説明

多層フィルム

【課題】十分な防湿性、透明性、及びヒートシール性を有する多層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリアミド系樹脂(A)を含有する層(樹脂層(I))と、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/gであるエチレン系重合体(B)、結晶核剤(C)及び石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン相溶樹脂(D)を含有する層(樹脂層(II))と、を備えた多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性、透明性、ヒートシール性に優れた多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂フィルムは、単独のフィルムとして、あるいは他のフィルムとの多層体として、種々の包装材料用途に使用されている。特に、ポリアミド系樹脂フィルムの優れた酸素ガスバリア性、耐屈曲性、透明性、耐熱性、強靱性等の点から、液体充填包装等の用途において広く使用されている。
【0003】
このようなポリアミド系樹脂フィルムを、例えば味噌、醤油等の調味料、スープ、レトルト食品等の水分含有食品、または薬品の包装袋等に使用する際は、シーラント層を設けたポリアミド系フィルム積層体を製造し、この積層体から袋を作製し、該袋の開口部を通じて内容物を充填した後、該開口部をヒートシールして包装するのが一般的である。この際、ヒートシール性を有するシーラント層としては、一般的に、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」と省略する)やポリプロピレン等が用いられている。
【0004】
また、より高度な酸素バリア性が要求される食品、医薬品等の包装用途に、ポリアミド系樹脂フィルムを使用する場合には、酸素バリア性をさらに向上するために、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と省略する)をさらに積層した多層フィルムが用いられている。しかしながら、シーラント層を設けたポリアミド系樹脂フィルムや、さらにEVOHを積層した多層フィルムは、酸素バリア性には優れるものの、防湿性に劣るという欠点があった。そのため、内容物に含まれる水分の揮発や、外部からの水分の侵入による内容物の品質劣化等が懸念される用途への使用は実質的に不可能である場合が多かった。
【0005】
そこで、シーラント層を設けたポリアミド系樹脂フィルムの防湿性を向上させるための手段として、例えば、特許文献1には、ポリアミド系フィルムの少なくとも片側に金属酸化物薄膜層を形成し、さらに、該金属酸化物薄膜層上にポリオレフィン系フィルムを積層することが開示されている。
また、特許文献2には、二軸延伸ポリアミドフィルムに対して、シーラント層として、ポリアミドフィルム側から順番に、密度が0.925g/cm以上のポリエチレンフィルム、密度が0.925g/cm未満のポリエチレンフィルムが積層された多層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−029264号公報
【特許文献2】特開平10−034804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1については、金属酸化物薄膜を設けることで若干の防湿性向上は認められるものの、製造コストの増大や、使用時や保管時における無機蒸着層の剥離、破損による防湿性低下の恐れがあり、広く使用できる技術とは言い難いものであった。
また、特許文献2のように二軸延伸ポリアミドフィルムに、比較的高密度のポリエチレンをシーラント層として積層すれば、若干ながら防湿性は向上するものの、それだけでは防湿性が不十分であり、高度な防湿性が要求される用途への使用は非常に困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、このような従来技術の課題に鑑み、十分な防湿性、透明性、及びヒートシール性を有する多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリアミド系樹脂(A)を含有する層(樹脂層(I))、ならびに、下記(B)、(C)及び(D)を含有する層(樹脂層(II))を備えた多層フィルムを提案する。
(B):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/gであるエチレン系重合体
(C):結晶核剤
(D):石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン相溶樹脂
【0010】
本発明においては、酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性等を向上する目的で、前記(I)層及び/または(II)層を複数備えた構成とすることができる。また、酸素バリア性を向上する目的で、前記(I)層及び前記(II)層以外の(III)層として、例えば、EVOHを有する層を更に積層することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提案する多層フィルムは、十分な防湿性、透明性、ヒートシール性を有するため、例えば、食品や医薬品等の包装資材などのように、防湿性、透明性、ヒートシール性が要求される包装資材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例としての多層フィルム(「本多層フィルム」と称する)について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<本多層フィルム>
本多層フィルムは、ポリアミド系樹脂(A)を含有する樹脂層(I)と、エチレン系重合体(B)、結晶核剤(C)及びオレフィン相溶樹脂(D)を含有する樹脂層(II)とを備えた多層フィルムである。
【0014】
<樹脂層(I)>
樹脂層(I)は、ポリアミド系樹脂(A)を含んでなる単層体、又は、多層体からなる樹脂層である。
樹脂層(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド系樹脂(A)以外の樹脂や添加剤等を含んでいてもよい。
【0015】
(ポリアミド系樹脂(A))
本多層フィルムに用いるポリアミド系樹脂(A)は、ポリアミド系樹脂であれば特に限定されない。例えば、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を主成分とするポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
また、ポリアミド系樹脂(A)が共重合体である場合、ポリアミド成分は80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含まれていることが好ましい。
【0016】
また、ポリアミド系樹脂(A)が他の樹脂、添加剤等を含む組成物である場合、この混合物中に占めるポリアミド成分の割合は70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
