説明

多方向入力装置

【課題】 操作体の操作量が短くなっても移動末端位置で確実に位置規制可能な多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】 互いに略直交する第1の方向および第2の方向へ揺動操作可能な操作体2と、この操作体2に設けられた係合突部11を挿通させる開口18が穿設されたガイド部材16と、操作体2の第1および第2の方向への移動を検出する検出手段である4個のフォトインタラプタ22とを備え、係合突部11がそれぞれ中央に凸部(被ガイド部)11bを挟んで第1および第2の方向へ延びる4つの外壁部を有すると共に、開口18がそれぞれ中央に切欠き部(ガイド部)18aを挟んで第1および第2の方向へ延びる4つの内壁面を有し、一組の凸部11bと切欠き部18aとの凹凸係合によって係合突部11を第1および第2の方向へ案内するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体を互いに略直交する2方向へ選択的に移動することによって所定の入力が可能な多方向入力装置に係り、特に、操作体の移動を案内するガイド機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作体をガイド機構によって互いに直交する2方向へ移動可能に案内し、この操作体の移動を複数のプッシュスイッチやフォトインタラプタ等の検出素子を用いて検出するようにした多方向入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13はかかる従来の多方向入力装置に備えられるガイド機構を模式的に示す平面図であり、同図(a)は操作体の非操作状態を示し、同図(b)は操作体の操作状態を示している。
【0004】
図13に示す従来のガイド機構は、開口100を有するガイド部材101と、開口100に挿通された係合突部102とを備えており、係合突部102は図示省略した操作体の下面に垂設されている。開口100の中心を原点とするX−Y直交座標を設定したとき、開口100の内壁面にはX1−X2方向(第1の方向)へ延びる切欠き部100a,100bとY1−Y2方向(第2の方向)へ延びる切欠き部100c,100dとが形成されている。係合突部102は図示せぬ弾性復帰手段によって開口100の中心位置(中立位置)に保持されており、この弾性復帰手段の付勢力に抗して開口100内を移動可能となっている。この係合突部102は平面視四角形の外形形状を有しており、その4つの外壁面は開口100の各切欠き部100a〜100dの入口に対向している。なお、図示省略されているが、係合突部102の周囲には4つの腕部を有する十字形状のスライダが配設されており、このスライダの各腕部の先端にはプッシュスイッチやフォトインタラプタ等の検出素子がそれぞれ対向配置されている。
【0005】
このように概略構成された多方向入力装置において、操作体が操作されずに非操作状態にあるとき、図13(a)に示すように、係合突部102は開口100の中心位置に保持されており、係合突部102の各外壁面は開口100の各切欠き部100a〜100dの入口に対向している。この非操作状態から操作体を任意の方向、例えばY1方向へスライド操作すると、それに伴って係合突部102が開口100内をY1方向へ移動し、図13(b)に示すように、係合突部102の1つの外壁面がY1方向に位置する切欠き部100cの内壁面に当接した位置で、係合突部102のそれ以上のY1方向への移動が規制される。操作体をY2方向やX1−X2方向へスライド操作した場合も同様であり、いずれの場合も係合突部102の1つの外壁面が移動方向に位置する切欠き部100a〜100dの内壁面に当接した位置で、係合突部102のそれ以上の同方向への移動が規制される。
【0006】
そして、このように操作体をX1−X2方向とY1−Y2方向のいずれか一方向へ選択的にスライド操作すると、操作体に伴って移動する係合突部102と共に図示せぬスライダが同方向へ移動するため、4個の検出素子の1つが選択的にオン動作してそのオン信号に基づいて操作体の操作方向を認識することができる。なお、操作体に対する上記スライド操作力を除去すると、係合突部102は図示せぬ弾性復帰手段の付勢力によって中立位置へ自動復帰し、図13(a)に示すように、係合突部102の各外壁面が開口100の各切欠き部100a〜100dの入口に対向した状態となる。
