多層からなる医療器具
医療器具は、第1の材料、および第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料を含む少なくとも4つの層を含み、これらの層の少なくとも1層の厚さは器具の軸線方向に沿って可変である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば医療用チューブ、ガイドワイヤ、およびカテーテルなどの多層からなる医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、ガイドワイヤ、カテーテル、および医療用チューブなどの血管内医療器具によって、血管形成術または人工器官の搬送などの医療処置を行うことができる。場合によっては、器具を適切な部位で患者の血管系に挿入し、次いで押圧して血管系を経て標的部位に搬送する。器具が血管系を通って標的部位に至るまでに通る経路は比較的蛇行しており、器具の方向を頻繁に変える必要がある。
【0003】
状況によっては、器具は、蛇行経路に沿って進むことができるように比較的優れた追従性を有することが望ましい。同時に、器具は、その基端側で加えられた力を先端側へ伝達して器具を搬送することができるように、優れた押圧性を有することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、医療用チューブ、ガイドワイヤ、およびカテーテルなどの多層からなる医療用器具に関する。
一態様においては、本発明は、たとえば軸線方向の長さなど、器具の長さに沿って可変的剛性、すなわち異なる剛性を有する医療器具を特徴とする。たとえば医療器具は、第1の部分(たとえば、基端部)を備えることができ、この部分は、第2の部分(たとえば、第1の部分の先端側の部分)よりも比較的剛性が高い。それによって、いくつかの実施形態では、器具は、比較的可撓性の高い先端部において優れた追従性を有することができ、および/または、比較的剛性の高い基端部において優れた押圧性を有することができる。
【0006】
別の態様では、本発明は、第1の材料、および第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料を含む、少なくとも4層を含む医療器具を特徴とし、これらの層のうち少なくとも1層の厚さは器具に沿って軸線方向に可変である。
【0007】
実施形態は以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。器具は、先端部より基端部においてより高い剛性を有する。器具は、少なくとも5層を含んでおり、たとえば少なくとも7層、または少なくとも13層を含む。器具は、ほぼ全長にわたって同じ数の層を有する。
【0008】
複数の層からなる様々な実施形態が可能である。そのような層は器具のほぼ長さにわたって延びていてもよい。これらの層の少なくとも1層の厚さを、器具のほぼ全長にわたって可変とすることができる。また、少なくとも1層の厚さを、器具の選択された部分において可変とすることができる。さらに、少なくとも1層の厚さを、器具の複数の選択された部分において可変とすることができる。異なる材料からなる複数の層の厚さを、器具の選択された異なる部分において、および/または器具の選択された同一の部分において可変とすることができる。
【0009】
様々な材料の実施形態が可能である。第1および第2の材料を交互に配置することができる。第1および第2の材料は、アミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントなど共通のブロック部分を含む、ブロックコポリマーを含むことができる。第1および/または第2の材料は、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択することができる。第1および/または第2の材料はポリマーのブレンドであってもよい。
【0010】
器具は押出成形されたものであってもよい。器具は、管材、カテーテルシャフト、またはガイドワイヤの形態を取ってもよい。
別の態様では、本発明は、第1の材料から形成された第1の層、第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された第2の層、および第1の層と第2の層との間において接着材料からなる第3の層を備え、第1の層の厚さが器具の軸線方向に沿って可変である、医療器具を特徴とする。
【0011】
別の態様では、本発明は医療器具の製造方法を特徴とする。この方法は、第1の材料、および第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された少なくとも3層を含む管材を形成する工程と、少なくとも1層の厚さを器具に沿って軸線方向に変更する工程とを含む。方法は、層を共押出成形する工程を含むことができる。方法は、管材をガイドワイヤに形成する工程を含むこともできる。
【0012】
実施形態は以下の1つまたは複数の効果を有することが可能である。医療器具は、異なる剛性、材料、および/または硬度を有する複数の部分の間に、1つまたは複数の比較的緩やかな移行部分を有することができる。それにより、器具は、たとえば剛性、材料、および/または硬度などが急激に可変である器具に起こり得る、ねじれや座屈を受けにくくすることができる。たとえば剛性など、器具の物理特性はカスタマイズすることができる。医療器具は損傷に対する耐性をより高めることができる。
【0013】
本発明の他の態様、特徴、および効果は、好ましい実施形態の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および2を参照すると、その長さ(長手方向、すなわち軸方向の軸線A)に沿って可変的剛性、すなわち異なる剛性を有する管材10が示されている。管材10は、本実施の形態においては、符号14、16、18、20、22、24、26、28、30で示される9つの薄層をなす、複数の層から形成される一定の厚さを有する壁部12を備える。層14、18、22、26、30は、第1の材料から形成され、たとえば組成、強度、硬度、および/または剛性が異なるなど、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される層16、20、24、28と交互に配置される。図に示すように、層14、16、18、20、22、24、26、28、30は、管材10の軸線Aに沿って厚さが可変である。層16、20、24、28は、管材10の基端部32においては厚さT1を有し、管材の選択された移行部34においては先端方向へ向かって厚さが減少し、先端部36においてはT1よりも少ない厚さT2を有する。反対に、層14、18、22、26、30は、基端部32よりも先端部36において厚く、移行部34において厚さが可変である。管材10の1つまたは複数の層の厚さを調節することにより、軸線Aに沿った管材の剛性を制御することができる。
【0015】
たとえば、層14、18、22、26、および30をPEBAX(登録商標)7033(69ショアD、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在するアトフィナ社(Atofina)から販売されている)などの第1の材料から形成し、層16、20、24、28をPEBAX(登録商標)7233(72ショアD)など、(第1の材料と比べて)剛性の高い第2の材料から形成することができる。層16、20、24、28の厚さを先端方向へ向かって減少させることによって、先端部36における剛性の高い材料の量を基端側34における剛性の高い材料の量と比べて減少させることもできる。その結果、先端部36はより剛性の低い材料、すなわちより可撓性を有する材料となるので、先端部は基端部32に比べてより高い可撓性を有する。したがって、管材10をたとえばガイドワイヤやカテーテル(たとえば、バルーンカテーテルなど)に形成するときに、比較的高い剛性を有する基端部32により優れた押圧性が付与され、比較的高い可撓性を有する先端部36により蛇行経路内を進行するための優れた追従性が付与される。
【0016】
理論にとらわれることなく、複数の層をなすことによって、管材10は異なる材料からなる部分すなわち層間で比較的緩やかな移行部を備えることができ、たとえば剛性などの異なる物理特性を有することができると考えられる。急激な移行部では、管材が予期しないねじれや座屈を受けやすくなると考えられており、これは使用中に発生したりするので望ましくない。複数の層を使用することによって、材料は均一に配分されて、固容体中などでほぼ均一に混和、即ち混合され、管材10に不均衡をもたらすような材料の局部的な集中が低減される。
【0017】
管材10の一部の剛性は、とりわけ、層で使用される材料およびその量(たとえば濃度)、管材の径方向における材料の位置、および/または、材料の位置に関連するが、管材に含まれる層の数などの設計パラメータを調節することによって制御することができる。一般的には、より剛性の高い材料が、より剛性の高い管材や管状部を提供する傾向がある。ほぼ同様の管材では、高剛性を有する材料の量が多い、すなわち濃度がより高い管材が、高剛性の材料の量が少ない、すなわち濃度が低い管材よりも、より剛性が高くなる傾向がある。たとえば、PEBAX(登録商標)7033(69ショアD)に対するPEBAX(登録商標)7233(72ショアD)の比率が3:1である管材の第1の部分は、通常、PEBAX(登録商標)7233:PEBAX(登録商標)7033の比率が2:1である管材の第2の部分よりも、より高い剛性を有する。これは、第1の部分が第2の部分よりも、高剛性の材料PEBAX(登録商標)7233をより多く有するためである。
【0018】
また、管材の径方向における材料の位置も、管材や管状部の剛性に影響を与える。いくつかの実施形態では、高剛性の材料からなる1つまたは複数の層を軸線Aから径方向に遠く、すなわち離間して形成することによって、管材の剛性が増加する。たとえば、(軸線Aにより近接した)内層として可撓性材料、および外層として剛性材料を有する2層からなる管材は、外層が可撓性材料から形成され、内層が剛性材料により形成された2層の管材より、より剛性が高くなる傾向がある。層が軸線Aから離れるほど、管材の慣性モーメントにおいて層が受ける影響は大きくなると考えられる。たとえば、軸線Aから径方向に離間している高剛性の層は、その層が軸線Aに対して径方向に近接しているときよりも、管材の剛性を高めることができる。
【0019】
管材に含まれる層の数は材料の位置に関連する。たとえば、管材の壁厚が一定であると仮定して、内層に可撓性材料、および外層に剛性材料を有する2層からなる管材部分は、可撓性材料と剛性材料からなる層を交互に有し、最内層が可撓性材料で形成された4層の管材部分よりも、より剛性が高くなる傾向がある。2層部分ではすべての軟質材料が1つの層に存在し、軸線Aに近接している。それに比べて4層部分では、いくつかの剛性材料が軸線Aに対して径方向に近接して形成されている。上述のように、剛性材料を軸線Aから径方向に離間して形成することによって、管材の剛性は増加する。したがって、本実施の形態においては、層の数を増やし、より高い剛性の材料を軸線Aに対してより近接させて形成する(またはより可撓性の高い材料を軸線Aから離間して形成する)ことによって、管材の剛性が低下する。ここでは可撓性材料に対する剛性材料の比率は一定であると仮定するが、一般的には、管材の一部の剛性は複数(たとえばすべて)の設計パラメータによって決定される。材料の濃度、層の数、およびその径方向位置が管材の剛性に与える影響は、以下に述べる実施例1に示される。
【0020】
層の数は通常2つ以上である。たとえば、層の数は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、またはそれ以上とすることができる。特定の実施形態では、層の数は、100未満(たとえば、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、または10未満など)とすることができる。たとえば、層の数は、7、13、20、またはそれ以上とすることができる。
【0021】
1つまたは複数の層の厚さを、管材10の長さ方向において可変とすることができる。図2に示すように、層16、20、24、28などの層は、たとえば基端部32において第1の一定厚さを有することができ、たとえば先端部36において、第1の厚さよりも少ない、第1の厚さとは異なる第2の一定厚さを有することができる。図に示すように、基端部32と先端部36との間の移行部34において各層の厚さは可変である。同様に、層14、18、22、26、30は、通常、基端部34よりも先端部36でより厚く、移行部34において厚さが可変である。1つまたは複数の層は、異なる厚さを有する、2つよりも多い異なる部分を有することができる。
【0022】
他の実施形態では、管材は、たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上、11以上などの複数の移行部34を含む。図3を参照すると、管状壁40は2つの異なる材料から形成された層42、44、46、48、50、52、54の7層を含む。層44、48、52の厚さは、基端部32における第1の厚さT3から第1の移行部56を経て第2の厚さT4を有する中間部57へ移行し、第2の移行部58を経て先端部36における第3の厚さT5になる。図に示すように、厚さは、T4>T3>T5である。いくつかの実施形態では、層44、48、52が、層42、46、55、54の材料よりも、より高い剛性材料で形成されている場合、中間部57が最も剛性の高い部分であり、次いで中間部の基端側部分、次いで中間部の先端側部分となる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層42〜54は、異なる材料で形成することができる。移行部56、58は、後述のように軸線方向において異なる位置に配置することができる(図8)。層内では組成を変えることができ、たとえば層44は軟質材料から剛性材料に変更して、材料を軟質に変化させることができる。
【0023】
特定の実施形態では、層の厚さは管材の全長に沿って可変である。図4を参照すると、管壁60は2つの異なる材料から形成された層62、64、66、68、70の5層を含む。層64、68の厚さは、基端部32から先端部36に向かって減少する。層64、68が、層62、66、70の材料よりも、より高い剛性材料で形成されている場合、先端部36は基端部32よりも剛性が低くなる傾向がある。層64、68が、層62、66、70の材料よりも、より高い可撓性材料で形成されている場合、先端部36は基端部32より剛性が高くなる傾向がある。他の実施形態では、層の厚さは、管材10の全長よりも少ない部分、たとえば管材のどちらかの端部から測定して90パーセント、80パーセント、70パーセント、60パーセント、50パーセント、40パーセント、30パーセント、または20パーセント未満の部分に沿って可変である。
【0024】
層は管材の径方向において非対称に分布させることができる。たとえば、図5を参照すると、管状壁80は、2つの材料から形成された層82、84、86、88、90の5層を含む。層84、88は、管状壁80の内面より外面に対してより近接して配置されている。他の実施形態では、(たとえば図2に示すように)層は管材の径方向に沿って均一に配分することもできる。
【0025】
管材10は、3つ、4つ、5つ、10、またはそれ以上などの、2つ以上の異なる材料から形成することができる。図6は、3つの材料から形成された層94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114の11層を有する管状壁92を示す。層94、98、102、106、110、114は第1の材料から形成され、層96、104、112は第2の材料から形成され、層100、108は第3の材料から形成されている、図に示すように、すべての層は、図2に示す実施形態と同様に厚さが可変であり、たとえば、軸線方向においてほぼ同一の位置に移行部34を有する。他の実施形態では、管材は、異なる軸線方向位置において複数の移行部を備えることができる。図8を参照すると、管材140は、3つの材料から形成された層142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162の11層を含む。層148、156は、層144、152、160の移行部166よりも基端側にある、移行部164を有する。いくつかの実施形態では、層148、156は、層144、152、160と同一の材料から形成することができる。この構成により、移行状態を向上させて比較的滑らかな移行部分を提供することができる。
【0026】
これに代えて、またはこれに加えて、1つまたは複数の層は管状壁内で終端してもよい。図7を参照すると、3つの異なる材料から形成された管状壁116は、管状壁の長さに沿って終端する2つの層124、130を含む。これにより、管状壁16は、基端部32において層118、120、122、124、126、128、130、132、134から形成される11層を含み、先端部36において層118、120、122、126、128、132、134から形成される7層を含む。
【0027】
管材は2つ以上の材料で形成される上述の層のいずれの組合せを有することもできる。たとえば、管材は、均等に離間してまたは非対称に配置された(たとえば図5参照)、層16、層44、および/または層64の1つまたは複数の層を有することができる。層16、層44、および/または層64の1つまたは複数の層は、1つまたは複数の移行部を有することができる(たとえば図6および8参照)。層の数は、管材の軸線方向に沿って変更することができる。
【0028】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層は、その軸線方向の長さに沿って少なくとも約0.02マイクロメートル(たとえば、少なくとも約0.05マイクロメートル、少なくとも約0.1マイクロメートル、少なくとも約0.25マイクロメートル、少なくとも約0.5マイクロメートル、少なくとも約0.75マイクロメートル、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約1.5マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約2.5マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約3.5マイクロメートルなど)の最小厚を有することができ、および/または最大約20マイクロメートル(たとえば、最大約15マイクロメートル、最大約10マイクロメートル、最大約9マイクロメートル、最大約8マイクロメートル、最大約7マイクロメートル、最大約6マイクロメートル、最大約5マイクロメートル、最大約4マイクロメートル、最大約3マイクロメートル、最大約2マイクロメートル、最大約1マイクロメートル、最大約0.5マイクロメートル、最大約0.25マイクロメートルなど)の最大厚を有することができる。各層の厚さは、たとえば形成される器具の厚さ、層の数、層の材料、および/または層の構成によって決定される。
