説明

多機能ナノ構造体及びその製造方法

病原菌及び遺伝子種の超高感度の同定の使用における機能性ナノ粒子は、磁気コアと、前記磁気コアを囲う絶縁性の第1シェルと、前記第1シェルを囲う発光性の第2シェルと、を有する。前記第2シェルは、量子ドット及び染料からなる群から選択される材料がドーピングされる。前記第2シェルは、半導体材料からなる。前記半導体材料は、II−VI及びIII−V半導体ナノ結晶からなる群から選択される。前記半導体材料は、Cdカルコゲニド、InP及びGaAsからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノテクノロジーの分野に関し、特に新規なナノ構造体及びそのナノ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病原菌及び遺伝子種の高速で超高感度の同定は、臨床検査薬、遺伝子治療、公安、生物医学的研究及びバイオテクノロジー発展において極めて重要である。高効率の同定技術の実現を妨げる主たる問題は、多重病原体を同時に同定することが不可能なこと、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅なしで遺伝子を検出することが不可能なこと、培養を待つ必要性、及び、病原体をヒトゲノムから分離することの困難性である。
【0003】
ナノ技術は、これらの問題に対する解決方法を提供する相当な妥協点を示す。様々な技術は、有力な分離及び収集を実現するために相応しい超常磁性材料を用いること、非常に高感度な検出を実現するために量子ドット及び染料などがドーピングされたナノ粒子などの、非常に反応性がある光安定性の信号伝達材料を用いること、及び、非常に効率的な多重用途においてそれらの表面に付けられるフルオロフォアを有する超常磁性ナノ粒子などの多機能ナノ材料を採用することを提案している。
【0004】
従来技術の欠点は、生物環境に一旦晒された超常磁性ナノ粒子の安定性の欠如、生物学実験室での通常のスキャナーでの量子ドット及び量子ドットの起こり得る毒性における検出チャンネルの欠如、及び、超常磁性ナノ粒子によるあらゆる付近の発光団の消光を含む。
【0005】
参照することによってここに含まれる以下の論文、D.K.Yi,et al.,J.Am.Chem.Soc.2005,127,4990、X.Zhao,et al.,Anal.Chem.2003,75,3476−3483、H.Kim,et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127,544−546、S Santra,et al.,Anal.Chem.2001,73,4988−4993、に対して特定の参照がなされる。
【0006】
米国特許番号6,514,767には、活性表面を有するガラス封入された複合ナノ粒子を記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,514,767号明細書
【非特許文献1】D.K.Yi,et al.,J.Am.Chem.Soc.2005,127,4990
【非特許文献2】X.Zhao,et al.,Anal.Chem.2003,75,3476−3483
【非特許文献3】H.Kim,et al.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127,544−546
【非特許文献4】S Santra,et al.,Anal.Chem. 2001,73,4988−4993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超常磁性及び発光の2つの機能を有する多機能ナノ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の原理によれば、超常磁性及び発光の2つの有用な機能は、簡単に操られたシリカの表面または他の適切な絶縁材料の表面に加えて、1つの多機能ナノ構造に含まれる。
【0009】
本発明の第1側面によれば、磁気コア;前記磁気コアを囲う絶縁性の第1シェル;及び、前記第1シェルを囲う発光性の第2シェル;を有する機能性ナノ粒子が提供される。
【0010】
磁気ナノ粒子の染料分子の直接的な取り付けは、消光の問題を引き起こす。この問題を回避するために、適切な厚さを有する絶縁性の第1シェルは、他の絶縁材料からなることもできるが本発明の実施形態ではシリカであるが、磁気コアを染料から分離するように、それらを被覆しなければならない。その後、エミッション信号を集中させ、その染料の光安定性を向上させるために、この第1シェルの表面に染料分子を付ける代わりに、それらは、本発明の実施形態ではシリカである同一の絶縁材料の第2シェル内にドーピングされる。
【0011】