【特許文献1】特開平11−162299号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来の多方向入力装置に備えられるガイド機構では、操作体の係合突部102が挿通する開口100の内壁面に第1および第2の方向へ延びる切欠き部100a〜100dを形成し、中立位置で係合突部102の各外壁面を各切欠き部100a〜100dの入口に対向させる構成としたため、これら切欠き部100a〜100dによって係合突部102を移動方向へガイドして位置決めすることができる。しかしながら、操作体を操作して検出素子がオン動作するまでの操作量を短くしようとすると、それに伴って各切欠き部100a〜100dの深さ寸法を小さくする必要があるため、係合突部102を移動末端位置で確実に位置規制できなくなるという問題があった。
【0008】
すなわち、非操作状態にある操作体を例えばY1方向へスライド操作すると、図13(b)に示すように、係合突部102の1つの外壁面がY1方向に位置する切欠き部100c内に侵入して位置規制されるが、このとき、開口100に対する係合突部102の当接箇所は切欠き部100cとの係合部分だけであり、それ以外の部位は開口100に対してフリー状態となっている。このため、操作体の操作量の短縮化に伴って各切欠き部100a〜100dの深さ寸法が小さくなると、Y1方向での移動末端位置で係合突部102が切欠き部100cから外れやすくなり、操作体をY1方向へ操作したのにも拘わらず係合突部102が誤ってX1−X2方向へ移動してしまうことになる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作体の操作量が短くなっても移動末端位置で確実に位置規制可能な多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の多方向入力装置は、互いに略直交する第1の方向および第2の方向へ移動可能な操作体と、この操作体に設けられた係合突部を挿通させる開口が穿設されたガイド部材と、前記操作体の前記第1および第2の方向への移動を検出する検出手段とを備え、前記係合突部がそれぞれ中央に被ガイド部を挟んで前記第1および第2の方向へ延びる4つの外壁部を有すると共に、前記開口がそれぞれ中央にガイド部を挟んで前記第1および第2の方向へ延びる4つの内壁面を有し、前記被ガイド部と前記ガイド部との凹凸係合によって前記係合突部を前記第1および第2の方向へ案内するように構成した。
【0011】
このように構成された多方向入力装置では、操作体の操作に伴って係合突部が第1の方向へ移動するとき、その移動方向に位置する被ガイド部が開口のガイド部と凹凸係合することにより、係合突部は第1の方向の移動末端位置で位置規制されるが、このとき、第2の方向に位置する他の被ガイド部が開口の内壁面と当接するため、係合突部は移動方向の後端側を除く3つの外壁部が開口に規制されることとなる。これとは逆に係合突部が第2の方向へ移動するとき、その移動方向に位置する被ガイド部が開口のガイド部と凹凸係合することにより、係合突部は第2の方向の移動末端位置で位置規制されるが、このとき、第1の方向に位置する他の被ガイド部が開口の内壁面と当接するため、係合突部は移動方向の後端側を除く3つの外壁部が開口に規制されることとなる。したがって、操作体を第1または第2の方向へ操作して係合突部が末端位置まで移動したとき、操作体や係合突部を移動末端位置に確実に位置規制することができると共に、係合突部を所望の方向へ安定的にガイドすることができる。
【0012】
上記の構成において、被ガイド部と外壁部を含む係合突部の第1および第2の方向に沿う最大寸法が、ガイド部と内壁面を含む開口の第1および第2の方向に沿う最小寸法に対して僅かに小さめに設定されていると、係合突部を開口内の所望方向へより安定的にガイドすることができて好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、被ガイド部とガイド部の凹凸関係は一方が凸部で他方が凹溝であれば良いが、各被ガイド部が係合突部の外壁部から第1および第2の方向へ延びる凸部からなると共に、各ガイド部が開口の内壁面から第1および第2の方向へ延びる凹溝からなり、第1および第2の方向で対向する両凸部間の長さが両内壁面の対向距離よりも僅かに小さめに設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多方向入力装置では、操作体の操作に伴って係合突部が第1または第2の方向へ移動したとき、移動方向に位置する被ガイド部が開口のガイド部と凹凸係合することによって係合突部は移動末端位置に位置規制されるが、このとき、移動方向と直交する方向に位置する他の被ガイド部も開口の内壁面と当接するため、係合突部は移動方向の後端側を除く3つの外壁部が開口に支持されることとなり、操作体や係合突部を移動末端位置で確実に位置規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は実施形態例に係るコントロールユニットの斜視図、図2は該コントロールユニットの平面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は図2のIV−IV線に沿う断面図、図5は該コントロールユニットに備えられる複合操作型入力装置の分解斜視図、図6は該コントロールユニットに備えられる多方向入力装置の分解斜視図、図7は該多方向入力装置の断面図、図8は該多方向入力装置の要部を示す平面図、図9は該多方向入力装置の要部を示す斜視図、図10は該多方向入力装置の要部を示す分解斜視図、図11は該多方向入力装置に備えられるガイド部材と係合突部の配置関係を示す平面図、図12は該係合突部の動作説明図である。
