説明

多孔質焼結体育苗床及びその製造方法並びに栽培セット

【課題】多孔質焼結体育苗床及びその製造方法、並びに多孔質焼結体育苗床を用いた栽培セットにおいて、多孔質焼結体育苗床が、軽量で優れた機械的強度を有し保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、繰り返し使用が可能であること。
【解決手段】多孔質焼結体育苗床1は、鉱物質粒子4としての平均粒子径が150μmのゼオライト粒子300重量部、300重量部の700℃の軟化点を有する平均粒子径が50μmのガラス粒子5を300重量部、平均粒子径が150μmの木粉3を100重量部、ポリオール樹脂6を5重量部添加して、精密分散混合機で均一に混合し(S13)、5重量部のイソシアネート樹脂8を添加して均一に混合し(S14)、常温でプレス成形して(S15)、700℃〜900℃で焼成して(S16)製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性・保水性を有するブロック状の多孔質セラミックス成形体等の多孔質焼結体を応用した育苗床及びその製造方法、並びに多孔質焼結体育苗床を応用した栽培セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培用の基材や園芸用栽培床として、土壌・培土以外の材質を主体としたものが開発されている。このような栽培床としては、例えば、特許文献1乃至特許文献3に記載の発明に係るものがある。特許文献1に記載の水耕栽培用培地においては、顆粒または繊維状培地材を、繊維編織物製水透過性容器中に充填封止し、この容器に1個以上の植物栽培用開口部を設けることによって、水耕栽培を容易に効率良く実施可能であり、機械的強度が高く、所望の形状に形成が容易であり、かつ使用後に焼却または生分解により環境問題を生ずることなく容易に処分可能な水耕栽培用培地が得られるとしている。
【0003】
また、特許文献2に記載の園芸用栽培床においては、発泡合成樹脂粒子を接合剤で結合して、粒子間に間隙を有する板状体を形成するとともに該板状体の上面に複数の凹部を形成し、かつ、水を貯留可能な容器内に保水材を充填して、該容器を前記凹部に装填し、その上部に培土を載置してなることを特徴としている。これによって、生産性・断熱性に優れ、水はけと保水性が良く、軽量で運搬・施工の容易な園芸用栽培床が得られるとしている。
【0004】
更に、特許文献3に記載の植物栽培用培地及びその製造方法においては、ロックウールを主素材とする培地において、前記ロックウールに低親水性化された粒状ロックウールを用いて培地を構成することによって、粒状ロックウールに過剰な水分が染み込むことは回避され、培地に含まれる水分の殆どは、粒状ロックウール同士間に形成された間隙及びその間隙にある副素材に保持され、その他の余分な水分は重力水として培地外に排出される結果、培地中に過剰な水分が停滞することはなく、軽量で、かつ簡易的な水分管理をすることができる植物栽培用培地が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−225597号公報
【特許文献2】特開2002−360068号公報
【特許文献3】特開2003−284430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら特許文献1乃至特許文献3に記載の技術においては、いずれも機械的強度が小さく、取扱いに注意を要し、また再使用が困難であるため、一度使用した後には産業廃棄物として処理しなければならず、コスト的にも不利になるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであって、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床及びその製造方法、並びに多孔質焼結体育苗床を用いた栽培セットの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る多孔質焼結体育苗床は、平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子と、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子と、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉とを均一に混合した後に、これらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合し、常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、700℃〜900℃の範囲内で焼結してなるものである。
【0009】
ここで、「鉱物質粒子」としては、シリカ(SiO2 )、アルミナ(Al23 )、チタニア(TiO2 )、ジルコニア(ZiO2 )、窒化ケイ素(Si34 )、炭化ケイ素(SiC)等の粒子、陶器粉末、磁器粉末等のセラミックス粒子や、天然ゼオライト粒子、珪藻土粉末、岩石粉末等の天然無機物粒子を用いることができる。特に、陶磁器粉末、ゼオライト粒子等が、低コストであることから、より好ましい。また、「800℃未満の軟化点を有するガラス」としては、ケイ酸塩ガラス、低融点ガラス、等を用いることができる。
【0010】
更に、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値である。また、「平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉」を得る方法としては、例えば、大鋸屑(おがくず)や間伐材のチップ等の木屑を水分20重量%以下に乾燥した後に、粉砕機で微粉砕する方法等がある。木屑を水分20重量%以下に乾燥することによって、これらを微粉砕する際に、水分が大量に放出されてスラリー状態となって微粉砕を妨げる事態が防止される。
