説明

多孔性の焼結化金属材料の調製のためのプロセス

本発明は、多孔性金属含有材料を製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、少なくとも1つの溶媒中に分散した粒子を含む組成物を提供する工程であって、この粒子が少なくとも1つのポリマー材料と少なくとも1つの金属ベースの化合物とを含む工程;この組成物から溶媒を実質的に除去する工程;このポリマー材料を実質的に分解して、これによって溶媒を含まない粒子を多孔性金属含有材料へと変換する工程を包含する。本発明はさらに、上記プロセスに従って作製される金属含有材料、および移植可能な医療デバイスにおける使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、多孔性金属含有材料の製造のためのプロセスに関し、このプロセスは、少なくとも1つの溶媒中に分散された粒子を含む組成物を提供する工程であって、この粒子が少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの金属ベース化合物を含む工程;この組成物から溶媒を実質的に除去する工程;このポリマー材料を実質的に分解し、これによって溶媒を含まない粒子を多孔性金属含有材料へと変換する工程を包含する。本発明の材料は、種々の目的のため、特にコーティングされた医療インプラントデバイスのためのコーティングまたはバルク材料として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
セーメット等の多孔性の金属ベースのセラミック材料は、代表的に、摩擦型ベアリング、フィルター、燻蒸デバイス、エネルギー吸収体または防火バリアのための成分として使用される。中空の空間特性を有し剛性を増した構造要素は、構造技術において重要である。多孔性金属ベースの材料は、コーティング分野で益々重要になりつつあり、特定の物理学的特性、電気特性、磁気特性および光学特性によるこのような材料の機能化は、主要な目的である。さらに、これらの材料は、例えば、光起電性、センサ技術、触媒および電気彩色ディスプレイ技術等の適用において重要な役割を果たすことができる。
【0003】
一般的に、ナノ結晶の微細構造を有する多孔性金属ベースの材料についての必要性が存在し得る。これは、電気抵抗、熱拡散、熱吸収力および伝導率、ならびに超弾性特性、硬性および機械強度の調節を可能とする。
【0004】
さらに、コストに効果的な様式で生産され得る多孔性金属ベースの材料の必要性が存在し得る。従来の多孔性金属ベースの材料およびセーメットは、粉末焼結方法または溶解焼結方法によってか、または溶浸方法によって生産することができる。特に、所望の材料特性の制御はしばしば使用される材料粒子のサイズに依存し得るので、このような焼結方法は、技術上でも経費上でも複雑であり得かつコストかかり得る。このパラメータは、粉末コーティングまたはテープ成形等のプロセス技術が使用され得る、コーティング等の特定の適用において、適切な範囲にわたって必ずしも調節可能であるとは限らないかもしれない。従来の方法に従って、多孔性金属および多孔性金属ベースの材料は、代表的に、添加物の添加によるかまたは発泡(foaming)方法によって作製することができ、これらは通常、細孔形成剤(pore−former)または発泡剤(blowing agent)の添加を必要とする。
【0005】
また、多孔性金属ベースの材料の必要性も存在し得、その細孔サイズ、細孔分布および間隙率は、その材料の物理特性および化学特性を劣化させることなく調節することができる。充填剤または発泡剤に基づく従来の方法は、例えば、間隙率20〜50%をもたらし得る。しかしながら、硬性および強度等の機械特性は、間隙率の増加につれて速やかに低下し得る。このことは特に、異方性の細孔分布、大きな細孔サイズおよび高い間隙率が、生物力学的ストレスに関する長期安定性と共に必要とされる、インプラント等の生物医学的適用において不利である。
【0006】
生物医学的適用の分野において、生体適合性材料を使用することが重要である。例えば、薬物送達デバイスにおける使用のための金属ベース材料は、マーク付け目的または放射線吸収体として使用することができ、好ましくは高度の機能性を有することができ、1つの材料中に全く異なる特性を組み合わせ得る。特定の磁気特性、電気特性、誘電特性または光学特性に加え、これら材料は適切な範囲の細孔サイズで高い間隙率を提供しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の例示の実施形態の要約)
本発明の1つの目的は、例えば、特性および組成において改変可能であり得る金属前駆体に基づく材料を提供することであり、このことは、その機械特性、熱特性、電気特性、磁気特性、および光学特性を目的に合わせることを可能にする。本発明の別の目的は、例えば、多孔性金属含有材料を比較的低温で提供することであり、ここで形成される材料の間隙率は、物理的安定性および化学的安定性に悪影響を与えることなく、広範な適用分野における使用のため再現性良く変化させることができる。
【0008】
本発明のさらなる目的は、例えば、コーティング材料およびバルク材料として使用することができる多孔性材料およびその材料の生産のためのプロセスを提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、例えば、本明細書中に記載されるようなプロセスによって取得可能な材料を提供することである。この材料は、コーティングの形態であっても多孔性バルク材料の形態であってもよい。
【0010】
本発明のさらなる別の目的は、例えば、本明細書に記載されるプロセスによって取得可能な材料を提供することであり、この材料は、コーティングの形態または多孔性バルク材料の形態であり得る。
【0011】
本発明のなおさらなる目的は、例えば、本明細書に記載されるプロセスによって取得可能な、多孔性の焼結化金属ベース材料を提供することであり、この材料は、生体浸食特性または生分解特性を有する場合があり、そして/または生理学的流体の存在下で少なくとも部分的に溶解性であり得る。
【0012】
本発明のなおさらなる目的は、例えば、インプラント、薬物送達デバイス、ならびに/またはインプラントおよび薬物送達デバイスのコーティング等の、生物医学分野における使用のための多孔性金属含有材料を提供することである。
【0013】
例えば、本発明のこれらおよび他の目的は、多孔性金属含有材料の製造のためのプロセスに関する本発明の例示の1実施形態によって達成することができ、このプロセスは、以下の工程を包含する:少なくとも1つの溶媒中に分散された粒子を含む組成物を提供する工程であって、この粒子は少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの金属ベース化合物を含む工程;この組成物から溶媒を実質的に除去する工程;ならびに、このポリマー材料を実質的に分解し、これによってその溶媒を含まない粒子を多孔性金属含有材料へと変換する工程を包含する。
【0014】
本発明のプロセスのさらなる例示の実施形態において、粒子は、ポリマーでカプセル封入された金属ベース化合物、少なくとも1つの金属ベース化合物により少なくとも部分的にコーティングされているポリマー粒子、またはその任意の混合物のうちの少なくとも1つを含み、そして溶媒ベースの重合反応において作製し得る。
【0015】
本発明の別の例示の実施形態において、上記のプロセスにおいて粒子は、ポリマーのシェルまたはカプセル中にカプセル封入される少なくとも1つの金属ベース化合物を含み、ここで、この粒子は以下のように調製し得る:少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの重合可能な成分の乳化物(エマルジョン)、懸濁物または分散物を提供する工程;この乳化物、懸濁物または分散物に少なくとも1つの金属ベース化合物を添加する工程;この少なくとも1つの重合可能な成分を重合し、これによってこのポリマーでカプセル封入された金属ベース化合物を形成する工程。
【0016】
本発明のさらに別の例示の実施形態において、上記のプロセスにおける粒子は、金属ベース化合物でコーティングされたポリマー粒子を含み、ここで、この粒子は以下のように調製される:少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの重合可能な成分の乳化物、懸濁物または分散物を提供する工程;この少なくとも1つの重合可能な成分を重合し、これによってポリマー粒子の乳化物、懸濁物または分散物を形成する工程;少なくとも1つの金属ベース化合物をその乳化物、懸濁物または分散物に添加し、これによってその金属ベース化合物でコーティングされたポリマー粒子を形成する工程。
【0017】
本明細書に記載される本発明の例示の実施形態の局面は全て、所望される場合に互いに組み合わせ可能であることを注意しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の例示の実施形態の詳細な説明)
本発明のプロセスの例示の1実施形態に従って、金属ベース化合物は、ポリマー材料中にカプセル封入し得る。このことは、例えば、代表的に、従来の溶媒ベースの重合技術によって達成することができる。一般的に利用可能な例示の手順において、溶媒中で分散しているポリマーシェルまたはカプセル中にカプセル封入される、少なくとも1つの金属ベース化合物を含む粒子は、重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーの乳化物、懸濁物または分散物を溶媒中に提供する工程、少なくとも1つの金属ベース化合物をその乳化物、懸濁物または分散物に添加する工程、ならびにこのモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーを重合し、これによってポリマーでカプセル封入された金属ベース化合物を形成する工程、によって調製することができる。
【0019】
本発明の別の例示の実施形態に従って、ポリマー材料の粒子は、少なくとも1つの金属ベース化合物と組み合わせることができ、そして/またはその化合物により少なくとも部分的にコーティングすることができる。本発明の特定の例示の実施形態の一般的に適用可能な手順において、金属ベース化合物によりコーティングされたポリマー粒子は、モノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマー等の重合可能な成分の乳化物、懸濁物または分散物を溶媒中に提供する工程、このモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーを重合し、これによってポリマー粒子の乳化物、懸濁物または分散物を形成する工程、ならびにその乳化物、懸濁物または分散物に少なくとも1つの金属ベースを添加することによって、この金属ベース化合物により少なくとも部分的にコーティングされるポリマー粒子を形成する工程によって調製され得る。
【0020】
これらの例示の実施形態は、本質的に同じ重合方法を必要とする場合があり、そして少なくとも1つの金属ベース化合物が反応混合物に添加される時点により異なり得る。最初の例示の実施形態において、金属ベース化合物は代表的に、重合工程前または重合工程の間に添加され、一方、第二の例示の実施形態において、ポリマー粒子が既に反応混合物中に形成された後に、この添加がなされる。
【0021】
