説明

多孔質炭素材料およびその製造方法ならびに電気二重層キャパシタ

【課題】多孔質炭素材料の細孔径分布を適切に制御することで、多孔質炭素材料におけるイオンの吸着量と細孔内の拡散性を両立させ、特に、低温条件で大容量かつ低抵抗となる電気二重層キャパシタを得る多孔質炭素材料およびその製造方法ならびに電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】全比表面積が1300〜2500m/gであり、MP法で測定した0.5nm以上、1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%以上、70%未満、MP法で測定した1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%超、70%以下、BJH法で測定した2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の5%超、20%以下であり、易黒鉛化性炭素材料の賦活物である多孔質炭素材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素材料およびその製造方法ならびにこの多孔質炭素材料を使用した電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタはエネルギー貯蔵デバイスのひとつであり、多孔質炭素材料を含む一対の分極性電極、セパレータ、電解質溶液などにより構成される。
【0003】
このような電気二重層キャパシタは、充放電の機構が電気化学反応を伴わず、分極性電極界面への電解質の正・負イオンの単純な吸脱着によるため、一般的なエネルギー貯蔵デバイスである二次電池には無い特長を有する。すなわち瞬時充放電特性に優れ、広い温度範囲で安定した充放電特性を示し、かつ繰り返しによる性能低下が少ないという特性を有している。
【0004】
上記電気二重層キャパシタの静電容量は分極性電極の表面積と比例的な関係にあるとされるため、従来は比表面積の大きな多孔質材料を分極性電極に使用し、静電容量の大きな電気二重層キャパシタを得ることが検討されてきた。このような多孔質材料としては、高い導電性を示し、電気化学的に比較的安定な炭素質であって、比表面積の大きな活性炭(多孔質炭素材料)が使用されている。前記分極性電極に使用される活性炭は、石炭、石炭コークス、ヤシ殻、木粉、樹脂などの炭素質原料に、水蒸気、空気、酸素、CO2、などの酸化性ガスまたは塩化亜鉛、水酸化カリウムなどの薬品により細孔を形成する賦活化(多孔質化)処理を施したものである。
【0005】
ところで近年開発される電子機器、電気自動車向けなどには電気抵抗(以下、単に「抵抗」とも称す)を下げることが求められており、これらの用途に使用されるエネルギーデバイスとしての電気二重層キャパシタに対する低抵抗化の要求が増している。
【0006】
低抵抗化のためには、高い導電性を示す易黒鉛化性炭素材料と称されるソフトカーボン系炭素材料を賦活化処理して得られる多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタの分極性電極に使用することが好ましい。
【0007】
そこで、大きな容量を維持しながら、さらに低抵抗を狙うためには、多孔質炭素材料の細孔分布を、電気二重層キャパシタの電解質イオンのイオン径に応じて、厳密に制御する必要がある。
【0008】
なお、多孔質炭素材料の全比表面積に対する細孔の比表面積の比率に関する記載としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに記載されている。また、メソフェーズ小球体の代表的な賦活条件としては、例えば、特許文献5に記載されている。
【特許文献1】特開平8−119614号公報
【特許文献2】特開2004−345921号公報
【特許文献3】特開平9−74053号公報
【特許文献4】特開平11−307406号公報
【特許文献5】特開2006−131465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1及び2には、全比表面積に対する、2nm以上の直径を有する細孔の比表面積比率が45%以上である多孔質体が開示されている。しかし、これらは、吸着のための表面以外の細孔が増加するので、これら表面以外の細孔が無駄な空隙となり、電気二重層キャパシタにした際の体積当りの比容量が低下する。
【0010】
また、上記特許文献3には、全比表面積に対する、2nm以上の直径を有する細孔の比表面積比率が10%以下である多孔質体が開示されている。しかし、この特許文献3には、0.5〜1nmおよび1〜2nmの細孔の比表面積比率に関しては考慮されていない。なお、これらの比率が適正でないと、電気二重層キャパシタにした際の低温での容量が低下してしまう。
