多成分用レーザ式ガス分析計
【課題】ガス濃度の高低によらずに濃度を確実に検出し、検出精度を向上させた多成分用レーザ式ガス分析計を提供する。
【解決手段】可視光用処理回路や近赤外光用処理回路は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成し、可視光用受光素子や近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出して同期検波信号を出力し、この同期検波信号およびトリガ信号に基づいて測定対象ガスの濃度を演算するような多成分レーザ式ガス分析計とした。
【解決手段】可視光用処理回路や近赤外光用処理回路は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成し、可視光用受光素子や近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出して同期検波信号を出力し、この同期検波信号およびトリガ信号に基づいて測定対象ガスの濃度を演算するような多成分レーザ式ガス分析計とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の各種の測定対象ガスの有無や濃度を分析する多成分用レーザ式ガス分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
多成分用レーザ式ガス分析計の従来技術として、例えば、特許文献1(特開2000−74830号公報(特許第4038631号公報)、発明の名称「半導体レーザ分光法を用いた温度・濃度・化学種の高速計測方法および計測システム」)に記載の発明が知られている。この計測システムについて図を参照しつつ説明する。
【0003】
図21は、従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の説明図である。図21において、501,502は発光部としての半導体レーザで、互いに異なる波長λ1(例えば1.996μm)、λ2(例えば2.050μm)のレーザ光を発するものであり、例えば分布帰還型(DFB)半導体レーザよりなる。これらの半導体レーザ501,502は、ファンクションジェネレータ503によってそれぞれ電流制御される。これらの半導体レーザ501,502は、その波長掃引に必要な外部入力信号として、直線、曲線、ステップを含む波形、具体例として、サイン波、ランプ波、三角波、パルス波のいずれかまたはそれらのうちのいずれかを適宜組み合わせたものを用いる。また、これらの半導体レーザ501,502は図示してないが、それぞれ2.0μm用のアイソレータを備えている。
【0004】
504,505は半導体レーザ501,502に光ファイバ506,507を介して接続されるファイバカプラ、508は半導体レーザ501,502がそれぞれ発するレーザ光を後述するセル513に測定光として送出するためのファイバカプラで、509,510は光ファイバである。なお、ファイバカプラ504,505には、参照光としてのレーザ光用の光ファイバ511,512がそれぞれ接続されている。
【0005】
513は前記ファイバカプラ508の後段に設けられるセルである。このセル513の両端部は、2μm付近のレーザ光を透過させるセル窓513a,513bで封止されるとともに、ガス導入口513c、ガス導出口513dを備え、ガス導入口513cには例えばCO2と空気とを適宜の割合で供給できるように開閉弁514,515を備えたガス供給ライン516,517が接続され、ガス導出口513dには開閉弁518および真空ポンプ519を備えたガス排出ライン520が接続されている。
【0006】
また、セル窓513a,513bの外部にミラー521,522を設け、セル513に入射したレーザ光がセル513内を数回通過した後、出射するように構成されている。
そして、523,524はセル513の前段側および後段側にそれぞれ設けられるコリメータで、後段側のコリメータ524の後段には分波器525が設けられている。この分波器525は、セル513を透過した二つの波長のレーザ光(測定光)を波長λ1,λ2のレーザ光に分離するものである。
【0007】
526,527は測定光用のフォトダイオード、528,529は参照光用のフォトダイオードで、これらのフォトダイオード526,527には分波器525によって分離された波長λ1,λ2のレーザ光(測定光)が入射し、フォトダイオード528,529には光ファイバ511,512を経て波長λ1,λ2のレーザ光(参照光)が入射する。
【0008】
530〜533は前記フォトダイオード526〜529にそれぞれ対応して設けられるプリアンプで、これらのプリアンプ530〜533は、A/D変換器534を経て図示していない信号処理装置(例えばコンピュータ)に入力されるように構成されている。
【0009】
上述のように構成されたレーザ式ガス分析計においては、セル513にCO2と空気とを適宜の割合で混合したガスが被測定ガスとして供給される。この状態において、半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ1,λ2が、混合した状態で被測定ガスが充填されたセル513を測定光として透過する。この測定光は、分波器525において元の波長λ1,λ2のレーザ光となり、フォトダイオード526,527に入射する。一方、前記半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ1,λ2は、そのまま光ファイバ511,512を経て参照光としてフォトダイオード528,529に入射する。
【0010】
そして、フォトダイオード526〜529からは、入射する光に応じた信号を出力し、これらの出力信号は、プリアンプ530〜533を経てA/D変換器534に入り、その変換出力がコンピュータに入力され、信号処理される。セル513に供給された被測定ガスの温度・濃度・化学種が求められる。
【0011】
このレーザ式ガス分析計においては、計測に用いるレーザ光を、従来よりも長い波長である2μm付近の相異なる波長λ1,λ2のレーザ光を用いているので、吸収の強い吸収線で計測を行うことができ、必要光路長の短縮や、温度・濃度・化学種の測定におけるS/Nの向上が図れる。
【0012】
そして、半導体レーザ501,502から波長λ1,λ2のレーザ光を発するに際しては、波長掃引を行わせるために、上述したように、直線、曲線、ステップを含む波形、具体例として、サイン波、ランプ波、三角波、パルス波のいずれかまたはそれらのうちのいずれかを適宜組み合わせたものを、外部入力信号として用いることができるが、特に、サイン波信号を掃引信号として用いることにより、半導体レーザ501,502やアンプなどの時間応答性の周波数特性を向上させることができ、10MHzでの高速波長掃引が可能となり、これによって、10MHzの高速で温度・濃度・化学種の時系列測定を行うことができる。
【0013】
また、計測に際しては、1本の吸収線のスペクトルプロファイル全体を計測するのではなく、図22に示したように、スペクトルのピークの高さだけを検出し、そこから温度・濃度を算出する。その際、温度・濃度・圧力・流速が変動する場ではスペクトルのピークの位置がシフトするため、波長固定ではピークからずれてしまう可能性がある。そこで、図23に示すように、ピーク付近の狭い範囲のみに対して波長掃引を行い、確実にピークの高さを検出する。このようにすることにより、波長掃引範囲を狭くすることができ、サンプル数が少なくてもこれを有効に使うことができるので、計測をより高速に行うことができる。従来技術はこのようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−74830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この先行技術では、ガスの吸収スペクトル波形において、ピーク付近の狭い範囲のみに対して波長掃引を行い、確実にピークの高さを検出するとの記載がある。この場合、ガスの吸収があるときはピークが検出可能である。しかしながら、ガスが低濃度になるゼロ付近では、信号強度よりも電気信号ノイズが大きいことがあり、電気的なノイズとガスの吸収スペクトルの波長のピークとの分離が困難である。このように、濃度が低いガス濃度の検出が困難であるという課題がある。
【0016】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス濃度の高低によらずに濃度を確実に検出し、検出精度を向上させた多成分用レーザ式ガス分析計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、この受光側光学部から出力された集光を等光量で分波するマルチモード型の分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0018】
また、本発明の請求項2に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0019】
また、本発明の請求項3に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0020】
また、本発明の請求項4に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0021】
また、本発明の請求項5に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0022】
また、本発明の請求項6に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0023】
また、本発明の請求項7に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0024】
また、本発明の請求項8に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0025】
また、本発明の請求項9に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6〜請求項8の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0026】
また、本発明の請求項10に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記トリガ信号は、前記波長走査駆動信号と同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0027】
また、本発明の請求項11に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光側光学部および前記受光側光学部に放物面鏡を用いることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0028】
また、本発明の請求項12に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記複数のピグテール型発光素子が有する波長走査駆動信号発生手段のそれぞれが生成するトリガ信号は、周期が等しく、かつ同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガス濃度の高低によらずに濃度を確実に検出し、検出精度を向上させた多成分用レーザ式ガス分析計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の多成分用レーザ式ガス分析計の全体構成図である。
【図2】発光部および受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図3】ピグテール型発光素子の内部構成図である。
【図4】ドライブ電流及び温度による半導体レーザの発光波長の変化を示す図である。
【図5】波長−損失特性を示す特性図である。
【図6】離間距離−結合効率特性を示す特性図である。
【図7】可視光受光素子についての波長−受光感度特性を示す特性図である。
【図8】近赤外光受光素子についての波長−受光感度特性を示す特性図である。
【図9】受光素子および処理回路の構成図である。
【図10】O2ガス,HCLガス,CO2ガス、COガスの吸収スペクトラム例を示す特性図である。
【図11】レーザ素子の波長走査駆動信号波形、ガスの吸収波形、同期検波回路のガス吸収波形を示す図である。
【図12】受光信号、同期検波回路の出力信号、トリガ信号を示す波形図である。
【図13】受光信号、同期検波回路の出力信号、トリガ信号を示す波形図である。
【図14】可視光・近赤外光受光素子の構造図である。
【図15】他の形態の受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図16】他の形態の受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図17】回折型収差補正レンズの説明図である。
【図18】他の形態の発光側光学部・受光側光学部による光学系を説明するブロック図である。
【図19】ノイズ発生要因を説明する波形図である。
【図20】他の形態のピグテール型発光素子の内部構成図である。
【図21】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の説明図である。
【図22】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の濃度検出原理の説明図である。
【図23】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の濃度検出原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
続いて、本発明を実施するための形態に係る多成分用レーザ式ガス分析計について図を参照しつつ以下に説明する。図1は、本形態の多成分用レーザ式ガス分析計の全体構成図である。