【0029】
管材の一部に沿って、可撓性を有する層および剛性を有する層の厚さは異なっていてもまたは同一であってもよい。いくつかの比較的剛性を有する部分では、可撓性を有する層が、管材の全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、剛性を有するポリマーが残りの部分を構成する。特定の比較的可撓性を有する部分では、剛性を有する層が管材の全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、可撓性を有するポリマーが残りの部分を構成する。それによって、可撓性を有する層および剛性を有する層の数が同等の器具では、可撓性を有するポリマー層を、剛性を有するポリマー層よりもより薄くまたはより厚くしてもよい。層の厚さは径方向に徐々に変化させてもよい。たとえば、層を最外層から最内層へより厚くしていく、またはその逆も可能である。他方のタイプの層を一定にしたまま、一方のタイプ(可撓性または剛性)の層の厚さを可変とすることもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、層は、硬度が約60ショアDを超える、好ましくは65ショアD以上の高剛性すなわち硬質のポリマー、および硬度が約60ショアD以下のより軟質のポリマーから形成することができる。いくつかの実施形態では、可撓性すなわち軟質のポリマーは、約60ショアDよりも高い硬度を有することができるが、硬質ポリマーよりも軟質である。隣接する接合層の硬度の差は、約40ショアD以下、好ましくは20ショアD以下とすることができ、それにより層間の適合性を向上させ、境界面での層間剥離を抑制し、および/または共押出成形を容易にすることが可能である。硬度はASTM D2240に従って測定することができる。層は硬質ポリマーと軟質ポリマーとの間で交互に配置することができる。層は徐々に硬度を増加することができる。たとえば、層を最外層から最内層へ徐々により硬度を高めていくことができる。たとえば、ステントの搬送に使用する支持体として、最外層を軟質層にしてステントによる応力や磨耗を吸収かつ分散することができる。
【0031】
層はほぼ単独(pure)のポリマーからなってもよく、または異なるポリマーのブレンドからなってもよい。軟質(または硬質)層のすべてを同一の軟質(または硬質)ポリマーから形成することも可能であり、または異なる軟質(または硬質)層を異なるポリマーから形成することも可能である。軟質および硬質ポリマーは、適合性を向上させながら障害の発生も阻止できる共通のブロック部分を含む、ブロックコポリマーから形成することもできる。たとえば、ブロック部分は、アミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントであってもよい。
【0032】
一例として、単独またはブレンドとして使用できるPEBAX(登録商標)のポリマー群がある(米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在するアトフィナ社(Atofina)から販売されている)。たとえば、PEBAX(登録商標)5533(55ショアD)をPEBAX(登録商標)2533(ショアD25)と約4対1の重量比で混合し、約50ショアDの軟質ポリマーを形成することができる。硬質ポリマーと軟質ポリマーの別の組合せには、CELANEX(登録商標)(80ショアDを越える硬度、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)製)などのポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびARNITEL(登録商標)(55ショアD、米国インディアナ州エリオンスピラに所在するディエスエム社(DSM)製)として販売されるポリエステル/エーテルブロックコポリマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、PBT、およびたとえばRITEFLEX(登録商標)(55ショアD、ティコナ社(Ticona)製)、およびHYTREL(登録商標)(55ショアD、米国デラウェア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)製)など1つまたは複数のPBT熱可塑性エラストマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーのさらに別の組合せには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびPBT熱可塑性エラストマー(たとえば、ARNITEL(登録商標)、HYTREL(登録商標)、またはRITEFLEX(登録商標))などの熱可塑性エラストマーがある。
【0033】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、1つまたは複数の硬質ポリマー層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、ナイロン、およびPEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)(イーエムエス社(EMS))、および/またはVESTAMID(登録商標)(クレアノヴァ社(Creanova))などの、PEBAX(登録商標)系の材料がある。ナイロンの例としては、Nylon 11(エルフ アトケム社(Elf Atochem))、Nylon 6(アライド シグナル社(Allied Signal))、Nylon 6/10(ビーエーエスエフ社(BASF))、Nylon 6/12(アシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers))、およびNylon 12などの脂肪族ナイロンがある。ナイロンの別の例には、GRIVORY(登録商標)(イーエムエス社(EMS))およびNylon MXD−6などの芳香族ナイロンがある。他のナイロンおよび/またはナイロンの組合せを使用することもできる。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層は液晶ポリマー(LCP)(たとえば、LCPを組み込んだ複合材料)を含むことができる。LCPの例には、VECTRA(登録商標)A(ティコナ社(Ticona))、VECTRA(登録商標)B(ティコナ社(Ticona))、およびVECTRA(登録商標)LKX(ティコナ社(Ticona))(たとえば、VECTRA(登録商標)LKX1111(ティコナ社(Ticona))などの、ポリエステル、ポリアミド、および/またはそれらのコポリマーがある。他のLCPおよび/またはLCPの組合せも使用することができる。
【0035】
LCPを、PEBAX(登録商標)系の材料、ナイロン、熱可塑性ポリエステル、および/またはそれらの熱可塑性エラストマーバージョンなどの、1つまたは複数のポリマーに組み込むことができる。特定の実施形態では、液晶ポリマーを1つまたは複数のポリマー層に組み込み、硬質材料からなる層(たとえば、約65ショアDを超える硬度といったように、約60ショアDを超える硬度を有する材料からなる層)を形成することができる。好ましい実施形態では、LCPは、PEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)、および/またはVESTAMID(登録商標)などの、1つまたは複数のPEBAX(登録商標)系の材料を含む層に組み込まれる。特定の実施形態では、LCPを含む組成物は、メルトフロー方向において比較的剛性を高くすることができる。理論にとらわれることなく、これは、ポリマー組成物が液体状態から固体状態に冷却されるときにLCP結晶(たとえばファイバー)をメルトフロー方向に形成すなわち整列させることから生じると考えられる。
【0036】
管材に含まれるLCPの量は、使用目的に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、複合材料中のLCPの割合が減少すると、たとえば管材におけるLCPを含む複合材料の1つまたは複数の層の個々の層厚および全体厚を増加することができる。
【0037】
管材のLCP含有量は、約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント(たとえば、約0.5重量パーセント〜約10重量パーセント、約1重量パーセント〜約5重量パーセント)など、少なくとも約0.1重量パーセントとすることができる。所定の層内におけるLCP含有量は、少なくとも約0.1重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約50重量パーセント、約5重量パーセント〜約20重量パーセント、約5重量パーセント〜約15重量パーセント)とすることができる。
【0038】
層の総数に対するLCPを含む層の割合は、約1パーセント〜約80パーセント(たとえば、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント、少なくとも約15パーセント、少なくとも約20パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約35パーセント、少なくとも約40パーセント、最大で約80パーセント、最大で約75パーセント、最大で約70パーセント、最大で約65パーセント、最大で約60パーセント、最大で約55パーセント、最大で約50パーセント、最大で約45パーセント)とすることができる。
【0039】
特定の実施形態では、接着強化材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。接着強化材料は、たとえば隣接する層間の接着を強化するために使用することができる。接着強化材料の例には、LOTADER(登録商標)(エルフ アトケム社(Elf Atochem))、およびKODAR(登録商標)PETG(イーストマン コダック社(Eastman Kodak))などの、エポキシまたはアンヒドリド変性ポリオレフィンが含まれる。接着強化材料は、押出成形前に材料(たとえば、1つまたは複数のポリマーを含む組成物)に添加することができる(以下に述べる)。たとえば、交互に配置される層がPETおよびPBTから形成される実施形態においては、押出成形前にPETGをPETに添加することができる。
【0040】
接着強化材料の量は、目的とする用途に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、接着強化材料が、層を形成する生成された混合物の少なくとも約0.5パーセント(たとえば、少なくとも約1パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント)を占めるように、および/または層を形成する生成された混合物の最大約20パーセント(たとえば、最大で約15パーセント、最大で約12パーセント、最大で約10パーセント)を占めるように、接着強化材料の十分な量が材料に含まれている。
【0041】
特定の実施形態では、層の厚さの変化に比例して、1つまたは複数の隣接する層の間の接着性を変更することができる。通常、実施形態では、医療器具(たとえば、管材)において、1つまたは複数の(たとえば、すべての)層間を接着することができる。たとえば、医療器具(たとえば、管材)において、1つまたは複数の(たとえば、すべての)層は湾曲、収縮、および/または膨張時に優れた接着性を示すことができる。いくつかの実施形態では、(たとえば、1つまたは複数の層が比較的薄い場合)医療器具(たとえば、管材)は優れた可撓性および/または接着性を示すことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、適合材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。適合材料は、たとえばLCPと1つまたは複数の他のポリマー(たとえば、熱可塑性ポリマー)の1つまたは複数の相境界を変更し、および/またはLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の接着を強化するように設計されている。適合材料は、少なくとも2つの異なる化学構造部分を含み、それぞれがLCPと1つまたは複数の他のポリマーに混合物中で適合性を付与する、ブロックコポリマーなどのコポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPおよび/または1つまたは複数の他のポリマーと反応する、反応性ポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の反応を促進する触媒であってもよい。他の適合材料を使用することもできる。適合材料の組合せを使用することもできる。
【0043】
適合材料の例には、コポリマーエラストマー、エチレン無水マレイン酸コポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、機能性モノマーをグラフトしたポリオレフィンまたはエチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレート無水マレイン酸ターポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、エチレンのターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−メタクリル酸ターポリマーなどの不飽和エステルおよびカルボキシル酸または酸誘導体、マレイン酸グラフトスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびアクリルゴムなどのアクリル酸エラストマーがある。たとえば、グリシジルメチルアクリレートから派生するなどのエポキシ官能基を含む同様のポリマー(たとえば、アルキル(メタ)アクリレート−エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートポリマー)を使用することができる。イオノマーコポリマーを使用することもできる。PETGを使用することもできる。適合材料の例には、HYTREL(登録商標)HTR−6108、POLYBOND(登録商標)3009(BPケミカル社(BP Chemicals))、SP 2205(シェブロン社(Chevron))、DS 1328/60(シェブロン社(Chevron))、LOTADER(登録商標)2400、ESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、VAMAC(登録商標)GIおよびLOTADER(登録商標)AX8660がある。特定の実施形態では、適合材料(たとえば、PETG)を押出成形前に1つまたは複数のポリマー(たとえば、LCP含有材料)とブレンドすることができる。
【0044】
多くの方法によりLCPを熱可塑性物質にブレンドすることができる。LCPのブレンドは、LCP、熱可塑性材料、および適合材料の三成分系とすることができる。様々なLCP、様々な熱可塑性材料、および様々な適合材料からなる多数の組合せによる系が意図されている。
【0045】
適合化されたブレンドは、ポリアゾメチンLCP、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマー、および、LCPおよび/または熱可塑性ポリマーに適合性および/または反応性を示すことのできる少なくとも1つの官能基を有する、カプロラクタムなどの適合材料のブレンドであってもよい。このようなブレンドは、たとえば米国特許第5,565,530号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0046】
使用可能なポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびたとえばESCOR(登録商標)ATX320、ESCOR(登録商標)ATX325、またはESCOR(登録商標)XV−11.04などのエチレンメチルアクリレート−アクリル酸ターポリマー適合材料がある。他のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびPOLYBOND(登録商標)3009などのエチレン−無水マレイン酸コポリマー適合材料がある。別のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびDS1328/60など無水マレイン酸適合材料をグラフトしたエチレン−メチルアクリレートコポリマー、またはHYTREL(登録商標)HTR6108などのコポリエステルエラストマーがある。
【0047】
PET、LCP、および少なくとも2つの適合材料を含むポリマーブレンド製品を使用することができる。たとえば、DS1328/60およびPOLYBOND(登録商標)3009をLCP VECTRA(登録商標)とともに使用することができる。別の例として、LCPがVECTRA(登録商標)である場合、適合材料は、POLYBOND(登録商標)3009、およびESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、DS1328160、ESCOR(登録商標)XV−11.04およびHYTREL(登録商標)HTR−6108から選択される、少なくとも1つの別の適合材料とすることができる。
【0048】
特定の実施形態では、適合材料を選択する場合に、LCPおよび他のポリマー(たとえば、PET)の特性、ならびに最終的なブレンドの所望の特性を考慮している。
LCP、熱可塑性ポリマー、および適合材料を含むいくつかの実施形態では、ブレンド製品は、約0.1重量パーセント〜約10重量パーセント(たとえば、約0.5重量パーセント〜約2重量パーセント)のLCP、約40重量パーセント〜約99重量パーセント(たとえば、約85重量パーセント〜約99重量パーセント)の熱可塑性ポリマー、および約0.1重量パーセント〜約30重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約10重量パーセント)の適合材料を含む。
【0049】
