説明

多抗原性アルファウイルス・レプリコン粒子及び方法

ウイルス・レプリコンに選択された核酸発現ライブラリーは、寄生生物、病原体、又は新生物に関連した多数の抗原を分析するために、或いは寄生生物、病原体、又は新生物に特異的な免疫応答を生成するための免疫原性組成物を製造するために有用である。核酸発現ライブラリーの代表であるアルファウイルス・レプリコン粒子が好ましい。核酸ライブラリーは、ランダム・ライブラリーであることもあり、又はレプリコン・ベクター中にクローニングされる前に、例えばディファレンシャル・ハイブリダイゼーションによる選別ステップの後に調製されることもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えDNA技術に関し、特に外来核酸(単数又は複数)を真核宿主細胞に導入することに関し、さらに特異的に感染性伝播欠損ウイルス様粒子であって、病原体(ウイルス、真菌、細菌、又は原生動物)、寄生生物、又は腫瘍細胞の免疫原性タンパク質の代表的なセットを集合的に発現させる粒子を生成することに関する。これらのライブラリーは、ヒト及び獣医薬における用途を有する。
合衆国研究支援の記載
該当なし
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ワクチンは、疾患の予防及び疾患の伝播を制御するための、最も効率よい、安全で、かつ経済的な戦略の一つである。慣用のワクチンは、特定の抗原に対する強力な宿主免疫記憶を作り出すことにより免疫防御を与えるため、疾患の発症前に与えられる免疫学的予防の形態である。ワクチン接種の初期の狙いは、適応特異的免疫応答を活性化することであり、先ず疾患又は病原体に付随する特異的抗原(単数又は複数)に対してB及びTリンパ球を作り出すことである。
【0003】
同様に、癌ワクチンは、癌腫瘍に付随する抗原に対する免疫応答を作り出すことを狙う。癌は、免疫原性でありうるし、かつ疾患を制御しそして腫瘍の退行を引き起こすことができる宿主免疫応答を活性化することができる。
【0004】
しかしながら、同時に、癌は特異的及び非特異的に免疫抑制性であり、そして宿主免疫系から逃れることができる。多くのタンパク質/糖タンパク質の腫瘍関連抗原が同定されてきており、そして癌の特定の型へと関連されてきている。Her-2-neu、PSA、PSMA、MAGE-3、MAGE-1、gp100、TRP-2、チロシナーゼ、MART-1、β-HCG、CEA、Ras;B-カテニン、gp43、GAGE-1、BAGE-1、MUC-1,2,3、及びHSP-70は、幾つかの例である。
【0005】
腫瘍関連抗原(TAAs)で癌患者を免疫化する点において、多くの試みが評価されている。臨床使用におけるワクチンは、全細胞から免疫原性ペプチドにいたる範囲の構成要素により決定される幾つかのカテゴリーに分類される。全細胞及び細胞ライセートのワクチンは、癌細胞の宿主の起源に左右されて、自己又は同種ワクチンとなりうる。自己全細胞癌ワクチンは、患者自身の腫瘍から作られた患者特異的製剤である。現在までに、多くの自己癌ワクチンは、例えば、GM-CSF(Ward et al., 2002. Cancer Immunol. Immunother. 51:351-7)などのリンフォカインの共発現により、それら固有の免疫原性を増加するように改変されない限りでは、臨床的に成功しなかった。なぜなら自己癌ワクチンは、患者特異的であり、それらは値段が高く、そして患者細胞が単一細胞懸濁液(single cell suspension)を作るために十分な量で獲得されうる患者に限られるからである。付け加えて、本質的に限られた数の細胞は、改変又は複数ワクチン接種を必要とすることに関して問題であり、自己製剤を初期の疾患の予防又は治療に実用的ではないものにしてしまう。これらの問題の幾つかは、同種全細胞ワクチン又は遺伝子操作された全細胞ワクチンであって、ここでリンフォカインなどの免疫刺激性の作用物質を腫瘍ワクチンに外部導入的に供給する代わりに、腫瘍細胞がリンフォカインを内在的に発現するように遺伝的に改変されたワクチンで解決される。しかしながら、これらの方法は、時間がかかり、そして作り出すのに値段が法外に高い。
【0006】
天然及び組換え癌タンパク質抗原ワクチンは、サブユニット・ワクチンである。全細胞ワクチンとは異なって、これらのサブユニットワクチンは、標準化レベルで確定された免疫原性抗原を含む。そうしたワクチンに関する主要な問題は、正確なアジュバント及びデリバリーシステムを発見することである。加えて、天然又は組換え腫瘍抗原は、面倒であり、そして必ずしも論理的に実用的ではない。タンパク質癌ワクチンは、腫瘍細胞を培養し、腫瘍抗原を精製し、特異的ペプチド又は組換えタンパク質を作り出すことを必要とする。加えて、単に腫瘍タンパク質/ペプチドから作られたワクチンは、該ワクチンが、正しい抗原提示経路に向けられる能力に限られ、又は宿主主要組織適合複合体(MHC)の多型のため宿主により認識されないこともあるという点で固有の問題を有する。これらの理由のため、全細胞、又はベクターにデリバリーされる腫瘍ワクチンであって、たくさんの腫瘍抗原を発現するワクチンは、好ましいワクチン接種方法になることを期待されている。抗原自身を含むワクチンよりは腫瘍抗原をコードする核酸を含むワクチンは、これらの問題の幾つかに対応する。現在までに、これらのアプローチは、前臨床及び臨床試験において最良の見込みを示してきている。癌ワクチンに適用される現在の技術の中では、2つの特定システムがこの分野で適用される大きな潜在的可能性を示してきた。第一は、非限定的にアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、フラビウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、及びアルファウイルスを含むウイルスベクターを使用してTAAsをデリバリーすることである(WO99/51263を参照のこと)。第二は、TAAsを宿主へと移しそして発現するためのデリバリー・ビークルとしてex vivo由来の樹上細胞を使用して、腫瘍細胞タンパク質又はRNAでワクチン接種することである(Heiser et al., 2002. J. Clin. Inv. 109: 409-417 and Kumamoto et al., 2002. Nature Biotech. 20: 64- 69)。
【0007】
多くの腫瘍ワクチンアプローチにおける制限因子は、既知の腫瘍特異的抗原の限定された利用可能性であるように思える。これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍の由来元である組織型の間で変わるばかりでなく、同じ腫瘍内の細胞と細胞間でさえも変わりうる。ワクチン中における限定された数の腫瘍抗原標的のみを使用することに付随する交絡問題は、「腫瘍回避」の可能性である。ここでは、腫瘍は、特定の腫瘍関連抗原を欠失することによって、ワクチン誘導性の免疫効果細胞による検出から逃れる。
【0008】
この観察結果により、研究者が腫瘍回避の性質を低減するために、複数の抗原を発現するワクチンを設計することが促進された。残念ながら今日までに同定された抗原の限定された数のために、この試みは、腫瘍の大部分に対して実行できるアプローチとはならない。それゆえ、癌治療の最近の展開は、全腫瘍抗原ライブラリーの使用となっている。これは、癌ワクチンにおいて望まれる複数の有利な特徴を混ぜ合わせる。全腫瘍レパートリーをコードするワクチンは、抗原同定及び単離の必要性を打ち消し;本来ワクチン接種者の免疫系は、どのTAAsに対し個人が応答するかという決定における選択を行うことができるのである。このアプローチの第二の明確な利点は、発現される抗原のレパートリーがかなり広範であるので、腫瘍回避の機会は、最小限にされるか、完全に無くされるという点である。現在、このアプローチは、腫瘍抗原ライブラリーをデリバリーするために樹上細胞を使用して、最も活発に追求されている。これらの細胞は、腫瘍抗原を免疫系に提示することにより抗原提示細胞として機能し、各癌患者から単離され、in vitroで培養及び増殖され、タンパク質又は核酸の形態のいずれかで腫瘍抗原を積み込まれる。米国特許第5,853,719号及び第6,306,388号を参照のこと。このアプローチは、ヒト試験において、有望な臨床データーを作り出し、そして数人の個人において腫瘍成長の退行及び多くの患者において腫瘍の寛解を導く能力を示した(Sadanaga et al., 2001, Clin. Cancer Res. 7: 2277-84)。この技術についての主な障害は、各個人のワクチン接種の前に、in vitro培養、増殖、及び患者由来樹上細胞への抗原の導入をなどを必要とすることである。これは、時間がかかりかつ高価な過程であり、そしてかなり変化しやすいことがある。なぜなら個人間の樹上細胞の集合が、そのフェノタイプ、成長特徴、及び活性の点において大きく変わるからである。
【0009】
現在までに、剥き出しのDNA、RNA、ウイルス及び細菌ベクターは、腫瘍抗原ライブラリーに対する癌特異的応答を誘導する能力について試験された。代わりのアプローチは、腫瘍抗原ライブラリーを癌患者へと運搬するためにウイルスベクターを使用することである。現在までに、幾つかの成功が剥き出しの核酸発現ライブラリーに関して達成された(例えば、米国特許第5,989,553号及び第5,703,057号を参照のこと)。剥き出しの核酸ベクターに対し誘発された免疫応答を増加させる試みは、剥き出しのRNA又はDNAの形態において誘導された自己増殖性のウイルスベクターを使用することを含む(Ying et al., 1999, Nature Medicine, 5: 823-827)。
【0010】
ウイルスベクターは、多くの感染性疾患標的を予防するための前臨床及び臨床試験においてかなりよい見込みを示した。ヒトにおいて予防用及び治療用ワクチンを使用するためのウイルスベクターの開発における最も差し迫った課題の一つは、制御が可能である形態において十分な粒子を作り出す能力である。多くのウイルスシステムでは、この目標は、手の届くところであり、そして数多くのベクターシステムが、臨床試験において正の免疫応答及び安全特性を作り出した。しかしながら、ワクチン・ベクター・プラットホームに対する多くの生成スキームは、特異的疾患標的、例えばポックスウイルスベクター中のHIVのgag、pol、及びenv遺伝子に対する1又は多くとも2若しくは3の既知の抗原を発現するワクチン粒子を大量に産生することに焦点をあてる。しかしながら、多くの場合、これらの大量製造アプローチは、個々の患者特異的ワクチンの製品には使用できない。
【0011】
アルファウイルス・ベクター・デリバリー・システムは、多くの理由から魅力的なワクチンベクターとして同定されてきた。その理由は、非相同遺伝子配列の大量発現、良好な安全特性での非複製性(アルファ)ウイルス・レプリコン粒子(ARP)の誘導、標的細胞の細胞質で複製し、そしてベクターのゲノムへの取り込みの機会を打ち消すRNAゲノム、及び最終的に、アルファウイルス・ベクターが本来的に樹上細胞における複製を標的にし、それゆえ多数のワクチン抗原に対する強力かつ総合的な免疫応答を作り出すことができる(Rayner, Dryga and Kamrud, 2002, Rev. Med. Virol. 12: 279-296において総論される)という実証を含む。アルファウイルス属は、種々のウイルスを含み、それらの全ては、トガウイルス科のメンバーである。アルファウイルスは、非限定的に、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレード・ウイルス(Everglades Virus)、ムカンボ・ウイルス(Mucambo Virus)、ピクスナ・ウイルス(Pixuna Virus)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビス・ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミデルブルグ・ウイルス(Middleburg Virus)、チクングニア・ウイルス、オニョンニョン・ウイルス、ロスリバー・ウイルス、バーマ森林ウイルス(Barmah Forest Virus)、ゲタ・ウイルス、サギヤマ・ウイルス、ベバル・ウイルス(Bebaru Virus)、マヤロ・ウイルス、ウナ・ウイルス(Una Virus)、アウラ・ウイルス(Aura Virus)、ワタロア・ウイルス(Whataroa Virus)、ババンキー・ウイルス(Babanki Virus)、キジラガッチェ・ウイルス(Kyzylagach Virus)、ハイランドJウイルス(Highlands J virus)、フォート・モーガン・ウイルス(Fort Morgan Virus)、ヌヂュム・ウイルス(Ndumu Virus)、及びバギー・クリーク・ウイルス(Buggy Creek Virus)を含む。このウイルスゲノムは、一本鎖のメッセンジャーセンスRNAであって、5’末端でメチル化キャップで修飾されており、そして3’末端で種々の長さのポリ(A)鎖で修飾されているRNAである。1のウイルスタンパク質、Cを含む構造的なサブユニットは、20面体のヌクレオキャプシド中でRNAゲノムと会合する。ビリオン中では、キャプシドは、整然と多数並んだ膜貫通タンパク質スパイクで覆われる脂質外被により取り囲まれ、該膜貫通タンパク質スパイクの各々は、二つの糖タンパク質、通常E1とE2のヘテロダイマー複合体からなった(Pedersen et al., J. Virol 14 : 40 (1974)を参照のこと)。シンドビス・ウイルスとセムリキ森林ウイルスは、アルファウイルスの原型と考えられており、そして広く研究された(Schlesinger, The Togaviridae and Flaviviridae, Plenum Publishing Corp. , New York (1986)を参照のこと)。VEEウイルスも広く研究された(例えば米国特許5,185,440号、並びに本明細書中で引用される別の文献を参照のこと)。
【0012】
これらのウイルスの研究は、アルファウイルス病に対するワクチン接種技術の発展を導き、さらに関心の抗原をコードする外来DNAの導入用のアルファウイルス・ベクターの使用を介して別の疾患に対するワクチン接種技術の発展を導いた。Davis et al.,に対する米国特許第5,185,440号及びPCT公開WO 92/10578を参照のこと。発現可能な外来DNAを真核細胞中に導入することは、高い関心の題目となった。生弱毒化ウイルスワクチンは、ウイルス疾患を制御する最も成功した方法の一つであるということはよく知られている。しかしながら、幾つかのウイルス(又は別の)病原体については、生ウイルスの株での免疫化は、実用的でないか又は安全ではないかのどちらかであることがある。代替の戦略の一つは、そうした病因の免疫抗原をコードする配列を、生きた増殖株である別のウイルスへと入れ込むことである。生VEEベクターを使用するこうしたシステムの一つは、Johnston et al.,に対する米国特許第5,505,947号において開示される。別のこうしたシステムは、Hahn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 2679-2683において開示され、ここでシンドビス・ウイルスコンストラクトは、インフルエンザ・ヘマグルチニン・タンパク質の切断形態を発現する。別の試みは、感染性、伝播欠損性のアルファウイルス粒子の使用であり、Garoff et al.,に対する米国特許第6,190,666号、Johnston et al.,に対する米国特許第5,792,462号及び第6,156,558号、米国出願公開第2002/0015945 A1(Polo et al.)、米国出願公開第2001-0016199(Johnston et al.)、Frolov et al.(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11371-11377 、及びPushko et al. (1997) Virology 239: 389-401に開示される。アルファウイルスは、比較的遺伝子操作が容易であることが示されてきており、それは、アルファウイルスをゲノム発現ライブラリーとして使用する特許出願が多いことにより反映される。例えば、米国特許第6,197,502号を参照のこと。抗原のライブラリーを発現するセムリキ森林ウイルス(SFV)ベクターは、動物モデルにおいて調べられた。ここで、腫瘍抗原のライブラリーを発現するSFV粒子がin vitroで樹上細胞を感染するために使用され、そして樹上細胞が、グリオーマモデルにおけるいくらかの防御を示すマウスを免疫化するために使用された(Yamanaka et al., 2001, J. Neurosurg. 94: 474-81)。
