説明

多層光記録媒体製造用シート及び多層光記録媒体

【課題】光記録層の面状態を良好に保ちながら、工程フィルムを剥離して、光記録層を転写することが可能な多層光記録媒体製造用シート、それを用いて製造された記録密度が高く、かつ良好な記録特性を有する多層光記録媒体を提供する。
【解決手段】複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシートであって、工程フィルム上に、少なくとも剥離補助層と厚さ1〜1000nmの光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを有すると共に、前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられ、最外層に感圧接着剤層が配設された構造を有し、かつ波長660nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下である多層光記録媒体製造用シート、及び該シートを用いて得られた多層光記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層光記録媒体製造用シート及び多層光記録媒体に関し、特に、記録密度が高く、良好な記録特性を有する多層光記録媒体を容易に製造することが可能な多層光記録媒体製造用シート及びそれを用いて製造された多層光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体は、大量の記録データを記録可能な点が注目され、様々な用途で使用されている。最近では、さらなる記録密度の向上を目指して、三次元的にデータを記録する方法(以下、「多層光記録法」ともいう。)が提案されている。例えば、Y.Kawataらは光重合反応性の光反応性成分を有するフォトポリマー材料に多層光記録を行う技術を報告している(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、このような多層光記録法を行うための多層光記録媒体においては、従来より、多層記録・再生時にデータのクロストークが発生するという問題があった。このようなクロストーク対策としては、各光記録層の層間距離を大きくすることが考えられるが、この場合、記録密度の低下が避けられない上、記録の読み書きに用いる光が途中で吸収されるために、光記録層の数が制限されるのを免れないという問題が生じる。
【0003】
そこで、前記クロストークを低減させるために、例えば、2層以上の記録層を備えた光記録媒体であって、前記2層以上の記録層の層間の一部あるいは全てに、記録光によって光情報が記録されない材料からなる非記録層が介在してなる光記録媒体(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この光記録媒体を構成する記録層や非記録層の形成は、通常各層をスピンコート法によって形成し、積層する方法が用いられている。しかしながら、スピンコート法による積層方法では大面積化が困難であり、生産性も低い上、各層及び層全体の厚み精度が低いなどの問題があった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、感光材料を含有する光記録層と感圧接着剤層が積層されたシート材料を順次積層して、多層構造体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この多層構造体を有する多層光記録媒体は、各層及び全体の厚み精度が高く、かつ大面積化が可能である。しかしながら、感圧接着剤を利用したシート方式による作製方法において光記録層をより薄く(1000nm以下)しようとすると、光記録層の膜強度が低下し、工程フィルムを剥離するときに光記録層が破断する場合がある。これに対して膜強度を増強しようとして、光記録層中のマトリックス材料(バインダー)を増量してしまうと、剥離が可能となっても光記録層の記録感度が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−250496号公報
【特許文献2】特開2005−209328号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Appl.Opt.,35,2466(1996年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、光記録層から工程フィルムを容易に剥離して、光記録層を転写することが可能な多層光記録媒体製造用シート、それを用いて製造された記録密度が高く、かつ良好な記録特性を有する多層光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを工程フィルム上に有すると共に、前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられ、最外層に感圧接着剤層が配設された構造を有し、かつ波長660nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値がある値以下である光記録媒体製造用シートにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシートであって、工程フィルム上に、少なくとも剥離補助層と厚さ1〜1000nmの光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを有すると共に、前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられ、最外層に感圧接着剤層が配設された構造を有し、かつ波長660nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下であることを特徴とする多層光記録媒体製造用シート、
(2)波長405nmにおける、剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下である上記(1)項に記載の多層光記録媒体製造用シート、
(3)波長660nmにおける、剥離補助層の屈折率が1.42〜1.60である上記(1)又は(2)項に記載の多層光記録媒体製造用シート、
(4)少なくとも剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットが、工程フィルム上に順次剥離補助層、光記録層、剥離補助層、光記録層及び感圧接着剤層が積層された構造を有する上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート、
(5)剥離補助層を構成する材料が、エネルギー硬化型化合物の硬化物を含む上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート、
(6)剥離補助層を構成する材料が、セルロース系樹脂を含む上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート、
(7)剥離補助層を構成する材料が、フッ素原子を含む上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート、
(8)光記録層が、多光子吸収材料である上記(1)〜(7)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート、及び
(9)上記(1)〜(8)項のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シートを用いて得られたことを特徴とする多層光記録媒体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さ1000nm以下の光記録層を有する多層光記録媒体を容易に作製することが可能な光記録媒体製造用シート、及びそれを用いて製造された深部からの反射光強度が十分に大きく、記録密度が高い上、良好な記録特性を有する多層光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の多層光記録媒体製造用シートの1例の構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明の多層光記録媒体製造用シートの異なる例の構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の多層光記録媒体の構成の1例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の多層光記録媒体製造用シートについて説明する。