特定のポリマーおよびポリマーの組合せについてすでに述べたが、他のポリマーおよびポリマーの組合せも使用することができる。他のポリマーには、たとえば、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー、およびポリブチレンテレフタレート−ポリエチレングリコールブロックコポリマーなどの、たとえばHYTREL(登録商標)として入手可能なエンジニアリング熱可塑性エラストマーがある。これらはハミルトン(Hamilton)に付与された米国特許第5,797,877号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他のポリマーにはポリウレタンがある。他のポリマーには、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABS/ナイロン、ABS/−ポリビニルクロライド(PVC)、ABS/ポリカーボネート、アクリロニトリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、およびポリアクリルスルホンなどのコポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル/ポリカプロラクトン、およびポリエステル/ポリアジペート(polyadipate)などのポリエステル;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリエーテルケトン(PEK)を含む高温溶融ポリマー;ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、およびスチレンアクリロニトリル(SAN);ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;エチレン、プロピレンエチレンビニルアセテート、およびエチレンビニルアルコール(EVA);様々なイオノマー;ポリエチレンタイプI−IV;ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド;ポリシロキサン(シリコーン)がある。低温から中温溶融ポリマーには、ポリクロロトリエチレン(CTFE)、ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン(FEP)のコポリマー、パーフルオロアルカン(PFA)、およびポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)などのフルオロカーボンが含まれる。
【0050】
管材は押出成形法によって製造できる。この方法には、通常、一連のディスクを有する押出成形装置(たとえば、コンパクトクロスヘッドなどのクロスヘッド)を使用する。たとえば、装置は、材料層ごとに1つのディスクを有することが可能である。各ディスクは、1つまたは複数のチャネル(たとえば、1つのチャネル、2つのチャネル、3つのチャネル、4つのチャネル、5つのチャネル、6つのチャネル、7つのチャネル、8つのチャネル、10のチャネル、12のチャネル、14のチャネル、16のチャネルなど)を有することができる。いくつかの実施形態では、層の真円度を高めるために少なくとも1つのディスクに(たとえば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つのディスクなどに)比較的多くの数のチャネル(たとえば、5つ、6つ、7つ、8つなどのチャネル)を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、各ディスクは比較的多くの数のチャネルを有する。チャネルの数は、たとえば体積出力、温度、粘性、圧力降下、ディスクの外径、使用される材料(たとえば、ポリマー)、および/またはチャネル寸法に基づいて、選択することができる。
【0051】
特定の実施形態では、1つまたは複数のディスクの厚さ(たとえば、少なくとも2つのディスク、少なくとも3つのディスク、少なくとも4つのディスク、少なくとも5つのディスク、少なくとも6つのディスク、少なくとも7つのディスク、少なくとも8つのディスク、少なくとも9つのディスク、少なくとも10のディスク、少なくとも11のディスク、少なくとも12のディスク、少なくとも13ディスク、少なくとも20ディスクなどの各ディスク)は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約2.54センチメートル(1インチ)未満(たとえば約1.91センチメートル(0.75インチ)未満、約1.27センチメートル(0.5インチ)未満、約1.02センチメートル(0.4インチ)未満、約0.76センチメートル(0.3インチ)未満、約0.5センチメートル(0.2インチ)未満、約0.38センチメートル(0.15インチ)未満、約0.25センチメートル(0.1インチ)未満、約0.12センチメートル(0.05インチ)未満)とすることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約33センチメートル(13インチ)未満の全厚(たとえば約30.5センチメートル(12インチ)未満、約27.9センチメートル(11インチ)未満、約25.4センチメートル(10インチ)未満、約22.9センチメートル(9インチ)未満、約20.3センチメートル(8インチ)未満、約17.8センチメートル(7インチ)未満、約15.2センチメートル(6インチ)未満、約14センチメートル(5.5インチ)未満、約12.7センチメートル(5インチ)未満、約11.4センチメートル(4.5インチ)未満、約10.2センチメートル(4インチ)未満、約8.9センチメートル(3.5インチ)未満、約7.6センチメートル(3インチ)未満、約6.4センチメートル(2.5インチ)未満、約5.1センチメートル(2インチ)未満、約4.8センチメートル(1.9インチ)未満、約4.6センチメートル(1.8インチ)未満)を有する13個のディスクスタックを含む。
【0053】
特定の実施形態では、装置は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約50.8センチメートル(20インチ)未満(たとえば、約48.3センチメートル(19インチ)未満、約45.7センチメートル(18インチ)未満、約43.2センチメートル(17インチ)未満、約40.6センチメートル(16インチ)未満、約38.1センチメートル(15インチ)未満、約35.6センチメートル(14インチ)未満、約33センチメートル(13インチ)未満、約30.5センチメートル(12インチ)未満、約25.4センチメートル(10インチ)未満、約24.1センチメートル(9.5インチ)未満、約22.9センチメートル(9インチ)未満、約21.6センチメートル(8.5インチ)未満、約20.3センチメートル(8インチ)未満、約19.1センチメートル(7.5インチ)未満、約17.8センチメートル(7インチ)未満、約16.5センチメートル(6.5インチ)未満、約16.3センチメートル(6.4インチ)未満、約16センチメートル(6.3インチ)未満、約15.7センチメートル(6.2インチ)未満、約15.5センチメートル(6.1インチ)未満、約15.2センチメートル(6インチ)未満)の全厚を有する20個のディスクスタックを有する。
【0054】
図9は、13層からなる管材の製造に使用可能な押出成形装置(コンパクトクロスヘッド)220の一実施形態を示す断面図である。管材は、所望の層の配列を有する多層管を共押出成形することによって形成することができる。コンパクトクロスヘッド220は、給気管234を包囲するスペーシングマンドレル232が配置されている共通の穴部を有する、一連のアセンブリセクション222、224、226、228、230を備える。アセンブリセクション222、224、226は、異なるポリマー(本実施の形態では、ポリマーAおよびポリマーB)をヘッドへ送る別の押出成形機(図示せず)からの入口236、238を画成し、ポリマーをアセンブリセクション228に誘導する通路240、242を備える。
【0055】
アセンブリセクション228は、本実施の形態では13個の一連の押出成形ディスク244を収容する。各ディスクは、一方のポリマーのみの押出入口および出口を除いて、両方のポリマー用の通路を備える。(一方のポリマーのみの通路を備える最後のディスクは例外である。)このように、ポリマーフローはアセンブリに沿って連続しているが、各ポリマーは所望の順序で押出成形の流れに添加される。本実施の形態では、1つおきにディスクが第1のポリマー用の入口および出口を有し、1つおきに介在するディスクが第2のポリマー用の入口および出口を有する。
【0056】
図9a〜9eは、クロスヘッド220において同時に使用できる5つの異なる4チャネルディスク設計を示す。ディスクの入口および出口は、ディスクの面に機械加工されたチャネルとして形成される。ポリマーAは通路250を通って流れ、ポリマーBは通路251を通って流れる。(ディスクを位置合わせするためにアラインメントピン用の開口255が設けられている。)隣接するディスク間の空隙に通じるチャネル256によって、出口が形成される。たとえば、第1のディスク246は、第1のポリマーのための入口252および出口247、および第2のポリマーのための通路251を有するが、第2のポリマーのための入口および出口はない。第2のディスク248は、第2のポリマーのための入口254および出口249、および第1のポリマーのための通路259を有するが、第1のポリマーのための入口および出口はない。その結果、第1のポリマーが最内層として、第2のポリマーが次に隣接する層として、第1のポリマーが第3の層として等、溶着される。第13のディスクの端部において、異なるポリマーからなる層を交互に配置した13層の押出成形が完了する。第13のディスク(図9e)は通路51なしで形成される。押出成形においては、アセンブリセクション230のノズル250において、所望の径に寸法が設定される。クロスヘッドは、所望の層の配列を得るためにディスクまたはディスクの出口形状を変えることによって、コンパクトな設計にかなりの可撓性を付与する。組立図において示すように、流れに沿ってポリマーの供給を容易に行うために、ディスクの中央開口の径を変更することができる。加えて、チャネルは、連続するディスク内で異なる径方向の流れにポリマーを誘導するように配置することができる
層の数は、ディスクの数を調節することによって、単層、2層、3層、またはそれ以上の層に変更することができる。また、図10においては、20枚のディスク配置が示されるが、システムは、セクション224、226を他の押出機の入口を備えるセクションと取り替えることにより、かつ、ディスクを他のポリマーのフローに対応するチャネルを含むように構成することにより、より多数のポリマーを共押出成形できる。図9の実施形態では、アセンブリセクションおよびディスクはステンレス鋼から形成され、システムは約8.9センチメートル(3.5インチ)の全径D、および約16.5センチメートル(6.5インチ)の全長Lを有する。押出成形機は、1−インチ・ブラベンダー(Brabrender)押出成形機(NJ)であってもよい。ゾーン加熱温度、ポリマー濃度、送り速度、およびライン速度などのいくつかの例示的な操作条件が、2001年3月2日付けで出願された米国特許出願番号第09/798,749号(発明の名称:多層からなる医療器具(Multilayer Medical Device))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0057】
図11a〜11eは、図9a〜9eで示した4チャネルディスクに関して述べた同様の方法で、クロスヘッド220において併せて使用できる5つの異なる8チャネルディスクの設計を示す。ただし、図11a〜11eに示すように、これらのディスクはそれぞれ8つのチャネル256を含む。これにより、出口247におけるポリマーフローの速度は出口247周辺でより一定になるので、管材における個々の層の真円度が向上し、および/または、管材における層間の境界面の真円度が増加する。8チャネルパターンは4および8チャネルディスクを同一の押出成形機で使用できるように、4チャネルパターンと同一寸法のディスクに機械加工してもよい。特定の実施形態では、チャネル間のディスク材料の幅は、概してそのサイズとディスク上の位置を制限する。たとえば、いくつかの実施形態においては、440Cステンレス鋼で機械加工されたディスクは、押出されるポリマーの圧力による損傷なしに約0.089センチメートル(0.035インチ)のチャネル間の最小幅を維持できる。
【0058】
個々の層の厚さは、送り速度、すなわちポリマーのフローを制御することによって調節できる。たとえば層の厚さを増加するには、その層への材料のフローを増加させる。層の厚さを減少するには、その層への材料のフローを減少させる。移行部の長さは、材料のフローにおける変更速度を制御することによって調節できる。急激なフローの変更は比較的短い移行部を形成し、比較的緩やかなフロー変更は比較的長い移行部を形成する傾向がある。材料のフローを停止することによって、たとえば層124などの層を管材内で終端させることができる(図7)。メルトポンプ、ポンプを制御するシステムおよびその方法を含む、送り速度またはポリマーのフローを制御するための好ましいシステムが、国際公開第WO01/32398号(発明の名称:カテーテル用管材を押出成形するための方法および装置(Method and Apparatus for Extruding Catheter Tubing))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他の方法には、ビュルリら(Burlis et al.)に付与された米国特許第3,752,617号に記載されているような、サーボ制御バルブの使用が含まれ、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
(他の実施形態)
他の実施形態においては、管状壁は、他の材料からなる層の間に接着層を備えることも可能である。図12を参照すると、管状壁300は、層302、304、306、308、310、312、314、316、318の9層を含む。層302、310、318は、第1の材料から形成され、層306、314は第2の材料から形成され、層304、308、312、316は接着剤から形成される。接着剤は、たとえば、第1の材料と第2の材料が不混和性である場合に使用できる。図に示すように、層304、308、312、316は、層306、314にほぼ一致するが、他の実施形態では、層304、308、312、316は上述のいずれの形状においても形成することが可能である。
【0059】
層304、308、312、316は、医療器具での使用に適した任意の接着材料から形成されてもよい。接着剤はポリマー(たとえば、ほぼ単独のポリマー、またはポリマーのブレンド)であってもよい。一例として、特定の実施形態においては、接着剤はエチレンビニルアセテートポリマーを含む材料から形成されている。他の例として、いくつかの実施形態では、接着剤はアンヒドリド変性ポリオレフィンから形成される。接着剤は、たとえば、米国デラウェア州ウィルミントンに所在するE.I.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)から販売されているBYNEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、BYNEL(登録商標)CXAシリーズ、BYNEL(登録商標)1000シリーズ、BYNEL(登録商標)1123、BYNEL(登録商標)1124、BYNEL(登録商標)11E554、BYNEL(登録商標)11E573、BYNEL(登録商標)CXA E−418)、米国ニュージャージー州ニューアークに所在するエクイスター ケミカル社(Equistar Chemicals)から販売されているPLEXAR(登録商標)のポリマー群(たとえば、PX360、PX360E、PX380、PX3227、PX3236、PX3277、PX5125、PX5327、PX206、PX209、PX2049、PX165、PX175、PX180、PX909、PX101、PX107A、PX108、PX114、PX1164)、および/または、米国ミシガン州ミッドランドに所在するダウ ケミカル社(Dow Chemical Company)から販売されているBLOX(登録商標)のポリマー群(たとえばBLOX(登録商標)200シリーズ)から選択することができる。
【0060】
一例として、層302、310、318は、医療器具での使用に適したポリエステル含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリエステルを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、たとえば、ポリエステルホモポリマー、および/またはポリエステルのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)がある。ポリエステルの例には、PETポリマー、PBTポリマー、ならびにこれらのブレンドおよび組合せ、たとえばSELAR(登録商標)PTのポリマー群(たとえば、デュポン社(DuPont)より販売されるSELAR(登録商標)PT 8307、SELAR(登録商標)PT4274、SELAR(登録商標)PTX280)、CLEARTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国ウェストバージニア州アップルグローヴに所在するM&Gポリマー社(M&G Polymers)より販売されるCLEARTUF(登録商標)8006)、TRAYTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国テキサス州ヒューストンに所在するシェル ケミカル社(Shell Chemical)より販売されるTRAYTUF(登録商標)1006、デュポン社(Dupont)より販売されるMELINAR(登録商標)のポリマー群、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)より販売されるCELANEX(登録商標)のポリマー群、ティコナ社より販売されるRITEFLEX(登録商標)のポリマー群、デュポン社より販売されるHYTREL(登録商標)のポリマー群(たとえば、HYTREL(登録商標)5556、HYTREL(登録商標)7246、HYTREL(登録商標)4056)、および米国インディアナ州エリオンスピラに所在するDSM社より販売されるARNITEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、ARNITEL(登録商標)EM630)などがある。
