説明

多層基板の製造方法

【課題】表面の導体パターンの位置ずれ、及び水蒸気に起因する空隙の発生が抑制された多層基板の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に導体層が形成された樹脂フィルムを含む、熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂フィルムを、樹脂フィルムの厚さ方向に積層して積層体とする積層工程と、積層工程後、積層体を加熱しつつ加圧することで、複数の樹脂フィルム同士を接着固定して樹脂基材とする加熱加圧工程と、を備え、樹脂フィルムとして、40℃、90%RH、樹脂フィルムの厚さが100μmにおける水蒸気の透過率の換算値が、2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂を用い、積層工程では、表面全面に、導体層としての導体箔が形成された樹脂フィルムを、導体箔が積層体の表面となるように積層し、加熱加圧工程後、導体箔をパターニングすることで、導体層としての導体パターンを形成するエッチング工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂フィルム同士が接着固定されてなる多層基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの片面に導体パターンが形成された片面導体パターンフィルム(樹脂フィルム)を積層し、該樹脂フィルムを加熱しつつ加圧することで樹脂フィルム同士を接着固定する多層基板の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−086948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、樹脂フィルムを接着固定する前に、外部に露出される樹脂フィルム(以下、最外層の樹脂フィルムと示す)の表面に、電子部品と電気的に接続される導体パターンが形成されている場合、接着固定時における樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂の流動、及び、接着固定後における熱可塑性樹脂の熱収縮によって、最外層の樹脂フィルムの導体パターンの位置にずれが生じる虞がある。位置ずれが生じると、導体パターンと、該導体パターンと電気的に接続される電子部品との電気的な接続に、接続不良が生じる虞がある。
【0004】
これに対し、特許文献1の請求項8に示される多層基板の製造方法は、複数の樹脂フィルム同士を接着固定した後に、最外層の樹脂フィルムの表面全面に形成された導体箔をパターニングすることで、電子部品と電気的に接続される導体パターンを表面に形成する工程を備えている。このように、接着固定した後に、電子部品と電気的に接続される導体パターンを形成しているので、接着固定による、導体パターンの位置ずれの発生を抑止し、該導体パターンと、多層基板に搭載される電子部品との電気的な接続に、接続不良が生じることが抑制された多層基板の製造方法となっている。
【0005】
しかしながら、本発明者が、上記した多層基板の製造方法を経て、多層基板を製造したところ、樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂(例えば、液晶ポリマー)によっては、樹脂フィルム間の機械的な接続、及び電気的な接続に接続不良が生じる虞があることが確認された。これは、樹脂フィルムに吸収された水蒸気が、上記した接着固定時において排気され、この排気された水蒸気によって、多層基板内に空隙が生じるためである。
【0006】
上記したように、特許文献1に示される多層基板の製造方法では、電子部品と電気的に接続される導体パターンの位置ずれの発生を抑制するために、接着固定後に、最外層の樹脂フィルムの表面全面に形成された導体箔をパターニングしている。したがって、樹脂フィルムが水蒸気を十分に透過率しない熱可塑性樹脂によってされている場合、導体箔によって、積層方向から水蒸気が排気されることが遮られるために、水蒸気が十分に外部に排気されず、多層基板内に閉じ込められる。これにより、多層基板内に、水蒸気に起因する空隙が生じ、該空隙によって、各樹脂フィルム間の機械的な接続、及び電気的な接続に接続不良が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、表面の導体パターンの位置ずれ、及び水蒸気に起因する空隙の発生が抑制された多層基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表面に導体層が形成された樹脂フィルムを含む、熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂フィルムを、該樹脂フィルムの厚さ方向に積層して積層体とする積層工程と、該積層工程後、積層体を加熱しつつ加圧することで、複数の樹脂フィルム同士を接着固定して樹脂基材とする加熱加圧工程と、を備え、樹脂基材に、導体層が多層に配置されてなる多層基板の製造方法であって、樹脂フィルムとして、40℃、90%RH、樹脂フィルムの厚さが100μmにおける水蒸気の透過率の換算値が、2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂を用い、積層工程では、表面全面に、導体層としてのベタ状の導体箔が形成された樹脂フィルムを、導体箔が積層体の表面となるように積層し、加熱加圧工程後、導体箔をパターニングすることで、導体層としての導体パターンを形成するエッチング工程を有することを特徴する。