本発明の多層光記録媒体製造用シート(以下、単に「記録媒体製造用シート」と称することがある。)は、複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシートであって、工程フィルム上に、少なくとも剥離補助層と厚さ1〜1000nmの光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを有すると共に、前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられ、最外層に感圧接着剤層が配設された構造を有する。
【0013】
[工程フィルム]
本発明の記録媒体製造用シートにおける工程フィルムは、その上に設けられる剥離補助層に対して、剥離性を有するものである。この工程フィルムとしては、剥離補助層に対して剥離性を有するものであればよく、各種の合成樹脂フィルムを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、酢酸セルロース樹脂等を挙げることができる。工程フィルムの厚さは特に限定されないが、通常、5〜500μm、好ましくは、10〜200μmである。
【0014】
また、工程フィルムは、剥離補助層が設けられる面に剥離処理が行われたものでもよい。剥離処理としては、シリコーン系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、アルキド系剥離剤など公知の剥離剤をフィルムに塗布する方法が挙げられる。剥離剤を塗布して得られる剥離剤層の厚さは特に限定されず、所望により設定すればよいが、通常0.05〜50μmである。また、剥離剤を塗布する前のフィルムには、剥離剤層との密着性を向上させるために、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などを施してもよい。
工程フィルムの剥離力は10〜700mN/25mmが好ましい。剥離力がこの範囲にあると、工程フィルム上に設けられた剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層を含むユニットの転写作業性がよい。より好ましい剥離力は30〜500mN/25mmである。
また、当該工程フィルムの剥離補助層が形成される面は、フィラーを含まないものであることが好ましい。なお、上記剥離力の測定方法については後で説明する。
【0015】
[剥離補助層]
本発明の記録媒体製造用シートにおいて、工程フィルム上に積層される剥離補助層は、光記録層と共に工程フィルムから剥離される層であり、極薄の光記録層(厚さ1〜1000nm)を補強する効果があり、光記録層を容易に剥離することができる。
当該剥離補助層の材料は、透明性を有し、かつ前記の剥離性、補強性を効果的に発揮し得ると共に、本発明の記録媒体製造用シートの光学特性を損なうことのない材料であれば特に制限はない。このような材料としては、エネルギー硬化型化合物の硬化物(エネルギー硬化樹脂)、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、変性アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエステルなどの樹脂材料が好適である。なお、エネルギー硬化型化合物とは、エネルギー線照射や加熱などによって硬化する化合物のことをいう。
【0016】
(エネルギー硬化型化合物)
前記エネルギー硬化樹脂の原料となるエネルギー硬化型化合物としては、エネルギー線硬化型のオリゴマーやモノマー、熱硬化型のオリゴマーやモノマー、側鎖に重合性二重結合を有するエネルギー硬化型官能基が導入されてなる重合体などを挙げることができる。
<エネルギー硬化型オリゴマー>
エネルギー硬化型オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などのオリゴマーが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に2塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記オリゴマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。このオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<エネルギー硬化型モノマー>
一方、エネルギー硬化型モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの単官能性アクリレート類、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリフリオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<側鎖に重合性二重結合を有するエネルギー硬化型重合体>
側鎖に重合性二重結合を有するエネルギー硬化型重合体としては、例えば、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体のポリマー鎖に−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの活性点を導入し、この活性点と重合性二重結合を有する化合物を反応させて、該アクリル系重合体の側鎖に重合性二重結合を有するエネルギー硬化型官能基を導入してなるものを挙げることができる。アクリル系重合体に前記活性点を導入するには、該アクリル系重合体を製造する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基と、重合性二重結合とを有する単量体又はオリゴマーを反応系に共存させればよい。
具体的には、アクリル系重合体を製造する際に、−COOH基を導入する場合には(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートなどを、エポキシ基を導入する場合には、グリシジル(メタ)アクリレートなどを、−OH基を導入する場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどを、−NH2基を導入する場合には、(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
これらの活性点と反応させる重合性二重結合を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0019】
<重合開始剤>
前記のエネルギー硬化型化合物の硬化には、所望により重合開始剤を用いることができる。この重合開始剤としては、エネルギー硬化型化合物が、熱硬化型である場合には、有機過酸化物やアゾ系化合物が用いられる。有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類等が挙げられる。また、アゾ系化合物としては、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
一方、エネルギー硬化型化合物がエネルギー線硬化型である場合には、エネルギー線として、通常紫外線又は電子線が照射されるが、紫外線を照射する際には、重合開始剤として、光重合開始剤を用いることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパン)などが挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(エネルギー硬化樹脂)