【0011】
更に、「合成樹脂バインダー」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができ、更にこれらの樹脂を二種類以上混合して用いることができる。
【0012】
請求項2に係る多孔質焼結体育苗床は、請求項1の構成において、前記鉱物質粒子300重量部に対して、前記ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、前記木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、前記合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合するものである。
【0013】
請求項3に係る多孔質焼結体育苗床は、請求項1または請求項2の構成において、前記合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であるものである。
【0014】
請求項4に係る多孔質焼結体育苗床は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記鉱物質粒子と前記ガラス粒子と前記木粉とを均一に混合する手段、及びこれらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合する手段として、精密分散混合機を用いるものである。ここで、「精密分散混合機」としては、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いることができる。このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
【0015】
請求項5に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子と、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子と、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉とを均一に混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、前記焼結原料混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合してバインダー混合物とするバインダー混合工程と、前記バインダー混合物をプレス金型に充填して常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、前記プレス成形体を700℃〜900℃の範囲内で焼成する焼成工程とを具備するものである。
【0016】
請求項6に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、請求項5の構成において、前記鉱物質粒子300重量部に対して、前記ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、前記木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、前記合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合するものである。
【0017】
請求項7に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、請求項5または請求項6の構成において、前記合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であるものである。
【0018】
請求項8に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、請求項5乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記焼結原料混合工程及び前記バインダー混合工程においては、精密分散混合機を用いて混合するものである。ここで、「精密分散混合機」としては、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いることができる。このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
【0019】
請求項9に係る栽培セットは、請求項1乃至請求項4に係る多孔質焼結体育苗床、または請求項5乃至請求項8に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造された多孔質焼結体育苗床を用いた栽培セットであって、前記多孔質焼結体育苗床を底面から浮かせて載置する支持トレイと、該支持トレイの上に被せられる遮光性の筒状カバーと、該筒状カバーの上に被せられる複数の通気孔を有する蓋材とを具備し、前記支持トレイ及び前記筒状カバーは不透明であり、前記蓋材は半透明であるものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る多孔質焼結体育苗床は、平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子と、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子と、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉とを均一に混合した後に、これらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合し、常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、700℃〜900℃の範囲内で焼結してなる。
