説明

多層基材

本発明は、上面と下面とを有する基材を含む記録媒体用の支持体に関し、該基材の上面上には少なくとも2層の樹脂層が含まれ、基材から最も離れている最外層には、炭素含量がC3以上のアルファ−オレフィンのポリマー、炭素含量がC3以上のアルファ−オレフィンのコポリマー、または炭素含量がC3以上のアルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマー、またはこれらのアルファ−オレフィンのポリマーもしくはアルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマーを少なくとも50%含む混合物が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材材料、さらに詳しくは、記録用途において使用するための樹脂コーティングされた基材材料に関する。本発明はさらに、そのような基材材料を含む記録媒体(recording medium)にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体において使用される基材材料は、その上に少なくとも1層の樹脂層が設けられた基材を含む。その樹脂層の上面には、使用される記録方法に応じた受像媒体(receiving medium)、たとえば、(通常の)写真用途であればエマルション層、あるいはインクジェット用途であれば(細孔のある)インク受容層が適用される。
【0003】
記録媒体の一例として、紙基材に、ポリエチレン等のポリマー樹脂の層がコーティングされている写真画像用の記録媒体がある。この樹脂層の上面には、写真用エマルションが塗布され、そこに画像が形成される。
【0004】
一般に、画像形成方法のための記録媒体、特に印画紙用の記録媒体は、溶融押出しコーティング法または共押出法により製造される。(共)押出コーティング法においては、通常は、(1層または複数の)溶融ポリマー層が、270℃を超える高温でスロットダイから押出成形される。この(1層または複数の)ポリマー層は、溶融状態で、2本のローラーの隙間からコーティングされる基材と共に引き出される。それらのローラーの内の一つである冷却ローラーを冷却して、その(1層または複数の)ポリマー層を固化させる。もう一方のローラーであるニップローラーは、通常その周辺部に圧縮可能な材料の層が設けられており、これにより圧力を加えて、基材と(1層または複数の)ポリマー層とを接着させる。
【0005】
樹脂表面の外観は基材の重要な側面であり、滑らかで光沢性にすぐれていなければならない。さらに、基材上に樹脂を溶融押出しコーティングする際に、冷却ロールの回転に伴って空気がトラップされることにより生じるクレーター欠陥(ピットとも呼ばれる)が樹脂表面に多くあり過ぎない、という点も重要である。ピットの数が多くなると基材の外観が損なわれ、そのような基材を使用して作製される記録媒体の品質も低下する。
【0006】
ピットの数は、押出しコーティング法におけるライン速度を上げると増加する。このため、記録媒体用基材の製造における生産速度や生産性を向上させるのが困難であった。
【0007】
また、ピットの数は、基材の樹脂層の合計厚みが薄くなると増加する。したがって、記録媒体用基材のコストを低減させるのも困難であった。樹脂コーティングされた基材のクレーター欠陥の数は、樹脂層の溶融温度を、(1層または複数の)樹脂層を基材に確実に接着させるのに必要な温度よりも高い温度に上げることによって、減少させることが可能である。しかしながらこの方法は、たとえばダイの垂れ落ち(die drool)の原因となりうる等、より多くの欠陥を生じる危険を伴うために、一般的には好ましくない。これらの欠陥によって、基材の外観の劣化が生じたり、解決のために生産の停止が必要となったりする。
【0008】
従来より、上記のようなクレーター欠陥問題について、各種の解決法が提案されている。
【0009】
欧州特許出願公開第285146号明細書には、冷却ローラー上の空気を、押出加工された樹脂フィルムからより抜けやすいガスと置き換えることによって、たとえば200m/分のような高速の押出ライン速度において、クレーター欠陥の数を減少させるための方法が記載されている。
【0010】
特開平11−352638号公報には、たとえば200m/分のような高速の押出ライン速度におけるまた別な方法が記載されており、そこでは、押出機から出てくる樹脂フィルムを基材の材料と共にニップローラーと冷却ローラーとの間を通過させる際に、ニップにおける樹脂フィルムの温度を高くしている。
【0011】
欧州特許出願公開第1130460号明細書には、たとえば300m/分のような高速の押出ライン速度におけるまた別な方法が記載されており、そこでは、(1層または複数の)ポリマー樹脂層と押出コーティングをする前に、紙基材を加熱している。さらに他の特許出願においても、クレーターを減少させるための方法が提案されているが、技術的に複雑であったり、提案されたシステムの製造装置が損傷を受ける危険性が内在していたり、基材を製造する際の製造工程数が増えたりするといった大きな問題点があった。そのため、たとえば特開平11−352637号公報においては、第一のニップの後に、少なくとも一度は(1本または複数の)加熱ローラーを用いて加圧するプロセスが新たに設けられており、米国特許第4,994,357号明細書においては、押出コーティングの際に、(1層または複数の)最高200kg/cmまでの線圧力のもとで溶融樹脂層を冷却ローラーとバックアップローラーの間を通過させるプロセスが記載されており、また特開昭59−198451号公報においては、2層逐次押出コーティング法(double consecutive extrusion coating)により基材を作製するプロセスが記載されている。
【0012】
欧州特許出願公開第183467号明細書には、写真用ベース用紙の剛性の改良を目的として、最も外側の樹脂層に極めて剛直なポリマー、特にポリカーボネートを使用することが記載されている。このポリカーボネートを使用することにより、クレーター欠陥の数を減らすことが可能である。
【0013】
欧州特許出願公開第952483号明細書には、基材用紙に粘度および/または他の顔料をベースとした顔料コーティングをさらに施すことにより、樹脂コーティングされた基材用紙におけるクレーター欠陥を減少させることが記載されている。記録媒体のための基材材料を得る技術においては、基材上のクレーター欠陥を充分に低いレベルにとどめながら、媒体の低コスト、高速での生産が依然として求められている。
【0014】
欧州特許出願公開第880066号明細書、欧州特許出願公開第1003076号明細書、英国特許出願公開第2343140号明細書、米国特許第5,968,695号明細書、欧州特許出願公開第1306721号明細書、欧州特許出願公開第1079272号明細書、欧州特許出願公開第880067号明細書、独国特許出願公開第10048217号明細書、英国特許出願公開第2359897号明細書、英国特許出願公開第2343 865号明細書、英国特許出願公開第2325749号明細書、米国特許第6,218,059号明細書、米国特許第6,043,009号明細書、米国特許第6,040,036号明細書、米国特許第6,030,742号明細書、米国特許第6,007,665号明細書、米国特許第6,004,732号明細書、米国特許第955,239号明細書、および米国特許第5,633,041号明細書には、ボイド開始物質を含むポリオレフィンシートを2軸延伸させることにより得られる、ミクロボイド化層を含む写真部材が記載されている。したがって、これら公知の写真部材では、最上層に延伸ポリマーシートが使用されている。基材上に、一工程で樹脂層を設けることが可能であるのは、望ましいことであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、良好な表面性状を有する、すなわちクレーター欠陥の少ない、記録媒体用の基材を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、表面性状を犠牲にすることなく、溶融押出コーティングの際に極めて高いライン速度で製造することが可能な記録媒体用の基材を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、良好な表面性状を維持しながら、表面積あたりの樹脂の重量として表されるポリマー樹脂の厚みが薄く、高い押出加工速度で製造することが可能な、記録媒体用の基材を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、比較的低い樹脂溶融温度で、優れた表面性状を有する、すなわち押出コーティングの際のライン速度が高速であってもクレーター欠陥が最小限となる、記録媒体用の基材を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、比較的低いニップ圧力で、優れた表面性状を有する、すなわち押出しコーティングの際のライン速度が高速であってクレーター欠陥が最小限となる、記録媒体用の基材を提供することである。
