説明

多層光学補償子、ディスプレイ及び方法

面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子高分子フィルムであって、該第2層が非晶質であって、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、当該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含む特定の多層補償子高分子フィルムを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の複屈折特性を示す第1層及び第2層を含む、液晶ディスプレイのための多層光学補償子であって、全ての第2層と他の全ての第1層のとの間にある1つの第1層が、前記他の全ての第1層と前期全ての第2層との間の有機溶剤の拡散を妨げるバリア層である、多層光学補償子に関する。本発明はまたLCディスプレイ、及びこのような補償子の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
トリアセチルセルロース(TAC、セルローストリアセテートとも呼ばれる)フィルムが、その固有の物理特性及び難燃性により、写真業界によって伝統的に使用されている。TACフィルムは、液晶ディスプレイ内に使用される偏光子のためのカバーシートとして使用するのに好まれるポリマーフィルムでもある。TACがこの用途の好ましい材料であるのは、その面内複屈折が極端に低いからである。その面外複屈折も小さく(しかしゼロではない)、LCDに対する何らかの光学補償を提供する上で有用である。
【0003】
固有複屈折は、分子レベルにおける材料の基本配向を表す。固有複屈折は、材料の分子構造(結合角、回転自由度、芳香族基の存在など)に直接的に関連する。固有複屈折は、巨視的な物体を製造するために用いられるプロセス条件(温度、応力、圧力)によって影響されることはない。
【0004】
結晶材料及び液晶材料は、集成されて巨視的物体となったときに、これらの固有複屈折がほぼ完全に現れるという好都合な特性を有する。結晶及び液晶分子から成る層はしばしば、物品中の分子全てが互いに整合し、ひいてはこれらの基本配向を保存するように製造することができる。非晶質高分子材料の層を製造する場合には、同じことは当てはまらない。これらの固有複屈折は製造プロセスによって大幅に改変することができる。このように、実際の物品で測定された複屈折は、その固有複屈折と製造プロセスとの結果である。我々はこのような非晶質高分子材料を扱っているので、下記定義はこのような測定複屈折を意味し、固有複屈折を意味しない。
【0005】
面内複屈折とは、nxとnyとの差を意味する。x及びyは層平面内にある。nxは、常により大きい屈折率であるものとして定義され、そしてnyは、より小さい屈折率であるものとして、そしてnxに対して垂直であるものとして定義される。使用される符号規約は、nx-nyとなり、そして常に正となる。
【0006】
面外複屈折とは、nzと、nx及びnyの平均との差を意味する。x及びyは層平面内にあり、そしてzは層に対して垂直の平面内にある。使用される符号規約は、nz-[(nx+ny)/2]となる。TACは典型的には負の面外複屈折を有する。それというのもそのnzは、そのnx及びnyよりも小さいからである。
【0007】
面内リターデーション(Re) とは、面内複屈折と層厚(t)との積を意味する。従ってRe = t(nx-ny)である。
【0008】
面外リターデーション(Rth) とは、面外複屈折と層厚(t)との積を意味する。従ってRth = t(nz-[(nx+ny)/2])である。
【0009】
合成ポリマーフィルム(例えばポリカーボネート又はポリスルホン)をしばしば使用することにより、TACが提供する最小限の光学補償を増強する。これらの合成ポリマーフィルムは、接着ラミネーションによってディスプレイの残りの部分に取り付けられる。
【0010】
一般に光学材料分野において、合成ポリマーフィルムは、光学的異方性フィルム(高いリターデーション値を有する)として使用されるのに対して、TACフィルムは、光学的等方性フィルム(低いリターデーション値を有する)として使用される。
【0011】
欧州特許出願公開第0911656号明細書及び特開2000-275434号公報の両方に、高いリターデーションを有するTACフィルムが開示されている。TACは、光学補償子シートのための支持体として使用される。光学補償子シートは、TAC支持体と、ディスコティック液晶分子を含有する光学的異方性層とを含む。TACフィルムは、3つの方法(これら3つの方法の組み合わせを含む):1)特定の芳香族小分子(すなわちトリフェニレン)のTACフィルムへの添加、2)フィルムの流延前のTAC溶液の冷却、及び3)TACフィルムの延伸、によって高いリターデーションを達成する。特定の芳香族小分子の添加は、TACフィルムからのこれらの分子の「ブリード」を招くおそれがあるので、問題をはらむものとして論じられている。本発明の例においても、このようなTACフィルムを乾燥させるために極めて長い時間(1時間超)が必要とされる。このような時間ではロールツーロール(roll to roll)プロセスを施しにくい。
【0012】
TACフィルムに加えて、高異方性のディスコティック液晶層は、特別な整列技術及びこのモノマー層を架橋するための紫外線輻射を必要とする。
【0013】
米国特許出願公開第2001/0026338号明細書には、高異方性ディスコティック層を有しない高リターデーションの単一TACフィルムが開示されている。このTACフィルムは、2種又は3種以上の芳香族基をTACフィルム内に導入し、続いてTACフィルムを延伸することにより、高リターデーションを達成する。このような延伸が行われなければ、TACフィルムは、通常のTACと比較して、増強されたリターデーションを示すことはない。このような延伸によって、面内及び面外のリターデーションが高められる。これら2つの直交方向リターデーションを、この方法によって独立して制御することはできない。
【0014】
