説明

多孔質体及びその製造方法

【課題】優れた光触媒活性を有する多孔質体及びその製造方法を提供する。比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易な多孔質体及びその製造方法を提供する。多孔質体の気孔率制御が容易な多孔質体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質体は、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体、或いは二酸化チタンを主成分とし、二酸化チタンに3〜7重量%の炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体である。本発明の多孔質体の製造方法は、気孔率が50%〜98%の発泡金属体12の全面に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜する工程と、発泡金属体12を溶解する酸エッチング液中に成膜物を浸漬することにより成膜物より発泡金属体を消失させる工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境浄化、抗菌作用、防汚作用、超親水性作用、水素生成等の優れた特性を有する多孔質光触媒や、湿式太陽電池、二次電池等のエネルギー素子に用いられる多孔質材料として好適な多孔質体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンに対して光を照射すると、表面に接触する物質の分解が促進される。また、表面のエネルギー状態が変化し、超親水性を示す。水を分解して水素を生成する作用もある。また、多孔質の二酸化チタンは、湿式太陽電池や二次電池の電極材料等に適した特性を有している。このような性質を有する二酸化チタンは、有害化学物質の分解及び除去、超親水性、水素生成等の優れた機能を有するため、環境浄化、省エネルギーや新エネルギー等への用途が期待され、環境、エネルギー及び経済においてバランスの取れた持続可能な社会構築に貢献する素材であると目されている。
【0003】
基材表面に二酸化チタン膜を形成する方法としては、コーティング法、浸漬法、スパッタリング法や酸素ガス雰囲気内に加熱蒸発させた金属蒸気を導入して反応させる熱CVD法等が知られている。このうち、例えばコーティング法では、有機系バインダに二酸化チタン粉末を少量分散してスラリーとし、このスラリーを膜状に塗布している。
多孔質の二酸化チタンを作製する方法としては、規則正しく整列した三次元構造を有するメソポーラスTiO2薄膜及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に示される方法では、ブロックコポリマーを含むゾル溶液を基板上に滴下し、基板を高速回転させてゾル溶液中の溶剤を蒸発させ、ゲル化した有機無機複合TiO2膜を作製し、この膜を高温で焼結することによりブロックコポリマーを除去してメソポーラスTiO2膜を形成している。
また、溶媒やオリゴ糖類の添加方法を工夫した特定のセラミックスのゾル溶液を基板にコーティングした後、加熱焼成することによって、膜内部に多数の細孔を有し、かつ表面積の高いセラミックス多孔質膜を製造する方法及びその多孔質膜が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に示される方法では、ゾルゲル法により調整したディップコーティング溶液にあらかじめトレハロース等のオリゴ糖類を添加することにより、透明、かつ多孔質で気孔率が制御された酸化チタン膜等のセラミックス膜を作製している。
更に、発泡アルミニウムにTiO2を坦持させ、大気汚染物質や臭いの分解で高い性能を発揮する光触媒機能付発泡アルミニウムも商品化されている。この光触媒機能付発泡アルミニウムでは、基材となる発泡アルミニウムの表面積が大きいため、平板に比べて対策面積当たりのガス分解性能が高く、用途に応じて独立気泡型、連続気泡型を選択でき、光触媒反応によっても基材が分解されることがないため、耐久性、耐候性に優れる。
【特許文献1】特開2001−233615号公報(請求項1及び請求項3)
【特許文献2】特開2004−83376号公報(請求項1、段落[0021])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に示される方法では、セラミックスのゾル溶液中のトレハロース添加量を変化させることで、気孔率及び膜厚を制御することができるが、その制御範囲が50%程度までに限定されてしまう問題があった。また、上記特許文献1及び2に示される方法により作製された二酸化チタン多孔質体は、粒子状の二酸化チタンが積み重なったものであり、ガスや流体をその多孔質体中に導入しようとした場合、その流路断面積が小さく、圧損が大きい。更に発泡アルミニウムにTiO2を坦持させた光触媒機能付発泡アルミニウムは、金属が母材となっているため、光触媒として使用する際に、光が内部にまで到達することができず、内部表面での光触媒効果が十分に得られない。
【0005】
本発明の目的は、優れた光触媒活性を有する多孔質体及びその製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易な多孔質体及びその製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、多孔質体の気孔率制御が容易な多孔質体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体である。
請求項2に係る発明は、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンを主成分とし、前記二酸化チタンに3〜7重量%の炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体である。
