説明

多心型心線群の編み込み方法

【課題】任意の方向に曲げることが可能となる多心型心線群の編み込み方法を提供する。
【解決手段】先端を揃えた偶数本の心線について、両端にある2つの心線の一方を、中央にある2つの心線の一方の心線であって、中央から見て前記一方の心線と同じサイドにある心線に向って、前記両端にある心線の一方および前記中央にある心線の一方の間にある心線と、前記中央にある心線の一方とに対し外側から順番にそれぞれ交互にクロスさせ、両端にある2つの心線の他方を、中央にある2つの心線の他方の心線であって、中央から見て前記他方の心線と同じサイドにある心線に向って、前記両端にある心線の他方および前記中央にある心線の他方の間にある心線と、前記中央にある心線の他方とに対し外側から順番にそれぞれ交互にクロスさせる。次に、中央の一方にある心線を中央の他方にある心線とクロスさせる。これを最初に心線が配置されていた位置に戻るまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多心光ファイバなどの多心型心線群の編み込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多心光ファイバは、図10(a)に示すように、複数本の光ファイバを平行に並べ樹脂被覆でテープ状に一体化させて、テープ形状(すなわち、光ファイバテープ心線)1にするのが一般的であった。すなわち、図10(a)において、光ファイバテープ心線1には、通常、外径125μmの光ファイバ2の外周に、外径250μmのファイバ被覆3を施した複数本の光ファイバ心線(光ファイバ素線とも言う)4を、樹脂被覆5で一括してテープ状としたものが一般的に用いられている。
【0003】
図10(a)に示した一般的な光ファイバテープ心線1を改良した光ファイバテープ心線が多数開発されている。例えば、ガラスファイバを樹脂で被覆した複数本の光ファイバ素線が、横方向に密接状態で一列に並べられると共に上下方向に半ピッチだけずらせた密接状態で複数列配列され、共通樹脂による共通被覆で一体化させた光ファイバテープ心線が開示されている(特許文献1参照)。これにより、平行に並べた光ファイバの列を、上下方向に最小のコアピッチで複数列積層させることができ、2列の光ファイバ列を横方向のコアピッチを狭めて1列にする場合には、整列のための曲げに要する長手方向の距離を少なくすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−292261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような多心光ファイバテープ心線では、図10(b)に示すように、光ファイバの配列方向に対して垂直な軸方向に曲げることは容易であるが、それ以外の方向(特に、光ファイバの配列方向)に対しては、光ファイバ心線、および被覆の剛性によって曲げることが困難である。
【0006】
通信装置に備えられるボードに多心光ファイバを備えた際、多心光ファイバを任意の方向に曲げることによって整列させる要求があるが、上記の問題点により、多心光ファイバテープ心線では、そのような要求を実現することが困難である。このような任意の方向に曲げることが要求される多心型心線群を構成する各心線は、光ファイバに限らず、電気ケーブル、電気通信用のケーブル、細線同軸ケーブルといったものも挙げられる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、多心型心線群を任意の方向に曲げることが可能となる多心型心線群の編み込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、等長であるM本(Mは4以上の偶数)の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、前記M本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、両端に位置する2つの心線の一方を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの心線のうち一方の心線であって、中央から見て前記一方の心線と同じサイドに位置する心線に向かって、前記両端に位置する心線の一方および前記中央に位置する心線の一方の間に位置する心線と、前記中央に位置する心線の一方とに対して外側から順番に、前記両端に位置する心線の一方を、それぞれ上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、前記両端に位置する心線の一方が中央に位置するようにし、両端に位置する2つの心線の他方を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの心線のうちの他方の心線であって、中央から見て前記他方の心線と同じサイドに位置する心線に向かって、前記両端に位置する線の他方および前記中央に位置する心線の他方の間に位置する心線と、前記中央に位置する心線の他方とに対して外側から順番に、前記両端に位置する心線の他方を、それぞれ上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、前記両端に位置する心線の他方が中央に位置するようにする第1クロスステップと、中央の一方に位置する心線を、前記第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央の他方に位置する心線と上側または下側からクロスさせて、前記第1クロスステップ後に中央に位置していた心線の左右が入れ替わるようにする第2クロスステップと、最初に心線が配置されていた順番に戻るまで、前記第1クロスステップおよび前記第2クロスステップを繰り返す第1の繰り返しステップであって、前記第1クロスステップにおいては、前記先端部から編み込み方向の後流の位置ではなく、前記第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置でクロスを開始するようにする、第1の繰り返しステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、複数本の心線の長さが等しい多心型心線群を作成することができ、かつ、多心型心線群を任意の方向に曲げることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記第1の繰り返しステップを繰り返す第2の繰り返しステップをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、多心型心線群の長さを調整することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、等長であるN本(Nは3以上の奇数)の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、前記N本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、一端に位置する心線を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する心線に対して外側から順番に、上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、元々一端に位置していた前記心線が中央に位置するようにする第1クロスステップと、他端に位置する心線を、第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する心線に対して外側から順番に、上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、元々他端に位置していた前記心線が中央に位置するようにする第2クロスステップと、最初に心線が配置されていた順番に戻るまで、前記第1クロスステップおよび前記第2クロスステップを繰り返す第1の繰り返しステップであって、前記第1クロスステップにおいては、前記先端部から編み込み方向の後流の位置ではなく、前記第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置でクロスを開始するようにする、第1の繰り返しステップとを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、複数本の心線の長さが等しい多心型心線群を作成することができ、かつ、多心型心線群を任意の方向に曲げることが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記第1の繰り返しステップを繰り返す第2の繰り返しステップをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、多心型心線群の長さを調整することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、等長である2本の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、前記2本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、前記2本の心線の一方を、前記先端部から所定の長さごとに、前記2本の心線の他方とクロスさせるステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、2本の心線の長さが等しい多心型心線群を作成することができ、多心型心線群を任意の方向に曲げることが可能となり、さらに、多心型心線群の長さを調整することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記心線は光ファイバ心線であることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、多心光ファイバを構成する個々の光ファイバ心線を等しい長さにすることによって、本多心光ファイバを光通信用の光コードとして適用することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記光ファイバ心線を編み込む際に、前記光ファイバ心線の各々における曲げ部分の曲率半径が曲げ損失を生じない範囲となるようにすることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、多心光ファイバを曲げた際においても安定した伝送を行うことが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記光ファイバ心線は、ダブルコア光ファイバと、トレンチ型光ファイバと、フォトニック結晶ファイバとのうちのいずれかであることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、光ファイバを多心化した際の強度を高めることができ、多心光ファイバを曲げた際においても安定した伝送を行うことが可能となる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多心型心線群の編み込み方法において、前記心線は、電気ケーブルと、電気通信用のケーブルと、細線同軸ケーブルとのうちのいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数本の心線の長さが等しい多心型心線群を作成することができ、かつ、多心型心線群を任意の方向に曲げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
本発明の一実施形態では、後述するような本発明に特徴的な編み込み方法により、光ファイバやリード線、電気配線ケーブル、細線同軸ケーブルといった、曲げることが可能な心線を編み込んでいる。
【0028】
例えば、心線として光ファイバを用いる場合は、編み込んだ光ファイバにおいて、各光ファイバ心線の曲がっている部分の曲率半径が重要となってくる。
【0029】
すなわち、光ファイバは、通常のリード線のような電流を伝送するための部材とは異なり、屈折率が相対的に高いコアの周囲を屈折率が相対的に低いクラッドで覆う構造をとり、光を全反射させながら光信号を伝送するものである。このような構造の光ファイバを曲げると、曲げの外側のクラッドの有効屈折率が上昇し、曲率半径が小さくなると(曲げがきつくなると)、上昇したクラッドの屈折率がコアの屈折率よりも高くなる場合がある。この場合、コアを導波する光がクラッドに放射され、曲げ損失を誘起してしまう。
【0030】
よって、本発明の一実施形態では、光ファイバ心線を曲げて編み込んでいく、上記光ファイバの編み込みの際に、曲げ部分の曲率半径が曲げ損失を生じない範囲となるようにすることが好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る編み込み方法を用いれば、光ファイバにおける、曲げ損失を与える曲率半径よりも大きい曲率半径にて光ファイバを曲げることができるので、編み込んだ後の各光ファイバ心線において、曲げ損失を低減、ないしは防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態において用いる光ファイバに制限は無いが、後述するような光ファイバを用いることによって、上記曲げ損失を与える曲率半径を小さくすることができるので、より汎用性を高めることができる。
【0033】
なお、上述のように、曲げ損失を与える曲率半径が小さい光ファイバを用いることが好ましいが、上記編み込み方法に従って作成された多心光ファイバの用途によっては(例えば、短い長さでしか用いない場合)、ある程度の曲げ損失が生じても支障がない。
【0034】
(第1の光ファイバ)
図1は、本発明の実施形態に用いるのに好適な第1の光ファイバであるダブルコア光ファイバ100の説明図である。図1(a)は、当該ダブルコア光ファイバの屈折率プロファイルであり、図1(b)は、図1(a)の屈折率プロファイルを有するダブルコア光ファイバの断面構造図である。ここで、ダブルコア光ファイバとは、シングルモード伝送用のコアと、マルチモード伝送用のコアとを同時に1つの光ファイバに備え、シングルモード信号光とマルチモード信号光とを、同一の光ファイバで伝送することを可能にする光ファイバを意味する。
【0035】
図1(b)において、中心にシングルモード伝送用の、第1の材料としてのコア111が備えられ、コア111の外側に順次、第2の材料としての第1クラッド121、第3の材料としての第2クラッド131、第4の材料としての第3クラッド141、そして高分子樹脂で構成された第4クラッド151が備えられる。なお、コア111、第1〜第3クラッドは、例えば石英系ガラスや、ポリマー、アクリルなどの有機物など、通常、光ファイバに用いられる材料を用いることができる。
【0036】
当該ダブルコア光ファイバの直径は250μmまたは900μmである。当該ダブルコア光ファイバにおいて、コア111は、Ge、P、Sn、B元素の一つが添加された石英である。また、第1クラッド121は純粋石英である。さらに、第2クラッド131および第3クラッド141は、屈折率を下げるためにそれぞれ異なる量のF元素が添加された石英である。
【0037】
なお、コア111に添加される添加物(例えば、Ge、P、Sn、B元素)は、石英等のベースとなる材料の屈折率を上げるように選択される。
【0038】