上記3員環以上のラクタムとしては、例えばε−カプロラクタム、γ−ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタムなどが挙げられる。
上記重合可能なω−アミノ酸としては、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノノナン酸、ω−アミノウンドデカン酸、ω−アミノドデカン酸などが挙げられる。
【0018】
上記ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トチメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トチメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,3/1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス−(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどの脂環族ジアミン、及びメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジオン酸、デカンジオン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)、スルホイソフタル酸金属塩などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0019】
上記のような3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミド系樹脂(A)の具体例として、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド6−6,6、ポリアミド6−6,10、ポリアミド6−6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6−6,12、ポリアミド6−6T、ポリアミド6−6I、ポリアミド6−6,6−6,10、ポリアミド6−6,6−12、ポリアミド6−6,6−6,12、ポリアミド6,6−6T、ポリアミド6,6−6I、ポリアミド6T−6I、ポリアミド6,6−6T−6I等が挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、ホモポリマーであってもよく、また共重合体やこれらの混合物であってもよい。
【0020】
前記ポリアミド系樹脂(A)に柔軟性、耐衝撃性等を付与する目的で、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂を添加することができる。
【0021】
上記のポリオレフィン類は、主鎖中のポリエチレン単位、ポリプロピレン単位を主成分とするものであり、無水マレイン酸等でグラフト変性していてもよい。ポリエチレン単位、ポリプロピレン単位以外の構成単位としては、酢酸ビニル、あるいはその部分けん化物、(メタ)アクリル酸、あるいは、それらの部分金属イオン中和物、(メタ)アクリル酸エステル類、ブテンなどの1−アルケン類、アルカジエン類、スチレン類などが挙げられる。これらの構成単位を複数含んでも構わない。
【0022】
上記のポリアミドエラストマー類は、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系ブロック共重合体に属するものであり、アミド成分としてはポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12等が例示され、エーテル成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシー1,2−プロピレングリコール等が例示される。中でも好ましくは、ポリテトラメチレングリコールとポリラウリルラクタム(ポリアミド12)を主成分とする共重合体である。また、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸を少量用いたものであってもよい。
【0023】
上記のポリエステルエラストマー類としては、例えばポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールを組み合わせたポリエーテル・エステルエラストマーや、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマーなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて混合して使用してもよい。この際、当該樹脂の添加量は、ポリアミド系樹脂組成物中、0.1質量%以上、20質量%以下の割合とするのが好ましく、0.5質量%以上或いは15質量%以下の割合とするのがより好ましく、1質量%以上或いは10質量%以下の割合とするのがさらに好ましい。かかる範囲で、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂を添加することにより、透明性、耐熱性を低下させることなく、柔軟性や耐衝撃性を付与することができる。
【0025】
(多層体)
樹脂層(I)は、酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性等を向上させる目的で、前記ポリアミド系樹脂(A)を含む層を2層以上積層し、多層体にすることができる。
【0026】
例えば、酸素バリア性を向上させる目的で、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)を有する層を、前記ポリアミド系樹脂(A)を含む層と積層して樹脂層(I)を形成することができる。
この際、樹脂層(I)全体に占める、MXD6を有する層の厚み比率は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、上限が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
前記ポリアミドMXD6層の厚みをかかる範囲とすることで、本多層フィルムが有する耐衝撃性を損なうことなく、さらに酸素バリア性を向上することができる。
【0027】
また、耐衝撃性を向上させる目的で、ポリアミド6を有する層を、前記ポリアミド系樹脂(A)を含む層と積層して樹脂層(I)を形成することができる。
ポリアミド6を有する層は、本多層フィルムが必要とする透明性、防湿性を損なうことなく、さらに酸素バリア性、耐衝撃性等の特性を向上することができるため、好ましく用いることができる。
この際、樹脂層(I)全体に占める、ポリアミド6を含む層の厚み比率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。また、上限は90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド6を有する層の厚みをかかる範囲とすることで、本多層フィルムが必要とする透明性、防湿性を損なうことなく、酸素バリア性、耐衝撃性等の特性をより一層向上させることができる。