【0061】
層306、314は、医療器具での使用に適したポリアミド含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリアミドを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、ポリアミドホモポリマー、および/または、ポリアミドのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)などがある。ポリアミドの1つのタイプには、たとえば、Nylon 11(アトフィナ社(Atofina)より販売)、Nylon 6(米国ニュージャージー州モリスタウンに所在するハネウェル社より販売)、Nylon 6/10(米国ニュージャージー州マウントオリーブに所在するBASF社(BASFより販売)、Nylon 6/12(米国ニュージャージー州クランフォードに所在するアシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers)より販売)、Nylon 12、Nylon NXD−6、GRIVORY(登録商標)のポリマー群(米国サウスカロライナ州サムターに所在するEMS社(EMS)より販売)、GRILAMID(登録商標)のポリマー群(EMS社より販売)、VESTAMID(登録商標)のポリマー群(ダイセル−デグサ社(Daicel−Degussa Ltd)より販売)、およびPEBAX(登録商標)のポリマー群(たとえば、アトフィナ社より販売されるPEBAX(登録商標)5533、PEBAX(登録商標)2533、PEBAX(登録商標)7033)などの脂肪族ナイロンや芳香族ナイロンなどを含むナイロン系のポリマー群がある。
【0062】
上述した管材は、ガイドワイヤ(たとえば、ポリマー製のガイドワイヤ)に形成することができる。優れたトルク伝達性を備えるガイドワイヤを形成する方法は、米国特許第5,951,494号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
(例1)
以下の例は、層の数およびその径方向位置が管材の剛性に及ぼす影響を調べたシミュレーションの結果を示す。以下に述べる試料の層は交互に配置されている。壁厚はすべての試料において一定である。計算は、等しい厚さからなる均一に配分された層をもとに行っている。
【0063】
【表1】
試料Aは、単独のPEBAX(登録商標)7033から形成した管材である。試料Jは、単独のPEBAX(登録商標)7233から形成した管材であり、より高い剛性(0.867対0.545g−mm/deg)によって示されるように、PEBAX(登録商標)7033よりも高い剛性を有する。
【0064】
試料Bは、2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033、内層がPEBAX(登録商標)7233からなる。PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は50:50である。試料Bの剛性が試料Aの剛性よりも高い。これは、試料Aと比べてより多くの剛性材料、すなわちPEBAX(登録商標)7233(剛性材料)がPEBAX(登録商標)7033(より可撓性を有する材料)の代わりに使用されているためである。試料Jに比べて試料Bは剛性が低い。これは、剛性の高いPEBAX(登録商標)7233の代わりに、可撓性のより高いPEBAX(登録商標)7033がより多く使用されているためである。
【0065】
試料Cは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033、内層がPEBAX(登録商標)7233からなる。PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Bと比べて、試料Cはより多くの剛性の高い材料を有する(65重量パーセント(PEBAX(登録商標)7233)対50重量パーセント(PEBAX(登録商標)7233))ため、試料Cよりも高い剛性を有する。
【0066】
試料Dは7層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033からなり、PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Cと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Dはより高い剛性を有する。すなわち、試料CではすべてのPEBAX(登録商標)7233が管材の内面に隣接していたが、試料DではPEBAX(登録商標)7233の一部が径方向外側に移動しており、それにより管材の慣性モーメントがより影響を受けた。
【0067】
試料Eは13層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033からなり、PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Dと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Eはより高い剛性を有する。
【0068】
試料Fは13層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Eと比べて、剛性材料(PEBAX(登録商標)7233)が管材の外面に形成されているので、試料Fはより高い剛性を有する。層の数がより多いために、試料CとIにおいて剛性材料と可撓性材料の位置を変えたときよりも、差はわずかである。
【0069】
試料Gは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は50:50である。試料Bと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Gはより高い剛性を有する。
【0070】
試料Hは7層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Fと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Hはより高い剛性を有する。試料Dと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Hはより高い剛性を有する。
【0071】
試料Iは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Cと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Iはより高い剛性を有する。試料FおよびHと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布、たとえば集中しているので、試料Iはより高い剛性を有する。ただし、試料Jと比べて、PEBAX(登録商標)7233の一部により可撓性を有するPEBAX(登録商標)7033が使用されているため、試料Iは剛性が低くなる。
(例2)
PEBAX 7233およびPEBAX 5533が交互に配置された層(すなわち、PEBAX 5533が「A」層でありPEBAX 7233が「B」層である場合、ABABABABAの構造)からなる、9層管(外径約0.0558センチメートル(0.022インチ)x内径約0.0431センチメートル(0.017インチ))を以下の手順に従って形成した。
【0072】
それぞれが約1.905センチメートル(3/4インチ)径のバレル(05−09−N55)を備えた2つの押出成形機(Brabender Prepcenters(Type D−51))を使用した。一方の押出成形機はPEBAX 7233を供給し、他方はPEBAX 5533を押出成形した。両方の押出成形機の温度(華氏)を80−345−365−385とした。PEBAX 7233に対しては、クランプ前方の温度は395−395−395であり、PEBAX 5533に対しては、クランプ前方の温度は385−385−395であった。
【0073】
2つのポンプ(ゼニス社(Zenith)、0.16cc/rev)を使用した。PEBAX 7233に対するポンプでは、効率は83.6パーセント、PEBAX 5533では、効率は88.3パーセントであった。効率は、材料の所定の量を得るためのポンプの設定に影響する。各ポンプの入口圧力は約10.34MPa(約1500psi)であった。
【0074】
押出ヘッドは、米国特許出願第09/798,749号に記載されているものと同じであり、8チャネルディスクを備える。LaserMike192を使用して外径を測定し、ニコン社(Nikon)のQuadrachek200を備えたツールスコープを使用して管材を視認により検査した。プーラー(RDNマニュファクチャリング社(米国イリノイ州ブルーミングデイルに所在するRDN Manufacturing Co.,Inc.,)より販売される、OLCサーボ制御エア・ボックスを有する、Model Tapertube 0.5)を使用し、水槽を21.1°C(70°F)に設定した。
【0075】
押出成形は部品までの距離に基づいて行われた。すなわち、ギアポンプの変更は、たとえば時間によるのではなく、管材の移動に基づいて行われた。たとえば、管材が5.1センチメートル(2インチ)押出されると、第1のメルト/ギアポンプは停止状態から7.84rpmになる。1280センチメートル(504インチ)が押出された後は、このポンプは0rpmに戻る。このサイクルは繰り返される。
【0076】
【表2】
連続するポイント間では線形補間法を使用した。管材の長さは約25.3メートル(83フィート)であった。1.27メートル(50インチ)の長さで、主に内層の約8パーセントのPEBAX 7233から、主に外層の約55パーセントのPEBAX 7233へと移行が行われた。系が平衡になるまでに約2時間を要し、それにより各材料の相対量が片の長さに沿ってほぼ一定になった。
【0077】
本明細書に開示されたすべての特徴は、任意の組合せにおいて組み合わせることも可能である。開示された各特徴は、同一、同等、または同様の目的にかなう代替的な特徴に置き換えることができる。したがって他に明示されない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または同様の特徴の例に過ぎない。
【0078】
本出願において参照したすべての刊行物、出願書類、および特許を、個々の刊行物または特許について具体的かつ個別に援用の表示を行ったのと同一程度に本明細書に援用する。
【0079】
他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】多層管を示す図。
【図2】線2−2に沿った図1の管材の壁を示す断面図。
【図3】医療器具の壁の実施形態を示す断面図。
【図4】医療器具の壁の他の実施形態を示す断面図。
【図5】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図6】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図7】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図8】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図9】押出クロスヘッドを示す組立図。
【図9a】本発明の一実施形態による図9の第1のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9b】一実施形態による図9の第2のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9c】一1実施形態による図3の第3、第5、第7、第9、および第11のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9d】一実施形態による図3の第4、第6、第8、第10、および第12のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9e】一実施形態による図9の第13のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9f】一実施形態によるアセンブリセクション226および228を示す断面図。
【図9g】一実施形態によるアセンブリセクション224を示す断面図。
【図9h】一実施形態によるアセンブリセクション222を示す断面図。
【図9i】一実施形態によるマンドレルを示す断面図。
【図9j】一実施形態によるアセンブリセクション230を示す断面図。
【図9k】一実施形態によるノズルを示す断面図。
【図10】一実施形態によるクロスヘッドの配置を示す組立図。
【図11a】一実施形態による図9の第1のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11b】一実施形態による図9の第2のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11c】一実施形態による図3の第3、第5、第7、第9、および第11のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11d】一実施形態による図3の第4、第6、第8、第10、および第12のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11e】一実施形態による図9の第13のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図12】医療器具の壁の実施形態を示す断面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば医療用チューブ、ガイドワイヤ、およびカテーテルなどの多層からなる医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、ガイドワイヤ、カテーテル、および医療用チューブなどの血管内医療器具によって、血管形成術または人工器官の搬送などの医療処置を行うことができる。場合によっては、器具を適切な部位で患者の血管系に挿入し、次いで押圧して血管系を経て標的部位に搬送する。器具が血管系を通って標的部位に至るまでに通る経路は比較的蛇行しており、器具の方向を頻繁に変える必要がある。
【0003】
状況によっては、器具は、蛇行経路に沿って進むことができるように比較的優れた追従性を有することが望ましい。同時に、器具は、その基端側で加えられた力を先端側へ伝達して器具を搬送することができるように、優れた押圧性を有することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、医療用チューブ、ガイドワイヤ、およびカテーテルなどの多層からなる医療用器具に関する。
一態様においては、本発明は、たとえば軸線方向の長さなど、器具の長さに沿って可変的剛性、すなわち異なる剛性を有する医療器具を特徴とする。たとえば医療器具は、第1の部分(たとえば、基端部)を備えることができ、この部分は、第2の部分(たとえば、第1の部分の先端側の部分)よりも比較的剛性が高い。それによって、いくつかの実施形態では、器具は、比較的可撓性の高い先端部において優れた追従性を有することができ、および/または、比較的剛性の高い基端部において優れた押圧性を有することができる。
【0006】
別の態様では、本発明は、第1の材料、および第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料を含む、少なくとも4層を含む医療器具を特徴とし、これらの層のうち少なくとも1層の厚さは器具に沿って軸線方向に可変である。
【0007】
実施形態は以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。器具は、先端部より基端部においてより高い剛性を有する。器具は、少なくとも5層を含んでおり、たとえば少なくとも7層、または少なくとも13層を含む。器具は、ほぼ全長にわたって同じ数の層を有する。
【0008】
複数の層からなる様々な実施形態が可能である。そのような層は器具のほぼ長さにわたって延びていてもよい。これらの層の少なくとも1層の厚さを、器具のほぼ全長にわたって可変とすることができる。また、少なくとも1層の厚さを、器具の選択された部分において可変とすることができる。さらに、少なくとも1層の厚さを、器具の複数の選択された部分において可変とすることができる。異なる材料からなる複数の層の厚さを、器具の選択された異なる部分において、および/または器具の選択された同一の部分において可変とすることができる。
【0009】
様々な材料の実施形態が可能である。第1および第2の材料を交互に配置することができる。第1および第2の材料は、アミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントなど共通のブロック部分を含む、ブロックコポリマーを含むことができる。第1および/または第2の材料は、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択することができる。第1および/または第2の材料はポリマーのブレンドであってもよい。
【0010】
器具は押出成形されたものであってもよい。器具は、管材、カテーテルシャフト、またはガイドワイヤの形態を取ってもよい。
別の態様では、本発明は、第1の材料から形成された第1の層、第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された第2の層、および第1の層と第2の層との間において接着材料からなる第3の層を備え、第1の層の厚さが器具の軸線方向に沿って可変である、医療器具を特徴とする。
【0011】
別の態様では、本発明は医療器具の製造方法を特徴とする。この方法は、第1の材料、および第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された少なくとも3層を含む管材を形成する工程と、少なくとも1層の厚さを器具に沿って軸線方向に変更する工程とを含む。方法は、層を共押出成形する工程を含むことができる。方法は、管材をガイドワイヤに形成する工程を含むこともできる。
【0012】
実施形態は以下の1つまたは複数の効果を有することが可能である。医療器具は、異なる剛性、材料、および/または硬度を有する複数の部分の間に、1つまたは複数の比較的緩やかな移行部分を有することができる。それにより、器具は、たとえば剛性、材料、および/または硬度などが急激に可変である器具に起こり得る、ねじれや座屈を受けにくくすることができる。たとえば剛性など、器具の物理特性はカスタマイズすることができる。医療器具は損傷に対する耐性をより高めることができる。
