36、38 送風吸引ユニット
80 塗布膜
400 湿潤空気
401 低沸点液
402 水滴
404 乾燥空気
406 良溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの良溶媒、及びこの良溶媒よりも沸点が低い低沸点物質のうち少なくとも一つが疎水性であって、前記ポリマー、前記良溶媒、及び前記低沸点物質を含む溶液を支持体上に塗布して、この支持体上に塗布膜を形成する膜形成工程と、
前記塗布膜に湿潤空気を接触させて、結露により前記塗布膜の表面上に水滴を形成し、前記水滴を成長させながら、前記塗布膜から前記低沸点物質を蒸発させる湿潤空気接触工程と、
前記湿潤空気接触工程を経た前記塗布膜を乾燥して、前記水滴を鋳型として前記塗布膜に孔を形成する乾燥工程と、
を有することを特徴とする多孔フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記膜形成工程において、前記溶液における前記低沸点物質の質量濃度が、前記溶液における前記良溶媒の質量濃度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の多孔フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記低沸点物質が前記ポリマーの貧溶媒であることを特徴とする請求項1または2記載の多孔フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記良溶媒と前記低沸点物質とのうち、前記溶液における質量濃度が大きいほうが疎水性であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の多孔フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶液における前記ポリマーの質量濃度が5質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の多孔フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−77356(P2010−77356A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250428(P2008−250428)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】