驚くべきことに、金属ベース化合物から、特に金属ベースナノ粒子、多孔性焼結化金属、合金、酸化物、水酸化物、セラミック金属および複合材料を作製することができ、そして合成された材料の間隙率および細孔サイズは、例えば、反応混合物中の使用されるポリマーと金属ベース化合物、それらの構造、分子量および固形物の最終含量の適切な選択によって、幅広い範囲にわたって再現性があり確実に調節し得ることが見出された。さらに、機械特性、摩擦学的特性、電気特性および光学特性は、例えば、重合反応中のプロセス条件、反応混合物の固体含量、ならびに金属ベース化合物の種および/または組成を制御することによって、容易に調節し得ることが見出された。
【0022】
(金属ベース化合物)
例えば、金属ベース化合物は、0価の金属、金属合金、金属酸化物、無機金属塩、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属由来の特定の塩、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、ハロゲン化物、硫化物、酸化物、およびこれらの混合物;有機金属塩、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属および/または遷移金属の塩、特にそれらのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩、フェノール塩、スルホン酸塩、およびアミンならびにその混合物;有機金属化合物、金属アルコキシド、半導体金属化合物、金属カーバイド、金属ニトリド、金属オキシニトリド、金属カルボニトリド、金属オキシカルボニトリド、金属オキシニトリド、および金属オキシカルボニトリド、好ましくは遷移金属のもの;金属ベースコア−シェルナノ粒子、好ましくはコア材料としてのCdSeまたはCdTeと、シェル材料としてのCdSまたはZnSとを有するもの;金属含有面体内フラーレン(metal−containing endohedral fullerene)及び/または金属内包フラーレン(endometallofullerene)、好ましくはセシウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム等の希土類金属のもの;ならびに前述の任意の組み合わせから、選択され得る。特定の例示の実施形態において、ハンダおよび/または燃焼性合金は金属ベース化合物から除外される。
【0023】
本発明のさらなる例示の実施形態において、上記の材料の金属ベース化合物は、ナノ結晶またはミクロ結晶の粒子、粉末またはナノワイヤーの形態で提供し得る。金属ベース化合物は、約0.5nm〜1,000nm、好ましくは約0.5nm〜900nm、またより好ましくは約0.7nm〜800nmの平均粒子サイズを有し得る。
【0024】
ポリマー粒子上にカプセル封入またはコーティングされる金属ベース化合物はまた、作製される多孔性金属含有材料の所望の特性に従って、金属ベース化合物の混合物として、特に、異なる内訳を有するそのナノ粒子として、提供することができる。金属ベース化合物は、粉末の形態で、極性、無極性または両親媒性の溶媒、溶媒混合物または溶媒−界面活性剤混合物の溶液中の形態で、ゾル、コロイド状粒子、分散物、懸濁物または乳化物の形態で、使用し得る。
【0025】
上記の金属ベース化合物のナノ粒子は、表面 対 容量の高い比率のため、より容易に改変し得る。金属ベース化合物、特にナノ粒子は、例えば、親水性配位子(例えば、トリオクチルホスフィン)を用いて、共有結合様式または非共有結合様式で、改変し得る。金属ナノ粒子に共有結合し得る配位子の例としては、脂肪酸、チオール脂肪酸、アミノ脂肪酸、脂肪酸アルコール、それらの混合物の脂肪酸エステルの群(例えば、オレイン酸およびオレイルアミン)、および類似の通常の有機金属配位子が挙げられる。
【0026】
金属ベース化合物は、金属または金属含有化合物から選択することができ、例えば上記のようなハイブリッド、無機塩または有機塩、酸化物などである。本発明の例示の実施形態において使用される熱処理条件およびプロセス条件に依存して、多孔性酸化金属および0価の金属は、ポリマー粒子またはカプセルと組み合わせて使用される金属化合物から作製し得る。
【0027】
本発明の特定の例示の実施形態において、金属ベース化合物としては、粉末が挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、0価金属、金属酸化物またはそれらの組み合わせのナノ結晶質の(nanomorphous)ナノ粒子であり、例えば、周期表中の金属の主要な群、遷移金属(例えば、銅、金および銀、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金)、または希土類金属を含む金属及び金属化合物である。
【0028】
使用され得る金属ベース化合物としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンまたはそれらの混合物(例えば、鉄−白金混合物)が挙げられる。磁性金属酸化物(例えば、鉄酸化物およびフェライト)もまた使用し得る。磁性特性または信号特性を有する材料を提供するため、フェライト等の磁性金属または磁性合金(例えば、Co、NiまたはMnのγ−酸化鉄、マグネタイトまたはフェライト)を使用し得る。このような材料の例は、国際特許公開WO83/03920、同WO83/01738、同WO85/02772、同WO88/00060、同WO89/03675、同WO90/01295、および同WO90/01899、ならびに米国特許第4,452,773号;同第4,675,173号;および同第4,770,183号に記載される。
【0029】
さらに、半導体性の化合物および/またはナノ粒子は、本発明のさらなる例示の実施形態において使用することができ、周期表の第II〜VI群、第III〜V群、または第IV群の半導体が挙げられる。適切な第II〜VI群の半導体としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、またはこれらの混合物が挙げられる。第III〜V群の半導体の例としては、例えば、GaAs、GaN、GaP、GaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb、AlS、またはこれらの混合物が挙げられる。第IV群の半導体の例としては、ゲルマニウム、鉛およびケイ素が挙げられる。また、前述の半導体の任意の組み合わせも使用し得る。
【0030】
本発明の特定の例示の実施形態において、金属ベース化合物として、錯体金属ベースナノ粒子を使用することが好ましい場合がある。これとしては、例えば、いわゆるコア/シェル構成が挙げられ、これは例えば、Pengら、Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanoparticles with Photostability and Electronic Accessibility、Journal of the American Chemical Society(1997、119:7019−7029)に記載される。
【0031】
半導電性ナノ粒子は、上に列挙した材料から選択することができ、これらは、約1〜30nm、または好ましくは約1〜15nmの直径を有するコアを有し得、そのコア上にさらに半導電性ナノ粒子が、約1〜50個の単層の深さ、または好ましくは約1〜15個の単層の深さに結晶化され得る。コアおよびシェルは、上に列挙した材料のほぼ任意の組み合わせで存在し得、CdSeまたはCdTeのコア、およびCdSまたはZnSのシェルが挙げられる。
【0032】
本発明のさらなる例示の実施形態において、金属ベース化合物は、γ線からマイクロ波までの任意の範囲の波長の放射線に対する吸収特性に基づくか、またはそれらが特に約60nm以下の波長範囲の放射線を放出する能力に基づき、選択し得る。金属ベース化合物を適切に選択することによって、非線形光学特性を有する材料を作製し得る。これとしては、例えば、特定の波長のIR線をブロックし得る材料が挙げられ、これは、マーク付けの目的または治療放射線吸収性のインプラントを形成することに適切であり得る。金属ベース化合物、それらの粒子サイズ、およびそれらのコアとシェルとの直径は、放射が約20nm〜1000nmの範囲にあるようなフォトン放射性化合物を提供するため、選択し得る。あるいは、放射線に晒された場合に示差的な波長のフォトンを放射する、適切な化合物の混合物が選択され得る。本発明の例示的な1実施形態において、消光することを必要としない蛍光性金属ベース化合物が、選択され得る。
【0033】
本発明のさらなる例示の実施形態において使用し得る金属ベース化合物としては、ナノワイヤー形態のナノ粒子が挙げられ、これは、任意の金属、金属酸化物またはそれらの組み合わせを含むことができ、そして約2nm〜800nmの範囲の直径、好ましくは約5nm〜600nmの範囲の直径を有し得る。
【0034】
本発明のさらなる例示の実施形態において、金属ベース化合物は、上記のようなほぼ任意の種の金属化合物を含む、金属フラーレンまたは面体内炭素ナノ粒子から選択し得る。面体内フラーレン、または金属内包フラーレンがそれぞれ特に好ましく、これらは、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムなどの希土類金属を含み得る。面体内金属フラーレンはまた、上記の遷移金属を含み得る。適切な面体内フラーレン(例えば、マーカー目的のために使用し得るもの)は、さらに、米国特許第5,688,486号および国際特許公開WO93/15768に記載される。例えばカーバイドを含む炭素コーティングされた金属ナノ粒子は、金属ベース化合物として使用し得る。また、金属含有ナノ結晶質炭素種(例えば、ナノチューブ状、たまねぎ状)および金属を含有するすす、黒鉛、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、カーボンファイバーなどもまた、本発明の他の例示の実施形態において使用し得る。
【0035】
生物医学的適用のために使用し得る金属ベース化合物としては、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物が挙げられ、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム、またはこれらの混合物である。
【0036】
(ポリマーカプセル封入)
上記の金属ベース化合物は、ポリマー性のシェルまたはカプセル中にカプセル封入し得る。金属ベース化合物をポリマー中にカプセル封入することは、種々の従来の溶媒重合技術(例えば、分散重合、懸濁重合、または乳化重合)によって達成し得る。好ましいカプセル封入ポリマーとしては、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリスチロールまたは他のラテックス形成ポリマー、ポリ酢酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。金属ベース化合物を収容するこれらのポリマーのカプセルは、例えば、架橋格子および/もしくはポリマーを用いたさらなるカプセル封入によって、さらに改変することができ、またはこれらは、エラストマー、金属酸化物、金属塩もしくは他の適切な金属化合物(例えば、金属アルコキシド)を用いてさらにコーティングすることができる。必要に応じて、従来の技術がこれらのポリマーを改変するため使用することができ、そして使用される個々の組成物の必要性に依存して利用し得る。
【0037】