【0013】
本発明の他の態様、特徴、および効果は、好ましい実施形態の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および2を参照すると、その長さ(長手方向、すなわち軸方向の軸線A)に沿って可変的剛性、すなわち異なる剛性を有する管材10が示されている。管材10は、本実施の形態においては、符号14、16、18、20、22、24、26、28、30で示される9つの薄層をなす、複数の層から形成される一定の厚さを有する壁部12を備える。層14、18、22、26、30は、第1の材料から形成され、たとえば組成、強度、硬度、および/または剛性が異なるなど、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される層16、20、24、28と交互に配置される。図に示すように、層14、16、18、20、22、24、26、28、30は、管材10の軸線Aに沿って厚さが可変である。層16、20、24、28は、管材10の基端部32においては厚さT1を有し、管材の選択された移行部34においては先端方向へ向かって厚さが減少し、先端部36においてはT1よりも少ない厚さT2を有する。反対に、層14、18、22、26、30は、基端部32よりも先端部36において厚く、移行部34において厚さが可変である。管材10の1つまたは複数の層の厚さを調節することにより、軸線Aに沿った管材の剛性を制御することができる。
【0015】
たとえば、層14、18、22、26、および30をPEBAX(登録商標)7033(69ショアD、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在するアトフィナ社(Atofina)から販売されている)などの第1の材料から形成し、層16、20、24、28をPEBAX(登録商標)7233(72ショアD)など、(第1の材料と比べて)剛性の高い第2の材料から形成することができる。層16、20、24、28の厚さを先端方向へ向かって減少させることによって、先端部36における剛性の高い材料の量を基端側34における剛性の高い材料の量と比べて減少させることもできる。その結果、先端部36はより剛性の低い材料、すなわちより可撓性を有する材料となるので、先端部は基端部32に比べてより高い可撓性を有する。したがって、管材10をたとえばガイドワイヤやカテーテル(たとえば、バルーンカテーテルなど)に形成するときに、比較的高い剛性を有する基端部32により優れた押圧性が付与され、比較的高い可撓性を有する先端部36により蛇行経路内を進行するための優れた追従性が付与される。
【0016】
理論にとらわれることなく、複数の層をなすことによって、管材10は異なる材料からなる部分すなわち層間で比較的緩やかな移行部を備えることができ、たとえば剛性などの異なる物理特性を有することができると考えられる。急激な移行部では、管材が予期しないねじれや座屈を受けやすくなると考えられており、これは使用中に発生したりするので望ましくない。複数の層を使用することによって、材料は均一に配分されて、固容体中などでほぼ均一に混和、即ち混合され、管材10に不均衡をもたらすような材料の局部的な集中が低減される。
【0017】
管材10の一部の剛性は、とりわけ、層で使用される材料およびその量(たとえば濃度)、管材の径方向における材料の位置、および/または、材料の位置に関連するが、管材に含まれる層の数などの設計パラメータを調節することによって制御することができる。一般的には、より剛性の高い材料が、より剛性の高い管材や管状部を提供する傾向がある。ほぼ同様の管材では、高剛性を有する材料の量が多い、すなわち濃度がより高い管材が、高剛性の材料の量が少ない、すなわち濃度が低い管材よりも、より剛性が高くなる傾向がある。たとえば、PEBAX(登録商標)7033(69ショアD)に対するPEBAX(登録商標)7233(72ショアD)の比率が3:1である管材の第1の部分は、通常、PEBAX(登録商標)7233:PEBAX(登録商標)7033の比率が2:1である管材の第2の部分よりも、より高い剛性を有する。これは、第1の部分が第2の部分よりも、高剛性の材料PEBAX(登録商標)7233をより多く有するためである。
【0018】
また、管材の径方向における材料の位置も、管材や管状部の剛性に影響を与える。いくつかの実施形態では、高剛性の材料からなる1つまたは複数の層を軸線Aから径方向に遠く、すなわち離間して形成することによって、管材の剛性が増加する。たとえば、(軸線Aにより近接した)内層として可撓性材料、および外層として剛性材料を有する2層からなる管材は、外層が可撓性材料から形成され、内層が剛性材料により形成された2層の管材より、より剛性が高くなる傾向がある。層が軸線Aから離れるほど、管材の慣性モーメントにおいて層が受ける影響は大きくなると考えられる。たとえば、軸線Aから径方向に離間している高剛性の層は、その層が軸線Aに対して径方向に近接しているときよりも、管材の剛性を高めることができる。
【0019】
管材に含まれる層の数は材料の位置に関連する。たとえば、管材の壁厚が一定であると仮定して、内層に可撓性材料、および外層に剛性材料を有する2層からなる管材部分は、可撓性材料と剛性材料からなる層を交互に有し、最内層が可撓性材料で形成された4層の管材部分よりも、より剛性が高くなる傾向がある。2層部分ではすべての軟質材料が1つの層に存在し、軸線Aに近接している。それに比べて4層部分では、いくつかの剛性材料が軸線Aに対して径方向に近接して形成されている。上述のように、剛性材料を軸線Aから径方向に離間して形成することによって、管材の剛性は増加する。したがって、本実施の形態においては、層の数を増やし、より高い剛性の材料を軸線Aに対してより近接させて形成する(またはより可撓性の高い材料を軸線Aから離間して形成する)ことによって、管材の剛性が低下する。ここでは可撓性材料に対する剛性材料の比率は一定であると仮定するが、一般的には、管材の一部の剛性は複数(たとえばすべて)の設計パラメータによって決定される。材料の濃度、層の数、およびその径方向位置が管材の剛性に与える影響は、以下に述べる実施例1に示される。
【0020】
層の数は通常2つ以上である。たとえば、層の数は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、またはそれ以上とすることができる。特定の実施形態では、層の数は、100未満(たとえば、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、または10未満など)とすることができる。たとえば、層の数は、7、13、20、またはそれ以上とすることができる。
【0021】
1つまたは複数の層の厚さを、管材10の長さ方向において可変とすることができる。図2に示すように、層16、20、24、28などの層は、たとえば基端部32において第1の一定厚さを有することができ、たとえば先端部36において、第1の厚さよりも少ない、第1の厚さとは異なる第2の一定厚さを有することができる。図に示すように、基端部32と先端部36との間の移行部34において各層の厚さは可変である。同様に、層14、18、22、26、30は、通常、基端部34よりも先端部36でより厚く、移行部34において厚さが可変である。1つまたは複数の層は、異なる厚さを有する、2つよりも多い異なる部分を有することができる。
【0022】
他の実施形態では、管材は、たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上、11以上などの複数の移行部34を含む。図3を参照すると、管状壁40は2つの異なる材料から形成された層42、44、46、48、50、52、54の7層を含む。層44、48、52の厚さは、基端部32における第1の厚さT3から第1の移行部56を経て第2の厚さT4を有する中間部57へ移行し、第2の移行部58を経て先端部36における第3の厚さT5になる。図に示すように、厚さは、T4>T3>T5である。いくつかの実施形態では、層44、48、52が、層42、46、55、54の材料よりも、より高い剛性材料で形成されている場合、中間部57が最も剛性の高い部分であり、次いで中間部の基端側部分、次いで中間部の先端側部分となる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層42〜54は、異なる材料で形成することができる。移行部56、58は、後述のように軸線方向において異なる位置に配置することができる(図8)。層内では組成を変えることができ、たとえば層44は軟質材料から剛性材料に変更して、材料を軟質に変化させることができる。
【0023】
特定の実施形態では、層の厚さは管材の全長に沿って可変である。図4を参照すると、管壁60は2つの異なる材料から形成された層62、64、66、68、70の5層を含む。層64、68の厚さは、基端部32から先端部36に向かって減少する。層64、68が、層62、66、70の材料よりも、より高い剛性材料で形成されている場合、先端部36は基端部32よりも剛性が低くなる傾向がある。層64、68が、層62、66、70の材料よりも、より高い可撓性材料で形成されている場合、先端部36は基端部32より剛性が高くなる傾向がある。他の実施形態では、層の厚さは、管材10の全長よりも少ない部分、たとえば管材のどちらかの端部から測定して90パーセント、80パーセント、70パーセント、60パーセント、50パーセント、40パーセント、30パーセント、または20パーセント未満の部分に沿って可変である。
【0024】
層は管材の径方向において非対称に分布させることができる。たとえば、図5を参照すると、管状壁80は、2つの材料から形成された層82、84、86、88、90の5層を含む。層84、88は、管状壁80の内面より外面に対してより近接して配置されている。他の実施形態では、(たとえば図2に示すように)層は管材の径方向に沿って均一に配分することもできる。
【0025】
管材10は、3つ、4つ、5つ、10、またはそれ以上などの、2つ以上の異なる材料から形成することができる。図6は、3つの材料から形成された層94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114の11層を有する管状壁92を示す。層94、98、102、106、110、114は第1の材料から形成され、層96、104、112は第2の材料から形成され、層100、108は第3の材料から形成されている、図に示すように、すべての層は、図2に示す実施形態と同様に厚さが可変であり、たとえば、軸線方向においてほぼ同一の位置に移行部34を有する。他の実施形態では、管材は、異なる軸線方向位置において複数の移行部を備えることができる。図8を参照すると、管材140は、3つの材料から形成された層142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162の11層を含む。層148、156は、層144、152、160の移行部166よりも基端側にある、移行部164を有する。いくつかの実施形態では、層148、156は、層144、152、160と同一の材料から形成することができる。この構成により、移行状態を向上させて比較的滑らかな移行部分を提供することができる。
【0026】
これに代えて、またはこれに加えて、1つまたは複数の層は管状壁内で終端してもよい。図7を参照すると、3つの異なる材料から形成された管状壁116は、管状壁の長さに沿って終端する2つの層124、130を含む。これにより、管状壁16は、基端部32において層118、120、122、124、126、128、130、132、134から形成される11層を含み、先端部36において層118、120、122、126、128、132、134から形成される7層を含む。
【0027】
管材は2つ以上の材料で形成される上述の層のいずれの組合せを有することもできる。たとえば、管材は、均等に離間してまたは非対称に配置された(たとえば図5参照)、層16、層44、および/または層64の1つまたは複数の層を有することができる。層16、層44、および/または層64の1つまたは複数の層は、1つまたは複数の移行部を有することができる(たとえば図6および8参照)。層の数は、管材の軸線方向に沿って変更することができる。
【0028】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層は、その軸線方向の長さに沿って少なくとも約0.02マイクロメートル(たとえば、少なくとも約0.05マイクロメートル、少なくとも約0.1マイクロメートル、少なくとも約0.25マイクロメートル、少なくとも約0.5マイクロメートル、少なくとも約0.75マイクロメートル、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約1.5マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約2.5マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約3.5マイクロメートルなど)の最小厚を有することができ、および/または最大約20マイクロメートル(たとえば、最大約15マイクロメートル、最大約10マイクロメートル、最大約9マイクロメートル、最大約8マイクロメートル、最大約7マイクロメートル、最大約6マイクロメートル、最大約5マイクロメートル、最大約4マイクロメートル、最大約3マイクロメートル、最大約2マイクロメートル、最大約1マイクロメートル、最大約0.5マイクロメートル、最大約0.25マイクロメートルなど)の最大厚を有することができる。各層の厚さは、たとえば形成される器具の厚さ、層の数、層の材料、および/または層の構成によって決定される。
【0029】
管材の一部に沿って、可撓性を有する層および剛性を有する層の厚さは異なっていてもまたは同一であってもよい。いくつかの比較的剛性を有する部分では、可撓性を有する層が、管材の全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、剛性を有するポリマーが残りの部分を構成する。特定の比較的可撓性を有する部分では、剛性を有する層が管材の全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、可撓性を有するポリマーが残りの部分を構成する。それによって、可撓性を有する層および剛性を有する層の数が同等の器具では、可撓性を有するポリマー層を、剛性を有するポリマー層よりもより薄くまたはより厚くしてもよい。層の厚さは径方向に徐々に変化させてもよい。たとえば、層を最外層から最内層へより厚くしていく、またはその逆も可能である。他方のタイプの層を一定にしたまま、一方のタイプ(可撓性または剛性)の層の厚さを可変とすることもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、層は、硬度が約60ショアDを超える、好ましくは65ショアD以上の高剛性すなわち硬質のポリマー、および硬度が約60ショアD以下のより軟質のポリマーから形成することができる。いくつかの実施形態では、可撓性すなわち軟質のポリマーは、約60ショアDよりも高い硬度を有することができるが、硬質ポリマーよりも軟質である。隣接する接合層の硬度の差は、約40ショアD以下、好ましくは20ショアD以下とすることができ、それにより層間の適合性を向上させ、境界面での層間剥離を抑制し、および/または共押出成形を容易にすることが可能である。硬度はASTM D2240に従って測定することができる。層は硬質ポリマーと軟質ポリマーとの間で交互に配置することができる。層は徐々に硬度を増加することができる。たとえば、層を最外層から最内層へ徐々により硬度を高めていくことができる。たとえば、ステントの搬送に使用する支持体として、最外層を軟質層にしてステントによる応力や磨耗を吸収かつ分散することができる。
【0031】
層はほぼ単独(pure)のポリマーからなってもよく、または異なるポリマーのブレンドからなってもよい。軟質(または硬質)層のすべてを同一の軟質(または硬質)ポリマーから形成することも可能であり、または異なる軟質(または硬質)層を異なるポリマーから形成することも可能である。軟質および硬質ポリマーは、適合性を向上させながら障害の発生も阻止できる共通のブロック部分を含む、ブロックコポリマーから形成することもできる。たとえば、ブロック部分は、アミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントであってもよい。
【0032】
一例として、単独またはブレンドとして使用できるPEBAX(登録商標)のポリマー群がある(米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在するアトフィナ社(Atofina)から販売されている)。たとえば、PEBAX(登録商標)5533(55ショアD)をPEBAX(登録商標)2533(ショアD25)と約4対1の重量比で混合し、約50ショアDの軟質ポリマーを形成することができる。硬質ポリマーと軟質ポリマーの別の組合せには、CELANEX(登録商標)(80ショアDを越える硬度、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)製)などのポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびARNITEL(登録商標)(55ショアD、米国インディアナ州エリオンスピラに所在するディエスエム社(DSM)製)として販売されるポリエステル/エーテルブロックコポリマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、PBT、およびたとえばRITEFLEX(登録商標)(55ショアD、ティコナ社(Ticona)製)、およびHYTREL(登録商標)(55ショアD、米国デラウェア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)製)など1つまたは複数のPBT熱可塑性エラストマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーのさらに別の組合せには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびPBT熱可塑性エラストマー(たとえば、ARNITEL(登録商標)、HYTREL(登録商標)、またはRITEFLEX(登録商標))などの熱可塑性エラストマーがある。
