多層回路基板の製造方法
【課題】微細化に伴うパターニング不良を回避しながら、配線と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることができる多層回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路3上に、少なくとも片面に密着材5が設けられた箔6を、密着材5を支持基板1側に向けて、絶縁樹脂膜4を介して貼り付ける。箔6としては銅箔等を用い、密着材5としてはクロメート処理により生成した膜を用いる。その後、開口部6aを形成し、更に、ビアホール7を形成する。このとき、必然的にビアホール7の底にスミアが生じるため、その後、スミアを除去する。次に、銅と反応して撥水性を示す物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行うことにより、回路3の表面に、撥水性を示す保護部9を設ける。次に、回路3上の保護部9を残したまま、箔6上の保護部9を除去し、更に、箔6も除去する。そして、回路3上の保護部9を除去し、ビアホール7内及び密着材5上に配線を形成する。
【解決手段】回路3上に、少なくとも片面に密着材5が設けられた箔6を、密着材5を支持基板1側に向けて、絶縁樹脂膜4を介して貼り付ける。箔6としては銅箔等を用い、密着材5としてはクロメート処理により生成した膜を用いる。その後、開口部6aを形成し、更に、ビアホール7を形成する。このとき、必然的にビアホール7の底にスミアが生じるため、その後、スミアを除去する。次に、銅と反応して撥水性を示す物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行うことにより、回路3の表面に、撥水性を示す保護部9を設ける。次に、回路3上の保護部9を残したまま、箔6上の保護部9を除去し、更に、箔6も除去する。そして、回路3上の保護部9を除去し、ビアホール7内及び密着材5上に配線を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に好適な多層回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の微細化及び多層化、並びに電子部品の高密度実装化が急速に進み、プリント配線板に対してビルドアップ多層配線構造の検討が活発に行われている。ビルドアップ多層配線構造では、複数の配線層間に絶縁樹脂膜が形成されており、配線層間の導通をとるために、ビアホールとよばれる微細な穴が絶縁樹脂膜に形成されている。ビアホールを形成する方法としては、絶縁樹脂膜の材料として感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィ技術により絶縁樹脂膜を加工する方法、及びレーザを照射して絶縁樹脂膜を加工する方法がある。これらのうちでは、感光性樹脂が高価であるため、一般的に、レーザを照射する方法が採用されている。
【0003】
レーザの照射によりビアホールを形成した場合、ビアホールの底及び絶縁樹脂膜上にスミアとよばれる樹脂残渣が残存する。このため、配線層を形成する前に、過マンガン酸カリウム等の液を用いてスミアを除去する処理を行っている。この処理は、デスミア処理とよばれる。
【0004】
また、配線層の材料として一般的に用いられる銅と樹脂との間の密着強度は低い。このため、デスミア処理では、スミアの除去だけでなく、絶縁樹脂膜の表面への10点平均表面粗さRzで2μm以上の微細突起の形成も行っている。このような微細突起はアンカーとして機能し、配線層が絶縁樹脂膜に強固に固定される。従来、このような処理により、0.8kgf/cmのピール強度が得られている。
【0005】
配線層の形成に当たっては、デスミア処理後に、めっきシード膜を形成し、その上にマスク用樹脂膜を形成し、これに、赤外線の照射及び現像を用いて開口部を形成し、開口部内にめっき法により銅膜を形成している。そして、配線層の形成を繰り返すと、多層回路基板が得られる。但し、開口部の形成の際には、絶縁樹脂膜の表面に存在する微細突起がレーザの乱反射を引き起こす。これまでは、このような乱反射が生じてもその影響は無視できる程度であったが、更なる微細化が進められると、この影響が無視できなくなる。特に、ラインアンドスペース(L/S)の幅が10μm以下となると、この現象が顕著となる。
【0006】
従って、更なる微細化のためには、絶縁樹脂膜の表面を平滑に保ちながら、配線層と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることが必要とされつつある。
【0007】
例えば、酸化チタン等の光触媒を用い、絶縁樹脂膜の表面に10点平均表面粗さRzで0.2μm以下の微小な凹凸を形成し、高い密着強度を得ようとする技術が報告されている。しかしながら、この技術では、凹凸の形成のために酸化チタンの活性化が必要とされ、この活性化のために20分間〜60分間もの長さの光照射が必要である。このため、実用化を考慮すると、大幅なコストアップにつながる。また、微小な凹凸を形成することができても、凹凸の形成後にデスミア処理を行うことになるため、結局は微小な凹凸が消滅してしまい、配線層を強固に固定することはできない。
【0008】
また、イミダゾールシラン剤を絶縁樹脂膜の表面に付着させ、高い密着強度を得ようとする技術も報告されている。しかしながら、この技術でも、イミダゾールシラン剤の付着後にデスミア処理を行うことになるため、配線層の形成前にイミダゾールシラン剤が除去されてしまう。
【0009】
また、銅箔の表面にカップリング剤を付着させておき、これを絶縁樹脂膜の表面に転写して、高い密着強度を得ようとする技術も提案されている。しかしながら、この技術でも、カップリング剤の転写後にデスミア処理を行うことになるため、配線層の形成前にカップリング剤が除去されてしまう。
【0010】
このように、従来の技術では、絶縁樹脂膜の表面を、レーザの乱反射が影響しない程度まで平滑に保ちながら、つまり、パターニング不良を回避しながら、配線と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることができない。
【0011】
【特許文献1】特許第3277463号公報
【特許文献2】特開2003−234573号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/032701
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、7、p136(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、微細化に伴うパターニング不良を回避しながら、配線と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることができる多層回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0014】
多層回路基板の製造方法の一態様では、導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付け、その後、前記箔に第1の開口部を形成する。次に、前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する。次に、レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する。次に、前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する。次に、前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける。次に、前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する。次に、前記保護部を除去する。そして、前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する。
【発明の効果】
【0015】
この多層回路基板の製造方法によれば、箔により密着材が覆われた状態で、ビアホールを形成し、残渣を除去するため、微細化に伴うパターニング不良を回避することができる。また、配線の形成の前に密着材を設けておくため、高い密着強度を得ることができる。更に、箔の除去に際しては、保護部により導電膜が保護されているため、導電膜が箔と同時に除去されることも抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る多層回路基板の製造方法における初期の状態を示す断面図であり、図2A乃至図2Qは、第1の実施形態に係る多層回路基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0018】
先ず、図1及び図2A〜図2Cに示すように、支持基板1の回路3上に、少なくとも片面に密着材5が設けられた箔6を、密着材5を支持基板1側に向けて、絶縁樹脂膜4を介して貼り付ける。支持基板1としては、ガラス繊維強化樹脂基材2に銅又は銅合金からなる回路(導電膜)3が形成されたものを用いる。また、絶縁樹脂膜4の材料としては、例えば熱硬化性エポキシ樹脂を用いる。また、例えば、箔6としては銅箔又は銅合金箔を用い、密着材5としては銅箔に対するクロメート処理により生成した膜を用いる。このような膜は、例えば、銅箔側からZnNi合金膜、Co膜及びCr膜が積層されて構成されている。また、密着材5としてSn膜を用いてもよい。また、密着材5は膜状のものである必要はなく、箔6の表面に付着した物質であってもよい。このような物質としては、例えば、トリアジンチオール、シランカップリング剤、ニトロカルボン酸、ベンゾトリアゾール及び/又はメルカプトスルホン酸等の化合物が挙げられる。トリアジンチオールとしては、メルカプト基がトリアジン環に二つ以上存在するものが望ましく、特にトリアジンチオールトリチオールが望ましい。また、シランカップリング剤としては、その分子中に、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、イミダゾール基、ビニル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、及び/又はピリジン基が含まれているものが望ましい。また、ニトロカルボン酸としては、ニトロ安息香酸、ニトロフタル酸、及びニトロサリチル酸並びにこれらのアルカリ金属塩が望ましい。また、メルカプトスルホン酸としては、メルカプトエタンスルホン酸、及びメルカプトプロパンスルホン酸並びにそのアルカリ金属塩が望ましい。また、これらが組み合わされていてもよい。例えば、クロメート処理により生成した膜上に、上記の物質が付着していてもよい。
