説明

多層膜反射鏡、多層膜反射鏡の製造方法、及び露光装置

多層膜反射鏡において、反射率の入射角依存性を軽減することを目的とする。 基板1は、表面(図中上面)の粗さが0.2nmRMS以下となるまで研磨された低熱膨張ガラス製である。基板1の表面には、ピーク反射率の半値幅の広い、Ru/Si多層膜3が成膜されており、このRu/Si多層膜3上にピーク反射率値の高い、Mo/Si多層膜5が成膜されている。従って、Ru/Siのみの場合よりも反射率が高く、Mo/Si多層膜5のみの場合よりも半値幅が広い反射率ピークが得られる。また、RuはMoよりもEUV光の吸収が大きいので、Mo/Si多層膜5上にRu/Si多層膜3を成膜した構造よりも高い反射率が得られる。分光反射率において半値幅が広い多層膜は、反射率の角度依存性が小さいので、本発明によれば、投影光学系の結像性能を高く保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUVリソグラフィに用いられる多層膜反射鏡等に関し、特に、反射鏡表面における反射率の入射角依存性を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路の製造方法として、高い処理速度が得られる縮小投影露光が広く利用されている。縮小投影露光技術では、半導体集積回路素子の微細化の一層の進展に伴い、紫外線に代わって、波長11〜14nm程度の軟X線を使用する投影リソグラフィの開発が進められている(非特許文献1参照)。この技術は、最近ではEUV(Extreme Ultraviolet、極紫外線、軟X線)リソグラフィとも呼ばれている。EUVリソグラフィは、従来の光リソグラフィ(波長190nm程度以上)では実現不可能であった45nm以下の解像力を有する技術として期待されている。
【0003】
ところで、現在主流の可視或いは紫外光を利用した縮小投影露光光学系では、透過型の光学素子であるレンズが使用できる。そして、高解像度が求められる縮小投影光学系は、数多くのレンズによって構成されている。これに対し、EUV光(軟X線)の波長帯では、透明な物質が存在せず、物質の屈折率が1に非常に近いので、屈折を利用した従来の光学素子は使用できない。それに代わって、全反射を利用した斜入射ミラーや、界面での微弱な反射光の位相を合わせることによりその反射光を多数重畳させて全体としては高い反射率を得る多層膜反射鏡などが使用される。
【0004】
レンズを用いた投影光学系内においては、光が光軸に沿って一方向に進むような光学系を実現できるが、反射鏡で構成された投影光学系の場合、光束が何度も折り返される。このため、折り返された光束と反射鏡基板が空間的に干渉しないようにする必要が生じ、光学系の開口数(NA)に制約が生じる。
現在のところ、このような投影光学系として4枚或いは6枚の反射鏡からなるものが提案されている。十分な解像力を得るためには、投影光学系の開口数は大きい方が望ましく、より大きな開口数が得られる6枚光学系が有力であると考えられる。6枚光学系の例としては、高橋らが提案した構成がある(特許文献1、及び後述の図21参照)。
【0005】
縮小投影露光において縮小投影光学系が十分な性能を発揮するためには、照明光学系の構成も重要である。転写する回路パターンを形成したマスク上の露光領域を均一な強度で照明するとともに、投影光学系が十分な解像力を発揮するためには瞳内で均一な照射強度となっていることも必要である。また、スループットを確保するためにできるだけ強い光で照明を行うことが重要である。このような照明光学系の例としては、例えば、特許文献2に開示されているものがある。
【0006】
EUV光学系を構成する多層膜反射鏡では、高い反射率を得るのに適した材質は、入射光の波長帯により異なる。例えば、13.5nm付近の波長帯では、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を交互に積層したMo/Si多層膜を用いると、垂直入射で67.5%の反射率が得られる。また、11.3nm付近の波長帯では、Mo層とベリリウム(Be)層を交互に積層したMo/Be多層膜を用いると、垂直入射で70.2%の反射率が得られる(非特許文献2参照)。非特許文献2等で報告されている多層膜の反射率ピークの半値全幅(FWHM)は、垂直入射において波長13.5nmにピークを持つように周期長を調整したMo/Si多層膜の場合、およそ0.56nmである。
【0007】
ところで、多層膜反射鏡の反射率は、光の入射角や波長によって大きく変化することが知られている。図19は、従来の多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性の例を示すグラフである。図の横軸は、多層膜反射鏡に入射する光の入射角(degree(°))であり、縦軸は、波長(λ)13.5nmのEUV光に対する反射率(%)である。図から分かるように、従来の多層膜反射鏡では、入射角が0°〜5°付近までは、70%以上の高い反射率が得られているが、だいたい10°以上になると、反射率が大幅に低下している。
【0008】
図20は、従来の多層膜反射鏡の分光反射率特性の例を示すグラフである。図の横軸は入射光の波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。なお、入射角は0°(反射面に対して垂直に入射)とする。図から分かるように、従来の多層膜反射鏡では、波長13.5nm近傍(図の中央部)では、70%以上の高反射率が得られているが、それ以外の波長帯になると、反射率が急激に低下している。
【0009】
このような問題に対して、反射多層膜の周期構造(各層の膜厚)を不均一にすることにより、広い波長域に亘ってほぼ均一な反射率を有する反射多層膜がKuhlmannら(非特許文献3参照)によって提案されている。非特許文献3には、50層対の多層膜各層の厚さを市販の多層膜最適化プログラムを利用して調整して得た、反射率角度分布又は分光反射率において広い帯域を有する多層膜の構造が示されている。
【0010】
例えば、周期長が一定の多層膜では、垂直入射配置で反射率が最大となるように周期長を最適化した場合、高反射率を保つことができるのは入射角0°〜5°の範囲であり、入射角が10°になると反射率は大きく低下してしまう。これに対して、非特許文献3には、入射角が0°〜20°の範囲で反射率が約45%でほぼ一定となる膜厚不均一構造の多層膜が開示されている。また、通常のMo/Si多層膜の分光反射率ピークの半値全幅(FWHM)は0.56nm程度であるが、非特許文献3には、垂直入射で波長13nmから15nmにわたって反射率が30%とほぼ均一となる構造も示されている。
【0011】
上述のような、広い波長域での反射率の均一化と、広い入射角度範囲での反射率の均一化は、個別に制御できる特性ではなく、広い波長域で均一な反射率が得られる多層膜においては、広い入射角度範囲でも反射率の変化が小さくなる傾向がある。このような広い波長域で均一な反射率が得られる多層膜は、反射率ピーク値は通常の多層膜より低いものの広い波長領域のEUV光が利用できるため、入射光波長のバンド巾が広い場合等、用途によっては大きな光量が得られると期待できる。
【0012】
また、Mo/Si多層膜において、Γ値(多層膜の周期長に対するMo層の厚さの割合)を深さ方向で不均一にすることによって、反射率が上昇することがSinghら(非特許文献4参照)によって報告されている。Mo/Si多層膜のEUV反射率はΓ値が0.35〜0.4の場合に最大となるが、非特許文献4には、Mo/SiのΓ値を多層膜全体で0.4と一定の値とした場合よりも、多層膜の基板側(深層側)の部分で0.5に近づけた方が、反射率の上昇が得られることが示されている。
【0013】
ところで、波長13nm付近のEUV光に対して高い反射率が得られる反射多層膜の構成としては、Mo/Siの他にRu/Siも知られている(Ruはルテニウム)。nを屈折率、kを消衰係数(複素屈折率の虚部)とすれば、波長13.5nmにおけるシリコンの光学定数(n,k)は、
n(Si)=0.9993,
k(Si)=0.0018,
である。これに対し、モリブデンとルテニウムの光学定数(n,k)は、それぞれ、
n(Mo)=0.9211,
k(Mo)=0.0064,
n(Ru)=0.8872,
k(Ru)=0.0175,
である。
【0014】
EUV光に対する多層膜のように、多層膜自体に吸収がある場合、高い反射率を得るためには、多層膜を構成する物質の屈折率の差が大きく、且つ、吸収が小さいことが望ましい。上述の光学定数から分かるように、屈折率の点からはRu/Si多層膜が適しており、吸収の点からはMo/Si多層膜の方が高い反射率を得るために適している。これら2つの多層膜の場合、吸収の影響が勝り、Mo/Si多層膜の方がピーク反射率は高い。
【0015】
多層膜の反射率ピークの半値幅は屈折率の違いによってもたらされる。赤外、可視、紫外領域でよく知られている誘電体多層膜(屈折率が違う2つの物質を交互に成膜した多層膜)の反射率のピークの帯域全幅(2Δg)は、次式で表されることが知られている(例えば、非特許文献5参照)。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、nは、高屈折率物質の屈折率、nは、低屈折率物質の屈折率である。
上式から分かるように、多層膜を構成する2つの物質の屈折率差が大きいほど帯域幅は増大するため、Mo/Si多層膜よりもRu/Si多層膜の方が広い半値幅が得られる。膜による吸収がない場合、誘電体多層膜反射率のピーク値は100%に漸近するが、EUV領域では吸収があるため100%には達しない。
【0018】
また、吸収の大きさは波長に依存するため、波長に対する反射率の変化をプロットすると、反射率はピーク波長の前後で非対称になる。EUV領域における多層膜のピーク反射率は成膜ペア数の増大につれて上昇するが、ある程度のペア数で飽和する。飽和に達するペア数は、Mo/Si多層膜では約50ペア層であり、Ru/Si多層膜では約30ペア層である。反射率が飽和に達するのは、膜を透過する際の各界面での反射や吸収により、それより深い位置へはEUV光がほとんど到達せず、膜全体の反射に寄与しなくなるためである。Ru/Si多層膜はMo/Si多層膜よりも吸収が大きく、単一の界面での反射率も高いため、飽和に達するペア数がより少ない。
【特許文献1】特開2003−15040号公報
【特許文献2】特開平11−312638号公報
【非特許文献1】ダニエル・エイ・ティチノール(Daniel A.Tichenor)、外21名、「極紫外線実験装置の開発における最新情報(Recent results in the development of an integrated EUVL laboratory tool)」、「国際光工学会会報(Proceedings of SPIE)」、(米国)、国際光工学会(SPIE,The International Society for Optical Engineering)、1995年5月、第2437巻、p.292
【非特許文献2】クラウド・モンカー(Claude Montcalm)、外5名、「極紫外線リソグラフィに用いる多層反射膜コーティング(Multilayer reflective coatings for extreme−ultraviolet lithography)」、「国際光工学会会報(Proceedings of SPIE)」、(米国)、国際光工学会(SPIE,The International Society for Optical Engineering)、1998年6月、第3331巻、p.42
【非特許文献3】トーマス・カールマン(Thomas Kuhlmann)、外3名、「最適な分光反射率を有するEUV多層膜ミラー(EUV multilayer mirrors with tailored spectral reflectivity)」、「国際光工学会会報(Proceedings of SPIE)」、(米国)、国際光工学会(SPIE,The International Society for Optical Engineering)、2003年、第4782巻、p.196