前述したエネルギー硬化型化合物の硬化物からなるエネルギー硬化樹脂は、該エネルギー硬化型化合物に、所望により前記の重合開始剤や、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加し、硬化させることにより、得ることができる。
当該剥離補助層を構成する材料としては、剥離補助層上に光記録層を積層する際、光記録材料の溶液を剥離補助層に塗布して光記録層を形成できることから、耐溶剤性が高い、エネルギー硬化型オリゴマーやモノマーの硬化物、トリアセチルセルロースが好適である。この中でも、屈折率を調整しやすい点からエネルギー硬化型オリゴマーやモノマーの硬化物が特に好ましい。また、前記樹脂材料は、剥離性、補強効果及び光記録媒体としての信頼性の観点から、ガラス転移温度が、50℃以上であることが好ましい。剥離補助層の厚さは、剥離効果、補強効果を有し、光記録層を効果的に剥離すると共に、実用的な記録密度を得る観点から、0.2〜25μmが好ましく、より好ましくは0.3〜23μm、さらに好ましくは0.4〜20μmである。
【0022】
また、本発明においては、後で説明するように、波長660nmにおける、当該剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下にする必要があることから、当該剥離補助層を構成する材料としては、フッ素原子を含有する材料が好ましい。このようなフッ素原子を含有する材料としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどの硬化物、ポリフッ化ビニル共重合物などが挙げられる。当該剥離補助層は、前記材料を含む塗工液を用い、バーコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法等のコーティング法によって塗布し、必要により80〜150℃程度の温度で数十秒〜数分間加熱乾燥して形成することができる。
剥離補助層は、その上に設けられる光記録層との密着性を向上させる目的で、所望により表面処理を施してもよい。表面処理方法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられる。これらの表面処理法は剥離補助層の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0023】
[光記録層]
本発明の多層光記録媒体製造用シートにおける光記録層は、光記録層の構成材料として知られている材料の中から任意のものを適宜選択して用いることができるが、記録密度の向上の点から多光子吸収性材料が好ましく用いられる。多光子吸収性材料とは、2つ以上の光子を同時に吸収し、励起状態へと遷移する性質を有する化合物を意味する。その中でも実用に十分な記録感度を得るという観点から、2光子吸収断面積が0.1GM以上の2光子吸収性材料を含むものが好ましく、特に100GM以上の2光子吸収性材料を含むものがさらに好ましい。このような材料としては、例えば多光子吸収性材料を単独で構成したものや、例えば多光子吸収性材料と、励起された多光子吸収性材料からのエネルギー移動によって変化を起こす他の反応性化合物とで構成したもの、これらを必要に応じマトリクスに配合した材料で構成してもよい。
【0024】
なお、前記「GM」は、10-50cm4・s・molecule-1・photon-1を意味する。前記マトリクスを構成する材料は、無機材料であっても有機材料であってもよいが、本発明の記録媒体製造用シートの製造の簡便さや、材料の選択肢の多さなどの点から、有機系の高分子材料が好ましい。この高分子材料はホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、そのモノマーの種類、分子量、重合形態などについては特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。
前記多光子吸収性材料は、前記のマトリクスに対して、主鎖あるいは側鎖成分として化学結合したものであってもよいし、単にマトリクス中に分散あるいは溶解していてもよい。この多光子吸収性材料としては特に制限はなく、様々な化合物を用いることができる。例えば、シアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ピラン色素、キノン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、ジフェニルメタン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、フルオレノン色素、ジアリールエテン色素、スピロピラン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ポリエン色素、ジフェニルアミン色素、キナクドリン色素、アズレニウム色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、スチレン系色素、フェニレンビニレン色素、トリフェニルアミン系色素、カルバゾール系色素などの化合物が挙げられる。
【0025】
このような多光子吸収性化合物を用いて記録する方式としては、例えば、アゾ基やC=C基、C=N基含有化合物のように光によって異性化する材料や、(メタ)アクリレート化合物のように光によって重合反応を起こす材料、有機フォトクロミック材料のように光によって可逆的な構造変化を起こす材料、光によって電荷分布が起こる有機リフラクティブ材料などを用いて屈折率変調を読み取る方式や、光によって蛍光特性が変化する材料を用いて蛍光を読み取る方式、光によって酸を発生する材料と酸発色性色素の組み合わせや、消色剤と消色性色素を組み合わせて、吸収率変調や屈折率変調を読み取る方式などが挙げられる。これらの記録方式において、多光子吸収性化合物自身が、このような光反応性を有していても良いし、多光子吸収によって励起された多光子吸収性化合物から、他の反応性化合物へのエネルギー移動によって反応を起こしても良い。
本発明の光記録媒体製造用シートにおいては、前記光記録層の厚さは、1〜1000nmであり、好ましくは10〜800nmである。
【0026】
[感圧接着剤層]
本発明の多層光記録媒体製造用シートは、最外層に常温で接着性を有する感圧接着剤層が配設されている。この感圧接着剤層を有する多層光記録媒体製造用シートとすることにより、多層光記録媒体を容易に製造することができる。感圧接着剤層を構成する感圧接着剤としては、特にアクリル系感圧接着剤が透明性が高い点から好ましい。
このアクリル系感圧接着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル系共重合体及び架橋剤を含むものを用いることができる。
【0027】
((メタ)アクリル酸エステル系共重合体)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分の非カルボニル酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有するモノマーと、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体を好ましく挙げることができる。
エステル部分の非カルボニル酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
一方、活性水素をもつ官能基を有するモノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、所望により用いられる他のモノマーの例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で30万〜200万の範囲が好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(架橋剤)
