説明

多孔質印判の製造装置

【課題】捺印部の印字線を所望の太さに、明瞭に残存させることができ、かつ、印材幅の変化に応じて加熱量を変動させることでシール膜厚や線幅を制御することが可能な多孔性印判の製造装置を提供すること。
【解決手段】モノクロの画像データを階調付きの画像データに書き換えるコンバート手段と、階調付きの画像データを読み込む階調付き画像データ読み込み手段と、前記階調付きの画像データに従って各発熱素子についての制御データ作成手段と、前記制御データに従って各発熱素子のオン・オフ制御を行う発熱駆動手段とを備え、前記の発熱駆動手段は、サーマルヘッドによる1ラインの加熱処理を複数回に分けて行い、1ラインを構成する各ドットに対して異なったパターンで熱を与えるものであり、一回あたりの加熱量はシール可能な最低加熱量であることを特徴とする多孔質印判の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質印判の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質印判は、多孔質印材に捺印パターンを有する捺印部(インク透過部)と、非捺印部(インク不透過部)とを形成することにより、製造される。捺印部(インク透過部)と、非捺印部(インク不透過部)とを形成する方法としては、例えば、非捺印部に、多数の発熱素子が設けられたサーマルヘッドを押圧し、所定の印字ドットパターンにしたがって選択的に発熱素子の発熱駆動を行って、インク不透過膜の薄膜層を形成するとともに、発熱素子を介して発熱されなかった部分を、インク透過性の捺印部とする方法がある。(特許文献1)
【0003】
サーマルヘッドでは、選択的に発熱素子の発熱駆動が行われるため、理論上、加熱溶融されるのは、発熱素子に圧着する印材部分(非捺印部)のみである。なお、非捺印部におけるインクのシール性を向上させるためには、非捺印部分に圧着する発熱素子の温度を高く制御して加熱溶融を行い、シール膜厚を30μm以上とすることが望ましい。しかし、シール性を満足するため温度をサーマルヘッドに加える場合、発熱駆動された発熱素子に多量の熱が蓄熱されるため、熱伝導により、近隣の発熱素子までも加熱されてしまい、本来は、多孔質印材を溶融させずに、捺印部分として残すべき部分まで、一部溶融してしまい、捺印線が細くなってしまう問題があった。
【0004】
従来より、サーマルヘッドを押圧して多孔質印材の加熱溶融を行う手段としては、印材に荷重を加えて押圧する手段が用いられていたが、同一荷重を加えた場合、印材幅によって、単位面積当たりの荷重値である圧力が変動し、シール膜厚や線幅に影響を及ぼすが、印材幅にあわせて荷重を自由に変動させるのは困難であるという問題があった。
【0005】
また、前記の印材に荷重を加えて押圧する手段において、印材幅によって、単位面積当たりの荷重値である圧力が変動した場合に、その圧力変動に応じて、加熱量を変動させることでシール膜厚や線幅を制御することも困難であるという問題があった。
【特許文献1】特許第3020416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多孔質印材の表面に、サーマルヘッドを押圧して直接加工を行う多孔性印判の製造装置であって、前記問題を解決して、非捺印部に対応する発熱素子からの熱伝動によって、捺印部をも溶解し、捺印部の線幅を狭めてしまうことなく、かつ、多孔性印判のシール性を満足するシール膜厚を確保できる多孔性印判の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の多孔性印判の製造装置は、サーマルヘッド内にライン状に配置された複数の発熱素子を、発熱駆動して、多孔質印材に押圧して、発熱駆動した部分を溶融固化させて膜を形成し、発熱駆動されない部分のインク透過性を保持することにより、印判を形成する多孔質印判の製造装置において、モノクロの画像データを、階調付きの画像データに書き換える、コンバート手段と、階調付きの画像データを読み込む、階調付き画像データ読み込み手段と、前記階調付きの画像データに従って、各発熱素子についての制御データ作成手段と、前記制御データに従って各発熱素子のオン・オフ制御を行う発熱駆動手段とを備え、前記の発熱駆動手段は、サーマルヘッドによる、1ラインの加熱処理を複数回に分けて行い、1ラインを構成する各ドットに対して異なったパターンで熱を与えるものであり、一回あたりの加熱量は、シール可能な最低加熱量であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の多孔性印判の製造装置は、請求項1に記載の多孔性印判の製造装置において、制御データ作成手段は、前記押圧面積に応じて、シール可能な最低加熱量を変動させること特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の多孔性印判の製造装置は、請求項1又は請求項2に記載の多孔性印判の製造装置において、ライン状に配置された