説明

多孔性リン酸カルシウム骨材料

天然の骨ミネラルの化学組成に近似した多孔性リン酸カルシウムインプラント組成物を提供する。リン酸カルシウムに加えて、前記組成物は、相互連絡した孔の形成を促進する発泡剤および硬化した組成物の形状および硬度を維持する凝集剤を含む。移植部位に導入すると、リン酸カルシウム組成物は骨に再形成される。リン酸カルシウム組成物を使用する方法、例えば骨の修復または置換の方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は骨の修復および置換である。より具体的には、本発明は、望ましい取り扱い特性および機械的性質を有する自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の骨は有機および無機成分の両方を含む。有機成分には成長因子、軟骨、コラーゲン、および他のタンパク質が含まれる。無機骨成分には、1.45〜1.75の間のCa/P比を有する非化学量論的な、低結晶性アパタイト系(PCA)リン酸カルシウムが含まれる(Besicら、(1969) J. Dental Res. 48(1):131)。この無機骨塩は、生体内で、再形成として知られる過程において、破骨細胞および骨芽細胞により絶え間なく吸収および再生されている。
【0003】
骨インプラントは骨の欠損および損傷の事象における天然の再生プロセスを増強するためにしばしば使用される。これらのインプラントは、生体適合性で、移植の前に外科医によるマニピュレーションが可能であり、インプラントが生体内でその形状を維持するために強度および組成を有しなければならない。
【0004】
その再生能力を考えると、天然の骨はインプラント材料としての可能性を有する。しかしながら、自家、同種異系、および異種の骨の使用は、それに伴う病気の伝染、免疫原性移植片拒絶、患者の死亡率、および複雑な手術の手順のために困難である。そこで、合成骨インプラント材料が注目を集めてきている。
【非特許文献1】J. Dental Res. 48(1):131 (1969)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成型可能な、自己硬化性リン酸カルシウムセメントは、優れた強度特性を示し、さまざまな臨床的欠損を満たすためにその場(in situ)で容易に成形することができるが、細胞がその密度の高い材料に侵入することができないので再形成が遅い。多孔性リン酸カルシウムセラミックスは、骨の形成の促進および感染の防止のために重要な、血管、細胞および組織、ならびに薬物の侵入が可能なので、インプラント材料として好ましい。インプラント材料として使用する場合には、多孔性リン酸カルシウムセラミックスが高い多孔度を有することが好ましい。この高い多孔度のために多孔性の物体の機械的強度が低下する可能性があり、そのため、高い機械的強度を必要とする骨インプラントにおいては、それらの利点が打ち消されてしまう。さらに、予め形成された多孔性ブロックおよび顆粒はマニピュレーションおよび移植が難しい可能性があり、欠損の不完全な充填につながり得る。そこで、優れた生体適合性および機械的強度の両方を有する多孔性リン酸カルシウムセラミックスの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
天然の骨の化学組成に近似した自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物を提供する。前記のリン酸カルシウム組成物の多孔度(孔の数および大きさ)は、硬化過程の間に混合物から抜け出す発泡剤の気体成分の放出速度により決定される。
【0007】
第1の態様において、本発明は、リン酸カルシウム、発泡剤、および生体適合性凝集剤(例えば、結合剤)を含む組成物を特徴とする。前記の組成物は、アモルファスリン酸カルシウム、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸一カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸三カルシウム、またはそれらの混合物より選択されるリン酸カルシウム源を用いて調製される。あるいは、組成物は、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源、例えば、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸一カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム、もしくはリン酸三カルシウム、またはそれらの混合物を用いて調製される。
【0008】
一つの実施形態において、発泡剤は、炭酸塩/炭酸水素塩混合物を含み、炭酸塩および炭酸水素塩成分は、予め決定されたモル比、例えば約1:1〜約1:9の範囲、好ましくは約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、または1:9の範囲の炭酸塩/炭酸水素塩の比で混合する。一つの実施形態において、発泡剤は、化学式MxCO3/M'yCO3 [式中、MおよびM'は1価のカチオン、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、銀(Ag)、タリウム(Tl)、およびアンモニウム(NH4+)であり、x = 2であり、y = 1である]を有する炭酸塩/炭酸水素塩化合物の混合物である。別の実施形態において、発泡剤は、化学式MxCO3/M'yCO3 [式中、Mは2価のカチオン、例えば、バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ストロンチウム(Sr)、および亜鉛(Zn)であり、M'は1価のカチオン、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、銀(Ag)、タリウム(Tl)、およびアンモニウム(NH4+)であり、x = 1であり、y = 1である]を有する炭酸塩/炭酸水素塩化合物の混合物である。好ましい実施形態において、発泡剤中の炭酸塩の炭酸水素塩に対するモル比は、リン酸カルシウム組成物が硬化する際に、リン酸カルシウム組成物からの制御された二酸化炭素の放出を促進するように選択される。別の実施形態において、発泡剤の炭酸塩/炭酸水素塩成分のモル比は、直径約1〜約1000μm、より好ましくは直径約10〜約100μmの中程度の孔径を有する相互連絡した孔の形成を促進するように選択される。さらに別の実施形態において、孔の形成は発泡剤からの少なくとも1分間、より好ましくは少なくとも2、3、または4分間、最も好ましくは約5分間以上の二酸化炭素の放出により促進される。発泡剤中の炭酸塩のモル比に対する炭酸水素塩のモル比が増加すると、二酸化炭素の放出時間が増加し、同時に多孔度が増加する。
【0009】
別の実施形態において、発泡剤は、移植の前にリン酸カルシウム組成物に溶解された気体であり、この気体は、硬化の間に、所望の量の相互連絡した孔を作るように選択された速度でリン酸カルシウム組成物から放出される。例えば、発泡剤は、硬化過程の間に、1分間、好ましくは2、3、または4分間、より好ましくは約5分間以上気体を放出する能力を有するように選択され、それにより少なくとも約5%〜60%の多孔度を有する硬化リン酸カルシウムが製造される。好ましくは、リン酸カルシウム組成物は約5%、より好ましくは約10、20、または30%の多孔度、最も好ましくは約40、50、または60%の多孔度を有する。好ましい実施形態において、リン酸カルシウムは少なくとも約50%の多孔度を有する。好ましくは、発泡剤は、直径約1〜約1000μm、より好ましくは直径約10〜約100μmの中程度の孔径を有する相互連絡した孔の形成を促進するように選択される。好ましい実施形態において、気体は、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンより選択される。別の実施形態において、発泡剤は溶解すると気体を遊離する固体物質である(例えば、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩)。好ましい実施形態において、発泡剤は、リン酸カルシウム組成物の硬化の間に相互連絡した多孔性の連続的な基質を製造する。別の好ましい実施形態において、発泡剤は約1〜約40重量%の範囲の量で存在する。別の実施形態において、発泡剤は生体の温度で、好ましくは約4℃〜42℃の範囲で、より好ましくは約15℃〜37℃の範囲で、最も好ましくは約37℃でゆっくりと発泡する能力を有するように選択される。
【0010】
別の実施形態において、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は100 nm未満の平均結晶ドメインサイズ(例えば、約1 nm〜約99 nmの範囲、好ましくは50 nm以下、より好ましくは10 nm以下)を有する。
【0011】
別の実施形態において、リン酸カルシウムは、例えば約100 nm未満の平均結晶ドメインサイズおよび0.7 g/cm3よりも大きいタップ密度を有するアモルファス化された(amorphicized)リン酸カルシウムである。別の実施形態において、アモルファス化されたリン酸カルシウムは、アモルファスリン酸カルシウム、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸一カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸三カルシウムの1種以上、またはそれらの混合物より選択される。
【0012】
別の実施形態において、組成物は生体適合性凝集剤を含む。好ましい実施形態において、凝集剤には、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド) (PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド) (PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーより選択されるポリマーが含まれる。また、好ましい凝集剤には、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、キチン、キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、硫酸コンドロイチン、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、または硫酸デキストランナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック(pluronic)、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物が含まれる。さらに別の好ましい実施形態において、生体適合性凝集剤は、組成物中に約0.5重量%〜約20重量%の範囲(例えば、約20重量%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満)の量で存在する。
【0013】
別の実施形態において、生理的に許容される液体を組成物の乾いた成分に加えて、自己硬化性のペーストまたはパテを形成する。本発明のいくつかの実施形態において、好適な生理的に許容される液体には、水、生理食塩水、およびリン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、液体は生物学的液体、例えば生体に関連する処理されたまたは未処理の液体(懸濁液を含む)、特に、全血、暖かいまたは冷たい血液、および保存されたまたは新鮮な血液を含む血液;少なくとも1種の生理的溶液(生理食塩水、栄養物、および/または抗凝血溶液を含むがこれらに限定されない)により希釈した血液などの処理された血液;血小板濃縮物(PC)、アフェレーシス血小板、多血小板血漿(PRP)、貧血小板血漿(PPP)、無血小板血漿、血漿、血清、新鮮凍結血漿(FFP)、血漿から得られる成分、濃縮赤血球(PRC)、バフィーコート(buffy coat)(BC)などの血液成分;血液または血液成分に由来する、または骨髄に由来する血液製品;血漿から分離して生理的液体に再懸濁した赤血球;および血漿から分離して生理的液体に再懸濁した血小板とすることができる。さらに別の実施形態において、生物学的液体には、例えば、乳汁、尿、唾液、精液または膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿嚢内の液体、汗、および涙が含まれる。
【0014】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、水和されてペーストを形成すると、ほとんどの公知の骨インプラント材料よりも改善された流動特性を有する。粉末に加える液体の量を変えることで所望の特性を有するペーストを作ることができる。例えば、少なくともある実施形態において、成形可能な、すなわち成型してその形を保持することができるペーストを調製するために、粉末1グラムあたり0.5〜2.0 ccの液体を使用する。少なくともある実施形態において、ペーストは注入可能、すなわち、16〜18ゲージの針を通ることが可能である。ペーストはカテーテル(例えば、7〜15ゲージの針を有する、より好ましくは7、8、9、10、11、12、13、14、または15ゲージの針を有するカテーテル)を通して送達するように調製することも可能である。
【0015】