【0020】
本発明の上述およびその他の目的は、3個以上の炭素原子を有するアルファ−オレフィン(「C3+−アルファ−オレフィン」)のポリマーをその最外層に含む、記録媒体用の基材を提供することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、上面と下面とを有する基材を含む支持体であって、少なくとも該上面上に、実質的に非配向の少なくとも2層の樹脂層が設けられ、そのうちの最外層(すなわち、基材から最も離れた層)には、少なくとも3個の炭素原子のアルファ−オレフィンモノマー(C3+−アルファ−オレフィン)を含むポリマーが含まれることを特徴とする支持体を提供する。
【0022】
本明細書において上面とは、具体的には、記録媒体のような受像媒体が設けられる面のことである。
【0023】
本明細書において「非配向樹脂」という用語は、その樹脂が、押出コーティング工程の後で、1方向または2方向に延伸されていない、ということを意味する。「実質的に非配向の」という用語は、その物質の性状を変化させる(たとえばミクロボイドを起こさせる)ことを目的とした延伸がなされていない、ということを意味する。延伸は、全く実施されていないことが好ましい。
【0024】
本発明によって、受容し難いクレーター欠陥を有さず、高速のライン速度で製造することのできる、記録媒体用の支持体を提供することが可能となった。さらに、本発明の支持体は、高速で、表面積あたりの樹脂重量として表されるポリマー樹脂の厚みが薄いものとして製造することができる。本発明はさらに、クレーター欠陥が少なく、比較的低い樹脂溶融温度で、溶融押出コーティングの際に高速のライン速度で製造することのできる記録媒体用の支持体を提供する。本発明はさらに、容易に入手でき、加工しやすく、低コストのポリオレフィン原料物質を用いて、平滑度および光沢性のすぐれた記録媒体用の支持体を提供する。本発明の支持体は、通常使用されるよりも低いニップ圧力で製造可能であるため、冷却ロールを損傷する危険性が低下し、その寿命を長くすることができる。
【0025】
基材、より具体的には紙基材が、その上面に少なくとも2層の樹脂層を設けられており、そのうちの基材から最も離れた最外層が顔料非含有(non−pigmented)の低密度ポリエチレン層(オートクレーブタイプまたは管式反応器タイプ)を含む場合には、顔料含有(pigmented)低密度ポリエチレンの単一層と比較したときのクレーター欠陥の発生において、統計的に有意な差はみられない。中密度ポリエチレンを使用した場合には、クレーター欠陥の発生がやや増加する。エチレンと、酢酸ビニル、メタクリル酸、アイオノマーなどの非オレフィン系モノマーとからなるコポリマーを使用した場合には、クレーター欠陥の発生がやや減少する。紙基材の顔料非含有最外層の樹脂を、低密度ポリエチレンから他の低剛性ポリエチレンに変化させた場合もまた、顔料非含有低密度ポリエチレンの単一層を用いた場合に比較して、クレーター欠陥の発生を大きく減少させるには至らない。低剛性ポリエチレンとは、曲げ剛性率が2.0GPa未満の樹脂であって、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどから選択することができる。
【0026】
線状低密度ポリエチレン、たとえば、チーグラー・ナッタ線状低密度ポリエチレンまたはバイモーダル線状低密度ポリエチレンを含む樹脂の外層が用いられていると、押出コーティングの際に冷却ロールからの樹脂層のロール離れ(release)の困難性が増す可能性があり、これによって支持体の表面に目に見える欠陥が生じたり、さらに悪い場合は、ウェブの破断(web break)を引き起こす可能性もある。支持体の最外層中の線状低密度ポリエチレンの比重(specific density)が低くなるほど、このロール離れの問題がますます深刻になる。さらに、支持体の最外層に低密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの混合物を適用しても、支持体の表面上でのクレーター欠陥の発生には変化はない。
【0027】
支持体の最外層の樹脂を、低密度ポリエチレンから他の低剛性ポリエチレン、すなわち、チーグラー・ナッタ高密度ポリエチレンまたはバイモーダル高密度などの高密度ポリエチレンに代えた場合、十分に顔料を含んだ(fully pigmented)低密度ポリエチレンの単一層を用いた場合、あるいは、低密度もしくは線状低密度ポリエチレン、またはそれらの樹脂の混合物を最外層に用いた場合と比較して、クレーター欠陥の発生は大幅に増加するが、最外層に高密度ポリエチレンを用いれば、冷却ローラーからの樹脂層のロール離れについては改良される。この効果は、支持体、特に構造を有する表面を有する支持体を製造する際に、ロール離れに問題が起きる場合があればいつでも、有効に利用することができる。低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物を支持体の最外層に適用すると、低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンの含有量が増えるに従って、支持体表面上におけるクレーター欠陥の発生が減少する。
【0028】
驚くべきことには、支持体の最外層の樹脂を低密度ポリエチレンから、特にC3+−アルファ−オレフィン、たとえば、ポリプロピレン、ポリブテン−1をモノマーとして得られた他の低剛性ポリマーなどに代えると、顔料を含む低密度ポリエチレンの単一層を用いた場合と比較して、クレーター欠陥の発生が劇的に減少することが見出された。本発明は、この知見に基づき、なされたものである。
【0029】
本発明のC3+−アルファ−オレフィンのポリマー(この用語にはコポリマーも含まれる)としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリ−ブテン−1、ポリ−(3−メチルブテン−1)、ポリ−ペンテン−1、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリ−(4,4−ジメチルペンテン−1)、ポリ−(ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。本発明の好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、ポリプロピレンおよびポリ−ブテン−1から選択される。本発明の特に好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、ポリプロピレン、たとえば、チーグラー・ナッタポリプロピレン、メタロセンポリプロピレン、高溶融強度ポリプロピレン、およびそれらの組合せから選択される。
【0030】
本発明の層の最外層のアルファ−オレフィンのポリマーのメルトフローインデックス値は、本発明の製造条件下において、最外層と、最外層の下にある層との間で界面的な不安定性がないか、あっても受容可能なレベルであり、また、層のカプセル化(encapsulation)がないか、あっても受容可能なレベルとなるように選択することができる。
【0031】
さらなる利点として、最外層にポリプロピレンポリマーを使用することによって、支持体の製造時における冷却ロール離れ、ならびに前記支持体の光沢および耐摩耗性が改良されることが挙げられる。
【0032】
本発明のまた別な実施態様においては、その最外層に、C3+−アルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマーが含まれていてもよい。この実施態様においては、C3+−アルファ−オレフィンのモノマーは、プロピレン、ブテン−1,3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、4,4−ジメチルペンテン−1、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネンその他、およびそれらの組合せから選択するのが好ましい。本発明の好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、プロピレンとエチレンとの二元コポリマー、ブテン−1とエチレンとのコポリマー、プロピレンとブテン−1とのコポリマー、または、エチレンとプロピレンとブテン−1とのターポリマーから選択される。本発明の特に好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、プロピレンとエチレンとのコポリマーから選択される。支持体の最外樹脂層中のコポリマーのエチレン含量が高くなると、この場合もまた、クレーター欠陥の発生が増加する。したがって、クレーター欠陥とその他所望の性質との間の折り合いをつけるという実際的な観点から、C3+−アルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマーには、少なくとも30モル%のC3+−アルファ−オレフィンモノマーが含まれているのが好ましい。