また、第2クラッド131および第3クラッド141について、石英にF元素を添加しているが、添加物はこれに限定されるものではない。例えば、石英等の、第2クラッド131および第3クラッド141のベースとなる材料に添加する添加物として、B元素など、石英の屈折率を下げることが可能な添加物ならいずれを用いても良い。当該ダブルコア光ファイバでは、第3クラッド141にF元素に加えてB元素を添加することにより、より屈折率を低下させることができる。
【0039】
図1(a)において、符号112はコア111の屈折率であり、符号122は第1クラッド121の屈折率であり、符号132は第2クラッド131の屈折率であり、符号142は第3クラッド141の屈折率であり、符号152は第4クラッド151の屈折率である。図1(a)から分かるように、第1クラッド121の屈折率122はコア111の屈折率112よりも小さく、第2クラッド131の屈折率132は第1クラッド121の屈折率122よりも小さく、第3クラッド141の屈折率142は第2クラッド131の屈折率132よりも小さい。また、第4クラッド151の屈折率152は、第3クラッド141の屈折率142よりも高い。
【0040】
このような構成において、コア111がシングルモード伝送用のコアとして機能し、コア111および第1クラッド121がマルチモード伝送用のコアとして機能する。なお、当該ダブルコア光ファイバでは、シングルモード伝送用光信号波長(コア111の規定モードを励振しシングルモード伝送する光信号の波長)をC−Band帯域(1530nm〜1560nm)、あるいはL−Band帯域(1570nm〜1610nm)、またあるいは1300nm帯域のいずれでも設計可能である。また、モードフィールド径を、7.0〜10.0μmとすることができる。すなわち、上述の規定モードのモードフィールド径を7.0〜10.0μmにすることができる。
【0041】
当該ダブルコア光ファイバでは、波長850nmのマルチモード信号光においては、コア111、第1クラッド121、第2クラッド131全体にわたって電界強度分布が形成され、波長850nm帯ステップインデックス型マルチモードファイバ、あるいは波長850nm帯グレーデッドインデックス型マルチモードファイバの開口率と同等に設計されている。また、マルチモード伝送用光信号波長(コア111および第1クラッド121からなるマルチモード伝送用のコアを励振しマルチモード伝送する光信号の波長)を850nm帯域と設計している。さらに、マルチモード伝送用のコアの直径、すなわち第1クラッド121の直径を、50μm、あるいは62.5μmとすることができる。
【0042】
当該ダブルコア光ファイバでは、マルチモード伝送用のコアの直径を規定する、第1クラッド121の直径を、マルチモード伝送用の光ファイバの直径と同じ、または略同じに設定し、マルチモード伝送用の光ファイバの開口率を有するようにしているので、マルチモード伝送用の光ファイバ(例えば、LAN(Local Area Network)に導入されているような光信号波長850nmのマルチモード光ファイバ)と、低ロスで接続し、低ロスでマルチモード信号光を伝送することができる。
【0043】
さらに、当該ダブルコア光ファイバでは、マルチモード伝送用のコアに含まれるコア111が、シングルモード伝送用のコアとしても機能するので、シングルモード用の光ファイバと低ロスで接続し、低ロスでシングルモード信号光を伝送することができる。
【0044】
すなわち、同一の光ファイバで、シングルモード信号光とマルチモード信号光との双方、および片方ずつを伝送することができる。
【0045】
図2に示す形状で、当該ダブルコア光ファイバを曲げたときの屈折率プロファイルを示したのが図3である。図2において、符号21は曲率中心であり、符号22は曲率半径であり、符号23は光ファイバを曲げた場合の光ファイバの外周側であり、符号24は光ファイバを曲げた場合の光ファイバの内周側である。なお、図3において、符号175は曲率半径Rのときのコア111の屈折率の最大値である。
【0046】
このとき、第2クラッド121外周側(図3では紙面右側)の屈折率が高くなるが、第1クラッド121の屈折率122よりも第2クラッド131の屈折率132を小さくし、さらに第3クラッド141の屈折率142を屈折率132よりも小さく設定しているので、従来のダブルクラッドファイバではコアの屈折率よりも屈折率が高い領域が発生する曲率半径であっても、コア111の屈折率112よりも屈折率が高い領域の発生を無くすことができる。従って、コアを伝送する光信号の伝送特性の劣化が付与されることがなく、ダブルクラッドファイバを用いた場合に発生し得る光信号受信端における復調時でのエラー増加をもたらすことはない。すなわち、光ファイバを曲げた際に、コア111から漏れた一部のシングルモード信号光が第1クラッド121、第2クラッド131および第3クラッド141にトラップあるいは、それぞれから反射してコア111に戻ることなく、第4クラッド151まで到達し吸収させることができる。よって、光ファイバを曲げた際において安定なシングルモード伝送、さらにマルチモード伝送が同時に可能となる。
【0047】
また、曲率半径Rを小さくする(曲げをきつくする)ことにより、屈折率132や142が、最大値175よりも大きくなる領域が生じることがあるかもしれない。このように最大値175よりも大きな領域が発生したとしても、その領域は、同じ曲率半径Rにて曲げた際の従来のダブルクラッドファイバに生じる上記領域よりも小さくなる。従って、光ファイバを曲げた場合の、コア111を導波していたシングルモード信号光の上記曲げによる放射モードによる、マルチモード伝送を軽減することができる。
【0048】
このように、当該ダブルコア光ファイバでは、従来のダブルクラッドファイバではコアの屈折率よりも高くなる領域が生じてしまう曲率半径Rにおいて、上記領域を無くす、あるいは、上記領域が生じたとしても、その領域を従来に比べて小さくすることができるので、コアを導波していた信号光のマルチモード伝送を軽減することができる。
【0049】
また、当該ダブルコア光ファイバでは、屈折率122よりも低い屈折率132を有する第2クラッド131は、マルチモード信号光をより、マルチモード伝送用のコアに閉じ込める機能を有し、さらに、光ファイバを曲げた場合においては、コア111を導波するシングルモード信号光のマルチモード伝送を軽減する機能を有する。
【0050】
また、屈折率132よりも低い屈折率142を有する第3クラッド141は、さらに良好にマルチモード信号光をマルチモード伝送用のコアに閉じ込める機能を有する。すなわち、F元素添加された低屈折率の第3クラッド141により、マルチモード信号光が高分子樹脂で形成された被覆である第4クラッド151に導波されるのをより軽減する役割を果たしている。
【0051】
(第2の光ファイバ)
図4は、本発明の実施形態に用いるのに好適な第2の光ファイバであるトレンチ型光ファイバの説明図である。図4(a)は、当該トレンチ型光ファイバの断面構造図であり、図4(b)は、図4(a)のトレンチ型光ファイバの屈折率分布図である。
【0052】
図4(a)に示されたトレンチ型光ファイバでは、石英ガラス42に囲まれたシングルモードのコア41の中心から20μm離れた所に、低い屈折率を備えた材料(低屈折率材料)43を配置している。
【0053】
図4(b)において、符号44はコア41の屈折率であり、符号45は低屈折率材料43の屈折率であり、符号46は石英ガラス42の屈折率である。当該トレンチ型光ファイバにおいては、コア41から20μm離れて配置された低屈折率材料43によって、光ファイバ本体を曲げた際における電界強度分布の閉じ込めの安定化を図っている。
【0054】
また、本発明の実施形態に用いるのに好適な光ファイバは、コアの周囲に複数の空孔を備えるフォトニック結晶ファイバ(不図示)であっても良い。
【0055】