【0013】
特に弱毒化種がなく、又は新生物、寄生生物、又は病原体が分子レベルでよく特徴付けられていない場合、或いは防御免疫化が複数の抗原の発現を必要とすると認識される場合、当該技術分野において、新生物病又は寄生生物若しくは病原体感染に対してヒト又は動物を免疫化するために使用されうる外来抗原をコードする核酸配列について長く望まれた必要性が存在する。
【0014】
発明の要約
新生物細胞、病原体又は寄生生物由来のウイルス・レプリコン粒子調製品、並びに同じ物を含む免疫原性組成物を提供することが、本発明の目的である。該調製品は、新生物細胞、病原体、又は寄生生物由来の複数の発現可能なコード配列を含み、該調製品が投与されるヒト又は動物患者においてコード配列の発現が、アルファウイルス・レプリコン核酸によりコードされ、そこから発現される複数の抗原決定因子に対する免疫応答の生成をもたらす。免疫原性組成物は、関心のアルファウイルスレプリコン粒子調製品及び医薬として許容される担体を含み、そして免疫応答を改良し又は刺激するために、免疫学的アジュバント及び/又はサイトカインをさらに含んだ。アルファウイルス・レプリコンは、数ある中でVEE、シンドビスウイルス、南アフリカアルボ・ウイルスNo.86、セムリキ森林ウイルス由来のいずれのアルファウイルスレプリコンRNAベクターでありうる。好ましい実施態様では、アルファウイルス・ベクターは、1以上の弱毒化突然変異を含む。適切な突然変異、並びにそれらを同定するための方法が記載された(例えば、米国特許第5,505,947号;第5,639,650号;第5,811,407号を参照のこと)。
【0015】
投与経路は、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)、静脈内(i.v.)、腫瘍内、脳内(i.c.)、直接リンパ節注入(i.n.)、並びに粘膜経路、例えば経鼻、経気管支、経直腸、経膣、及び経口経路を含みうる。筋肉内投与は有利である。
【0016】
ヒト及び動物投与は、約1×104〜約1×1010の範囲であり、投与あたり約1×106〜約1×108の投与量が有利である。ワクチン型の免疫原アプローチでは、本発明者は、約1〜約12ヶ月又はそれ以上の間、毎週、各週、又は毎月の投与を意図する。この投与に続き、必要とされる基準に基いて、例えば毎年、追加ワクチン接種される。
【0017】
特に、アルファウイルス・レプリコン調製品が、特定の患者からの腫瘍細胞に由来する場合、患者特異的ワクチン調製品が作られ、そして同じ個人に戻して投与される;つまり、自己ワクチン経路である。同種アプローチもまた、本発明の範囲内であり、ここで一の患者腫瘍細胞由来のウイルス・レプリコンは、同じ新生物病を患う、患っていると信じられる、又は高い危険性にある別の患者に投与される。リスクの高い患者の例は、遺伝的性素因を有するか、又は癌についての遺伝性の高いリスクを証明された個人である。例えば、乳房癌は、乳房癌を患う患者の女系親族において、高い家族性のリスクを伴う。同様に、HIV陽性の個人をワクチン接種すると同時に、未感染の個人を感染から妨げようとするために、同じワクチン調製品で、未感染のパートナーを予防的にワクチン接種しうる。
【0018】
本発明は、ウイルス・レプリコン調製品又は同じものを含む免疫原性組成物を患者に投与することにより誘発される免疫応答をフォローし、患者が応答する腫瘍抗原を同定することをさらに含む。これらの応答は、液性及び/又は細胞性でありうる。このアプローチは、新規の抗原の同定を可能にし、そして患者を免疫化する抗原のより規定された集合を使用することを可能にする。これは、より限定されたARP調製品で追加免疫を投与することにより、又は続いてより規定されたセットの抗原をコードするARPを含む調製品で別の患者又は個人を(予防投与計画で)免疫化を行うことにより、達成されうる。
【0019】
本発明はまた、感染性疾患及び寄生生物感染の治療及び/又は予防に関する。HIVを例として使用して、患者特異的HIV遺伝子から由来するか又は個人自身のウイルス調製品から直接由来する成功した多抗原性HIV・ARPワクチンは、ウイルスの類似の遺伝種に感染されたヒト、或いは類似の種に晒されたか、晒されたと思われるか、又は晒された可能性のあるヒトに適用される。特に、関心の病原体又は寄生生物由来の免疫原性又は新規の免疫原は、新規の免疫原性タンパク質を同定するためのツールとしてARPsを使用して同定される。同様に、疾患を引き起こすウイルス(例えばHIVの認知クレード)又は寄生生物の複数の種は、本発明のARP調製品中に混合されて、種特異的ではない強い免疫原性組成物を提供する。例えば、HIVの幾つかの異なるクレードは、認識されてきており、そして該クレードは、多クレードHIVワクチンを提供するために混合される。
【0020】
癌患者の場合、癌細胞抗原性決定因子コード配列を運搬するARPsの投与は、特に、化学療法治療が、本発明のARPsを含む免疫原性組成物を投与した後に発現される抗原に応答する免疫系の能力を取り除かない場合に化学療法治療を伴ってされる。
【0021】
腫瘍若しくは癌、ウイルス、細菌、真菌若しくは原生動物病原体、又は寄生生物の特定の型の抗原性質を発現する本発明のARP調製品は、予防用又は治療用処置投与計画において投与され、そしてARPsの投与は、初回免疫及び/又は追加免疫用の別の免疫原性調製品の組合せで、例えばARPワクチンの初回免疫及び樹枝状細胞ワクチンの追加免疫を使用して、或いはARP初回免疫及びアデノウイルスベクター追加免疫を使用して行われうる。DNA、RNA、アデノウイルス、ピコルナウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、アフトウイルス、ノダウイルス(nodaviruses)、フラビウイルス、樹枝状細胞、ペプチド、熱ショックタンパク質、ミニ遺伝子、腫瘍細胞全体及び腫瘍細胞ライセート・ワクチンは、本発明の関心の複数の抗原を発現するARPsと組み合わせて使用されうる。サイトカイン又はケモカインなどのアジュバント、或いはケモカイン又はサイトカインの発現を仕向けるARPsは、本発明の調製品中に使用されうる。ARPを発現する複数の遺伝子と組み合わせた異種性の初回免疫/追加免疫の添加は、1の又は比較的少数の腫瘍抗原を発現するベクター・レプリコン又はベクター・レプリコンのセットを伴うようである。これは、ARP(単数又は複数)により誘発される広い免疫応答の前又は後に、特異的抗原上に免疫系を集中させるように機能する。類似のそうした異種性デリバリー・システムは、本アルファウイルス・レプリコン発現ライブラリーと組み合わせて使用されて、付加免疫記憶及び長期間免疫機能を増進し及び/又は維持する。
【0022】
本発明のさらなる目的は、本発明のARPを含む免疫原性組成物を、患者が腫瘍病原体又は寄生生物に陽性であるとき、治療セットにおける癌又は別の病原体状態を治療するためばかりでなく、治療が成功しそして患者が寛解状態になった時点で、ヒトに投与することである。そうした継続した断続的な(追加)免疫化は、無腫瘍、無疾患、又は無寄生生物状態の維持を亢進することができ、そして腫瘍又は疾患それぞれの逆行又は再発を阻害しうる。
【0023】
本発明の更なる目的は、ARPを含む本発明の免疫原性組成物を、抗体などの免疫応答を作り出すために、動物(例えば、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、霊長類、ラビット、マウス、ハムスター、鳥類)に投与することである。そうした動物から回収された血清又は細胞は、ポリクローナル血清を提供する点で、或いはモノクローナル血清を作り出すハイブリドーマ生成のための細胞を提供する点で有用であり、そうした抗体調製品は、研究、診断、及び治療用途に有用である。
【0024】
本発明のさらなる目的は、腫瘍、腫瘍細胞、病原体、寄生生物由来の複数の抗原をまとめてコードするアルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)の製造方法である。該方法は、以下のステップ:
関心の腫瘍、腫瘍細胞、病原体、又は寄生生物由来のDNA又はcDNAを調製し、そしてウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸中へとクローニングして改変ウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸を生成し、
改変ウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸を許容状態細胞中へ導入し、ここで当該改変ウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸は改変許容状態細胞を作り出すための少なくともウイルス・パッケージング・シグナルを含み、
少なくとも1のヘルパー機能の発現を許容し、かつ上記改変ウイルス/アルファウイルス核酸の複製及びパッケージングを許容する条件下で、当該改変許容状態細胞を培養して、ARPsを形成し、そして
望ましくは、該培養された許容状態細胞を放出培地と接触して、細胞及び細胞片に結合されたARPsを放出するステップ
を含む。改変ウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸は、パッケージングに必要とされるコード配列を既に含みかつ発現する許容状態細胞中へ導入され、或いはパッケージング遺伝子を運搬する1以上の「ヘルパー」DNA若しくはRNA分子は、改変ウイルス/アルファウイルス・レプリコン核酸と共に導入されうる。場合により、放出培地ステップの前に、細胞からのARPsの放出をもたらさない洗浄ステップが行われうる。有利なことに、該洗浄ステップは、DNase処理を含むか、又はDNAは、ARP調製においてDNaseで切断されうる。例えば、DNaseは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来であり、10〜1000ユニット/mlの濃度において、37℃で10〜60分間インキュベーションで使用される。放出培地は、望ましくは約pH6〜9、望ましくは約6.5〜約8.5であり、そして非限定的に酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、及び炭酸水素ナトリウムを含む塩約0.2〜約5Mを含む。改変アルファウイルス・レプリコン核酸が、電気穿孔により許容状態細胞中へと導入されるとき、細胞は、電気穿孔混合液1mlあたり約107〜約5×108の密度で存在することは、有利である。
【0025】
有利なことに、ARPsが生成される細胞は、アルファウイルス・レプリコン・ベクター及びヘルパー核酸(単数又は複数)で電気穿孔される前に、細胞周期G2/M期に同期化される。特定の論理に束縛されることなく、より高い電気穿孔効率及び(核活性を含む本発明のこれらの実施態様では)核酸の核への移動は、G2/M期細胞において達成されるということが信じられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本出願の文脈において、nmはナノメートルを意味し、mlはミリリットルを意味し、μlはマイクロリットルを意味し、pfu/mlはプラーク形成ユニット/ミリリットルを意味し、iuは感染単位を意味し、VEEはベネズエラ・ウマ脳炎ウイルスを意味し、EMCは脳心筋炎ウイルスを意味し、BHKは仔ハムスター腎臓細胞を意味し、HAはヘマググルチニン遺伝子を意味し、CATはクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼを意味し、βgalはβガラクトシダーゼを意味し、GFPはグリーン・フルオレセント・タンパク質遺伝子を意味し、Nはヌクレオキャプシド意味し、FACSは蛍光活性化セルソーターを意味し、ELISAは酵素結合免疫吸着検定法を意味し、IRESは内部リボソーム侵入部位を意味する。「E2アミノ酸(例えば、Lys、Thrなど)数字」という記載は、E2タンパク質の指示された残基での指示されたアミノ酸の事を指し、そしてE1遺伝子における特異的残基でのアミノ酸を指すためにも使用される。
【0027】
「アルファウイルス」という用語は、当該技術分野における慣用的な意味を有し、そしてアルファウイルスの様々な種、例えば、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレード・ウイルス、ムカンボ・ウイルス、ピクスナ・ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビス・ウイルス、南アフリカ・アルボウイルスNo.86、セムリキ森林ウイルス、ミデルブルグ・ウイルス、チクングニア・ウイルス、オニョンニョン・ウイルス、ロスリバー・ウイルス、バーマ森林ウイルス、ゲタ・ウイルス、サギヤマ・ウイルス、ベバル・ウイルス、マヤロ・ウイルス、ウナ・ウイルス、アウラ・ウイルス、ワタロア・ウイルス、ババンキー・ウイルス、キジラガッチェ・ウイルス、ハイランドJウイルス、フォート・モーガン・ウイルス、ヌヂュム・ウイルス、及びバギー・クリーク・ウイルスを含む。本発明で使用される好ましいアルファウイルスRNA転写産物は、VEEウイルス、シンドビス・ウイルス、南アフリカ・アルボウイルスNo.86、及びセムリキ森林ウイルスRNA転写産物を含む。
【0028】
本発明の方法において使用されるアルファウイルス-許容状態細胞は、アルファウイルスRNA転写産物でトランスフェクションされた際、ウイルス粒子を生成できる細胞である。アルファウイルスは、幅広い宿主範囲を有する。適切な宿主細胞は、非限定的にベロ、仔ハムスター腎臓(BHK)、DF1、CHO、293、293T、トリ胚線維芽細胞、及び昆虫細胞、例えばSF21、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda; C6/36、アエデス・アルボピクツス(Aedes Albopictus);TRA-171、トキソリンチテス・アムボイネシス(Toxorhynchites amboinensis);RML-12、アエデス・アエギプチ(Aedes aegypti);AP-61、アエデス・シュードスキュテラリス(Aedes pseudoscutellaris);及びMOS-55、アノフレス・ガムビアエ(Anopheles gambiae)細胞を含む。
【0029】
本明細書中に使用される「構造タンパク質」又は「アルファウイルス構造タンパク質」というフレーズは、RNAレプリコンをレプリコン粒子中にキャプシド形成するために必要とされるタンパク質であって、ウイルスによりコードされるタンパク質を指し、そしてキャプシド・タンパク質、E1糖タンパク質及びE2等タンパク質を含む。本明細書中に記載されるように、アルファウイルスの構造タンパク質は、1以上のヘルパー核酸の間に分配される。例えば、第一ヘルパーRNA及び第二ヘルパーRNAが使用されうるか、又はアルファウイルス構造タンパク質の全てをコードするシングルDNAヘルパーは使用されうる。付け加えて、1以上の構造タンパク質は、レプリコンRNAと同じRNA分子上に局在化されることがあり、但し、レプリコン及び得られたアルファウイルス粒子が伝播-欠損性であるように、少なくとも1の構造タンパク質がレプリコンRNAから欠失される。本明細書中に使用されるとき、「欠失された」又は「欠失」という用語は、特定の断片の完全な欠失か、又は特定の断片の一部の欠失であって、標準の使用に従って断片を動作不能又は機能がなくなるようにするために十分な欠失を意味する。例えばTermin et al.,に対する米国特許第4,650,764号を参照のこと。本明細書中に使用される「複製欠損」という用語は、「伝播欠損」と同意義であり、そして規定の宿主細胞中で作られた粒子が、ヘルパー機能の欠失、つまりレプリコン核酸をパッケージングするために必要とされるアルファウイルス構造タンパク質がないことから、別の宿主細胞中に子孫粒子(progeny particle)を作り出すことができないことを意味する。しかしながら、レプリコン核酸は、それ自身を複製することができ、そして導入された宿主細胞中に発現されることができる。