【0021】
このように、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉を用いることによって、木粉がウィスカー状になって、合成樹脂バインダーと均一に混合することと相俟って、鉱物質粒子及びガラス粒子の充填性が大幅に向上する。これを常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形することによって、強固で緻密な生成形体が得られる。そして、焼成段階においては、400℃前後に加熱した時点で木粉及び合成樹脂バインダーが焼失して、成形体全体が均一な多孔質になり、その後はガラス粒子の軟化点においてガラス粒子が溶融軟化して、鉱物質粒子同士を密着させる。
【0022】
こうして製造した焼結体は、微細な貫通孔が連通した多孔質となり、通気性を有し、水を注ぐと吸水して焼結体全体に保水し、更に水を注ぐと保水量を超えた水分は、焼結体から排除されて滴り落ちる。更に、表面は、鉱物質粒子の粒子形状によってざらざらした状態となるため、植物の根が絡み易く、大きな空隙には根を張ることもできることから、植物の生長を妨げることもない。また、プレス成形する際に、片面に1mm〜5mmの凹凸が形成される金型を用いることによって、より植物の根が絡み易く、根を張ることもできる表面を形成することができる。
【0023】
更に、多孔質であるため軽量であり、しかも溶融したガラスがバインダーとして機能するため機械的強度にも優れており、取扱いが極めて容易である。そして、鉱物質とガラスのみからなるため、加熱にも強く、使用後は熱水消毒や煮沸消毒、更には火炎消毒を行うことによって、何度でも繰り返し使用することができる。
【0024】
このようにして、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床となる。
【0025】
請求項2に係る多孔質焼結体育苗床は、鉱物質粒子300重量部に対して、ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合するものであるから、請求項1に係る発明の効果に加えて、生成形体を焼成して得られる焼結体の貫通孔の大きさ及び分布がより適切になって、より強度的に優れた焼結体を得ることができる。
【0026】
請求項3に係る多孔質焼結体育苗床においては、合成樹脂バインダーがイソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることから、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、イソシアネート樹脂が木粉との間に強固なウレタン結合を形成することによって、プレス成形することで、より確実に強固で緻密な生成形体が得られる。そして、この緻密な生成形体を焼成することによって、木粉と合成樹脂バインダーが焼失して、均一な多孔質焼結体を得ることができる。
【0027】
請求項4に係る多孔質焼結体育苗床においては、鉱物質粒子とガラス粒子と木粉とを均一に混合する手段、及びこれらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合する手段として精密分散混合機を用いることから、請求項1乃至請求項3に係る発明の効果に加えて、これらの原料がより確実に均一に混合される結果、緻密で高強度の焼結体をより確実に得ることができる。
【0028】
請求項5に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、まず焼結原料混合工程において、鉱物質粒子とガラス粒子と木粉とが均一に混合されて焼結原料混合物となり、次にバインダー混合工程において、焼結原料混合物が合成樹脂バインダーと均一に混合されてバインダー混合物となる。このバインダー混合物が、プレス成形工程において、プレス金型に充填されて、常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力でプレス成形され、これによって強固で緻密な生成形体が得られる。そして、焼成工程において、この緻密な生成形体を焼成することによって、木粉と合成樹脂バインダーが焼失して、均一な多孔質焼結体を得ることができる。
【0029】
こうして製造した焼結体は、微細な貫通孔が連通した多孔質となり、通気性を有し、水を注ぐと吸水して焼結体全体に保水し、更に水を注ぐと保水量を超えた水分は、焼結体から排除されて滴り落ちる。更に、表面は、鉱物質粒子の粒子形状によってざらざらした状態となるため、植物の根が絡み易く、大きな空隙には根を張ることもできることから、植物の生長を妨げることもない。また、プレス成形工程において、片面に1mm〜5mmの凹凸や1mm〜5mmの深さの溝が形成されるプレス金型を用いることによって、より植物の根が絡み易く、根を張ることもできる表面を形成することができる。
【0030】
更に、多孔質であるため軽量であり、しかも溶融したガラスがバインダーとして機能するため機械的強度にも優れており、取扱いが極めて容易である。そして、鉱物質とガラスのみからなるため、加熱にも強く、使用後は熱水消毒や煮沸消毒、更には火炎消毒を行うことによって、何度でも繰り返し使用することができる。
【0031】
このようにして、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床の製造方法となる。
【0032】