【非特許文献4】マンディープ・シン(Mandeep Singh)、外1名、「EUVミラーにおける理論的反射率の改善(Improved Theoretical Reflectivities of Extreme Ultraviolet Mirrors)」、「国際光工学会会報(Proceedings of SPIE)」、(米国)、国際光工学会(SPIE,The International Society for Optical Engineering)、2000年7月、第3997巻、p.412
【非特許文献5】エイチ・エイ・マクラウド(H.A.Macleod)著、小倉繁太郎(外3名)訳、「光学薄膜」、日刊工業新聞社、1989年11月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
実際のEUVリソグラフィに利用する投影光学系では、基板にMo/Si多層膜を成膜した多層膜反射鏡によって構成される。
図21は、6枚の反射鏡で構成された投影光学系の例を示す。この投影光学系は、6枚の反射鏡CM1〜CM6から構成されており、マスクMで反射された光をウェハWに投影する。光学系の上流側(マスクMに近い側)の4枚の反射鏡CM1〜CM4は、マスクM上のマスクパターンの中間像を形成する第1反射結像光学系G1を構成し、下流側(ウェハWに近い側)の2枚の反射鏡CM5、CM6は、マスクパターンの中間像をウェハW上に縮小投影する第2反射結像光学系G2を構成する。
【0020】
マスクMで反射された光は第1凹面反射鏡CM1の反射面R1で反射されて、第2凸面反射鏡CM2の反射面R2で反射される。反射面R2で反射された光は、開口絞りASを通過して、第3凸面反射鏡CM3の反射面R3及び第4凹面反射鏡の反射面R4で順次反射された後、マスクパターンの中間像を形成する。そして、第1反射結像光学系G1を介して形成されたマスクパターンの中間像からの光は、第5凸面反射鏡CM5の反射面R5及び第6凹面反射鏡CM6の反射面R6で順次反射された後、ウェハW上にマスクパターンの縮小像を形成する。
【0021】
反射鏡表面に成膜するMo/Si多層膜の基板面内周期長分布は面内の反射率分布に直接影響し、反射率の面内分布は結像面での面内照度ムラや瞳面内の光量ムラとなって結像性能に影響するため、これらを考慮して最適な面内分布とする必要がある。但し、基板上に自由な膜厚分布で成膜を行うのは困難なため、光学系を構成した場合の光学系の光軸周りに軸対称な膜厚分布で最適化を行うのが一般的である。
【0022】
上述のように周期長分布を最適化しても次に述べるような問題がある。図21に示す投影光学系において、結像面上の1点に到達する光は、一方向からだけ結像面上に到達するのではなく、ある広がりを持った立体角空間から1点に収束する。つまり、結像面上の1点の結像に寄与する光束は、各反射鏡基板上の有限な面積を持つ領域で反射しており、結像面上であまり離れていない2点に対応する反射鏡基板上の領域は、互いに一部が重なり合っている。換言すれば、反射鏡基板上のある1点における反射は、結像面上で広がりを持った領域での結像に寄与しており、反射鏡上の同じ点で反射した光が結像面上の違う点に到達する。このとき、結像面上の違う点に到達する光は、反射鏡上の同じ点に違う角度で入射しており、反射面上のある点における光の入射角は広がりを持つ。
【0023】
多層膜反射鏡では、一定の波長に対して最適な周期長は入射角に依存するので、すべての入射角に最適な周期長は、厳密には存在しない。入射角の広がりがそれほど大きくなければ大きな影響は生じない。しかし、例えば図21に示したような光学系を構成する反射鏡基板に対して通常のMo/Si多層膜(周期長一定)の周期長面内分布を最適化し、透過光の波面収差が小さくなるように最適化しても、瞳面内の光強度には大きなムラが生じる。ここで、多層膜周期長の分布は、上述のような成膜方法の制約から光学系構成時の光軸周りに軸対称な分布の範囲で最適化されている。
【0024】
瞳面内で光強度にムラがあることは、実効的なNAがいびつに小さくなっていることと光学的に等価であるため、結像性能が大きく劣化してしまう。これは、通常のMo/Si多層膜では,反射率の入射角依存性が大きいために生じる問題である。このため、結像性能の劣化をもたらす反射鏡表面における反射率の入射角依存性を軽減し、高い結像性能を達成する方法が求められていた。
【0025】
また、投影光学系において高い結像性能を達成するためには、マスク上の照明光強度分布と照明光学系の瞳面内光強度分布も均一である必要がある。これは、照明光学系の瞳面内光強度分布が投影光学系において結象面での強度分布と瞳内の強度分布にそのまま反映されるためである。
さらに、現在提案されている照明光学系の多層膜反射鏡では、入射角の面内分布が大きい。このため、ある反射面上のすべての点において最適な周期長に厳密に合わせることには困難が伴う。これは、面内周期長分布の変化量を大きくせざるを得ず、成膜時の周期長分布制御や照明光学系としてのアライメントの際にわずかなズレが生じるため、想定された入射角に対応する膜厚と、実際の入射角に対応する膜厚とが異なり、反射率の大きな低下を招くからである。この場合、照明に利用できる光量が低下し、スループットが低下するという問題があるため、反射鏡表面における反射率の入射角依存性を軽減する方法が求められていた。
【0026】
本発明の目的は、多層膜反射鏡等における反射率の入射角依存性を軽減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の第1の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有し、以下の点を特徴とする。第1に、光の入射面側の多層膜(表層膜群)においては、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなる。第2に、表層膜群の反入射面側の多層膜(深層膜群)においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる。
【0028】
ここで、高屈折率膜又は低屈折率膜は、単一の層であっても、複数の層が重なった複合層であってもよい。また、高屈折率膜と低屈折率膜の間に他の層が介在していてもよい。
本発明では、『モリブデンを含む物質』とは、モリブデンそのもののほか、例えば、ロジウム(Rh)、炭素(C)、シリコン(Si)等を含むものである。即ち、『モリブデンを含む物質』とは、不純物としてRh、C、Siを含むモリブデンであっても、これらの物質とモリブデンとの化合物であってもよい(以下の『ルテニウムを含む物質』、『シリコンを含む物質』でも同様)。また、『ルテニウムを含む物質』とは、ルテニウムそのもののほか、例えば、ロジウム(Rh)、炭素(C)、シリコン(Si)等を含むものである。また、『シリコンを含む物質』とは、シリコンそのもののほか、例えば、炭素(C)、四ホウ化炭素(BC)、ホウ素(B)等を含むものである。
【0029】
上記第1の形態では、反射率ピークの半値幅が大きいRu/Si多層膜上に、反射率のピーク値の高いMo/Si多層膜が成膜されているため、Ru/Siのみの場合よりも反射率が高く、Mo/Si多層膜のみの場合よりも半値幅が広い反射率ピークが得られる。また、RuはMoよりもEUV光の吸収が大きいので、Mo/Si多層膜上にRu/Si多層膜を成膜した構造よりも高い反射率が得られる。分光反射率において半値幅が広い多層膜は、反射率の角度依存性が小さいので、本発明によれば、投影光学系の結像性能を高く保つことができる。
【0030】
第1の形態では、表層膜群における高屈折率膜と低屈折率膜の積層対の数が2〜10であることが好ましい。これにより、Mo/Si多層膜の積層数が10以下であることから、基板側に成膜されているRu/Siの影響で反射率ピークの半値幅は広く保たれる。また、最表面はRu/Si多層膜よりも反射率が高いMo/Si多層膜であるため、ピーク反射率は上昇する。これにより、Mo/Si多層膜、Ru/Si多層膜単独では得られなかった高反射率で、且つ、半値幅の広い多層膜が得られる。
【0031】
図22(A)は、Mo/Si多層膜とRu/Si多層膜の理論反射率の入射波長特性を示すグラフである。図の横軸は入射光の波長であり、縦軸は理論反射率(反射率の計算値)である。図中の実線は100ペア層のMo/Si多層膜の理論反射率を示し、破線は100ペア層のRu/Si多層膜の理論反射率を示す。図22(A)から分かるように、成膜ペア数が100ペア層と十分多いMo/Si多層膜の半値幅は0.6nmであり、Ru/Si多層膜の半値幅は0.8nmである。
【0032】
図22(B)は、Ru/Si多層膜上にMo/Si多層膜を成膜して構成された多層膜において、Mo/Si多層膜の成膜ペア層の数に対する半値幅とピーク反射率の変化を示すグラフである。図の横軸は、100ペア層のRu/Si多層膜上に成膜するMo/Si多層膜のペア層の数である。Mo/Si多層膜のペア層の数に対する半値幅は白抜き三角(△)で示されており、反射率のピーク値(ピーク反射率)は黒丸(●)で示されている。
【0033】
図22(B)から分かるように、Mo/Si多層膜のペア層の数が多くなると、ピーク反射率が上昇するが、だいたい15ペア層以上になるとほぼ飽和している。一方、半値幅は、Mo/Si多層膜のペア層の数が多くなると低下する。そして、Mo/Si多層膜のペア層の数が15ペア層になると0.7nmを下回り、Mo/Si多層膜の値(図22(A)参照)に近くなる。
【0034】
以上により、反射率上昇の効果を得て、しかも、半値幅減少の影響を最小限に留めるには、Mo/Si多層膜の成膜ペア数は2ペア層以上であることが好ましく、さらに好ましくは、5〜10ペア層であることが好ましい。第1の形態の多層膜反射鏡は、以下の方法により製造できる。即ち、基板上にルテニウムを含む物質とシリコンを含む物質を交互に堆積して、深層膜群を成膜する工程と、この深層膜群上にモリブデンを含む物質とシリコンを含む物質を交互に堆積して、表層膜群を成膜する工程とを有するものとすればよい。
【0035】
本発明の第2の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有し、以下の点を特徴とする。第1に、光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、表層膜群における反入射面側の付加層と、付加層における反入射面側の多層膜群(深層膜群)とを備えている。第2に、付加層の存在によって反射光の位相をずらすことにより、付加層がない場合よりも、反射鏡全体としての反射率ピーク値が低くされていると共にピーク周辺波長の反射率が高くされている。
【0036】
本発明の第3の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有し、以下の点を特徴とする。第1に、光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、表層膜群における反入射面側の付加層と、付加層における反入射面側の多層膜群(深層膜群)とを備えている。第2に、表層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなる。第3に、深層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる。第4に、付加層の厚さが、多層膜の周期長の略半分か、又は、『多層膜の周期長の略半分』に『多層膜の周期長の整数倍』を加えた厚さである。なお、表層膜群における低屈折率膜は、上記のようにルテニウム(Ru)を含む物質からなるものではなく、モリブデン(Mo)からなる物質に代えてもよい。また、深層膜群における低屈折率膜も、ルテニウムではなく、モリブデン(Mo)からなる物質に代えてもよい。
【0037】
上記第2及び第3の形態の多層膜反射鏡では、表層膜群の単位周期構造(ペア)の数が、10〜30であり、深層膜群のペアの数が、表層膜群のペアの数の5〜50%であることが好ましい。
上記第2及び第3の形態の多層膜反射鏡では、多層膜の最表面から10周期目ないし30周期目の位置に付加層が設けられているが、この付加層より深い位置にもEUV光が到達する。従って、付加層の反入射面側(基板側)にある多層膜群(深層膜群)からの反射光が、多層膜全体の反射率に寄与する。
【0038】