【0030】
ヘルパー細胞はまた、パッケージング細胞とも呼ばれ、感染性伝播欠損アルファウイルス粒子を作り出すために使用され、レプリコン核酸をパッケージングするために十分なアルファウイルス構造タンパク質を発現しなければならないか又は発現できなければならない。構造タンパク質は、セットのRNA、典型的には2個のRNAであって、レプリコン・ベクターの導入と同時に、又は導入前にヘルパー細胞へ導入されるRNAから作られうる。第一ヘルパーRNAは、少なくとも1のアルファウイルス構造タンパク質をコードするRNAを含むが、アルファウイルス構造タンパク質の全部をコードしない。第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質及びアルファウイルスE2糖タンパク質をコードしないRNAを含みうる。或いは、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE2糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質及びアルファウイルスE1糖タンパク質をコードしないRNAを含みうる。更なる実施態様では、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質及びアルファウイルスE2糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質をコードしないRNAを含みうる。第四の実施態様では、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルス・キャプシドをコードするが、アルファウイルス糖タンパク質のどれもコードしないRNAを含みうる。第5の実施態様では、第一ヘルパーRNAは、キャプシド及び糖タンパク質の1つ、つまりE1又はE2のいずれかをコードするが、両方はコードしないRNAを含みうる。
【0031】
これらの第一ヘルパーRNAのいずれか1つと組み合わせて、第二ヘルパーRNAは、少なくとも1のアルファウイルス構造タンパク質であって、第一ヘルパーRNAによりコードされていないものをコードする。 たとえば、第一ヘルパーRNAが、アルファウイルスE1糖タンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルスキャプシドタンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードしうる。第一ヘルパーRNAが、アルファウイルス・キャプシドタンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードするRNAを含みうる。第一ヘルパーRNAが、アルファウイルスE2糖タンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質とアルファウイルスE1糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードしうる。第一ヘルパーRNAが、キャプシドとアルファウイルスE1糖タンパク質の両方をコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードするRNAを含みうる。
【0032】
全てのヘルパー核酸において、これらの分子は、コードされた構造タンパク質配列がヘルパー細胞中において発現されるために必要とされる配列(翻訳及び適切である場合転写又は複製シグナルを含む)をさらに含むということは理解される。そうした配列は、例えば、(ウイルス、原核生物、又は真核生物の誘導性又は恒常性の)プロモーター、並びに5’及び3’ウイルスのレプリカーゼ認識配列を含みうる。1以上の糖タンパク質を発現するヘルパー核酸の場合、これらの配列は、核酸コンストラクト中の構造タンパク質のコード領域のN末端でのリーダー又はシグナル配列を伴って有利に発現されるということが当該技術分野から理解される。リーダー又はシグナル配列は、アルファウイルス由来、例えばE3又は6kでありうるし、或いは組織プラスミノーゲン・アクティベーターシグナルペプチドなどの異種性配列又は合成配列でありうる。こうして、一の例として、第一ヘルパー核酸は、キャプシド-E3-E1をコードするRNA分子であり、かつ第二ヘルパー核酸は、キャプシド-E3-E2をコードするRNA分子であることもある。或いは、第一ヘルパーRNAは、キャプシドのみをコードし、そして第二ヘルパーRNAは、E3-E2-6k-E1をコードしうる。さらに、パッケージングシグナル、つまり「キャプシド化(encapsidation)配列」は、ウイルスゲノム中に存在し、そして全てのヘルパー核酸において存在しない。好ましくは、パッケージング・シグナルは、全てのヘルパー核酸から欠失される。
【0033】
これらのRNAヘルパーは、多くの方法で細胞中へ導入されうる。該RNAヘルパーは、細胞内に安定的に形質導入された1以上の発現カセットから発現されて、それによりパッケージング細胞系列を確立する(例えば、米国特許第6,242,259号を参照のこと)。或いは、RNAは、ヘルパー細胞内で、細胞のゲノム中に組み込まれることなく発現されるRNA又はDNA分子として導入されうる。導入方法は、電気穿孔、ウイルスベクター(例えば、SV40、アデノウイルス、ノダウイルス、アストロウイルス)、及び脂質媒介トランスフェクションを含む。
【0034】
複数のヘルパーRNAの代替は、ウイルス・レプリコンRNAを複製し、そしてアルファウイルス・レプリコンRNAを感染性アルファウイルス・レプリコン粒子中にパッケージングするために必要なポリペプチドを合成するために必要な機能の全てをコードするシングル核酸分子の使用である。これは、必要な機能を規定するRNA分子又は必要な機能を規定するDNA分子で達成されうる。シングルDNAヘルパー核酸は、非限定的に電気穿孔、脂質-媒介性トランスフェクション、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス又はSV-40)、及びリン酸カルシウム-媒介性トランスフェクションを含む当該技術分野に既知の方法のいずれかによりパッケージング細胞中に導入される。好ましくは、DNAは、細胞及び導入される核酸(単数又は複数)について最適化された電圧及び電気容量で、本発明の電気穿孔に基く方法を介して導入される。DNAは典型的に、RNAの取り込みに必要とされる電圧及び電気容量と比べて減少された電圧及び増加した電気容量で細胞中へと電気穿孔で入れられる。全ての電気穿孔において、電圧及び電気容量の値は、感染性アルファウイルス粒子を作り出すパッケージング細胞の能力を破壊することを避けるようにセットされなければならない。DNAは、電気穿孔の前に毒性汚染物質を取り除くために高度に精製され、そして約5mg/mlに濃縮される。一般的に、1〜8mg/ml、好ましくは5〜8mg/mlにDNAを濃縮することが好ましい。DNAヘルパーは、電気穿孔混合液において、0.8mlの電気穿孔混合液あたり約20〜500、望ましくは約50〜300、例えば約150μgで存在し、望ましくは約5×107〜2×108細胞、例えば約1.2×108細胞を含んだ。
【0035】
或いは、このフォーマットにおける及び誘導性のプロモーターの下でのヘルパー機能は、ウイルスRNAベクター・レプリコン核酸の導入/発現の前にパッケージング細胞ゲノム中に組み込まれ、そして次にRNAベクター・レプリコンの導入の直前に、同時に、又は後に適切な刺激で誘導された。
【0036】
有利なことに、アルファウイルス構造タンパク質、つまりキャプシド、E1糖タンパク質及びE2糖タンパク質をコードする核酸は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。本明細書中で使用される「弱毒化突然変異」及び「弱毒化アミノ酸」というフレーズは、当該技術分野の専門用語に従って(例えば、B. Davis, et al., Microbiology 132(3d ed. 1980)を参照のこと)、該突然変異が置換突然変異であろうと、イン-フレーム欠失若しくは突然変異の付加であろうと、その宿主において疾患を引き起こす可能性の低下(つまり病原性の低下)をもたらすヌクレオチド突然変異又はそうした突然変異の観点でコードされるアミノ酸を意味する。「弱毒化突然変異」という用語は、そうした突然変異が、弱毒化されたにもかかわらずウイルスの生存を可能にする「修復」突然変異と組み合わせて使用されない限り、ウイルスにとって致命的である突然変異を除外する。特定の実施態様では、ヘルパー核酸(単数又は複数)は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。
【0037】
アルファウイルス・ゲノムにおいて適切な弱毒化突然変異を同定する方法は、当該技術分野に既知である。Olmsted et al.,(1984; Science 225: 424)は、細胞培養において成長の早さについて選別することにより、シンドビス・ウイルスにおいて弱毒化突然変異を同定する方法を記載する。Johnston及びSmith(1988; Virology 162: 437)は、BHK細胞の浸透を促進するために選択的な圧力を直接適用することにより、VEEにおける弱毒化突然変異を同定することを記載する。アルファウイルスにおける弱毒化突然変異は、当該技術分野に記載される。例えば、White et al. 2001 J. Virology 75: 3706; Kinney et al. 1989 Virology 70: 19; Heise et al. 2000 J. Virology 74: 4207; Bernard et al 2000 Virology 276: 93; Smith et al 2001 J Virology 75: 11196; Heidner & Johnston 1994 J.Virology 68: 8064; Klimstra et al. 1999 J. Virology 73: 10387; Glasgow et al. 1991 Virology 185: 741; Polo and Johnston 1990 J. Virology 64: 4438; and Smerdou and Liljestrom 1999 J. Virology 73 : 1092 である。
【0038】
特定の実施態様では、レプリコンRNAは、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。別の特異的実施態様では、ヘルパー核酸(単数又は複数)は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。2個のヘルパー核酸分子を含む実施態様では、少なくとも1の分子は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含むか、又は両方とも少なくとも1の弱毒化突然変異をコードしうる。或いは、ヘルパー核酸又は第一若しくは第二ヘルパー核酸のうちの少なくとも1は、少なくとも2個の又は複数の弱毒化突然変異を含む。適切な弱毒化突然変異は、使用されるアルファウイルスに左右される。例えば、アルファウイルスがVEEである場合、適切な弱毒化突然変異は、E2アミノ酸位76でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジン、アルギニン、又はヒスチジンをE2アミノ酸76として指定するコドン;E2アミノ酸位120でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジンをE2アミノ酸120として指定するコドン;E2アミノ酸位209でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジン、アルギニン、又はヒスチジンをE2アミノ酸209として指定するコドン;E1アミノ酸位272でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはスレオニン又はセリンをE1アミノ酸272として指定するコドン;E1アミノ酸位81でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはイソロイシン又はロイシンをE1アミノ酸81として指定するコドン、並びにE1アミノ酸位253でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはセリン又はスレオニンをE1アミノ酸253として指定するコドンからなる群から選ばれうる。E3/E2のポリタンパク質が切断されないように、更なる弱毒化突然変異がE3とE2との間の切断ドメインにおける欠失又は置換突然変異を含む;E1-253での突然変異と組み合わせた突然変異は、本発明中で使用される好ましい弱毒化株である。同様に、現存の生ワクチン株中、例えばTC83株(Kinney et al., 1989, Virology 170: 19-30、特にヌクレオチド3での突然変異)中に存在する突然変異はまた、本発明の方法により精製された粒子中に有利に使用された。レプリコン核酸の非コード領域における弱毒化突然変異の例は、VEEにおけるヌクレオチド3でのA又はCの置換である。
【0039】
適切なヘルパー及びウイルス・レプリコンRNAは、米国特許第6,156,558号において開示され、該文献は本明細書中に援用される。
【0040】
アルファウイルスが、南アフリカ・アルボウイルスNo.86(S.A.AR86)である場合、適切な弱毒化突然変異は、以下の
nsP1アミノ酸位538でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはイソロイシンをnsP1アミノ酸538として指定するコドン;
E2アミノ酸位304でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはスレオニンをE2アミノ酸304として指定するコドン;
E2アミノ酸位314でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジンをE2アミノ酸314として指定するコドン;
E2アミノ酸位376でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはアラニンをE2アミノ酸376として指定するコドン;
E2アミノ酸位372でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはロイシンをE2アミノ酸372として指定するコドン;
nsP2アミノ酸位96でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはグリシンをnsP2アミノ酸96として指定するコドン;及び
nsP2アミノ酸位372でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはバリンをnsP2アミノ酸372として指定するコドン;
からなる群から選ばれうる。別のアルファウイルスが使用される実施態様に有用な適切な弱毒化突然変異は、当業者に周知である。
【0041】
弱毒化突然変異は、既知の方法に従って、特定部位突然変異誘導を行うことにより核酸中に導入されうる。Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488 (1985)を参照のこと、該開示は、その全てを本明細書中に援用される。或いは、既知の方法に従って、相同性制限酵素断片を置換することにより、又は変異誘導性ポリメラーゼ・チェーン反応方法により、突然変異は核酸中へ導入されうる。