本発明の実施形態ではシリカである絶縁性の第3シェルは、さらに保護を提供するために成長され、様々な生物種と接合するために使用されることができる。この第3シェルは、第2シェルと同様の方法で成長されることができる。これらのナノ複合体は、標的薬物伝達などの診断及び治療をリアルタイムのインサイチュモニタリングするために使用されることができる。
【0012】
代わりに、この第2シェルは、CdSeなどの発光半導体材料で作られることができる。CdTe、InP、PbSeなどの、より一般的には、II−VI(例えば、Cdカルコゲニド)及びIII−V(例えば、InP、GaAs)半導体ナノ結晶である多くの他の組成物は、半導体材料として使用されることができる。CdTeSeなどの三成分系も採用されることができる。
【0013】
また、コア及び第1シェルは、ZnSにおけるCdSe(CdSe@ZnS)などのコアシェル系を構成する。
【0014】
磁気コアは、Feでありえ、より一般的には、それは、MFe(ここで、M=Co、Mn・・・)などのフェライト材料に加えてFe及びCoなどのゼロ価金属、FeCo、SmCo、FePtからなることができる。
【0015】
他の側面では、本発明は、磁気ナノ粒子を用意し;絶縁性の第1シェルで前記ナノ粒子を被覆し;その後に前記第1シェルの外側に発光性の第2シェルを付ける;ことを含む機能性ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の多機能素子では、磁気及び光学特性は、区分化され、前記素子内で互いに物理的及び化学的に分離される。
【0017】
本発明は、新規な多機能コア/マルチシェルナノ構造を達成するために、2段階工程、すなわち、修正されたストーバー法(Stober method)と、それに続くリバースマイクロエマルジョン法(reverse micro−emulsion method)とを採用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、例示としてのみ添付の図面を参照してより詳細に以下に説明されるだろう。
【0019】
図1は、本発明の実施形態による新規なナノ粒子を示す。図2aは、Feナノ粒子のTME顕微鏡写真である。図2bは、ラブピー(Rubpy)ドーピングで使用される修正されたストーバー法によって形成されるSiOにおけるFe(Fe@SiO)ナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。図2c及び2dは、2段階方法によって用意されるラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。図2eは、ラブピードーピングされたものに匹敵するシェル厚さを有するドーピングされていないSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。図2fは、ラブピードーピングされたSiOにおけるFe二重シェルナノ粒子の粒径分布を示すヒストグラムである。図3aは、リバースマイクロエマルジョン法によって合成されたラブピードーピングされたSiOにおけるFe粒子のTEM顕微鏡写真である。図3Bは、リバースマイクロエマルジョン法によって用意されたラブピードーピングされたSiOナノ粒子のTEM顕微鏡写真である(矢印は、超常磁性コアを示す)。図4は、正味のラブピー(neat Rubpy)(正方形)、ラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子(円形)及びラブピードーピングされたシリカナノ粒子(三角形)における、450nmでの吸光度に対する集積されたフォトルミネッセンス強度を示すプロットである。
【0020】
図1に示されるように、本発明のナノ粒子は、例えば、鉄またはコバルトベースの化合物である超常磁性コア10と、シリカまたはAlなどの適切な絶縁材料からなる絶縁性の第1シェル12と、染料または量子ドットドーピングされることができ、または、CdSeなどの半導体材料からなる発光性の第2シェル12と、シリカなどのあらゆる適切な絶縁材料でありえ、コアと発光部材に保護を提供し、それが研究される種に結合することができるような表面機能性を有する追加的な外部絶縁シェル16と、を有する。
【0021】
本発明は、W.Stober,et al.Journal of Colloid and Interface Science 26,pp.62−69(1968)に記載され、参照することによってここに含まれるストーバー法(Stober method)を用いて新規なナノ粒子を製造する。ストーバー法では、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、水酸化アンモニウム(NHOH)、及び、水がエタノールを含有するガラスビーカーに加えられ、混合物が一晩攪拌される。ストーバー粒子のサイズは、反応剤の相対濃度に依存する。
【0022】