本形態の多成分用レーザ式ガス分析計1は、周波数変調方式を採用している。この多成分用レーザ式ガス分析計1は、変調光生成部10、光ファイバ20、発光側光学部30、受光側光学部40、光ファイバ50、分析部60、通信線70を備えている。このうち、図2でも示すように、変調光生成部10、光ファイバ20、発光側光学部30で本発明の発光部100を構成する。また、受光側光学部40、光ファイバ50、分析部60で本発明の受光部200を構成する。
【0032】
発光側光学部30は、ファイバ端部31、コリメートレンズ32を備える。このコリメートレンズ32は、ファイバ端部31から出射されたレーザ光を、平行光である検出光80として出射する。
そして、受光側光学部40は、集光レンズ41、ファイバ端部42を備える。受光側光学部40は、発光側光学部30から出射される検出光80を受光する。集光レンズ41が平行光である検出光80を集光してファイバ端部42が受光し、光ファイバ50に集光を出力する。
【0033】
発光側光学部30、受光側光学部40は、図1に示すように、複数の測定対象ガスからなるガスが流通する配管等の壁91a,91bに、溶接等により固定されたフランジ92a,92b及び光軸調整フランジ93a,93bを介して取り付けられる。ここで、光軸調整フランジ93a,93bは、発光側光学部30から出射される検出光80が受光側光学部40において最大の光量で受光されるように光軸を調整するためのものである。なお、フランジ92a,92bまたは光軸調整フランジ93a,93bの光路内に透明体による窓を設けて複数の測定対象ガスを含むガスからコリメートレンズ32や集光レンズ41が直接ガスに触れないよう保護しても良い。
【0034】
次に、発光部100、および、受光部200の詳細構成について説明する。まず、発光部100について図2〜図6を参照しつつ詳細に説明する。
発光部100は、測定対象ガスの吸光特性に応じたレーザ光の発光素子を複数設けて、測定対象ガスの個数のレーザ光を照射するようになされており、これらレーザ光に対して周波数を変調した変調光を複数生成し、これら複数の変調光を結合した検出光80を出射するユニットである。
【0035】
この発光部100のうち変調光生成部10は、図2で示すように、さらに測定対象ガスの種類の数に等しい個数(本形態では例示的に4個として説明する)のピグテール型発光素子11a,11b,11c,11d、ピグテール型発光素子と同じ本数(本形態では例示的に4本として説明する)のピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12d、光結合器13を備えている。なお、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dと、ピグテール12a,12b,12c,12dとは、それぞれ、予め光学的に接続された状態で市販されているものであり、光学的な調整を不要としている。
【0036】
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、詳しくは、図3で示すような構成としている。
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、それぞれ発光素子本体111a,111b,111c,111dを内蔵している。これら発光素子本体111a,111b,111c,111dは、測定対象ガス1成分につき1個の発光素子を用いるように構成している。これらは、例えば、DFBレーザ(Distributed Feedback Laser)、もしくはVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)といわれるレーザダイオードである。
【0037】
これらレーザダイオードは、発光波長がガスの吸光特性に一致する可視領域や近赤外領域にて発光が可能であり、かつ、電流と温度により、レーザダイオードの発光波長を可変可能である。本形態では説明の具体化のため、可視領域を発するのはピグテール型発光素子11aであるとし、また、近赤外領域を発するのはピグテール型発光素子11b,11c,11dであるものとして説明する。なお、このような構成は測定対象ガスの実状に応じて決定されるものであり、例えば、可視領域を発するピグテール型発光素子を2個、近赤外領域を発するピグテール型発光素子を4個というように選択することができる。
【0038】
本形態では測定対象ガスとして酸素ガス(O2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するものとする。
可視領域として、例えば、酸素ガス(O2ガス)を検出するために波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとし、近赤外領域として、例えば、塩素ガス(HClガス)を検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガス(CO2ガス)を検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガス(CO2ガス)を検出するために波長2360nmを発光するピグテール型発光素子11dとする。
【0039】
これらの発光素子本体111a,111b,111c,111dは、ガスの吸収特性に一致する可視領域・近赤外領域の波長にて発光が可能であり、さらに、図4(a)に示したようにドライブ電流により発光波長を可変とすることができる。また、図4(b)に示したように温度によって発光波長を可変とすることができる。このように温度と電流で、レーザの発光波長を可変可能である。なお、レーザダイオード以外でも上記の条件を満たす、つまり測定対象ガスの吸収波長帯域で波長掃引できるものであれば、他種の発光素子を用いてもよい。
【0040】
図3において、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度は、サーミスタ等の温度検出素子112a,112b,112c,112dを用いて検出される。これらの温度検出素子112a,112b,112c,112dは温度制御回路113a,113b,113c,113dに接続されている。これら、温度制御回路113a,113b,113c,113dは、発光素子本体111a,111b,111c,111dの発光波長を安定化させるため、温度検出素子112a,112b,112c,112dの抵抗値がそれぞれ一定になるようにPID制御等を行ってペルチェ素子114a,114b,114c,114dの温度制御を行い、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度を調節する。
【0041】
また、発光波長を変化させる波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dの出力信号と、発光波長を周波数変調させるための高周波変調信号発生回路1116a,116b,116c,116dの出力信号とを、駆動信号発生回路117a,117b,117c,117dにより合成して駆動信号を生成し、この駆動信号をV−I変換して発光素子本体111a,111b,111c,111dに供給する。これにより、発光素子本体111a,111b,111c,111dからは、それぞれ異なる種類の測定対象ガスの吸光特性を走査するための、周波数変調された所定波長のレーザ光が出射される。したがって、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから所定波長のレーザ光が出射される。
そして、波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dからはそれぞれトリガ信号a,トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dが出力される。これらトリガ信号aは、通信線70を介して可視光用処理回路64aの演算回路645aへ入力され(図1,図2,図9(a)参照)、また、トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dは近赤外光処理回路64bの演算回路645b,645c,645dへ入力される(図1,図2,図9(b)参照)。これらトリガ信号については後述する。
【0042】
なお、複数のピグテール型発光素子を備えたレーザ光源としては、例えば、NTTエレクトロニクス株式会社製のバタフライ型パッケージのレーザ光源を用いることができる。しかしながら、温度調節機能と光ファイバへの接続ができればよく、外形形状はバタフライ型に限定するものではない。
【0043】
図2に戻るが、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから出射したレーザ光は、それぞれピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12d内を伝播する。ピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12dの出力側は光結合器13に接続されている。光結合器13は、光ファイバカプラ、もしくは、光ファイバスイッチなどであり、マルチモード型の装置である(理由は後述する)。ピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12dを伝播したこれらレーザ光を、光結合器13は重ね合わせ、結合光として出射する。光結合器13からの結合光は、光ファイバ20へ入力される。この光ファイバ20もマルチモード型のファイバである。
【0044】
ここで光結合器13および光ファイバ20がマルチモード型を採用している点について説明する。
この光ファイバ20は複数のレーザ光からなり広い帯域に渉る結合光を伝播させる必要がある。一般的にシングルモード光ファイバのコア径は、伝搬する波長によって異なる。波長が長い方がコア径が大きくなる。そのため、波長が長いレーザ光、例えば2500nmのレーザ光でシングルモードとなるような光ファイバを選択すると、例えば700nmの光はマルチモードで伝搬が可能となる。そこで、2500nmのレーザ光でシングルモードとなるような光ファイバを選択すれば良い。もしくは、全ての光ファイバをマルチモードで構成する。本形態では光ファイバはマルチモード光ファイバであるとして以下説明する。このように結合器や全ての光ファイバをマルチモード型とし、複数のレーザ光からなり広い帯域に渉る結合光を、結合器や全ての光ファイバにおいて確実に伝播させるようにする。これにより多成分の被測定ガスの計測を実現する。
【0045】
本形態では光結合器13としてマルチモード型の光ファイバカプラ、もしくは、光ファイバスイッチを選択し、また、光ファイバ20としてマルチモード型の光ファイバを選択した。マルチモード型の光ファイバカプラやマルチモード光ファイバを適用すれば図5(a),(b)からも明らかなように、波長が500nm〜2500nmのレーザ光については低損失で伝搬可能である。
加えて、後述する他の光ファイバ50,62a,62bも、光ファイバ20と同様にマルチモード型の光ファイバとして、500nm〜2500nmのレーザ光について低損失で伝搬可能とする。
また、分波器61も同様にマルチモード型の光ファイバカプラや光ファイバスイッチとして、500nm〜2500nmのレーザ光について低損失で伝搬可能とする。
このように低損失で伝播するようになったため低濃度のガスでも信号として表れることとなって検出精度が向上している。
【0046】
話を戻すが、図2で示すように、光結合器13からの結合光は、マルチモード型の光ファイバ20へ入射され、この光ファイバ20の先端であるファイバ端部31から出射した結合光33をコリメートレンズ32により平行な検出光80に変換し出射する。
ここに、光ファイバから空間へ出射するコリメート光学系において、特に可視領域レーザ光と近赤外領域レーザ光との収差の影響を低減する必要がある。図6は石英ガラスの平凸レンズであるコリメートレンズ32の平面側とファイバ端部31の端面との距離Lを計算したものである。
【0047】
ここに波長により焦点位置にズレが生じるために、図6に示すように、両方の波長で充分な受光光量が得られるように焦点位置を決める。マルチモード型の光ファイバ20のファイバ端部31とコリメートレンズ32との間の距離Lは、波長が異なるレーザが入射されても検出光の光量が十分に大きくなるように決定される。例えば、可視領域として、酸素を検出するために波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとし、近赤外領域として、例えば、二酸化炭素を検出するために波長2004nm発光するピグテール型発光素子11bとしたとき、距離Lは図6に示すように12.5mmである。同様に、集光レンズ41とファイバ端部42との距離も上記手法にて決定される。なお、近赤外領域にある3種のレーザ光については波長が近いため収差の影響は無視できるレベルといえるものである。
加えて、コリメートレンズ32や集光レンズ41の素材も二種のレーザ光が伝搬される材料を選ぶ。なお、レンズは今回1枚の例であるが、複数枚用いてもよい。
【0048】
このような発光側光学部30を経て検出光80が出射される。図1,図2に示すように、発光側光学部30から出力された平行光である検出光80は、壁91a,91bの内部区間(複数の測定対象ガスが流通する空間)を伝播し、受光側光学部40により受光される。
【0049】
続いて、受光部200について図2,図7〜図13を参照しつつ詳細に説明する。受光部200は、検出光80を受光し、測定対象ガスの吸光特性により吸収された光について分析するユニットである。すなわち、受光側光学部40では、図2で示すように、集光レンズ41により集めた集光43をファイバ端部42へ入射させる。光ファイバ50を通過する集光を分波器61が1:1の光量となるように分波する。この分波器61は、分波機能を有しているものであれば良く、具体的には、上記した理由により、マルチモード型の光ファイバカプラであったり、または、マルチモード型の光ファイバスイッチを採用することができる。
【0050】