【0033】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、1つまたは複数の硬質ポリマー層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、ナイロン、およびPEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)(イーエムエス社(EMS))、および/またはVESTAMID(登録商標)(クレアノヴァ社(Creanova))などの、PEBAX(登録商標)系の材料がある。ナイロンの例としては、Nylon 11(エルフ アトケム社(Elf Atochem))、Nylon 6(アライド シグナル社(Allied Signal))、Nylon 6/10(ビーエーエスエフ社(BASF))、Nylon 6/12(アシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers))、およびNylon 12などの脂肪族ナイロンがある。ナイロンの別の例には、GRIVORY(登録商標)(イーエムエス社(EMS))およびNylon MXD−6などの芳香族ナイロンがある。他のナイロンおよび/またはナイロンの組合せを使用することもできる。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層は液晶ポリマー(LCP)(たとえば、LCPを組み込んだ複合材料)を含むことができる。LCPの例には、VECTRA(登録商標)A(ティコナ社(Ticona))、VECTRA(登録商標)B(ティコナ社(Ticona))、およびVECTRA(登録商標)LKX(ティコナ社(Ticona))(たとえば、VECTRA(登録商標)LKX1111(ティコナ社(Ticona))などの、ポリエステル、ポリアミド、および/またはそれらのコポリマーがある。他のLCPおよび/またはLCPの組合せも使用することができる。
【0035】
LCPを、PEBAX(登録商標)系の材料、ナイロン、熱可塑性ポリエステル、および/またはそれらの熱可塑性エラストマーバージョンなどの、1つまたは複数のポリマーに組み込むことができる。特定の実施形態では、液晶ポリマーを1つまたは複数のポリマー層に組み込み、硬質材料からなる層(たとえば、約65ショアDを超える硬度といったように、約60ショアDを超える硬度を有する材料からなる層)を形成することができる。好ましい実施形態では、LCPは、PEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)、および/またはVESTAMID(登録商標)などの、1つまたは複数のPEBAX(登録商標)系の材料を含む層に組み込まれる。特定の実施形態では、LCPを含む組成物は、メルトフロー方向において比較的剛性を高くすることができる。理論にとらわれることなく、これは、ポリマー組成物が液体状態から固体状態に冷却されるときにLCP結晶(たとえばファイバー)をメルトフロー方向に形成すなわち整列させることから生じると考えられる。
【0036】
管材に含まれるLCPの量は、使用目的に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、複合材料中のLCPの割合が減少すると、たとえば管材におけるLCPを含む複合材料の1つまたは複数の層の個々の層厚および全体厚を増加することができる。
【0037】
管材のLCP含有量は、約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント(たとえば、約0.5重量パーセント〜約10重量パーセント、約1重量パーセント〜約5重量パーセント)など、少なくとも約0.1重量パーセントとすることができる。所定の層内におけるLCP含有量は、少なくとも約0.1重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約50重量パーセント、約5重量パーセント〜約20重量パーセント、約5重量パーセント〜約15重量パーセント)とすることができる。
【0038】
層の総数に対するLCPを含む層の割合は、約1パーセント〜約80パーセント(たとえば、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント、少なくとも約15パーセント、少なくとも約20パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約35パーセント、少なくとも約40パーセント、最大で約80パーセント、最大で約75パーセント、最大で約70パーセント、最大で約65パーセント、最大で約60パーセント、最大で約55パーセント、最大で約50パーセント、最大で約45パーセント)とすることができる。
【0039】
特定の実施形態では、接着強化材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。接着強化材料は、たとえば隣接する層間の接着を強化するために使用することができる。接着強化材料の例には、LOTADER(登録商標)(エルフ アトケム社(Elf Atochem))、およびKODAR(登録商標)PETG(イーストマン コダック社(Eastman Kodak))などの、エポキシまたはアンヒドリド変性ポリオレフィンが含まれる。接着強化材料は、押出成形前に材料(たとえば、1つまたは複数のポリマーを含む組成物)に添加することができる(以下に述べる)。たとえば、交互に配置される層がPETおよびPBTから形成される実施形態においては、押出成形前にPETGをPETに添加することができる。
【0040】
接着強化材料の量は、目的とする用途に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、接着強化材料が、層を形成する生成された混合物の少なくとも約0.5パーセント(たとえば、少なくとも約1パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント)を占めるように、および/または層を形成する生成された混合物の最大約20パーセント(たとえば、最大で約15パーセント、最大で約12パーセント、最大で約10パーセント)を占めるように、接着強化材料の十分な量が材料に含まれている。
【0041】
特定の実施形態では、層の厚さの変化に比例して、1つまたは複数の隣接する層の間の接着性を変更することができる。通常、実施形態では、医療器具(たとえば、管材)において、1つまたは複数の(たとえば、すべての)層間を接着することができる。たとえば、医療器具(たとえば、管材)において、1つまたは複数の(たとえば、すべての)層は湾曲、収縮、および/または膨張時に優れた接着性を示すことができる。いくつかの実施形態では、(たとえば、1つまたは複数の層が比較的薄い場合)医療器具(たとえば、管材)は優れた可撓性および/または接着性を示すことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、適合材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。適合材料は、たとえばLCPと1つまたは複数の他のポリマー(たとえば、熱可塑性ポリマー)の1つまたは複数の相境界を変更し、および/またはLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の接着を強化するように設計されている。適合材料は、少なくとも2つの異なる化学構造部分を含み、それぞれがLCPと1つまたは複数の他のポリマーに混合物中で適合性を付与する、ブロックコポリマーなどのコポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPおよび/または1つまたは複数の他のポリマーと反応する、反応性ポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の反応を促進する触媒であってもよい。他の適合材料を使用することもできる。適合材料の組合せを使用することもできる。
【0043】
適合材料の例には、コポリマーエラストマー、エチレン無水マレイン酸コポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、機能性モノマーをグラフトしたポリオレフィンまたはエチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレート無水マレイン酸ターポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、エチレンのターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−メタクリル酸ターポリマーなどの不飽和エステルおよびカルボキシル酸または酸誘導体、マレイン酸グラフトスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびアクリルゴムなどのアクリル酸エラストマーがある。たとえば、グリシジルメチルアクリレートから派生するなどのエポキシ官能基を含む同様のポリマー(たとえば、アルキル(メタ)アクリレート−エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートポリマー)を使用することができる。イオノマーコポリマーを使用することもできる。PETGを使用することもできる。適合材料の例には、HYTREL(登録商標)HTR−6108、POLYBOND(登録商標)3009(BPケミカル社(BP Chemicals))、SP 2205(シェブロン社(Chevron))、DS 1328/60(シェブロン社(Chevron))、LOTADER(登録商標)2400、ESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、VAMAC(登録商標)GIおよびLOTADER(登録商標)AX8660がある。特定の実施形態では、適合材料(たとえば、PETG)を押出成形前に1つまたは複数のポリマー(たとえば、LCP含有材料)とブレンドすることができる。
【0044】
多くの方法によりLCPを熱可塑性物質にブレンドすることができる。LCPのブレンドは、LCP、熱可塑性材料、および適合材料の三成分系とすることができる。様々なLCP、様々な熱可塑性材料、および様々な適合材料からなる多数の組合せによる系が意図されている。
【0045】
適合化されたブレンドは、ポリアゾメチンLCP、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマー、および、LCPおよび/または熱可塑性ポリマーに適合性および/または反応性を示すことのできる少なくとも1つの官能基を有する、カプロラクタムなどの適合材料のブレンドであってもよい。このようなブレンドは、たとえば米国特許第5,565,530号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0046】
使用可能なポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびたとえばESCOR(登録商標)ATX320、ESCOR(登録商標)ATX325、またはESCOR(登録商標)XV−11.04などのエチレンメチルアクリレート−アクリル酸ターポリマー適合材料がある。他のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびPOLYBOND(登録商標)3009などのエチレン−無水マレイン酸コポリマー適合材料がある。別のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびDS1328/60など無水マレイン酸適合材料をグラフトしたエチレン−メチルアクリレートコポリマー、またはHYTREL(登録商標)HTR6108などのコポリエステルエラストマーがある。
【0047】
PET、LCP、および少なくとも2つの適合材料を含むポリマーブレンド製品を使用することができる。たとえば、DS1328/60およびPOLYBOND(登録商標)3009をLCP VECTRA(登録商標)とともに使用することができる。別の例として、LCPがVECTRA(登録商標)である場合、適合材料は、POLYBOND(登録商標)3009、およびESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、DS1328160、ESCOR(登録商標)XV−11.04およびHYTREL(登録商標)HTR−6108から選択される、少なくとも1つの別の適合材料とすることができる。
【0048】
特定の実施形態では、適合材料を選択する場合に、LCPおよび他のポリマー(たとえば、PET)の特性、ならびに最終的なブレンドの所望の特性を考慮している。
LCP、熱可塑性ポリマー、および適合材料を含むいくつかの実施形態では、ブレンド製品は、約0.1重量パーセント〜約10重量パーセント(たとえば、約0.5重量パーセント〜約2重量パーセント)のLCP、約40重量パーセント〜約99重量パーセント(たとえば、約85重量パーセント〜約99重量パーセント)の熱可塑性ポリマー、および約0.1重量パーセント〜約30重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約10重量パーセント)の適合材料を含む。
【0049】
特定のポリマーおよびポリマーの組合せについてすでに述べたが、他のポリマーおよびポリマーの組合せも使用することができる。他のポリマーには、たとえば、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー、およびポリブチレンテレフタレート−ポリエチレングリコールブロックコポリマーなどの、たとえばHYTREL(登録商標)として入手可能なエンジニアリング熱可塑性エラストマーがある。これらはハミルトン(Hamilton)に付与された米国特許第5,797,877号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他のポリマーにはポリウレタンがある。他のポリマーには、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABS/ナイロン、ABS/−ポリビニルクロライド(PVC)、ABS/ポリカーボネート、アクリロニトリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、およびポリアクリルスルホンなどのコポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル/ポリカプロラクトン、およびポリエステル/ポリアジペート(polyadipate)などのポリエステル;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリエーテルケトン(PEK)を含む高温溶融ポリマー;ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、およびスチレンアクリロニトリル(SAN);ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;エチレン、プロピレンエチレンビニルアセテート、およびエチレンビニルアルコール(EVA);様々なイオノマー;ポリエチレンタイプI−IV;ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド;ポリシロキサン(シリコーン)がある。低温から中温溶融ポリマーには、ポリクロロトリエチレン(CTFE)、ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン(FEP)のコポリマー、パーフルオロアルカン(PFA)、およびポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)などのフルオロカーボンが含まれる。
【0050】
管材は押出成形法によって製造できる。この方法には、通常、一連のディスクを有する押出成形装置(たとえば、コンパクトクロスヘッドなどのクロスヘッド)を使用する。たとえば、装置は、材料層ごとに1つのディスクを有することが可能である。各ディスクは、1つまたは複数のチャネル(たとえば、1つのチャネル、2つのチャネル、3つのチャネル、4つのチャネル、5つのチャネル、6つのチャネル、7つのチャネル、8つのチャネル、10のチャネル、12のチャネル、14のチャネル、16のチャネルなど)を有することができる。いくつかの実施形態では、層の真円度を高めるために少なくとも1つのディスクに(たとえば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つのディスクなどに)比較的多くの数のチャネル(たとえば、5つ、6つ、7つ、8つなどのチャネル)を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、各ディスクは比較的多くの数のチャネルを有する。チャネルの数は、たとえば体積出力、温度、粘性、圧力降下、ディスクの外径、使用される材料(たとえば、ポリマー)、および/またはチャネル寸法に基づいて、選択することができる。
【0051】
特定の実施形態では、1つまたは複数のディスクの厚さ(たとえば、少なくとも2つのディスク、少なくとも3つのディスク、少なくとも4つのディスク、少なくとも5つのディスク、少なくとも6つのディスク、少なくとも7つのディスク、少なくとも8つのディスク、少なくとも9つのディスク、少なくとも10のディスク、少なくとも11のディスク、少なくとも12のディスク、少なくとも13ディスク、少なくとも20ディスクなどの各ディスク)は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約2.54センチメートル(1インチ)未満(たとえば約1.91センチメートル(0.75インチ)未満、約1.27センチメートル(0.5インチ)未満、約1.02センチメートル(0.4インチ)未満、約0.76センチメートル(0.3インチ)未満、約0.5センチメートル(0.2インチ)未満、約0.38センチメートル(0.15インチ)未満、約0.25センチメートル(0.1インチ)未満、約0.12センチメートル(0.05インチ)未満)とすることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約33センチメートル(13インチ)未満の全厚(たとえば約30.5センチメートル(12インチ)未満、約27.9センチメートル(11インチ)未満、約25.4センチメートル(10インチ)未満、約22.9センチメートル(9インチ)未満、約20.3センチメートル(8インチ)未満、約17.8センチメートル(7インチ)未満、約15.2センチメートル(6インチ)未満、約14センチメートル(5.5インチ)未満、約12.7センチメートル(5インチ)未満、約11.4センチメートル(4.5インチ)未満、約10.2センチメートル(4インチ)未満、約8.9センチメートル(3.5インチ)未満、約7.6センチメートル(3インチ)未満、約6.4センチメートル(2.5インチ)未満、約5.1センチメートル(2インチ)未満、約4.8センチメートル(1.9インチ)未満、約4.6センチメートル(1.8インチ)未満)を有する13個のディスクスタックを含む。