特開1999-95208号公報には、高ポリマーフィルムを一軸延伸することにより調製された光学補償子(高リターデーションを有する)を有する液晶ディスプレイが記載されている。このようなポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、又はポリスルホンを含む。この延伸工程は、所望の光学特性を得るために必須である。この延伸は、面内及び面外両方のリターデーションに同時に影響を与える。これら2つの直交方向リターデーションを、この方法によって独立して制御することはできない。また、この方法によって均一な光学補償子を製造することが難しいと記載されている。
【0015】
この公報は、発明者はTAC支持体の上側に塗布された高分子バインダー中に、剥離された無機粘土材料を使用する場合の補償子も記載する。この層内の剥離された無機粘土材料は、光学活性材料であって、高分子バインダーではない。
【0016】
特開2001-194668号公報に記載された補償子は、延伸されたポリカーボネート・フィルムをラミネートすることにより形成される。このアプローチはラミネーション(難しさが伴う)を必要とするだけでなく、2つの異なるタイプのポリカーボネートを2回独立して延伸することをも必要とする。ラミネーション工程はまた、2つのフィルムが互いに整合すること、及びこれらの光軸が互いに直交することを必要とする。
【0017】
米国特許第5,344,916号明細書、同第5,480,964号明細書、及び同第5,580,950号明細書には、LDCのための補償フィルムが記載されている。しかしこれらの明細書には、カールを制御し付着力を改善するためのバリア層の必要性に関しては述べられていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
解決すべき問題点は、容易に製造され、所要の程度の面内補償及び面外補償を可能にし、層間の優れた付着力を有し、そして有機溶剤塗布溶液を塗布することにより引き起こされるカールがない多層光学補償子を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子高分子フィルムであって、
該第2層が非晶質であって、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、当該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含み;
(a)1つの第1層は、1つの第2層に隣接し、且つ全ての第2層と全ての他第1層のとの間にあるように存在し;
(b)該第2層のうちの少なくとも1つ、又は該他の第1層のうちの少なくとも1つが、有機溶剤から塗布された層であり;そして
(c)該隣接第1層が、該他の第1層と該第2層との間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量の、水溶性又は水分散性であるポリマーを含有する、
多層補償子高分子フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の多層補償子は、容易に製造され、所要の程度の面内補償及び面外補償を可能にし、層間の優れた付着力を有し、そして有機溶剤コーティング溶液を塗布することにより引き起こされるカールがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は上記概要の通りである。
1つの態様では、本発明は、面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子高分子フィルムであって、
該第2層が非晶質であって、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、当該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含み;
(a)1つの第1層は、1つの第2層に隣接し、且つ全ての第2層と全ての他第1層のとの間にあるように存在し;
(b)該第2層のうちの少なくとも1つ、又は該他の第1層のうちの少なくとも1つが、有機溶剤から塗布された層であり;そして
(c)該隣接第1層が、該他の第1層と該第2層との間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量の、水溶性又は水分散性であるポリマーを含有する、
多層補償子高分子フィルムを提供する。
【0022】
本発明はまた、1つ又は2つ以上の第1層と1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子であって、該第2層が、非晶質であり選択された高分子材料を含み、各第2層が、主鎖内に不可視発色団を含有するTgが180℃を上回るポリマーを含み、そして各第1層はそのようなポリマーを含まず、当該層が、該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、そして該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有している
多層補償子を提供する。
【0023】
非晶質ポリマーが180℃を上回るTgを有し、そして不可視発色団を主鎖内に含有する第2層とは異なり、第1層は、180℃未満のTgを有する非晶質ポリマーを含むことができる。発色団は、光吸着におけるユニットとして役立つ原子又は原子団として定義されている(Modern Molecular Photochemistry Nicholas J. Turro Editor, Benjamin/Cummings Publishing Co., Menlo Park, CA(1978) Pg 77)。典型的な発色団はビニル、カルボニル、アミド、イミド、エステル、カーボネート、芳香族(すなわちフェニル、ナフチル、ビフェニル、チオフェン、ビスフェノール)、スルホン、及びアゾ、又はこれらの発色団の組み合わせを含む。不可視発色団は、400〜700nmの範囲外の吸収最大値を有する発色団である。
【0024】
本発明の光学補償子のために、非晶質高分子材料を使用する。種々の技術が、秩序付けられた(結晶、液晶)材料と非晶質材料とを区別することができる。X線回折、示差走査熱量測定法及び偏向光学顕微鏡法が、当業者の選択肢となる技術である。第1層材料は、溶剤流延又は塗布されるのに適していることが望ましく、例えばTAC、他のセルロースエステル、ポリカーボネート、及び環状ポリオレフィンである。