付加層の上下(入射面側、及び反入射面側)の周期的多層膜からの反射光の位相は、付加層の厚さのために反射率ピークの付近でずれるので、反射光の振幅は減衰する。このため、付加層の存在によって反射率ピークの先端部分で反射率が低下する。反射率が飽和するに至らないペア数の多層膜における反射率ピーク形状は頂上部分が尖った形状であるところ、ピーク部の反射率が低下することによりピークの頂上部分は平坦な形状に近づく(ピーク部がブロードな特性となる)。
【0039】
一方、ピークから離れた裾の部分では事情が大きく異なる。通常の周期構造では、最適化した波長(反射率ピークが得られる波長)から波長がずれている場合、表面近くの界面からの反射光は位相のズレが小さいために、重なり合うことによって振幅は増大するが、表面から離れた界面からの反射光の位相は逆位相となって振幅を減衰させる場合がある。Mo/SiやRu/Si多層膜の反射率ピークの裾の部分となる波長では、10ペア層目〜30ペア層目以降の界面からの反射光は反射光強度を低下させるように作用する。しかし、ここに付加層が加わると、それより深い位置にある界面からの反射光の位相が半波長分だけずれて、反射光の振幅は増大する。
【0040】
このように、表層膜群と深層膜群との間に付加層を設けることにより、反射率ピークの先端部分は平坦化し、反射率の裾の部分では反射率が上昇するので、反射率ピークの半値幅は増大する。Ru/Si多層膜或いはMo/Si多層膜では波長12〜15nmの範囲では理論的には60%を越える反射率が得られる。これらの多層膜において本発明の多層膜構造を用いることにより、反射率ピーク値が50%以上で、付加層を設けないRu/Si、Mo/Siよりも半値幅の広い反射率を有する多層膜が得られる。
【0041】
図23は、Mo/Si多層膜の周期長に対して、付加層(この例ではシリコン層)の厚さを変化させた場合の反射率ピーク形状を示す。図の横軸は入射光の波長であり、縦軸は反射率である。図の実線(i)は、付加層の厚さを多層膜の周期長の略半分(=約3.5nm)とした場合の反射率の波長特性を示し、破線(ii)及び一点鎖線(iii)はそれぞれ、付加層の厚さを、多層膜の周期長の略半分(=約3.5nm)より薄くした場合(付加層の厚さ=約2.8nm)、及び厚くした場合(付加層の厚さ=約4.2nm)の反射率の波長特性を示す。
【0042】
図23から分かるように、破線(ii)及び一点鎖線(iii)の場合には頂上部がそれほど平坦にはならないが、実線(i)の場合には、反射率ピークの頂上部がかなり平坦になっている。このことから、付加層の厚さを『多層膜の周期長の略半分』とすることが、ピーク付近での反射率の変化を小さくするために有効である。
『多層膜の周期長の半分』とは、多層膜中の周期構造部分における1周期の光学的厚さ(膜厚×屈折率)の半分という意味である。付加層の厚さは、光学的厚さの半分であるとよいが、厳密に前記『光学的厚さの半分』でなくてもよく、実質的にその厚さであればよい。従って、『付加層の厚さ』と『光学的厚さの半分』との差は、利用するEUV光の波長の5/100以内であることが望ましく、より好ましくは、利用波長の3/100以内であるとよい。
【0043】
多層膜構造における1周期の光学的厚さは、入射光の波長の約半分であるので、換言すれば、付加層の光学的厚さを、利用波長の略4分の1とする必要がある。なお、透過EUV光が境界面の法線となす角(屈折角)が大きくなるほど、単位周期構造における光路長が膜厚より長くなる(屈折角をθとすれば、光路長=膜厚/cosθ)。従って、付加層の厚さは、利用する際のEUV光の入射角度に応じて調整する必要がある。利用波長が例えば13.5nmの場合、『付加層の厚さ』は、『多層膜の周期長の半分』±0.68nmの範囲内であることが望ましく、入射角が5°〜15°の範囲での使用に際しては3.4±0.68nmの範囲内であることが望ましい。
【0044】
なお、本発明の多層膜の構成は、赤外、可視、紫外光で用いられ、反射膜の間に使用波長の4分の1の厚さのスペーサを付加するエタロンに若干類似する部分があるとも考えられる。しかし、本発明の多層膜は、以下に述べるように、構成、使用目的、特性の点においてエタロンとは全く異なる。一種のファブリペロー型共振器であるエタロンは主に狭帯域フィルターとして用いられている。
【0045】
図24は、エタロンの構造の模式図である。エタロン300は多重干渉を利用したデバイスであり、2つの高反射率ミラー301が、ある厚さのスペーサ302を挟んで配置された構造を有している。エタロン300に入射した光303(左側の矢印)はその大部分が、図の左側に反射され、反射光305となる。一方、2つのミラー301とスペーサ302は共振器の役割を果たし、入射光303のうち、共振条件を満たす波長の光だけを透過光304として透過させる。
【0046】
このため、鋭い透過率ピークが生じる。エタロン300は、上述のように共振条件を満たす波長の光だけを透過させるため、その波長近傍でのみ反射率が低下し、その他の波長では高反射率を維持する。従って、エタロン300の分光反射率特性は、鋭い谷を有するものとなる。なお、エタロン300を狭帯域のフィルターとして用いるためには、2つの反射面の反射率はどちらも高く、ほぼ等しくなければならない。
【0047】
これに対し、本発明の多層膜では、付加層の上下にある多層膜の反射率が同等であってはならず、基板側の多層膜の反射率が低いことが必要である。基板側の多層膜の反射率が表面側の多層膜と同等な場合、干渉による反射率の低下が狭い波長領域で生じ、ピーク頂上付近に鋭い谷が生じてしまうので、広帯域多層膜ではなくなってしまう。
非特許文献3に開示されているように、さまざまな周期長の層を重ね合わせた構造の多層膜でも、広帯域で比較的高い反射率が得られる。しかしながら、この場合には構造の評価が難しい。一般に、多層膜の構造を評価する手法としては、X線の小角散乱測定を行い、検出されるピーク角度から周期を評価する方法が用いられている。
【0048】
図25は、X線回折強度角度分布を変化させた場合に予想される回折ピーク形状を示すグラフである。図25(A)は、周期構造多層膜の回折ピーク形状を示し、図25(B)は、不均一周期構造の回折ピーク形状を示し、図25(C)は、付加層(この例ではシリコン層)を含む多層膜の回折ピーク形状を示す。図の横軸は入射光の入射角を示し、縦軸は反射率を示す。
【0049】
図25(A)に示すように、周期構造を有する多層膜では、入射角に対するピークが鋭く出ている。一方、広帯域多層膜として報告されている不等周期多層膜(非特許文献3参照)のように周期長が不均一の場合には、図25(B)に示すように、不規則な形状のピークが多数発生し、多層膜の周期長の評価が困難である。
これに対し本発明では、図25(C)に示すように、多層膜の周期構造中に付加層が加わっているだけなので、鋭い回折光のピークが存在し、多層膜周期長の評価は容易である。なお、付加層の厚さを直接測定することはできないが、本発明では付加層の厚さを制御できる。具体的には、多層膜の周期構造部分の周期長評価結果と成膜に要した時間から求めた、成膜作業において単位時間に付加層物質が成膜される厚さ(成膜速度)に基づいて、成膜時間を調整することで付加層の厚さを制御できる。
【0050】
また、本発明においては、深層膜群のペア層の数は、表層膜群のペア層の数の半分以下である。上述のように、付加層より基板側に多層膜が存在する場合、表層膜群だけが存在する場合の反射率に対して、反射率ピーク近傍における反射率が低下する。ここで、深層膜群のペア層の数が表層膜群の半分以下であるため、反射率の低下量は小さく、反射率ピークの形状は先端部が平坦化又はやや凹む程度であり、反射率ピーク値近傍が鋭く、深い谷となることはない。
【0051】
図26は、深層膜群のペア数を変えた場合のMo/Si多層膜の反射率ピーク形状の変化を示すグラフである。図の横軸は入射光の波長であり、縦軸は反射率である。図26の例では、付加層はシリコンである。図中の実線(i)、一点鎖線(ii)、破線(iii)は、それぞれ深層膜群を4ペア層、2ペア層、12ペア層とした場合の反射率を示し、表層膜群はいずれも20ペア層である。
【0052】
図26から分かるように、表層膜群のペア層数20に対して、深層膜群が2ペア層の場合(ii)には、反射率ピークが十分に平坦になっておらず尖鋭化しているが、深層膜群のペア層数を4ペア層まで増やした場合(i)には、反射率ピークは平坦化する。さらに深層膜群を増やして12ペア層の場合(iii)には、反射率ピークの頂上部に深い谷が形成され、平坦な形状が得られない。このように、深層膜群のペア層数は表層膜群のペア層数の少なくとも半分以下であることが好ましい。上述のように、本発明によれば、半値幅が広く、且つ、ピークの平坦な反射率ピークが得られる。
【0053】
また、上記第2及び第3の形態の多層膜反射鏡では、付加層を、シリコン(Si)、ボロン(B)或いはこれらを含む物質からなるものとすることができる。シリコン(Si)やボロン(B)の消衰係数kは、波長13.5nmにおいて、
k(Si)=0.0018,
k(B)=0.0041,
と比較的小さい。付加層の役割は、深層膜群と表層膜群の反射光の位相を1/2波長ずらすことであるから、吸収はできるだけ小さいことが望ましく、これらの物質、或いはこれらの物質を含む物質(例えばBC)を用いることにより、より高い反射率が達成される。
【0054】
本発明の第4の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有し、以下の点を特徴とする。第1に、光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、表層膜群の反入射面側の付加層と、付加層の反入射面側の多層膜群(深層膜群)とを備えている。第2に、表層膜群における入射面側の多層膜群(第1表層膜群)では、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなる。第3に、表層膜群における付加層側の多層膜群(第2表層膜群)では、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる。第4に、深層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる。
【0055】
上記第4の形態では、ルテニウムとシリコンからなる略周期的な多層膜中に付加層が加えられた構造の多層膜上に、モリブデンとシリコンからなる多層膜が形成されている。Ru/Si多層膜は周期的構造の場合にもMo/Si多層膜より半値幅が広く、付加層を加えた構造でもMo/Si多層膜よりも広い半値幅が得られる。この上にMo/Siを成膜することによってピーク反射率のピーク値を高めることができ、且つ、広い半値幅が得られる。
【0056】
本発明の第5の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、厚さがEUV光の中心波長の2分の1以上である介在層を有する。第2に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。
【0057】
上記第5の形態では、高屈折率膜と低屈折率膜との対(層対)は、その一部が2種類の物質からなっており、別の一部が3種類以上の物質からなっていてもよい。
また、第5の形態では、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含むものとしてもよい。例えば、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなるブロックと、L1/Hの層対の繰り返しからなるブロックとを含み、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数が1〜50回であるものとすることができる。この場合、層対に含まれる層の膜厚が、各層対ごとに異なっていてもよい。なお、L1とL2は、膜構成物質が異なるものとする(以下も同様)。さらに、第5の形態では、各膜の膜厚を任意に変化させながら積層して、波長13.1nm〜13.9nmの光に対する反射率を45%以上としてもよい。
【0058】