請求項1又は2に係る発明では、二酸化チタンのみからなる多孔質体、炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体では、従来の基材上に形成された多孔質膜とは異なり、照射される光が内部にまで到達し、多孔質体表層だけでなく網目内部の二酸化チタンも光触媒として機能するため、優れた光触媒活性が得られる。また、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する多孔質体は、比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易となる。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、気孔率が57%〜99.95%である多孔質体である。
請求項3に係る発明では、気孔率が上記範囲内の多孔質体は、特に比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易であり、優れた諸特性を有する。
【0008】
請求項4に係る発明は、気孔率が50%〜98%の発泡金属体の全面に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜する工程と、発泡金属体を溶解する酸エッチング液中に成膜物を浸漬することにより、成膜物より発泡金属体を消失させる工程とを含むことを特徴とする多孔質体の製造方法である。
請求項4に係る発明では、上記工程を経ることにより、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体或いは炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体を容易に得ることができる。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、発泡金属体の材質がNi又はNi基合金である製造方法である。
請求項5に係る発明では、発泡金属体の材質をNi又はNi基合金とすることで、二酸化チタン成膜物からの発泡金属体の消失がより容易となる。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の多孔質体を用いた光触媒である。
請求項7に係る発明は、請求項4又は5記載の製造方法により得られた多孔質体を用いた光触媒である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二酸化チタンのみからなる多孔質体或いは炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体では、従来の基材上に形成された多孔質膜とは異なり、照射される光が内部にまで到達し、表層だけでなく内部の二酸化チタンも光触媒として機能するため、優れた光触媒活性が得られる。また、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する多孔質体は、比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易となる。また、本発明の多孔質体の製造方法では、発泡金属体の全面に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜して成膜物を形成し、この成膜物から発泡金属体を消失させることで、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体或いは炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の多孔質体は、図1に示すように、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体或いは二酸化チタンを主成分とし、二酸化チタンに3〜7重量%の炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体である。二酸化チタンのみからなる多孔質体或いは炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体では、従来の基材上に形成された多孔質膜とは異なり、照射される光が内部にまで到達し、多孔質体表層だけでなく網目内部の二酸化チタンも光触媒として機能するため、優れた光触媒活性が得られる。また、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する多孔質体は、比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易となる。二酸化チタンのみからなる多孔質体では、紫外光下における光触媒活性が得られる。また炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体では、紫外光下のみならず、可視光下における光触媒活性も十分に発揮される。従って、炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体は、内装建材等の室内用途に適応可能である。炭素ドープ二酸化チタンの炭素ドープ量を3〜7重量%に規定したのは、3重量%未満では炭素ドープ量不足で、二酸化チタンの紫外可視吸収スペクトルにおける可視光吸収帯の広がりが不十分となって、満足する可視光下での光触媒活性が得られないためであり、7重量%を越えると炭素ドープ量が過剰で、可視光下での光触媒活性は得られるものの、過剰な炭素ドープによる二酸化チタンの結晶性の低下が著しく、光触媒活性における全体の量子効率等が却って低減してしまう問題が生じるためである。
【0013】
