多孔体、多孔体を含む組成物及び多孔体を備えるセンサー
【課題】 メソ孔にグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体が存在しなかった。
【解決手段】 そこで、本発明は、メソ孔を有する多孔体であって、前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供するものである。
【解決手段】 そこで、本発明は、メソ孔を有する多孔体であって、前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体に関する。グルコースデヒドロゲナーゼの性質を利用し、血糖値を検査するためのグルコースセンサーに応用可能である。
【背景技術】
【0002】
酵素は、熱によって容易に失活する。これは、熱によって酵素を構成するタンパク質の立体構造が変形してしまうためである。そこで、安定的に酵素を利用するために、酵素を多孔体の穴の中に固定化する技術が開発されている。
【0003】
その中で、メソポーラス材料は、比表面積が大きいため、単位面積あたりの酵素の担持量を大きくできるため、盛んに開発が行われている(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−139459号公報
【特許文献2】特開2002−95471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のメソポーラス材料の孔径は小さく、大きな酵素であるグルコースデヒドロゲナーゼをメソ孔内に担持することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、メソ孔内にグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取るための電子伝達物質とを含む組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取るための電子伝達物質とを含む緩衝溶液と、
前記電子伝達物質から電子を受け取るための電極とを備えるセンサーを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、メソ孔を有する多孔体であって、前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つメソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供することが可能になった。これにより、グルコースデヒドロゲナーゼを用いたセンサーに応用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の概要を図1、図2を用いて説明する。図1において、本発明の一実施形態であるグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を担持した多孔体1がある。ここでは、ロッド状の粒子を開示している。ロッド状の粒子は、メソ孔2を有し、メソ孔は、ロッド状の粒子の短軸方向に形成している。このメソ孔2の中には、グルコースデヒドロゲナーゼ3が担持されている。図1の右に、グルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体の一部を拡大した図を示した。棒状に見える部分が、細孔壁4であり、その細孔壁に挟まれるようにグルコースデヒドロゲナーゼ3が担持され、グルコースデヒドロゲナーゼの活性部位にグルコース5が結合している。
【0012】
また、図2では、視点をかえた場合の本発明の一実施形態であるロッド状の粒子の概略図である。楕円状のものがグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体1である。その一部を拡大したのが右の図である。メソ孔2の開口部がハニカム状に配置され、チューブ状になっている。
【0013】
(グルコースデヒドロゲナーゼ)
ここで、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、グルコースオキシダーゼを用いたセンサーと比べると、酸素濃度の影響を受けないため、酸素が存在する生活空間でもちいた場合にもより正確に測定することが可能になる利点がある。
【0014】
また、グルコースデヒドロゲナーゼとしては、ピロロキノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ−GDH、14nm)とNAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH、12nm)とNADP依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NADP−GDH)とが好ましく用いることができる。FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼなども考えられる。
【0015】
PQQ−GDHは、NAD−GDHやNADP−GDHよりも安定性が高く、臨床検査薬を添加しても失活しにくい、一方、マルト−スやガラクトースといった糖類とも反応してしまうので、より高い選択性を求めるのならばNAD−GDHやNADP−GDHが好ましい。
【0016】
NAD−GDHやNADP−GDHを用いる場合は、NAD−GDHやNADP−GDHが、酸化還元反応が難しいため、電子伝達物質(又はメディエーター)を用いることが好まれる。電子伝達物質は、還元型NADを酸化還元酵素により酸化する際に、この電子伝達物質を還元し、生成した還元型電子伝達物質が電極上での電圧印加により酸化されることを利用して陽極電流を測定することによりセンサとして用いることができる。電子伝達物質はフェリシアニド、ピロロキノリンキノン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、テトラゾリウム塩、フェロセンなどが挙げられる。
【0017】
(メソ孔の形状、孔径、長さ、配列)
ここで、メソ孔とは、2nm以上50nm以下の孔径を有する細孔のことであり、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)において定義されている。
【0018】
本発明に用いられるメソ孔としては、例えば、一方の開口部から他方の開口部まで孔径が単調増加している形状、孔径が不連続に変化する形状などであってもよい。また、メソ孔自体が途中で複数に分岐する形状でもよい。
【0019】
本発明に用いられるメソ孔の配列としては、例えば升目の交点にメソ孔が配列したものや、ハニカム状に細孔が配列したものに限らず、規則的或いは不規則に配列したものであっても良い。
【0020】
本発明においては、メソ孔の孔径が10nm以上50nm以下であることにより、従来のメソ孔を有する多孔体に担持できなかったグルコースデヒドロゲナーゼを担持することが可能になった。
【0021】
本発明に係る多孔体をどのような用途に用いるかもによるが、例えば、バイオセンサーに適用する場合には、生体物質の立体構造安定化の点からメソ孔の孔径は30nm以下であるのがよい。なお、孔径は孔の断面形状が円であれば直径のことであり、楕円など変形した円の場合は、最も長い部分である。
【0022】
メソ孔の長さとしては、50nm以上500nm以下が好ましい。バイオセンサー等の反応場として利用する観点からは、50nm以上300nm以下がより好ましいものである。また、メソ孔の長さと孔径の関係としては、メソ孔の長さが孔径の30倍以内であることが好ましい。メソ孔の長さが長いと、反応場に利用できない部分が多くなるためである。また、メソ孔同士の間隔は、例えば、1nm〜4nm程度である。なお、隣接する複数のメソ孔の伸長方向が、同じ方向に揃っていることもより好ましいものである。
【0023】
ここで、メソ孔の孔径の具体的測定方法について説明する。
【0024】
粉末状態のメソ孔を有する多孔体について、窒素ガス吸脱着測定を行い、細孔径に関する情報を得ることができる。具体的には、窒素ガス吸着測定の結果から、Berret−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔径分布を求める。本発明に好適に用いられる多孔体の孔径分布は、単一の極大値を示し、且つ、当該孔径分布において、全メソ孔中の60%以上のメソ孔が、極大値を含む10nmの幅を持つ範囲に含まれる。後述する実施例によれば、90%以上の細孔が10nmの幅を持つ範囲内に含まれると良い。
【0025】
メソ孔の周期性は、X線回折(XRD)測定からその情報を得ることができる。本実施形態に係る構造体は、XRD測定において、1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有する。これは、メソ孔が規則的に配列していることを意味する。
【0026】
(多孔体の製造方法)
本発明の一実施形態によるメソ孔を有する多孔体の製造方法について説明する。
【0027】
まず、配向制御剤と、界面活性剤と、構造体の骨格部になる物質と、を含む反応溶液を用意する。
【0028】
次に、加水分解触媒の存在下で、反応溶液を100℃又は120℃に加熱し、水熱合成条件下で界面活性剤を含む構造体を形成する。後述するが、実施例では100℃で加熱するとロッド状粒子が形成され、120℃で加熱すると樹状の粒子が形成される。
【0029】
そして、構造体から界面活性剤を除去する。
【0030】
具体的には、骨格部の原料になる物質、界面活性剤、及び配向制御剤を含む反応溶液に加水分解触媒を添加し、室温付近で攪拌した後、例えば数時間から数日間の範囲で、原料物質の縮重合反応を生じさせる。次に、溶液中にできた沈殿物を回収し、洗浄した後に乾燥させる。そして、前記沈殿物から界面活性剤を除去する。こうすると、骨格部を、その長手方向に交差する方向に貫通しているメソ孔を有する構造体が得られる。
【0031】
前記骨格部の原料になる物質とは、ハロゲン化物、カルコゲン化物、あるいは金属アルコキシド等である。メソ孔の孔壁を酸化シリコンで形成する場合には、金属アルコキシドであるテトラエトキシシランやテトラメトキシシランが好適に用いられる。
【0032】
界面活性剤としては、ポリエチレンオキシドを親水基として含むブロックコポリマーなどの非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0033】
配向制御剤としては、樹状骨格部の長手方向を横切るように界面活性剤を配向させることができる有機物であればよく、例えば、n−decane(C10H22)が挙げられる。反応時間を数時間〜数日程度、反応時の温度を100℃や120℃に設定する。100℃や120℃の温度は、溶液を加熱する炉の雰囲気温度であるが、溶液は耐圧の容器の中にあり、実質的に溶液の温度も雰囲気の温度と同じになる。
【0034】
得られた多孔体は、溶液中に沈殿するので、遠心分離を用いて回収することができる。そして、自然乾燥などで回収物を乾燥させる。回収した沈殿物からミセルを形成している界面活性剤を除去することで、多孔体を得ることができる。
【0035】
なお、界面活性剤の除去方法は、細孔構造を破壊せずに界面活性剤を除去できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、溶剤により界面活性剤を溶かし出して除去する方法や、超臨界状態の流体を付与して孔内から界面活性剤を押し出す方法、更にはオゾンを用いて酸化除去する方法などがある。
【0036】
より好ましくは、酸素を含んだ雰囲気中で構造体を焼成して界面活性剤を除去する方法が良い。この場合、構造体を空気中で、550℃において5時間焼成することによって、メソポーラス構造をほとんど破壊することなく、界面活性剤を除去することができる。焼成温度と時間は、細孔壁又は骨格を形成する材料と使用する界面活性剤により、適宜選択される。
【0037】
なお、上述の方法により得られる多孔体に以下の工程を付加し、グルコースデヒドロゲナーゼ担持体を製造することもできる。
【0038】
具体的には、グルコースデヒドロゲナーゼを含んだ溶液中に、前記メソ孔を有する多孔体を入れ、攪拌することによって多孔体の穴にグルコースデヒドロゲナーゼを吸着させる方法である。また、グルコースデヒドロゲナーゼを、前記メソ孔に導入し易くするために、メソ孔の細孔表面(孔壁面)に官能基(例えば、アミノ基、カルボン基)を導入してもよい。このように、グルコースデヒドロゲナーゼがメソ孔へ入りやすくなるのは、孔壁表面に存在する官能基とグルコースデヒドロゲナーゼとの電気的相互作用によるものと考えられる。