これら分波光は光ファイバ62a,62bを介してそれぞれ可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bにてそれぞれ受光される。測定対象ガスとして酸素ガス(O2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するが、可視光受光素子63aは、酸素ガス(O2ガス)を検出するために、図7に示すように400nm〜1000nmという可視波長域に感度をもつSiフォトダイオードであり、また、近赤外光受光素子63bは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を検出するために、図8に示すように1200nm〜2500nmという近赤外波長域に感度をもつInGaAsフォトダイオードである。
このような素子としては、例えば、浜松ホトニクス株式会社から販売されているシリコンフォトダイオードであるS5821や、InGaAsフォトダイオードであるG8373がある。
【0051】
なお、分波器61により分波された分波光は、全ての波長のレーザ光が含まれているが、可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bは、波長に対して感度をもつ波長領域がそれぞれ決まっているため、それぞれ感度をもつ波長の光のみの受光が可能となる。例えば、検出光のうち波長が763nmの光は可視光受光素子63aでのみ検出される。また、検出光のうち波長が1780nm,2004nm,2360nmの光は近赤外光受光素子63bでのみ検出される。
これら可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bは、受光量に応じて、電気信号による検出信号に変換して可視光用処理回路64a,近赤外光用処理回路64bに送る。これら可視光用処理回路64a,近赤外光用処理回路64bは、例えば、検出信号に対して増幅やノイズのフィルタリングを行い、濃度を検出する。
【0052】
図9(a)は、可視光用処理回路64aの内部構成図である。可視光用受光素子63aから可視光用処理回路64aへ入力された検出信号は、I−V変換回路641aによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)642aは、前記高周波変調信号発生回路116aによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路641aにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路643aに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ644aに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路645aに入力されると共に、この演算回路645aにおいて測定対象ガス(詳しくは酸素ガス(O2ガス))の濃度が演算されることになる。
【0053】
また、図9(b)は、近赤外光用処理回路64bの内部構成図である。近赤外光用受光素子63bから近赤外光用処理回路64bへ入力された検出信号は、I−V変換回路641bによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)642b,642c,642dは、高周波変調信号発生回路116b,116c,116dによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路641bにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路643b,643c,643dに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ644b,644c,644dに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路645b,645c,645dに入力されると共に、この演算回路645b,645c,645dにおいて測定対象ガス(詳しくは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス))の濃度が演算されることになる。
【0054】
次に、上記の構成において、測定対象ガスの濃度を検出する原理について説明する。ここでは可視領域にある酸素ガス(O2ガス)と近赤外領域にある塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)について検出する。酸素は、図10で示すように760nm〜768nmで吸光特性を有する。酸素検出するために、可視領域として、波長763nmを発光するピグテール型発光素子112aとする。同様に、近赤外領域として、例えば、塩素ガスを検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガスを検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガスを検出するために波長2360nmを発光するピグテール型発光素子11dとする。本発明では500〜2500nmまでの光が光ファイバ、結合器、分波器を伝播されるようにしたため、検出は可能である。
【0055】
まず、発光部10から出射した検出光80は、測定対象ガスが流通する壁91a,91b内の空間を透過し、吸光されたものとする。これらの検出光は同軸上で受光側光学部40に入射する。
【0056】
そして、可視光に感度を持つ可視光用受光素子(Siフォトダイオード)63aでは、763nmの発光素子本体111aからの光のみを受光し、また、近赤外波長域に感度を持つ近赤外光用受光素子(InGaAsフォトダイオード)63bは、波長1780nmの発光素子本体111bからのレーザ光、2004nmの発光素子本体111cからのレーザ光、波長2360nmの発光素子本体111dからのレーザ光を受光する。
【0057】
図11(a)は、例えば発光素子本体111aの駆動電流波形の一例を示している。
図3の波長走査駆動信号発生回路115aにおいて、測定対象ガスの吸光特性を走査する波長走査駆動信号S1は、発光素子本体111aの駆動電流値を直線的に変化させて発光素子本体111aの発光波長を徐々に変化させ、例えば、0.2nm程度の吸光特性を走査する。一方、信号S2は、駆動電流値を発光素子本体111aが安定するスレッショルドカレント以上に保ち、一定波長で発光させるためのものである。更に、信号S3では、駆動電流値を0mAにしておく。なお、トリガ信号aはこの信号S3と同期する信号である。
【0058】
図11(b)は、図3の高周波変調信号発生回路116aから出力される変調信号の波形図であり、測定対象ガスの吸光特性を検出するための信号S4は、例えば周波数が10kHzの正弦波とし、波長幅を0.02nm程度変調する。
図11(c)は、図2の駆動信号発生回路117aから出力される駆動信号(波長走査駆動信号発生回路111の出力信号と高周波変調信号発生回路116aの出力信号との合成信号)の波形図であり、この駆動信号S5を発光素子本体111aに供給すると、発光素子本体111aからは、測定対象ガスの0.2nm程度の吸光特性を波長幅0.02nm程度で検出可能な変調光が出力される。
【0059】
他の発光素子本体111b,111c,111dも、上記と同様にして、測定対象ガスの吸光特性に応じて分析される。
4個の発光素子本体111a,111b,111c,111dの変調波周波数を、例えば10kHz,12.5kHz,15kHz,17.5kHzとすると、変調信号の2倍周波数成分はそれぞれ20kHz,25kHz,30kHz,35kHzとなり、参照信号発生回路642a,642b,642c,642dがこれらの周波数の参照信号を出力することで、同期検波回路643a,643b,643c,643dは上記2倍周波数成分に吸光特性を有する測定対象ガス、すなわち、O2ガス、CO2ガス、HCLガス、COガスの吸光特性のみをそれぞれ検出して出力することができる。
【0060】
測定対象ガス、すなわちO2ガス、CO2ガス、HCLガス、COガスに吸光特性がある場合、同期検波回路643a,643b,643c,643dからは図12に示すような吸光特性が得られる。なお、検出光40の光路上に測定対象ガスが存在しない場合には、同期検波回路643a,643b,643c,643dの出力に図12のような吸光特性は現れず、図13で示すような出力となる。
【0061】
続いて演算回路による濃度算出方法について説明する。ここではO2ガスについて例示的に説明する。
演算回路645aには、波長走査駆動信号発生回路115aからトリガ信号aが入力される。
図11(a)におけるトリガ信号は、上記S1,S2,S3を含めた1周期ごとに出力される信号であり、波長走査駆動信号発生回路116aより出力され、通信線70を介して、演算回路645aへ入力される。トリガ信号は、波長走査駆動信号のS3と同期がとれている。図12で示すように、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過したときに同期検波回路出力波形でB点の最小値B、C点の最大値C、D点の最小値Dが登場する。これら所定時間tb,tc,tdは工場出荷前や校正時に実験的に予め算出しておいて、図示しないメモリに登録しておく。この値を用いて濃度を算出する。
【0062】
演算回路645aとしては、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過するときに同期検波回路出力波形の値を読みとって記憶し、その後に濃度を算出する処理を行う。この同期検波回路出力波形はその波形のピークにある最大値がそのままガス濃度を表すため、例えば、最大値を濃度として出力する。または最大値から最小値を減じた差分値を濃度とするというものである。他の測定対象ガス(CO2ガス、HCLガス、COガス)の濃度検出動作についても、同様に行えばよい。
【0063】
特にガス濃度が低くなると、光学窓材料やレンズなどによるレーザ光の干渉による影響のノイズの影響が強くなり、これらのノイズがピークとなって検出されてしまうなど、ピークの発見が困難であるが、本発明ではこのようにガス吸収が発生する部分をあらかじめ設定しトリガ信号を基準にガス吸収のピークを検出するようにしたため、ノイズ等に影響されることなく正確なガス濃度検出ができるという利点がある。
【0064】
このような装置構成によって、従来技術と同様に、2倍周波数の信号を検出することでガス濃度が計測可能となる。本発明では特に光ファイバとしてマルチモード光ファイバを用いているので、500〜2500nmという広い波長域で計測可能となる。したがって、本形態で例示したピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dだけでなく、可視光領域や近赤外光領域でそれぞれさらに複数の発光素子を追加した場合でも、変調周波数を変えるか、レーザの発光をシリーズに発光させることで、受光素子の波長領域が同一の場合も分離して計測可能である。
また、低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。加えて同期によりピーク位置を正確に検出できるようにしたため、やはり低濃度のガスの検出能力を向上させた。本発明の多成分用レーザ式ガス分析計はこのようなものである。
【0065】
この多成分用レーザ式ガス分析計では各種の変形形態が可能である。続いて他の形態について説明する。この形態では、先の形態のうち、発光部100は同じ構成とするが、受光部200を変更するものである。先の形態の受光部200は、詳しくは、図2で示したように、分析部60において分波器61を用いる構成であったが、本形態では、受光部200の分析部60では、図14に示すようなSiフォトダイオードとInGaAsフォトダイオードが一体化された可視光・近赤外光受光素子65を用い、図15で示すように、分波器を用いずに、光ファイバ50から直接照射される集光を可視光・近赤外光受光素子65が受光し、可視光・近赤外光受光素子65の可視波長域に感度をもつSiフォトダイオードから出力される検出信号を可視光用処理回路64aが受信し、また、可視光・近赤外光受光素子65の近赤外波長域に感度をもつInGaAsフォトダイオードから出力される検出信号を近赤外光用処理回路64bがそれぞれ受信して信号処理するようにしてもよい。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0066】
続いて他の形態について説明する。この形態では、図1〜図13を用いて説明した第1の形態のうち、発光部100は同じ構成とするが、受光部200を変更するものである。第1の形態の受光部200は、詳しくは、図2で示したように、分析部60において分波器61を用いる構成であったが、本形態では、受光部200の分析部60では、図16に示すように受光部200の分析部60は、分波器を用いずに、広帯域近赤外光用受光素子66、近赤外光用処理回路64bを備える構成とした。近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子66を用い、光ファイバ50から直接照射される集光を広帯域近赤外光用受光素子66が受光し、可広帯域近赤外光用受光素子66から出力される検出信号を、近赤外光用処理回路64bが受信して近赤外波長域の信号と可視波長域の信号とをそれぞれ信号処理する。信号処理は、上記と同じであるが近赤外光用処理回路64bのみで全ての信号処理を行う。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0067】
続いて他の形態について説明する。先に説明した三形態の多成分用レーザ式ガス分析計において、さらにコリメートレンズ32および集光レンズ41へARコーティングを行うことが好ましい。ARコーティングは、反射防止(ノングレア)処理の一種であり、レンズ表面に例えばフッ化マグネシウムなどを真空蒸着させて透明な薄膜を作り、光の干渉を利用して照明などによる外光を打ち消すというものである。膜の薄さは可視光線の波長の1/4になっている。外光が入射すると、膜の表面で反射する光と、透過して奥で反射する光に分かれるが、両者は1/2波長ずれた逆位相となるため、打ち消しあって反射光が目立たなくなる。特に外乱光が検出光に合成される事態を防止し、正確な光量で検出することが可能となる。このような改良を先に説明した三形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0068】