【0025】
TACフィルムの製造はよく知られており、下記プロセスを含む。下記コンベンショナルな方法に従って、TAC溶液(ドープ)を調製することができる。処置は0℃以上の温度(室温以上の温度)で行われる。溶液は、通常の溶剤流延法において使用される装置を用いて、既知のドープ調製法によって調製することができる。溶剤として、ハロゲン化炭化水素(具体的には塩化メチレン)は、この方法において使用されるのが典型的である。TACの量は、調製された溶液中の酢酸セルロースの含有率が10〜40重量%、典型的には10〜30重量%になるように調節される。有機(主要)溶剤に(下記)添加物を添加することができる。
【0026】
ドープをドラム又はベルト上に流延し、そして溶剤を蒸発させることにより、フィルムを形成する。ドープを流延する前に、ドープの濃度は典型的には、ドープの固形含有率が18〜35重量%となるように調節される。鏡面を提供するために、ドラム又はベルトの表面は典型的には研磨される。溶剤流延法の流延段階及び乾燥段階については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号、同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640,731号、同第736,892号の各明細書、特公昭45(1970)-4554号公報、同49(1974)-5614号公報、特開昭60(1985)-176834号公報、同60(1985)-203430号公報及び同62(1987)-115035号公報に記載されている。
【0027】
酢酸セルロース・フィルムに可塑剤を添加することにより、フィルムの機械強度を改善することができる。可塑剤は、乾燥プロセスのための時間を短縮するという別の機能を有する。可塑剤としては、リン酸エステル及びカルボン酸エステル(例えばフタル酸エステル及びクエン酸エステル)が通常使用されている。リン酸エステルの例は、リン酸トリフェニル(TPP)及びリン酸トリクレシル(TCP)を含む。フタル酸エステルの例は、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジフェニル(DPP)及びフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)を含む。クエン酸の例は、o-アセチルトリエチルシトレート(OACTE)及びo-アセチルトリブチルシトレート(OACTB)を含む。
【0028】
他のカルボン酸エステルの例は、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、セバシン酸ジブチル、及び種々のトリメリット酸エステルを含む。フタル酸エステル(DMP, DEP, DBP, DOP, DPP, DEHP)の可塑剤が好ましく、DEP及びDPPが特に好ましい。可塑剤の量は、酢酸セルロースの量を基準として、典型的には0.1〜25重量%、好都合には1〜20重量%、望ましくは3〜15重量%である。
【0029】
酢酸セルロース・フィルム内には、安定剤(例えば酸化阻害剤、過酸化物分解剤、ラジカル阻害剤、金属不活性化剤、酸素スカベンジャー、アミン)を内蔵することもできる。安定剤は、特開平3(1991)-199201号、同5(1993)-1907073号、同5(1993)-194789号、同5(1993)-271471号、同6(1994)-107854号の各公報に記載されている。劣化阻害剤の量は、溶液(ドープ)の量を基準として、0.01〜1重量%、典型的には0.01〜0.2重量%である。量が0.01重量%未満の場合、劣化阻害剤はほとんど効果を発揮しない。他方において量が1重量%を上回る場合、劣化阻害剤はしばしばフィルム表面上にブリードする。特に好ましい劣化阻害剤の例は、ブチレート化ヒドロキシトルエン(BHT)及びトリベンジルアミン(TBA)を含む。
【0030】
有機溶剤は水以外の液体である。典型的には、これらは芳香族又はアルキル炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、及び前記のもののハロゲン化類似物を含む。好都合には、これらは、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び塩化メチレンを含む。上記有機溶剤の混合物が有用であることも判っている。このような有機溶剤の残留量が典型的には補償子の層内に残る。補償内に保持される量は、溶剤の蒸気圧、好適な拡散定数、層厚、温度、及び乾燥時間のようなファクターに依存する。このような有機溶剤のこれらの残留量は、最低検出レベル約5mg/m2でヘッドスペース・ガス・クロマトグラフィのような技術によって検出することができ、バリアの必要性を示す。
【0031】
TACフィルムの厚さは140 nm未満であり、典型的には70〜115μm、望ましくは40〜100μmである。
【0032】
酢酸セルロース膜が偏向用板の透明保護フィルムとして使用される場合、フィルム表面は典型的には表面処理を施される。表面処理の例は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、及び紫外線輻射処理を含む。酸処理又はアルカリ処理が好ましい。酸処理又はアルカリ処理は、酢酸セルロース・フィルムに対する鹸化処理として機能することができる。
【0033】
アルカリ処理が特に好ましい。アルカリ処理は水性アルカリ溶液を使用する。アルカリは典型的には、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。水性アルカリ溶液のpH値は、典型的には10を上回る。水性アルカリ溶液中に、酢酸セルロース膜の少なくとも1つの表面が1〜300秒間、望ましくは5〜240秒間にわたって浸される。アルカリ処理は典型的には25〜70℃、望ましくは35〜60℃で行われる。アルカリ処理後には、酢酸セルロース膜は典型的には水で洗浄される。
【0034】