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドを保持するサーマルヘッド保持部と、サーマルヘッドに荷重を付加する荷重負荷部と、印材を載置するためのプラテンとを備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の多孔性印判の製造装置は、請求項3に記載の多孔性印判の製造装置において、プラテン上に載置した印材とサーマルヘッドとの間に介在させるための樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの一端のみを、プラテンに固定する手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の多孔性印判の製造装置は、モノクロの画像データを、階調付きの画像データに書き換える、コンバート手段と、階調付きの画像データを読み込む、階調付き画像データ読み込み手段と、前記階調付きの画像データに従って、各発熱素子についての制御データ作成手段と、前記制御データに従って各発熱素子のオン・オフ制御を行う発熱駆動手段とを備えるものである。これにより、従来は、2階調データに従って、サーマルヘッドの1ラインを構成する各ドットに対して単一のパターンで熱を与え、同一箇所でサーマルヘッドが印材に行う加熱処理は一回であったところ、請求項1記載の発明によれば、N階調データに従って、同一箇所で印材に行う加熱処理をN−1回とし、各回ごとにサーマルヘッドの1ラインを構成する各ドットに対して異なるパターンで熱を与えることが可能となる。したがって、請求項1記載の発明によれば、従来は白黒の2階調で制御されていた加熱処理を、複数階調で緻密に制御でき、多孔質印材を加熱溶融させてシールする非捺印部と、加熱溶融させない捺印部との間に数ドット分の熱の吸収帯を設ける制御を行うことができる。このため、発熱駆動された発熱素子の熱が、捺印部に押圧される素子に伝導して、捺印部が加熱溶融することを防ぐことが可能となり、捺印部の印字線を所望の太さに、明瞭に残存させることができる。
【0012】
また、サーマルヘッドは、オン・オフの2階調のみに対応できる性質を有するため、前記の階調付きの画像データの階調値に基づいて、直接、サーマルヘッド内にライン状に配置された各発熱素子を、階調的に熱制御することはできないが、請求項1に記載の多孔性印判の製造装置は、発熱駆動手段が、サーマルヘッドによる、1ラインの加熱処理を複数回に分けて行い、1ラインを構成する各ドットに対して異なったパターンで熱を与えるものであるため、最終的に、同一ラインの各ドットへの累積加熱量を、前期の階調値に対応させることができる。また前記発熱駆動手段では、一回あたりの加熱量は、シール可能な最低加熱量とするため、発熱素子への蓄熱が一定量に制御でき、隣接する非加熱部分への熱伝動の問題を抑制できる。ここで、加熱量とは、加熱温度と加熱時間(ストローブ)の積で表わされるものである。
【0013】
請求項2に記載の多孔性印判の製造装置では、請求項1に記載の多孔性印判の製造装置において、制御データ作成手段は、前記押圧面積に応じて、シール可能な最低加熱量を変動させるものとしたことにより、印材幅によって、単位面積当たりの荷重値である圧力が変動した場合に、その圧力変動に応じて、加熱量を変動させることでシール膜厚や線幅を制御することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の多孔性印判の製造装置では、請求項1又は請求項2に記載の多孔性印判の製造装置であって、ライン状に配置された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドを保持するサーマルヘッド保持部と、サーマルヘッドに荷重を付加する荷重負荷部と、印材を載置するためのプラテンとを備えるものとしたことにより、印材幅の変化にしたがって、荷重負荷部で荷重量を調節することが可能となる。これにより、単位面積当たりの荷重値である圧力を自在に調節して、シール膜厚や線幅を制御することができる。
【0015】
請求項4に記載の多孔性印判の製造装置では、請求項3に記載の多孔性印判の製造装置において、プラテン上に載置した印材とサーマルヘッドとの間に介在させるための樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの一端のみを、プラテンに固定する手段と、を備えるものとしたことにより、サーマルヘッドで加熱されて部分的に溶融したスタンプ材表面が引っ張られて印面がずれる現象を軽減することができ、より高品位の印面加工が実現可能となる。
【0016】