任意の特定の理論に束縛されることを望まないが、出願人はカプセル封入された金属ベース化合物の使用が金属の凝集を防止することができ、型の中へ適用する場合または基材上に適用する場合に、ポリマーのシェルがポリマー材料によって互いから間隔を空けて離れた金属中心の三次元様式を提供し、熱分解工程において少なくとも部分的に保存される、高度に多孔性の構造を導く。従って、ポリマーが完全に分解した後、多孔性焼結化金属構造が残る。同じ概念は金属コーティングされたポリマー粒子に当てはまる。このことは、主として金属含有ポリマー粒子またはカプセルのサイズを制御することによって、細孔サイズを制御すること、および/または得られた焼結化金属材料の総間隙率を制御すること可能にする。このことは、重合プロセスに対して適切な反応の条件およびパラメータを選択することによって、容易に達成することができる。
【0038】
材料の意図される使用に依存して、材料の間隙率および細孔サイズを幅広い範囲にわたって所望の値へと調節することが可能であり得る。本発明の例示の実施形態のプロセスは、ミクロ細孔範囲、メソ細孔範囲またはマクロ細孔範囲の細孔サイズを有する材料を可能にし得る。本明細書に記載されるプロセスを用いて達成可能な平均細孔サイズは、少なくとも約1nm、好ましくは少なくとも約5nm、より好ましくは少なくとも約10nmまたは少なくとも約100nm、または約1nm〜約400μm、好ましくは約1nm〜約80μm、より好ましくは約1nm〜約40μmであり得る。マクロ細孔領域において、細孔サイズは約500nm〜約400μm、好ましくは約500nm〜約80μm、または約500nm〜約40μm、または約500nm〜約10μmの範囲であり得、ここで上記の全ての値は互いに組み合わせ可能であり、そして材料は約30%〜約80%の平均間隙率を有し得る。
【0039】
金属ベース化合物のカプセル封入は、使用される個々の成分に依存して、共有結合性または非共有結合性にカプセル封入された金属ベース化合物を導くことができる。カプセル封入金属ベース化合物は、ポリマー球体、特にミクロ球体の形態、または分散、懸濁もしくは乳化した粒子もしくはカプセルの形態で提供し得る。カプセル封入された金属ベース化合物またはポリマー粒子、分散物、懸濁物もしくは乳化物(ミニエマルジョンが特に好ましい)を提供または製造するのに適した従来の方法が、利用できる。
【0040】
カプセル封入された金属ベース化合物、分散物、懸濁物または乳化物(ミニエマルジョンが特に好ましい)を提供または製造するのに適した従来の方法が、利用できる。適切なカプセル封入方法は、例えば、以下に記載される:オーストラリア公開AU9169501、欧州特許公開EP1205492、同EP1401878、同EP1352915および同EP1240215、米国特許第6380281号、米国特許公開第2004192838号、カナダ特許公開CA1336218、中国特許公開CN1262692T、英国特許公開GB949722、およびドイツ特許公開DE10037656;ならびにS.Kirsch、K.Landfester、O.ShafferおよびM.S.El−Aasser、「Particle morphology of carboxylated poly−(n−butyl acrylate)/(poly(methyl methacrylate) composite latex particles investigated by TEM and NMR」、Acta Polymerica 1999、50、347−362;K.Landfester、N.Bechthold、S.ForsterおよびM.Antonietti、「Evidence for the preservation of the particle identity in miniemulsion polymerization」、Macromol.Rapid Commun.1999、20、81−84;K.Landfester、N.Bechthold、F.TiarksおよびM.Antonietti、「Miniemulsion polymerization with cationic and nonionic surfactants:A very efficient use of surfactants for heterophase polymerization」、Macromolecules 1999、32、2679−2683;K.Landfester、N.Bechthold、F.TiarksおよびM.Antonietti、「Formulation and stability mechanisms of polymerizable miniemulsions」、Macromolecules 1999、32、5222−5228;G.Baskar、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「Comb−like polymers with octadecyl side chain and carboxyl functional sites:Scope for efficient use in miniemulsion polymerization」、Macromolecules 2000、33、9228−9232;N.Bechthold、F.Tiarks、M.Willert、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「Miniemulsion polymerization:Applications and new materials」、Macromol.Symp.2000、151、549−555;N.BechtholdおよびK.Landfester:「Kinetics of miniemulsion polymerization as revealed by calorimetry」、Macromolecules 2000、33、4682−4689;B.M.Budhlall、K.Landfester、D.Nagy、E.D.Sudol、V.L.Dimonie、D.Sagl、A.KleinおよびM.S.El−Aasser、「Characterization of partially hydrolyzed poly(vinyl alcohol).I.Sequence distribution via H−1 and C−13−NMR and a reversed−phased gradient elution HPLC technique」、Macromol.Symp.2000、155、63−84;D.Columbie、K.Landfester、E.D.SudolおよびM.S.El−Aasser、「Competitive adsorption of the anionic surfactant Triton X−405 on PS latex particles」、Langmuir 2000、16、7905−7913;S.Kirsch、A.Pfau、K.Landfester、O.ShafferおよびM.S.El−Aasser、「Particle morphology of carboxylated poly−(n−butyl acrylate)/poly(methyl methacrylate)composite latex particles」、Macromol.Symp.2000、151、413−418;K.Landfester、F.Tiarks、H.−P.HentzeおよびM.Antonietti、「Polyaddition in miniemulsions:A new route to polymer dispersions」、Macromol.Chem.Phys.2000、201、1−5;K.Landfester、「Recent developments in miniemulsions−Formation and stability mechanisms」、Macromol.Symp.2000、150、171−178;K.Landfester、M.WillertおよびM.Antonietti、「Preparation of polymer particles in non−aqueous direct and inverse miniemulsions」、Macromolecules 2000、33、2370−2376;K.LandfesterおよびM.Antonietti、「The polymerization of acrylonitrile in miniemulsions:’Crumpled latex particles’ or polymer nanocrystals」、Macromol.Rapid Comm.2000、21、820−824;B.z.Putlitz、K.Landfester、S.ForsterおよびM.Antonietti、「Vesicle forming、single tail hydrocarbon surfactants with sulfonium−headgroup」、Langmuir 2000、16、3003−3005;B.z.Putlitz、H.−P.Hentze、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「New cationic surfactants with sulfonium−headgroup」、Langmuir 2000、16、3214−3220;J.Rottstegge、K.Landfester、M.Wilhelm、C.HeldmannおよびH.W.Spiess、「Different types of water in film formation process of latex dispersions as detected by solid−state nuclear magnetic resonance spectroscopy」、Colloid Polym.Sci.2000、278、236−244;K.LandfesterおよびH.−P.Hentze、「Heterophase polymerization in inverse systems」、Reactions and Synthesis in Surfactant Systems、J.Texter編;Marcel Dekker,Inc.、New York、2001、pp471−499;K.Landfester、「Polyreactions in miniemulsions」、Macromol.Rapid Comm.2001、896−936;K.Landfester、「The generation of nanoparticles in miniemulsion」、Adv.Mater.2001、10、765−768;B.z.Putlitz、K.Landfester、H.FischerおよびM.Antonietti、「The generation of ’armored latexes’ and hollow inorganic shells made of clay sheets by templating cationic miniemulsions and latexes」、Adv.Mater.2001、13、500−503;F.Tiarks、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「Preparation of polymeric nanocapsules by miniemulsion polymerization」、Langmuir 2001、17、908−917;F.Tiarks、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「Encapsulation of carbon black by miniemulsion polymerization」、Macromol.Chem.Phys.2001、202、51−60;F.Tiarks、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「One−step preparation of polyurethane dispersions by miniemulsion polyaddition」、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.2001、39、2520−2524;F.Tiarks、K.LandfesterおよびM.Antonietti、「Silica nanoparticles as surfactants and fillers for latexes made by miniemulsion polymerization」、Langmuir 2001、17、5775−5780。
