説明

多孔質炭素シート巻体の包装体、その横置型梱包物及びその梱包方法

【課題】僅かな衝撃にも極めて割れやすい多孔質炭素シート巻体の梱包作業時、搬送時及び電極製造現場における荷解き時における巻き崩れを排除するとともに、廃棄部分を最小限に止めることが可能な巻体梱包物の提供。
【解決手段】厚さ0.5mm以下、曲げ強度100MPa以下、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シート2の巻体1が梱包容器に横置収納されてなる横置型梱包物であって、多孔質炭素シート2の巻体1は、巻付け芯材3の両端を外部に突出させて、多孔質炭素シート2が巻付け芯材3に多重に巻き付けられ、その周面及び側端面がシート状緩衝材4により被包されてなり、前記梱包容器の左右両側部内面に巻体支持部材を有し、巻体1の側端面に配されたシート状緩衝材4の端面被包部分を、巻体1の側端面と前記巻体支持部材との間に挟持した状態で、前記巻体支持部材の一部をもって巻付け芯材3の両端突出部を固定支持してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シートの巻取りは可能であっても、他の一般的なシートと比較すると曲げ強度が小さく、弾性率も高いため、僅かな衝撃にも極めて割れやすい多孔質炭素シートの巻体の包装体、その梱包物とその梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通常の織編物や不織布、或いは合成樹脂フィルム等のシート状物は製造する段階で紙管や鉄管等の芯材に巻かれ、その巻体を包装紙や包装フィルム等の被覆材で覆ったのち、段ボール箱や木製の梱包容器に収納して工場から出荷している。
【0003】
しかし、こうした梱包形態では、その被梱包物の材質や形態によっては、次のような問題点があった。被梱包物が、例えば多孔質炭素シートのような、曲げ強度が小さく、弾性率も高いため、僅かな衝撃にも極めて割れやすい場合には、単に緩衝材を介して段ボール箱に収納するだけでは、その搬送時や収納時に周辺の物と接触しただけでも端縁に欠けが発生しやすく、特に固形燃料電池の電極を構成する材料であり高価で高品質が要求される多孔質炭素シートにとっては、僅かな傷であっても致命的な欠陥となる。この積層時や梱包作業時に、仮に周辺の物に接触させたり、摺接するだけで割れや欠けが発生する。
【0004】
この電極材料として使われる多孔質炭素シートは、炭素繊維からなる不織布(紙)状のシートに、焼成によって炭素化が可能な合成樹脂を含浸させて硬化させたのち、不活性ガス雰囲気下にある焼成炉にて焼成炭化させることにより製造される。こうして得られる多孔質炭素シートは、上述のように曲げ強度が小さく、高弾性率であり、僅かな衝撃にも極めて割れやすく、更には高硬度であるため、例えば巻取りロールに巻き取ることができず、板材単体としてバッチ式で製造されるのが一般的である。しかし、こうした板材からなる多孔質炭素シートは表面が平滑で滑りやすく、これを梱包するにあたっては、その所要枚数を緩衝材を挟み込みながら順次積層し、その全周面をシート間のずれが生じないように緩衝材をもって隙間なく完全に被包してから、例えば段ボール箱等の梱包容器にがたがこないように詰め込む。
【0005】
本発明者等は、こうした従来のバッチ式の製造では生産効率が極めて低いこと、近年における燃料電池の小型化への要求が高いことを踏まえて、これに対応すべく、例えば特許第3612518号公報(特許文献1)や、特開2006−40885号公報(特許文献2)、特開2006−40886号公報(特許文献3)にて、ロールや紙管に巻き取ることができる、ある程度の可撓性に富み、超薄手で高性能を備えた多孔質炭素シートを先に提案した。
【0006】
