説明

多層シートとポリアルキル(メタ)アクリラートをベースとする支持体とからなる複合材

複合材は、I. 次の層:a) ポリアミド成形材料からなる層及びb) 定着剤からなる内側の層、前記層はコポリマーを5〜100質量%含有し、前記コポリマーは次のモノマー単位を有する:− アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、α−オレフィン及びビニル芳香族から選択されるビニル化合物から誘導されたモノマー単位70〜99.9質量%及び− カルボン酸無水物基、エポキシ基及びオキサゾリン基から選択される官能基を有するモノマー単位0.1〜30質量%を有する多層シートと、II. ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる支持体とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、多層シートとポリアルキル(メタ)アクリラートをベースとする支持体とからなる複合材である。
【0002】
WO 2005/123384には、多層シートとABS成形材料からなる部分とからなる複合材が記載されている。
【0003】
ポリアルキルアクリラート又はポリアルキルメタクリラート[例えばポリメチルメタクリラート(PMMA)]からなる射出成形されたか又は押出成形された成形品は、ポリアルキル(メタ)アクリラートの透明性及びその他の良好な光学的及び機械的特性により広範囲に使用されている。ポリアルキル(メタ)アクリラートの欠如する耐薬品性及び顕著な応力亀裂敏感性のために、しかしながら、この成形品は、溶剤又は薬品の作用が確実に排除できない箇所ではいずれも使用できない。EP 0 696 501 A2には、ポリアミドを用いたポリアルキル(メタ)アクリラート成形品の良好に定着する被覆により前記欠点を排除でき、その際、定着剤を使用しなければならないことが記載されている。
【0004】
EP 0 696 501 A2による成形品の製造の場合には、方法により限定されており、これは特に装飾された部材の製造の際に通用する。さらに、EP 0 696 501 A2により製造された部材の場合には高価な材料であるポリアミド及び定着剤からなる層が不必要に厚く、これが製造コストを高めている。
【0005】
本発明の根底をなす課題は、前記欠点を回避し、造形のより大きな自由度を達成することであった。
【0006】
前記課題は、
I. 次の層を有する多層シート:
a) ポリアミド成形材料からなる層及び
b) 定着剤からなる内側の層(eine nach innen hin folgende Schicht)、前記層はコポリマーを5〜100質量%含有し、前記コポリマーは次のモノマー単位を有する:
− アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、α−オレフィン及びビニル芳香族から選択されるビニル化合物から誘導されたモノマー単位70〜99.9質量%及び
− カルボン酸無水物基、エポキシ基及びオキサゾリン基から選択される官能基を有するモノマー単位0.1〜30質量%、及び
II. ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる支持体
から構成された複合材により解決される。
【0007】
本発明の主題は、II.による支持体を有する複合材の製造のための、I.によるシートの使用でもある。
【0008】
I.a)による層のポリアミドは限定されない。第1に、この場合、脂肪族単独重縮合体及び共重縮合体、例えばPA46、PA66、PA88、PA610、PA612、PA810、PA1010、PA1012、PA1212、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11及びPA12が挙げられる。(ポリアミドの記号は国際規格に相応しており、その際、1つ以上の最初の数字は出発ジアミンのC原子数を示し、1つ以上の最後の数字はジカルボン酸のC原子数を示す。数字が1つだけ挙げられている場合、これは、α,ω−アミノカルボン酸から、もしくはα,ω−アミノカルボン酸から誘導されたラクタムから出発していることを意味し;その他の点はH. Domininghaus著, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften(プラスチック及びその特性), 第272頁以下, VDI出版, 1976を参照)。
【0009】
コポリアミドを使用する場合、前記コポリアミドは例えばアジピン酸、セバシン酸、コルク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸等を共酸(Cosaeure)として、もしくはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を共ジアミン(Codiamin)として含有してよい。ラクタム、例えばカプロラクタム又はラウリンラクタム又はアミノカルボン酸、例えばω−アミノウンデカン酸は共成分として同様に導入されていてよい。
【0010】