アクリル系感圧接着剤における架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系感圧接着剤において架橋剤として慣用されているもの、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ化合物、アジリジン系化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などの中から、適宜選択することができるが、感圧接着剤層の変色(黄変)に起因する光透過率の変化が起きにくく、記録や再生時のレーザー照射による変質が生じにくい脂環式ポリイソシアナート系化合物、脂肪族ポリイソシアナート系化合物、キシレン系ポリイソシアナート系化合物、脂環式エポキシ系化合物、脂肪族エポキシ系化合物、金属キレート化合物又は脂肪族アジリジン系化合物が好ましい。
【0032】
<脂環式及び脂肪族ポリイソシアナート系化合物>
脂環式ポリイソシアナート系化合物としては、例えばイソホロンジイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート、シクロペンチレンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、メチルシクロヘキシレンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。脂肪族ポリイソシアナート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナートなど、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0033】
<脂環式及び脂肪族エポキシ系化合物>
脂環式エポキシ系化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられ、脂肪族エポキシ系化合物としては、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエステル、アジピン酸グリシジルエステル、セバシン酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0034】
<金属キレート化合物>
金属キレート化合物としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物が挙げられるが、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えばジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレートなどが挙げられる。
【0035】
脂肪族アジリジン系化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(2−メチル−1−アジリジンプロピオネート)、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレアなどが挙げられる。
【0036】
本発明における感圧接着剤においては、前記架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、感圧接着剤としての性能の観点から、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜3.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部の範囲で選定される。
当該感圧接着剤には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
本発明のシートにおける感圧接着剤層の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μm程度、好ましくは1〜30μmである。
【0037】
[剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差]
記録層と非記録層(剥離補助層と感圧接着剤層)を有する多層光記録媒体では、記録時のフォーカスサーボは積層界面からの反射光を利用している。記録層と非記録層との屈折率差が大きければ反射光強度が大きく、小さければ反射光強度も小さい。反射光強度が大きい方が界面に対してフォーカスサーボをかけやすいが、一方で多層光記録媒体の深部からの反射光を利用したいと考えた場合は、各層での反射光が大きすぎると、上層でほとんどの光が反射されてしまい最深部界面からの反射光強度が極端に小さくなってしまう。また、界面数が多いほどその減衰率は大きくなり、最深部へのフォーカスサーボは困難となる。そこで、使用するレーザーの波長において剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差をなくすことで、剥離補助層/感圧接着剤界面での反射光をなくすことが可能となり、レーザー光(反射光)の損失を低減することが可能となる。
【0038】
多層光記録媒体に用いられるレーザー波長は660nmや、405nmであり、また物質の屈折率は波長依存性がある。これは、材料特性をそれぞれの波長に適した設計で行わなければならないことを意味する。
本発明の多層光記録媒体製造用シートにおいては、波長660nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値は、0.11以下であることを要する。該屈折率差が0.11を超える場合は、界面での反射光が無視できないほど大きくなり、多層体深部からの反射光を利用することが困難になるため、記録特性が低下する。
また、波長405nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値は、前記と同様の理由から、0.11以下であることが好ましい。
波長660nmにおける感圧接着剤層の屈折率は、通常1.32〜1.60程度であるので、波長660nmにおける剥離補助層の屈折率は、1.21〜1.71程度であり、1.42〜1.60であることが好ましい。
また、波長405nmにおける感圧接着剤層の屈折率は、通常1.35〜1.65程度であるので、波長405nmにおける剥離補助層の屈折率は、通常1.24〜1.76、好ましくは1.42〜1.60である。なお、屈折率の測定方法については、後で説明する。
【0039】
[多層光記録媒体製造用シートの層構成]
本発明の多層光記録媒体製造用シートにおける層構成は、工程フィルム上に、少なくとも前述した剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを有し、かつ前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられると共に、最外層に感圧接着剤層が配設された層構成を有する。前記ユニットは、剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層とを少なくとも有し、該剥離補助層が工程フィルム側に、感圧接着剤層が最外層に配設されてなる構成であれば、その構成及び層数については特に制限はない。
【0040】
本発明の記録媒体製造用シートの具体例としては、下記の図1及び図2に示す構成の積層シートを挙げることができる。
図1は、本発明の多層光記録媒体製造用シートの1例の構成を示す断面模式図であって、多層光記録媒体製造用シート15は、剥離補助層2と光記録層1と感圧接着剤層3とが順次積層されてなる三層構造のユニット10aが、工程フィルム4上に設けられてなる構造を有し、かつ工程フィルム4の表面に剥離補助層2が接すると共に、感圧接着剤層3上に、剥離フィルム5が貼付されている。
図2は、本発明の多層光記録媒体製造用シートの異なる例の構成を示す断面模式図であって、多層光記録媒体製造用シート20は、剥離補助層2aと光記録層1aと剥離補助層2bと光記録層1bと感圧接着剤層3とが順次積層されてなる五層構造のユニット10bが工程フィルム4上に設けられてなる構造を有し、かつ工程フィルム4の表面に剥離補助層2aが接すると共に、感圧接着剤層3上に、剥離フィルム5が貼付されている。
前記図1及び図2に示す構成の積層シートは、工程フィルム4上に、従来公知の各種コーティング法によって各層を順次形成することにより作製することができる。この際、剥離補助層上に光記録層を形成する場合、該剥離補助層の種類によっては、剥離補助層を保護する目的で、必要に応じて該剥離補助層上にバリア層を設け、光記録層を形成してもよい。