【0039】
例えば、シランカップリング剤で細孔表面を修飾する方法や酸化物を形成し得る金属を含有する金属塩の水溶液を用いて細孔表面を修飾する方法がある。なお、シランカップリング剤は、一般的にR−Si−X3の化学式で表される化合物で、分子中に2個以上の異なった官能基を持っている。上記Xは無機材料から成る多孔体表面と反応することができる部位である。例えば、Sol−Gel Science誌1989年第662頁には、メソポーラス材料が酸化シリコンである場合が記述されている。それは、細孔表面に存在するシラノール基の水素が有機ケイ素基によって置換され、Si−O−Si−R結合を形成し、細孔表面に有機物Rの層を形成する。Xとしては、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基等である。勿論、細孔表面と反応し、Rの層を形成することができれば、Xが三官能基のものでなくても、二官能基や一官能基のカップリング剤を用いることもできる。Rは有機基であり、アミノ基やカルボン基、あるいはマレイミド基等である。
【0040】
また、酸化物を形成し得る元素を含有する金属塩の水溶液を用いて細孔表面を修飾する場合は、当該酸化物層を形成し得る元素として、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等を用いることができる。例えば、メソポーラスシリカをオキシ硝酸ジルコニウムの水溶液で処理を行うことにより、表面にジルコニウムの酸化物層を形成することが可能である。
【0041】
個々のメソ孔には1個または2個以上のグルコースデヒドロゲナーゼを収容できる。したがって、このメソ孔はグルコースデヒドロゲナーゼを固定化するのに適当な大きさが必要である。
【0042】
メソ孔のサイズと、それに固定化するグルコースデヒドロゲナーゼのサイズとが適合する場合、グルコースデヒドロゲナーゼ表面はメソ孔の孔壁に近接する。このため、グルコースデヒドロゲナーゼはメソ孔の壁壁からのvan der waals力によりメソ孔内に吸着する。これにより、グルコースデヒドロゲナーゼの立体構造がより一層保たれ、立体構造の変化によるグルコースデヒドロゲナーゼの失活がより一層抑制できる。なお、vander waals力による保持だけではなく、静電的結合、水素結合、イオン結合の非共有結合で活性ユニットをメソ孔内に保持することも可能である。
【0043】
今回メソ孔にグルコースデヒドロゲナーゼを担持させる方法においても新たな知見を得た。従来は、生体物質の電荷と固定化担体表面の電荷との差が大きいほうが、強い静電吸着が得られるため、より多く固定化できると考えていた。しかし、電荷を帯びたNAD−GDHは、静電反発してしまいメソ孔内に導入する際には、固定化できるNAD−GDHの量が制限されてしまうことがわかった。そこで、本発明においては緩衝液の塩濃度を上昇させ、NAD−GDH水溶液中のイオン強度を増加させることで各NAD−GDH間の静電反発を緩和させた。ただ、静電反発を0にしてしまうとGDH同士が凝集してしまうため、若干の電荷を帯びるような溶液調整が必要となる。この方法により、細孔内に固定化させるNAD−GDHの量を緩衝液の塩濃度制御により可能にし、最大固定化量が従来よりも大きく増加することを見出した。
【0044】
(本発明に係る多孔体を用いた機能デバイス)
次に、本発明に係る多孔体を用いた機能デバイスについて説明する。
【0045】
上述しているように、メソ孔にグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体は、機能デバイスとしてのバイオセンサーに適用することができる。
【0046】
本発明の一実施形態による、検体の検出方法について説明する。
【0047】
まず、上述した多孔体のメソ孔内にグルコースデヒドロゲナーゼを担持させたセンサーを用意し、当該センサーに検体を含む流体(液体、気体)を付与する。すると、検体を含む流体は、メソ孔内に侵入し、メソ孔内に担持されたグルコースデヒドロゲナーゼと反応する。そして、グルコースデヒドロゲナーゼと検体との反応に基づいた出力信号を検出するものである。
【0048】
検体の検出原理は、特異的結合反応により生じる電流、電圧、質量、熱量等の物理量の変化を利用して、目的物質の検出を行う。
【0049】
本発明に係る構造体は、バイオセンサー以外の機能デバイスとして、吸着剤や分離剤のようなカラムとして用いることができる。この場合には、上述した本実施形態の多孔体からなる粒子を多数用意して、これらを成型して成型多孔体を作製するとよい。
【0050】
そして、この多孔体と電子伝達物質とを組み合わせて電極を設ければ、上記物理量の変化を電気的出力信号として検出することができる。
【実施例1】
【0051】
(ロッド状の粒子のメソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持した。)
本実施例は、チューブ状メソ孔がロッドの長軸方向に対して交差するように形成されたメソポーラスシリカを作製し、メソ孔内にPQQ−GDH(ピロロキノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)の固定化した構造体の製造方法について説明する。
【0052】
(ロッド状の多孔体の製造方法)
2.40gの非イオン界面活性剤であるトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20;HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20H)を76.5mlの純水に溶解した。さらに7.5mlの36wt.%濃塩酸を添加し、室温で30分撹拌した。続いて、n−decaneを13.9g添加し、室温で2時間撹拌した。
【0053】
さらに、この混合溶液に加水分解触媒としてNH4Fを0.027g,および5.10gのテトラエトキシシラン(TEOS)を添加したものを前駆溶液とした。最終的な前駆溶液の組成(モル比)は、TEOS:HCl:EO20PO70EO20:NH4F:n−decane:H2O=0.25:0.9:0.004:0.007:1:42.9となるようにした。
【0054】
この前駆体溶液を40℃において、20時間撹拌し、100℃で48時間反応させた。得られた白色沈殿物は純水で十分に洗浄し、真空乾燥させた。
【0055】
得られた粉末試料を空気中550℃で焼成し、メソ孔内から界面活性剤を分解・除去し、中空のメソ孔とした。界面活性剤等の有機物の除去は、赤外吸収スペクトルによって確認した。
【0056】
合成されたメソポーラスシリカ粉末をX線回折法により評価した。評価結果は、図3のように面間隔11.7nmのヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される回折ピークを始め、(110)、(200)、(210)面に帰属される回折ピークが確認された。この結果は、このメソポーラスシリカのメソ孔構造が、高い規則性を持ったヘキサゴナル配列を有していることを示している。
【0057】
77Kにおける窒素吸脱着等温線測定を行った。測定の結果、吸着等温線形状はIUPAC分類におけるIV型となった。B.E.T.法によって算出された比表面積は700m2/gとなり、メソ孔容量は1.88ml/gとなった。また、この吸着等温線の結果から,BJH法によりメソ孔径を算出すると、本実施例で合成したメソポーラスシリカのメソ孔径分布は、14.1nmに単一のピークを有する狭い分布となり、全メソ孔の90%以内が10nm以内の範囲に分布していた。
【0058】
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行ったところ、図4のようにロッド状の構造体が確認された。さらに高倍率でSEM観察を行ったところ、図5のように構造体の短軸方向に直径14nmのチューブ状メソ孔が配向していた。また,その断面図では図6のように,比較的均一なチューブ状のメソ孔がハニカムパッキングした細孔構造を形成していた。なお、観察中に電子線によりメソ孔構造が破壊されることはなかった。
【0059】
(メソ孔内にGDHを担持)
次に、メソポーラスシリカのメソ孔内に、PQQ−GDHを吸着させ、熱に対する安定性を測定した。
【0060】
pH=7.0の20mM 3−Morpholinopropane sulfonic acid(MOPS)緩衝液を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製した。このPQQ−GDH水溶液1ml中に、上記方法で合成したメソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを得た。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは230mg/g程度の吸着量を示した。メソポーラスシリカの外表面ではなく、メソ孔の中にGDH分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるPQQ−GDH酵素のメソポーラスシリカへの吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0061】
(PQQ−GDHを担持したロッド状粒子における熱特性)
上記PQQ−GDH吸着によって調製したPQQ−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgに、10mM MOPS緩衝液(pH=7.0)1mlを加え、70℃で30、60、90、120分間それぞれ加熱した。加熱後遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを純水で2回洗浄した。次に5mM MOPS緩衝液(pH=7.0)500μl、20mM Phenazine methosulfate(PMS)100μl、4mM 2,6−dichloroindophenol(DCIP)100μl、1.2MGlucose水溶液300μlを加えて25℃にて3分間反応させた。遠心分離後、上澄み液をすばやく採取し,600nm付近の吸光度を測定した。
【0062】
また、比較試験としてPQQ−GDHそのものを0.5mg調製し、上記熱処理後、酸化反応を行い、同様に600nm付近の吸光度を測定した。
【0063】
図7に70℃で熱処理した場合の相対活性の変化を示す。固定化されていないPQQ−GDH(緩衝液中に分散させただけ)は、70℃の熱処理により60分後には完全に失活した。これに対して合成したメソポーラスシリカに固定化したPQQ−GDHでは、熱に対する高い安定化効果が確認された。
【0064】
また、図8に40℃で熱処理した場合の熱安定性測定結果を示した。上記PQQ−GDH吸着によって調製したPQQ−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgを真空乾燥し、その後その乾燥試料を40℃恒温器にて、所定時間放置した。凍結乾燥したPQQ−GDHも同様の条件下にて放置した。放置後、10mM MOPS緩衝液(pH=7.0)500μl、20mM PMS100μl、4mM DCIP 100μl、1.2M Glucose水溶液 300μlを加えた。そして、25℃にて3分間反応させた。遠心分離後、すばやく600nm付近の吸光度を測定した。40℃熱処理により、メソポーラスシリカに固定化していないPQQ−GDHは40日程度でほぼ失活してしまったが、固定化したPQQ−GDHは100日経過しても90%以上の活性を保ったままであった。
【0065】
以上説明したように、メソ孔内にPQQ−GDHを担持させることにより、PQQ−GDHの安定性が飛躍的に向上したことが確認された。よって、高温条件下などで従来よりも安定的に駆動できるバイオセンサーを提供できる。
【実施例2】
【0066】
(樹状の粒子のメソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持した。)
本実施例は、枝分かれしたロッド状の骨格が3次元的に形成された間隙であるマクロ孔とメソ孔を有する多孔体を作製し、メソ孔内にPQQ−GDHを固定化した構造体とその製造方法について説明する。
【0067】
(樹状の粒子の製造方法)