【0041】
これらの重合方法は、原則として本発明の例示の実施形態全てについて使用し得る。主要は差異は、重合反応の前、重合反応の間または重合反応の後の、金属ベース化合物が重合混合物に添加される時点である。
【0042】
カプセル封入された金属ベース化合物は、約1nm〜500nmのサイズで生産され得るか、または約5nm〜5μmのサイズを有するミクロ粒子の形態で生産され得る。金属ベース化合物はさらに、適切なポリマーのミニエマルジョンまたはミクロエマルジョン中にカプセル封入し得る。用語ミニエマルジョンまたはミクロエマルジョンは、水相、油相、および界面活性物質を含む分散物として理解することができる。このようなエマルジョンは、適切なオイル、水、1つまたはいくつかの界面活性剤を含み得、必要に応じて1つまたはいくつかの共作用性界面活性剤(co−surfactant)、および1つまたはいくつかの疎水性物質を含み得る。ミニエマルジョンは、界面活性剤によって安定化される、モノマー、オリゴマーまたは他のプレポリマーの反応物の水性エマルジョンを含み得、これは容易に重合され得る。そしてここで、乳化された液滴の粒子サイズは約10nm〜500nmの範囲またはそれ以上である。
【0043】
このような反応において、粒子サイズは、例えば、モノマー混合物に添加される界面活性剤の種類および/または量によって制御し得る。通常、界面活性剤濃度が低いほど、ポリマー粒子またはカプセルの粒子サイズはより大きいことが観察される。従って、重合反応において使用される界面活性剤の量は、得られる多孔性金属含有材料の細孔サイズおよび/または総間隙率を調節するのに適切なパラメータであり得る。
【0044】
さらに、カプセル封入金属ベース化合物のミニエマルジョンは、非水性媒体、例えば、ホルムアミド、グリコール、または非極性溶媒から作製することができる。本質的に、プレポリマー反応物は、熱硬化剤、熱可塑剤、可塑剤、合成ゴム、押し出しポリマー、注入成型ポリマー、成型可能なポリマーなど、またはこれらの混合物から選択され得、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)が使用され得るプレポリマー反応物が挙げられる。
【0045】
金属ベース化合物をカプセル封入すること、または金属ベース化合物を用いてコーティングされるのに適切なポリマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:脂肪族または芳香属族ポリオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリペンテン);ポリブタジエン;ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリアクリロシアノアクリル酸;ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン;バイオポリマー(例えば、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースフタル酸);カゼイン、デキストラン、ポリ多糖、フィブリノーゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチドコグリコリド)、ポリグリコリド、ポリヒドロキシブチラート、ポリアクリルカルボナート、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリヒドロキシ葉酸、ポリジオキサノン、テレフタル酸ポリエチレン、ポリマレイン酸、ポリタルトロン酸、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸;ポリエチレン酢酸ビニル、シリコーン;ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル尿素)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、プルロニック、ポリテトラメチレングリコール);ポリビニルピロリドン、ポリ(酢酸ビニルフタル酸)、シェラック、およびこれらのホモポリマーまたはコポリマーの組み合わせ。本発明の特定の例示の実施形態において、ポリウレタンは、ポリマー材料としては除外される。すなわち、ポリマー材料は、ポリウレタン材料を含まず、そしてそれらの単量体もオリゴマーもプレポリマーも含まない。
【0046】
使用し得るさらなるカプセル封入材料としては、以下が挙げられる:ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、アルキド樹脂、エポキシポリマーまたはエポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリスチレン、ポリフェノール、ポリビニルエステル、ポリシリコーン、ポリアセタール、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリフルオロカーボン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリラート(polyarylate)、シアナトエステルポリマー、および前述の任意の混合物またはコポリマーであり、これらが好ましい。
【0047】
本発明の特定の例示の実施形態において、金属ベース化合物をカプセル封入するためのポリマーとしては、モノアクリル酸(モノメタクリル酸)ベース、ジアクリル酸(ジメタクリル酸)ベース、トリアクリル酸(トリメタクリル酸)ベース、テトラアクリル酸ベース、およびペンタアクリル酸ベースのポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)のうちの少なくとも1つが挙げられる。適切なモノアクリル酸(モノメタクリル酸)の例としては、以下が挙げられる:ヒドロキシエチルアクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリル酸、ヒドロキシプロピルメタクリル酸、ヒドロキシプロピルアクリル酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリル酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリル酸、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリル酸、5−ヒドロキシペンチルアクリル酸、ジエチレングリコールモノアクリル酸、トリメチロールプロパンモノアクリル酸、ペンタエリスリトールモノアクリル酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリル酸、5−ヒドロキシペンチルメタクリル酸、ジエチレングリコールモノメタクリル酸、トリメチロールプロパンモノメタクリル酸、ペンタエリスリトールモノメタクリル酸、ヒドロキシ−メチル化N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロール−アクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリル酸およびグリシジルメタクリル酸、メチルアクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸、アミルアクリル酸、エチルヘキシルアクリル酸、オクチルアクリル酸、t−オクチルアクリル酸、2−メトキシエチルアクリル酸、2−ブトキシエチルアクリル酸、2−フェノキシエチルアクリル酸、クロロエチルアクリル酸、シアノエチルアクリル酸、ジメチルアミノエチルアクリル酸、ベンジルアクリル酸、メトキシベンジルアクリル酸、フルフリルアクリル酸、テトラヒドロフルフリルアクリル酸およびフェニルアクリル酸;
ジアクリル酸(ジメタクリル酸)は、以下から選択し得る:2,2−ビス(4−メタクリルオキシ−フェニル)プロパン、1,2−ブタンジオール−ジアクリル酸、1,4−ブタンジオール−ジアクリル酸、1,4−ブタンジオール−ジメタクリル酸、1,4−シクロヘキサンジオール−ジメタクリル酸、1,10−デカンジオール−ジメタクリル酸、ジエチレングリコール−ジアクリル酸、ジプロピレングリコール−ジアクリル酸、ジメチルプロパンジオール−ジメタクリル酸、トリエチレングリコール−ジメタクリル酸、テトラエチレングリコール−ジメタクリル酸、1,6−ヘキサンジオール−ジアクリル酸、ネオペンチルグリコール−ジアクリル酸、ポリエチレングリコール−ジメタクリル酸、トリプロピレングリコール−ジアクリル酸、2,2−ビス[4−(2−アクリルオキシエトキシ)−フェニル]プロパン、2,2−[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス(2−メタクルオキシエチル)N,N−1,9−ノニレン−ビスカルバマート、1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−ジメタクリル酸、およびジアクリル酸ウレタンオリゴマー;
トリアクリル酸(トリメタクリル酸)としては、以下が挙げられる:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラート−トリメタクリル酸、トリス(2−ヒドロキシ−エチル)−イソシアヌラート−トリアクリル酸、トリメチロールプロパン−トリメタクリル酸、トリメチロール−プロパン−トリアクリル酸またはペンタエリスリトール−トリアクリル酸;
テトラアクリル酸(テトラメタクリル酸)としては、以下が挙げられる:ペンタエリスリトール−テトラアクリル酸、ジ−トリメチロプロパン−テトラアクリル酸、またはエトキシル化ペンタエリスリトール−テトラアクリル酸;
適切なペンタアクリル酸(ペンタメタクリル酸)は、ジペンタエリスリトール−ペンタアクリル酸またはペンタアクリル酸エステル;およびこれらのコポリマーから選択し得る。
【0048】
医学的適用において、バイオポリマーまたはアクリル酸は、好ましくは、金属ベース化合物をカプセル封入または運搬するためのポリマーとして選択され得る。
【0049】
