説明

多層フィルム及びその製造方法

耐熱性及び高温平坦度が向上することにより、ガラス転移温度(Tg)以下で容易に工程進行が可能であることはもちろん、ガラス転移温度(Tg)以上でカール、粘着、伸び現象が発生することを抑制したり、カール、粘着、伸び現象無しで容易に工程進行が可能な多層構造のフィルム及びその製造方法を提供する。高分子基材と、該高分子基材の上面及び下面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むバッファ層とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及びその製造方法に関し、より詳細には、耐熱性及び高温平坦度が改善された多層構造のフィルム及びその製造方法に関する。本出願は、2008年11月19日に韓国特許庁へ提出された韓国特許出願第10−2008−0115391号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
有機や無機発光体、ディスプレイ装置、太陽光発電素子を含む各種電子素子に使用されるガラス板は、光透過度、熱膨張係数、耐化学性などで満足するような特性を有しているが、重くて割れやすく、固くて取り扱いに注意が必要であることから、製品の設計において制限要素として作用している。
【0003】
上記のような問題のため、電子素子に使用されるガラス板を、軽くて、耐衝撃性に優れ、柔軟な特性を有する代表的物質であるプラスチックに取り替えようとする試みが活発に進められている。しかし、現在、商業的に生産されるプラスチックフィルムは、ガラス板に比べて多くの短所を有しており、物性の補完が必要である。特に、既存のプラスチックフィルムは、ガラス転移温度(Tg)以上の温度で加工する場合、カール(curl)、粘着、伸び現象が発生して、ロールプロセス(roll process)を行うことが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2005-0175831 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために提案されたものであって、その目的は、耐熱性及び高温平坦度が向上することにより、ガラス転移温度(Tg)以下で容易に工程進行が可能であることはもちろん、ガラス転移温度(Tg)以上でカール、粘着、伸び現象が発生することを抑制したり、カール、粘着、伸び現象無しで容易に工程進行が可能な多層構造のフィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記の目的を達成するための本発明に係る多層フィルムは、高分子基材と、該高分子基材の上面及び下面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むバッファ層とを備えることを特徴とする。本発明において、前記高分子基材は、単一層構造であってもよいし、2層以上の高分子層が接合された構造であってもよい。
【0007】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る多層フィルムの製造方法は、(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(b)前記(a)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、(c)前記バッファ層を一面に備えた高分子基材の他面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(d)前記(c)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、(e)高分子基材の両面に備えられたUV硬化されたバッファ層を同時に熱硬化するステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る多層フィルムの製造方法は、(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(b)前記バッファ層をUV硬化するステップと、(c)前記UV硬化されたバッファ層を熱硬化して高分子基材とバッファ層とが積層された構造の多層フィルムを形成するステップと、(d)前記(a)〜(c)の過程を繰り返して前記(c)ステップと同じ構造の多層フィルムをもう1つ製造するステップと、(e)前記(c)ステップ及び前記(d)ステップで各々製造した多層フィルムを高分子基材面が隣接するように互いに接合して対称構造の多層フィルムを形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記多層フィルムを含む電子素子を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記バッファ層を形成するためのバッファ組成物として、有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物のゾル状態の組成物と硬化型エポキシ樹脂を含むバッファ組成物とを提供する。ここで、前記有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物のゾル状態の組成物の含量は、5重量部〜95重量部であり、前記硬化型エポキシ樹脂の含量は、5重量%〜95重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性及び高温平坦度が向上することにより、ガラス転移温度(Tg)以下で容易に工程進行が可能であることはもちろん、ガラス転移温度(Tg)以上でカール、粘着、伸び現象が発生することを抑制したり、カール(curl)、粘着、伸び現象無しで容易に工程進行が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る多層フィルムの断面を示した図である。
【図2】本発明の1つの実施形態に係る多層フィルムの断面を示した図である。
【図3】実施例及び比較例によって製造された多層フィルムの温度による線膨脹係数を比較して示したグラフである。
【図4】本発明の実施例1に係る平坦度に優れた多層フィルムを示した写真である。
【図5】本発明の比較例1に係るカール現象が発生した多層フィルムを示した写真である。
【図6】本発明の比較例3に係る平坦度が不良なフィルムを示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、高分子基材と、該高分子基材の上面及び下面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むバッファ層とを備える多層フィルムを提供する。
【0014】
本発明の1つの実施形態によれば、図1に示すように、バッファ層110、高分子基材100、バッファ層110の順に積層された構造を有することができる。
【0015】