【0028】
<樹脂層(II)>
樹脂層(II)は、エチレン系重合体(B)、結晶核剤(C)及びオレフィン相溶樹脂(D)を含有する層である。
当該樹脂層(II)を設けることにより、各種包装資材へ使用する際のヒートシール性を付与できるだけでなく、優れた防湿性を付与し、各種包装資材として使用する際に内容物の劣化を抑制することができる。
【0029】
(配合量)
前記樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中に占めるエチレン系重合体(B)の含有量は、耐衝撃性、耐熱性の点から、好ましくは67%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。また、防湿性、透明性の点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0030】
前記樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中に占める結晶核剤(C)の含有量は、0.01〜3.0質量%であるのが好ましく、中でも0.03質量%以上或いは2.0質量%以下であるのがさらに好ましく、その中でも特に0.05質量%以上或いは1.0質量%以下であるのがより一層好ましい。かかる範囲内で結晶核剤(C)を配合することにより、結晶核剤の過剰な添加による透明性の低下を生じることなく、効果的に透明性及び防湿性をさらに向上させることができる。
【0031】
また、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中に占めるオレフィン相溶樹脂(D)の含有量は、1〜30質量%であるのが好ましく、中でも5質量%以上、その中でも10質量%以上、或いは25質量%以下であるのがさらに好ましく、その中でも特に15質量%以上、或いは20質量%以下であるのがより一層好ましい。かかる範囲内でオレフィン相溶樹脂(D)を配合することにより、オレフィン相溶樹脂のシート表面へのブリードや、シートの耐衝撃性を低下させることなく、効果的に防湿性を向上させることができる。
【0032】
(エチレン系重合体(B))
本多層フィルムに用いるエチレン系重合体(B)は、エチレン単独重合体であってもよいし、或いは、エチレンと、エチレン以外のモノマー成分、特にはα―オレフィンとの共重合体であってもよい。また、これらの混合物を用いることもできる。
【0033】
ここで、エチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、へプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等を例示することができる。中でも、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点から、プロピレン、ブテン−1、へキセン−1、オクテン−1が好適である。
エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
【0034】
以上の中でも、エチレン単独重合体、或いは、エチレンと、ブテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1からなる群より選ばれる少なくとも1種類のα−オレフィンとの共重合体を用いるのが好ましい。
【0035】
エチレンと、ブテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1からなる群より選ばれる少なくとも1種類のα−オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合体中に占めるブテン−1、ヘキセン−1及びオクテン−1の割合の合計が0.1〜15.0質量%であるのが好ましく、中でも0.1〜10.0質量%であるのが好ましく、中でも0.3質量%以上或いは3.5質量%以下、その中でも0.5質量%以上或いは3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。α−オレフィンの割合がかかる範囲内であれば、本多層フィルムの防湿性、透明性をさらに優れたものとすることができる。
【0036】
また、エチレン系重合体(B)としては、特にシングルサイト触媒を用いて重合されるエチレン単独重合体、及び/又は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いることが好ましい。
シングルサイト触媒を用いて重合されるエチレン単独重合体、及び/又は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体は、分子量分布指数(Mw/Mn)が小さく、分子の長さが比較的均一であるため、結晶核剤を添加した場合に微細な結晶を形成することが可能となるため、透明性、防湿性を特に向上することができる。このような点から、エチレン系重合体(B)の分子量分布指数(Mw/Mn)は2.5〜5.0、特に2.6以上或いは4.5以下、中でも3.0以上或いは4.0以下であるのが好ましい。
【0037】
上記シングルサイト触媒としては、例えばメタロセン化合物とメチルアルミノオキサンとを組み合わせたメタロセン触媒を挙げることができる。シングルサイト触媒を用いて重合されるエチレン単独重合体、及び/又は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の特徴として、分子量分布が狭い点、同じ密度であっても結晶融解熱量が低い点などを挙げることができる。
【0038】
また、透明性と防湿性を両立するためには、エチレン系重合体(B)の密度は、0.918〜0.955g/cmであることが好ましく、中でも0.930g/cm以上或いは0.952g/cm以下であることが好ましく、その中でも0.935g/cm以上或いは0.948g/cm以下であることがさらに好ましい。前記エチレン系重合体(B)の密度がかかる範囲内であれば、本シートの透明性と防湿性をさらに高めることができる。
【0039】
エチレン系重合体(B)は、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/gを満足することが必要である。かかる範囲内に結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量を有するエチレン系重合体(B)を用いることで、透明性と防湿性を両立することができる。
中でも、前記結晶融解ピーク温度は115℃以上或いは140℃以下であるのがより好ましく、130℃以上であるのがさらに好ましい。
また、前記結晶融解熱量は135〜185J/gの範囲であるのがより好ましく、中でも150J/g以上或いは180J/g以下であるのがさらに好ましい。
なお、該結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができ、該結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
【0040】
(結晶核剤(C))