【0011】
また、上記特許文献4には、全比表面積に対する、1〜3nmの直径を有する細孔の比表面積比率が5〜20%である多孔質体が開示されている。しかし、このような多孔質体は電解質イオンが高速で移動するのに適するサイズの細孔の数が少ないので、拡散抵抗が上昇して、その結果容量の低下も生じる。
【0012】
また、上記特許文献5には、メソフェーズ小球体を850℃でアルカリ賦活した後、平均粒径が20μm以下となるように粉砕する技術が開示されている。しかし、本発明者らの測定によれば、このような方法で製造した多孔質炭素材料の細孔の比表面積比率は次の通りであった。
・1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率(対全比表面積):70〜90%
・1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率(対全比表面積):5〜25%
・2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率(対全比表面積):0〜5%
そこで、本発明は、多孔質炭素材料の細孔径分布を適切に制御することで、多孔質炭素材料におけるイオンの吸着量と細孔内の拡散性を両立させ、特に、低温条件で大容量かつ低抵抗となる電気二重層キャパシタを得ることが可能な多孔質炭素材料およびその製造方法ならびにこの多孔質炭素材料を使用した電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決する手段について鋭意検討を行った。その結果、イオンの吸着量と細孔内の拡散性を両立させるためには、電気二重層キャパシタの電解質イオン直径(0.4〜0.9nm程度)に応じて、細孔径分布を調整することが重要であるという知見を得た。すなわち、できるだけ大きな容量のためにはイオン直径相当の細孔が多いことが望ましいが、イオンの移動を迅速にするためには、電解質イオンが細孔入り口に吸着した状態でも細孔内部にイオンが障害なく移動できる余裕が必要となる。これより、イオン直径相当の細孔と、イオン直径の約2〜3倍の径を持つ細孔をバランス良く分布させることが望ましいと考えた。また、フリーの電解質イオンを細孔入り口近傍に保持させるうえで、表面付近にはイオン直径の約3〜10倍の非常に大きい細孔もある程度存在することが有効であると考えた。
【0014】
さらに、上記の望ましい細孔分布を実現するための製造方法として、原料炭素の炭化度・結晶性を示す真密度で原料性状を規定することで、細孔径をバランス良く分布させるための細孔分布制御が可能であることを見出した。
【0015】
またさらに、表面付近にイオン直径の約3〜10倍の大きい細孔を形成するには、賦活処理時の昇温条件を制御したり、賦活後の多孔質炭素材料を微粉砕することにより達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
つまり、本発明は、以下のような特徴を有する。
[1]全比表面積が1300〜2500m/gであり、
MP法で測定した0.5nm以上、1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%以上、70%未満、
MP法で測定した1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%超、70%以下、
BJH法で測定した2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の5%超、20%以下であり、
易黒鉛化性炭素材料の賦活物であることを特徴とする多孔質炭素材料。
[2]真密度が1.55〜1.85g/cm かつ平均粒径が5〜100μmの易黒鉛性炭素材料を、250℃超、650℃で0.5〜5時間保持した後、さらに700〜900℃で0時間超、5時間以下保持する条件でアルカリ賦活処理を行った後、
該賦活処理物を粉砕して、粉砕後の賦活処理物の平均粒径を1〜10μmとすることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
[2]上記[1]に記載の多孔質炭素材料を分極性電極として用いることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多孔質炭素材料の細孔径分布を、電気二重層キャパシタ用電解液の電解質のイオン直径に対して、イオン直径相当の細孔、イオン直径の約2〜3倍径の細孔、およびイオン直径の約5〜10倍径の細孔を適度に分布させることにより、イオンの吸着量と細孔内の拡散性を両立させることができ、特に、低温条件で大容量かつ低抵抗となる電気二重層キャパシタを得ることが可能な多孔質炭素材料およびその製造方法ならびに電気二重層キャパシタが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