前記高分子基材は、単一層構造であってもよいし、2層以上の高分子層が接合された構造であってもよい。図2は、高分子基材が高分子基材100、接合層111、及び高分子基材100を備える構造を例示したものであるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0016】
前記高分子基材は、厚さが10μm〜2,000μmのフィルムまたはシート形態であることが好ましい。
【0017】
本発明では、UV硬化処理及び熱硬化処理が共になされたバッファ層によって層間ストレス差による剥離、カール現象などが改善されるので、既存の貼り合わせ構造を有していなくとも、高温でのカール現象がない。したがって、前記高分子基材は、単一層からなり得る。ただし、前記高分子基材は、2層以上の高分子層が接合された構造でありうる。接合された高分子基材を使用すれば、製造された最終の多層フィルムが上下に対称の構造を有するようになるので、フィルムのカール現象を最小に抑制することができる。
【0018】
前記高分子基材が2層以上の高分子層が接合された構造である場合、これは、通常的なアクリル系接着剤または熱接合方法を利用して製造することができる。このとき、接着剤を用いる場合、その含量は特に限定されるものではないが、接着剤を含む接合層の厚さは0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0019】
前記高分子基材は、溶液キャスト法やフィルム押出工程によって製造されることができ、製造後、温度による変形を最小化するために、ガラス転移温度近傍で数秒から数分間短くアニールすることがよい。アニール以後には、コーティング性及び接着性を向上させるために、高分子基材の表面にプライマーコーティングをしたり、コロナ、酸素、または二酸化炭素を用いたプラズマ処理、紫外線−オゾン処理、反応気体を流入したイオンビーム処理法などで表面処理をすることもできる。
【0020】
前記高分子基材としては、単一高分子と2種以上の高分子ブレンドと有機または無機添加物が含有された高分子複合材料とからなる群より1種以上選んで用いることができる。
【0021】
前記高分子の好ましい一例として、本発明の多層フィルムが液晶表示装置の基板として用いられる場合、薄膜トランジスタと透明電極を形成する製造工程が200℃以上の高温でなされるため、このような高温に耐えることができる高耐熱性を有する高分子を用いることが好ましい。上記した特性を有する高分子としては、ポリノルボルネン、芳香族フルオレンポリエステル、ポリエーテルスルホン、ビスフェノールAポリスルホン、ポリイミドなどを挙げることができる。また、最近の高温基板工程温度を低温に下げる研究が進められつつ、150℃近傍の温度まで使用することができるので、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、環状オレフィン共重合体などの高分子を用いることもできる。
【0022】
特に、高分子基材としてPETフィルムを用いる場合、ガラス転移温度(Tg)以上でPETフィルムにカール現象、粘着、伸び現象が発生することを抑制したり、PETフィルムのカール現象、粘着、伸び現象無しで容易に工程の進行が可能である。具体的に、PETフィルムを用いる場合、100℃以上の高温でも工程が可能であり、表面硬度に優れた多層フィルムの製作が可能である。
【0023】
また、前記高分子基材としては、高分子にナノ物質を噴散させたもので、有機または無機添加物が含有された高分子複合材料を用いることもできる。
【0024】
前記高分子複合材料としては、クレイナノ物質が高分子マトリックスに分散されたポリマークレイナノ複合体を挙げることができる。前記ポリマークレイナノ複合体は、クレイの小さな粒子サイズ(<1μm)と大きな縦横比の特性により、既存に用いられたガラス繊維などの複合体に比べて小さな量のクレイで高分子の機械的物性、耐熱性、ガスバリア性、寸法安定性などの物性を向上させることができる。すなわち、前記した物性を向上させるためには、層状構造のクレイ層を剥がして高分子マトリックスによく噴散させることが重要であるが、これを満たすものが前記ポリマークレイナノ複合体である。
【0025】
前記ポリマークレイナノ複合体に用いられ得る高分子としては、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、環状オレフィン共重合体、ポリノルボルネン、芳香族フルオレンポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、エポキシレジン、多官能性アクリレートなどがあり、クレイとしては、ラポナイト、モンモリロナイト、マガディアイトなどを用いることができる。
【0026】
前記バッファ層は、高分子基材との大きな線膨脹係数の差を緩和させ、高分子基材との接着力を向上させることができる役割をする。また、前記バッファ層は、高分子基材の表面を平坦化することができる。
【0027】
本発明において、前記バッファ層は、UV硬化及び熱硬化された硬化物を含むものであって、硬化後、未硬化されたエポキシ基含量が10重量%以上100重量%未満、好ましくは、30重量%〜95重量%、より好ましくは、50重量%〜90重量%である。
【0028】
例えば、前記バッファ層は、前記有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物と硬化型エポキシ樹脂の混合物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むことができる。ここで、前記硬化物100重量部に対して有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物は5重量部〜95重量部であり、前記硬化型エポキシ樹脂は5重量部〜95重量部であることが好ましい。
【0029】
前記バッファ層は、UV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物を高分子基材上にコーティングした後、UV硬化及び熱硬化処理することにより形成されることができる。具体的に、有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つを部分的に加水分解させてゾル状態の組成物を製造した後、これを硬化型エポキシ樹脂と混合して高分子基材上にコーティングした後、UV硬化及び熱硬化処理される。
【0030】
前記有機シランとしては、有機シラン基を含めば特に限定されず、下記の化学式1〜化学式3で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。前記金属アルコキシドとしては、金属アルコキシドであれば特に限定されず、下記の化学式4で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。前記硬化型エポキシ樹脂は、エポキシ基を含むものであれば特に限定されず、下記の化学式5〜10で表す脂環式エポキシ樹脂及び下記の化学式11で表すトリグリシジルイソシアヌレートなどから選ばれる1種以上を含むことができる。
【0031】
【化1】

