説明

多極ジャック

【課題】 ボディが筒状部を備え、その筒状部の周囲に長い板片状の追加電極が配備されている多極ジャックにおいて、追加電極の変形や屈曲を防ぐ機能を持たせる。
【解決手段】 ボディ10がボディ主部11と筒状部12とを有する。ボディ主部11に複数の主電極21,22,23,24を取り付ける。筒状部12の周囲に板片状の追加電極25,26を配備する。この追加電極25,26の先端25a,26aを筒状部12の外周の凹部15,16内に位置させる。追加電極25,26の先端25a,26aを凹部15,16の底壁面15a,16bに近付く方向に曲げておく。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多極プラグを相手方コネクタとする多極ジャックに関する。
【0002】
【従来の技術】特開平8−138807号公報や特開平10−335010号公報に従来の多極ジャックやその相手方となる単頭型の多極プラグについての記載がある。これらの公報に記載されている多極ジャックは、ボディがボディ主部と短い円筒形のスリーブとを備え、ボディ主部に設けられた幾つかの主電極に加えて、スリーブの周囲に2つの追加電極を有している。また、これらの多極ジャックの相手方となる多極プラグは、軸部の根元部分の外側に、その根元部分と同心状にリング状の接点を有していて、多極プラグが多極ジャックに適正に接続された状態では、多極プラグ側のリング状の接点が、多極ジャック側のスリーブの周囲の上記追加電極に接触する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記各公報に記載されている多極ジャックでは、スリーブの周囲に配備されている追加電極が、筒状部の軸方向に長い板片状に形成されていることに加え、その追加電極の先端が、正面すなわちスリーブの前側から見える箇所に位置している。
【0004】一方、上記各公報に記載されているような多極ジャックを機器セットに取り付ける場合、その多極ジャックのスリーブと機器セットのケースとの間には、多極プラグに備わっているリング状の上記接点を挿入することのできる隙間を形成しておく必要がある。そのため、多極プラグを多極ジャックに接続していないときに、その隙間を通して針状の異物や当該多極ジャックに適合していないプラグ(たとえば、リング状の接点の径が適合していないようなプラグ)が誤って挿入されるという事態が起こり得る。
【0005】この場合において、上記各公報に記載されているような多極ジャック、すなわち、スリーブの周囲に配備されている追加電極の先端がそのスリーブの前側から見える箇所に位置しているものでは、上記隙間を通して不慮に挿入された針状の異物や不適合のプラグが、スリーブの周囲の追加電極の先端に突き当たったり、その追加電極とスリーブとの間に割り込んだりして追加電極をいびつに変形させたり屈曲させたりするおそれがあり、仮にそのような事態が起こると、適合する多極プラグを適正に接続することができなくなってしまう。また、機器セットへの取付け時やその他の取扱い時に、追加電極の先端が不用意に何かに当たっていびつに変形したり屈曲したりするという事態の起こるおそれも多分にあった。
【0006】本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、ボディが上述したスリーブに相当する筒状部を備え、その筒状部の周囲に長い板片状の追加電極が配備されているにもかかわらず、その追加電極が変形や屈曲から防護される機能を備えた多極ジャックを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る多極ジャックは、ボディ主部とこのボディ主部の前側に突出された筒状部とを一体に有するボディの内側に、上記筒状部を通してその筒状部と同心位置又は略同心位置に挿入される多極プラグの軸部に前後に並べて設けられた複数の主電極に各別に電気的に接続される複数の主電極を有している。
【0008】本発明に係る多極ジャックでは、上記筒状部の周囲に、上記筒状部の軸方向に長い板片状の追加電極が配備され、この追加電極の先端が上記筒状部の外周に形成された凹部内に位置してその追加電極の先端が上記凹部の先端側の壁面によって前側から覆い隠されている。
【0009】この構成であると、針状の異物や不適合のプラグが誤って挿入されるという事態が起こっても、それらが筒状部の周囲の追加電極の先端に突き当たるおそれがなくなり、また、それらが追加電極と筒状部との間に割り込んで追加電極をいびつに変形させたり屈曲させたりするおそれがなくなる。また、機器セットへの取付け時やその他の取扱い時に、追加電極の先端が不用意に何かに当たっていびつに変形したり屈曲したりするという事態の起こるおそれもなくなる。
【0010】上記追加電極が上記筒状部の周囲の複数箇所に配備されていてもよく、これによると、当該多極ジャックのさらなる多極化が促進されるだけでなく、追加電極の変形や屈曲に伴う損傷の生じにくい多極ジャックを提供することが可能になる。
【0011】本発明では、筒状部の複数箇所に配備されている上記追加電極のそれぞれの先端が、上記筒状部の軸方向に互いに位置ずれしていてもよく、これによると、相手方コネクタである多極プラグを挿入するときに、その多極プラグの接点に対する各追加電極の接触タイミングを異ならせることが可能になる。
【0012】本発明では、上記追加電極の先端が、上記凹部の底壁面に近付く方向に曲がっていることが望ましく、これによると、追加電極の先端を前側から覆い隠している凹部の先端側の壁面による防護作用がより顕著に発揮されるようになる。