【0009】
このように本発明によれば、加熱加圧工程後、積層体の表面全面に形成された、導体層としての導体箔をパターニングすることで、表面に、導体層としての導体パターンを形成するエッチング工程を実施する。このように、加熱加圧工程後に、電子部品と電気的に接続される導体パターンを形成しているので、加熱加圧工程による、導体パターンの位置ずれの発生を抑止し、該導体パターンと、多層基板に搭載される電子部品との電気的な接続に、接続不良が生じることを抑制することができる。
【0010】
また、樹脂フィルムは、40℃、90%RH、樹脂フィルムの厚さが100μmにおける水蒸気の透過率の換算値が2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂によって形成されている(以下、上記した水蒸気の透過率の換算値を、単に水蒸気の透過率と示す)。このような熱可塑性樹脂によって形成された樹脂フィルムを用いて多層基板を製造した場合、加熱加圧工程において、積層体の表面全面に導体箔が形成されていたとしても、水蒸気に起因する空隙が多層基板内に生じ難く、各樹脂フィルム間の機械的な接続、及び電気的な接続に接続不良が生じ難いことが、本発明者によって確認されている。これは、加熱加圧工程において、樹脂フィルム同士が完全に一体化され、樹脂基材の表面が導体箔によって被覆された状態であっても、樹脂フィルムを介して外部に水蒸気を排気することができるので、多層基板内に水蒸気が閉じ込められることが抑制されるためである。このように、本発明に係る多層基板の製造方法は、表面の導体パターンの位置精度、及び水蒸気に起因する空隙の発生が抑制された多層基板の製造方法となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとの混合樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、及びポリエーテルサルフォンのいずれかを採用することができる。
【0012】
これら熱可塑性樹脂の水蒸気の透過率は、ポリテトラフルオロエチレンは2.6g/(m・day)、ポリエチレンナフタレートは7g/(m・day)、ポリエーテルエーテルケトンは8.2g/(m・day)、ポリエーテルエーテルケトンとポリイミド樹脂との混合樹脂は8.2〜23.7g/(m・day)、熱可塑性ポリイミドは21g/(m・day)、ポリエーテルイミドは23.7g/(m・day)、ポリフェニレンエーテルは34.5g/(m・day)、ポリエーテルサルフォンは124g/(m・day)である。
【0013】
請求項3に記載のように、積層工程では、導体層としての導体パターンが表面の一部に形成された樹脂フィルムを、導体パターンが導体層の内層となるように積層しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る多層基板の概略構成を示す断面図である。図2は、多層基板の製造工程を示す断面図であり、(a)は、積層工程、(b)は、加熱加圧工程を示している。
【0015】
図1に示すように、多層基板100は、要部として、熱可塑性樹脂からなる樹脂基材11と、該樹脂基材11に対して多層に配置された導体パターン30と、異なる層の導体パターン30間を電気的に接続するビア50と、を有している。
【0016】
本実施形態に係る樹脂基材11は、6枚の樹脂フィルム10a〜10fからなり、第1層目の樹脂フィルム10aの表面12と、第6層目の樹脂フィルム10fの表面12とが、樹脂基材11の表面11aを構成している。以下、第1層目、及び第6層目の樹脂フィルム10a,10fを、便宜上、最外層の樹脂フィルム10a,10fと示す。
【0017】
本実施形態に係る樹脂フィルム10は、ポリエーテルエーテルケトン50重量%とポリエーテルイミド50重量%とからなる混合樹脂によって形成されている。40℃、90%RH、樹脂フィルム10の厚さが100μmにおける、上記した混合樹脂の水蒸気の透過率の換算値は、14.6g/(m・day)である。以下、このような条件における水蒸気の透過率の換算値を、単に水蒸気の透過率と示す。なお、樹脂フィルム10の厚さは50μmであり、したがって樹脂基材11の厚さはおよそ300μm(0.3mm)である。また、樹脂フィルム10の面積は、150mm〜500mmであり、したがって、樹脂基材11の面積は、150mm〜500mmである。