これらのポリアミドの製造は公知である(例えばD. B. Jacobs, J. Zimmermann著, Polymerization Processes, 第424 - 467頁, Interscience Publishers, New York, 1977;DE−AS2152194号)。
【0011】
さらに、ポリアミドとして混合した脂肪族/芳香族の重縮合体も適していて、これらは例えば米国特許明細書番号4163101、4603166、4831108、5112685、5436294及び5447980並びにEP−A−0309095に記載されている。これは一般的には重縮合体であり、このモノマーは、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸及びイソフタル酸、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン並びにラクタム又はω−アミノカルボン酸、例えばカプロラクタム、ラウリンラクタム及びω−アミノウンデカン酸から選択される。重縮合体中の芳香族モノマー単位の含有率は、全モノマー単位の合計に対して、一般に少なくとも0.1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は約50%である。この種の重縮合体は頻繁に、「ポリフタルアミド」又は「PPA」といわれる。他の適当なポリアミドは、ポリ(エーテルエステルアミド)又はポリ(エーテルアミド)であり;この種の生成物は、例えばDE−OS2523992、2723991及び3006961記載されている。
【0012】
このポリアミド成形材料は、これらのポリアミドの1種か又は混合物として複数種を含有してよい。更に、結合能を妨害しない限り、40質量%までの熱可塑性プラスチック、特に衝撃強さを付与するゴム、例えばエチレン/プロピレン−コポリマー又はエチレン/プロピレン/ジエン−コポリマー、ポリペンテニレン、ポリオクテニレン、アルケニル芳香族化合物と脂肪族オレフィン又はジエンとのランダムもしくはブロック状に構成されたコポリマー(EP−A−0261748号)、又はガラス転移温度Tg<−10℃の(メタ)アクリレート−ゴム、ブタジエン−ゴム又はスチレン/ブタジエンゴムからなる延性のコアを有するコア/シェル−ゴム(その際、前記コアは架橋されていてもよく、前記シェルはスチレン及び/又はメチルメタクリレート及び/又は更なる不飽和モノマーから構成されていてもよい)(DE−OS2144528号、同3728685号)を含有することができる。
【0013】
このポリアミド成形材料は、ポリアミドに対して通常の助剤及び添加剤、例えば難燃剤、安定剤、UV吸収剤、可塑剤、加工助剤、充填剤、特に導電性を改善するための充填剤、ナノ充填剤、顔料、染料、核生成剤等を添加することができる。前記の剤の量は、所望の特性に重大な悪い影響を与えない程度に添加される。大抵の適用のために、前記ポリアミド成形材料は使用された層厚の場合に十分に透明であるのが望ましい。
【0014】
有利な実施態様の場合に、ジアミン、ジカルボン酸又はラクタム(又はアミノカルボン酸)から誘導される前記ポリアミドのモノマー単位は、平均で少なくとも8個のC原子、特に有利に少なくとも9個のC原子を有する。
【0015】
本発明の範囲内で、特に適したポリアミドは次のものである:
− 1,12−ドデカン二酸及び4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(PA PACM12)からなる、特に35〜65%のトランス,トランス−異性体成分を有する4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンから出発するポリアミド;
− セバシン酸又は1,12−ドデカン二酸と3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンからなるポリアミド;
− PA612、PA1010、PA1012、PA11、PA12、PA1212並びにこれらの混合物;
− 次のモノマーの組合せから製造可能であるコポリアミド:
a) 脂肪族の非分枝のジアミンと脂肪族の非分枝のジカルボン酸とからなるほぼ等モルの混合物65〜99Mol%、有利に75〜98Mol%、特に有利に80〜97Mol%、殊に有利に85〜96Mol%、(その際、前記混合物は場合により塩として存在し、かつさらに、ジアミンとジカルボン酸とからなる混合物がモノマーあたり平均で8〜12個のC原子、有利に9〜11個のC原子を含有する条件で、ジアミン及びジカルボン酸は組成の計算の際にそれぞれ個々に数えられる);
b) 脂環式ジアミン及びジカルボン酸からなるほぼ等モルの混合物1〜35Mol%、有利に2〜25Mol%、特に有利に3〜20Mol%、殊に有利に4〜15Mol%。
前記定着剤は、作用成分として有利に次のモノマー単位を含有するコポリマー5〜100質量%、有利に10〜80質量%、特に有利に15〜60質量%及び殊に有利に20〜40質量%を含有する:
1. 次の式の単位から選択されるモノマー単位約70〜約99.9質量%、有利に80〜99.4質量%、特に有利に85〜99質量%:
【化1】

