説明

多層管用金型

【課題】 金型内の通路を簡素化し、樹脂の滞留を極小化するとともに、コストの低減も可能とした多層管用金型を提供する。
【解決手段】 第2金型3は、円筒状の外型11と、先端が上流側を向く円錐状内周面12bを有する大径コア12と、半径方向に延びて大径コア12と外型11とを結合するブリッジ13とからなる。大径コア12の円錐状内周面12b内に、先端が上流側を向く円錐状外周面15aを有する小径コア15が挿入されることで、大径コア12の内周面12bと小径コア15の外周面15aとの間にテーパ状内層樹脂通路32が形成されている。外型11、ブリッジ13および大径コア12を貫通して内層樹脂通路32に通じる内層樹脂導入通路31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を多層かつ環状に押し出して多層構造の熱可塑性樹脂管を製造する際に使用される多層管用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
多層管用金型として、特許文献1には、第1金型から外層樹脂を、第2金型から内層樹脂をそれぞれ導入し、第1金型に導入された外層樹脂を第1金型内の外層樹脂通路、第2金型内の外層樹脂通路および第3金型内の外層樹脂通路を介して第4金型内の外層樹脂通路に送るとともに、第2金型に導入された内層樹脂を第2金型内の内層樹脂通路および第3金型内の内層樹脂通路を介して第4金型内の内層樹脂通路に送り、第4金型内で別々に送られてきた外層樹脂および内層樹脂を合流させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3500414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の多層管用金型によると、導入通路が分岐部と組み合った多数の分岐部において中間の通路に分岐し、最後の中間通路が出口通路に分岐し、各出口通路が出口に接続しているという多数の複雑な通路が形成されており、金型の製造コストが高くつくだけでなく、分岐・合流部分で樹脂が滞留して製品不良が起こる可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、金型内の通路を簡素化し、樹脂の滞留を極小化するとともに、コストの低減も可能とした多層管用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による多層管用金型は、第1金型から外層樹脂を、第2金型から内層樹脂をそれぞれ導入し、第1金型に導入された外層樹脂を第1金型内の外層樹脂通路、第2金型内の外層樹脂通路および第3金型内の外層樹脂通路を介して第4金型内の外層樹脂通路に送るとともに、第2金型に導入された内層樹脂を第2金型内の内層樹脂通路および第3金型内の内層樹脂通路を介して第4金型内の内層樹脂通路に送り、第4金型内で別々に送られてきた外層樹脂および内層樹脂を合流させる多層管用金型において、第2金型は、円筒状の外型と、先端が上流側を向く円錐状内周面を有する大径コアと、半径方向に延びて大径コアと外型とを結合するブリッジとからなり、大径コアの円錐状内周面内に、先端が上流側を向く円錐状外周面を有する小径コアが挿入されることで、大径コアの内周面と小径コアの外周面との間にテーパ状内層樹脂通路が形成されるとともに、外型、ブリッジおよび大径コアを貫通して内層樹脂通路に通じる内層樹脂導入通路が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
第2金型の大径コアの内周面内に内層樹脂通路を形成するとともに、第2金型のブリッジ内を内層樹脂導入通路として利用するので、導入通路を含む内層樹脂通路が簡素化され、分岐・合流部分で樹脂が滞留する可能性が減少し、金型のコスト低減も可能となる。
【0008】
第5金型をさらに備えており、第5金型に、外周から半径方向内方に延びる被覆樹脂導入通路および第4金型との突き合わせ面において第4金型の外層樹脂通路に合流する被覆樹脂導入通路が設けられていることがある。
【0009】
第5金型を付加することで、三層管の製造が可能となる。三層管としては、例えば、内層および被覆層が非発泡熱可塑性樹脂層で形成され、外層が発泡熱可塑性樹脂層(例えば、熱可塑性樹脂にリサイクル樹脂を用いたもの)で形成される樹脂管が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