【0016】
本実施形態例に係るコントロールユニットは空調装置や音響装置やナビゲーションシステム等の車載用電気機器を1台で集中的に制御するものであり、このコントロールユニットは、車内のセンターコンソール等に取り付けられる筐体1と、この筐体1から突出する操作体2とを備えている。筐体1は、上下を開口した中空構造のケース3と、ケース3の上部開口端を蓋閉する上カバー4と、ケース3の下部開口端を蓋閉する下カバー5等によって構成されており、これらは全て合成樹脂で成形されている。
【0017】
ケース3の内部に環状のリング体6が配置されており、このリング体6には一対の支軸6aと一対の透孔6bが90度毎に交互に形成されている。両支軸6aはケース3の相対向する上部内壁に形成された軸孔3aに挿入されており、リング体6は両軸孔3aを結ぶ直線を中心軸としてケース3に回転可能に支持されている。リング体6には円筒状のホルダ7が挿入されており、このホルダ7の外周面には一対の段付突部7aが形成されている。また、ホルダ7にはその中心軸と両段付突部7aを横切るように貫通孔7bが形成されており、この貫通孔7bとリング体6の両透孔6bにはピン8が挿通されている。ピン8は係止リング9によってリング体6からの抜け止めがなされており、ホルダ7は両透孔6bを結ぶ直線を中心軸としてリング体6に回転可能に支持されている。すなわち、ホルダ7はリング体6を介してケース3に互いに直交する方向へ揺動可能に支持されており、以下の説明ではリング体6の両支軸6aを支点とするホルダ7の揺動方向(X1−X2方向)を第1の方向と呼び、ピン8を支点とするホルダ7の揺動方向(Y1−Y2方向)を第2の方向と呼ぶこととする。
【0018】
ホルダ7は操作体2の構成部品の一部をなすもので、このホルダ7の上面にはねじ孔7cを挟んで一対の突起7dが立設されており、ホルダ7の下端にはスナップ結合等の固定手段を用いて連結体10が一体化されている。なお、本実施形態例では、ホルダ7の内部に駆動モータ等を収納可能とするために連結体10を用いているが、このような収納空間を必要としない場合はホルダ7と連結体10を一体成形品で構成しても良い。連結体10の下面中央には筒状の係合突部11が突設されており、この係合突部11には上下方向へ延びる収納孔11aが形成されている(図10参照)。係合突部11の外壁部には被ガイド部としての4つの凸部11bが突設されており、これら凸部11bは四角形の各辺中央から第1および第2の方向へ延びている。図7に示すように、係合突部11の収納孔11aの内部にはコイルばね12と駆動棒13が挿入されており、駆動棒13の先端(下端)はコイルばね12の弾発力を受けてカム溝14の内底面に圧接している。このカム溝14は合成樹脂製の支持体15の上面に設けられたすり鉢状凹部であり、その最深部を中心とする同一円周上にクリック突起14aが形成されている。支持体15は下カバー5の内底面中央に形成された凹所5a内に圧入・固定されており、支持体15の上面四隅には突起15aとねじ孔15bが形成されている。
【0019】
支持体15上に合成樹脂製のガイド部材16が載置されており、このガイド部材16の四隅に円形孔16aが形成されている。各円形孔16aのうち2つは支持体15の突起15aに嵌合する位置決め孔として機能し、残り2つの円形孔16aにねじ17を挿入してねじ孔15bに螺入することにより、ガイド部材16は支持体15上に固定されている。ガイド部材16の中央部に開口18が穿設されており、図11に示すように、連結体10の下面から突出する係合突部11がこの開口18の内部に位置すると共に、係合突部11に保持された駆動棒13の先端が開口18の中心位置に露出するカム溝14に圧接されている。開口18の内壁面にはガイド部としての4つの切欠き部18aが形成されており、これら切欠き部18aは四角形の各辺中央から外側へ向かって第1および第2の方向へ延びている。係合突部11の各凸部11bは各切欠き部18aの入口に対向しており、開口18の相対向する内壁面の対向間距離をL1、相対向する両凸部11bの先端間距離をL2とすると、L2はL1よりも僅かに小さな寸法に設定されている。
【0020】