本発明の第6の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含む。第2に、多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から3番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から4番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から5番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から6番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から7番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から8番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなる。第3に、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回である。第4に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。
【0059】
ここでの『EUV光反射率の比較的高いEUV光波長』とは、横軸を波長、縦軸を反射率としたグラフにおいて、反射率の最大値を含むと共に、グラフが平坦になっている(反射率がほぼ一定となっている)範囲内の意味である。例えば前述の図26の実線(i)では、波長が約13.2〜約13.6nmの範囲内である。EUV波長領域における所望の波長(例えば13.5nm)を含む波長範囲が0.5nm、より好ましくは0.6nmの範囲内で反射率が50%以上で、なおかつ反射率ピークが平坦(反射率の変動が±5%以内)な形状である範囲内であることが好ましい。
【0060】
また、『EUV光反射率の比較的高い入射角度』とは、横軸を入射角度、縦軸を反射率としたグラフにおいて、反射率の最大値を含むと共に、グラフが平坦になっている(反射率がほぼ一定となっている)範囲内の意味である。なお、第6の形態では、少なくとも18度から25度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率が50%以上であることが好ましい。入射角0〜25度以内における所望の角度(例えば20度)を含む入射角度範囲が5度、より好ましくは7度の入射角度範囲内で反射率が50%以上で、なおかつ反射率ピークが平坦(反射率の変動が±5%以内)な形状である範囲内であることが好ましい。
【0061】
本発明の第7の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含む。第2に、多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から3番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から4番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から5番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から6番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から7番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から8番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなる。第3に、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回である。第4に、比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。
【0062】
上記第7の形態では、反射多層膜の合計膜厚を、反射面内の各位置における光の入射角に応じて任意に変化させて、反射面全面で反射率を均一化することができる。また、第7の形態では、反射多層膜の合計膜厚を、反射多層膜中の各層の膜厚の比率を維持したまま変化させて、少なくとも0度から20度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率を50%以上とすることができる。
【0063】
本発明の第8の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含む。第2に、多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から3番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から4番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から5番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から6番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から7番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から8番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から9番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から10番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から11番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から12番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から13番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなる。第3に、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回である。第4に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。第8の形態では、少なくとも0度から20度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率が45%以上であることが好ましい。
【0064】
本発明の第9の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含む。第2に、多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から3番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から4番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から5番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から6番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から7番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から8番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から9番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から10番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から11番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から12番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から13番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、基板から14番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなる。第3に、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回である。第4に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。第9の形態では、波長13.1nm〜13.9nmの光に対する反射率が45%以上であることが好ましい。
【0065】
本発明の第10の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを、反射多層膜が含む。第2に、多層膜反射鏡の基板側のブロックは、1層のHであり、基板から2番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、基板から3番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなる。第3に、各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回である。第4に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。
【0066】
本発明の第11の形態では、多層膜反射鏡は、EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜を基板上に交互に積層した反射多層膜を備え、以下の点を特徴とする。第1に、高屈折率膜の少なくとも1層がEUV光の中心波長の2分の1以上の厚さを有する。第2に、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている。
【0067】
本発明の露光装置は、感応基板上にEUV光を選択的に照射してパターンを形成する露光装置であって、光学系中に上記の多層膜反射鏡を有することを特徴とする。本発明の露光装置では、投影光学系、照明光学系の少なくとも一部に帯域の広い多層膜が成膜されているので、結像面上での照度と瞳内光量とを均一にでき、高い結像性能を保つことができる。また、投影光学系において周期長面内分布の大きなミラーのアライメント誤差などに起因する光量低下を防止できる。
【発明の効果】
【0068】
本発明の多層膜反射鏡は、反射率が比較的高く、且つ、半値幅が広い反射率ピーク特性が得られる。分光反射率の半値幅が広い多層膜は、反射率の角度依存性が小さいので、本発明によれば、投影光学系の結像性能を高く保つことができる。
本発明の露光装置は、このような多層膜反射鏡を用いているので、結像面上での照度と瞳内光量とを均一にすることができ、高い結像性能を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施例に係る多層膜反射鏡を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を、入射光の波長に対する依存性として示したグラフである。
【図3】本発明の第1の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を、入射光の入射角度に対する依存性として示したグラフである。
【図4】本発明の第2の実施例に係る多層膜反射鏡を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフであり、(A)は入射光の波長に対する依存性を示し、(B)は入射光の入射角度に対する依存性を示す。
【図6】本発明の第3の実施例に係る多層膜反射鏡を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフであり、(A)は入射光の波長に対する依存性を示し、(B)は入射光の入射角度に対する依存性を示す。
【図8】本発明の第4の実施例に係る多層膜反射鏡を示す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフであり、(A)は入射光の波長に対する依存性を示し、(B)は入射光の入射角度に対する依存性を示す。
【図10】本発明の第5の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。