【0018】
導体パターン30は、多層基板100の電流経路の主要部分をなすものであり、樹脂基材11の表面11aに設けられた導体パターン30の少なくとも一部はランドとして、多層基板100に搭載される電子部品と、半田などの接続部材を介して電気的に接続される。上記した導体パターン30が、特許請求の範囲に記載の導体層に相当する。
【0019】
ビア50は、異なる層の導体パターン30間を電気的に接続するものである。本実施形態に係るビア50は、導体パターン30を底面とし、裏面13から表面12までを貫通するビアホール51内に、金属ペースト52が充填され、焼結された金属柱からなる。
【0020】
ビアホール51は、表面12に導体箔30a若しくは導体パターン30が形成された樹脂フィルム10の裏面13から、レーザーを照射することで形成される。上記したレーザーとしては、炭酸ガスレーザーやエキシマレーザーなどを使用することができ、出力と照射時間とを調整することで、導体箔30a若しくは導体パターン30に穴が開かないようにしている。
【0021】
金属ペースト52は、銅、銀、錫などの金属粒子と、該金属粒子同士を連結するバインダ樹脂と、有機溶剤などが混練されてなる。金属ペースト52は、ビアホール51形成後、スクリーン印刷機、若しくはディスペンサによって、上記したビアホール51内に充填される。
【0022】
次に、本実施形態に係る多層基板100の製造方法を図2に基づいて説明する。先ず、表面12の全面に貼着されたベタ状の導体箔30aとビア50が形成された2枚の樹脂フィルム10と、表面12の一部に形成された導体パターン30とビア50が形成された4枚の樹脂フィルム10と、を用意する。導体箔30aを有する2枚の樹脂フィルム10を、第1層目、及び第6層目に配置し、導体パターン30を有する4枚の樹脂フィルム10を、第2〜5層目それぞれに配置する。そして、図2の(a)に示すように、第1層目の樹脂フィルム10aの裏面13と、第2層目の樹脂フィルム10bの表面12とが対向し、且つ第2層目の樹脂フィルム10bの裏面13と、第3層目の樹脂フィルム10cの表面12とが対向するように、樹脂フィルム10の厚さ方向に、積層する。同様にして、第6層目の樹脂フィルム10fの裏面13と、第5層目の樹脂フィルム10eの表面12とが対向し、且つ第5層目の樹脂フィルム10eの裏面13と、第4層目の樹脂フィルム10dの表面12とが対向するように、樹脂フィルム10の厚さ方向に、積層する。そして、第1層目から第3層目の樹脂フィルム10a〜10cと、第4層目から第6層目の樹脂フィルム10d〜10fとを、第3層目の樹脂フィルム10cの裏面13と、第4層目の樹脂フィルム10dの裏面13とが対向するように積層することで、6枚の樹脂フィルム10a〜10fを積層する。このように、第2〜第5層目の樹脂フィルム10b〜10eの表面12に形成された導体パターン30を、6枚の樹脂フィルム10a〜10fが積層されてなる積層体の内層に積層し、最外層の樹脂フィルム10a,10fの表面12の全面に貼着された導体箔30aを、上記した積層体の表面となるように積層する。以上が、特許請求の範囲に記載の積層工程に相当する。なお、上記した導体箔30aが、特許請求の範囲に記載の導体層に相当する。
【0023】
積層工程後、真空熱プレスによって、図2の(b)に示すように、6枚の樹脂フィルム10a〜10fを加熱しつつ、最外層の樹脂フィルム10a,10f同士が近づくように、6枚の樹脂フィルム10a〜10fを加圧する。これにより、6枚の樹脂フィルム10a〜10f同士を接着固定(樹脂基材11を形成)し、金属ペースト52を焼結してビア50を形成し、各樹脂フィルム10の導体パターン30とビア50、及び第3層目の樹脂フィルム10cのビア50と第4層目の樹脂フィルム10dのビア50とを電気的に接続する。以上が、特許請求の範囲に記載の加熱加圧工程に相当する。
【0024】
ところで、樹脂フィルム10を形成する混合樹脂に限らず、一般的な樹脂は、大気中の水分を吸収する性質を有している。したがって、上記した加熱加圧工程において、樹脂フィルム10に吸収された水分が気化し、樹脂フィルム10から水蒸気が排気される。この樹脂フィルム10から排気された水蒸気は、樹脂基材11が形成されていない状態(樹脂フィルム10同士が完全に接着(一体化)されていない状態)では、樹脂フィルム10間の隙間を介して外部に排気され、樹脂基材11が形成された状態(樹脂フィルム10同士が完全に接着(一体化)された状態)では、表面11aの全面が導体箔30aによって被覆されているので、積層方向に対して略垂直な方向から、樹脂フィルム10を介して外部に排気される。また、金属ペースト52を構成する有機溶剤に含まれる水分も、上記した加熱加圧工程において、有機溶剤とともに気化し、金属ペースト52から排気されるが、この金属ペースト52から排気された水蒸気も、樹脂フィルム10同士が完全に接着(一体化)されていない状態では、樹脂フィルム10間の隙間を介して外部に排気され、樹脂フィルム10同士が完全に接着(一体化)された状態では、積層方向に対して略垂直な方向から、樹脂フィルム10を介して外部に排気される。このように、樹脂フィルム10及び金属ペースト52から排気された水蒸気は、樹脂フィルム10同士が完全に接着(一体化)された状態では、積層方向に対して略垂直な方向から、樹脂フィルム10を介して外部に排気される。