また、ガイド部材16の外縁部には一対の第1ガイド突起16bと一対の第2ガイド突起16cが立設されており、各ガイド突起16b,16cは切欠き部18aの延長線上に位置している。第1および第2ガイド突起16b,16cは二股状に形成されており、第1ガイド突起16bの高さ寸法は第2ガイド突起16cに比べて短めに設定されている。両第1ガイド突起16bには第1スライダ19が第1の方向(X1−X2方向)へスライド可能に支持され、両第2ガイド突起16cには第2スライダ20が第2の方向(Y1−Y2方向)へスライド可能に支持されている。第1スライダ19は、長方形の枠体部19aと、枠体部19aの相対向する長辺中央から外側へ延びる一対の腕部19bと、両腕部19bの先端部にその板面と直交する方向へ突出する遮光部19cとを有し、枠体部19aには第2の方向へ延びる長孔19dが形成されている。第2スライダ20は、長方形の枠体部20aと、枠体部20aの相対向する長辺中央から外側へ延びる一対の腕部20bと、両腕部20bの先端部にその板面と直交する方向へ突出する遮光部20cとを有し、枠体部20aには第1の方向へ延びる長孔20dが形成されている。これら第1スライダ19と第2スライダ20は合成樹脂を用いて成形された同一形状の共通部品であるが、使用に際しては天地を逆にした状態でガイド部材16に組み込まれ、第1スライダ19の枠体部19aに第2スライダ20の枠体部20aが平面的にオーバーラップするように積層配置されている。
【0021】
すなわち、図8と図9に示すように、第1スライダ19は遮光部19cが腕部19bの板面から上方へ突出する向きに配置され、その腕部19bを対応する第1ガイド突起16bに挟持させることにより、第1スライダ19はガイド部材16の短寸側の両第1ガイド突起16bにスライド可能に支持されている。一方、第2スライダ20は遮光部20cが腕部20bの板面から下方へ突出する逆向きに配置され、その腕部20bを対応する第2ガイド突起16cに挟持させることにより、第2スライダ20はガイド部材16の長寸側の両第2ガイド突起16cにスライド可能に支持されている。このように同一形状の第1スライダ19と第2スライダ20を天地逆にして積層配置することにより、第1スライダ19の両遮光部19cと第2スライダ20の両遮光部20cとが同一平面上に位置することになり、第1スライダ19の枠体部19aに形成された長孔19dと第2スライダ20の枠体部20aに形成された長孔20dとが互いに直交した状態でオーバーラップされる。前述した係合突部11はこれら両長孔19d,20dに挿通されており(図8参照)、第1スライダ19が係合突部11からの外力を受けて第1の方向(X1−X2方向)へ移動するとき、第2スライダ20はその長孔20d内を係合突部11が相対移動するだけで移動せず、第2スライダ20が係合突部11からの外力を受けて第2の方向(Y1−Y2方向)へ移動するとき、第1スライダ19はその長孔19d内を係合突部11が相対移動するだけで移動しないようになっている。
【0022】
下カバー5上にはプリント基板21が固定されており、ガイド部材16はプリント基板21の中央部に穿設された開口21aから露出している。プリント基板21上には4個のフォトインタラプタ22が実装されており、各フォトインタラプタ22はX1−X2およびY1−Y2上に配置されている。このフォトインタラプタ22は凹部22aを介して発光素子22bと受光素子22cとを一体的に対向配置した光検出素子であり、図8に示すように、第1スライダ19と第2スライダ20が第1および第2の方向の中立位置にあるとき、各遮光部19c,20cはそれぞれフォトインタラプタ22の凹部22a入口の不感帯内に侵入している。
【0023】
図1〜図5に示すように、上カバー4の中央には円形の開口4aが穿設されており、この開口4aの周囲には複数の操作キー23が配置されている。上カバー4の内部には各操作キー23に対応して複数のプッシュスイッチ(図示せず)が配設されており、これらプッシュスイッチは操作キー23の押圧操作によって動作されるようになっている。また、上カバー4の開口4aには環状の化粧リング24がスナップ結合等の固定手段を用いて係止されており、この化粧リング24から操作体2の構成部品である基台25や下部ノブ26、回転リング27、上部ノブ28、押圧ノブ29等が突出している。
【0024】