この発明の多層管用金型によると、第2金型は、円筒状の外型と、先端が上流側を向く円錐状内周面を有する大径コアと、半径方向に延びて大径コアと外型とを結合するブリッジとからなり、大径コアの円錐状内周面内に、先端が上流側を向く円錐状外周面を有する小径コアが挿入されることで、大径コアの内周面と小径コアの外周面との間にテーパ状内層樹脂通路が形成されるとともに、外型、ブリッジおよび大径コアを貫通してテーパ状内層樹脂通路に通じる内層樹脂導入通路が設けられているので、導入通路を含む内層樹脂通路が簡素化され、分岐・合流部分で樹脂が滞留して製品不良が起こる可能性が極小化され、コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による多層管用金型の1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1のII-II線(第2金型のブリッジの内層樹脂導入通路を通る横断面)に沿う斜視図である。
【図3】図3は、図1のIII-IIII線(第2金型の第3金型近傍部分における横断面)に沿う斜視図である。
【図4】図4は、図1のIV-IV線(第3金型の第2金型近傍部分における横断面)に沿う斜視図である。
【図5】図5は、図1のV-V線(第3金型の中央部分における横断面)に沿う斜視図である。
【図6】図6は、図1のVI-VI線(第4金型の第3金型側端部における横断面)に沿う斜視図である。
【図7】図7は、図1のVII-VII線(第4金型の第3金型近傍部分における横断面)に沿う斜視図である。
【図8】図8は、図1のVIII-VIII線(第4金型の中央部分における横断面)に沿う斜視図である。
【図9】図9は、第5金型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1から図9までに、この発明による多層管用金型を示している。
【0014】
多層管用金型(1)は、図1に示すように、略円柱状に形成された第1から第5までの金型(2)(3)(4)(5)(6)によって構成されており、第1金型(2)から導入された外層樹脂と第2金型(3)から導入された内層樹脂とが第3金型(4)を別々に流れて、第4金型(5)で合流して2層管とされ、第5金型(6)に導入された被覆樹脂が2層管に被せられることで3層管が形成されるようになされている。
【0015】
金型(2)(3)(4)(5)(6)同士は、芯合わせされてボルト(図示略)等の適宜な締結具で結合されている。
【0016】
第1金型(2)には、中央部において上流側(押出機側)に開口するとともに、徐々に径が広がって下流側の端面に通じる外層樹脂導入通路(21)が設けられている。
【0017】
第2金型(3)は、円筒状の外型(11)と、大径コア(12)と、半径方向に延びて外型(11)と大径コア(12)とを結合する2つのブリッジ(13)とからなる。
【0018】
大径コア(12)の外周面(12a)は、先端が上流側(第1金型(2)側)を向く円錐状とされており、大径コア(12)の外周面(12a)と外型(11)の円筒状内周面(11a)との間が第2金型(3)内の外層樹脂通路(22)とされている。
【0019】
大径コア(12)は、先端が上流側(第1金型(2)側)を向く円錐状内周面(12b)を有している。すなわち、大径コア(12)は、中実の円錐体ではなく、下流側(第3金型(4)側)に開口する中空の円錐状部分を有する円錐体とされている。
【0020】
第3金型(4)は、短円柱状の外型(14)と、外型(14)中央部から上流側(第2金型(3)側)に突出している小径コア(15)とからなる。外型(14)および小径コア(15)は、別体とされており、外型(14)に設けられた貫通めねじ部(図示略)と小径コア(15)に設けられたおねじ部(図示略)とがねじ合わされることで一体化されている。
【0021】
小径コア(15)は、先端が上流側(第2金型(3)側)を向く円錐状外周面(15a)を有する中実状の円錐体とされ、その円錐状外周面(15a)は、大径コア(12)の円錐状内周面(12b)よりも小径とされている。図3にも示すように、小径コア(15)は、大径コア(12)の円錐状内周面(12b)内に所要の間隙が存在するように挿入され、大径コア(12)の円錐状内周面(12b)と小径コア(15)の円錐状外周面(15a)との間に形成されたテーパ状(断面が円形の環状)間隙が第2金型(3)内の内層樹脂通路(32)とされている。
【0022】
第2金型(3)には、外型(11)、一方のブリッジ(13)および大径コア(12)を貫通して第2金型(3)内の内層樹脂通路(32)に通じる内層樹脂導入通路(31)が設けられている。すなわち、図2に示すように、大径コア(12)には、大径コア(12)の先端部近傍に位置している内層樹脂通路(32)の部分に通じるように、これを径方向に貫通する内層樹脂導入通路(31c)が設けられ、ブリッジ(13)には、大径コア(12)内の内層樹脂導入通路(31c)に通じるように、これを径方向に貫通する内層樹脂導入通路(31b)が設けられ、外型(11)には、ブリッジ(13)内の内層樹脂導入通路(31b)通じるように、これを径方向に貫通する内層樹脂導入通路(31a)が設けられており、これらの外型(11)内の内層樹脂導入通路(31a)、ブリッジ(13)内の内層樹脂導入通路(31b)および大径コア(12)内の内層樹脂導入通路(31c)からなる半径方向に延びる内層樹脂導入通路(31)から、第2金型(3)内の内層樹脂通路(32)に内層樹脂が送られる。