得られた樹状の粒子の概略を図9や図10を用いて先に説明する。得られた粒子は、樹状の粒子であり、樹状の骨格部7が入り組んだ構造を形成し、骨格部間にマクロ孔6を形成している。マクロ孔は、隣り合う骨格部間のマクロ孔サイズの間隙も含む。骨格部7は、メソ孔2を矢印の長軸方向に交差するようにチューブ状に形成されている。樹状の粒子を更に拡大して観察すると図10に示すように、メソ孔2にグルコースデヒドロゲナーゼ3が担持されている。図10では、グルコース5とグルコースデヒドロゲナーゼが反応している模式図を記載している。さらに、電子伝達物質8などを設けておけば、グルコースとグルコースデヒドロゲナーゼからの電気的な情報をより得やすくなり、バイオセンサーの応用が期待される。
【0068】
以下、具体的な製造方法について説明する。
【0069】
2.40gの非イオン界面活性剤であるトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20;HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20H)を76.5mlの純水に溶解した。さらに7.5mlの36wt.%濃塩酸を添加し、室温で30分撹拌した。続いて、n−decaneを13.9g添加し、室温で2時間撹拌した。さらに、この混合溶液に加水分解触媒としてNH4Fを0.027g,および5.10gのテトラエトキシシラン(TEOS)を添加したものを前駆溶液とした。最終的な前駆溶液の組成(モル比)は、TEOS:HCl:EO20PO70EO20:NH4F:n−decane:H2O=0.25:0.9:0.004:0.007:1:42.9となるようにした。
【0070】
この前駆体溶液を40℃において、20時間撹拌し、120℃で48時間反応させた。得られた白色沈殿物は純水で十分に洗浄し、真空乾燥させた。
【0071】
得られた粉末試料を空気中550℃で焼成し、メソ孔内から界面活性剤を分解・除去し、中空のメソ孔とした。界面活性剤等の有機物の除去は、赤外吸収スペクトルによって確認した。
【0072】
X線回折法、窒素吸脱着等温線測定、走査型電子顕微鏡(SEM)は、実施例1と同様の測定を行った。
【0073】
測定結果は、X線回折の評価結果は、図3のように面間隔11.7nmのヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される回折ピークを始め、(110)、(200)、(210)面に帰属される回折ピークが確認された。この結果は、このメソポーラスシリカのメソ孔構造が、高い規則性を持ったヘキサゴナル配列を有していることを示している。
【0074】
窒素吸脱着等温線測定の結果、吸着等温線形状はIUPAC分類におけるIV型となった。B.E.T.法によって算出された比表面積は700m2/gとなり、メソ孔容量は1.88ml/gとなった。また、この吸着等温線の結果から,BJH法によりメソ孔径を算出すると、本実施例で合成したメソポーラスシリカのメソ孔径分布は、14.1nmに単一のピークを有する狭い分布となり、全メソ孔の90%以内が10nm以内の範囲に分布していた。
【0075】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行ったところ、図11のように樹状の構造体が確認された。さらに高倍率でSEM観察を行ったところ、図12のように構造体の短軸方向に直径14nmのチューブ状メソ孔が配向していた。なお、観察中に電子線によりメソ孔構造が破壊されることはなかった。
【0076】
これらの結果より、マクロ孔とメソ孔とを有する樹状の粒子が得られたことを確認した。
【0077】
この粒子は、マクロ孔とメソ孔が階層的に形成されているので、階層的な粒子とも本明細書では言うこともある。
【0078】
(メソ孔内にGDHを担持 (1)表面修飾なし)
樹状の粒子のメソ孔内にPQQ−GDHを担持させる方法は、実施例1と同様の方法をもちいた。メソ孔内にPQQ−GDHが担持されているかどうかは、実施例1と同様に窒素吸着測定装置で確認した。PQQ−GDHのメソポーラスシリカへの吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化でPQQ−GDHがメソ孔内に担持されていることを確認した。
【0079】
(メソ孔内にGDHを担持 (1)表面修飾あり)
合成した階層的メソポーラスシリカ1.0gをトルエンで調製した5%(v/v)の3−aminopropyl triethoxysilane溶液の50ml中に添加し、この溶液を窒素雰囲気下において、120℃で48時間,撹拌した。反応後、沈殿物は濾過し、トルエン、エタノール、ジクロロメタンで洗浄した後、真空で乾燥させた。
【0080】
次にこの乾燥試料の1.0gをリン酸緩衝溶液(pH=6.6)で調製した2.5% glutaraldehyde溶液の25mlに溶解させ、室温で1時間撹拌した。得られた沈殿物は純水を用いて4回以上洗浄し,その後室温において乾燥した。
【0081】
Glutaraldehydeで修飾した階層的メソポーラスシリカを粉末X線回折法により評価した結果、修飾前とほぼ同様の回折パターンを示しており、表面修飾によりメソ孔構造が壊れていないことを確認した。また、FT−IRを用いてシリカ表面に導入した官能基の同定を行った結果、R−CH=N,C=O,−CHOに起因するピークがそれぞれ確認され、シリカ表面にSi(CH2)3NH=CH(CH2)3CHOが共有結合していることを確認した。
【0082】
続いて、修飾後の階層的メソポーラスシリカのメソ孔内にPQQ−GDHを固定化する。
【0083】
20mMのMOPS緩衝液(pH=7.0)を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製し、この溶液1ml中に、上記方法で合成・修飾した階層的メソポーラスシリカ10mgを添加した。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて含浸させ,PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。反応終了後、試料を濾過して、純水で3回洗浄した。この際、元の酵素溶液と上澄み液のそれぞれを,UV−Vis吸光度測定を行った。PQQ−GDHの280nmにおける吸収極大を利用し、吸着前後の濃度変化からメソポーラスシリカへの吸着量を算出した。吸着したPQQ−GDHは150mg/gの値を示した。
【0084】
次にメソポーラスシリカからのPQQ−GDHの脱着挙動を確認するため、以下の実験を行った。メソ孔内を修飾しPQQ−GDHを固定化した樹状の粒子を純水1ml中に入れ、4℃でゆっくり振とうさせ、一定時間ごとに上澄み液の280nmにおける吸光度を測定した。比較として、メソ孔を表面修飾なしで、PQQ−GDHを固定化した樹状の粒子を同様の方法を用いて、PQQ−GDHの脱着挙動を測定した。シリカ表面を有機物で修飾した後,PQQ−GDHを固定化した試料では12時間経過後もほとんどPQQ−GDHの脱着を確認できなかった。一方、表面修飾をせず、PQQ−GDHを固定化した粒子では、PQQ−GDHの脱着が測定された。その値は、全吸着量に対して5%以内であった。したがって、シリカ表面に修飾した−CHOおよびPQQ−GDHの−NH2が結合し、シリカ表面に共有結合にて固定化されたと考えられる。よって、PQQ−GDHの位置などを決めて担持させたい場合などは、表面修飾を用いて担持させることが効果的であると考えられる。
【0085】
(PQQ−GDHを担持した樹状粒子における熱特性)
続いて、このPQQ−GDHを固定化したメソポーラスシリカおよび固定化していないPQQ−GDHを実施例1と同様に70℃でそれぞれ熱処理した後、PQQ−GDHの酵素活性を測定した。
【0086】
階層的メソポーラスシリカを用いている部分以外の実験条件は、実施例1と同様で行った。
【0087】
得られた結果は、実施例1と同様に固定化されていないPQQ−GDH(緩衝液中に分散させただけ)は、70℃の熱処理により60分後には完全に失活した。これに対して本実施例で合成した階層的メソポーラスシリカに固定化したPQQ−GDHでは、熱安定化効果が確認された。
【実施例3】
【0088】
(メソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持させるための条件)
本実施例は,PQQ−GDHを合成したメソポーラスシリカに効率的に導入するために、衝液の塩濃度やpHを調製する方法を用いる。
【0089】
pH=7.0のMOPS緩衝液を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製した。MOPSの塩濃度はそれぞれ、0.1、0.5、1.0、5.0、10.0、20.0mMに調製した。このPQQ−GDH水溶液1ml中に、実施例2で合成した階層的メソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、各塩濃度においてPQQ−GDH固定化シリカが調製された。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。各試料とも、ソポーラスシリカの外表面ではなく、メソ孔の中にGDH酵素分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるPQQ−GDH酵素のメソポーラスシリカへの窒素吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0090】
緩衝液の塩濃度の増加に従い、メソ孔内へのPQQ−GDH吸着PQQ−GDH吸着量が曲線的に増加していくことが確認された。20mMのMOPSを使用した場合、最大吸着量240mg/gを示した。また、0.1mMのMOPS緩衝液を調製した後PQQ−GDHを5mg/mlの濃度で溶解させ、pHをPQQ−GDHの等電点に近いpH=9.0にしたPQQ−GDH水溶液を調製し、同様の吸着実験を行った。前記のpH=7.0の場合では,100mg/mlの吸着量であったが、pH=9.0の場合では220mg/mlとなり、ほぼ倍の値を示した。
【0091】
以上の結果は、PQQ−GDHをメソ孔内に効率的に導入するためには、静電反発を緩和させた反応系を利用することが必須であることを示している。このような反応系であれば、緩衝液の塩濃度を増加させる方法や、pHをPQQ−GDHの等電点付近に調製する方法など手段を選択しないことをも示している。ここでいう塩濃度を増加させる方法というのは、緩衝液の濃度を増加させることにより、反応系中のイオン強度を上げ、生体物質間に働いている静電反発を緩和させる方法をいう。しかし、PQQ−GDHの最適pHがpH=7.0程度であることを考慮すれば、塩濃度制御によるメソ孔内導入方法が優れていると思われる。
【実施例4】
【0092】
(PQQ−GDHをメソ孔に担持した構造体を用いたセンサー)
本実施例は、図14に示す。実施例2で合成した階層的メソポーラスシリカを電極上に合成し、さらにPQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼおよびメディエーターをメソ孔内に固定化させ、グルコース濃度を測定した例である。電極としては,カーボン電極(作用電極)、白金電極(対極)を用いた。
【0093】
20mMのMOPS(pH=7.4)を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製し、この酵素溶液10ml中に、実施例2で合成したメソポーラスシリカとカーボン電極を浸漬した。4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いてゆっくり攪拌し、PQQ−GDHを電極上のメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。反応終了後遠心分離を行い、電極上のPQQ−GDH−メソポーラスシリカは純水で3回洗浄し、PQQ−GDH固定化電極を得た。PQQ−GDH固定化前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、カーボン電極のみへの吸着をバックグランドとして差し引いていて、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは230mg/g以上の吸着量を示した。乾燥後試料はさらに、メディエーターをメソ孔内に固定化するために、50mLのMOPS緩衝液で調製した100mMのフェリシアン化カリウム溶液100mlに12h室温で静止させた。浸漬後、遠心分離および純水で洗浄し、室温で乾燥させることによって、グルコース測定用GDH電極を作成した。