本発明の多孔質体では、二酸化チタンの気孔率を57%〜99.95%の範囲内とすることが好ましい。上記範囲内であると、多孔質体表層に多くの連続気孔を有する構造をとり、表面に露出する光触媒活性点が多いため、十分な光触媒活性が得られるためであり、特に比表面積が大きく、ガスや流体の内部通過が容易であり、優れた諸特性を有する。このうち特に好ましい気孔率は70%〜99.9%である。更に、本発明の多孔質体を光触媒に用いる場合は、二酸化チタンにおけるアナターゼ型結晶構造の含有量を50〜100重量%の範囲とすることが好ましい。下限値未満であると十分な光触媒活性が得られ難いためである。上限値を越えると多孔質体を形成しても強度が低く、その構造を維持することが困難となる。このうち特に好ましいアナターゼ型二酸化チタンの含有量は90〜100重量%である。
【0014】
次に本発明の多孔質体の製造方法について説明する。
本発明の多孔質体は、発泡金属体に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜することにより成膜物を作製し、この成膜物から発泡金属体を消失させることにより得られる。その成膜方法は特に限定されず、例えば図4に示すような大気開放型CVD法による大気開放型CVD装置を用いることができる。大気開放型CVD法とは、大気開放下にて原料ガスを成膜対象基材表面に吹付けて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により対象基材表面上に金属酸化物等の薄膜を成膜する方法である。
【0015】
図4に示すように、大気開放型CVD装置10は、内部にチタン含有原料を載せる試料ボード11aが設置可能な原料気化器11と、原料気化ガスを発泡金属体12に向かって噴出する噴出ノズル13と、一方が気化器11の側部に接続され他方が噴出ノズル13頂部に接続された配管14と、気化器11で気化した原料気化ガスを配管14を介して噴出ノズル13へと運ぶキャリアガスの流量調節器16と、発泡金属体12を保持し、かつ水平方向に可動可能な加熱台17とをそれぞれ備える。加熱台17の内部にはヒータ17aが設けられ、加熱台17に保持した発泡金属体12を加熱する。また、発泡金属体12の内表面へ原料気化ガスを供給し易くするため、加熱台17と発泡金属体12との間にはスペーサ17b等を配置してもよい。
大気開放型CVD法で用いるチタン含有原料としては、原料を気化させ大気に放出した際に、大気中の酸素或いは水分等と反応して二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを形成するものであれば特に限定されない。具体的には、チタンテトライソプロポキシド(Ti(i-C37O)4;以下、TTIPという。)、チタンDPM錯体、チタンDMHD錯体等が挙げられる。このうちTTIPは炭素ドープ二酸化チタンの炭素ドープ量を制御し易い。炭素ドープ二酸化チタンの炭素ドープ量を制御するために、TTIPやチタンDPM錯体のチタン含有原料が70重量%以上の割合で含むように有機溶媒に溶解して溶液原料を調製し、この溶液原料を用いて成膜しても良い。溶液原料に使用する有機溶媒としてはイソプロピルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。全面に多孔質体を成膜する発泡金属体12としては、原料気化ガスを吹付ける際における加熱に耐えられる材料であり、酸エッチング液により消失可能な金属であり、更に二酸化チタンと反応を生じさせない金属であればどのような金属でも使用可能である。また発泡金属体12として使用される代表的な形状としては平板状が挙げられるが、凹凸を有する形状や波形状、円筒状などの複雑な形状についても使用することができる。また、円柱状なども使用することができる。特に好ましい材質はNi又はNi基合金である。キャリアガスとしては、加熱下で使用するチタン含有原料と反応しない媒体であれば特に限定されない。具体的には、N2ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス、乾燥空気等が挙げられる。なお、図4において符号18はキャリアガス供給源、符号19は原料気化器11、噴出ノズル13、加熱台17等を覆う防護チャンバ、符号21は開閉可能なチャンバ扉、符号22はチャンバ扉21の開閉を担うインターロックスイッチをそれぞれ示す。
【0016】
この装置では、先ず、チャンバ19内の加熱台17上にスペーサ17bを介して気孔率が50%〜98%の発泡金属体12を配置する。続いて所定量に量り取ったチタン含有原料を載せた試料ボード11aを原料気化器11内に設置する。次いで、原料気化器11内部、配管14、噴出ノズル13及び加熱台17をそれぞれ所望の温度に加熱し、原料気化器11内部のチタン含有原料を気化させる。次に、流量調節器16により流量を調節しながらキャリアガス供給源18からキャリアガスを原料気化器11に導入する。原料気化ガスは原料気化器11から配管14を介して噴出ノズル13に搬送される。原料気化ガスは、噴出ノズル13底部に設けられた開口部から発泡金属体12表面に向かって噴出され、発泡金属体12表面近傍の大気中に含まれる水分と反応して二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンが発泡金属体12の内表面も含めた全面に成膜される。原料気化ガスの濃度を2×10-6〜1.6×10-5mol/L、供給量を1〜8L/minとすることで炭素ドープ二酸化チタンの炭素ドープ量を所望のドープ量に制御することができる。また、加熱台17の温度を制御することで発泡金属体12の表面温度を350〜700℃とすることによっても炭素ドープ二酸化チタンの炭素ドープ量を所望のドープ量に制御することができる。