本多層フィルムに用いる結晶核剤(C)は、前記エチレン系重合体(B)の透明性、防湿性を向上させる効果が認められれば、その種類を特に制限するものではない。例えば、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸、及び、その金属塩、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレート、及び、その金属塩、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールなどのジアセタール化合物、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムホスフェートなどのリン酸エステル化合物や、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
以上の結晶核剤は、これらのうちの一種を単独で用いることも、また、これらのうちの二種類を選択して組み合わせて併用することもできる。
【0041】
結晶核剤(C)の具体例としては、新日本理化社製「ゲルオールD」シリーズ、「ゲルオールMD」シリーズ、旭電化工業社製「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル社製「Millad」シリーズ、「Hyperform」シリーズ、BASF社製「IRGACLEAR」シリーズ等が挙げられ、また結晶核剤のマスターバッチとしては理研ビタミン社製「リケマスターCN」シリーズ、ミリケンケミカル社製「HL3−4」等があげられる。この中でも特に透明性を向上する効果が高いものとして、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN−20E」、「HL3−4」、理研ビタミン社製「リケマスターCN−001」「リケマスターCN−002」等を挙げることができる。
【0042】
(オレフィン相溶樹脂(D))
前記エチレン系重合体(B)に対して、オレフィン相溶樹脂(D)を添加することで、防湿性を向上できるだけでなく、優れたヒートシール性を付与することができる。
【0043】
本発明において、「相溶」又は「相溶樹脂」とは、分子レベルで親和性が良好な状態を示し、前記エチレン系重合体(B)と前記オレフィン相溶樹脂(D)とが相溶するとは、前記エチレン系重合体(B)と前記オレフィン相溶樹脂(D)との混合物のガラス転移温度が単一である状態を指す。
【0044】
前記オレフィン相溶樹脂(D)としては、エチレン系重合体(B)と相溶し、かつエチレン系重合体(B)よりもガラス転移温度が高い樹脂であるのが好ましい。このような樹脂として、例えば石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及び、これらの水素添加物からなる群から選ばれる1種類の樹脂又は2種類以上の組み合わせからなる混合樹脂を挙げることができる。
【0045】
前記石油樹脂としては、例えばシクロペンタジエンもしくはその二量体からの脂環式石油樹脂、C9成分からの芳香族石油樹脂等を挙げることができる。また、前記テルペン樹脂としては、例えばβ−ピネンからのテルペン−フェノール樹脂などを挙げることができる。さらに、クマロン−インデン樹脂としては、例えば、クマロン−インデン共重合体や、クマロン−インデン−スチレン共重合体などを挙げることができる。また、前記ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリン、ペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂等を挙げることができる。
【0046】
このようなオレフィン相溶樹脂(D)は、エチレン系重合体(B)に混合した場合に比較的良好な相溶性を示し、色調、熱安定性、相溶性、耐透湿性などをさらに高める観点から、水素添加物、特に水素添加率(以下「水添率」という)が95%以上であり、かつ水酸基、カルボキシル基、ハロゲンなどの極性基、あるいは二重結合などの不飽和結合を実質上含有しない、石油樹脂またはテルペン樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
オレフィン相溶樹脂(D)は、その分子量を変えることにより、種々の軟化温度のものを得ることができる。
オレフィン相溶樹脂(D)のJIS K2207に基づき測定した軟化温度Ts(D)は、前記エチレン系重合体(B)の示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(B)+15℃以下、すなわち結晶化ピーク温度Tc(B)+15℃を超えた高温にならないことが好ましく、Tc(B)+10℃以下であることがより好ましく、Tc(B)+5℃以下であることがさらに好ましい。なお、Tc(B)の下限は80℃であることが好ましい。
前記オレフィン相溶樹脂(D)の軟化温度Ts(D)の上限が前記条件を満たすことで、エチレン系重合体(B)の結晶化過程においてオレフィン相溶樹脂(D)分子の自由度が高い状態にあり、エチレン系重合体(B)の結晶化が阻害されず、微細な結晶が形成され、透明性に優れたポリエチレン系シートが得られる。また、Ts(D)が80℃以上であれば、成形時におけるペレットのブロッキングや、二次加工時、あるいは、輸送時、使用時における成形品表面へのブリードアウトを生じることがない。
【0048】
オレフィン相溶樹脂(D)の具体例としては、例えば、三井化学社製「ハイレッツ」シリーズ、「ペトロジン」シリーズ、荒川化学工業社製「アルコン」シリーズ、ヤスハラケミカル社製「クリアロン」シリーズ、出光石油化学社製「アイマーブ」シリーズ、トーネックス社製「エスコレッツ」シリーズ等があげられる。
【0049】
(その他の樹脂成分)
樹脂層(II)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン系重合体(B)及びオレフィン相溶樹脂(D)以外の樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂や、ポリオレフィン系、あるいは、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等を含有することができる。
中でも、環状オレフィン系樹脂を含有することで、本多層フィルムの透明性がさらに向上するため好ましい。
【0050】
エチレン系重合体(B)及びオレフィン相溶樹脂(D)以外の樹脂の含有量としては、防湿性を損なうことなく、透明性をさらに向上させる観点から、エチレン系重合体(B)、結晶核剤(C)及びオレフィン相溶樹脂(D)の合計含有量に対して、10質量%以上或いは50質量%以下であることが好ましく、中でも20質量%以上或いは45質量%以下、その中でも25質量%以上或いは35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(環状オレフィン系樹脂)