【0094】
グルコース濃度の測定は以下のようにして行った。恒温セルに50mMのMOPS緩衝液を入れ、一定温度に維持した。作用電極として前記合成したPQQ−GDH固定化カーボン電極を用い、対極には白金電極を用いた。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定した結果、高い電流値が得られた。また、標準のグルコース溶液試料を用いて電流値を測定した結果、グルコース濃度に従って、電流値が直線的に上昇した。
【0095】
また、この電極の熱安定性を測定するために、恒温セル中のMOPS緩衝液内で電極を保持する際に、70℃の条件下で30分熱処理した後、同様のグルコース電極測定を行った。その結果、上記実験結果とほぼ同様の電流が得られ、電極内に固定化されたPQQ−GDHにおいても高い熱安定効果を保持していることが確認された。
【0096】
PQQ依存性GDH酵素の詳細な反応メカニズムは、図13に示すように基質であるD−グルコースが酸化されて、電子が酵素に配位しているピロロキノリンキノンに伝達し、さらにメディエーターであるフェリシアン化物イオンに伝達すると考えられる。
【0097】
以上の結果より、本実施例では、上記のPQQ−GDH固定化シリカおよび電子メディエーターを用いることで、高い安定化効果を持ったグルコース測定用試薬組成物およびグルコースセンサーの作製が可能となることが確認された。
【実施例5】
【0098】
(メソ孔にNAD−グルコースデヒドロゲナーゼを担持させるための条件)
メソ孔を有するロッド状粒子や樹状粒子については、上述の実施例と同様の方法で作製した。
【0099】
窒素パージしたpH=7.4の20mMリン酸緩衝液を用いてNAD−GDHを2mg/mLに調製し、このNAD−GDH溶液1mL中に、上記方法で合成した階層的メソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、GDHをメソポーラスシリカ細孔内に固定化させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000 gで遠心分離を行い、NAD−GDH固定化シリカを得た。NAD−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのNAD−GDHの吸着量を算出した。NAD−GDHは160mg/g程度の吸着量を示した。これらのNAD−GDHがメソポーラスシリカの外表面ではなく、細孔の中に導入されていることは、乾燥後のNAD−GDH固定化メソポーラスシリカへの窒素吸着等温線測定における細孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0100】
次に熱安定性を評価するために,NAD−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgに、20mMリン酸緩衝液(pH=7.4)を1mL加え、90℃で30、60、90、120分間それぞれ加熱した。加熱後遠心分離を行い、NAD−GDH−Diaphorase固定化シリカを純水で2回洗浄した。この熱処理したNAD−GDH固定化シリカに、pH=8.0の0.1M−Tris−HCl溶液で調製した20mMのNAD溶液を加えた。5分間室温で撹拌後、1.5Mのグルコース溶液を添加し、さらに10分間撹拌した。反応後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い上澄み液におけるNADHの340nmの吸収極大を利用し、NAD→NADHの反応を触媒するNAD−GDHの活性を測定した。また、比較としてメソポーラスシリカに固定化していないNAD−GDH溶液を調製し、同様の熱処理を行った試料についても、NAD−GDHの活性を測定した。非加熱時のNAD−GDHに対して1.5Mのグルコースを添加した時に得られた吸光度を基本にしてその相対活性を測定した。その結果,メソポーラスシリカに固定化したNAD−GDHは、90℃で120分熱処理しても、高い相対活性を維持していることが分かった。これに対し,メソポーラスシリカに固定化していないフリーな状態のNAD−GDHは、90℃、 30分の熱処理で完全に失活した。このことからメソポーラスシリカの細孔内においては,NAD−GDHの熱変性を防ぐ効果を有することが分かった。
【実施例6】
【0101】
(NAD−GDHとPQQ−GDHとの挙動の違いを比較)
樹状粒子のメソ孔に固定化したNAD−GDH以外に、PQQ−GDHも同様に固定化し、マルトースを含んだグルコース溶液に対する挙動を測定した例である。
【0102】
窒素パージしたpH=7.4の20mMリン酸緩衝液を用いてPQQ−GDHを2mg/mLに調製し、このPQQ−GDH溶液1ml中に、樹状粒子を5mg加えた。この混合溶液は4℃,20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、GDHをメソポーラスシリカ細孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを得た。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは、200mg/g程度の吸着量を示した。電子伝達物質として、20mMリン酸緩衝液で1mMのフェリシアンカリウム溶液を調製し、この5mL中に上記で調製したPQQ−GDH固定化シリカを添加した。
【0103】
また、NAD−GDHは上述の実施例と同様の操作を行い、NAD−GDH,Diaphorase固定化のメソポーラスシリカを得た。電子伝達物質は、10mMのVB溶液を用いた。
【0104】
次にこれらのPQQ−GDHおよびNAD−GDH調製試料に、1M−グルコース溶液を用いて調製した種々の濃度のマルトース溶液を加え、サイクリックボルタンメトリにより酸化電流値を測定した。NAD−GDHで構成された試料では,種々のマルトース濃度に依存することなく、常に一定の電流値が得られた。しかし、PQQ−GDHで構成された試料では、マルトース濃度に比例するように電流値が増加した。
【0105】
これらの結果により、本実施例では、上記のNAD−GDH固定化シリカが、マルトースに影響を受けない高いグルコース選択性を持ったグルコースセンサーへ利用可能となることが確認された。
【実施例7】
【0106】
(NAD−GDHをメソ孔に入れる新たな方法)
本実施例は,NAD−GDHを合成したメソポーラスシリカに効率的に導入するために、緩衝液の塩濃度やpHを調製する方法を用いることにより、これを達成した例である。
【0107】
pH=7.4のリン酸緩衝液を用いてNAD−GDHを2mg/mLに調製した.リン酸緩衝液の塩濃度はそれぞれ、0.1、0.5、1.0、5.0、10.0、20.0mMに調製した。このNAD−GDH水溶液1ml中に、上述の実施例で合成した樹状粒子を5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、NAD−GDHをメソポーラスシリカ細孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い各塩濃度においてNAD−GDH固定化シリカが調製された。NAD−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのNAD−GDHの吸着量を算出した。各試料とも、ソポーラスシリカの外表面ではなく、細孔の中にGDH酵素分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるNAD−GDH酵素のメソポーラスシリカへの窒素吸着前後における細孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0108】
緩衝液の塩濃度の増加に従い細孔内へのNAD−GDH吸着量が曲線的に増加し、Langmuir型の吸着挙動を示した。20mMのリン酸緩衝液を使用した場合、最大吸着量180mg/gを示した。また、0.1mMのリン酸緩衝液を調製した後NAD−GDHを5mg/mlの濃度で溶解させ、pHをNAD−GDHの等電点に近いpH=8.0にしたNAD−GDH水溶液を調製し、同様の吸着実験を行った。前記のpH=7.0の場合では、約80mg/mlの吸着量であったが、pH=8.0の場合では150mg/mlとなりほぼ倍の値を示した。
【0109】
以上の結果は、NAD−GDHをメソ細孔内に効率的に導入するためには、静電反発を緩和させた反応系を利用することが必要であることを示している。このような反応系であれば、緩衝液の塩濃度を増加させる方法や、pHをNAD−GDHの等電点付近に調製する方法など手段を選択しないことを示している。ここでいう塩濃度を増加させる方法というのは、緩衝液の濃度を増加させることにより、反応系中のイオン強度を上げ、生体物質間に働いている静電反発を緩和させる方法をいう。しかし、NAD−GDHの至適pHがpH=7.0程度であることを考慮すれば、塩濃度制御による細孔内導入方法が優れていると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態のロッド状粒子の模式図
【図2】本発明の一実施形態のロッド状粒子の模式図
【図3】X線回折測定の結果を示した図
【図4】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図5】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図6】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図7】酵素活性の温度依存性を示した図
【図8】酵素活性の温度依存性を示した図
【図9】本発明の一実施形態の樹状粒子の模式図
【図10】本発明の一実施形態の樹状粒子の模式図
【図11】樹状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図12】樹状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図13】グルコースデヒドロゲナーゼとグルコースとの反応を示した図
【図14】グルコースセンサーの模式図
【符号の説明】
【0111】
1 多孔体
2 メソ孔
3 グルコースデヒドロゲナーゼ
4 細孔壁
5 グルコース
6 マクロ孔
7 骨格部
8 電子伝達物質
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体に関する。グルコースデヒドロゲナーゼの性質を利用し、血糖値を検査するためのグルコースセンサーに応用可能である。
【背景技術】
【0002】
酵素は、熱によって容易に失活する。これは、熱によって酵素を構成するタンパク質の立体構造が変形してしまうためである。そこで、安定的に酵素を利用するために、酵素を多孔体の穴の中に固定化する技術が開発されている。
【0003】
その中で、メソポーラス材料は、比表面積が大きいため、単位面積あたりの酵素の担持量を大きくできるため、盛んに開発が行われている(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−139459号公報
【特許文献2】特開2002−95471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のメソポーラス材料の孔径は小さく、大きな酵素であるグルコースデヒドロゲナーゼをメソ孔内に担持することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、メソ孔内にグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取るための電子伝達物質とを含む組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取るための電子伝達物質とを含む緩衝溶液と、