発泡金属体12の表面温度が350℃未満では加熱が不十分となって7重量%を越える炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンが形成され、過剰な炭素ドープによって二酸化チタンの結晶性が著しく低下し、実用に耐えられる光触媒活性が得られなくなる。また発泡金属体12の表面温度が700℃を越えるとアナターゼ型二酸化チタンの含有量が低下する。加熱台17を所定の速度で水平方向に駆動させることにより、噴出ノズル13から噴出された原料気化ガスが発泡金属体12表面に均一に吹き付けられ、二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンが均一に成膜される。本実施の形態では、発泡金属体12の表面側に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜した後、発泡金属体12を裏返し、発泡金属体12の裏面側に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜することで、発泡金属体12の内表面も含めた全面に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜する。二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンの成膜時間等は発泡金属体12の形状によって異なるが、例えば、発泡金属体の形状が30mm×30mm×1.5mm程度であれば、3μm/hr程度の成膜速度で片面30分間ずつ成膜することにより、本発明の多孔質光触媒に好適な二酸化チタン成膜物或いは炭素ドープ二酸化チタン成膜物が得られる。このようにして大気開放型CVD装置により成膜される二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンの結晶構造はその大部分がアナターゼ型となる。
【0017】
次に、得られた成膜物を大気開放型CVD装置から取り出し、発泡金属体12を溶解する酸エッチング液中に成膜物を浸漬する。酸エッチング液へ成膜物を浸漬させることで、成膜物から発泡金属体を消失させる。酸エッチング液としては、発泡金属体の材質がNiである場合、成膜物からの発泡金属体の消失がより容易な所望の濃度に調整された硝酸水溶液等が好ましい。最後に、成膜物より発泡金属体を消失することにより得られる多孔質体に純水洗浄を施して酸エッチング液を洗い流すことで本発明の多孔質体が得られる。多孔質体の表面残留物を除去するため、更に一定温度で一定時間加熱処理してもよい。
【0018】
このようにして得られた本発明の多孔質体は、二酸化チタンのみからなるか、或いは二酸化チタンを主成分とし、二酸化チタンに3〜7重量%の炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンからなるため、従来の基材上に形成された多孔質膜とは異なり、照射される光が内部にまで到達し、多孔質体表層だけでなく網目内部の二酸化チタンも光触媒として機能するため、優れた光触媒活性が得られる。発泡金属体の気孔率を変動させることによって多孔質体の気孔率制御を容易に行うことができる。また、発泡金属体の有する気孔に入り込んで二酸化チタン成膜物或いは炭素ドープ二酸化チタン成膜物を形成するため、得られる多孔質体は三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造となるので、ガスや流体の内部通過が容易な構造をとる。
【実施例】
【0019】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
まず、形状が縦30mm×横30mm×高さ1.5mm、材質がNi、気孔率が96.7%の発泡金属体を用意した。次いで、図4に示す大気開放型CVD装置の加熱台上に厚さ0.5mmのスペーサを設置し、このスペーサ上に発泡金属体を配置した。次に、表1に示す成膜条件によって発泡金属体に二酸化チタンを成膜することにより、二酸化チタン成膜物を得た。得られた二酸化チタン成膜物の写真図を図3に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
次に、酸エッチング液として50重量%濃度硝酸水溶液を用意した。この硝酸水溶液を耐熱耐酸容器に入れて、ヒーターで約80℃に加熱し、二酸化チタン成膜物を溶液中に浸漬させた。溶液を攪拌しながら発泡金属体を溶液に溶解させて、二酸化チタン成膜物から発泡金属体を消失させた。酸エッチング処理後、多孔質体を耐熱耐酸容器より取出し、多孔質体を純水洗浄して付着している酸エッチング液を洗い流した。このようにして得られた多孔質体を実施例1の多孔質体とした。得られた多孔質体の全体写真図を図2に、この多孔質体の光学顕微鏡によって拡大した部分写真図を図1にそれぞれ示す。図1より明らかなように、得られた多孔質体の構造は、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有していた。また、得られた多孔質体をX線回折(X-ray Diffraction;XRD)により測定したところ、アナターゼ型二酸化チタンのみが同定された。この測定結果から発泡金属体であるNiは完全に消失していることを確認した。また得られた多孔質体の重量を電子天秤により測定したところ10mgであった。この重量と得られた多孔質体の体積及びアナターゼ型二酸化チタンの密度から多孔質体の気孔率を算出したところ、99.8%であった。得られた多孔質体表面における平均孔径は460μm、長さ1インチ中に含まれる細孔数(PPI)は66個/インチであった。
【0022】
<比較例1>
実施例1と同じ処理で得られた発泡金属体を消失させる前の二酸化チタン成膜物を比較例1の多孔質体とした。
【0023】
<実施例2>