【0023】
第3金型(4)は、短円柱状で、第3金型(4)には、図4および図5にも示すように、周方向に複数(図示は4つ)に分割されて全体として環状をなす大径の外層樹脂通路(23)と、周方向に複数(図示は4つ)に分割されて全体として環状をなす小径の内層樹脂通路(33)とが形成されている。
【0024】
第4金型(5)は、他の金型(2)(3)(4)(6)に比べてやや長い円柱状とされており、第3金型(4)に連なっている部分には、図6にも示すように、別々の通路となっている大径で略環状の外層樹脂通路(24)および小径で略環状の内層樹脂通路(34)が形成されている。そして、図7にも示すように、大径の外層樹脂通路(24)の径が徐々に小さくなされることで、第4金型(5)の軸方向ほぼ中央部以降において、図8にも示すように、大径の外層樹脂通路(24)と小径の内層樹脂通路(34)とが合流させられて、合流通路(25)が形成されている。これにより、第4金型(5)の出口において、2層管が形成される。
【0025】
第5金型(6)は、短円柱状であり、図9にも示すように、第5金型(6)には、外周に開口し半径方向内方に延びる被覆樹脂導入通路(41)と、被覆樹脂導入通路(41)に連なり、第4金型(5)との突き合わせ面において第4金型(5)の外層樹脂通路(24)に合流する被覆樹脂通路(42)とが設けられている。この第5金型(6)により、被覆樹脂が2層管に被覆され、3層管が形成される。
【0026】
上記の多層管用金型(1)によると、第2金型(3)の大径コア(12)の内周面(12b)内にテーパ状内層樹脂通路(32)を形成するとともに、第2金型(3)のブリッジ(13)内を内層樹脂導入通路(31)として利用するので、導入通路(31)を含む内層樹脂通路(32)が簡素化される。これにより、多層管を形成するために、多数の直線状の通路が広がりながら合流するという通路構成を採る必要がなく、分岐・合流部分で樹脂が滞留する可能性が減少し、多層管用金型(1)のコスト低減も可能となる。
【0027】
なお、上記の実施形態では、ブリッジ(13)は、2つとされて、180°離れた位置に設けられることで、外型(11)の直径部分を形成しているが、ブリッジ(13)の数は、2つに限定されるものではない。また、第2金型(3)のブリッジ(13)内を内層樹脂導入通路(31)として利用する構成であれば、各金型(2)(3)(4)(5)(6)の構成は、適宜変更してもよい。第5金型(6)を省略して、2層管を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
(1) 多層管用金型
(2) 第1金型
(3) 第2金型
(4) 第3金型
(5) 第4金型
(6) 第5金型
(11) 外型
(12) 大径コア
(12b) 円錐状内周面
(13) ブリッジ
(15) 小径コア
(15a) 円錐状外周面
(31) 内層樹脂導入通路
(32) テーパ状内層樹脂通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型から外層樹脂を、第2金型から内層樹脂をそれぞれ導入し、第1金型に導入された外層樹脂を第1金型内の外層樹脂通路、第2金型内の外層樹脂通路および第3金型内の外層樹脂通路を介して第4金型内の外層樹脂通路に送るとともに、第2金型に導入された内層樹脂を第2金型内の内層樹脂通路および第3金型内の内層樹脂通路を介して第4金型内の内層樹脂通路に送り、第4金型内で別々に送られてきた外層樹脂および内層樹脂を合流させる多層管用金型において、
第2金型は、円筒状の外型と、先端が上流側を向く円錐状内周面を有する大径コアと、半径方向に延びて大径コアと外型とを結合するブリッジとからなり、大径コアの円錐状内周面内に、先端が上流側を向く円錐状外周面を有する小径コアが挿入されることで、大径コアの内周面と小径コアの外周面との間にテーパ状内層樹脂通路が形成されるとともに、外型、ブリッジおよび大径コアを貫通して内層樹脂通路に通じる内層樹脂導入通路が設けられていることを特徴とする多層管用金型。
【請求項2】
第5金型をさらに備えており、第5金型に、外周から半径方向内方に延びる被覆樹脂導入通路および第4金型との突き合わせ面において第4金型の外層樹脂通路に合流する被覆樹脂導入通路が設けられていることを特徴とする請求項1の多層管用金型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−43412(P2013−43412A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184210(P2011−184210)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】