【0033】
本発明の層の最外層におけるアルファ−オレフィンのコポリマーのメルトフローインデックス値は、本発明の製造条件下において、最外層と、最外層の下にある層との間で界面的な不安定性がないか、あっても受容可能なレベルであり、また、層のカプセル化(encapsulation)がないか、あっても受容可能なレベルであるように選択することができる。
【0034】
さらに、本発明においては、支持体の最外層に上述のアルファ−オレフィンのポリマー(コポリマーを含む)と、1種以上のポリエチレン樹脂との混合物が含まれていてもよい。本発明の好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、ポリプロピレンおよびポリ−ブテン−1から選択される。本発明の最も好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、ポリプロピレンである。本発明の好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのコポリマーは、プロピレンとエチレンとのコポリマー、またはブテン−1とエチレンとのコポリマーから選択される。本発明の特に好ましい実施態様においては、アルファ−オレフィンのポリマーは、プロピレンとエチレンとのコポリマーから選択される。
【0035】
最外樹脂層において、上述のアルファ−オレフィンのポリマー(コポリマーを含む)とその他の樹脂との混合物を使用することは、さらに好ましい。この「その他の樹脂」は、好ましくはポリエチレンである。この実施態様においては、そのポリエチレンは、1種以上の低密度ポリエチレン樹脂から選択するのが好ましい。上述のC3+−アルファ−オレフィンポリマーと1種以上のポリエチレン樹脂との混合物は、ドライブレンド混合物であっても、あるいはメルトブレンド混合物であってもよい。上述のアルファ−オレフィンのポリマーと、ポリエチレンまたはその他の樹脂との混合物を使用する場合、押出機中でより効率の高い混合スクリュー、たとえば無秩序混合(chaotic mixing)部材または延伸混合(elongational mixing)部材を有するスクリューを使用するか、あるいはオフラインまたはオンラインの「ピギーバック(piggy back)」2軸スクリュー押出機またはバンバリー(Banbury)ミキサー、ブス(Bush)コニーダーなどその他の混合装置で調製された、アルファ−オレフィンのポリマーまたはコポリマーとポリエチレンとの組成物を使用することによって、クレーター欠陥の問題をさらに改善することが可能である。
【0036】
支持体の最外樹脂層中のアルファ−オレフィンのポリマーまたはコポリマーとポリエチレンとの混合物におけるポリエチレン含量が増加すると、この場合もまた、クレーター欠陥の発生が増加する。したがって、クレーター欠陥とその他所望の性質との間の折り合いをつけるという実際的な観点から、このような混合物には、重量基準で少なくとも50%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは90%以上の前記アルファ−オレフィンのポリマーまたはコポリマーが含まれるようにすべきである。
【0037】
本発明の層の最外層におけるアルファ−オレフィンのポリマーもしくはアルファ−オレフィンのコポリマーと、1種以上のポリエチレン樹脂との混合物の流動特性は、本発明の製造条件下において、最外層と、最外層の下にある層との間で界面的な不安定性がないか、あっても受容可能なレベルであり、また、層のカプセル化がないか、あっても受容可能なレベルであるように選択される。
【0038】
本発明の支持体の最外層のコーティング重量には、9g/m2の支持体の最外層のコーティング重量であってもクレーター欠陥の発生の減少をもたらすことが実験的に確認されているように、原則として制限はない。本発明の支持体を、たとえば写真の印刷用紙用の支持体として使用する場合、顔料を含まない外側層が用いられていると、支持体上での画像の鮮鋭度の低下がもたらされるが、この鮮鋭度の低下は、支持体の最外層のコーティング重量が増加するにつれて大きくなる。さらに経済的な理由からも、アルファ−オレフィンのポリマー(あるいはそれらと1種以上のポリエチレン等の他の樹脂との混合物の形態で)を、コーティング重量を多くして使用するのは一般に好ましくない。したがって、最外層のコーティング重量は、好ましくは3g/m2以下、より好ましくは1g/m2以下である。実際的な観点からは、0.2g/m2の量を最小限としてコーティングが存在するのが好ましい。
【0039】
本発明の支持体の最外層は、必要に応じて、その支持体をたとえば写真の印刷用紙用の支持体として使用する場合の画像鮮鋭度を改良したり、支持体の白色度や不透明度を改良したりするために、1種以上の白色不透明顔料を用いて着色してもよい。この白色不透明顔料は、たとえばアナターゼ型二酸化チタン、ルチル二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンなど当業者公知の各種の白色顔料、およびそれらの各種混合物から選択することができる。本発明の支持体の最外層における白色顔料のタイプとしては、アナターゼ型またはルチル型二酸化チタン、あるいはそれら二酸化チタン型顔料の混合物を含んでいるものが好ましい。アナターゼ型またはルチル型二酸化チタンの粒径は、0.1μm〜0.4μmであることが好ましく、支持体の最外層における白色顔料の濃度が最外層の全重量を基準にして20重量%を超えないことが好ましい。量が多すぎると、ダイの垂れ落ちを招く恐れがあり、それによって、支持体の外観の劣化や、その修正のために製造を中断する必要が生じる。白色顔料が存在している場合の量は、少なくとも5%である。
【0040】
本発明の支持体の最外層には、1種以上の他の物質、たとえば、樹脂コーティングされた基材に用いられる公知の添加剤が含まれていてもよい。具体的には、追加量(少量)の1種または複数の着色染料もしくは顔料および/または青色化剤、たとえば、ウルトラマリンブルーおよび/もしくはバイオレット、コバルトブルー、ホスフォリックオキシドコバルト、キナクリドン顔料ならびにそれらの混合物が最外層に含まれていてもよい。1種以上の蛍光増白剤、最も好ましくはビス−ベンゾオキサゾールタイプの蛍光増白剤が存在していてもよい。1種以上の抗酸化剤、たとえば、ヒンダードフェノールタイプの抗酸化剤、ホスファイトタイプの抗酸化剤、ラクトンタイプの抗酸化剤およびそれらの混合物が存在していてもよい。また、最外層には、耐電防止剤、ヒンダードアミン光安定剤などのUV安定剤および/または光安定剤、ニッケルキレート、置換ベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾール、ステアリン酸金属塩やフルオロポリマーなどの冷却ロール剥離剤、ポリアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、樹脂コーティングされた基材に公知の添加剤として使用されるその他の物質、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される、1種以上の添加剤が含まれていてもよい。さらに、本発明の支持体の最外樹脂層には、支持体を写真印刷用紙の製造に用いる場合のゼラチン層などの、最外樹脂層の表面上に設けられる1層以上のコーティング層の接着性を向上させる成分が含まれていてもよい。最外樹脂層の表面上に設けられる1層以上のコーティング層の接着性を向上させる成分としては、当業者には公知の、たとえば一方のモノマー成分としてエチレンまたはポリプロピレン、他方のモノマー成分としてアクリル酸、アクリルエステル、メタクリル酸、メタクリルエステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アイオノマーおよび類似物を用いた、接着性促進のために変性されたコポリマーおよびターポリマーのような、各種適切な成分から選択することができる。
【0041】
あるいは、(記録媒体を得るための)最外樹脂層の記録層への接着性は、当業者に公知のコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、加熱処理もしくは化学的プライマー処理などの表面処理方法、またはこれら表面処理方法の組合せにより、改良することができる。