別の態様において、組成物は、水和されると、成形可能な自己硬化性のペーストを形成し、このペーストは成型可能で、生体内の移植部位に適用した時に凝集性であり、硬化して多孔性リン酸カルシウム組成物を形成する。少なくともある実施形態において、ペーストは硬化して、顕著な圧縮強度を有するリン酸カルシウム組成物(例えば、低結晶性アパタイト性(poorly crystalline apatitic)(PCA)リン酸カルシウム)を形成する。組成物はペーストの形で、または硬化したリン酸カルシウムとして生体内に移植することができる。組成物は骨、例えば損傷を受けた骨を修復するために、または生物活性物質の送達媒体として使用することができる。
【0016】
ある実施形態によれば、組成物はさらに生物活性物質を含む。本明細書に記載される組成物および方法に使用することができる生物活性物質には、抗体、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質(例えば、骨形成タンパク質)、抗癌剤、成長因子、およびワクチンが含まれるが、これらに限定されない。骨形成タンパク質には、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17、およびBMP-18が含まれるが、これらに限定されない。抗癌剤には、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節物質、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光線力学治療薬、およびチロシンキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
別の好ましい実施形態において、組成物は脱ミネラル骨基質(DBM)を含む。好ましい実施形態において、DBMは53〜850μmの範囲の粒径を有する。別の実施形態において、DBMは53〜125μm(すなわち、微粉)または125〜850μm(すなわち、全種類(full range)のDBM粒子)の範囲の粒径を有する。
【0018】
別の実施形態において、リン酸カルシウム組成物は、1.67未満のCa/P比を有する。特に好ましい実施形態において、成形可能な自己硬化性多孔性リン酸カルシウムペーストは硬化して、1.0〜1.67の範囲、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6、最も好ましくは天然の骨に近い値、すなわち1.45〜1.67の範囲の全Ca/P比を有するリン酸カルシウムを形成する。好ましい実施形態において、リン酸カルシウム組成物は約1.5以下のCa/P比を有する。
【0019】
さらに別の実施形態において、多孔性の硬化したリン酸カルシウム組成物は約1または2 MPa以上の圧縮強度を示す。別の好ましい実施形態において、圧縮強度は約1 MPa〜約150 MPaの範囲(例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、または100 MPa)である。さらに別の好ましい実施形態において、圧縮強度は120 MPa以上(例えば、120〜150 MPa)である。
【0020】
第2の態様において、本発明は生理的に許容される液体と混合したリン酸カルシウム、発泡剤、および生体適合性凝集剤を有する自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物(すなわち、本発明の第1の態様において記載した組成物)を、それを必要とする被験体に投与することを含む骨修復の方法を特徴とする。本発明の第1の態様のすべての実施形態が、本発明の第2の態様に利用する組成物に適用される。
【0021】
本明細書において使用する「約」という用語は、挙げられた値の±10%を意味する。
【0022】
本明細書において使用し、リン酸カルシウムに適用される用語「アモルファス」は、結晶学的秩序を有しない、または短距離でしか有しない、すなわち100 nm未満の結晶学的秩序を有するリン酸カルシウムを意味する。
【0023】
「アモルファス化」(“amorphization”または“amorphicized”)とは、結晶または半結晶物質の内部の原子、分子、イオン、およびリガンドの間などの結晶格子内に存在する規則正しい、繰り返しの、三次元の立体的な関係の熱力学的に安定な形を機械的またはエネルギー的に崩壊させる過程を意味する。前記の課程は、平均物質結晶化指数(average material index of crystallinity)をその本来の秩序ある状態から、より秩序のない状態に変化させる。
【0024】
本明細書において使用される「生体適合性」の物質とは、受容者に許容されないまたは望ましくない生理的反応、例えば、免疫反応を引き起こさない物質のことである。
【0025】
本明細書において使用され、組成物に適用される「凝集性」という用語は、生体適合性の液体と混合した時に、質量を減少させることなくその形状を維持する組成物の能力を意味する。組成物は、水性の環境中で少なくとも10分間インキュベートした後に、その最初の質量および体積の90%以上がその最初の形の寸法で維持される場合に、凝集性であると見なされる。
【0026】
本明細書において使用される「凝集剤」は、本発明のリン酸カルシウム組成物に含まれた場合に、リン酸カルシウム組成物の凝集性を維持する能力を改善する添加物を意味する。好ましい凝集剤には、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド) (PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド) (PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーより選択されるポリマーが含まれる。また、好ましい凝集剤には、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、キチン、キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、硫酸コンドロイチン、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、または硫酸デキストランナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物が含まれる。
【0027】
「発泡剤」とは、組成物中で気泡を発生することができる物質、または組成物から気泡として現れる物質を意味する。組成物中での気泡の生成または放出により、組成物内に多孔性が作り出される。
【0028】
本明細書において使用される、「低結晶性アパタイト系(PCA)リン酸カルシウム」は、天然の骨に見られる程度の小さい結晶ドメインを有し、幅広い、不明瞭なX線回折パターンおよび1.67未満のCa/P比を特徴とする合成リン酸カルシウム材料を意味する。PCAリン酸カルシウムは、アパタイト系鉱物に特徴的なX線回折パターン、すなわち20〜35°の領域の2つの幅広いピークであって、一つのピークの中心は26°、第2のピークの中心は32°であるものを示すものであれば、必ずしも一つのリン酸カルシウム相に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
天然の骨と類似した化学組成を有し、生体内の移植部位に導入された時に凝集性を保持する、成形可能な自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物を提供する。これらの骨インプラント材料はその化学組成にも関わらず高度な骨誘導性を有する。リン酸カルシウム組成物の多孔度(孔の数および大きさ)は、硬化過程の間に混合物から抜け出す発泡剤の放出速度により決定される。さらに、これらの多孔性インプラント材料は硬化した後に顕著な圧縮強度を示す。
【0030】
成形可能な自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物は、リン酸カルシウム粉末、発泡剤、および生体適合性凝集剤(例えば、結合剤)を含む。生理的に許容される液体と混合すると、リン酸カルシウム粉末は成形可能なペーストを形成し、これは硬化および反応して低結晶性アパタイト系リン酸カルシウムを形成する。好ましくは、低結晶性アパタイト系リン酸カルシウムは1.67未満のCa/P比を有する。例えば、低結晶性アパタイト系リン酸カルシウムは、望ましくは1.0〜1.67の範囲、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6、最も好ましくは1.45〜1.67の範囲(すなわち、天然の骨に近い値)の全Ca/P比を有する。好ましくは、低結晶性アパタイト系リン酸カルシウムは約1.5のCa/P比を有する。このPCAリン酸カルシウムは生体内で骨に再形成される。リン酸カルシウム粉末の性質および/または生体適合性凝集剤の存在が、骨インプラント材料に十分な量の補足材料、例えば、DBM粒子などの生物活性物質を、その成形可能性または機械的強度を損なうことなく加えることを可能にしている。したがって、前記のインプラント材料は、生体内の移植部位への移植の後にその凝集性を保持し、硬化した後に顕著な圧縮強度を示す。さらに、発泡剤を含有することで、硬化したリン酸カルシウムインプラント材料中における孔の形成が促進され、そのために、インプラント材料の機械的強度を損なうことなく、血管、細胞および組織、ならびに薬物の浸透が可能になる。注目すべきことは、少なくともある実施形態において、インプラント材料は、無機リン酸カルシウム源が存在するのにも関わらず、高い骨誘導性を有する。
【0031】
リン酸カルシウム組成物の一つの特徴は、発泡剤の存在により促進されるその多孔性である。リン酸カルシウム組成物の多孔性は、リン酸カルシウム組成物の中への細胞の移動および浸潤を促進し、細胞が細胞外骨基質を分泌することができるので、望ましい性質である。また多孔性は血管新生のためのアクセスを提供する。また、多孔性は大きい表面積を与えるので、活性物質の吸収および放出が増大し、また、細胞-基質相互作用が増加する。
【0032】
リン酸カルシウム
本発明のリン酸カルシウム組成物は、アモルファスリン酸カルシウムを単独で用いて、または第2のリン酸カルシウム源と組み合わせて用いて調製することができる。アモルファスリン酸カルシウムは幅広い、拡散したX線回折パターンを有し、ナノメータースケールで測定すると均一であり、カルシウムおよびリン酸イオン源を含有する溶液からの急速沈殿により形成されるゲル様の物質である。急速沈殿はリン酸カルシウム核に多くの欠陥を作り出す。生理的条件下で、アモルファスリン酸カルシウムは高い溶解度、高い形成速度、および高いPCAリン酸カルシウムへの変換速度を有する。
【0033】
アモルファスリン酸カルシウムは約1.1〜約1.9の範囲のCa/Pモル比を有する。本発明の少なくともある実施形態において、アモルファスリン酸カルシウムは1.5未満のCa/Pモル比を有する。特定の実施形態において、Ca/Pモル比は約1.35〜約1.49の間である。アモルファスリン酸カルシウムのCa/Pモル比は、カルシウムおよびリン酸イオンを含有する溶液に追加のイオンを導入することにより修正することができる。前記の追加のイオンの非限定的な例には、CO32-、Mg2+、P2O74-、硝酸、亜硝酸、または酢酸イオンが含まれる。アモルファスリン酸カルシウムの調製および解析については、米国特許第5,650,176号および第6,214,368号にさらに記載されており、これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
少なくともある実施形態において、アモルファスリン酸カルシウムは粉末成分の約20重量%以上の量で存在する。特定の実施形態において、アモルファスリン酸カルシウムは粉末成分の約30重量%以上の量で存在する。
【0035】
ある実施形態において、第2のリン酸カルシウム源がリン酸カルシウム粉末に含まれる。第2のリン酸カルシウム源は結晶またはアモルファスであってよい。本発明に使用するのに適切な第2のリン酸カルシウム源には、アモルファスリン酸カルシウムと反応するとアパタイト系リン酸カルシウムを生成するような化学量論を有する酸性または中性のリン酸カルシウムが含まれる。好適な酸性のリン酸カルシウムの非限定的な例には、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム二水和物、低結晶性ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸八カルシウムが含まれる。特定の実施形態において、第2のリン酸カルシウム源は、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)である。
【0036】
アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、それらが望ましい全Ca/Pモル比を有するリン酸カルシウム粉末をもたらすように選択しなければならない。そこで、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、1:10〜10:1もしくは1:5〜5:1の範囲、または約1:1の割合で使用する。少なくともある実施形態において、望ましいリン酸カルシウム製品は低結晶性アパタイト系(PCA)リン酸カルシウムである。アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源からPCAリン酸カルシウムを形成する反応は実質的に完了するまで進行するので、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源のCa/Pモル比は生成物の比と同じでなければならない。PCAリン酸カルシウムは約1.1〜約1.9の間のCa/Pモル比を有する。したがって、少なくとも本発明のある実施形態によれば、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、約1.1〜約1.9の間のCa/Pモル比を有しなければならない。ある実施形態において、アモルファスリン酸カルシウムと第2のリン酸カルシウム源のCa/Pモル比は、約1.1〜約1.7の範囲である。好ましくは、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源は、混合した時に、1.67未満のCa/Pモル比を有する低結晶性アパタイト系(PCA)リン酸カルシウムを形成する。好ましい低結晶性アパタイト系リン酸カルシウムについては、例えば、米国特許第6,027,742号、米国特許第6,214,368号、米国特許第6,287,341号、米国特許第6,331,312号、および米国特許第6,541,037号に記載されている。これらすべてを参照により本明細書に組み入れる。