通常、ストーバー法(または修正されたストーバー)及びリバースマイクロエマルジョン法は、シリカ粒子またはシリカシェルを形成するために単独で使用されている。このリバースマイクロエマルジョン工程は、例えば、参照することによってここに含まれる、Tamkang Journal of Science and Engineering,Vol.7,No 4,pp.199−204(2004)に記載される。磁気粒子及び染料分子の存在に関して、リバースマイクロエマルジョン法を用いた上述の構造体の開発における主たる問題が、多くのコアフリーシリカ粒子に加えて制御されないマルチコア構造体及び凝集体の形成である一方で、修正されたストーバー法を用いた上述の構造体の開発における主たる問題は、凝集体と多くのコアフリーシリカ粒子との形成である。
【0023】
新規な2段階方法、すなわち修正されたストーバー法(第1段階)と、それに続くリバースマイクロエマルジョン法(第2段階)とを採用することによって、より良い結果が得られる。
【0024】
第1段階中に、シリカの第1シェルの良く制御されたモルフォロジーと厚さとを有するコアシェル構造体は、修正されたストーバー工程を用いて合成される。第2段階中に、シリカの第2シェルは、成長され、染料分子は、リバースマイクロエマルジョン内のナノリアクターに同時にドーピングされる。
【0025】
この組合せの利点は、(a)ナノ粒子表面上の初期界面活性剤が第1段階中に除去され、後続のリバースマイクロエマルジョンシステムの複雑性を減少させること、(b)シリカの第1シェル(10〜15nm)を含有する生成物が、第2段階において“良好な”種子としての機能を果たし、マルチコア、多過ぎるコア自由粒子及び凝集体の形成を避けることである。
【0026】
(実験例)
(新規な2段階方法を用いた発光コアシェルナノ粒子の合成)
市販名フェロフロイドEMG304(fellofluid EMG 304)という、水に分散され、報告された10nmの平均粒径を有する酸化鉄(Fe)ナノ粒子をフェロテック社(Ferrotec USA Corporation)から購入した。
【0027】
トリス(2,2−ビピリジン)ルテニウム(II)塩化物(ラブピー)は、アルファイーザージョンマッティ社(Alfa Aesar Johnson Matthey Company)によって供給された。テトラエトキシシラン(TEOS)は、ゲルセット社(Gelset Inc)から得られた。
【0028】
アンモニア水酸化物(NHOH、28−30重量%)及び高純度イソプロパノールは、共にEMD化学薬品社(EMD Chemicals Inc.)のトリトンX−100(Triton X−1OO)から得られ、シクロヘキサン及びヘキシルアルコールは、シグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich Inc.)、BDH社(BDH Inc.)及びアナケミアカナダ社(Anachemia Canada Inc.)からそれぞれ購入した。
【0029】
全ての化学薬品は、さらなる精製なしに直接使用された。調製の間、純粋(18M〜cm)が独占的に使用された。水は、ミリポアキューガード(登録商標)2(Millipore Q−guard 2)浄水システム(ミリポア社(Millipore Corporation))を用いて精製された。
【0030】
第1段階は、12nm程度のシェル厚さを有する染料フリーのSiOにおけるFeコアシェルナノ粒子を形成するために、酸化鉄(Fe)ナノ粒子をシリカで被覆する。このナノ粒子は、修正されたストーバー法によって用意された。一般的に、イソプロパノール(1mM)中のテトラエトキシシラン(TEOS、ゲルセット社)200mlに28mlのFe粒子水分散液(粒子数濃度:〜9×1012/ml)が強力な攪拌下で加えられた。次いで、3mlのNHOH(28−30重量%、EMD化学薬品社)は、反応混合物に滴下された。この反応は、室温で少なくとも5時間進行された。最後に、茶色のコアシェルナノ粒子は、遠心分離によって収集され、数回にわたり水で洗浄された。次いで、このナノ粒子は、後続の被覆及びドーピング工程用に水中に分散された。
【0031】
この第2段階は、ラブピー染料を、若干の修正を加えた、S.Santra,P.Zhang,K.Wang,R.Tapec、及び、W.Tan,Anal Chem.2001,73,4988で報告されたリバースマイクロエマルジョン法を用いてドーピング工程中に同時に製造されるシリカの第2シェルに封入する。この油中水滴マイクロエマルジョンは、1.8mlのトリトンX−100(Triton X−100)(シグマ−アルドリッヒ社(Sigma Aldrich Inc.))、7.5mlのシクロヘキサン(BDH社)、1.8mlのヘキシルアルコール(98%、アナケミアカナダ社)、及び、340μlの水を混合することによって用意された。
【0032】
2mlのSiOにおけるFe粒子分散(粒子数濃度:〜9×1012ml)と、774μlのラブピー(アルファエーザー,ジョンソンマッティー社)水溶液(2.58mg/ml)は、マイクロエマルジョンに加えられ、均一な分散を得るために超音波で分解された。