【0019】
本発明において、原材料である易黒鉛化性炭素とは黒鉛前駆体であり、熱処理により黒鉛状層構造を容易に形成するものである。
【0020】
その中で、メソカーボン小球体は結晶性が比較的発達した球状の炭素で、黒鉛層構造をとりやすいため、比較的低温の黒鉛化促進処理により、抵抗が小さいミクロ構造を形成することができて好ましい。また、これらは市販品として入手容易である点も好ましい。
【0021】
たとえばメソカーボン小球体は、石炭系タールもしくはピッチ、または、石油系重質油もしくはピッチなどのピッチ類を350℃程度以上に加熱すれば生成する。メソカーボン小球体は、上記メソカーボン小球体の生成したピッチ類を、例えばキノリンやタール油などの溶剤を用いて洗浄、抽出して得ることができる。
【0022】
本発明では、メソカーボン小球体に炭化処理を施して、炭化度・結晶性の調整を行うが、その指標である真密度は1.55〜1.85g/cmの範囲、好ましくは1.60〜1.80g/cmの範囲に調整する必要がある。この調整は、賦活前の炭化処理で行うが、炭化温度の目安としては500℃超、850℃以下、好ましくは600〜750℃の範囲から選択する。
【0023】
メソカーボン小球体のアルカリ賦活による多孔質化は、通常のアルカリ賦活処理と同様な方法で実施することができる。つまり、メソカーボン小球体を、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中、アルカリ金属化合物の存在下で加熱する。昇温途中では反応が進行する250〜650℃の間で然るべく保持時間を設定する必要がある。そのため、250℃から650℃まで昇温する過程において、0.5〜5時間の保持時間を取ることが有効となる。この途中の保持時間は、400〜500℃、および600〜650℃の両方、或いは何れかで、0.5〜5時間の保持時間を取ることが望ましい。
【0024】
さらに、700〜900℃で加熱する。加熱温度が700℃より低温でも賦活反応は進行するが、酸素含有の官能基が多く残存して性能が低下するうえ、抵抗値も高くなり本発明の目的である低抵抗化を達成しにくい。一方、900℃を超える高温での加熱は、アルカリ金属化合物による装置腐食の問題が発生するうえ、賦活でできた細孔が逆に収縮する方向となり好ましくない。加熱温度は好ましくは750〜850℃である。この加熱温度での保持時間は、0時間超、5時間以下が適当である。この場合、0時間超とは、加熱温度到達と同時に降温を開始することで実現し得る。一方、保持時間が5時間を超えると賦活でできた細孔が逆に収縮する方向となり好ましくない。
【0025】
上記アルカリ金属化合物の種類は特に限定されず、また1種のみを使用してもよく、複数を組み合わせてもよい。KOH、NaOH、CsOHなどが好ましく使用される。
【0026】
アルカリ金属化合物の使用量は所望する比表面積によっても異なるが、原料メソカーボン小球体に対する質量比で、通常、0.5〜4倍程度であればよい。
【0027】
アルカリ賦活処理の後は、塩酸溶液などで中和後、イオン交換水などで洗浄して多孔質炭素材料を得る。
【0028】
上記メソカーボン小球体の平均粒径は、賦活時には5〜100μmの比較的大きい粒径で処理を行ったうえで、賦活後に微粉砕を行うことにより、本発明で目的とする性能が得られる。最終的に得られるメソカーボン小球体の多孔質体の平均粒径は1〜10μmに調整する必要があるが、その方法としてはボールミル、遊星ボールミル、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル、アトマイザー、パルベライザー、ジョークラッシャーなど公知の方法を用いることができる。また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。この粉砕処理を行うことにより、本発明の目的のひとつである、電解質イオン直径の約3〜10倍の非常に大きい細孔を多孔質炭素材料の表面付近に形成することができる。
【0029】
このようにして製造された、本発明に係る易黒鉛化性炭素材料の賦活物である多孔質炭素材料は、その全比表面積が1300〜2500m/gである必要がある。多孔質炭素材料の比表面積を大きくする程、質量当りの比容量[F/g]は大きくなる傾向となるが、この場合材料が多孔質化して電極の密度が低くなる。そのため比表面積を大きくし過ぎると肝心のキャパシタ体積当りの比容量[F/cm]が小さくなる。そこで、全比表面積は1300〜2500m/gの範囲が選ばれるが、1500〜2200m/gが好ましく、1650〜2000m/gがより好ましい。
【0030】