前記電子伝達物質から電子を受け取るための電極とを備えるセンサーを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、メソ孔を有する多孔体であって、前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つメソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体を提供することが可能になった。これにより、グルコースデヒドロゲナーゼを用いたセンサーに応用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の概要を図1、図2を用いて説明する。図1において、本発明の一実施形態であるグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を担持した多孔体1がある。ここでは、ロッド状の粒子を開示している。ロッド状の粒子は、メソ孔2を有し、メソ孔は、ロッド状の粒子の短軸方向に形成している。このメソ孔2の中には、グルコースデヒドロゲナーゼ3が担持されている。図1の右に、グルコースデヒドロゲナーゼを担持している多孔体の一部を拡大した図を示した。棒状に見える部分が、細孔壁4であり、その細孔壁に挟まれるようにグルコースデヒドロゲナーゼ3が担持され、グルコースデヒドロゲナーゼの活性部位にグルコース5が結合している。
【0012】
また、図2では、視点をかえた場合の本発明の一実施形態であるロッド状の粒子の概略図である。楕円状のものがグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体1である。その一部を拡大したのが右の図である。メソ孔2の開口部がハニカム状に配置され、チューブ状になっている。
【0013】
(グルコースデヒドロゲナーゼ)
ここで、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、グルコースオキシダーゼを用いたセンサーと比べると、酸素濃度の影響を受けないため、酸素が存在する生活空間でもちいた場合にもより正確に測定することが可能になる利点がある。
【0014】
また、グルコースデヒドロゲナーゼとしては、ピロロキノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ−GDH、14nm)とNAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH、12nm)とNADP依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NADP−GDH)とが好ましく用いることができる。FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼなども考えられる。
【0015】
PQQ−GDHは、NAD−GDHやNADP−GDHよりも安定性が高く、臨床検査薬を添加しても失活しにくい、一方、マルト−スやガラクトースといった糖類とも反応してしまうので、より高い選択性を求めるのならばNAD−GDHやNADP−GDHが好ましい。
【0016】
NAD−GDHやNADP−GDHを用いる場合は、NAD−GDHやNADP−GDHが、酸化還元反応が難しいため、電子伝達物質(又はメディエーター)を用いることが好まれる。電子伝達物質は、還元型NADを酸化還元酵素により酸化する際に、この電子伝達物質を還元し、生成した還元型電子伝達物質が電極上での電圧印加により酸化されることを利用して陽極電流を測定することによりセンサとして用いることができる。電子伝達物質はフェリシアニド、ピロロキノリンキノン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、テトラゾリウム塩、フェロセンなどが挙げられる。
【0017】
(メソ孔の形状、孔径、長さ、配列)
ここで、メソ孔とは、2nm以上50nm以下の孔径を有する細孔のことであり、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)において定義されている。
【0018】
本発明に用いられるメソ孔としては、例えば、一方の開口部から他方の開口部まで孔径が単調増加している形状、孔径が不連続に変化する形状などであってもよい。また、メソ孔自体が途中で複数に分岐する形状でもよい。
【0019】
本発明に用いられるメソ孔の配列としては、例えば升目の交点にメソ孔が配列したものや、ハニカム状に細孔が配列したものに限らず、規則的或いは不規則に配列したものであっても良い。
【0020】
本発明においては、メソ孔の孔径が10nm以上50nm以下であることにより、従来のメソ孔を有する多孔体に担持できなかったグルコースデヒドロゲナーゼを担持することが可能になった。
【0021】
本発明に係る多孔体をどのような用途に用いるかもによるが、例えば、バイオセンサーに適用する場合には、生体物質の立体構造安定化の点からメソ孔の孔径は30nm以下であるのがよい。なお、孔径は孔の断面形状が円であれば直径のことであり、楕円など変形した円の場合は、最も長い部分である。
【0022】
メソ孔の長さとしては、50nm以上500nm以下が好ましい。バイオセンサー等の反応場として利用する観点からは、50nm以上300nm以下がより好ましいものである。また、メソ孔の長さと孔径の関係としては、メソ孔の長さが孔径の30倍以内であることが好ましい。メソ孔の長さが長いと、反応場に利用できない部分が多くなるためである。また、メソ孔同士の間隔は、例えば、1nm〜4nm程度である。なお、隣接する複数のメソ孔の伸長方向が、同じ方向に揃っていることもより好ましいものである。
【0023】
ここで、メソ孔の孔径の具体的測定方法について説明する。
【0024】
粉末状態のメソ孔を有する多孔体について、窒素ガス吸脱着測定を行い、細孔径に関する情報を得ることができる。具体的には、窒素ガス吸着測定の結果から、Berret−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔径分布を求める。本発明に好適に用いられる多孔体の孔径分布は、単一の極大値を示し、且つ、当該孔径分布において、全メソ孔中の60%以上のメソ孔が、極大値を含む10nmの幅を持つ範囲に含まれる。後述する実施例によれば、90%以上の細孔が10nmの幅を持つ範囲内に含まれると良い。
【0025】
メソ孔の周期性は、X線回折(XRD)測定からその情報を得ることができる。本実施形態に係る構造体は、XRD測定において、1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有する。これは、メソ孔が規則的に配列していることを意味する。
【0026】
(多孔体の製造方法)
本発明の一実施形態によるメソ孔を有する多孔体の製造方法について説明する。
【0027】
まず、配向制御剤と、界面活性剤と、構造体の骨格部になる物質と、を含む反応溶液を用意する。
【0028】
次に、加水分解触媒の存在下で、反応溶液を100℃又は120℃に加熱し、水熱合成条件下で界面活性剤を含む構造体を形成する。後述するが、実施例では100℃で加熱するとロッド状粒子が形成され、120℃で加熱すると樹状の粒子が形成される。
【0029】
そして、構造体から界面活性剤を除去する。
【0030】
具体的には、骨格部の原料になる物質、界面活性剤、及び配向制御剤を含む反応溶液に加水分解触媒を添加し、室温付近で攪拌した後、例えば数時間から数日間の範囲で、原料物質の縮重合反応を生じさせる。次に、溶液中にできた沈殿物を回収し、洗浄した後に乾燥させる。そして、前記沈殿物から界面活性剤を除去する。こうすると、骨格部を、その長手方向に交差する方向に貫通しているメソ孔を有する構造体が得られる。
【0031】
前記骨格部の原料になる物質とは、ハロゲン化物、カルコゲン化物、あるいは金属アルコキシド等である。メソ孔の孔壁を酸化シリコンで形成する場合には、金属アルコキシドであるテトラエトキシシランやテトラメトキシシランが好適に用いられる。
【0032】
界面活性剤としては、ポリエチレンオキシドを親水基として含むブロックコポリマーなどの非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0033】
配向制御剤としては、樹状骨格部の長手方向を横切るように界面活性剤を配向させることができる有機物であればよく、例えば、n−decane(C10H22)が挙げられる。反応時間を数時間〜数日程度、反応時の温度を100℃や120℃に設定する。100℃や120℃の温度は、溶液を加熱する炉の雰囲気温度であるが、溶液は耐圧の容器の中にあり、実質的に溶液の温度も雰囲気の温度と同じになる。
【0034】
得られた多孔体は、溶液中に沈殿するので、遠心分離を用いて回収することができる。そして、自然乾燥などで回収物を乾燥させる。回収した沈殿物からミセルを形成している界面活性剤を除去することで、多孔体を得ることができる。
【0035】
なお、界面活性剤の除去方法は、細孔構造を破壊せずに界面活性剤を除去できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、溶剤により界面活性剤を溶かし出して除去する方法や、超臨界状態の流体を付与して孔内から界面活性剤を押し出す方法、更にはオゾンを用いて酸化除去する方法などがある。
【0036】
より好ましくは、酸素を含んだ雰囲気中で構造体を焼成して界面活性剤を除去する方法が良い。この場合、構造体を空気中で、550℃において5時間焼成することによって、メソポーラス構造をほとんど破壊することなく、界面活性剤を除去することができる。焼成温度と時間は、細孔壁又は骨格を形成する材料と使用する界面活性剤により、適宜選択される。
【0037】
なお、上述の方法により得られる多孔体に以下の工程を付加し、グルコースデヒドロゲナーゼ担持体を製造することもできる。
【0038】
具体的には、グルコースデヒドロゲナーゼを含んだ溶液中に、前記メソ孔を有する多孔体を入れ、攪拌することによって多孔体の穴にグルコースデヒドロゲナーゼを吸着させる方法である。また、グルコースデヒドロゲナーゼを、前記メソ孔に導入し易くするために、メソ孔の細孔表面(孔壁面)に官能基(例えば、アミノ基、カルボン基)を導入してもよい。このように、グルコースデヒドロゲナーゼがメソ孔へ入りやすくなるのは、孔壁表面に存在する官能基とグルコースデヒドロゲナーゼとの電気的相互作用によるものと考えられる。
【0039】
例えば、シランカップリング剤で細孔表面を修飾する方法や酸化物を形成し得る金属を含有する金属塩の水溶液を用いて細孔表面を修飾する方法がある。なお、シランカップリング剤は、一般的にR−Si−X3の化学式で表される化合物で、分子中に2個以上の異なった官能基を持っている。上記Xは無機材料から成る多孔体表面と反応することができる部位である。例えば、Sol−Gel Science誌1989年第662頁には、メソポーラス材料が酸化シリコンである場合が記述されている。それは、細孔表面に存在するシラノール基の水素が有機ケイ素基によって置換され、Si−O−Si−R結合を形成し、細孔表面に有機物Rの層を形成する。Xとしては、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基等である。勿論、細孔表面と反応し、Rの層を形成することができれば、Xが三官能基のものでなくても、二官能基や一官能基のカップリング剤を用いることもできる。Rは有機基であり、アミノ基やカルボン基、あるいはマレイミド基等である。
【0040】
また、酸化物を形成し得る元素を含有する金属塩の水溶液を用いて細孔表面を修飾する場合は、当該酸化物層を形成し得る元素として、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等を用いることができる。例えば、メソポーラスシリカをオキシ硝酸ジルコニウムの水溶液で処理を行うことにより、表面にジルコニウムの酸化物層を形成することが可能である。
【0041】
個々のメソ孔には1個または2個以上のグルコースデヒドロゲナーゼを収容できる。したがって、このメソ孔はグルコースデヒドロゲナーゼを固定化するのに適当な大きさが必要である。
【0042】
メソ孔のサイズと、それに固定化するグルコースデヒドロゲナーゼのサイズとが適合する場合、グルコースデヒドロゲナーゼ表面はメソ孔の孔壁に近接する。このため、グルコースデヒドロゲナーゼはメソ孔の壁壁からのvan der waals力によりメソ孔内に吸着する。これにより、グルコースデヒドロゲナーゼの立体構造がより一層保たれ、立体構造の変化によるグルコースデヒドロゲナーゼの失活がより一層抑制できる。なお、vander waals力による保持だけではなく、静電的結合、水素結合、イオン結合の非共有結合で活性ユニットをメソ孔内に保持することも可能である。