【0032】
前記化学式1〜化学式3において、
Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素、ハロゲン、炭素数1〜12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、または−N(Rであり、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、アルキニル、炭素数6〜20のアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、ハロゲン、アミド、アルデヒド、ケトン、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリロキシ、メタクリロキシ、エポキシ、またはビニル基であり、
は、水素または炭素数1〜12のアルキルであり、
mは、1〜3の整数であり、
【0033】
【化2】

【0034】
ここで、Mは、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選ばれる金属を表し、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、またはヒドロキシであり、
Zは、3または4の整数である。
【0035】
【化3】

【0036】
化学式8において、R20は、アルキル基またはトリメチロールプロパン残基を表し、qは、1〜20である。
【0037】
【化4】

【0038】
ここで、R21及びR22は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、各々HまたはCHを表し、rは、0〜2である。
【0039】
【化5】

【0040】
ここで、sは、0〜2である。
【0041】
【化6】

【0042】
前記バッファ層を形成するためのバッファ組成物は、有機シラン及び金属アルコキシドを単独または混合物の形態で含むことができ、有機シランと金属アルコキシドの含量は、バッファ組成物100重量部に対して5重量部〜95重量部であることが好ましい。
【0043】
前記硬化型エポキシ樹脂は、バッファ組成物100重量部に対して5重量部〜95重量部で用いることができ、バッファ組成物100重量部に対して1重量部〜90重量部の硬化剤をさらに含むことができる。また、前記硬化型エポキシ樹脂は、バッファ組成物100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の触媒をさらに含むことができる。
【0044】
前記硬化型エポキシ樹脂を用意するステップは、バッファ組成物100重量部に対して1重量部〜90重量部の硬化剤とバッファ組成物100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の触媒とを混合するステップと、前記触媒が添加された硬化剤とバッファ組成物100重量部に対して1重量部〜95重量部のエポキシ樹脂を混合するステップとを含むことが好ましい。より好ましくは、エポキシ硬化剤91重量部と触媒1重量部とを混合し、加熱して30分間撹拌した後、固体状態のエポキシ50重量部を10分間撹拌して溶融させてから、触媒が添加された硬化剤と溶融されたエポキシとを混合し、撹拌して透明な硬化型エポキシ樹脂を製造することができる。
【0045】
前記エポキシ樹脂は、前記化学式5〜10で表す脂環式エポキシ樹脂及び前記化学式11で表すトリグリシジルイソシアヌレートなどから選ばれる化合物を単独または2つ以上を組み合わせて用いることができる。前記組み合わせは、樹脂組合物及び必要な場合、ガラス充填材の屈折率が同一になるように、屈折率調整のために他のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記硬化剤としては、酸無水物系硬化剤が好ましく、例えば、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルナド酸無水物、ナド酸無水物、グルタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、水素化メチルナド酸無水物、及び水素化ナド酸無水物などから1種以上選んで用いることができる。特に、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物及び水素化メチルナド酸無水物が透明性の観点で好ましい。
【0047】
前記触媒は、硬化促進剤として、アセト酸、ベンゾイン酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸、ボロントリフルオリド・アミン錯体、ボロントリフルオリドアンモニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、及びアルミニウム錯体含有陽イオン性触媒などを含む陽イオン性触媒である有機酸と、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及びトリエチレンジアミンなどの3級アミンと、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾールと、トリフェニルホスフィン及びテトラフェニルホスフィンなどのリン化合物と、テトラフェニルボレートと、4級アンモニウム塩と、有機金属塩と、これらの誘導体から選ばれる化合物とを単独または2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