【0033】
このシリカ被覆反応は、25μlのTEOSと14.7μlのNHOHとを加えることによって開始された。この反応は、アルミニウムフォイルで覆われた反応器内で穏やかな振動下で4日間以上続けられた。反応を停止するために、アセトンが加えられ、このナノ粒子は、遠心分離によって分離された。第1段階と同様に、このナノ粒子は、反応していない試薬を除去するために数回にわたって繰り返して洗浄された。
【0034】
他の実施形態では、内部シリカシェルの成長と染料がドーピングされた外部シェルの成長の両方がリバースマイクロエマルジョンで実行された。油中水滴マイクロエマルジョンは、1.8mlのトリトンX−100、7.5mlのシクロヘキサン、1.8mlのヘキシルアルコール、及び、340μl以上(340μl〜)の水を混合することによって上述と同様の方法で用意された。次に、2.774mlの水分散Fe(粒子数濃度:〜1013ml−l)が、均一な粒子分散を形成するためにこのマイクロエマルジョンに加えられた。続いて、15l以上(15〜l)のTEOSと、8.8l以上(8.8〜l)のNHOHが、Feナノ粒子を第1シリカシェルで被覆するためにこの混合物に加えられた。この反応は、24時間後に停止された。ドーピングされていないSiOにおけるFeコアシェルナノ粒子は、洗浄され、後続処理用に2mlの水で再分散された。染料ドープされた外部のシリカシェルの成長は、上述と同様の方法で実施された。
【0035】
シリカナノ粒子の核生成及び成長、及び、ラブピードーピング工程は、ワンポット反応で同時に行われた。この油中水滴マイクロエマルジョンは、1.8mlのトリトンX−100、7.5mlのシクロヘキサン、1.8mlのヘキシルアルコール、及び、340l以上(340〜l)の水を混合することによって用意された。次いで、774l以上(774〜l)のラブピー水溶液(10.3mg/ml)が、マイクロエマルジョンに加えられ、均一な分散を得るために超音波で分解された。続いて、100l以上(100〜l)のTEOS及び14.7l以上(14.7〜l)NHOHが加えられた。この反応は、アルミニウムフォイルで覆われた反応器内で穏やかな振動下で4時間以上続けられた。アセトンを加えることによるこの反応の停止に続いて、発光ナノ粒子は、遠心分離によって抽出され、反応されていない試薬を除去するために水とエタノールで洗浄された。次いで、精製された発光ナノ粒子は、同定のために水中に分散された。
【0036】
透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、200kVで動作するフィリップスCM20FEG(Philips CM20 FEG)電子顕微鏡を用いて得られた。この試料は、格子に粒子水溶液分散のいくつかの滴を滴下することによって用意された。
【0037】
紫外−可視スペクトルは、300nm/minの走査速度でキャリー500UV−Vis−NIR(Cary 5000 UV−Vis−NIR)分光光度計(バリアン(Varian))を用いて得られた。発光スペクトルは、450nmの励起波長を用いたキセノンランプを備えたC700−PTIシステム(C700 PTI system)(フォトンテクノロジーインターナショナル(Photon Technology International))を用いて測定された。寿命測定は、フルオロログ−タウ−3寿命システム(Fluorolog−Tau−3 Lifetime System)(ジョビンイボン社(Jobin Yvon Inc.))を用いて行われた。試験された試料の全ては、水に分散され、0.1と同じかそれ以下の吸光度を有した。この位相シフト及び復調因子データ(demodulation factor data)は、一連の周波数で記録され、その寿命は、製造者によって提供される基本寿命モデリングソフトウェア(バージョン2.2.12)を用いて周波数に対して両方のデータのセットを適合することによって得られた。κは、データ適合の妥当性を評価するために使用され、1に近いか1より小さいκ値を有する適合は、満足いくものであると考えられる。
【0038】
ナノ粒子の磁気特性は、磁力計(Quantum Design PPMS Model 6000 Magnetometer)を用いて測定された。粉末形態のナノ粒子は、ゼラチンカプセルに挿入され、パラフィルムでシールされた。磁場に依存した磁化は、4テスラ(T)までの磁界で300Kで測定された。温度依存のゼロ磁界冷却(ZFC)及び磁界冷却(FC)磁化は、それぞれゼロ及び50エールステッド(Oe)の磁界で2Kまで試料を初期冷却することによって10−350Kの範囲で測定された。
【0039】
酸化鉄ナノ粒子(EMG304)は、水中で界面活性剤を用いて安定化された。TEM画像(図2a)は、粒子径が、9.7nmの平均径と、対数正規フィッティングで決定される0.4nmの標準偏差とを有して5から24nmの範囲であることを示した。
【0040】