例えば特許文献2及び3に開示された多孔質炭素シートは、実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散した炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着され、さらに前記炭素短繊維同士がフィラメント状の樹脂炭化物により架橋されている。前記炭素短繊維の繊維直径は3〜9μm、繊維長が2〜12mmであって、その多孔質電極基材の厚みが150μm以下という極めて薄手の膜材からなる。かかる構成を備えた多孔質電極基材は、上記炭素短繊維を含む抄紙材料を湿式又は乾式の抄紙法により炭素繊維紙を作り、その炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸固化させたのち、不活性ガス雰囲気中で焼成して連続して製造される。こうして得られる長尺の多孔質電極基材は、8×2.54cm以下の紙管に巻き取ることができるだけの可撓性を有し、厚みが薄いながらも、ガス透過度及び曲げ強度に優れている。
【0007】
ところで、こうして得られる可撓性を有する多孔質炭素シートであっても、上述のような脆性が高く割れやすく、表面平滑であるがため滑りやすく、伸びなども全くないことから、例えば紙管に巻き取ったのちの取り扱い自体に細心の注意を払わなければならない。特に、その巻体を、例えば緩衝材にて被包して梱包容器に収納して搬送するにあたっても、前記巻体の紙管を垂直に配する、いわゆる縦置タイプで梱包すると、紙管に巻かれた多孔質炭素シート間でずれや隙間が生じて巻き崩れが起こりやすいため、その巻体の軸方向端部のシート部分が簡単に割れや欠けが発生する。この巻き崩れを避けるべく、多孔質炭素シートを所要の緊張下で巻き取り、その巻終り端部を、例えばガムテープ等を使って巻き表面に接合固定しようとすると、このガムテープの貼着端部と貼着表面との間の多孔質炭素シート部分は製品とはならず切除しければならない。このロス部分の発生は、多孔質炭素シートの極めて高価であることから、製造コスト及び製品価格にも大きく影響することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3612518号公報
【特許文献2】特開2006−40885号公報
【特許文献3】特開2006−40886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、紙管などの巻付け芯材に巻き付けることが可能な薄手の多孔質炭素シートがもつ特有の課題を解決することにあり、具体的には前記多孔質炭素シートの巻体の梱包作業時、搬送時及び電極製造現場における荷解き時における巻き崩れを排除するとともに、廃棄部分を最小限に止めることが可能な同巻体の梱包物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的は、本発明の第1の基本構成である、厚さ0.5mm以下、曲げ強度100MPa以下であって、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体周面をシート状緩衝材により被包してなる包装体であって、前記巻体は巻付け芯材に前記多孔質炭素シートが巻き付けられ、該巻体の全周面が前記シート状緩衝材により被包され、その被包形態は、前記巻体の全周面にわたり前記シート状緩衝材が前記巻体の巻付け方向に少なくとも1周分巻き付けられており、前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とが接合固定され、そのシート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部が同シート状緩衝材の巻上り表面に重畳接合固定された形態を有してなる、包装体により達成される。前記シート状緩衝材は、包装資材であるエアキャップであることが好ましい。
【0011】
また、上記目的は本発明の第2の基本構成である、厚さ0.5mm以下、曲げ強度100MPa以下であって、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体が梱包容器に横置収納されてなる横置型梱包物であって、多孔質炭素シートの巻体は、巻付け芯材の両端を外部に突出させて、前記多孔質炭素シートが同巻付け芯材に多重に巻き付けられ、その周面及び側端面がシート状緩衝材により被包されてなり、前記梱包容器の左右両側部内面に巻体支持部材を有し、前記巻体の側端面に配された前記シート状緩衝材の端面被包部分を、前記巻体の側端面と前記梱包容器の内部に配された巻体支持部材との間に挟持した状態で、前記巻体支持部材の一部をもって前記巻付け芯材の両端突出部を固定支持し、前記シート状緩衝材と前記梱包容器とが非接触状態を維持されてなる、多孔質炭素シート巻体の横置型梱包物により効果的に達成される。