【0042】
ARPsを生成する際に使用されるヘルパー核酸(単数又は複数)及びレプリコンRNAが作られたなら、望ましくは電気穿孔によりそれらは適切な宿主細胞中へ導入される。比較的高い細胞密度で行われる電気穿孔は、ヘルパー核酸とウイルス・レプリコンRNAの効果的な取り込みが可能になるということを、本発明者が発見した。ヘルパー及びレプリコン核酸は、電気穿孔における使用、又はARP生成のため核酸を細胞に導入する別のプロトコルにおける使用のため精製されるべきであるが、ヘルパーRNAはキャップされる必要はない。
【0043】
感染性ウイルス粒子を細胞中に生成するステップは、慣用の技術を使用して行われうる。例えばDavis et al.,に対する米国特許第5,185,440号、Bioption AB,に対するPCT公開WO 92/10578、及びTemin et al.,に対する米国特許第4,650,764号を参照のこと。(しかし、Temin et al.,は、アルファウイルスよりむしろレトロウイルスに関する)。感染性ウイルス粒子は、本明細書中に記載される方法及び/又は慣用の粒子回収技術により改良される標準細胞培養成長技術、或いは本明細書中以下に記載される塩洗浄方法により精製されうる。塩洗浄液は、特に特定の表面荷電がARP表面上に存在するとき、ARP回収を改良するようである。VEEの場合では、E2=309及びE2-12-でのアミノ酸残基は、正の荷電を作り出す良好の部位を提供する。
【0044】
ウイルス・レプリコンRNAは、プロモーター並びに他の配列であってARPsが導入されそして発現される予定の宿主細胞におけるコード配列の転写及び翻訳発現に必要とされる配列に発現可能なように結合される複数の異種性コード配列をコードする。
【0045】
明細書中に記載されるアミノ酸配列中のアミノ酸の全ては、当該技術分野においてルーチンに使用される通常の3文字及び1文字表記を有する:A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;F、Phe、フェニルアラニン;G、Gly、グリシン;H、His、ヒスチジン;I、Ile、イソロイシン;K、Lys、リジン;L、Leu、ロイシン;M、Met、メチオニン;N、Asn、アスパラギン;P、Pro、プロリン;Q、Gln、グルタミン;R、Arg、アルギニン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;V、Val、Vaバリン;W、Try、トリプトファン;Y、Tyr、チロシン。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、特定の配列により起こる「発現」は、付随された下流配列の転写である。適切でありかつ付随される配列が所望されるなら、ここで発現という用語はまた、転写されたRNAの翻訳(タンパク質合成)も包含する。或いは、異なる配列は、転写及び翻訳させるために使用されうる。
【0047】
ゲノムDNA(ここで遺伝子は、イントロンにより遮られておらず、及び/又はここでこれは、高度に繰り返され、又は発現されない配列に充てられている大部分のゲノムではない)又はcDNAは、適切に調製されたウイルス・ベクター核酸調製品へとクローン化されて、組換えベクター核酸調製品を生成する。組換えベクター核酸調製品は、組換えベクター核酸を感染性粒子にパッケージングを可能にする細胞中へ導入される。組換えベクター核酸調製品は、ヘルパー核酸、RNA若しくはDNAと共にパッケージングするために、例えば電気穿孔混合液1mlあたり約107〜約109細胞の比較的高い細胞密度で、細胞へと電気穿孔して入れられる。細胞を次に成長培地中で培養して、組換えベクター核酸をウイルス・レプリコン粒子にパッケージングすることを可能にした。
【0048】
ARPsが塩洗浄により細胞から回収された後に、望ましくは細胞遊離上清から回収された後に、ARPsは、イオン交換クロマトグラフィーにより部分的に精製される。
【0049】
本発明の方法は、アルファウイルス由来、好ましくは弱毒化アルファウイルス由来のウイルス・レプリコン核酸へと有利に適用される。特に好ましいアルファウイルスは、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)である。特別に例示される弱毒化VEEは、3014株であり、該ウイルス又はそれら由来のARPsは、ヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィーを使用して精製されうる。VEE3042株は、ARP方法における使用に適した別の弱毒化ウイルスであるが、ウイルス又はそれ由来のARPsの外皮は、ヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィーを使用して精製することができない。該ウイルス又はそれ由来のARPsは、グリコサミノグリカン-結合性能力を与える突然変異を有し、塩洗浄ステップを使用する精製に特によく適しており、そしてそれらはヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィーを使用してさらに精製されうる。
【0050】
本発明の方法において使用するために細胞が獲得される癌(新生物病)は、癌種、肉腫、白血病、及び神経系細胞由来の癌を含む。これらは、非限定的に脳腫瘍、例えば星状細胞腫、乏突起細胞腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、及び未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET); 膵臓腫瘍、例えば膵管腺癌;肺腫瘍、例えば小細胞及び大細胞腺癌、扁平上皮癌及び細気管支肺胞上皮癌;大腸腫瘍、例えば上皮性腺癌、及びこれらの癌の肝臓転移;肝腫瘍、例えば肝細胞腫及び胆管癌;乳房腫瘍、例えば導管腺癌及び小葉腺癌; 婦人科腫瘍、例えば扁平上皮乳糖腫及び子宮頚部腺癌、及び子宮及び卵巣上皮性腺癌;前立腺腫瘍、例えば前立腺癌;膀胱腫瘍、例えば、移行性、扁平上皮癌;網内系(RES)の腫瘍、例えばB及びT細胞リンパ腫(結節性及び拡散性)、形質細胞腫及び急性及び慢性白血病;皮膚腫瘍、例えば黒色腫;及び軟部組織腫瘍、例えば軟部組織肉腫及び平滑筋肉腫を含む。
【0051】
単数形又は複数形で使用される「新生物細胞」、「腫瘍細胞」、又は「癌細胞」は、宿主生物にとって有害となる悪性化した細胞のことを指す。原発性癌細胞(つまり悪性化部位の近くから取られた細胞)は、良く確立された技術、特に組織学的試験により、非癌細胞からたやすく区別され得うる。本明細書中で使用される癌細胞の定義は、非限定的に原発癌細胞だけではなく、癌原細胞由来のいずれの細胞を含む。癌細胞の定義は、転移癌細胞を含み、並びに癌細胞由来のin vitro培養細胞及び細胞系列を含む。通常固形癌として症状を示す癌のタイプについていうとき、「臨床的に検出できる腫瘍」は、例えばCATスキャン、磁気共鳴影像法(MRI)、X線、超音波、又は触診などの方法により、腫瘤の基準に基いて検出できる腫瘍である。生化学的、又は免疫学的発見のみでは、この定義に適合するためには不十分である。
【0052】
多抗原免疫学的応答が有利である病原体は、ウイルス、細菌、真菌、及び原生動物病原体を含む。免疫が所望されるウイルスは、非限定的に出血熱ウイルス(例えばエボラウイルス)、免疫不全ウイルス(例えばネコ又はヒト免疫不全症ウイルス)、ヘルペスウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、アフトウイルス、ノダウイルス、ピコルナウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、風疹、トガウイルス、フラビウイルス、ブンヤウイルス、レオウイルス、発癌性ウイルス、例えばレトロウイルス、病原性アルファウイルス(例えば、セムリキ森林ウイルス又はシンドビスウイルス)、ライノウイルス、肝炎ウイルス(グループB、Cなど)、インフルエンザウイルスを特に含む。免疫応答が役立つ細菌性病原体は、非限定的に、ブドウ球菌(staphylococci)、連鎖球菌(streptococci)、肺炎球菌(pneumococci)、サルモネラ(salmonellae)、大腸菌(escherichiae)、エルシニア(yersiniae)、腸球菌(enterococci)、クロストリジウム(clostridia)、コリネバクテリウム(corynebacteria)、ヘモフィルス(hemophilus)、ナイセリア(neisseriae)、バクテロイデス(bacteroides)、フランシセラ(francisella)、パスツレラ(pasteurellae)、ブルセラ菌(brucellae)、マイコバクテリウム(mycobacteriae)、ボルデテラ(bordetella)、スピロヘータ(spirochetes)、放線菌(actinomycetes)、クラミジア(clamydiae)、マイコプラズマ(mycoplasmas)、リケッチア(rickettsiae)などを含む。関心の病原性菌類は、非限定的にカンジダ、クリプトコッカス(cryptococci)、ブラストミセス(blastomyces)、ヒストプラスマ(histoplasma)、コクシジオイデス(coccidiodes)、藻菌類(phycomycetes)、トリコデルマ(trichodermas)、コウジカビ(aspergilli)、ニューモシスティス(pneumocystis)などを含む。免疫が有用である原生動物は、非限定的に、トキソプラズマ(toxoplasma)、プラスモディア(plasmodia)、住吸血虫(schistosomes)、アメーバ(amoebae)、ジルアジア(giardia)、バベシア(babesia)、レーシュマニア(leishmania)などを含む。他の寄生生物は、回虫、鉤中及びサナダムシ、糸状虫を含む。
【0053】
本アルファウイルス・レプリコン・ベクター技術の長所の1つは、1以上の外来遺伝子を発現する能力である。現在までに、アルファウイルス・レプリコンワクチンは、単一又は一握りの異種性遺伝子の発現に限られてきた。この1以上の異種性遺伝子を発現する能力は、各個々の遺伝子発現をさせる複数のプロモーター単位を付加することを通して達成された。レプリコン・ベクターが持ち運ぶことができる異種性遺伝子の数は、キャプシド構造が収容できる核酸の量に限りがあるキャプシド構造により、最終的に制限される。2又は3個の抗原を発現するシングル・レプリコンについての代わりの戦略は、個々のアルファウイルス・レプリコン粒子の混合物を投与することであり、該粒子各々は複数抗原及び/又は本明細書中に記載される病原菌に対して免疫応答を誘発するための異なる抗原をコードしそして発現する。今日までに、これらのアプローチは、マルチ・プロモーター又は混合物レプリコン・セットのいずれにおいても、同時に数個(〜3)の抗原発現に限られた。
【0054】
しかしながら、本明細書中に記載されるアルファウイルス・レプリコン粒子を生成する方法技術における最近の改良は、同じワクチン調製品中の複数抗原に対するワクチンの新たな機会についてドアを開けた。方法の改良は、高細胞密度電気穿孔法(5×107〜1.5×108細胞/mlの電気穿孔液)と塩洗浄技術に基いた。別の改良は、電気穿孔混合液におけるキャップなし(又はキャップあり)RNA分子又はDNA分子の使用を含む。これらの改良からの収量は、2〜3桁の大きさで増加された(1回のキュベット電気穿孔から1011i.u.が生成される)。従来技術を超えるレプリコン生成の効率の有意な増加は、規模の観点から以前は実行できなかった多くのワクチン・アプローチが現在では可能であるということを意味する。本明細書中において、及び参照される仮出願において開示される方法を使用して達成されうる収量によって、ウイルス・レプリコン核酸中に挿入される核酸が調製された腫瘍、腫瘍細胞、病原体、又は寄生生物により発現される抗原の全長を発現するARPsの生成が理論的に可能になる。
【0055】
一のそうしたアプローチは「患者特異的ワクチン」であり、ここではシングル・ワクチン調製品は、感染性疾患又は新生物病、例えば癌の予防又は治療処置用に、患者毎に調製された。1の腫瘍細胞は、最大5,000の遺伝子を発現すると見積もられているので、慣用的なアプローチを使用して数多くの遺伝子を発現するアルファウイルス・レプリコン腫瘍ライブラリー・ワクチンを作り出すいずれの試みも、各遺伝子を発現するレプリコンの数の点でかなり限られていた。さらに、粒子は臨床セットにおける投与及び製剤に適したものにするために精製を必要とし、そして精製はタイターのかなりの欠失をもたらすことが多い。改良されたARP生成技術を使用して、我々は現在、レプリコンの集合を作り出すことができ、該集合では、全部ではないが多くの腫瘍細胞由来遺伝子は、1×105個の粒子の集合において、平均して少なくとも一回提示されるようである。このアプローチからの高い収量に加えて、該方法は感染ユニット基準あたりの純度の高い製剤を提供しうる。これは、次の精製ステップが必要とされなくなりうることを意味し、こうして次の過程での損失を妨げる。付け加えて、増大された純度は、宿主における抗ベクター及び抗汚染物質免疫応答を誘発する危険性を低減しうる。通常、そうした応答は、追加ワクチン接種の有効性を潜在的に妨げるか、又は危うくする。治療腫瘍処置などのアプローチでは、高タイター・ワクチンを純度の高い製剤中に頻繁にデリバリーする能力は、ワクチンの主要な望ましい特徴である。本発明は、アルファウイルス・レプリコン・ベクターを使用して行われる新規の多抗原性ライブラリー・アプローチを可能にする。これらのライブラリーは、多抗原、又は病原性生物、寄生生物、又は腫瘍細胞由来の遺伝子レパートリーの全部をコードしうる。
【0056】
ARP生成のための、細胞への導入用核酸を作り出すために使用される先行技術の方法は、高価でありかつ労力がかかる一方、本開示は、改良されたARP収量を達成するための種々のパラメーターの改変を記載し、その上方法の単純化、そして桁違いにARPあたりの値段の低減を記載する。改良されたアルファウイルス粒子収量は、腫瘍細胞、病原体、又は寄生生物由来の核酸のアルファウイルス・レプリコン核酸へのクローニング、並びに十分な効率でパッケージングすることを可能にし、その結果、腫瘍細胞、病原体、又は寄生生物抗原の代表的なセットは、ARP「発現ライブラリー」により生成される。ヒト又は動物患者が一定量のそうしたARP調製品であって、場合によりさらに免疫学的アジュバントを含む調製品で接種されて、その結果、患者に投与された調製品及びARPライブラリー内にコードされる複数の抗原決定要因に対して免疫応答が作られるように、ARPsの収量は、十分に高い。
【0057】
表1は、cDNAのプールから生成される多抗原性ARPのタイターを示す。10個の異なる異種性遺伝子(クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、Rat/Neu腫瘍遺伝子、ルシフェラーゼ、HIV・Gag、癌抗原A、及び4種のマラリア抗原:PPkMSP1-42、PyHep17、PfAMA1、及びPkCSP)を発現するアルファウイルス・レプリコン・コンストラクトをNot1制限エンドヌクレアーゼで直線化し、プールし、そしてRNA転写産物は、T7RNAポリメラーゼを使用して作成された。RNA分子のプールは、アルファウイルス・キャプシド及び糖タンパク質ヘルパー・RNAsと、ベロ(VERO)細胞中に共-電気穿孔されて、各遺伝子産物に特異的な免疫蛍光アッセイを使用するARPタイター決定により、10個の異なる抗原を発現する個々のARPからなるARPの集団を生成した。
【0058】
表2は、RNAsのプールから生成される多抗原性RAPのタイターを示す。7個の異なる異種性遺伝子(CMV IE1、CMV gB、インフルエンザ、HA、HIV・Pol、HIV・Gap、Rat/neu、CAT)を発現するアルファウイルス・レプリコン・コンストラクトは、Not1制限酵素エンドヌクレアーゼで個々に直線化した。各レプリコンについてのRNA転写産物は、T7RNA・ポリメラーゼを使用して作成された。7個の異なるRNA転写産物は、等濃度で混合されて、そしてアルファウイルス・キャプシド及び糖タンパク質ヘルパーRNAと共に電気穿孔された。各遺伝子産物に特異的な免疫蛍光アッセイを使用するARPタイター決定により測定されるとき、7個の異なる抗原全てを発現するARPの集合を作成した。