【図11】本発明の第6の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。
【図12】本発明の第6の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。
【図13】本発明の第7の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。
【図14】本発明の第8の実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。
【図15】本発明の第9の実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。
【図16】本発明の第10の実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。
【図17】本発明の第10の実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。
【図18】本発明の一実施形態に係る露光装置を模式的に示す図である。
【図19】従来の多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性の例を示すグラフである。
【図20】従来の多層膜反射鏡の分光反射率特性の例を示すグラフである。
【図21】6枚の反射鏡で構成された光学系の例を示す図である。
【図22】(A)は、Mo/Si多層膜とRu/Si多層膜の理論反射率の入射波長特性を示すグラフであり、(B)は、Ru/Si多層膜上にMo/Si多層膜を成膜して構成された多層膜において、Mo/Si多層膜の成膜ペア層の数に対する半値幅とピーク反射率の変化を示すグラフである。
【図23】Mo/Si多層膜の周期長に対して、付加層(シリコン層)の厚さを変化させた場合の反射率ピーク形状を示す。
【図24】エタロンの構造の模式的に示す図である。
【図25】X線回折強度角度分布を変化させた場合に予想される回折ピーク形状を示すグラフであり、(A)は周期構造多層膜の場合、(B)は不均一周期構造の場合、(C)は付加層を含む多層膜の場合をそれぞれ示す。
【図26】深層膜群のペア数を変えた場合のMo/Si多層膜の反射率ピーク形状の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0071】
図1は、本発明の第1の実施例に係る多層膜反射鏡の断面模式図である。基板1は、表面(図中上面)の粗さが0.2nmRMS以下となるまで研磨された低熱膨張ガラス製である。基板1の表面には、Ru/Si多層膜3が20ペア層成膜されており、このRu/Si多層膜3上には、Mo/Si多層膜5が5ペア層成膜されている。Ru/Si多層膜3の周期長(図中にd11として示す、Ru/Siの単位周期構造(層対)の厚さ)は6.86nmであり、Mo/Si多層膜5の周期長(図中にd12として示す、Mo/Siの層対の厚さ)は6.9nmである。これらの多層膜のΓ値は、いずれの単位周期構造においても0.4である。なお、Γ値とは、多層膜の周期長(d)に占めるRu層又はMo層の厚さ(dRu、又は、dMo)の割合(Γ=dRu/d、又は、Γ=dMo/d)である。
【0072】
ここで、本実施例の多層膜の製造方法について説明する。まず、低熱膨張ガラス製基板1の表面を、0.2nmRMS以下となるまで研磨する。次に、基板1の表面に、マグネトロンスパッタにより、Ru/Si多層膜3を20ペア層成膜する。そして、Ru/Si多層膜3の表面に、マグネトロンスパッタにより、Mo/Si多層膜5を5ペア層成膜する。
【0073】
図2、図3は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフである。図2(A)、(B)は、入射光の波長に対する依存性を示し、図3(A)、(B)は、入射光の入射角度に対する依存性を示す。図2の横軸は、入射光の波長である。図3の横軸は入射角度(以下、入射角度は、反射面の法線と入射光線とがなす角である)である。両図において、縦軸は多層膜の反射率であり、実線(i)は本実施例の多層膜(深層側Ru/Si20ペア層、表層側Mo/Si5ペア層)の反射率である。図2(A)、図3(A)の破線(ii)、及び図2(B)、図3(B)の破線(iii)は比較例である。比較例(ii)は、26ペア層のRu/Si多層膜の反射率であり、比較例(iii)は、27ペア層のMo/Si多層膜の反射率である。
【0074】
図2(A)に示すように、本実施例の多層膜(i)の反射率ピーク値は69.7%、半値幅は0.86nmである。これに対し、比較例(ii)(26ペア層のRu/Si多層膜)では、本実施例(i)と同様に半値幅は0.86nmと広いが、反射率ピーク値は67.4%と2%以上低い。また、図2(B)に示すように、比較例(iii)(27ペア層のMo/Si多層膜)では、ピーク値は約70.0%で本実施例(i)とほぼ同等だが、半値幅は0.72nmと0.1nm以上狭い。このように、Ru/Si多層膜上にMo/Si多層膜を成膜することにより、ピーク値が高く、且つ、半値幅の広い反射率が得られる。
【0075】
図3(A)に示すように、本実施例の多層膜(i)は、入射角0°〜約10°の範囲において反射率が最大でほぼ一定であるという点で、比較例(ii)と同様であるが、比較例(ii)よりもピーク反射率が高い。また、図3(B)に示すように、本実施例の多層膜(i)は、比較例(iii)よりもピーク反射率が高く、そのピーク反射率が一定の入射角範囲が比較例(iii)よりも広い。このように、本実施例では、広い入射角範囲においてほぼ一定の高い反射率が得られる。
【0076】
なお、本実施例で挙げた周期長は一例であり、目的とする使用波長に合わせて周期長を調整すればよい。また、本実施例においては、多層膜をマグネトロンスパッタにより成膜しているが、成膜方法はこれに限るものではなく、イオンビームスパッタや真空蒸着によって成膜してもよい。本実施例においては、多層膜のΓ値を0.4としているが、Γ値はこれに限るものではなく、周期構造の制御が可能ならば、例えば、基板側でΓ値を0.5程度まで大きくしてもよい。この場合、より高い反射率が得られる(前掲の非特許文献4参照)。
【実施例2】
【0077】
図4は、本発明の第2の実施例に係る多層膜反射鏡の断面模式図である。基板10は、表面(図中上面)の粗さが0.2nmRMS以下となるまで研磨された低熱膨張ガラス製である。基板10の表面には、Mo/Si多層膜(深層膜群)11が4ペア層成膜されている。このMo/Si多層膜11の周期長(Mo/Siペア層の厚さ)は6.9nmであり、Γ値は0.5である。
【0078】
Mo/Si多層膜11の表面には、付加層12(この例ではシリコン層)が形成されている。この付加層12の厚さは、光学的厚さが入射光の波長の4分の1程度になるように調整されている。本実施例では、付加層12の厚さは、およそ3.5nmである。さらに、この付加層12の表面には、周期長=6.9nm、Γ値=0.4のMo/Si多層膜(表層膜群)13が20ペア層成膜されている。なお、図では、表層膜群13及び深層膜群11は、一層に簡略化して示している。
【0079】
図5は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフである。図5(A)は、入射光の波長に対する依存性を示し、図5(B)は、入射光の入射角度に対する依存性を示す。図5(A)の横軸は、入射光の波長であり、図5(B)の横軸は入射角度である。両図において縦軸は、反射率計算値を示す。図の実線(W1)は、本実施例の多層膜反射鏡の反射率を示し、破線(C)は比較例を示している。比較例(C)は、40ペア層のMo/Si多層膜の反射率を示す。
【0080】
図5(A)に示すように、本実施例の多層膜(W1)の反射率ピークの半値幅は0.9nm以上ある。また、本実施例(W1)の反射率ピークの形状は頂上が平坦な形状になっており、波長13.2nm〜13.7nmの範囲において約52%とほぼ一定である。これを比較例(C)と比較すると、本実施例の多層膜(W1)の反射率のピーク値は、単純な周期構造多層膜である比較例(C)には及ばないが、広い波長域に亘る反射率均一性は非常に優れていることが分かる。
【0081】
図5(B)に示すように、本実施例の多層膜(W1)は、入射角度が0°〜約13°の広範囲に亘り、反射率がほぼ一定である。これに対し比較例(C)では、反射率がほぼ一定の入射角度範囲は0°〜約7°である。本実施例は、反射率が一定の範囲が比較例(C)よりも明らかに広い。従って、本実施例によれば反射率の入射角依存性が大きく軽減され、広い入射角範囲において高い反射率が得られることが分かる。
【0082】
以下、実施例2の補足事項を説明する。本実施例では、付加層12の上下で多層膜のΓ値を変えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、Γ値が同じでもよい。また、本実施例では付加層12の材質としてシリコンを使用しているが、付加層の材質はこれに限るものではない。付加層の材質としては、シリコンのほか、EUV領域での吸収の少ない、ボロン(B)、Mo、Ru、或いは、これらを含む4ホウ化炭素(BC)、炭化シリコン(SiC)等が好ましい。また、反射率のわずかな低下が大きな問題にならない場合にはその他の物質でもよい。但し、どの物質を用いる場合であっても、付加層12の厚さは、その光学的厚さが入射光の波長の4分の1程度(多層膜周期長の略半分)、或いは、それに周期長の整数倍を加えた厚さである必要がある。以上の補足事項は、後述の実施例3、実施例4も同様である。
【0083】
本実施例では、付加層12を挟んで基板側に4ペア層と入射側に20ペア層の成膜を行っているが、ペア数はこれに限るものではない。使用目的によって、適当な反射率或いは均一な反射率が得られるペア数に変更することが望ましい。
【実施例3】
【0084】
図6は、本発明の第3の実施例に係る多層膜反射鏡の断面模式図である。基板20は、表面(図中上面)の粗さが0.2nmRMS以下となるまで研磨された低熱膨張ガラス製である。基板20の表面には、Ru/Si多層膜(深層膜群)21が5ペア層成膜されている。このRu/Si多層膜21の周期長(Ru/Siペア層の厚さ)は6.96nmであり、Γ値は0.5である。
【0085】
このRu/Si多層膜21の表面には、付加層22(この例ではシリコン層)が形成されている。この付加層22の厚さは、光学的厚さが入射光の波長の4分の1程度になるように調整されている。本実施例では、付加層22の厚さは、およそ3.85nmである。さらに、この付加層22の表面には、周期長=6.96nm、Γ値=0.4のRu/Si多層膜(表層膜群)23が20ペア層成膜されている。
【0086】
図7は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフである。図7(A)は、入射光の波長に対する依存性を示し、図7(B)は、入射光の入射角度に対する依存性を示す。図7(A)の横軸は、入射光の波長であり、図7(B)の横軸は入射角度である。両図において縦軸は、反射率計算値を示す。図の実線(W2)は、本実施例の多層膜反射鏡の反射率を示し、破線(C)は比較例を示している。比較例(C)は、40ペア層のMo/Si多層膜の反射率を示す。
【0087】
図7(A)に示すように、本実施例の多層膜(W2)の反射率ピークの半値幅は1.0nm以上ある。また、本実施例(W2)の反射率ピークの形状は頂上が平坦な形状になっており、波長13.2nm〜13.7nmの範囲において約60%とほぼ一定である。これを比較例(C)と比較すると、本実施例の多層膜(W2)の反射率のピーク値は、単純な周期構造多層膜である比較例(C)には及ばないが、広い波長域に亘る反射率均一性は非常に優れていることが分かる。
【0088】
図7(B)に示すように、本実施例の多層膜(W2)は、入射角度が0°〜約13°の広範囲に亘り、反射率がほぼ一定である。これに対し比較例(C)では、反射率がほぼ一定の入射角度範囲は0°〜約7°である。従って、本実施例は、反射率が一定の範囲が比較例(C)よりも明らかに広い。このように本実施例では、反射率の入射角依存性が大きく軽減され、広い入射角範囲において高い反射率が得られることが分かる。
【0089】