【0013】本発明では、上記筒状部の外周半径よりも、上記筒状部の軸線と上記追加電極の先端との間隔が短くなっている。
【0014】また、本発明では、上記筒状部の凹部の底壁面とその凹部内に位置している上記追加電極の先端との間に、その追加電極の変位を許容する隙間空間が形成されているものであってもよい。このものでは、追加電極が筒状部の凹部の底壁面によって支えられていないために変形や屈曲を起こしやすいのであるけれども、上記した凹部の先端側の壁面による防護作用によって追加電極の変形や屈曲が防止される。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態による多極ジャックJの正面図、図2は同平面図、図3は同底面図、図4は図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【0016】この多極ジャックJは、電気絶縁性に富む合成樹脂の一体成形体でなるボディ10を有する。このボディ10は、ボディ主部11とこのボディ主部11の前側に突出された短い円筒形の筒状部12とを一体に有し、ボディ主部11が筒状部12の左右両側に張り出した直方体状の外形を有している。また、多極ジャックJには6つの電極が備わっており、図4にはそれらの各電極を符号21〜26で示してあり、以下の説明では、これらの各電極を第1極21、第2極22、第3極23、第4極24、第5極25、第6極26として簡略化して表記する。
【0017】第1極21から第4極24までの4つの電極は全体で4極の主電極を形成し、第3極23は2つの電極要素23A,23Bに分かれている(図4参照)。そして、第1極21と第3極23の片側の電極要素23Aとは、図4で判るようにボディ主部11の後端開口からボディ10の内側に挿入され、第2極22と第3極23の他側の電極要素23Bとは、図3のようにボディ主部11の下側(底面側)からボディ10の内側に挿入されて、図4のようにそれぞれ組み付けられている。また、図3又は図4のように、第1極21と第2極22と第3極23の各電極要素23A,23Bとにそれぞれ連設されている取付片21a,22a,23a,23a’がボディ主部11の所定箇所に動かないように固定されて、第1極21と第2極22と第3極23とがこの順にボディ10の内側で後側から前側に向かって並べられている。そして、第1極21と第2極22と第3極23とにそれぞれ具備されている半田付け端子21b,22b,23b,23b’がボディ主部11の下端からその外側方に向けて突出されている。図2で判るように、第4極24の取付片24aはボディ主部11の上面側凹所13aや縦溝13bに収容された状態でそのボディ主部11の外側に取り付けられている。そして、この第4極24が、筒状部12の筒壁に開設された開口14を通して筒状部12の内側に突出されている。24bは第4極24の半田付け端子である。
【0018】次に、第5極25と第6極26との2つの電極がそれぞれ追加電極を形成しており、以下の説明では、第5極25を第1追加電極、第6極26を第2追加電極として規定する。これら2つの追加電極は筒状部12を利用してその筒状部12の周囲の2箇所に各別に配備されている。
【0019】図3又は図4のように、上記筒状部12の外周の2箇所に、その径方向内側に凹入した状態の第1及び第2の2つの凹部15,16が形成されている。これらの凹部15,16は、筒状部12の外周の軸線を挟んで反対側に位置しており、第1凹部15の先端側壁面15aの位置が第2凹部16の先端側壁面16aの位置よりもやゝ後方に位置ずれしている。そして、第1追加電極である第5極25が第1凹部15に対応して配備されていると共に、その第5極25の先端25aが第1凹部15内に位置している。このため、第5極25の先端25aが第1凹部15の先端側壁面15aによって前側から覆い隠されている。同様に、第2追加電極である第6極26が第2凹部16に対応して配備されていると共に、その第6極26の先端26aが第2凹部16内に位置している。このため、第6極26の先端26aが第2凹部16の先端側壁面16aによって前側から覆い隠されている。また、第5極25の先端25aが、第1凹部15の底壁面15bに近付く方向に曲がっている。同様に、第6極26の先端26aも、第2凹部16の底壁面16bに近付く方向に曲がっている。このような構成を採用することにより、筒状部12の外周半径よりも、筒状部12の軸線と第5極25及び第6極26の各先端25a,26aとの間隔が短くなる。さらに、第1凹部15の底壁面15bとその凹部15内に位置している第5極25の先端25aとの間には、第5極25の内向き変位を許容する隙間空間S1が形成されている。同様に、第2凹部16の底壁面16bとその凹部16内に位置している第5極26の先端26aとの間にも、第6極26の内向き変位を許容する隙間空間S2が形成されている。
【0020】図3又は図4のように、第5極25には、その後方に延出する形に形成された取付片25bや半田付け端子25cが備わっており、取付片25bが筒状部12の右側でボディ主部11の取付溝18に差し込まれて固定されている。半田付け端子25cはボディ主部11の下端からその外側方に突出されている。他方、第6極26にも、その後方に延出する形に形成された取付片26bや半田付け端子26cが備わっている。そして、取付片26bが筒状部12の左側でボディ主部11の取付溝17に差し込まれて固定されており、半田付け端子26cがボディ主部11の下端からその外側方に突出されている。