【0059】
表3は、(図1に示される)多抗原性ARPでワクチン接種された動物にける抗原特異的免疫応答の要約を提供する。液性免疫形態における抗原特異的免疫応答は、ELISAにより測定されて、そして逆数幾何平均として表され、或いはウエスタンブロット又はIFAにより測定されて、抗原特異的シグナルが検出できる最も低い希釈度として示された。細胞性免疫形態における抗原特異的免疫応答は、IFN-γ分泌細胞のELISPOT検出により測定され、そして106リンパ球あたりの抗原特異的IFN-ガンマ分泌リンパ球として表された。s.c.又はi.p.経路の接種により、多抗原性ARP調製品を受ける動物は、該調製品中の全ての抗原に対する免疫応答を増大した。ポジティブ・コントロールとして、HIV-Gag・ARPを受けた一の群は、Gagに対してのみ特異的な免疫応答を高めた。ネガティブ・コントロールの動物は、いずれの抗原に対する検出できる応答を有さなかった。多くのサンプルは、終点でタイターを調べておらず、そして得られた値より大きいか又は同等のタイターとして表される。多抗原性調製品の一部としてHIV・Gag遺伝子タンパク質に対して誘発された免疫応答は、1つの(単一の)標準調製品として与えられたHIV・Gapタンパク質と比較して、液性及び細胞性基準に関して同等であった。このことによって、より大きい発現ライブラリーの構成要素として発現されたコード配列は、本発明の組成物及び方法を使用して効果的に免疫原性でありうるということが示された。
【0060】
腫瘍細胞、病原体、又は寄生生物の複数の抗原性決定要素をコードする発現性のヌクレオチド配列を含む免疫学的ARP調製品は、予防投与計画の一部として、つまり製剤が投与されるヒト又は動物が、新生物病、病原体感染、又は寄生生物感染を患う可能性を低減するために、投与されうるか、或いは治療用投与計画として、つまり存在する新生物病、病原体感染、又は寄生生物感染に付随するいずれの病気の重篤度を低減するために、又は調製品が投与されたヒト又は動物において作リ出された免疫応答のため、新生物病、病原体感染又は寄生生物感染を防ぐように投与される。
【0061】
免疫応答の生成が、腫瘍細胞(又は新生物病)、病原体、又は寄生生物に対する少なくても幾つかのレベルの防御免疫を含む一方で、そうした新生物病又は寄生生物若しくは病原体での感染を患う患者における臨床結果は、当該技術分野に知られる適切な化学治療剤で患者を治療することによっても改良されうる。病原体がウイルスで或る場合、アシクロビルなどの抗ウイルス化合物は、例えばヘルペスウイルス感染を患う患者においてARPワクチンと同時に、又はHIVに感染された個人においてHAART(高活性抗レトロウイルス療法)と同時に投与されうる。病原体が細菌病原体である場合、細菌が感受性である抗生物質は、望ましくは投与され、そして病原体が真菌である場合は、適切な抗真菌抗生物質が望ましくは投与される。同様に、寄生生物感染の制御及び/又は根絶用の化学薬剤は知られており、そして当該技術分野に既知の投与量及び投与計画を使用してヒト又は動物患者に有利に投与される。患者が新生物病、例えば癌を患う場合、ARPsが投与された患者において多数の癌関連抗原を発現することができるARPsを含む免疫原性組成物の投与は、望ましくは抗新生物薬剤(単数又は複数)の投与を伴う。該抗新生物薬剤(単数又は複数)は、非限定的に、ダウノルビシン、タキソール、チオ尿素(thioureas)、治療用放射性核種を結合された癌特異的抗体を含む。但し、該薬剤(単数又は複数)は、投与されたARPs及び患者において発現した抗原に対して、患者が免疫応答を作り出す能力を失わせてはならない。
【0062】
ワクチン又は別の免疫原性組成物などの本発明の医薬製剤は、免疫原性量の感染性伝播欠損性アルファウイルス・レプリコン粒子を、医薬として許容される担体と組み合わせて含む。「免疫原性量」は、医薬製剤が投与された対象において免疫応答を誘発するために十分な感染性アルファウイルス粒子の量である。投与量あたりの約101〜約1010、好ましくは105〜108の感染ユニットの量が適切であると信じられ、治療される対象の年齢及び種によって左右される。典型的な医薬として許容される担体は、非限定的にパイロジェン-フリー滅菌水及びパイロジェン-フリー滅菌生理食塩水を含む。免疫原性量の本発明の感染性伝播欠損アルファウイルス粒子を投与された対象は、非限定的にヒト及び動物(例えば、犬、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ロバ、マウス、ハムスター、サル)対象を含む。免疫学的に活性な化合物、例えばサイトカイン及び/又はBCGは、投与されたウイルス・レプリコン粒子調製品に対する免疫応答を増大するために加えられうる。投与は、腫瘍内、腹腔内、筋肉内、皮内、鼻腔内、経膣、経直腸、皮下、又は静脈内投与のいずれかのなどの適切な方法により行われうる。
【0063】
本発明の方法を使用して生成される(該組成物がヒト又は動物に投与されるとき、関心の抗原を発現させる)ARPsを含む免疫原性組成物は、当該技術分野に周知の方法のいずれかにより剤形されうる。そうした組成物、特にワクチンは、典型的には注射液として、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして調製される。固体形態、例えば注射の前に液体中へ溶解若しくは懸濁することに適した凍結乾燥調製品を形成する。
【0064】
活性免疫原性成分(ARPs)は、医薬として許容されかつ活性成分と適合性のある賦形剤又は担体と混合されることが多い。適切な賦形剤は、非限定的に滅菌水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、又はそのような物並びにそれらの組合せを含む。
【0065】
さらに、所望されるならば、前記ワクチンは、少量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳濁剤、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの有効性を高めるアジュバントを含みうる。効率的でありうるアジュバントの例は、非限定的に、水酸化アルミニウム;N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP);N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、nor-MDPと呼ばれる);N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEと呼ばれる);及び細菌から抽出された三種の構成要素:モノホスホリル・リピドA、トレハロース・ジミコレート、及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を、2%スクアレン/トゥィーン80中に含むRIBIを含む。アジュバントの有効性は、種々のアジュバントを含むワクチン中の免疫原の投与から得られるARP免疫原性生成物に対する抗体量を計測することにより測定されうる。当該技術分野に周知のそうしたさらなる製剤及び投与の方法は使用されうる。
【0066】
1以上の免疫増強分子、例えばケモカイン及び/又はサイトカインは、患者又は動物に投与される免疫原性組成物中に取り込まれうる。代わりに、免疫増強分子のコード配列(単数又は複数)を含むアルファウイルス・レプリコン・ベクターは、免疫原性組成物中に取り込まれうる。ケモカイン及び/又はサイトカインの選択は、免疫応答が所望される新生物組織又は細胞、寄生生物若しくは病原体に従って変わりうる。実施例は、非限定的にインターロイキン-4、インターロイキン-12、γ-インターフェロン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、及びFLT-3リガンドを含みうる。
【0067】
免疫原性の(又はそうでなければ、生理的に活性な)ARPを含む組成物は、投与剤形と適合性のある方式で、並びに予防及び/又は治療有効であるそうした量で投与される。投与される量は、投与量において一般的に約101〜約1010、好ましくは105〜108感染ユニットの範囲であり、治療される対象、抗体を合成するための個人の免疫系の容量、及び所望される防御の程度に左右される。投与されるために必要とされる活性成分の正確な量は、医師、獣医師、又は別の保健従事者の判断に左右され、そして各個人について固有であるが、そうした決定はそうした従事者の技術の範囲内である。
【0068】
ワクチン又は別の免疫原性組成物は、1回投与又は複数回投与計画において与えられうる。複数回投与計画は、ワクチンの初回治療コースが1〜10又はそれを超える分けられた投与、続いて免疫応答を維持及び/又は増強するために必要とされる時間期間、例えば毎週、毎月、又は2回目の投与として1〜4ヶ月目で投与される投与、そして必要とされるなら、さらに数ヶ月/数年後の次の投与(単数又は複数)を含みうる計画である。
【0069】
クローニング、DNA単離、増幅及び精製について、並びにDNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む酵素反応についての標準技術、そして種々の分離技術は、当業者に知られ、そして通常に使用される。標準技術の多くは、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, New York; Maniatis et al.(1982) Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, New York; Wu (ed.) (1993) Meth. Enzymol. 218, Part I ; Wu (ed.) (1979) Meth. Enzymol. 68; Wu et al. (eds.) (1983) Meth. Enzymol. 100 and 101; Grossman and Moldave (eds.) Meth. Enzymol. 65; Miller (ed.) (1972) Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York; Old and Primrose (1981) Principles of Gene Manipulation, University of California Press, Berkeley; Schleif and Wensink (1982) Practical Methods in Molecular Biology ; Glover (ed.) (1985) DNA Cloning Vol.I and II, IRL Press, Oxford, UK; Hames and Higgins (eds.) (1985) Nucleic Acid Hybridization, IRL Press, Oxford, UK; Setlow and Hollaender (1979) Genetic Engineering : Principles and Methods, Vols. 1-4, Plenum Press, New York; and Ausubel et al. (1992) Current Protocols in Molecular Biology, Greene/Wiley, New York, NY.において記載される。使用される略記及び命名法は、当該技術分野に標準なものとみなされ、そして本明細書中で引用する専門論文において通常使用されている。
【0070】
本出願中に引用される全ての参考文献は、本開示と矛盾がない程度にその全てを本明細書中に援用される。
【0071】
以下の実施例は、例示の目的に提供され、そして本明細書中に特許請求される発明の範囲を制限することを意図しない。例示的な物品のいずれの変動であって、当業者が思いつくものは、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【実施例】
【0072】
実施例1.腫瘍関連抗原のライブラリーを発現するアルファウイルス・レプリコンベクターの作成
腫瘍細胞は、典型的に切除、生検、又は内視鏡的サンプリングにより癌患者から取得される。細胞は、直接使用され、冷凍保存され、又は培養液中で維持され又は拡大された。RNAは、当該技術分野に周知の標準方法、例えば、市販の試薬及びキット、例えばトライゾル(Sigma, St. Louis, MO)又はS.N.A.P.トータルRNAアイソレーション・キット(S. N. A. P. total RNA isolation kit)(Invitrogen, Inc, Carlsbad, CA)を使用し、続いてオリゴ(dT)-セファロース上でmRNAを精製することにより、腫瘍細胞から抽出された。mRNAは、さらにサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション又は当該技術分野に周知の別の方法により腫瘍特異的配列においてさらに濃縮されうる。ファーストストランドcDNAは、稀な制限酵素部位を5’末端に有するオリゴ(dT)オリゴヌクレオチドを使用して合成される。次にcDNAを精製し、セカンド・ストランドは、標準方法のいずれかを使用して、例えばDNAポリメラーゼI-RnaseH又は非特異増幅を使用して生成される。アダプターは次にライゲーションされて、接着性末端を作り出し、そして二重鎖DNAは、オリゴ(dT)プライマー中に取り込まれた部位で、稀に認識される制限エンドヌクレアーゼ(例えばDraI)で切断される。この方法は、ディレクショナル・クローニングに適した適合性のない接着性末端を伴う二重鎖cDNAを作り出す。
【0073】
或いは、実施例2(下記)に記載の戦略は、ディレクショナル・クローニングのための接着末端の作成に使用されうる。更なる実施態様では、接着性末端は、末端デオキシリボヌクレオチド・トランスフェラーゼにより結合されうる。二重鎖cDNAは、プラスミド・レプリコン・ベクター中にクローン化され、または以下に記載の方式の1つに類似の方式でin vitroで組換えレプリコン分子を構成するために使用される。このアプローチは、3’末端上にビオチン標識及び5’末端にT7プロモーターを含む組換えレプリコン分子を作り出し、こうしてT7DNA依存性RNAポリメラーゼを使用して、組換え分子の選別及びin vitroでのRNAの作成を可能にした。さらなる選別ステップは、腫瘍抗原ライブラリーに存在する抗原の数を「絞り込む(down-select)」ために行われる。そうしたサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション及びディファレンシャル分析の方法は、当該技術分野に周知であり(米国特許第5,958,738号、第5,827,658号、及び第5,726,022号、及び米国出願公開2002-0018766を参照のこと)、そしてそうした選別方法は、VEEレプリコン・コンストラクト中にクローニングする直前に行われた。このアプローチは、腫瘍抗原プールを、腫瘍細胞において、過度に発現されるか又は好ましくは上方発現される遺伝子へと限定するために役に立つ。この選別は、抗原ライブラリーにおける通常細胞遺伝子の頻度及び/又は存在を低減又は削除するために役に立つ。いずれの特定の論理に拘束される事無く、更なる利益は、腫瘍関連抗原に対する免疫応答に焦点をあてる非腫瘍特異的抗原を削除する事を含むと信じられており、こうしてワクチン調製品の潜在的な特異性を最大化し、そして自己免疫応答を誘導する危険性を低減する。抗原レパートリーの「絞込み」はまた、初回―追加戦略にも関連する。多くの例では、広範囲の腫瘍抗原でワクチン接種し、そして続いて追加免疫接種において、特異的抗原について効果的に免疫系に焦点を当てるために抗原の数を制限/絞込みする事は、有利でありうる。これは、初回免疫化に続いて、どの抗原に宿主が応答したかを同定し、そして基本的に宿主が認識できると実証した抗原及び免疫応答を生じたことがある抗原に対する免疫応答を増加するために次なる各追加免疫をあつらえることに基いて、抗原を絞り込むことによって実行できる。