【0041】
前記の剥離フィルム5としては、従来感圧性接着剤層に用いられている公知の剥離フィルムを用いることができる。
前記剥離フィルムとしては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムなどにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどが挙げられる。また、これらの剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
感圧性接着剤層表面の最大高さ粗さ(Rz)は小さい方が好ましいため、剥離フィルムの剥離処理面のRzは500nm以下であることが好ましい。Rzの測定は、JIS B 0601に準じて行う。
【0042】
次に、本発明の多層光記録媒体について説明する。
[多層光記録媒体]
本発明の多層光記録媒体は、前述した本発明の多層光記録媒体製造用シートを用いて得られたことを特徴とする。
当該多層光記録媒体は、前記の記録媒体製造用シートが、その最外側に配設された感圧接着剤層を介して、複数積層された構造を有している。具体的には、図1に示すような剥離補助層、光記録層及び感圧接着剤層が順次積層されてなる三層構造のユニット、又は図2に示すような剥離補助層、光記録層、剥離補助層、光記録層及び感圧接着剤層が順次積層されてなる五層構造のユニットが、感圧接着剤層を介して、複数積層された構造を有している。
【0043】
本発明の多層光記録媒体における前記ユニットの積層数には特に制限はないが、記録密度の観点から、光記録層が5〜100層程度、好ましくは8〜80層である。光記録層が五層未満では十分な記録密度が得られず、100層を超えると各層での光の吸収や層間での光の反射などによって情報の書き込みや読み込みに不具合を生じる可能性がある。
図3は、本発明の多層光記録媒体の構成の1例を示す断面模式図である。当該多層光記録媒体30は、ポリメチルメタクリレートフィルムなどの基材6上に、感圧接着剤層と光記録層と剥離補助層からなる三層構造のユニットがn層積層され、感圧接着剤層3−1、光記録層1−1、剥離補助層2−1、感圧接着剤層3−2、光記録層1−2、剥離補助層2−2、感圧接着剤層3−3、光記録層1−3、剥離補助層2−3、・・・・・・感圧接着剤層3−n、光記録層1−n、剥離補助層2−nが設けられた構造を有する。
このような構造を有する多層光記録媒体30は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず前記図1のシート15を複数準備し、第1のシート15の剥離フィルム5を剥がし、露出した感圧接着剤層3と、図3における基材6が対面するようにして、両者を接合させ、工程フィルム4を剥離する。この段階で図3における剥離補助層2−1が露出している。次いで、第2のシート15から、剥離フィルム5を剥がし、露出した感圧接着剤層3と、図3における剥離補助層2−1が対面するようにして、両者を接合させる。以下、同様の手順で、順次積層を繰り返すことにより、光記録層がn層積層された多層光記録媒体30が得られる。
なお、剥離補助層2−n上には、感圧接着剤層3aを介して、ポリビニルアルコールフィルムなどの保護フィルム7を設けることができる。
【0044】
前記基材6の厚さに特に制限はないが、通常5〜1000μm程度、好ましくは5〜100μmである。また、前記基材6の素材としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ガラス類などが挙げられる。
本発明の多層光記録媒体における情報の記録・再生方法については特に制限はなく、多層光記録媒体における情報の記録・再生方法として従来公知の方法の中から、適宜選択して用いることができる。
本発明の多層光記録媒体の形態については特に制限はなく、ディスク状、ロール状のいずれであってもよい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)剥離力
実施例1〜8及び比較例1、2で得られた多層光記録媒体製造用シートの剥離フィルムを剥離して、ガラス板[松浪硝子工業(株)製、商品名「MICRO SLIDE GLASS S−112」]に露出した感圧接着剤層を介して貼付し、その後、25℃、相対湿度50%の環境下において、引張り試験機を用いて工程フィルムを剥離角度180°、剥離速度300mm/minで引き剥がして剥離力を測定した。
(2)屈折率
実施例1〜8及び比較例2の多層光記録媒体製造用シートの剥離補助層の屈折率は、実施例5で用いた工程フィルムに、剥離補助層作製用塗工液を塗布、乾燥して厚さ20μmの剥離補助層を形成し、工程フィルムを剥離してアッベ屈折率計[(株)アタゴ製]を用いて測定した。実施例1〜8及び比較例1、2の多層光記録媒体製造用シートの感圧接着剤層の屈折率は、実施例1で用いた剥離フィルムに、感圧接着剤層作製用塗工液を塗布、乾燥して厚さ20μmの感圧接着剤層を形成し、剥離フィルムを剥離してアッベ屈折率計[(株)アタゴ製]を用いて測定した。実施例1〜8及び比較例1、2の多層光記録媒体製造用シートの光記録層の屈折率は、光記録媒体製造用シートの製造工程において剥離補助層表面または工程フィルム上に光記録層を形成した段階で、エリプソメーター[ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製、商品名「分光エリプソメトリー2000U」]を用いて測定した。
(3)層の厚さ
実施例1〜8及び比較例2の多層光記録媒体製造用シートの剥離補助層と感圧接着剤層並びに比較例1の多層光記録媒体製造用シートの感圧接着剤層の厚さは、光記録媒体製造用シートの製造工程において、それらの層を形成した段階で圧式の厚み計[(株)テクロック製、商品名「PG−02」]を使用して各層を形成する前後の総厚を測定して算出した。実施例1〜8及び比較例1、2の多層光記録媒体製造用シートの光記録層の厚さは、光記録媒体製造用シートの製造工程において剥離補助層表面又は工程フィルム上に光記録層を形成した段階で、エリプソメーター[ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製、商品名「分光エリプソメトリー2000U」]を用いて測定した。
【0046】
(4)反射光強度
実施例9〜16及び比較例3で得られた多層光記録媒体について、下記のようにして反射光強度を確認した。
波長405nmの半導体レーザー[TOPICA社製、商品名「CUBE405−100C」]、又は波長660nmの半導体レーザー[TOPICA社製、商品名「iPulse660」]を共焦点光学系に組み込み、多層記録媒体の保護フィルム側から前記波長のレーザー光線を照射し、(i)保護フィルム側から数えて1番目の剥離補助層とそれに隣接する感圧接着剤層界面での反射光強度、(ii)実施例9〜15及び比較例3においては、保護フィルム側から数えて1番目の光記録層とそれに隣接する感圧接着剤層界面における反射光強度、実施例16においては保護フィルム側から数えて2番目の光記録層とそれに隣接する感圧接着剤層界面における反射光強度、及び(iii)保護フィルム側から数えて20番目の光記録層とそれに隣接する感圧接着剤層界面における反射光強度を測定し、(i)の反射光強度に対する(ii)の反射光強度の比(強度比1)、(ii)の反射光強度に対する(iii)の反射光強度の比(強度比2)を算出した。ここで、強度比1は、光記録層と感圧接着剤層の界面からの反射光の判別可否の指標となり、1.5以上であれば良好(光記録層の存在位置を認識できる)である。また、強度比2は、多層光記録媒体の深部の光記録層における反射光の減衰の程度を示し、0.1〜1であれば良好(深部の光記録層からの反射光を認識できる)である。
(5)記録特性
実施例9〜16及び比較例3で得られた多層光記録媒体を用いて以下の条件で記録実験を行った。