前記環状オレフィン系樹脂としては、(i)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(ii)環状オレフィンの付加(共)重合体、(iii)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α−オレフィンとのランダム共重合体、(iv)前記(i)〜(iii)を不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。
【0052】
具体的には、日本ゼオン製「ZEONOR」シリーズ、三井化学社製「アペル」シリーズ、ポリプラスチックス社製「TOPAS」シリーズがあげられる。なお、環状オレフィン系重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−252407号公報などに記載されている公知の方法に準じて製造することもできる。
【0053】
また、前記環状オレフィン系樹脂を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物の変性剤で変性したグラフト共重合体も使用することができる。
【0054】
前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50〜105℃であり、より好ましくは55〜90℃である。前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度がかかる範囲内にあれば、本多層フィルムの耐熱性、二次加工性を低下させることなく、透明性を向上することができる。
【0055】
<積層構成>
本多層フィルムは、酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性等を向上する目的で、前記樹脂層(I)又は樹脂層(II)又はこれら両方の層を複数層備えた構成とすることができる。
【0056】
また、樹脂層(I)及び前記樹脂層(II)以外の別の層をさらに積層して本多層フィルムを構成することもできる。
【0057】
樹脂層(I)及び樹脂層(II)以外の別の層としては、特に限定されないが、例えばヒートシール性の向上を目的として、直鎖状低密度ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどの樹脂からなる層を設けることができる。
【0058】
また、樹脂層(I)及び樹脂層(II)以外の別の層として、例えば防湿性の向上を目的として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と記載する。)を含有する層を設けることができる。
この際、前記EVOHは、特に限定されるものではない。公知の方法によって製造されるEVOHを用いることができる。その中でも、特にエチレン含有率の下限が25モル%以上、より好ましくは29モル%以上、かつ、上限が38モル%以下、より好ましく35モル%以下であり、ケン化度の下限が95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、かつ、上限が100モル%以下のEVOHが、本多層フィルムに用いるEVOHとして特に適している。エチレン含有率が25モル%以上、38モル%以下の範囲であれば、溶融押出し時の溶融押出し性が良好となり、成形品外観、機械強度、酸素ガスバリア性が良好となる。また、EVOHのケン化度が95モル%以上、100モル%以下の範囲であれば、酸素ガスバリア性や耐湿性が良好となる。
【0059】
また、前記EVOHは、エチレンと酢酸ビニル二元共重合体のケン化物の他に、共重合成分として少量のプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα-オレフィンや、不飽和カルボン酸、またはその塩等を含むものであってもよく、また、EVOHには他の樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を混合したものであってもよい。なお、本多層フィルムに、前記樹脂層(I)及び樹脂層(II)以外の別の層として、EVOHを含有する層を設ける場合、樹脂層(I)に隣接する層とすることが好ましく、樹脂層(I)/EVOHを含有する層/樹脂層(I)のように、樹脂層(I)で挟まれる構成とすることがより好ましい。
【0060】
本多層フィルムにおいて、樹脂層(I)及び樹脂層(II)以外の層の厚みは、本多層フィルム全体に対し、下限が1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。また、上限が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
樹脂層(I)及び樹脂層(II)以外の層の厚みをかかる範囲とすることで、本多層フィルムが有する耐衝撃性を損なうことなく、さらに酸素バリア性などをさらに向上することができる。
【0061】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、本多層フィルムの各層を構成する樹脂組成物に、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
【0062】
<本多層フィルムの製造方法>
本多層フィルムは種々の方法で製造可能であるが、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0063】
本多層フィルムは、樹脂層(I)、樹脂層(II)からなり、全ての層を共押出によって一度に製膜してもよいし、必要に応じて各層を個々に製膜した後、一般的なラミネート法により貼り合せてもよいが、各層の製膜性、延伸性等を考慮した場合、樹脂層(I)と樹脂層(II)を個々に製膜した後に、一般的なラミネート法により貼り合せることが好ましい。
【0064】
ここでは、樹脂層(I)及び樹脂層(II)を共押出によって一度に製膜する方法を例にとって具体的に説明する。
先ず初めに、実質的に配向していない樹脂層(I)、及び、樹脂層(II)を有するフィルム(以下「未延伸フィルム」という)を、例えば、共押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、各樹脂層を溶融させた後、フラットダイ、または環状ダイで合流、押出した後、急冷することによりフラット状、又は、環状の未延伸フィルムが得られる。この時、次いで行う延伸工程での加工性を考慮して、樹脂層(I)、及び、樹脂層(II)を個別に製膜することが好ましい。
【0065】
前記未延伸フィルムを必要に応じて面積倍率で2〜16倍の範囲で少なくとも1方向に延伸することが好ましい。前記面積倍率の下限は、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。また、前記面積倍率の上限は15倍以下であることがより好ましく、14倍以下であることがさらに好ましい。かかる範囲で前記未延伸フィルムを延伸することにより、本発明の多層フィルムの強度、耐熱性等の特性を向上することができる。
【0066】