[式中、R1=H又はCH3、及びR2=H、メチル、エチル、プロピル又はブチル];
【化2】

[式中、R1は上記と同様及びR3及びR4は、相互に無関係に、H、メチル又はエチル];
【化3】

[式中、R1は上記と同様];
【化4】

[式中、R5=H又はCH3及びR6=H又はC65];
【化5】

[式中、R1は上記と同様及びR7=H、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニル及びm=0又は1]。
【0016】
2. 次の式の単位から選択されるモノマー単位約0.1〜約30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%:
【化6】

[式中、R1及びmは上記と同様];
【化7】

[式中、R1は上記と同様];
【化8】

[式中、R1は上記と同様]。
【0017】
前記置換基R1〜R5並びにR7の場合の鎖長の制限は、比較的長いアルキル基が低下されたガラス転移温度ひいては減少された熱形状安定性を生じさせることに基づく。このことは個々の場合に考慮される。
【0018】
式(I)の単位は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、n−プロピルメタクリラート又はi−ブチルメタクリラートから誘導される。
【0019】
式(II)の単位は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド又はN,N−ジメチルアクリルアミドから誘導される。
【0020】
式(III)の単位は、アクリルニトリル又はメタクリルニトリルから誘導される。
【0021】
式(IV)の単位は、エテン、プロペン、スチレン又はα−メチルスチレンから誘導され;最後のものは完全に又は部分的に他の重合可能な芳香族化合物、例えば同様に作用するp−メチルスチレン又はインデンに置き換えられていてもよい。
【0022】
式(V)の単位は、m=0の場合に、場合により置換されたマレインイミド類、例えばマレインイミド、N−メチルマレインイミド、N−エチルマレインイミド、N−フェニルマレインイミド又はN−メチルアコニット酸イミドから誘導される。m=1の場合に、前記単位は、ポリマーにおいて式(I)の隣り合う2つの単位と、アンモニア又は第1級アミンとのイミド形成下での反応により誘導される。
【0023】
式(VI)の単位は、m=0の場合に、場合により置換された無水マレイン酸類、例えば無水マレイン酸又はアコニット酸無水物から誘導される。後者のものは完全に又は部分的に、同様に作用する他の不飽和酸無水物、例えばイタコン酸無水物に置き換えられていてもよい。m=1の場合には、前記単位は、ポリマー中で隣り合う2つの式(I)(R2=H)の単位から閉環下での水の脱離により誘導される。
【0024】
式(VII)の単位は、グリシジルアクリラート又はグリシジルメタクリラートから誘導され、式(VIII)の単位は、ビニルオキサゾリン又はイソプロペニルオキサゾリンから誘導される。
【0025】
コポリマーについては、次の単位を含有する多様な実施態様が有利である:
A. 式(I)の単位(その際、R2はHではない)14〜96質量%、有利に20〜85質量%、特に有利に25〜75質量%;
式(V)の単位(その際、m=1)0〜75質量%、有利に1〜60質量%、特に有利に5〜40質量%;
式(I)の単位(その際、R2=H)0〜15質量%、有利に0〜10質量%、特に有利に0.1〜7質量%;
式(VI)の単位(その際、m=1)0.1〜30質量%、有利に1〜20質量%、特に有利に2〜15質量%。
【0026】