基台25は前述したホルダ7上に載置されており、この基台25には貫通孔25aと一対の位置決め孔25bが形成され、これら位置決め孔25bはホルダ7の両突起7dに挿入されている。下部ノブ26は基台25上に載置されており、この下部ノブ26には円筒状の支軸26aと一対の収納孔26bが形成されている。両収納孔26bにはそれぞれコイルばね30と駆動棒31が挿入されており、これら駆動棒31はコイルばね30の弾発力を受けてクリック板32の下面に圧接されている。このクリック板32の下面には円周方向に沿って凹凸部32aが形成されており、クリック板32の外周縁には4つの係合部32bが90度の間隔を存して突出形成されている。各係合部32bは回転リング27の内周面下端に形成された切欠部27aに係止されており、クリック板32上にはコード板33がねじ34を用いて固定されている。このコード板33の上面には複数の遮光板33aと切欠部33bが円周方向に沿って交互に形成されており、コード板33の上方に回路基板35が配置されている。
【0025】
回路基板35の下面にはフォトインタラプタ36が実装されており、回路基板35の上面には一対のプッシュスイッチ37が実装されている。このフォトインタラプタ36も凹部を介して発光素子と受光素子(いずれも図示省略)とを一体的に対向配置した光検出素子であり、コード板33の遮光板33aと切欠部33bはフォトインタラプタ36の凹部内を移動するようになっている。また、プッシュスイッチ37はステム37aを有するタクトスイッチと呼ばれるもので、このステム37aは内蔵されたタクトばね(図示せず)の弾発力を受けて上方へ付勢されている。回路基板35には係合孔35aを挟んで一対の透孔35bが穿設されており、係合孔35aは下部ノブ26の支軸26aの上端段部に挿入されている。
【0026】
上部ノブ28は回路基板35の上方に配置されており、この上部ノブ28の上面に窪み28aが形成されている。窪み28aの内底面中央には貫通孔28bが形成されており、この貫通孔28bに挿入された止めねじ38が下部ノブ26の支軸26aと基台25の貫通孔25aを通ってホルダ7のねじ孔7cに螺入されている。これにより、ホルダ7上に基台25を介して下部ノブ26が固定されると共に、下部ノブ26の支軸26aの上端に回路基板35と上部ノブ28が固定され、これら下部ノブ26と上部ノブ28との間に回転リング27が回転可能に保持された状態となる。また、この回転リング27の内周面にクリック板32とコード板33が係止されているため、クリック板32とコード板33を回転リング27の回転操作に連動して一体的に回転させることができる。上部ノブ28の窪み28aの内底面には貫通孔28bを挟んで一対の逃げ孔28cと一対のガイド孔28dが形成されており、回路基板35の上面に実装された両プッシュスイッチ37がこれら逃げ孔28cから窪み28a内に突出している。また、上部ノブ28には両ガイド孔28dの外縁部から下方へ延びるガイド片28eが形成されており、これらガイド片28eは回路基板35の透孔35bを挿通して下部ノブ26に達している。
【0027】
押圧ノブ29は上部ノブ28の窪み28a内に昇降可能に配置されており、その下面に設けられた一対の突起29aがそれぞれプッシュスイッチ37のステム37aに当接することにより、押圧ノブ29は両プッシュスイッチ37に内蔵されたタクトスイッチの弾発力を受けて上方へ付勢されている。なお、これら2つのプッシュスイッチ37のうち接点の切換え動作に関与するのは一方だけであり、他方のプッシュスイッチ37は押圧ノブ29をバランス良く上方へ付勢する弾性付与手段として用いられている。押圧ノブ29の下端周縁には複数のフック29aが形成されており、これらフック29aが窪み28aの外周縁に係止することにより、押圧ノブ29は上部ノブ28からの脱落が防止されている。また、押圧ノブ29には一対のガイド棒29bが垂設されており、これらガイド棒29bは上部ノブ28のガイド孔28dを通ってガイド片28eの内部に達している。
【0028】
次に、このように構成されたコントロールユニットに備えられる多方向入力装置と複合操作型入力装置の動作について説明する。
【0029】
まず、多方向入力装置の動作について説明すると、図1と図3および図4は操作体2に外力が作用していない非操作状態を示しており、操作体2の構成部品であるホルダ7や基台25、下部ノブ26、回転リング27、上部ノブ28等は鉛直方向(図1のZ1−Z2方向)を向いている。この非操作状態において、駆動棒13の下端はコイルばね12の弾発力を受けてカム溝14の内底面中央(最深部)に圧接しており、図11に示すように、駆動棒13を保持する係合突部11はガイド部材16の開口18の中心に位置している。また、図8に示すように、係合突部11がそれぞれ両長孔19d,20dの長手方向中央に位置することにより、第1スライダ19と第2スライダ20は第1および第2の方向の中立位置にあり、各遮光部19c,20cはそれぞれフォトインタラプタ22の凹部22a入口の不感帯内に侵入している。したがって、フォトインタラプタ22の発光素子22bと受光素子22c間の光路は遮断されておらず、全てのフォトインタラプタ22からハイレベルの信号が出力される。
【0030】