ここで、本明細書では、光ファイバにおいて、曲げ損失を与えない最大の曲率半径を最大許容曲率半径と定義する。シングルモード信号光伝送用の光ファイバの最大許容曲率半径は通常30mmであり、マルチモード信号光伝送用の光ファイバの最大許容曲率半径は通常15mmであり、ダブルクラッドファイバの最大許容曲率半径は通常15mmであるが、当該ダブルコア光ファイバでは、光ファイバの曲げによる過剰損失を考慮して曲率半径を同一の値に設定することができ、さらに約5mmまでの曲率半径で曲げて使用することができる。また、トレンチ型光ファイバの最大許容曲率半径は7.5〜10mmであり、フォトニック結晶ファイバの最大許容曲率半径は7.5〜10mmである。
【0056】
(第1の実施形態)
第1の実施形態においては、編み込む心線として光ファイバを用いる形態について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る多心光ファイバの編み込み方法を連続的に示した概略図である。本実施形態は、4本の光ファイバ心線を用いた多心光ファイバの編み込み方法であるが、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線の本数は4本に限定されず、任意の偶数本の光ファイバ心線を用いて、多心光ファイバを作成することができる。
【0057】
なお、上述した機能および効果を有するため、光ファイバ心線として、ダブルコア光ファイバ、トレンチ型光ファイバ、またはフォトニック結晶ファイバを用いることが好ましい。しかしながら、本実施形態に用いることができる光ファイバ心線は、これらに限定されるものではなく、従来のシングルモード信号光伝送用光ファイバ、マルチモード信号光伝送用光ファイバ、およびダブルクラッドファイバを用いても良い。
【0058】
図示した光ファイバ心線の太さは、実際の光ファイバ心線の太さの差を表すものではなく、それぞれが異なる光ファイバ心線であることを示すために、線の太さを変えている。縮尺についても正確に表しているわけではない。
【0059】
まず、4本の等長の光ファイバ心線51、52、53、54の先端を揃えて平行に配置する(S501)。本図は、光ファイバ心線51〜54を上側から見た図であり、最初は、左から51、52、53、54の順に配置されている。
【0060】
次いで、両端に位置する光ファイバ心線51および54を、先端部から図面下方に所定の長さl1の位置で、それぞれ中央に位置する2つの光ファイバ心線のうち、中央から見て光ファイバ心線51および54の各々と同じサイドにある光ファイバ心線(すなわち、それぞれ光ファイバ心線52および53)と上側からクロスさせ、光ファイバ心線51および54が中央に位置するようにする(S502)。S502の後の状態では、光ファイバ心線は、左から52、51、54、53の順にバランスよく配置されている。
【0061】
次いで、中央左に位置する光ファイバ心線51を、S502でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、中央右に位置する光ファイバ心線54と上側からクロスさせる(S503)。S503の後の状態では、光ファイバ心線は、左から52、54、51、53の順にバランスよく配置されている。
【0062】
次いで、両端に位置する光ファイバ心線52および53を、S503でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、それぞれ中央に位置する2つの光ファイバ心線のうち、中央から見て光ファイバ心線52および53の各々と同じサイドにある光ファイバ心線(すなわち、それぞれ光ファイバ心線54および51)と上側からクロスさせ、光ファイバ心線52および53が中央に位置するようにする(S504)。S504の後の状態では、光ファイバ心線は、左から54、52、53、51の順にバランスよく配置されている。
【0063】
次いで、中央左に位置する光ファイバ心線52を、S504でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、中央右に位置する光ファイバ心線53と上側からクロスさせる(S505)。S505の後の状態では、光ファイバ心線は、左から54、53、52、51の順にバランスよく配置されている。
【0064】
次いで、両端に位置する光ファイバ心線54および51を、S505でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、それぞれ中央に位置する2つの光ファイバ心線のうち、中央から見て光ファイバ心線54および51の各々と同じサイドにある光ファイバ心線(すなわち、それぞれ光ファイバ心線53および52)と上側からクロスさせ、光ファイバ心線54および51が中央に位置するようにする(S506)。S506の後の状態では、光ファイバ心線は、左から53、54、51、52の順にバランスよく配置されている。
【0065】
次いで、中央左に位置する光ファイバ心線54を、S506でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、中央右に位置する光ファイバ心線51と上側からクロスさせる(S507)。S507の後の状態では、光ファイバ心線は、左から53、51、54、52の順にバランスよく配置されている。
【0066】
次いで、両端に位置する光ファイバ心線53および52を、S507でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、それぞれ中央に位置する2つの光ファイバ心線のうち、中央から見て光ファイバ心線53および52の各々と同じサイドにある光ファイバ心線(すなわち、それぞれ光ファイバ心線51および54)と上側からクロスさせ、光ファイバ心線53および52が中央に位置するようにする(S508)。S508の後の状態では、光ファイバ心線は、左から51、53、52、54の順にバランスよく配置されている。
【0067】
次いで、中央左に位置する光ファイバ心線53を、S508でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置で、中央右に位置する光ファイバ心線52と上側からクロスさせる(S509)。S508の後の状態では、光ファイバ心線は、左から51、52、53、54の順にバランスよく配置され、その後、S502〜S509を繰り返し行う(但し、S502については、「先端部から図面下方に所定の長さl1の位置」を、「S508でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl1の位置」と読み替える)。
【0068】
なお、本実施形態では、クロスさせる側の光ファイバ心線をすべて上側からクロスさせているが、すべて下側からクロスさせても良い。
【0069】
本実施形態の方法により作成された多心光ファイバは、多心光ファイバを構成する個々の光ファイバ心線を等しい長さにすることができる。それによって、本多心光ファイバを光通信用の光コードとして適用することができる。また、本多心光ファイバは、例えば、長さを50cm〜1mとして、通信装置に備えられるボード上の配線用として用いることができる。
【0070】
この編み込み方法は、M本(Mは4以上の偶数)の光ファイバ心線を用いて多心光ファイバを作成する場合にも適用可能である。次に、上記の場合について説明する。
【0071】
まず、各々が等長であるM本の光ファイバ心線の先端を揃えて平行に配置する。
【0072】
次いで、両端に位置する2つの光ファイバ心線の一方を、先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの光ファイバ心線のうち一方の光ファイバ心線であって、中央から見て上記一方の光ファイバ心線と同じサイドに位置する光ファイバ心線に向かって、上記両端に位置する光ファイバ心線の一方および上記中央に位置する光ファイバ心線の一方の間に位置する光ファイバ心線と、上記中央に位置する光ファイバ心線の一方とに対して外側から順番に、上記両端に位置する光ファイバ心線の一方を、それぞれ上側(または下側)から、次に下側(または上側)からと交互にクロスさせ、上記両端に位置する光ファイバ心線の一方が中央に位置するようにする。