前記バッファ組成物としては、前記例示された化合物で製造され得るし、場合によって、前記組成物に充填剤及び溶媒をさらに添加することができる。
【0049】
前記充填剤は、金属、ガラス粉末、ダイヤモンド粉末、シリコンオキサイド、クレイ、カルシウムホスフェート、マグネシウムホスフェート、バリウムサルフェート、アルミニウムフルオリド、カルシウムシリケート、マグネシウムシリケート、バリウムシリケート、バリウムカーボネート、バリウムヒドロキシド、及びアルミニウムシリケートからなる群より1種以上選んで用いることができる。
【0050】
前記溶媒は、エポキシ、硬化剤、及び触媒と相溶性または溶解性のある溶媒であれば特に限定するものではないが、メチレンクロライド(methylene chloride)、ジクロロエタン(dichloroehtane)、ジオキサン(dioxane)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールのうちから選ばれた1種以上の溶媒を用いることができる。
【0051】
前記充填剤及び溶媒の使用量は、必要に応じて添加されるものであり、特に限定されない。
【0052】
前述した材料を用いてバッファ層を形成することにより、熱硬化時の変形が最小化され、高温でも平坦な表面を有する多層フィルムを提供することができる。
【0053】
前記バッファ組成物のUV硬化は、UV光源によってラジカル反応をなすことができれば、特に限定するものではないが、水銀あるいはメタルハライドランプを単独または組み合わせて用いることが好ましい。UV硬化によって前記バッファ層は表面硬度が上昇できる。
【0054】
本発明では、上記したように、高分子基材の両面にUV硬化によってバッファ組成物を硬化し、表面硬度を上昇させた後、熱硬化処理して多層構造のフィルムを製造することができる。
【0055】
前記バッファ層は、高分子基材との線膨脹係数の差を緩和させ、高分子基材との接着力を向上させることができる役割をする。また、前記バッファ層は、高分子基材の表面を平坦化することができる。
【0056】
本発明のさらに1つの実施形態は、(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(b)前記(a)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、(c)前記バッファ層を一面に備えた高分子基材の他面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(d)前記(c)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、(e)高分子基材の両面に備えられたUV硬化されたバッファ層を同時に熱硬化するステップとを含む多層フィルムの製造方法を提供する。
【0057】
本発明のさらに1つの実施形態は、(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、(b)前記バッファ層をUV硬化するステップと、(c)前記UV硬化されたバッファ層を熱硬化して高分子基材とバッファ層とが積層された構造の多層フィルムを形成するステップと、(d)前記(a)〜(c)の過程を繰り返して前記(c)ステップと同じ構造の多層フィルムをもう1つ製造するステップと、(e)前記(c)ステップ及び前記(d)ステップで各々製造した多層フィルムを高分子基材面が隣接するように互いに接合して対称構造の多層フィルムを形成するステップとを含む多層フィルムの製造方法を提供する。
【0058】
前記バッファ層のコーティング方法は、特に限定するものではなく、スピンコート、ロールコート、バーコート、ディップコート、グラビアコート、及びスプレーコートなどの方法を利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
上記したように形成されたバッファ層は、厚さが0.1μm〜50μmであることが好ましい。前記厚さが0.1μmより薄ければ、ピンホール欠陥による障害を受けやすく、洩れ電流が現れる制限が生じ、また、前記厚さが50μmを超過する場合には、硬化中にフィルムの歪み現象が発生する可能性があり、表面凹凸が形成されて平坦度が不良になるという問題がある。
【0060】
前記バッファ層表面の平坦度Ra(average of roughness)は非常に重要である。前記バッファ層が平坦でなければ、その上に他の層が形成される場合、欠陥が発生する可能性がある。
【0061】
上記した問題を解決するために、前記バッファ層の表面平坦度は1nm内外が好ましく、より好ましくは、1nm以内の平坦度がよい。具体的に、平坦度は、0.1nm〜1.2nmのRa値を有することができる。