また、本発明に係る多孔質炭素材料は、MP法で測定した0.5nm以上、1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%以上、70%未満、同じくMP法で測定した1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%超、70%以下、BJH法で測定した2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の5%超、20%以下である必要がある。これらの限定理由を以下に説明する。
【0031】
電気二重層キャパシタを形成する際の電解液の電解質イオン直径が約0.4〜0.9nmのため、直径が0.5nm以上、1.0nm未満の細孔はその吸着に重要である。また、電解質イオンの吸着量は容量に直結するので、長時間を掛けて充放電する場合は、この範囲の細孔のみ存在すれば十分と考えられる。
【0032】
しかしながら、例えば10分以下、時には1分以下の急速充放電を行う場合、電解質イオンが高速で移動できるように、もう少し大きい細孔が必要となる。電解質イオンが高速で移動できないと拡散抵抗が上昇して、その結果、容量の低下を生じさせる。電解質イオンを高速で移動させるための好適な細孔径は、直径が1.0nm以上、2.0nm未満である。1.0nm未満の細孔は、イオンが吸着すると孔径のほとんどが塞がれるので他のイオンの移動が困難となる。
【0033】
このような状況において、本発明者らによる検討の結果、キャパシタの使用温度(常温〜低温)、充放電速度(高速〜低速)の種々の条件での容量、抵抗の性能バランスから、0.5nm以上、1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%以上、70%未満、1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%超、70%以下であることが見出された。
【0034】
また、2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔は、上記の0.5nm以上、1.0nm未満および1.0nm以上、2.0nm未満の細孔近傍に電解液を保持しておくのに有効で、この効果によって充放電を開始した直後からより速やかに性能を発揮することができる。この領域の細孔は少量あればよく、2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が、全比表面積に対して5%以上、20%未満である。直径10.0nm超の細孔が多量にあると、やはり無駄な空隙により体積当りの比容量[F/cm]が低下する。
【0035】
本発明では上記のような多孔質炭素材料を使用した分極性電極、さらに該分極性電極を含む高性能電気二重層キャパシタも提供される。
【0036】
電気二重層キャパシタの分極性電極は、炭素材料として本発明の多孔質炭素材料を使用すること以外は、一般的な方法に準じて作製することができる。例えば、多孔質炭素材料に、必要に応じて結着剤、導電剤などを適宜添加し、ディスクまたはシート状に成形して多孔質炭素材料を含む活物質層を形成する。
【0037】
上記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどを使用することができる。結着剤は多孔質炭素材料に対して、通常、0.1〜20質量%程度添加して使用される。
【0038】
上記導電剤としては、通常、カーボンブラックなどを使用することができる。導電剤は多孔質炭素材料に対して、通常、1〜20質量%程度添加して使用される。
【0039】
上記電極は、導電性集電材層の片面または両面に、上記多孔質炭素材料を含む活物質層を有する構造である。導電性集電材層は、上記多孔質炭素材料、結着剤および導電剤の混合物から活物質層を形成する際に同時に圧接成形してもよく、また、予め、圧縮成形などの方法により成形された活物質層の片面にアルミニウム溶射など集電材を電気的に接続してもよい。さらに、活物質層とアルミニウムなどの金属箔や金属網などからなる集電材を導電性接着剤によって接着してもよい。
【0040】
ディスク状または厚いシート状の多孔質炭素材料を含む活物質層を形成する場合は、結着剤としてポリテトラフルオロエチレンなどが好ましく使用され、多孔質炭素材料、結着剤、必要により導電剤とを常温または加熱下で混練し、常温または加熱下で成形する方法が好ましい。
【0041】
厚さが200μm程度までの薄い活物質層を集電材上に形成させるにはスラリー化した活物質をドクターブレードなどにより塗工する方法が好ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデンを結着剤として使用する場合は、これをN−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤に溶解し、これに多孔質炭素材料、必要により導電剤を添加してスラリー状とし、集電材上に均一に塗工し乾燥することができる。また、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)を結着剤として使用する場合には、これを水に分散させ、これに多孔質炭素材料、必要に応じて導電剤および/またはカルボキシメチルセルローズ(CMC)を添加してスラリー状とし、集電材上に均一に塗工し乾燥することができる。
