説明

多層化燃料管

本発明は、(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と、(c)中間層の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有するTPUと、を含む揮発性炭化水素の輸送のための可撓性管状物品について説明する。任意に第4の外部層が含まれてもよく、層(c)を被覆する。本発明の管状物品はSAEJ1737試験条件下で15g/m2/日の最大透過速度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が共に参照により本明細書に援用されている、2009年4月30日出願の「多層化燃料管」という題の米国特許出願第12/433,115号明細書(代理人整理番号第SGPP−027/US)および2008年5月1日出願の「多層化燃料管」という題の米国仮特許出願第61/049,625号明細書(代理人整理番号第190243/US(0−5330))に対する、米国特許法第119条(e)に基づく利益を要求するものである。
【0002】
本発明は一般に多層管、その製造方法および低燃料透過に関するカリフォルニア大気資源委員会の要件を満たす準拠燃料管としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
車両のタンクへ自動車燃料を供給するラインのための燃料輸送ホースとして役立つ多層化または積層ゴム管が入手可能である。導管の壁は、3層以上の層;耐熱および耐ガソリン性の内部管;ガソリン不透過性バリヤ層、中間エラストマ結合層;耐候性外部管および外部層と中間結合層との間に介在し一体化された強化用繊維マトリクスまたは層、を有し得る。それでも、含酸素系燃料は、燃料ホースの寿命にとって不利な影響を及ぼし、そのため、強化された耐ガソリン性という特徴が必要とされる。
【0004】
米国環境保護庁は環境への炭化水素の放出を制限する非自動車燃料システムに対するより限定的な新しい要件を策定中である。
【0005】
カリフォルニア州は、カリフォルニア大気資源委員会(CARB)を通して、15g/m/日の最大透過速度を要求することによりこの透過速度要件をさらに一歩前進させたが、試験には1000時間の予備試験浸漬ステップを伴う。さらに、この試験は、管壁を通って透過する炭化水素の捕捉を測定し、循環する燃料について実施され、試験温度は40℃まで上げられる。カリフォルニア用の管/ホースと米国の他の地域用の別の管/ホースを使用せざるを得ないような立場を市場は望まず、したがって、小型エンジン非自動車燃料ラインがCARBの最も厳しい要件を満たしていることは決定的に重要な意味をもつ。
【0006】
熱可塑性材料で作られた管/ホースがCARB要件に合格することは困難である。このような厳しい要件を満たすと考えられる大部分の管/ホースは、熱硬化性材料で作られている。熱硬化性管は、可撓性、サイズ決定、連続長、特注生産に容易に適合できず、不透明でもある。
【0007】
したがって、CARBの要件を満たすことが考えられかつ現行の製品のデメリットの1つ以上を矯正できる管に対するニーズがなおも存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本発明は、(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と、(c)中間層の外側表面に対しボンディングされこの表面と同一の広がりを有するTPUと、を含む揮発性炭化水素の輸送のための熱可塑性多層可撓性管状物品に関する。
【0009】
所望の場合には、第4の層すなわち追加層を最も外側の熱可塑性層のまわりに含むことが可能である。
【0010】
層は同時押出することができ、そのためバインダまたは結合層は必要とされない。TPUがPVDFまたはPVDFコポリマーと接触する結果として、押出プロセス中の直接的ボンドがもたらされる。これによりバインダまたは結合層が不要となり全体的コストが削減されることから有利である。その結果、より耐久性あるボンド/接着が層間に得られる。全てに熱可塑性材料を利用することの別の利点は、管を通して移動する燃料/流体を目視できるということにある。
【0011】
本明細書中で開示されている構成体は、本明細書中で記述されている一般的スクリーニング方法、またはSAEJ1737試験条件に基づいて、15g/m/日、より詳細には7g/m/日そしてさらに一層詳細には5g/m/日の最大透過速度を提供する。
【0012】
一般に、管構成体は、約2.0mmからおよび約25.4mm、より詳細には約2.4mm〜約9.5mm、そしてさらに一層詳細には約6.1mm〜約6.5mmの内径(ID)を有する。
【0013】
同時押出の使用によって同様に、連続的に管を生産することが可能となり、したがってこの点において制限のある熱硬化性管とは異なり、さまざまな長さの管を調製できることになる。最も外側の層にも熱可塑性材料を使用することで、ロゴ、カラーなどを伴うジャケットを特注生産する能力も提供される。熱可塑性プラスチックに着色剤を加えて、管に付与される均一の色を外部層が有するような形にすることが可能である。
【0014】
本発明の多層管を調製するために用いられる層は全て溶融加工可能であり、こうして(多層管を生産するために)典型的な多段階製造が必要とされないという点で現行の技術のものに比べた利点を提供する。こうして各層の同時押出によって、各層を互いに接着させるために典型的に必要とされる溶剤ベースの接着剤が本発明の場合必要とされないことになる。
【0015】
本発明の多層管が、2層〜約12層の材料を含み得るということを理解すべきである。例えば、多層管は第1の層と第2の層などの層化を反復することができる。この層化は同様に、想定された利用分野のために必要とされるだけ反復可能である。
【0016】
本発明は同様に、明細書全体を通して指摘されている多層管を調製するための方法も提供する。
【0017】