式(V)の単位の存在で、この種のコポリマーはポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミド又はときにはポリグルタルイミドとも言われる。これはポリアルキルアクリラート又はポリアルキルメタクリラートから出発し、その際2つの隣り合うカルボキシラート基が反応して1つの環状酸イミドになっている生成物である。このイミド形成は、有利にアンモニア又は第1級アミン、例えばメチルアミンにより、水の存在で実施され、その際、式(VI)の単位及び場合により式(I)の単位(R2=H)は加水分解により生じる。この生成物並びにその製造は公知である(Hans R. Kricheldorf著, Handbook of Polymer Synthesis, Part A, Marcel Dekker Inc.出版 New York-Basel-Hongkong, p. 223 f., H. G. Elias著, Makromolekuele, Huethig und Wepf出版 Basel-Heidelberg-New York; US 2 146 209 A; US 4 246 374)。水とだけ反応する場合に、式(VI)の単位並びに場合により酸性の単位(I)は、加水分解により、イミド単位(V)が形成されることなく得られる。
【0027】
B. 式(IV)の単位10〜60質量%、有利に15〜50質量%、特に有利に20〜40質量%;
式(III)の単位39.9〜80質量%、有利に44.9〜75質量%、特に有利に49.9〜70質量%;
式(VI)の単位(その際、m=0)0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%。
【0028】
この種のコポリマーは、公知の方法で、例えば脂肪族不飽和の芳香族化合物、不飽和カルボン酸無水物及びアクリルニトリル又はメタクリルニトリルのラジカル開始共重合により得られる。
【0029】
C. 式(I)の単位39.9〜99.9質量%、有利に49.9〜99.4質量%、特に有利に59.9〜99質量%;
式(IV)の単位0〜60質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に2〜40質量%;
式(VI)の単位(その際、m=0)0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%。
【0030】
この種のコポリマーは、公知の方法で、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はこれらのエステル、場合により脂肪族不飽和の芳香族化合物又はオレフィン並びに不飽和カルボン酸無水物のラジカル開始共重合により得られる。
【0031】
D. 式(I)の単位25〜99.8質量%、有利に40〜98.4質量%、特に有利に50〜97質量%;
式(III)の単位0.1〜45質量%、有利に1〜40質量%、特に有利に2〜35質量%;
式(VI)の単位(その際、m=0)0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%。
【0032】
この種のコポリマーは、公知の方法で、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はこれらのエステル、アクリルニトリル又はメタクリルニトリル及び不飽和カルボン酸無水物のラジカル開始共重合により得られる。
【0033】
E. 式(VI)の単位(その際、m=0)0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%を含有するABSポリマー。前記単位は、鎖中に重合により組み込まれるか又は鎖にグラフトされていてもよい。
【0034】
F. 式(I)(その際、R2はHではない)及び(III)から選択される単位0〜99.9質量%、有利に0.1〜99.4質量%、特に有利に2〜99質量%;
式(IV)の単位0〜60質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に2〜40質量%;
式(VII)の単位0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%。
【0035】
G. 式(I)(その際、R2はHではない)及び(III)から選択される単位0〜99.9質量%、有利に0.1〜99.4質量%、特に有利に2〜99質量%;
式(IV)の単位0〜60質量%、有利に0.1〜50質量%、特に有利に2〜40質量%;
式(VIII)の単位0.1〜30質量%、有利に0.6〜20質量%、特に有利に1〜15質量%。
【0036】