【0037】
低温の、高い機械的強度を有するリン酸カルシウム組成物も、発泡剤および凝集剤を含有するリン酸カルシウム組成物を調製するために使用することができる。前記の低温の高い機械的強度を有するリン酸カルシウム組成物は、例えば米国特許第5,783,217号に記載されており、これを参照により本明細書に組み入れる。
【0038】
あるいは、リン酸カルシウムの固体を機械的に溶融し、リン酸カルシウムの固体の結晶ドメインを約100 nm未満に減少させるのに十分な力を加えてリン酸カルシウムを高エネルギー粉砕することにより得られるアモルファスまたはナノ結晶リン酸カルシウム粉末を、多孔性リン酸カルシウム組成物を調製するために使用することができる。高エネルギー粉砕は、減少した結晶化度、減少した粒径および変更された固体構造を有する単一および多成分リン酸カルシウム粉末を調製するために使用することができる。得られる粉末がかなり減少した結晶化度を有するので、この方法を「アモルファス化」と称し、粉末は「アモルファス化粉末」と称する。これらの変化は硬化の速度、凝固、反応の程度および/または最終製品の硬度を制御するために用いられる。
【0039】
本発明のこの態様の一つ以上の実施形態において、単一のリン酸カルシウム源をアモルファス化して、発泡剤、および生体適合性凝集剤と混合する。その反応性を増すため、または他のリン酸カルシウム化合物もしくは他の物質との反応におけるその特性を変えるために、単一のリン酸カルシウム源をアモルファス化(例えば、高エネルギー粉砕)することが望ましい。粉末の相互作用および反応も起こり得る。組成物のリン酸カルシウム成分はアモルファス化されたリン酸カルシウム粉末を単独で含んでもよく、またはアモルファス化されたリン酸カルシウム粉末と、通常のリン酸カルシウム、リン酸カルシウム成分を供給するためのカルシウム源および/またはリン酸源とを組み合わせて含んでもよい。次に、リン酸カルシウム組成物(リン酸カルシウム粉末、発泡剤、および生体適合性凝集剤を含む)を、水、水溶液、例えば生理食塩水もしくはリン酸緩衝液、または血清などの水和媒体と混合して、硬化した、多孔性のリン酸カルシウム製品を形成する。
【0040】
本発明のこの態様の別の実施形態において、2種以上の粉末であって、そのうちの少なくとも1種はリン酸カルシウム源であるものに、本発明の高エネルギー粉砕過程をおこなう。そこで、一つ以上の実施形態において、粉末は2種以上のリン酸カルシウムを含み得る。一つ以上の実施形態において、リン酸カルシウム源を、リン酸またはカルシウム源(または所望により他の物質)などの第2の粉末と混合して、高エネルギー粉砕をおこなって、アモルファス化した粉末を得る。多成分粉末の高エネルギー粉砕は、一成分粉末について上に記載した効果、例えば反応性の増大および結晶性の減少に加えて、粉末間の相互作用および反応を促進することもできる。
【0041】
アモルファス化の程度は、フーリエ変換赤外分光法および/またはX線回折によりモニターすることができる。下に詳細に記載する通り、結晶性が減少すると、両方のスペクトルの形状のはっきりしたピークが幅広く不明瞭になる。本発明の一つ以上の実施形態によるアモルファス化された粉末は、0.7 g/cm3よりも大きいタップ密度を有する(それに対して、従来の粉末は0.6 g/cm3未満のタップ密度を有する)。粉砕の有効性は、アモルファス化されたリン酸カルシウム粉末を含有する水和された粉末(ペースト)から調製される最終的な硬化したリン酸カルシウムセメントの多孔度にも影響を与える。本発明のアモルファス化された粉末は、それらと同じ従来の粉末よりも効率的に充填され、それにより密に充填されているにも関わらず多孔性のリン酸カルシウム製品を与える。
【0042】
高エネルギーボールミル粉砕では、1種以上のリン酸カルシウムを容器に入れ、回転軸または回転アームにより撹拌されてランダムに動くボールにより粉砕する。Attritor Model 01HD、Fritch Pulverisette 4、ASI Uni-Ball Mill II、およびZoz Simoloyer(登録商標)の商標で販売されているものなどの粉砕機械を使用することができる。高エネルギー粉砕は、リン酸カルシウムを、約50 m2/g〜約150 m2/gの間の比表面積を有する約100ナノメーター(nm)未満のナノ構造粒子に粉砕する。ナノ構造粒子は均一に混合されて、長距離結晶秩序を持たない高密度の均一な粉末製品を形成する。高エネルギーボールミルを含む高エネルギー粉砕過程、およびそれらのリン酸カルシウム源に対する効果は、「機械-化学的方法によるリン酸カルシウムの合成」(Synthesis of Calcium Phosphates by Mechano-Chemical Process)という名称で2002年8月16日に出願された同時係属米国特許出願第10/222,670号にさらに記載されており、この出願を全体として参照により本明細書に組み入れる。
【0043】
少なくともある実施形態において、リン酸カルシウムを約24時間以下の時間にわたって粉砕する。ある実施形態において、リン酸カルシウムを約15時間粉砕する。別の実施形態において、リン酸カルシウムを約3時間粉砕する。高エネルギー粉砕の時間が増すとリン酸カルシウムのアモルファス化が増加し、そのX線回折パターンがより幅広く拡散したものになる(たとえば、図1を参照されたい)。
【0044】
リン酸カルシウム粉末は、目的とする使用法および望まれるインプラント材料の性質に応じてさまざまな量で存在する。ある実施形態において、リン酸カルシウム粉末は粉末成分の約20〜約99重量パーセントの量で存在する(例えば、少なくとも約30重量パーセント)。別の実施形態において、リン酸カルシウム粉末は粉末成分の約50〜約99重量パーセントの量で存在する(例えば、少なくとも約85重量パーセント)。
【0045】
発泡剤
本発明の多孔性リン酸カルシウム組成物は発泡剤をも含む。発泡剤は、移植の前にリン酸カルシウム組成物に溶解している気体であってよい。気体は、加圧下で、すなわち、複合材料を加圧した、固化反応に対して不活性な気体に曝すことにより、リン酸カルシウム組成物に溶解させることができる。次に、生理的な温度に曝すことにより(すなわち注入または移植により)、温度の上昇のため気体の溶解度が減少するので、気体が放出される。これらの環境下で、気体の溶解およびそれに続く孔の形成は、生体内における硬化の間のみに起こり、投与の前には起こらない。孔の形成が室温でシリンジの中で起こることは望ましくないので、これは特に魅力的である。好適な気体には、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
あるいは、発泡剤は溶解すると気体を遊離する固体材料であってもよい。例えば、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩は、不安定な炭酸中間物質に変換した後に二酸化炭素および水を生成することにより、二酸化炭素ガスを生成する。一つの実施形態において、発泡剤は炭酸水素ナトリウムであって、リン酸カルシウム組成物中に0.5〜40重量%の量で存在する。発泡剤およびその使用に関するより詳細な説明は、例えば、「骨誘導タンパク質のためのリン酸カルシウム送達媒体」(Calcium Phosphate Delivery Vehicles for Osteoinductive Proteins)という名称で2002年5月31日に出願され、2002年12月12日に米国特許出願公報第20020187104号として公開されたU.S.S.N. 10/160,607に記載されている。発泡剤は、水、pH緩衝生理食塩水、および血清などの水和媒体の存在下で混合されると2種以上の成分の間の化学反応の結果として気体を放出するような、2種以上の成分の組合せであってもよい。 好ましくは2種以上の成分は、一定時間内にある量の気体を生成するように選択され、予め決められたモル比で混合される。発泡剤の2種以上の成分により制御された速度で生成された気体の放出は、硬化過程の間にリン酸カルシウム組成物における相互連絡した孔の形成を促進する。
【0047】
好ましくは、本発明のリン酸カルシウム組成物における孔の形成は発泡剤および粘性調整剤(例えば、生体適合性凝集剤)を加えることにより達成される。発泡剤は、生物学的温度、例えば約37℃、または例えば約30℃〜約43℃の範囲でゆっくりと発泡するように選択され、粘性調整剤はセメントの凝集力を改善する。得られたセメントは成型可能で、自己硬化性である。硬化したセメントは相互連絡した多孔性を有する連続的な基質を示す。
【0048】
別の実施形態において、硬化したリン酸カルシウム組成物は少なくとも約5%〜60%の多孔度を示す。好ましくは、リン酸カルシウム組成物は約5%、より好ましくは約10、20、または30%の多孔度を有し、最も好ましくは約40、50、または60%の多孔度を有する。好ましい実施形態において、リン酸カルシウムは少なくとも約50%の多孔度を示す。多孔度は、気体成分の制御された放出をおこなう発泡剤の作用の結果として形成される。
【0049】
別の実施形態において、リン酸カルシウムは、水和されると反応して気体の副生成物を生成し、その放出がリン酸カルシウム組成物における相互連絡した孔の形成を促進するような、予め決められた2種以上の成分の混合物を発泡剤として用いて調製される。例えば、発泡剤は予め決められた比で2成分を含み、第1の成分は式MxCO3を有し、第2の成分は式M'yHCO3を有する。前記の式中、MおよびM'は1価のカチオンであり、x = 2であり、y = 1である。好ましい1価のカチオンには、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、銀(Ag)、タリウム(Tl)、およびアンモニウム(NH4+)が含まれる。あるいは、MおよびM'はそれぞれ2価および1価のカチオンであり、x = 1であり、y = 1である。好ましい2価のカチオンには、バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ストロンチウム(Sr)および亜鉛(Zn)が含まれ、好ましい1価のカチオンには、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、銀(Ag)、タリウム(Tl)、およびアンモニウム(NH4+)が含まれる。リン酸カルシウム組成物の多孔度は、この発泡剤混合物からのCO2の放出速度により制御される。溶媒和の前に、発泡剤は固体の形で安定である。溶媒和すると、これらの混合物からのCO2の放出速度は、合成混合物の総溶解度積(Ksp)、およびMxCO3のM'yHCO3に対するモル比に依存する。炭酸塩の炭酸水素塩に対する好ましいモル比は約1:1〜約1:9の範囲である。より好ましくは、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、および1:8である。
【0050】
一つの形態において、Na2CO3とNaHCO3との混合物(モル比1:9)をリン酸カルシウム粉末および凝集剤に加える。混合物を非緩衝溶液により水和すると安定なペーストが形成され、それをその場(in situ)で形成して、幅広い臨床的な欠損を充填することができる。ペースト材料を欠損部位に入れると、体温で、制御された孔の形成が起こる。孔の形成はCO2(g)の放出により名目上4〜5分間続き、名目上10〜100μmの平均孔径を示す相互連絡した孔を有し、少なくとも約1 MPa、より好ましくは少なくとも約10 MPa以上の圧縮強度を有する硬化して形が適合した固体を形成する。
【0051】
第二の形態において、Na2CO3とNaHCO3との混合物(モル比1:1)をリン酸カルシウム粉末および凝集剤に加える。混合物を非緩衝溶液により水和すると安定なペーストが形成され、それをその場で形成して、幅広い臨床的な欠損を充填することができる。ペースト材料を欠損部位に入れると、体温で、制御された孔の形成が起こる。孔の形成はCO2(g)の放出により名目上0〜1分間続き、名目上1〜10μmの平均孔径を示す相互連絡した孔を有し、少なくとも約1 MPa、より好ましくは少なくとも約10 MPa以上の圧縮強度を有する硬化して形が適合した固体を形成する。
【0052】
生体適合性凝集剤