【0012】
好ましい態様によれば、前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とが接合固定され、そのシート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部が同シート状緩衝材の巻上り表面に重畳接合固定されている。また、前記巻体支持部材は、前記梱包容器の左右側部内面と略同一形状を有しており、その巻体支持部材の中央部に前記巻付け芯材の前記両端突出部を密嵌支持する凹陥状の密嵌支持部を有しているとよい。前記密嵌支持部は前記巻体芯材と同一の断面形状を有し、好ましくは前記巻体支持部材が前記両端突出部の中心を通る直線をもって2又は3分割されている。前記梱包容器及び巻体支持部材には段ボール紙を使うことが好ましく、また前記シート状緩衝材としては梱包用エアキャップが好ましく使用される。
【0013】
かかる構成を備える横置型梱包物は、本発明の第3の基本構成である、以下の多孔質炭素シート巻体の梱包方法により効率的且つ効果的に梱包される。
この第2の基本構成は、厚さ0.5mm、曲げ強度100MPa以下であり、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体を梱包容器に横置収納する梱包方法であって、前記多孔質炭素シートを、同シートのシート幅より長い寸法をもつ巻付け芯材に両端部を残して巻き付け、多孔質炭素シートの巻体を形成すること、前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とを接合固定すること、前記シート状緩衝材を、前記巻体の巻付け方向に向けてその巻体の外周面に沿って少なくとも1回巻き付けて、前記シート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部を同シート状緩衝材の巻上り表面に接合固定すること、横置型の前記梱包容器の左右両側端内面と同一形状を有するとともに、その中央部に前記巻付け芯材の左右突出端部が密嵌する凹陥状の密嵌部を有し、その密嵌部の中心を通る直線に沿って2又は3分割された板状の巻体支持部材を形成すること、前記巻体支持部材の分割片の一部を前記梱包容器の左右側端部内面に沿って嵌め込むこと、この嵌め込まれた前記巻体支持部材の左右分割片の一部における前記密嵌部の一部に、前記シート状緩衝材の外周面に接合固定された巻体の前記突出端部を載置すること、次いで、残る前記巻体支持部材の分割片の残部を前記梱包容器の左右側部内面に沿って嵌め込み、前記分割片の前記密嵌部の残部を、前記巻体の左右端部の前記突出端部の上部から外嵌すること、及び前記巻体の左右両端から外側に延在する前記シート状緩衝材の左右端部を、前記分割片の前記密嵌部と前記巻体の突出端部との密嵌操作時の前記密嵌部の中心方向への相対的嵌め込み動作により、巻体の左右端面に向けて自動的に折り曲げ、同端面と前記巻体支持部材の内面との間に緩衝層を形成すること、を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明における被梱包物は、紙管や合成樹脂管などの巻付け芯材に巻き付けることが可能な、厚さ0.5mm、曲げ強度100MPa以下であって、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートである。その梱包形態を上述のように横置型に特定することにより、そもそもが滑りやすい特性をもつ多孔質炭素シートを縦置型で梱包したり搬送すると、巻付け芯材に巻き付けられた多孔質炭素シートが重力や振動等により軸線方向にずれやすく、その巻端面に割れや欠けが発生するが、本発明のシート状緩衝材による多孔質炭素シート巻体の梱包構造とが相まって、割れや欠けを皆無にできる。
【0015】