Feナノ粒子を封入する内部シリカシェルの製造工程は、そのほとんどが、それらの少数が多重コアを有する単一または二重コアの何れかを有するハイブリッドナノ粒子をもたらす(図2b)。このシェル表面は、滑らかであり、平均シェル厚さは、約12nmである。このシェル厚さは、TEOS濃度を調整することによって良好に制御されている。それは、数ナノメートルから100nm超にまで変化されてもよい。
【0041】
この粒径は、ラブピー分子が含浸された外部シリカシェルを成長した後に、より大きくなる(図2c)。この直径は、約80から130nm超までの範囲にある(図2f)。このサイズ分布は、対数正規形状に適合し、98.2nmの平均直径と0.1の標準偏差とを生み出す。この大きなサイズの粒子は、二重または多重コアを含む。コアフリーナノ粒子の割合は小さいが、それらは、粒径分布内に考慮されない。ほとんどの粒子の二重シェルの厚さは、40−50nmである。このシェル厚さは、反応時間に加えてTEOS、水、及び、NHOHに依存する。
【0042】
この外部シリカシェルは、染料フリーシェルよりコンパクトである。高倍率TEM画像からより明らかに見られるように(図2d、2e)、ラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子は、同様のシェル厚さを有する染料フリーのSiOにおけるFeナノ粒子と比較して、ランダムなコントラスト変化及び粗いシェル質感を示す。これは、染料分子によるシリカネットワークの摂動によると考えられる。内部の染料フリーシェルの表面と異なって、染料がドーピングされた外部シリカシェルの表面が相対的に粗いことは指摘されるべきである。
【0043】
比較として、リバースマイクロエマルジョン法を用いて用意されたラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子のTEM画像が図3aに示されており、コアフリーシリカナノ粒子に加えてマルチコア構造体及び凝集体が明らかである。さらに、磁気粒子がドーピングされたシリカネットワークも観察される(図3aに示されない)。劣った構造体の形成は、磁気粒子中の磁気双極子相互作用によるものであろうし、それは、界面活性剤の凝集状態を掻き乱し、リバースマイクロエマルジョンシステムの局所安定性を妨げる。さらに、受容されるFe粒子表面上の界面活性剤は、マイクロエマルジョンのモルフォロジーに対して知られていない効果も有することができる。各々の単一のミセルの反応環境が、被覆工程中に完全に均質ではないかも知れないことが考えられる。
【0044】
本発明の2段階方法によって用意される発光性のSiOにおけるFeナノ粒子のモルフォロジーは、リバースマイクロエマルジョン法によって成長されるナノ粒子より優れている。
【0045】
リバースマイクロエマルジョン法を用いたラブピードーピングされたナノ粒子の合成は、磁気ナノ粒子がない状態でかなり容易であり、図3bに示されるように規則的な、ほぼ球形の分離されたナノ粒子を生成する。これらの結果は、リバースマイクロエマルジョン技術が使用される場合のみに形成される磁気ナノ粒子含有構造体の劣ったモルフォロジーにおける上記の説明の正当性を間接的に立証する。粒子間の双極子相互作用の減少及びシリカ被覆の第1段階でのFe粒子表面上の界面活性剤の除去は、リバースマイクロエマルジョンで実行される第2段階において、より良い構造体の形成を容易にする。
【0046】
SiOにおけるFeナノ粒子内に埋め込まれ、リバースマイクロエマルジョン法を用いて合成されたシリカナノ粒子内に埋め込まれる、水中のラブピーのフォトルミネッセンス強度(515から800nmで集積された)は、ラブピーのフォトルミネッセンス効率におけるホストシリカと磁気コアとの効果を決定するために450nmにおける吸光度の関数として報告されている。図4に示されるように、3つの全ての環境におけるラブピーの集積された強度は、吸光度に対して線形に変化し、実験的な精度内で所定の吸光度値においてほぼ等しい。第1に、シリカ内のラブピー分子の埋め込みは、それらのフォトルミネッセンス効率に影響を与えず、第2に、12nm以下(〜12nm)またはそれ以上の、シリカに埋め込まれたラブピー分子から分離される磁気コアは、ラブピーフォトルミネッセンスを消さないということが見られる。
【0047】
多機能コアシェルナノ粒子を合成するための、ストーバー法とリバースマイクロエマルジョン法を連続して組み合わせる2段階アプローチは、超常磁性及び発光の両方の効率的な組み合わせを示す改善された構造体をもたらす。コアシェル構造体は、超常磁性コア、絶縁性の染料フリーシリカシェル、染料がドーピングされたシリカシェル、及び、機能化することができるシリカ表面を含む。絶縁性のシリカシェルは、染料発光を消し、コア結合に対する磁気コアを最小化するという、2つの役割を果たす。
【0048】