【0073】
これと同時に、またはこれに次いで、両端に位置する2つの光ファイバ心線の他方を、先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの光ファイバ心線のうちの他方の光ファイバ心線であって、中央から見て上記他方の光ファイバ心線と同じサイドに位置する光ファイバ心線に向かって、上記両端に位置する光ファイバ心線の他方および上記中央に位置する光ファイバ心線の他方の間に位置する光ファイバ心線と、上記中央に位置する光ファイバ心線の他方とに対して外側から順番に、上記両端に位置する光ファイバ心線の他方を、それぞれ上側(または下側)から、次に下側(または上側)からと交互にクロスさせ、上記両端に位置する光ファイバ心線の他方が中央に位置するようにする(両端に位置する光ファイバ心線をこのようにクロスさせて中央に位置するようにすることを、第1クロスステップと呼ぶことにする)。この状態では、各光ファイバ心線はバランスよく配置されている。
【0074】
次いで、中央の一方に位置する光ファイバ心線を、第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央の他方に位置する光ファイバ心線と上側(または下側)からクロスさせて、第1クロスステップ後に中央に位置していた光ファイバ心線の左右が入れ替わるようにする(これを第2クロスステップと呼ぶことにする)。この状態では、各光ファイバ心線はバランスよく配置されている。
【0075】
次いで、この2つのステップを複数回繰り返し行うことによって(但し、繰り返しの際、第1クロスステップおける「先端部から編み込み方向の後流の位置」を、「第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置」と読み替える)、最初に光ファイバ心線を揃えた位置関係に戻る。この最初の位置関係に戻るまで繰り返すことを第1の繰り返しステップと呼ぶことにする。第1の繰り返しステップをさらに複数回繰り返す(これを第2の繰り返しステップと呼ぶことにする)ことによって、各光ファイバ心線が等しい長さである多心光ファイバの長さを調整することができる。
【0076】
この編み込み方法は、等長の2本の光ファイバ心線を用いる場合でも適用可能である。等長の2本の光ファイバ心線を用いる場合は、単純に先端部から所定の長さごとにクロスさせることを複数回繰り返し行うだけで良い。
【0077】
なお、本明細書において、「編み込み方向」とは、先端部とは反対の方向であって、心線を編み込んでいく方向である。よって、「編み込み方向の後流の位置」とは、ある位置から、編み込み方向に沿って任意の距離離れた位置である。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においても、編み込む心線として光ファイバを用いる形態について説明する。
図6および図7は、本発明の第2の実施形態に係る多心光ファイバの編み込み方法を連続的に示した概略図である。本実施形態は、5本の光ファイバ心線を用いた多心光ファイバの編み込み方法であるが、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線の本数は5本に限定されず、任意の奇数本の光ファイバ心線(1本以外)を用いて、多心光ファイバを作成することができる。
【0079】
なお、上述した機能および効果を有するため、光ファイバ心線として、ダブルコア光ファイバ、トレンチ型光ファイバ、またはフォトニック結晶ファイバを用いることが好ましい。しかしながら、本実施形態に用いることができる光ファイバ心線は、これらに限定されるものではなく、例えば、従来のシングルモード信号光伝送用光ファイバ、マルチモード信号光伝送用光ファイバ、およびダブルクラッドファイバを用いても良い。
【0080】
図示した光ファイバ心線の太さは、実際の光ファイバ心線の太さの差を表すものではなく、それぞれが異なる光ファイバ心線であることを示すために、線の太さを変えている。縮尺についても正確に表しているわけではない。
【0081】
まず、5本の等長の光ファイバ心線61、62、63、64、65の先端を揃えて平行に配置する(図6;S601)。本図は、光ファイバ心線61〜65を上側から見た図であり、最初は、左から61、62、63、64、65の順に配置されている。
【0082】
次いで、左端に位置する光ファイバ心線61を、先端部から図面下方に所定の長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線62と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線62の隣に位置する光ファイバ心線63と下側からクロスさせ、光ファイバ心線61が中央の位置になるようにする(図6;S602)。S602の後の状態では、光ファイバ心線は、左から62、63、61、64、65の順にバランスよく配置されている。
【0083】
次いで、右端に位置する光ファイバ心線65を、S602で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線64と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線64の隣に位置する光ファイバ心線63と下側からクロスさせ、光ファイバ心線65が中央の位置になるようにする(図6;S603)。S603の後の状態では、光ファイバ心線は、左から62、63、61、64、65の順にバランスよく配置されている。
【0084】
次いで、左端に位置する光ファイバ心線62を、S603で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線63と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線63の隣に位置する光ファイバ心線65と下側からクロスさせ、光ファイバ心線62が中央の位置になるようにする(図6;S604)。S604の後の状態では、光ファイバ心線は、左から63、65、62、61、64の順にバランスよく配置されている。
【0085】
次いで、右端に位置する光ファイバ心線64を、S604で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線61と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線61の隣に位置する光ファイバ心線62と下側からクロスさせ、光ファイバ心線64が中央の位置になるようにする(図6;S605)。S605の後の状態では、光ファイバ心線は、左から63、65、64、62、61の順にバランスよく配置されている。
【0086】
次いで、左端に位置する光ファイバ心線63を、S605で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線65と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線65の隣に位置する光ファイバ心線64と下側からクロスさせ、光ファイバ心線63が中央の位置になるようにする(図6;S606)。S606の後の状態では、光ファイバ心線は、左から65、64、63、62、61の順にバランスよく配置されている。
【0087】