多数の実施形態が開示されているが、以下の詳細な説明から当業者にとっては、本発明のさらにその他の実施形態が明らかになるものである。以下で明らかとなるように、本発明は、全て本発明の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな態様において修正可能である。したがって、詳細な説明は、本来限定的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の3または4層多層化管を生産するための適切な押出ヘッド設計を提供する。
【図2】本発明の3層多層化管を生産するための適切な押出ヘッド設計を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と、(c)中間層の外側表面に対しボンディングされこの表面と同一の広がりを有するTPUと、を含む揮発性炭化水素の輸送のための熱可塑性多層可撓性管状物品に関する。
【0020】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は当該技術分野において公知である。典型的には、イソシアネートをポリオールと反応させることによって、熱可塑性ポリウレタンが形成される。ポリウレタンの全体的特性は、ポリオールとイソシアネートのタイプ、ポリウレタン中の結晶化度、ポリウレタンの分子量およびポリウレタン主鎖の化学的構造により左右される。
【0021】
ポリウレタンは、存在する架橋度に応じて熱可塑性または熱硬化性のいずれかであり得る。熱可塑性ウレタン(TPU)が一次架橋を有していないのに対して、熱硬化性ポリウレタンは反応物質の機能性に応じてさまざまな架橋度を有する。
【0022】
熱可塑性ポリウレタンは一般にメチレンジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)のいずれかに基づいており、ポリエステルおよびポリエーテルグレードの両方のポリオールを含む。熱可塑性ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールの間の「ワンショット」反応によって、または「プレポリマー」系によって形成可能であり、部分的に反応を受けたポリオールイソシアネート錯体に硬化剤が添加されてポリウレタン反応を補完する。「プレポリマー」に基づく一部の一般的熱可塑性ポリウレタンエラストマーの例としては、Bayer Materials Scienceの商標「TEXIN」、Lubrizolの商標「ESTANE」、Dow Chemical Co.の商標「PELLETHANE」、およびBASF,Inc.の商標「ELASTOLLAN」がある。
【0023】
典型的には、本発明で使用されるTPUは、エステルタイプである。エステルタイプのポリウレタン(PU)は、置換または未置換のメタンジイソシアネート(MDI)および置換または未置換ジヒドロキシアルコール(グリコール)の異なる組成物に基づくことができる。適切なTPUは、ショアA硬度計で約70〜約90の間のショアA硬度を有するものである。TPUの引張り強度は、約4000〜約7000psiの間にあるべきである。
【0024】
低いメルトインデックス(MI)および高い溶融強度を有する押出グレードのTPUが一般に使用される。適切なメルトインデックス範囲は、8.7kgの負荷で190℃において約1〜約5g/10分である。
【0025】
一実施形態において、内部および外部TPU層は、ESTANE58070および/またはDESMOPAN385E(Bayer Material Science)で構成されている。
【0026】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)コポリマーであってよい3層管の内部(中央)層であるPVDF層は、それをとり囲む最も外側の層にボンディングされている。内部層および外部層は、同時押出および耐燃料性にとって適切である熱可塑性材料である。
【0027】
PVDFは、非反応性が極めて高くで純粋な熱可塑性のフルオロポリマーである。市販のフッ化ビニリデン含有フルオロポリマーとしては、例えばArkemaが販売している「KYNAR」(例えば「KYNAR740」、「KYNARFLEX2500」および「KYNARFLEX2750」);Solvay Solexisが販売している「HYLAR」(例えば「HYLAR700」);およびDyneon、LLCが販売している「FLUOREL(例えば「FLUOREL FC−2178」)という商品名を有するフルオロポリマーがある。材料の適切な硬度値は、約55〜約70ショアDである。材料の融点は約250°F〜約330°Fの範囲内に入る。
【0028】
一般に、材料は約120,000未満の曲げ弾性率を有するはずである。
【0029】
PVDFは、フルオロポリマーファミリー内の特殊プラスチック材料である。それは一般に、最高の純度、強度および耐溶剤性、耐酸性、耐塩基性および耐熱性ならびに火災事象中の低発煙性を必要とする利用分野において使用される。その他のフルオロポリマーに比べて融点が低いことから、その溶融プロセスはより容易である。
【0030】
PVDFコポリマーには、通常は約50:50重量%および65:35重量%(約56:44モル%および70:30モル%と等価)の比率でのフッ化ビニリデン(VDF)とトリフルオロエチレン(TrFE)P(VDF−TrFE)、およびフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレン(TFE)P(VDF−TFE)およびフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)P(VDF−HFP)のコポリマーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
一般に、第1の内部(inner)層は、約0.008〜約0.040インチの間の厚みを有する。
【0032】
第2の内部(interior)層は、約0.001〜約0.005インチの間の厚みを有する。
【0033】
第3の外部層は、約0.002〜約0.050インチの厚みを有する。
【0034】