【0019】
そして、貼り付けの際には、例えば、半硬化状態の絶縁樹脂膜4を支持基板1上にラミネートし(図1及び図2A)、更に、箔6を絶縁樹脂膜4上にラミネートし(図2B〜図2C)、絶縁樹脂膜4を硬化させる(図2C)。図2Aは、図1の回路3の近傍を拡大して示す断面図である。
【0020】
箔6の貼り付け後、図2Dに示すように、ビアホールを形成する予定の領域に開口部21aが位置するレジストパターン21を箔6上に形成する。レジストパターン21の形成に当たっては、例えば、全面にレジスト剤を形成し、その後に開口部21aを形成する。
【0021】
次いで、図2Eに示すように、例えばウェットエッチングにより、箔6の開口部21aから露出している部分を除去することにより、箔6に開口部6a(第1の開口部)を形成する。この際には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いる。その後、レジストパターン21を除去する。
【0022】
続いて、図2Fに示すように、炭酸ガスレーザを用いて、密着材5及び絶縁樹脂膜4にビアホール7(第2及び第3の開口部)を形成する。このとき、必然的にビアホール7の底にスミア8(残渣)が生じる。なお、YAG(イットリウム(Yttrium)・アルミニウム(Aluminum)・ガーネット(Garnet)))レーザを用いることも可能であるが、回路3にダメージが付与される可能性があるため、炭酸ガスレーザが望ましい。なお、ビアホール7の直径は開口部6aと一致している必要はなく、開口部6aより小さくてもよい。また、密着材5及び絶縁樹脂膜4の加工を連続して行う必要はなく、これらを互いに分離して行ってもよい。また、開口部6aの形成と密着材5への第2の開口部の形成とを連続して行ってもよい。
【0023】
次いで、例えば過マンガン酸を含むデスミア液を用いたデスミア処理を行うことにより、図2Gに示すように、スミア8を除去する。
【0024】
その後、銅と反応して銅表面保護する物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行う。この結果、図2Hに示すように、回路3の表面に、撥水性を示す保護部9が形成される。箔6として銅箔が用いられている場合、箔6の表面にも保護部9が形成される。銅と反応して撥水性を示す物質は特に限定されないが、例えば、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、及び/又はベンゾチアゾール誘導体を用いることが望ましい。チオール誘導体としては、メルカプト基を1つだけ有し、他の官能基を有しない化合物であればよく、特にブタンチオール及びヘキサンチオール等のアルカンチオール類、並びにベンゼンチオール及びナフタレンチオール等のアリールチオール類等が望ましい。ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール等が望ましい。トリアジン誘導体としては、メルカプト基を含む必要はなく、1,3,5−s−トリアジン、及びメルカプト基を有するトリアジンチオールが挙げられる。ベンゾチアゾール誘導体としては、ベンゾチアゾール、2‐アミノベンゾチアゾール、及び2−メルカプトベンゾチアゾールが望ましい。
【0025】
また、これらの銅と反応して撥水性を示す物質と反応性等を考慮すると、絶縁樹脂膜4の材料としては、熱硬化性エポキシ樹脂及び熱硬化性ポリイミド樹脂が望ましい。
【0026】
保護部9の形成後、例えば、フォトマスク等を用いて箔6上の保護部9に紫外線を照射することにより、図2Iに示すように、回路3上の保護部9を残したまま、箔6上の保護部9を除去する。紫外線としては、波長が300nm以下のものが望ましく、250nm以下のものがより望ましい。これは、保護部9を構成する化合物を確実に分解するためである。
【0027】
次いで、図2Jに示すように、箔6を除去する。箔6として銅箔が用いられている場合には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングを行う。なお、回路3は保護部9により覆われているため、回路3はエッチングから保護される。
【0028】
その後、図2Kに示すように、界面活性剤を含むアルカリ性溶液を用いて保護部9を除去すると共に、密着材5の表面の濡れ性を向上させる。なお、例えば波長が300nm以下の紫外線を照射することにより、保護部9を除去すると共に、密着材5の表面の濡れ性を向上させてもよい。
【0029】
続いて、図2Lに示すように、無電解めっき法により銅のシード膜11をビアホール7内及び密着材5上に形成する。
【0030】
次いで、図2Mに示すように、配線を形成する予定の領域に開口部22aが位置するレジストパターン22をシード膜11上に形成する。レジストパターン22の形成に当たっては、例えば、全面にレジスト剤を形成し、その後に開口部22aを形成する。
【0031】
その後、図2Nに示すように、電気めっき法により銅膜12を開口部22a内においてシード膜11上に形成する。
【0032】
続いて、図2Oに示すように、レジストパターン22を除去する。
【0033】
次いで、図2Pに示すように、銅膜12から露出しているシード膜11及び密着材5を、例えばスプレーエッチングにより除去する。この結果、シード膜11及び銅膜12を含む配線(導電膜)13が得られる。
【0034】
その後、図2Qに示すように、絶縁樹脂膜4、密着材5、ビアホール7及び配線13の形成等を繰り返す。更に、配線13の一部を露出する開口部15を備えたソルダレジスト膜14を形成し、開口部15内にバンプ等を形成する。また、支持基板1の裏面側についても同様の処理を行う。このようにして、多層回路基板を完成させる。
【0035】
このような製造方法では、デスミア処理の際に密着材5が箔6により覆われているため、密着材5が配線13の形成前に除去されることがない。従って、配線13をその直下の絶縁樹脂膜4に強固に固定することができる。また、デスミア処理の際に絶縁樹脂膜4及び密着材5に、乱反射を引き起こすような突起が形成されることもないため、精度の高いレジストパターン21を形成することが可能である。更に、箔6の除去の際には、保護部9をビアホール7の底部に設けているため、その下の回路3及び配線13の材料が箔6の材料と同様のものであっても、回路3及び配線13(導電膜)を保護することができる。
【0036】
なお、箔6の表面粗さに関し、10点平均粗さRzが1μm以下であることが望ましい。これは、箔6の表面粗さがそのまま絶縁樹脂膜4に転写されるためである。つまり、箔6の表面粗さが大きすぎると、絶縁樹脂膜4の表面粗さも大きくなってしまうからである。平均粗さRzが1μmを超える場合、絶縁樹脂膜4の表面粗さも1μmを超えてしまい、10μm以下の微細な配線パターンを形成する際に乱反射が生じる可能性がある。
【0037】
また、回路3及び配線13は、導電性等の観点から銅又は銅合金から構成されていることが好ましいが、その材料は限定されない。また、箔6の材料も限定されないが、上記の密着材5を用いる場合、銅又は銅合金が密着材5の生成の観点から用いやすい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3A乃至図3Fは、第2の実施形態に係る多層回路基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0039】
先ず、第1の実施形態と同様にして、ビアホール7の形成までの処理を行う(図2G)。次いで、図3Aに示すように、箔6上に保護フィルム31を貼り付ける。保護フィルム31としては、例えば紫外線の照射又は加熱により剥離力(粘着力)が低下するドライフィルムを用いる。
【0040】
その後、図3Bに示すように、炭酸ガスレーザを用いて、保護フィルム31にビアホール7と整合する開口部31a(第3の開口部)を形成する。このようにして、開口部31aが形成された保護フィルム31が箔6上に設けられる。
【0041】
続いて、銅と反応して撥水性を示す物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行う。この結果、図3Cに示すように、ビアホール7の底部において、回路3の表面に、撥水性を示す保護部39が形成される。銅と反応して撥水性を示す物質は特に限定されないが、図4に示すように、銅と共有結合する物質、例えばフェニルジアゾニウム塩(Diazonium salts)を用いることが望ましい。フェニルジアゾニウム塩としては、フェニル基、フェニルアルキル基、フッ素化フェニル基、及びフッ素化フェニルアルキル基を有する化合物が挙げられる。また、第1の実施形態と同様に、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、及び/又はベンゾチアゾール誘導体を用いてもよい。但し、チオール誘導体以外の化合物と銅との結合は、配位結合である。
【0042】
次いで、例えば、フォトマスク等を用いて保護フィルム31に紫外線を照射することにより、保護フィルム31の剥離力(粘着力)を低下させる。そして、図3Dに示すように、回路3上の保護部9を残したまま、保護フィルム31を剥離(除去)する。なお、100℃程度での加熱により保護フィルム31の剥離力(粘着力)を低下させてもよい。
【0043】
その後、図3Eに示すように、箔6を除去する。箔6として銅箔が用いられている場合には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングを行う。なお、回路3は保護部9により覆われているため、回路3はエッチングから保護される。
【0044】
続いて、図3Fに示すように、保護部39を除去する。保護部39の形成の際にフェニルジアゾニウム塩を用いている場合は、例えば酸素プラズマを照射するか、レーザを照射する。一方、保護部39の形成の際にチオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、又はベンゾチアゾール誘導体を用いている場合は、例えば、第1の実施形態のように、紫外線を照射する。
【0045】
次いで、第1の実施形態と同様に、界面活性剤を含むアルカリ性溶液を用いて密着材5の表面の濡れ性を向上させる。その後、第1の実施形態と同様にして、シード膜11の形成以降の処理を行う(図2L〜図2Q)。このようにして、多層回路基板を完成させる。