次いで、右端に位置する光ファイバ心線61を、S606で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線62と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線62の隣に位置する光ファイバ心線63と下側からクロスさせ、光ファイバ心線61が中央の位置になるようにする(図7;S607)。S607の後の状態では、光ファイバ心線は、左から65、64、61、63、62の順にバランスよく配置されている。
【0088】
次いで、左端に位置する光ファイバ心線65を、S607で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線64と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線64の隣に位置する光ファイバ心線61と下側からクロスさせ、光ファイバ心線65が中央の位置になるようにする(図7;S608)。S608の後の状態では、光ファイバ心線は、左から64、61、65、63、62の順にバランスよく配置されている。
【0089】
次いで、右端に位置する光ファイバ心線62を、S608で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線63と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線63の隣に位置する光ファイバ心線65と下側からクロスさせ、光ファイバ心線62が中央の位置になるようにする(図7;S609)。S609の後の状態では、光ファイバ心線は、左から64、61、62、65、63の順にバランスよく配置されている。
【0090】
次いで、左端に位置する光ファイバ心線64を、S609で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線61と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線61の隣に位置する光ファイバ心線62と下側からクロスさせ、光ファイバ心線64が中央の位置になるようにする(図7;S610)。S610の後の状態では、光ファイバ心線は、左から61、62、64、65、63の順にバランスよく配置されている。
【0091】
次いで、右端に位置する光ファイバ心線63を、S610で最後にクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置で、隣に位置する光ファイバ心線65と上側からクロスさせ、さらに光ファイバ心線65の隣に位置する光ファイバ心線64と下側からクロスさせ、光ファイバ心線63が中央の位置になるようにする(図7;S611)。S611の後の状態では、光ファイバ心線は、左から61、62、63、64、65の順にバランスよく配置され配置され、その後、S602〜S611を繰り返し行う(但し、S602については、「先端部から図面下方に所定の長さl2の位置」を、「S611でクロスさせた位置(不図示)から図面下方に長さl2の位置」と読み替える)。
【0092】
なお、本実施形態では、左端にある光ファイバ心線61をクロスさせることから始めているが、右端にある光ファイバ心線65をクロスさせることから始めても良い。また、本実施形態では、両端にある光ファイバ心線を上側、下側、上側、下側、...の順に交互にクロスさせているが、両端にある光ファイバ心線を下側、上側、下側、上側、...の順に交互にクロスさせても良い。
【0093】
本実施形態の方法により作成された多心光ファイバは、多心光ファイバを構成する個々の光ファイバ心線を等しい長さにすることができる。それによって、本多心光ファイバを光通信用の光コードとして適用することができる。また、本多心光ファイバは、例えば、長さを50cm〜1mとして、通信装置に備えられるボード上の配線用として用いることができる。
【0094】
この編み込み方法は、N本(Nは3以上の奇数)の光ファイバ心線を用いて多心光ファイバを作成する場合にも適用可能である。次に、上記の場合について説明する。
【0095】
まず、各々が等長であるN本の光ファイバ心線の先端を揃えて平行に配置する。
【0096】
次いで、一端に位置する光ファイバ心線を、先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する光ファイバ心線に対して外側から順番に、上側(または下側)から、次に下側(または上側)からと交互にクロスさせ、元々一端に位置していた光ファイバ心線が中央に位置するようにする(これを第1クロスステップと呼ぶことにする)。この状態では、各光ファイバ心線はバランスよく配置されている。
【0097】
次いで、他端に位置する光ファイバ心線を、第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する光ファイバ心線に対して外側から順番に、上側(第1クロスステップで最初に上側からクロスさせた場合)(または下側;第1クロスステップで最初に上側からクロスさせた場合)から、次に下側(または上側)からと交互にクロスさせ、元々他端に位置していた光ファイバ心線が中央に位置するようにする(これを第2クロスステップと呼ぶ)。この状態では、各光ファイバ心線はバランスよく配置されている。
【0098】
次いで、この2つのステップを複数回繰り返し行うことによって(但し、繰り返しの際、第1クロスステップにおける「先端部から編み込み方向の後流の位置」を、「第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置」と読み替える)、最初に光ファイバ心線を揃えた位置関係に戻る。但し、3本の光ファイバ心線を用いて多心光ファイバを作成する場合は、任意の距離ごとに中央にある光ファイバ心線と1回クロスさせることを複数回繰り返し行うだけで良い。この最初の位置関係に戻るまで繰り返すことを第1の繰り返しステップと呼ぶことにする。第1の繰り返しステップをさらに複数回繰り返す(これを第2の繰り返しステップと呼ぶことにする)ことによって、各光ファイバ心線が等しい長さである多心光ファイバの長さを調整することができる。
【0099】
なお、上述した所定の長さl1およびl2は、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線の数に応じて、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線に曲げ損失を与える曲率半径(最大許容曲率半径)よりも多心光ファイバの編み込みによって生じる曲率半径の方が大きくなるように選択されることが好ましい。
【0100】
なお、本発明の実施形態に係る編み込み方法において、上記所定の長さl1およびl2を定めなくても良い。このような場合、編み込みが終了した時点で、多心光ファイバを引っ張って締めることにより、各々の光ファイバ心線の先端部と後端部とが揃った多心光ファイバが作成される。
【0101】
図8は、本発明の実施形態に従って作成された多心光ファイバを示す説明図であり、(a)は、4本の光ファイバ心線から構成される多心光ファイバ81であり、(b)は、5本の光ファイバ心線から構成される多心光ファイバ82である。
【0102】
また、図9は、本発明とは異なる編み込み方法に従って作成された多心光ファイバ91を示す説明図である。この方法は、一方の端に位置する光ファイバ心線を他方の端にもっていく際に、上記一方の端に位置する光ファイバ心線を、自身以外の全ての光ファイバ心線とクロスさせ、他方の端にもっていった元々一方の端に位置していた光ファイバ心線から一方の端に向かって、元々一方の端に位置していた光ファイバ心線以外の光ファイバ心線に対して1本ずつ徐々にずれるようにクロスさせるものである。
【0103】