なお、本実施例では、付加層22を挟んで基板側に5ペア層と入射側に20ペア層の成膜を行っているが、ペア数はこれに限るものではない。使用目的によって、適当な反射率或いは均一な反射率が得られるペア数に変更することが望ましい。
【実施例4】
【0090】
図8は、本発明の第4の実施例に係る多層膜反射鏡の断面模式図である。基板30は、表面(図中上面)の粗さが0.2nmRMS以下となるまで研磨された低熱膨張ガラス製である。基板30の表面には、Ru/Si多層膜(深層膜群)31が5ペア層成膜されている。Ru/Si多層膜31の周期長(Ru/Siペア層の厚さ)は6.96nmであり、Γ値は0.5である。
【0091】
Ru/Si多層膜31の表面には、付加層32(この例ではシリコン層)が形成されている。付加層32の厚さは、光学的厚さが入射光の波長の4分の1程度になるように調整されている。本実施例では、付加層32の厚さは、およそ3.75nmである。さらに、この付加層32の表面には、周期長=6.96nm、Γ値=0.4のRu/Si多層膜(第2表層膜群)33が16ペア層成膜されており、このRu/Si多層膜33の表面に周期長=6.9nm、Γ値=0.4のMo/Si多層膜(第1表層膜群)34が5ペア層成膜されている。
【0092】
図9は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率計算値を示すグラフである。図9(A)は、入射光の波長に対する依存性を示し、図9(B)は、入射光の入射角度に対する依存性を示す。図9(A)の横軸は、入射光の波長であり、図9(B)の横軸は入射角度である。両図において、縦軸は反射率計算値を示し、実線(W3)は本実施例の多層膜反射鏡の反射率を示し、破線(C)は比較例を示す。比較例(C)は、40ペア層のMo/Si多層膜の反射率を示す。
【0093】
図9(A)に示すように、本実施例の多層膜(W3)の反射率ピークの半値幅は1.0nm以上ある。また、本実施例(W3)の反射率ピークの形状は頂上が平坦な形状になっており、波長13.2nm〜13.7nmの範囲において約62%とほぼ一定である。これを比較例(C)と比較すると、本実施例の多層膜(W3)の反射率のピーク値は単純な周期構造多層膜である比較例(C)には及ばないが、広い波長域に亘る反射率均一性は非常に優れていることが分かる。
【0094】
図9(B)に示すように、本実施例の多層膜(W3)は、入射角度が0°〜約10°の広範囲に亘り、反射率がほぼ一定であり、入射角度が約15°までは、反射率が大きく低下しない。これに対し比較例(C)では、反射率がほぼ一定の入射角度範囲は0°〜約7°であり、入射角度が約10°付近で反射率が急峻に低下している。従って、本実施例は、反射率が一定の範囲が比較例(C)よりも明らかに広い。このように本実施例では、反射率の入射角依存性が大きく軽減され、広い入射角範囲において高い反射率が得られることが分かる。
【0095】
なお、本実施例では、付加層32を挟んで、基板側に5ペア層、入射側に21(=16+5)ペア層の成膜を行っているが、ペア数はこれに限るものではない。使用目的によって、適当な反射率或いは均一な反射率が得られるペア数に変更することが望ましい。
【実施例5】
【0096】
次に、本発明の第5の実施例に係る多層膜反射鏡について説明する。本実施例の多層膜は、15°〜25°の範囲の入射角で入射する波長13.5nmのEUV光(極端紫外光)に対して、一様に高い反射率が得られるように各層の材料構成及び膜厚を、Needle Methodを用いて最適化したものである。
本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英の基板表面に成膜されたものであり、異なる構造の層対(単位周期構造)が繰り返し積層された、複数のブロックを含んでいる。ここで、層対(単位周期構造)とは、EUV光に対する屈折率の低い物質からなる低屈折率膜と、屈折率の高い物質からなる高屈折率膜が複数積層されたものである。本実施例においては、低屈折率物質としてモリブデン(Mo)及びルテニウム(Ru)、高屈折率物質としてシリコン(Si)を用いている。
【0097】
なお、以下の説明では、多層膜の構成を各ブロック中の1層対の構成(単位周期構造)と層対を積層した回数(繰り返し回数)で表し、各ブロックを基板から数えた番号(A番目)で表す。
本実施例の多層膜の構成を表1に示す。なお、本実施例の多層膜の合計膜厚は450nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。
【0098】
【表1】

【0099】
以下の表2、表3、表4に、本実施例の多層膜各層ごとの膜厚を示す。これらの表では、多層膜各層を基板側から数えた番号で表し、各層ごとに『好ましい膜厚の範囲(nm)』及び『より好ましい膜厚(nm)』を記している。なお、多層膜の層の数が多いため、複数の表に分けて示した。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
表によると、基板側から数えて、54層目及び80層目のシリコン層は、他の層に比べて厚くなっている(以下の説明では、これを極厚シリコン層と呼ぶ)。極厚シリコン層は、EUV光の中心波長の2分の1以上の厚さを有し、各層の界面で反射されるEUV光の位相差を調整して、EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域を広帯域化する介在層としての役割を果たす。
【0104】
図10は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。図の横軸は、多層膜反射鏡に入射する光の入射角(degree(°))であり、縦軸は、波長(λ)13.5nmのEUV光に対する反射率(%)である。図から分かるように、本実施例の多層膜では、広い入射角範囲(少なくとも入射角18°〜25°)のEUV光に対して50%以上の高い反射率が得られる。特に、図に示す領域A1(入射角がθ1(18.4°)〜θ2(24.8°)の範囲)は、反射率が60%付近でほぼ一定しており、反射率の入射角依存性がほとんどないので、高解像度が得られる。
【実施例6】
【0105】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。本実施例の多層膜は、0°〜20°の入射角範囲内で入射する波長13.5nmのEUV光に対して高反射率が得られるように、各層ごとの膜厚の比率を維持したまま各層の材料構成及び合計膜厚を最適化したものである。本実施例の多層膜は、例えば、同一反射面内で部分ごとに光線入射角の異なる光学素子に対して各部ごとに合計膜厚を制御し反射面全域で一様に高い反射率を得るために用いられる。
【0106】
本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英基板上に、次の表5に示す構造の多層膜を成膜したものである。なお、本実施例の多層膜の合計膜厚は420nm〜430nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。
【0107】
【表5】

【0108】
以下の表6、表7、表8に、本実施例の多層膜各層ごとの膜厚を示す。なお、多層膜の層の数が多いため、複数の表に分けて示した。これらの表によれば、基板側から数えて、28層目及び69層目のシリコン層が極厚シリコン層となっている。
【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
図11及び図12は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。図の横軸は、多層膜反射鏡に入射する光の入射角(degree(°))であり、縦軸は、波長(λ)13.5nmのEUV光に対する反射率(%)である。図11及び図12の各図に示された反射率は、多層膜各層の膜厚の比率を維持したまま、合計膜厚を変化させた多層膜について得られたものである。各図に付された膜厚は、図11(A)の多層膜の合計膜厚を1.000としたときの値であり、1.000(図11(A))〜0.9650(図12(G))の範囲で0.0025間隔で変化させている。
【0113】
各図中で2本の縦の点線に挟まれた領域A2は、高反射率で、且つ、反射率の入射角依存性の小さい入射角範囲を示す。図11及び図12から分かるように、合計膜厚が厚くなるほど、領域A2は、入射角の大きい方(図の右側)にシフトしている。例えば、図12(G)の領域A2は、入射角が約4°〜約9°の範囲であるのに対し、図11(A)では、約17°〜約20°の範囲である。従って、本実施例によれば、多層膜の合計膜厚を変化させることにより、入射角が0°〜20°の広い範囲で、50%以上の高い反射率が得られる。
【実施例7】
【0114】
次に、本発明の第7の実施例について説明する。本実施例の多層膜は、入射角0°〜20°の範囲の全域に亘って、波長13.5nmのEUV光に対して高い反射率が得られるように、各層の材料構成及び膜厚を最適化したものである。本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英基板上に、次の表9に示す構造の多層膜を成膜したものである。なお、本実施例の多層膜の合計膜厚は280nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。
【0115】
【表9】

【0116】
図13は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。図の横軸は、多層膜反射鏡に入射する光の入射角(degree(°))であり、縦軸は、波長(λ)13.5nmのEUV光に対する反射率(%)である。図から分かるように、本実施例の多層膜反射鏡によれば、0°〜20°の広い入射角全域に亘って45%以上(より詳しくは54%以上)の高い反射率が得られる。
【実施例8】
【0117】
次に、本発明の第8の実施例について説明する。本実施例の多層膜は、垂直に入射する波長13.1nmから13.9nmまでのEUV光(極端紫外光)に対して高い反射率が得られるように、各層の材料構成及び膜厚を最適化したものである。本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英基板上に、次の表10に示す構造の多層膜を成膜したものである。なお、本実施例の多層膜の総膜厚は360nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。
【0118】
【表10】

【0119】
以下の表11、表12に、本実施例の多層膜の各層ごとの膜厚を示す。なお、多層膜の層の数が多いため、複数の表に分けて示した。これら表によれば、基板側から数えて、28層目、51層目、73層目及び75層目のシリコン層が極厚シリコン層となっている。
【0120】
【表11】

【0121】
【表12】

【0122】
図14は、本実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。図の横軸は入射光の波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。なお、光の入射角は0°(反射面に対して垂直に入射)とする。図から分かるように、本実施例の多層膜反射鏡によれば、上記の広い波長範囲に亘って45%以上(より詳しくは50%以上)の高い反射率が得られる。
【実施例9】
【0123】
次に、本発明の第9の実施例について説明する。本実施例の多層膜は、垂直に入射する波長13.5nmのEUV光に対して極力高い反射率が得られるように、各層の材料構成及び膜厚を最適化したものである。本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英基板上に、次の表13に示す構造の多層膜を成膜したものである。なお、本実施例の多層膜の総膜厚は510nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。
【0124】
【表13】

【0125】
図15は、本実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。図の横軸は入射光の波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。なお、入射角は0°(反射面に対して垂直に入射)とする。図から分かるように、本実施例の多層膜反射鏡によれば、波長13.5nmのEUV光に対して、前述の図20よりも高い、70%以上(例えば76%程度)の反射率が得られる。