チタンサファイアフェムト秒レーザ(波長780nm)を光源とする共焦点光学系で、保護フィルム側から数えて20番目の光記録層にレーザ光照射を25回行った。レーザ光の平均強度は60(mW)とし、照射時間は128ミリ秒、64ミリ秒、32ミリ秒、16ミリ秒、8ミリ秒とし、各5点づつ(計25点)記録した。次いで、同様の共焦点学系にて波長405nmの半導体レーザー[TOPICA社製、商品名「CUBE405−100C」]を使用して、25点中、記録スポットが観察された数を調査した。
【0047】
実施例1
(1)剥離補助層作製用塗工液の調製
紫外線硬化型化合物(エネルギー硬化型化合物)として、ネオペンチルグリコールジアクリレート[新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−NPG」、固形分100%]50gに対して、溶剤としてメチルエチルケトン463.5g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]1.5gを混合し、固形分濃度10質量%の塗工液を調製した。
(2)光記録層作製用塗工液の調製
多光子吸収材料として1,1−ビス−[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン[東京化成工業(株)製]5gと溶剤としてトルエン95gを混合し、固形分濃度5質量%の塗工液を調製した。
(3)感圧接着剤層作製用塗工液の調製
n−ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(n−ブチルアクリレート/フェノキシエチルアクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート=60:35:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量600000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、キシリレンジイソシアナート系架橋剤[綜研化学(株)製、商品名「TD−75」、固形分濃度75質量%]1gを加えて撹拌し固形分濃度30質量%の塗工液を調製した。
(4)光記録媒体製造用シートの作製
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「PET50A−4100」]を2本のゴムローラを用いて圧着し、紫外線照射装置[(株)ジーエス・ユアサ・ライティング製、商品名「UVSYSTEM CSN2−40」]を用いて窒素雰囲気下、光量500mJ/cm2、照度120mW/cm2の条件で紫外線を照射して厚さ6.2μmの剥離補助層を形成した。なお、紫外線の光量及び照度は、光量照度計[(株)ジーエス・ユアサ・ライティング製、商品名「「UVR−N1」]を用いて測定した(以下、同様)。圧着したポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは110nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは5.1μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0048】
実施例2
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例1と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
ポリビニルアルコール[日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセノールT−350」]5gに対して、溶剤として精製水95gを混合し、固形分濃度5質量%の塗工液を調製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡社製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて、厚さ0.4μmの剥離補助層を形成した。得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは80nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは10.5μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0049】
実施例3
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例1と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
シクロオレフィン系樹脂[ポリプラスチック(株)製、商品名「トーパス5013」]5gに対して、溶剤としてキシレン95gを混合し、固形分濃度5質量%の塗工液を調製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡社製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて、厚さ1μmの剥離補助層を形成した。得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは600nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは10.5μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0050】
実施例4
剥離補助層作製用塗工液と感圧接着剤層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液は実施例1と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
トリアセチルセルロース[ダイセル化学(株)製、商品名「LT−105」]3gに対して、溶剤としてジクロロメタン97gを混合し、固形分濃度3質量%の塗工液を調製した。
<感圧接着剤層作製用塗工液の調製>
n−ブチルアクリレート、アクリル酸(n−ブチルアクリレート/アクリル酸=95:5(質量比)、からなるアクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量1000000)の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100gに、アルミキレート系架橋剤[綜研化学(株)製、商品名「M−5A」、固形分濃度5質量%]2gを加えて撹拌し塗工液とした。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡社製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて、厚さ2μmの剥離補助層を形成した。得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは400nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは3.2μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0051】
実施例5
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例1と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
フッ素原子を有するアクリル系熱硬化型樹脂[三和研究所社製、商品名「FA−300G−EA」、固形分30質量%]100gに対して、メチルエチルケトンを100g、キシリレンジイソシアナート系架橋剤[綜研化学(株)製、商品名「TD−75」、固形分濃度75質量%]4gを加えて撹拌し塗工液とした。
<光記録媒体製造用シート>