【0043】
今回メソ孔にグルコースデヒドロゲナーゼを担持させる方法においても新たな知見を得た。従来は、生体物質の電荷と固定化担体表面の電荷との差が大きいほうが、強い静電吸着が得られるため、より多く固定化できると考えていた。しかし、電荷を帯びたNAD−GDHは、静電反発してしまいメソ孔内に導入する際には、固定化できるNAD−GDHの量が制限されてしまうことがわかった。そこで、本発明においては緩衝液の塩濃度を上昇させ、NAD−GDH水溶液中のイオン強度を増加させることで各NAD−GDH間の静電反発を緩和させた。ただ、静電反発を0にしてしまうとGDH同士が凝集してしまうため、若干の電荷を帯びるような溶液調整が必要となる。この方法により、細孔内に固定化させるNAD−GDHの量を緩衝液の塩濃度制御により可能にし、最大固定化量が従来よりも大きく増加することを見出した。
【0044】
(本発明に係る多孔体を用いた機能デバイス)
次に、本発明に係る多孔体を用いた機能デバイスについて説明する。
【0045】
上述しているように、メソ孔にグルコースデヒドロゲナーゼを担持した多孔体は、機能デバイスとしてのバイオセンサーに適用することができる。
【0046】
本発明の一実施形態による、検体の検出方法について説明する。
【0047】
まず、上述した多孔体のメソ孔内にグルコースデヒドロゲナーゼを担持させたセンサーを用意し、当該センサーに検体を含む流体(液体、気体)を付与する。すると、検体を含む流体は、メソ孔内に侵入し、メソ孔内に担持されたグルコースデヒドロゲナーゼと反応する。そして、グルコースデヒドロゲナーゼと検体との反応に基づいた出力信号を検出するものである。
【0048】
検体の検出原理は、特異的結合反応により生じる電流、電圧、質量、熱量等の物理量の変化を利用して、目的物質の検出を行う。
【0049】
本発明に係る構造体は、バイオセンサー以外の機能デバイスとして、吸着剤や分離剤のようなカラムとして用いることができる。この場合には、上述した本実施形態の多孔体からなる粒子を多数用意して、これらを成型して成型多孔体を作製するとよい。
【0050】
そして、この多孔体と電子伝達物質とを組み合わせて電極を設ければ、上記物理量の変化を電気的出力信号として検出することができる。
【実施例1】
【0051】
(ロッド状の粒子のメソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持した。)
本実施例は、チューブ状メソ孔がロッドの長軸方向に対して交差するように形成されたメソポーラスシリカを作製し、メソ孔内にPQQ−GDH(ピロロキノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)の固定化した構造体の製造方法について説明する。
【0052】
(ロッド状の多孔体の製造方法)
2.40gの非イオン界面活性剤であるトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20;HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20H)を76.5mlの純水に溶解した。さらに7.5mlの36wt.%濃塩酸を添加し、室温で30分撹拌した。続いて、n−decaneを13.9g添加し、室温で2時間撹拌した。
【0053】
さらに、この混合溶液に加水分解触媒としてNH4Fを0.027g,および5.10gのテトラエトキシシラン(TEOS)を添加したものを前駆溶液とした。最終的な前駆溶液の組成(モル比)は、TEOS:HCl:EO20PO70EO20:NH4F:n−decane:H2O=0.25:0.9:0.004:0.007:1:42.9となるようにした。
【0054】
この前駆体溶液を40℃において、20時間撹拌し、100℃で48時間反応させた。得られた白色沈殿物は純水で十分に洗浄し、真空乾燥させた。
【0055】
得られた粉末試料を空気中550℃で焼成し、メソ孔内から界面活性剤を分解・除去し、中空のメソ孔とした。界面活性剤等の有機物の除去は、赤外吸収スペクトルによって確認した。
【0056】
合成されたメソポーラスシリカ粉末をX線回折法により評価した。評価結果は、図3のように面間隔11.7nmのヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される回折ピークを始め、(110)、(200)、(210)面に帰属される回折ピークが確認された。この結果は、このメソポーラスシリカのメソ孔構造が、高い規則性を持ったヘキサゴナル配列を有していることを示している。
【0057】
77Kにおける窒素吸脱着等温線測定を行った。測定の結果、吸着等温線形状はIUPAC分類におけるIV型となった。B.E.T.法によって算出された比表面積は700m2/gとなり、メソ孔容量は1.88ml/gとなった。また、この吸着等温線の結果から,BJH法によりメソ孔径を算出すると、本実施例で合成したメソポーラスシリカのメソ孔径分布は、14.1nmに単一のピークを有する狭い分布となり、全メソ孔の90%以内が10nm以内の範囲に分布していた。
【0058】
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行ったところ、図4のようにロッド状の構造体が確認された。さらに高倍率でSEM観察を行ったところ、図5のように構造体の短軸方向に直径14nmのチューブ状メソ孔が配向していた。また,その断面図では図6のように,比較的均一なチューブ状のメソ孔がハニカムパッキングした細孔構造を形成していた。なお、観察中に電子線によりメソ孔構造が破壊されることはなかった。
【0059】
(メソ孔内にGDHを担持)
次に、メソポーラスシリカのメソ孔内に、PQQ−GDHを吸着させ、熱に対する安定性を測定した。
【0060】
pH=7.0の20mM 3−Morpholinopropane sulfonic acid(MOPS)緩衝液を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製した。このPQQ−GDH水溶液1ml中に、上記方法で合成したメソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを得た。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは230mg/g程度の吸着量を示した。メソポーラスシリカの外表面ではなく、メソ孔の中にGDH分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるPQQ−GDH酵素のメソポーラスシリカへの吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0061】
(PQQ−GDHを担持したロッド状粒子における熱特性)
上記PQQ−GDH吸着によって調製したPQQ−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgに、10mM MOPS緩衝液(pH=7.0)1mlを加え、70℃で30、60、90、120分間それぞれ加熱した。加熱後遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを純水で2回洗浄した。次に5mM MOPS緩衝液(pH=7.0)500μl、20mM Phenazine methosulfate(PMS)100μl、4mM 2,6−dichloroindophenol(DCIP)100μl、1.2MGlucose水溶液300μlを加えて25℃にて3分間反応させた。遠心分離後、上澄み液をすばやく採取し,600nm付近の吸光度を測定した。
【0062】
また、比較試験としてPQQ−GDHそのものを0.5mg調製し、上記熱処理後、酸化反応を行い、同様に600nm付近の吸光度を測定した。
【0063】
図7に70℃で熱処理した場合の相対活性の変化を示す。固定化されていないPQQ−GDH(緩衝液中に分散させただけ)は、70℃の熱処理により60分後には完全に失活した。これに対して合成したメソポーラスシリカに固定化したPQQ−GDHでは、熱に対する高い安定化効果が確認された。
【0064】
また、図8に40℃で熱処理した場合の熱安定性測定結果を示した。上記PQQ−GDH吸着によって調製したPQQ−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgを真空乾燥し、その後その乾燥試料を40℃恒温器にて、所定時間放置した。凍結乾燥したPQQ−GDHも同様の条件下にて放置した。放置後、10mM MOPS緩衝液(pH=7.0)500μl、20mM PMS100μl、4mM DCIP 100μl、1.2M Glucose水溶液 300μlを加えた。そして、25℃にて3分間反応させた。遠心分離後、すばやく600nm付近の吸光度を測定した。40℃熱処理により、メソポーラスシリカに固定化していないPQQ−GDHは40日程度でほぼ失活してしまったが、固定化したPQQ−GDHは100日経過しても90%以上の活性を保ったままであった。
【0065】
以上説明したように、メソ孔内にPQQ−GDHを担持させることにより、PQQ−GDHの安定性が飛躍的に向上したことが確認された。よって、高温条件下などで従来よりも安定的に駆動できるバイオセンサーを提供できる。
【実施例2】
【0066】
(樹状の粒子のメソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持した。)
本実施例は、枝分かれしたロッド状の骨格が3次元的に形成された間隙であるマクロ孔とメソ孔を有する多孔体を作製し、メソ孔内にPQQ−GDHを固定化した構造体とその製造方法について説明する。
【0067】
(樹状の粒子の製造方法)
得られた樹状の粒子の概略を図9や図10を用いて先に説明する。得られた粒子は、樹状の粒子であり、樹状の骨格部7が入り組んだ構造を形成し、骨格部間にマクロ孔6を形成している。マクロ孔は、隣り合う骨格部間のマクロ孔サイズの間隙も含む。骨格部7は、メソ孔2を矢印の長軸方向に交差するようにチューブ状に形成されている。樹状の粒子を更に拡大して観察すると図10に示すように、メソ孔2にグルコースデヒドロゲナーゼ3が担持されている。図10では、グルコース5とグルコースデヒドロゲナーゼが反応している模式図を記載している。さらに、電子伝達物質8などを設けておけば、グルコースとグルコースデヒドロゲナーゼからの電気的な情報をより得やすくなり、バイオセンサーの応用が期待される。
【0068】
以下、具体的な製造方法について説明する。
【0069】
2.40gの非イオン界面活性剤であるトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20;HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20H)を76.5mlの純水に溶解した。さらに7.5mlの36wt.%濃塩酸を添加し、室温で30分撹拌した。続いて、n−decaneを13.9g添加し、室温で2時間撹拌した。さらに、この混合溶液に加水分解触媒としてNH4Fを0.027g,および5.10gのテトラエトキシシラン(TEOS)を添加したものを前駆溶液とした。最終的な前駆溶液の組成(モル比)は、TEOS:HCl:EO20PO70EO20:NH4F:n−decane:H2O=0.25:0.9:0.004:0.007:1:42.9となるようにした。
【0070】
この前駆体溶液を40℃において、20時間撹拌し、120℃で48時間反応させた。得られた白色沈殿物は純水で十分に洗浄し、真空乾燥させた。
【0071】
得られた粉末試料を空気中550℃で焼成し、メソ孔内から界面活性剤を分解・除去し、中空のメソ孔とした。界面活性剤等の有機物の除去は、赤外吸収スペクトルによって確認した。
【0072】
X線回折法、窒素吸脱着等温線測定、走査型電子顕微鏡(SEM)は、実施例1と同様の測定を行った。
【0073】
測定結果は、X線回折の評価結果は、図3のように面間隔11.7nmのヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される回折ピークを始め、(110)、(200)、(210)面に帰属される回折ピークが確認された。この結果は、このメソポーラスシリカのメソ孔構造が、高い規則性を持ったヘキサゴナル配列を有していることを示している。