【0046】
このような第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、保護部39の形成にフェニルジアゾニウム塩を用いることができ、フェニルジアゾニウム塩は水に可溶であり、溶媒として水を用いることができるため、チオール誘導体等を用いる場合と比較して、その取り扱いが容易になる。更に、フェニルジアゾニウム塩を用いて形成された保護部39は、チオール誘導体等を用いて形成された保護部9と比較して、酸素によって分解されにくいため、撥水性を長期にわたって安定して維持することが可能である。
【0047】
なお、箔6上の保護部9のみを選択的に除去する処理が煩雑になる可能性があるが、第1の実施形態における保護部9の形成にフェニルジアゾニウム塩を用いることも可能である。
【0048】
次に、本願発明者らが実際に行った実験について説明する。
【0049】
(実験例1)
実験例1は、第1の実施形態に関するものである。実験例1では、先ず、回路が形成された支持基板上に熱硬化性エポキシ樹脂をラミネートした。更に、表面粗さRzが0.7μmで、表面に亜鉛及びクロムを含む密着材(クロメート処理により生成した膜)が設けられた圧延銅箔(日鉱金属社製のBHY、厚さ:18μm)を熱硬化性エポキシ樹脂上にラミネートした。そして、180℃、1時間の加熱により熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて絶縁樹脂膜を形成した。次いで、圧延銅箔上にドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3325、厚さ:25μm)をラミネートし、これに直径が90μmの開口部を形成した。その後、圧延銅箔の開口部から露出している部分を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。続いて、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmのビアホールを絶縁樹脂膜に形成した。次いで、ロームアンドハース社製のデスミア処理液を用いてデスミア処理を行った。
【0050】
その後、関東化学社製の1−デカンチオールのエタノール溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0051】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0052】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0053】
(実験例2)
実験例2も、第1の実施形態に関するものである。実験例2でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、ベンゾトリアゾール(大和化成社製のVERZONE Crystal)の水溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0054】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0055】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0056】
(実験例3)
実験例3も、第1の実施形態に関するものである。実験例3でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、2−ジブチルアミノ‐4,6−ジメルカプトトリアジン(三協化成社製のジスネットDB)のエタノール溶液(1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0057】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0058】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0059】
(実験例4)
実験例4も、第1の実施形態に関するものである。実験例4でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、関東化学社製のベンゾチアゾールのエタノール溶液(1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0060】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0061】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0062】
(実験例5)
実験例5は、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例5でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例1〜4のような表面処理等を行うことなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0063】
この結果、圧延銅箔だけでなく、ビアホールの底部から露出している回路も除去されてしまった。
【0064】
(実験例6)
実験例6も、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例6でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例2と同様に、ベンゾトリアゾール(大和化成社製のVERZONE Crystal)の水溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、実験例2のような紫外線の照射を行うことなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0065】
しかしながら、圧延銅箔の表面に保護部が残存したままであるため、圧延銅箔を除去することができなかった。このことは、その後に配線を形成しようとしても、密着材と無電解銅膜とを接触させることができず、良好な配線を形成することができないことを意味する。また、圧延銅箔が残存するため、所望のパターンの配線を得ることもできない。
【0066】
(実験例7)
実験例7は、第2の実施形態に関するものである。実験例7でも、先ず、回路が形成された支持基板上に熱硬化性エポキシ樹脂をラミネートした。更に、表面粗さRzが0.7μmで、表面に亜鉛及びクロムを含む密着材(クロメート処理により生成した膜)が設けられた圧延銅箔(日鉱金属社製のBHY、厚さ:18μm)を熱硬化性エポキシ樹脂上にラミネートした。そして、180℃、1時間の加熱により熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて絶縁樹脂膜を形成した。次いで、圧延銅箔上にドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3325、厚さ:25μm)をラミネートし、これに直径が90μmの開口部を形成した。その後、圧延銅箔の開口部から露出している部分を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。続いて、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmのビアホールを絶縁樹脂膜に形成した。次いで、ロームアンドハース社製のデスミア処理液を用いてデスミア処理を行った。
【0067】
その後、紫外線照射により剥離力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタック(登録商標)UVシリーズ 125UV)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4にp−メチルフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(p-methylphenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。
【0068】
次いで、フォトマスクを用いて保護フィルム(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、保護フィルムの剥離力を低下させた。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。その後、保護フィルムを除去(剥離)した。
【0069】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0070】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0071】
(実験例8)
実験例8も、第2の実施形態に関するものである。実験例8でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、加熱により粘着力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタックTEシリーズ PS−2011TE)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4にフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(phenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。次いで、積層体を100℃、10分間加熱することにより、保護フィルムの剥離力を低下させ、保護フィルムを剥離した。
【0072】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0073】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0074】
(実験例9)