本発明のリン酸カルシウム組成物は生体適合性凝集剤を含む。好適な生体適合性凝集剤の非限定的な例には、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド) (PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド) (PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーより選択されるポリマーが含まれる。また、好ましい凝集剤には、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、キチン、キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、硫酸コンドロイチン、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、または硫酸デキストランナトリウム)、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物が含まれる。ある実施例において、生体適合性凝集剤は水溶性である。水溶性凝集剤は、生体内に移植した少し後にインプラント材料から溶解し、それにより骨インプラント材料の中にマクロ孔を導入する。このマクロ孔は、移植部位において破骨細胞および骨芽細胞のアクセスを増大し、その結果として前記の細胞の再形成活性を増大することにより、骨インプラント材料の骨誘導性を増加させる。
【0053】
生体適合性凝集剤は、さまざまな量で、また粉末成分の製造のさまざまな段階で、多孔性リン酸カルシウム組成物に加えることができる。生体適合性凝集剤は約1〜50重量パーセントの範囲で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、生体適合性凝集剤は粉末成分の40重量パーセント以下、好ましくは30重量パーセント以下、より好ましくは20重量パーセント以下、最も好ましくは10重量パーセント以下の量で存在する。好ましい実施形態において、生体適合性凝集剤は約5重量パーセントの量で存在する。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、リン酸カルシウム組成物はDBMを含む。ある例において、骨インプラント材料のDBM含有量が非常に高いために、組成物のリン酸カルシウム成分により提供される成形性および凝集性によらず、凝集剤が移植の間の骨インプラント材料の機械的強度をさらに増大することが望ましい。特定の実施形態において、生体適合性凝集剤は粉末成分の約10重量パーセントの量で存在する。好ましい実施形態において、リン酸カルシウム組成物は、約40〜50重量パーセントの量のDBM、約35〜45重量パーセントの量のリン酸カルシウム成分、約5〜10重量パーセントの量の凝集剤、および約5〜10重量パーセントの量の発泡剤を、すべての成分の合計が100重量パーセントとなるように含む。生体適合性凝集剤は溶液としてDBM粒子に加えることができる。例えば、凝集剤によりDBM粒子を被覆してもよい。生体適合性凝集剤は、DBM粒子およびリン酸カルシウム粉末を含む組成物の粉末成分に加えてもよい。当業者は、所与の用途に必要な凝集剤の量および添加の方法を決定することができるであろう。
【0055】
生物活性物質
本発明のリン酸カルシウム組成物には生物活性物質を加えることも可能である。一般的に、生物活性物質は多孔性リン酸カルシウムの製造の間にペースト内で活性を保持しなければならず、または多孔性リン酸カルシウムの製造の後に活性化されるか再活性化されることが可能でなければならない。あるいは、生物活性物質は、被移植体への多孔性リン酸カルシウム組成物の移植(成型可能なペーストまたは硬化したセメントとして)の時点で、または37℃、水性の環境での媒体の硬化の後に加えることができる。
【0056】
本発明の組成物に組み入れることができる生物活性物質には、有機分子、無機材料、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子断片、遺伝子調節配列、およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、およびリポタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物に組み入れることができる生物活性物質のクラスには、抗癌剤、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、酵素阻害剤、抗ヒスタミン薬、抗痙攣薬(anti-convulsant)、ホルモン、筋弛緩剤、鎮痙薬(anti-spasmodic)、眼科薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、抗精神病物質、栄養因子、骨誘導タンパク質、成長因子、およびワクチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
抗癌剤には、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節物質、ホルモン剤および抗ホルモン剤、光線力学治療薬、ならびにチロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。
【0058】
表1に記載されるすべての生体活性物質を使用することができる。
【表1】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】
抗生物質には、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン(gentamicin)、トブラマイシン(tobramycin)、ネチルマイシン(netilmicin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、アミカシン(amikacin)、ネオマイシン(neomycin))、バシトラシン(bacitracin)、カルバペネム(corbapenems)(例えば、イミペネム(imipenem)/シスプラチン(cislastatin))、セファロスポリン、コリスチン(colistin)、メテナミン(methenamine)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム(aztreonam))、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン(methicillin)、ナトシリン(natcillin)、オキサシリン(oxacillin)、クロキサシリン(cloxacillin)、ジクロキサシリン(dicloxacillin)、アンピシリン(ampicillin)、アモキシシリン(amoxicillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、チカルシリン(ticarcillin)、ピペラシリン(piperacillin)、メズロシリン(mezlocillin)、アズロシリン(azlocillin))、ポリミキシンB(polymyxin B)、キノロン、およびバンコマイシン(vancomycin);およびクロラムフェニコール(chloramphenicol)、クリンダニアン(clindanyan)、マクロライド(例えば、エリスロマイシン(erythromycin)、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin))、リンコミアン(lincomyan)、ニトロフラントイン(nitrofurantoin)、スルホンアミド、テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン(tetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、ミノサイクリン(minocycline)、デメクロサイクリン(demeclocyline))、およびトリメトプリム(trimethoprim)などの静菌剤が含まれる。また、メトロニダゾール(metronidazole)、フルオロキノロン、およびリタンピン(ritampin)も含まれる。
【0065】
酵素阻害剤は酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例には、塩化エドロホニウム(edrophonium)、N-メチルフィソスチグミン(N-methylphysostigmine)、臭化ネオスチグミン(neostigmine)、硫酸フィソスチグミン(physostigmine)、タクリン(tacrine)、タクリン、1-ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン(iodotubercidin)、p-ブロモテトラミゾール(p-bromotetramisole)、10-(α-ジエチルアミノプロピオニル)-フェノチアジン塩酸塩、塩化カルミダゾリウム(calmidazolium)、ヘミコリニウム-3,3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロパルギルアミン、N6-モノメチル-L-アルギニン酢酸塩、カルビドーパ(carbidopa)、3-ヒドロキシベンジルヒドラジン、ヒドララジン(hydralazine)、クロルギリン(clorgyline)、デプレニル(deprenyl)、ヒドロキシルアミン、リン酸イプロニアジド、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリドインドール、ニアラミド(nialamide)、パルギリン(pargyline)、キナクリン(quinacrine)、セミカルバジド、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、塩酸N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジフェニル吉草酸、3-イソブチル-1-メチルキサントン、パパベリン(papaverine)、インドメタシンド(indomethacind)、2-シクロオクチル-2-ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3-ジクロロ-a-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-ベンズアゼピン塩酸塩、p-アミノグルテチミド(p-aminoglutethimide)、酒石酸p-アミノグルテチミド、3-ヨードチロシン、α-メチルチロシン、アセタゾラミド(acetazolamide)、ジクロルフェナミド(dichlorphenamide)、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、およびアロプリノール(allopurinol)が含まれる。
【0066】
抗ヒスタミン剤には、とりわけ、ピリラミン(pyrilamine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)、およびテトラヒドラゾリン(tetrahydrazoline)が含まれる。
【0067】
抗炎症薬には、コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症薬(例えば、アスピリン、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)、トルメチン(tolmetin)、イブプロフェン(ibuprofen)、ピロキシカム(piroxicam)、およびフェナム酸)、アセトアミノフェン(acetaminophen)、フェナセチン(phenacetin)、金塩、クロロキン(chloroquine)、D-ペニシラミン(D-Penicillamine)、メトトレキサート(methotrexate)コルヒチン(colchicine)、アロプリノール(allopurinol)、プロベネシド(probenecid)およびスルフィンピラゾン(sulfinpyrazone)が含まれる。
【0068】
筋弛緩剤には、メフェネシン(mephenesin)、メトカルバモール(methocarbomal)、塩酸シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、塩酸トリヘキシフェニジル(trihexylphenidyl)、レボドーパ(levodopa)/カルビドーパ(carbidopa)、およびビペリデン(biperiden)が含まれる。
【0069】
鎮痙剤(anti-spasmodic)には、アトロピン、スコポラミン、オキシフェノニウム(oxyphenonium)、およびパラベリン(papaverine)が含まれる。
【0070】
鎮痛剤には、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチック(tolmetic)、イブプロフェン、ピロキシカム、フェナム酸、アセトアミノフェン、フェナセチン、硫酸モルヒネ、硫酸コデイン、メペリジン(meperidine)、ナロルフィン(nalorphine)、オピオイド(例えば、硫酸コデイン、クエン酸フェンタニル(fentanyl)、ヒドロコドン(hydrocodone)二酒石酸塩、ロペラミド(loperamide)、硫酸モルヒネ、ノスカピン(noscapine)、ノルコデイン、ノルモルヒネ、テバイン(thebaine)、ノル-ビナルトルフィミン(nor-binaltorphimine)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、クロルナルトレキサミン(chlornaltrexamine)、フナルトレキサミオン(funaltrexamione)、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン、ナロキソン(naloxone)、ナロキソナジン(naloxonazine)、ナルトレキソン(naltrexone)、およびナルトリンドール(naltrindole))、プロカイン、リドカイン、テトラカイン(tetracaine)およびジブカイン(dibucaine)が含まれる。