【0042】
また、乾燥後、次いで常温または加熱下プレスすることによって活物質層の密度を大きくすることも可能である。
【0043】
電気二重層キャパシタの単位セルは、一般に上記のようにして得られた分極性電極を一対で使用し、必要に応じて不織布、紙、その他の多孔質材料からなる透液性セパレータを介して対向させ、電解液中に浸漬することにより形成する。なお、一対の分極性電極は、互いに同じであっても異なっていてもよい。電気二重層キャパシタの使用に当たっては、上記単位セルを単独であるいは複数の単位セルを直列および/または並列に接続して使用する。
【0044】
電気二重層キャパシタの電解液は、非水溶媒系または水系のいずれも使用可能である。
【0045】
非水溶媒系電解液は電解質を有機溶媒に溶解したものであり、電解質としては、例えば、(CPBF、(CPBF、(CNBF、(CCHNBF、(CNBF、(CPPF、(CPCFSO、LiBF、LiClO、LiCFSOなどを使用することができる。
【0046】
上記有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどを使用することができる。また、これらの二種以上の混合物も使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
〈多孔質炭素材料の製造〉
平均粒径28.0μmのメソカーボン小球体を700℃で炭化して真密度を1.71g/cmとした賦活原料に、その3.0倍量(質量比)のKOHを加えて均一に混合し、窒素気流下、450℃(中間保持温度)で1時間保持後、800℃(最終温度)で1時間加熱保持(賦活化処理)した。
【0049】
賦活化処理後は、試料を中和するために塩酸で洗浄し、洗浄液が中性を示すまでイオン交換水で洗浄した後、乾燥し、多孔質炭素材料を得た。
【0050】
上記で得られた多孔質炭素材料を、遊星ボールミル(ボール径1mm)を用いて平均粒径3.8μmまで粉砕を行い、比表面積を測定した。また、この多孔質炭素材料を使用して分極性電極を作製し、該電極を備えた電気二重層キャパシタの静電特性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0051】
なお、上記平均粒径、真密度、比表面積および電気二重層キャパシタの静電特性の評価方法を以下に示す。
(1)平均粒径
メソカーボン小球体原料および多孔質炭素材料の平均粒径は、レーザー回折法を基本原理とするセイシン企業製粒度分布測定装置LMS−30を使用して測定した累積50%粒径である。メソカーボン小球体および多孔質炭素材料はカチオン性界面活性剤を用いてイオン交換水に分散させ、超音波処理により均一なスラリーとしたのち、上記流度分布測定装置に供した。
(2)真密度
原料の真密度は、Micrometrics社製のAccupyc 1330を用いて、Arガスによる気相法で測定した。
(3)比表面積(BET比表面積)
多孔質炭素材料の比表面積はMicrometrics社製ASAP2400を使用して、77KにおけるN吸脱着による吸着等温線をもとにBET法により算出した。また、同じく吸着等温線をもとに、直径2nm未満の細孔分布はMP法により、直径2nm以上の細孔分布はBJH法により算出した。
(4)電気二重層キャパシタの静電特性(静電容量)
静電容量は以下の手順により測定した。
【0052】
<分極性電極の作製>
多孔質炭素材料80mg、カーボンフブラック10mgおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5mgを乾式混合した後、アルミメッシュを集電体として直径13mmのディスク(円盤)状にプレス圧力148GPaにて加圧成形した。これを二枚作製し、減圧下(133.3Pa)、150℃で10時間乾燥した。このディスクの直径、厚さおよび重量より密度を算出し、これを電極密度(単位:g/cm)とした。
【0053】
<電気二重層キャパシタの作製>
露点−80℃以下に管理されているアルゴンが流通しているグローブボックス内において、上記で作製された一組の分極性電極板の間に多孔質ポリエチレン(孔径0.20μm)を挟み込み、宝泉社製の2極式セル(膨張率測定タイプ)に組み込み、電解液を満たしてセルを作製した。
【0054】
電解液にはプロピレンカーボネートに1Mの濃度でエチルメチルイミダゾール・テトラフルオロボレート((CNBF)を溶解したものを使用した。
【0055】