実験例9も、第2の実施形態に関するものである。実験例9でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、加熱により粘着力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタックUVシリーズ 125UV)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4に3,4,5−トリフルオロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(3,4,5-trifluorophenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。次いで、フォトマスクを用いて保護フィルム(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、保護フィルムの剥離力を低下させた。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。その後、保護フィルムを除去(剥離)した。
【0075】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0076】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0077】
(実験例10)
実験例10は、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例10でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例7〜9のような保護フィルムを形成することなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0078】
この結果、圧延銅箔だけでなく、ビアホールの底部から露出している回路も除去されてしまった。
【0079】
(付記1)
導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付ける工程と、
前記箔に第1の開口部を形成する工程と、
前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する工程と、
レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する工程と、
前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける工程と、
前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する工程と、
前記保護部を除去する工程と、
前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【0080】
(付記2)
前記導電膜及び前記配線として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする付記1に記載の多層回路基板の製造方法。
【0081】
(付記3)
前記箔として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする付記1又は2に記載の多層回路基板の製造方法。
【0082】
(付記4)
前記密着材として、クロメート処理により前記箔の表面に生成した膜を用いることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0083】
(付記5)
前記保護部を設ける工程は、前記導電膜を構成する材料と反応して撥水性を示す物質を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0084】
(付記6)
前記物質として、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体及びベンゾチアゾール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることを特徴とする付記5に記載の多層回路基板の製造方法。
【0085】
(付記7)
前記保護部を設ける工程において、前記保護部を前記箔上にも設けることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0086】
(付記8)
前記保護部を設ける工程と前記箔を除去する工程との間に、
前記箔上の保護部に選択的に紫外線を照射して、前記箔上の保護部を除去する工程を有することを特徴とする付記7に記載の多層回路基板の製造方法。
【0087】
(付記9)
前記残渣を除去する工程と前記保護部を設ける工程との間に、前記箔上に、前記ビアホールの底部を露出する第3の開口部が設けられた保護フィルムを設ける工程を有し、
前記保護部を設ける工程と前記箔を除去する工程との間に、前記保護フィルムを除去する工程を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0088】
(付記10)
前記保護部を設ける工程は、フェニルジアゾニウム塩を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする請求項9に記載の多層回路基板の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2A】第1の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2B】図2Aに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2C】図2Bに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2D】図2Cに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2E】図2Dに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2F】図2Eに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2G】図2Fに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2H】図2Gに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2I】図2Hに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2J】図2Iに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2K】図2Jに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2L】図2Kに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2M】図2Lに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2N】図2Mに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2O】図2Nに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2P】図2Oに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2Q】図2Pに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3A】第2の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3C】図3Bに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3D】図3Cに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3E】図3Dに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3F】図3Eに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図4】保護部39の形成の際の化学反応を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1:支持基板
2:ガラス繊維強化樹脂基材
3:回路
4:絶縁樹脂膜
5:密着材
6:箔
6a:開口部
7:ビアホール
8:スミア
11:シード膜
12:銅膜
13:配線
14:ソルダレジスト膜
15:開口部
21、22:レジストパターン
21a、22a:開口部
31:保護フィルム
31a:開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に好適な多層回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の微細化及び多層化、並びに電子部品の高密度実装化が急速に進み、プリント配線板に対してビルドアップ多層配線構造の検討が活発に行われている。ビルドアップ多層配線構造では、複数の配線層間に絶縁樹脂膜が形成されており、配線層間の導通をとるために、ビアホールとよばれる微細な穴が絶縁樹脂膜に形成されている。ビアホールを形成する方法としては、絶縁樹脂膜の材料として感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィ技術により絶縁樹脂膜を加工する方法、及びレーザを照射して絶縁樹脂膜を加工する方法がある。これらのうちでは、感光性樹脂が高価であるため、一般的に、レーザを照射する方法が採用されている。
【0003】
レーザの照射によりビアホールを形成した場合、ビアホールの底及び絶縁樹脂膜上にスミアとよばれる樹脂残渣が残存する。このため、配線層を形成する前に、過マンガン酸カリウム等の液を用いてスミアを除去する処理を行っている。この処理は、デスミア処理とよばれる。
【0004】
また、配線層の材料として一般的に用いられる銅と樹脂との間の密着強度は低い。このため、デスミア処理では、スミアの除去だけでなく、絶縁樹脂膜の表面への10点平均表面粗さRzで2μm以上の微細突起の形成も行っている。このような微細突起はアンカーとして機能し、配線層が絶縁樹脂膜に強固に固定される。従来、このような処理により、0.8kgf/cmのピール強度が得られている。
【0005】