カプセル封入するポリマー反応物は、重合可能なモノマー、オリゴマーまたはエラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン、またはシリコーン)、ならびに前述の任意のものの混合物、コポリマーおよび組み合わせから、選択し得る。金属ベース化合物は、弾性ポリマー中に単独で、または熱可塑性ポリマーと弾性ポリマーとの混合物中に、または熱可塑性ポリマーシェルと弾性ポリマーシェルとの間の交互のシェル/層の配列で、カプセル封入し得る。
【0050】
金属ベース化合物をカプセル封入するための重合反応は、任意の適切な従来の重合反応であってもよく、例えば、ラジカル重合または非ラジカル重合、酵素重合または非酵素重合(ポリ縮合反応が挙げられる)である。使用される乳化物、分散物または懸濁物は、水系、非水系、極性系、または無極性系の形態であり得る。適切な界面活性剤を加えることにより、乳化または分散される液滴の量およびサイズは、望みどおりに調節することができる。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双生イオン性もしくは非イオン性の界面活性剤、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。好ましいアニオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:石鹸、アルキルベンゾールスルホナート、アルカンスルホナート様のもの(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)など)、オレフィンスルホナート、アルキルエーテルスルホナート(alkyether−sulphonate)、グリセリンエーテルスルホナート、a−メチルエステルスルホナート、スルホン化脂肪酸、アルキルスルホン酸、脂肪アルコールエーテルスルホン酸、グリセリンエーテルスルホン酸、脂肪酸エーテルスルホン酸、ヒドロキシル混合エーテルスルホン酸、モノグリセリド(エーテル)スルホン酸、脂肪酸アミド(エーテル)スルホン酸、モノアルキルスルホスクシナートおよびジアルキルスルホスクシナート、モノアルキルスルホスクシナマートおよびジアルキルスルホスクシナマート、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イソチオナート、脂肪酸アルコシナート、脂肪酸ターライド(tauride)、N−アシル−アミノ酸(例えば、アシル乳酸、アシル酒石酸、アシルグルタミン酸、およびアシルアスパラギン酸)、アルキルオリゴグルコシド硫酸(alkyoligoglucosidsulfate)、タンパク質脂肪酸濃縮物(小麦に基づく植物由来の産物が挙げられる);ならびにアルキル(エーテル)リン酸。
【0051】
本発明の特定の例示の実施形態において、カプセル封入反応に適したカチオン性界面活性剤は、以下のような四級アンモニウム化合物の群から選択し得る:ジメチルジステアリン酸塩化アンモニウム、Stepantex(登録商標)VL90(Stepan)、エステルクアット(esterquat)、特に部分的に四級化された脂肪酸トリアルカノールアミノエステル塩、長鎖の第一級アミンの塩、第四級アンモニウム化合物(ヘキサデシルトリメチル塩化アンモニウム(CTMA−Cl)、Dehyquart(登録商標)A(塩化セトリモニウム、Cognis)、またはDehyquart(登録商標)LDB50(ラウリルジメチルベンジル塩化アンモニウム、Cognis)等)。しかしながら、好ましくはカチオン性界面活性剤は、本発明の特定の例示の実施形態において避けられる。
【0052】
金属ベース化合物は、金属ベースのゾルの形態であり得、重合反応の開始前または重合反応の開始の間に添加することができ、そして適切な溶媒もしくは溶媒混合物中の金属ベース化合物の分散物、乳化物、懸濁物もしくは固溶体または溶液として、あるいは任意のその混合物として、提供し得る。カプセル封入プロセスは、重合反応を、必要に応じて開始剤、誘発剤(スターター)または触媒の使用と共に必要とし得、ここで、金属ベース化合物のポリマー中での、ポリマーカプセル、スフェロイドまたは液滴中での重合によって作製されるインサイチュカプセル封入が提供される。このようなカプセル封入混合物中の金属ベース化合物の固体含量は、ポリマーカプセル、スフェロイドまたは液滴中の固体含量がそのポリマー粒子内の金属ベース化合物の約10重量%〜80重量%であり得るように選択し得る。
【0053】
必要に応じて、金属ベースの前駆体化合物はまた、固体形態または液体形態のいずれかで重合反応完了後に添加し得る。このような例において、金属ベース化合物は、代表的にはポリマー粒子の液体分散物中に金属ベース化合物を撹拌することによって、ポリマー粒子に結合するかまたはその粒子上でコーティングされ、その表面を少なくとも部分的に覆う。このことは、ポリマー粒子、スフェロイドもしくは液滴への共有結合もしくは非共有結合を生じるか、またはポリマー粒子への単純な物理的吸着を生じる。ポリマーの液滴サイズおよび/または金属ベース化合物の固体含量は、金属ベース化合物の固体含量が約5重量%〜60重量%の範囲にあるように選択し得る。
【0054】
本発明の例示の実施形態において、重合反応の間の金属ベース化合物のインサイチュカプセル封入は、最初の重合/カプセル封入工程の完了後に、さらなるモノマー、オリゴマーまたはプレポリマー剤の添加によって反復し得る。少なくとも1回の同様の反復工程を提供することによって、このような多層コーティングされたポリマーカプセルを作製し得る。また、ポリマーのスフェロイドまたは液滴に結合またはコーティングされた金属ベース化合物は、続いてモノマー、オリゴマーまたはプレポリマー反応物を添加することによってカプセル封入して、その金属ベース化合物をポリマーカプセルでオーバーコーティングし得る。このようなプロセス工程の反復は、金属ベース化合物を含む多層化ポリマーカプセルを提供することができる。
【0055】
これらのカプセル封入工程の任意のものは、互いに組み合わせ得る。本発明のさらなる例示の実施形態において、ポリマーカプセル封入金属ベース化合物はさらに弾性化合物によってカプセル封入することができ、外側に弾性のシェルを有するポリマーカプセルを作製し得る。
【0056】
本発明のさらなる例示の実施形態において、ポリマーカプセル封入金属ベース化合物は、ベシクル、リポソームもしくはミセル中、またはオーバーコーティング中にさらにカプセル封入し得る。この目的に適した界面活性剤としては、上記の界面活性剤、および炭化水素残基もしくはケイ素残基(例えば、ポリシロキサン鎖、炭化水素ベースのモノマー、オリゴマーおよびポリマー)を含み得る疎水性基、または脂質もしくはリン脂質、またはこれらの任意の組み合わせを有する化合物が挙げられ、具体的には、ホスファチジル−エタノールアミン等のグリセリルエステル、ホスファチジルコリン、ポリグリセリド、ポリラクチド、ポリメタクリル酸、ポリビニルブチルエーテル、ポリスチレン、ポリシクロペンタジエニルメチル−ノルボルネン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリシロキサン、または他の任意の型の界面活性剤である。
【0057】
さらに、ポリマーシェルに依存して、ポリマーでカプセル封入された金属ベースの化合物をベシクル、オーバーコートなどの中にカプセル封入するための界面活性剤は、親水性残基または親水性ポリマーを有する親水性界面活性剤から選択することができ、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−N−アルキルビニル−ピリジニウムハロゲン化物、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)、ポリアミノ酸、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリ多糖(例えば、アガロース、デキストラン、デンプン、セルロース、アミラーゼ、アミロペクチン、またはポリエチレングリコール)、または適切な分子量のポリエチレンイミンである。また、疎水性ポリマー材料、親水性ポリマー材料または脂質ポリマー化合物由来の混合物は、ポリマーカプセル封入金属ベース化合物をベシクル中でカプセル封入するため、またはポリマーカプセル封入金属ベース化合物をさらにオーバーコーティングするために使用し得る。
【0058】
ポリマーカプセル封入金属ベース化合物を、本発明の例示の実施形態に従って作製された材料中に組み込むことは、充填剤の特定の形態とみなすことができる。分散形態または懸濁形態のポリマーカプセル封入された金属ベース化合物の粒子サイズおよび粒度分布は、最終のポリマーカプセル封入金属ベース化合物の粒子の粒子サイズおよび粒度分布と一致し得、そして作製される材料の細孔サイズに対して重要な影響を有し得る。ポリマーカプセル封入金属ベース化合物は、平均粒子サイズおよび単分散度(monodispersity)を決定するための動的光散乱方法によって特徴付けることができる。
【0059】
(添加物)
本発明の材料に添加物を使用して、合成された材料の機械特性、光学特性および熱特性をさらに変動させて調節することが可能である。このような添加物の使用は、所望の特性を有するテーラーメード(tailor−made)コーティングを作製するのに特に適し得る。従って、本発明の特定の例示の実施形態において、その反応の成分とは反応しないさらなる添加物を、ポリマー粒子の重合混合物または分散物に加え得る。
【0060】
適切な添加物の例としては、充填剤、細孔形成剤、金属および金属粉などが挙げられる。無機添加物および無機充填剤の例としては、以下が挙げられる:酸化ケイ素および酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、酸化ジルコニウム、酸化チタン、滑石、黒鉛、カーボンブラック、フラーレン、粘土物質、フィロケイ酸塩、ケイ素化合物、窒化物、金属粉、特に触媒活性な遷移金属(例えば、銅、金、銀、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金)の金属粉。
【0061】
さらなる適切な添加物としては、架橋剤、可塑剤、潤滑剤、耐火材、ガラスまたはガラスファイバー、カーボンファイバー、綿、織物、金属粉、金属化合物、ケイ素、酸化ケイ素、ゼオライト、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、滑石、黒鉛、すす、フィロケイ酸塩などが挙げられる。
【0062】
充填剤を使用して、細孔のサイズおよび間隙率を改変することができる。本発明の特定の例示の実施形態のいくつかにおいて、非ポリマー性充填剤が好まれ得る。非ポリマー性充填剤は、例えば、熱処理または他の条件によって、その材料の特性に負に影響することなく除去または分解し得る、任意の物質であり得る。いくつかの充填剤は、適切な溶媒中に溶解することができ、この様式で材料から除去することができる。さらに、選択した熱条件の下で可溶性物質へと転換し得る非ポリマー性充填剤もまた、使用することができる。これらの非ポリマー性充填剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤を含むことができ、これらは熱条件の下で除去または分解することができる。
【0063】
本発明の別の例示の実施形態において、充填剤は無機金属塩を含み得、具体的には、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属由来の塩であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、ハロゲン化物、硫化物、酸化物、またはこれらの混合物が挙げられる。他の適切な充填剤としては、有機金属塩、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩が挙げられ、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩、フェノール塩、スルホン酸塩またはアミン、およびその混合物である。