【0062】
前記多層フィルムの製造方法において、UV硬化は、UV光源によってラジカル反応をなすことができれば、特に限定するものではないが、水銀またはメタルハライドランプを単独または並行して用いることが好ましい。例えば、UV硬化は、エネルギー20mJ/cm〜3000mJ/cmで1秒ないし数時間、例えば、1分以下で行うことができる。一方、熱硬化は、例えば、温度100℃〜200℃で1分ないし数時間、例えば、1時間以下、好ましくは、10〜20分間行うことができる。
【0063】
以上のような本発明に係る多層フィルムは、UV硬化によって表面硬度が瞬間的に向上し、熱硬化時の変形を最小化して線膨脹係数が6.5ppm/KRまでの小さな値を有することができる。本発明に係る多層フィルムの線膨脹係数は、5ppm/KR〜30ppm/KR以下でありうるし、6ppm/KR〜20ppm/KR以下であることが好ましい。また、本発明に係る多層フィルムは、2H以上の鉛筆硬度を有し、好ましくは、2H以上8H以下の鉛筆硬度を有することができる。したがって、本発明の多層フィルムは、従来表示装置などで主に使用されていた、割れやすく、重いガラス基板を代替することができ、その他、優れたガス遮断性が求められる材質としても使用され得る。
【0064】
また、本発明のさらに1つの実施形態として、前記多層フィルムを含む画像表示装置のような電子素子を提供する。本発明に係る多層フィルムは、画像表示装置の基板材または表示素子のカバー材として用いられることができる。
【0065】
前記電子素子は、前記多層フィルムを基板として、技術分野に知られた通常の方法で製造され得る。
【0066】
本発明に係る多層フィルムは、UV硬化によって表面硬度が瞬間的に向上し、熱硬化時の変形を最小化して高温でも平坦な表面を有するフィルムであって、従来表示装置などで主に使用されていた、割れやすく、重いガラス基板を代替することができ、その他、優れた耐熱性及び高温平坦性が求められる材質としても用いられることができる。
【0067】
以下、本発明を下記の実施例によってより詳細に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるために例示したものであり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
テトラエトキシシラン(TEOS)20重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)10重量部を混合した後、ここに蒸溜水7重量部、エタノール20重量部、及びHCl0.01重量部を添加し、25℃で24時間の間、部分加水分解して製造したゾル(sol)上にエポキシ化合物(商品名ERL−4221、Dow Chemical)100重量部、触媒であるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩(triarylsulfonium hexafluoro antimonate salts mixed 50w% in propylene carbonate)6重量部を混合して有機・無機ハイブリッドバッファ組成物を製造した。
【0069】
前記組成のバッファ組成物を基材であるPETの一面にバーコートした後、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、UV硬化した後、コーティングしていないPETの他面にバーコートし、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、UV硬化した後、180℃対流オーブンで1時間熱硬化してバッファ組成物で両面コーティングされたPETフィルムを得た。
【0070】
このとき、硬化反応が終わった後、アルファステッパーで測定したバッファ層の厚さは10μmであった。AFMの常温タッピングモード(tapping mode)で測定したバッファ層の表面粗さは、10μm×10μmの測定面積で0.4nm以下である。
【0071】
上記したように製造されたPETフィルムに対して表示装置用基板としての主な要求物性である線膨脹係数及び鉛筆硬度を測定し、その結果を表1に示した。前記PETフィルム自体の線膨脹係数は22.4ppm/Kである。前記各物性測定方法は下記のとおりであり、以下、全ての実施例と比較例に同一に適用した。
【0072】
1)線膨脹係数:ASTM D696に基づいて、熱機械分析器(TMA;Thermomechanical Analysis)で5gfの応力下において1分当り10℃で昇温して測定した。多層フィルムの温度による線膨脹係数を比較して図3に示した。
2)鉛筆硬度:200gの荷重下においてASTM D3363の方法で測定した。
【0073】
記載された全ての物性値は、統計的な代表性を有することができるように、少なくとも5個以上の測定値に対する平均値を示した。
【0074】
実施例1に係る基板は、図4に示すように、平たい底に置いたときに屈曲がなく、すなわち、耐熱性及び高温平坦度に優れており、表1に示すように、製造されたプラスチック基板が小さな線膨脹係数及び寸法安定性の物性を同時に満足することをみることができる。