【0042】
本発明の支持体の第二の樹脂層は、通常、8g/m2〜50g/m2の間、好ましくは9g/m2〜25g/m2のコーティング重量を有している。本発明の第二の樹脂層における樹脂のタイプは、当業者に公知の各種のタイプの(押出しコーティング)樹脂から選択することができる。好ましくは、本発明の第二の樹脂層における樹脂は、ポリオレフィンまたはオレフィンコポリマーまたはオレフィン系ポリマーの混合物である。本発明の好ましい実施態様においては、第二の層に使用される樹脂のタイプは、ポリエチレン樹脂、または複数の異なるポリエチレン樹脂の混合物である。本発明の最も好ましい実施態様においては、第二の層に使用される樹脂のタイプは、低密度ポリエチレン樹脂または複数の異なる低密度ポリエチレン樹脂の混合物である。
【0043】
本発明の各種の層における樹脂または樹脂混合物は、その最終製品の目的に応じて、それぞれ他と独立に選択することができる。本発明の第二の層における樹脂または樹脂混合物のメルトフローインデックスの値は、本発明の製造条件下において、第二の層と、第二の層に隣接する(1層または複数の)層との間で界面的な不安定性がないか、あっても受容可能なレベルであり、また、層のカプセル化がないか、あっても受容可能なレベルであるように選択される。
【0044】
本発明の第二の層には、支持体の白色度および不透明度を向上させるため、あるいは、この支持体を印画紙用の支持体として使用する場合には画像の鮮鋭度を上げるために、1種または複数の白色の不透明顔料をさらに含んでいてもよい。この白色不透明顔料は、たとえばアナターゼ型二酸化チタン、ルチル二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンなどのような当業者公知の各種の白色顔料、およびそれらの混合物から選択することができる。本発明の特に好ましい実施態様においては、本発明の支持体の第二の層中の白色顔料のタイプには、アナターゼ型もしくはルチル型二酸化チタン、またはそれらの顔料の混合物が含まれる。アナターゼ型またはルチル型二酸化チタンの粒径は0.1μm〜0.4μmの間であることが好ましく、支持体の第二層における白色顔料の濃度は第二層の全重量を基準にして35重量%を超えないことが好ましい。極めて良好な白色度を得るためには、アナターゼ型二酸化チタンを使用することが好ましい。最外層における顔料のタイプと、第二の層における顔料のタイプは、互いに独立して選択してもよい。たとえば、アナターゼ型の二酸化チタンを一方の層に使用し、ルチル型の二酸化チタンを別の層で使用してもよい。
【0045】
場合によっては、本発明の支持体の第二の樹脂層には、さらに1種または複数の顔料が含まれていてもよく、そのようなものとしてはたとえば真珠箔顔料および/または(少量の)1種または複数の着色染料または顔料および/または青色化剤、たとえば、ウルトラマリンブルーおよび/もしくはバイオレット、コバルトブルー、ホスフォリックオキシドコバルト、キナクリドン顔料、ならびにそれらの混合物が挙げられる。さらに、最も好ましくはビス−ベンゾオキサゾールタイプの蛍光増白剤、ヒンダードフェノールタイプ、ホスファイトタイプ、ラクトンタイプなどの抗酸化剤およびそれらの混合物、半導性金属酸化物粒子などの耐電防止剤、ヒンダードアミン光安定剤などのUV安定剤および/または光安定剤、ニッケルキレート、置換ベンゾフェノンもしくはベンゾトリアゾール、および樹脂コーティングされた記録媒体用の公知の添加剤として使用されているその他の物質からなる群より選ばれる、1種または複数の添加剤を選択してもよい。
【0046】
加えて、本発明の支持体の第二の樹脂層には、たとえば、当業者に公知のように、第二の層と最外樹脂層との接着性の改良、第二の樹脂層ともしあれば第三の樹脂コーティング層との接着性の改良、あるいは、第二の樹脂層が最も下の樹脂層であって基材と接触している場合には基材との接着性の改良を目的とする、1種または複数の接着性向上添加剤が含まれていてよい(好適な添加剤の例としては、たとえば米国特許第5,466,519号明細書を参照されたい)。所望により、最も下の樹脂層の基材に対する接着性は、最も下の樹脂層にオゾン溶融処理を施すことによって改良することも可能である。
【0047】
あるいは、当業者に公知のように、第二の樹脂層と最外樹脂層との間の接着性の改良、第二の樹脂層ともしあれば第三の樹脂コーティング層との間、あるいは、第二の樹脂層が最も下の樹脂層であって基材と接触している場合には基材との第二の樹脂層の接着性の改良と目的として、結合層(tie layer)を適用することもできる。結合層には、酸無水物変性ポリプロピレン、酸無水物変性ポリエチレン、酸無水物変性エチレン酢酸ビニル、酸無水物変性エチルメチルアクリレート、酸無水物変性エチルアクリル酸などの酸無水物変性ポリオレフィン、および/または一方のモノマー成分としてエチレンまたはポリプロピレン、ならびに、アクリル酸、アクリルエステル、メタクリル酸、メタクリルエステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アイオノマー、およびそれらの混合物を用いて、接着性を向上させるために変性したコポリマーおよびターポリマーのようなその他の物質から選択される1種または複数の物質が含まれていてよい。結合層が最も下の樹脂層であるような場合には、所望により結合層にオゾン溶融処理を施すことで、樹脂の基材に対する接着性を改良することができる。
【0048】
本発明の第二の樹脂層を基材と接触状態にある最も下の樹脂層として使用する場合には、その溶融温度は、接着性向上添加剤および/または結合層を必要せずに第二の層の基材に対する接着性が充分に高いレベルとなるように選択することができる。そのためには、溶融温度は、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも320℃である。
【0049】
本発明の第二の層の下に第三の層を適用することは、本発明の第二の層が二酸化チタンまたはその他の顔料を高濃度で含む場合に、ダイリップストライプの発生を防止する上で有利となりうる。本発明の第三の層は、1g/m2〜50g/m2の間、好ましくは2g/m2〜25g/m2の間のコーティング重量とすることができる。本発明の好ましい実施態様においては、第三の層に使用される樹脂のタイプは、ポリオレフィンタイプまたはオレフィンコポリマー、または各種のオレフィン系ポリマータイプ樹脂の混合物である。本発明の特に好ましい実施態様においては、第三の層に使用される樹脂のタイプは、低密度ポリエチレン樹脂または複数の異なる低密度ポリエチレン樹脂の混合物である。この第三の層の樹脂または樹脂混合物は、他の層の樹脂とは独立して選択することができ、その最終製品の目的に応じて、それらが異なっていてよい。本発明の第三の層における樹脂または樹脂混合物のメルトフローインデックスの値は、本発明の製造条件下において、第三の層と、第三の層に隣接する(1層または複数の)樹脂層との間で界面的な不安定性がないか、あっても受容可能なレベルであり、また、層のカプセル化がないか、あっても受容可能なレベルであるように選択することができる。
【0050】
さらに、本発明の第三の層には、好ましくは白色の不透明顔料または白色の不透明顔料の混合物を、最も好ましくは粒径が0.1μm〜0.4μmの間のアナターゼ型もしくはルチル型の二酸化チタンまたはそれらの顔料の混合物を含む。第三の層における白色顔料の濃度は、第三の層の全重量を基準にした場合、20重量%を超えないことが好ましく、15重量%を超えないことが最も好ましい。第三の層における顔料のタイプと、第二の層における顔料のタイプは、互いに独立して選択してもよい。したがって、アナターゼ型の二酸化チタンを一方の層に使用し、ルチル型の二酸化チタンを別の層で使用してもよい。場合によっては、第三の層には、追加量(少量)の1種または複数の着色染料もしくは顔料および/または青色化剤、たとえば、ウルトラマリンブルーおよび/もしくはバイオレット、コバルトブルー、ホスフォリックオキシドコバルト、キナクリドン顔料ならびにそれらの混合物が含まれていてもよい。さらに、最も好ましくはビス−ベンゾオキサゾールタイプの蛍光増白剤、ヒンダードフェノールタイプ、ホスファイトタイプ、ラクトンタイプなどの抗酸化剤およびそれらの混合物、半導性金属酸化物粒子などの耐電防止剤、ヒンダードアミン光安定剤などのUV安定剤および/または光安定剤、ニッケルキレート、置換ベンゾフェノンもしくはベンゾトリアゾール、および樹脂コーティングされた記録媒体のための公知の添加剤として使用されているその他の物質からなる群より1種または複数の添加剤が選択されてもよい。さらに、本発明の支持体の第三の樹脂層には、第三の層の第二の隣接する樹脂層に対する接着性の改良、第三の樹脂層の基材に対する接着性の改良、あるいは、最も下の樹脂が結合層である場合には、第三の樹脂層の結合層に対する接着性の改良を目的として、当業者に公知の、接着性向上添加剤が含まれていてもよい。このような接着性向上添加剤の例は、米国特許第5,466,519号明細書に開示されているが、それらのみに限定されない。