【0074】
窒素吸脱着等温線測定の結果、吸着等温線形状はIUPAC分類におけるIV型となった。B.E.T.法によって算出された比表面積は700m2/gとなり、メソ孔容量は1.88ml/gとなった。また、この吸着等温線の結果から,BJH法によりメソ孔径を算出すると、本実施例で合成したメソポーラスシリカのメソ孔径分布は、14.1nmに単一のピークを有する狭い分布となり、全メソ孔の90%以内が10nm以内の範囲に分布していた。
【0075】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行ったところ、図11のように樹状の構造体が確認された。さらに高倍率でSEM観察を行ったところ、図12のように構造体の短軸方向に直径14nmのチューブ状メソ孔が配向していた。なお、観察中に電子線によりメソ孔構造が破壊されることはなかった。
【0076】
これらの結果より、マクロ孔とメソ孔とを有する樹状の粒子が得られたことを確認した。
【0077】
この粒子は、マクロ孔とメソ孔が階層的に形成されているので、階層的な粒子とも本明細書では言うこともある。
【0078】
(メソ孔内にGDHを担持 (1)表面修飾なし)
樹状の粒子のメソ孔内にPQQ−GDHを担持させる方法は、実施例1と同様の方法をもちいた。メソ孔内にPQQ−GDHが担持されているかどうかは、実施例1と同様に窒素吸着測定装置で確認した。PQQ−GDHのメソポーラスシリカへの吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化でPQQ−GDHがメソ孔内に担持されていることを確認した。
【0079】
(メソ孔内にGDHを担持 (1)表面修飾あり)
合成した階層的メソポーラスシリカ1.0gをトルエンで調製した5%(v/v)の3−aminopropyl triethoxysilane溶液の50ml中に添加し、この溶液を窒素雰囲気下において、120℃で48時間,撹拌した。反応後、沈殿物は濾過し、トルエン、エタノール、ジクロロメタンで洗浄した後、真空で乾燥させた。
【0080】
次にこの乾燥試料の1.0gをリン酸緩衝溶液(pH=6.6)で調製した2.5% glutaraldehyde溶液の25mlに溶解させ、室温で1時間撹拌した。得られた沈殿物は純水を用いて4回以上洗浄し,その後室温において乾燥した。
【0081】
Glutaraldehydeで修飾した階層的メソポーラスシリカを粉末X線回折法により評価した結果、修飾前とほぼ同様の回折パターンを示しており、表面修飾によりメソ孔構造が壊れていないことを確認した。また、FT−IRを用いてシリカ表面に導入した官能基の同定を行った結果、R−CH=N,C=O,−CHOに起因するピークがそれぞれ確認され、シリカ表面にSi(CH2)3NH=CH(CH2)3CHOが共有結合していることを確認した。
【0082】
続いて、修飾後の階層的メソポーラスシリカのメソ孔内にPQQ−GDHを固定化する。
【0083】
20mMのMOPS緩衝液(pH=7.0)を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製し、この溶液1ml中に、上記方法で合成・修飾した階層的メソポーラスシリカ10mgを添加した。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて含浸させ,PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。反応終了後、試料を濾過して、純水で3回洗浄した。この際、元の酵素溶液と上澄み液のそれぞれを,UV−Vis吸光度測定を行った。PQQ−GDHの280nmにおける吸収極大を利用し、吸着前後の濃度変化からメソポーラスシリカへの吸着量を算出した。吸着したPQQ−GDHは150mg/gの値を示した。
【0084】
次にメソポーラスシリカからのPQQ−GDHの脱着挙動を確認するため、以下の実験を行った。メソ孔内を修飾しPQQ−GDHを固定化した樹状の粒子を純水1ml中に入れ、4℃でゆっくり振とうさせ、一定時間ごとに上澄み液の280nmにおける吸光度を測定した。比較として、メソ孔を表面修飾なしで、PQQ−GDHを固定化した樹状の粒子を同様の方法を用いて、PQQ−GDHの脱着挙動を測定した。シリカ表面を有機物で修飾した後,PQQ−GDHを固定化した試料では12時間経過後もほとんどPQQ−GDHの脱着を確認できなかった。一方、表面修飾をせず、PQQ−GDHを固定化した粒子では、PQQ−GDHの脱着が測定された。その値は、全吸着量に対して5%以内であった。したがって、シリカ表面に修飾した−CHOおよびPQQ−GDHの−NH2が結合し、シリカ表面に共有結合にて固定化されたと考えられる。よって、PQQ−GDHの位置などを決めて担持させたい場合などは、表面修飾を用いて担持させることが効果的であると考えられる。
【0085】
(PQQ−GDHを担持した樹状粒子における熱特性)
続いて、このPQQ−GDHを固定化したメソポーラスシリカおよび固定化していないPQQ−GDHを実施例1と同様に70℃でそれぞれ熱処理した後、PQQ−GDHの酵素活性を測定した。
【0086】
階層的メソポーラスシリカを用いている部分以外の実験条件は、実施例1と同様で行った。
【0087】
得られた結果は、実施例1と同様に固定化されていないPQQ−GDH(緩衝液中に分散させただけ)は、70℃の熱処理により60分後には完全に失活した。これに対して本実施例で合成した階層的メソポーラスシリカに固定化したPQQ−GDHでは、熱安定化効果が確認された。
【実施例3】
【0088】
(メソ孔にPQQ−グルコースデヒドロゲナーゼを担持させるための条件)
本実施例は,PQQ−GDHを合成したメソポーラスシリカに効率的に導入するために、衝液の塩濃度やpHを調製する方法を用いる。
【0089】
pH=7.0のMOPS緩衝液を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製した。MOPSの塩濃度はそれぞれ、0.1、0.5、1.0、5.0、10.0、20.0mMに調製した。このPQQ−GDH水溶液1ml中に、実施例2で合成した階層的メソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、PQQ−GDHをメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、各塩濃度においてPQQ−GDH固定化シリカが調製された。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。各試料とも、ソポーラスシリカの外表面ではなく、メソ孔の中にGDH酵素分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるPQQ−GDH酵素のメソポーラスシリカへの窒素吸着前後におけるメソ孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0090】
緩衝液の塩濃度の増加に従い、メソ孔内へのPQQ−GDH吸着PQQ−GDH吸着量が曲線的に増加していくことが確認された。20mMのMOPSを使用した場合、最大吸着量240mg/gを示した。また、0.1mMのMOPS緩衝液を調製した後PQQ−GDHを5mg/mlの濃度で溶解させ、pHをPQQ−GDHの等電点に近いpH=9.0にしたPQQ−GDH水溶液を調製し、同様の吸着実験を行った。前記のpH=7.0の場合では,100mg/mlの吸着量であったが、pH=9.0の場合では220mg/mlとなり、ほぼ倍の値を示した。
【0091】
以上の結果は、PQQ−GDHをメソ孔内に効率的に導入するためには、静電反発を緩和させた反応系を利用することが必須であることを示している。このような反応系であれば、緩衝液の塩濃度を増加させる方法や、pHをPQQ−GDHの等電点付近に調製する方法など手段を選択しないことをも示している。ここでいう塩濃度を増加させる方法というのは、緩衝液の濃度を増加させることにより、反応系中のイオン強度を上げ、生体物質間に働いている静電反発を緩和させる方法をいう。しかし、PQQ−GDHの最適pHがpH=7.0程度であることを考慮すれば、塩濃度制御によるメソ孔内導入方法が優れていると思われる。
【実施例4】
【0092】
(PQQ−GDHをメソ孔に担持した構造体を用いたセンサー)
本実施例は、図14に示す。実施例2で合成した階層的メソポーラスシリカを電極上に合成し、さらにPQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼおよびメディエーターをメソ孔内に固定化させ、グルコース濃度を測定した例である。電極としては,カーボン電極(作用電極)、白金電極(対極)を用いた。
【0093】
20mMのMOPS(pH=7.4)を用いてPQQ−GDHを5mg/mlに調製し、この酵素溶液10ml中に、実施例2で合成したメソポーラスシリカとカーボン電極を浸漬した。4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いてゆっくり攪拌し、PQQ−GDHを電極上のメソポーラスシリカメソ孔内に吸着させた。反応終了後遠心分離を行い、電極上のPQQ−GDH−メソポーラスシリカは純水で3回洗浄し、PQQ−GDH固定化電極を得た。PQQ−GDH固定化前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、カーボン電極のみへの吸着をバックグランドとして差し引いていて、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは230mg/g以上の吸着量を示した。乾燥後試料はさらに、メディエーターをメソ孔内に固定化するために、50mLのMOPS緩衝液で調製した100mMのフェリシアン化カリウム溶液100mlに12h室温で静止させた。浸漬後、遠心分離および純水で洗浄し、室温で乾燥させることによって、グルコース測定用GDH電極を作成した。
【0094】
グルコース濃度の測定は以下のようにして行った。恒温セルに50mMのMOPS緩衝液を入れ、一定温度に維持した。作用電極として前記合成したPQQ−GDH固定化カーボン電極を用い、対極には白金電極を用いた。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定した結果、高い電流値が得られた。また、標準のグルコース溶液試料を用いて電流値を測定した結果、グルコース濃度に従って、電流値が直線的に上昇した。
【0095】
また、この電極の熱安定性を測定するために、恒温セル中のMOPS緩衝液内で電極を保持する際に、70℃の条件下で30分熱処理した後、同様のグルコース電極測定を行った。その結果、上記実験結果とほぼ同様の電流が得られ、電極内に固定化されたPQQ−GDHにおいても高い熱安定効果を保持していることが確認された。
【0096】
PQQ依存性GDH酵素の詳細な反応メカニズムは、図13に示すように基質であるD−グルコースが酸化されて、電子が酵素に配位しているピロロキノリンキノンに伝達し、さらにメディエーターであるフェリシアン化物イオンに伝達すると考えられる。
【0097】
以上の結果より、本実施例では、上記のPQQ−GDH固定化シリカおよび電子メディエーターを用いることで、高い安定化効果を持ったグルコース測定用試薬組成物およびグルコースセンサーの作製が可能となることが確認された。
【実施例5】
【0098】
(メソ孔にNAD−グルコースデヒドロゲナーゼを担持させるための条件)
メソ孔を有するロッド状粒子や樹状粒子については、上述の実施例と同様の方法で作製した。
【0099】
窒素パージしたpH=7.4の20mMリン酸緩衝液を用いてNAD−GDHを2mg/mLに調製し、このNAD−GDH溶液1mL中に、上記方法で合成した階層的メソポーラスシリカを5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、GDHをメソポーラスシリカ細孔内に固定化させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000 gで遠心分離を行い、NAD−GDH固定化シリカを得た。NAD−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのNAD−GDHの吸着量を算出した。NAD−GDHは160mg/g程度の吸着量を示した。これらのNAD−GDHがメソポーラスシリカの外表面ではなく、細孔の中に導入されていることは、乾燥後のNAD−GDH固定化メソポーラスシリカへの窒素吸着等温線測定における細孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0100】