延伸の方法としては特に限定されないが、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、樹脂層(I)、あるいは、樹脂層(II)かなる未延伸フィルムを、樹脂層(I)の場合は50〜110℃、樹脂層(II)の場合は100〜130℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に例えば、2〜4倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって樹脂層(I)の場合は60〜140℃、樹脂層(II)の場合は100〜130℃の温度範囲内で横方向に2〜4倍に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、60〜130℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に2〜4倍に延伸することにより製造することができる。
【0067】
上記方法により延伸された延伸フィルムは、引き続き熱固定することで寸法安定性をさらに向上することができる。この場合の処理温度は、樹脂層(I)の場合は、好ましくは210〜225℃、より好ましくは210〜220℃の範囲を選択し、樹脂層(II)の場合は、好ましくは90〜120℃、より好ましくは100〜110℃の範囲を選択する。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、機械強度や耐衝撃性、透明性、ガスバリア性、耐ピンホール性等を向上することができる。
【0068】
上記熱固定中に横方向に好ましくは0〜15%、より好ましくは3〜10%の範囲で弛緩を行うことで、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和することができる。弛緩率が上記範囲内にあれば、弛緩が十分に行われ、フィルムの横方向に均一に弛緩するため、横方向の収縮率が均一になり常温寸法安定性に優れた多層フィルムが得られる。また、多層フィルムの収縮に追従した弛緩が行われるため、多層フィルムのタルミ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断を生じることがない。
【0069】
樹脂層(I)、及び、樹脂層(II)を個別に製膜した場合、一般的なラミネート方法によって貼り合せる場合には、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤を用いたドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法等により貼り合せることができる。
【0070】
<物性>
本多層フィルムは次のような物性を備えているのが好ましい。
【0071】
(酸素透過率)
JIS K7126B法に基づき、温度23℃、相対湿度50%で測定した厚み0.07mmでの本多層フィルムの酸素透過率は、300ml/(m・24時間)以下であるのが好ましく、中でも250ml/(m・24時間)以下、その中でも200ml/(m・24時間)以下であるのがさらに好ましい。なお、本多層フィルムの酸素透過率は、低ければ低いほど好ましく、100ml/(m・24時間)以下、さらには10ml/(m・24時間)以下であるのがより好ましい。
【0072】
(水蒸気透過率)
JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.07mmでの本多層フィルムの水蒸気透過率は、3.0g/(m・24時間)以下であるのが好ましく、中でも2.0g/(m・24時間)以下、その中でも1.6g/(m・24時間)以下であるのがさらに好ましい。
【0073】
(ヘーズ値)
JIS K7105に基づき測定した厚み0.07mmでの本多層フィルムのヘーズ値は、15%以下であるのが好ましく、中でも12%以下、その中でも10%以下であるのがさらに好ましい。
【0074】
(シール強度)
縦方向に150mm、横方向100mmに切り出した本多層フィルムサンプルの層(II)同士を合わせた後、圧力1kgf/cm、温度130℃、シール時間1秒の条件で、幅10mmの加熱バーにより、サンプルの横方向と並行に、サンプルの縦方向の中央部をヒートシールし、次いで、ヒートシールしたサンプルを、縦方向に150mm、横方向に15mmに切り出した後、引張試験機(インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201X)を用いて、雰囲気温度23℃、剥離速度50mm/分で180℃剥離試験を実施する場合のシール強度は、10N/15mm以上であるのが好ましく、中でも12N/15mm以上、その中でも14N/15mm以上であるのがさらに好ましい。
【0075】
<用途>
本多層フィルムは、防湿性、透明性、ヒートシール性の全てに優れるため、医薬品や食品等の包装資材等に広く使用することができる。
【0076】
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。他方、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0077】
また、「主成分」と表現した場合、特にことわらない限り、主成分が1つである場合には、全体成分の50%(モル%、質量%、体積%)以上を占める成分の意味であり、全体成分の50%(モル%、質量%、体積%)以上を占める成分がない場合は、全体成分の中で最も含有量が多い成分の意味である。
【0078】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0080】
<評価方法>
以下の実施例・比較例で表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0081】
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
【0082】
(2)結晶融解熱量(ΔHm)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
【0083】
(3)結晶化ピーク温度(Tc)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶化ピーク温度Tc(℃)を求めた。
【0084】
(4)軟化温度(Ts)
JIS K2207に準じてオレフィン相溶樹脂(D)の軟化温度を求めた。
【0085】
(5)酸素透過率
JIS K7126Bに基づき、MOCON社製OX−TRAN 2/21を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下において、厚み0.07mmのサンプルについて酸素透過率を測定した。酸素透過率が300ml/(m・24時間)以下であるものを合格とした。
【0086】
(6)水蒸気透過率
JIS K7129Bに基づき、MOCON社製PERMATRAN W 3/31を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において、厚み0.07mmのサンプルについて水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率が3.0g/(m・24時間・MPa)以下であるものを合格とした。
【0087】
(7)ヘーズ(透明性)