【0074】
実施例2 標的遺伝子配列が知られている場合における、感染組織又は血液のサンプルからの感染疾患生物特異的cDNAを発現するアルファウイルス・レプリコン・ベクターの作成
遺伝子又は関心遺伝子(つまり、レプリコンにより発現される免疫原性成分をコードする遺伝子)が、周知の配列の媒介物から獲得される場合、この実施例は、急性若しくは慢性感染を患う個人に特異的なウイルス/細菌/寄生生物遺伝子レパートリーのクローニングを記載する。mRNAは、当該技術分野に周知の標準方法、例えば、S.N.A.P.トータルRNAアイソレーション・キット(Invitrogen, Inc, Carlsbad, CA)に従って、組織又は血液サンプルから単離される。ファースト・ストランドcDNAは、当該技術分野に周知の標準方法のいずれかにより、例えばcDNAサイクルキット(cDNA cycle kit)(Invitrogen,Inc, Carlsbad, CA)、又はAMVリバース・トランスクリプターゼとランダム・プライマーを使用して合成される。関心の遺伝子(単数又は複数)は、標的遺伝子特異的プライマーを使用してcDNAから増幅され、続いてアンプリコンは、PCR精製キット(Qiagen Inc., Valencia, CA)又は当該技術分野に周知である他の別の方法を使用して精製される。当業者に周知の方法を使用して、例えばG:Cクローニング、制限エンドヌクレアーゼ・切断の後のディレクショナル・クローニング、又はゲートウェイ(Gateway)(Invitrogen, Carlsbad, CA)等のIn vitro組換え方法、又はクレ-ロックス(Cre-lox)組換えシステムを使用して、アンプリコンは、VEEレプリコン中へクローン化される。
【0075】
好ましい実施態様では、関心のコード配列(単数又は複数)は、RNA/DNAハイブリッド・オリゴヌクレオチドを使用して増幅される。増幅に続いて、DNAアンプリコンは、NaOHで処理されて、プライマーのRNA成分を切断し、或いは希土類金属元素の存在下で50℃でインキュベーションして、ライゲーションに必要とされる3’突出部を作り出すために、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの間のホスホジエステル結合を選択的に加水分解した(Chen et al., 2000, Biotechniques; 28 (3): 498-500,504-5 and Chen et al., 2002, Biotechniques, 32: 516,518-20)。 ベクター配列における相補的な3’突出部は、類似の様式で作られるか、又は制限エンドヌクレアーゼを使用する事により作られる。この方式では、レプリコン分子の2個の断片:左腕(left arm)及び右腕(right arm)が調製される。左腕は、VEE特異的配列に発現可能なように結合されるT7プロモーターを含み、該左腕は、使い勝手の良いクローニング部位の上流に存在するか、及び該部位を含む。右腕は、VEEの3’非翻訳領域を含む。右腕はまた、3’末端にビオチン標識を含む。増幅された3’突出部を含む断片は、T4DNAライゲースを使用して、ベクターの左及び右腕に結合される。集められた分子は、磁性を帯びたストレプトアビジン被膜ビーズ又は、他の別の類似の固相吸着技術を使用してライゲーション反応混合液から分離される。全長レプリコンRNAは、T7DNA依存性RNAポリメラーゼを使用するin vitro翻訳により、精製組換えベクターDNAから生成される。当該ステップは、全長組換え分子の生成のみをもたらす。なぜなら不完全な分子はストレプとアビジンに結合しないか、又はT7プロモーター配列を欠如するため翻訳されないからである。得られた組換えレプリコンRNA分子は、患者において感染性である標的の遺伝子型を表す標的遺伝子(単数又は複数)の包括的なレパートリーをコードする。この方法の利点は、個人由来の特定の遺伝子集合についてのすべてのバリアントを提示する能力であり、例えば、上記で概略を示した方法を使用して、HIV-1エンベロープ・gp160遺伝子配列の増幅は、特定の患者由来のエンベロープ・バリアントの大部分又は全てをコードするARP集合を作り出す。患者が複数の種のウイルスで感染されるか、又は元の親循環株から派生する区別されるバリアントで感染されるならば、上記の技術は、全てのバリアントを補足し、そして該バリアントは最終ARPワクチン集合中で提示される。
【0076】
実施例3 標的遺伝子配列が知られていない場合における、感染された組織/血液のサンプルからの感染疾患特異的cDNAを発現するアルファウイルス・レプリコン・ベクターの作成
該実施例は、遺伝子又は関心の遺伝子が周知の配列ではない場合におけるウイルス/細菌/寄生生物遺伝子レパートリーのクローニングを記載する。ウイルス、細菌、又は寄生生物mRNAは、マイクローブ発現キット(MICROBExpress KIT)(Ambion, Austin, TX)又は当業者に周知の別の方法を使用して、野外標本、又は保存培養品、又は精製調製品から単離される。ファースト・ストランドcDNAは、ランダム・プライマー、又は稀な制限酵素部位を5’末端に有するランダムプライマーを使用し、続いて当業者に周知のストランド方法を使用してDNA・ポリメラーゼI及びRNaseHでセカンド・ストランドcDNAの合成を行った。二重鎖cDNAは、続いて以下のようにアダプター又はリンカー配列のライゲーション後に、VEEベクター中にクローン化される。cDNAが稀な制限酵素部位を含むランダム・プライマーで合成される場合、リンカーは、二重鎖cDNAの5’末端に異なる稀な第二制限酵素切断部位を結合するために使用される。これらの2個の制限エンドヌクレアーゼでのcDNAのプールの切断は、異なる接着末端を有するcDNAの作成をもたらし、当該技術分野に知られる方法を使用してレプリコン・ベクター中にディレクショナル・クローニングをするように機能する。cDNAが更なる固有の制限酵素部位を欠如するランダムプライマーで作成される場合、二重鎖cDNAは、EcoRIメチラーゼを使用してメチル化されて、EcoRI制限酵素で切断される内部の配列を保護する。EcoRIリンカーは、次にT4DNAライゲースを使用して付着され、続いてEcoRI制限エンドヌクレアーゼで切断される。これは、接着末端を有するcDNA断片を作り出し、該断片はレプリコン中にクローン化される。クローニング戦略は、実施例2に記載される戦略に類似しており、3’末端でビオチン標識され、そして5’末端でT7DNA依存性RNAポリメラーゼを含むレプリコン分子のプールを作成するために使用されうる。再び、以前の実施例に記載されるように、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション又はディフェレンシャル・ディスプレイは、腫瘍特異的アプローチに記載される方式と類似の方式で、病原体特異的遺伝子配列を正又は負に選別するためのさらなる次のスクリーニング・ステップとして使用されうる。再び、これは、全てのワクチン接種で行われ、又はワクチン接種の間宿主がモニターされる「リアルタイム」に基いて行われ、そして該ワクチンは、宿主が認識及び応答を示す抗原を含むようにあつらえられる。
【0077】
実施例4 多抗原性ARPパッケージング
各ARPが、一回の電気穿孔実験から異なる抗原(単数又は複数)を発現するARPs集合の作成は、2つの別の方式において行われる。第一方法は、10個の異なるレプリコン・ベクター・コンストラクト由来の0.5μgのDNAを混合することからなり、ここで各々は、1の異種性のコード配列を含む(表1)。DNAは、NotI制限酵素で直線化され、そしてRNAは、レプリコンDNAから、T7RNAポリメラーゼで転写された。複数レプリコンRNA転写反応液を次にRNEasyカラム(Qiagen Inc., Valencia, CA)を使用して精製した。30μgの各々精製されたキャプシド(C)ヘルパー及び糖タンパク質(GP)ヘルパーRNAと混合された30μgの複数-レプリコンRNAを使用して、0.8ml体積キュベットにおいて、1.0×108ベロ細胞中に電気穿孔することにより、ARPは作られた。電気穿孔の後に、細胞を200mlのオプティプロ(OptiPro)培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に懸濁し、そして4,175cm2培養フラスコ中に蒔いた。電気穿孔の約26時間後、各フラスコの培地は捨てられて、そして5mlの塩洗浄液(20mM・リン酸緩衝液(pH7.3)中の1M・NaCl)に置き換えられた。フラスコを室温で10分間インキュベーションし、該塩洗浄液を回収し、そして0.2ミクロン・シリンジ・フィルターを通してろ過した。抗原特異的抗体を使用して標準的な免疫蛍光方法により、個々のARPのタイターをベロ細胞中で測定した。一回の電気穿孔から得られたプールにおける各ARPのタイターを表1に示す。ARP調製品のタイターは、4.1×109感染ユニット/mlであり、1回のキュベット電気穿孔から得られる総ARP8.2×1010i.u.をもたらした。代表的な10抗原の全ては、ARP集合中に存在した。この実施例は、複数の異なる抗原のみが1のARP調製品から発現されるばかりでなく、抗原型の範囲が、広く変化されるということを示す。この調製品では、抗原は、ウイルス感染疾患起源(HIV)由来であり、寄生生物起源(マラリア)由来であり、又は癌起源(rat/Neu及び癌抗原A)並びに酵素(CAT、ルシフェラーゼ、及びβgal)由来である。
【0078】
第二方法は、プールとしてよりはむしろ独立して各レプリコン・ベクターのRNA転写産物を作り出すことからなった。この実験において使用された7個のレプリコン・ベクターは、表2に記載される。10μgづつの精製されたレプリコンRNAは、30μgづつの精製されたC-ヘルパー及びGP-ヘルパーRNAsと混合されて、全体として130μgになった。RNA混合液を次に1.0×108ベロ細胞中に電気穿孔した。電気穿孔された細胞は、200mlのオプティプロ培地中に懸濁し、そして2300cm2培養フラスコ中に蒔いた。電気穿孔後約24時間後、各フラスコからの培地を回収し、そして10mlの塩洗浄液で置き換えた(20mMリン酸緩衝液、pH7.3中に、1M・NaCl)。フラスコを、室温で5分間インキュベーションし、そして塩洗浄液を回収した。培地及び塩洗浄液物質の両方を0.2ミクロン・シリンジ・フィルターを通してろ過した。培地及び塩洗浄液中の個々のARPをIFAに対する抗原特異的抗体を使用して、ベロ細胞中でタイターを計測した。培地又は塩洗浄液中で見られた各ARPのタイターを、表2に示す。培地中で回復されたARPのタイターは、5.3×107i.u./mlであり、作成された総ARP、1.1×1010i.u.をもたらした(5.3×107i.u./ml×200ml=1.1×1010i.u.)。塩洗浄液中で回収されたARPのタイターは、4.05×109i.u./mlであり、1キュベット電気穿孔あたり総ARP8.1×1010i.u.をもたらした。塩洗浄液及び培地中の物質を、混合して、全体で9.2×1010i.u.のARPを得た。代表的な7個の抗原すべてが、ARP集合中に存在した。プールされたARPは、次にハイトラップ・ヘパリンHP(HiTrap Heparin HP)5mlカラム(Amersham Bioscience,Upsala Sweden)上で、動物ワクチン研究において使用するために精製された。
【0079】
ARP調製品は、標準安全性試験により評価されて、複製能力のあるウイルス(RCV)が存在しないことを確かめた。簡潔に説明すると、1×108i. u.の各調製品を、1未満のm.o.iで一時間、ベロ細胞単層上で感染させた。1時間の感染期間の後、成長培地を細胞単層に適用し、24時間培養した。24時間後、上清全部を、収集し、澄まし、そして新たなベロ細胞単層にさらに48時間適用した。複製能力のあるウイルス粒子の汚染の存在を指し示す細胞単層の細胞変性作用(CPE)のいずれかの存在についてモニターした。全ての場合、RCVは、いずれの多抗原性ARPワクチン調製品において検出されない。
【0080】
実施例5 多抗原性ウイルス粒子での動物試験
5〜6週齢の雌BALB/cマウスを、Charles River Laboratoriesから購入し、そして全ての方法の前に一週間順応させた。マウスを水(逆浸透水、1ppmCl)及び放射線を照射された標準げっ歯類飼料(NIH31改変及び照射)であって、18%タンパク質、5%脂質、及び5%繊維からなる飼料を自由に与えた。マウスを静置マイクロ隔離飼育器中で、21〜22℃(70-72°F)及び40%〜60%湿度で、12時間の光サイクルで飼育した。全ての動物試験を、拘束、畜産、外科手法に関して実験動物の世話と使用についてのガイドラインの勧告に応じて行った。動物の世話と使用プログラムは、AAALAC公認のものである。
【0081】
初回及び追加注射のために、マウスの群は、イソフロラン麻酔の元で、後足蹠に希釈剤(PBS・1%v/vヒト血清アルブミン及び5%w/vスクロース)中の多抗原性ARPを接種した。足蹠皮下(s.c.)注射を30.5Gの針及び0.10mlのハミルトン・シリンジで、各足蹠で20μlを注射することにより行った。同じシリンジ/針により、0.1mlの体積で、腹腔内(i.p.)接種を行った。動物を1、23、及び44日に接種した。血清サンプルを、イソフロラン麻酔下で眼窩後ブロック採血により、最初の接種の7日前、及び0日、30日目及び35日目(初回接種の後)、及び51日目及び56日目(追加免疫の7日及び12日後)において得た。追加免疫後7日目で、IFN-γElispotアッセイ用に脾臓を収集した。
【0082】
ARP感染ベロ細胞の免疫蛍光アッセイ(IFA)を使用して、ワクチン調製品各々の力価又は感染タイターを計測した。全てのARPワクチンは、接種の前にタイターを調べた。各々の注射の日に、残りの接種液を逆タイター測定をした。タイターを維持するために、ARPワクチン接種液は、次のワクチン接種までの間4℃で維持した。試験群は、次のワクチン調製品:1×108又は1×106i.u.の投与量でそれぞれ投与された高投与量及び低投与量多抗原性ARP調製品を含んだ。単一抗原を発現する単一のARP調製品と比較した免疫応答をモニターするコントロールとして、HIVGagのみを発現するARPは、多抗原性ミックスにおけるHIV-Gag・ARPの数と等しい投与量で投与された。ネガティブ・コントロールの動物は、希釈剤のみで偽免疫化された。
【0083】
実施例6 多抗原性ARP投与後の液性及び細胞性免疫応答の計測
ELISAによりHIVGag特異的抗体を検出した。HIV-1サブタイプCアイソレートDU422由来の精製された組み換えヒスチジン標識された(his)-p55を抗原外皮として使用した。簡潔に説明すると、BHK細胞をhis-p55を発現するVEEレプリコンRNAで形質転換し、そしてトライトン-X100ライセートを調製した。タンパク質を金属イオンアフィニティ・クロマトグラフィーにより、供給もとの推薦に従って精製した。
【0084】