続いて他の形態について説明する。先に説明した四形態では、レンズの平面側と光ファイバの端面の距離を調整することで、収差の影響を低減させていた。本形態では更に、集光レンズ41は図17(a)のような平凸レンズではなく、図17(b)のように平凸レンズの平面側に回折格子を形成した回折型収差補正レンズを採用するというものである。回折格子を適切に形成することで、収差の影響をさらに低減し、集光レンズ41による集光がファイバ端部42である受光ポイントで全ての検出光の焦点として入射され、確実に検出光が光ファイバ50に入力されるようにすることができる。このような回折型収差補正レンズはコリメートレンズ32に適用しても良い。
また、平凸レンズに代えて回折を利用した回折型レンズ、非球面レンズを用いても収差の低減に寄与する。
このような改良を先に説明した四形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0069】
続いて他の形態について説明する。先に説明した五形態ではコリメート光学系にレンズを用いていたが、本形態ではレンズの代わりに放物面鏡を採用するというものである。放物面鏡とは、その反射面が回転放物面の一部からなる鏡である。放物面鏡の回転軸に対して平行に反射面に入射した光は、放物面鏡の焦点に集光する。一方、放物面鏡の焦点から発し反射面に入射した光は、放物面鏡の回転軸に対して平行な光に変換される。上記の性質を利用して、以下のようにコリメート光学系を構成する。すなわち、図2で示したコリメートレンズ32の代わりに図18のようにコリメート放物面鏡34を設け、集光レンズ41の代わりに集光放物面鏡44を設ける。ファイバ端部31をコリメート放物面鏡34の焦点に配置することにより、ファイバ端部31から出射した結合光33は放物面鏡34によって反射され、検出光80は平行光に変換される。また、ファイバ端部42を集光放物面鏡44の焦点に配置し、集光放物面鏡44の回転軸を検出光80に対して平行に配置することにより、集光43はファイバ端部42に集光する。したがって、この形態によれば、レーザ光の波長に依存せずにコリメートおよび集光が可能であるため、確実に検出光80を光ファイバ50に入力することが可能になる。
このような改良を先に説明した五形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0070】
続いて他の形態について説明する。先に説明した六形態では、光ファイバの端面については限定していなかったが、本形態ではファイバ端部31,42を斜め研磨端とする。このように構成することで、戻り光は斜め研磨端での反射により光ファイバ内に戻ることがなく戻り光の影響を除去することが可能になる。
このような改良を先に説明した六形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0071】
続いて他の形態について説明する。先に説明した七形態では、発光側のマルチモード型の光結合器13は、一つしか出力しないというものであった。光結合器13は、詳しくは2つの入力に対して、2つの出力を持たせることができ、光結合器13の出力側に2本の光ファイバおよび2個のコリメートレンズをそれぞれ設けることで2系統のガス分析が可能となる。
このような改良を先に説明した七形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0072】
続いて他の形態について説明する。先に説明した八形態では、周波数が異なる複数光線を結合した検出光であるものとして説明した。本形態では、それぞれのピグテール型発光素子を、時分割で動作させるものとした。そして検波手段では、受光手段の信号から、高周波変調の基本波成分と2倍波成分を、動作中のピグテール型発光素子と同期しながら検波することとした。例えば、図3の発光素子本体111a,111b,111c,111dと、図9の参照信号発生回路642a,642b,642c,642dと、をそれぞれ演算回路645a,645b,645c,645dに接続し、ともに一個ずつ動作するように同期させて、検波手段の信号から変調周波数成分を測定する。このように複数のガス成分を時分割で測定して一成分のみを確実に検出するような多成分用レーザ式ガス分析計としても良い。
このような改良を先に説明した八形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0073】
続いて他の形態について説明する。先に説明した九形態では、受光側はマルチモード光ファイバカプラであったが、分枝カプラとしてもよい。この場合、変調周波数をそれぞれ、分けなくてもよい。
このような改良を先に説明した九形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0074】
続いて他の形態について説明する。先に説明した十形態では、各ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dを駆動する波長走査駆動信号の各々の間に何らの時間的な関連性を持たせておらず、波長走査駆動信号のうちのS3が表れる周期やタイミングの制御を行っていなかった。このため、検出に問題が生じる場合があることが知見された。その理由を、図11(a)および図19を参照しつつ、以下に説明する。なお、説明において、多成分用レーザ式ガス分析計は、図1〜図13を用いて説明した第1の形態であるものとして説明する。
【0075】
図11(a)内に示されているような波長走査駆動信号が2つのピグテール型発光素子にそれぞれ供給されるものとする。これらは本例ではともに近赤外光用のピグテール型発光素子であるものとする。そして、これら2つの波長走査駆動信号が非同期状態である場合(周期が一致するが同期が取れていない場合、または、周期が不一致で同期が取れない場合)を考える。
【0076】
このように非同期状態の2つの波長走査駆動信号を含む駆動信号によって駆動された複数のレーザ光が、それらの波長に感度をもつ近赤外光用受光素子63bに入射すると、受光信号は図19で示すように2つの波長走査駆動信号がタイミングがずれて重畳された状態となっている。このような受光信号が近赤外光用処理回路64bに出力される。この場合、通信線70を介して入力されるトリガ信号a,bは異なるタイミングで登場することとなる。
【0077】
この和となった信号を分離し各ガス濃度を検出するためには、近赤外光用処理回路64bでは、前述したように、各高周波変調信号の周波数をそれぞれ異なる値とし、各々の2倍周波数の参照信号を用いて同期検波を行う。ここで、それぞれの駆動信号が、互いに他の高周波変調信号の基本周波数成分、あるいは2倍周波数成分の信号を含まないことにより、同期検波による信号の分離検出を実現している。
【0078】
ところが、波長走査駆動信号は、図11(a)のように、例えば波長走査駆動信号S1の開始時に信号の急激な立ち上がりが存在し、また、終了時には信号の急激な立ち下がり部分が存在し、これらの部分にはさまざまな周波数成分が含まれる。したがって、互いに他の高周波変調信号の基本周波数成分、あるいは2倍周波数成分が含まれ、結果として互いの信号の分離検出を阻害するおそれがある。
【0079】
特に、図19に示すように、トリガ信号aによる同期検波出力aと、トリガ信号aとは同期していないトリガ信号bによる同期検波出力bと、が受光信号から得られた場合、一方の同期検波出力波形aのピーク値BまたはCまたはDが発生する時刻に、その他の同期検波出力波形bが検波されることとなる波長走査駆動信号の立ち上がりあるいは立ち下がりが発生した場合(トリガ信号bが発生するタイミングの場合)は、ピーク値が大きく変化する。図19ではピーク値Cの付近で上下に尖頭を有するノイズが重畳されている。このような波形を基に算出されるガス濃度の指示値に誤差が発生するおそれがある。この問題は、説明した近赤外光用受光素子63bに加え、可視光用受光素子63aにおいても、それぞれに波長感度を持つすべてのレーザ光において、それらを駆動する波長走査駆動信号間の時刻関係によって発生しうるものである。
【0080】
このような問題の発生を避けるために、各波長走査駆動信号の周期を等しくし、かつ同期させることが有効である。具体的には、図20で示すように、図3で示した発光部側の変調光生成部10のブロックに加え、さらに全ての波長走査駆動信号発生回路115a,115b,・・・に同期制御部118を接続し、S3信号の発生周期を等しくし、かつ同期させる制御を行うことで達成される。ここで周期の一致および同期がなされると2つの波長走査駆動信号ではS3信号が同時に登場し、トリガ信号a,bも同じタイミングで登場することとなる。例えば図19で示すトリガ信号aおよびトリガ信号bが同じ周期で同じ時刻に発するように同期させる。これにより、各波長走査駆動信号の立ち上がりあるいは立ち下がり部分が一致し、互いの信号の分離検出を実現する。これにより、不要なノイズの発生を抑えることができる。
このような改良を先に説明した十形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0081】
以上本発明について説明した。本発明のレーザ式ガス分析計によれば、可視光および近赤外光に渉って吸光する複数のガスを含む測定対象ガスに対してガス成分を正確に検出することが可能となる。
【0082】
半導体レーザを用いた吸収分光法に基づくレーザ式ガス分析計において、従来の光ファイバ式ガス分析計では、ガスの吸収スペクトル波形のピークを検出するように信号処理していたが、信号強度が電気信号ノイズよりも大きくなければならず、濃度が低いガス濃度検出が困難であったが、本願提案では低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。さらに波長走査信号のトリガ信号をもとに、ガス吸収ピークを検出することで、低濃度ガス検出が可能となった。加えて同時に複数成分測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の多成分用レーザ式ガス分析計は、ボイラ、ゴミ焼却等の燃焼排ガス測定用として最適である。その他、鉄鋼用ガス分析[高炉、転炉、熱処理炉、焼結(ペレット設備)、コークス炉]、青果貯蔵及び熟成、生化学(微生物)[発酵]、大気汚染[焼却炉、排煙脱硫・脱硝]、自動車排ガス(除テスタ)、防災[爆発性ガス検知、有毒ガス検知、新建築材燃焼ガス分析]、植物育成用、化学用分析[石油精製プラント、石油化学プラント、ガス発生プラント]、環境用[着地濃度、トンネル内濃度、駐車場、ビル管理]、理化学各種実験用などの分析計としても有用である。
【符号の説明】
【0084】
100:発光部
10:変調光生成部
11a,11b,11c,11d:ピグテール型発光素子
11a,11b,11c,11d:ピグテール型発光素子
111a,111b,111c,111d:発光素子本体
112a,112b,112c,112d:温度検出素子
113a,113b,113c,113d:温度制御回路
114a,114b,114c,114d:ペルチェ素子
115a,115b,115c,115d:波長走査駆動信号発生回路
116a,116b,116c,116d:高周波変調信号発生回路
117a,117b,117c,117d:駆動信号発生回路
118:同期制御部
12a,12b,12c,12d:ピグテール
13:光結合器
20:光ファイバ
30:発光側光学部
31:ファイバ端部
32:コリメートレンズ
33:結合光
34:コリメート放物面鏡
200:受光部
40:受光側光学部
41:集光レンズ
42:ファイバ端部
43:集光
44:集光放物面鏡
50:光ファイバ
60:分析部
61:分波器
62a,62b:光ファイバ
63a:可視光受光素子
63b:近赤外光受光素子
64a:可視光用処理回路
641a:I−V変換回路
642a:参照信号発生回路
643a:同期検波回路
644a:フィルタ
645a:演算回路
64b:近赤外光用処理回路
641b:I−V変換回路
642b,642c,642d:参照信号発生回路
643b,643c,643d:同期検波回路
644b,644c,644d:フィルタ
645b,645c,645d:演算回路
65:可視光・近赤外光受光素子
66:広帯域近赤外光用受光素子
70:通信線
80:検出光
91a,91b:壁
92a,92b:フランジ
93a,93b:光軸調整フランジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の各種の測定対象ガスの有無や濃度を分析する多成分用レーザ式ガス分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
多成分用レーザ式ガス分析計の従来技術として、例えば、特許文献1(特開2000−74830号公報(特許第4038631号公報)、発明の名称「半導体レーザ分光法を用いた温度・濃度・化学種の高速計測方法および計測システム」)に記載の発明が知られている。この計測システムについて図を参照しつつ説明する。
【0003】
図21は、従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の説明図である。図21において、501,502は発光部としての半導体レーザで、互いに異なる波長λ1(例えば1.996μm)、λ2(例えば2.050μm)のレーザ光を発するものであり、例えば分布帰還型(DFB)半導体レーザよりなる。これらの半導体レーザ501,502は、ファンクションジェネレータ503によってそれぞれ電流制御される。これらの半導体レーザ501,502は、その波長掃引に必要な外部入力信号として、直線、曲線、ステップを含む波形、具体例として、サイン波、ランプ波、三角波、パルス波のいずれかまたはそれらのうちのいずれかを適宜組み合わせたものを用いる。また、これらの半導体レーザ501,502は図示してないが、それぞれ2.0μm用のアイソレータを備えている。
【0004】
504,505は半導体レーザ501,502に光ファイバ506,507を介して接続されるファイバカプラ、508は半導体レーザ501,502がそれぞれ発するレーザ光を後述するセル513に測定光として送出するためのファイバカプラで、509,510は光ファイバである。なお、ファイバカプラ504,505には、参照光としてのレーザ光用の光ファイバ511,512がそれぞれ接続されている。