さらに、前記の樹脂フィルムは一端のみをプラテンに固定する構造を有するため、サーマルヘッドを走査方向に進行させても樹脂フィルムにしわが寄らないという効果が得られる。また、樹脂フィルムの一端が固定されていないため、プラテンに樹脂フィルムを装着したままでの、印字体の取り換えが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る多孔性印判の製造装置について、本発明を具現化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の製造装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の多孔性印判の製造装置は、モノクロ画像データを階調付きの画像データに書き換えるコンバート手段を有するPCと、サーマルヘッド内のライン状に配置された発熱素子を制御する制御系ユニットと、サーマルヘッドを有する印材加工機部分とから構成される。
【0018】
また、図1に示すように、前記の制御系ユニットは、階調付きの画像データを読み込む、階調付き画像データ読み込み手段と、前記階調付きの画像データに従って、各発熱素子についての制御データ作成手段と、前記制御データに従って各発熱素子のオン・オフ制御を行う発熱駆動手段とから構成される。当該制御系ユニットは、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等から構成されている。
【0019】
図2は、モノクロ画像データを、階調付き画像データに書き換えるコンバート手段と、前記のコンバート手段で、例えば、4階調にコンバートされた画像データに基づいて、1ラインの加熱処理を3回行うための制御データ作成が行われる発熱素子駆動手段の説明図である。組版ソフトで作成され、あるいは、スキャナやCCDカメラ等のインターフェースから入力されたモノクロ画像データは、各階調ごとのデータに分解された後、各発熱素子のオン・オフを制御するための制御データが作成される。制御データは制御系ユニットのRAMに一時保存される。
【0020】
図3は、前記の制御データに従って、サーマルヘッドの各発熱素子が制御されて、印判形成を行う説明図である。 図3において、黒ドットは、発熱素子のオン制御データを表わすオンドット、白ドットは、発熱素子のオフ制御データを表わすオフドットを示している。なお、サーマルヘッドは、オン・オフの2階調のみに対応できる性質を有するため、前記の諧調付きの画像データの階調値に基づいて、直接、サーマルヘッド内にライン状に配置された各発熱素子を、階調的に熱制御することはできない。
【0021】
図3に示す例では、5階調にコンバートされた画像データに基づいて、1ラインの加熱処理が4回行われ、各回のサーマルヘッドの制御は、前記の制御データに従って行われる。1回あたりの加熱は、シール可能な最低温度とする。このようにして、5階調にコンバートされた画像データに基づいて、1ラインの加熱処理が4回行われる結果、オンドットの連続回数を段階的に変化させることが可能となり、擬似的に、サーマルヘッド内にライン状に配置された複数の発熱素子を階調制御したかのような効果が得られる。
【0022】
これにより、多孔質印材を加熱溶融させてシール性を向上させる非捺印部と、加熱溶融させない捺印部との間に数ドット分の熱の吸収帯を設けることができ、発熱駆動された発熱素子の熱が、捺印部に押圧される素子に伝導して、捺印部が加熱溶融することを防ぎ、捺印部の印字線を所望の太さに、明瞭に残存させることができる。なお、本発明では一回あたりの加熱量を、シール可能な最低加熱量としたため、発熱素子への蓄熱が一定量に制御でき、隣接する非加熱部分への熱伝動の問題を抑制できる。
【0023】
なお、多孔質印材の幅が変化し、荷重量が一定の場合には、サーマルヘッドと多孔質印材の加熱面での圧力変化が生じる。印材の加熱溶融は圧力と加熱量に依存して生じるため、所望のシール膜厚や線幅を得るためには、印材幅の変化に合わせて、荷重負荷量の調節による圧力調節や加熱量調節を行うことが必要となる。
【0024】
加熱量調節に関して、本発明の多孔性印判の製造装置では、前記の制御系により、印材幅によって、単位面積当たりの荷重値である圧力が変動した場合に、その圧力変動に応じて、加熱量を変動させる制御が行われる。このため、印材幅が変化した場合であっても、所望のシール膜厚や線幅を得ることができる。ここで、加熱量を変動させる手段としては、サーマルヘッドの加熱温度や加熱時間を変化させる手段や、同一箇所での加熱回数を変化させる手段がある。
【0025】
一方、圧力調節に関して、本発明の多孔性印判の製造装置では、自在に荷重量の調整ができる荷重負荷部により、印材幅によって、単位面積当たりの荷重値である圧力が変動した場合に、その圧力変動に応じて、荷重負荷量を調節することができる。このため、印材幅が変化した場合であっても、所望のシール膜厚や線幅を得ることができる。ここで、荷重負荷部としては、分銅や、加圧機等を用いることができる。
【0026】
図4は、多孔質印判の製造装置の印材加工機部分の概略構成を示すものである。本発明の印材加工機部分は、ライン状に配置された複数の発熱素子を有するサーマルヘッド3と、サーマルヘッドを保持するサーマルヘッド保持部7と、サーマルヘッドに荷重を付加する荷重負荷部1と、印材4を載置するためのプラテン6と、プラテンを保持するプラテン保持部8と、プラテン上に載置した印材4とサーマルヘッド3との間に介在させるための樹脂フィルム9と、前記樹脂フィルム9の一端のみを、プラテン6に固定する手段10と、印材4を載置したプラテン6を、サーマルヘッド方向に駆動させるためのプラテン駆動ギア5と、プラテン駆動ギア5を駆動するためのステッピングモーターを備えている。