【0064】
本発明のなお別の例示の実施形態において、ポリマー充填剤を適用し得る。適切なポリマー充填剤は、カプセル封入ポリマーとして上に記載したものであり得、具体的には球体またはカプセルの形態を有するものであり得る。直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素もまた使用することができ、そしてこれらはホモポリマーまたはコポリマーであり得る。好ましくは、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリペンテン)およびそのコポリマー、およびその混合物を使用し得る。ポリマー充填剤もまた、メタクリル酸またはポリステアリン酸から形成されたポリマー粒子、および電導性ポリマー(例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリジアルキルフルオレン、ポリチオフェン、またはポリピロールであり、これらは使用されて電導性材料を提供する)を含み得る。
【0065】
上記の手順のいくつかまたはその多くにおいて、可溶性充填剤の使用は、ポリマー性充填剤の添加と組合せることができ、ここでこの充填剤は熱処理条件下で揮発性であり得るか、または熱処理の間に揮発性化合物へと変換し得る。この方法において、ポリマー性充填剤によって形成される細孔は、他の充填剤によって形成される細孔と組み合わせて、イソ型または非イソ型の細孔分布を達成することができる。非ポリマー性充填剤の適切な粒子サイズは、得られる複合材料の所望の間隙率および/または細孔サイズに基づき決定し得る。
【0066】
材料の熱処理後の充填剤の除去に使用し得る溶媒としては、例えば、水(熱水)、希釈または濃縮された無機酸または有機酸、塩基などが挙げられる。適切な無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、および希釈したフッ化水素酸が挙げられる。適切な塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、カルボナート、および有機アミンが挙げられる。適切な有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロメタン酸、トリフルオロメタン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
本発明の特定の例示の実施形態において、本発明の複合材料のコーティングは、適切な溶媒または溶媒混合物中での、液体溶液または分散物または懸濁物の組み合わせとして適用することができ、続いて、その溶媒を乾燥または蒸発させる。適切な溶媒としては、例えば、以下が挙げられる:メタノール、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブトキシジグリコール、ブトキシエタノール、ブトキシイソプロパノール、ブトキシプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ブチレングリコール、ブチルオクタノール、ジエチレングリコール、ジメトキシジグリコール、ジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、エトキシエタノール、エチルヘキサンジオール、グリコール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシルアルコール、ヘキシレングリコール、イソブトキシプロパノール、イソペンチルジオール、3−メトキシブタノール、メトキシジグリコール、メトキシエタノール、メトキシイソプロパノール、メトキシメチルブタノール、メトキシPEG−10、メチラール、メチルヘキシルエーテル、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、PEG−4、PEG−6、PEG−7、PEG−8、PEG−9、PEG−6−メチルエーテル、ペンチレングルコール、PPG−7、PPG−2−ブテス−3、PPG−2ブチルエーテル、PPG−3ブチルエーテル、PPG−2メチルエーテル、PPG−3メチルエーテル、PPG−2プロピルエーテル、プロパンジオール、プロピレングリコール、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トリメチルヘキサノール、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン;ならびに水、又は分散剤、界面活性剤もしくは他の添加物と混合し得るこれらの任意のもの、および上記に挙げた物質の混合物。
【0068】
上記の溶媒の任意のものもまた、重合混合物において使用し得る。溶媒としてはまた、1つまたはいくつかの有機溶媒が挙げられ、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、およびブトキシイソプロパノール(1,2−プロピレングリコール−n−ブチルエーテル)、テトラヒドロフラン、フェノール、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン(好ましくは、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、および/またはジプロピレングリコールメチルエーテルであり、ここでイソプロパノールおよび/またはn−プロパノールが好ましくは選択される)、ならびに水である。
【0069】
充填剤は、その溶媒を用いた処理の性質および時間に依存して、合成された材料から部分的にまたは完全に除去し得る。本発明の特定の実施形態において、充填剤の完全な除去が好ましい場合がある。
【0070】
(ポリマーの熱分解)
本発明の例示の実施形態におけるプロセスによって形成されたポリマーカプセル封入金属ベース化合物または金属コーティングポリマー粒子は、固体の細孔性金属含有材料へと、例えば熱処理によって変換することができる。
【0071】
溶媒を熱処理前に除去することが好ましい場合がある。これは、ポリマー粒子を乾燥させることによって(例えばろ過または熱処理によって)、非常に簡便に達成し得る。本発明の例示の実施形態において、この乾燥工程自体は、金属含有ポリマー粒子の熱処理であってもよく、約−200℃〜300℃の範囲、または好ましくは約−100℃〜200℃の範囲、またはより好ましくは約−50℃〜150℃の範囲、または約0℃〜100℃の範囲、さらにより好ましくは約50℃〜80℃の範囲であるか;あるいは単に約室温において溶媒を蒸発させることによる。乾燥はまた、噴霧乾燥、凍結乾燥、ろ過、または同様の従来の方法によって達成し得る。
【0072】
適切な分解処理は、高温での熱処理を含み得、代表的には、約20℃〜約4000℃、または好ましくは約100℃〜約3500℃、またはより好ましくは約100℃〜約2000℃、そしてさらにより好ましくは約150℃〜約500℃であり、必要に応じて減圧下もしくは真空下、または不活性ガスもしくは反応性ガスの存在下においてである。
【0073】
熱処理工程はさらに、種々の条件下、例えば、異なる雰囲気下で実施することができ、例えば不活性雰囲気中(例えば、窒素中、SF6中もしくはアルゴン等の希ガス中、またはこれらの任意の混合物中)であるか、あるいはこの工程は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素もしくは酸化窒素、またはこれらの任意の混合物等の酸化雰囲気において、実施し得る。さらに、不活性雰囲気は、反応性ガス(例えば、空気、酸素、水素、アンモニア、C1〜C6飽和脂肪族炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパンおよびブタン)、これらの混合物、または他の酸化ガスと混合し得る。
【0074】
本発明の特定の例示の実施形態において、熱処理の間の雰囲気は、実質的に酸素を含まない。酸素含量は、好ましくは約10ppm未満、またはより好ましくは約1ppm未満であり得る。本発明の特定の例示の実施形態において、熱処理は、レーザーの適用、例えば選択的レーザー焼結(selective laser sintering:SLS)によって実施し得る。
【0075】
熱処理によって得られる多孔性焼結化材料はさらに、適切な酸化剤および/または還元剤を用いて処理することができ、高温での酸化雰囲気における材料の熱処理が挙げられる。酸化雰囲気の例としては、空気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、または同様な酸化剤が挙げられる。ガス性酸化剤はまた、不活性ガス(例えば、窒素)または希ガス(例えば、アルゴン)と混合することができる。間隙率、細孔サイズおよび/または表面特性をさらに改変するため、合成された材料の部分的酸化が約50℃〜800℃の範囲の高温において達成し得る。ガス性酸化剤を用いた材料の部分的酸化に加え、液体酸化剤もまた適用し得る。液体酸化剤としては、例えば、濃硝酸が挙げられる。濃硝酸は室温より高い温度で材料と接触させることができる。適切な還元剤(例えば、水素ガスなど)は、変換工程の後の金属化合物を0価の金属へと還元するために使用し得る。
【0076】
本発明のさらなる例示の実施形態において、合成される材料を形成するため高圧力を適用し得る。本発明の例示の実施形態において、本プロセスにおいて使用される適切な条件(例えば、最終材料の所望の特性に依存して、温度、圧力および/または圧力)およびポリマーが選択されて、多孔性焼結化金属含有材料からの任意のポリマー残分の分解および除去の実質的な完了を確実にし得る。
【0077】
酸化処理および/もしくは還元処理、または添加物、充填剤もしくは機能性材料の組込みによって、作製される合成材料の特性は、制御された様式で影響され得、そして/または改変し得る。例えば、合成される複合材料の表面特性を、無機ナノ粒子またはナノ複合体(例えば、層状ケイ酸塩)を組み込むことによって、親水性または疎水性にさせることが可能である。
【0078】
本発明の例示の実施形態におけるプロセスによって得られた材料由来のコーティングまたはバルク材料は、折畳み工程、エンボス工程、押抜き工程(punching)、圧縮工程、押出し成型工程、ギャザー付け工程(gathering)、射出成型工程などにより、基材に塗布される前後、または成型される前後、または形成される前後のいずれかに、適切な方法にて構築し得る。この方法において、規則的または不規則な型の特定の構造は、材料を用いて作製されるコーティング中に組み込むことができる。
【0079】
合成された材料のコーティングは、分解処理の前に、例えば、塗装工程、供給工程(furnishing)、相反転、分散噴霧コーティングまたは融解コーティング、押出し成型工程、鋳込み成形工程、浸漬工程によって、液体形態、どろどろ状(pulpy)形態または糊状形態で適用されるか、または熱融解物として塗布されて、その後の熱処理によりポリマーを分解し得る。
【0080】
浸漬工程、噴霧工程、スピンコーティング工程、インクジェット塗装工程、タンポンおよびミクロ液滴のコーティング工程、または三次元プリントおよび同様の従来の方法を使用することができる。熱分解前のポリマー材料のコーティングは、不活性基材に適用され、その後乾燥され、次いで熱処理され得る。ここでこの基材は十分に熱安定性である。