【0005】
513は前記ファイバカプラ508の後段に設けられるセルである。このセル513の両端部は、2μm付近のレーザ光を透過させるセル窓513a,513bで封止されるとともに、ガス導入口513c、ガス導出口513dを備え、ガス導入口513cには例えばCO2と空気とを適宜の割合で供給できるように開閉弁514,515を備えたガス供給ライン516,517が接続され、ガス導出口513dには開閉弁518および真空ポンプ519を備えたガス排出ライン520が接続されている。
【0006】
また、セル窓513a,513bの外部にミラー521,522を設け、セル513に入射したレーザ光がセル513内を数回通過した後、出射するように構成されている。
そして、523,524はセル513の前段側および後段側にそれぞれ設けられるコリメータで、後段側のコリメータ524の後段には分波器525が設けられている。この分波器525は、セル513を透過した二つの波長のレーザ光(測定光)を波長λ1,λ2のレーザ光に分離するものである。
【0007】
526,527は測定光用のフォトダイオード、528,529は参照光用のフォトダイオードで、これらのフォトダイオード526,527には分波器525によって分離された波長λ1,λ2のレーザ光(測定光)が入射し、フォトダイオード528,529には光ファイバ511,512を経て波長λ1,λ2のレーザ光(参照光)が入射する。
【0008】
530〜533は前記フォトダイオード526〜529にそれぞれ対応して設けられるプリアンプで、これらのプリアンプ530〜533は、A/D変換器534を経て図示していない信号処理装置(例えばコンピュータ)に入力されるように構成されている。
【0009】
上述のように構成されたレーザ式ガス分析計においては、セル513にCO2と空気とを適宜の割合で混合したガスが被測定ガスとして供給される。この状態において、半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ1,λ2が、混合した状態で被測定ガスが充填されたセル513を測定光として透過する。この測定光は、分波器525において元の波長λ1,λ2のレーザ光となり、フォトダイオード526,527に入射する。一方、前記半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ1,λ2は、そのまま光ファイバ511,512を経て参照光としてフォトダイオード528,529に入射する。
【0010】
そして、フォトダイオード526〜529からは、入射する光に応じた信号を出力し、これらの出力信号は、プリアンプ530〜533を経てA/D変換器534に入り、その変換出力がコンピュータに入力され、信号処理される。セル513に供給された被測定ガスの温度・濃度・化学種が求められる。
【0011】
このレーザ式ガス分析計においては、計測に用いるレーザ光を、従来よりも長い波長である2μm付近の相異なる波長λ1,λ2のレーザ光を用いているので、吸収の強い吸収線で計測を行うことができ、必要光路長の短縮や、温度・濃度・化学種の測定におけるS/Nの向上が図れる。
【0012】
そして、半導体レーザ501,502から波長λ1,λ2のレーザ光を発するに際しては、波長掃引を行わせるために、上述したように、直線、曲線、ステップを含む波形、具体例として、サイン波、ランプ波、三角波、パルス波のいずれかまたはそれらのうちのいずれかを適宜組み合わせたものを、外部入力信号として用いることができるが、特に、サイン波信号を掃引信号として用いることにより、半導体レーザ501,502やアンプなどの時間応答性の周波数特性を向上させることができ、10MHzでの高速波長掃引が可能となり、これによって、10MHzの高速で温度・濃度・化学種の時系列測定を行うことができる。
【0013】
また、計測に際しては、1本の吸収線のスペクトルプロファイル全体を計測するのではなく、図22に示したように、スペクトルのピークの高さだけを検出し、そこから温度・濃度を算出する。その際、温度・濃度・圧力・流速が変動する場ではスペクトルのピークの位置がシフトするため、波長固定ではピークからずれてしまう可能性がある。そこで、図23に示すように、ピーク付近の狭い範囲のみに対して波長掃引を行い、確実にピークの高さを検出する。このようにすることにより、波長掃引範囲を狭くすることができ、サンプル数が少なくてもこれを有効に使うことができるので、計測をより高速に行うことができる。従来技術はこのようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−74830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この先行技術では、ガスの吸収スペクトル波形において、ピーク付近の狭い範囲のみに対して波長掃引を行い、確実にピークの高さを検出するとの記載がある。この場合、ガスの吸収があるときはピークが検出可能である。しかしながら、ガスが低濃度になるゼロ付近では、信号強度よりも電気信号ノイズが大きいことがあり、電気的なノイズとガスの吸収スペクトルの波長のピークとの分離が困難である。このように、濃度が低いガス濃度の検出が困難であるという課題がある。
【0016】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス濃度の高低によらずに濃度を確実に検出し、検出精度を向上させた多成分用レーザ式ガス分析計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、この受光側光学部から出力された集光を等光量で分波するマルチモード型の分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0018】
また、本発明の請求項2に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0019】
また、本発明の請求項3に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0020】
また、本発明の請求項4に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0021】
また、本発明の請求項5に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0022】
また、本発明の請求項6に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0023】
また、本発明の請求項7に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0024】
また、本発明の請求項8に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0025】
また、本発明の請求項9に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項6〜請求項8の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0026】
また、本発明の請求項10に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記トリガ信号は、前記波長走査駆動信号と同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0027】
また、本発明の請求項11に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光側光学部および前記受光側光学部に放物面鏡を用いることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【0028】
また、本発明の請求項12に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記複数のピグテール型発光素子が有する波長走査駆動信号発生手段のそれぞれが生成するトリガ信号は、周期が等しく、かつ同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガス濃度の高低によらずに濃度を確実に検出し、検出精度を向上させた多成分用レーザ式ガス分析計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の多成分用レーザ式ガス分析計の全体構成図である。
【図2】発光部および受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図3】ピグテール型発光素子の内部構成図である。
【図4】ドライブ電流及び温度による半導体レーザの発光波長の変化を示す図である。
【図5】波長−損失特性を示す特性図である。
【図6】離間距離−結合効率特性を示す特性図である。
【図7】可視光受光素子についての波長−受光感度特性を示す特性図である。
【図8】近赤外光受光素子についての波長−受光感度特性を示す特性図である。
【図9】受光素子および処理回路の構成図である。
【図10】O2ガス,HCLガス,CO2ガス、COガスの吸収スペクトラム例を示す特性図である。
【図11】レーザ素子の波長走査駆動信号波形、ガスの吸収波形、同期検波回路のガス吸収波形を示す図である。
【図12】受光信号、同期検波回路の出力信号、トリガ信号を示す波形図である。
【図13】受光信号、同期検波回路の出力信号、トリガ信号を示す波形図である。
【図14】可視光・近赤外光受光素子の構造図である。
【図15】他の形態の受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図16】他の形態の受光部による光学系を説明するブロック図である。
【図17】回折型収差補正レンズの説明図である。
【図18】他の形態の発光側光学部・受光側光学部による光学系を説明するブロック図である。
【図19】ノイズ発生要因を説明する波形図である。
【図20】他の形態のピグテール型発光素子の内部構成図である。
【図21】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の説明図である。
【図22】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の濃度検出原理の説明図である。
【図23】従来技術の多成分用レーザ式ガス分析計の濃度検出原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
続いて、本発明を実施するための形態に係る多成分用レーザ式ガス分析計について図を参照しつつ以下に説明する。図1は、本形態の多成分用レーザ式ガス分析計の全体構成図である。
本形態の多成分用レーザ式ガス分析計1は、周波数変調方式を採用している。この多成分用レーザ式ガス分析計1は、変調光生成部10、光ファイバ20、発光側光学部30、受光側光学部40、光ファイバ50、分析部60、通信線70を備えている。このうち、図2でも示すように、変調光生成部10、光ファイバ20、発光側光学部30で本発明の発光部100を構成する。また、受光側光学部40、光ファイバ50、分析部60で本発明の受光部200を構成する。
【0032】
発光側光学部30は、ファイバ端部31、コリメートレンズ32を備える。このコリメートレンズ32は、ファイバ端部31から出射されたレーザ光を、平行光である検出光80として出射する。
そして、受光側光学部40は、集光レンズ41、ファイバ端部42を備える。受光側光学部40は、発光側光学部30から出射される検出光80を受光する。集光レンズ41が平行光である検出光80を集光してファイバ端部42が受光し、光ファイバ50に集光を出力する。
【0033】
発光側光学部30、受光側光学部40は、図1に示すように、複数の測定対象ガスからなるガスが流通する配管等の壁91a,91bに、溶接等により固定されたフランジ92a,92b及び光軸調整フランジ93a,93bを介して取り付けられる。ここで、光軸調整フランジ93a,93bは、発光側光学部30から出射される検出光80が受光側光学部40において最大の光量で受光されるように光軸を調整するためのものである。なお、フランジ92a,92bまたは光軸調整フランジ93a,93bの光路内に透明体による窓を設けて複数の測定対象ガスを含むガスからコリメートレンズ32や集光レンズ41が直接ガスに触れないよう保護しても良い。
【0034】
次に、発光部100、および、受光部200の詳細構成について説明する。まず、発光部100について図2〜図6を参照しつつ詳細に説明する。
発光部100は、測定対象ガスの吸光特性に応じたレーザ光の発光素子を複数設けて、測定対象ガスの個数のレーザ光を照射するようになされており、これらレーザ光に対して周波数を変調した変調光を複数生成し、これら複数の変調光を結合した検出光80を出射するユニットである。
【0035】
この発光部100のうち変調光生成部10は、図2で示すように、さらに測定対象ガスの種類の数に等しい個数(本形態では例示的に4個として説明する)のピグテール型発光素子11a,11b,11c,11d、ピグテール型発光素子と同じ本数(本形態では例示的に4本として説明する)のピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12d、光結合器13を備えている。なお、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dと、ピグテール12a,12b,12c,12dとは、それぞれ、予め光学的に接続された状態で市販されているものであり、光学的な調整を不要としている。
【0036】
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、詳しくは、図3で示すような構成としている。