上記プロセスによって形成される第1層フィルムの面内リターデーション(Re)値は、典型的には0〜5nmである。第1層内により多くの量のRe(>5nm)を発生させるために、任意の実施可能な方法を用いることができるが、しかし最も一般的に実施されるアプローチは延伸である。ポリマーが延伸されると、個々のポリマー鎖セグメントは大部分が一次延伸方向に配向され、こうしてポリマー層の面内複屈折を増大させる。この延伸は、ポリマーのガラス転移温度を上回る温度で行われるのが典型的である。従って、高分子フィルムはTgを上回る温度に加熱されて延伸される。別の方法は、溶剤がフィルム内部に内蔵される間、フィルムを延伸することである。この方法において、湿潤流延されたフィルムが、そのTgを上回る温度で延伸される。換言すれば、フィルムのTgは、溶剤の存在なしで有するはずのTgを上回る温度で乾燥フィルムを加熱するのではなく、溶剤可塑化によって低くされる。発明の背景の項に記載したように、延伸されたフィルムに或る特定の小分子を添加することにより、Reを高めることができる。第1フィルムは一軸又は二軸延伸することができる。一軸延伸の場合、フィルムは1方向で延伸される。二軸延伸の場合、2つの延伸方向は典型的には互いに垂直である。第1層の面外複屈折は-0.01よりも負ではなく、また多層補償子の第1層は、前記多層補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300nmとなるように形成される。
【0035】
本発明によれば、1つの第2層に隣接し、第2層全てと他の第1層全てとの間に存在する1つの第1層は、他の第1層と第2層との間の有機溶剤の拡散を妨げるバリア層である。バリア層は典型的には、第1層、例えば上述のようなTACフィルムに塗布される。バリア層は、水溶性又は水分散性の面外複屈折をほとんど又は全く有しないポリマーを含む。本発明のバリア層内に使用するのに適した水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール及びこれらのコポリマー、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、澱粉、アクリル酸含有ポリマー、無水マレイン酸含有ポリマー、親水性セルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリルアミドを含む。好適な水分散性ポリマーは、ポリエステル、具体的にはポリエステルイオノマー、ポリウレタン、及び親水性官能基を有するラテックスポリマー、例えば(メト)アクリル酸含有ポリマー、無水マレイン酸含有ポリマー、イタコン酸含有ポリマー、及びスチレンスルホン酸含有ポリマーなどを含む。
【0036】
連続層に対するバリア特性及び付着力の両方を最適化するために、バリア層は典型的には、2種又は3種以上のポリマーを含有することになる。例えばバリア層は水溶性ポリマー、例えばゼラチン及び水分散性ポリマー、例えばポリエステルイオノマーを含有することができる。或いは、バリア層は2種の異なる水分散性ポリマー、例えばポリエステルイオノマー及びポリウレタンを含有することができる。
【0037】
バリア層は、架橋剤、例えばイソシアネート、アルデヒド、ビニルスルホン材料、アジリジン及びメラミン樹脂を添加するような既知の方法を用いて、或いは乾燥させた層を化学線に当てることにより、架橋することができる。
【0038】
バリア層は一般には、乾燥コーティング重量50〜6000 mg/m2、より典型的には100〜1000 mg/m2で塗布される。35 mg/m2未満のバリア層乾燥コーティング重量は、後続の層から有機溶剤が拡散して、他の第1層、例えばTACフィルムに浸透するのを防止するには不十分である。
【0039】
バリア層は既知のコーティング技術によって水から塗布される。バリア層はコンベンショナルな技術を用いて乾燥させることができる。バリア層内にゼラチンを使用する場合、支持体に塗布したあとこれを5〜20℃で冷却するならば、付加的な改善を観察することができる。
【0040】
界面活性剤又はレオロジー改質剤のような添加物をバリア層に添加することにより、層のコーティング品質、付着力及びその他の特性を改善することができる。
【0041】
第2層は典型的には、バリア層上に塗布された溶剤である。この溶剤はスピン・コーティング、ホッパー・コーティング、グラビア・コーティング、ワイヤバー・コーティング、又は当業者に知られたその他のコーティング法によって達成することができる。
【0042】
第2層は、溶剤コーティング時に大幅に負の面外複屈折をもたらすポリマーを含有する溶液から塗布される。負の面外複屈折(負の面外リターデーション)をもたらすために、不可視発色団、例えばビニル、カルボニル、アミド、イミド、エステル、カーボネート、スルホン、アゾ、及び芳香族(すなわちベンゼン、ナフタレート、ビフェニル、ビスフェノールA)をポリマー主鎖内に含有するポリマー、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリチオフェンが使用される。この第2層に、充填剤及び非高分子分子を添加することもできる。
【0043】
望ましくは、第2層内に使用されるポリマーは、主鎖から離れた発色団を有しない。主鎖から離れた発色団を有するこのような望ましくないポリマーの例は、フルオレン基を有するポリアリーレートである。
【0044】
本発明の第2層のためには、非晶質高分子材料が使用される。種々の技術が、秩序付けられた(結晶、液晶)材料と非晶質材料とを区別することができる。X線回折、示差走査熱量測定及び偏向光学顕微鏡法が、当業者の選択肢となる技術である。
【0045】
第2層内に使用されるポリマーのガラス転移温度(Tg)は重要である。所望の結果を達成するために、Tgは180℃を上回るのがよい。
【0046】
第2層内に使用されるポリマーは、種々の技術によって合成することができる。縮合、付加、アニオン、カチオン、又はその他の一般的な合成法を採用することができる。
【0047】
この第2層の厚さは、30μm未満となるのがよい。典型的には、この厚さは0.1μm〜20μmとなるのがよい。この厚さは1.0μm〜10μmであると好都合である。望ましくはこの厚さは2μm〜8μmである。
【0048】
多層補償子の組み合わされた厚さは、115μm未満となるのがよい。典型的には、この厚さは20μm〜105μmとなるのがよい。望ましくはこの厚さは40μm〜100μmである。
【0049】