追加層を含ませることもでき、これには、上に記載した第1、第2、第3または第4の層のうちのいずれか1層以上が含まれ得る。
【0035】
第3層に接触する第4の外部層は、ポリ塩化ビニル(PVC)で構成され得る。第4の外部層が存在する場合、それは約0.020インチ〜約0.125インチの間の厚みを有し得る。第4以上の層が含まれる場合には、第3の外部層も内部層になると理解すべきである。しかしながら、多層管の第2の層は、本明細書中で記述される通りPVDFまたはPVDFコポリマーであるべきである。
【0036】
適切なPVC材料としては、塩化ビニルの重合により調製される熱可塑性ポリマーがある。本発明において有用な適切なPVC材料には、65−90ショアAおよび/または約1200〜約3000psiの間の引張り強度を有するものが含まれる。
【0037】
典型的には、PVC材料は、可塑剤および/または安定剤を含む。適切な可塑剤には、ポリグリコールとジカルボン酸例えばアジピン酸から調製されるもの(ポリオールジエステル)が含まれる。可塑剤の適切な例としては、例えばPARAPLEX G−57、RX−13317およびPARAPLEX G−59(Hallstar(Chicago、Illinois))がある。可塑剤の適切な粘度範囲は、約7,000〜25,000であり、分子量は約3,500〜約7,000の範囲内にある。一般に、可塑剤は、組成物の約30〜約50重量%の間にある。
【0038】
適切な安定剤としては、例えば有機スズおよびBa−Zn複合型安定剤がある。有機スズタイプの安定剤の適切な例には、MARK275、MARK1900(Chemtura Corporation)およびTHERMOLITE31(Arkema)が含まれる。一般的に、ポリマー配合物中には、約0.5〜約1.0重量%の有機スズタイプの安定剤が含まれている。
【0039】
Ba−Znタイプの安定剤の適切な例には、Mark4716およびMark4718(Chemtura Corporation)が含まれる。一般に、約1〜約2.5重量%のBa−Zn安定剤がポリマー配合物中に含まれている。
【0040】
明細書中およびクレーム中で、「〜を含む(includingおよびcomprising)」という用語は、制限のない用語であり「〜を含むが、これに限定されない(including,but not limited to・・・)」を意味するものと理解すべきである。これらの用語は、「本質的に〜で構成される」および「〜で構成される」というさらに限定的な用語も包含する。
【0041】
本明細書中および添付のクレーム中で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、前後関係から別段の指示がないかぎり複数の意味も含むという点に留意しなければならない。同様に、「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書中で互換的に使用され得る。同様に、「〜を含む(「comprising」、「including」)」、「〜を特徴とする」および「〜を有する」という用語も互換的に使用可能であるという点にも留意すべきである。
【0042】
別段の定義がないかぎり、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書中で具体的に言及されている全ての刊行物および特許は、本発明に関連して使用される可能性のある刊行物で報告されている化学物質、計器、統計的分析および方法論の記述および開示を含む全ての目的のためその全体が参照により本明細書に援用されている。本明細書中で引用された全ての参考文献は、当該技術分野における技術レベルを標示するものとして考えられるべきである。本明細書中のいかなる文言も、本発明が先行発明のこのような開示に先行するものではないことを認めるものとしてみなされてはならない。
【0043】
本明細書中の多層管を調製するための本発明の方法は、既知の多層管に比べていくつかの意外な利点を提供する。まず第1に、溶融加工可能な材料の同時押出が使用されることから、多層管を調製するために必要とされることの多い多重処理ステップをプロセス自体が排除している。第2に、(全てとは言わないまでも)大部分の多層管が層間の接着をもたらすのにポリウレタンなどの溶剤系接着剤を必要としている。本発明の場合、接着剤は必要とされない。
【0044】
多層管のための材料ならびに多層管を調製するプロセスの選択の帰結として、多層管のコストは、公知のプロセスおよび材料に比べ低減される。
【0045】
発明力あるこの多層管は、内部PVDF層を接着させるため例えばTPU層の上にコーティングされるカップリング剤を必要とせず、さらに、内部層を外部層に接着させるためにもカップリング層を一切必要としない。本発明は各々の多層管層を互いに接着させるのに一般に必要とされる付加的なカップリングまたは接着剤層の使用を回避する。
【0046】
本発明の内部層と中間層(例えばTPUおよびPVDFまたはTPUおよびPVDFコポリマー)との間の接着は、ASTM D413により測定された場合、直線剥離強度(linear peel strength)で測定して約5〜約25ポンドの平均剥離力という非常に強いものである。
【0047】
当該技術分野においては、多層管を調製するためのさまざまな方法が公知である。しかしながら、多層化管を調製するために構成要素を入念に選択することが重要である。多くの場合、異なる層の材料は互いに適合性がなく、したがって層間の接着に影響を及ぼす。したがって、非適合性の層間に接着剤として作用する「結合層」を使用する必要がでてくるのが一般的である。本発明は、結合層の使用の必要性を回避するが、このような層を用いることは可能であり、本発明の範囲内に含まれている。
【0048】
本発明の多層管の調製のためには、同時押出が特に有利なプロセスである。適切な材料(例えばTPUとPVDFまたはTPUとPVDFのコポリマー)の選択が同時押出プロセスにとって重要である。同時押出において、複合材の層は、溶融層として同時押出ブロックの形にまとめられ、環状スロットタイプのダイを通して一緒に押出加工される。管を生産するためには、例えばスロットダイが押出中に使用される。