このコポリマーは、それぞれの場合に、所望の定着作用に著しく悪い影響を及ぼさない限り、付加的に他のモノマー単位、例えばマレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸エステル又は酢酸ビニルから誘導されるようなモノマー単位を含むことができる。
【0037】
この定着剤は、一実施態様の場合に完全にコポリマーからなることができ;このバリエーションの場合に、前記コポリマーは衝撃強さ改質剤、例えばアクリラートゴムを含有することができる。
【0038】
第2の実施態様の場合に、前記定着剤は、コポリマー5〜99.9質量%、有利に10〜80質量%、特に有利に15〜60質量%、殊に有利に20〜40質量%及びポリアルキル(メタ)アクリラート、ポリカーボネート、MBS(メチルメタクリラート−ブタジエン−スチレン−コポリマー、例えばRoehm社のCYROLITE(R))、SAN(スチレン−アクリルニトリル−コポリマー)及び/又はABS0.1〜95質量%、有利に20〜90質量%、特に有利に40〜85質量%、殊に有利に60〜80質量%を含有する。
【0039】
第3の実施態様の場合に、前記定着剤は、コポリマー5〜99.9質量%、有利に10〜80質量%、特に有利に15〜60質量%、殊に有利に20〜40質量%及びポリアミドと、ポリカーボネート、SAN、ABS及びポリアルキル(メタ)アクリルラートから選択されるポリマーとの99.1:0.1〜0.1〜99.9、有利に70:30〜10:90の質量比の混合物0.1〜95質量%、有利に20〜90質量%、特に有利に40〜85質量%、殊に有利に60〜80質量%を含有する。
【0040】
他の実施態様の場合に、前記定着剤は、前記コポリマーの他に、ポリアミド層に対する定着及び支持体に対する定着に少なくとも悪い影響を与えない他の適当なポリマーを含有することができる。
【0041】
前記定着剤は、通常の助剤及び添加剤、例えば難燃剤、安定剤、可塑剤、加工助剤、着色剤、顔料等を含有することができる。前記の剤の量は、所望の特性に重大な悪い影響を与えない程度に添加される。
【0042】
特許請求の範囲に記載された定着剤を用いて、ポリアミド層と支持体との間の強固な付着が達成される。
【0043】
ポリアミド成形材料と特許請求の範囲に記載された定着剤とからなる本発明に含まれる層の他に、前記シートは、適応に応じて他の層、例えば有利にポリマー組成が前記支持体に十分に一致する、ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる、支持体側の保護層又は、MBS成形材料、ABS成形材料又はポリカーボネート成形材料からなる、支持体側の保護層、着色層、他のポリアミド層、例えば支持体層として、及び/又は保護層又はクリアコートを含有することができる。
【0044】
前記着色層は塗料層であることができ;前記層は先行技術に応じて有利に着色された熱可塑性プラスチック層からなる。この熱可塑性プラスチック層は、I.a)による層と同一であることができる。他の実施態様の場合に、前記着色層はI.a)による層の外側に又は内側に続いていることができる。前記シートは、適用技術的に必要な場合に、例えば着色の所望の立体効果を保証するために場合により外側がクリアコートにより覆われている。着色剤として、例えば有機着色剤、無機又は有機顔料又は金属小片を使用することができる。
【0045】
前記クリアコートは先行技術に応じて、例えばポリアミド、アクリラートポリマー、フルオロポリマー又はこれらの混合物からなることができる。前記クリアコートは、要求された視覚的表面特性を保証し、かつその下の層を保護するべきである。前記クリアコートは、例えばポリウレタンベースの透明塗料であることができる。塗料の形の保護層は耐引掻性を高めるためにも先行技術により変性することができる。その他に、前記部材に真空蒸着法により保護層を作製することも可能でもある。
【0046】
前記クリアコートがポリアミドである場合に、このために特に上記にI.a)による層のために特に適していると記載されたポリアミドが挙げられる。
【0047】
このクリアコートは、場合により透明に着色されていてもよいが、このクリアコートは着色されていないのが有利である。
【0048】
支持体層は、前記シートがその厚さにより、より大きな強度を付与する層である。
【0049】