第2層は、第2層の面外リターデーションが-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有するのがよい。典型的には、面外リターデーションは-600〜-40であるのがよい。面外リターデーションは-500〜-60であると好都合である。望ましくは面外リターデーションは-400〜-80である。
【0050】
本発明は、面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCディスプレイのための補償子高分子フィルムを形成する方法であって、
該第2層が非晶質であり、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、そして該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含み;
(a)該層のうちの少なくとも1つが、有機コーティング溶剤から塗布され;
(b)隣接する第1層及び第2層が、任意の他の第2層から任意の他の第1層を分離するために、塗布され;そして
(c)該隣接する第1層又は第2層のうちの少なくとも1つが、水から塗布され該隣接する層間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量で存在するポリマーを含有する、
補償子高分子フィルムを形成する方法を提供する。
【0051】
以下のように図面を参照することにより、本発明をより詳細に説明する。
図1は、本発明による多層補償子5を概略的に示す断面図である。補償子は、面外複屈折が低い高分子層10と、面外複屈折が低い、バリア層としても役立つ高分子層15と、バリア層15に隣接して面外複屈折が高い高分子層20とを含み、そして層10, 15及び20の組み合わされた面内リターデーション(Re)は、0〜300nmであり、そして層20の面外リターデーション(Rth)は、-20nmよりも負である。
【0052】
図2は、本発明による別の多層補償子6を概略的に示す断面図である。補償子は、面外複屈折が低い高分子層10と、面外複屈折が低い、バリア層としても役立つ高分子層15と、面外複屈折が高い高分子層20と、面外複屈折が低い、バリア層としても役立つ高分子層25と、面外複屈折が低い高分子層30とを含み、バリア層15は層10及び20に隣接しており、バリア層25は層20及び30に隣接しており、そして層10, 15, 20, 25及び30の組み合わされた面内リターデーション(Re)は、0〜300nmであり、そして層20の面外リターデーション(Rth)は、-20nmよりも負である。層10及び30の組成は同じであってもなくてもよい。また、バリア層15及び25の組成は同じであってもなくてもよい。
【0053】
図3は、本発明による別の多層補償子7を概略的に示す断面図である。補償子は、面外複屈折が低い高分子層10と、面外複屈折が低い、バリア層としても役立つ高分子層15と、面外複屈折が高い高分子層20と、面外複屈折が低い、バリア層としても役立つ高分子層25と、面外複屈折が高い高分子層40とを含み、バリア層15は層10及び20に隣接しており、バリア層25は層10及び40に隣接しており、そして層10, 15, 20, 25及び40の組み合わされた面内リターデーション(Re)は、0〜300nmであり、そして層20及び40の組み合わされた面外リターデーション(Rth)は、-20nmよりも負である。層20及び40の組成は同じであってもなくてもよい。また、バリア層15及び25の組成は同じであってもなくてもよい。好都合には、層20及び40は同じ組成及び厚さを有することにより、対称的な多層補償子を提供する。当業者であればより複雑な構造に想到することができる。
【0054】
図4Aが示す概略的な液晶ディスプレイ700において、液晶セル600の一方の側に単一の補償フィルム300が配置されている。符号500は偏光子であり、そして符号550は第2の偏光子である。偏光子500及び550の透過軸は、互いに90°±10℃の角度を成す。これらの透過軸の角度は、液晶セル600に対して0°及び90°として図示されている。しかし、液晶ディスプレイ700の種類に応じて、他の角度も可能であり、このことは当業者には明らかである。なお、符号600は、2つのガラス板の間に閉じ込められた液晶を有する、電気的に切換え可能な液晶セルである。
【0055】
図4Bが示す別の概略的な液晶ディスプレイ700において、液晶セル(600)の両側に2つの補償フィルム300が配置されている。符号500は偏光子であり、そして符号550は第2の偏光子である。偏光子500及び550の透過軸は、互いに90°±10℃の角度を成す。これらの透過軸の角度は、液晶セル600に対して0°及び90°として図示されている。しかし、液晶ディスプレイ700の種類に応じて、他の角度も可能であり、このことは当業者には明らかである。なお、符号600は、2つのガラス板の間に閉じ込められた液晶を有する、電気的に切換え可能な液晶セルである。
【0056】
従来技術と比較して、本発明の態様は、フィルムを延伸する必要性を回避し、高価な液晶分子の使用を必要とせず、フィルム・ラミネーションを必要とせず(ひいてはラミネート用接着剤から汚れ又は不所望の光学リターデーションが導入される機会を低減する)、比較的薄い(<115μm)構造で光学補償を増強し、そして容易に製造される。更なる特性として、態様は、主として第1層の責務であるReの制御を可能にする一方、Rthの制御は主として第2層の責務である。従来技術において、Re及びRthはしばしばカップリングされ、独立して制御されることはない。本発明の態様はまた、層の間に優れた付着力を有し、しかも有機溶剤によって誘発されるカールのない補償子を提供する。
【実施例】
【0057】
下記非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。
例:
任意の好適な又はコンベンショナルな手順を用いて、ここに使用される芳香族ポリエステルを調製することができる。ここに使用される手順は、Condensation Polymers: By Interfacial and Solution Methods, Interscience, New York City, N.Y.(1965)においてP. W. Morganによって概要を示されたものに従った。