かかる非操作状態から操作者が操作体2を第1の方向または第2の方向へ揺動操作すると、ホルダ7がリング体6の両支軸6aまたはピン8を支点として同方向へ揺動するため、係合突部11に保持された駆動棒13の下端がカム溝14の内底面を中央から外側へと摺動し、該駆動棒13がクリック突起14aを乗り越えるときに生起されるクリック感が操作体2を介して操作者にフィードバックされる。その際、係合突部11は開口18の中心から第1または第2の方向に沿って外側へ移動し、移動方向に位置する1つの凸部11bが対応する切欠き部18a内に侵入して凹凸係合した時点で、係合突部11のそれ以上の移動が規制される。
【0031】
すなわち、第1および第2の方向で対向している凸部11bと切欠き部18aの対のうち、便宜上、X1方向の対を凸部11b−1,切欠き部18a−1、X2の対を凸部11b−2,切欠き部18a−2、Y1方向の対を凸部11b−3,切欠き部18a−3、Y2方向の対を凸部11b−4,切欠き部18a−4とすると、図11に示すように、非操作状態において各凸部11b−1,2,3,4は各切欠き部18a−1,2,3,4の入口に対向している。この中立位置から係合突部11が例えばX1方向へ移動すると、図12(a)に示すように、凸部11b−3と凸部11b−4の先端が開口18の相対向する内壁面にガイドされながら凸部11b−1が切欠き部18a−1内に侵入し、X1方向に位置する係合突部11の外壁部が開口18の内壁面に当接した位置で、係合突部11のX1方向へのそれ以上の移動が規制される。したがって移動末端位置において、係合突部11の4つの外壁部は開口18に対して凸部11b−1,11b−3,11b−4の3箇所で、より具体的には凸部11b−1の両側面と凸部11b−3の先端面および凸部11b−4の先端面の計4つの面で規制されることになり、X1方向に移動した操作体2がY1方向やY2方向へ誤操作されることはない。同様に、係合突部11が上記以外の例えばY1方向へ移動すると、図12(b)に示すように、凸部11b−1と凸部11b−2の先端が開口18の相対向する内壁面に摺動しながら凸部11b−3が切欠き部18a−3内に侵入し、Y1方向に位置する係合突部11の外壁部が開口18の内壁面に当接した位置で、係合突部11のY1方向へのそれ以上の移動が規制される。この場合、移動末端位置において係合突部11の4つの外壁部は開口18に対して凸部11b−1,11b−2,11b−3の3箇所で、より具体的には凸部11b−1の先端面と凸部11b−2の先端面および凸部11b−3の両側面の計4つの面で規制されることになり、Y1方向に移動した操作体2がX1方向やX2方向へ誤操作されることはない。
【0032】
また、このように操作体2の揺動操作に連動して係合突部11が開口18内を第1または第2の方向へ移動すると、それに伴って第1スライダ19または第2スライダ20がガイド部材16にガイドされながらスライド移動し、各フォトインタラプタ22の1つが選択的にオン動作する。例えば図8に示す中立位置から係合突部11がX1方向へ移動すると、係合突部11は第1の方向(X1−X2方向)へ延びる長孔20dを相対移動するだけであるため、第2スライダ20は係合突部11からの外力(移動方向の駆動力)を受けることなく停止したままであるが、第1スライダ19は係合突部11からの外力を受けてX1方向へ移動する。この場合、第1スライダ19はその腕部19bがガイド部材16の第1ガイド突起16bにガイドされながらX1方向へ移動し、それに伴って遮光部19cがX1方向に位置するフォトインタラプタ22の凹部22a内を移動する。そして、係合突部11がX1方向の末端位置まで移動した時点で、該フォトインタラプタ22の発光素子22bと受光素子22c間の光路が遮光部19cによって遮断されるため、このフォトインタラプタ22からローレベルの信号が出力される。このとき、第2スライダ20は係合突部11からの外力を受けることなく停止したままであるため、Y1−Y2方向とX2方向に位置する残り3個のフォトインタラプタ22から出力される信号はハイレベルのままである。係合突部11が中立位置からX2方向へ移動する場合も同様であり、この場合、第1スライダ19が係合突部11からの外力を受けてX2方向へ移動することにより、X2方向に位置するフォトインタラプタ22からローレベルの信号が出力され、残り3個のフォトインタラプタ22から出力される信号はハイレベルのままとなる。
【0033】