付加的に、仕上がった多層シート上に引きはがし可能な保護シートをラミネートすることができ、前記保護シートは輸送の保護又は取り付けの保護として作用し、複合材の製造の後に引き剥がされる。
【0050】
有利な実施態様の場合には、I.a)による前記層、前記着色層及び/又は前記支持体層は、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドを含有する、有利に、6〜18個、有利に6〜12個のC原子を有する線状の脂肪族ジアミン、6〜18個、有利に6〜12個のC原子を有する線状の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、及び酸素原子1個あたり平均して2.3個より多いC原子を有しかつ数平均分子量200〜2000を有するポリエーテルをベースとするポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドを含有する成形材料を有する。前記層の成形材料は、他のブレンド成分、例えば、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基又はエポキシ基を有するポリアクリラート又はポリグルタルイミド、官能基を含むゴム及び/又はポリアミドを含むことができる。この種の成形材料は、公知技術水準であり;この成形材料は、例えばEP 1 329 481 A2およびDE-OS 103 33 005に記載されており、これらの刊行物はここで明確に援用される。場合により外側に続く又は内側に続くポリアミド層に対して良好な層の定着を保証するために、ポリアミドエラストマーのポリアミド割合は、ポリアミド層の成分に一つに使用された同じモノマーから構成される場合が有利である。このことは、しかしながら、良好な定着を達成するために強制的に必要なわけではない。ポリアミドエラストマーに対して択一的に、前記層I.a)、着色層及び/又は支持体層は、ポリアミドの他に通常の衝撃強さを付与するゴムを含有することもできる。有利に、この実施態様に関して、多くの場合に、射出成形によるインモールドラミネーション(Hinterspritzen)の前の別個の工程としてシートの熱成形は必要ない、それというのも前記シートは射出成形によるインモールドラミネーションにより同時に変形されるためである。
【0051】
本発明により使用されるシートの適切な層配置の例は、それぞれ外側から内側に(支持体に向かって)次のようである:
a) I.a)による層/I.b)による層
b) I.a)による層/I.b)による層/ポリアルキル(メタ)アクリラートからなる層
c) クリアコート/着色層としてのI.a)による層/I.b)による層
d) クリアコート/着色層/I.a)による層/I.b)による層
e) クリアコート/支持体層/I.a)による層/I.b)による層
f) クリアコート/着色層/支持体層/I.a)による層/I.b)による層
g) クリアコート/着色層/支持体層/I.a)による層/I.b)による層/ポリアルキル(メタ)アクリラートからなる層
前記多層シートは、有利な一実施態様の場合に、厚さ0.02〜1.2mm、特に有利に0.05〜1mm、さらに特に有利に0.1〜0.8mm、殊に有利に0.2〜0.6mmを有する。前記定着剤層は、この場合、有利な一実施態様の場合に、厚さ0.01〜0.5mm、特に有利に0.02〜0.4mm、さらに特に有利に0.04〜0.3mm、殊に有利に0.05〜0.2mmを有する。前記シートは公知の方法、例えば押出成形により、又は多層系の場合には同時押出成形又はラミネーションにより製造される。前記シートは、引き続き場合により変形することができる。
【0052】
前記シートと前記支持体との素材結合(stoffschluessige Verbindung)は、例えば接着、圧縮成形、ラミネーション、射出成形によるインモールドラミネーション、発泡成形によるインモールドラミネーション(Hinterschaeumen)又は圧縮成形によるインモールドラミネーション(Hinterpressen)により製造することができる。前記シートと前記支持体との複合材を形成する前に、前記シートを更に、例えば熱変形、深絞り又は別の方法により加工又は変形させることができる。前記表面を例えばエンボス加工により構造化することができる。前記表面の構造化は、前方に配置された、シート押出の範囲内で、例えば特別に構成されたロールにより行うこともできる。得られた複合材を、引き続き更に変形させることができる。