【0075】
(実施例2)
硬化剤であるアンハイドライド(ANHYDRIDE)(MH700G、New Japan Chemical)10重量部をさらに投入することを除いては、実施例1と同じ方法でバッファ組成物及びコーティングフィルムを製造した。
【0076】
(実施例3)
テトラエトキシシラン80重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10重量部を混合した後、ここに蒸溜水28重量部、エタノール80重量部、及びHCl0.04重量部を添加することを除いては、実施例1と同じ方法でバッファ組成物及びコーティングフィルムを製造した。
【0077】
(実施例4)
コロイダルシリカ(MIBK−ST)30重量部をさらに添加することを除いては、実施例1と同じ方法でバッファ組成物及びコーティングフィルムを製造した。
【0078】
(実施例5)
金属アルコキシド[Al(OBu)]10重量部をさらに投入し、蒸溜水10重量部、エタノール30重量部を投入し、コロイダルシリカ(MIBK−ST)30重量部をさらに投入することを除いては、実施例1と同じ方法でバッファ組成物及びコーティングフィルムを製造した。
【0079】
(実施例6)
テトラエトキシシラン(TEOS)20重量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)10重量部を混合した後、ここに蒸溜水7重量部、エタノール20重量部、及びHCl0.01重量部を添加し、25℃で24時間の間、部分加水分解して製造したゾル上にエポキシ化合物(商品名ERL−4221、Dow Chemical)100重量部、触媒であるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩(triarylsulfonium hexafluoro antimonate salts mixed 50w% in propylene carbonate)6重量部を混合して有機・無機ハイブリッドバッファ組成物を製造した。
【0080】
前記バッファ組成物を基材であるPETの一面にバーコートした後、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、UV硬化した後、120℃対流オーブンで1時間熱硬化してPETフィルムの一面にバッファ層をコーティングした。AFMの常温タッピングモード(tapping mode)で測定したバッファ層の表面粗さは、50μm×50μmの測定面積で0.4nm以下である。
【0081】
以後、上記と同じ方式で多層フィルムをもう一度製造した。
【0082】
最後に、多官能基を有したアクリレートオリゴマーが主成分である接着剤組成物を上記の過程によって製造された多層フィルムのコーティングされていないPET面にバーコートした後、上記と同じ方式で製造された多層フィルムの高分子基材を貼り合わせ、紫外線照射器(DYMAX2000−EC)で6分間照射して接着剤組成物の硬化反応を誘導し、対称構造のプラスチック基板を作った。
【0083】
実施例6による基板は、平たい底に置いたときに屈曲がなかった。
【0084】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で製造されたバッファコーティング組成物を用いて基材の一面にバーコートした後、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、基材の他面にバーコートし、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、200℃対流オーブンで熱硬化してバッファ組成物で両面コーティングされたフィルムを得た。
【0085】
しかし、一面コーティング後に熱硬化すれば、フィルムの厚さ方向に対称構造をなされないため、硬化中に図5に示すように、カール現象が発生し、硬化後、反対面にコーティングする場合、先にコーティングされた面が底との接触によってくっつく現象が発生し、鮮明にコーティングされたフィルムを得ることができなかった。
【0086】
(比較例2)
実施例1と同様な方法で製造されたバッファコーティング組成物を用いてPETフィルムの一面にバーコートした後、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、UV硬化した後、基材の他面にバーコートし、90℃対流オーブンで5分間溶媒を除去し、UV硬化して両面コーティングされたフィルムを得た。すなわち、追加的な熱硬化ステップを省略した。
【0087】
UV硬化のみをする場合、硬化が完全になされず、したがって、界面間の接着力が低くなり、鉛筆硬度などの物性が低いコーティングされたフィルムが製造された。
【0088】
(比較例3)
実施例1のバッファ組成物を、コーティングしていないPETフィルム自体に対して物性を測定した。比較例3の場合、図6に示すように、カール現象が発生して高温平坦度が不良になることを見ることができる。
【0089】
【表1】