【実施例10】
【0126】
次に、本発明の第10の実施例について説明する。本実施例の多層膜は、垂直入射時において波長13.5nmから14.2nmまでのEUV光(極端紫外光)に対して高い反射率が得られるように、各層の材料構成及び膜厚を最適化したものである。本実施例の多層膜は、精密に研磨された合成石英基板上に、モリブデン層(低屈折率膜層)とシリコン層(高屈折率膜層)を交互に積層したMo/Si多層膜である。
【0127】
なお、本実施例の多層膜の総膜厚は330nm程度である。また、多層膜の各層の厚さは一定ではなく、多層膜中の位置によって変化させて、所望の反射率が得られるように調整することが好ましい。以下の表14、表15に、本実施例の多層膜各層ごとの膜厚を示す。なお、多層膜の層の数が多いため、複数の表に分けて示した。これた表によれば、基板側から数えて、46層目のシリコン層(多層膜のほぼ中間に位置するシリコン層)が極厚シリコン層となっている。
【0128】
【表14】

【0129】
【表15】

【0130】
図16は、本実施例に係る多層膜反射鏡の分光反射率特性を示すグラフである。なお、この多層膜の成膜方法には、イオンビームスパッタを用いている。図の横軸は入射光の波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。なお、光の入射角は0°(反射面に対して垂直に入射)とする。図16の実線は、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用いて成膜した場合の反射率の波長特性を示しており、破線は、スパッタガスとしてクリプトン(Kr)ガスを用いて成膜した場合の反射率の波長特性を示している。
【0131】
図16から分かるように、本実施例の多層膜反射鏡によれば、上記の広い波長範囲に亘って45%以上の高い反射率が得られる。また、破線のKrガスを用いて成膜した場合には、実線のArガスを用いて成膜した場合と比べて、反射率ピークが大きく、また分光反射率の半値幅が広くなっている。
図17は、本実施例に係る多層膜反射鏡の反射率の入射角依存性を示すグラフである。図の横軸は、多層膜反射鏡に入射する光の入射角(degree(°))であり、縦軸は、波長(λ)13.5nmのEUV光に対する反射率(%)である。図から分かるように、本実施例の多層膜反射鏡によれば、0°〜20°の広い入射角全域に亘って45%以上(より好ましくは50%以上)の高い反射率が得られる。
【実施例11】
【0132】
図18は、本発明の一実施形態に係る露光装置の模式図である。図に示すように、EUV露光装置100は、X線発生装置(レーザープラズマX線源)101を備えている。X線発生装置101は、球状の真空容器102を備え、真空容器102の内部は、図示せぬ真空ポンプで排気されている。真空容器102内の図中上側には、多層膜放物面ミラー104が反射面104aを図中下方(+Z方向)に向けて設置されている。
【0133】
真空容器102の図中右方にはレンズ106が配置されており、このレンズ106の右方には図示せぬレーザー光源が配置されている。このレーザー光源は、−Y方向にパルスレーザー光105を放出する。パルスレーザー光105は、レンズ106によって多層膜放物面ミラー104の焦点位置に集光する。この焦点位置には、標的材料103(キセノン(Xe)等)が配置されており、集光されたパルスレーザー光105が標的材料103に照射されると、プラズマ107が生成される。このプラズマ107は、13nm付近の波長帯の軟X線(EUV光)108を放射する。
【0134】
真空容器102の下部には、可視光をカットするX線フィルター109が設けられている。EUV光108は、多層膜放物面ミラー104によって、+Z方向に反射されて、X線フィルター109を通過し、露光チャンバ110に導かれる。このとき、EUV光108の可視光帯域のスペクトルがカットされる。
なお、本実施形態においては、標的材料としてキセノンガスを用いているが、キセノンクラスターや液滴等でもよく、スズ(Sn)等の物質であってもよい。また、X線発生装置101としてレーザープラズマX線源を用いているが、放電プラズマX線源を採用することもできる。放電プラズマX線源とは、パルス高電圧の放電により標的材料をプラズマ化し、このプラズマからX線を放射させるものである。
【0135】
X線発生装置101の図中下方には、露光チャンバ110が設置されている。露光チャンバ110の内部には、照明光学系113が配置されている。照明光学系113は、コンデンサ系の反射鏡、フライアイ光学系の反射鏡等で構成されており(図では簡略化して示されている)、X線発生装置101から入射したEUV光108を円弧状に成形し、図中左方に向けて照射する。
【0136】
照明光学系113の左方には、反射鏡115が配置されている。この反射鏡115は、円形の凹面鏡であり、反射面115aが図中右方(+Y方向)に向くように、図示せぬ保持部材により垂直に(Z軸に平行に)保持されている。反射鏡115の図中右方には、光路折り曲げ反射鏡116が配置されている。この光路折り曲げ反射鏡116の図中上方には、反射型マスク111が、反射面111aが下向き(+Z方向)になるように水平(XY平面に平行)に配置されている。照明光学系113から放出されたEUV光は、反射鏡115により反射集光された後に、光路折り曲げ反射鏡116を介して、反射型マスク111の反射面111aに達する。
【0137】
反射鏡115、116は、反射面が高精度に加工された、熱変形の少ない低熱膨張ガラス製の基板からなる。反射鏡115の反射面115aには、X線発生装置101の多層膜放物面ミラー104の反射面と同様に、高屈折率膜と低屈折率膜が交互に積層された反射多層膜が形成されている。なお、波長が10〜15nmのX線を用いる場合には、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等の物質と、シリコン(Si)、ベリリウム(Be)、4ホウ化炭素(BC)等の物質とを組み合わせた反射多層膜でもよい。
【0138】
反射型マスク111の反射面111aにも多層膜からなる反射膜が形成されている。反射型マスク111の反射膜には、ウェハ112に転写するパターンに応じたマスクパターンが形成されている。反射型マスク111は、図中上方に図示されたマスクステージ117に取り付けられている。マスクステージ117は、少なくともY方向に移動可能であり、光路折り曲げ反射鏡116で反射されたEUV光は、反射型マスク111上で順次走査される。
【0139】
反射型マスク111の図中下方には、上から順に投影光学系114、ウェハ(感応性樹脂を塗布した基板)112が配置されている。投影光学系114は、複数の反射鏡等からなっている。ウェハ112は、露光面112aが図中上方(−Z方向)を向くように、XYZ方向に移動可能なウェハステージ118上に固定されている。反射型マスク111によって反射されたEUV光は、投影光学系114により所定の縮小倍率(例えば1/4)に縮小されてウェハ112上に結像し、マスク111上のパターンがウェハ112上に転写される。
【0140】
本実施例の露光装置100に使用されている反射鏡は(全反射を利用する斜入射鏡を除き)、上述した実施例1〜10のいずれかに挙げた構造の多層膜を成膜している。なお、多層膜放物面ミラー104、照明光学系113及び投影光学系114の反射鏡等には、表面が100℃以上に上昇しないように、図示せぬ冷却機構が設けられている。
多層膜放物面ミラー104の反射面へのEUV光の入射角は面内の位置によって大きく変化するので、周期長も面内で大きく変化している。前述のように、多層膜放物面ミラー104の周期長の分布や基板取り付け位置にはわずかな誤差が存在するため、周期長制御時に想定した入射角と実際の入射角との誤差による反射率が変化し得る。本実施形態によれば、上述の実施例に係る反射率の半値幅が広い多層膜反射鏡を用いることにより、このような反射率の変化はほとんど生じない。また、照明光学系113、及び投影光学系114を構成する多層膜反射鏡として、反射帯域の広い多層膜を用いることにより、光学系の結像性能を高く保つことができるので、結像面上での照度と瞳内光量を均一にすることができ、優れた解像力が得られる。
【0141】
なお、本実施形態では多層膜放物面ミラー104等の冷却を行っているが、冷却が十分に行えない場合、例えば、温度が上昇しても反射率の低下が小さい膜構成(Mo/SiC/Si、MoC/Si多層膜等)を利用し、その構造中に実施例2、3、4のような付加層を加えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上詳述したように本発明は、多層膜反射鏡、露光装置の分野において大いに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡であって、
光の入射面側の多層膜(表層膜群)においては、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなり、
前記表層膜群の反入射面側の多層膜(深層膜群)においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項2】
前記表層膜群における高屈折率膜と低屈折率膜の積層対の数が2〜10であることを特徴とする請求項1記載の多層膜反射鏡。
【請求項3】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡の製造方法であって、
基板上にルテニウムを含む物質とシリコンを含む物質を交互に堆積して、深層膜群を成膜する工程と、
前記深層膜群上にモリブデンを含む物質とシリコンを含む物質を交互に堆積して、表層膜群を成膜する工程と
を含むことを特徴とする多層膜反射鏡の製造方法。
【請求項4】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡であって、
光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、
前記表層膜群の反入射面側の付加層と、
前記付加層の反入射面側の多層膜群(深層膜群)と
を備え、
前記表層膜群の反射率が前記深層膜群の反射率より高く、
前記付加層の存在によって反射光の位相をずらすことにより、前記付加層がない場合よりも、反射鏡全体としての反射率ピーク値が低くされていると共にピーク周辺波長の反射率が高くされている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項5】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡であって、
光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、
前記表層膜群における反入射面側の付加層と、
前記付加層における反入射面側の多層膜群(深層膜群)と
を備え、
前記表層膜群においては、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなり、
前記深層膜群においては、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなり、
前記付加層の厚さが、多層膜の周期長の略半分か、又は、それに前記周期長の整数倍を加えた厚さである
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項6】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡であって、
光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、
前記表層膜群における反入射面側の付加層と、
前記付加層における反入射面側の多層膜群(深層膜群)と
を備え、
前記表層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなり、
前記深層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなり、
前記付加層の厚さが、多層膜の周期長の略半分か、又は、それに前記周期長の整数倍を加えた厚さである