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚み0.07mmのサンプルでのヘーズが15%以下であるものを合格とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0088】
(8)ヒートシール強度
縦方向に150mm、横方向100mmに切り出した多層フィルムサンプルの層(II)同士を合わせた後、圧力1kgf/cm、温度130℃、シール時間1秒の条件で、幅10mmの加熱バーにより、サンプルの横方向と並行に、サンプルの縦方向の中央部をヒートシールした。
次いで、ヒートシールしたサンプルを、縦方向に150mm、横方向に15mmに切り出した後、引張試験機(インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201X)を用いて、雰囲気温度23℃、剥離速度50mm/分で180℃剥離試験を実施した。
剥離強度が10N/15mm以上のものを合格とした。
【0089】
<使用した材料>
[ポリアミド系樹脂(A)]
(A)−1:三菱化学エンジニアリングプラスチックス(株)製商品名ノバミッド1022C6(ポリアミド6)
(A)−2:三菱化学エンジニアリングプラスチックス(株)商品名MXナイロンS6007(ポリアミドMXD6、ポリメタキシリレンアジパミド(メタキシレンジアミン/アジピン酸=50.5/49.5モル%))
【0090】
[エチレン系重合体(B)]
(B)−1:エチレン系共重合体(エチレン/プロピレン/ヘキセン−1/オクテン−1=95.6/0.5/1.0/2.9質量%、密度=0.944g/cm、結晶融解ピーク温度=131℃、結晶融解熱量=167J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=112℃、MFR=0.45g/10分、Mw/Mn=3.24)
(B)−2:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1=95.8/2.9/1.3質量%、密度=0.938g/cm、結晶融解ピーク温度=126℃、結晶融解熱量=156J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=107℃、MFR=4g/10分、Mw/Mn=3.38)
(B)−3:エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.950g/cm、結晶融解ピーク温度=132℃、結晶融解熱量=188J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=114℃、MFR=1.1g/10分、Mw/Mn=4.68)
(B)−4:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1=87.9/12.1質量%、密度=0.918g/cm、結晶融解ピーク温度=121℃、結晶融解熱量=134J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=105℃、MFR=4g/10分、Mw/Mn=2.80)
(B)−5:エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.958g/cm、結晶融解ピーク温度=134℃、結晶融解熱量=207J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=115℃、MFR=1g/10分、Mw/Mn=4.72)
【0091】
[結晶核剤(C)]
(C)−1:脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛/1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩=34/66質量%)
【0092】
[オレフィン相溶樹脂(D)]
(D)−1:水素添加石油樹脂(荒川化学工業(株)製の商品名「アルコンP115」、軟化温度Ts(D)=115℃)
【0093】
[その他の樹脂]
(E)−1:EVOH(日本合成化学工業(株)製の商品名「ソアノールDC3203FB」、エチレン含有率:32モル%、ケン化度:99.5モル%)
【0094】
(実施例1)
(A)−1からなる樹脂組成物を、Φ65mm単軸押出機を用いて270℃で溶融混練した後、Tダイ口金より押出し、次いで、30℃のキャストロールで急冷し、厚みが0.133mmである未延伸単層フィルムを得た。
次に、得られた未延伸単層フィルムを、60℃に加熱したロール式延伸機にて縦方向に3倍延伸した後、この縦延伸フィルムを100℃加熱したテンター式横延伸機で横方向に3.5倍延伸した。次いで、215℃で熱固定し、横方向に20%の弛緩を行った後、180℃に冷却し、5%の再横延伸を行うことで、厚みが0.015mmである樹脂層(I)を形成する単層フィルムを得た。
【0095】
他方、(B)−1、(C)−1及び(D)−1を、混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドし、40mmφ同方向二軸押出機を用いて230℃で混練した後、Tダイより押出し、次いで約40℃のキャスティングロールで急冷し、厚みが0.05mmである樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製した。
【0096】
次いで、樹脂層(I)を形成する前記単層フィルムの片面に、コロナ処理を行って濡れ指数を50dyne/cm以上とし、該片面に下記接着剤をグラビアコート塗布後、70℃で乾燥して酢酸エチルを除去して接着剤塗布層の厚みを0.005mmとした。
この際に塗布した接着剤は、その主剤として東洋モートン(株)製の商品名TM−329、硬化剤として東洋モートン(株)製の商品名CAT−8B、さらに、希釈溶剤として酢酸エチルを用い、これらTM−329、CAT−8B及び酢酸エチルを、混合質量比13.8/13.8/72.4の割合で混合してなる接着剤である。
【0097】
次に、樹脂層(II)を形成する前記単層フィルムを、樹脂層(I)を形成する前記単層フィルムの接着剤塗布層に重ねて、90℃でドライラミネートして貼り合わせたのち、40℃で24時間エージングを行うことで厚み0.07mmの多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムについて、酸素透過率、水蒸気透過率、ヘーズ、シール強度について評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例2)
実施例1において、樹脂層(II)を構成するエチレン系重合体(B)として、(B)−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例3)
実施例1において、樹脂層(II)を構成するエチレン系重合体(B)として、(B)−3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例4)
実施例1において、樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製する際、(B)−1、(C)−1及び(D)−1の混合質量比を、89.9:0.1:10の割合とした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例5)