【0049】
典型的には、多層化管を作るためのセットアップは、所要の数およびサイズの押出機をまとめることから始まる。使用される材料の数が、必要とされる押出機の数を決定する。押出機のサイズは、結びつけられた層厚みに応じて決定される。本出願では、PVDFまたはPVDFコポリマーのためには1インチ〜1.25インチの押出機が利用され、一方2つのTPU層(層1および3)のためには1.5インチ〜2インチの押出機が用いられる。より大型の押出機、典型的には2.5インチ〜3.5インチの押出機が第4の(外部)層のために用いられる。
【0050】
異なる押出機から材料補給を受けてこれらの材料フローの流れを設計された厚みおよび位置の同心層へと転換する押出ヘッドが使用される。さまざまな押出機はこの押出ヘッドの入口フランジに挟持またはその他の形で固定される。この場合、押出ヘッドは片側に分割供給ブロックを有し、こうしてポリウレタン押出機を該当する側のフランジに連結する。主要または大型押出機は、外部層のための投入端である後部フランジに連結される。除去により、残ったフランジは、バリヤ材料を担持する押出機に連結される。
【0051】
押出ヘッドアセンブリーの一部として、特定のサイズのダイが押出ヘッドの放出端部に挿入されしっかりと固定され、最終的管の最終外径を決定する一助となる。ピンまたはノーズも同様に押出ヘッドの放出端部に挿入されしっかりと固定され、管の内径を決定する一助となる。
【0052】
押出ヘッドは加熱される。これは例えば、コントロールパネルを通して個別に制御される一連のバンドおよびカートリッジ形状の電気抵抗加熱器を使用することによって達成可能である。個々の押出機は、類似の要領で加熱される。押出機温度は、それが搬送する材料により決定され、材料が押出機の端部を退出し押出ヘッドの中に入るにつれてポリマーの平滑で自由に流れる溶融流を得るように調整される。各押出機のスクリュー速度/rpmは、管製品内に所望の厚みのそれぞれのポリマーを送出するように調整可能である。バリヤ層押出機の温度は、約350〜約380°Fの範囲内にあり得る。ポリウレタン押出機の温度は、約360〜約400°Fの範囲内にあり得る。外部層用の押出機の温度は約310〜340°Fの範囲内にあり得る。押出ヘッド自体の温度は320〜360°Fの範囲内であり得る。
【0053】
始動時点には、バリヤ材料で始まり直後にポリウレタン材料が続きその直後に外部層材料が続く順序で、異なる押出機が始動させられる。異なる材料のフローは、材料の流れのいずれも遮断することなくヘッド内部で異なる層が形成できるようほぼ同時に始められなくてはならない。組合わさった層状材料をダイから流出させて、平滑で連続した溶融流が形成するまで床に落下させることができる。
【0054】
異なる溶融流がひとたび確立されると、作業員は、溶融流を切断し把持し、水浴およびプラー(puller)を通してラインの下流側に管を引張ることができる。ひとたび管がダイを退出すると、それは典型的には大気圧で、水冷浴内へと導かれる。管は、水浴壁に挟持されるローラーを用いてこの浴を通って案内される。浴内の水は、恒常なレベルに維持され、これが管を冷却する。管は貯水槽を退出し、プラーを通過する。プラーは本質的に、対面する2本の回転キャタピラーベルトで構成されている。ベルトはモーターにより駆動され、ベルト間のギャップを調整するようにこのベルトを上下させることが可能である。プラーの目的は、恒常な速度かつ恒常な張力でダイから管を引き続けることにある。この恒常な張力は、管のサイズを維持するために利用される。
【0055】
冷却した管がプラー内を通過した後、作業員は管を切断し検査して、異なる層が適切に形成され所望の厚みを有するか否かを判定する。作業員は、押出機の速度/rpmを適切に調整して、仕様内におさまるように層厚みを増減させる。ひとたび管のサイズが適切に決定されたならば、作業員は、下流側機器の残りのものを通してカッターまで管を引張る。
【0056】
管は、ひとたびプラーを通過した後に、刻印ステーションまで移行できる。彫刻されたホイールまたはインクジェットスプレーを用いることによって、管の表面にインキ刻印を転写することができる。刻印の銘および色は、顧客が決定する。
【0057】
刻印の後、管はオンラインカッターに通されるが、このカッターは管を特定長に切断するようにプログラミングされている。カッターは一組のフィードロールを使用し、このフィードロールが管を切断チャンバ内に引張り案内するのを補助する。管は、ひとたび切断されると、収集箱内に落下する。作業員は収集箱から管を回収し、パッケージ毎の所要部品の長さおよび数に応じて管を包装する。例えば長さ50フィートの管コイルが一般的なパッケージであり得る。
【0058】
1つの例示的方法において、多層化燃料管製品は、円形の横断面および単一の内腔を有する単一の構造にボンディングされた4つの個別層からなる1本の管を形成する押出ヘッドを用いて製造される。このタイプのヘッドは、第1および第3の層が同じ材料で作られていることから、ABAC設計と呼ぶことができる(4層/3材料)。層厚みの範囲は、本明細書中で記述されている。このヘッドは一般にインライン管ヘッドとして考えることができ、これは4層製品を生産するように適合され、2基のサイド押出機を収容している。2重層管または3重層管を押出するために当業者がこのヘッドを修正できるということを理解すべきである。あるいは、当該技術分野において公知の押出しヘッドを利用して、本発明の2、3または4層多層化管を調製することが可能である。
【0059】
図1は、ヘッド/治具設計の論述に有用な適切な多層押出ヘッドの一般的描写を提供している。左右の指定は、読者がパッケージング側から、ヘッドに向かって後方を見た状態でラインを検分していることを仮定している。
【0060】
4層ヘッドは、後部取付け型押出機から第4(外部)層を作成するように設計されている。これは、最も大型の押出機用に指定されており、したがって、最も厚い層と結び付けられている。後部フランジに一致する押出機サイズは、典型的に2.5インチ〜3.5インチ押出機である。この外部層は、PVC調合物に基づいた材料であり得る。