さて、本発明において重要なことは、光ファイバ等の心線を編み込むことによって任意の方向に曲げることを可能にしつつ、編み込まれた心線群を折り曲げた場合であっても、折り曲げた箇所等で、編み込まれた心線がなるべく弛まないようにすることである。
【0104】
現在の高度情報化、情報の大容量化等によって、多心光ファイバを例えば1m×2mの回路に縫うように配置することが望まれている。このような回路には、多数のピン等が存在しており、上述のように多心光ファイバを縫うように配置した際に、心線の一部が弛んでいると、上記ピンに引っかかり、引っかかった心線が多心光ファイバから解けてしまうことがある。よって、多心光ファイバを任意の方向に曲げることを考慮すると光ファイバ心線を編み込むことが有用であるが、上記多心光ファイバを引きずりまわして配置することを考慮すると、編み込んだ後の光ファイバ心線の弛みを低減することが重要なのである。
【0105】
そこで、本発明の実施形態では、上記弛みを低減しつつ、任意の方向に曲げることを可能にするよう編み込むために、第1および第2の実施形態で説明したように、複数の心線において、一方の端に配置された第1の心線を、該端と中央との間にある心線を上下にクロスさせながら、中央にもってくるのである。
【0106】
図9に示すように編み込まれた多心光ファイバ91では、心線を編み込こんでいく際に、複数の心線において、一方の端に配置された第2の心線を、該一方の端と他方の端との間にある心線を上下にクロスさせながら、他方の端にもってくるようにして編みこんでいる。この方法で他の心線についても編み込むことによって、上記第2の心線は、多心光ファイバの長手方向に沿って、上記一方の端から他方の端に移り、その後1本ずつずれることによって、一方の端に戻るように編みこまれることになる。この、一方の端から再度一方の端まで戻るまでの上記長手方向に沿った距離をピッチ(図8、図9において記号Pで示す)と呼ぶことにする。
【0107】
すなわち、図9に示す多心光ファイバ91の編み込み方法では、ピッチP92において、上記第2の心線を一方の端から他方の端にもっていく際に、第2の心線以外の全ての心線をクロスする領域(第1のクロス領域)93と、他方の端から一方の端に向かって第2の心線以外の心線に対して1本ずつ徐々にずれるようにクロスする領域(第2のクロス領域)94とを有することになる。そして、第1のクロス領域93の長手方向に沿った長さp1は、第2の心線以外の心線を全てクロスさせているので、第2のクロス領域94の長手方向に沿った長さp2(P=p1+p2)と比較してかなり短くなる。よって、第1のクロス領域93と第2のクロス領域94とは完全に非対称な形となり、光ファイバ心線の各々について、曲がり箇所によって曲率半径が異なることになる。
【0108】
また、第1のクロス領域93では第2の心線以外の全ての心線とクロスさせ、かつ第2のクロス領域94では、1本ずつずらして徐々にクロスさせているので、他方の端における第2の心線の曲率半径は小さくなり(曲がりがきつくなり)、他方の端から一方の端に戻る際に徐々にずれざるを得なくなるので、長さp2が長くなり、ピッチP92自体も長くなる。よって、ピッチP92が長いので、多心光ファイバ91を引き回した際に、光ファイバ心線の弛みが起こり易くなってしまう。
【0109】
これに対して、本発明の実施形態では、一方の端に配置された第1の心線を、該一方の端と中央との間にある心線を上下にクロスさせながら、中央に配置させ、第1の心線以外の心線についても同様にクロスさせることによって、第1の心線は、他方の端に移動している(第1の移動クロスステップ)。次いで、他方の端に移動した第1の心線を再度、該他方の端と中央との間にある心線を上下にクロスさせながら、中央に配置させ、第1の心線以外の心線についても同様にクロスさせる(第2の移動クロスステップ)。その結果、第1の心線は、再度、一方の端に移動することになる。
【0110】
このように、本発明の実施形態では、第1の移動クロスステップと第2の移動クロスステップとを同様に行うので、ピッチP83、84において、一方の端から、多心光ファイバの長手方向に沿った他方の端までの距離p3と、他方の端から、多心光ファイバの長手方向に沿った一方の端までの距離p4(P=p3+p4)とをほぼ一致させることができる。従って、曲がり箇所における曲率半径のばらつきを抑えることができる。
【0111】
また、第1の心線を一方の端から他方の端に移動させる領域85(87)と、他方の端から一方の端に移動させる領域86(88)とを対称に近づけることができ、ピッチP83、84を小さくすることができるので、多心光ファイバ81、82を引き回しても、光ファイバ心線の弛みを抑えることができ、引き回しに強い多心光ファイバを実現することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
本発明の本質は、心線群を編み込むことによって、任意の方向に曲げることを可能にしつつ、縫うように配置しても、各心線の弛みを低減することにある。よって、心線としては、光ファイバに限らず、電気ケーブル、電気通信用のケーブル、細線同軸ケーブルなどにも適用することができる。
【0113】
以上説明したように、本発明の編み込み方法に従うと、等長の複数の心線から構成される編み込み式心線群を任意の方向に曲げることが可能となる。
【0114】
編み込む心線として光ファイバ心線を用いれば、本発明の編み込み方法に従うと、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線を等しい長さにすることができるため、多心光ファイバを光通信用の光コードとして適用することが可能となり、多心光ファイバを任意の方向に曲げることが可能となる多心光ファイバを作成することができる。
【0115】
また、多心光ファイバを構成する光ファイバ心線として、ダブルコア光ファイバ、トレンチ型光ファイバ、またはフォトニック結晶ファイバを用いることにより、多心化した際の強度を高めること、および、多心光ファイバを曲げた際においても安定した伝送を行うことが可能となる。
【0116】
また、本発明の実施形態に係る多心光ファイバを用いれば、各光ファイバ心線が曲がりながら、各々の光ファイバの相対的な位置を変えながら3次元的に編み込まれているので、チャネル入換えを容易に行うことができる。すなわち、光ファイバ心線の各々について、それ以外の各光ファイバ心線の位置が、多心光ファイバの位置に応じて異なっているので、求めるチャネル配置となる位置で多心光ファイバを切断することにより、容易にチャネル入換えを行うことができるのである。
【0117】
さらに、本発明の実施形態に係る多心光ファイバは編み込まれているので、前記多心光ファイバを構成する複数の光ファイバ心線から所定数の光ファイバ心線が引き抜かれることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に用いるのに好適なダブルコア光ファイバの屈折率プロファイルであり、(b)は、(a)の屈折率プロファイルを有するダブルコア光ファイバの断面構造図である。
【図2】曲率半径Rである一点を中心に光ファイバを曲げる場合の説明図である。
【図3】本発明の実施形態に用いるのに好適なダブルコア光ファイバを曲率半径Rで曲げた際に変化した屈折率プロファイルである。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に用いるのに好適なトレンチ型光ファイバの断面構造図であり、(b)は、(a)のトレンチ型光ファイバの屈折率分布図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る多心光ファイバの編み込み方法を連続的に示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る多心光ファイバの編み込み方法を連続的に示す概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る多心光ファイバの編み込み方法を連続的に示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に従って作成された多心光ファイバを示す説明図であり、(a)は、4本の光ファイバ心線から構成される多心光ファイバであり、(b)は、5本の光ファイバ心線から構成される多心光ファイバである。