【0058】
ポリマーA(合成):
4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール(23.53 g, 0.07モル)、4,4'-(2-ノルボルニリデン)ビスフェノール(8.4 g, 0.03モル)及びトリエチルアミン(22.3 g, 0.22モル)の10℃のメチルエチルケトン(100 mL)中の撹拌混合物に、メチルエチルケトン(60 mL)中の塩化テレフタロイル(18.27 g, 0.09モル)と塩化イソフタロイル(2.04 g, 0.01モル)の溶液を添加した。添加後、温度を室温まで上げておき、そして4時間にわたって窒素下で溶液を攪拌し、この時間中に、塩酸トリエチルアミンがゼラチン状に沈澱し、溶液は粘性になった。次いで溶液をトルエン(160 mL)で希釈し、そして希塩酸(200 mLの2%酸)で洗浄し、続いて水(200 mL)によって3回洗浄した。次いで強力に撹拌しながら、溶液をイソプロパノール中に注ぎ込み、そして白色ビード様ポリマーを沈澱させ、捕集し、そして24時間にわたって真空下で50℃で乾燥させた。このポリマーのガラス転移温度は265℃であることが示差走査熱量測定法によって測定された。
【0059】
【化1】

【0060】
バリアA(配合)
Sancure 898(30%固形分で水中に分散されたポリウレタン、B.F. Goodrich Corp)を、Eastek 1100(33%固形分で水中に分散されたポリエステルイオノマー、Eastman Chemical Corp)及び付加的な水と合体させることにより、総固形分20%の溶液を生成した。これら2つのポリマーの比は、20%固形分の溶液が、80%のSancure 898と20%のEastek 1100との乾燥コーティングを生成するようにした。
【0061】
バリアB(配合)
ゼラチン(ウシ)及びポリ(エチレンイミン)(Mica A-131-X, Mica Corp.)を水と合体させることにより、総固形分3%の溶液を生成した。これら2つのポリマーの比は、3%固形分の溶液が、95%のゼラチンと5%のポリ(エチレンイミン)との乾燥コーティングを生成するようにした。
【0062】
比較例1:
ポリマーAの溶液(プロピルアセテート中9%の固形分)をTACウェブ上にコーティングした。このことは、TACウェブを繰り出し、TACウェブにコロナ放電処理(CDT、100ft/minで1200ワット)を施し、ポリマー溶液をコーティングし(スロット・ホッパー)、そしてプロピルアセテートの大部分を除去するのに十分な乾燥を施す(85℃)工程を含んだ。これらの工程は、ロール間の連続プロセスで行われた。スピン・コーティング及びその他のコーティング法を用いることもできる。TAC/ポリエステル構造の光学的に透明なフィルムを、下記特性を有するように製造した。550nm波長のエリプソメーター(モデルM2000V, J.A. Woollam Co.)を用いて、Re、Rth及びポリエステル層厚を測定した。
【0063】
比較例2:
バリア溶液(バリアB配合物、水中3%の固形分)をTACウェブ上にコーティングした。このことは、TACウェブを繰り出し、TACウェブにコロナ放電処理(CDT、100ft/minで1200ワット)を施し、バリアA溶液をコーティングし(スロット・ホッパーを使用)、そして水の大部分を除去するのに十分な乾燥を施す(85℃)工程を含んだ。同じ機械上の第2のスロット・ホッパーを使用して、今乾燥させたバリア層の上側に、ポリマーA(プロピルアセテート中13%の固形分)をコーティングした。この第2のコーティング工程に続いて、十分な乾燥を施し(85℃)、こうしてプロピルアセテートの大部分を除去した。これらの工程は、ロール間の連続プロセスで行われた。スピン・コーティング及びその他のコーティング法を用いることもできる。TAC/バリア/ポリエステル構造の光学的に透明なフィルムを、下記特性を有するように製造した。550nm波長のエリプソメーター(モデルM2000V, J.A. Woollam Co.)を用いて、Re、Rth及びポリエステル層厚を測定した。
【0064】
例1:
バリア溶液(バリアA配合物、水中20%の固形分)をTACウェブ上にコーティングした。このことは、TACウェブを繰り出し、TACウェブにコロナ放電処理(CDT、100ft/minで1200ワット)を施し、バリアA溶液をコーティングし(スロット・ホッパーを使用)、そして水の大部分を除去するのに十分な乾燥を施す(85℃)工程を含んだ。同じ機械上の第2のスロット・ホッパーを使用して、今乾燥させたバリア層の上側に、ポリマーA(プロピルアセテート中9%の固形分)をコーティングした。この第2のコーティング工程に続いて、十分な乾燥を施し(85℃)、こうしてプロピルアセテートの大部分を除去した。これらの工程は、ロール間の連続プロセスで行われた。スピン・コーティング及びその他のコーティング法を用いることもできる。TAC/バリア/ポリエステル構造の光学的に透明なフィルムを、下記特性を有するように製造した。550nm波長のエリプソメーター(モデルM2000V, J.A. Woollam Co.)を用いて、Re、Rth及びポリエステル層厚を測定した。
【0065】
平衡させられた試料上で付着力及びカールの測定を行った(室内条件でコーティングから3日後)。TACウェブ上のコート済層をスクライブし、そしてスクライブされた領域上に高粘着テープを置くことにより付着力を測定した。このテープを試料から素早く取り外し、除去されたスクライブ領域の範囲が付着力の尺度になる。10インチ x 10インチの試料を平らな表面上に置き、そして幅方向に沿った試料のエッジの持ち上がり高さをミリメートルで測定することにより、カールを測定した(溶剤によって誘発された重度のカールは、試料を丸めて円筒又はチューブにし、エッジの持ち上がり高さを得ることはできない)。例1及び比較例の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1の結果から明らかなように、バリアを有しない試料(比較例1)は許容できないカール及び付着力を有し、バリア層(比較例2)はカールを制御し、面外リターデーションの形成効率を改善する(面外複屈折を保つ)が、しかし付着力を有さず、バリア層(例1)はカールを低減し、付着力を改善し、そして面外リターデーションの形成効率を改善する(面外複屈折を保つ)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の1つの態様による、3つの層を有する多層補償子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の1つの態様による、4つの層を有する多層補償子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の1つの態様による、5つの層を有する多層補償子を示す断面図である。