<充放電試験>
充放電試験は、25℃、または、−25℃の温度下で、北斗電工社製充放電試験装置(HJ1001SM8)を使用して、10mA/cmの電流密度で0〜2.5Vの充放電電圧で充放電を3サイクル実施した。
【0056】
静電容量は次のようにして算出した。
【0057】
上記の充放電試験による放電曲線(放電電圧−放電時間)を作図した。まず、3サイクル目の放電曲線から放電エネルギー(放電電圧×電流の時間積分としたときの合計放電エネルギー(W・s))を求め、この放電エネルギーの値から下記(1)式により静電容量を算出した。
静電容量(F)=2×放電エネルギー(W・s)/(放電開始電圧(V))・・・(1)
上記(1)式で求めた静電容量を、分極性電極を構成する多孔質炭素材料の質量(正極+負極、単位:g)で除し、単位重量当たりの静電容量(F/g)とした。
【0058】
単位重量当たりの静電容量に、分極性電極の電極密度(g/cm)を乗じた値を単位体積当たりの静電容量(F/cm)とした。
【0059】
また、抵抗率は次のようにして測定した。
【0060】
上記の放電曲線(電流10mA/cm(=100A/m))から、放電電圧がゼロになる時間(放電時間:T秒)を求め、T/10(秒)上の放電曲線に接線を引き、Y軸(放電電圧)切片の電圧V1(V)を求める。そして、下記(2)式から、充電電圧2.5V、電極の面積1.33(cm)、厚みを80(μm)を代入して、抵抗率を求めた。
抵抗率(Ω・m)=(2.5(V)−V1(V))/100(A/m)×1/(80×10−6)(m)
・・・(2)。
【0061】
[実施例2]
上記実施例1の炭化温度を650℃とした以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
上記実施例1の炭化温度を600℃とした以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
上記実施例1の炭化温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
上記実施例1の中間保持温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0065】
[比較例3]
上記実施例1の賦活後の粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例4]
上記実施例1の原料(メソカーボン小球体)粒径を4.2μmとし、賦活後の粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例5]
上記実施例1において、450℃で1時間保持を行わなかった、つまり中間保持温度を設けなかった以外は、実施例1と同様にサンプルを製作し、評価した。その評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
上記表1に示すように、本発明による方法では、特に、低温条件で大容量かつ低抵抗の電気二重層キャパシタを製造できることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全比表面積が1300〜2500m/gであり、
MP法で測定した0.5nm以上、1.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%以上、70%未満、
MP法で測定した1.0nm以上、2.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の25%超、70%以下、
BJH法で測定した2.0nm以上、10.0nm未満の直径を有する細孔の比表面積比率が全比表面積の5%超、20%以下であり、
易黒鉛化性炭素材料の賦活物であることを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項2】
真密度が1.55〜1.85g/cm かつ平均粒径が5〜100μmの易黒鉛性炭素材料を、250℃超、650℃で0.5〜5時間保持した後、さらに700〜900℃で0時間超、5時間以下保持する条件でアルカリ賦活処理を行った後、
該賦活処理物を粉砕して、粉砕後の賦活処理物の平均粒径を1〜10μmとすることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多孔質炭素材料を分極性電極として用いることを特徴とする電気二重層キャパシタ。

【公開番号】特開2008−169071(P2008−169071A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3474(P2007−3474)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【Fターム(参考)】