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、それぞれ発光素子本体111a,111b,111c,111dを内蔵している。これら発光素子本体111a,111b,111c,111dは、測定対象ガス1成分につき1個の発光素子を用いるように構成している。これらは、例えば、DFBレーザ(Distributed Feedback Laser)、もしくはVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)といわれるレーザダイオードである。
【0037】
これらレーザダイオードは、発光波長がガスの吸光特性に一致する可視領域や近赤外領域にて発光が可能であり、かつ、電流と温度により、レーザダイオードの発光波長を可変可能である。本形態では説明の具体化のため、可視領域を発するのはピグテール型発光素子11aであるとし、また、近赤外領域を発するのはピグテール型発光素子11b,11c,11dであるものとして説明する。なお、このような構成は測定対象ガスの実状に応じて決定されるものであり、例えば、可視領域を発するピグテール型発光素子を2個、近赤外領域を発するピグテール型発光素子を4個というように選択することができる。
【0038】
本形態では測定対象ガスとして酸素ガス(O2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するものとする。
可視領域として、例えば、酸素ガス(O2ガス)を検出するために波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとし、近赤外領域として、例えば、塩素ガス(HClガス)を検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガス(CO2ガス)を検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガス(CO2ガス)を検出するために波長2360nmを発光するピグテール型発光素子11dとする。
【0039】
これらの発光素子本体111a,111b,111c,111dは、ガスの吸収特性に一致する可視領域・近赤外領域の波長にて発光が可能であり、さらに、図4(a)に示したようにドライブ電流により発光波長を可変とすることができる。また、図4(b)に示したように温度によって発光波長を可変とすることができる。このように温度と電流で、レーザの発光波長を可変可能である。なお、レーザダイオード以外でも上記の条件を満たす、つまり測定対象ガスの吸収波長帯域で波長掃引できるものであれば、他種の発光素子を用いてもよい。
【0040】
図3において、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度は、サーミスタ等の温度検出素子112a,112b,112c,112dを用いて検出される。これらの温度検出素子112a,112b,112c,112dは温度制御回路113a,113b,113c,113dに接続されている。これら、温度制御回路113a,113b,113c,113dは、発光素子本体111a,111b,111c,111dの発光波長を安定化させるため、温度検出素子112a,112b,112c,112dの抵抗値がそれぞれ一定になるようにPID制御等を行ってペルチェ素子114a,114b,114c,114dの温度制御を行い、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度を調節する。
【0041】
また、発光波長を変化させる波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dの出力信号と、発光波長を周波数変調させるための高周波変調信号発生回路1116a,116b,116c,116dの出力信号とを、駆動信号発生回路117a,117b,117c,117dにより合成して駆動信号を生成し、この駆動信号をV−I変換して発光素子本体111a,111b,111c,111dに供給する。これにより、発光素子本体111a,111b,111c,111dからは、それぞれ異なる種類の測定対象ガスの吸光特性を走査するための、周波数変調された所定波長のレーザ光が出射される。したがって、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから所定波長のレーザ光が出射される。
そして、波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dからはそれぞれトリガ信号a,トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dが出力される。これらトリガ信号aは、通信線70を介して可視光用処理回路64aの演算回路645aへ入力され(図1,図2,図9(a)参照)、また、トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dは近赤外光処理回路64bの演算回路645b,645c,645dへ入力される(図1,図2,図9(b)参照)。これらトリガ信号については後述する。
【0042】
なお、複数のピグテール型発光素子を備えたレーザ光源としては、例えば、NTTエレクトロニクス株式会社製のバタフライ型パッケージのレーザ光源を用いることができる。しかしながら、温度調節機能と光ファイバへの接続ができればよく、外形形状はバタフライ型に限定するものではない。
【0043】
図2に戻るが、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから出射したレーザ光は、それぞれピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12d内を伝播する。ピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12dの出力側は光結合器13に接続されている。光結合器13は、光ファイバカプラ、もしくは、光ファイバスイッチなどであり、マルチモード型の装置である(理由は後述する)。ピグテール(光ファイバ)12a,12b,12c,12dを伝播したこれらレーザ光を、光結合器13は重ね合わせ、結合光として出射する。光結合器13からの結合光は、光ファイバ20へ入力される。この光ファイバ20もマルチモード型のファイバである。
【0044】
ここで光結合器13および光ファイバ20がマルチモード型を採用している点について説明する。
この光ファイバ20は複数のレーザ光からなり広い帯域に渉る結合光を伝播させる必要がある。一般的にシングルモード光ファイバのコア径は、伝搬する波長によって異なる。波長が長い方がコア径が大きくなる。そのため、波長が長いレーザ光、例えば2500nmのレーザ光でシングルモードとなるような光ファイバを選択すると、例えば700nmの光はマルチモードで伝搬が可能となる。そこで、2500nmのレーザ光でシングルモードとなるような光ファイバを選択すれば良い。もしくは、全ての光ファイバをマルチモードで構成する。本形態では光ファイバはマルチモード光ファイバであるとして以下説明する。このように結合器や全ての光ファイバをマルチモード型とし、複数のレーザ光からなり広い帯域に渉る結合光を、結合器や全ての光ファイバにおいて確実に伝播させるようにする。これにより多成分の被測定ガスの計測を実現する。
【0045】
本形態では光結合器13としてマルチモード型の光ファイバカプラ、もしくは、光ファイバスイッチを選択し、また、光ファイバ20としてマルチモード型の光ファイバを選択した。マルチモード型の光ファイバカプラやマルチモード光ファイバを適用すれば図5(a),(b)からも明らかなように、波長が500nm〜2500nmのレーザ光については低損失で伝搬可能である。
加えて、後述する他の光ファイバ50,62a,62bも、光ファイバ20と同様にマルチモード型の光ファイバとして、500nm〜2500nmのレーザ光について低損失で伝搬可能とする。
また、分波器61も同様にマルチモード型の光ファイバカプラや光ファイバスイッチとして、500nm〜2500nmのレーザ光について低損失で伝搬可能とする。
このように低損失で伝播するようになったため低濃度のガスでも信号として表れることとなって検出精度が向上している。
【0046】
話を戻すが、図2で示すように、光結合器13からの結合光は、マルチモード型の光ファイバ20へ入射され、この光ファイバ20の先端であるファイバ端部31から出射した結合光33をコリメートレンズ32により平行な検出光80に変換し出射する。
ここに、光ファイバから空間へ出射するコリメート光学系において、特に可視領域レーザ光と近赤外領域レーザ光との収差の影響を低減する必要がある。図6は石英ガラスの平凸レンズであるコリメートレンズ32の平面側とファイバ端部31の端面との距離Lを計算したものである。
【0047】
ここに波長により焦点位置にズレが生じるために、図6に示すように、両方の波長で充分な受光光量が得られるように焦点位置を決める。マルチモード型の光ファイバ20のファイバ端部31とコリメートレンズ32との間の距離Lは、波長が異なるレーザが入射されても検出光の光量が十分に大きくなるように決定される。例えば、可視領域として、酸素を検出するために波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとし、近赤外領域として、例えば、二酸化炭素を検出するために波長2004nm発光するピグテール型発光素子11bとしたとき、距離Lは図6に示すように12.5mmである。同様に、集光レンズ41とファイバ端部42との距離も上記手法にて決定される。なお、近赤外領域にある3種のレーザ光については波長が近いため収差の影響は無視できるレベルといえるものである。
加えて、コリメートレンズ32や集光レンズ41の素材も二種のレーザ光が伝搬される材料を選ぶ。なお、レンズは今回1枚の例であるが、複数枚用いてもよい。
【0048】
このような発光側光学部30を経て検出光80が出射される。図1,図2に示すように、発光側光学部30から出力された平行光である検出光80は、壁91a,91bの内部区間(複数の測定対象ガスが流通する空間)を伝播し、受光側光学部40により受光される。
【0049】
続いて、受光部200について図2,図7〜図13を参照しつつ詳細に説明する。受光部200は、検出光80を受光し、測定対象ガスの吸光特性により吸収された光について分析するユニットである。すなわち、受光側光学部40では、図2で示すように、集光レンズ41により集めた集光43をファイバ端部42へ入射させる。光ファイバ50を通過する集光を分波器61が1:1の光量となるように分波する。この分波器61は、分波機能を有しているものであれば良く、具体的には、上記した理由により、マルチモード型の光ファイバカプラであったり、または、マルチモード型の光ファイバスイッチを採用することができる。
【0050】
これら分波光は光ファイバ62a,62bを介してそれぞれ可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bにてそれぞれ受光される。測定対象ガスとして酸素ガス(O2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するが、可視光受光素子63aは、酸素ガス(O2ガス)を検出するために、図7に示すように400nm〜1000nmという可視波長域に感度をもつSiフォトダイオードであり、また、近赤外光受光素子63bは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を検出するために、図8に示すように1200nm〜2500nmという近赤外波長域に感度をもつInGaAsフォトダイオードである。
このような素子としては、例えば、浜松ホトニクス株式会社から販売されているシリコンフォトダイオードであるS5821や、InGaAsフォトダイオードであるG8373がある。
【0051】
なお、分波器61により分波された分波光は、全ての波長のレーザ光が含まれているが、可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bは、波長に対して感度をもつ波長領域がそれぞれ決まっているため、それぞれ感度をもつ波長の光のみの受光が可能となる。例えば、検出光のうち波長が763nmの光は可視光受光素子63aでのみ検出される。また、検出光のうち波長が1780nm,2004nm,2360nmの光は近赤外光受光素子63bでのみ検出される。
これら可視光受光素子63a、近赤外光受光素子63bは、受光量に応じて、電気信号による検出信号に変換して可視光用処理回路64a,近赤外光用処理回路64bに送る。これら可視光用処理回路64a,近赤外光用処理回路64bは、例えば、検出信号に対して増幅やノイズのフィルタリングを行い、濃度を検出する。
【0052】
図9(a)は、可視光用処理回路64aの内部構成図である。可視光用受光素子63aから可視光用処理回路64aへ入力された検出信号は、I−V変換回路641aによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)642aは、前記高周波変調信号発生回路116aによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路641aにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路643aに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ644aに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路645aに入力されると共に、この演算回路645aにおいて測定対象ガス(詳しくは酸素ガス(O2ガス))の濃度が演算されることになる。
【0053】