また、巻付け芯材の両端部を外方に突出させてシート状緩衝材により被包された多孔質炭素シート巻体は、梱包容器の内部に固定配置された巻体支持部材に前記巻付け芯材の両端部を固定支持させて、多孔質炭素シート巻体を梱包容器の内部に宙づり状態で支持固定する。このとき、多孔質炭素シート巻体の長さ方向両端面にもシート状緩衝材が、巻体端面と巻体支持部材の対向内面との間に圧密状態で挟持され、多孔質炭素シートが巻体の端面方向への動きを緩衝材を介して完全に封じている。シート状緩衝材を巻体端面と巻体支持部材の対向内面との間で圧密状態に挟持させるには、本発明の上記第2の基本構成である特有の梱包方法により、梱包工程の中で自動的になされる。
【0016】
また、前記巻体にシート状緩衝材を被包一体化するにあたり、多孔質炭素シート巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とを接合固定し、そのシート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部を同シート状緩衝材の巻上り表面に重畳接合固定することにより、多孔質炭素シートの巻付け形態が安定化され、しかも多孔質炭素シートのガムテープ等による接合箇所が同多孔質炭素シートの巻終り端部の一部であるに過ぎず、従来では廃棄されるロス部分が大幅に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における多孔質炭素シート巻体の包装体の包装手順の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の包装体の梱包手順の一例を示す包装手順説明図である。
【図3】本発明に係る梱包物の内部断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳述する。図1は本発明における被梱包物である多孔質炭素シート巻体1の包装体6を示している。この多孔質炭素シート巻体1は、巻付け芯材3に長尺の多孔質炭素シート2を多重に巻き付けることにより得られる。本実施例にあって、前記巻付け芯材3は内径が152mm、外径が173mm、幅が400mmの紙管からなり、この巻付け芯材3に巻き付けられる多孔質炭素シート2のシート幅は300mmであって、その巻付け長さは20mである。
【0019】
かかる巻体1が形成されるためには、多孔質炭素シート2が適度の可撓性を備えている必要がある。本実施形態では上記特許文献1の実施例17に開示された多孔質炭素シートの連続製造方法に則って多孔質炭素シート2を製造した。これを具体的に説明すると、平均繊維径が4μmのポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維の繊維束を切断し、平均繊維長が3mmの短繊維を得た。一方で、平均繊維径が7μmのPAN系炭素繊維の繊維束を切断し、平均平均繊維長が6mmの短繊維を得た。これらの繊維束を繊維径4μmと繊維径7μmの短繊維の比が4μm/7μm=8/11になるように水中で解繊し、充分に分散したところにバインダーであるポリビニルアルコール(PVA)の短繊維を炭素繊維とPVAとの合計量に対して5質量%となるように均一に分散させ、湿式連続抄紙装置により抄紙を行った。
【0020】
この連続炭素紙にdip−nip法によりフェノール樹脂(フェノライトJ−325・大日本インキ化学(株)製)の20重量%メタノール溶液の送り込み絞り装置にて樹脂を絞り、連続的に熱風を吹きかけ乾燥させ、樹脂含浸炭素繊維紙を得た。この乾燥後の樹脂含浸炭素繊維紙をダブルベルトプレスにより連続焼成を行い、幅300mm、長さ20mの電極基材を外径173mmの円筒型紙管に巻き取った。得られた基材は全く反りがなく、厚さ0.14mmと薄く、曲げ強度は92MPaと強く、撓みも2.0mmと大きい値である。
【0021】
本実施形態にあっては、こうして得られた多孔質炭素シート巻体1の全周面に、いわゆるエアキャップと呼ばれるシート状緩衝材4である包装材を被覆する。このときの被包形態は、本発明に特有の被包形態であり、前記巻体1の全周面にわたり前記シート状緩衝材4を前記巻体1の巻付け方向に少なくとも1周分巻き付けて巻体1の巻き形態を固定するとともに、巻体1に対する外部からの衝撃等を緩和する。しかし、前記シート状緩衝材4を前記巻体1に巻き付けて巻付け端部を固定するだけでは、多孔質炭素シート2が弾発性が高く、且つその表面が平滑性に富むため、巻付け芯材3に巻付けた後にもたやすく巻き崩れが生じるばかりでなく、その周面にシート状緩衝材4を巻き付けるときにも多孔質炭素シート2の巻きが崩れやすく、しかも軸方向にずれやすい。