【0053】
特定の実施形態では、装置は、装置を通過する材料(ポリマー)のフローに対して平行方向に(たとえば、図9に示す方向Lに)、約50.8センチメートル(20インチ)未満(たとえば、約48.3センチメートル(19インチ)未満、約45.7センチメートル(18インチ)未満、約43.2センチメートル(17インチ)未満、約40.6センチメートル(16インチ)未満、約38.1センチメートル(15インチ)未満、約35.6センチメートル(14インチ)未満、約33センチメートル(13インチ)未満、約30.5センチメートル(12インチ)未満、約25.4センチメートル(10インチ)未満、約24.1センチメートル(9.5インチ)未満、約22.9センチメートル(9インチ)未満、約21.6センチメートル(8.5インチ)未満、約20.3センチメートル(8インチ)未満、約19.1センチメートル(7.5インチ)未満、約17.8センチメートル(7インチ)未満、約16.5センチメートル(6.5インチ)未満、約16.3センチメートル(6.4インチ)未満、約16センチメートル(6.3インチ)未満、約15.7センチメートル(6.2インチ)未満、約15.5センチメートル(6.1インチ)未満、約15.2センチメートル(6インチ)未満)の全厚を有する20個のディスクスタックを有する。
【0054】
図9は、13層からなる管材の製造に使用可能な押出成形装置(コンパクトクロスヘッド)220の一実施形態を示す断面図である。管材は、所望の層の配列を有する多層管を共押出成形することによって形成することができる。コンパクトクロスヘッド220は、給気管234を包囲するスペーシングマンドレル232が配置されている共通の穴部を有する、一連のアセンブリセクション222、224、226、228、230を備える。アセンブリセクション222、224、226は、異なるポリマー(本実施の形態では、ポリマーAおよびポリマーB)をヘッドへ送る別の押出成形機(図示せず)からの入口236、238を画成し、ポリマーをアセンブリセクション228に誘導する通路240、242を備える。
【0055】
アセンブリセクション228は、本実施の形態では13個の一連の押出成形ディスク244を収容する。各ディスクは、一方のポリマーのみの押出入口および出口を除いて、両方のポリマー用の通路を備える。(一方のポリマーのみの通路を備える最後のディスクは例外である。)このように、ポリマーフローはアセンブリに沿って連続しているが、各ポリマーは所望の順序で押出成形の流れに添加される。本実施の形態では、1つおきにディスクが第1のポリマー用の入口および出口を有し、1つおきに介在するディスクが第2のポリマー用の入口および出口を有する。
【0056】
図9a〜9eは、クロスヘッド220において同時に使用できる5つの異なる4チャネルディスク設計を示す。ディスクの入口および出口は、ディスクの面に機械加工されたチャネルとして形成される。ポリマーAは通路250を通って流れ、ポリマーBは通路251を通って流れる。(ディスクを位置合わせするためにアラインメントピン用の開口255が設けられている。)隣接するディスク間の空隙に通じるチャネル256によって、出口が形成される。たとえば、第1のディスク246は、第1のポリマーのための入口252および出口247、および第2のポリマーのための通路251を有するが、第2のポリマーのための入口および出口はない。第2のディスク248は、第2のポリマーのための入口254および出口249、および第1のポリマーのための通路259を有するが、第1のポリマーのための入口および出口はない。その結果、第1のポリマーが最内層として、第2のポリマーが次に隣接する層として、第1のポリマーが第3の層として等、溶着される。第13のディスクの端部において、異なるポリマーからなる層を交互に配置した13層の押出成形が完了する。第13のディスク(図9e)は通路51なしで形成される。押出成形においては、アセンブリセクション230のノズル250において、所望の径に寸法が設定される。クロスヘッドは、所望の層の配列を得るためにディスクまたはディスクの出口形状を変えることによって、コンパクトな設計にかなりの可撓性を付与する。組立図において示すように、流れに沿ってポリマーの供給を容易に行うために、ディスクの中央開口の径を変更することができる。加えて、チャネルは、連続するディスク内で異なる径方向の流れにポリマーを誘導するように配置することができる
層の数は、ディスクの数を調節することによって、単層、2層、3層、またはそれ以上の層に変更することができる。また、図10においては、20枚のディスク配置が示されるが、システムは、セクション224、226を他の押出機の入口を備えるセクションと取り替えることにより、かつ、ディスクを他のポリマーのフローに対応するチャネルを含むように構成することにより、より多数のポリマーを共押出成形できる。図9の実施形態では、アセンブリセクションおよびディスクはステンレス鋼から形成され、システムは約8.9センチメートル(3.5インチ)の全径D、および約16.5センチメートル(6.5インチ)の全長Lを有する。押出成形機は、1−インチ・ブラベンダー(Brabrender)押出成形機(NJ)であってもよい。ゾーン加熱温度、ポリマー濃度、送り速度、およびライン速度などのいくつかの例示的な操作条件が、2001年3月2日付けで出願された米国特許出願番号第09/798,749号(発明の名称:多層からなる医療器具(Multilayer Medical Device))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0057】
図11a〜11eは、図9a〜9eで示した4チャネルディスクに関して述べた同様の方法で、クロスヘッド220において併せて使用できる5つの異なる8チャネルディスクの設計を示す。ただし、図11a〜11eに示すように、これらのディスクはそれぞれ8つのチャネル256を含む。これにより、出口247におけるポリマーフローの速度は出口247周辺でより一定になるので、管材における個々の層の真円度が向上し、および/または、管材における層間の境界面の真円度が増加する。8チャネルパターンは4および8チャネルディスクを同一の押出成形機で使用できるように、4チャネルパターンと同一寸法のディスクに機械加工してもよい。特定の実施形態では、チャネル間のディスク材料の幅は、概してそのサイズとディスク上の位置を制限する。たとえば、いくつかの実施形態においては、440Cステンレス鋼で機械加工されたディスクは、押出されるポリマーの圧力による損傷なしに約0.089センチメートル(0.035インチ)のチャネル間の最小幅を維持できる。
【0058】
個々の層の厚さは、送り速度、すなわちポリマーのフローを制御することによって調節できる。たとえば層の厚さを増加するには、その層への材料のフローを増加させる。層の厚さを減少するには、その層への材料のフローを減少させる。移行部の長さは、材料のフローにおける変更速度を制御することによって調節できる。急激なフローの変更は比較的短い移行部を形成し、比較的緩やかなフロー変更は比較的長い移行部を形成する傾向がある。材料のフローを停止することによって、たとえば層124などの層を管材内で終端させることができる(図7)。メルトポンプ、ポンプを制御するシステムおよびその方法を含む、送り速度またはポリマーのフローを制御するための好ましいシステムが、国際公開第WO01/32398号(発明の名称:カテーテル用管材を押出成形するための方法および装置(Method and Apparatus for Extruding Catheter Tubing))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他の方法には、ビュルリら(Burlis et al.)に付与された米国特許第3,752,617号に記載されているような、サーボ制御バルブの使用が含まれ、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
(他の実施形態)
他の実施形態においては、管状壁は、他の材料からなる層の間に接着層を備えることも可能である。図12を参照すると、管状壁300は、層302、304、306、308、310、312、314、316、318の9層を含む。層302、310、318は、第1の材料から形成され、層306、314は第2の材料から形成され、層304、308、312、316は接着剤から形成される。接着剤は、たとえば、第1の材料と第2の材料が不混和性である場合に使用できる。図に示すように、層304、308、312、316は、層306、314にほぼ一致するが、他の実施形態では、層304、308、312、316は上述のいずれの形状においても形成することが可能である。
【0059】
層304、308、312、316は、医療器具での使用に適した任意の接着材料から形成されてもよい。接着剤はポリマー(たとえば、ほぼ単独のポリマー、またはポリマーのブレンド)であってもよい。一例として、特定の実施形態においては、接着剤はエチレンビニルアセテートポリマーを含む材料から形成されている。他の例として、いくつかの実施形態では、接着剤はアンヒドリド変性ポリオレフィンから形成される。接着剤は、たとえば、米国デラウェア州ウィルミントンに所在するE.I.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)から販売されているBYNEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、BYNEL(登録商標)CXAシリーズ、BYNEL(登録商標)1000シリーズ、BYNEL(登録商標)1123、BYNEL(登録商標)1124、BYNEL(登録商標)11E554、BYNEL(登録商標)11E573、BYNEL(登録商標)CXA E−418)、米国ニュージャージー州ニューアークに所在するエクイスター ケミカル社(Equistar Chemicals)から販売されているPLEXAR(登録商標)のポリマー群(たとえば、PX360、PX360E、PX380、PX3227、PX3236、PX3277、PX5125、PX5327、PX206、PX209、PX2049、PX165、PX175、PX180、PX909、PX101、PX107A、PX108、PX114、PX1164)、および/または、米国ミシガン州ミッドランドに所在するダウ ケミカル社(Dow Chemical Company)から販売されているBLOX(登録商標)のポリマー群(たとえばBLOX(登録商標)200シリーズ)から選択することができる。
【0060】
一例として、層302、310、318は、医療器具での使用に適したポリエステル含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリエステルを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、たとえば、ポリエステルホモポリマー、および/またはポリエステルのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)がある。ポリエステルの例には、PETポリマー、PBTポリマー、ならびにこれらのブレンドおよび組合せ、たとえばSELAR(登録商標)PTのポリマー群(たとえば、デュポン社(DuPont)より販売されるSELAR(登録商標)PT 8307、SELAR(登録商標)PT4274、SELAR(登録商標)PTX280)、CLEARTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国ウェストバージニア州アップルグローヴに所在するM&Gポリマー社(M&G Polymers)より販売されるCLEARTUF(登録商標)8006)、TRAYTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国テキサス州ヒューストンに所在するシェル ケミカル社(Shell Chemical)より販売されるTRAYTUF(登録商標)1006、デュポン社(Dupont)より販売されるMELINAR(登録商標)のポリマー群、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)より販売されるCELANEX(登録商標)のポリマー群、ティコナ社より販売されるRITEFLEX(登録商標)のポリマー群、デュポン社より販売されるHYTREL(登録商標)のポリマー群(たとえば、HYTREL(登録商標)5556、HYTREL(登録商標)7246、HYTREL(登録商標)4056)、および米国インディアナ州エリオンスピラに所在するDSM社より販売されるARNITEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、ARNITEL(登録商標)EM630)などがある。
【0061】
層306、314は、医療器具での使用に適したポリアミド含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリアミドを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、ポリアミドホモポリマー、および/または、ポリアミドのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)などがある。ポリアミドの1つのタイプには、たとえば、Nylon 11(アトフィナ社(Atofina)より販売)、Nylon 6(米国ニュージャージー州モリスタウンに所在するハネウェル社より販売)、Nylon 6/10(米国ニュージャージー州マウントオリーブに所在するBASF社(BASFより販売)、Nylon 6/12(米国ニュージャージー州クランフォードに所在するアシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers)より販売)、Nylon 12、Nylon NXD−6、GRIVORY(登録商標)のポリマー群(米国サウスカロライナ州サムターに所在するEMS社(EMS)より販売)、GRILAMID(登録商標)のポリマー群(EMS社より販売)、VESTAMID(登録商標)のポリマー群(ダイセル−デグサ社(Daicel−Degussa Ltd)より販売)、およびPEBAX(登録商標)のポリマー群(たとえば、アトフィナ社より販売されるPEBAX(登録商標)5533、PEBAX(登録商標)2533、PEBAX(登録商標)7033)などの脂肪族ナイロンや芳香族ナイロンなどを含むナイロン系のポリマー群がある。
【0062】
上述した管材は、ガイドワイヤ(たとえば、ポリマー製のガイドワイヤ)に形成することができる。優れたトルク伝達性を備えるガイドワイヤを形成する方法は、米国特許第5,951,494号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
(例1)
以下の例は、層の数およびその径方向位置が管材の剛性に及ぼす影響を調べたシミュレーションの結果を示す。以下に述べる試料の層は交互に配置されている。壁厚はすべての試料において一定である。計算は、等しい厚さからなる均一に配分された層をもとに行っている。
【0063】
【表1】
試料Aは、単独のPEBAX(登録商標)7033から形成した管材である。試料Jは、単独のPEBAX(登録商標)7233から形成した管材であり、より高い剛性(0.867対0.545g−mm/deg)によって示されるように、PEBAX(登録商標)7033よりも高い剛性を有する。
【0064】
試料Bは、2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033、内層がPEBAX(登録商標)7233からなる。PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は50:50である。試料Bの剛性が試料Aの剛性よりも高い。これは、試料Aと比べてより多くの剛性材料、すなわちPEBAX(登録商標)7233(剛性材料)がPEBAX(登録商標)7033(より可撓性を有する材料)の代わりに使用されているためである。試料Jに比べて試料Bは剛性が低い。これは、剛性の高いPEBAX(登録商標)7233の代わりに、可撓性のより高いPEBAX(登録商標)7033がより多く使用されているためである。
【0065】
試料Cは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033、内層がPEBAX(登録商標)7233からなる。PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Bと比べて、試料Cはより多くの剛性の高い材料を有する(65重量パーセント(PEBAX(登録商標)7233)対50重量パーセント(PEBAX(登録商標)7233))ため、試料Cよりも高い剛性を有する。
【0066】
試料Dは7層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033からなり、PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Cと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Dはより高い剛性を有する。すなわち、試料CではすべてのPEBAX(登録商標)7233が管材の内面に隣接していたが、試料DではPEBAX(登録商標)7233の一部が径方向外側に移動しており、それにより管材の慣性モーメントがより影響を受けた。
【0067】
試料Eは13層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7033からなり、PEBAX(登録商標)7033対PEBAX(登録商標)7233の比率は35:65である。試料Dと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Eはより高い剛性を有する。