また、図9(b)は、近赤外光用処理回路64bの内部構成図である。近赤外光用受光素子63bから近赤外光用処理回路64bへ入力された検出信号は、I−V変換回路641bによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)642b,642c,642dは、高周波変調信号発生回路116b,116c,116dによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路641bにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路643b,643c,643dに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ644b,644c,644dに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路645b,645c,645dに入力されると共に、この演算回路645b,645c,645dにおいて測定対象ガス(詳しくは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス))の濃度が演算されることになる。
【0054】
次に、上記の構成において、測定対象ガスの濃度を検出する原理について説明する。ここでは可視領域にある酸素ガス(O2ガス)と近赤外領域にある塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)について検出する。酸素は、図10で示すように760nm〜768nmで吸光特性を有する。酸素検出するために、可視領域として、波長763nmを発光するピグテール型発光素子112aとする。同様に、近赤外領域として、例えば、塩素ガスを検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガスを検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガスを検出するために波長2360nmを発光するピグテール型発光素子11dとする。本発明では500〜2500nmまでの光が光ファイバ、結合器、分波器を伝播されるようにしたため、検出は可能である。
【0055】
まず、発光部10から出射した検出光80は、測定対象ガスが流通する壁91a,91b内の空間を透過し、吸光されたものとする。これらの検出光は同軸上で受光側光学部40に入射する。
【0056】
そして、可視光に感度を持つ可視光用受光素子(Siフォトダイオード)63aでは、763nmの発光素子本体111aからの光のみを受光し、また、近赤外波長域に感度を持つ近赤外光用受光素子(InGaAsフォトダイオード)63bは、波長1780nmの発光素子本体111bからのレーザ光、2004nmの発光素子本体111cからのレーザ光、波長2360nmの発光素子本体111dからのレーザ光を受光する。
【0057】
図11(a)は、例えば発光素子本体111aの駆動電流波形の一例を示している。
図3の波長走査駆動信号発生回路115aにおいて、測定対象ガスの吸光特性を走査する波長走査駆動信号S1は、発光素子本体111aの駆動電流値を直線的に変化させて発光素子本体111aの発光波長を徐々に変化させ、例えば、0.2nm程度の吸光特性を走査する。一方、信号S2は、駆動電流値を発光素子本体111aが安定するスレッショルドカレント以上に保ち、一定波長で発光させるためのものである。更に、信号S3では、駆動電流値を0mAにしておく。なお、トリガ信号aはこの信号S3と同期する信号である。
【0058】
図11(b)は、図3の高周波変調信号発生回路116aから出力される変調信号の波形図であり、測定対象ガスの吸光特性を検出するための信号S4は、例えば周波数が10kHzの正弦波とし、波長幅を0.02nm程度変調する。
図11(c)は、図2の駆動信号発生回路117aから出力される駆動信号(波長走査駆動信号発生回路111の出力信号と高周波変調信号発生回路116aの出力信号との合成信号)の波形図であり、この駆動信号S5を発光素子本体111aに供給すると、発光素子本体111aからは、測定対象ガスの0.2nm程度の吸光特性を波長幅0.02nm程度で検出可能な変調光が出力される。
【0059】
他の発光素子本体111b,111c,111dも、上記と同様にして、測定対象ガスの吸光特性に応じて分析される。
4個の発光素子本体111a,111b,111c,111dの変調波周波数を、例えば10kHz,12.5kHz,15kHz,17.5kHzとすると、変調信号の2倍周波数成分はそれぞれ20kHz,25kHz,30kHz,35kHzとなり、参照信号発生回路642a,642b,642c,642dがこれらの周波数の参照信号を出力することで、同期検波回路643a,643b,643c,643dは上記2倍周波数成分に吸光特性を有する測定対象ガス、すなわち、O2ガス、CO2ガス、HCLガス、COガスの吸光特性のみをそれぞれ検出して出力することができる。
【0060】
測定対象ガス、すなわちO2ガス、CO2ガス、HCLガス、COガスに吸光特性がある場合、同期検波回路643a,643b,643c,643dからは図12に示すような吸光特性が得られる。なお、検出光40の光路上に測定対象ガスが存在しない場合には、同期検波回路643a,643b,643c,643dの出力に図12のような吸光特性は現れず、図13で示すような出力となる。
【0061】
続いて演算回路による濃度算出方法について説明する。ここではO2ガスについて例示的に説明する。
演算回路645aには、波長走査駆動信号発生回路115aからトリガ信号aが入力される。
図11(a)におけるトリガ信号は、上記S1,S2,S3を含めた1周期ごとに出力される信号であり、波長走査駆動信号発生回路116aより出力され、通信線70を介して、演算回路645aへ入力される。トリガ信号は、波長走査駆動信号のS3と同期がとれている。図12で示すように、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過したときに同期検波回路出力波形でB点の最小値B、C点の最大値C、D点の最小値Dが登場する。これら所定時間tb,tc,tdは工場出荷前や校正時に実験的に予め算出しておいて、図示しないメモリに登録しておく。この値を用いて濃度を算出する。
【0062】
演算回路645aとしては、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過するときに同期検波回路出力波形の値を読みとって記憶し、その後に濃度を算出する処理を行う。この同期検波回路出力波形はその波形のピークにある最大値がそのままガス濃度を表すため、例えば、最大値を濃度として出力する。または最大値から最小値を減じた差分値を濃度とするというものである。他の測定対象ガス(CO2ガス、HCLガス、COガス)の濃度検出動作についても、同様に行えばよい。
【0063】
特にガス濃度が低くなると、光学窓材料やレンズなどによるレーザ光の干渉による影響のノイズの影響が強くなり、これらのノイズがピークとなって検出されてしまうなど、ピークの発見が困難であるが、本発明ではこのようにガス吸収が発生する部分をあらかじめ設定しトリガ信号を基準にガス吸収のピークを検出するようにしたため、ノイズ等に影響されることなく正確なガス濃度検出ができるという利点がある。
【0064】
このような装置構成によって、従来技術と同様に、2倍周波数の信号を検出することでガス濃度が計測可能となる。本発明では特に光ファイバとしてマルチモード光ファイバを用いているので、500〜2500nmという広い波長域で計測可能となる。したがって、本形態で例示したピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dだけでなく、可視光領域や近赤外光領域でそれぞれさらに複数の発光素子を追加した場合でも、変調周波数を変えるか、レーザの発光をシリーズに発光させることで、受光素子の波長領域が同一の場合も分離して計測可能である。
また、低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。加えて同期によりピーク位置を正確に検出できるようにしたため、やはり低濃度のガスの検出能力を向上させた。本発明の多成分用レーザ式ガス分析計はこのようなものである。
【0065】
この多成分用レーザ式ガス分析計では各種の変形形態が可能である。続いて他の形態について説明する。この形態では、先の形態のうち、発光部100は同じ構成とするが、受光部200を変更するものである。先の形態の受光部200は、詳しくは、図2で示したように、分析部60において分波器61を用いる構成であったが、本形態では、受光部200の分析部60では、図14に示すようなSiフォトダイオードとInGaAsフォトダイオードが一体化された可視光・近赤外光受光素子65を用い、図15で示すように、分波器を用いずに、光ファイバ50から直接照射される集光を可視光・近赤外光受光素子65が受光し、可視光・近赤外光受光素子65の可視波長域に感度をもつSiフォトダイオードから出力される検出信号を可視光用処理回路64aが受信し、また、可視光・近赤外光受光素子65の近赤外波長域に感度をもつInGaAsフォトダイオードから出力される検出信号を近赤外光用処理回路64bがそれぞれ受信して信号処理するようにしてもよい。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0066】
続いて他の形態について説明する。この形態では、図1〜図13を用いて説明した第1の形態のうち、発光部100は同じ構成とするが、受光部200を変更するものである。第1の形態の受光部200は、詳しくは、図2で示したように、分析部60において分波器61を用いる構成であったが、本形態では、受光部200の分析部60では、図16に示すように受光部200の分析部60は、分波器を用いずに、広帯域近赤外光用受光素子66、近赤外光用処理回路64bを備える構成とした。近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子66を用い、光ファイバ50から直接照射される集光を広帯域近赤外光用受光素子66が受光し、可広帯域近赤外光用受光素子66から出力される検出信号を、近赤外光用処理回路64bが受信して近赤外波長域の信号と可視波長域の信号とをそれぞれ信号処理する。信号処理は、上記と同じであるが近赤外光用処理回路64bのみで全ての信号処理を行う。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0067】
続いて他の形態について説明する。先に説明した三形態の多成分用レーザ式ガス分析計において、さらにコリメートレンズ32および集光レンズ41へARコーティングを行うことが好ましい。ARコーティングは、反射防止(ノングレア)処理の一種であり、レンズ表面に例えばフッ化マグネシウムなどを真空蒸着させて透明な薄膜を作り、光の干渉を利用して照明などによる外光を打ち消すというものである。膜の薄さは可視光線の波長の1/4になっている。外光が入射すると、膜の表面で反射する光と、透過して奥で反射する光に分かれるが、両者は1/2波長ずれた逆位相となるため、打ち消しあって反射光が目立たなくなる。特に外乱光が検出光に合成される事態を防止し、正確な光量で検出することが可能となる。このような改良を先に説明した三形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0068】
続いて他の形態について説明する。先に説明した四形態では、レンズの平面側と光ファイバの端面の距離を調整することで、収差の影響を低減させていた。本形態では更に、集光レンズ41は図17(a)のような平凸レンズではなく、図17(b)のように平凸レンズの平面側に回折格子を形成した回折型収差補正レンズを採用するというものである。回折格子を適切に形成することで、収差の影響をさらに低減し、集光レンズ41による集光がファイバ端部42である受光ポイントで全ての検出光の焦点として入射され、確実に検出光が光ファイバ50に入力されるようにすることができる。このような回折型収差補正レンズはコリメートレンズ32に適用しても良い。
また、平凸レンズに代えて回折を利用した回折型レンズ、非球面レンズを用いても収差の低減に寄与する。
このような改良を先に説明した四形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0069】
続いて他の形態について説明する。先に説明した五形態ではコリメート光学系にレンズを用いていたが、本形態ではレンズの代わりに放物面鏡を採用するというものである。放物面鏡とは、その反射面が回転放物面の一部からなる鏡である。放物面鏡の回転軸に対して平行に反射面に入射した光は、放物面鏡の焦点に集光する。一方、放物面鏡の焦点から発し反射面に入射した光は、放物面鏡の回転軸に対して平行な光に変換される。上記の性質を利用して、以下のようにコリメート光学系を構成する。すなわち、図2で示したコリメートレンズ32の代わりに図18のようにコリメート放物面鏡34を設け、集光レンズ41の代わりに集光放物面鏡44を設ける。ファイバ端部31をコリメート放物面鏡34の焦点に配置することにより、ファイバ端部31から出射した結合光33は放物面鏡34によって反射され、検出光80は平行光に変換される。また、ファイバ端部42を集光放物面鏡44の焦点に配置し、集光放物面鏡44の回転軸を検出光80に対して平行に配置することにより、集光43はファイバ端部42に集光する。したがって、この形態によれば、レーザ光の波長に依存せずにコリメートおよび集光が可能であるため、確実に検出光80を光ファイバ50に入力することが可能になる。
このような改良を先に説明した五形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0070】
続いて他の形態について説明する。先に説明した六形態では、光ファイバの端面については限定していなかったが、本形態ではファイバ端部31,42を斜め研磨端とする。このように構成することで、戻り光は斜め研磨端での反射により光ファイバ内に戻ることがなく戻り光の影響を除去することが可能になる。
このような改良を先に説明した六形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0071】
続いて他の形態について説明する。先に説明した七形態では、発光側のマルチモード型の光結合器13は、一つしか出力しないというものであった。光結合器13は、詳しくは2つの入力に対して、2つの出力を持たせることができ、光結合器13の出力側に2本の光ファイバおよび2個のコリメートレンズをそれぞれ設けることで2系統のガス分析が可能となる。