【0061】
右側フランジは、層1および3のための材料を圧送する押出機を受け入れるように設計されている。それは、これら2つの個別層の厚みを制限する一助となる2つの調製可能なチョーク弁を利用した分割供給ブロックまたはマニホルドを用いる。右側フランジに一致する押出機サイズは典型的に1.5インチ〜2インチ押出機である。これらの第1および第3の層はポリウレタン調合物であり得る。材料が押出機を退出しマニホルド内を移動するにつれて、流出流は2つに分割される。このとき、材料は適切なフローデフレクタプレートまで導かれる。
【0062】
左側フランジは、層2のための材料を圧送する押出機を受入れるように設計されている。これは典型的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはPVDFコポリマーで構成されたバリヤ層である。バリヤ材料は、典型的には、フィートあたりの重量ベースで少量の構成要素であり、左側フランジに一致する押出機サイズは、典型的に1インチ〜1.25インチ押出機である。
【0063】
4枚のデフレクタプレートは、さまざまな押出機からの材料の直線プラグフロー(linear plug flow)を順方向の全体的らせん運動を有する円形横断面をもつフローへと転換させるらせん設計のものである。理論によって制限されるべきではないが、らせん運動は各層の平衡フローを促進する一助となり、その結果最終製品内に均等で一貫性のある個々の層が得られると考えられている。個々のフロー層がデフレクタプレートから退出するにつれてらせん運動は、直線フローに戻るが、材料がピンとダイの間に強制され、その後ヘッドから退出するにつれて平衡円形横断面を維持する。
【0064】
このヘッド設計の別の特徴は、「小容積」ヘッドとみなされるものである。すなわち、ヘッド内に留まる溶融済み材料は最小限に保たれている。この小容積設計の正味効果は、各材料についてヘッド内部での低い滞留時間を生み出すことにある。このことは、特に熱感応性ある材料を押出する場合に重要であり得る。ヘッド内にある間、各材料流は、加熱された金属表面と接触状態にあり、加圧下のヘッド内に強制される。ヘッド内の滞留時間が延びると、材料の分解が促進される可能性があり、このことは、影響を受けた材料の特性に不利な効果をもたらすと考えられる。特性上の効果に加えて、分解したポリマーは、色が濃くなり、黒く硬化するまでに至る。これらの分解した材料粒子は、金属表面から破断し、材料フロー内に入り、ヘッドから退出して、製品の中に埋め込まれた状態となり得る。これらの埋め込まれた粒子は、美的観点から望ましくなく、十分に大きい場合、管壁に脆弱な箇所を作り上げる可能性がある。こうして本明細書中で記述されたヘッドは、フロー設計によりこれらの問題を回避する。
【0065】
ヘッド内のその他の設計詳細は、個々の層の相対的厚みに関する。これらの考慮事項は、さまざまなフロープレート間のギャップを決定する。或る一定の限界内では、層厚みは、異なる押出機のスクリュー速度によっておよび/またはチョーク弁の絞り(層1および3について)によって制御可能である。層厚みを実質的に改変させる必要がある場合には、最終的製品内に所望の層分布を提供するギャップを伴って設計された新しいフロープレートを製造することが必要であるかもしれない。
【0066】
3層製品の場合、当業者が思いつくヘッドの設計方法が2つ以上存在する可能性がある。1つのアプローチは、4層ではなく3層のみを作り出すようにヘッドを設計することにあると考えられる。左側および右側の取付けフランジおよびサイド進入型押出機に対応する流出流は、なおも存在すると考えられる。流れは2つに分割されないことからマニホルドやチョーク弁は一切必要でない。3枚のフロープレートのみが用いられると考えられる。このようなヘッドは、3層製造を製造することしかできない。
【0067】
別のアプローチは、4層用に設計されたヘッドを利用するものの、3層製品用にヘッドを修正することにある。これには、単流アダプタでマンホルドを置換するかまたはマンホルドをひき続き使用するものの片側へのフローを遮断するようにチョーク弁の1つを完全に閉鎖することが関与すると考えられる。さらに一方のフロープレートはブランクプレートで置換されると考えられる。このブランクプレートは、特定の押出機から材料が一切流れないようにできると考えられるが、さらにブランクプレートは、ヘッド内部での「デッドスポット」を防止するための確動ストッパを提供すると考えられる。このような「デッドスポット」は、材料を、最小限の滞留時間でヘッドを通して流れ続けさせる代わりに集合させて分解させ得ると考えられる。ブランクプレートは、適正な性能を示すように通常のフロープレートのいずれかと同じ厳しい許容誤差を伴って設計可能である。
【0068】
例えば、多層化燃料管製品は、円形横断面および単一の内腔を有する単一構造へとボンディングされた3つの個別層で構成される1本の管を形成する注文設計の押出ヘッドを用いて作られる。このタイプのヘッドは、典型的には、ABA設計またはABC設計と呼ぶことのできる管を作るために使用可能である。ABA設計配置構成では、第1および第3の層は同じ材料で作られている(3層/2材料)。ABC設計配置構成では、全ての層は、異なる材料で作られている(3層/3材料)。層厚みの範囲は、文書中に記述されている。このヘッドは一般に、2つのサイド押出機を収容し、3層製品を生産するように適合されたインライン管ヘッドとして考えることができる。
【0069】
図2を参照すると、ヘッド/治具設計の論述のための根拠が提供されている。左右の指定は、読者がパッケージング側から、ヘッドに向かって後方を見た状態でラインを検分していることを仮定している。
【0070】
3層ヘッドは、後部取付け型押出機から第3の(外部)層を作成するように設計されている。材料はキャップの後ろから流入する。最も大型の押出機用に指定されており、したがって、最も厚い層と結び付けられている。後部フランジに一致する押出機サイズは、典型的に2.5インチ〜3.5インチ押出機である。この外部層は、TPU調合物に基づいた材料であり得る。