【0051】
第三の層と隣接する第二の層および/または基材との間の接着性を向上させるために、第三の層の上および/または下に結合層を使用すること、および/または第三の層中に接着性向上添加剤を使用することができる。結合層には、たとえば酸無水物変性ポリプロピレン、酸無水物変性ポリエチレン、酸無水物変性エチレン酢酸ビニル、酸無水物変性エチルメチルアクリレート、酸無水物変性エチルアクリル酸などの酸無水物変性ポリオレフィン、および/または一方のモノマー成分としてエチレンまたはポリプロピレン、ならびに、アクリル酸、アクリルエステル、メタクリル酸、メタクリルエステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アイオノマー、およびそれらの混合物を用いて、接着性を向上させるように変性されたコポリマーおよびターポリマーのような、その他の物質が含まれていてよい。
【0052】
あるいは、本発明の第三の樹脂層を、基材と接触状態にある最も下の樹脂層として使用する場合には、その溶融温度を選択することにより、高価な接着性向上添加剤および/または結合層を必要とせずに、第三の層の基材に対する接着性が充分に高いレベルとなるようにすることができる。このためには、溶融温度を少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも320℃とすべきである。
【0053】
所望により、その樹脂層の基材に対する接着性は、最も下の樹脂層にオゾン溶融処理を施すことによって改良することも可能である。
【0054】
上面と下面とを有する基材を含む本発明の支持体は、その下面の上に、たとえば、耐水性、帯電防止性、抗カール性、抗ブロッキング性、抗スリップ性、スプライス強度、および/または印刷(たとえば、有用な情報を含むバーコードまたはその他の表示)の受容および保持性など、達成すべき性質に応じて、少なくとも1層の樹脂層および/または少なくとも1層の他のコーティング層を備えていてもよい。本発明の支持体の使用目的が写真の印刷用紙用の基材、またはインクジェット用紙用の基材である場合には、(1種または複数の)ポリエチレン樹脂、最も好ましくは低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物を用いて下面を押出コーティングすることが好ましい。このポリマー層の上部には、帯電防止性コーティング、抗粘着性コーティングなどが設けられてもよい。
【0055】
本発明の支持体の基材は、当業者に公知の各種の基材から選択することができるが、そのようなものとしては、高品質天然パルプを含む原料紙ベース、たとえば、印画紙ベース、顔料コート紙ベース、合成紙ベース、またはポリマーシートベースなどが挙げられる。本発明の基材は、好ましくは80〜350g/m2の重量、最も好ましくは120〜250g/m2の基材重量を有する、高品質天然パルプを含む原料紙ベースまたは顔料コート紙ベースである。本発明の記録媒体の基材として顔料コート紙ベースを使用する場合、その本発明の樹脂層を受ける側の平均表面粗さ(Ra)は、ピットまたはクレーター欠陥のない表面を維持しつつも、従来技術、たとえば欧州特許出願公開第1126081号明細書に規定されているそれよりも高くすることが可能である。したがって、顔料コーティング層重量の増大、および/または多重コーティング層の使用、および/または顔料コート紙基材の製造におけるスーパーカレンダリング工程を避けることができ、顔料コート紙ベースの製造コストを大幅に抑制することができる。従来技術によれば、ポリマー樹脂層を塗布する際のクレーターなどの欠陥などの発生を防止するためには、基材に用いられる紙ベースの平均表面粗さRaは、1μm未満であることが必要であるとされている。本発明においては、基材に顔料コート紙ベースを使用する場合の顔料コート紙の樹脂層を受ける側の平均表面粗さを1より大きくすることができる。平均表面粗さは2.0μm未満であるのが好ましく、1.5μm未満であればより好ましく、1.0μm未満であれば最も好ましい。
【0056】
本発明において基材に原料紙ベースを使用する場合、その基材の平均表面粗さは、1より大きくすることが可能であるが、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.0μm未満である。
【0057】
したがって、本発明において基材として顔料コート紙ベースを使用する場合には、紙ベースの上にバインダーおよび顔料の水性分散液として塗布された顔料コーティングの全乾燥コーティング重量は、好ましくは60g/m2未満、最も好ましくは30g/m2未満で存在させる。本発明によれば、クレーター欠陥の数を抑制する性能に優れることから、顔料コーティングの全コーティング重量をさらに低くすることも可能である。顔料コート基材の白色度は、顔料化コーティングにおいて、白色顔料および/または青色染料および/または蛍光増白剤を添加することにより、調節することが可能である。光沢は、カレンダリングおよび/またはスーパーカレンダリングにより、および適切な(1種または複数の)顔料のタイプおよび粒径および粒径分布を選択することにより、必要とされるレベルに調節することができる。本発明のための顔料コート紙基材において使用することが可能な顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、マグネシウムアルミニウムシリケート、アルミニウムオキシドヒドロキシド、スチレン・アクリル系コポリマー、およびそれらの組合せが一般的である。顔料の粒径は特に制限はないが、粒径分布が狭いほど、接着性または光沢を得る上でメリットがある。粒子の少なくとも70%が1μmよりも小さい粒径を有し、少なくとも40%が0.35〜0.8μmの間の粒径を有するような顔料が、有利に使用されうる。
【0058】
本発明のための顔料コート紙ベースにおいて使用することが可能なバインダーとしては、スチレンアクリレートラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス、ポリアクリレートラテックス、ポリビニルアルコール、デンプンおよびその他多糖類、ならびにそれらの組合せが一般的に挙げられる。本発明の記録媒体の基材として顔料コート紙を使用する場合、その紙の顔料コーティングに隣接する樹脂層は、樹脂層の顔料コーティングに対する接着性を(さらに)増大させるために、顔料または酸化チタン、滑石、炭酸カルシウムなどの充填剤を含んでいることが好ましい。
【0059】
基材に顔料コート紙ベースを用いた本発明の支持体を含む記録媒体を写真の印刷用紙として使用する場合、顔料コーティングが顔料コート紙の天然の紙の部分を効果的に隠蔽しているため、本発明の樹脂層における酸化チタンの量を減らすことができるというメリットがさらにある。このため、公知の従来からの写真の印刷用紙に比較して画像鮮鋭度を低下させることなく、製造コストをさらに下げることが可能となる。
【0060】
支持体の用途に応じて、本発明の層構造は、基材の上面だけに設けてもよく、さらに下面に設けてもよい。
【0061】
必要に応じて、溶融押出プロセスの前に、本発明の支持体の基材の前表面、場合によっては後表面に対しても、活性化処理が施される。このような処理としては、コロナ処理、および/または火炎処理、および/またはオゾン処理、および/またはプラズマ処理、および/またはプラズマ蒸着処理、および/または加熱処理、および/または化学的プライマー処理を挙げることができる。
【0062】
本発明の支持体は、当業者に公知のように、(タンデム)押出しコーティング法または連続押出コーティング法により製造することができる。本発明の支持体は、共押出法により製造するのが最も好ましく、その場合、フィードブロック法、マルチマニホールド法またはマルチスロットダイ法を用いて、本発明のすべての樹脂層および(必要があれば)結合層が同時に基材上に設けられる。こうすることにより、支持体の製造における経済性を大幅に向上させる。(共)押出ラインにおいては、ダイから押出された溶融樹脂をさらにオゾン処理して、樹脂と基材との間の接着性を改良させることもできる。樹脂と基材との間の接着性をさらに向上させるため、ダイから押出される樹脂層の溶融温度は少なくとも300℃とする。
【0063】