光学測定は、フリー染料及び組み込まれた染料が同様の吸光度と発光特性を表し、同様の量子吸収を示し、それによって、12nmの絶縁性のシリカシェルの存在が、ラブピー及び磁気コア間の“光学”相互作用を効率的に防止することを確証することを例証する。この微細な多機能ナノ構造体の合成における成功をもたらす重要な鍵となる要因は、ラブピードーピング工程用のリバースマイクロエマルジョンにおける、実際に封入された磁気コアを含有する表面的な/シリカナノ粒子の使用である。
【0049】
磁気ナノ粒子が、それらの磁気相互作用を分離するために十分に厚いシリカシェルによって既に覆われている限りは、同一の又は若干修正されたリバースマイクロエマルジョン条件は、様々な磁気ナノ粒子の染料ドーピングに適用することができるべきであり、この記載された方法は、水に分散する磁気ナノ粒子のほとんどに通常適用することができるべきである。リバースマイクロエマルジョン法は、特定の界面活性剤を必要とするので、この方法の直接的な使用は、初期のナノ粒子合成で使用される界面活性剤における制限を有する。
【0050】
この処理は、様々な検出要求に適合するように、様々な染料または量子ドットをシリカシェル内に収容するために修正されることができる。
【0051】
本発明は、病原菌及び遺伝子種の効率的な捕獲予備濃縮及び伝達の可能性、高感度検出、捕獲処理のリアルタイムのインサイチュトラッキング、治療経過のリアルタイムのインサイチュモニタリング(例えば、標的薬物伝達、癌組織殺消工程)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態による新規なナノ粒子を示す。
【図2a】Feナノ粒子のTME顕微鏡写真である。
【図2b】ラブピードーピングで使用される修正されたストーバー法によって形成されるSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図2c】2段階方法によって用意されるラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図2d】2段階方法によって用意されるラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図2e】ラブピードーピングものに匹敵するシェル厚さを有するドーピングされていないSiOにおけるFeナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図2f】ラブピードーピングされたSiOにおけるFe二重シェルナノ粒子の粒径分布を示すヒストグラムである。
【図3a】リバースマイクロエマルジョン法によって合成されたラブピードーピングされたSiOにおけるFe粒子のTEM顕微鏡写真である。
【図3b】リバースマイクロエマルジョン法によって用意されたラブピードーピングされたSiOナノ粒子のTEM顕微鏡写真である(矢印は、超常磁性コアを示す)。
【図4】ニートラブピー(正方形)、ラブピードーピングされたSiOにおけるFeナノ粒子(円形)及びラブピードーピングされたシリカナノ粒子(三角形)における、450nmでの吸光度に対する集積されたフォトルミネッセンス強度を示すプロットである。
【符号の説明】
【0053】
10 超常時性コア
12 絶縁性の第1シェル
14 発光性の第2シェル
16 絶縁性の外部シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コア;
前記磁気コアを囲う絶縁性の第1シェル;
前記第1シェルを囲う発光性の第2シェル;
を有する、機能性ナノ粒子。
【請求項2】
前記第2シェルは、量子ドット及び染料からなる群から選択される材料がドーピングされる、請求項1に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項3】
前記第2シェルは、半導体材料からなる、請求項1に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項4】
前記半導体材料は、II−VI及びIII−V半導体ナノ結晶からなる群から選択される、請求項3に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項5】
前記半導体材料は、Cdカルコゲニド、InP及びGaAsからなる群から選択される、請求項3に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項6】
前記半導体材料は、CdTe、InP及びPbSeからなる群から選択される、請求項3に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項7】
前記半導体材料は、CdSeである、請求項3に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項8】
前記半導体材料は、三成分系である、請求項3に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項9】