【0022】
そこで本実施形態では、図1A及び図1Bに示すように、多孔質炭素シート2の巻終り端部にガムテープ5の一部を貼着するとともに、そのガムテープ5の残部をシート状緩衝材4の巻始め端部の少なくとも一部に貼着固定して、そのシート状緩衝材4を巻体1のシート巻き方向に巻き付ける。このときの巻き回数は少なくとも1周分であり、好ましくはシート状緩衝材4の始端に終端が十分に重畳するように2周分程度がよい。ここで、図1Cに示すように、シート状緩衝材4の巻始め端面の少なくとも一部と同シート状緩衝材4の巻終り端面の重畳部の一部とを、同じくガムテープ5をもって貼着固定して、本発明における包装体6が形成される。
【0023】
かかる被包形態をもつ本実施形態による包装体6は、多孔質炭素シート2の巻体1の巻終り端部がガムテープ5を介してシート状緩衝材4の巻始め端部に連結されるとともに、シート状緩衝材4の巻終り端部がシート状緩衝材4の重畳部表面に同じくガムテープをもって貼着連結しているため、多孔質炭素シート2の巻体1がシート状緩衝材4により巻き締められ、その巻き形態は安定して維持される。しかも、多孔質炭素シート2に貼着されるガムテープ5は、多孔質炭素シート2の巻終り端部の一部に過ぎないため、ガムテープ5の貼着領域を最小限に抑えることができ、多孔質炭素シート2の廃棄部分をも最小限に抑えることができる。
【0024】
こうしてシート状緩衝材4によって被包された多孔質炭素シート2の包装体6は、その梱包時や搬送時などにおいて、巻体1の軸方向に対する多孔質炭素シート2の滑りや動きが規制されていないため、包装体6を縦置き(軸方向を上下方向に向けた)状態にて取り扱おうとすると多孔質炭素シート2の巻き面間で軸方向に滑りが生じやすく、その端面に欠けや破損などが発生する。そこで本発明にあっては、巻体1の取り扱いを全て横置き状態で行えるようにしている。そのため、先ずは前記巻体1における巻付け芯材3の長さを多孔質炭素シート2の幅よりも大きくとり、巻体1の状態で巻付け芯材3の両端部を巻体1の両端から突出させている。因みに、本実施形態では巻付け芯材3である紙管の幅を400mm、多孔質炭素シート2の幅を300mmとしている。更に本実施形態にあっては、後述する理由で前記シート状緩衝材4のシート幅を紙管の幅と同じ400mmに設定した。巻付け芯材3である紙管は、外径が173mm、内径が152mmである。
【0025】
こうして得られた包装体6は前記被包形態を維持した状態で、図2に示す梱包容器7に収納されて梱包される。
本実施形態による梱包容器7は段ボールが使われており、図2に示すように、上面が開閉可能な横置きタイプの通常の立方体形状をもつ段ボール箱本体8と、その長手方向の両端部内面に互いに対面して密嵌される一対の巻体支持部材9,9とを有している。この巻体支持部材9は、本発明における梱包容器7の重要な構成部材の一つである。
【0026】
本実施形態によれば、前記段ボール箱本体8は長辺方向の内面間距離が425mm、短辺方向の内面間距離は352mであり、一対の前記巻体支持部材9,9は、図2に示すように、面対象の構造をもち、しかも各巻体支持部材9,9は上下に2分割されている。これを具体的に説明すると、各巻体支持部材9,9は、全体として段ボール紙を3枚積層して構成された350mm四方の正方形をもつ、厚さ18mmの板材からなり、その中央部に径176mmの真円形の切欠き部10が形成され、これを切欠き部10と共に上下に2等分に分割して上部分割片9a及び下部分割片9bを形成している。図示例では、前記切欠き部10の深さは段ボール紙2枚分に相当する12mmであり、切欠き部10は残る1枚分の段ボール紙には達していない。すなわち、2枚の段ボール紙からなる切欠き部10と残る1枚分の段ボール紙との間に段部10aが形成されている。
【0027】
上記包装体6を、以上の構成を備えた梱包容器7に収納して梱包する手順を、図2を参照して具体的に説明する。