【0081】
さらに、材料は、折畳み工程、打抜き工程(stamping)、押抜き工程、プリント工程、押し出し成型工程、ダイキャスト工程、注入成型工程、リーピング工程(reaping)などの任意の従来の技術によって処理することができる。
【0082】
熱処理のために選択される温度および雰囲気に依存して、そして/または使用される成分の特異的組成に依存して、多孔性金属含有材料は、例えばコーティング(例えば医療インプラントデバイス上のもの)、またはバルク材料の形態で取得することができ、または実質的に純粋な金属ベースの材料(例えば複合金属酸化物)の形態でも取得することができる。ここで、これらの材料の構造は、アモルファスから結晶の範囲にあり得る。間隙率および細孔サイズは、単にカプセル封入金属ベース化合物の粒子サイズを変動させることによって、幅広い範囲にわたって変動し得る。
【0083】
さらに、成分および処理条件の適切な選択によって、生体浸食性コーティングもしくは生体分解性コーティングの生産、または生理学的流体の存在下で基材から溶解可能であるかまたは剥がれ落とし得るコーティングおよび材料を作製することができ、このことは、この材料を、医療インプラントデバイスの生産またはそのようなインプラントデバイス上のコーティングの生産に特にふさわしくさせる。例えば、合成された材料を含むコーティングは、冠動脈インプラント(例えば、ステント)に使用し得る。ここで、このコーティングはさらに、カプセル封入されたマーカー(例えば、信号伝達特性を有する金属化合物)を含み、これによって物理学的、化学的または生物学的に検出可能な方法(例えば、X線、核磁気共鳴(NMR)、コンピューター断層撮影法、シンチグラフィー、シングルフォトンエミッションコンピューター断層撮影法(SPECT)、超音波、高周波(RF)など)によって検出可能である信号を生成し得る。マーカーとして使用される金属化合物は、ポリマーシェル中にカプセル封入し得るか、その化合物上をコーティングすることができ、これによって、インプラント材料(これもまた金属であり得る)を妨害することができない。ここで、このような妨害は、電食(electrocorrosion)または関連の問題をしばしば導き得る。コーティングされたインプラントは、カプセル封入されたマーカーを用いて作製し得る。ここで、このコーティングは、インプラント上で持続したままである。本発明の例示的な1実施形態において、コーティングは、移植後、生理学的条件下でステントから速やかに溶解することができるかまたは剥がれ落とすことができ、一過性のマーキングを生じさせる。
【0084】
本明細書中で以下に記載される実施例において例示されるマグネシウムベースの材料は、生理学的条件下で溶解可能な材料に関する1例であり得る。そしてこれら材料はさらに、マーカーおよび/または治療活性な成分を載せられ得る。
【0085】
治療活性な金属ベースの化合物は、合成された材料を形成するのに使用するかまたはその合成された材料上に載せる場合、これら化合物は、好ましくは、生物浸食性または再吸収可能な多孔性焼結化金属含有マトリクス中にカプセル封入することができ、生理学的条件下での活性成分の制御放出を可能にする。テーラーメードの多孔性のために治療活性化合物(これは、生理学的流体の存在下で溶解または抽出することができる)を浸透し得るコーティングまたは材料の作製もまた、達成することができる。このことは、例えば活性な薬剤の制御放出を提供する、医療インプラントの生産を可能にする。例としては、薬物溶出性ステント、薬物送達インプラントまたは薬物溶出性整形外科インプラントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
また、必要に応じてコーティングされた骨および組織の多孔性移植物(浸食性および非浸食性)の生産、ならびに必要に応じてコーティングされた多孔性インプラントおよび関節インプラントの生産、ならびに多孔性外傷学的デバイス(くぎ、ねじおよびプレートなど)であって、必要に応じて接ぎ特性および治療機能性を増強された、組織および器官の局所的放射線治療のための刺激性放射線特性を有するものの生産を実現することができる。
【0087】
さらに、合成された材料は、例えば非医療適用において使用することができ、流体の吐出のための多孔性織物を備えるセンサの生産;ナノろ過、限外ろ過またはマイクロろ過のための多孔性膜および多孔性フィルタ、ならびにガスの質量分離、が挙げられる。また、反射特性および屈折特性を制御した多孔性金属コーティングも、合成された材料から作製し得る。
【0088】
ここで、本発明はさらに、以下の非限定的な実施例によって記載される。これらの例における分析およびパラメータの決定は以下の方法によって実施した:
粒子サイズは、TOT−法(Time−Of−Transition)かX線粉末回折かTEM(透過型電子顕微鏡)によって、CIS Particle Analyzer(Ankersmid)において測定し、平均粒子サイズとして提供される。懸濁物、乳化物または分散物中の平均粒子径は、動的光散乱法によって決定した。材料の平均細孔サイズは、SEM(走査型電子顕微鏡)によって決定した。多孔性および特定の表面積は、BET方法に従って、N2吸着技術またはHe吸着技術によって決定した。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
ミニエマルジョンの重合反応において、5.8gの脱イオン水、5.1mM アクリル酸(Sigma Aldrichより入手した)、0.125molのメチルメタクリル酸(MMA)(Sigma Aldrich)、および界面活性剤(SDS、Fischer Chemicalから入手した)の15重量%水溶液0.5gを、250mlの四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下(窒素流1分当たり2L)での還流濃縮機を取り付けた。この反応混合物を約85℃の油浴で120rpmにて約1時間撹拌し、安定な乳化物を得た。この乳化物に、エタノール中の酢酸マグネシウム4水和物(Mg(CH3COO)2×4H2O)の20重量%溶液100mlおよび10mlの10%硝酸から室温にて調製した、平均粒子サイズ15nmを有する均一なエタノール性マグネシウム酸化物ゾル(1リットルあたり2gの濃度)0.1gを添加し、そしてこの混合物をさらに2時間撹拌した。次いで、4mlの水中に200mgの過硫酸カリウムを含むスターター溶液を30分間かけてゆっくり添加した。4時間の撹拌後、この混合物をpH7に中和して、PMMAでカプセル封入されたマグネシウム酸化物粒子を含む得られたミニエマルジョンを、室温まで冷却した。この乳化物中のカプセル封入マグネシウム酸化物粒子の平均粒子径は、動的光散乱によって測定すると約100nmであった。カプセル封入マグネシウム酸化物粒子を含む乳化物を、ステンレス鋼316Lから作製した金属基材上に、単位面積当たりの平均コーティング重量を4g/m2で噴霧し、周囲条件下で乾燥させ、その後、管状炉(tube furnace)に移し、空気雰囲気において320℃で1時間処理した。室温に冷却した後、このサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)により分析し、約6nmの平均細孔サイズを有する約5nmの厚さの多孔性マグネシウム酸化物層が形成されていることを明らかにした。
【0090】
(実施例2)
アクリル酸およびメチルメタクリル酸の安定なミニエマルジョンを、上記の実施例1に記載されるように調製した。実施例2に記載されるスターター溶液の添加して、この乳化物を重合させた。実施例1に記載される手順とは対照的に、この重合が完了した後にエタノール性マグネシウム酸化物ゾルを添加し、そして乳化物を室温まで冷却させた。マグネシウム酸化物の添加後、その反応混合物をさらに2時間撹拌した。続いて、マグネシウム酸化物でコーティングされたPMMAカプセルの得られた分散物を、ステンレス鋼316Lから作製した金属基材上に、単位面積当たりの平均コーティング重量を約8g/m2で噴霧した。周囲条件下で乾燥させた後、このサンプルを管状炉に移し、空気雰囲気において320℃で1時間、酸化条件下で処理した。SEM分析は、多孔性マグネシウム酸化物層が約140nmの平均粒子サイズを有することを明らかにした。
【0091】
(実施例3)
ミニエマルジョンを実施例1に従って調製したが、界面活性剤の量を、15重量%SDS水溶液中の0.25gに低減し、より大きなPMMAカプセルを導いた。実施例1のように、マグネシウム酸化物ゾルを、そのモノマー乳化物に添加し、続いて重合させた。平均粒子サイズ約400nmのPMMAカプセル封入されたマグネシウム酸化物粒子を生じた。得られた分散物を、ステンレス鋼316Lから作製した金属基材上に、単位面積当たりの平均コーティング重量を約6g/m2で噴霧し、室温で乾燥させた後、続いて実施例1に記載されるように熱処理した。SEM分析は、マグネシウム酸化物の多孔性コーティングが約80nmの平均細孔サイズを有することを明らかにした。
【0092】
(実施例4)
実施例2に記載されるように、モノマーのミニエマルジョンを調製し、続いて実施例3に記載されるようなより低量(すなわち、15重量%SDS水溶液0.5gの代わりに0.25g)で重合させた。次いで、マグネシウムゾルをポリマー粒子の分散物に添加し、そしてこの混合物を2時間撹拌した。マグネシウム酸化物を有するPMMAカプセルの平均粒子サイズは、約400nmであった。
【0093】
得られた分散物を、金属基材上に噴霧した(ステンレス鋼316L)、続いて周囲条件下で乾燥させた(単位面積当たりの平均コーティング重量は6g/m2)。このサンプルを実施例2に記載されるように熱処理した。得られた多孔性マグネシウム酸化物層は、約700nmの平均細孔サイズを有した。
【0094】
(実施例5)
代表的なミニエマルジョン重合反応において、5.8gの脱イオン水、5.1mMのアクリル酸(Sigma Aldrichより入手した)、0.125molの酸(Sigma Aldrichから入手した)および界面活性剤(SDS、Fischer Chemicalより入手した)の15重量%水溶液0.5gを、上記のように窒素雰囲気下での還流コンデンサを取り付けた、250mlの四つ口フラスコに投入した。この反応混合物を、85℃の油浴中で約1時間120rpmで撹拌し、安定な乳化物を得た。この乳化物に対して、平均粒子サイズ約80nmを有する0.1gのエタノール性イリジウム酸化物ゾル(1リットル当たり1gの濃度)を添加し、さらに撹拌を2時間続けた。このゾルは、粉末イリジウム酸化物(Meliorum Inc.,USAより購入した)の5%水性ナノ粒子分散物を凍結乾燥し、そしてエタノール中に再懸濁することによって作製した。次いで、4mlの水中に200mgの過硫酸カリウムを含むスターター溶液を30分間かけてゆっくり添加した。4時間後、この混合物をpH7に中和して、カプセル封入イリジウム酸化物粒子を含む得られたミニエマルジョンを、室温に冷却した。得られた乳化物は、平均粒子サイズ約120nmを有するカプセル封入イリジウム酸化物粒子を含んだ。この乳化物を、ステンレス鋼316Lから作製した金属基材上に、単位面積当たりの平均コーティング重量を約5g/m2で噴霧し、周囲条件下で乾燥させ、続いて、空気雰囲気において320℃で1時間の酸化条件下で処理した。SEM分析は、3nmの厚さの多孔性イリジウム酸化物層が約80nmの平均細孔サイズを有することを明らかにした。
【0095】