配線層の形成に当たっては、デスミア処理後に、めっきシード膜を形成し、その上にマスク用樹脂膜を形成し、これに、赤外線の照射及び現像を用いて開口部を形成し、開口部内にめっき法により銅膜を形成している。そして、配線層の形成を繰り返すと、多層回路基板が得られる。但し、開口部の形成の際には、絶縁樹脂膜の表面に存在する微細突起がレーザの乱反射を引き起こす。これまでは、このような乱反射が生じてもその影響は無視できる程度であったが、更なる微細化が進められると、この影響が無視できなくなる。特に、ラインアンドスペース(L/S)の幅が10μm以下となると、この現象が顕著となる。
【0006】
従って、更なる微細化のためには、絶縁樹脂膜の表面を平滑に保ちながら、配線層と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることが必要とされつつある。
【0007】
例えば、酸化チタン等の光触媒を用い、絶縁樹脂膜の表面に10点平均表面粗さRzで0.2μm以下の微小な凹凸を形成し、高い密着強度を得ようとする技術が報告されている。しかしながら、この技術では、凹凸の形成のために酸化チタンの活性化が必要とされ、この活性化のために20分間〜60分間もの長さの光照射が必要である。このため、実用化を考慮すると、大幅なコストアップにつながる。また、微小な凹凸を形成することができても、凹凸の形成後にデスミア処理を行うことになるため、結局は微小な凹凸が消滅してしまい、配線層を強固に固定することはできない。
【0008】
また、イミダゾールシラン剤を絶縁樹脂膜の表面に付着させ、高い密着強度を得ようとする技術も報告されている。しかしながら、この技術でも、イミダゾールシラン剤の付着後にデスミア処理を行うことになるため、配線層の形成前にイミダゾールシラン剤が除去されてしまう。
【0009】
また、銅箔の表面にカップリング剤を付着させておき、これを絶縁樹脂膜の表面に転写して、高い密着強度を得ようとする技術も提案されている。しかしながら、この技術でも、カップリング剤の転写後にデスミア処理を行うことになるため、配線層の形成前にカップリング剤が除去されてしまう。
【0010】
このように、従来の技術では、絶縁樹脂膜の表面を、レーザの乱反射が影響しない程度まで平滑に保ちながら、つまり、パターニング不良を回避しながら、配線と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることができない。
【0011】
【特許文献1】特許第3277463号公報
【特許文献2】特開2003−234573号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/032701
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、7、p136(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、微細化に伴うパターニング不良を回避しながら、配線と絶縁樹脂膜との間の密着強度を高めることができる多層回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0014】
多層回路基板の製造方法の一態様では、導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付け、その後、前記箔に第1の開口部を形成する。次に、前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する。次に、レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する。次に、前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する。次に、前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける。次に、前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する。次に、前記保護部を除去する。そして、前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する。
【発明の効果】
【0015】
この多層回路基板の製造方法によれば、箔により密着材が覆われた状態で、ビアホールを形成し、残渣を除去するため、微細化に伴うパターニング不良を回避することができる。また、配線の形成の前に密着材を設けておくため、高い密着強度を得ることができる。更に、箔の除去に際しては、保護部により導電膜が保護されているため、導電膜が箔と同時に除去されることも抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る多層回路基板の製造方法における初期の状態を示す断面図であり、図2A乃至図2Qは、第1の実施形態に係る多層回路基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0018】
先ず、図1及び図2A〜図2Cに示すように、支持基板1の回路3上に、少なくとも片面に密着材5が設けられた箔6を、密着材5を支持基板1側に向けて、絶縁樹脂膜4を介して貼り付ける。支持基板1としては、ガラス繊維強化樹脂基材2に銅又は銅合金からなる回路(導電膜)3が形成されたものを用いる。また、絶縁樹脂膜4の材料としては、例えば熱硬化性エポキシ樹脂を用いる。また、例えば、箔6としては銅箔又は銅合金箔を用い、密着材5としては銅箔に対するクロメート処理により生成した膜を用いる。このような膜は、例えば、銅箔側からZnNi合金膜、Co膜及びCr膜が積層されて構成されている。また、密着材5としてSn膜を用いてもよい。また、密着材5は膜状のものである必要はなく、箔6の表面に付着した物質であってもよい。このような物質としては、例えば、トリアジンチオール、シランカップリング剤、ニトロカルボン酸、ベンゾトリアゾール及び/又はメルカプトスルホン酸等の化合物が挙げられる。トリアジンチオールとしては、メルカプト基がトリアジン環に二つ以上存在するものが望ましく、特にトリアジンチオールトリチオールが望ましい。また、シランカップリング剤としては、その分子中に、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、イミダゾール基、ビニル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、及び/又はピリジン基が含まれているものが望ましい。また、ニトロカルボン酸としては、ニトロ安息香酸、ニトロフタル酸、及びニトロサリチル酸並びにこれらのアルカリ金属塩が望ましい。また、メルカプトスルホン酸としては、メルカプトエタンスルホン酸、及びメルカプトプロパンスルホン酸並びにそのアルカリ金属塩が望ましい。また、これらが組み合わされていてもよい。例えば、クロメート処理により生成した膜上に、上記の物質が付着していてもよい。
【0019】
そして、貼り付けの際には、例えば、半硬化状態の絶縁樹脂膜4を支持基板1上にラミネートし(図1及び図2A)、更に、箔6を絶縁樹脂膜4上にラミネートし(図2B〜図2C)、絶縁樹脂膜4を硬化させる(図2C)。図2Aは、図1の回路3の近傍を拡大して示す断面図である。
【0020】
箔6の貼り付け後、図2Dに示すように、ビアホールを形成する予定の領域に開口部21aが位置するレジストパターン21を箔6上に形成する。レジストパターン21の形成に当たっては、例えば、全面にレジスト剤を形成し、その後に開口部21aを形成する。
【0021】
次いで、図2Eに示すように、例えばウェットエッチングにより、箔6の開口部21aから露出している部分を除去することにより、箔6に開口部6a(第1の開口部)を形成する。この際には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いる。その後、レジストパターン21を除去する。
【0022】
続いて、図2Fに示すように、炭酸ガスレーザを用いて、密着材5及び絶縁樹脂膜4にビアホール7(第2及び第3の開口部)を形成する。このとき、必然的にビアホール7の底にスミア8(残渣)が生じる。なお、YAG(イットリウム(Yttrium)・アルミニウム(Aluminum)・ガーネット(Garnet)))レーザを用いることも可能であるが、回路3にダメージが付与される可能性があるため、炭酸ガスレーザが望ましい。なお、ビアホール7の直径は開口部6aと一致している必要はなく、開口部6aより小さくてもよい。また、密着材5及び絶縁樹脂膜4の加工を連続して行う必要はなく、これらを互いに分離して行ってもよい。また、開口部6aの形成と密着材5への第2の開口部の形成とを連続して行ってもよい。
【0023】
次いで、例えば過マンガン酸を含むデスミア液を用いたデスミア処理を行うことにより、図2Gに示すように、スミア8を除去する。
【0024】
その後、銅と反応して銅表面保護する物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行う。この結果、図2Hに示すように、回路3の表面に、撥水性を示す保護部9が形成される。箔6として銅箔が用いられている場合、箔6の表面にも保護部9が形成される。銅と反応して撥水性を示す物質は特に限定されないが、例えば、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、及び/又はベンゾチアゾール誘導体を用いることが望ましい。チオール誘導体としては、メルカプト基を1つだけ有し、他の官能基を有しない化合物であればよく、特にブタンチオール及びヘキサンチオール等のアルカンチオール類、並びにベンゼンチオール及びナフタレンチオール等のアリールチオール類等が望ましい。ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール等が望ましい。トリアジン誘導体としては、メルカプト基を含む必要はなく、1,3,5−s−トリアジン、及びメルカプト基を有するトリアジンチオールが挙げられる。ベンゾチアゾール誘導体としては、ベンゾチアゾール、2‐アミノベンゾチアゾール、及び2−メルカプトベンゾチアゾールが望ましい。
【0025】
また、これらの銅と反応して撥水性を示す物質と反応性等を考慮すると、絶縁樹脂膜4の材料としては、熱硬化性エポキシ樹脂及び熱硬化性ポリイミド樹脂が望ましい。
【0026】
保護部9の形成後、例えば、フォトマスク等を用いて箔6上の保護部9に紫外線を照射することにより、図2Iに示すように、回路3上の保護部9を残したまま、箔6上の保護部9を除去する。紫外線としては、波長が300nm以下のものが望ましく、250nm以下のものがより望ましい。これは、保護部9を構成する化合物を確実に分解するためである。