【0071】
眼科薬には、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、メタコリン、アドレナリン、コカイン、アトロピン、アルファキモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、ベタキサロール(betaxalol)、ピロカルピン(pilocarpine)、チモロール(timolol)、チモロール塩、およびそれらの組合せが含まれる。
【0072】
プロスタグランジンは公知であり、天然に存在し、化学的に関連した種々の生物学的効果を有する長鎖ヒドロキシ脂肪酸の類である。
【0073】
抗うつ薬はうつ病を予防または軽減することができる物質である。抗うつ薬の例には、イミプラミン(imipramine)、アミトリプチリン(amitriptyline)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、プロトリプチリン(protriptyline)、デシプラミン(desipramine)、アモキサピン(amoxapine)、ドキセピン(doxepin)、マプロチリン(maprotiline)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、フェネルジン(phenelzine)、およびイソカルボキサジド(isocarboxazide)が含まれる。
【0074】
栄養因子は、その持続的な存在が細胞の生存能力または寿命を改善する因子である。栄養因子には、血小板由来成長因子(PDGP)、好中球活性化タンパク質、単球遊走因子、マクロファージ炎症性タンパク質、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、および黒色腫成長刺激活性;表皮成長因子、形質転換成長因子(アルファ)、線維芽細胞成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子、インスリン様成長因子、グリア由来成長神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、神経成長因子、骨成長/軟骨誘導因子(アルファおよびベータ)、骨形成タンパク質、インターロイキン(例えば、インターロイキン阻害剤またはインターロイキン受容体、インターロイキン1からインターロイキン10を含む)、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ、ベータおよびガンマ)、造血因子(エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子および顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子を含む);腫瘍壊死因子、形質転換成長因子(ベータ)(ベータ1、ベータ2、ベータ3、インヒビン、およびアクチビンを含む);およびOP-1、BMP-2およびBMP-7などの骨形成タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
ホルモンには、エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、ジエチルスチベストロール(diethylstibestrol)、キネストロール(quinestrol)、クロロトリアニセン(chlorotrianisene)、エチニルエストラジオール、メストラノール(mestranol))、抗エストロゲン(例えば、クロミフェン(clomiphene)、タモキシフェン(tamoxifen))、プロゲスチン(例えば、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ヒドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル(norgestrel))、抗プロゲスチン(ミフェプリストン(mifepristone))、アンドロゲン(例えば、シピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、ダナゾール(danazol)、テストラクトン(testolactone))、抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン(cyproterone)、フルタミド(flutamide))、甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードサイロニン(triiodothyronne)、サイロキシン、プロピルチオウラシル、メチマゾール(methimazole)、およびヨージキソド(iodixode))、および下垂体ホルモン(例えば、コルチコトロピン、スムトトロピン(sumutotropin)、オキシトシン、およびバソプレシン)が含まれる。ホルモンは、一般にホルモン置換療法において、および/または受胎調節の目的で用いられる。プレドニゾンなどのステロイドホルモンは免疫抑制剤および抗炎症剤としても用いられる。
【0076】
骨形成タンパク質
生物活性物質は、望ましくは、アクチビン、インヒビン、および骨形成タンパク質(BMP)を含むタンパク質の形質転換成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーとして知られるタンパク質のファミリーより選択される。最も好ましくは、活性物質は、一般にBMPとして知られるタンパク質のサブクラスより選択される少なくとも1種のタンパク質を含む。BMPは骨形成活性および他の成長および分化型の活性を有することが開示されている。これらのBMPには、BMPタンパク質、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6およびBMP-7(例えば、米国特許第5,108,922号;第5,013,649号;第5,116,738号;第5,106,748号;第5,187,076号;および第5,141,905号に開示されている);BMP-8(PCT公報WO 91/18098に開示されている);およびBMP-9(PCT公報WO 93/00432に開示されている)、BMP-10(PCT出願WO 94/26893に開示されている);BMP-11(PCT出願WO 94/26892に開示されている)、またはBMP-12もしくはBMP-13(PCT出願WO 95/16035に開示されている);BMP-14; BMP-15(米国特許第5,635,372号に開示されている);またはBMP-16(米国特許第5,965,403号に開示されている)が含まれる。他のBMPには、BMP-17およびBMP-18が含まれる。
【0077】
本発明のリン酸カルシウム組成物における活性物質として有用な他のTGF-βタンパク質には、Vgr-2(Jonesら、Mol. Endocrinol. 6:1961 (1992))、およびPCT出願WO 94/15965; WO 94/15949; WO 95/01801; WO 95/01802; WO 94/21681; WO 94/15966; WO 95/10539; WO 96/01845; WO 96/02559等に記載されるものを含む成長および分化因子(GDF)が含まれる。また、WO 94/01557に開示されるBIP;日本国特許公報7-250688号に開示されるHP00269;およびPCT出願WO 93/16099に開示されるMP52も本発明に有用である。上記のすべての出願の開示を参照により本明細書に組み入れる。本発明に使用するのに好ましいBMPの一群には、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-10、BMP-12、BMP-13、BMP-14、およびMP52が含まれる。最も好ましくは、活性物質はBMP-2であり、その配列は米国特許第5,013,649号に開示されている。この開示を参照により本明細書に組み入れる。とりわけ、テリパラチド(teriparatide) (ForteoTM)、Chrysalin(登録商標)、プロスタグランジンE2、またはLIMタンパク質などの当業者に公知の他の骨形成物質も使用することができる。
【0078】
生物活性物質は組み替えにより製造しても、タンパク質組成物から精製してもよい。活性物質は、BMPなどのTGF-βまたは他の二量体タンパク質である場合、ホモ二量体であってもよく、または他のBMPと共に(例えば、BMP-2およびBMP-6の1個ずつのモノマーからなるヘテロ二量体)、またはアクチビン、インヒビンおよびTGF-β1などのTGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと共に(例えば、BMPおよびTGF-βスーパーファミリーの関連するメンバーの1個ずつのモノマーからなるヘテロ二量体)ヘテロ二量体を形成してもよい。前記のヘテロ二量体タンパク質の例は、例えば、公開PCT特許出願 WO 93/09229に記載されており、その明細書を参照により本明細書に組み入れる。
【0079】
生物活性物質には、さらに、ヘッジホッグ(Hedgehog)、フラズルド(Frazzled)、コルジン(Chordin)、ノギン(Noggin)、サーベラス(Cerberus)およびフォリスタチン(Follistatin)タンパク質などの別の物質が含まれる。これらのファミリーのタンパク質については、Sasaiら、Cell 79:779-790 (1994) (コルジン);PCT特許公報WO 94/05800 (ノギン);およびFukuiら、Devel. Biol. 159:131 (1993) (フォリスタチン)に一般的に記載されている。ヘッジホッグタンパク質については、WO 96/16668;WO 96/17924;およびWO 95/18856に記載されている。タンパク質のフラズルドファミリーは、最近発見されたタンパク質のファミリーで、フラズルドとして知られる受容体タンパク質ファミリーの細胞外結合ドメインに高い相同性を有する。フラズルドファミリーの遺伝子およびタンパク質については、Wangら、J. Biol. Chem. 271:4468-4476 (1996)に記載されている。活性物質には、PCT特許公報WO 95/07982に開示されている切断された可溶性受容体などの他の可溶性受容体も含まれる。WO 95/07982の記載から、当業者は、切断された可溶性受容体は多くの他の受容体タンパク質においても調製することができることを理解するであろう。上記の公報を参照により本明細書に組み入れる。
【0080】
存在するまたは浸潤する前駆細胞または他の細胞の骨形成活性の増大を刺激するのに有効な骨形成タンパク質の量は、治療する欠損の大きさおよび性質、ならびに使用する担体に依存する。
【0081】
一般的に、生物活性物質は、リン酸カルシウム組成物を骨の再生に関して使用する場合には骨の欠損または損傷を治療もしくは緩和するのに十分な量で、またはリン酸カルシウム組成物を生物活性物質の送達のための貯蔵媒体として使用する場合には疾病または障害を治療もしくは予防するのに十分な量で、リン酸カルシウム組成物中に含まれる。「十分な量」とは、臨床的に意義のある効果を促進するのに必要なリン酸カルシウム組成物中の生物活性物質の量を意味する。本発明を治療の目的で実施するために使用される生物活性物質の十分な量は、投与の方式、患者の年齢、体重、および一般的な健康状態に依存して変化する。最終的には、処方者が適切な量および投与計画を決定する。本明細書に記載される単剤療法または併用療法における適切な量は、動物モデル、in vitroアッセイ、および/または臨床研究から決定することができる。
【0082】
例として、リン酸カルシウム組成物に含まれる生物活性物質の量は、約0.1 ng〜約1.0 g、好ましくは約1.0μg〜約100.0 mg、最も好ましくは約10.0μg〜約1.0 mgの範囲である。
【0083】
生物活性物質は、本発明のリン酸カルシウム組成物に、その形成の間または後に導入することができる。物質を都合よく硬化の前に組成物に混合してもよい。あるいは、媒体を成形し硬化した後に溶液中の治療薬に曝してもよい。この特定の方法はアパタイト系の材料に親和性を有することが知られているタンパク質に特に適している。生物活性物質を含有する緩衝溶液を、例えば移植の前に自己硬化性ペーストをその中で濡らすための水溶液として、水の代わりに使用することができる。緩衝液はいかなるpH領域で使用してもよいが、5.0〜8.0の範囲で最もよく使用される。好ましい実施形態において、pHは所望の治療薬の持続的な安定性および有効性に適合するものであり、最も好ましい実施形態においてpHは5.5〜7.4の範囲である。好適な緩衝液には、炭酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ならびにTris、HEPES、およびMOPSなどの有機緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。最も一般的には、緩衝液は被移植体の組織との生体適合性および治療薬との適合性により選択される。ほとんどの核酸、ペプチドまたは抗生物質の適用には、単純なリン酸緩衝生理食塩水で十分である。
【0084】
脱ミネラル骨基質