請求項6に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、鉱物質粒子300重量部に対して、ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合するものであるから、請求項5に係る発明の効果に加えて、生成形体を焼成して得られる焼結体の貫通孔の大きさ及び分布がより適切になって、より強度的に優れた焼結体を得ることができる。
【0033】
請求項7に係る多孔質焼結体育苗床においては、合成樹脂バインダーがイソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることから、請求項5または請求項6に係る発明の効果に加えて、イソシアネート樹脂が木粉との間に強固なウレタン結合を形成することによって、プレス成形することで、より確実に強固で緻密な生成形体が得られる。そして、この緻密な生成形体を焼成することによって、木粉と合成樹脂バインダーが焼失して、均一な多孔質焼結体を得ることができる。
【0034】
請求項8に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法においては、焼結原料混合工程及びバインダー混合工程において精密分散混合機を用いて混合することから、請求項5乃至請求項7に係る発明の効果に加えて、これらの原料がより確実に均一に混合される結果、緻密で高強度の焼結体をより確実に得ることができる。
【0035】
請求項9に係る栽培セットは、請求項1乃至請求項4に係る多孔質焼結体育苗床、または請求項5乃至請求項8に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造された多孔質焼結体育苗床を用いた栽培セットであって、多孔質焼結体育苗床を底面から浮かせた状態で支持する支持トレイと、支持トレイの上に被せられる遮光性の筒状カバーと、筒状カバーの上に被せられる複数の通気孔を有する蓋材とを具備し、支持トレイ及び筒状カバーは不透明であり、蓋材は半透明である。
【0036】
栽培セットの使用方法としては、まず、支持トレイに液肥入りの水を入れ、多孔質焼結体育苗床を支持トレイに載置する。このとき、多孔質焼結体育苗床の厚さの半分程度まで浸かるように、液肥入りの水の量を調節する。続いて、多孔質焼結体育苗床の上に育苗する植物の種子を蒔き、その上から水で濡らした紙を掛け、筒状カバーを被せて蓋材で蓋をする。こうして組み立てた栽培セットを種子の発芽温度以上の環境に置くことによって、1日〜2日で発芽して成長する。必要な場合には、必要な高さに成長したら蓋材と筒状カバーを取り除いて、光を当てて緑化させる。
【0037】
上述したように、本発明に係る多孔質焼結体育苗床は、微細な貫通孔が連通した多孔質となり、通気性を有し、水を注ぐと吸水して焼結体全体に保水し、更に水を注ぐと保水量を超えた水分は、焼結体から排除されて滴り落ちる。このような水分調節機能を有しているため、一度上記のようにセットすれば、1週間から2週間は水を追加する必要がなく、全くの素人でも家庭内で容易に植物を栽培することができる。特に、不透明の筒状カバーと支持トレイ及び半透明の蓋材で遮光して生育させられることから、カイワレ大根や蕎麦等の芽もの野菜の栽培に適している。
【0038】
このようにして、多孔質焼結体育苗床の水分調節機能を応用することによって、水やりの手間が省け、全くの素人でも家庭内で容易に植物を栽培することができる栽培セットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図(写真)である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床を応用した栽培セットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施例1に係る栽培セットの構成を示す縦断面図、(b)は部分拡大断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に係る栽培セットで栽培した植物を多孔質焼結体育苗床とともに示す斜視図(写真)である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図(写真)である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係る栽培セットで栽培した植物を多孔質焼結体育苗床とともに示す斜視図(写真)である。
【図8】図8(a)は本発明の実施例3に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施するに際しては、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉が必要となる。ここで、木粉の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックによって測定した値である。平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉を経済的に得る方法としては、間伐材、小径木、樹皮、製材端材、大鋸屑(おがくず)等の木屑を、水分20重量%以下に乾燥した後に、微粉砕することが好ましい。木屑を水分20重量%以下に乾燥することによって、粉砕物がスラリー化して微粉砕を妨げることを防止できる。
【0041】