先ず、一対の巻体支持部材9の対向する各下部分割片9bを、段ボール箱本体8の長手方向両端部の対向する内面に沿わせて、反割りの切欠き部10を対向させて段ボール箱本体8の底面にまで密嵌させる。次いで、シート状緩衝材4によって被包された上記巻体1の両端部を、その被包形態を保持したまま、前記下部分割片9bの各反割りの切欠き部10に向けて、押し込むようにして差し入れ、切欠き部10の各反割りの段部10aにシート状緩衝材4の端部と一緒に巻体1の両端部から突出する巻付け芯材3の突出端部を載置固定する。この差入れ時に、巻体1に被包され、その幅方向両端から突出するシート状緩衝材4の下半端部は、前記切欠き部10の半円形の前記段部10aに沿って押し込められ、その結果、シート状緩衝材4の前記下半端部は、巻付け芯材3に向けて自然と折り曲げられ、巻体1の下半部の長手方向端面と各下部分割片9bの外側段ボール紙の内面との間にて挟圧保持される。
【0028】
続いて、一対の巻体支持部材9の対向する各上部分割片9aを、段ボール箱本体8の長手方向両端部の対向する内面に沿わせて、反割りの各切欠き部10を対向させて、先に密嵌させた各下部分割片9bの上面に当接するまで押し込むようにして差し入れる。この差入れ時に、巻体1に被包され、その幅方向両端から突出するシート状緩衝材4の上半端部は、前記切欠き部10の半円形の前記段部10aによって押し込められ、その結果、シート状緩衝材4の前記上半端部は、下部分割片9bの差し入れ時と同様に、巻付け芯材3に向けて自然と折り曲げられ、巻体1の上半部の長手方向端面と各上部分割片9bの外側段ボール紙の内面との間にて挟圧保持される。
【0029】
このようにして上記包装体6が梱包容器7に収納されると、図3に断面で示すように、巻体1の巻付け芯材3の両端突出部が一対の上記巻体支持部材9の円形切欠き部10により固定支持されるとともに、巻体1の全周面と巻体端面とがシート状緩衝材4により完全に被包される。しかも、シート状緩衝材4の幅方向端部は、巻体1の端面と支持部材9の円形切欠き部10の底面である外側段ボール紙の内面との間に挟圧状態で介装されるため、巻体1を構成する多孔質炭素シート2が梱包容器7を含む外部の部材と直接接触することなく梱包容器7の内部にガタつくことなしに宙づり状態で支持固定されることになり、搬送時や電極製作時に多孔質炭素シート2に損傷を与えることがない。
【0030】
ここで、本発明における「密嵌」とは、ガタツキが無い程度に嵌め込まれる状態をいう。
【0031】
なお、本発明の上記実施形態では、例えば多孔質炭素シート、巻体、巻付け芯材、シート状緩衝材、梱包容器などの具体的材質や製法、寸法を具体的に挙げているが、これらは上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の本質的な範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは容易に理解できるであろう。
【符号の説明】
【0032】
1 巻体
2 多孔質炭素シート
3 巻付け芯材
4 シート状緩衝材
5 ガムテープ
6 包装体
7 梱包容器
8 段ボール箱本体
9 巻体支持部材
9a 上部分割片
9b 下部分割片
10 円形切欠き部
10a 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.5mm以下、曲げ強度100MPa以下であって、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体周面をシート状緩衝材により被包してなる包装体であって、
前記巻体は巻付け芯材に前記多孔質炭素シートが巻き付けられ、
該巻体の全周面が前記シート状緩衝材により被包され、
その被包形態は、前記巻体の全周面にわたり前記シート状緩衝材が前記巻体の巻付け方向に少なくとも1周分巻き付けられており、前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とが接合固定され、そのシート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部が同シート状緩衝材の巻上り表面に重畳接合固定された形態を有してなる、包装体。
【請求項2】
前記シート状緩衝材がエアキャップである請求項1記載の包装体。
【請求項3】