好ましい実施形態において、生物活性物質はDBMである。DBMは、酸処理により脱ミネラルした長骨砕片から最もよく得られる有機骨誘導物質である。酸処理により骨の中の無機鉱物成分および酸可溶性タンパク質が溶解し、後にコラーゲン基質ならびに酸不溶性タンパク質および成長因子が残る(例えば、Glowackiら、(1985) Clin. Plast. Surg. 12(2):233-241; Coveyら、(1989) Orthop. Rev. 17(8):857-863を参照されたい)。残った酸不溶性タンパク質および成長因子の中に、骨形成タンパク質(BMP)および形質転換成長因子(TGF)などの骨誘導因子がある。それゆえ、DBMは骨誘導性で、完全に再吸収可能であり、本明細書に記載されたリン酸カルシウム粉末と組み合わせて使用した場合、それらが天然の骨の化学組成にきわめて似ているので高度に生体適合性であるインプラント材料が得られる。有利なことに、DBMは、単離されたBMPなどの他の多くの利用可能な有機骨組成物添加物よりも安価である。
【0085】
本発明のリン酸カルシウム組成物に使用するDBMは、好ましくは自家または同種供給源に由来するものである。上で論じたように、DBMは当業者に公知の方法である、長骨砕片の酸処理により得られる。あるいは、市販のDBMを使用してもよい(例えば、Allosource、American Red Cross、Musculoskeletal Transplant Foundation、Regeneration Technologies, Inc.、およびOsteotech, Inc.から市販されているDBM)。
【0086】
少なくともある実施形態において、骨インプラント材料中のDBMは粉末成分の約10〜約70重量%の量で存在する。特定の実施形態において、DBMは粉末成分の約60重量%の量で存在する。別の実施形態において、DBMは粉末成分の約1〜約50重量%の量で存在する。さらに別の実施形態において、DBMは粉末成分の約20重量%以下の量で存在する。好ましくは、DBMは粉末成分の約15重量%以下の量で存在する。
【0087】
ある組成物中のDBMの量は、生体適合性凝集剤の量、ならびに目的とする使用法および望まれるリン酸カルシウム組成物の性質によって変化する。特定の実施形態において、凝集剤およびDBMはリン酸カルシウム組成物中に約1:1(例えば、粉末成分の約0.5〜約20重量%の範囲の量で)、好ましくは約1:5、より好ましくは約1:10、最も好ましくは約1:20の比で存在する。好ましい実施形態において、凝集剤は約5重量%以下の量で存在する。
【0088】
当業者は、特定の用途に必要なDBM、リン酸カルシウム、発泡剤、および凝集剤の量を決定することができるであろう。例えば、好ましいリン酸カルシウム粉末組成物は、約15重量%のDBMおよび約85重量%のリン酸カルシウム粉末(約1〜約10重量%の凝集剤および発泡剤を含む)を含む。別の好ましいリン酸カルシウム粉末組成物は、約45重量%のDBM、約45重量%のリン酸カルシウム粉末、および約10重量%の生体適合性凝集剤および発泡剤を含む。
【0089】
DBM粒子は種々の大きさおよび物理的形状であってよい。DBMの量と同様に、DBM粒子の大きさおよび形状は骨インプラント材料の目的とする使用法により変化する。ある実施形態において、DBM粒子は、約35μm〜約850μmの最長寸法を有し、さらに約5未満の縦横比を有する。別の実施形態において、これらのDBM粒子は繊維の性質を有する。ある実施形態において、DBM繊維は約50μm〜約3 mmの長さを有する。別の実施形態において、DBM繊維は約250μm〜約2 mmの長さを有する。ある実施形態において、これらのDBM繊維の縦横比は4よりも大きい。別の実施形態において、これらのDBM繊維の縦横比は10よりも大きい。DBM繊維は針状であり、平均幅対平均厚さの比は5未満である。様々な大きさのDBM粒子を製造する方法は当業者に公知であり、例えば、「凝集性脱ミネラル骨組成物」という名称で2002年11月15日に出願された同時係属米国特許出願番号10/298,112に開示されている。この出願を参照により本明細書に組み入れる。注目すべきは、長骨砕片または削り屑から得られた針状の繊維性DBMは、粉砕した骨から得られたDBMとは対照的に、本発明のリン酸カルシウム組成物に組み入れた場合により大きい凝集性を与える。
【0090】
リン酸カルシウムをベースとする骨インプラント材料へのDBMの混合は、DBMが混合されたインプラント材料の機械的強度を減少させる傾向を有するために、従来限定されていた。従って、その骨誘導能力を最大にするのに必要な量のDBMを含有するインプラント材料は、マニピュレーションが困難であり、成形性に欠け、生体内における移植の後にその凝集性および形状を失ってしまう。硬化したリン酸カルシウム製品もかなり弱くなる。さらに、無機成分がDBMの骨誘導性を阻害するので、リン酸カルシウムなどの無機骨誘導性成分を含有する骨インプラント材料中のDBMの有効な使用は従来成功していなかった。
【0091】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、DBMなどの生物活性物質の存在下でのリン酸カルシウム組成物に優れた成形性および凝集特性を与える生体適合性凝集剤を含むことにより、これらの公知の欠陥を克服している。本発明のリン酸カルシウム組成物には、硬化したリン酸カルシウム組成物の機械的強度を減少させることなく相互連絡した孔の形成を促進する発泡剤も含まれる。孔はリン酸カルシウム組成物中に細胞外骨基質を分泌する細胞の移動および浸潤を促進する。孔は、血管新生のためのアクセスを提供し、活性物質の再吸収および放出の増大および細胞-基質相互作用の増加のための大きい表面積を提供する。
【0092】
上に挙げた物質の送達のための標準的なプロトコールおよびレジメンは当業者に公知である。生物活性物質は、適切な投与量の物質の移植部位への送達を可能にする量でリン酸カルシウム媒体に導入する。ほとんどの場合に、投与量は、医師に公知であり、問題となる特定の薬物に適用できるガイドラインを用いて決定される。本発明のリン酸カルシウムペーストに含まれるまたは硬化した送達媒体に加えられる生物活性物質の典型的な量は、状態のタイプおよび程度、特定の患者の総合的な健康状態、活性物質の剤形、および使用する送達媒体の生物再吸収性などの可変要素に依存する。特定の生物活性物質について用量および投与頻度を最適化するために標準的な臨床試験を行うことができる。
【0093】
少なくともある実施例において、好適な量の生理的に許容される液体を粉末組成物に加えて自己硬化性ペーストまたはパテを製造する。好適な生理的に許容される液体の非限定的な例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、および生物学的液体が含まれる。生物学的液体には、処理されたまたは未処理の生体に関連する液体(懸濁液を含む)、特に、全血、暖かいまたは冷たい血液、および保存されたまたは新鮮な血液を含む血液;少なくとも1種の生理的溶液(生理食塩水、栄養物、および/または抗凝血溶液を含むがこれらに限定されない)により希釈した血液などの処理された血液;血小板濃縮物(PC)、アフェレーシス血小板、多血小板血漿(PRP)、貧血小板血漿(PPP)、無血小板血漿、血漿、血清、新鮮凍結血漿(FFP)、血漿から得られた成分、濃縮赤血球(PRC)、バフィーコート(buffy coat)(BC)などの血液成分;血液または血液成分に由来する、または骨髄に由来する血液製品;血漿から分離して生理的液体に再懸濁した赤血球;および血漿から分離して生理的液体に再懸濁した血小板が含まれる。また、生物学的液体には、例えば、乳汁、尿、唾液、精液または膣液、滑液、リンパ液、羊水、卵の卵黄嚢、絨毛膜、または尿嚢内の液体、汗、および涙も含まれる。
【0094】
これらのペースト組成物は、アモルファスリン酸カルシウムを含有することおよびリン酸カルシウム粉末の性質のために、ほとんどの公知の骨インプラント材料と比較して改善された流動特性を有する。粉末に加える液体の量を変えて所望の特性を有するペーストを製造することができる。例えば、少なくともある実施形態において、成形可能な、すなわち成型してその形を保持することができるペーストを調製するために、粉末1グラムあたり0.5〜2.0 ccの液体を使用する。少なくともある実施形態において、ペーストは注入可能、すなわち、16〜18ゲージのシリンジを通ることが可能である。
【0095】
生理的に許容される液体および適切な量の発泡剤を加えた後、ペーストを移植部位に送達する。ペーストは移植部位に注入してもよく、または所望の形に成形して移植部位に充填してもよい。ペーストは所望の形に成形し、硬化させた後に移植部位に入れてもよい。予め成形した部品は手で形作っても、型で作っても、機械により作ってもよい。当業者はある適用に適切な移植方法を認識するであろう。
【0096】
本発明のリン酸カルシウム組成物は天然の骨と類似したCa/Pモル比を示す。そのCa/Pモル比は約1.1〜約1.9の間である。ある実施形態において、Ca/Pモル比は1.2〜1.67の間である。好ましくは、Ca/Pモル比は1.67未満であり、さらに約1.5未満である。
【0097】
ペーストの硬化リン酸カルシウムへの変換は、室温または体温で起こる。硬化過程はDBMなどの生物活性物質、生体適合性凝集剤、または発泡剤の添加により悪影響を受けない。リン酸カルシウム組成物の「自己硬化」は室温、すなわち約20℃〜25℃の間でゆっくりと起こり、体温、すなわち約32℃〜約37℃の間で著しく加速される。そのため、例えば、ペーストは室温で約20分〜約60分間の時間の後に硬化するのに対して、体温では、ペーストは約3分〜約15分間の時間の後に硬化する。リン酸カルシウムの成形および硬化特性は、例えば米国特許第6,214,368号、第6,027,742号、および第5,650,176号にさらに記載されており、これらを参照により本明細書に組み入れる。
【0098】
硬化した本発明のリン酸カルシウム組成物は、発泡剤により作られた複数の孔を有するにも関わらず、顕著な圧縮強度を有する。圧縮強度は、脊髄インプラントなどのある種の骨インプラントに特に望まれる特性である。ある実施形態によれば、リン酸カルシウム骨インプラント材料は約1 MPaよりも大きい圧縮強度を有する。特定の実施形態において、圧縮強度は1 Mpa〜20 MPaの間であり、30、40、50、60、70、80、90、または100 MPaの大きさであり得る。100 MPaよりも大きい、例えば120〜150 MPaの圧縮強度も達成することができる。別の特定の実施形態において、圧縮強度は少なくとも2 MPa〜10 MPaの間である。発泡剤の作用の結果として約5%〜約60%の多孔度を有する組成物は、少なくとも約1 MPaの圧縮強度を保持し、100 MPaのように大きい圧縮強度さえも示すことが可能である。
【0099】
ペーストが硬化リン酸カルシウムに変換した後、リン酸カルシウムは生体内で骨に再形成される。上記のように、リン酸カルシウムは天然の骨と類似の化学組成および結晶構造を有し、生体系で再吸収可能である。再形成は、リン酸カルシウムがゆっくりと分解され、得られたカルシウムおよびリン酸材料が体により新しい骨を生成するために使用されることを伴う。本発明の一つ以上の実施形態により調製された骨インプラント材料の再形成は、通常数ヶ月から数年のタイムスケールで起こる長期の過程である。より高い密度の骨インプラント材料は、インプラントの高い密度と低い多孔度のために細胞および生体物質の浸透が遅くなり、再形成が長期の内部拡散過程として起こるので、より長い再形成期間を必要とする。本発明のリン酸カルシウムインプラントは、その多孔度の増加により再形成が促進されていることを特徴とする。
【0100】
本発明を、発明の限定を目的としない下記の実施例により説明する。
【実施例】
【0101】
実施例1:脱ミネラル骨基質繊維の調製
この実施例では、繊維の性質を有するDBM粒子の調製について説明する。
【0102】
長骨をきれいにして、すべての結合組織を取り除いた。終板を取り除き、長骨の皮質骨成分を分離し、骨髄を取り除いた。空洞の長骨をアルコール中で洗浄してさらにきれいにして、脂肪を取り除いた。次に、骨を旋盤上で回転させた。直線状の刃の付いたシリコンカートリッジ切断工具を骨の表面の中に押しつけることにより薄く削った。切断工具を骨の長さ方向に動かして、骨の削り屑に長さを与えた。この手法を熟知する者であれば、材料除去の速度を制御するために切断工具の動きの速度に合わせて骨の回転速度を制御することができる。この方法により、50μm〜250μmの間で変化する厚さ、2 mm〜10 mmの間の幅、および不揃いな長さの削り屑が得られた。次にこれらの削り屑をエーテル中で洗浄して、残った脂肪を除去した。脱ミネラルは削り屑を0.5モル塩酸(HCl)中で1時間攪拌することにより実施した。脱ミネラルの後、過剰な酸が除去されるまで繊維を脱イオン水ですすいだ。次に繊維をアルコール中およびエーテル中ですすぎ、エーテルを蒸発させることにより乾燥させた。平均繊維長さは約250μm〜2 mmの間に不規則に分布しており、平均繊維厚さは約50μm〜250μmの間であった。
【0103】
実施例2:アモルファスリン酸カルシウムの調製
この実施例では、アモルファスリン酸カルシウム粉末の調製について説明する。
【0104】
1000 gのリン酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HPO4・7H2O)の14.4 mLの蒸留水中の溶液を調製し、撹拌した。この溶液に、555 gの水酸化ナトリウム(NaOH)、333 gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、および2.2 gのピロリン酸ナトリウム十水和物(Na4P2O7・10H2O)を順に加えて溶液1を形成した。
【0105】