一方、図8に示す中立位置から係合突部11がY1方向へ移動すると、係合突部11は第2の方向(Y1−Y2方向)へ延びる長孔19dを相対移動するだけであるため、第1スライダ19は係合突部11からの外力を受けることなく停止したままであるが、第2スライダ20は係合突部11からの外力を受けてY1方向へ移動する。この場合、第2スライダ20はその腕部20bがガイド部材16の第2ガイド突起16cにガイドされながらY1方向へ移動し、それに伴って遮光部20cがY1方向に位置するフォトインタラプタ22の凹部22a内を移動する。そして、係合突部11がY1方向の末端位置まで移動した時点で、該フォトインタラプタ22の発光素子22bと受光素子22c間の光路が遮光部20cによって遮断されるため、このフォトインタラプタ22からローレベルの信号が出力される。このとき、第1スライダ19は係合突部11からの外力を受けることなく停止したままであるため、X1−X2方向とY2方向に位置する残り3個のフォトインタラプタ22から出力される信号はハイレベルのままである。係合突部11が中立位置からY2方向へ移動する場合も同様であり、この場合、第2スライダ20が係合突部11からの外力を受けてY2方向へ移動することにより、Y2方向に位置するフォトインタラプタ22からローレベルの信号が出力され、残り3個のフォトインタラプタ22から出力される信号はハイレベルのままとなる。
【0034】
このように操作体2を互いに直交する第1および第2の方向のいずれか一方向へ選択的に揺動操作すると、その操作方向に位置するフォトインタラプタ22の出力信号のみがハイレベルからローレベルへと変化するため、4個のフォトインタラプタ22から出力される信号に基づいて操作体2の操作方向を認識することができる。なお、操作体2に対する揺動操作力を除去すると、コイルばね12の弾発力を受けて駆動棒13の下端がカム溝14の内底面中央へ戻るため、ホルダ7を含む操作体2全体は鉛直姿勢となり、係合突部11や第1および第2スライダ19,20が中立位置に自動復帰する。
【0035】
次に、図3〜図5を参照しつつ複合操作型入力装置の動作について説明する。図3と図4に示すように、筐体1の上カバー4から操作体2の構成部品である基台25や下部ノブ26、回転リング27、上部ノブ28、押圧ノブ29等が突出しており、操作者が回転リング27を時計方向または反時計方向へ回転操作すると、回転リング27に連動してクリック板32とコード板33が一体的に回転する。そして、クリック板32の回転に伴ってコイルばね30に弾性付勢された駆動棒31の上端が凹凸部32aと係脱するため、その際に生起されるクリック感が操作体2を介して操作者にフィードバックされる。また、コード板33の回転に伴って遮光板33aと切欠部33bが回路基板35の下面に実装されたフォトインタラプタ36の凹部内を回動するため、フォトインタラプタ36からコード板33の回転に応じたパルス信号が出力される。このように回転リング27を回転操作すると、その回転方向や回転量に応じた信号がフォトインタラプタ36から出力されるため、この信号に基づいて回転リング27の回転情報を認識することができる。
【0036】
一方、操作者が押圧ノブ29を真下(図1のZ2方向)へ押圧操作すると、回路基板35の上面に実装された両プッシュスイッチ37のステム37aが押圧ノブ29の突起29aによって押し下げられるため、プッシュスイッチ37の接点がオフからオンへと切換え動作される。また、かかる押圧操作力を除去すると、押圧ノブ29は両プッシュスイッチ37に内蔵されたタクトばねの弾発力によって元位置に上昇し、プッシュスイッチ37の接点もオンからオフへと切換え動作される。その際、押圧ノブ29の下面に垂設されたガイド棒29bが上部ノブ28のガイド片28eにガイドされながら昇降するため、押圧ノブ29をガタ付きなく滑らかに押圧操作することができる。
【0037】
このように本実施形態例に係る多方向入力装置は、互いに略直交する第1の方向および第2の方向へ揺動操作可能な操作体2と、この操作体2に設けられた係合突部11を挿通させる開口18が穿設されたガイド部材16と、操作体2の第1および第2の方向への移動を検出する検出手段である4個のフォトインタラプタ22とを備え、係合突部11がそれぞれ中央に凸部(被ガイド部)11bを挟んで第1および第2の方向へ延びる4つの外壁部を有すると共に、開口18がそれぞれ中央に切欠き部(ガイド部)18aを挟んで第1および第2の方向へ延びる4つの内壁面を有し、一組の凸部11bと切欠き部18aとの凹凸係合によって係合突部11を第1および第2の方向へ案内するように構成したので、操作体2の揺動操作に伴って係合突部11が第1の方向へ移動するとき、その移動方向に位置する1つの凸部11bが開口18の切欠き部18aと凹凸係合することにより、係合突部11は第1の方向の移動末端位置で位置規制されるが、このとき、第2の方向に位置する他の2つの凸部11bが開口18の内壁面と当接するため、係合突部11は移動方向の後端側を除く3つの外壁部が開口に支持されることとなる。これとは逆に係合突部11が第2の方向へ移動するとき、その移動方向に位置する1つの凸部11bが開口18の切欠き部18aと凹凸係合することにより、係合突部11は第2の方向の移動末端位置で位置規制されるが、このとき、第1の方向に位置する他の2つの凸部11bが開口18の内壁面と当接するため、係合突部11は移動方向の後端側を除く3つの外壁部が開口に支持されることとなる。したがって、操作体2を第1または第2の方向へ操作して係合突部11が末端位置まで移動したとき、操作体2や係合突部11を移動末端位置に確実に位置規制することができると共に、移動方向と直交する方向に位置する他の2つの凸部11bを開口18の内壁面に摺接させることにより、係合突部11を所望の方向へ安定的にガイドすることができる。