前記三成分系は、CdTeSeである、請求項8に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項10】
前記コア及び第1シェルは、ナノ粒子コアシェル系を構成する、請求項1に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項11】
前記コアシェル系は、ZnSにおけるCdSeである、請求項10に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項12】
前記磁気コアは、ゼロ価金属及びフェライト材料からなる群から選択される、請求項1から11の何れか一項に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項13】
前記磁気コアは、Fe、Co、FeCo、SmCo、FePt及びMFe(ここで、M=Co、Mn・・・)からなる群から選択される、請求項1から11の何れか一項に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項14】
前記磁気コアは、Feである、請求項1から11の何れか一項に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項15】
前記第1及び第2シェルは、シリカである、請求項1から14の何れか一項に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項16】
前記第2シェルを囲う表面機能性を有する絶縁性の第3シェルをさらに有する、請求項1から15の何れか一項に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項17】
前記第3シェルは、シリカである、請求項16に記載の機能性ナノ粒子。
【請求項18】
磁気ナノ粒子を用意し;
絶縁性の第1シェルで前記ナノ粒子を被覆し;
その後に前記第1シェルの外側に発光性の第2シェルを付ける;
ことを含む機能性ナノ粒子の製造方法。
【請求項19】
前記第1シェルは、ストーバー法で付けられ、前記第2シェルは、リバースマイクロエマルジョン法で付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記シェルの両方は、リバースマイクロエマルジョン法で付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2シェルの外側に機能性表面を有する第3シェルを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第2シェルに、その成長中に、発光材料をドーピングすることを含む、請求項18から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記発光材料は、染料及び量子ドットからなる群から選択される材料である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記発光材料は、ラブピー染料である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第2シェルは、半導体材料からなる、請求項18から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記半導体材料は、CdSeである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記磁気コアは、Feである、請求項18から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記シェルの各々は、シリカである、請求項18から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コア及び第1シェルは、ナノ粒子コアシェル系を構成する、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記コアシェル系は、ZnSにおけるCdSeである、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−523071(P2009−523071A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541563(P2008−541563)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001935
【国際公開番号】WO2007/059630
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(595006223)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (25)
【Fターム(参考)】