【0090】
表1によって、本発明に係る実施例1〜6の場合、比較例1〜3に比べて鉛筆硬度は優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0091】
100 高分子基材
110 バッファ層
111 接合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基材と、
該高分子基材の上面及び下面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むバッファ層と、
を備えることを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
前記高分子基材が、単一層構造または2層以上の高分子層が接合された構造であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記高分子基材が、単一高分子と1種以上の高分子ブレンドと有機または無機添加物が含有された高分子複合材料とからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記単一高分子または1種以上の高分子ブレンドのための高分子が、ポリノルボルネン、芳香族フルオレンポリエステル、ポリエーテルスルホン、ビスフェノールAポリスルホン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、及び環状オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記無機添加物が含有された高分子複合材料が、クレイナノ物質が高分子マトリックスに分散されたポリマークレイナノ複合体であることを特徴とする請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記バッファ層が、未硬化されたエポキシ基含量が10重量%以上100重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記バッファ層が、有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物と硬化型エポキシ樹脂の混合物のUV硬化及び熱硬化による硬化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記有機シランが、下記の化学式1〜3で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含み、前記金属アルコキシドが、下記の化学式4で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含み、前記硬化型エポキシ樹脂が、下記の化学式5〜10で表す脂環式エポキシ樹脂及び下記の化学式11で表すトリグリシジルイソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の多層フィルム。
【化1】