本発明の支持体を製造するための共押出プロセスの好ましい速度は、最高300m/分まで上げても、さらには600m/分を超えてもよく、それによって支持体の製造の経済性が一段と向上する。ピットの数は同程度に維持しながら、押出コーティングする樹脂の全量を低下させることも可能である。たとえば、単層押出コーティングのPE層を、最外層にC3+−α−オレフィンのポリマーを使用した3層共押出コーティングのポリオレフィン層に変更することによって、上面にコーティングする樹脂の量を30g/m2から20g/m2へと低下させ、しかもピットの数は同程度に維持することも可能である。
【0064】
本発明の支持体の製造において、冷却ロールと加圧機能を有する加圧ロールとの間に存在するニップの圧力は400N/cm未満であり、より好ましくは320N/cm未満である。本発明の支持体の製造に使用される冷却ロールの表面構造は、本発明では多くのメリットが得られることから、鏡面光沢タイプの表面も含めいかなる光沢構造であってもよいが、最も好ましいのは、光沢のある微細な艶消し表面である。(共)押出コーティングにおいては、冷却ローラー内の冷却媒体の温度を高めることを組み合わせると、クレーター欠陥の量をさらに減少させることができる。冷却ローラーに使用する冷却媒体の温度を高くすることによって、冷却ローラーから離れたときの(共)押出コーティングされた基材ウェブの温度が高くなる。低密度もしくは線状低密度ポリエチレン、または低密度と線状低密度ポリエチレンとの混合物を用いることによってすでに効果が得られているが、本発明の最外層の冷却ローラーからのロール離れが優れることから、本発明においても上記の構成を用いることが好ましい。本発明の好ましい実施態様においては、(共)押出コーティングされた基材ウェブが冷却ローラーから離れるときの表面温度は35℃を超え、より好ましくは45℃を超え、さらにより好ましくは65℃を超える。
【0065】
本発明はさらに、本明細書に記載の支持体および受像媒体を含む記録媒体にも関する。受像媒体は通常、基材から最も離れた最外樹脂層の側に設けられる。受像媒体は、写真用のエマルション層などの活性を有する層、インキ受容層(たとえばインクジェット用途)、感熱紙用途のための記録層、あるいは電子写真用紙のための記録層などであってよい。それらの記録媒体は、当業者に公知の方法で製造することができる。
【0066】
本発明はさらに、記録媒体のための支持体材料におけるクレーター欠陥の発生を抑制するための、3個以上の炭素原子を有するアルファ−オレフィン(「C3+−アルファ−オレフィン」)をモノマーとして含むポリマーの使用にも関する。
【0067】
以下において、実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がそれらに限定される訳ではない。特に断らない限り、すべての部、パーセント、比などは重量基準である。
【0068】
実施例
実験はすべて、2台の4.5インチ(11.43cm)押出機と1台の2.5インチ(6.35cm)押出機、フィードブロックおよびコートハンガーダイを備えた共押出ラインで実施した。使用した最大ライン速度は600m/分であった。実験に使用した基材は、印画紙ベースおよび顔料コート紙ベースであった。これらの基材はすべて、押出コーティングの前に、インラインコロナ処理ステーションでコロナ処理を行った。すべての実験は、光沢のある微細な艶消し冷却ローラーを用いて実施された。
【0069】
実施例に使用したウルトラマリン顔料は、ウルトラマリンバイオレットとウルトラマリンブルーの2.75:1.70の混合物である。実施例に使用した蛍光増白剤は、ビス−ベンゾオキサゾール置換スチルベンタイプの蛍光増白剤である。顔料および蛍光増白剤は、キャリヤー樹脂として低密度ポリエチレンを用いたマスターバッチから適用した。
【0070】
調査対象とした各種の樹脂には、以下の略称を使用している。LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、EMA(エチレンアクリル酸メチルコポリマー)、PP(ポリプロピレン)、HMS−PP(高溶融強度ポリプロピレン)、PP−MA(ポリプロピレンマレイン酸コポリマー)、PB(ポリブテン−1)。
【0071】
各種の実施例の製造に使用した樹脂を表1にまとめた。
【0072】
【表1】

*):PP−1は、ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとを7:3の比率でメルトブレンドしたものである。
【0073】
ポリエチレン樹脂、EMA、PP−MAおよびPBのメルトフローインデックスは、190℃/2.16kgで測定し、PPのメルトフローインデックスは、230℃/2.16kgで測定した(ASTM D1238に従って測定)。
【0074】
実施例においては、クレーター欠陥の量と大きさは、ツアイス(Zeiss)製の画像解析ソフトウェアを組み込んだ顕微鏡によって測定した。このソフトウェアでは、クレーター欠陥が、それぞれ<300μm2、300〜800μm2、800〜1300μm2、>1300μm2の4つのクラスに分類される。後者の二つのクラスが、基材品質の視覚的判定に最も重要である。したがって、クレーター欠陥データの解析では、大きい方のクラスに優先的な処理を与える加重平均を使用する。これらの測定を比較するため、クレーター欠陥に関して最も悪いものを1、クレーター欠陥に関して最も良いものを10として、結果に1〜10の評点をつけた。実施例において、評点5は内部標準である。
粗さ(Ra)試験法(ISO4287−1997による):
カットオフ波長(λc):0.8mm
サンプル測定長:5.6mm
装置/タイプ:マール・ペルソメーター(Mahr Perthometer)/M3
【0075】
比較例1
単一層押出による例:
コロナ処理活性化印画紙ベース(重量167g/m2)を、15%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらにより多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含むLD−1の単一層(オートクレーブ法LDPE)を用いて、ライン速度350m/分で押出コーティングして、樹脂層の全コーティング重量を30g/m2とした。この顔料を含む樹脂層を325℃の溶融温度で押出し、ニップ圧力320N/cmでコーティングした。
【0076】
共押出による例:
コロナ処理活性化写真用ベース用紙(重量167g/m2)の上面を、最外樹脂層すなわちスキン層と、LD−1、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む12.5g/m2の中間層と、LDPE−1、5%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料を含む、ベース用紙に隣接する16.5gの最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。上記の最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は350m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は320N/cmであった。LD−1、LL−1、上述のLL−1とLD−1の50/50重量%混合物、および上述のLL−1とLD−1の25/75重量%混合物という、4種の組成を有する最外層を製造した。
【0077】
単一層押出および共押出コーティングしたサンプルにおけるクレーター欠陥の数とサイズを測定し、比較した。クレーター欠陥の評価結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
これらの結果から、顔料を含む低密度ポリエチレン単一層に比較して、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、またはそれらの混合物を含む外側層を有する記録媒体では、クレーター欠陥の数が同等またはやや良好であることが判る。
【0080】
比較例2
コロナ処理活性化印画紙ベース(重量167g/m2)の上面を、各種のタイプのポリエチレンおよびポリエチレンの混合物を含む最外樹脂層と、LD−1、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間と、および、LD−1、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含むベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングしたが。この樹脂層の全コーティング重量は30g/m2であり、最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は350m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は370N/cmであった。これらの例の一部は、冷却ローラー中の冷却媒体の温度を上げることによって冷却ローラーから離れる瞬間のウェブ温度を35℃、部分的に60℃として製造した。