乾燥した木屑を微粉砕して、平均粒子径50μm〜400μmの範囲内の木粉とするためには、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましい。このような微粉砕機としては、例えば河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。また、かかる木粉に対して、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子及び平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子を均一に混合するためには、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましい。このような高速攪拌分散機としては、例えばホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
【0042】
このようにして混合された木粉・ガラス粒子・鉱物質粒子の混合物に対して、合成樹脂バインダーを均一に混合するためには、やはり同様に周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましい。合成樹脂バインダーとしては、特にポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂が好ましく、木粉・ガラス粒子・鉱物質粒子の混合物が一定以上の水分を有している場合には、イソシアネート樹脂のみを用いても十分な結合力を得ることができる。
【0043】
合成樹脂バインダーとして、ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂を用いる場合には、両者を混合すると温度によっては直ちに反応が起こってウレタン結合が生じ始めるが、ポリオール樹脂のみを木粉・ガラス粒子・鉱物質粒子の混合物に混合しても反応は起こらないため、焼結原料混合工程において、鉱物質粒子とガラス粒子と木粉に加えてポリオール樹脂をも混合しておくこともできる。そして、プレス工程を実施する直前に、バインダー混合工程としてイソシアネート樹脂を加えて混合すれば良い。
【0044】
ポリオール樹脂として具体的には、ポリオキシエチレングリセルエーテル、ポリオキシプロピレングリセルエーテル、ポリオキシブチレングリセルエーテル等を用いることができる。更に、イソシアネート樹脂として具体的には、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネート等を用いることができる。
【0045】
本発明に係る栽培セットを実施するに際して、支持トレイと筒状カバーと蓋材とは、合成樹脂(プラスチック)を射出成形して製造したものを用いるのが、コスト面と軽量性から、より好ましい。ここで、合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を具体化した実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床及びその製造方法について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法を示すフローチャートである。図2は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図(写真)である。図3は本発明の実施例1に係る多孔質焼結体育苗床を応用した栽培セットの構成を示す斜視図である。図4(a)は本発明の実施例1に係る栽培セットの構成を示す縦断面図、(b)は部分拡大断面図である。図5は本発明の実施例1に係る栽培セットで栽培した植物を多孔質焼結体育苗床とともに示す斜視図(写真)である。
【0048】
最初に、本実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法について、図1のフローチャートを参照して説明する。図1に示されるように、まず、スギ等の樹木の間伐材・小径木・製材端材・樹皮・大鋸屑等の木屑2を、破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕した(ステップS10)。続いて、この粗粉砕木粉を、熱風乾燥機によって水分20重量%以下に熱風乾燥し(ステップS11)、微粉砕機で微粉砕して(ステップS12)、木粉3とした。
【0049】
ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。得られた木粉3の平均粒子径を、日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ、平均粒子径は150μmであった。
【0050】
次に、鉱物質粒子4としての平均粒子径が0.15mmのゼオライト粒子の300重量部に対して、300重量部の700℃の軟化点を有する平均粒子径が50μmのガラス粒子5と、100重量部の木粉3と、5重量部のポリオール樹脂6を添加して、精密分散混合機(ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)TCX−14)で均一に混合する焼結原料混合工程を実施した(ステップS13)。
【0051】
ここで、ゼオライト粒子4としては、サンゼオライトを使用した。また、700℃の軟化点を有するガラス粒子5としては、硝子カレットを粉末にしたものを使用した。ポリオール樹脂6としては、ポリオキシプロピレングリセルエーテルである三洋化成工業(株)製の「サンニックス(登録商標)GP−400」を使用した。こうして製造した焼結原料混合物7は、室温で長期間の保存に耐えるため、プレス成形するたびに必要な量だけを使用して次のバインダー混合工程を実施することによって、効率的かつ経済的な多孔質焼結体育苗床1の製造が可能となる。
【0052】
続いて、バインダー混合工程を実施する(ステップS14)。すなわち、焼結原料混合物7中の木粉3の100重量部に対して5重量部のイソシアネート樹脂8を添加して、混合機(TCX−8)(「TCX−14」と同一形式で、容量の小さいもの)で均一に混合して、バインダー混合物9を製造した。ここで、イソシアネート樹脂8としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートであるBASE INOAC ポリウレタン(株)製の「ルプラネート(登録商標)M−20S」を使用した。