208 gの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)の5.6Lの蒸留水中の溶液を調製し、撹拌した。11 gの塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O)をこの溶液に加えて溶液2を形成した。
【0106】
溶液2を室温で素早く溶液1に注ぎ、1分間撹拌した。アモルファスリン酸カルシウムがすぐに完全に沈殿した。懸濁液のpHは13±0.5であったが、沈殿がアパタイトまたは他の結晶リン酸カルシウムに変換されることを防ぐためにこのpHを維持した。
【0107】
次にバスケット型遠心濾過法を用いて沈殿を直ちにその母液から分離し、約100 Lの蒸留水を用いて洗浄した。洗浄過程の完了は、最後の洗浄液のイオン伝導度が300μs未満になったことにより確認した。この方法により約500 gのアモルファスリン酸カルシウムのゲルケーキが得られた。
【0108】
湿ったアモルファスリン酸カルシウムのケーキを、乾燥の間にアモルファス構造が保存されるようにすぐに凍結乾燥した。水の約80%が除去された。約100 gの凍結乾燥した粉末を450℃で1時間か焼した。
【0109】
アモルファスリン酸カルシウム生成物は1.5未満、および典型的には1.35〜1.49の間のCa/P比を有した。
【0110】
実施例3:リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)の調製
この実施例では、リン酸二カルシウム二水和物粉末の調製について説明する。
【0111】
20 gのリン酸水素二アンモニウム((NH4)2・HPO4)を1 Lの蒸留水に溶解して、0.15 Mの利用可能なリン酸イオン(PO4-3)濃度を有する溶液3を調製した。溶液3のpHは7.0〜9.0の間であることが確認された。
【0112】
35.5 gの硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)を0.5 Lの蒸留水に溶解して、0.3Mの利用可能なカルシウムイオン(Ca+2)濃度を有する溶液4を調製した。溶液4のpHは5.0〜8.0の間であることが確認された。
【0113】
溶液4を溶液3に注いだ後、約2分間撹拌した。得られた懸濁液のpHは5.2〜6.2の間であることが確認された。懸濁液を真空濾過により濾過して均一なケーキを形成した。ケーキを750 mLの蒸留水で3回洗浄した(合計2.25 L)。洗浄が完了した時に、ケーキを濾紙から分離して層流フード中で24時間乾燥した。乾燥した粉末を120μmの公称孔径のふるいを通して製粉した。
【0114】
実施例4:リン酸カルシウム粉末の調製
この実施例では、アモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を含むリン酸カルシウム粉末の調製について説明する。
【0115】
実施例2に記載した通りに調製したアモルファスリン酸カルシウム、および実施例3に記載した通りに調製した結晶DCPDを、1:1の重量比(例えば、それぞれ25 g)で混合した。混合した粉末をボールミル中で100 RPMで約3分間高エネルギー粉砕した。得られた粉末の平均結晶ドメインサイズは約100 nm未満であった。
【0116】
実施例5:DBM/リン酸カルシウム粉末の調製
この実施例では、DBM粒子およびリン酸カルシウム粉末を含む粉末の調製について説明する。
【0117】
実施例1に記載した通りに調製した0.4 gの繊維性DBM粒子、および実施例4に記載した通りに調製した0.6 gのリン酸カルシウム粉末をターブラー(Turbula)ミキサーを用いて混合した。
【0118】
実施例6:DBM/リン酸カルシウム/凝集剤粉末の調製
この実施例では、DBM粒子、リン酸カルシウム粉末、および生体適合性凝集剤を含む粉末の調製について説明する。
【0119】
実施例1に記載した通りに調製した0.5 gのDBM粒子、および実施例4に記載した通りに調製した0.45 gのリン酸カルシウム粉末、および0.05 gのカルボキシメチルセルロースを混合瓶(mixing jar)中で混合した。得られた粉末は約50重量%のDBM粒子、約45重量%のリン酸カルシウム粉末、および約5重量%のカルボキシメチルセルロースを含有していた。
【0120】
実施例7:DBM/リン酸カルシウム/発泡剤/凝集剤粉末の調製
この実施例では、脱ミネラル骨粒子、リン酸カルシウム粉末、発泡剤および生体適合性凝集剤を含む粉末の調製について説明する。
【0121】
組織バンクから入手した0.50 gのヒト脱ミネラル骨粉末、実施例4に記載した通りに調製した0.40 gのリン酸カルシウム粉末、0.05 gの炭酸水素ナトリウム、および0.05 gのカルボキシメチルセルロースをシリコンミキシングバルブ中で混合した。
【0122】
実施例8:リン酸カルシウム/発泡剤/凝集剤粉末の調製
この実施例では、リン酸カルシウム粉末、発泡剤および生体適合性凝集剤を含む粉末の調製について説明する。
【0123】
実施例4に記載した通りに調製した0.85 gのリン酸カルシウム粉末、0.1 gのEffersoda (モル比1:9の炭酸塩/炭酸水素塩)、および0.05 gのカルボキシメチルセルロースをシリコンミキシングバルブ中で混合した。
【0124】
実施例9:成形可能な自己硬化性ペーストの調製
この実施例では、上記の粉末からの成形可能な自己硬化性ペーストの調製について説明する。
【0125】
実施例4〜8に記載したそれぞれの粉末の1.0 gのサンプルを、それぞれ0.2〜2.0 ccの、成型可能なペーストを形成するのに十分な量の生理食塩水(0.9% USP)と混合した。
【0126】
得られたペーストは、成形可能で、シリンジから押し出すことができ、湿った環境中で凝集性であり、37℃で20分未満で硬化した。
【0127】
0.10 ccのペーストを、カットオフチップを有する1 cc Becton Dickinsonスリップチップシリンジから押し出して、0.1 ccのペーストの円柱を形成した。
【0128】
実施例10:成形可能な自己硬化性ペーストの凝集性
この実施例では、本発明に従って調製した成形可能な自己硬化性ペーストの凝集性の評価について説明する。
【0129】
実施例9に記載した通りに調製したペーストの1.0 gのサンプルを直径約1.0 cmの球に成形し、球を水の入ったビーカーの中に落とした。ボールは、少なくとも10分間、観察できる有意の歪み、膨潤、または質量の減少がなく、最初の形を保った。サンプルを水から取り出し、水を濾過して、浸漬によりサンプルから失われた質量を測定した。測定可能な量の質量の減少は観察されなかった。
【0130】
実施例11:CaP/発泡剤/DBM組成物の圧縮強度
この実施例では、本発明に従って調製した成形可能な自己硬化性ペーストの湿った状態での圧縮強度の評価について説明する。
【0131】
5 gの実施例8に記載の粉末を、粉末1グラムあたり0.35 ccの生理食塩水により水和してペーストを形成した。
【0132】
ペーストを5個の直径6 mm、高さ12 mmの円筒状ステンレス鋼の型に均等に入れることができる。次に、型を37℃の生理食塩水浴に2時間浸漬する。
【0133】
5個の硬化したサンプルを型から取りだし、万能試験機(Instron, Canton, MA)を用いて、5 mm/分のクロスヘッド速度で圧縮強度を試験することができる。リン酸カルシウム組成物の評価により圧縮強度が少なくとも1 MPaであることが明らかになる。
【0134】
実施例12:骨インプラント材料の骨誘導能力の測定
無胸腺マウスの筋内または皮下ポケットへの移植の後の異所性骨形成の評価が、骨誘導性材料の解析のための現在の標準的方法である。この実施例では、本明細書に記載した通りに調製した骨インプラント材料を評価し、それらの組成物を他のDBM製剤と比較するための無胸筋ラットモデルの使用について説明する。
【0135】
6〜7週齢の雄の無胸腺ラット(Rattus norvegicus, Crl:NIH-rnu nudes, Charles River Laboratories)に4種の異なる試験物質を、2種は胸筋組織(大胸筋)に、2種は後肢(大腿四頭筋)に、ランダムに移植する。それぞれの動物にケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)を腹腔内(IP)注射により投与する。完全な麻酔をおこなって、第1の移植部位を外科用メスにより小さく切開し、皮膚、皮下組織、および筋膜をはさみで切断する。所望の筋肉に入れるために先の尖ったはさみを用いて筋肉内の袋を形成する。最初の切断は筋繊維と同じ方向におこない、はさみを広げて小さいポケットを作り、これを鉗子により0.1 mlの試験物質を投与する間開いておく。次に、残りの3箇所の移植部位において手術を繰り返す。必要に応じて、移植作業を完了するのに十分な麻酔を維持するためにさらに半分の用量のケタミン/キシラジンを投与する。
【0136】
移植後7日間、毎日それぞれの動物について臨床観察をおこなう。その後は週2回臨床観察をおこなう。
【0137】
試験物質を移植の6週間後に回収する。回収の直前に動物をCO2過量投与により安楽死させる。組織の収集はインプラント材料および周縁およそ0.5 cmの骨格筋および/または結合組織に限定する。組織の標本を10%中性緩衝ホルマリン中で最低12時間固定し、組織学等級のアルコール中に移す。組織標本をインプラントの中央部で横に二分し、通常の方法でパラフィン包理用に処理し、スライドグラス上に切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンにより染色し、カバースリップを載せる。必要ならば、組織学的分析の前に組織標本をさらに脱灰する。
【0138】
それぞれ異なる筋内インプラント切片から任意抽出した組織スライドを、投与したインプラントに関して盲検方式で病理学者に提出する。骨の形成の量を、0が骨の形成の痕跡がないことを示し、1、2、3、および4がそれぞれ<25%、26〜50%、51〜75%、および>75%のインプラント表面が新しい骨の形成に関与したことを示す0〜4のスケールを用いて数値化する。骨芽細胞に覆われた、および/または小腔内の骨細胞およびその基質を有する軟骨細胞を含む新しい骨、ならびに新しい骨の小柱に囲まれている骨髄はすべて骨の新形成過程の一部であると見なす。インプラントの形および大きさ(最初の5 mmの円柱と比較して)、インプラントにおける新しい骨の分布、インプラント基質の性質も記録する。スライドの評価が完了した後、結果をまとめるために群の割り当てを評価者に教える。
【0139】
実施例13:骨インプラント材料の再形成の評価
重篤な大きさの骨欠損への移植が骨移植材料の治癒能力を解析する標準的な方法である。この実施例では、ウサギモデルにおいて重篤な大きさの欠損に本発明のリン酸カルシウム組成物を骨移植材料として移植することについて説明する。
【0140】
下記の方法で、4〜5 KgのメスのNew Zealand Whiteウサギの末端大腿顆の両側に円筒状の欠損を作る。動物をケタミン30 mg/kg、キシラジン5 mg/kg、アトロピン1〜3 mg/kgの筋内投与により麻酔して、挿管後イソフルランで維持する。両方の膝およびその上の領域の皮膚の毛を剃り、7.5%ポビドンヨードおよび70%イソプロピルアルコールにより清浄化し、手術領域をドレープで適切に覆う。側面切開により、側面大腿顆が露出する。絶えず生理食塩水をかけながらドリルで穴を開けることにより、それぞれの側面大腿顆に直径5.0 mmおよび深さ10 mmの一つの骨の欠損を作る。次に、本発明のリン酸カルシウム組成物を骨移植材料として欠損の中に充填する。次いで、通常の方法により閉じて縫合する。典型的には、負の対照としていくつかの欠損を空のままにして、他のものを正の対照としてウサギの腸骨稜から取った小片化した自家骨移植片により充填する。
【0141】
手術後に動物を感染の徴候についてモニターするが、感染は稀である。痛みまたは不快を示すすべての動物にブプレノルフィン(0.02〜0.05 mg/体重kg)の皮下PRNを12時間ごとに与える。動物を回復期の間観察し、通常の方法により治療する。拘束は使用しない。動物が骨折を起こした場合には、そのウサギを直ちに安楽死させる。
【0142】
手術後の適切な時点に過量のペントバルビタール(濃度:390 mg/ml、1 ml/体重10ポンド)を静脈内投与することにより殺す。これは米国獣医師会による安楽死に関する審議会(Panel on Euthanasia by the American Veterinary Medical Association)の提言に従っている。すべての群の外科的移植片移植の結果を、X線写真、組織学および組織形態計測により評価する。
【0143】
手術後に標準的な間隔でAP像のX線写真を撮る。動物を麻酔して、伏臥位置に置き、一つの側面X線写真を撮る。欠損部位への負担を最小にするためにすべての処理過程の間注意を払う。
【0144】
組織学的評価には、組織を10%中性緩衝ホルマリン中で固定する。標本を通常の非脱灰切断用に処理する。組織を処理してメチルメタクリレート(MMA)中に埋め込み、矢状解剖面で切断する。組織学的分析のために切片をStevenelの青染色またはGoldnerのトリクロム染色のいずれかで染色する。組織学的切片を新しい骨の形成、治癒していない空洞または繊維組織、および残ったインプラント材料の面積について評価する。
【0145】
実施例14:成型可能な自己硬化性、多孔性リン酸カルシウムセメントの治癒能力の評価
実施例8に記載した粉末を実施例9に記載した通りに調製して、実施例13に記載した通りに移植して、腸骨稜から取った小片化した自家骨および空の未処理の欠損と比較して評価した。12週間後に動物を殺して組織を採取した。組織標本は試験サンプルおよび自家骨の両方で完全に近い治癒を示した。未処理の欠損では治癒は観察されなかった。
【0146】
他の実施形態