【0027】
発熱素子が発熱したサーマルヘッド3を印材4に押圧した場合、発熱素子が発熱した箇所では、多孔質印材4が溶融し、当該溶融した樹脂が、サーマルヘッド3に溶着する問題や、摩擦係数が増大して、製版不良を生じる問題があるが、請求項4に係る多孔質印判の製造装置の発明においては、図4に示すように、印材4と、サーマルヘッド3の間に、樹脂フィルム9を介在させることで、前記の問題解決を図り、高品位の印面加工を実現した。樹脂フィルム9としては、耐熱性に優れ、かつ低摩擦特製を有する薄膜樹脂シートを用いることができる。本発明に用いられるフィルムとしては、耐熱性・平滑性の見地から、セロハン・アセテート・ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエステル・ポリエチレンテレフタレート・ポリ四フッ化エチレン・ポリイミドなどのポリフィルムが主に用いられる。また、当該フィルムは前記多孔質印材の融点より高い融点を持つことが好ましい。フィルムの融点が低いと多孔質印材より先にフィルムが溶融してしまうからである。当該フィルムは、有色又は無職、透明又は不透明の別を問わないが、印面加工の為の各種加熱手段の熱を阻害しないことと、加工状態の確認が容易であることから、通常は透明フィルムが使用される。
【0028】
図7には、樹脂フィルム9としてポリ四フッ化エチレンを用いて印面形成を行った場合と、樹脂フィルムを用いないで印面形成を行った場合との、各印面断面図を示している。樹脂フィルムを用いずに印面形成を行った場合には、スタンプ材表面が引っ張られて印面がずれる現象が生じるが、樹脂フィルムを用いて印面形成を行った場合は、印面がずれる現象を軽減することができ、より高品位の印面を形成することができる。
【0029】
図5に示すように、樹脂フィルム9をプラテン6に固定する手段として、請求項4に係る多孔性印判の製造装置では、前記樹脂フィルムの一端のみを固定する手段10を備えている。固定手段としてはマグネットやクリップを用いることができる。
【0030】
樹脂フィルムの固定手段は、図6に示すように、一端のみを固定する手段10としたことにより、サーマルヘッド3を進行させても樹脂フィルムにしわが寄らないという効果が得られる。また、樹脂フィルムの一端が固定されていないため、プラテン6に樹脂フィルム9を装着したままでの、印字体4の取り換えが容易となる。
【0031】
本発明の印判製造装置で印面形成される印材は、印材表面にサーマルヘッドを押圧して、表面を加熱溶融できる多孔質体であれば如何なるものでもよく、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エストラマー、具体的にはポリオレフィン系合成樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアセタール等の各合成樹脂、スチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系の熱可塑性エストラマーであり、市販品としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩ビ酢酸ビコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネイトなどを原料として用いた多孔質体がある。前記の原料から多孔質体を得るためには、加熱加圧ニーダー、加熱ロール等の機械にて、デンプン、食塩、硝酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の溶解物質と熱可塑性樹脂又は熱可塑性エストラマーを混練し、シート状にして冷却後、水又は希酸水にて前記溶解物質を溶出する。この方法にて作成した、多孔質体の溶融温度は、原料樹脂の溶融温度と同一であるが、顔料、染料、無機質等の充填材を混入させることにより、多孔質体の溶融温度を任意に変えることが可能である。本発明の印判製造装置で印面形成される印材では、溶融温度を70℃〜120℃とするのが適している。
【0032】
また、多孔質体の気孔率及び気孔径は前記溶解物質の粒径や混練含有量により定まる。本発明の印判製造装置で印面形成される印材は、1層又は2層構造の多孔質体であって、気孔率は50%〜80%であり、1層又は2層構造の表面層の気孔径は1μ〜20μであり、下層の気孔率は50μ〜100μとするのが適している。なお、下層としてフェルト等のインキ吸蔵体を使用してもよい。印材形状は、シート状やフィルム状の薄膜形状であればよい。
【0033】
本発明の印判製造装置の駆動手段としては、サーマルヘッド3を固定して、印材4を積載したプラテン6を移動させる手段を設けてもよいし、印材4を積載したプラテン6を固定して、サーマルヘッド3を移動させる手段を設けてもよい。
【実施例】