標準間接ELISAにより、51日目(追加免疫後7日目)の血清をGap特異的抗体の存在について評価した。Gap特異的総IgGの検出のために、IgM、IgG、及びIgAを検出する二次ポリクローナル抗体を終点タイター測定に使用した。簡潔に書くと、96ウェルMaxisorpElisaプレート(極性分子、つまり抗体への親和性を高めるために表面を改変されたポリスチレン・マルチウェル・プレート;Nunc, Naperville, IL)を1ウェルあたり40〜80ng・his-p55を含むpH9.6の0.05M炭酸ナトリウム緩衝液50μlで被膜した。プレートを接着性プラスチックでカバーし、そして4℃で一晩インキュベーションした。次の日、未結合の抗原を捨て、そしてプレートを室温で200μlのブロッキング緩衝液(3%w/vBSAを含むPBS)で1時間インキュベーションした。ウェルをPBSで6回洗浄し、そして50μl/ウェルの試験血清、連続的に緩衝液(0.1%w/vBSA及び0.05%v/vトウィーン20を伴うPBS)で2倍に希釈されたものを抗原コートされたウェルへと加えた。マウス抗p24モノクローナル抗体(Zeptometrix, Buffalo, NY)は、ポジティブ・コントロールとして全てのアッセイ中に含まれた。各アッセイにおけるネガティブ・コントロールは、ブランク(血清以外の全ての試薬及び処置を含むウェル)及び出血前血清を含む。プレートを室温で1時間インキュベーションし、そして次にPBSで6回洗浄した。規定の濃度に希釈緩衝液で希釈された50μl/ウェルのアルカリホスファターゼ(AP)-共役ヤギ抗マウス-ポリ-アイソタイプ二次抗体(Sigma)を、各ウェルへと加え、そして1時間室温でインキュベーションした。ウェルを6回PBSで洗浄し、次に100μlのpニトロフェニル・ホスフェート(pNPP)基質(Sigma)を加えた。血清抗体ELISAタイターを、バックグランド(ブランク・ウェル)より0.2以上の405nmでの吸光度を与える最大血清希釈度の逆数として定義した。ポジティブ抗体(免疫)反応を、多抗原性ARP調製品でワクチン接種されたマウス及びARP・HIV-Gagを受けたマウスにおいて検出した。
【0085】
Gag及びPol抗原特異的インターフェロン-γ(IFN-γ)分泌細胞は、IFN-γELISPOTアッセイにより検出される。ARP免疫化されたBALB/cマウス由来の脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液は、R10培地(100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.1mM・MEM非必須アミノ酸溶液、0.01M・HEPES、2mMグルタミン及び10%熱不活化ウシ胎児血清を含むRPMI培地1640)中で脾臓被膜を物理的に破壊することにより調製される。リンパ球は、リンフォライトM(Lympholyte M)密度勾配遠心(Accurate Scientific, Westbury, NY)により単離し、2回洗浄し、そして新たなR10培地中に再懸濁した。未分離の脾臓リンパ球集合全体を試験した。
【0086】
マウスIFN-γELISPOTキット(Monoclonal Antibody Technology, Nacka, Sweden)を使用して該アッセイを行った。生細胞を、抗IFN-γモノクローナル抗体で前もってコートされたマルチスクリーン・イモビロン-P ELISPOTプレート(高タンパク質結合PVDF膜を備えるELISPOT認定96ウェルろ過プレート;Millipore, Bilerica, MA)中の個々のELISPOTウェル中に蒔き、16〜20時間インキュベーションした。細胞を、緩衝液で複数回洗浄することにより取り除き、そしてウェルをビオチン化抗IFN-γモノクローナル抗体でインキュベーションし、続いて洗浄しそしてアビジン-ペルオキシダーゼ複合体(Vectastain ABC Peroxidase Kit, Vector Laboratories, Burlingame, CA)とインキュベーションした。インキュベーションに続いて、ウェルを洗浄し、そして室温で4分間基質 (Avidin-Peroxidase Complex tablets, Sigma, St. Louis, MO) とインキュベーションして、スポットを形成させた。該スポットは、培養の間IFN-γを分泌する個々の細胞の位置を表す。Zeiss KS ELISPOTシステムで自動化分析により、プレートを調べ列挙した。
【0087】
HIV・GAG・ARP及びgagを発現する多抗原性HIV・ARPコンストラクトで免疫化されたマウスからのリンパ球においてGag特異的IFN-γ分泌細胞を数え上げるため、リンパ球は、免疫優勢CD8・H-2Kd-制限酵素処理HIV-Gagペプチド、又は無関係のNefペプチド・プール(Nefペプチドは、クレードC・HIV・DU151株から作られた 11により重なり合う10 15merを含む)で(5%CO2、37℃で)16〜20時間刺激された。Gagペプチドを、10μg/mlで試験し、そしてNefコントロールを20μg/mlで試験した。細胞からペプチドを引いたものは、バックグラウンド・コントロールとして役に立つ。ポジティブ・コントロールとして、細胞を同じくらいの時間4μg/mlのコンカナバリンAで刺激した。ペプチドを合成し、そして>90%に精製した(New England Peptide, Gardner, MA).
【0088】
Polを発現する多抗原性ARPコンストラクトで免疫化されたマウス由来のリンパ球において、Pol特異的IFN-γ分泌細胞を数え上げるため、上記プロトコルを以下の改変を伴って使用された。CD8及びCD4T細胞に対するHIV-1・Polエピトープは、最近H-2dバックグラウンド(Casimiro et al., J. Virology 76: 185, 2002)において最近同定された。細胞集合は、3Polエピトープを含むペプチド・プール並びにネガティブ・コントロールとして無関係の抗原ペプチド・プール(nefプール)で刺激された。以下の3個のペプチドは、周知のマウスPolCTLエピトープを同定するために、文献検索後に選ばれた。
VYYDPSKDLIA(配列番号:1)(Casimiro et al, J. Virol. 76: 185,2002) ELRQHLLRWGL(配列番号:2)(Casimiro et al, J. Virol. 76: 185,2002) ELREHLLKWGF(配列番号:3)(配列番号2のホモログ、我々の配列と同一)
これらの三つのぺプチドを各10μg/mlの濃度で混合し(総ペプチド濃度は、30μg/mlである)、そして三通りのウェルへ加えた。提示されたELISPOTアッセイの結果を第二追加免疫後26日で行った。
【0089】
Rat/neu特異的抗体の検出をELISAにより行った。ELISA試薬として使用されるRat/neu抗原を以下のように調製した:PCRにより、pRAT/neu#14におけるRat/neuコード配列のC末端にヒスチジン・タグを付けた。このPCR増幅産物を切断し、そしてVEEレプリコン・プラスミド、pERK中にライゲーションした。pERK・Rat/neu-hisコンストラクトから作られたRNAでBHK細胞を電気穿孔した。電気穿孔後16時間で、細胞溶解液を調製し、そしてニッケル・アフィニティカラム上で精製し、hisタグが付いたRat・neu抗原の60〜70%の純度を達成した。
【0090】
51日目(追加免疫後7日目)から得た血清を、間接ELISAによりRat/neu特異的抗体の存在について評価した。Nunc高結合性プレートを、炭酸―重炭酸被膜緩衝液中の75ng/ウェルのhisタグRat・neuで一晩4℃でコートした。次の日、プレートを、200μl/ウェルのPBS中の3%BSAでブロッキングした。PBSで6回洗浄後、50μlのマウス血清サンプルを、1%BSA、0.05%トゥィーン20を含むPBSで希釈し、そして各ウェルに加え、そしてプレートを1時間30℃でインキュベーションした。1:40及び1:80の出血前、並びに51日目の血清の1:40〜1:1280の2倍希釈液を、各実験動物について試験した。プレートを次に6回PBSで洗浄し、続いて50μl/ウェルのヤギ抗マウスHRPの1:500希釈液を加え、そして1時間30℃でインキュベーションした。プレートを以前のように洗浄し、そして100μl/ウェルのABTS(KPL)で現像し、そして標準ELISAリーダーを使用して、吸光度を405nmで読み取った。ポジティブ・サンプルを決定するためのカットオフ値は、1:40で希釈された出血前血清サンプルの全てのOD(吸光度)値を平均し、そして該数値を二倍することにより決定された。カットオフ値より大きいODを有するサンプルの全てを、陽性とみなした。
【0091】
抗CAT特異的抗体の検出は、ELISAによって行った。抗CAT抗体ELISAは、多抗原性ARPワクチン接種マウスにおける抗CAT免疫応答を検出するために現像された。ヒツジ抗CATポリクローナル抗体(Roche, Indianapolis, IN)でコートされたELISAマイクロプレートに、ウェルあたり50μLの体積のCAT・ELISAサンプル緩衝液(Roche)中に懸濁された精製CATタンパク質0.15ngをロードした。ELISAプレートを、37℃で45分間インキュベーションし、そして0.2mlCAT・ELISA洗浄緩衝液(Roche)で3回洗浄した。50μlのマウス血清、サンプル緩衝液で2倍連続希釈された液を、ウェルあたりにロードし、そしてプレートを37℃で45分間インキュベーションした。インキュベーションの後に、ELISAプレートを上記のように3回洗浄した。サンプル緩衝液中に1:500で希釈されたヤギ抗-マウスHRP-共役二次抗体(Kirkegaard and Perry Laboratories (KPL), Gaithersburg, MD) を各ウェルに加え(0.1ml/ウェル)、そして37℃で45分間インキュベーションした。インキュベーションの後に、プレートを上記のように3回洗浄し、そして0.1mlのABTSペルオキシダーゼ基質(2,2’-アジノ-ビス3-エチルベンズチアゾリン-b-スルホン酸;KPL)をウェル毎に加えた。発色現像を0.1mlのストップ溶液(KPL)の添加により終結し、そしてMolecular Devices Versamaxマイクロプレートリーダーを使用して、プレートの吸光度を405nmで読み込んだ。陽性サンプルを決定するためのカット・オフ値は、1:40希釈された全ての出血前血清サンプルのOD値を平均し、そして該数値に2をかけることにより決定した。カットオフ値より大きいODを有する全てのサンプルを、陽性であるとみなした。
【0092】
CMVgB特異的抗体の検出をウェスタンブロットによって行った。多抗原性ARPでワクチン接種された動物における抗-gB免疫応答の分析は、ウエスタンブロットによって行った。精製された組換えヒスチジン・タグ付きgBタンパク質を、4〜10%ビスートリスNuPAGEゲル(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド・ゲル;Invitrogen, Carlsbad, CA)を介して電気泳動し、そしてNovex mini-cell(Invitrogen)電気泳動装置を使用してPVDF膜に転写した。出血前及びワクチン接種後51日目の血清を、各動物についてブロッキング緩衝液(Invitrogen)中に1;40又は1:80に希釈し、そしてgBタンパク質転写後のPVDF膜片上でインキュベーションした。ブロッキング緩衝液中に1:10,000で希釈されたヤギ抗-マウス・アルカリ・ホスファターゼ共役抗体(Sigma. Louis, MO)を、2次抗体として使用した。ウエスタン・ブロットをBCIP/NBT(5-ブロモ,4-クロロ,3-インドリルホスフェート/ニトロブルー・テトラゾリウム;BioRad, Hercules, CA)を使用して現像し、そして着色は、蒸留水で洗浄することにより停止された。陽性サンプルは、免疫ブロット上のgBの予期された分子量に適合する電気泳動移動度を有する免疫反応性のバンドを視覚的に検出することにより同定された。
【0093】
インフルエンザHA特異的抗体の検出は、免疫蛍光アッセイ(IFA)により行われた。多抗原性ARPワクチン接種された動物における抗-HA免疫応答の分析は、IFAにより測定された。ベロ細胞をH1N1インフルエンザHA遺伝子を発現させるVEEレプリコン・ベクターで電気穿孔し、そして1ウェルあたり1×104個の電気穿孔された細胞を96ウェル組織培養プレート中に蒔いた。電気穿孔されたベロ細胞を、メタノールで電気穿孔後16時間で固定化した。出血前及びワクチン接種後56日目の血清を、各動物についてブロッキング緩衝液(PBS:FBS(1:1))中に1:40〜1:160に2倍に希釈し、そしてHAタンパク質を発現するベロ細胞上でインキュベーションした。1:400希釈されたヤギ抗マウス・アレクサ・フルオール488共役抗体(Molecular Probes, Eugene, OR) を二次抗体として使用した。細胞をNikon Eclipse TE300 UV顕微鏡で、HA特異的蛍光について分析した。検出できる最も低い血清希釈値で、免疫蛍光細胞を視覚的に検出することによりタイターを測定した。
【0094】
抗-CMV・IE1特異的抗体の検出をELISAにより行った。CMV由来の精製された組換えヒスチジン-タグ付き(his)-IE1を、抗原コートとして使用した。簡潔に記載すると、BHK細胞をhis-IE1を発現するVEEレプリコンRNAで形質転換し、そしてトライトンX100ライセートを調製した。タンパク質をイオン金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0095】
51日目(追加免疫後7日目)の血清を、標準間接ELISAによりCMV-IE1-特異的抗体の存在について評価した。CMV-IE1-特異的総Igの検出のため、IgM、IgG、及びIgAを検出する2次ポリクローナル抗体を、終点タイター測定に使用した。簡潔に記載すると、96ウェルMaxisorp ELISAプレート(Nunc, Naperville, IL)を、各ウェルあたり、50μLの体積のクエン酸/リン酸pH8.3中の2μgのIE1でコートした。プレートを、粘着性のプラスチックでカバーし、そして一晩4℃でインキュベーションした。次の日、未結合の抗原を捨て、そしてプレートを200μlのブロッキング緩衝液(3%w/vBSAを含むPBS)1時間室温でインキュベーションした。ウェルをPBSで6回洗浄し、緩衝液(1%w/vBSA及び0.05%v/vトウィーン20を伴うPBS)で連続的に2倍に希釈された50μlの血清を抗原コートウェルに加えた。α-IE1モノクローナル抗体(Rumbaugh- Goodwin Institute for Cancer Research, Inc, Plantation, Florida)は、全てのアッセイにおいてポジティブ・コントロールとして含まれた。各アッセイにおけるネガティブ・コントロールは、ブランク(血清を除く全ての試薬及び処置を伴うウェル)並びに出血前血清を含んだ。プレートを室温で1時間インキュベーションし、そして次にPBSで6回洗浄した。希釈緩衝液中に規定の濃度まで希釈される50μl/ウェルのアルカリホスファターゼ(AP)共役ヤギ抗マウス・ポリ・アイソタイプ二次抗体(Sigma)を各ウェルへと加え、そして1時間室温でインキュベーションした。100μlのp-ニトロフェニル・ホスフェート(pNPP)基質(Sigma)の添加前に、ウェルをPBSで6回洗浄した。血清抗体ELISAタイターを、バックグランド(ブランク・ウェル)の0.2以上の405nmでの光学密度を与える最大血清希釈度の逆数として定義した。
【0096】
多抗原性ARPに対する免疫応答の要約
図1及び表3に示されるように、多抗原性ARPでワクチン接種された動物は、ARP集合中に存在する7個の抗原全てに対して免疫応答を作り出した。これらの免疫応答は、液性及び細胞性応答の両方を含み、このタイプのアプローチが、免疫系の両部門を刺激できるということを指し示す。特異的抗原に対する免疫応答の強さは、多抗原性ARPの文脈で計測され、そして単一抗原ARP調製品と比較される。抗-Gag抗体及び細胞性免疫応答は、HIV-GagARPが単独であるか又は多抗原性製剤中であるかに関わらず同等であり、複数の異なる抗原を添加することは、調製品の各個々の構成要素に対する免疫応答を低減しないようであるということを指し示す。この多抗原性調製品は、感染性疾患病原体(HIV及びCMV)、癌抗原(Rat/neu)及び細菌酵素(CAT)から意図的に構成され、宿主システムが、一のARP調製品内の広範な抗原類型に応答するように多抗原性ARPで刺激されるということを示す。
【0097】
実施例7. 腫瘍cDNAライブラリーを発現する多抗原性ARPsでの動物試験