前記化学式1〜化学式3において、
Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素、ハロゲン、炭素数1〜12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、または−N(Rであり、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、アルキニル、炭素数6〜20のアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、ハロゲン、アミド、アルデヒド、ケトン、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリロキシ、メタクリロキシ、エポキシ、またはビニル基であり、
は、水素または炭素数1〜12のアルキルであり、
mは、1〜3の整数であり、
【化2】

ここで、Mは、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選ばれる金属を表し、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、またはヒドロキシであり、
Zは、3または4の整数である。
【化3】

化学式8において、R20は、アルキル基またはトリメチロールプロパン残基を表し、qは、1〜20である。
【化4】

ここで、R21及びR22は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、各々HまたはCHを表し、rは、0〜2である。
【化5】

ここで、sは、0〜2である。
【化6】

【請求項9】
前記硬化物100重量部に対して有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物が5重量部〜95重量部であり、前記硬化型エポキシ樹脂が5重量部〜95重量部であることを特徴とする請求項7に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記バッファ層が、金属、ガラス粉末、ダイヤモンド粉末、シリコンオキサイド、クレイ、カルシウムホスフェート、マグネシウムホスフェート、バリウムサルフェート、アルミニウムフルオリド、カルシウムシリケート、マグネシウムシリケート、バリウムシリケート、バリウムカーボネート、バリウムヒドロキシド、及びアルミニウムシリケートからなる群より少なくとも1種以上選ばれる充填剤、硬化剤、触媒、及び溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記バッファ層の厚さが、0.1μm〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記多層フィルムの線膨脹係数が、5ppm/KR〜30ppm/KRであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記多層フィルムの鉛筆硬度が、2H〜8Hであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記多層フィルムの表面平坦度(Ra)が、0.1nm〜1.2nmであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項15】
(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、
(b)前記(a)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、
(c)前記バッファ層を一面に備えた高分子基材の他面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、
(d)前記(c)ステップで形成したバッファ層をUV硬化するステップと、
(e)高分子基材の両面に備えられたUV硬化されたバッファ層を同時に熱硬化するステップと、
を含むことを特徴とする多層フィルムの製造方法。
【請求項16】
(a)高分子基材の一面にUV硬化及び熱硬化可能なバッファ組成物をコーティングしてバッファ層を形成するステップと、
(b)前記バッファ層をUV硬化するステップと、
(c)前記UV硬化されたバッファ層を熱硬化して高分子基材とバッファ層とが積層された構造の多層フィルムを形成するステップと、
(d)前記(a)〜(c)の過程を繰り返して前記(c)ステップと同じ構造の多層フィルムをもう1つ製造するステップと、
(e)前記(c)ステップ及び前記(d)ステップで各々製造した多層フィルムを高分子基材面が隣接するように、互いに接合して対称構造の多層フィルムを形成するステップと、
を含むことを特徴とする多層フィルムの製造方法。
【請求項17】
UV硬化が、水銀またはメタルハライドランプを単独または組み合わせてエネルギー20mJ/cm〜3000mJ/cmで1秒ないし数時間行われ、熱硬化が、温度100℃〜200℃で1分ないし数時間行われることを特徴とする請求項15または16に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項による多層フィルムを備えることを特徴とする電子素子。
【請求項19】
有機シラン及び金属アルコキシドのうち、少なくとも1つの加水分解物のゾル状態の組成物と硬化型エポキシ樹脂とを備えることを特徴とするバッファ組成物。
【請求項20】
前記有機シランが、下記の化学式1〜3で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含み、前記金属アルコキシドが、下記の化学式4で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含み、前記硬化型エポキシ樹脂が、下記の化学式5〜10で表す脂環式エポキシ樹脂及び下記の化学式11で表されるトリグリシジルイソシアヌレートからなる群より選らばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項19に記載のバッファ組成物。
【化7】

前記化学式1〜化学式3において、
Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素、ハロゲン、炭素数1〜12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、または−N(Rであり、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、アルキニル、炭素数6〜20のアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、ハロゲン、アミド、アルデヒド、ケトン、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリロキシ、メタクリロキシ、エポキシ、またはビニル基であり、
は、水素または炭素数1〜12のアルキルであり、
mは、1〜3の整数であり、
【化8】

ここで、Mは、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選ばれる金属を表し、
は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、またはヒドロキシであり、
Zは、3または4の整数である。
【化9】

化学式8において、R20は、アルキル基またはトリメチロールプロパン残基を表し、qは、1〜20である。
【化10】

ここで、R21及びR22は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、各々HまたはCHを表し、rは、0〜2である。
【化11】

ここで、sは、0〜2である。
【化12】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−509212(P2012−509212A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537362(P2011−537362)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006841
【国際公開番号】WO2010/058987
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】