【0081】
クレーター欠陥の評価結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
これらの結果から、中密度ポリエチレンを含む最外層、特に高密度ポリエチレンを含む最外層を用いると、クレーター欠陥の数が増えることが判る。これらの結果からさらに、高密度ポリエチレンと、低密度または線状低密度ポリエチレンとの混合物では、クレーター欠陥の数が減少することも判る。また、これらの結果から、冷却ローラーから離れるときのウェブ温度を上げると、クレーター欠陥の数が減少することも判る。
【0084】
比較例3
コロナ処理活性化印画紙ベース(重量167g/m2)を、各種のEMA樹脂を含む最外樹脂層と、LD−1、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LD−1、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含むベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。この樹脂層の全コーティング重量は30g/m2であり、最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は350m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は370N/cmであった。
【0085】
クレーター欠陥の評価結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
これらの結果から、エチレン−メタクリレートコポリマーを含む最外層を用いると、クレーター欠陥の数がわずかに減少することが判る。また、これらの結果から、冷却ローラーから離れるときのウェブ温度を上げると、クレーター欠陥の数が減少することも判る。
【0088】
実施例4
コロナ処理活性化写真ベース用紙を、最外樹脂層と、LD−2(オートクレーブ法LDPE)、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LD−2、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含む、ベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。その樹脂層の全コーティング重量は30g/m2であり、最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は300m/分、溶融温度は315℃、ニップ圧力は320N/cmであった。
【0089】
クレーター欠陥の評価結果を表5に示す。
【表5】

LDPE−3:管式反応器タイプのLDPE
【0090】
これらの結果から、ポリプロピレン樹脂を含む最外層を用いると、クレーター欠陥の数が顕著に減少することが判る。
【0091】
例1〜3に比較して、この実施例では、LD−1よりもメルトフローインデックスが高いLD−2およびLD−3を使用していることに注目されたい。当業者に周知のことであるが、より高いメルトフローインデックスの樹脂を使用すると、クレーター欠陥の数の減少につながるが、そのことは、この実施例で適用したのと同一の加工条件で樹脂LD−1を使用した例に比較して、この実施例でのクレーター欠陥計測の実際の数値に実証されている。LL−2とLD−3を1:1の比で含む最外層を有する構造をこの実施例の内部標準に採用し、そのクレーター欠陥の評点を5としている。
【0092】
実施例5
コロナ処理活性化印画紙ベース(PP)(重量167g/m2)と、コロナ処理活性化顔料コート紙ベース(PCP)(重量171g/m2、乾燥顔料コーティング重量12g/m2)とを、最外樹脂層と、LD−2(オートクレーブ法LDPE)、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LD−2、5%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料を含むベース用紙に隣接した最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。樹脂層の全コーティング重量は、25g/m2とそれぞれ30g/m2であり、いずれの場合も最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は420、500、および600m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は370N/cmであった。
【0093】
クレーター欠陥評価の結果は、最外層の組成、基材のタイプ、全コーティング重量およびライン速度と共に以下の表6に示す。
【表6】

【0094】
これらの結果から、ポリプロピレン樹脂を含む最外層を用いると、クレーター欠陥の数がかなり減少することが明らかに判る。さらに、ポリプロピレン樹脂を含む最外層を顔料コート紙ベース基材と組み合わせると、クレーター欠陥評価において明らかに有利な効果が存在する。
【0095】
実施例6
コロナ処理活性化写真ベース用紙(重量167g/m2)を、最外樹脂層と、LD−2、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LD−2、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含む、ベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。これらの樹脂層は、ライン速度420m/分、ニップ圧力370N/cmを用いて共押出コーティングした。溶融温度、最外層コーティング重量および全コーティング重量は、表7に示すように変化させた。表7には、クレーター欠陥評価の結果も記載した。
【0096】
【表7】

【0097】
これらの結果から、ポリプロピレン樹脂を含む最外層を適用することによって、全コーティング重量がわずか20g/m2とかなり低い場合であっても、クレーター欠陥評点がほとんど変化しない記録媒体を製造することが可能であることが判った。あるいは、溶融温度を300℃と大幅に下げて記録媒体を製造することも可能であり、この場合もまた、クレーター欠陥評価は受容可能にとどまっている。一つめの方法では、直接的に原料コストが明らかに低下し、二つめの方法では、ダイの垂れ落ちなどの欠陥の数が減少し、ラインの停止の回数や規格外製品の量が減少することによって製造コストに間接的に影響している。
【0098】
実施例7
コロナ処理活性化写真用紙ベース(重量167g/m2)を、最外樹脂層と、LD−2、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LD−2、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含むベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。樹脂層の全コーティング重量は30g/m2で、最外層は、1g/m2のコーティング重量で設けられた。最外層は、ポリプロピレンおよび各種の量のポリプロピレンマレイン酸コポリマーであるPP−MA(メルトフローインデックス(190℃/2.16kg)3.7dg/分、密度915kg/m3)が含まれていた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は300m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は320N/cmであった。
【0099】
クレーター欠陥の評価結果を表8に示す。
【0100】
【表8】

【0101】
実施例4によれば、本発明の記録媒体の最外層にポリプロピレンを組み入れると、クレーター欠陥の数が明らかに激減した。実施例7においては、ポリプロピレンを含む最外層を有する記録媒体を、実施例7のためのクレーター欠陥の内部評価基準に採用した。これらの結果から、接着性樹脂を、それとアルファオレフィン系ポリマー樹脂との比が5/95から20/80までの範囲になるように組み入れると、クレーター欠陥の数をさらに減少させることが可能であることが判る。
【0102】
実施例8