【0053】
このバインダー混合物9は、プレス成形工程において、プレス成形機の金型の中に充填されて、常温で200kg/cm2 の圧力を掛けてプレス成形されて、生成形体10となる(ステップS15)。本実施例1においては、生成形体10として、図2に示されるような多孔質焼結体育苗床1となる板状成形体を成形したが、常温プレスであり外部からの均一な加熱が不要であるため、厚物成形体としては、50mmt までの厚さの生成形体を成形することが可能である。
【0054】
また、上下の金型のキャビティ表面に微細孔を設けて、フィルターを介して真空ポンプで吸引できる装置を設けることによって、金型にバインダー混合物を充填する際や、プレス成形する際に、金型内の余分な空気や発生するガスを除去できるため、より安定した密度と強度を有する生成形体を成形することができるので、より好ましい。
【0055】
こうして得られた生成形体10を金型から離型した後、焼成工程において、焼成温度800℃で焼成する(ステップS16)。より詳しくは、まず焼成炉に入れてから常温〜400℃まで30℃/時間で昇温して400℃で3時間保持し、400℃〜600℃まで50℃/時間で昇温して600℃で3時間保持し、600℃〜800℃まで50℃/時間で昇温して800℃で3時間保持し、後は5時間程度で100℃まで徐冷して取り出す。これによって、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床1を得ることができる。
【0056】
こうして製造された本実施例1に係る多孔質焼結体育苗床1の写真を、図2に示す。図2に示されるように、本実施例1に係る多孔質焼結体育苗床1の製造方法においては、鉱物質粒子4として平均粒子径が0.15mmのゼオライト粒子を用いているため、焼結体の表面の凹凸が小さく、比較的平滑になることから、深さ3mmの溝を複数本平行に形成している。したがって、図1のステップS15においては、かかる深さ3mmの溝を複数本平行に成形できるキャビティ形状を有するプレス金型を使用している。
【0057】
次に、こうして製造された本実施例1に係る多孔質焼結体育苗床1を応用した栽培セットについて、図3乃至図5を参照して説明する。図3に示されるように、本実施例1に係る栽培セット11においては、多孔質焼結体育苗床1を底面から浮かせた状態で支持する支持トレイ12と、支持トレイ12の上に被せられる遮光性の筒状カバー13と、筒状カバー13の上に被せられる複数の通気孔を有する蓋材14とを具備し、支持トレイ12及び筒状カバー13は不透明であり、蓋材14は半透明である。支持トレイ12及び筒状カバー13はポリ塩化ビニル樹脂からなり、蓋材14は半透明のアクリル樹脂からなる。
【0058】
栽培セット11の使用方法としては、まず、支持トレイ12に液肥入りの水を入れ、多孔質焼結体育苗床1を支持トレイ12に載置する。このとき、多孔質焼結体育苗床1の厚さの半分程度まで浸かるように、液肥入りの水の量を調節する。続いて、多孔質焼結体育苗床1の上にカイワレ大根の種子を蒔き、その上から水で濡らした新聞紙を一枚掛け、筒状カバー13を被せて蓋材14で蓋をする。図4(a),(b)に、こうして組み立てた栽培セット11の縦断面を示す。この栽培セット11をカイワレ大根の種子の発芽温度以上の環境に置くことによって、1日〜2日で発芽して成長する。
【0059】
上述したように、多孔質焼結体育苗床1は、微細な貫通孔が連通した多孔質となり、通気性を有し、水を注ぐと吸水して焼結体全体に保水し、更に水を注ぐと保水量を超えた水分は、焼結体から排除されて滴り落ちる。このような水分調節機能を有しているため、一度上記のようにセットすれば、1週間から2週間は水を追加する必要がなく、全くの素人でも家庭内で容易にカイワレ大根を栽培することができる。
【0060】
本実施例1に係る栽培セット11を用いて栽培したカイワレ大根の写真を、図5に示す。図5に示されるように、多孔質焼結体育苗床1の表面にぎっしりとカイワレ大根が生育している。本実施例1においては、発芽して5日後(茎丈6cm)に筒状カバー13と蓋材14を取り除いて光を当てているが、より長い茎丈に生育させたい場合には、10cm程度に育つまで遮光を続ければ良い。カイワレ大根を収穫した後は、多孔質焼結体育苗床1を沸騰水中に入れて煮沸洗浄消毒すれば、再び栽培セット11を組み立ててカイワレ大根を始めとする植物を栽培することができる。
【0061】
このようにして、本実施例1に係る多孔質焼結体育苗床1及びその製造方法においては、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床及びその製造方法となる。
【0062】
また、本実施例1に係る栽培セット11においては、多孔質焼結体育苗床1の水分調節機能を応用することによって、水やりの手間が省け、全くの素人でも家庭内で容易に植物を栽培することができる。
【0063】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る多孔質焼結体育苗床及びその製造方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6は本発明の実施例2に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図(写真)である。図7は本発明の実施例2に係る栽培セットで栽培した植物を多孔質焼結体育苗床とともに示す斜視図(写真)である。
【0064】