工程フィルムとして、アルキド系剥離剤層を有する剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET38AL−5」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間加熱して熱硬化し、厚さ3.5μmの剥離補助層を形成した。得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは600nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは10.5μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0052】
実施例6
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例4と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
トリフルオロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(トリフルオロエチルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=95:5(質量比))からなるアクリル酸エステル共重合体に、アクリロキシエチルイソシアネートを付加(2−ヒドロキシエチルメタクリレートの水酸基の90mol%に付加)して得られた側鎖に重合性二重結合を有する紫外線硬化型化合物(重量平均分子量20000)25g、紫外線硬化型多官能アクリレート化合物[新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−TMMT」]25g、溶剤としてメチルエチルケトン50g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]1.5gを混合し、固形分濃度50質量%の塗工液を調製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡社製、商品名「PET50A−4100」]を2本のゴムローラを用いて圧着し、紫外線照射装置[(株)ジーエス・ユアサ・ライティング社製、商品名「UVSYSTEM CSN2−40」]を用いて窒素雰囲気下で光量500mJ/cm2、照度120mW/cm2の条件で紫外線を照射して厚さ6.6μmの剥離補助層を形成した。圧着したポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させた。得られた光記録層の厚さは50nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは3.2μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
【0053】
実施例7
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例4と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
ビスフェノールA骨格を有する紫外線硬化型化合物[新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−BPE−4」]40gと、紫外線硬化型化合物[新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−GLY−3EO」]10g、溶剤としてメチルエチルケトン50g、光重合開始剤として[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]1.5gを混合し、固形分濃度50質量%の塗工液を調製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名「PET50A−4100」]2本のゴムローラを用いて圧着し、紫外線照射装置[(株)ジーエス・ユアサ・ライティング社製、商品名「UVSYSTEM CSN2−40」]を用いて窒素雰囲気下で光量500mJ/cm2、照度120mW/cm2の条件で紫外線を照射して厚さ6.1μmの剥離補助層を形成した。圧着したポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させた。得られた光記録層の厚さは100nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは3.2μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た
【0054】
実施例8
実施例2と同様の塗工液を用いて以下のようにして光記録媒体製造用シートを作製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、厚さ0.4μmの剥離補助層を形成した。得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは80nmであった。得られた光記録層の表面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、厚さ0.4μmの剥離補助層を形成し、該剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて光記録層を形成した。得られた光記録層の厚さは80nmであった。次に、感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは10.5μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し、工程フィルム上に、剥離補助層、光記録層、剥離補助層、光記録層及び感圧接着剤が積層された構造を有する多層光記録媒体製造用シートを得た。
【0055】
比較例1
剥離補助層を形成しないで、工程フィルム上に直接光記録層を形成した以外は実施例4と同様にして光記録媒体製造用シートを作製した。
【0056】
比較例2
剥離補助層作製用塗工液の調製を以下のように変更し、光記録層作製用塗工液及び感圧接着剤層作製用塗工液は実施例4と同様のものを用いて光記録媒体製造用シートを作製した。
<剥離補助層作製用塗工液の調製>
フルオレン骨格を有する紫外線硬化型化合物[大阪ガス化学(株)製、商品名「オグソール EA−F5003」]45gと、紫外線硬化型化合物[新中村化学工業(株)、商品名「NKエステル A−GLY−3EO」]5g、溶剤としてメチルエチルケトン50g、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]1.5gを混合し、固形分濃度50質量%の塗工液を調製した。
<光記録媒体製造用シートの作製>
工程フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「PET50A−4100」]の片面に、剥離補助層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させ、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡社製、商品名「PET50A−4100」]2本のゴムローラを用いて圧着し、紫外線照射装置[(株)ジーエス・ユアサ・ライティング社製、商品名「UVSYSTEM CSN2−40」]を用いて窒素雰囲気下で光量500mJ/cm2、照度120mW/cm2の条件で紫外線を照射して厚さ7.0μmの剥離補助層を形成した。片方のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、得られた剥離補助層の表面に光記録層作製用塗工液をグラビアコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させた。得られた光記録層の厚さは200nmであった。感圧接着剤層作製用塗工液を、剥離フィルム[リンテック(株)製、商品名「PET381031」]の剥離面にナイフコート法により塗工し、90℃で1分間乾燥させて感圧接着シートを作製した。この感圧接着剤層の厚さは3.2μmであった。得られた感圧接着シートの感圧接着剤層を、前記光記録層上に2本のゴムローラを用いて圧着し光記録媒体製造用シートを得た。