cDNAライブラリーを、C576BL/6マウス由来のB16F10(B16) [Gold et al., (2003) J. Immunol. 170: 5188-5194)色素性マウス・メラノーマ細胞系列から作成する。標的細胞が感染する際、異種性cDNAがレプリコンから発現されるように、このライブラリーをアルファウイルス・レプリコンcDNAコンストラクト中にディレクショナル・クローニングする。ARPは、上記のように作成及び精製されて、B16腫瘍細胞からのcDNAライブラリー全体を発現するARP粒子の集合を作り出す。代表的な遺伝子、例えば、βアクチンなどの発現は、定量的PCRにより分析されて、該ライブラリーが既知の標準遺伝子を発現するかを決定される。遺伝子的に適合された非腫瘍原性の細胞系列に対するサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション又はディファレンシャル・ディスプレイは、ライブラリーにおける腫瘍特異的配列の割合を高めるために使用されうる。
【0098】
C57BL/6マウスは、B16ライブラリーARP調製品で、0、21、及び42日目で1、2、又は3回ワクチン接種される。ARPにおける105〜109i.u.の投与量は、マウスの両方の後足蹠に与えられる皮下(sc.)経路を介して投与される。コントロール群のマウスは、偽ワクチン接種を受けるか、又は無関係の抗原を発現するARPを受ける。1の既知のメラノーマ特異的腫瘍抗原、例えばTYR、TRP-2、gp100、MAGE-1、又はMAGE-3、或いは該抗原の組合せを発現するARPを、多抗原性アプローチの比較対象として受ける動物の更なるセットが含まれうる。
【0099】
マウスは、最終ARP免疫化後5日目において104、105、又は106のB16メラノーマ細胞を右側に皮内注射される。マウスは、次に一日おきに触診により腫瘍形成について調べられる。腫瘍が2mm以上に達すると、腫瘍が存在すると記録される。腫瘍が進行している(通常1cmのサイズになる)と確信されると、マウスは屠殺される。カプラン-マイヤーの腫瘍なし生存曲線が作られ、そして各群のあいだにおける腫瘍接種からの防御の統計的有意差を測定するために、ログ・ランク(log rank)分析を行った。
【0100】
腫瘍接種の前に、免疫アッセイ用にマウスから血清及びリンパ球を収集する。ARP・B16ライブラリー中に存在することが予期される既知の腫瘍抗原に対する液性又は細胞性応答の存在は、標準方法及び当該技術分野に周知の技術を使用して、アッセイされる。
【0101】
イヌ悪性メラノーマ(CMM)は、イヌに生じる自然発症し、侵攻性でありかつ転移性の新生物である。CMMは、比較的頻繁に診断される腫瘍であり、全てのイヌ腫瘍の約4%を占める。CMMは、先ず外科及び/又は分割放射線照射治療を含む局所的治療で処置されるが;しかしながら、全身転移性の疾患が通常発症する。CMMは、化学抵抗性の新生物である。全てのこれらの性質は、ヒトメラノーマと共通であり、そしてこれらの類似性に基いて、CMMは、ヒトメラノーマについての新たな治療を評価するための臨床モデルとして役に立つ [Bergman et al. (2003) Clin. Cancer Res. 9: 1284-1290)]。
【0102】
イヌは、組織学的に確認された自然発症悪性メラノーマがあるものについて選別される。前臨床評価は、完全な身体的評価、完全な血球数及び血小板数、血清化学プロフィール、検尿、LDH、抗核抗体、及び存在するならば初期腫瘍の3次元計測(又は再診察の前に患畜が治療されているならば、医療記録からの最大腫瘍サイズ)を含む。転移性疾患の評価については、胸部の3-方向レントゲン写真が得られ、そして局所リンパ節は、微細針吸引/細胞学及び/又は生検/組織学で評価される。全てのイヌは、ステージII腫瘍(腫瘍2〜4cm直径、陰性の皮膚の腫れ(node))、ステージIII(4cm超の腫瘍及び/又は陽性の皮膚の腫れ)、又はステージIV(遠隔転移を認める疾患)といったWHOステージ決定システムに従ってステージを決められた。これらの3種の疾患ステージの全てを患うイヌは、本試験に含められる。但し、これらのイヌは、過去3週において他の治療形態を受けていなかった。
【0103】
微細針吸引又は生検は、各動物において悪性のメラノーマを細胞学又は組織学によりそれぞれ確認するために使用される。 原発腫瘤又は転移性腫瘤から得られたこれらのサンプルは、腫瘍cDNAライブラリーの源として使用される。各動物について、腫瘍RNAは、腫瘍細胞集合から単離される。cDNAライブラリーを各サンプルから調製する。多抗原性調製品を、本明細書中に記載されるように各動物について作成する。
【0104】
イヌの集団は、投与量範囲でイヌ患畜特異的ARP調製品を複数回ワクチン接種される。イヌは、1〜3ヶ月の期間に渡り3〜12回ワクチン接種される。皮下、皮内、又は筋肉内経路を介して投与されるARPsの投与量は、106〜109i.u.の範囲である。患畜特異的(自己)ARPワクチンを投与することに加え、いくつかの集団は、別のメラノーマ由来のワクチン調製品が、臨床利得を提供するかどうかを決定するために、別の患畜由来の(他者)ARP調製品を受ける。
【0105】
各患畜の臨床状態は、ワクチン接種投与計画期間をとおしてモニターされ、そして治療後2年までモニターされる。患畜は、肉体的に、X線的に、及び生化学的に、腫瘍の存在及び進行又は退行の臨床証拠について通常の基準に基いて試験された。疾患の進行のため、クオリティーオブライフの低下により飼い主により安楽死が要求される場合、全身の検死が行なわれた後に、原発及び転移部位での腫瘍の大きさ及び組織学的状態を決定するために検死が行なわれる。多抗原性ARPワクチン接種の生存及び疾患進行に関する効果を測定するために、統計分析が行われる。統計分析のツールは、カプラン-マイヤー・プロダクト・リミット法(product limit method)、Cox比例ハザード分析、マン-ホイットニーU検定、及びスピアマン順位相関を含む。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
本明細書中に引用される参考文献
【表4】

【表5】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、多抗原性ARPでワクチン接種された動物における抗原特異的免疫応答を記述する棒グラフである。抗原特異的免疫応答(液性免疫の形態)は、ELISAにより計測され、そして逆数相乗平均タイターとして表されるか、或いはウエスタンブロット又はIFAにより計測され、抗原特異的シグナルが検出できる最低希釈度として表される。細胞性免疫の形態の抗原特異的免疫応答は、IFN-γ分泌細胞のELISPT検出により計測され、106リンパ球あたりの抗原特異的IFN-γ分泌リンパ球として表される。皮下(s.c.)又は腹腔内(i.p.)経路の接種により多抗原性ARP調製品を受ける動物は、調製品中の全ての抗原に対し免疫応答を高めた。ポジティブ・コントロールとして、1の群は、HIV-Gag・ARPを受け、そしてGagにのみ特異的な免疫応答を高めた。ネガティブ・コントロール動物は、いずれの抗原に応答する検出できる応答を有さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の抗原をコードしかつ発現するアルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)の製造方法であって、以下のステップ:
(a) 複数のアルファウイルス・レプリコン核酸を複数の細胞へ導入し、ここで該細胞は、アルファウイルス複製及びパッケージングに許容状態であり、ここで該レプリコン核酸が、少なくともウイルス・パッケージング・シグナル及び上記アルファウイルス・レプリコン核酸中で発現できる少なくとも1の異種コード配列を含み、ここで該細胞が改変細胞を生成するために少なくとも1のヘルパー機能を含み、そしてここで該複数のアルファウイルス・レプリコン核酸が複数の改変細胞を生成するために、複数の抗原をコードし;
(b) ステップ(a)の上記複数の改変細胞を、上記少なくとも1のヘルパー機能の発現を許容し、上記アルファウイルス・レプリコン核酸の複製及び該アルファウイルス・レプリコン核酸のパッケージングを許容する条件下で培養して、ARPsを形成し;
(c) ステップ(b)の後に上記改変細胞を0.2M〜5Mのイオン強度を有する水溶液と接触して、上記ARPsを水溶液中に放出させてARPを含む溶液を生成し;そして
(d) ステップ(c)の上記ARPを含む溶液からARPsを収集する
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(a)の前記宿主細胞における前記少なくとも1のヘルパー機能は、該宿主細胞のゲノム中に安定して組み込まれる核酸配列によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞における前記少なくとも1のヘルパー機能は、前記アルファウイルス・レプリコン核酸を結合できるキャプシド・タンパク質、及び少なくとも1のアルファウイルス糖タンパク質をコードする少なくとも1のヘルパー核酸に基いて導入され、ここで該アルファウイルス糖タンパク質は、該アルファウイルス・レプリコン核酸及び該キャプシドタンパク質と会合し、ここで該少なくとも1のヘルパー核酸分子が、該アルファウイルス・レプリコン核酸と共に該細胞内に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1のヘルパー機能が、少なくとも2個のヘルパー核酸分子によりコードされ、ここで該2個のヘルパー核酸分子の各々が、少なくとも1のアルファウイルス・ヘルパー機能をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1のヘルパー核酸分子及び前記アルファウイルス・レプリコンRNAがRNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1のヘルパー核酸分子が、キャップされていない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1のヘルパー核酸分子が、DNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レプリコン核酸が、電気穿孔により前記宿主細胞内に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電気穿孔環境において前記細胞密度が、1mlあたり107〜5×108である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電気穿孔が、電気穿孔キュベット内で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)の後にイオン交換クロマトグラフィー・ステップ又はヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィー・ステップを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルファウイルスが、弱毒化アルファウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記弱毒化アルファウイルスが、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記弱毒化VEEが、3014株である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄ステップが、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NH4Cl、(NH4)2SO4、酢酸アンモニウム、又は重炭酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法により製造されるアルファウイルス・レプリコン粒子調製品。
【請求項17】
前記複数のコードされた抗原が腫瘍細胞由来である、請求項16に記載のアルファウイルス・レプリコン粒子調製品。
【請求項18】
前記複数のコードされた抗原が、寄生生物若しくは病原体由来である、請求項16に記載のアルファウイルス・レプリコン粒子調製品。
【請求項19】
前記複数のコードされた抗原が、ウイルス、真菌、酵母、細菌、及び原生動物からなる群から選ばれる病原体由来である、請求項18に記載のアルファウイルス・レプリコン粒子調製品。
【請求項20】
ヒト又は動物を寄生生物、病原体、又は癌に対して免疫化する方法であって、該寄生生物、病原体、又は癌の少なくとも1の抗原に免疫応答を作るために有効な、請求項15に記載のウイルス・レプリコン粒子調製品の量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項21】
前記病原体が、ウイルス、細菌、酵母、真菌、又は原生動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスが、インフルエンザ・ウイルス、ヘルペス・ウイルス、パラインフルエンザ・ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト・パピローマウイルス、又はヒト免疫不全ウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記原生動物が、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌が、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、膵臓癌、腎臓癌、肉腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、大腸癌、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、及び前立腺癌からなる群から選ばれる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
複数の抗原をコードしかつ発現するアルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)の製造方法であって、以下のステップ:
(a) 複数のアルファウイルス・レプリコン核酸を複数の細胞へ導入し、ここで該細胞は、アルファウイルス複製及びパッケージングに許容状態であり、ここで該レプリコン核酸が、少なくともウイルス・パッケージング・シグナル及び上記アルファウイルス・レプリコン核酸中で発現できる少なくとも1の異種コード配列を含み、ここで該細胞が改変細胞を生成するために少なくとも1のヘルパー機能を含み、そしてここで該複数のアルファウイルス・レプリコン核酸が複数の改変細胞を生成するために、複数の抗原をコードし、ここで核酸を導入するステップが、該細胞を電気穿孔混合液1mlあたり5×107〜5×108の密度で電気穿孔することにより行われ;
(b) ステップ(a)の上記複数の改変細胞を、上記少なくとも1のヘルパー機能の発現を許容し、上記アルファウイルス・レプリコン核酸の複製及び該アルファウイルス・レプリコン核酸のパッケージングを許容する条件下で培養して、ARPsを形成し;
(c) ステップ(b)の後に上記改変細胞を0.2M〜5Mのイオン強度を有する水溶液と接触して、上記ARPsを水溶液中に放出させてARPを含む溶液を生成し;そして
(d) ステップ(c)の上記ARPを含む溶液からARPsを収集する
を含む、前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−509523(P2006−509523A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560854(P2004−560854)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/039723
【国際公開番号】WO2004/055166
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505222750)アルファバックス,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】