まず、本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法について、図1を参考にしつつ説明する。本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法は、図1に示される実施例1に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、鉱物質粒子4としてゼオライト粒子の代わりに、陶磁器粉砕粒子を用いる点である。この陶磁器粉砕粒子は、茶碗・皿等の陶磁器の破片を細かく粉砕したものであって、平均粒子径を日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ、平均粒子径は0.8mmであった。但し、粗い粒子として、粒子径が2mm〜3mmの粒子も混在していた。
【0065】
かかる鉱物質粒子4としての陶磁器粉砕粒子を300重量部に対して、木粉3を100重量部、700℃の軟化点を有する平均粒子径が50μmのガラス粒子5を300重量部、ポリオール樹脂6を7重量部添加して、混合機(TCX−14)で均一に混合して焼結原料混合物7を製造した。ここで、ポリオール樹脂6としては、ポリオキシプロピレングリセルエーテルである三洋化成工業(株)製の「サンニックス(登録商標)GP−400」を使用した。
【0066】
続いて、バインダー混合工程を実施する(ステップS14)。すなわち、焼結原料混合物7中の木粉100重量部に対して7重量部のイソシアネート樹脂8を添加して、混合機(TCX−8)で均一に混合して、バインダー混合物9を製造した。ここで、イソシアネート樹脂8としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートであるBASE INOAC ポリウレタン(株)製の「ルプラネート(登録商標)M−20S」を使用した。
【0067】
次に、プレス成形工程が実施される。すなわち、上記バインダー混合物9をプレス成形機の金型の中に充填して、常温で250kg/cm2 の圧力を1分間掛けてプレス成形して、生成形体10を製造した(ステップS15)。こうして得られた生成形体10を金型から離型した後、焼成工程において、上記実施例1と同一の昇温・降温プログラムにしたがって焼成して、本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床16を得た(ステップS16)。
【0068】
このようにして製造された本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床16は、図6に示されるように、全体に亘って粗い陶磁器粉砕粒子4が分布して、表面に凹凸が多い焼結体となっている。したがって、上記実施例1に係る多孔質焼結体育苗床1のような溝1aを形成しなくても、全面に種子を蒔くことができ、根が絡み易い多孔質焼結体育苗床となる。
【0069】
このような本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床16を、多孔質焼結体育苗床1の代わりに用いて、上記実施例1と同様にして図3及び図4に示されるような栽培セット11を構成して、カイワレ大根の代わりにサニーレタスを栽培した。その結果、図7に示されるように、本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床15の表面全体に、サニーレタスP2を生育させることができた。
【0070】
このようにして、本実施例2に係る多孔質焼結体育苗床16及びその製造方法においては、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床及びその製造方法となる。
【0071】
また、本実施例2に係る栽培セットにおいては、多孔質焼結体育苗床16の水分調節機能を応用することによって、水やりの手間が省け、全くの素人でも家庭内で容易に植物を栽培することができる。
【0072】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係る多孔質焼結体育苗床及びその製造方法について、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施例3に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造した多孔質焼結体育苗床の斜視図、(b)は多孔質焼結体育苗床を支持用トレイに載置した状態を示す部分断面図である。
【0073】
図8(a)に示されるように、本実施例3に係る多孔質焼結体育苗床20は、上記実施例2に係る多孔質焼結体育苗床16と同様の製造方法で製造されたものである。但し、図8(a)に示されるように、多孔質焼結体育苗床16とは大きさと厚さと形状が異なっており、したがってプレス成形工程に用いられるプレス成形金型のキャビティ形状が異なっている。具体的には、多孔質焼結体育苗床20の厚さt=20mmであり、多孔質焼結体育苗床16の表面には、栽培用孔21がピッチP=30mm、孔径15mm、深さ15mmで49個設けられている。そして、多孔質焼結体育苗床20の大きさは230mm×230mmである。
【0074】
図8(b)に示されるように、多孔質焼結体育苗床20に設けられた栽培用孔21は略円筒形状であり、その中に培土を入れて植物P3の種子を蒔いて支持トレイ22の上に置き、支持トレイ22の中に液肥入りの水23を適量満たすことによって、多孔質焼結体育苗床20の吸水性及び保水性が機能して、植物P3が発芽し、生育する。このように、本実施例3に係る多孔質焼結体育苗床20においては、略円筒形状の栽培用孔21を設けることによって、野菜や草花の発芽と育苗が可能となり、植物P3がある程度の大きさまで生育したら、本栽培用の床へ容易に移植することができる。
【0075】