【図9】本発明とは異なる編み込み方法に従って作成された多心光ファイバを示す説明図である。
【図10】従来技術の光ファイバテープ心線を示す説明図であり、(a)は、光ファイバテープ心線の横断断面図であり、(b)は、光ファイバテープ心線の上面図である。
【符号の説明】
【0119】
100 ダブルコア光ファイバ
111 コア
112 コアの屈折率
121 第1クラッド
122 第1クラッドの屈折率
131 第2クラッド
132 第2クラッドの屈折率
141 第3クラッド
142 第3クラッドの屈折率
151 第4クラッド
152 第4クラッドの屈折率
175 曲率半径Rのときのコアの屈折率の最大値
41 コア
42 石英ガラス
43 低屈折率材料
44 コアの屈折率
45 低屈折率材料の屈折率
46 石英ガラスの屈折率
51、52、53、54 光ファイバ心線
61、62、63、64、65 光ファイバ心線
81、82 編み込み式多心光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等長であるM本(Mは4以上の偶数)の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、
前記M本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、
両端に位置する2つの心線の一方を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの心線のうち一方の心線であって、中央から見て前記一方の心線と同じサイドに位置する心線に向かって、前記両端に位置する心線の一方および前記中央に位置する心線の一方の間に位置する心線と、前記中央に位置する心線の一方とに対して外側から順番に、前記両端に位置する心線の一方を、それぞれ上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、前記両端に位置する心線の一方が中央に位置するようにし、両端に位置する2つの心線の他方を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央に位置する2つの心線のうちの他方の心線であって、中央から見て前記他方の心線と同じサイドに位置する心線に向かって、前記両端に位置する線の他方および前記中央に位置する心線の他方の間に位置する心線と、前記中央に位置する心線の他方とに対して外側から順番に、前記両端に位置する心線の他方を、それぞれ上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、前記両端に位置する心線の他方が中央に位置するようにする第1クロスステップと、
中央の一方に位置する心線を、前記第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央の他方に位置する心線と上側または下側からクロスさせて、前記第1クロスステップ後に中央に位置していた心線の左右が入れ替わるようにする第2クロスステップと、
最初に心線が配置されていた順番に戻るまで、前記第1クロスステップおよび前記第2クロスステップを繰り返す第1の繰り返しステップであって、前記第1クロスステップにおいては、前記先端部から編み込み方向の後流の位置ではなく、前記第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置でクロスを開始するようにする、第1の繰り返しステップと
を備えることを特徴とする多心型心線群の編み込み方法。
【請求項2】
前記第1の繰り返しステップを繰り返す第2の繰り返しステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の多心型心線群の編み込み方法。
【請求項3】
等長であるN本(Nは3以上の奇数)の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、
前記N本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、
一端に位置する心線を、前記先端部から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する心線に対して外側から順番に、上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、元々一端に位置していた前記心線が中央に位置するようにする第1クロスステップと、
他端に位置する心線を、第1クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置で、中央側に位置する心線に対して外側から順番に、上側または下側から、次に下側または上側からと交互にクロスさせ、元々他端に位置していた前記心線が中央に位置するようにする第2クロスステップと、
最初に心線が配置されていた順番に戻るまで、前記第1クロスステップおよび前記第2クロスステップを繰り返す第1の繰り返しステップであって、前記第1クロスステップにおいては、前記先端部から編み込み方向の後流の位置ではなく、前記第2クロスステップで最後にクロスさせた位置から編み込み方向の後流の位置でクロスを開始するようにする、第1の繰り返しステップと
を備えることを特徴とする多心型心線群の編み込み方法。
【請求項4】
前記第1の繰り返しステップを繰り返す第2の繰り返しステップをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の多心型心線群の編み込み方法
【請求項5】
等長である2本の心線を編み込んで、多心型心線群を作成するための多心型心線群の編み込み方法であって、
前記2本の心線の先端を揃えて平行に配置するステップと、
前記2本の心線の一方を、前記先端部から所定の長さごとに、前記2本の心線の他方とクロスさせるステップと
を備えることを特徴とする多心型心線群の編み込み方法。
【請求項6】
前記心線は光ファイバ心線であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多心型心線群の編み込み方法。
【請求項7】
前記光ファイバ心線を編み込む際に、前記光ファイバ心線の各々における曲げ部分の曲率半径が曲げ損失を生じない範囲となるようにすることを特徴とする請求項6に記載の多心型心線群の編み込み方法。
【請求項8】
前記光ファイバ心線は、ダブルコア光ファイバと、トレンチ型光ファイバと、フォトニック結晶ファイバとのうちのいずれかであることを特徴とする請求項6または7に記載の多心型心線群の編み込み方法。
【請求項9】
前記心線は、電気ケーブルと、電気通信用のケーブルと、細線同軸ケーブルとのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多心型心線群の編み込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−140767(P2009−140767A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316261(P2007−316261)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】