【0038】
なお、上記実施形態例では、操作体2を互いに直交する第1の方向および第2の方向へ揺動操作可能とし、この操作体2の揺動操作に伴って係合突部11を第1および第2の方向へ移動させる場合について説明したが、操作体2が第1の方向および第2の方向へスライド操作可能なものであっても良い。
【0039】
また、上記実施形態例では、操作体2の第1および第2の方向への移動を検出する検出手段として、係合突部11によって選択的に動作される第1スライダ19と第2スライダ20の移動を4個のフォトインタラプタ22で検出する光検出方式を採用したが、プッシュスイッチや磁気検出素子等の他の検出手段を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態例に係るコントロールユニットの斜視図である。
【図2】該コントロールユニットの平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】該コントロールユニットに備えられる複合操作型入力装置の分解斜視図である。
【図6】該コントロールユニットに備えられる多方向入力装置の分解斜視図である。
【図7】該多方向入力装置の要部を示す断面図である。
【図8】該多方向入力装置の要部を示す平面図である。
【図9】該多方向入力装置の要部を示す斜視図である。
【図10】該多方向入力装置の要部を示す分解斜視図である。
【図11】該多方向入力装置に備えられるガイド部材と係合突部の配置関係を示す平面図である。
【図12】該係合突部の動作説明図である。
【図13】従来例に係る多方向入力装置に備えられるガイド機構を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 筐体
2 操作体
3 ケース
4 上カバー
5 下カバー
6 リング体
7 ホルダ
8 ピン
10 連結体
11 係合突部
11a 収納孔
11b 凸部(被ガイド部)
12 コイルばね
13 駆動棒
14 カム溝
15 支持体
16 ガイド部材
18 開口
18a 切欠き部(ガイド部)
19 第1スライダ
20 第1スライダ
21 プリント基板
22 フォトインタラプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略直交する第1の方向および第2の方向へ移動可能な操作体と、この操作体に設けられた係合突部を挿通させる開口が穿設されたガイド部材と、前記操作体の前記第1および第2の方向への移動を検出する検出手段とを備え、
前記係合突部がそれぞれ中央に被ガイド部を挟んで前記第1および第2の方向へ延びる4つの外壁部を有すると共に、前記開口がそれぞれ中央にガイド部を挟んで前記第1および第2の方向へ延びる4つの内壁面を有し、前記被ガイド部と前記ガイド部との凹凸係合によって前記係合突部を前記第1および第2の方向へ案内するように構成したことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記被ガイド部と前記外壁部を含む前記係合突部の前記第1および第2の方向に沿う最大寸法が、前記ガイド部と前記内壁面を含む前記開口の前記第1および第2の方向に沿う最小寸法に対して僅かに小さめに設定されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記各被ガイド部が前記外壁部から前記第1および第2の方向へ延びる凸部からなると共に、前記各ガイド部が前記内壁面から前記第1および第2の方向へ延びる凹溝からなり、前記第1および第2の方向で対向する前記両凸部間の長さが前記両内壁面の対向距離よりも僅かに小さめに設定されていることを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−286331(P2006−286331A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103095(P2005−103095)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】