【0071】
左側ポートは、層1のための材料を圧送する押出機を受入れるように設計されている。これはライナー層であり、TPUで構成され得る。ライナー材料は、典型的に、フィートあたりの重量ベースで少量の構成要素であり、左側ポートに一致する押出機サイズは典型的に1インチ〜1.5インチ押出機である。
【0072】
右側ポートは、層2のための材料を圧送する押出機を受入れるように設計されている。第2の層は、典型的に、フィートあたりの重量ベースで少量の構成要素であり、右側ポートに一致する押出機サイズは典型的に1.25インチ〜1.5インチ押出機である。この第2の層は、PVDF調合物に基づいた材料であり得る。
【0073】
2つのフローダイバータは、さまざまな押出機からの材料の直線プラグフローを円形横断面のフローへと転換させるように設計されている。フローダイバータは各層の平衡流を促進し、その結果最終製品内に均等で一貫性のある個々の層が得られるように設計される。個々のフロー層がフローダイバータから退出するにつれて、材料は、ダイホルダーの内側の部域内で互いに遭遇し、ピンとダイの間に強制され、その後ヘッドから退出する。
【0074】
ヘッド内のその他の設計詳細は、個々の層の相対的厚みに関係する。これらの考慮事項は、さまざまな層フローダイバータの間のギャップを決定する。或る一定の限界内では、層厚みは異なる押出機のスクリュー速度によって制御可能である。層厚みを実質的に改変させる必要がある場合には、最終的製品内に所望の層分布を提供するギャップを伴って設計された新しいダイバータを製造することが必要であるかもしれない。
【0075】
多層ケースのいずれにおいても、第1のすなわちコア機械から2つ以上の層を生産できるプロセス設計の可能性が存在する。このとき、クロスヘッド押出機の中にこのコアまたはサブアセンブリ管を通し、第2のステップとして追加層を適用することにより、下流側に付加的層を適用することができる。
【0076】
この逐次的タイプの層化は、多層化製品を作り出すが、これにはいくつかの欠点もある。典型的に、コア管の最も外側の層とクロスヘッドにより適用された最も内側の層の間のボンドは、真の多層ヘッド内で層を同時接合させることによって達成されるものほど堅牢なものではない。2台の別々の押出ステーションに必要な床面積は、オールインワンヘッドのアプローチを使用することで必要となるものより大きい。クロスヘッドはコア管内の正常な変動に対応しなければならないことから、逐次的アプローチは、付加的な変動の発生源の誘因となる。例えばコア管は、ダイを退出する時点でわずかに膨潤する可能性があり、これは、クロスヘッド入口が許容できるものよりも大きいコア管外径(OD)を作り出す可能性がある。ODが十分に大きいと、コア管は、クロスヘッド入口にとどまった状態となり、結果としてラインを逆流し得る。こうして、ラインの停止、問題の矯正そして管の再引張りを行わざるを得ない結果がもたらされると考えられる。コア管が過度に引き伸ばされるか引張られた場合には、別の変動源が発生して、コア管のODが小さくなる可能性がある。これが発生した場合、コア管は、クロスヘッドを通過した際に過度の「遊び」を有し、層の不均衡がもたらされる結果となる。単一ヘッドアプローチでは、層制御の全てが単一ヘッドの設計および運転において維持され、このことは逐次的アプローチに比べ優れた製品を生み出す傾向にある。
【0077】
このプロセスは無溶剤であり、したがって経済的および生態学的観点から見て有利である。本発明にしたがったプロセスは、エンドレスのプラスチック複合材の連続的調製を可能にする。
【0078】
本発明の多層化燃料管/ホースは、非自動車機関内でガソリン燃料を移送するために使用可能である。本発明は、特に厳しい透過性能を要求するカリフォルニア州およびUS EPAの透過性能要件を満たす低透過設計を提供する。非自動車機関には、オートバイ、四輪およびその他のRV車、トラクター式芝刈機、刈払機、チェーンソーおよびその他の芝生手入れ機器などの機器が含まれ得る。
【0079】
多層化管におけるPVDF層の同時押出は、予備成形済み管の内部部分へのPVDFを用いた噴霧、焼成および/またはコーティングに比べ利点を提供する。PVDFが(浸漬、噴霧などのいずれかによって)コーティングされた管は、脆いフィルムを提供する。一般に噴霧または浸漬は、連続的に行なうことができない。内部コーティングの乾燥/焼成は、管全体にわたりPVDFが一貫して硬化されない場合、問題を発生させる可能性がある。
【0080】
本発明の多層化管は同様に、所望の曲げ半径という利点をも有する。例えば、曲げ半径が小さくなればなるほど、管を鋭角で曲げる必要のある利用分野にとってより優れたものとなる。
【0081】
1から21まで連続的に列挙した以下の項は、本発明のさまざまな態様を提供している。一実施形態において、第1項(1)では、本発明は、(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と、(c)中間層の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有するTPUと、を含む揮発性炭化水素の輸送のための可撓性管状物品を提供している。
【0082】
2.TPUがポリエステルポリウレタンである、第1項に記載の物品。
【0083】
3. 物品が15g/m/日の最大透過速度を有する、第1項または第2項のいずれかに記載の物品。
【0084】
4. 物品が7g/m/日の最大透過速度を有する、第1項または第2項のいずれかに記載の物品。
【0085】
5. 物品が5g/m/日の最大透過速度を有する、第1項または第2項のいずれかに記載の物品。
【0086】
6. 第4の外部層をさらに含む、第1項〜第5項のいずれかに記載の物品。
【0087】
7. 第4の外部層がポリ塩化ビニルを含む、第6項に記載の物品。
【0088】
8. ポリ塩化ビニルがさらに安定剤または可塑剤を含む、第7項に記載の物品。
【0089】
9. 安定剤が含まれる場合、有機スズまたはBa−Zn組成物である、第1項〜第8項のいずれかに記載の物品。