【図4a】図4aは、本発明の1つの態様による、1つの補償フィルムを有する液晶ディスプレイを示す分解図である。
【図4b】図4bは、本発明の1つの態様による、2つの補償フィルムを有する液晶ディスプレイを示す分解図である。
【符号の説明】
【0069】
5 本発明による補償子
6 本発明による補償子
7 本発明による補償子
10 面外複屈折が低い第1高分子層
15 面外複屈折が低い、バリアとして役立つ第2高分子層
20 面外複屈折が高い第3高分子層
25 面外複屈折が低い、バリアとして役立つ第4高分子層
30 面外複屈折が低い第5高分子層
40 面外複屈折が高い第5高分子層
300 本発明による補償子
500 偏光子
550 偏光子
600 液晶セル
700 液晶ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子高分子フィルムであって、
該第2層が非晶質であって、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、当該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含み;
(a)1つの第1層は、1つの第2層に隣接し、且つ全ての第2層と全ての他第1層のとの間にあるように存在し;
(b)該第2層のうちの少なくとも1つ、又は該他の第1層のうちの少なくとも1つが、有機溶剤から塗布された層であり;そして
(c)該隣接第1層が、該他の第1層と該第2層との間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量の、水溶性又は水分散性であるポリマーを含有する、
多層補償子高分子フィルム。
【請求項2】
有機溶剤が該層のうちの少なくとも1つに含有されている、請求項1に記載の補償子。
【請求項3】
該有機溶剤が、芳香族炭化水素又はアルキル炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、及び前記のもののハロゲン化類似物から成る群から選択された溶剤を含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項4】
該有機溶剤が、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び塩化メチレンから成る群から選択された溶剤を含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項5】
該1つ又は2つ以上の第1層のそれぞれの面外複屈折が、-0.005よりも負ではない、請求項1に記載の補償子。
【請求項6】
該1つ又は2つ以上の第2層のそれぞれの面外複屈折が、-0.005よりも負である、請求項1に記載の補償子。
【請求項7】
該第1層のうちの少なくとも2つが隣接している、請求項1に記載の補償子。
【請求項8】
該第1層及び第2層の全てが隣接している、請求項1に記載の補償子。
【請求項9】
該組み合わされた第2層の厚さが、30マイクロメーター未満である、請求項1に記載の補償子。
【請求項10】
該組み合わされた第2層の厚さが、0.1〜20マイクロメーターである、請求項1に記載の補償子。
【請求項11】
該組み合わされた第2層の厚さが、1.0〜10マイクロメーターである、請求項1に記載の補償子。
【請求項12】
該組み合わされた第2層の厚さが、2〜8マイクロメーターである、請求項1に記載の補償子。
【請求項13】
該補償子の該組み合わされた第1層及び第2層の厚さが、115マイクロメーター未満である、請求項1に記載の補償子。
【請求項14】
該補償子の該組み合わされた第1層及び第2層の厚さが、20〜105マイクロメーターである、請求項1に記載の補償子。
【請求項15】
該補償子の該組み合わされた第1層及び第2層の厚さが、40〜100マイクロメーターである、請求項1に記載の補償子。
【請求項16】
少なくとも1つの第2層のRthが、-20nm又はこれよりも負である、請求項1に記載の補償子。
【請求項17】
少なくとも1つの第2層のRthが、-40〜-600nmである、請求項1に記載の補償子。
【請求項18】
少なくとも1つの第2層のRthが、-60〜-500nmである、請求項1に記載の補償子。
【請求項19】
該第2層が、不可視発色団を主鎖内に含有するポリマーを含み、そして180℃を上回るTgを有する、請求項1に記載の補償子。
【請求項20】
該ポリマーのTgが、180℃を上回る、請求項1に記載の補償子。
【請求項21】
該第2層が、ビニル、カルボニル、アミド、イミド、エステル、カーボネート、芳香族、スルホン又はアゾ基を主鎖内に含有するポリマーを含む、請求項20に記載の補償子。
【請求項22】
該不可視発色団が、カルボニル、アミド、イミド、エステル、カーボネート、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ビスフェノール、又はチオフェン基を含む、請求項20に記載の補償子。
【請求項23】
該第2層が、
1)ポリ(4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビスフェノール)テレフタレート-コ-イソフタレート、
2)ポリ(4,4'-ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン-5-イリデンビスフェノール)テレフタレート、
3)ポリ(4,4'-イソプロピリデン-2,2',6,6'-テトラクロロビスフェノール)テレフタレート-コ-イソフタレート、