【0021】ここで、第5極25の先端25aの位置と第6極26の先端26aの位置とは、筒状部12の軸方向で、第5極25の先端25aの位置が後側になるように互いに位置ずれしている。こうしておくと、軸部の根元部分に正円形のリング状電極を備える多極プラグ(不図示)を接続したときでも、そのリング状電極に第5極25と第6極26との両方の接触タイミングが一致するという事態が起こらない。このため、多極ジャックJや多極プラグにICなどの電子部品が電気的に接続されている場合などに、その電子部品の機能障害を防ぐことに役立つ。
【0022】以上のように構成された多極ジャックJでは、第5極25と第6極26の各先端25a,26aが筒状部12の外周に形成された凹部15,16内に位置してその凹部15,16の先端側壁面15a,16aによって前側から覆い隠されているので、仮に、前方から針状の異物や不適合のプラグが誤って挿入されるという事態が起こっても、それらは筒状部12の先端部外周面12aによって外側に逃がされるようになる。そのため、異物や不適合のプラグが第5極25や第6極26の各先端25a,26aに突き当たって第5極25や第6極26をいびつに変形させたり屈曲させたりするおそれはない。また、異物などが第5極25や第6極26と筒状部12との間に割り込んで第5極25や第6極26をいびつに変形させたり屈曲させたりするおそれもない。多極ジャックJを機器セットに取り付けたり、多極ジャックJを梱包したり運搬したりするときなどの取扱い時においても、第5極25や第6極26の先端25a,26aが不用意に何かに当たっていびつに変形したり屈曲したりするという事態の起こるおそれもない。このような作用は、この実施形態のように、第5極25や第6極26の先端25a,26aが凹部15,16の底壁面15b,16bに近付く方向に曲がっていることによってより顕著に発揮される。
【0023】なお、上述した多極ジャックJは、主電極によって4極を形成し、追加電極によって2極を形成することによって、全体として6極を形成させてあるけれども、主電極によって形成される極数は4極に限定されず、たとえば2極であっても、3極であってもよい。同様に、追加電極によって形成される極数も2極に限定されず、1極であっても、2極より多い極数であってもよい。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、ボディが筒状部を備え、その筒状部の周囲に長い板片状の追加電極が配備されているにもかかわらず、その追加電極が変形や屈曲から防護される機能を備えた多極ジャックを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による多極ジャックの正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同底面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
10 ボディ
11 ボディ主部
12 筒状部
15 第1凹部
15a 第1凹部の先端側壁面
15b 第1凹部の底壁面
16 第2凹部
16a 第2凹部の先端側壁面
16b 第2凹部の底壁面
21,22,23,24 第1極から第4極までの電極(主電極)
25 第5極(追加電極)
25a 第5極の先端
26 第6極(追加電極)
26a 第6極の先端
S1,S2 隙間空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボディ主部とこのボディ主部の前側に突出された筒状部とを一体に有するボディの内側に、上記筒状部を通してその筒状部と同心位置又は略同心位置に挿入される多極プラグの軸部に前後に並べて設けられた複数の主電極に各別に電気的に接続される複数の主電極を有する多極ジャックであって、上記筒状部の周囲に、上記筒状部の軸方向に長い板片状の追加電極が配備され、この追加電極の先端が上記筒状部の外周に形成された凹部内に位置してその追加電極の先端が上記凹部の先端側の壁面によって前側から覆い隠されていることを特徴とする多極ジャック。
【請求項2】 上記追加電極が上記筒状部の周囲の複数箇所に配備されている請求項1に記載した多極ジャック。
【請求項3】 筒状部の複数箇所に配備されている上記追加電極のそれぞれの先端が、上記筒状部の軸方向に互いに位置ずれしている請求項2に記載した多極ジャック。
【請求項4】 上記追加電極の先端が、上記凹部の底壁面に近付く方向に曲がっている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載した多極ジャック。
【請求項5】 上記筒状部の外周半径よりも、上記筒状部の軸線と上記追加電極の先端との間隔が短くなっている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載した多極ジャック。
【請求項6】 上記筒状部の凹部の底壁面とその凹部内に位置している上記追加電極の先端との間に、その追加電極の変位を許容する隙間空間が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載した多極ジャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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