このような改良を先に説明した七形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0072】
続いて他の形態について説明する。先に説明した八形態では、周波数が異なる複数光線を結合した検出光であるものとして説明した。本形態では、それぞれのピグテール型発光素子を、時分割で動作させるものとした。そして検波手段では、受光手段の信号から、高周波変調の基本波成分と2倍波成分を、動作中のピグテール型発光素子と同期しながら検波することとした。例えば、図3の発光素子本体111a,111b,111c,111dと、図9の参照信号発生回路642a,642b,642c,642dと、をそれぞれ演算回路645a,645b,645c,645dに接続し、ともに一個ずつ動作するように同期させて、検波手段の信号から変調周波数成分を測定する。このように複数のガス成分を時分割で測定して一成分のみを確実に検出するような多成分用レーザ式ガス分析計としても良い。
このような改良を先に説明した八形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0073】
続いて他の形態について説明する。先に説明した九形態では、受光側はマルチモード光ファイバカプラであったが、分枝カプラとしてもよい。この場合、変調周波数をそれぞれ、分けなくてもよい。
このような改良を先に説明した九形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0074】
続いて他の形態について説明する。先に説明した十形態では、各ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dを駆動する波長走査駆動信号の各々の間に何らの時間的な関連性を持たせておらず、波長走査駆動信号のうちのS3が表れる周期やタイミングの制御を行っていなかった。このため、検出に問題が生じる場合があることが知見された。その理由を、図11(a)および図19を参照しつつ、以下に説明する。なお、説明において、多成分用レーザ式ガス分析計は、図1〜図13を用いて説明した第1の形態であるものとして説明する。
【0075】
図11(a)内に示されているような波長走査駆動信号が2つのピグテール型発光素子にそれぞれ供給されるものとする。これらは本例ではともに近赤外光用のピグテール型発光素子であるものとする。そして、これら2つの波長走査駆動信号が非同期状態である場合(周期が一致するが同期が取れていない場合、または、周期が不一致で同期が取れない場合)を考える。
【0076】
このように非同期状態の2つの波長走査駆動信号を含む駆動信号によって駆動された複数のレーザ光が、それらの波長に感度をもつ近赤外光用受光素子63bに入射すると、受光信号は図19で示すように2つの波長走査駆動信号がタイミングがずれて重畳された状態となっている。このような受光信号が近赤外光用処理回路64bに出力される。この場合、通信線70を介して入力されるトリガ信号a,bは異なるタイミングで登場することとなる。
【0077】
この和となった信号を分離し各ガス濃度を検出するためには、近赤外光用処理回路64bでは、前述したように、各高周波変調信号の周波数をそれぞれ異なる値とし、各々の2倍周波数の参照信号を用いて同期検波を行う。ここで、それぞれの駆動信号が、互いに他の高周波変調信号の基本周波数成分、あるいは2倍周波数成分の信号を含まないことにより、同期検波による信号の分離検出を実現している。
【0078】
ところが、波長走査駆動信号は、図11(a)のように、例えば波長走査駆動信号S1の開始時に信号の急激な立ち上がりが存在し、また、終了時には信号の急激な立ち下がり部分が存在し、これらの部分にはさまざまな周波数成分が含まれる。したがって、互いに他の高周波変調信号の基本周波数成分、あるいは2倍周波数成分が含まれ、結果として互いの信号の分離検出を阻害するおそれがある。
【0079】
特に、図19に示すように、トリガ信号aによる同期検波出力aと、トリガ信号aとは同期していないトリガ信号bによる同期検波出力bと、が受光信号から得られた場合、一方の同期検波出力波形aのピーク値BまたはCまたはDが発生する時刻に、その他の同期検波出力波形bが検波されることとなる波長走査駆動信号の立ち上がりあるいは立ち下がりが発生した場合(トリガ信号bが発生するタイミングの場合)は、ピーク値が大きく変化する。図19ではピーク値Cの付近で上下に尖頭を有するノイズが重畳されている。このような波形を基に算出されるガス濃度の指示値に誤差が発生するおそれがある。この問題は、説明した近赤外光用受光素子63bに加え、可視光用受光素子63aにおいても、それぞれに波長感度を持つすべてのレーザ光において、それらを駆動する波長走査駆動信号間の時刻関係によって発生しうるものである。
【0080】
このような問題の発生を避けるために、各波長走査駆動信号の周期を等しくし、かつ同期させることが有効である。具体的には、図20で示すように、図3で示した発光部側の変調光生成部10のブロックに加え、さらに全ての波長走査駆動信号発生回路115a,115b,・・・に同期制御部118を接続し、S3信号の発生周期を等しくし、かつ同期させる制御を行うことで達成される。ここで周期の一致および同期がなされると2つの波長走査駆動信号ではS3信号が同時に登場し、トリガ信号a,bも同じタイミングで登場することとなる。例えば図19で示すトリガ信号aおよびトリガ信号bが同じ周期で同じ時刻に発するように同期させる。これにより、各波長走査駆動信号の立ち上がりあるいは立ち下がり部分が一致し、互いの信号の分離検出を実現する。これにより、不要なノイズの発生を抑えることができる。
このような改良を先に説明した十形態に行うことで、検出能力の更なる向上が実現される。
【0081】
以上本発明について説明した。本発明のレーザ式ガス分析計によれば、可視光および近赤外光に渉って吸光する複数のガスを含む測定対象ガスに対してガス成分を正確に検出することが可能となる。
【0082】
半導体レーザを用いた吸収分光法に基づくレーザ式ガス分析計において、従来の光ファイバ式ガス分析計では、ガスの吸収スペクトル波形のピークを検出するように信号処理していたが、信号強度が電気信号ノイズよりも大きくなければならず、濃度が低いガス濃度検出が困難であったが、本願提案では低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。さらに波長走査信号のトリガ信号をもとに、ガス吸収ピークを検出することで、低濃度ガス検出が可能となった。加えて同時に複数成分測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の多成分用レーザ式ガス分析計は、ボイラ、ゴミ焼却等の燃焼排ガス測定用として最適である。その他、鉄鋼用ガス分析[高炉、転炉、熱処理炉、焼結(ペレット設備)、コークス炉]、青果貯蔵及び熟成、生化学(微生物)[発酵]、大気汚染[焼却炉、排煙脱硫・脱硝]、自動車排ガス(除テスタ)、防災[爆発性ガス検知、有毒ガス検知、新建築材燃焼ガス分析]、植物育成用、化学用分析[石油精製プラント、石油化学プラント、ガス発生プラント]、環境用[着地濃度、トンネル内濃度、駐車場、ビル管理]、理化学各種実験用などの分析計としても有用である。
【符号の説明】
【0084】
100:発光部
10:変調光生成部
11a,11b,11c,11d:ピグテール型発光素子
11a,11b,11c,11d:ピグテール型発光素子
111a,111b,111c,111d:発光素子本体
112a,112b,112c,112d:温度検出素子
113a,113b,113c,113d:温度制御回路
114a,114b,114c,114d:ペルチェ素子
115a,115b,115c,115d:波長走査駆動信号発生回路
116a,116b,116c,116d:高周波変調信号発生回路
117a,117b,117c,117d:駆動信号発生回路
118:同期制御部
12a,12b,12c,12d:ピグテール
13:光結合器
20:光ファイバ
30:発光側光学部
31:ファイバ端部
32:コリメートレンズ
33:結合光
34:コリメート放物面鏡
200:受光部
40:受光側光学部
41:集光レンズ
42:ファイバ端部
43:集光
44:集光放物面鏡
50:光ファイバ
60:分析部
61:分波器
62a,62b:光ファイバ
63a:可視光受光素子
63b:近赤外光受光素子
64a:可視光用処理回路
641a:I−V変換回路
642a:参照信号発生回路
643a:同期検波回路
644a:フィルタ
645a:演算回路
64b:近赤外光用処理回路
641b:I−V変換回路
642b,642c,642d:参照信号発生回路
643b,643c,643d:同期検波回路
644b,644c,644d:フィルタ
645b,645c,645d:演算回路
65:可視光・近赤外光受光素子
66:広帯域近赤外光用受光素子
70:通信線
80:検出光
91a,91b:壁
92a,92b:フランジ
93a,93b:光軸調整フランジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、この受光側光学部から出力された集光を等光量で分波するマルチモード型の分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項2】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項6】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項7】
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項8】
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項9】
請求項6〜請求項8の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記トリガ信号は、前記波長走査駆動信号と同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光側光学部および前記受光側光学部に放物面鏡を用いることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記複数のピグテール型発光素子が有する波長走査駆動信号発生手段のそれぞれが生成するトリガ信号は、周期が等しく、かつ同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項1】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、この受光側光学部から出力された集光を等光量で分波するマルチモード型の分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項2】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型の光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記可視光用処理回路および前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項6】
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を結合するマルチモード型の結合手段と、この結合手段から出射される結合光を伝播するマルチモード型光ファイバと、この光ファイバから出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する発光側光学部と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ受光する受光側光学部と、受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項7】
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値または最小値を検出することでガス濃度を検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項8】
請求項6に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
同期検波回路の出力信号のうちの最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分値の絶対値をガス濃度として検出することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項9】
請求項6〜請求項8の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記近赤外光用処理回路は、
前記波長走査駆動信号発生部が生成するパルス状のトリガ信号を基準として所定期間経過したときの値をもってガス吸収波形の最大値及び最小値の発生位置を検知することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記トリガ信号は、前記波長走査駆動信号と同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光側光学部および前記受光側光学部に放物面鏡を用いることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記複数のピグテール型発光素子が有する波長走査駆動信号発生手段のそれぞれが生成するトリガ信号は、周期が等しく、かつ同期がとれていることを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−108095(P2012−108095A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152638(P2011−152638)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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