厚さ0.5mm以下、曲げ強度100MPa以下、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体が梱包容器に横置収納されてなる横置型梱包物であって、
多孔質炭素シートの巻体は、巻付け芯材の両端を外部に突出させて、前記多孔質炭素シートが同巻付け芯材に多重に巻き付けられ、その周面及び側端面がシート状緩衝材により被包されてなり、
前記梱包容器の左右両側部内面に巻体支持部材を有し、
前記巻体の側端面に配された前記シート状緩衝材の端面被包部分を、前記巻体の側端面と前記梱包容器の内部に配された巻体支持部材との間に挟持した状態で、前記巻体支持部材の一部をもって前記巻付け芯材の両端突出部を固定支持し、前記シート状緩衝材と前記梱包容器とが非接触状態を維持されてなる、
多孔質炭素シート巻体の横置型梱包物。
【請求項4】
前記シート状緩衝材は前記巻体の全周面にわたり前記巻体の巻付け方向に少なくとも1周分巻き付けられており、前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とが接合固定され、そのシート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部が同シート状緩衝材の巻上り表面に重畳接合固定されてなる、請求項3記載の横置型梱包物。
【請求項5】
前記巻体支持部材は、前記梱包容器の左右側部内面と略同一形状を有してなり、その巻体支持部材の中央部に前記巻付け芯材の前記両端突出部を密嵌支持する凹陥状の密嵌支持部を有してなる、請求項3又は4に記載の横置型梱包物。
【請求項6】
前記密嵌支持部は前記巻体芯材と同一の断面形状を有し、前記巻体支持部材が前記両端突出部の中心を通る直線をもって2又は3分割されてなる、請求項5記載の横置型梱包物。
【請求項7】
前記梱包容器及び巻体支持部材が段ボール紙からなる、請求項3〜6のいずれかに記載の横置型梱包物。
【請求項8】
前記シート状緩衝材が梱包用エアキャップである、請求項3〜7のいずれかに記載の横置型梱包物。
【請求項9】
厚さ0.5mm、曲げ強度100MPa以下であり、曲げ弾性率が5GPa以上、長さが1m以上の多孔質炭素シートの巻体を梱包容器に横置収納する梱包方法であって、
前記多孔質炭素シートを、同シートのシート幅より長い寸法をもつ巻付け芯材に両端部を残して巻き付け、多孔質炭素シートの巻体を形成すること、
前記巻体の巻終り端部の少なくとも一部とシート状緩衝材の巻始め端部の少なくとも一部とを接合固定すること、
前記シート状緩衝材を、前記巻体の巻付け方向に向けてその巻体の外周面に沿って少なくとも1回巻き付けて、前記シート状緩衝材の巻終り端部の少なくとも一部を同シート状緩衝材の巻上り表面に接合固定すること、
横置型の前記梱包容器の左右両側端内面と同一形状を有するとともに、その中央部に前記巻付け芯材の左右突出端部が密嵌する凹陥状の密嵌部を有し、その密嵌部の中心を通る直線に沿って2又は3分割された板状の巻体支持部材を形成すること、
前記巻体支持部材の分割片の一部を前記梱包容器の左右側端部内面に沿って嵌め込むこと、
この嵌め込まれた前記巻体支持部材の左右分割片の一部における前記密嵌部の一部に、前記シート状緩衝材の外周面に接合固定された巻体の前記突出端部を載置すること、
次いで、残る前記巻体支持部材の分割片の残部を前記梱包容器の左右側部内面に沿って嵌め込み、前記分割片の前記密嵌部の残部を、前記巻体の左右端部の前記突出端部の上部から外嵌すること、及び
前記巻体の左右両端から外側に延在する前記シート状緩衝材の左右端部を、前記分割片の前記密嵌部と前記巻体の突出端部との密嵌操作時の前記密嵌部の中心方向への相対的嵌め込み動作により、巻体の左右端面に向けて自動的に折り曲げ、同端面と前記巻体支持部材の内面との間に緩衝層を形成すること、
を含んでなる多孔質炭素シート巻体の梱包方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−285194(P2010−285194A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141873(P2009−141873)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】