(A)−1及び(A)−2を用い、(A)−1/(A)−2/(A)−1の3層からなる多層構成のフィルムとして共押し出し、30℃のキャストロールで急冷し、厚みが(A)−1/(A)−2/(A)−1=0.053/0.027/0.053mm(総厚み=0.133mm)である未延伸多層フィルムを得た。
次に、得られた未延伸多層フィルムについて、実施例1と同様の条件で延伸、熱固定を行い、厚みが(A)−1/(A)−2/(A)−1=0.006/0.003/0.006mm(総厚み=0.015mm)である、樹脂層(I)を形成する多層フィルムを得た。
次いで、実施例1と同様の条件で樹脂層(II)を形成する単層フィルムの作製、及び、貼り合せを行い、厚み0.07mmの多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例6)
(A)−1及び(E)−1を用い、(A)−1/(E)−1/(A)−1の3層からなる積層構成のフィルムとして共押し出し、30℃のキャストロールで急冷し、厚みが(A)−1/(E)−1/(A)−1=0.053/0.027/0.053mm(総厚み=0.133mm)である未延伸多層フィルムを得た。
次に、得られた未延伸多層フィルムについて、実施例1と同様の条件で延伸、熱固定を行い、厚みが(A)−1/(E)−1/(A)−1=0.006/0.003/0.006mm(総厚み=0.015mm)である、樹脂層(I)及び他の層からなる多層フィルムを得た。
次いで、実施例1と同様の条件で樹脂層(II)を形成する単層フィルムの作製、及び、貼り合せを行い、厚み0.07mmの多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例7)
実施例1において、樹脂層(II)を構成するエチレン系重合体(B)として、(B)−4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例1)
実施例1において、(B)−1のみから樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製した以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例2)
実施例1において、樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製する際、(B)−1及び(C)−1を混合質量比99.9:0.1の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例3)
実施例1において、樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製する際、(B)−1及び(D)−1を混合質量比80:20の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(比較例4)
実施例1において、樹脂層(II)を形成する単層フィルムを作製する際、(B)−1の代わりに(B)−5を用いると共に、(B)−5、(C)−1及び(D)−1を混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例1〜7は、酸素・水蒸気バリア性のいずれも優れ、且つ、ヘーズが少なく透明性に優れ、ヒートシール性にも優れたものであった。特に、エチレン系重合体(B)として、密度が高いB−1,B−3を使用する実施例1,3、ポリアミドMXD6からなる層をさらに設けた実施例5、EVOHからなる層をさらに設けた実施例6は、極めて優れた酸素透過率を示した。
一方、結晶核剤(C)を含まない比較例1,3は、ヘーズが高く透明性が不十分であった。また、オレフィン相溶樹脂(D)を含まない比較例1,2は、ヒートシール強度が不十分であった。
さらに、エチレン系重合体(B)として、結晶融解熱量が120〜190J/gの範囲よりも高いエチレン系重合体(B)−5を用いた比較例4は、防湿性、及び、透明性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂(A)を含有する層(樹脂層(I))、ならびに、下記(B)、(C)及び(D)を含有する層(樹脂層(II))を備えた多層フィルム。
(B):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/gであるエチレン系重合体
(C):結晶核剤
(D):石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン相溶樹脂
【請求項2】
前記エチレン系重合体(B)は、その密度が0.918〜0.955g/cmであることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中に占める前記結晶核剤(C)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下であり、且つ、前記樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中に占める前記オレフィン相溶樹脂(D)の含有量が1質量%以上、30質量%以下である請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
JIS K2207に基づき測定した前記オレフィン相溶樹脂(D)の軟化温度Ts(D)が、前記エチレン系重合体(B)の示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(B)+15℃以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(I)は、面積倍率で2倍以上、16倍以下の範囲内で、且つ少なくとも1方向に延伸されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の多層フィルム。
【請求項6】
JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.07mmでの前記多層フィルムの水蒸気透過率が3.0g/(m・24時間)以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多層フィルム。
【請求項7】
JIS K7105に基づき測定した厚み0.07mmでの前記多層フィルムのヘーズ値が15%以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の多層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の多層フィルムを有する包装資材。

【公開番号】特開2013−35268(P2013−35268A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25137(P2012−25137)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】