【0027】
次いで、図2Jに示すように、箔6を除去する。箔6として銅箔が用いられている場合には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングを行う。なお、回路3は保護部9により覆われているため、回路3はエッチングから保護される。
【0028】
その後、図2Kに示すように、界面活性剤を含むアルカリ性溶液を用いて保護部9を除去すると共に、密着材5の表面の濡れ性を向上させる。なお、例えば波長が300nm以下の紫外線を照射することにより、保護部9を除去すると共に、密着材5の表面の濡れ性を向上させてもよい。
【0029】
続いて、図2Lに示すように、無電解めっき法により銅のシード膜11をビアホール7内及び密着材5上に形成する。
【0030】
次いで、図2Mに示すように、配線を形成する予定の領域に開口部22aが位置するレジストパターン22をシード膜11上に形成する。レジストパターン22の形成に当たっては、例えば、全面にレジスト剤を形成し、その後に開口部22aを形成する。
【0031】
その後、図2Nに示すように、電気めっき法により銅膜12を開口部22a内においてシード膜11上に形成する。
【0032】
続いて、図2Oに示すように、レジストパターン22を除去する。
【0033】
次いで、図2Pに示すように、銅膜12から露出しているシード膜11及び密着材5を、例えばスプレーエッチングにより除去する。この結果、シード膜11及び銅膜12を含む配線(導電膜)13が得られる。
【0034】
その後、図2Qに示すように、絶縁樹脂膜4、密着材5、ビアホール7及び配線13の形成等を繰り返す。更に、配線13の一部を露出する開口部15を備えたソルダレジスト膜14を形成し、開口部15内にバンプ等を形成する。また、支持基板1の裏面側についても同様の処理を行う。このようにして、多層回路基板を完成させる。
【0035】
このような製造方法では、デスミア処理の際に密着材5が箔6により覆われているため、密着材5が配線13の形成前に除去されることがない。従って、配線13をその直下の絶縁樹脂膜4に強固に固定することができる。また、デスミア処理の際に絶縁樹脂膜4及び密着材5に、乱反射を引き起こすような突起が形成されることもないため、精度の高いレジストパターン21を形成することが可能である。更に、箔6の除去の際には、保護部9をビアホール7の底部に設けているため、その下の回路3及び配線13の材料が箔6の材料と同様のものであっても、回路3及び配線13(導電膜)を保護することができる。
【0036】
なお、箔6の表面粗さに関し、10点平均粗さRzが1μm以下であることが望ましい。これは、箔6の表面粗さがそのまま絶縁樹脂膜4に転写されるためである。つまり、箔6の表面粗さが大きすぎると、絶縁樹脂膜4の表面粗さも大きくなってしまうからである。平均粗さRzが1μmを超える場合、絶縁樹脂膜4の表面粗さも1μmを超えてしまい、10μm以下の微細な配線パターンを形成する際に乱反射が生じる可能性がある。
【0037】
また、回路3及び配線13は、導電性等の観点から銅又は銅合金から構成されていることが好ましいが、その材料は限定されない。また、箔6の材料も限定されないが、上記の密着材5を用いる場合、銅又は銅合金が密着材5の生成の観点から用いやすい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3A乃至図3Fは、第2の実施形態に係る多層回路基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0039】
先ず、第1の実施形態と同様にして、ビアホール7の形成までの処理を行う(図2G)。次いで、図3Aに示すように、箔6上に保護フィルム31を貼り付ける。保護フィルム31としては、例えば紫外線の照射又は加熱により剥離力(粘着力)が低下するドライフィルムを用いる。
【0040】
その後、図3Bに示すように、炭酸ガスレーザを用いて、保護フィルム31にビアホール7と整合する開口部31a(第3の開口部)を形成する。このようにして、開口部31aが形成された保護フィルム31が箔6上に設けられる。
【0041】
続いて、銅と反応して撥水性を示す物質を含む溶液を用いて銅を含む回路3の表面処理を行う。この結果、図3Cに示すように、ビアホール7の底部において、回路3の表面に、撥水性を示す保護部39が形成される。銅と反応して撥水性を示す物質は特に限定されないが、図4に示すように、銅と共有結合する物質、例えばフェニルジアゾニウム塩(Diazonium salts)を用いることが望ましい。フェニルジアゾニウム塩としては、フェニル基、フェニルアルキル基、フッ素化フェニル基、及びフッ素化フェニルアルキル基を有する化合物が挙げられる。また、第1の実施形態と同様に、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、及び/又はベンゾチアゾール誘導体を用いてもよい。但し、チオール誘導体以外の化合物と銅との結合は、配位結合である。
【0042】
次いで、例えば、フォトマスク等を用いて保護フィルム31に紫外線を照射することにより、保護フィルム31の剥離力(粘着力)を低下させる。そして、図3Dに示すように、回路3上の保護部9を残したまま、保護フィルム31を剥離(除去)する。なお、100℃程度での加熱により保護フィルム31の剥離力(粘着力)を低下させてもよい。
【0043】
その後、図3Eに示すように、箔6を除去する。箔6として銅箔が用いられている場合には、例えば硫酸/過酸化水素水系のエッチング液を用いたウェットエッチングを行う。なお、回路3は保護部9により覆われているため、回路3はエッチングから保護される。
【0044】
続いて、図3Fに示すように、保護部39を除去する。保護部39の形成の際にフェニルジアゾニウム塩を用いている場合は、例えば酸素プラズマを照射するか、レーザを照射する。一方、保護部39の形成の際にチオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、又はベンゾチアゾール誘導体を用いている場合は、例えば、第1の実施形態のように、紫外線を照射する。
【0045】
次いで、第1の実施形態と同様に、界面活性剤を含むアルカリ性溶液を用いて密着材5の表面の濡れ性を向上させる。その後、第1の実施形態と同様にして、シード膜11の形成以降の処理を行う(図2L〜図2Q)。このようにして、多層回路基板を完成させる。
【0046】
このような第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、保護部39の形成にフェニルジアゾニウム塩を用いることができ、フェニルジアゾニウム塩は水に可溶であり、溶媒として水を用いることができるため、チオール誘導体等を用いる場合と比較して、その取り扱いが容易になる。更に、フェニルジアゾニウム塩を用いて形成された保護部39は、チオール誘導体等を用いて形成された保護部9と比較して、酸素によって分解されにくいため、撥水性を長期にわたって安定して維持することが可能である。
【0047】
なお、箔6上の保護部9のみを選択的に除去する処理が煩雑になる可能性があるが、第1の実施形態における保護部9の形成にフェニルジアゾニウム塩を用いることも可能である。
【0048】
次に、本願発明者らが実際に行った実験について説明する。
【0049】
(実験例1)
実験例1は、第1の実施形態に関するものである。実験例1では、先ず、回路が形成された支持基板上に熱硬化性エポキシ樹脂をラミネートした。更に、表面粗さRzが0.7μmで、表面に亜鉛及びクロムを含む密着材(クロメート処理により生成した膜)が設けられた圧延銅箔(日鉱金属社製のBHY、厚さ:18μm)を熱硬化性エポキシ樹脂上にラミネートした。そして、180℃、1時間の加熱により熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて絶縁樹脂膜を形成した。次いで、圧延銅箔上にドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3325、厚さ:25μm)をラミネートし、これに直径が90μmの開口部を形成した。その後、圧延銅箔の開口部から露出している部分を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。続いて、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmのビアホールを絶縁樹脂膜に形成した。次いで、ロームアンドハース社製のデスミア処理液を用いてデスミア処理を行った。
【0050】
その後、関東化学社製の1−デカンチオールのエタノール溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0051】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0052】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0053】
(実験例2)
実験例2も、第1の実施形態に関するものである。実験例2でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、ベンゾトリアゾール(大和化成社製のVERZONE Crystal)の水溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0054】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0055】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0056】
(実験例3)
実験例3も、第1の実施形態に関するものである。実験例3でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、2−ジブチルアミノ‐4,6−ジメルカプトトリアジン(三協化成社製のジスネットDB)のエタノール溶液(1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0057】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0058】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0059】