チタン含有原料としてTTIPの代わりに、TTIPが85重量%、イソプロピルアルコールが15重量%の割合となるように、TTIPをイソプロピルアルコールに溶解した溶液原料を用いた以外は実施例1と同様にして多孔質体を得た。得られた多孔質体をXRDにより測定したところ、アナターゼ型二酸化チタンが主相として同定された。発泡金属体であるNiは完全に消失しており確認されなかった。また、X線光電子分光分析装置(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)により多孔質体を組成分析した結果、炭素含有率6.5重量%であることが判明した。更に、得られた多孔質体の重量を電子天秤により測定したところ、10.5mgであった。多孔質体の測定重量と、得られた多孔質体の体積及びアナターゼ型二酸化チタンの密度から、多孔質体の気孔率を算出した。気孔率は99.7%であった。得られた多孔質体表面における平均孔径は450μm、長さ1インチ中に含まれる細孔数(PPI)は65個/インチであった。
【0024】
<比較試験1>
濃度を17ppmに調整したアセトアルデヒドガス10L、一ツ口のミニコックが設けられたポリビニルフルオライド製10L用及び1L用テドラーバッグ、シリコンチューブ、チュービングポンプ、末端にそれぞれ開口部を備えた外形φ18mm、内径φ14mm及び長さ80mmのガラス管、ブラックライト蛍光ランプを2本平行に取り付けて構成した紫外線照射装置、フッ素樹脂製二方コック及びアセトアルデヒド検知管(ガステック社製、92L)をそれぞれ用意した。アセトアルデヒドガスをミニコックから10L用テドラーバッグ内に注入した。またガラス管内に実施例1の多孔質体をφ14mmに切出し、切出したものを10個重ねて挿入した。10L用テドラーバックのミニコックとガラス管の一方の開口部をシリコンチューブで接続し、シリコンチューブの途中にチュービングポンプを設置した。ガラス管の他方の開口部にシリコンチューブを介して二方コックを接続して閉栓した。ガラス管の上下には紫外線照射装置を2台設置した。このようにして構成した試験装置を用いて以下の通り光触媒試験を行った。
【0025】
先ず2台の紫外線照射装置によりガラス管に紫外線を照射した。次いで、10L用テドラーバックのミニコックを開き、0.2L/minの一定流量となるようにチュービングポンプにより制御しながらアセトアルデヒドガスをガラス管へと約2分間流し続け、ガラス管内部の雰囲気をアセトアルデヒドガスに置換した。次に、二方コックに1L用テドラーバックのミニコックを接続し、二方コックを開栓してガラス管内から排出される気体を1L用テドラーバックに採取した。続いてアセトアルデヒド検知管を用いて、1L用テドラーバックに採取した気体中に含まれるアセトアルデヒド残存濃度を測定した。実施例2,比較例1の多孔質体についても同様にして光触媒試験を行い、アセトアルデヒド残存濃度を測定した。図5にガラス管通過前後におけるアセトアルデヒド残存率及び残存濃度をそれぞれ示す。
【0026】
図5より明らかなように、比較例1の多孔質体に比べて実施例1の多孔質体では、アセトアルデヒド除去効果が約20%上昇した結果が得られた。これは、実施例1の多孔質体がベースとなる基材を有さないため、比較例1の多孔質体よりも多孔質体内部の二酸化チタンが光触媒機能をより多く発揮したことによると考えられる。また、実施例2の多孔質体では実施例1の多孔質体に比べてアセトアルデヒド除去効果が更に10%上昇した結果が得られた。これは、炭素ドープにより光触媒活性に寄与する光吸収帯が紫外領域から可視光領域へと拡がって、光触媒活性の量子効率が増大したためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の多孔質体の表面を光学顕微鏡によって拡大した部分写真図。
【図2】本発明の多孔質体の外観を示す全体写真図。
【図3】発泡金属体を消失させる前の二酸化チタン成膜物の外観を示す全体写真図。
【図4】大気開放型CVD装置の構成図。
【図5】実施例1及び比較例1の多孔質体を用いたガラス管通過前後におけるアセトアルデヒド残存率並びに残存濃度を示す図。
【符号の説明】
【0028】
10 大気開放型CVD装置
11 原料気化器
12 発泡金属体
13 噴出ノズル
14 配管
16 キャリアガス流量調節器
17 加熱台
18 キャリアガス供給源
19 防護チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンのみからなる多孔質体。
【請求項2】
三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有する二酸化チタンを主成分とし、前記二酸化チタンに3〜7重量%の炭素が含有された炭素ドープ二酸化チタンからなる多孔質体。
【請求項3】
気孔率が57%〜99.95%である請求項1又は2記載の多孔質体。
【請求項4】
気孔率が50%〜98%の発泡金属体(12)の全面に二酸化チタン或いは炭素ドープ二酸化チタンを成膜する工程と、
前記発泡金属体(12)を溶解する酸エッチング液中に前記成膜物を浸漬することにより前記成膜物より前記発泡金属体(12)を消失させる工程と
を含むことを特徴とする多孔質体の製造方法。
【請求項5】
発泡金属体(12)の材質がNi又はNi基合金である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の多孔質体を用いた光触媒。
【請求項7】
請求項4又は5記載の製造方法により得られた多孔質体を用いた光触媒。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−104047(P2006−104047A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253040(P2005−253040)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】