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項7】
前記表層膜群の単位周期構造(ペア)の数が、10〜30であり、
前記深層膜群のペアの数が、前記表層膜群のペアの数の5〜50%である
ことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の多層膜反射鏡。
【請求項8】
前記付加層が、シリコン(Si)、ボロン(B)或いはこれらを含む物質からなる
ことを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の多層膜反射鏡。
【請求項9】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した反射多層膜を有する多層膜反射鏡であって、
光の入射面側の多層膜群(表層膜群)と、
前記表層膜群における反入射面側の付加層と、
前記付加層における反入射面側の多層膜群(深層膜群)と
を備え、
前記表層膜群における入射面側の多層膜群(第1表層膜群)は、低屈折率膜がモリブデン(Mo)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコン(Si)を含む物質からなり、
前記表層膜群における前記付加層側の多層膜群(第2表層膜群)は、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなり、
前記深層膜群においては、低屈折率膜がルテニウム(Ru)を含む物質からなり、高屈折率膜がシリコンを含む物質からなる
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項10】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記EUV光の中心波長の2分の1以上の厚さを有する介在層を有し、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項11】
高屈折率膜と低屈折率膜との対(層対)の一部は、2種類の物質からなっており、
別の一部は3種類以上の物質からなる
ことを特徴とする請求項10記載の多層膜反射鏡。
【請求項12】
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記複数のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなるブロックと、L1/Hの層対の繰り返しからなるブロックとを含み、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数が1〜50回である
ことを特徴とする請求項10又は請求項11記載の多層膜反射鏡。
【請求項13】
前記層対に含まれる層の膜厚が、各層対ごとに異なる
ことを特徴とする請求項12記載の多層膜反射鏡。
【請求項14】
各膜の膜厚を任意に変化させながら積層して、波長13.1nm〜13.9nmの光に対する反射率を45%以上とした
ことを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれかに記載の多層膜反射鏡。
【請求項15】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から3番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から4番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から5番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から6番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から7番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から8番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回であり、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項16】
少なくとも18度から25度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率が50%以上である
ことを特徴とする請求項15記載の多層膜反射鏡。
【請求項17】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から3番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から4番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から5番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から6番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から7番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から8番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回であり、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項18】
前記反射多層膜の合計膜厚を、反射面内の各位置における光の入射角に応じて任意に変化させて、反射面全面で反射率を均一化したことを特徴とする請求項17記載の多層膜反射鏡。
【請求項19】
前記反射多層膜の合計膜厚を、前記反射多層膜中の各層の膜厚の比率を維持したまま変化させて、少なくとも0度から20度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率を50%以上としたことを特徴とする請求項17又は請求項18記載の多層膜反射鏡。
【請求項20】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から3番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から4番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から5番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から6番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から7番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から8番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から9番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から10番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から11番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から12番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から13番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回であり、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項21】
少なくとも0度から20度の範囲の入射角で入射する斜入射光に対する反射率が45%以上であることを特徴とする請求項20記載の多層膜反射鏡。
【請求項22】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記多層膜反射鏡の基板側のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から2番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から3番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から4番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から5番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から6番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から7番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から8番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から9番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から10番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から11番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から12番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から13番目のブロックは、L1/L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から14番目のブロックは、L1/Hの層対の繰り返しからなり、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回であり、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項23】
波長13.1nm〜13.9nmの光に対する反射率が45%以上である
ことを特徴とする請求項22記載の多層膜反射鏡。
【請求項24】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
前記反射多層膜は、異なる構造の高屈折率膜Hと低屈折率膜L1及びL2(L1とL2は膜構成物質が異なる)との対(層対)が繰り返し積層された複数のブロックを含み、
前記多層膜反射鏡の基板側のブロックは、1層のHであり、
前記基板から2番目のブロックは、L2/Hの層対の繰り返しからなり、
前記基板から3番目のブロックは、L2/L1/Hの層対の繰り返しからなり、
各ブロックにおける層対の繰り返し積層回数は1〜50回であり、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項25】
EUV光の高屈折率膜と低屈折率膜の複数の界面からの反射光を同位相にするブラッグの反射条件に従う条件下で、両膜(高屈折率膜及び低屈折率膜)を基板上に交互に積層した反射多層膜を備える多層膜反射鏡であって、
高屈折率膜の少なくとも1層がEUV光の中心波長の2分の1以上の厚さを有し、
EUV光反射率の比較的高いEUV光波長又は入射角度の帯域が広帯域化されている
ことを特徴とする多層膜反射鏡。
【請求項26】
感応基板上にEUV光を選択的に照射してパターンを形成する露光装置であって、
請求項1〜請求項25のいずれかに記載の多層膜反射鏡を光学系中に有する
ことを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【国際公開番号】WO2005/038886
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514803(P2005−514803)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015284
【国際出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】