このように、本発明のいくつかの例示の実施形態を詳細に記載して、上記の発明が、上の説明に記載の特定の詳細に限定されるべきでないことが理解されるべきである。なぜなら、これらの多くの明らかな改変が、本発明の本質および範囲を逸脱することなく可能であるからである。本発明の実施形態は、本明細書中に開示されるかまたは詳細な説明から明らかであり、そしてその説明により包含される。実施例によって与えられる詳細な説明は、本発明を、記載される特定の実施例のみに限定するようには意図されない。
【0096】
前述の出願、およびそこに記載したかまたは継続中の全ての文書(「出願に記載した文書」)、および出願に記載または参照した全ての文書、および本明細書中で記載または参照される全ての文書(「本明細書中に記載した文書」)、および本明細書中に記載した文書中に記載または参照される全ての文書は、本明細書中で述べたあらゆる製品に対する、もしくは本明細書中で参考として援用されるあらゆる文書中のあらゆる製造業者の指示書、説明書、製品仕様書および製品の書類と一緒に、本明細書中で参考として援用され、そして本発明の実施において使用され得る。本出願のあらゆる文書の記載も識別も、その文書が本発明に対する従来技術として利用可能であることの承認ではない。この開示および具体的には特許請求の範囲において、用語「含む」「含まれる」「含むこと」などの用語は、可能性ある最も広い意味を有し得ること、すなわちこれらが「含む」、「含まれる」、「含むこと」などを意味し得ること;ならびに「本質的に、…からなること」および「本質的に、…からなる」等の用語は、可能性ある最も広い意味を有し得ることに注意のこと。例えば、これらの用語は、明確には記載されない要素を考慮に入れるが、従来技術に見出される要素または本発明の基本的特徴もしくは新規性ある特徴に悪影響する要素を除外する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性金属含有材料を製造するためのプロセスであって、以下の工程:
a)少なくとも1つの溶媒中に分散された粒子を含む組成物を提供する工程であって、該粒子が少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの金属ベース化合物を含む工程;
b)前記組成物から前記溶媒を実質的に除去する工程;
c)前記ポリマー材料を実質的に分解し、これによって前記溶媒を含まない粒子を多孔性金属含有材料へと変換する工程;
を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記粒子がポリマーカプセル封入された金属ベース化合物の少なくとも1つ、少なくとも1つの金属ベース化合物により少なくとも部分的にコーティングされているポリマー粒子、またはそれらの任意の混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記粒子が溶媒ベースの重合反応において作製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粒子が、ポリマーのシェルまたはカプセル中にカプセル封入された少なくとも1つの金属ベース化合物を含み、そして該粒子が以下の工程:
a)少なくとも1つの溶媒中に、少なくとも1つの重合可能な成分の乳化物、懸濁物または分散物を提供する工程;
b)前記乳化物、懸濁物または分散物に少なくとも1つの金属ベース化合物を加える、工程;
c)前記少なくとも1つの重合可能な成分を重合し、これによって前記ポリマーカプセル封入された金属ベース化合物を形成する工程;
により調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記粒子が金属ベース化合物でコーティングされたポリマー粒子を含み、そして該粒子が、以下の工程:
a)少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの重合可能な成分の乳化物、懸濁物または分散物を提供する工程;
b)前記少なくとも1つの重合可能な成分を重合し、これによってポリマー粒子の乳化物、懸濁物または分散物を形成する工程;
c)前記乳化物、懸濁物または分散物に少なくとも1つの金属ベース化合物を加え、これによって該金属ベース化合物によりコーティングされたポリマー粒子を形成する工程;
により調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの重合可能な成分が、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー、またはそれらの混合物を含む、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記溶媒を実質的に除去する工程が、前記粒子を乾燥させる工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記乳化物、懸濁物または分散物が少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの界面活性剤がアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または双生イオン性界面活性剤、またはそれらの混合物から選択される、請求項8に記載に記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属ベース化合物が、0価の金属、金属合金、金属酸化物、無機金属塩、有機金属塩、アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、遷移金属塩、有機金属化合物、金属アルコキシド、金属アセテート、金属ニトレート、金属ハライド、半導体金属化合物、金属カーバイド、金属ニトリド、金属オキシニトリド、金属カルボニトリド、金属オキシカーバイド、金属オキシニトリド、金属オキシカルボニトリド;金属ベースのコア−シェルナノ粒子、金属含有面体内フラーレン、または金属内包フラーレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの金属ベース化合物が、ナノ結晶粒子、ミクロ結晶粒子またはナノワイヤーのうちの少なくとも1つの形態である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの金属ベース化合物が、コロイド状粒子の少なくとも1つの形態、または前記少なくとも1つの金属ベース化合物のゾルの形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの金属ベース化合物が約0.7nm〜800nmである平均粒子サイズを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ポリマー材料が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、アルキド樹脂、エポキシポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリスチレン、ポリフェノール、ポリビニルエステル、ポリシリコーン、ポリアセタール、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリフルオロカーボン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリラート、シアナトエステル−ポリマー、またはこれらの任意のコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリマー材料が弾性ポリマー材料を含み、該弾性ポリマー材料が、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン、またはシリコーン、またはこれらの任意のコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ポリマー材料が適切なモノマー、オリゴマーまたはそれらのプレポリマーから調製される、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記金属ベース化合物が、有機材料の複数のシェルまたは層のうちの少なくとも1つの中にカプセル封入される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
少なくとも1つのさらなる添加物が前記組成物に添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記少なくとも1つのさらなる添加物が、充填剤、酸、塩基、架橋剤、細孔形成剤、可塑剤、潤滑剤、難燃剤、ガラスもしくはガラスファイバー、カーボンファイバー、綿、織物、金属粉、金属化合物、ケイ素、酸化ケイ素、ゼオライト、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、滑石、黒鉛、すす、フィロケイ酸塩、生物学的に活性な化合物、または治療活性な化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ポリマー材料を分解する工程が、約20℃〜約4000℃の温度での熱処理を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記熱処理が減圧または真空のうちの少なくとも1つの下で実施される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記熱処理が、少なくとも1つの不活性ガス雰囲気下または少なくとも1つの反応性ガスの存在下で実施される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記組成物が前記ポリマー材料を実質的に分解する前に基材に塗布されるかまたは成型される、請求項1〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項のプロセスによって得ることのできる、多孔性金属含有材料。
【請求項25】
前記材料がコーティングの形態である、請求項24に記載の金属含有材料。
【請求項26】
前記材料がバルクの材料の形態である、請求項24に記載の金属含有材料。
【請求項27】
前記材料が生理学的流体の存在下で生体浸食特性を有する、請求項24に記載の金属含有材料。
【請求項28】
前記材料が生理学的流体の存在下で少なくとも部分的に溶解性である、請求項24に記載の金属含有材料。
【請求項29】
約1nm〜約400μmの平均細孔サイズを有する、請求項24〜28のいずれか1項に記載の金属含有材料。
【請求項30】
約30%〜約80%の平均間隙率を有する、請求項24〜29のいずれか1項に記載の金属含有材料。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の材料を含む、医療インプラントデバイス。

【公表番号】特表2008−532913(P2008−532913A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501313(P2008−501313)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060783
【国際公開番号】WO2006/097503
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507221243)シンベンション アーゲー (9)
【Fターム(参考)】