次に熱安定性を評価するために,NAD−GDH固定化メソポーラスシリカ5mgに、20mMリン酸緩衝液(pH=7.4)を1mL加え、90℃で30、60、90、120分間それぞれ加熱した。加熱後遠心分離を行い、NAD−GDH−Diaphorase固定化シリカを純水で2回洗浄した。この熱処理したNAD−GDH固定化シリカに、pH=8.0の0.1M−Tris−HCl溶液で調製した20mMのNAD溶液を加えた。5分間室温で撹拌後、1.5Mのグルコース溶液を添加し、さらに10分間撹拌した。反応後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い上澄み液におけるNADHの340nmの吸収極大を利用し、NAD→NADHの反応を触媒するNAD−GDHの活性を測定した。また、比較としてメソポーラスシリカに固定化していないNAD−GDH溶液を調製し、同様の熱処理を行った試料についても、NAD−GDHの活性を測定した。非加熱時のNAD−GDHに対して1.5Mのグルコースを添加した時に得られた吸光度を基本にしてその相対活性を測定した。その結果,メソポーラスシリカに固定化したNAD−GDHは、90℃で120分熱処理しても、高い相対活性を維持していることが分かった。これに対し,メソポーラスシリカに固定化していないフリーな状態のNAD−GDHは、90℃、 30分の熱処理で完全に失活した。このことからメソポーラスシリカの細孔内においては,NAD−GDHの熱変性を防ぐ効果を有することが分かった。
【実施例6】
【0101】
(NAD−GDHとPQQ−GDHとの挙動の違いを比較)
樹状粒子のメソ孔に固定化したNAD−GDH以外に、PQQ−GDHも同様に固定化し、マルトースを含んだグルコース溶液に対する挙動を測定した例である。
【0102】
窒素パージしたpH=7.4の20mMリン酸緩衝液を用いてPQQ−GDHを2mg/mLに調製し、このPQQ−GDH溶液1ml中に、樹状粒子を5mg加えた。この混合溶液は4℃,20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、GDHをメソポーラスシリカ細孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い、PQQ−GDH固定化シリカを得た。PQQ−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのPQQ−GDHの吸着量を算出した。PQQ−GDHは、200mg/g程度の吸着量を示した。電子伝達物質として、20mMリン酸緩衝液で1mMのフェリシアンカリウム溶液を調製し、この5mL中に上記で調製したPQQ−GDH固定化シリカを添加した。
【0103】
また、NAD−GDHは上述の実施例と同様の操作を行い、NAD−GDH,Diaphorase固定化のメソポーラスシリカを得た。電子伝達物質は、10mMのVB溶液を用いた。
【0104】
次にこれらのPQQ−GDHおよびNAD−GDH調製試料に、1M−グルコース溶液を用いて調製した種々の濃度のマルトース溶液を加え、サイクリックボルタンメトリにより酸化電流値を測定した。NAD−GDHで構成された試料では,種々のマルトース濃度に依存することなく、常に一定の電流値が得られた。しかし、PQQ−GDHで構成された試料では、マルトース濃度に比例するように電流値が増加した。
【0105】
これらの結果により、本実施例では、上記のNAD−GDH固定化シリカが、マルトースに影響を受けない高いグルコース選択性を持ったグルコースセンサーへ利用可能となることが確認された。
【実施例7】
【0106】
(NAD−GDHをメソ孔に入れる新たな方法)
本実施例は,NAD−GDHを合成したメソポーラスシリカに効率的に導入するために、緩衝液の塩濃度やpHを調製する方法を用いることにより、これを達成した例である。
【0107】
pH=7.4のリン酸緩衝液を用いてNAD−GDHを2mg/mLに調製した.リン酸緩衝液の塩濃度はそれぞれ、0.1、0.5、1.0、5.0、10.0、20.0mMに調製した。このNAD−GDH水溶液1ml中に、上述の実施例で合成した樹状粒子を5mg加えた。この混合溶液は4℃、20時間の条件下でシェーカーを用いて撹拌し、NAD−GDHをメソポーラスシリカ細孔内に吸着させた。撹拌終了後、4℃、10分、20000gで遠心分離を行い各塩濃度においてNAD−GDH固定化シリカが調製された。NAD−GDH吸着前後の上澄み溶液における280nmの吸収極大を利用し、メソポーラスシリカへのNAD−GDHの吸着量を算出した。各試料とも、ソポーラスシリカの外表面ではなく、細孔の中にGDH酵素分子が導入されていることは、窒素吸着測定装置によるNAD−GDH酵素のメソポーラスシリカへの窒素吸着前後における細孔内への吸着挙動の変化で確認した。
【0108】
緩衝液の塩濃度の増加に従い細孔内へのNAD−GDH吸着量が曲線的に増加し、Langmuir型の吸着挙動を示した。20mMのリン酸緩衝液を使用した場合、最大吸着量180mg/gを示した。また、0.1mMのリン酸緩衝液を調製した後NAD−GDHを5mg/mlの濃度で溶解させ、pHをNAD−GDHの等電点に近いpH=8.0にしたNAD−GDH水溶液を調製し、同様の吸着実験を行った。前記のpH=7.0の場合では、約80mg/mlの吸着量であったが、pH=8.0の場合では150mg/mlとなりほぼ倍の値を示した。
【0109】
以上の結果は、NAD−GDHをメソ細孔内に効率的に導入するためには、静電反発を緩和させた反応系を利用することが必要であることを示している。このような反応系であれば、緩衝液の塩濃度を増加させる方法や、pHをNAD−GDHの等電点付近に調製する方法など手段を選択しないことを示している。ここでいう塩濃度を増加させる方法というのは、緩衝液の濃度を増加させることにより、反応系中のイオン強度を上げ、生体物質間に働いている静電反発を緩和させる方法をいう。しかし、NAD−GDHの至適pHがpH=7.0程度であることを考慮すれば、塩濃度制御による細孔内導入方法が優れていると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態のロッド状粒子の模式図
【図2】本発明の一実施形態のロッド状粒子の模式図
【図3】X線回折測定の結果を示した図
【図4】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図5】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図6】ロッド状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図7】酵素活性の温度依存性を示した図
【図8】酵素活性の温度依存性を示した図
【図9】本発明の一実施形態の樹状粒子の模式図
【図10】本発明の一実施形態の樹状粒子の模式図
【図11】樹状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図12】樹状の粒子を走査型電子顕微鏡写真
【図13】グルコースデヒドロゲナーゼとグルコースとの反応を示した図
【図14】グルコースセンサーの模式図
【符号の説明】
【0111】
1 多孔体
2 メソ孔
3 グルコースデヒドロゲナーゼ
4 細孔壁
5 グルコース
6 マクロ孔
7 骨格部
8 電子伝達物質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持していることを特徴とする多孔体。
【請求項2】
前記メソ孔の長さが、孔径の30倍以下である請求項1記載の多孔体。
【請求項3】
前記メソ孔の孔径が30nm以下である請求項1記載の多孔体。
【請求項4】
前記多孔体が樹状の骨格部を有する請求項1記載の多孔体。
【請求項5】
前記骨格部をその長手方向に交差する方向に貫通しているメソ孔を有する請求項4記載の多孔体。
【請求項6】
前記樹状の骨格部は、枝分かれした該骨格部同士がつながってマクロ孔を形成しているか、あるいは、隣り合う該骨格部間には、マクロ孔サイズの間隙が形成されている請求項4記載の多孔体。
【請求項7】
前記メソ孔の孔表面が、有機物で形成されていることを特徴とする請求項1記載の多孔体。
【請求項8】
前記多孔体が、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタンのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1記載の多孔体。
【請求項9】
前記多孔体において、窒素ガス吸着測定により求められたメソ孔径分布が、単一の極大値を有し、且つ全メソ孔中の60%以上が、孔径の分布幅が10nm以内の範囲に含まれる請求項1記載の多孔体。
【請求項10】
請求項1記載の多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取り、電極に前記電子を伝えるための電子伝達物質とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1記載の多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取り、電極に前記電子を伝えるための電子電子伝達物質とを含む緩衝溶液と、
前記電子伝達物質から電子を受け取るための電極とを備えたことを特徴とするセンサー。
【請求項1】
メソ孔を有する多孔体であって、
前記メソ孔の孔径が10nm以上であり、且つ
前記メソ孔中にグルコースデヒドロゲナーゼを担持していることを特徴とする多孔体。
【請求項2】
前記メソ孔の長さが、孔径の30倍以下である請求項1記載の多孔体。
【請求項3】
前記メソ孔の孔径が30nm以下である請求項1記載の多孔体。
【請求項4】
前記多孔体が樹状の骨格部を有する請求項1記載の多孔体。
【請求項5】
前記骨格部をその長手方向に交差する方向に貫通しているメソ孔を有する請求項4記載の多孔体。
【請求項6】
前記樹状の骨格部は、枝分かれした該骨格部同士がつながってマクロ孔を形成しているか、あるいは、隣り合う該骨格部間には、マクロ孔サイズの間隙が形成されている請求項4記載の多孔体。
【請求項7】
前記メソ孔の孔表面が、有機物で形成されていることを特徴とする請求項1記載の多孔体。
【請求項8】
前記多孔体が、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタンのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1記載の多孔体。
【請求項9】
前記多孔体において、窒素ガス吸着測定により求められたメソ孔径分布が、単一の極大値を有し、且つ全メソ孔中の60%以上が、孔径の分布幅が10nm以内の範囲に含まれる請求項1記載の多孔体。
【請求項10】
請求項1記載の多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取り、電極に前記電子を伝えるための電子伝達物質とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1記載の多孔体と、
前記多孔体中の生体物質から電子を受け取り、電極に前記電子を伝えるための電子電子伝達物質とを含む緩衝溶液と、
前記電子伝達物質から電子を受け取るための電極とを備えたことを特徴とするセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−197297(P2007−197297A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158635(P2006−158635)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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