(実験例4)
実験例4も、第1の実施形態に関するものである。実験例4でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、関東化学社製のベンゾチアゾールのエタノール溶液(1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、フォトマスクを用いて圧延銅箔上の保護部(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、圧延銅箔上の保護部を選択的に除去した。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。
【0060】
次いで、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、ビアホールの底部に残っている保護部を除去すると共に、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0061】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0062】
(実験例5)
実験例5は、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例5でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例1〜4のような表面処理等を行うことなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0063】
この結果、圧延銅箔だけでなく、ビアホールの底部から露出している回路も除去されてしまった。
【0064】
(実験例6)
実験例6も、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例6でも、実験例1と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例2と同様に、ベンゾトリアゾール(大和化成社製のVERZONE Crystal)の水溶液(濃度:1重量%)を用いた表面処理を行うことにより、回路及び圧延銅箔の表面に保護部を形成した。続いて、実験例2のような紫外線の照射を行うことなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0065】
しかしながら、圧延銅箔の表面に保護部が残存したままであるため、圧延銅箔を除去することができなかった。このことは、その後に配線を形成しようとしても、密着材と無電解銅膜とを接触させることができず、良好な配線を形成することができないことを意味する。また、圧延銅箔が残存するため、所望のパターンの配線を得ることもできない。
【0066】
(実験例7)
実験例7は、第2の実施形態に関するものである。実験例7でも、先ず、回路が形成された支持基板上に熱硬化性エポキシ樹脂をラミネートした。更に、表面粗さRzが0.7μmで、表面に亜鉛及びクロムを含む密着材(クロメート処理により生成した膜)が設けられた圧延銅箔(日鉱金属社製のBHY、厚さ:18μm)を熱硬化性エポキシ樹脂上にラミネートした。そして、180℃、1時間の加熱により熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて絶縁樹脂膜を形成した。次いで、圧延銅箔上にドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3325、厚さ:25μm)をラミネートし、これに直径が90μmの開口部を形成した。その後、圧延銅箔の開口部から露出している部分を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。続いて、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmのビアホールを絶縁樹脂膜に形成した。次いで、ロームアンドハース社製のデスミア処理液を用いてデスミア処理を行った。
【0067】
その後、紫外線照射により剥離力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタック(登録商標)UVシリーズ 125UV)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4にp−メチルフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(p-methylphenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。
【0068】
次いで、フォトマスクを用いて保護フィルム(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、保護フィルムの剥離力を低下させた。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。その後、保護フィルムを除去(剥離)した。
【0069】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0070】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0071】
(実験例8)
実験例8も、第2の実施形態に関するものである。実験例8でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、加熱により粘着力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタックTEシリーズ PS−2011TE)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4にフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(phenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。次いで、積層体を100℃、10分間加熱することにより、保護フィルムの剥離力を低下させ、保護フィルムを剥離した。
【0072】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0073】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0074】
(実験例9)
実験例9も、第2の実施形態に関するものである。実験例9でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、加熱により粘着力が低下する保護フィルム(ソマール社製のソマタックUVシリーズ 125UV)を圧延銅箔上に貼り付け、この保護フィルムのビアホールに整合する位置に、炭酸ガスレーザを用いて、直径が70μmの開口部を形成した。続いて、ビアホールの底部において回路上に保護部を形成した。保護部の形成では、支持基板等からなる積層体を、0.1規定のH2SO4に3,4,5−トリフルオロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(3,4,5-trifluorophenyl diazonium tetrafluoroborate)を0.1モル濃度で溶解させて得た溶液に30分浸漬させ、その後、水洗浄を行った。次いで、フォトマスクを用いて保護フィルム(ビアホールの底部以外の保護部)に紫外線を5分間照射することにより、保護フィルムの剥離力を低下させた。なお、紫外線の照射では、低圧水銀灯(波長:254nm、出力:40W)を用いて、照射量を600mJ/cm2とした。その後、保護フィルムを除去(剥離)した。
【0075】
続いて、圧延銅箔を、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いてウェットエッチングすることにより除去した。次いで、酸素プラズマ(O2プラズマ)を照射することにより、ビアホールの底部の保護部を除去した。その後、界面活性剤を含むアルカリ性溶液(Atotech社製のクリーナセキュリガント902)を用いた表面処理を50℃、5分間行うことにより、密着材の濡れ性を向上させた。続いて、ロームアンドハース社製の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことにより、厚さが0.3μmの無電解銅膜をビアホール内及び密着材上に形成した。次いで、ドライフィルムレジスト(日立化成社製のRY3215、厚さ:15μm)を無電解銅膜上にラミネートし、これに線幅が10μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その後、ドライフィルムをマスクとして用いて、無電解めっき膜上に、電気めっき法により厚さが15μmの銅膜を形成した。続いて、ドライフィルムを除去し、更に、無電解銅膜及び密着材の電気めっき法で形成された銅膜から露出している部分も除去した。
【0076】
この結果、線幅が10μmで、厚さが約15μmのL/Sパターンの配線を高い精度で形成することができた。
【0077】
(実験例10)
実験例10は、本願発明の範囲から外れる方法についてのものである。実験例10でも、実験例7と同様に、デスミア処理までの処理を行った。その後、実験例7〜9のような保護フィルムを形成することなく、圧延銅箔を除去するために、硫酸/過酸化水素系エッチング液(三菱ガス化学製のSE−07)を用いたウェットエッチングを行った。
【0078】
この結果、圧延銅箔だけでなく、ビアホールの底部から露出している回路も除去されてしまった。
【0079】
(付記1)
導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付ける工程と、
前記箔に第1の開口部を形成する工程と、
前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する工程と、
レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する工程と、
前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける工程と、
前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する工程と、