【0068】
試料Fは13層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Eと比べて、剛性材料(PEBAX(登録商標)7233)が管材の外面に形成されているので、試料Fはより高い剛性を有する。層の数がより多いために、試料CとIにおいて剛性材料と可撓性材料の位置を変えたときよりも、差はわずかである。
【0069】
試料Gは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は50:50である。試料Bと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Gはより高い剛性を有する。
【0070】
試料Hは7層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Fと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布されているので、試料Hはより高い剛性を有する。試料Dと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Hはより高い剛性を有する。
【0071】
試料Iは2層管であり、外層がPEBAX(登録商標)7233からなり、PEBAX(登録商標)7233対PEBAX(登録商標)7033の比率は65:35である。試料Cと比べて、より剛性の高いPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に形成されているので、試料Iはより高い剛性を有する。試料FおよびHと比べて、より多くのPEBAX(登録商標)7233が管材の外面に分布、たとえば集中しているので、試料Iはより高い剛性を有する。ただし、試料Jと比べて、PEBAX(登録商標)7233の一部により可撓性を有するPEBAX(登録商標)7033が使用されているため、試料Iは剛性が低くなる。
(例2)
PEBAX 7233およびPEBAX 5533が交互に配置された層(すなわち、PEBAX 5533が「A」層でありPEBAX 7233が「B」層である場合、ABABABABAの構造)からなる、9層管(外径約0.0558センチメートル(0.022インチ)x内径約0.0431センチメートル(0.017インチ))を以下の手順に従って形成した。
【0072】
それぞれが約1.905センチメートル(3/4インチ)径のバレル(05−09−N55)を備えた2つの押出成形機(Brabender Prepcenters(Type D−51))を使用した。一方の押出成形機はPEBAX 7233を供給し、他方はPEBAX 5533を押出成形した。両方の押出成形機の温度(華氏)を80−345−365−385とした。PEBAX 7233に対しては、クランプ前方の温度は395−395−395であり、PEBAX 5533に対しては、クランプ前方の温度は385−385−395であった。
【0073】
2つのポンプ(ゼニス社(Zenith)、0.16cc/rev)を使用した。PEBAX 7233に対するポンプでは、効率は83.6パーセント、PEBAX 5533では、効率は88.3パーセントであった。効率は、材料の所定の量を得るためのポンプの設定に影響する。各ポンプの入口圧力は約10.34MPa(約1500psi)であった。
【0074】
押出ヘッドは、米国特許出願第09/798,749号に記載されているものと同じであり、8チャネルディスクを備える。LaserMike192を使用して外径を測定し、ニコン社(Nikon)のQuadrachek200を備えたツールスコープを使用して管材を視認により検査した。プーラー(RDNマニュファクチャリング社(米国イリノイ州ブルーミングデイルに所在するRDN Manufacturing Co.,Inc.,)より販売される、OLCサーボ制御エア・ボックスを有する、Model Tapertube 0.5)を使用し、水槽を21.1°C(70°F)に設定した。
【0075】
押出成形は部品までの距離に基づいて行われた。すなわち、ギアポンプの変更は、たとえば時間によるのではなく、管材の移動に基づいて行われた。たとえば、管材が5.1センチメートル(2インチ)押出されると、第1のメルト/ギアポンプは停止状態から7.84rpmになる。1280センチメートル(504インチ)が押出された後は、このポンプは0rpmに戻る。このサイクルは繰り返される。
【0076】
【表2】
連続するポイント間では線形補間法を使用した。管材の長さは約25.3メートル(83フィート)であった。1.27メートル(50インチ)の長さで、主に内層の約8パーセントのPEBAX 7233から、主に外層の約55パーセントのPEBAX 7233へと移行が行われた。系が平衡になるまでに約2時間を要し、それにより各材料の相対量が片の長さに沿ってほぼ一定になった。
【0077】
本明細書に開示されたすべての特徴は、任意の組合せにおいて組み合わせることも可能である。開示された各特徴は、同一、同等、または同様の目的にかなう代替的な特徴に置き換えることができる。したがって他に明示されない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または同様の特徴の例に過ぎない。
【0078】
本出願において参照したすべての刊行物、出願書類、および特許を、個々の刊行物または特許について具体的かつ個別に援用の表示を行ったのと同一程度に本明細書に援用する。
【0079】
他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】多層管を示す図。
【図2】線2−2に沿った図1の管材の壁を示す断面図。
【図3】医療器具の壁の実施形態を示す断面図。
【図4】医療器具の壁の他の実施形態を示す断面図。
【図5】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図6】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図7】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図8】医療器具の壁の別の実施形態を示す断面図。
【図9】押出クロスヘッドを示す組立図。
【図9a】本発明の一実施形態による図9の第1のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9b】一実施形態による図9の第2のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9c】一1実施形態による図3の第3、第5、第7、第9、および第11のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9d】一実施形態による図3の第4、第6、第8、第10、および第12のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9e】一実施形態による図9の第13のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図9f】一実施形態によるアセンブリセクション226および228を示す断面図。
【図9g】一実施形態によるアセンブリセクション224を示す断面図。
【図9h】一実施形態によるアセンブリセクション222を示す断面図。
【図9i】一実施形態によるマンドレルを示す断面図。
【図9j】一実施形態によるアセンブリセクション230を示す断面図。
【図9k】一実施形態によるノズルを示す断面図。
【図10】一実施形態によるクロスヘッドの配置を示す組立図。
【図11a】一実施形態による図9の第1のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11b】一実施形態による図9の第2のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11c】一実施形態による図3の第3、第5、第7、第9、および第11のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11d】一実施形態による図3の第4、第6、第8、第10、および第12のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図11e】一実施形態による図9の第13のクロスヘッドディスクを示す断面図。
【図12】医療器具の壁の実施形態を示す断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具であって、
第1の材料と、該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料とからなる少なくとも4つの層を備え、
該層の少なくとも1つの層の厚さが該器具の軸線方向において可変である医療器具。
【請求項2】
先端部より基端部においてより高い剛性を有する請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記第1および第2の材料が交互に配置される請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記層が前記器具のほぼ長さにわたって延びる請求項1に記載の器具。
【請求項5】
少なくとも5つの層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項6】
少なくとも7つの層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項7】
少なくとも13の層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記器具のほぼ全長にわたって同数の層を有する請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具のほぼ全長にわたって可変である請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具の選択された一部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具の選択された複数の部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項12】
複数の異なる材料からなる複数の層の厚さが、前記器具の選択された異なる部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項13】
複数の異なる材料からなる複数の層の厚さが、前記器具の選択されたほぼ同一の部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記第1および第2の材料が共通のブロック部分を含むブロックコポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記ブロック部分がアミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントからなる請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記第1および第2の材料のうちの少なくともいずれか一方が、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記第1および第2の材料のうちの少なくともいずれか一方が、ポリマーのブレンドからなる請求項1に記載の器具。
【請求項18】
管状をなす請求項1に記載の器具。
【請求項19】
カテーテルシャフトの形態を取る請求項1に記載の器具。
【請求項20】
ガイドワイヤの形態を取る請求項1に記載の器具。
【請求項21】
押出成形された器具である請求項1に記載の器具。
【請求項22】
医療器具であって、
第1の材料から形成された第1の層と、
該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された第2の層と、
該第1の層と第2の層との間において接着材料からなる第3の層とを備え、
該第1の層の厚さが該器具の軸線方向に沿って可変である医療器具。
【請求項23】
医療器具を製造する方法であって、
第1の材料と、該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料とから形成される少なくとも3つの層からなる管材を形成する工程と、
該層の少なくとも1つの層の厚さを該器具に沿って軸線方向に変化させる工程とを含む方法。
【請求項24】
前記層を共押出成形する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記管材をガイドワイヤに形成する工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項1】
医療器具であって、
第1の材料と、該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料とからなる少なくとも4つの層を備え、
該層の少なくとも1つの層の厚さが該器具の軸線方向において可変である医療器具。
【請求項2】
先端部より基端部においてより高い剛性を有する請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記第1および第2の材料が交互に配置される請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記層が前記器具のほぼ長さにわたって延びる請求項1に記載の器具。
【請求項5】
少なくとも5つの層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項6】
少なくとも7つの層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項7】
少なくとも13の層からなる請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記器具のほぼ全長にわたって同数の層を有する請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具のほぼ全長にわたって可変である請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具の選択された一部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記層の少なくとも1つの層の厚さが前記器具の選択された複数の部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項12】
複数の異なる材料からなる複数の層の厚さが、前記器具の選択された異なる部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項13】
複数の異なる材料からなる複数の層の厚さが、前記器具の選択されたほぼ同一の部分において可変である請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記第1および第2の材料が共通のブロック部分を含むブロックコポリマーからなる請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記ブロック部分がアミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントからなる請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記第1および第2の材料のうちの少なくともいずれか一方が、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択される請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記第1および第2の材料のうちの少なくともいずれか一方が、ポリマーのブレンドからなる請求項1に記載の器具。
【請求項18】
管状をなす請求項1に記載の器具。
【請求項19】
カテーテルシャフトの形態を取る請求項1に記載の器具。
【請求項20】
ガイドワイヤの形態を取る請求項1に記載の器具。
【請求項21】
押出成形された器具である請求項1に記載の器具。
【請求項22】
医療器具であって、
第1の材料から形成された第1の層と、
該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料から形成された第2の層と、
該第1の層と第2の層との間において接着材料からなる第3の層とを備え、
該第1の層の厚さが該器具の軸線方向に沿って可変である医療器具。
【請求項23】
医療器具を製造する方法であって、
第1の材料と、該第1の材料とは異なる剛性を有する第2の材料とから形成される少なくとも3つの層からなる管材を形成する工程と、
該層の少なくとも1つの層の厚さを該器具に沿って軸線方向に変化させる工程とを含む方法。
【請求項24】
前記層を共押出成形する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記管材をガイドワイヤに形成する工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図9e】
【図9f】
【図9g】
【図9h】
【図9i】
【図9j】
【図9k】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図9e】
【図9f】
【図9g】
【図9h】
【図9i】
【図9j】
【図9k】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12】
【公表番号】特表2007−502657(P2007−502657A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523899(P2006−523899)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025632
【国際公開番号】WO2005/021079
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025632
【国際公開番号】WO2005/021079
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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