前記実施例1〜8及び比較例1、2で得られた光記録媒体製造用シートについて、各層の材料種を第1表に示すと共に、各層の厚み及び屈折率を第2表に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
[注]
1)紫外線硬化型化合物:新中村化学工業(株)製「NKエステル A−NPG」
2)ポリビニルアルコール:日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールT−350」
3)シクロオレフィン系樹脂:ポリプラスチック(株)製「トーパス5013」
4)トリアセチルセルロース:ダイセル化学工業(株)製「LT−105」
5)フッ素系熱硬化性樹脂:三和研究所社製「FA−300G−EA」
6)フッ素系紫外線硬化型化合物:トリフルオロエチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなるアクリル酸エステル共重合体にアクリロキシエチルイソシアネートを付加して得られる側鎖に重合性二重結合を有する紫外線硬化型化合物と、新中村化学工業(株)製「NKエステル A−TMMT」の混合物
7)紫外線硬化型化合物:新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−BPE−4」と新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−GLY−3EO」の混合物
8)紫外線硬化型化合物:大阪ガス化学(株)製、商品名「オグソール EA−F5003」と新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステル A−GLY−3EO」の混合物
9)色素材料A:1,1−ビス[4−[N,N−ジ(P−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン
10)BA:n−ブチルアクリレート
11)PEA:フェノキシエチルアクリレート
12)HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
13)AA:アクリル酸
【0059】
【表2】

【0060】
実施例9〜16及び比較例3
実施例1〜8、比較例2において得られた光記録媒体製造用シートをそれぞれ以下に示す方法で積層して、実施例9〜16、比較例3の多層光記録媒体を製造した。なお、比較例1の光記録媒体製造用シートは、光記録層から工程フィルムを剥離すると光記録層が破断してしまったため、多層光記録媒体を作製することができなかった。
(1)光記録媒体製造用シートの剥離フィルムを剥離し、露出した感圧接着剤層を介して支持体であるガラス基板に貼付する。
(2)工程フィルムを剥離して、剥離補助層を露出させる。
(3)別の光記録媒体製造用シートの剥離フィルムを剥離し、上記(2)で露出した剥離補助層上に、感圧接着剤層を介して積層する。
(4)上記(2)及び(3)の作業を繰り返して20層の光記録層を有する積層体を作製する。
(5)最後の工程フィルムを剥離して露出した剥離補助層に、ポリビニルアルコールフィルム(厚さ10μm)からなる光透過性保護フィルムを、粘着剤層(厚さ20μm)を介して積層し、20層の光記録層を有する多層光記録媒体とする。なお、ポリビニルアルコールフィルムは、ポリビニルアルコール[日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノールT−350」]の水溶液(濃度10質量%)を、実施例2で用いた工程フィルムに塗布し、100℃で2分間乾燥して作製したものを用いた。また、粘着剤層を形成する粘着剤は、それぞれの実施例または比較例の光記録媒体製造用シートを製造するために用いた粘着剤と同じものを用いた。
このようにして得られた多層光記録媒体について、諸特性を求めた。使用した光記録媒体製造用シートの剥離力を第3表に示すと共に、多層光記録媒体の剥離補助層−感圧接着剤層の屈折率差の絶対値(Δn)、反射光強度比及び記録特性を第4表に示した。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
第3表に示すように、実施例1〜8の多層光記録媒体製造用シートは適度な剥離力を有していた。それに対し、比較例1の多層光記録媒体製造用シートは、工程フィルムを剥離すると、光記録層が破断してしまった。
また、第4表に示すように、実施例9〜16の多層光記録媒体は、強度比1が大きく、光記録層と感圧接着剤層界面からの反射光を判別することが容易である。また、強度比2の値は0.2〜0.9であり、光記録媒体の深部の光記録層からの反射光を十分に認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の多層光記録媒体製造用シートは、厚さ1000nm以下の光記録層を有する多層光記録媒体を容易に作製することが可能であって、反射強度が大きく、記録密度が高い上、良好な記録特性を有する多層光記録媒体を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1a、1b、1−1、1−2、1−3、1−n 光記録層
2、2a、2b、2−1、2−2、2−3、2−n 剥離補助層
3、3a、3−1、3−2、3−3、3−n 感圧接着剤層
4 工程フィルム
5 剥離フィルム
6 基材
7 保護フィルム
15 多層光記録媒体製造用シート
20 多層光記録媒体製造用シート
30 多層光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシートであって、工程フィルム上に、少なくとも剥離補助層と厚さ1〜1000nmの光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットを有すると共に、前記の剥離補助層が前記工程フィルム表面に設けられ、最外層に感圧接着剤層が配設された構造を有し、かつ波長660nmにおける、前記の剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下であることを特徴とする多層光記録媒体製造用シート。
【請求項2】
波長405nmにおける、剥離補助層と感圧接着剤層との屈折率差の絶対値が0.11以下である請求項1に記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項3】
波長660nmにおける、剥離補助層の屈折率が1.42〜1.60である請求項1又は2に記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項4】
少なくとも剥離補助層と光記録層と感圧接着剤層とを含むユニットが、工程フィルム上に順次剥離補助層、光記録層、剥離補助層、光記録層及び感圧接着剤層が積層された構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項5】
剥離補助層を構成する材料が、エネルギー硬化型化合物の硬化物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項6】
剥離補助層を構成する材料が、セルロース系樹脂を含む請求項1〜4のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項7】
剥離補助層を構成する材料が、フッ素原子を含む請求項1〜5のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項8】
光記録層が、多光子吸収材料である請求項1〜7のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の多層光記録媒体製造用シートを用いて得られたことを特徴とする多層光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−81860(P2011−81860A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232193(P2009−232193)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】