コロナ処理活性化写真ベース用紙(重量167g/m2)を、最外樹脂層と、LDPE−2、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LDPE−2(オートクレーブ法LDPE)、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含む、ベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。樹脂層の全コーティング重量は30g/m2で、その内、最外層は1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は300m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は280、320N/cm、370N/cmであった。
【0103】
クレーター欠陥の評価結果を表9に示す。
【0104】
【表9】

【0105】
これらの結果から、C3+−アルファ−オレフィン系樹脂のポリマー、この場合はポリブテン−1を含む最外層を用いることにより、低いニップ圧力で使用したときでもクレーター欠陥の数に好ましい影響が与えられる、ということが判る。
【0106】
実施例9
コロナ処理活性化写真ベース用紙(重量167g/m2)を、最外樹脂層と、LDPE−2、25%のアナターゼ二酸化チタンおよびさらに多くのウルトラマリン顔料および蛍光増白剤を含む中間層と、LDPE−2、5%のアナターゼ二酸化チタン、およびさらに多くのウルトラマリン顔料を含む、ベース用紙に隣接する最下層と、からなる3層の樹脂層を用いて共押出コーティングした。樹脂層の全コーティング重量は30g/m2であり、その内、最外層は1g/m2のコーティング重量で設けられた。これらの樹脂層を共押出コーティングする際のライン速度は300m/分、溶融温度は325℃、ニップ圧力は320N/cmであった。
【0107】
クレーター欠陥の評価結果を表10に示す。
【0108】
【表10】

【0109】
これらの結果から、記録媒体の最外層にアルファ−オレフィン系ポリマーを低濃度で組み入れても、クレーター欠陥の数を減少させることが可能であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とを有する基材を含む記録媒体用の支持体であって、少なくとも該上面の上に、少なくとも2層の非配向樹脂層を有し、そのうちの最外層がC3+−アルファ−オレフィンモノマーを含むポリマーを含む、支持体。
【請求項2】
前記ポリマーが、C3+−アルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマーを含む、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項3】
前記コポリマーが、前記C3+−アルファ−オレフィンモノマーを少なくとも30モル%含む、請求項2に記載の支持体。
【請求項4】
前記ポリマーが、1種または複数のポリエチレン樹脂と混合される、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項5】
前記ポリエチレン樹脂の量が、重量基準で50%未満である、先行する請求項に記載の支持体。
【請求項6】
前記ポリマーが、プロピレン、1−ブテン、およびそれらの組合せから選択されるC3+−アルファ−オレフィンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項7】
前記最外層が、最大で3g/m2のコーティング重量で設けられる、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項8】
前記最外層が、最大で1g/m2のコーティング重量で設けられる、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項9】
前記最外層が、C3+−アルファ−オレフィンのポリマー、C3+−アルファ−オレフィンとエチレンとのコポリマー、または、それらとポリエチレンとの混合物であって少なくとも70重量%の前記C3+−アルファ−オレフィンのポリマーを含む混合物を含む、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項10】
前記混合物が、少なくとも90重量%の前記C3+−アルファ−オレフィンのポリマーを含む、請求項9に記載の支持体。
【請求項11】
前記最外層が、1種または複数の不透明顔料および/または着色顔料をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項12】
好ましくはポリエチレン樹脂またはポリエチレン樹脂の混合物を含む少なくとも1層の第二の樹脂層が、前記最外層と前記基材との間に設けられた、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項13】
前記第二の層が、8g/m2〜50g/m2の間、好ましくは9g/m2〜25g/m2の間のコーティング重量で設けられる、請求項12に記載の支持体。
【請求項14】
前記第二の層が、1種以上の不透明顔料および/または着色顔料をさらに含む、請求項12または13に記載の支持体。
【請求項15】
好ましくはポリエチレン樹脂またはポリエチレン樹脂の混合物を含む少なくとも1層の第三の樹脂層が、前記最外層と前記基材との間に設けられた、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項16】
前記第三の層が、1g/m2〜50g/m2、好ましくは2g/m2〜25g/m2のコーティング重量で設けられる、請求項15に記載の支持体。
【請求項17】
前記第三の層が、1種以上の不透明顔料および/または着色顔料をさらに含む、請求項15または16に記載の支持体。
【請求項18】
前記基材が、原料紙ベース、顔料コート紙ベース、合成紙ベースまたはポリマーシートベースである、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項19】
前記基材が、顔料コート紙ベースであって、該顔料コート紙の前記樹脂層を受ける側の平均表面粗さが2.0μm未満、好ましくは1.5μm未満、より好ましくは1.0μm未満である、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項20】
前記基材が、紙ベースであって、該紙ベースの前記樹脂層を受ける側の平均表面粗さが1.5μm未満、より好ましくは1.0μm未満である、先行する請求項のいずれかに記載の支持体。
【請求項21】
先行する請求項のいずれかに記載の支持体を製造するための方法であって、少なくとも2層の樹脂層を、一定のライン速度で移動している基材上に高温下で同時に押出す共押出コーティング工程を含み、前記樹脂層と前記基材とが、冷却機能を有する冷却ロールと加圧機能を有する加圧ロールとの間に存在しニップ圧力を有するニップにおいて一体となり、前記支持体が前記ポリマー樹脂の溶融温度よりも低い温度で前記冷却ロールから離される、方法。
【請求項22】
前記共押出コーティング工程が、フィードブロック法、マルチマニホールド法、またはマルチスロットダイ法を用いて実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記支持体が、少なくとも300m/分のライン速度で製造される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記支持体が、少なくとも300℃の溶融温度で製造される、請求項21〜23に記載の方法。
【請求項25】
前記ニップ圧力が、400N/cm未満、好ましくは320N/cm未満である、請求項21〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記冷却ロールより離された前記支持体が、35℃より高い、好ましくは45℃より高い、より好ましくは65℃より高い温度を有する、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜20のいずれかに記載の支持体、または請求項21〜26のいずれかに記載の方法により製造された支持体であって、記録媒体用の支持体として使用される、支持体。
【請求項28】
請求項1〜20または27のいずれかに記載の支持体と受像媒体とを含む、記録媒体。
【請求項29】
記録媒体のための支持体材料におけるクレーター欠陥の形成を抑制するための、3個以上の炭素原子を有するモノマーを含むアルファ−オレフィン(「C3+−アルファ−オレフィン」)を含むポリマーの使用。

【公表番号】特表2008−517799(P2008−517799A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537827(P2007−537827)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000758
【国際公開番号】WO2006/043815
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】