このようにして、本実施例3に係る多孔質焼結体育苗床10及びその製造方法においては、軽量でありながら優れた機械的強度を有し取扱い易く、保水性に優れており毎日水やりをする必要がなく、植物の生長を促進することができ、しかも使用後は熱水で洗浄する等の処理をすることによって繰り返し使用が可能である多孔質焼結体育苗床及びその製造方法となる。
【0076】
多孔質焼結体育苗床及び栽培用セットのその他の部分の構造、形状、数量、材質、大きさ(幅・長さ・厚さ等)、製造方法等についても、多孔質焼結体育苗床の製造方法のその他の工程についても、上記各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0077】
1,16,20 多孔質焼結体育苗床
2 間伐材、小径木、製材端材、樹皮、大鋸屑
3 木粉
4 鉱物質粒子
5 ガラス粒子
6 ポリオール樹脂
7 焼結原料混合物
8 イソシアネート樹脂
9 バインダー混合物
10 生成形体
11 栽培セット
12 支持トレイ
13 筒状カバー
14 蓋材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子と、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子と、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉とを均一に混合した後に、これらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合し、常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、700℃〜900℃の範囲内で焼結してなることを特徴とする多孔質焼結体育苗床。
【請求項2】
前記鉱物質粒子300重量部に対して、前記ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、前記木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、前記合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合することを特徴とする請求項1に記載の多孔質焼結体育苗床。
【請求項3】
前記合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることを特徴とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多孔質焼結体育苗床。
【請求項4】
前記鉱物質粒子と前記ガラス粒子と前記木粉とを均一に混合する手段、及びこれらの混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合する手段として、精密分散混合機を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の多孔質焼結体育苗床。
【請求項5】
平均粒子径が0.1mm〜3mmの範囲内の鉱物質粒子と、800℃未満の軟化点を有する平均粒子径が10μm〜400μmの範囲内のガラス粒子と、平均粒子径が50μm〜400μmの範囲内の木粉とを均一に混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、
前記焼結原料混合物を合成樹脂バインダーと均一に混合してバインダー混合物とするバインダー混合工程と、
前記バインダー混合物をプレス金型に充填して常温で150kg/cm2 〜400kg/cm2 の範囲内の圧力を掛けてプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、
前記プレス成形体を700℃〜900℃の範囲内で焼結する焼結工程と、
を具備することを特徴とする多孔質焼結体育苗床の製造方法。
【請求項6】
前記鉱物質粒子300重量部に対して、前記ガラス粒子を200重量部〜400重量部の範囲内で、前記木粉を100重量部〜300重量部の範囲内で、前記合成樹脂バインダーを10重量部〜40重量部の範囲内で混合することを特徴とする請求項5に記載の多孔質焼結体育苗床の製造方法。
【請求項7】
前記合成樹脂バインダーは、イソシアネート樹脂、またはポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多孔質焼結体育苗床の製造方法。
【請求項8】
前記焼結原料混合工程及び前記バインダー混合工程においては、精密分散混合機を用いて混合することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載の多孔質焼結体育苗床の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項4に係る多孔質焼結体育苗床、または請求項5乃至請求項8に係る多孔質焼結体育苗床の製造方法によって製造された多孔質焼結体育苗床を用いた栽培セットであって、
前記多孔質焼結体育苗床を底面から浮かせて載置する支持トレイと、該支持トレイの上に被せられる遮光性の筒状カバーと、該筒状カバーの上に被せられる複数の通気孔を有する蓋材とを具備し、前記支持トレイ及び前記筒状カバーは不透明であり、前記蓋材は半透明であることを特徴とする栽培セット。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−109931(P2011−109931A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266655(P2009−266655)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(398012801)株式会社ネイブ (26)
【Fターム(参考)】