【0090】
10. 可塑剤が含まれる場合、ポリオールジエステルである、第1項〜第8項のいずれか記載の物品。
【0091】
11. (a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と;(c)中間層の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有するTPUと、(d)層(c)の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有する外部層と、を含む揮発性炭化水素の輸送のための可撓性管状物品。
【0092】
12. TPUがポリエステルポリウレタンである、第11項に記載の物品。
【0093】
13. 物品が15g/m/日の最大透過速度を有する、第11項または第12項のいずれかに記載の物品。
【0094】
14. 物品が7g/m/日の最大透過速度を有する、第11項または第12項のいずれかに記載の物品。
【0095】
15. 物品が5g/m/日の最大透過速度を有する、第11項または第12項のいずれかに記載の物品。
【0096】
16. 第4の外部層がポリ塩化ビニルを含む、第11項〜第15項のいずれかに記載の物品。
【0097】
17. ポリ塩化ビニルがさらに安定剤または可塑剤を含む、第16項に記載の物品。
【0098】
18. 安定剤が含まれる場合、有機スズまたはBa−Zn組成物である、第11項〜第16項のいずれかに記載の物品。
【0099】
19. 可塑剤がポリオールジエステルである、第11項〜第16項のいずれかに記載の物品。
【0100】
20. (a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と;(c)中間層の外側表面上で管状をしており、この表面と同一の広がりを有するTPUと、任意選択的に(d)層(c)の外側表面上で管状をしておりこの表面と同一の広がりを有する外部層と、を同時押出するステップを含む揮発性炭化水素の輸送のための3層可撓性管状物品を同時押出する方法。
【0101】
第16項〜第19項に指摘された材料のいずれかをさらに含む、第20項に記載の方法。
【0102】
本発明についてさらに以下の非限定的な実施例を参照しながら説明する。当業者にとっては、本発明の範囲から逸脱することなく記述された実施形態に数多くの変更を加えることができるということは明白である。したがって本発明の範囲は本出願の中で記述された実施形態に限定されず、クレームの文言により記述された実施形態およびこれらの実施形態の等価物によってのみ限定されるべきである。そうでないと示されない限りすべてのパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0103】
実施例1:
管を試験するための一般的スクリーニング方法を開発した。利用された管セグメントの長さは12インチ〜36インチの間の任意のものであった。供試体に、CE10またはEEEなどの試験燃料を充填した。管の端部を金属プラグで密封し、重量損失測定を40℃で10〜15日間にわたり行なった。毎日の重量損失および燃料に曝露された内部表面積に基づいて透過速度を計算した。透過速度が15g/m/日未満であった場合に実験製品を考慮した。
【0104】
カリフォルニア大気資源委員会(CARB)の低透過燃料管に関する要件に適合する熱可塑性多層化(4)管が以下で提供されている。この管は、ポリエステル熱可塑性ポリウレタン(TPU)の2層の間に封入される機能的バリヤ層としてPVDFまたはPVDFコポリマーを利用する。
【0105】
一般的スクリーニング方法について以上で記述した通りに、燃料透過試験を実施する。
【0106】
SAE J1737透過試験は以下の通りに実施することができる。すなわち、試験を40℃で行なった。これはCARBにより要求されている最低試験温度である。一般に、この試験では、密封されたチャンバ内に収容された管/ホース供試体の壁を通した炭化水素燃料の損失を測定する。チャンバ内にある間に制御された乾燥窒素ガスで供試体上を掃気し、その後活性炭の入った小型缶内に通す。この缶内に炭化水素を収集し、重量変化によりこれを測定するかまたはその他の手段によりこれを分析する。燃料フローは、管のサイズに応じて10〜20L/時の間で制御する。供試体を、40℃での試験に先立ち1000時間状態調節する(燃料浸漬)。定常状態に達するまで試験を続行する。
【0107】
10体積%のエタノールとASTM基準燃料Cを混合することにより燃料CE10を調製した。
【0108】
下表は、実施例中で規定されたさまざまな管プロトタイプを生産するのに用いられるプロセス条件を記している。さまざまな層を命名する慣習は、最も内側の層(層1)から始まり、最も外側の層に向かって外向きに進む。
【0109】
実施例1
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
直線剥離強度測定値は、ASTM D413により判定された。
【0114】
試料2および3はABAタイプの3層管であり、ここで層Aは、以上で指摘されたTPUであった。層Bはバリヤ層であった。剥離試験は、バリヤ層から内部層を分離させて行なった。管のサイズはおよそ1/4×3/8インチであった。クロスヘッド速度は2インチ/分であった。提示された試料はおよそ6.35mmのIP(許容誤差を含めて約6.1mm〜6.5mmの間)を有していた。
【0115】
フルオロポリマー1は、Kynarflex2800として公知のPVDF材料であった。
【0116】
フルオロポリマー2は、KynarflexADX1285−03として公知のPDVF材料であった。
【0117】
3層管は、以下の層厚み範囲を有していた。
内部層(TPU) 0.015〜0.030インチ
バリヤ層(PVDF) 0.004〜0.018インチ
外部層(TPU) 0.020〜0.035インチ
【0118】
透過試験データ
フルオロポリマー1 0.012インチ 10gms/m/日(40℃)
フルオロポリマー1 0.0135インチ 6gms/m/日(40℃)