【0025】
なお、加熱加圧工程においては、上記した水蒸気以外にも、有機溶剤や、樹脂フィルム10を形成する混合樹脂からガスが発生するが、樹脂フィルム10及び金属ペースト52から排気される水蒸気の量と比べて、微量である。したがって、これら有機溶剤、及び混合樹脂から発生したガスによって、樹脂基材11(多層基板100)内に生じる空隙は微小なので、無視することができる。
【0026】
加熱加圧工程後、樹脂基材11の表面11aの導体箔30aをパターニングすることで、表面11aに、電子部品と電気的に接続される導体パターン30を形成する。以上が、特許請求の範囲に記載のエッチング工程に相当する。以上の工程を経ることで、多層基板100を形成する。
【0027】
次に、本実施形態の特徴点である、樹脂フィルム10の水蒸気の透過率について説明する。本発明者が、本実施形態で示した樹脂フィルム10を12〜32枚用意し、上記した製造工程を経て、厚さが0.6mm〜1.6mmであり、面積が150mm〜500mmの多層基板100を形成したところ、多層基板100内に空隙が生じず、したがって、多層基板100に機械的、電気的な接続不良が生じないことが確認された。また、本発明者が、樹脂フィルム10を形成する熱可塑性樹脂を種々変更して、多層基板100を形成したところ、水蒸気の透過率が2.6g/(m・day)のポリテトラフルオロエチレン、水蒸気の透過率が7g/(m・day)のポリエチレンナフタレート、水蒸気の透過率が8.2g/(m・day)のポリエーテルエーテルケトン、水蒸気の透過率が21g/(m・day)の熱可塑性ポリイミド、水蒸気の透過率が23.7g/(m・day)のポリエーテルイミド、水蒸気の透過率が34.5g/(m・day)のポリフェニレンエーテル、及び水蒸気の透過率が124g/(m・day)のポリエーテルサルフォンにおいても、多層基板100内に空隙が生じず、これによって多層基板100に機械的、電気的な接続不良が生じないことが確認された。これは、加熱加圧工程において、樹脂フィルム10及び金属ペースト52から排気される水蒸気を、樹脂フィルム10を介して外部に排気することができるためである。このように、本発明者によって、水蒸気の透過率が2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂によって形成される樹脂フィルム10を用いることで、厚さが0.6mm〜1.6mmの多層基板100に、機械的、電気的な接続不良が生じないことが確認されている。
【0028】
なお、樹脂フィルム10を形成する熱可塑性樹脂として、水蒸気の透過率が0.15g/(m・day)の液晶ポリマー、水蒸気の透過率が0.15〜0.25g/(m・day)の芳香族ポリアミドを採用し、上記した製造工程を経て多層基板100を形成したところ、多層基板100内に、水蒸気に起因する空隙が生じることが、本発明者によって確認されている。このように、本発明者によって、水蒸気の透過率が0.25g/(m・day)以下の熱可塑性樹脂によって形成される樹脂フィルム10を用いた場合、厚さが0.6mm〜1.6mmであり、面積が150mm〜500mmの多層基板100に、機械的、電気的な接続不良が生じることが確認されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る多層基板100の製造方法の作用効果を説明する。上記したように、加熱加圧工程後、樹脂基材11の表面11a全面に形成された、導体箔30aをパターニングすることで、表面11aに、導体パターン30を形成するエッチング工程を実施する。このように、加熱加圧工程後に、電子部品と電気的に接続される導体パターン30を形成しているので、加熱加圧工程による、導体パターン30の位置ずれの発生を抑止し、該導体パターン30と、多層基板100に搭載される電子部品との電気的な接続に、接続不良が生じることを抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る樹脂フィルム10は、水蒸気の透過率が14.6g/(m・day)のポリエーテルエーテルケトン50重量%とポリエーテルイミド50重量%とからなる混合樹脂によって形成されている。すなわち、樹脂フィルム10は、水蒸気の透過率が2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂によって形成されている。上記したように、このような熱可塑性樹脂によって形成された樹脂フィルム10を用いて多層基板100を形成した場合、加熱加圧工程において表面11aが導体箔30aによって被覆されていたとしても、水蒸気に起因する空隙が多層基板100内に生じ難く、各樹脂フィルム10間の機械的な接続、及び電気的な接続に接続不良が生じ難いことが、本発明者によって確認されている。これは、加熱加圧工程において、樹脂フィルム10同士が完全に一体化され、樹脂基材11の表面11aが導体箔30aによって被覆された状態であっても、積層方向に対して略垂直な方向から、樹脂フィルム10を介して外部に水蒸気を排気することができるためである。これにより、多層基板100内に水蒸気が閉じ込められることが抑制され、多層基板100内に空隙が生じることが抑制される。このように、本発明に係る多層基板100の製造方法は、表面の導体パターンの位置精度、及び水蒸気に起因する空隙の発生が抑制された多層基板の製造方法となっている。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0032】
本実施形態では、樹脂フィルム10を形成する熱可塑性樹脂として、水蒸気の透過率が14.6g/(m・day)のポリエーテルエーテルケトン50重量%とポリエーテルイミド50重量%とからなる混合樹脂によって形成される例を示した。しかしながら、樹脂フィルム10を形成する熱可塑性樹脂としては、水蒸気の透過率が2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂であれば採用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、若しくはポリエーテルサルフォンを採用することができる。
【0033】
本実施形態では、6枚の樹脂フィルム10が積層され、導体パターン30が6層である例を示した。しかしながら、樹脂フィルム10の積層数、及び導体パターン30の層数は、上記例に限定されない。
【0034】
本実施形態では、第3層目の樹脂フィルム10cの裏面13と第4層目の樹脂フィルム10dの裏面13とが接着固定される構成を示した。しかしながら、樹脂フィルム10の裏面13同士が接着固定される構成は、上記例に限定されず、例えば、第2層目の樹脂フィルム10bの裏面13と第3層目の樹脂フィルム10cの裏面13とが接着固定される構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る多層基板の概略構成を示す断面図である。
【図2】多層基板の製造工程を示す断面図であり、(a)は、積層工程、(b)は、加熱加圧工程を示している。
【符号の説明】
【0036】
10・・・樹脂フィルム
30・・・導体パターン
30a・・・導体箔
50・・・ビア
100・・・多層基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導体層が形成された樹脂フィルムを含む、熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂フィルムを、該樹脂フィルムの厚さ方向に積層して積層体とする積層工程と、
該積層工程後、前記積層体を加熱しつつ加圧することで、複数の前記樹脂フィルム同士を接着固定して樹脂基材とする加熱加圧工程と、を備え、
前記樹脂基材に、前記導体層が多層に配置されてなる多層基板の製造方法であって、
前記樹脂フィルムとして、40℃、90%RH、前記樹脂フィルムの厚さが100μmにおける水蒸気の透過率の換算値が、2.6g/(m・day)以上の熱可塑性樹脂を用い、
前記積層工程では、前記表面全面に、前記導体層としてのベタ状の導体箔が貼着された樹脂フィルムを、前記導体箔が前記積層体の表面となるように積層し、
前記加熱加圧工程後、前記導体箔をパターニングすることで、前記導体層としての導体パターンを形成するエッチング工程を有することを特徴とする多層基板の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンとポリイミドとの混合樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、及びポリエーテルサルフォンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の多層基板の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程では、前記導体層としての導体パターンが前記表面の一部に形成された樹脂フィルムを、前記導体パターンが前記導体層の内層となるように積層することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129781(P2010−129781A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302954(P2008−302954)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】