前記保護部を除去する工程と、
前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【0080】
(付記2)
前記導電膜及び前記配線として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする付記1に記載の多層回路基板の製造方法。
【0081】
(付記3)
前記箔として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする付記1又は2に記載の多層回路基板の製造方法。
【0082】
(付記4)
前記密着材として、クロメート処理により前記箔の表面に生成した膜を用いることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0083】
(付記5)
前記保護部を設ける工程は、前記導電膜を構成する材料と反応して撥水性を示す物質を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0084】
(付記6)
前記物質として、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体及びベンゾチアゾール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることを特徴とする付記5に記載の多層回路基板の製造方法。
【0085】
(付記7)
前記保護部を設ける工程において、前記保護部を前記箔上にも設けることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0086】
(付記8)
前記保護部を設ける工程と前記箔を除去する工程との間に、
前記箔上の保護部に選択的に紫外線を照射して、前記箔上の保護部を除去する工程を有することを特徴とする付記7に記載の多層回路基板の製造方法。
【0087】
(付記9)
前記残渣を除去する工程と前記保護部を設ける工程との間に、前記箔上に、前記ビアホールの底部を露出する第3の開口部が設けられた保護フィルムを設ける工程を有し、
前記保護部を設ける工程と前記箔を除去する工程との間に、前記保護フィルムを除去する工程を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【0088】
(付記10)
前記保護部を設ける工程は、フェニルジアゾニウム塩を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする請求項9に記載の多層回路基板の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2A】第1の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2B】図2Aに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2C】図2Bに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2D】図2Cに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2E】図2Dに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2F】図2Eに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2G】図2Fに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2H】図2Gに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2I】図2Hに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2J】図2Iに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2K】図2Jに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2L】図2Kに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2M】図2Lに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2N】図2Mに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2O】図2Nに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2P】図2Oに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図2Q】図2Pに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3A】第2の実施形態に係る多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3C】図3Bに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3D】図3Cに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3E】図3Dに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図3F】図3Eに引き続き、多層回路基板を製造する方法を示す断面図である。
【図4】保護部39の形成の際の化学反応を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1:支持基板
2:ガラス繊維強化樹脂基材
3:回路
4:絶縁樹脂膜
5:密着材
6:箔
6a:開口部
7:ビアホール
8:スミア
11:シード膜
12:銅膜
13:配線
14:ソルダレジスト膜
15:開口部
21、22:レジストパターン
21a、22a:開口部
31:保護フィルム
31a:開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付ける工程と、
前記箔に第1の開口部を形成する工程と、
前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する工程と、
レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する工程と、
前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける工程と、
前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する工程と、
前記保護部を除去する工程と、
前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記導電膜及び前記配線として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記密着材として、クロメート処理により前記箔の表面に生成した膜を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記保護部を設ける工程は、前記導電膜を構成する材料と反応して撥水性を示す物質を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記物質として、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体及びベンゾチアゾール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項4に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項1】
導電膜上に、絶縁樹脂膜を介して、少なくとも片面に密着材が設けられた箔を、前記密着材を前記絶縁樹脂膜に接触させながら貼り付ける工程と、
前記箔に第1の開口部を形成する工程と、
前記密着材の前記第1の開口部と同じ位置又はその内側に第2の開口部を形成する工程と、
レーザを用いて、前記絶縁樹脂膜の前記第2の開口部と同じ位置又はその内側に前記導電膜の少なくとも一部を露出するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを形成する際に生じた残渣を除去する工程と、
前記導電膜の前記ビアホールから露出している部分に保護部を設ける工程と、
前記密着材を前記絶縁樹脂膜上に残したまま、前記箔を除去する工程と、
前記保護部を除去する工程と、
前記ビアホールを介して前記導電膜に接続される配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記導電膜及び前記配線として、銅又は銅合金からなるものを用いることを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記密着材として、クロメート処理により前記箔の表面に生成した膜を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記保護部を設ける工程は、前記導電膜を構成する材料と反応して撥水性を示す物質を前記導電膜の表面に接触させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記物質として、チオール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体及びベンゾチアゾール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項4に記載の多層回路基板の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【公開番号】特開2009−289909(P2009−289909A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139683(P2008−139683)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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