本明細書において記載したすべての刊行物、特許、および特許出願を、各刊行物または特許出願について具体的にかつ個々に参照により組み入れることを指示したと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れる。
【0147】
本発明をその特定の実施形態に関して説明したが、別の変更が可能であり、本出願が、一般的に発明の原理に従う本発明のすべての変更、使用、または改変を含み、また、本発明が属する分野において公知であるまたは通常実施される範囲内であり、上に記載した本質的な特徴に適合し、特許請求の範囲に従う本明細書の開示からの逸脱を含むことが理解されよう。
【0148】
他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
本発明を下記の図面を参照して説明する。この図面は説明の目的のみに提供され、発明を限定することを目的としない。
【図1】アモルファスリン酸カルシウムおよびリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)を含むリン酸カルシウム粉末の、高エネルギー粉砕の前、および高エネルギーボールミル中での3、10、15、および24時間高エネルギー粉砕した後のX線回折(XRD)パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム、発泡剤、および生体適合性凝集剤を含み、生理的に許容される液体と混合される自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物であって、前記発泡剤の気体成分の放出が前記組成物の水和により起こり、前記組成物に少なくとも5%の多孔度を与え、かつ、硬化した後、前記リン酸カルシウム組成物が1MPa以上の圧縮強度を有する、前記組成物。
【請求項2】
前記リン酸カルシウムが、アモルファスリン酸カルシウム、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸一カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸三カルシウム、またはそれらの混合物より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムをアモルファスリン酸カルシウムおよび第2のリン酸カルシウム源を用いて調製する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のリン酸カルシウム源が、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸一カルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸七カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム、およびリン酸三カルシウムより選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン酸カルシウムが100 nm未満の平均結晶ドメインサイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の孔が、直径1〜1000μmの間の孔径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記孔径が、直径10〜100μmの間である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記気体成分が二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、またはアルゴンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記気体成分の放出が少なくとも10%の多孔度を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記気体成分の放出が少なくとも20%の多孔度を与える、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記気体成分の放出が少なくとも40%の多孔度を与える、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記気体成分の放出が少なくとも50%の多孔度を与える、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記気体成分の放出が5%〜60%の範囲の多孔度を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記発泡剤が少なくとも2種の成分の組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記発泡剤が炭酸塩および炭酸水素塩を含み、炭酸塩および炭酸水素塩が前記組成物が水和すると反応して二酸化炭素を生成する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記炭酸塩および炭酸水素塩が前記組成物中に1:1〜1:9の間のモル比で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記炭酸塩および炭酸水素塩が前記組成物中に1:1のモル比で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記炭酸塩および炭酸水素塩が前記組成物中に1:9のモル比で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記発泡剤が、溶解すると気体を遊離する固体の物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記固体の物質が2種以上の成分の組合せである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記発泡剤が、前記組成物全体に相互連絡した孔を有する連続的な基質を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記発泡剤が、約1〜約40重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記生体適合性凝集剤が、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(L-ラクチド) (PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド) (PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、およびそれらのコポリマーより選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記生体適合性凝集剤が、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、キチン、キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、硫酸コンドロイチン、N,O-カルボキシメチルキトサン、デキストラン、フィブリン糊、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン、乳酸、プルロニック(pluronic)、グリセロリン酸ナトリウム、コラーゲン、グリコーゲン、ケラチン、絹、およびそれらの混合物より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記セルロースが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記デキストランが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、または硫酸デキストランナトリウムである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記デンプンが、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記生体適合性凝集剤が約1〜約20重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記生体適合性凝集剤が約20重量%未満の量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記生体適合性凝集剤が約10重量%未満の量で存在する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記生体適合性凝集剤が約5重量%未満の量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記生体適合性凝集剤が約1重量%未満の量で存在する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物がさらに生物活性物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記生物活性物質が、抗体、抗生物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗癌剤、成長因子、およびワクチンより選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記タンパク質が骨形成タンパク質である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記骨形成タンパク質が、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17、およびBMP-18より選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記抗癌剤が、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調節物質、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光線力学治療薬、およびチロシンキナーゼ阻害剤より選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記生物活性物質が、脱ミネラル骨基質(DBM)である、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
前記リン酸カルシウムが1〜1.67のカルシウム/リン酸(Ca/P)モル比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
前記リン酸カルシウムが1.3〜1.65の範囲のCa/Pモル比を有する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記リン酸カルシウムが1.4〜1.6の範囲のCa/Pモル比を有する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記リン酸カルシウムが1.5のCa/Pモル比を有する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記組成物が前記生理的に許容される液体と混合した時に自己硬化性リン酸カルシウムペーストを形成し、前記ペーストが硬化して1.67未満の全Ca/Pモル比を有する低結晶性アパタイト系(PCA)リン酸カルシウムを形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
前記生理的に許容される液体が、水、生理食塩水およびリン酸緩衝液より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項45】
硬化の後、前記組成物が少なくとも2 MPaの圧縮強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物が1 MPa〜150 MPaの間の圧縮強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物が10 MPaの圧縮強度を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物が37℃で30分未満で硬化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物が骨インプラント材料としての使用に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
骨修復を必要とする被験体に、請求項1の自己硬化性多孔性リン酸カルシウム組成物を投与することを含む、骨修復の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519052(P2009−519052A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544447(P2008−544447)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/046435
【国際公開番号】WO2007/067561
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504238046)エテックス コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】