4)ポリ(4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ビスフェノール-コ-(2-ノルボルニリデン)-ビスフェノールテレフタレート、
5)ポリ(4,4'-ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン-5-イリデン)-ビスフェノール-コ-(4,4'-イソプロピリデン-2,2',6,6'-テトラブロモ)-ビスフェノールテレフタレート、又は
6)ポリ(4,4'-イソプロピリデン-ビスフェノール-コ-4,4'-(2-ノルボルニリデン)ビスフェノール)テレフタレート-コ-イソフタレート、又は前記のもののいずれかのコポリマーを含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項24】
該第2層が、ポリ(4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビスフェノール-コ-4,4'-(2-ノルボルニリデン)ビスフェノール)テレフタレート-コ-イソフタレート、又はそのコポリマーを含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項25】
該第1層が、主鎖内に不可視発色団を含有するTgが180℃を上回るポリマー以外のポリマーを含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項26】
該第2層が、主鎖から離れた発色団を含有しない、主鎖内に不可視発色団を含有するポリマーを含む、請求項20に記載の補償子。
【請求項27】
該第1層のうちの1つが、セルロースのエステル、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、又はフルオレン基を含有するポリアリーレートを含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項28】
該第1層のうちの1つが、トリアセチルセルロース(TAC)を含む、請求項1に記載の補償子。
【請求項29】
1つ又は2つ以上の第1層と1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCセルのための多層補償子であって、
該第2層が、非晶質であり選択された高分子材料を含み、各第2層が、主鎖内に不可視発色団を含有するTgが180℃を上回るポリマーを含み、そして各第1層はそのようなポリマーを含まず、当該層が、該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、そして該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有している
多層補償子。
【請求項30】
液晶セル、該セルの各側に1つずつ配置された交差偏光子、及び請求項1に記載の少なくとも1つの補償子を含む、液晶(LC)ディスプレイ。
【請求項31】
液晶セル、該セルの各側に1つずつ配置された交差偏光子、及び請求項2に記載の少なくとも1つの補償子を含む、液晶(LC)ディスプレイ。
【請求項32】
液晶セル、該セルの各側に1つずつ配置された交差偏光子、及び請求項29に記載の少なくとも1つの補償子を含む、液晶(LC)ディスプレイ。
【請求項33】
該液晶セルが、鉛直方向に整列されるているか又はねじられたネマティック・セルである、請求項29に記載のディスプレイ。
【請求項34】
面内スイッチングを採用する、請求項29に記載のディスプレイ。
【請求項35】
面外複屈折が-0.005よりも負ではない2つ又は3つ以上の第1層と、面外複屈折が-0.005よりも負である1つ又は2つ以上の第2層とを含む、LCディスプレイのための補償子高分子フィルムを形成する方法であって、
該第2層が非晶質であり、且つ該補償子の全体面内リターデーション(Re)が0〜300 nmとなり、そして該1つ又は2つ以上の第2層のうちの少なくとも1つの面外リターデーション(Rth)が-20nmよりも負となるのに十分な厚さを有する選択された高分子材料を含み;
(a)該層のうちの少なくとも1つが、有機コーティング溶剤から塗布され;
(b)隣接する第1層及び第2層が、任意の他の第2層から任意の他の第1層を分離するために、塗布され;そして
(c)該隣接する第1層又は第2層のうちの少なくとも1つが、水から塗布され該隣接する層間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量で存在するポリマーを含有する、
補償子高分子フィルムを形成する方法。
【請求項36】
該層のうちの少なくとも1つに、有機溶剤が含有されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
該有機溶剤が、芳香族又はアルキル炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、及び前記のもののハロゲン化類似物から成る群から選択された溶剤を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
該有機溶剤が、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び塩化メチレンから成る群から選択された溶剤を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
該隣接する層の間の有機溶剤の拡散を妨げるのに十分な量で存在し水から塗布されたポリマーを含有する、該隣接する第1層又は第2層のうちの少なくとも1つが、架橋されている、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−516476(P2007−516476A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547090(P2006−547090)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041545
【国際公開番号】WO2005/066705
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】