【0034】
アルミ板加工部品をねじで組み立てて、本発明に係る多孔質印判の製造装置の印材加工機部分を得た。この、印材加工機を、PCに接続し、加工速度の設定および加工開始、の各操作はPC画面で行った。印字パターンはPCで作成した階調付き画像データに従う。
【0035】
発熱素子熱制御データの作成プログラムは、前記PCで作成したN階調からなる階調付き画像データを、階調ごとに分解するプログラムと、各階調ごとに分解された同一箇所で加熱処理を繰り返すサーマルヘッドにおいて、階調に準じて、N−1、N−2,・・・、1回オン制御を行うよう指令する発熱素子熱制御データを作成するプログラムからなる。
【0036】
本実施例においては、組版ソフトで作成したモノクロ画像データを、上記プログラムで5階調の階調付き画像データに書き換え、更に、当該階調付き画像データに従って発熱素子熱制御データを作成し、そのデータに基づく印判形成を行った。
【0037】
印材はプラテンに取り付けて、プラテンを製造装置のプラテン保持部材に取り付けた。プラテンにはラックギアが取り付けられていて、ステッピングモーターで駆動されるギアにより駆動される。
【0038】
なお、サーマルヘッド部は、端面タイプサーマルヘッド(京セラ製)をメディア送り上流側より軸支し、荷重は分銅で調整した。分銅は100g、500g、1kgの3種類から選択して用いる。サーマルヘッドの下端位置はネジにより調整した。
【0039】
本実施例で形成した印判と、モノクロ画像データの2階調データに従って発熱素子の制御を行って作成した印判を比較すると、本実施例による印判では、顕著に、捺印部の印字線を所望の太さに、明瞭に残存させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】印判製造装置の制御系を示すブロック図である。
【図2】モノクロ画像データのコンバート手段と、発熱駆動手段の説明図である。
【図3】階調付き画像データに基いて、発熱素子を発熱駆動させる説明図である。
【図4】印判製造装置の印材加工機部分の縦断側面図である。
【図5】樹脂フィルム固定手段の縦断側面図である。
【図6】サーマルヘッドが樹脂フィルム上を進行する状態図である。
【図7】樹脂フィルムの有無による印面形成の相違を示す印面断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 加重負荷部
2 サーマルヘッド下端調節ネジ
3 サーマルヘッド
4 印材
5 プラテン駆動ギア
6 プラテン
7 サーマルヘッド保持部
8 プラテン保持部
9 樹脂フィルム
10 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッド内にライン状に配置された複数の発熱素子を、発熱駆動して、多孔質印材に押圧して、発熱駆動した部分を溶融固化させて膜を形成し、発熱駆動されない部分のインク透過性を保持することにより、印判を形成する多孔質印判の製造装置において、
モノクロの画像データを、階調付きの画像データに書き換える、コンバート手段と、
階調付きの画像データを読み込む、階調付き画像データ読み込み手段と、
前記階調付きの画像データに従って、各発熱素子についての制御データ作成手段と、
前記制御データに従って各発熱素子のオン・オフ制御を行う発熱駆動手段とを備え、
前記の発熱駆動手段は、
サーマルヘッドによる、1ラインの加熱処理を複数回に分けて行い、
1ラインを構成する各ドットに対して異なったパターンで熱を与えるものであり、
一回あたりの加熱量は、シール可能な最低加熱量であること
を特徴とする多孔質印判の製造装置。
【請求項2】
制御データ作成手段は、前記押圧面積に応じて、シール可能な最低加熱量を変動させることを特徴とする請求項1記載の多孔質印判の製造装置。
【請求項3】
ライン状に配置された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
サーマルヘッドを保持するサーマルヘッド保持部と、
サーマルヘッドに荷重を付加する荷重負荷部と、
印材を載置するためのプラテンと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質印判の製造装置。
【請求項4】
プラテン上に載置した印材とサーマルヘッドとの間に介在させるための樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの一端のみを、プラテンに固定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の多孔質印判の製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−208294(P2009−208294A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51911(P2008−51911)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】