フルオロポリマー2 0.011インチ. 7gms/m2/日(40℃)
【0119】
使用された燃料は、CE10であり、試験方法は、一般的スクリーニング方法について上述された通りの透過手順であった。
【0120】
本発明は好ましい実施形態を参考にして記述されたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形状および細部に変更を加えてよいということを認識するものである。背景技術中のものを含め明細書全体を通して引用された全ての参考文献は、その全体が本明細書に援用される。当業者であれば、日常的なものにすぎない実験を用いて、本明細書に具体的に記述された本発明の具体的実施形態に対する数多くの等価物を認識するものである。このような等価物は、冒頭のクレームの範囲内に包含されるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)前記内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と、(c)前記中間層の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有するTPUと、を含む揮発性炭化水素の輸送のための可撓性管状物品。
【請求項2】
前記TPUがポリエステルポリウレタンである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記物品が15g/m/日の最大透過速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記物品が7g/m/日の最大透過速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記物品が5g/m/日の最大透過速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
第4の外部層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第4の外部層がポリ塩化ビニルを含む、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリ塩化ビニルがさらに安定剤または可塑剤を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記安定剤が有機スズまたはBa−Zn組成物である、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記可塑剤がポリオールジエステルである、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)前記内部TPU層上に管状に押出されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と;(c)前記中間層の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有するTPUと、(d)層(c)の外側表面上に管状に押出されこの表面と同一の広がりを有する外部層と、を含む揮発性炭化水素の輸送のための可撓性管状物品。
【請求項12】
前記TPUがポリエステルポリウレタンである、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記物品が15g/m/日の最大透過速度を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記物品が7g/m/日の最大透過速度を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記物品が5g/m/日の最大透過速度を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項16】
第4の外部層がポリ塩化ビニルを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記ポリ塩化ビニルがさらに安定剤または可塑剤を含む、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記安定剤が有機スズまたはB−Z組成物である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
可塑剤がポリオールジエステルである、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
(a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)の内部層と;(b)前記内部TPU層上の管状のポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはPVDFコポリマー中間層と;(c)前記中間層の外側表面上で管状をしており、この表面と同一の広がりを有するTPUと、任意選択的に(d)層(c)の外側表面上で管状をしておりこの表面と同一の広がりを有する外部層と、を同時押出するステップを含む揮発性炭化水素の輸送のための多層可撓性管状物品を同時押出する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−521801(P2011−521801A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506504(P2011−506504)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042498
【国際公開番号】WO2009/135110
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510045634)サンゴバン・パフォーマンス・プラスティックス・コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】