【0053】
前記支持体は、特にアルキル基の炭素鎖中に1〜6個のC原子を有するポリアルキル(メタ)アクリラートからなり、その際、メチル基がアルキル基として有利である。前記ポリアルキル(メタ)アクリラートは、通常では、ISO1133により230℃で3.8kgの荷重で測定してメルトフローインデックス0.5〜30g/10min、有利に0.8〜15g/10minを有する。例として、特にポリメチルメタクリラート及びポリブチルメタクリラートが挙げられる。しかしながら、ポリアルキル(メタ)アクリラートのコポリマーを使用することもできる。アルキル(メタ)アクリラートの50質量%まで、有利に30質量%まで、特に有利に20質量%まで、他のモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリルニトリル、アクリルアミド等に置き換えられていてもよい。この成形材料は、例えばこの種の成形材料のために通常のコア/シェル−ゴムの添加により耐衝撃性に調節されていてもよい。さらに、50質量%より少なく、有利に最大で40質量%まで、特に有利に最大で30質量%まで、殊に有利に最大で20質量%まで他の熱可塑性プラスチック、例えばSAN(スチレン/アクリルニトリル−コポリマー)、ABS及び/又はポリカーボネートを含有していてもよい。このポリアルキル(メタ)アクリラートは、さらに、安定剤、加工助剤、充填剤、補強剤、着色剤、顔料並びに他の常用に添加剤及び添加物を通常の量で含むことができる。適当な成形材料は先行技術であり、例えば、EP 0 716 122 A2、EP 0 776 931 A1、WO 99/42271及びUS 5 232 986に指摘されている。
【0054】
有利な実施態様の場合に、特許請求の範囲に記載されたシートは、光学部材のカバー層として使用される。このための例は、散乱スクリーン、ヘッドライトディスク、テールライトディスク、レンズ、プリズム、眼鏡用レンズ、ディスプレー、ディスプレーの装飾部材、各性質のシフティングならびに携帯電話ケーシングである。
【0055】
更なる有利な実施態様の場合に、特許請求の範囲に記載されたシートは、シート複合材のカバー層として、自動車及び商用車の表面の造形又は装飾のために使用され、その際、前記シートは支持体と付着結合している。相応して造形された構造部材は平面的に成形されていてよく、例えば車体部材、例えばルーフモジュール、フェンダー、エンジンフード又はドアである。その他に、縦長の、程度に差はあるが湾曲した構造部材、例えばライニング、例えば自動車のいわゆるAピラートリム又はあらゆる種類のインナトリム及びカバートリム、例えばラジオカバートリムを製造する実施態様も考慮される。他の例は、サイドシル用の保護ライニングである。自動車の外部領域における適用の他に、インテリアの構成部材、特に装飾部材、例えばトリム及びカバーを有利に本発明によるシートにより装飾することもできる、それというのも、室内でも耐衝撃性及び耐薬品性、例えば洗浄剤に対する耐性が必要なためである。
【0056】
前記シートはさらに例えば、汚れ、UV線、気候の影響、化学薬品又は摩擦に対する保護シートとして使用することができ、車両、家庭内、床、トンネル、テント及び建築物におけるバリヤシートとして、又は例えばスポーツ用品、ボート、飛行機、家庭内又は建築物における上塗のための装飾支持体として使用することができる。これらの例は、医療用品、衛生用品又は健康用品、例えばヒゲ剃り、電動歯ブラシ並びに医学的器具又は部材でもある。
【0057】
次の実施例は本発明を説明する。これらの実施例において、次の材料を使用した:
PA PACM12:TROGAMID(R) CX7323 (Degussa GmbH社)
PA12:ISO307により測定して相対溶液粘度ηrel2.1を有するタイプ
PA1012:相対溶液粘度ηrel2.1を有するタイプ
PA1010:相対溶液粘度ηrel2.0を有するタイプ
定着剤(HV):次の組成のコポリマー
a) 次の式のモノマー単位57質量%
【化9】

b) 次の式のモノマー単位30質量%
【化10】

c) 次の式のモノマー単位3質量%
【化11】

d) 次の式のモノマー単位10質量%
【化12】

【0058】
このコポリマー、ポリメタクリルイミドは、ポリメチルメタクリラート(PMMA)の融液をメチルアミン水溶液と、例えば押出機中で反応させることにより製造可能である。
【0059】
PMMA:PLEXIGLAS(R) 7N (Roehm GmbH社)
多層シートの製造は、Collin社の装置で引落速度2.0m/minで行った。この押し出された単一層を統合し、カレンダーを通した。前記シートは、幅24cmであり;ポリアミド層は約180μmの厚さを有し、定着剤層は約240μmの厚さを有していた。
【0060】
この射出成形によるインモールドラミネーションは、Engel 650/200タイプの装置で80℃の金型温度及び260℃の材料温度で行った。前記シートはこの場合100mm×150mmのサイズに裁断し、金型(プレート105mm×150mm×0.8〜10mm)中にインサートした。インモールドラミネーションされるプレートの厚さは、最終的に3mmのシートである。
【0061】
比較測定のために、相応してPMMAからなる同様のプレートを、シートなしで製造した。
【0062】
表1:実施例1〜4及び比較例A
【表1】

【0063】
前記複合材を機械的に分離する試験の際に、全ての実施例において層境界面に強固な付着が確認された。全ての場合に分離は行われず、その代わりに前記シート層の粘着性の破損が生じた。
【0064】
前記複合材の透明性は、薄いシートにより、部分結晶性ポリアミドPA12、PA1012及びPA1010を使用した場合でも、悪い影響は確認されなかった。
【0065】
23℃でトルエンの液滴で処理した後に、比較例Aの場合に、PMMAの表面は著しく応力亀裂により損傷した。それに対して、実施例1〜4の場合には、前記シート側にトルエンを塗布した後でも応力亀裂は確認されなかった。
【0066】
製造されたシートを深絞り成形し、三次元的に湾曲した型内にインサートし、次いで射出成形によりインモールドラミネーションした場合でも同じ結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる支持体との複合材を製造するための、次の層:
a) ポリアミド成形材料からなる層及び
b) 定着剤からなる内側の層、前記層はコポリマーを5〜100質量%含有し、前記コポリマーは次のモノマー単位を有する:
− アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、α−オレフィン及びビニル芳香族から選択されるビニル化合物から誘導されたモノマー単位70〜99.9質量%及び
− カルボン酸無水物基、エポキシ基及びオキサゾリン基から選択される官能基を有するモノマー単位0.1〜30質量%
を有する多層シートの使用。
【請求項2】
前記コポリマーが次のモノマー単位:
a) 次の式の単位から選択されるモノマー単位70〜99.9質量%:
【化1】

[式中、R1=H又はCH3、及びR2=H、メチル、エチル、プロピル又はブチル];
【化2】

[式中、R1は上記と同様及びR3及びR4は、相互に無関係に、H、メチル又はエチル];
【化3】

[式中、R1は上記と同様];
【化4】

[式中、R5=H又はCH3及びR6=H又はC65];
【化5】

[式中、R1は上記と同様及びR7=H、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニル及びm=0又は1];
b) 次の式の単位から選択されるモノマー単位0.1〜30質量%:
【化6】

[式中、R1及びmは上記と同様];
【化7】

[式中、R1は上記と同様];
【化8】

[式中、R1は上記と同様]
を有することを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記定着剤が
前記コポリマー5〜99.9質量%及び
ポリアルキル(メタ)アクリラート、ポリカーボネート、SAN、MBS及び/又はABS0.1〜95質量%を有することを特徴とする、請求項1及び2記載の使用。
【請求項4】
前記定着剤が
前記コポリマー5〜99.9質量%及び
ポリアミドと、ポリアルキル(メタ)アクリラート、ポリカーボネート、SAN、MBS及びABSから選択されるポリマーとの質量比99.9:0.1〜0.1〜99.9の混合物0.1〜95質量%を有することを特徴とする、請求項1及び2記載の使用。
【請求項5】
前記多層シートは、
− 支持体側の、ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる保護層、
− 着色層、
− 他のポリアミド層
− 保護層又はクリアコート並びに
− 引き剥がし可能な保護シート
から選択される他の層を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記複合材を、接着、圧縮成形、ラミネーション、射出成形によるインモールドラミネーション、発泡成形によるインモールドラミネーション又は圧縮成形によるインモールドラミネーションにより製造することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
− 請求項1から6までのいずれか1項記載の使用により使用された多層シートと、
− ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料からなる支持体とから構成された複合材。
【請求項8】
前記支持体が平面状に成形されていることを特徴とする、請求項7記載の複合材。
【請求項9】
光学部材、自動車及び商用車の部材又は医療用品、衛生用品又は健康用品であることを特徴とする、請求項7及び8記載の複合材。
【請求項10】
接着、圧縮、ラミネーション、射出成形によるインモールドラミネーション、発泡成形によるインモールドラミネーション又は圧縮成形によるインモールドラミネーションにより、多層シートと支持体とからなる複合材を製造することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の複合材の製造方法。

【公表番号】特表2010−501380(P2010−501380A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526047(P2009−526047)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058716
【国際公開番号】WO2008/025706
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】